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Eマートから学ぶポイント(その2)!!
流通とSC・私の視点 2000 年9月 16 日 視 点 (186) I Saw All Seoul(その4) !! − Eマートから学ぶポイント(その2) − (私の視点・185より続く) ④生鮮食料品の徹底強化と地域密着型食料品売場の形成 生鮮食料品の徹底強化により、Eマートが一番強いというイメージを持たせている。鮮度・品揃え・ 価格・サービス・イメージにおいてEマートの生鮮食料品は強力であり、他の割引店とは一味異なる。 また、世界共通の西洋化した食料品だけではなく、韓国固有の食料品の提供力は、他の割引店、特に 外資系の割引店を大きく引き離しており、韓国人にとって親しみのある食料品売場を提供している。 また、外資系割引店がロット販売(大単位売り)に対して小口・少量のきめ細かさで対応している。 食料品にとって、その国の固有の商品あるいはその地域固有の商品提供力が重要であり、地域密着型 食料品売場の強味は、競合店との差異化・圧勝化の基本原則である。 ⑤百貨店系の強味を発揮した店舗経営 Eマートは、百貨店系の強みを随所に取り入れている。すなわち、店舗イメージの高さ(他の割引店 はウエアハウス型店舗)、接客サービス(他の割引店は市場風の接客・対面販売に対して、Eマートは百 貨店風の接客・対面販売)、エンターテインメント施設の導入(レストラン街+ミニテーマパーク+快適 空間) 、巡回バスの提供…等を行っている。このような百貨店並のサービス提供は他の外資系割引店には 真似が出来ない。アメリカでは、ターゲットが、百貨店系のディスカウントストアであるためウォルマ ートとは異なった店舗イメージ・商品提供方法・生活の提案性…等の百貨店系ならではの武器を導入し て成功している。所得構造の中流集中志向のわが国ではもちろん、アメリカのように所得構造の2極化 社会でも、品質を犠牲にする商法・顧客サービスを犠牲にする商法は通用しない。すなわち、生活者は 何かを犠牲にする安さではなく、何かを犠牲にしない安さでないと満足しないことを意味する。仮に、 何かを犠牲にする商法を行う場合は、競合店より同一品質の商品が3割以上安いことが前提になる(3 割の絶対的安さによる何かを犠牲にする商法の成立の原則−例外の原則) 。実は、アメリカの低所得者に 対し、何かを犠牲にする商法が通用していたのは、生活者がガマンしていただけであって、本当はいや だったわけである。 Eマートは、割引店を開発するにあたり、百貨店という企業力(新世界百貨店)の持つ固有の特性を 見事に導入し成功している。 ⑥率の経営によるローコストオペレーション手法の導入 Eマートは割引店業態でありながら、商品質・高サービス・高イメージを構築している。当然ながら 本来ならば高コスト体質になりがちである。 高コスト体質とならないように、率の経営を導入している。 絶対的なローコストの追求と同時に、率による相対的なローコスト経営の導入である。韓国内での圧倒 的売上シェアに基づくバイイングパワー(外資系の割引店より3倍の仕入高)により、仕入れの絶対的 ローコストと同時に、開発コストやオペレーションコストは、ハイイメージ・ハイサービスを提供する ために絶対コストは高まっても、対売上高比から見れば低いコストに納まっている率の経営を導入して いる。生活者に高満足を与えるためや競合店に打ち勝つためには追加的コストが必要となる。この追加 的コストにより、競合店との差異化・特化戦略が可能となり、その結果として売上高の絶対額の大きさ と売場効率が高まることにより、 売上対比で見ると結果的にローコストとなることになる。Eマートは、 絶対的ローコストを確立した上で、戦略的付加価値商法の追加コストを、売上高の絶対額の大きさと売 場効率の高さによって吸収している。 以上のように、Eマートは韓国の流通業界の中で、唯一GMS業態として成長しています。カルフー ルもウォルマートもEマートとの直接競合において完敗しています。わが国のゼネラリティ業態は百貨 店業態とGMS業態に2極化しています(アメリカでは百貨店業態とディスカウント業態が2極化し、 中間のGMS業態ニーズは空洞化しています)。わが国ではディスカウントストアは所得構造的に成長が 困難といわれてきました。わが国の生活者は世界一厳しい目を持っているため、何かを犠牲にするディ スカウント商法は通用しませんが、何かを犠牲にしないディスカウント商法は、客にとって何の問題は ありません。わが国で失敗したディスカウント商法は、何かを犠牲にした手法か、絶対価格が3割以上 継続的に安くなかったからです。Eマートは正に、 「絶対的安さと相対的安さの複合」による価格戦略を 基軸に、高イメージ・高品質・高サービスを付加し、相反する購入動機を融合させた商法(六車流:流 通理論)を展開し、ハイパーマーケットやスーパーセンターに打ち勝っています。 (株)ダイナミックマーケティング社 代 表 む 六 ぐるま 車 秀 之