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組織学的切除断端陽性早期胃癌の追跡結果
日消外会誌 26(7)11944∼ 1950,1993年 組織学的切除断端陽性早期 胃癌 の追跡結果 谷川 治 裕 細川 福井県立病院外科 山崎 信 海崎 泰 治 渡 辺 国重 福 島 栄 過去 20年間 に開腹切除術 を行 った早期 胃癌 中 に 胃癌取扱 い規約 (改訂第 11版)で 定義 された組織学 的断端陽性例 は17例 (1.1%)存 在 した。 断端 陽性 に陥 った要 因 は表層拡大型早期癌 のため 切除断端 を 見誤 った ものが 8例 ,多 発癌 のため 4例 ,随 伴 IIbのため 2例 ,そ の他 3例 で あ った。切除断端 での癌 陽性幅 は10mm未 満 8例 ,10mm以 Omm<ow≦ 5mmが 上 9例 であ り,断 端 か ら癌細胞 までの距離 は ow=Ommが 12例, 5例 で あ った 。断端 へ の癌浸潤 は粘膜表層浸潤 8例 ,粘 膜深層浸潤 1例 ,粘 膜全 層浸潤 8例 で あ り,粘 膜下層浸潤例 は な か った。追跡 の結果, 6か 月 か ら 4年 の間 に 6例 の残 胃に遣 残癌 を見 出 し,再 切除を行 った。う ち 4例 は表層拡大型, 5例 は切除断端 の癌 陽性幅 が10mm以 上 し か も ow=Omm例 , 4例 は粘膜全層浸潤 で あ った.早 期 胃癌 の組織学的断端陽性例 で癌 が遺残 し,再 切除 が必要 とな る ものは表層拡大型,癌 陽性幅10mm以 上 ,ow=Omm,粘 膜全層浸潤例 に多 か った。 Key worde : cancer-positive stump, residual gastric carcinoma, remnant stomach carcinoma, early gastric carcinoma,gastric carcinoma は じめ に 色,必 要 に応 じてその他 の染色法 を用 いて観察 した。 進 行 胃癌 においては腹膜播種 , リ ンパ節転移,遠 隔 そ して,胃 癌取扱 い規約 (改訂第 11版)の 組織学 的 転移 な どの因子 が切 除後 の再発 を左右 し,た とえ切 除 断端 が陽性 で あ って も予後 へ の影響 は少 な い とされて 断端陽性 の基準 に該 当す る症例 ,す なわ ち 「固定標 本 い る。 しか し所 属 リンパ節転移 な どの 目外 へ の進展 が 抽 出 し,臨 床病理学的検討 を行 った。 また これ らの症 少 ない早期 胃癌 において切除断端陽性 は大 きな問題 で 例 を 3年 2か 月 か ら21年10か月間 (平均 9年 8か 月間) あ る。現行 の 胃癌取扱 い規約 (改正第 11版)1)では切 除 追跡 した 。追跡 の方法 は研究期 間 の前半 は主 に X線 検 断端 か ら5mm以 内 に癌 細胞 が認 め られ る ものが 組 織 で断端5mm以 内 に組織学的 に癌細胞 を認め る」症例 を 査 と内視鏡 の併用,後 半 は内視鏡検査 のみ を用 い,断 学的 断端陽性 と定義 され,癌遺残 と同義 とされて い る。 端 と吻合部 を中心 に観察 した。検査 は約 6か 月間隔 で しか し近年早期 胃癌 に対 して 内視鏡 的切除 が根治 を 目 5mm 的 に行われ るのよ うに な った こ ともあ り, この 「 行 い,内 視鏡的生検 で癌 の遺残 が組織学 的 に診 断 され 規定」は見直 され る機 運めに あ るよ うであ る。そ こで こ い症例 は追跡 を継続 した 。 の機会 に 当科 での切 除断端陽性早期 胃癌例 の検討 を行 い,癌 遣残 と再切 除 に結 びつ く要 因 の検討 を行 った。 た。生存者 は そ の後 の 断端再発や追加手術 の有無 を, 対 象 と方法 死亡者 には死 因 の調査 を行 った。全例 の消息 を得 てお 1971年か ら1990年までの20年間 に福井 県立病 院外科 で 開腹切 除術 を行 った早期 胃癌症例 は1,532例で あ る。 た症例 に残 胃の再切 除を行 い,癌 の遺残 が発見 され な 最終的 に1992年9月 1日 の時点 で生死 の調査 を行 っ り,追 跡判 明率 は100%で あ る。 結 果 切 除後 断端処理 に用 いた ペ ッツ針 な どをはず し,原 則 (1)組 織学的断端陽性症例 の比 率 として大留側 で切 開 し粘膜面 を上 に展 開 して固定 した 切 除早期 胃癌 1,532例中 に切 除断端 よ り5mm以 のち,癌 巣 は もちろんそ の周辺 を含めてで きるだ け広 い範 囲 に 幅5mmの 階段 状 切 開 を加 えて,主 に HE染 内に 癌 細 胞 が 存 在 した組 織 学 的切 除 断端 陽 性症 例 は17例 (1.1%)存 在 した。日 側 断端 が陽性 であ った ものは15 例,肛 門側断端 が 陽性 であ った ものは 2例 で あ った。 <1993年 2月 10日受理>別 刷請求先 !細 川 治 〒910 福 井市四 ツ丼 2-8-1 福 井県立病院外科 切除術式 は幽門側切除術 13例,噴 門側切除術 2例 ,全 摘術 2例 で あ った 。 口側 断端陽性 15例は幽 門側切 除術 33(1945) 1993左 「7月 が 3例 で あ と全 摘術 の症例 で あ り,肛 門側 断端陽性 2例 は噴 門側 断端陽性例 の深達度 は m癌 が 5例 ,sm癌 切 除術 を行 った症例 で あ る。幽門側切除術 と噴 門側切 除術 を行 った症例 の断端処理 には ペ ッツ針 を使用 して り,組 織型 は腺管形成 の認 め られ る pap,tubl,tub2な どの分化型 が 5例 ,腺 管形成 の認 め られ ない por,sig お り,ま た全摘術 の うち, 1例 は手縫 い, 1例 は 自動 吻合器 を使用 した.切 除断端陽性 の部位 は幽門側切除 な どの未分化型 が 3例 であ った 。 術 と全 摘 術 で は食 道 か ら C領 域,噴 門切 除術 で は M 同期 間 に 当施設 で切 除 され た 多発 早 期 胃癌 は196例 で,断 端 陽性 4例 の 占め る比率 は2.0%で あ った 。多発 領域 で あ り,壁 在 では小彎 10例,前 壁 2例 ,後 壁 3例 , (b)多 発癌例 (2)切 除断端 陽性 とな った要 因 癌巣 の うち断端陽性 であ った癌 巣 は どの症例 で も 1個 ず つ で,癌 巣径 の小 さい,深 達度 の浅 いほ うの癌 巣 で 切除断端陽性 17例の陽性 に陥 った要 因 の検討 を行 っ あ った。 大彎 2例 で あ った 。 (c)随 伴 IIb例 た 。癌巣 の面積 が50×50nlln2以 上 の表 層拡大型早期癌 のため に断端側 の病巣境界 を誤認 した ことが主 因 と考 同期間 に当施設 で切 除 された随伴 IIbを有 す る早 期 え られた ものは 8例 で あ った。 また多発早期 胃癌 の ロ 胃癌 は37例で,断 端 陽性 2例 の 占め る比 率 は5.4%で あ った。断端陽性例 の深達度 は m癌 ,sm癌 1例 ず つ で 側病巣 の見落 としが要 因 で あ った もの は 4例 ,比 較 的 難 な IIb領域 明瞭 な癌巣 の断端側 に周 囲粘膜 と識Fll困 あ った。2例 ともに組織型 は未分化型腺癌 で 肉眼型 は を見落 とした ,い わ ゆ る随伴 IIb症例 は 2例 であ った。 IIcttIIbで あ った。 (3)断 端浸潤 の様式 この ほ か の理 由 に よ る も の も 3例 存 在 した (Table (a)表 層拡大型例 組織学的 な癌 浸潤 が切除断端 に及 んでい る様式,す なわ ち断端 陽性 の幅,断 端 か ら癌細胞 までの距離,断 同期間 に当施設 で切 除 された表 層拡大型早期 胃癌 は 端 へ癌細胞 が浸潤 した層 の検討 を行 った (Table 2). l), (a)断 端 陽性 の 幅 185例で,断端陽性 8例 の 占め る比率 は4.3%で あ った 。 Table I Casesof early carcinoma of the stomach with residual carcinoma cells in the surgical margins Size 5 6 8.3cm 8 2 ︲ 2.5cm 4 ・ 4.0cm 6 ︲ 2.7cm 7 ・ 3.8cm 4.5cm IIc―卜IIa IIc IIa IIb IIb ttIIa Hc ttIIb IIc ttIIb IIa IIc IIc Omm 0.5cm 5mm 2.5cm Omm 0.5cm 2mm 0.5 cm Omm 0.5cm 2mm 1.0cm Omm 1.5cm Omm 0.5cm Omm 1.5cm Omm 0.5cm 5mm 0.5cm 5mm 0.5cm Omm ︱ ﹁ ョ 5 ・ 5.0cm IIc ttIIb Omm 1.5cm コ 3 ︲ 4.0cm Hc ttIIa Omm 1.5cm Macroscopic feature Superficial spreading type Multiple b ︲ い い 1 ︲ 1.3cm IIc Omm 1.0cm r e 0 ・ I.2cm IIc ttHI Omm ︲ ﹁ ョ 9 12.4cm IIc ttIIb 1.5cm 2.0cm ョ 7 8.5cm ll.7 cm Hc ttIIb Distance ︱︱︱︱ 4 8 . 2c m IIc Microtype ﹁ 3 7.7cm Macrotype .o 2g p︲ r a gb gb o ur ︲mmmmp ︲ uS p理的め助 t mps t S 2 7.5cm mm mmms m mm mms mmmms mmms 1 6.2cm Depth Width p pWW ︲ ︲ ︲ ︲ ︲ ︲ e u 鋤︲ a a aW as a aW aWW︲ aWd 的 Surgical margin Carcinoma lesions m: intramucosal, sm: invaded submucosa width: extent along surgical margtns, distance: interval from surgical margins to carcinoma cells, invasion depth: depth of carcinoma cells at surgical margins, super: superficial layer of mucosa, deep: deep layer of mucos:t, all: all layer of mucosa. 34(1946) 組織学的切除断端陽性早期胃癌の追跡結果 Table 2 Microscopic findings of ttre surgical margins with residual carcinoma cells width cases Distance 0 m m 1-5 Invasion depth superficial deep all 再構築 図上 で 1 切 片のみ が断端陽性で, 断 端 に沿 っ 日消外会議 26巻 7号 組織学 的断端陽性早期 胃癌 17例を平均 9年 8か 月間 追跡 した結果 ,健 存例 は15例で あ り,死 亡 例 は 2例 で あ った,健 存例 の うち残 胃に癌 遺残 が発見 され ない非 再発健存例 は 9例 ,癌 遺残 が発見 された残 胃再切除例 は 6例 で あ った。死 亡例 の うち 胃癌再発例 は 1例 ,他 癌死 亡 例 (喉頭癌 )は 1例 で あ った (Table 3).胃癌 再発死亡例 は最大径 12.4cmに お よぶ sm浸 潤 の IIc十 11a型癌 で リンパ 節転 移陽 性例 で あ った.胃 全 摘 術 を 行 った 2年 2か 月後 に リンパ節再発 で死亡 したが,断 端部 の癌 遺残 は証 明 され なか った。 (5)残 胃切除例 の検討 組織学的断端陽性17例の うち遺残 ・再切除例 は 6例 た 幅 が1 0 m m 未 満 で あ った ものは 8 例 , 2 本 また は 3 本 で 陽 性 で1 0 m m 以 上2 0 m m 未 満 で あ った もの は 7 表層拡大型 が 8例 中 4例 ,多 発癌 4例 中 1例 ,そ の他 例, 4 本 または 5 本 で 陽性 で2 0 m m 以 上3 0 m m 未 満 で あ った ものは 2 例 で あ った。3 0 m m 以 上 の症例 は存在 ヤ まなか った (Table 4). しなか った, 断 端 陽性幅 が1 0 m m 以 上 の症例 は表 層拡 大型 で は 8 例 中 6 例 , 多 発癌例 で は 4 例 中 2 例 , 随 伴 I I b 2 4 2 11中 例 で あ った 。 ( b ) 断 端 までの距離 断端 か ら癌細胞 までの距 離 をみ る と, o w = O m m 例 は1 2 例, l m m ≦ o w ≦ 5 m m 4 / 1 1 は5 例 で あ った。 o w = 0 m m の 症例 は表層拡大型 では 8 T r l 中 6 例 , 多 発癌例 で は 4 例 中 3 例 , 随 伴 I I b 例では 2 例 中 2 例 であ った 。 (35.3%)で あ った。断端陽性 に陥 った要 因別 にみ る と, の要 因 が 3例 中 1例 で あ り,随 伴 IIb例で は再切 除例 また 断端 陽 性 の 性状 か らみ る と断端 陽 性 の 幅 が1 0 Table 3 Follo、 v― up results of early gastric carciⅢ noma with hist010glcally cancer― positive stulnps 崎 cases花 謎!理 猛将抵:群 盟inoma告 ::遼 : 2 catts.重 deurrenω r∝ ymph n° よ :貫 畳 岳 冨そ ( c ) 断 端 へ の 胃壁層別癌 浸潤 胃壁層別 の癌細胞 の断端浸潤 をみ る と, 粘 膜下層 で 断端陽性 とな った 症例 はな く, 全 例 が粘膜層 でのみ 断 端 陽性 で あ った。粘膜表層 でのみ断端 へ の癌 浸潤 が あ る ものは 8 例 , 粘 膜深層 のみの例 は 1 例 , 粘 膜全層 の 例 は 8 例 で あ った 。表 層拡大型 では 8 例 中粘膜表層浸 潤 3 例 , 粘 膜深層 浸潤 1 例 , 粘 膜全層 浸潤 4 例 であ り, 多発癌例 では 4 例 中粘膜表 層浸潤 3 例 , 粘 膜全層浸潤 1 例 , 随伴 I I b 例で は 2 例 中粘膜表層浸潤 1 例 , 粘膜全 Table 4 Frequency of residual gastic carcinoma in patients with histologically cancer-positive stumps(1) Superficial spreading Multiple lesions Coexisted IIb Others Total 500%(4/8) 250%(1/4) 000%(0/2) 333%(1/3) 353%(6/17) 層浸潤 1 例 で あ った, ( d ) 断 端陽性 の幅 と距離 , 胃壁層別癌 浸潤 の関連 断端 陽 性 幅 が1 0 m m 未 満 の 8 例 に お いて は o w = 0 mmの ものは 3 例 に過 ぎな いが, 幅 が1 0 m m 以 上 の も のでは 9 例 す べ てが o w = O m m で あ り, 断 端 陽性幅 と Table 5 Frequency of residual gastric carcinoma in patients with histologically cancer positive stumps(2) 存在す るが, 粘膜全層浸潤例 では 8 例 中 3 7 1 1 と 少 ない。 粘膜全層浸潤例 のほ うに断端陽性幅 が広 い傾 向 がみ ら れた 。 ( 4 ) 追 跡結果 (10 mm ヽ Vidth 断端 か ら癌細胞 までの距離 は相 関 した。他方, 断 端陽 性幅 が1 0 m m 未 満 の もの は粘膜表層浸潤 8 a l lは で5例 <20 Distance <30 0 m m lnvasiOn depth superfical 1-5 deep all 125%(1/8) 571%(4/7) 500%(1/2) 417%(5/12) 20_0%(1/5) 125%(1/8) 1000%(1/1) 500%(4/8) 35(1947) 1993年 7月 Fig. 1 Schemas of re-resectedcasesfor residual gastric carcinoma 7. 7X4. ‖o + H b 1 sio o mm 0 Cn deep tayer 1 1. lX 8. 6 months 2m ‖ 。■ ‖ b t → 2. 5m u b l 0trD al I laycr ? nonths 8. 2 X 6 1 ‖。■‖ t l. 5m ubi 0nn alI lay€r 6. 2X4 scm ‖c l. sig 0Dn → al I laysr 4. 6Xl 2 y 9 ロ 7印 ‖b ■‖a t u b , t. 5il 0mn s u p e r fi c i a I → 3 y 3 m 3 . E x 2 . ll c t ubr s m → 4yOm 36(1948) mm未 組織学的切除断端陽性早期 胃癌 の追跡結果 満 の ものは 8例 中 14/1に 過 ぎな いが,10mm以 日消外会議 26巻 7号 ち早期 癌 は 7例 で あ った と報告 してい る。切 断早期 胃 上20mm未 満 では 7例 中 4211,20mm以 上30mm未 満 では 2例 中 1例 が再切 除 を必要 とした。す なわ ち組織 癌 中 に 占め る断端 陽性例 の比 率 に 関 しては,沢 らいが 学的断端陽性幅が10mm以 上 の4alの 半 数 が追跡 の結果 外 には報 告 は少 な い。 われわれ の施設 では従来早期 胃 癌遺残 が発見 され ,再 切 除を要 した (Table 5)。 癌 の治療方針 として縮 小手術 を行 ってお り,胃 全摘術 で は な く部分切 除 を選択す るよ う努 めてい るので,沢 切除断端 か ら癌細胞 までの距離 をみ る と ow=Omm で は12例 中 5例 が 再 切 除 を 必 要 と した が,lmm≦ ow≦ 5mmで は 5例 中 14/1のみで あ った 。 また層別 癌 浸潤 では粘膜表層 浸潤 8例 の うち 1例 に再 切除 が 行わ れただけであ るが,粘 膜全層浸潤 8例 中 4例 が再切除 を必要 とした。粘膜深層浸潤 1例 も再切除 を要 した. 再切 除 まで の期 間 は最 短 6か 月 間,最 長 4年 間 で あ った (Fig.1).再 切 除 した残 胃の癌 が早期癌 の状態 単発早期 胃癌359例中 1例 0.3%で あ った としてい る以 らに比較 して 断端 陽性率 が高 くな った と考 え られ る。 疑 わ しい症例す べ てに 胃全摘術 を行 えば断端 陽性 の面 か らは安全 で あ るが,不必要 な胃全 摘症例 が増加す る。 源 ら1。も胃全 摘術 を行 った早期 胃癌35例 の retrospec‐ tiveな検 討 で, う ち12711は よ り縮 小 した手術 がで きた ので な いか としてお り, 胃全摘術 の厳 正 な適応 が必要 で あ る と主張 してい る。 に とどま るものは 5例 であ り, 4年 経過 した 1例 で は 17例の 組織 学 的 断端 陽性 早期 胃癌 例 を 断端 陽 性 に 進行癌 とな っていた。残 胃の痛 の大 きさは0.7cmか ら 陥 った成 因別 に検 討す る と最 も多 い ものは表 層拡大型 で半数近 い 8例 を 占めた,熊 谷 ら11)は 表層拡 大型早期 7.Ocmま でで あ り,深 達 度 は m4例 ,sm l例 ,ss l 例 であ った。残 胃の癌 が遺残 した部位 は全例小腎 の縫 胃癌 の67%が 胃底腺 と萎縮帯が混在す るいわ ゆ る中間 合部 で あ った。再切除 6例 は調査時点で再切除後最短 常 に存在 した としてい る。 中間常 は 胃底腺 の萎縮 とと 7年 8か 月を経過 してい るが全例生 存 してお り,断 端 陽性 か ら癌遺残 ,再発死 亡 につ なが った例 は なか った。 もに 日側 に上 昇す るので, この領域 に存在す る ことが 多 い表層拡大型早期癌 の 口側 断端 は その識別 しに くい 考 肉眼形態 とあい まって,切除 の際 に問題 にな りやす い。 察 冒癌取扱 い規約 (改訂第11版)で は 「断端5mm以 内 次 いで 多 いのは多発癌 4症 例 で あ る。多発癌 巣 の う に組織学的 に癌細胞 を認め るもの」 を組織学 的断端 陽 性 と定義 してい る。断端 か らの距離5mmと 規定 した こ ち 口側病変 よ り肛 門側病変 が大 きさ,深 達度 ともに増 してい る場合 が 問題 で あ る。肛 門側病変 の 印象 が強 い とに対 して 明確 な根拠 は示 され なか った。最近早期 胃 ため 口側病変 を見落 とし,単 発癌 と誤認 して断端 陽性 癌 に対 して内視鏡的粘膜切除が普及 し,根 治的意味合 い を もって行われ てい る。この場合5mm規 定 を適応 す に陥 った もので あ る。 そ して癌巣径 は それほ ど大 き く る と大 半 の症例 は組織学的断端陽性症例 とな り,痛 遺 残 と同義 として取 り扱 うこ とにな る.そ のため 内視鏡 が存在 した.こ の随伴 IIb症4711は 2 例 に過 ぎな いが,同 で の断端 陽性比率 は5.4%で あ り, 期 間 の随伴 IIb 37例 的切 除 で は5mm規 定 を完全切 除 の判定 に用 い る こ と は な く,浜 田 ら。は癌 か ら断端 まで に正 常腺 管 10個以 表層拡大型 の4.3%,多 発癌 の2.0%よ りも高 い もので あ った.滝 沢 ら121も 切 除断端 の判 定 が 困難 な症例 を検 討 して IIbあ るいは IIb類似癌 単独 よ りも,明 瞭 な病 変 が共 存 してい る場合 に一 層切 除範 囲 の診断 が 困難 に 上 存在す ることを完全切除 の判定基準 として提 唱 して い る。他方,関 ら"は 進 行癌 では断端 陽性 に陥 る症例 は 他 の予後規定 因子 (PHNS)が か な り進 行 してお り, 切除断端 陽性 が予後 を左右 した と思われ る例 は少 な い としてい る。この よ うに切 除断端5mm規 定 は早期 胃癌 ないが,主 た る肉限型 の 日側 に IIbを伴 う断端 陽性例 な る と指 摘 してい る。 断端 へ の癌細胞 の 胃壁層別浸潤 を検討す る と粘膜下 内視鏡的切除 か らみて厳 しす ぎ,進 行 胃癌 か らは治療 層 の例 は存在 しなか った.粘 膜表 層浸潤 が 8例 ,粘 膜 全層浸潤 が 8例 で,粘 膜表層 に癌 が存在 せ ず深層 のみ 結果 に反映 され る こ とは少 ない。 を断端 まで癌細胞 がは った もの は 1例 だけで あ った。 しか し早期 胃癌 の 開腹切除例 において再発死亡例 は 2∼ 3%611/こ 過 ぎず,切 除断端陽性 は癌 を遺残 させ ,再 発死亡 に結 びつ く大 きな要 因 の 1つ とな る。 当施設 で 粘膜表層 に癌 が露 出 してい る症例 が大半 で あ る ことか が述 べ てい るよ うに術前 に内視鏡 的生検 ら,高 木 ら1。 で癌 の粘膜 内 の有無 を確認 して点墨 で マ ー クしてお け は過去 20年間 に組 織学的断端陽性早期 胃癌 が17711存 在 し,そ の比 率 は1.1%で あ った 。西 土井 らのは切除断端 ば,早 期 胃癌 の 断端 陽性allの 17例中 16例は防 ぐこ とが 陽性 胃癌 40例の うち早期癌 は 6471,荒 木ゆは61例の う 速病理検査 を行 えば,全 例 の断端 陽性 を防 ぐ こ とが可 で きた と考 え られた。 もちろん手術 中 に切除断端 の迅 37(1949) 1993年7月 能 であ った 。 しか しす べ ての早期 胃癌 の術中迅速病理 高 か った 。 した が って切 除 断端 か ら癌 細 胞 まで の 距 離 検査 を行 うのには多 くの制 約 が あ り,前 述 した組織学 的 断端陽性 に陥 りやす い症例 の特徴 を念頭 において症 の種 類 も再 切 除 に 関 連 した 。 例 を選 んで 断端 の迅速検査 を行 うのが合理的 と考 え ら れ る。 手術後 に組織学的 断端 陽性 と判 明 して もす ぐ再手術 に踏み切 る こ とはため らわれ る もので あ る。経過追跡 の報告 して,小 沢 ら10は ow(十 )胃 癌症例 29例を追 跡 して 3年 以上生存 した ものが12例み られた として い る が,断端陽性早期 胃癌 を長期間追跡 した報告 は少 な い。 わ れわ れ は断端陽性早期 胃癌 17例の残 胃, と りわ け断 端,吻 合部 を X線 検査,内 視鏡検査 を用 いて追跡 した。 6か 月 か ら 4年 間 の間 に 6例 の残 胃に 内祝鏡的生検 で 組織学的 に遺残癌 を見 出 し,再 切除 を行 った。遺残癌 が発見 され ない症例 に関 しては観察 を行 い,再 切除 を 行 っていなもヽ . 要 因別 で は表 層拡大型 8 例 中半数 の 4 例 が遺残痛 の ため に再 切除を必要 とした 。こ のほかでは多発癌 で 4 例 中 1 例 が再切除 された が, 随 伴 H b 例 で は再 切 除例 は なか った。表 層 拡 大型 で組 織 学 的切 除 断端 陽 性 に 陥 った 場 合 は と りわ け丹 念 な追 跡 が 必 要 と考 え られ る。 未で 断端 に沿 った癌細胞陽性 の幅 をみ る と1 0 1 1 1 1 n満 は 8 例 中 1 例 が追残癌 のため に再切 除 を必要 としただ けであ るが, 1 0 m m 以 上 では 9 例 中半数 を超 える 5 例 が再切除 された, そ して痛細胞 か ら断端 までの距離 を み る とow=Ommの 例 で は1 2 例中 5 例 が 再 切 除 を必 要 としたが, l m m 以 上断端 までの距離 が あ る 5 例 では 再 切 除 が 必 要 とされ た の は 1 例 のみ で あ る. o w = 0 mmに もかかわ らず 7 例 は遺残癌 が発見 されず , 残 胃 の再切除 を行 っていない。 この うち 4 例 は断端陽性帽 が0 . 5 c m と 狭 い ことか ら, 断 端 の ペ ッツ針処理や 断端 切離 に用 いた電気 メス に よる熱変成 のため癌細胞 が残 胃に遺残す る ことが防 げ たので あろ う。 また断端 へ の癌細胞 の 浸潤層別 で も粘膜表 層浸潤 の みの例 で は 8 例 中 1 例 が再切除 されたのみであ るが, 粘膜全層浸潤例や粘膜深層浸潤例 では再 切除 の割合 が と と もに,断 端 に 沿 った 癌 の 幅 や 粘 膜 内 の 癌 の 浸潤 層 文 献 1)胃 癌研究会編 :胃 癌取扱 い規約.改訂第 11版,金原 出版,東 京,1985,p10-11 2)大 柴二 郎 :早 期 胃癌 の内視鏡的切除一根治を 目的 として一.胃 と腸 26:253-254,1991 3)愛 甲 孝 ,帆北修 一,堀川佳朗 ほか 1早 期 胃癌 に対 一 す る胃全摘術 の適応 そ の 2-.外 科診療 34: 989--995, 1992 4)浜 田 勉 ,吉峰二夫,窪 田 久 ほか i早 期 胃癌 の内 視鏡的切除一 治癒判定基準 と予後 の関係 か らみた 問題点一.胃 と腸 261255-263,1991 5)関 正 威,小林正幸,羽 口野隆ほ か :胃 癌切除断端 陽性例 の検討.埼 玉医大誌 5:239-250,1978 6)細 川 治 ,山崎 信 ,津 口昇志 ほか :早 期 胃癌 1028 例 に 於 け る 再 発 死 亡 例 の 検 討. 臨 外 4 2 : 1983--1986, 1987 7)西 土井英昭,木村 修 ,岡本恒之 ほか 1胃 切除後断 端遺残例 における断端再発 とその病理組織学的検 討.日 消外会誌 14'1409-1413,1981 8)荒 木恒敏 :口 側 断端 陽性 胃痛 の 病 理組織 学 的検 討.久 留米医会議 49:1122-1133,1986 9)沢 俊 悦,武 田 隆 ,荒川光昭 ほか :切 除 胃癌断端 陽性例 の検討.山 形病医誌 22,6-11,1988 10)源 利 成,磨 伊正義 :胃 癌 の切 除範 囲決定 に関す る問題 点一切 除 す る立場 か ら一 .胃 と腸 25: 303--311, 1990 1 1 ) 熊 谷秀 一 , 中津基貴, 劉 星 漢 ほか : 表 層拡大型早 期 胃癌 よ りみ た 胃痛 の 発 育 進 展. 日 消 外 会 誌 17:862--866, 1984 12)滝 沢登一 郎,岩崎善毅,前 田義治 ほか :胃 癌 の切除 一 一 範 囲を ど う決め るのか 病理 の立場 か ら .胃 と 辺 矛 25:319--327, 1990 13)高 木国夫,太 口博俊,竹腰隆男 :胃 癌 の切 除範囲を ど う決 め る の か一 内 視 鏡 を 中 心 に一.胃 と陽 25: 281--290, 1990 1 4 ) 小 沢正則, 杉 山 譲 , 遠 藤正章 ほか : 胃癌手術 o w ( 十) 症 例 の検 討一 予後 に 関連 した因子 につ いて 一. 消 外 4 1 5 8 3 - 5 8 6 , 1 9 8 1 38(1950) 組織学的切除断端陽性早期 胃癌の追跡結果 日消外会議 26巻 7号 Follow up Studies of Early Carcinoma of the Stomach with Residual Carcinoma Cells in the Surgical Margins yutaka Tanigawa, OsamuHosokawa,ShinYamazaki,KunishigeWatanabe, YasuharuKaizakiand SakaeFukushima Departmentof Surgery,Fukui PrefecturalHospital From 1971to 1990,a total of 1523patients with early gastric cancer underwent gastric resectionin our hospital.Of these,17 patients(1.1%)had microscopiccancer-positive surgicalstumps.We conductedclinicopathologicaland follow'up investigationsin thesecases.From the standpointof morphologicalfeatures8 of the 17 caseswere the superficialspreadingtype, 4 were multiple cilncerouslesionsand 2 coexistedwith IIb lesions. Cancer-positive stumpsof eight caseswereunder 10mm in width and the othersmorethan 10mm. In 12cases. cancercells had invadedthe end of the resectedstump. In 8 casescancercells had spreadto the wedgeof the superficiallayer of thegastric mucosa,in onecaseof the deeplayer, in 8 casesof all layers.As a result ofexamining the residual stomach,we found residual gastric cancerin 6 casesand reresectedthen. Four caseswere of the superficialspreadingtype,cancer-positivestumpsof 5 casesweremorethan 10mm in width. and in 4 casescancer cell spreadto the wedgeof all layers. Reprint requests: osamu Hosokawa Departmentof Surgery,Fukui PrefecturalHospital 2-8-1Yotsui,Fukui, 910JAPAN