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全体の傾向(国別)
全体の傾向(国別) ○経済産業省では平成26年3月に海外進出企業を対象に課税問題に関するアンケート調査を実施。 海外に現地法人を持つ日本企業4,296社に対して、進出先国における課税問題に係る実態を調査 し、895社から回答を得た。 ○国際的な二重課税の原因となるような課税事案が生じた国としては、「中国」が30.6%で最も高 く、「インド」が18.5%、「インドネシア」が16.9%で続いている。 【国際的な二重課税の原因となるような課税措置が生じた国(過去5年以内)】 【全 体】(n=124) 0% 20% 30.6 中国 18.5 インド 16.9 インドネシア 5.6 タイ 台湾 4.0 米国 4.0 ベトナム 3.2 韓国 1.6 ブラジル 1.6 フランス 1.6 その他 40% 12.1 出典:平成26年3月実施 経済産業省アンケート調査 0 全体の傾向(措置別) ○国際的な二重課税の原因となるような課税事例の措置内容は「移転価格税制」に関するもの が43.5%で最も高く、「PE」に関するものが22.6%、「ロイヤルティ」に関するものが 16.9%で続いている。 【国際的な二重課税の原因となるような課税措置の内容(過去5年以内)】 その他 16.9% 【全 体】(n=124) 移転価格税制 43.5% ロイヤルティ 16.9% PE 22.6% 措置内容の内訳 No. カテゴリー名 1不適切な比較対象取引を用いた増額 2移転価格税制みなし利益率による増額 3移転価格税制/その他 4出張者・出向者のPE認定 5駐在員事務所のPE認定 6子会社・第三者のPE認定 7ロイヤルティの定義・範囲の相違 8ロイヤルティ料率の上限規制による増額 9ロイヤルティの送金規制による増額 10ロイヤルティ/その他 11その他 全体 n % 20 16.1 19 15.3 15 12.1 17 13.7 6 4.8 5 4 15 12.1 2 1.6 2 1.6 2 1.6 21 16.9 124 100 出典:平成26年3月実施 経済産業省アンケート調査 1 具体的事例-移転価格税制(1) 中国 景気や経営状況に関係なく一律の高い 利益率が求められ、追徴課税を受ける 中国税務当局から、 「機能とリスクが限定的な現地子会社(単 純生産拠点等)は、金融危機等によるリ スクを負うべきではなく、一定の利益を確 保すべき」 との通達を根拠として、実態と乖離した高 い利益率を適用され、追徴課税を受けた。 中国に無形資産があると認定され、 追徴課税を受ける 中国におけるマーケット開発は、現 地子会社が自身のノウハウを用い て行っているため、無形資産は中国 側にある、と中国税務当局から指摘 された。 最近では2桁台の 利益率を求めてくることも 2 具体的事例-移転価格税制(2) インド 業種・業態が異なる取引に おける利益率の適用 イ ンド税務 当局から 、 「代行 取引」を「仕切 取 引」と 同種の取引とみ な され、 仕切取引の高い 利 益率を 代行取引に適用 さ れて追徴課税を受けた。 ~その他の事案:理由説明書を巡るトラブル~ 追徴課税の理由説明書に記載されている金額が他社のものであった。 更正金額が実際の100倍の額で記載されていた。 3 3 具体的事例-移転価格税制(3) タイ ロイヤルティに係る移転価格税制 一般的に、ロイヤルティ料率が 3~5%を超える場合には税務当 局の移転価格調査対象となるリ スクが高いとされている。 インドネシア 実態と乖離した高い利益率の適用 合理性がなく、利益率ありきで高い利益率に基づいた追徴課税が行われる。 比較対象企業の利益率を算出する際に、赤字会社を除いて利益率の平均値を出すことに より、利益率を高く算定し、追徴課税が行われる。 4 具体的事例-移転価格税制(4) ブラジル 画一的で柔軟性に欠ける移転価格税制 ブラジル国外から輸入品を仕入れてブラジル国内で販売を行う事業者に対して、販売価格 の20%(特定の品目では30%または40%)を利益と見なし課税を行う画一的な税制となって いる。(法律12715号) 製品(部品)1点毎の税率計算が求められるため、税務処理が非常に煩雑になる。 輸入取引の場合、取引価格の算定について、前提とした為替相場と実際の取引時の為替 相場との差異を容認する柔軟性が備えられていない。 【 ブラジルの移転価格税制】 ※利益比率 輸入部品を用いた製品製造事業、完成品輸入販売事業ともに一律20%とした上で、一部製品については例外を設ける。 30%の品目:化学製品、硝子製品、紙・パルプ・紙製品、金属 40%の品目:医薬品、タバコ、カメラ等光学機器、医療用機器、 石油製品、石油・天然ガス 利益 輸入原価 90 正味販売 価格 利益とみなされる 部分 10 10 ※利益比率20%の場合 100 輸入原価90のものを100で販売した場合、販売利益10は少なすぎるとして利益を20とみなして課税 5 具体的事例-PE(1) 中国 出張者・出向者に対するPE認定 日中租税条約では「6ヶ月を超えない短期滞在である場合はPE 認定されない」旨の 規定があるが、1ヶ月に1日ずつ滞在し、それが6ヶ月を超えるような場合にまで PE認定された。 出向者の給与などを一時的に親会社が立て替えていた場合に、出向者が親会社の支配 下にあるとしてPE 認定され、課税を受けた。また、PE 認定を受け入れなければ海外 送金できなかった。 ※ 出向者の勤務評価を 親会社で行っている 場合、仮に給与の支 払いを現地子会社で 行っていたとしてもPE 課税されるケースが ある。 6 具体的事例-PE(2) インド 現地子会社・第三者に対するPE認定 現地子会社が、親会社から独立して業務を行っており、また設立以来特段の業務変更が無 いにも係わらず、突然インド税務当局から、「当該子会社は何のリスク負担もせず、親会 社の取り次ぎに過ぎない」等という主張に基づき、親会社のPEであると認定された。 ※ 親会社とは資本関係のない 第三者(親会社の製品を現 地で販売)が、親会社の契 約獲得に貢献しているとし て親会社のPEと認定される ケースもある。 駐在員事務所に対するPE認定 実際には営業活動を行っていないにもかかわらず、従業員数が多いことを理由に、実質的 に営業活動を行っているとみなされ、駐在員事務所がPE認定された。 7 具体的事例-ロイヤルティ(1) 中国 子会社が赤字の場合にロイヤルティの損金処理が否認される 子会社が赤字の場合、中国税務当局 から 「ロイヤルティは利益に係る対価であ り、利益が生じていない場合、技術 提供の便益を享受していない」 という理由で、ロイヤルティとし て現地子会社が損金処理すること を否認された。 ※ 赤字の場合に限らず、ロイヤルティの支払・算 出根拠が不十分、現地にノウハウが十分にあ るため技術提供を受ける必要なし等の理由に より、損金処理を否認される事例あり。 ~その他の事案(中国の事例)~ ロイヤルティについて、特許保有、特殊・ハイテク技術等の特段の理由がなければ認可 が受けられなかったり、「技術が陳腐化している」との理由で料率の引き下げを求めら れることもある 。 ロイヤルティ料率の積算根拠について細かく説明を求められ、技術に関する詳細情報を 開示しなければならないといった事案もあり、技術の開示を避けるためにやむを得ず課 税を受け入れた事例もある。 8 具体的事例-ロイヤルティ(2) ブラジル 送金規制 海外へロイヤルティを送金する場合は 事前に国立工業所有権院及びブラジ ル中央銀行への登録が必要である が、登録の際にロイヤルティ料率(上 限5%)及びライセンス契約の有効期 間(原則5年)の上限規制等が課され るため、技術に見合った十分なロイヤ ルティの対価を日本の親会社へ支払う ことができない。 9 具体的事例-ロイヤルティ(3) ロイヤルティの範囲に関する見解の相違 インド 親会社から子会社へソフトウェアの提 供を行った際、その対価を親会社が事 業所得と認識する一方で、現地当局は ロイヤルティとして認識し、源泉徴収が 追加的になされた。 タイ 現地子会社の工場の立上げ支援等 のために親会社から人を派遣した 際、日本の税務当局が当該派遣の 対価を事業所得と認識する一方で、 現地当局は「ノウハウや技術情報と いった知的財産が現地子会社に移 転した」と考え、ロイヤルティに準ずる ものと認識し、源泉徴収が追加的に なされた。 10 具体的事例-その他(課税事案) 租税条約に反した課税(ベトナム) 日越租税条約においては、「PEなければ 課税なし」と明記がなされている。 しかし、外国企業がベトナム企業にサービ スを提供しその対価を受領する場合に は、ベトナム国内法の規定により、ベトナ ムにPEを有するか否かを問わず外国契 約者税が課される。 国内制度上、免税申請手続き自体は存在 するが、 実質的に機能していない。 会社清算・撤退の困難(中国) 中国に設立した企業を清算し撤退することは制度上認められているが、実際には当局の 許可が下りない、あるいは税務当局の対応に長い年月を要することから、清算して撤退 することが実務上困難。 清算時には移転価格調査が入ることが多く、また資産の売却損も認められない場合があ る。 11 具体的事例-その他(執行の問題) 税の還付手続きの問題 複雑な税制、頻繁な改正による問題 【インドネシア】 法人所得税については、予納制度が採られ ており、過大納税になった場合には還付請 求を行うが、還付請求を行うと税務調査が必 ず行われると言われる。 また、還付に非常に時間がかかる(期限であ る1年を超えても還付されない等)。 【中国】 通達等が年間数百本発出され、中には、非 公開の通達を根拠に課税することもあると 言われる。また、新しく発出された通達等が、 公布日を遡って適用されることがある。 租税条約適用手続きの問題 救済措置の機能不全による問題 【フィリピン】 配当源泉税率について租税条約の適用を受 ける場合には、配当支払日までに、複数の 必要書類の準備、申請、ルーリング取得等 を行わなければならず、実務上非常に厳し いスケジュールとなっている。また、事後申 請が認められない。 ◆行政訴訟の機能不全 【インド、インドネシア】 異議申立を行ったとしても十分に審議されな いまま却下されることが多い。 ※先進国を含む多くの国で租税条約の適用申請に 係る事務コスト等の問題あり ◆相互協議の機能不全 【インドネシア】 相互協議については過去にあまり実績がな く、担当者が育っていない。 【中国】 人員不足等のため、必ずしも相互協議が機 動的に機能していない。また、協議の際の見 解の相違等により迅速な合意が難しい。 12 【参考】移転価格税制とは ○海外の関連企業(例えば親子会社間)との取引を通じた所得の低税率国への海外移転を 防止するため、当該取引の価格が通常の第三者との取引による取引価格(※) と乖離して いる場合に課税をする制度。 (※) 独立企業間価格:ALP, Arm’s Length Price 第三者との取引と比較して、適正な場合 (税額) 12 グループ 全体の税額 = 16 4 10 仕入 80 日本法人 親会社 利益:30 税額:30×40%= 販売 110 12 仕入 販売 A国 子会社 110 利益:40 税額:40×10%= 150 5 4 日本 A国 親会社 子会社 利益を寄せることで、 全体で税額が6減少 低税率国に利益を寄せた場合 (税額) 仕入 80 10 日本法人 親会社 利益:10 税額:10×40%= 販売 90 4 仕入 販売 A国 子会社 90 利益:60 税額:60×10%= 150 6 5 4 6 日本 A国 親会社 子会社 ※法人税率は、日本:40%、A国:10%と仮定 グループ 全体の税額 = 10 13 【参考】PE ( 恒久的施設、Permanent Establishment )とは ○事業を行う一定の場所であって、企業がその事業の全部又は一部を行っている場所のこと。 ○租税条約上、海外で事業を行っている場合に現地政府より事業所得に課税されるのは、 原則としてPEが存在する場合のみと規定されている。また、その場合の課税対象範囲は PEの事業活動から得た所得のみとなる。 PEの例 ① 「支店」、「工場」、「建設工事現場」など ② 一定の役務提供(「出張者」、「出向者」など)【サービスPE】 ③ 源泉地国以外の居住地国企業の名において反復して契約を締結するような 代理人を使って行う事業【代理人PE】 等 海外への進出形態 日本 親会社 海外 ①子会社 別企業として現地で課税 ②支店等 PEとして現地で課税 ③駐在員 事務所等 原則PEにならず、 事業所得の現地での課税はない 14