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京都市平成の京町家認定基準の解説
平成27年度版
京都市都市計画局住宅室住宅政策課
目次
第1章 はじめに
「平成の京町家」の背景と目的
「平成の京町家」とは
京都市平成の京町家認定基準の構成
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
2
3
4
Ⅰ 「平成の京町家」が目指す住まい像
・・・・・・・
5
Ⅱ 空間構成に関する基準及び事項
認定基準
1 空間構成の提案を求める基準
2 空間構成の仕様を定める基準
推奨事項
・・・・・・・
7
・・・・・・・
8
・・・・・・・ 19
・・・・・・・ 29
Ⅲ 環境配慮に関する基準及び事項
認定基準
推奨事項
・・・・・・・ 30
・・・・・・・ 33
Ⅳ 木の文化に関する基準及び事項
認定基準
推奨事項
・・・・・・・ 40
・・・・・・・ 42
Ⅴ 形態意匠に関する基準及び事項
認定基準
推奨事項
・・・・・・・ 44
・・・・・・・ 44
Ⅵ 維持保全に関する基準及び事項
認定基準
推奨事項
・・・・・・・ 45
・・・・・・・ 48
Ⅶ 近隣配慮に関する事項
推奨事項
・・・・・・・ 49
第2章 認定基準及び同解説
第1章 はじめに
第
1
章
は
じ
め
に
■「平成の京町家」の背景と目的
地球温暖化問題への対応は世界的な課題であり,我が国においても二酸化炭素(CO2)排出量削減に向けた
様々な取組が実施されています。しかし,京都市を含め我が国の家庭部門におけるCO2排出量は京都議定書の
基準年に比べ増加しており,とりわけ影響の大きい住宅分野におけるCO2排出量削減は大きな課題となっていま
す。この課題への国策的な取組として,住宅の省エネルギー基準に基づいた,いわゆる「省エネ住宅」の建設が
推進されていますが,その多くは家全体の高気密・高断熱化,高効率設備や太陽光発電システムの設置といっ
た先端技術の導入に主眼が置かれています。しかし,建築とは本来,地域の気候や風土といった特性を考慮し
たうえで,自然の風や太陽の恵みを上手く利用できるよう設計上の工夫を施し,これを補う形で先端技術を導入す
べきものです。その原点に立ち返ることが,環境配慮との共生や,歴史に培われた地域色あふれる豊かな住文
化の継承の実現に向けた第一歩となります。
こうした中,京都市は平成21年1月に国の「環境モデル都市」に選定され,そのシンボルプロジェクトのひとつとして
「木の文化を大切にするまち・京都」をキーワードに地球温暖化対策に取り組んできました。これは,建築物だけで
なく都市機能,暮らし方,森林涵養(かんよう)など幅広い視点から三方を森に囲まれた京都が長い歴史の中で
培ってきた,「木の文化」を背景とする「低炭素景観」の創造を実現しようとする取組です。その一環として,いわゆ
る「省エネ住宅」から一歩踏み出し,京都の気候・風土・文化を背景とする環境配慮住宅の具体像として,「平
成の京町家」の普及に取り組んでいます。
この度,京都市は,更なる普及を目的に「平成の京町家」の認定基準を改定しました。本書は,新しくなった「平
成の京町家」の認定基準を解説し,京都で住宅供給に携わる方々が「平成の京町家」を計画する際の指針とな
るものです。「平成の京町家」の認定制度が京都の住宅像を考える契機となり,供給された「平成の京町家」が
連なって京都のまちを保全・再生・創造していくことを期待しています。
2
第
1
章
は
じ
め
に
■「平成の京町家」とは
伝統的な京町家の持つ,建物のつくりや空間構成などのハードの知恵と,環境共生の考え方や地域とつな
がった暮らし方などのソフトの知恵を継承しながら,断熱性・気密性の確保や高効率設備の利用,長寿命化の
ための仕組みの活用などの現代の技術や知恵を取り入れた,京都型の環境配慮型住宅が「平成の京町家」で
す。
伝統的な京町家の知恵
①技術やデザイン
建物のつくり
長寿命の躯体,更新・長期耐用へ
の配慮,「地産地消」の木材使用等
安全安心・快適性
防火・延焼対策,日照・採光の確保
等
外観デザイン
統一感,通りの賑わい・多様性,
ヒューマンスケール,様々なしつらい
を使った演出等
コミュニティ
プライバシーに配慮した隣戸や通りと
の関係,視線の調整,おもてなし空
間等
室内環境,室内空間
緑や風,自然の取込み,通風・保温
などの環境調整機能等
②京都人の知恵
環境共生型の「もったいない」,「しまつ
の心」の考え方
ご近所さんとの暮らし
ライフステージに応じた順応性・可変性
の高い住まい …等
伝
統
と
技
術
の
融
合
,
ハ
イ
ブ
リ
ッ
ド
化
に
よ
る
新
た
な
町
家
の
創
造
新しい技術や知恵
①技術や性能,デザイン
断熱性・気密性の確保
維持管理・更新への配慮
高齢者等への配慮
(ユニバーサルデザイン)
地域特性に応じたデザイン …等
②エネルギー
自然エネルギー等の利用
自然エネルギーと補完エネルギーの
合理的な組合せ
照明や空調の制御 …等
③住宅の長寿命化を支えるソフト
住宅の維持管理の仕組み
多世代にわたり住み継ぐ仕組み
リフォーム,中古流通の仕組み …等
「平成の京町家」
3
■京都市平成の京町家認定基準の構成
第
1
章
京都市平成の京町家認定基準は,「平成の京町家」が目指す住まい像と,これに基づき設定された認定基準
及び推奨事項で構成されます。
「平成の京町家」が目指す住まい像
京都を取り囲む自然風土の中で歴史的に受け継がれてきた都市居住の文化を,現代的に再評価し,継
承・発展させるため設定された「平成の京町家」のテーマ及び「平成の京町家」が目指す住まい像です。計
画の際は,「平成の京町家」が目指す住まい像を踏まえて計画する必要があります。
認定基準
「平成の京町家」が備えているべき事項です。 「平成の京町家」の認定を受ける場合は,認定基準にす
べて適合する必要があります。
推奨事項
「平成の京町家」の設計の際に考慮すべき事項として定めることで,より高度な工夫や提案を期待するもの
です。
京都市平成の京町家認定基準
「平成の京町家」が目指す住まい像
「平成の京町家」 の
テーマ
「平成の京町家」が
目指す住まい像
認定基準
推奨事項
空間構成
空間構成
環境配慮
環境配慮
木の文化
木の文化
形態意匠
形態意匠
維持保全
維持保全
近隣配慮
4
は
じ
め
に
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
第2章 認定基準及び同解説
Ⅰ 「平成の京町家」が目指す住まい像
「平成の京町家」は,次表の左欄に掲げる「平成の京町家」のテーマに応じ,それぞれ同表右欄に掲げる住
まい像の実現を目指すものとする。
Ⅰ
「平成の京町家」のテーマ
「
平
成
の
京
町
家
」
が
目
指
す
住
ま
い
像
「平成の京町家」が目指す住まい像
自然とのつながりを実感する住まい
家族とのつながりを生み出す住まい
「住みごたえ」
生活文化の継承と発展
人にやさしい住まい
人の美意識を育む住まい
木の文化を継承する住まい
長持ちさせるシステムを持つ住まい
「住み継ぐ」
循環型木造建築システムの再構築
環境に優しい住まい
表にして
ください
町並み景観に配慮した住まい
住み継ぐ住まい
地域とのつながりを実感する住まい
「まちに住む」
「いえ」と「まち」との関係性再構築
防災・防犯に配慮した住まい
隣接地の環境に配慮した住まい
【解説】
京町家の知恵と現代的な最新技術を融合した「平成の京町家」においては,京町家の現代的な価
値を継承していくことが重要です。京都を取り囲む自然風土の中で歴史的に受け継がれてきた都市
居住の文化,という京町家の価値を現代的に再評価し,「平成の京町家」が目指す住まい像を,3
つのテーマごとに整理したものが,本規定です。認定基準及び推奨事項は,本規定に基づいて設定
しているため,計画の際には,これを踏まえて計画することが必要です。
5
第
2
章
「平成の京町家」が目指す住まい像
「平成の京町家」のテーマ
「住みごたえ」
生活文化の継承と発展
住まい手が一方的に住まいから得る価値を
「住みごこち」と呼ぶとすると,住まい手と住ま
いが互いに働きかけて得る居住価値を「住み
ごたえ」と呼ぶことができる。京町家は住まい
手が住まいにかかわって継承されていた。「平
成の京町家」は,「住みごたえ」を育む家を目
指す。
「住み継ぐ」
循環型木造建築システムの再構築
「平成の京町家」の建設・維持管理・改修・
建替えにあたっては,林業と建設業,不動産
業を結びつけ,木の生長,山の維持管理・材
料供給と連動した仕組みを生み出すとともに,
建材のリユースやリサイクル,住替えや不動
産の流通などを促進する仕組みを整備し,循
環型の建築システムの再構築を目指す。
「まちに住む」
「いえ」と「まち」との関係性再構築
京町家は「いえ」と「まち」の関係性の秩序を
多面的に構築することによって,高密居住と
変化への対応を実現してきた優れた都市建
築システムであった。「平成の京町家」は,既
存の京町家と共存できる建築物であるととも
に,地域のまちづくり活動と連携しながら,新
たな京町家として「いえ」と「まち」の関係性の
秩序を再構築し,地域ごとの景観を創りだす
拠り所となることを目指す。
「平成の京町家」が目指す住まい像
○自然とのつながりを実感する住まい
庭と密接につながり,自然素材により作られた住まいによって,五感
で光や風,自然を感じ,心地良さや安らぎが得られる暮らしの場
○家族とのつながりを生み出す住まい
家族の気配を感じながら住むことができ,家族が協力して四季の模
様替えや,しつらい,掃除や手入れなどを行う暮らしの場
○人にやさしい住まい
身体状況によって居住室の入替え等を行い,住宅内の移動が容
易で,かつ安全な暮らしの場
○人の美意識を育む住まい
住まいへの美意識を持ち,清掃やしつらい等の接遇を重んじ,行
祭事へ参加する暮らしの場
○木の文化を継承する住まい
木組みや柱・梁の表し,格子や木割りの美しい意匠など,地域産
木材の住宅の良さが感じられ,伝える喜びが得られる暮らしの場
○長持ちさせるシステムを持つ住まい
日頃から住まいの維持・点検に気を配り,大工・工務店等の定期
点検等と併せて,長持ちする家をさらに美しく長期に使い続けられる
暮らしの場
○環境に優しい住まい
無駄なく簡素に生活し,通風や採光などの自然エネルギーと電力
やガスなどの補助エネルギーを,必要に応じて賢く使い分ける暮らし
の場
○住み継ぐ住まい
ライフサイクルの変化に合わせて,住まいをフレキシブルに住みこなし,
維持管理を確実に行って家歴書を整備し,次世代へ引き継げる暮
らしの場
○町並み景観に配慮した住まい
近隣との調和に配慮した節度ある外観意匠の住まいにより通り空
間を演出し,美しい町並み景観を構成することに誇りを持てる暮らし
の場
○地域とのつながりを実感する住まい
町内の行祭事に参加し,近所づきあいをすることで,地域コミュニ
ティの一員であることを実感できる暮らしの場
○防災・防犯に配慮した住まい
防災・防犯意識を高く持ち,近所との連携・協調により防犯性を高
め,かつ災害時に備える暮らしの場
○隣接地の環境に配慮した住まい
騒音やプライバシー,日照や通風など,隣接宅地の居住環境にも
気遣い,近所とともに暮らす意識をもった暮らしの場
6
認
定
基
準
及
び
同
解
説
Ⅰ
「
平
成
の
京
町
家
」
が
目
指
す
住
ま
い
像
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
Ⅱ 空間構成に関する基準及び事項
■認定基準
-「平成の京町家」の空間構成の考え方-
昨今の住宅においては,空調機器による冷暖房効率を高める観点から,外部環境の影響をできるだけ小さくす
る考え方が主流となっています。いわゆる省エネ住宅は,断熱性能,気密性能の向上による省エネルギー化がは
Ⅱ
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
かられ,屋内と屋外が明確に遮断された閉鎖型の住宅といえます。また,冷暖房が必要な期間以外であっても,
防犯やプライバシーの確保の観点から,屋外に対し閉鎖的に使用されがちです。反面,こうした閉鎖型の住宅に
おける生活は,自然や地域といった外部環境との関わりが希薄となり,季節感やコミュニティといった生活の豊か
さが損なわれる恐れがあります。
一方,日本の伝統家屋は,壁の大部分が柱と建具で構成され,夏や中間期(春・秋)には屋外に対し大きく開
放することが可能な,開放型の住宅といえます。開放型の住宅は,屋外の自然環境を暮らしに取り込むとともに,
通風により蒸し暑い夏を快適に過ごす工夫が施された「夏を旨とする家」です。反面,こうした開放性を有する伝統
家屋は,冬の寒さに弱いという一面を持っていました。
京都のまちを特徴付けている京町家も,開放型の住宅であり,庭や通りに面した部分に設けられた縁側や通り
庭といった半屋外的・半公共的な中間領域を備え,外部環境と内部環境を,物理的にも社会的にも緩やかにつ
ないだり区切ったりする役割を果たしてきました。これは,都市居住の歴史や文化の中で生まれた,外部環境と共
生する知恵であり,内と外,人と自然,家とまちを豊かにつなぎ,すぐれた環境性能を発揮してきました。
「平成の京町家」は,開放型の住宅、特に京町家の良さ(=「京町家の知恵」)と閉鎖型の住宅の良さ(=「現
代の環境技術」)を融合し,それぞれの良さを取り入れることで,京都の気候,風土,文化を背景とした環境配慮
認
定
基
準
住宅を目指すものです。そのため,京町家の知恵を継承し,自然や地域に対して開かれた居住環境を実現する
ため,次の3点に配慮した空間構成とすることが重要です。
① 内部と外部をゆるやかにつなぐ空間(=環境調整空間と呼ぶ。)の設置
② 開放時に自然風を有効に活用するための通風の確保
③ 自然との共生や室内環境向上のための庭の設置
-空間構成に関する基準の構成-
空間構成に関する認定基準は,次の2つの基準で成り立っています。下記の2つの基準のうちいずれかを満足
する必要があります。
1 空間構成の提案を求める基準 (解説 P8~P18)
上記①~③について,自然や地域に対して開かれた居住環境を実現するため,本基準に沿った提案を
求めます。
2 空間構成の仕様を定める基準 (解説 P19~P28)
上記①~③について,本基準に定める仕様に適合する空間構成としてください。
7
第
2
章
1 空間構成の提案を求める基準
1-1 環境調整空間の設置
1 次の(1)から(3)のすべてを満たすこと。
(1) 次のアの機能を有する環境調整空間及びイの機能を有する環境調整空間をそれぞれ設置すること。た
だし,一の環境調整空間がア及びイの機能を兼ねることができる。
認
定
基
準
及
び
同
解
説
ア 接遇空間や家族,近隣住民とのコミュニケーション空間としての広い玄関スペースや通り庭,通りに面し
た深い軒ひさしの下部空間の確保などといった「コミュニティ促進機能」
Ⅱ
イ 内部環境と外部環境との温熱環境上の緩衝帯の形成,夏期における室内への日射の侵入防止,冷暖
房範囲の調整などといった「室内環境調整機能」
-環境調整空間の考え方-
環境調整空間は,庭や通りに面した部分に,外部環境と内部環境を,物理的にも社会的にも緩やかにつなぐこ
とを目的に設置される半屋外的・半公共的な空間のことを指します。
例えば,伝統的な京町家では,玄関土間と併せて,通り庭やばったり床几が置かれた通りに面する深い軒ひさし
の下部空間が半公共的な空間として利用され,地域コミュニティの形成を促進しています。
また,庭に面する縁側は,居間と庭との一体感を形成し,生活の質の向上に寄与するだけでなく,建具の開閉
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
により,温熱環境上の緩衝帯として,居住空間の温熱環境の向上に寄与します。
環境調整空間はこうした伝統的な京町家の空間的な工夫を継承・発展させたものであり,コミュニティ促進機
能や室内環境調整機能を備え,内と外,人と自然,家とまちを豊かにつなぎ,関係づける空間として提案される
必要があります。
認
定
基
準
ア コミュニティ促進機能
通り側の環境調整空間は,私的な内部の居住空間と公共的な外部の通り空間の間に設けられた半公
共的空間としての機能を持ち,近隣住民とのコミュニケーションの場や来客を接遇する場としての役割を果
たします。
庭側の環境調整空間は建具を開放することにより,庭の自然環境を居住空間に取り込み,季節感を感じ
ることによる生活の質の向上を図ります。このため,庭に面する建具は大きく開放できる建具であることが望ま
れます。この場合の環境調整空間は,半屋外的な空間として家族のコミュニケーションの場ともなります。
また,ダブルスキン構造(P.9)の環境調整空間は,建具を開閉することにより,生活シーンや季節に応じた
暮らしを可能とし,地域や家族とのコミュニケーションを促進します。例えば,建具を開放した時に大空間とし
て使用可能な平面計画とすることにより,冠婚葬祭やパーティ等の大人数による使用も可能となり,コミュニ
ケーションの場として活用できます。
8
第
2
章
半公共的空間
認
定
基
準
及
び
同
解
説
「ダブルスキン構造」とは
屋外と屋内の間が,二枚の建具
や壁で仕切られた構造であることを
指します。環境調整空間を構成す
るダブルスキン構造は,屋外側の
建具・壁と屋内側の建具・壁の間
に,人が活動できる程度の奥行き
を設けることが必要です。
Ⅱ
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
通り側の半公共的空間
広い玄関土間は,公共的空間と私的空間を緩
やかにつなぐ半公共的な接遇空間であり,地域
とのコミュニケーションの場として機能します。
冬の暮らし
寒い冬には,建具を閉じ,小さい空間に家族が集まることにより,家族の
だんらんが生まれます。また,暖房が必要となる空間を小さくすることができ,
暖房に必要なエネルギーを削減できます。
認
定
基
準
(
提
案
)
夏の暮らし
暑い夏には,縁側や深い軒下空間の日陰,庭の木陰が子供にとっての
かっこうの遊び場として利用できます。また,建具の開閉により,冷房が必
要となる空間を必要最小限とすることができ,冷房に必要なエネルギーを
削減できます。
春・秋の暮らし
過ごしやすい春や秋には,建具をすべて開放して,庭の自然と触れ合っ
たり,地域の行祭事に参加したり,といった暮らしが可能です。また,家の中
を通る風によって,快適な室内環境を実現できます。
建具の開閉による季節に応じた暮らし
9
第
2
章
イ 室内環境調整機能
環境調整空間は,屋外と屋内の間の温熱環境上の仕切りとなる「断熱性能」と,夏期の室内への日射
の侵入を防ぐ「日射遮蔽性能」を有しています。
(断熱性能)
外壁など住宅の屋外と屋内の境界部分を外皮といい,外壁
認
定
基
準
及
び
同
解
説
や屋根,最下階の床等がこれに該当します。外皮の断熱性能
を確保することで,外皮を通過する熱の量を削減し,冷暖房エ
ネルギーを削減できます。冬期には,室内の表面温度の上昇に
Ⅱ
より体感温度が上昇し,室内の快適性が向上します。
「平成の京町家」における,ダブルスキン構造の環境調整空
間は,環境調整空間全体が断熱性を持った外皮の役割を果た
暖
寒
します。内部居住空間側及び外部空間側の両方の建具を閉じ
暖
緩
衝
帯
寒
ることにより,居住空間と外部空間の間に設けられた温熱環境
上の緩衝帯となり,室内の暑さ,寒さを和らげます。
環境調整空間がダブルスキン構造でない場合は,温熱環境
上の緩衝帯としての調整機能に代わるものとして,外壁や開口
一般的な省エネ住宅
の外皮
ダブルスキン構造
の外皮
部に十分な断熱性能を確保し,暖房エネルギーの削減を図る
必要があります。
認
定
基
準
(
提
案
)
(日射遮蔽性能)
居住空間が軒・ひさし等の先端より奥に入ることにより,太陽
の高度が高い夏期においては,居住空間への日射の侵入を
防ぎます。夏期や中間期に建物内に侵入する日射を遮ること
により,冷房エネルギーを削減できます。特に,断熱性の高い
住宅では,室内に侵入した日射熱が逃げにくいため,日射遮
蔽の計画が重要です。日射遮蔽の計画にあたっては,軒・ひさ
し等以外にも次のようなポイントに配慮が必要です。
南面の夏期の日射侵入防止
10
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
日射遮蔽の計画のポイント
• 日射遮蔽には開口部は小さい方が有利ですが,冬期の日射熱取得や通風、採光などにも配慮する必要があります。
• 開口部への日射を遮るには,軒・ひさし等以外にも,日射侵入率の小さいガラス,レースカーテン・ブラインド・紙障子等の
日射遮蔽部材を組み合わせると効果的です。
• すだれ,ブラインド等の長さや角度を調整できる日射遮蔽部材は,太陽
高度が低い東西面の開口部にも有効です。
• 外壁や屋根は,断熱性の向上,通気層の確保,明るい色の建材の使
用によって,日射の侵入を抑制できます。
Ⅱ
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
すだれによる日射侵入防止(東西面)
• 地表面からの照り返しの防止,樹木の木陰による日射遮蔽も有効です。
芝生による照り返し防止
注意点
認
定
基
準
(
提
案
)
開放型の住宅である京町家の良さを取り入れた「平成の京町家」は,大きな開口部を持つ住宅となります。大き
な開口部は,夏期や中間期(春・秋)における通風の確保などの面では有利ですが,日射遮蔽性能の面では不
利となります。これを補うための手法のひとつとして,日射侵入率の小さいガラスの採用があります。
日射侵入率の小さいガラスとして近年普及しているものは,複層ガラスの片方のガラスに特殊金属膜をコーティン
グした,低放射(Low-E)複層ガラスです。中でも,室外側のガラスにコーティングしたものは,遮熱低放射複層ガラ
スと呼ばれ,より高い日射遮蔽性能が望めます。また,低放射(Low-E)複層ガラスは,通常の複層ガラスに比べ,
日射遮蔽性能だけでなく断熱性能にも優れ,室内の熱を逃がしにくくします。ただし,低放射(Low-E)複層ガラスは
複層ガラスより高価であるため,日射が入らない北面は複層ガラスを採用するなど,方位によって使い分けることで,
コストダウンをすることもできます。
11
第
2
章
-環境調整空間の代表的な手法-
環境調整空間の代表的な手法とその特徴等を紹介します。
○縁側,広縁,サンルーム
内部の居住空間と外部の庭の間に設けられる縁側,広縁,サンルームは,居住空間側の建具と庭側の建具を開閉
することにより,以下のような環境調整機能を発揮します。
認
定
基
準
及
び
同
解
説
(室内温熱環境調整)
・冬期に,両側の建具を閉じることにより,温熱環境上の緩衝帯を形成
Ⅱ
・夏期や冬期に,両側の建具を閉じることにより,冷暖房空間を縮小
・冬期の昼間に,庭側の開口部から取り込む日射熱を利用
・縁側等の奥行きの分、居住空間が外壁より奥に入ることにより、夏期の日射侵入を防止
(コミュニティ促進)
・両側の建具の開放により,庭の自然環境を居住空間に取り込み,生活の質の向上、家族のコミュニケーションを促進
縁 側
サンルーム
○濡れ縁やウッドデッキ+軒ひさし
内部の居住空間の外側の軒やひさしの下に設けられる濡れ縁やウッドデッキは、建具を開閉することにより、さまざまな
環境調整機能を発揮します。
(室内温熱環境調整)
・太陽高度を考慮して設けられた軒ひさしによって,夏期には,日射侵入を防止し,冬期には,庭側の開口部から取り
込む日射熱を利用
(コミュニティ促進)
・建具の開放により,濡れ縁やウッドデッキが居住空間を延長した空間となり,居住空間と庭の一体感を形成し,生活
の質の向上,家族のコミュニケーションを促進
濡れ縁
ウッドデッキ
12
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
認
定
基
準
(
提
案
)
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
○玄関土間,通り庭(+通り側の深い軒下空間)
内部の居住空間と外部の通りの間に設けられる玄関土間,通り庭は,以下のような環境調整機能を発揮
します。
(室内温熱環境調整)
・冬期に居住空間側と通り側の両方の建具を閉じることにより,温熱環境上の緩衝帯を形成。
(コミュニティ促進)
・十分な広さを確保することで,靴を脱ぐことなくその場での接遇が可能となったり,近隣住民とのコミュニケーション及び
近隣住民を交えた家族同士のコミュニケーションの場として,コミュニティの形成を促進
Ⅱ
・玄関土間や通り庭と一体的な空間として設けられる,通りに面した深い軒ひさしの下部空間は,休憩の場,祭りの場な
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
ど近隣住民のコミュニケーションの場として,多様な使い方が可能であり,通りの公的な空間と屋内の私的な空間を
認
定
基
準
(
提
案
)
つなぐ半公共的な空間として機能。バッタリ床几や幔幕などの空間装置を設けることにより,軒ひさしの下部空間の多
様性は広がり,近隣とのコミュニティ形成をさらに促進
広い玄関土間
通り庭
13
通り側の深い軒下空間
第
2
章
1-2 通風の確保
(2) 引き戸,ふすま,障子その他随時開放することができるもので仕切られた続き間など,住宅内の通風経
路が確保された間取りとすること。
-通風の考え方-
認
定
基
準
及
び
同
解
説
初夏や晩夏,あるいは夏期の夜間において,通風により外気を効果的に室内に取り入れることで,冷房なしで
快適な室内環境を実現し,冷房エネルギー削減効果,快適性向上効果が得られます。
通風の計画にあたっては,次のようなポイントに配慮し,通風経路を明確化することが重要です。室内を通過する
ほぼ直線的な主たる通風経路を設けることにより,効果的に風を室内に取り込むことができます。
• 敷地の夏期及び中間期の卓越風向(最も多い風向)の確認
• 敷地周辺の住宅密集度や周辺建物の高さの確認
• 通風を取り込むための建物の形状や平面計画の工夫
• 通風を居住域に取り込むための建具等の配置,形状の工夫
• 取り入れる風の温度を下げるための外構計画
• 防犯や騒音への配慮
• 居住者による積極的な建具等の開閉を促す仕組み
Ⅱ
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
例えば,伝統的な京町家においては,通りや庭に面する大きな開口と,続き間とふすまで構成される開放的な
間取りにより,狭小敷地においても,通りから庭までの風の通り道が確保されているだけでなく,通りと庭との温度差
を利用して風の流れを生み出し,室内に積極的に風を取り込む工夫がされています。これによって,一方向に風が
吹き抜ける一般的な通風ではなく,風がしばしば向きを変えて行ったり来たりする空気の揺らぎが生じ,涼感が得ら
れるといわれています。「平成の京町家」においても,このように多面的な検討にもとづいた通風の確保が必要で
す。住宅密集地においては,京町家のような空気の揺らぎを前提とした通風計画も必要となります。
通風経路を確保するためには,引き戸,ふすま,障子等の随時開放できる建具とすることが有効ですが,これに
より間取りの可変性の向上を図ることもできます。例えば,ふすまで仕切られた続き間の和室は,ふすまを取り外す
と大きな空間となり,行祭事にも対応が可能となります。このように可変性の高い間取りは,季節や生活シーンに
応じた空間の使い分けにより,生活の質の向上やコミュニケーションの促進をもたらします。また,家族構成やライ
フステージに応じた間取りの変更を容易とし,長く使い続けることができる住まいとなります。
物入
押入
床の間
UP
縁側
風が通る道
食堂
和室
居間
廊下
玄関
便所
14
洗面
脱衣室
浴室
認
定
基
準
(
提
案
)
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
-通風確保の代表的な手法-
通風を確保するための代表的な手法とその特徴等を紹介します。
○風の通り道に配慮した開口部配置
効果的に通風を確保するためには,風向や風圧に配慮し,方位の異なる二面以上の外壁に開放可能な開口部を設
ける必要があります。風向の検討にあたっては,建設地の周辺の密集度や,建設地の夏期及び中間期の卓越風向
(最も多い風向)に配慮する必要があります。
Ⅱ
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
密集度の低い敷地の場合
卓越風向を考慮し,風圧差の大きい2面に,
通風のための開口部を設けます。
認
定
基
準
(
提
案
)
密集度の高い敷地の場合
卓越風向に関わらず,通り側とそれに正対する面に
通風のための開口部を設けます。
○出窓,袖壁
出窓や袖壁などは,壁面から突出して設けられ壁に沿って流れる風を受けとめることができます。卓越風向を考慮し開
口部を配置すれば,出窓や袖壁で受けとめた風を室内に取り込むことができます。
出窓
出窓の風上側に開口部を設けることで,有効に風を
取り込むことができます。出窓の両側面に開口を設け
れば、風向に応じて風上側を開放することができます。
袖壁
袖壁を開口部の風下側に設けることで,有効に風を
取り込むことができます。
15
第
2
章
○吹抜け
吹抜けの上部と下部に開口を設けると,屋内と屋外の温度差を利用し,外気を室内に取り入れることができ,上下の
窓の高低差が大きいほど取り入れる外気の量は多くなります。夏期の夜間や中間期の,室温より外気温が低い時間帯
に開口部を開放すると,外気取り入れによる冷房エネルギーの削減に効果的です。
認
定
基
準
及
び
同
解
説
Ⅱ
吹抜けによる外気の取り入れ
(コールドドラフトに注意)
コールドドラフトとは,冬期に,暖かい室内の空気が冷たい窓ガラスや外壁に触れることにより冷やされ,壁面に沿って
下降する現象です。コールドドラフトは,室内と屋外の温度差が大きいほど,また,窓ガラス等の冷却される面が床から
高いほど下降速度が増し,不快感も大きくなります。
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
吹抜けは天井が高く,不快なコールドドラフトが発生しやすくなります。下降した気流が下階の居住空間に流入するの
を防ぐため,冬期には吹抜けと居住空間を建具で仕切ることができるような措置や,吹抜けの配置の工夫などが必要で
す。
階段室は吹抜けと同様の竪穴空間であり,空気の通り道となります。吹抜けと階段室の2つの竪穴空間が近接して設
けられる場合は,階段室が上昇気流の通り道となり,吹抜けが下降気流の通り道となる対流が起こり,コールドドラフトが
発生しやすくなります。対流の発生を抑えるため,竪穴空間の上部もしくは下部を建具で仕切ることができるような措置が
必要です。
建具
建具
建具
建具
コールドドラフト対策の例 1
コールドドラフト対策の例 2
床面に下降したコールドドラフトが居室に流れ込まないよ
う,吹抜けと居室の間を建具等で仕切ります。
あるいは,吹抜け上部と上階の廊下やホールを建具等
で仕切ることにより空気の流れをおさえ,コールドドラフトの発
生を抑制します。
吹抜けと階段室の2つの竪穴空間が近接して設けられる
場合は,竪穴空間の上部もしくは下部を建具で仕切り,対
流の発生を抑えます。
16
認
定
基
準
(
提
案
)
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
○引き戸(ふすま,障子を含む),欄間
風の入口となる外壁開口部から,風の出口となる外壁開口部まで,住宅
内部の通風経路を確保する必要があります。引き戸や欄間などは,通行の
邪魔にならずに開放状態を保持できるため,通風経路の確保に有効です。
また,引き戸は開放面積を任意に変更できるため,風量や風速の調整が容
易であり,通風の効果を得るために有効です。欄間を設ける場合は,もう一
方の開口部を床面から低い位置に配し,風が居住域を通過するような配慮
が必要です。
ふすま・障子を開放し風の通り道を確保
Ⅱ
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
認
定
基
準
(
提
案
)
17
第
2
章
1-3 自然との共生や室内環境向上のための庭の設置
(3) 自然との共生や室内環境の向上を実現するための庭(中庭を含む。以下同じ。)を設けること。ただし,一
以上の庭は,(1)の環境調整空間と有機的につながっていることを原則とする。
-庭の役割-
認
定
基
準
及
び
同
解
説
庭に対しては,居住環境の質を向上させる役割が期待されます。ひとつは,暮らしの中で季節の移り変わりを実
感し,自然と触れ合うことにより生活の質を向上させる役割です。もうひとつは,樹木によって室内への日射の侵
入を遮ったり,植物や保水性の高い仕上げの蒸発冷却を利用して室内に入る風の温度を下げたりすることで,室
Ⅱ
内の温熱環境を改善する役割です。そこで,庭の設置に際しては,この2つの役割に配慮した多様な視点からの
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
提案が必要です。なお,庭がこれらの役割を果たすためには,環境調整空間と合わせて設置することや,庭から
室内への通風経路を確保することが必要です。
-自然との共生や室内環境向上のための庭の具体例-
自然との共生や室内環境向上のための庭の具体例とその特徴等を紹介します。
○落葉樹
落葉樹の植樹は,以下のような環境調整機能により,自然環境を取り込み居住環境の質を向上させます。
・夏期には居住空間への日射の侵入を防止し,冬期には日射を遮らないことにより,日射を調整
・夏期に葉からの蒸発冷却により,室内に入る風の温度を調整
・季節の移り変わりを実感することによる,生活の質の向上
夏
認
定
基
準
(
提
案
)
冬
落葉樹による日射の調整
紅葉で季節を感じる庭
○芝生等の地被植物
芝生等の地被植物による庭の仕上げは,以下のような環境調整機能により,自然を取り込み居住環境の質を向上さ
せます。
・夏期に,蒸発冷却効果により地表面の温度上昇を抑制し,室内に入る風の温度を調整
・芝生の上での行動を喚起し,家族のコミュニケーションを活性化
芝生上を通過する風
芝生の上で家族のコミュニケーション
18
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
2 空間構成の仕様を定める基準
2-1 環境調整空間の設置
2 次の(1)から(4)のすべてを満たす場合は,前項の規定を満たすものとみなす。
(1) 次のアを満たす環境調整空間及びイを満たす環境調整空間をそれぞれ設置すること。
ア コミュニティ促進機能を有する環境調整空間として,玄関に,床面積が3.2㎡以上の土間を設けること。
ただし,土間は,屋内部分に設けることを原則とする。
Ⅱ
イ 室内環境調整機能を有する環境調整空間として,一以上の居間に,別表(い)欄に掲げる区分に応じて,
(ろ)欄に掲げる仕様に適合する空間を設けること。この場合において,引き戸,ふすま,障子その他随時開
認
定
基
準
(
仕
様
)
放することができるもので仕切られた当該居間及びその隣室の二室は,一室の居間とみなすことができる。
【解説】
近隣とのコミュニケーション空間等のコミュニティ促進機能を有する環境調整空間として広い玄関土間を設ける
こと,及び内部環境と外部環境との温熱環境上の緩衝空間等の室内温熱環境調整機能を有する空間として
居間に環境調整空間を設けること,を定めています。
ア 広い玄関土間
近隣住民とのコミュニケーションを促進する環境調整空間として,3.2㎡以上の広い玄関土間を確保することを求めていま
す。この玄関土間は,内部の居住空間と外部の通りの間に設けられる半公共的な接遇空間となります。十分な広さを確保す
ることで,靴を脱ぐことなくその場での接遇が可能となり,近隣住民とのコミュニケーション及び近隣住民を交えた家族同士のコ
ミュニケーションの場として,コミュニティの形成を促進します。
また,車椅子の転回や,スロープ等の設置などに配慮した広さとすることで,将来の段差解消対策にも有効となります。
※土間空間は,原則として,屋内部分に設ける必要があります。屋外に土間空間を設ける計画を検討される際は,住宅政策
課までご相談下さい。
客間
玄関土間は,大人2人が横並びで
式台
立ち,居住者とのコミュニケーションで
居間
1800mm
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
きるスペースとして,3.2㎡(1.8m×1.8m
程度)以上の広さを確保することを定
玄関土間
玄関ホール
1800mm
19
めています。
イ 居間に設ける環境調整空間
「平成の京町家」においては,主たる居室である居間に環境調整空間を設ける必要があり,別表に,その仕様を示しています。
ここでは仕様のみを定めていますが,計画される際は,生活シーンや季節に応じた暮らしなどを考慮して計画することが望まれま
す。
○1階に居間を設ける場合
1階に居間を設ける場合は,環境調整空間は,庭に面して設けることが必要です。庭に面して設けることにより,庭の自然環
境を居住空間に取り込み,生活の質の向上、家族のコミュニケーションの促進を図ることができます。また,庭の植栽等による
日射遮蔽や蒸発冷却といった温熱環境の調整効果を得ることもできます。
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
(ダブルスキン構造の場合)
環境調整空間がダブルスキン構造(P.9)の場合の仕様です。
外部建具及び内部建具については,開放時に庭の自然環境を居間に取り込むことができるよう,居間が庭に面する
長さに対し一定以上の幅を確保すること,開放時に居間から庭への出入りが可能なよう,一定以上の高さを確保するこ
とが必要です。
計画をする際は,外部建具と内部建具を開閉することによる温熱環境上の緩衝帯としての機能や冷暖房エネルギー
削減機能(P.9参照),地域住民や家族のコミュニティ促進機能などを考慮する必要があります。
(シングルスキン構造の場合)
環境調整空間がダブルスキン構造(P.9)ではなく,居間と庭の間の建具が1枚であり,建具を開放した時に居間と
一体的に使用できる濡れ縁等を設ける場合の仕様です。
建具については,開放時に庭の自然環境を居間に取り込むことができるよう,居間が庭に面する長さに対し一定以上
の幅を確保すること,また,開放時に居間から庭への出入りが可能なよう,一定以上の高さを確保することが必要です。
Ⅱ
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
軒ひさしの長さについては,日射遮蔽を有効に行うため,一定以上の軒ひさしの長さを確保することが必要です。
また,濡れ縁等が,庭を楽しむ空間として,また,植栽による日射遮蔽や蒸発冷却といった温熱環境調整機能を有す
る空間として有効に機能するよう,濡れ縁等が面する庭の奥行きの規定を設けています。
計画をする際は,居間と濡れ縁等を設けるだけでなく,季節に応じた庭との関係性を考慮する必要があります。
○2階以上の階に居間を設ける場合
2階以上の階に居間を設ける場合の仕様です。 2階以上の階に居間を設ける場合の環境調整空間は,ダブルスキン構造
とする必要があります。外部建具と内部建具は,中間期(春・秋)の快適な屋外の環境を居間に取り込むことができるよう,居
間が屋外に面する長さに対し一定以上の幅を確保することが必要です。また,建具の高さは,可能な限り大きくすることが望ま
れますが,吹抜けに面する場合や屋外に足場が無い場合に床からの高さ1,100mm以上の腰壁等を設けることを考慮した基準
としています。
計画をする際は, ,できる限り自然環境を享受できる計画とし,環境調整空間と庭との関係や外部建具と内部建具を開閉
することによる温熱環境上の緩衝帯としての機能,空調に必要なエネルギー削減機能などを考慮する必要があります。
1階に居間を設ける場合
ダブルスキン構造の場合
建 具 の 幅
2階に居間を設ける場合
①居間が庭(屋外)に面する長さが5,400mm(約三間)以下の場合
1,600mm以上かつ居間が庭に面する長さ(W)-2,700mm以上
②居間が庭(屋外)に面する長さが5,400mm(約三間)を超える場合
居間が庭に面する長さ(W)の1/2以上
建具の高さ
建具の構造
シングルスキン構造の場合
1,800mm以上
1,100mm以上
建具の幅のおおむね1/2以上が開放可能な構造
軒ひさし(バ
ルコニー含
む。)の長さ
-
900mm以上
-
庭の奥行き
-
外壁の芯から1,800mm以上
-
20
認
定
基
準
(
仕
様
)
別表
(い)
認
定
基
準
及
び
同
解
説
(ろ)
内部建具幅:w2
縁側等
縁側等
庭
外部建具幅:w1
庭
縁側等
内部建具高さ:h2
居間
居間
外部建具高さ:h1
第
2
章
居間
庭
居間が庭に面する長さ:W
w1・w2:1600㎜以上かつW-2700以上(W≦5400の場合)
W×0.5以上(W>5400の場合)
h1・h2:1800㎜以上
Ⅱ
居間
居間
外部建具幅:w1
濡れ縁等
濡れ縁等
上部:軒ひさし
庭
外部建具高さ:h1
1
階
に
居
間
を
設
け
る
場
合
軒等の長さ:
L
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
庭
外壁からの庭
の奥行き:Lg
上部:軒ひさし
居間
濡れ縁等
庭
居間が庭に面する長さ:W
軒ひさしの
長さ:L
w1 :1600㎜以上かつW-2700以上(W≦5400の場合)
W×0.5以上(W>5400の場合)
h1 :1800㎜以上
L : 900mm以上
Lg :1800mm以上
認
定
基
準
(
仕
様
)
内部建具幅:w2
縁側等
吹抜け
縁側等
吹抜け
屋外
縁側等
吹抜け
内部建具
高さ:h2
居間
居間
外部建具高さ:h1
2
階
以
上
の
階
に
居
間
を
設
け
る
場
合
外部建具幅:w1
屋外
屋外
居間が屋外に面する長さ:W
w1・w2:1600㎜以上かつW-2700以上(W≦5400の場合)
W×0.5以上(W>5400の場合)
h1・h2:1100㎜以上
(注)表中の内部建具,外部建具については,その幅のおおむね1/2以上が開放可能な構造とすること。(引き戸等)
※「縁側等」とは,縁側,サンルームその他これに類するもので,ダブルスキン構造(P.9)であるものをいいます。
※「濡れ縁等」とは,濡れ縁,ウッドデッキその他これに類するものをいいます。
21
居間
第
2
章
(注意事項)
・居間が庭(屋外)に面する長さ(W)は,下図のように考える。
①居間等よりも環境調整空間が大きい場合
②居間等よりも環境調整空間が小さい場合
居間
居間
縁側等
縁側等
認
定
基
準
及
び
同
解
説
Ⅱ
庭
庭
W
W
③環境調整空間がL字型(出隅)の場合
④環境調整空間がL字型(入隅)の場合
W2
W2
居間
居間
庭
縁側等
W1
縁側等
縁側等
庭
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
庭
W=W1+W2
W=W1+W2
W1
22
認
定
基
準
(
仕
様
)
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
② 通風の確保
(2) 次のアからキのすべてを満たす通風措置を講じること。
ア すべての居室について,通風の主たる経路(居室,又は縁側,サンルームその他これに類するもの(以下
「縁側等」という。)の外壁とこれにおおむね正対する方位の外壁のそれぞれの開口部の間を直線的に通
過するものに限る。以下「幹線」という。)又はそこから分岐した経路(以下「支線」という。)が通り抜ける間取
りであること。
イ 外壁の開口部で幹線が通過するものの有効開放面積(同一の壁面上に複数の開口部が
Ⅱ
ある場合は,それぞれの面積を合算したもの)は,非居室の開口部にあっては0.6㎡以上,居室又は居室と
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
の間が引き戸,ふすま,障子その他随時開放することができるもので仕切られた縁側等の開口部にあって
は当該居室の床面積の1/16以上又は0.6㎡以上のいずれか大きい方であること。
ウ 外壁の開口部で支線が通過するものの有効開放面積(同一の壁面上に複数の開口部がある場合はそ
れぞれの面積を合算したもの)は0.6㎡以上であること。
エ 間仕切壁の開口部で幹線又は支線が通過するものの有効開放面積(同一の壁面上に複数の開口部が
ある場合はそれぞれの面積を合算したもの)は,1.4㎡以上であること。
オ 幹線が通過する開口部であって,居室又は縁側等の外壁若しくはこれにおおむね正対する方位の外壁
のいずれかの開口部の下端の高さは,床面から1,100mm以下であること。
カ 間仕切壁の開口部で幹線又は支線が通過するものの下端の高さは,床面から1,100mm以下であること。
認
定
基
準
(
仕
様
)
キ 幹線又は支線が通過する開口部の構造は,開放状態を保持できるものであること。
(3) 居室からその上階又は下階に通じる吹抜けとなっている部分,階段の部分その他これらに類する部分
(以下「竪穴空間」という。)については,コールドドラフト対策として,当該居室と竪穴空間,又は当該居室の
上階又は下階と竪穴空間との間を有効に区画すること。
【解説】
開放時に自然風を有効に活用できる間取りとするため,すべての居室を通過する通風経路を確保することを
定めています。また,吹抜け,階段等の竪穴空間を設ける場合は,竪穴空間と居室等の間に温熱環境上有効
に区画できる間仕切りを設け,コールドドラフト対策を行なうことを定めています。
23
第
2
章
(2) 通風経路
通風の主たる経路(幹線)と,そこから分岐した経路(支線)が,すべての居室を通過する間取りとする必要があ
ります。また,効果的な通風を得るため,幹線,支線が通過する開口部の面積,構造,床面からの高さを定めて
います。
ア 幹線・支線の設定
認
定
基
準
及
び
同
解
説
幹線は,おおむね正対する方位に設けられた外壁の開口部を結ぶ通風経路であり,住戸内を通過する
風の主たる経路となります。この外壁の開口部のいずれかは,居室又は縁側等に設けることとし,風がス
ムーズに通り抜けることができるよう,経路は直線的である必要があります。幹線は階ごとに設定し,1つの階に
複数の幹線を設定することも可能です。支線は,幹線から分岐した風が通過する経路です。幹線又は支線
が,すべての居室を通過する間取りとする必要があります。
物入
押入
床の間
UP
開口部
縁側
開口部
開口部
開口部
食堂
廊下
玄関
便所
1階平面図
DN
物入
開口部
ホール
開口部
開口部
バル
コニー
開口部
開口部
開口部
便所
洋室
物入
書斎
開口部
2階平面図
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
和室
居間
洋室
開口部
Ⅱ
幹線は直線的であること
幹線
支線
幹線・支線のイメージ
24
洗面
脱衣室
浴室
認
定
基
準
(
仕
様
)
第
2
章
イ 外壁の開口部(幹線が通過するもの)
居室又は居室との間が引き戸,ふすま,障子その他随時開放することができるもので仕切られた縁側等の
開口部は,有効開放面積を0.6㎡以上又は当該居室の床面積の1/16以上のいずれか大きい方とするこ
認
定
基
準
及
び
同
解
説
とが必要です。
また,非居室の開口部の場合,有効開放面積を0.6㎡以上とすることが必要です。
ウ 外壁の開口部(支線が通過するもの)
有効開放面積を0.6㎡以上とすることが必要です。
エ 間仕切壁の開口部(幹線又は支線が通過するもの)
有効開放面積を1.4㎡以上とすることが必要です。
Ⅱ
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
居室の場合(幹線)
物入
DN
開口部
(外部建具)
開口部
(外部建具)
物入
洋室
S1
A1
開口部
(外部建具)
ホール
D1
書斎
洋室
認
定
基
準
(
仕
様
)
縁側
開口部
(室内建具)
食堂
A3
和室
D4
居間
廊下
便所
玄関
物入
S1≧次のいずれか大きい方
①1/16×A1 ②0.6
D1≧1.4
S3≧次のいずれか大きい方
①1/16×A3 ②0.6
S2≧次のいずれか大きい方
①1/16×A2 ②0.6
D2≧1.4
※続き間の場合は屋外側の居室面積の1/16以上とします。
物入
押入
開口部
(室内建具)
居間
A5
和室
D5
廊下
玄関
D3≧1.4
D4≧1.4
非居室(幹線)及び支線の場合
床の間
UP
洗面
脱衣室
便所
縁側等の場合(幹線)
食堂
床の間
D3
バル
コニー
D2
A2
S3
開口部
(室内建具)
S2
押入
UP
DN
開口部
引き戸,
縁側 (外部建具)
ふすま,
S5
障子そ
の他随
時開放
できる D6
もの
洗面
脱衣室
洋室
ホール
D8
洋室
浴室
S7
開口部
(室内建具)
物入
便所
2階平面図
S5≧次のいずれか大きい方
①1/16×A5 ②0.6
物入
D5≧1.4
D6≧1.4
S8
開口部
(外部建具)
バル
コニー
便所
書斎
開口部
(外部建具)
S7≧0.6
S8≧0.6
D8≧1.4
※縁側等の面積を含まない居室の面積の1/16以上とします。
A1,A2・・・,An:床面積(㎡)
S1,S2・・・,Sn:開口部(外部建具)の有効開放面積(㎡)。同一平面上に複数の開口部がある場合は,それらの面積の合計。
D1,D2・・・,Dn:開口部(間仕切壁)の有効開放面積(㎡)
※「有効開放面積」とは,開口部の内法寸法によって計算される面積のことをいいます。簡単のため,サッシ等の呼称にある内法
基準寸法によっても構いません。ただし,開放時にガラス障子に重なりが生じる窓サッシ(引き違い窓,上下窓等)については,
重なり部分を除外する必要があります。
25
浴室
第
2
章
オ 開口部の下端の床面からの高さ(外壁の開口部)
居住域に風が通過するよう,通風経路上に設ける居室又は縁側等の外壁若しくはこれにおおむね正
対する方位の外壁のいずれかの開口部の下端の高さは,床面から1,100mm以下とすることが必要です。
カ 開口部の下端の床面からの高さ(間仕切壁の開口部)
居住域に風が通過するよう,通風経路上に設けるすべての間仕切壁の開口部の下端の高さは,通風
の支障とならないよう,床面から1,100mm以下とすることが必要です。
Ⅱ
いずれかの開口部の下端が
床面から1,100mm以下
1100mm
開口部
(外部建具)
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
開口部
(外部建具)
開口部
洋室 (室内建具)
1100mm
開口部
(外部建具)
食堂
バル
コニー
ホール
居間
開口部
(室内建具)
和室
開口部
(室内建具)
縁側
開口部
(外部建具)
開口部
(室内建具)
室内建具の下端はすべて
床面から1,100mm以下
断面図
いずれかの開口部の下端が
床面から1,100mm以下
キ 開口部の構造
通風に支障のないよう,通風経路上に設ける開口部の構造は,開放状態を保持できるものとすることが
必要です。
※「開放状態を保持できるもの」とは,引き戸,ふすま,障子その他随時開放することができるもののほか,ストッパー
付きの開き戸をいいます。
26
認
定
基
準
及
び
同
解
説
認
定
基
準
(
仕
様
)
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
(3) コールドドラフト対策
吹抜け等の天井の高い部分を設け,その上部と下部に開口を設けると,屋内と屋外の温度差を利用し,外気
を室内に取り入れることができます。
しかしながら,吹抜け等は冬期に冷気が下降するコールドドラフトが発生しやすいため,下降した気流が下階の
居住空間に流入しないよう,次のような建具等の設置による対策が必要です。
○吹抜けが居室内にある場合のコールドドラフト対策(①,②のいずれか)
床面に下降したコールドドラフトが居室に流れ込まないよう,
Ⅱ
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
①吹抜けの下部を建具で仕切る 吹抜けと居室の間を建具等で仕切ります。
玄関・廊下等
玄関・廊下等
UP
UP
上部吹抜
上部吹抜
②上部を建具で仕切る
居室
居室
1階平面図
1階平面図
ホール
吹抜け上部と上階の廊下やホールを建具等で仕切るこ
とにより空気の流れをおさえ,コールドドラフトの発生を抑
制します。
②吹抜けの上部を建具で仕切る
認
定
基
準
(
仕
様
)
居室
吹抜
居室
ホール
吹抜
吹抜
居室
ホール
①下部を建具で仕切る
断面図
居室
居室
2階平面図
2階平面図
○階段室が居室に面する場合のコールドドラフト対策
階段室と居室を建具で仕切る
UP
階段室が居室に面する場合,階段室を下降した冷気が
居室に流れ込まないよう,階段室と居室の間を建具等で
仕切ります。
階段
居室
1階平面図
27
第
2
章
2-3 自然との共生や室内環境向上のための庭の設置
認
定
基
準
及
び
同
解
説
(4) 次のアからウのすべてを満たす庭を設けること。
ア 第1号イの環境調整空間と連続する空間であること。
イ 原則として,透水性及び保水性に配慮した仕上げとすること。
ウ 樹木その他これに類するものを植えること。
【解説】
庭は,ア 位置,イ 仕上げ及びウ 植栽に関する基準を定めて
Ⅱ
います。
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
ア 位置
本基準による庭は,室内環境調整機能を有する環境調整
空間(P.19~22)と連続する空間として設ける必要があります。
イ 仕上げ
仕上げは,透水性及び保水性に配慮した仕上げとすることが
必要です。透水性のある仕上げにすると,雨水の地中浸透に
より,敷地外への雨水の排出量が削減され,地域の雨水排
水処理負荷の抑制につながります。また,保水性のある仕上
げにすると,地表面からの蒸発冷却効果により,室内に入る風
の温度が下がり,涼感が増します。また,敷地外への熱負荷
和風の庭の例
の低減にも寄与し,周辺地域の環境に対する配慮にもなります。
※敷地の制約上,庭全面を透水性及び保水性に配慮した仕上げとすることが出来ない場合は,住宅政策課ま
でご相談ください。
ウ 植栽
植栽は,葉からの蒸発冷却効果により,室内に入る風の温度を下げる効果をもたらします。更に,樹高の高い
中高木は,夏期に居住空間への日射侵入を防止する効果もあります。また,植栽は,季節を感じたり,自然と
触れ合ったりすることにより,生活の質の向上や家族のコミュニケーションの促進も図ります。そのため,植栽を行
う際には,得られる効果を考慮したうえで計画する必要があります。
○庭木の例
中高木
低木
竹・笹
常緑
落葉
常緑
落葉
生垣
イヌマキ
カヤ
クロマツ
シラカシ
ヤブツバキ
ウメ
サクラ類
サルスベリ
トウカエデ
モミジ類
アオキ
ジンチョウゲ
ツツジ類
ナンテン
ヒイラギナンテン
ヒサカキ
ヤツデ
アジサイ
ウツギ
コデマリ
フヨウ
ヤマブキ
ユキヤナギ
アラカシ
サンゴジュ
ドウダンツツジ
ピラカンサス
プリベット
ラカンマキ
モミジ類
サルスベリ
28
ウメ
ナリヒラダケ
クロチク
コグマザサ
オカメザサ
認
定
基
準
(
仕
様
)
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
■推奨事項
1 四季折々の暮らしや行祭事に応じたしつらいをする空間を確保すること。
【解説】
京都では四季折々の季節の変化に合わせた暮らしが定着し,節句などの祭事と合わせて暮らしの文化を形成
してきました。床の間など季節の行祭事に応じたしつらいや花を生ける場所を設けるとともに,格子・障子・簾越しの
Ⅱ
光による陰影によって季節・時刻・天候等の移ろいを楽しむ工夫も施されています。京町家の暮らしの文化を継承
する「平成の京町家」においても,季節に応じた室内装飾のための空間を確保し,季節等の変化や自然を暮らし
空
間
構
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
に取り込むとともに,住む人の美意識を育む住まいであることを目標としています。
○具体的事例
・来客空間(玄関,客間,座敷等)の床の間
・出格子のウィンドー
・壁面のニッチ,飾り棚
床の間
推
奨
事
項
雛人形飾り
2 地域とのつながりを演出する空間装置等を設けること。
【解説】
京町家の通り沿いのひさし下の空間は,バッタリ床几を出して展示や休憩に,あるいは幔幕を張って祭りの空間
に,と多様に使われ,通りの公的な空間と屋内の私的な空間をつなぐ半公共的な空間を形成してきました。また,
京格子は外からは内が見えにくく,内からは外の様子が良く見えるようにできており,柔らかい防犯装置・プライバ
シー確保のための装置として,内と外を適度に仕切り,つなぐ役割を果たします。「平成の京町家」においても,こう
した空間装置等を設けることにより,地域とゆるやかにつながり,住む人が地域コミュニティーの一員であることを実
感できる住まいであることを目標としています。
○具体的事例
・バッタリ床几
・暖簾
・幔幕
・簾
・格子
バッタリ床几
29
暖簾
Ⅲ 環境配慮に関する基準及び事項
■認定基準
3 次の(1)から(3)のいずれかを満たすこと。
(1) 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく設計住宅性能評価において,劣化対策等級3及び断熱
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
等性能等級4を取得していること。
(2) 長期優良住宅の普及の促進に関する法律(以下「長期優良住宅法」という。)第6条第1項に基づく認定
を取得していること。
Ⅲ
(3) 「CASBEE京都 戸建-新築」の標準システムにおいて,Aランク以上の評価を取得していること。
【解説】
環境に優しく,長持ちさせるシステムを持つ住まいである「平成の京町家」には,高い環境配慮性能が求められ
ます。
これを評価するため,設計住宅性能評価及び長期優良住宅の認定制度によって,住宅の断熱等性能及び構
環
境
配
慮
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
造躯体の劣化対策を評価する基準のほか,これらの性能に加えて伝統構法の採用や自然素材の積極的利用
などを含む住宅の総合的な環境配慮性能を評価するCASBEE京都に関する基準を設けています。
(1) 住宅性能評価
住宅性能評価では,住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく共通の基準によって,専門機関が住宅
の性能を評価し,その結果を客観的な等級で表します。設計図書により評価する設計住宅性能評価と,その設
計住宅性能評価に表示された性能が建設された住宅で発揮されているかを現場で検査する建設住宅性能評
価がありますが,「平成の京町家」では,設計住宅性能評価を受けることにより,断熱等性能及び構造躯体の劣
化対策について,それぞれ最高等級を取得することを求めています。
○断熱等性能 等級4
省エネルギー基準と同程度の基準
次の4つの基準を満たす必要がある。
・外皮平均熱貫流率に関する基準 ・冷房期の平均日射熱取得率に関する基準
・結露の発生防止に関する基準 ・断熱等性能に関連する著しい劣化の防止
○劣化対策 等級3
構造躯体が3世代(75年~90年)もつ程度の対策
次の8つの基準を満たす必要がある。
・外壁の軸組等の防腐防蟻 ・土台の防腐防蟻 ・浴室・脱衣室の防水 ・地盤の防蟻
・基礎の高さ ・床下の防湿・換気 ・小屋裏の換気 ・構造部材等(建築基準法を満たす)
30
認
定
基
準
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
Ⅲ
環
境
配
慮
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
(2) 長期優良住宅
長期優良住宅の認定制度は,長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づき,長期にわたり良好な状
態で使用するための措置が講じられた住宅を,京都市が認定する制度です。認定基準では住宅性能評価の基
準が準用されており,とりわけ断熱等性能及び構造躯体の劣化対策については,それぞれ最高等級の基準が採
用されていることから,「平成の京町家」では,長期優良住宅の認定取得を求めています。
長期優良住宅 認定基準の概要(木造戸建て住宅の場合)
性能項目等
劣化対策
概要
○数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。
⇒ 劣化対策等級(構造躯体等) 等級3
+床下及び小屋裏の点検口を設置すること。
+点検のため,床下空間の一定の高さを確保すること。
耐震性
○極めて稀に発生する地震に対し,継続利用のための改修の容易化を図るため,損傷のレベ
ルの低減を図ること。
⇒ 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止) 等級2以上
維持管理・
更新の容易性
○構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について,維持管理(清掃・点検・補修・更
新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること。
⇒ 維持管理対策等級(専用配管) 等級3
認
定
基
準
省エネルギー性
○必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること。
⇒ 断熱等性能等級 等級4
居住環境
○良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものである
こと。
・地区計画,景観計画,条例によるまちなみ等の計画,建築協定,景観協定等の区域内に
ある場合には、これらの内容と調和が図られること。
住戸面積
○良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
・75㎡以上(2人世帯の一般型誘導居住面積水準)
※少なくとも1の階の床面積が40㎡以上(階段部分を除く面積)
維持保全計画
○建築時から将来を見据えて,定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること。
・維持保全計画に記載すべき項目については,①構造耐力上主要な部分,②雨水の浸入
を防止する部分,及び,③給水・排水の設備について、点検の時期・内容を定めること。
・少なくとも10年ごとに点検を実施すること。
■具体的な内容は,「長期使用構造等とするための措置及び維持保全の方法の基準(平成21年国土交通省告示第209号)」
をご確認下さい。
31
第
2
章
(3) CASBEE京都
CASBEE(キャスビー:建築環境総合性能評価システム)は,建物を環境性能で評価し,格付けする手法で,省
エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより,室内の快適性や景観への配慮な
ども含めた建物の品質を総合的に評価し,SランクからCランクの5段階の格付けを与えるシステムです。
CASBEEは,総合的な環境性能を戸建住宅自体の環境品質(これをQualityの“Q”とする)と,戸建住宅が外部
に与える環境負荷(これをLoadの“L”とする)の2つに分けて評価します。QとLにはそれぞれ下図に示す3つの評価
の分野があり,更にその中で具体的な取組を評価します。
環境品質(Q)が高いことを評価
環境負荷(L)を低減する取組を(LR)で評価
(※LRは環境負荷低減性と呼びLoad Reductionの略)
Q1 :室内環境を快適・健康・安心にする
LR1 :エネルギーと水を大切に使う
Q2 :長く使い続ける
LR2 :資源を大切に使いゴミを減らす
Q3 :まちなみ・生態系を豊かにする
LR3 :地球・地域・周辺環境に配慮する
それぞれの分野について評価を実施した後に,[環境品質(Q)/環境負荷(L)]により戸建住宅の環境効率(BEE)を
求め,これに基づき総合的な環境性能の格付け(赤星によるランク付け)を行います。
京都市では,上記の全国版CASBEEをベースに,京都が目指すべき環境配慮建築物を適切に評価・誘導でき
るよう項目の重点化や見直しを行い,京都独自の「CASBEE京都」を策定しました。
認
定
基
準
及
び
同
解
説
Ⅲ
環
境
配
慮
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
「CASBEE京都」は,「標準システム」と「独自システム」で構成されています。「標準システム」は,全国版CASBEE
のシステムを保持しつつも,各項目のうち地域特性が十分に反映されない,あるいは京都の独自性を付加すべき
項目を一部見直したものであり,「独自システム」は,「標準システム」の評価項目の中で,地域性が特に表れる項
目や京都が重点的に取り組む項目を評価するものです。
「平成の京町家」では,新築の戸建住宅を評価する「CASBEE京都 戸建-新築」で,ランクAの評価を得ること
を求めています。
ランク
評価結果のイメージ
評価
ランク表示
S
素晴らしい
★★★★★
A
大変良い
★★★★
B+
良い
★★★
B-
やや劣る
★★
C
劣る
★
ランクと評価の対応
32
認
定
基
準
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
■推奨事項
3 木のほか,土,紙,石等の自然素材を積極的に使用すること。
【解説】
「平成の京町家」は,木だけでなく,土,紙,石といった自然素材を積極的に利用した,自然を感じ,心地よさや
安らぎが得られる住まいであることを目標としています。自然素材は,リサイクルやリユース等の省資源,地域産の
Ⅲ
環
境
配
慮
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
材料を使用する地産地消といった観点から,環境にやさしい材料ともいえます。
京町家でも,土壁や漆喰壁,和紙を用いた障子やふすまといった自然素材が多用されています。例えば土壁
は,心地よさを得られるだけでなく,調湿機能や蓄熱機能を持ち,室内環境の向上も図ることができます。また,土
壁や漆喰壁を施工するためには,伝統的な左官技術が不可欠です。こうした伝統的技術を現代に継承することも,
「平成の京町家」の重要な役割です。
○具体的事例
・土壁や漆喰壁を採用する。
・和室の障子やふすまに和紙を用いる。
・土間床に天然石を敷く。
推
奨
事
項
漆喰壁の内装
障 子
33
石を敷いた玄関土間
第
2
章
4 再生可能エネルギーの活用を図ること。
5 設備機器は高効率(省エネルギー)型のものとすること。
【解説】
「平成の京町家」においては躯体の断熱性能等の向上に加え,再生可能エネルギーの活用技術や高効率
(省エネルギー)型設備機器の導入により,エネルギー消費量をより大きく削減する住まいを目標としています。
認
定
基
準
及
び
同
解
説
「太陽光,太陽熱,風力,水力,バイオマス,地熱等を利用して得ることができるエネルギーその他の化石燃料以
外の永続的に利用できるエネルギー」と定義される,再生可能エネルギーを活用する技術には,土間や床下の
冷熱利用など京町家の知恵を継承した技術も多く見られます。建物の立地状況,家族構成やライフスタイル,イ
ニシャルコストやランニングコスト等を総合的に勘案し,再生可能エネルギー活用技術と高効率型設備機器の最
適な組合せを検討することが重要です。設置にあたっては,国,京都府,京都市の助成制度を活用できる場合も
あります。
○具体的事例
用途
暖房
再生可能エネルギー活用技術
高効率(省エネルギー)型設備機器
・日射熱利用(パッシブソーラー暖房)
・高効率冷暖房設備
・ペレットストーブ,薪ストーブ
・熱交換型換気扇
Ⅲ
環
境
配
慮
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
・地中熱利用システム
冷房
(地中熱ヒートポンプ冷暖房,
床下・土間床冷熱利用)
給湯
・太陽熱利用システム
・燃料系潜熱回収瞬間式給湯器
・太陽熱温水器
・電気ヒートポンプ式給湯器
・節湯型器具
照明
電力他
・昼光利用
・蛍光灯,LED照明
・照明制御(センサー制御,調光設備)
・太陽光発電システム
・家庭用コージェネレーションシステム
(燃料電池式,ガスエンジン式)
34
推
奨
事
項
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
<再生可能エネルギー活用技術>
□日射熱利用(パッシブソーラー暖房)
冬期に開口部から取り入れた太陽熱を暖房に利用する手法です。日射熱を多く取得するためには,南向きに大きな
開口部を設けることが有効です。また,昼間取得した日射熱を蓄熱することによって夜間等の熱損失を補い,室温の安
定と暖房エネルギーの更なる削減が可能です。
いっぽう,大きな開口部は夜間等には熱損失部位となるため,開口部の断熱性能を高くし,夏期の日射遮蔽対策を
施す等,熱取得と熱損失のバランスに配慮する必要があります。
Ⅲ
環
境
配
慮
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
蓄熱を利用した暖房
□ペレットストーブ,薪ストーブ
ペレットとは間伐材や端材等を粉砕し,円筒状に固めた燃料です。再生可能
な材料である木から作られるペレットや薪は,環境に優しい燃料といえます。なお,
ペレットや薪を燃やして発生するCO2は,木が生長する際に吸収したものなので,
大気中のCO2の増加には影響がないものとみなされます。
□地中熱ヒートポンプ冷暖房
薪ストーブ
ヒートポンプとは,温度の低いところから温度の高いところに熱
推
奨
事
項
を汲み上げる装置,換言すると,冷媒を圧縮・膨張させて熱を移
し替える装置のことです。一般に普及しているエアコンもヒートポン
プであり,空気中の熱を汲み上げることで冷暖房を行なっていま
す。ヒートポンプは内と外の温度差が小さいほど効率が良くなりま
す。
地中の温度は外気温に比べ変動が少なく,夏は外気温より低
く,冬は外気温より高いという特徴があるため,地中熱を利用す
地中熱ヒートポンプ冷暖房の仕組み
るヒートポンプは一般に普及しているエアコンよりもより高効率であ
り,省エネルギーに有効です。
□床下・土間床冷熱利用システム
玄関や土間の框(かまち),リビング・ダイニ
ングの床面に開閉式のスリットを設けるなどし
て,夏期の床下の地中冷熱を室内に取り込
み,冷房エネルギーの削減を図るシステムで
す。空気を循環させる方法には,自然の通
風を利用する方法と,送風機を用いる方法
があります。
いっぽう,冬期には床下との空気の循環を
遮断し,暖房エネルギーが増加しないよう工
夫が必要です。
スリット位置
床下・土間床冷熱利用システムの例
35
スリット
(上:閉じた状態,下:開いた状態)
第
2
章
□太陽熱給湯システム,太陽熱温水器
自然エネルギーである太陽エネルギーで湯を沸かして家の中の給湯に利用する設備です。給湯に必要なエネルギーを
大幅に削減することができます。
太陽熱温水器は,集熱パネルと貯湯タンクが一体となっており,貯めた湯を直接水栓から利用します。
太陽熱給湯システムは,集熱パネルと貯湯タンク,補助熱源(太陽熱の集熱量は天候の影響を受けやすいため,ガス
給湯器等の補助熱源が必要となります。)を組み合わせたシステムです。
日中貯めた湯は,日没後時間の経過とともに温度が低下するため,効率的に利用するには,湯を使う時間帯などのライ
認
定
基
準
及
び
同
解
説
フスタイルを検討することも重要になります。
Ⅲ
環
境
配
慮
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
太陽熱温水器 自然循環式
太陽熱給湯システム 強制循環式
出典:「自立循環型住宅への設計ガイドライン」
国土技術政策総合研究所・建築研究所監修
建築環境・省エネルギー機構発行
□昼光利用
日当たりのよい敷地では,太陽の光(昼光)を,住宅内に効果的に取り
入れることにより,照明エネルギーを削減することができます。昼光を利用
する手法には,開口部から直接採光する手法以外にも,壁や天井の仕
上げの反射を利用する手法や,ライトシェルフと呼ばれる水平の中ひさし
の反射を利用する手法などもあります。この他,光ファイバーや太陽追尾
装置によって,建物の奥まで光を導く手法もあり,室の用途によって,昼
光の利用方法を検討する必要があります。
ライトシェルフ
□太陽光発電システム
太陽の光エネルギーを直接電気に変換するシステムのことで,発電時にCO2が発生しないシステムです。 太陽光発電
パネルは,設置する方位と傾斜角によって発電効率(発電量)が異なり,南向きで水平面からの角度30度の場合が最も
発電効率が高くなります。太陽光発電パネルに,木や建物等の影がかかると発電量が低下するため,設置にあたっては,
周囲の状況を確認する必要があります。
また,屋根に設置される太陽光発電パネルは,地域の景観に与える影響が大きく,周囲の町並みに溶け込んだものとす
ることが求められます。京都市では,景観や街並みと調和させるため,太陽光発電パネルの設置高さや色彩,形態等の
基準を設けています。
36
推
奨
事
項
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
<高効率(省エネルギー)型設備機器>
□高効率冷暖房設備
家庭用のエアコンについては,省エネ情報の積極的な提供に
より省エネ型製品の普及を図るため,小売事業者に対し,省エ
ネ基準達成率や年間の目安電気料金,多段階評価(☆印)を
表示した統一省エネラベルの使用が,エネルギーの使用の合
理化に関する法律(省エネ法)で,努力義務として規定されてい
ます。
統一省エネラベル(2011年度版)
Ⅲ
環
境
配
慮
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
推
奨
事
項
□熱交換型換気扇
建築基準法において,シックハウス対策として原則として機械
換気設備(24時間換気)の設置が義務付けられています。換気
扇の運転によって,外気が室内に導入され,冷暖房の効率を下
げてしまいます。
熱交換型換気扇は,室内から排出される空気と,室内へ導
入される空気の熱を交換するため,夏は外気より冷やされた空気
が,冬は外気より暖められた空気が室内に導入され,冷暖房の
熱交換換気の仕組み(冬の場合)
エネルギーを削減することができます。
□燃料系潜熱回収瞬間式給湯器
都市ガス等を燃料とする瞬間式給湯器の排気ガスから熱を回
収し,水を予熱することで効率を高めた給湯器です。瞬間式給
湯器は,貯湯タンクを持つ給湯器と比べ,コンパクトであり,無
駄に湯を沸かすことがなく,省エネルギーにつながります。
燃料系潜熱回収瞬間式給湯器の仕組み
出典:一般社団法人日本ガス協会HP
□電気ヒートポンプ式給湯器
空気中の熱を汲み上げるヒートポンプ(P.35)の仕組みを利用し
て,効率的に湯を沸かす給湯器です。ヒートポンプユニットと貯
湯タンクで構成されます。
電気ヒートポンプ式給湯器の仕組み
37
第
2
章
□節湯型器具
手元のボタンで容易に止水できるシャワーヘッド,軽く触れるだけで止水できる台所水栓,従来よりも少ない水量で機能
する台所水栓,シャワーヘッドなど,給湯使用量を節約する機器には様々なものがあります。給湯器等の設備機器に比
べると安価でありながらも,高い省エネルギー効果を得ることができます。
認
定
基
準
及
び
同
解
説
□蛍光灯・LED照明
照明に用いられる電力を削減するため,消費電力の少ない照明器具が開発されています。これまで,白熱灯が多く使
用されていたダウンライトや壁付けのブラケット照明器具などでも,電球形蛍光灯を使用できる器具が一般的になってきて
います。また,最近ではより消費電力の少ないLEDを使用した家庭用の照明器具も商品化されています。
□照明制御(センサー制御,調光制御他)
照明に用いられる電力を削減するには,蛍光灯やLED照明な
ど高効率機器の採用も重要ですが,必要に応じて自動で照明
器具の点灯,消灯を行なう各種の制御システムと組み合わせる
とより効果的です。制御システムの導入により,無駄な点灯や,
消し忘れを防止することができます。
Ⅲ
環
境
配
慮
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
代表的な制御方法には,タイマーを利用したスイッチ,人感セ
ンサーを利用したスイッチ,照度センサーを利用したスイッチ,調
人感センサー制御
光スイッチ等があります。
□家庭用コージェネレーションシステム(燃料電池式,ガスエンジン式)
コージェネレーションシステムは,発電時に発生する排熱を給湯や暖房に利用し,エネルギーを効率的に利用するシステ
ムです。現在,家庭用のコージェネレーションシステムはガスエンジンで発電する方式と,燃料電池で発電する方式の2種
類があります。発電された電力とそれに伴う排熱を,家の中で無駄なく使用することが,コージェネレーションシステムを効率
的に利用することにつながります 。したがって,発電量及び排熱量と,家の中の電力,給湯,暖房の使用量のバランスを
調整することが重要となります。
家庭用コージェネレーションシステムの仕組み
(左:燃料電池式,右:ガスエンジン式)
出典:一般社団法人日本ガス協会HP
38
推
奨
事
項
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
6 エネルギー使用量や室内温度等を確認できる装置を設けること。
【解説】
住宅におけるエネルギー消費量の削減には,建物や設備の性能だけでなく住む人の意識や行動が大きく関
わってきます。「平成の京町家」においては,電力やガスの使用状況や室温などを,わかりやすく居住者に“見える
化”することにより,居住者の省エネルギー意識の向上と省エネルギーに寄与する行動への誘導を図ることを目
標としています。これは,京都の人が長い歴史の中で育んできた,「もったいない」「しまつの心」の考え方にも通じる
Ⅲ
環
境
配
慮
成
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
ものです。
また,エネルギー使用量や室内温度等を表示するだけでなく,住宅内の設備機器等をネットワークでつなぎ,エ
ネルギー使用状況に応じて自動制御する仕組みである「HEMS」(Home Energy Management System)も商品化されて
きています。
参考例の紹介
省エネナビ
財団法人省エネルギーセンターでは,エネルギーの消費量および省エ
ネ目標使用量を金額に換算して表示する機器システムを省エネナビとして
登録し,同センターのホームページなどで共同広報を行ない普及を進め
ています。省エネナビとして登録された機器システムには太陽光発電シス
テムのモニターや給湯器のリモコンを兼ねているものもあります。
省エネナビの例
推
奨
事
項
7 雨水の利用及び地中浸透に配慮すること。
【解説】
環境にやさしい住まいである「平成の京町家」は,敷地内における環境への配慮
はもちろん,周辺地域の環境にも配慮することを目標としています。
雨水を地中に浸透させることは,敷地外への雨水の排出量を削減し,周辺地域
の雨水排水の処理に必要なエネルギーを抑制します。雨が地中に浸み込み,地下
水や川となって海に流れ込み、蒸発して再び雨になるという,自然の水循環を保全
する上でも重要です。また,雨水を貯めて敷地内で利用することは,敷地外への雨
水の排水量を削減するだけでなく,上水の使用量を削減する省資源対策としても有
効です。
雨水貯留タンク
○具体的事例
・雨水貯留タンクを設置し,植栽への散水に利用
・雨水浸透枡を設置し,下水道や河川への負荷を抑制
39
第
2
章
Ⅳ 木の文化に関する基準及び事項
■認定基準
4 京都市木材地産表示制度(「みやこ杣木」認証制度)による認証又は京都府産木材認証制度(ウッドマイ
レージCO2認証制度)による認証を受けた木材その他京都市の区域内及びその近隣の地域から産出され
認
定
基
準
及
び
同
解
説
る木材を使用すること。
【解説】
三方を森に囲まれた京都の木の文化を継承する「平成の京町家」は,木材の地産地消の観点から,京都の地
域産木材を利用して建設されることを目指しています。京都地域産木材の利用は,材料の輸送に伴う二酸化炭
素の発生を抑制し,環境負荷を低減することができます。また,京都地域産木材の利用が促進されると,高齢化
や輸入木材との競合等により危機に瀕している地域の林業が活性化されるとともに,洪水の緩和,水資源の貯
留,水質浄化などの水源涵養機能や生態系の保全,二酸化炭素の吸収といった森林のさまざまな機能も強化
されます。
このように,「平成の京町家」における京都地域産木材の利用は,木材の生産・流通に携わる供給側の取組と,
木材を利用する需要側の取組がうまく連携することにより,持続可能な木材の循環サイクルを構築することを目指
しています。
「木の文化を大切にするまち・京都」の目指すべき姿:循環サイクル
「木の文化を大切にする価値観」の定着に
より,森林に対する市民の関心が高まる。
建物を大切に
長く使うための
適切な維持管理
京都らしさを大切にした
環境にやさしい住宅づくり
京都にふさわしい
新たな価値観を
持つ住宅等の建設
木
の
文
化
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
森林の再生が森林の効用を強化する。
積極的に木材の
利用を行う
建築の設計
京都ならではの
環境に配慮した
建築物の誘導
Ⅳ
適切に管理された
森林からの
木材供給・流通
木材等の需要と供給を
マッチングする仕組み
森林の適切な
維持管理
森林管理への市民参加
等を通じた持続可能な
森づくり
○「みやこ杣木」認証制度
京都市内で生産された木材であることを明示する地産表示を行うとともに,安心して利用できるように品質・性能を表し,環境
貢献として炭素貯蔵量の表示などを行う制度です。
京都の森林で産出された木材の情報を明示することにより,消費者や工務店等が市内産木材を身近に感じ,広く利用する
ことを目指しています。
表示制度の推進機関である京都市域産材供給協会の登録を受けた生産事業体(製材工場や磨丸太加工業者など)が、
京都市の地域産材にマーク等を表示して出荷します。
お問合せ先
京都市域産材供給協会(京都北山丸太生産協同組合内)
電話 075-406-2671
40
認
定
基
準
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
○ウッドマイレージCO2認証制度
京都府内で生産された木材の産地証明に加えて、輸送時に排出される二酸化炭素量
(ウッドマイレージCO2)を数値で示し、地域の木材を利用することで地球温暖化防止対策
を進める制度です。
ウッドマイレージCO2認証制度による,産地証明(京都府産木材証明及びウッドマイレージ
CO2計算書の発行)を受ける場合,①府から認定を受 けた「取扱事業体」から木材を購
入すること,②購入する際に”京都府産認証木材”と指定をすること,の2点が必要です。
木材の生産や流通・加工に直接関係しない第三者である「京都府地球温暖化防止活
Ⅳ
動推進センター」が認証機関として認証と制度運営を行ない,制度の透明性や公平性を
木
の
文
化
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
高める工夫をしています。
出典:京都府地球温暖化防止
活動推進センター
お問い合わせ先
京都府農林水産部林務課林産振興担当
電話 075-414-5009
5 一以上の居室について,構造材,壁・天井・床・柱・梁等の化粧材・造作材又は建具の全部又は一部を「木
の現し」とした木質系の空間とすること。
認
定
基
準
【解説】
木の文化を継承する「平成の京町家」は,居室を木の現しによる木質系の空間とし,木の香りによる安心感と安
らぎ,心地よさを感じることができる住まいを目指しています。木は,温もりのある肌触りや,調湿機能など優れた特
徴を持つ材料です。また,木は手入れをするほど美しくなり,愛着が生まれます。木の現しを多用する住まいは,住
まい手と住まいがかかわりあう「住みごたえ」を育む住まいです。
さらに,柱や梁などの構造部材を現しとすることは,住宅を支える部分の劣化状況の把握やメンテナンスが容易
になり,住まいを長持ちさせることにも効果があります。
○具体的事例
・構造の柱を真壁とし,梁を現しとする。
・床をフローリングや縁甲板張りとする。
・壁や天井を板張りとする。
・無垢材の付け柱,床柱,飾り梁を採用する。
木の現しを多用した内装
41
第
2
章
■推奨事項
8 木の表情豊かな住まいとなるよう,道路に面する外壁や建具等には積極的に木を用いること。
【解説】
通り沿いに木部が表出し,木割りと京格子の美しい外観意匠は,魅力ある京都の都市景観の構成要素のひと
認
定
基
準
及
び
同
解
説
つです。 「平成の京町家」においても,道路に面する外壁や建具等の外装材に積極的に木を用い,町並み景
観に配慮した住まいとすることを目標としています。道路に面する部分のファサードに,柱・梁等の構造材の現しや
外壁の板張り,木格子,木製サッシ等を積極的に利用することで,木の表情豊かな外観を実現し,住む人は美し
い町並みを構成することに誇りを持つことができます。
あわせて,外装材に用いる木を京都地域産木材とすれば,木材の地産地消により,輸送に伴う環境負荷の低
減,地域の林業の活性化,森林のさまざまな機能の強化といった効果も生まれ,「平成の京町家」が目指す持
続可能な木材の循環サイクルの構築にも貢献できます。
また,木部が表出した外観は,メンテナンスにおいても比較的補修・交換が容易であり,長期使用の観点からも
有効です。
○具体的事例
Ⅳ
木
の
文
化
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
・柱,梁等の構造部材を現しとする。
・木格子や外壁の板張りなど,木の現しを行う。
・木製建具(防火規制がある場合は,認定防火戸などとする)を採用する。
・軒裏部分で垂木の現しや木板張り(告示対応)を採用する。
・駒寄せや犬矢来等により,領域や場の演出を行う。
木の表し(垂木・
野地板等)の軒裏
木製建具
木の表し(垂木・
野地板等)の軒裏
木製建具
木の表情豊かなファサードの例
42
推
奨
事
項
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
参考例の紹介
準防火地域等に求められる防火性能の確保について
準防火地域や建築基準法第22条区域等においては,建築基準法で定められる範囲に,法で定められる防火
性能を確保する必要があります。
近年の法改正等により,国土交通省告示による仕様や国土交通大臣認定を取得した仕様を用いて,土塗り壁
Ⅳ
木
の
文
化
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
や木の現しの軒裏等を採用することも可能となっています。京都府建築工業協同組合発行の「土塗壁と化粧軒
裏の防火マニュアル」には,これらの防火性能を確保するための仕様が紹介されています。また,防火戸の外側
に設けられた木格子は,燃え落ちるまでの間,室内への熱の侵入を軽減する効果があるという実験結果もありま
す。このように防火性能を確保した上で,木の仕上げを積極的に採用することにより,伝統的な町並みに調和し,
木の表情豊かな外観とすることが重要です。
開口部
アルミ防火戸または木製防火戸
正面外壁
裏返し塗りをした土塗壁の総厚を40mm以上
軒裏
野路板厚30mm以上かつ面戸板厚45mm以上の
垂木・野地板表し
推
奨
事
項
開口部(玄関)
アルミ防火戸または木製防火戸
正面腰壁
裏返し塗りをしない土塗厚30mm以上
かつ板厚12mm以上
準防火地域の2階建て木造建築物において可能な仕上げの例
(国土交通省告示に位置づけられた仕様)
43
第
2
章
Ⅴ 形態意匠に関する基準及び事項
認
定
基
準
及
び
同
解
説
■認定基準
6 原則として,屋根は,軒の出が900mm以上の勾配屋根とすること。
【解説】
「平成の京町家」は,町並み景観に配慮した住まい,長持ちさせるシステムを持つ住まい,環境に優しい住まい
であることを目指していますが,屋根や軒はそれらを実現するために重要な役割を果たします。
京都では,勾配のある大屋根や軒を揃えることにより,隣家と繋がりのある美しい町並みを形成しており,そうした
景観への配慮として,軒の出が900mm以上の勾配屋根とすることを定めています。
深い軒は,外壁への雨当たりを防ぎ,外壁の劣化を抑制するとともに,夏の日射しを遮り,室内の温度上昇を抑
え,冷房エネルギーも削減します。
軒の出を900mm以上とすることは,住宅性能評価の劣化対策の上でも有効な手段とされています。また,南面
に設けられる軒の出が,窓の下端から軒の下端までの高さの0.3倍以上であれば,日射遮蔽に有効とされていま
す。出寸法が900mm以上の軒は,掃き出し窓等の大きな窓に対しても日射遮蔽上有効です。
※敷地の制約上,900mm以上とすることができない場合は,住宅政策課までご相談ください。
■推奨事項
Ⅴ
形
態
意
匠
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
認
定
基
準
・
推
奨
事
項
9 近隣の景観に配慮した形態意匠とすること。
【解説】
京町家は,隣の住戸と壁面線や軒高さを揃えることにより,統一感のある
町並みを構成してきました。京都市では,平成19年9月1日から,こうした京
都の優れた景観を守り,育て,50年後,100年後の未来へと引き継いでいく
ため,建物の高さとデザイン及び屋外広告物の規制等を全市的に見直した
新景観政策を実施しています。また,新景観政策は,魅力ある都市景観を
維持するだけでなく,高さや広告物の規制や,緑地の創出といった低炭素
社会の実現への役割も担っています。
「平成の京町家」は,この新景観政策に基づく規制に適合することはもち
ろん,これに定められていない点にも配慮し,町並みの景観と調和した美し
い住まいとすることを目指しています。例えば,隣の住戸と軒高さを揃える,
近隣の住戸と外壁の色や仕上げ材料を合わせる,隣の住戸の外構デザイ
ンと連続性のある外構デザインとする,近隣の住戸に多くみられるファサード
デザインを採用するといったことが考えられます。
44
軒が連なる町並み
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
Ⅵ 維持保全に関する基準及び事項
■認定基準
7 長期優良住宅の普及の促進に関する法律(以下「法」という。)第6条第1項第4号(要綱第3条第3項の申
請を行う場合にあっては法第6条第1項第5号)の規定を満たす維持保全計画書を作成すること。
【解説】
Ⅵ
維
持
保
全
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
長期優良住宅の認定基準に準じた維持保全計画の作成を定める基準です。「平成の京町家」は長期にわたり
良好な状態で使い続けることができる住宅を目指しており,そのためには定期的な点検や補修の実施が不可欠
です。定期的な点検を確実に実施するためには,点検の内容と時期をあらかじめ定めておくことが重要となります。
また,適切に維持保全され,長持ちする住宅は,資産価値も向上します。
長期優良住宅の普及の促進に関する法律においては,住まいの維持保全について,30年以上の期間の定期
的な点検の内容と時期を定めることとされています。 ①構造耐力上主要な部分,②雨水の浸入を防止する部
分及び③給水・排水の設備について,少なくとも10年ごとに点検を実施する計画とすることが求められます。計画
には,「点検部位」「主な点検項目」「点検の時期」「定期的な手入れ方法」「更新・取替の時期,内容」等を記
載します。
維 持 保 全 計 画 (30年間)
点検の時期(竣工よ
り)
定期的な
手入れ等
コンクリート基
気口のふさがり、錆び、蟻
礎立ち上がり 道、等
5,10、15、20、25年★
ー
建て替え時に更新
基礎からのずれ、浮き、断
面欠損、腐朽、蟻害
5,10、15、20、25年★
5年で防腐・防蟻
処理
建て替え時に更新
5年で防腐・防蟻
処理
20年で全面取替を検
討
点検部位
主な点検項目
更新・取替の時
期、内容
ひび割れ、欠損、沈下、換
基礎
構
認
定
基
準
造
躯
体
土台 土台
床組
大引き、床束、 腐朽、蟻害、傾斜、たわみ、 5、10、15,20(取替)、
床鳴り、振動、等
25年
根太
軸組
柱、間柱、筋
かい、胴差
小屋組
傾斜、断面欠損、腐朽、蟻
害、等
10、20年★
建て替え時に更新
たるき、もや、 雨漏れ等の跡、小屋組みの
10、20年★
棟木、小屋束 接合部の割れ
建て替え時に更新
瓦ふき、金属板
屋
根
・
外
壁
・
開
口
部
ずれ、はがれ、浮き、われ、 5、10、15,20(葺替)、
雨漏れ、変形、等
25年
ふき
サイディング、
3,6,12,15(全面補
割れ、欠損、剥がれ、シーリ
(窯業系)、モル
修)、18,21,24,27年
ング材の破断等
タル
★
20年で全面葺替を検
討
屋根 ふき、スレート
外壁
雨樋 雨樋
破損、詰まり、はずれ、ひ
び、軒樋の垂れ下がり
軒裏 軒裏天井
腐朽、雨漏れ、はがれ、たわ 3,6,12,15(取替)、
み、ひび割れ、
18,21,24,27年★
開口部
屋外に面する
開口部
3年でトップコート 15年で全面補修を検
吹替え
討
3、7(取替)、10、14(取
替)17、21(取替)24年
7年で全面取替を検討
15年で全面取替を検
討
5、10、15,20(取替)、
25年★
20年で全面取替を検
討
等
設
備
給水管
配管設
排水管
備
留意事項等
漏水、赤水、給水流量の不
足など
5、10、15,20(取替)、
25年
水漏れは直ちに
補修
20年で全面取替を検
討
漏水、排水の滞留
5、10、15,20(取替)、
25年
水漏れは直ちに
補修
20年で全面取替を検
討
維持保全計画書(30年)参考例
○★は地震時や台風時の後、当該点検の時期にかかわらず、臨時点検を行うものとする。
45
○各点検において、劣化の状況等に応じて適宜維持保全の方法について見直すものとする。
第
2
章
8 法第11条第1項に規定する記録を作成すること。
【解説】
長期優良住宅の認定基準に準じて建築および維持保全状況に関する記録の作成を定める基準です。「平成
の京町家」はその価値を将来にわたって持続させ,長く住み継がれる住宅を目指しており,そのためには,設計図
書や修繕履歴に関する情報が蓄積されることが重要です。
認
定
基
準
及
び
同
解
説
長期優良住宅の普及の促進に関する法律においては,長期優良住宅の認定および変更認定手続きで必要
となった図書や維持保全の時期や内容等の記録を作成し,保存することが求められます。「平成の京町家」にお
いては,これと同等の記録に加え,「平成の京町家」の認定および変更認定手続きで必要となった図書等を記録
するひな形(家歴書)の作成が必要です。あわせて,建築確認や住宅性能評価等に係る図書等も記録できる様
式であることが望まれます。
家 歴 書
作成 平成
年
月
日
住宅の概要
所有者
所在地
構造規模
地上
造
敷地面積
㎡
延床面積
㎡
地下
階
階
Ⅵ
維
持
保
全
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
新築時の記録
発行年月日
建築確認
建
築
基
準
法
平成
第
申請書等
有 ・ 無
発行年月日
中間検査
平成
申請書等
有 ・ 無
月
年
検査済証番号
第
申請書等
有 ・ 無
日
月
認
定
基
準
日
号
平成
年
認定番号
第
申請書等
有 ・ 無
月
日
号
平成
年
認定番号
第
申請書等
有 ・ 無
月
日
号
性能評価の種類
住宅性能評価
日
号
平成
認定年月日
長期優良住宅の認定
年
第
認定年月日
「平成の京町家」の認定
月
号
検査済証番号
発行年月日
完了検査
年
確認済証番号
設計
建設
平成 年 月 日
平成 年 月 日
交付番号
第 号
第 号
申請書等
有 ・ 無
評価書交付年月日
有 ・ 無
設計者
連絡先
監理者
連絡先
施工者
連絡先
維持保全時の記録
内容
点検 ・ 修繕 ・ 増改築
場所・部位
詳細内容
N
o
1
時期
平成
年
月
日
~
平成
設計者
施工者
図面・書類等
年
月
日
連絡先
連絡先
・契約書
・工事費内訳書
・図面
・その他(
・工事写真
)
備考
家歴書参考例
46
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
Ⅵ
維
持
保
全
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
認
定
基
準
参考例の紹介
「いえかるて」
住宅の設計,施工,維持管理,権利および
資産等に関する情報を住宅履歴情報(愛称:
いえかるて)といい,本来住宅履歴情報は住宅
所有者が蓄積し活用するものです。
現在,住宅履歴情報に関するサポートを行な
う,情報サービス機関が数多く存在しており,こう
した機関のサービスを利用して住宅履歴情報の
蓄積・活用をすることも可能です。情報サービス
機関は,一般社団法人住宅履歴情報蓄積・
活用推進協議会によって認定登録が実施され
ています。
戸建住宅の住宅履歴情報項目
新築段階の情報項目
建築確認
新築住宅の完成までに、建築確認や完
了検査などの諸手続きのために作成さ
れた書類や図面
住宅性能評価
住宅性能表示制度に基づく住宅性能評
価書や性能評価を受けるために作成さ
れた書類や図面
長期優良住宅認定
長期優良住宅の認定の手続きのために
作成される書類や図面
新築工事関係
住宅が竣工した時点の建物の現況が記
録された各種図面や書類で、完成まで
の様々な変更が反映されたもの
維持管理段階の情報項目
維持管理計画
住宅の計画的な維持管理に役立つ、点
検や修繕の時期および内容の目安とな
る情報が記載された書類
点検・診断
住宅の点検や診断・調査などを行った時
に作成・提供される書類、写真、図面等
修繕
住宅の修繕工事を行った時に作成・提供
される図面や書類、写真等
リフォーム・改修
住宅のリフォーム・改修工事を行った時
に作成・提供される図面、書類、写真等
認定長期優良住宅
の維持保全
認定を受けた認定長期優良住宅に保存
が義務付けられている維持管理の記録
等
住宅性能評価
住宅性能表示制度に基づく住宅性能評
価書や性能評価を受けるために作成さ
れた書類や図面
重要事項説明に関する情報項目
重要事項説明
47
不動産取引に際して宅地建物取引業者
が買主に交付する重要事項説明書およ
び売主が買主に対して開示する告知書
等
第
2
章
■推奨事項
10 設備機器,配線・配管等の点検,補修が容易な構造とし,十分なメンテナンススペースを確保すること。
【解説】
認
定
基
準
及
び
同
解
説
「平成の京町家」は,構造躯体に比べ耐用年数の短い設備機器や配線・配管の点検,清掃,補修を容易と
することにより,長持ちする住まいであるだけでなく,住む人が住まいの点検や補修等に気を配り,維持管理への
意識を高めることができる住まいであることを目標としています。京町家は,修繕が容易な構造や仕上げであるだ
Ⅵ
けでなく,出入りの大工の制度によって日常的な維持管理が円滑になされていました。「平成の京町家」において
も,工務店や大工等と住まい手の協働により,適切な維持管理が行なわれることが重要です。
参考例の紹介
住宅性能評価における維持管理対策等級(専用配管)
住宅の維持管理を評価する指標としては,住宅性能表示制度の維持管理対策等級があります。長期優良住
宅の認定基準においても,「維持管理・更新の容易性」として,維持管理対策等級を最高等級(等級3)とするこ
維
持
保
全
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
とが求められています。
○維持管理対策等級3
住宅の排水管・給水管・給湯管・ガス管の全面的な交換が必要となるまでの期間内に実施される点検・清
推
奨
事
項
掃・補修への配慮を評価。
以下の5つの基準を満たす必要があります。
① 配管方法の基準
専用配管がコンクリート内に埋め込まれていないこと。
② 地中埋設管の基準
地中に埋設された管の上にコンクリートが打設されていないこと。
③ 排水管の基準
専用の排水管の内面が,清掃に支障を及ぼさないように平滑であり,かつ,排水管が清掃に支障を及
ぼすようなたわみ,抜けその他変形が生じないように設置されていること。
④ 排水管の清掃のための措置の基準
専用の排水管には,掃除口が設けられているか,又は清掃が可能な措置が講じられたトラップが設置
されていること。
⑤ 配管点検口の設置の基準
設備機器と専用配管の接合部,並びに専用配管のバルブ,及びヘッダー,又は排水管の掃除口が
仕上げ材等により隠ぺいされている場合には,主要接合部等を点検するために必要な開口,又は掃
除口による清掃を行うために必要な開口が仕上げ材等に設けられていること。
48
第
2
章
認
定
基
準
及
び
同
解
説
Ⅶ 近隣配慮に関する事項
■推奨事項
11 防火のための水利に配慮すること。
【解説】
Ⅶ
近
隣
配
慮
に
関
す
る
基
準
及
び
事
項
京都では,通りを挟んだ町内ごとのルールを「町式目」や「町定」として明文化していました。特に,火災に対する
安全性を確保するため,建物に延焼を防止するさまざまな工夫を施すとともに,町内ごとに通りに防火井戸を掘り,
家々においても手桶や天水桶を設置するなど防火用水の確保に努めてきました。今日においても,木造住宅が
密集する市街地を多く抱える京都では,建物や設備による防火性能の向上だけでなく,近隣との協力や防火意
識の向上といったソフト面の対策が重要です。「平成の京町家」においては,当該住宅や近隣の火災の初期消
火に用いられる水利を設けることにより,住む人や町全体の防火意識を高めることを目標としています。
○具体的事例
・公道に面した位置に水栓を設置
・公道に面した位置に消火用バケツを設置
・公道に面した位置に防火水槽や消火栓を設置
通りに面して設けた水栓を格子で化粧した例
認
定
基
準
12 連坦した市街地等において隣地側に開口部を設ける場合は,相互のプライバシーの確保に配慮した配置と
すること。
【解説】
住宅が密集している京都においては,開口部の無い妻壁や,隣と連続する庭など隣接地に配慮した家の作り
方をしてきました。京都の市街地には, “うなぎの寝床”といわれる間口が狭く,奥行きが深い敷地が多く見られま
す。このような間口の狭い敷地が連続している場所においては,隣接する建物との間に十分な距離を確保できま
せん。「平成の京町家」では,こうした場合,隣地側には開口部を設けない,もしくは,隣接する建物の開口部と相
対する位置に開口部を設けない等,お互いのプライバシー確保に配慮した計画とすることを目標としています。
参考文献
本書の作成にあたっては,「自立循環型住宅への設計ガイドライン」(国土技術政策総合研究所・建築研究所監修,建築環境・省エネ
ルギー機構発行)を参考にしています。
49
京都市平成の京町家認定基準の解説(平成27年度版)
発 行
平成28年3月
京都市都市計画局住宅室住宅政策課
〒604-8571 京都府京都市中京区寺町通御池上ル上本能寺前町488
TEL 075-222-3666 FAX 075-222-3526
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