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超遠隔マイクロ波送電および 通信技術の開発に関する フィージビリティ

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超遠隔マイクロ波送電および 通信技術の開発に関する フィージビリティ
システム開発
16−F−12
超遠隔マイクロ波送電および
通信技術の開発に関する
フィージビリティスタディ
報 告 書
-要 旨-
平成 17 年 3 月
財団法人 機械システム振興協会
委託先 財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件は急速
な変化を見せており、社会生活における環境、都市、防災、住宅、福祉、教育等、直面する問題
の解決を図るためには技術開発力の強化に加えて、多様化、高度化する社会的ニーズに適応する
機械情報システムの研究開発が必要であります。
このような社会情勢の変化に対応するため、財団法人機械システム振興協会では、日本自転車
振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、経済産業省のご指導のもとにシステム技術開発調
査研究事業、システム開発事業、新機械システム普及促進事業等を実施しております。
このうち、システム技術開発調査研究事業およびシステム開発事業については、当協会に総合
システム調査開発委員会(委員長:放送大学副学長 中島 尚正氏)を設置し、同委員会のご指導
のもとに推進しております。
本「超遠隔マイクロ波送電および通信技術の開発に関するフィージビリティスタディ」は、上
記事業の一環として、当協会が財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構に委託し、実施した
成果をまとめたもので、関係諸分野の皆様方のお役に立てれば幸いであります。
平成17年3月
財団法人 機械システム振興協会
はじめに
本報告書は、財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構が、平成 16 年度事業として、財団法
人機械システム振興協会から受託した「超遠隔マイクロ波送電および通信技術の開発に関するフ
ィージビリティスタディ」の実施内容をまとめたものです。
発送電一体型パネルは太陽光発電等による電力をマイクロ波に変換し送信することにより遠隔
電力電送を行うことができかつ情報通信にも応用が可能なもので産業全般に幅広い利用が見込ま
れています。このため平成 15 年度に単体(1 枚)のパネルによる各種センサ、通信機器としての
利用案の検討を行うとともに、パイロット信号に応じて送電ビームを制御(レトロディレクティ
ブ技術)することができる発送電一体型パネルの試作を行いました。
さらに発展させて、この電源・アンテナ一体型パネル複数を平面状に並べて相互に協調動作させ
て同様のビーム制御が可能となれば、地上および宇宙での大電力マイクロ波送電への道が開かれ
る可能性があるとともに産業全般へのさらに幅広い利用が見込まれます。
このため複数の協調動作する発送電パネルの利用案についての検討を行うとともに、昨年度試
作した発送電一体型パネル等の既存試作品を活用して 2 枚の送電アンテナパネルを組合せた試験
を実施し、マイクロ波ビームの合成/制御/補正に関する各作動原理の確認を行っています。
本フィージビリティスタディの成果が関連各位にとって参考となり、機械振興の一助となれば
幸いです。
平成17年3月
財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構
目次
序
はじめに
1. スタディの目的.......................................................................................................................... 1
2. スタディの実施体制 .................................................................................................................. 2
3.
スタディの成果の要約 .............................................................................................................. 5
3-1 複数組合せた多機能インテリジェント構造体としての利用の有効性・方向性の検討 .......... 6
3-1.1 目的 ................................................................................................................................... 6
3-1.2 検討概要............................................................................................................................ 6
3-1.3 多機能インテリジェント構造体の構成 ............................................................................ 6
3-1.4 昨年度までの検討結果...................................................................................................... 9
3-1.5 複数枚の多機能インテリジェント構造体を組合せることによる高機能化.....................11
3-1.6 各種利用案(現状との代替可能性) .............................................................................. 13
3-2 複数の電源・アンテナ一体型パネルの総合動作試験 ........................................................... 22
3-2.1 試験の目的........................................................................................................................ 22
3-2.2 実施内容............................................................................................................................ 22
3-2.2.1 組み合わせ試験.......................................................................................................... 22
3-2.2.2 総合動作試験.............................................................................................................. 22
3-2.3 試験の構成 ...................................................................................................................... 23
3-2.4 総合動作試験の実施........................................................................................................ 24
3-2.4.1 組み合わせ試験結果................................................................................................. 24
3-2.4.2 総合動作試験結果 .................................................................................................... 30
3-2.5 評価と今後の課題検討.................................................................................................... 35
3-2.5.1 総合動作試験評価 .................................................................................................... 35
3-2.5.2 今後の課題 ............................................................................................................... 35
4. スタディのまとめ・今後の展開 .............................................................................................. 36
参考資料 A
既存の要素試作品の概要 ......................................................................................A-1
A.1 平成 14 年度試作品概要.....................................................................................A-1
A.2 平成 15 年度試作品概要.....................................................................................A-3
1.
スタディの目的
電源・アンテナ一体型パネルは、電力をマイクロ波に変換し送信することにより、遠
隔電力電送を行うことができかつ情報通信にも応用が可能なもので、産業全般に幅広い
利用が見込まれている。
このため平成 15 年度に単体(一枚)のパネルによる各種センサ、通信機器等として
の利用案の検討を行うとともに、パイロット信号に応じて送電ビームを制御(レトロデ
ィレクティブ技術)することができる発送電一体型パネルの試作を行った。
さらに発展させて、この電源・アンテナ一体型パネル複数を平面状に並べて相互に協
調動作させて同様のビーム制御が可能となれば、地上での大電力マイクロ波伝送等への
道が開かれる可能性がある。
また現在地上で主流のパラボラ型大型アンテナに代わり、パネルを多数組み合わせて
平面アンテナを構成することにより大型アンテナ建設の簡易化・低コスト化にも道が開
ける可能性をも有している。
このため、本スタディでは、超遠隔マイクロ波送電・通信技術に必要な、複数枚の発
送電一体型パネルの総合動作、レトロディレクティブ(ビーム制御)等の技術を確認す
ることを目標とした検討を実施する。
1
2.
スタディの実施体制
本スタディの実施体制は、
(財)機械システム振興協会内に「総合システム調査開発委員会」
を、
(財)無人宇宙実験システム研究開発機構内に「マイクロ波技術委員会」を設置し、マイ
クロ波送電技術や利用案について意見・アドバイスをもらいながら進めた。再委託先は、平成
14 年度に「フェーズドアレイによるビーム制御システムと半導体アンプの高効率化」の試作
を行った三菱重工業(株)および平成 15 年度に「電源・アンテナ一体型パネル基本ユニット(プ
ロトタイプ)
」の試作を行った三菱電機(株)に決定した。
(財)機械システム振興協会
総合システム調査開発委員会
委託
(財)無人宇宙実験システム研究開発機構 (USEF)
調査研究部
マイクロ波技術
委員会
再委託
三菱重工業(株)
三菱電機(株)
各役割・構成は以下のとおりである。
・ (財)機械システム振興協会、総合システム調査開発委員会は、全体の進行や作業状況の
チェックを行い、成果報告書等を確認する。
・ (財)無人宇宙実験システム研究開発機構(調査研究部)は全体まとめ、利用案の検討、
試作品の概念設計を行う。
・ マイクロ波技術委員会は、京都大学および宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部の専
門家で構成し、利用案の検討、技術支援、設計レビュー、総合動作試験検討等を行い報告
書原稿のレビューを実施する。
・ 再委託先の三菱重工業(株)
、三菱電機(株)は総合動作試験の準備(試作品の詳細設計・
製作)
、試作品単独の試験、総合動作試験の計画、実施、利用案の提案を行う。
2
総合システム調査開発委員会の委員名簿を以下に示す。
総合システム調査開発委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長
放送大学 副学長
中 島 尚 正
委 員
政策研究大学院大学
藤 正
巌
廣 田
薫
政策研究科
教授
委 員
東京工業大学
大学院総合理工学研究科
知能システム科学専攻
教授
委 員
東京大学大学院
藤 岡 健 彦
工学系研究科
助教授
委 員
独立行政法人産業技術総合研究所
太 田 公 廣
産学官連携部門
コーディネータ
委 員
独立行政法人産業技術総合研究所
志 村 洋 文
産学官連携部門
シニアリサーチャ
3
また、
(財)無人宇宙実験システム研究開発機構内に置かれた「マイクロ波技術委員会」と
しては、平成 15 年度に引き続き下記の 4 名の先生方に委員になって頂き、技術支援、設計レ
ビュー、その他の作業をお願いした。
氏 名
川崎 繁男
所
属
京都大学 生存圏研究所 客員教授
(委員長)
佐々木 進
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 宇宙情報・エネルギー工学研究系
教授
篠原 真毅
京都大学 生存圏研究所 助教授
田中 孝治
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 宇宙情報・エネルギー工学研究系
助教授
開催した委員会の開催日と主要テーマを以下に示す。
第 1 回:平成 16 年 9 月 10 日(金)
・ 総合試験について(1)
全体作業スケジュール、試験仕様、試験計画書、位相同期システムの改修仕様、総合動作
試験用治具仕様
第 2 回:平成 16 年 12 月 27 日(月)
・ 総合試験について(2)
全体作業スケジュール、総合動作試験仕様について、試験計画書、試験治具仕様に
ついて、まとめ
・ 電源アンテナ一体型パネルの利用案について
第 3 回:平成 17 年 2 月 14 日(月)
・ 総合試験結果速報
・ 総合試験実施状況見学
4
3. スタディの成果の要約
スタディは以下の 2 項目について行った。
(1)複数組合せた多機能インテリジェント構造体としての利用の有効性・方向性の検討
平成 15 年度の単体としてのパネルの利用の有効性・方向性の検討結果を踏まえ、さら
に複数枚を平面状に並べて相互に協調動作させた電源・アンテナ一体型パネルの地上での
大電力マイクロ波伝送、大型アンテナ、その他としての利用等について検討する。
(2)総合動作試験
ア、総合動作試験準備
これまでの研究において試作した下記の要素試作品の貸与を受け、それらを組合せた総
合動作試験を実施するため、詳細試験計画の検討および必要な改修、付加設計・製作を行
う。
・
分離した系での位相同期システム
・
フェーズドアレイによるビーム制御システムと半導体アンプの高効率化
・
電源・アンテナ一体型パネル基本ユニット(プロトタイプ)
イ、総合動作試験の実施
ア項の総合動作試験の準備に引続き、総合動作試験を実施し複数枚の発送電パネルの総
合・協調動作を確認する。
ウ、評価と今後の課題検討
総合試験の成果について評価するとともに今後の課題をまとめる。
5
3-1 複数組合せた多機能インテリジェント構造体としての利用の有効性・方向性
の検討
3-1.1 目的
複数組合せた多機能インテリジェント構造体としての利用の有効性・方向性の検討を行う。
3-1.2 検討概要
電源・アンテナ一体型パネルは、電力をマイクロ波に変換し送信することにより、遠隔電力
電送を行うことができかつ情報通信にも応用が可能なもので、産業全般に幅広い利用が見込ま
れる。 平成 15 年度は「電源・アンテナ一体型パネル(別名:発送電一体型パネル、または
サンドイッチパネル等)
」の試作を行いハードウエアでの基本性能を確認するとともに、単体
の多機能インテリジェント構造体としての利用案(商品例)の洗い出しを行い、マイクロ波に
よる情報通信・電力伝送用電源・アンテナ一体型パネルの開発に関するフィージビリティスタ
ディ報告書をまとめている。
本報告では、平成 15 年度の検討結果を踏まえ、複数枚の多機能インテリジェント構造体を
組合せて用いる場合の利用案について検討を行っている。利用案の検討に際しては下記の視点
で調査を行った。
(1) 地上でのビジネスを意識した利用
(2) IC タグ等のビジネス拡大途上システムへの活用
(3) 近い将来に実用化が考えられるビジネス
検討内容として、まず多機能インテリジェント構造体について、反射鏡アンテナとのトレー
ドオフを行い、適合用途の明確化を図った。ここでトレードオフ対象を反射鏡アンテナとした
理由は、既存の無線通信などの用途で最も一般的に用いられていることによる。 ついで、多
機能インテリジェント構造体を複数枚組合せたシステムの構成形態および個別の利用案を示
し、その有効性について検討した。
3-1.3 多機能インテリジェント構造体の構成
多機能インテリジェント構造体について、これまで提案・開発されてきた多機能構造体とイ
ンテリジェント構造体をベースに、下記のような考え方で検討してきた。
○ インテリジェント構造体: 単なる構造体・パネルではなく、各種のセンサ(ひずみ、温
度、他)を埋め込んで自分自身をモニタし、場合によっては制振、修復等を能動的に行う
構造体であり、宇宙空間を長期間飛行する人工衛星や、修理・メンテナンスがしにくい場
6
所の構造体への応用が考えられている。
○ 多機能構造体: 単なる構造体・パネルではなく、構造体の内部に各種の機器・ワイヤハ
ーネス・熱制御材等を埋め込んでシステム組立の手間を省き、標準化を進める考え方で開
発されており、海外では小型衛星の標準化に一部活用されている。また、小型衛星の延長
で、サブシステムごとに1枚のパネル上に組上げてそれらをユニット化して一つの衛星を
構成する案もあり、これも多機能構造体と呼ぶこともある。
本報告では、多機能インテリジェント構造体として、アンテナ、IC(CPU)、電源部、回路部
その他を内蔵したパネルや板構造のものとして定義している。
平成 15 年度に機構で試作した多機能インテリジェント構造体のシステム構成を図 3-1.1 に
示す。この例では、
(1)SOURCE-PANEL、
(2)RF-PANEL、
(3)ANT-PANEL の3部
分で構成している。この試作におけるシステム構成は、多機能インテリジェント構造体におけ
る最小限の基本機能であるレトロディレクティブアンテナを実現するためのものに限定され
ており、利用用途に応じて拡張機能部のサブシステムが追加される必要がある。(例えば通信
では変復調機能、レーダでは測距測角機能など)。
7
ANT-PANEL
RF-PANEL
AMP +BPF
3-stage amp BPF
ftx=5770MHz
+29dBm
VCO
MIX
PFC
BPF
Loop Filter
×1.5
BPF or LPF 3-stage amp
frx=3844MHz
-40dBm
ftx=5770MHz
+29dBm
・
・
・
・
・
MULT
・
18MHz
AMP
MIX
MI
5752MHz
9V、 5V
8
D
I
V
VCO
PLL
3856MHz
8
D
I
V
・
・
・
・
RETRO-RFモジュール
・
・
12V、9V、 -5V
・
VCO
PLL
10MHz
S-PLOモジュール
PS-DIV2
9V 5V
frx=3844MHz
-40dBm
C-PLOモジュール
SOURCE-PANEL
Phase
Trimmer
12V、 9V、-5V
Reference
clock
12V
PS 9V
AC100
PS 12V
PS -5V
PS-DIV1
図 3-1.1 システム全体構成
8
3-1.4 昨年度までの検討結果
多機能インテリジェント構造体の利用案として、一般の人工衛星・太陽光発電衛星としての
用途、無線で電力を送る IC カード等の発想をもとに、新聞情報他の調査活動を行っている。
機能分野として、以下の分野を設定して利用案を検討している。
(1)通信機器
(2)モニタ・センサ
(3)コントローラ
(4)表示板
(5)電源機器
(6)その他
これらの利用案については、表 3-1.1 に示すように、分野ごとに纏めるとともに、下記項目
を含む表として整理している。
(1)機能・概観図
(2)全体構成・ブロック図
(3)特長・類似品比較
(4)実現性・開発要素
(5)市場性
(6)価格・その他
昨年度の検討結果の成果としては、下記でサマライズできる。
(1)商品例の調査
(2)多機能インテリジェント構造体としての利用案の洗出し
(3)利用案を DB 化できるフォーマットの作成
9
表 3-1.1
用
途
利用案(製品名)
1.通信機器
送受信アンテナパネル
利用案まとめ
概
要
自動車・飛行機・列車・ビル・その他の外壁に取り付ける情報通信用アンテナパネル。すでに、ETS-VIII
用地上実験装置等として開発されている。
2.モニタ・セ
原子力発電所周辺の放射
放射線センサを取り付けて原子力発電所周辺の放射線量データを送信する。データは専用受信設備で受信
ンサ
線モニタ
する。
高圧送電鉄塔の振動・動
振動センサを取り付けて高圧送電鉄塔の振動・動揺データを送信する。データは専用受信設備で受信する。
揺モニタ
高速道路・橋脚のコンク
超音波センサ等を取り付けて高速道路・橋脚のコンクリート壁状態モニタデータを送信する。データは専
リート壁状態モニタ
用受信設備で受信する。
庭園灯型環境モニタ
気温・湿度・風速・紫外線量・その他のセンサを取り付けて、生活環境のモニタを行う。庭園灯型の形状
が考えられる。データは専用受信設備で受信する。
10
地盤傾斜モニタ
地盤傾斜計を取り付けて、地盤の僅かな傾斜変動データを送信する。データは専用受信設備で受信する。
3.コントロー
地上太陽光発電設備等
地上太陽光発電設備の最大電力点追尾(PPT)機能等のコントロールを行う。その他、タイマによる制御、
ラ
コントローラ
コントローラ等。
4.表示板
野外・屋外広告パネル等
屋外・屋外の広告パネル・表示板(液晶または EL パネル)
。リモコン装置により、表示内容やディスプレ
イ内容の書き換えができる。
5.電源装置
マイクロ波送電機器
SUICA、ICTAG 等用充電器の微小電力源として、マイクロ波を利用する。ユビキタス電源システムの実
現。
6.その他
マイクロ波融雪設備
融雪設備としてマイクロ波を利用。可能性は少ないが、検討の余地はある。
(太陽光式)投光器
災害時の夜間投光器として、太陽電池・バッテリを組込んで、電力確保。通信機能も付加する。
バス運行予告パネル
あとどれ位で到着するか、バスの運行を司令室からの電波で表示する。
一方通行道路信号機
一方通行道路の両端の信号機を無線通信可能化し、最適・安全な交通整理を行う。
地震予知用センサ
地震予知用超長波電波センサの受信信号をマイクロ波で送信する。
3-1.5 複数枚の多機能インテリジェント構造体を組合せることによる高機能化
個別の利用案の検討の前に、多機能インテリジェント構造体の優位性や差別化事項につ
いて検討する。ここでは既存の無線通信などの用途で最も一般的に用いられている反射鏡
アンテナとのトレードオフから技術的な観点で性能・特徴の比較を行うことで適合用途の
明確化を図る。
なお、平成 15 年度の検討で前提としたようにマイクロ波送電技術の多目的応用を念頭に
置き、下記の前提条件を設定する。
(1) 周波数帯:C 帯(5.8GHz 相当)
(2) 50cm∼1m 程度の開口径
(3) 特定方向に電力を集中させるペンシルビーム用途
トレードオフ検討結果を表 3-1.2 に示す。本検討結果により、下記の事項が明らかとなる。
(1) 反射鏡アンテナは大中規模の開口径が必要であり、一方多機能インテリジェント構
造体では素子数・コストの観点から中小規模開口径が適切である。
(2) アレイアンテナを基調とする多機能インテリジェント構造体がマルチビーム化に最
も適しており、またビーム走査速度も最も早い。
(3) 反射鏡アンテナはマルチビーム化・ビーム走査に制約が大きいものの単一ビームで
の開口能率は最も高い。
したがって多機能インテリジェント構造体の利用案検討にあたっては、
「高速ビーム走査
を要する中小規模局の P-MP(Point to Multi-Point)用途」で差別化が可能である。
さらに上記の差別化事項をより一層際立たせるためには、多機能インテリジェント構造
体のビーム形成能力を向上させる必要がある。このためには、一般に開口面積を大きくす
る必要がある。しかし、
『中小規模』の範疇を逸脱してしまい、個別の開発を要し不要に大
規模化してしまう可能性が高い。そこで複数の多機能インテリジェント構造体を組合せて
用いることが、有力なビーム形成能力向上策となる。このビーム形成能力の向上について
は、利用案の形態によって要求される思想が異なるため次項で説明を行う。
なお、本トレードオフにおいては、地上での利用を想定したが、宇宙太陽光発電などの
ような大規模かつエネルギー集中型の送電を行う場合には、アレイアンテナは極めて有効
な手段となる。
11
表
3-1.2 多機能インテリジェント構造体と反射鏡アンテナトレードオフ検討結果
反射鏡アンテナ
形式
パラボラ形式 (一枚鏡)
多機能インテリジェント構造体
カセグレン形式 (二枚鏡)
備考
◎:特に有利
○:他に比べて有利
△:他に比べて不利
×:特に不利
構成例
概要
動作原理
一次放射器から放射された球面波面の電波
一次放射器から放射された球面波面の電波
アンテナ開口面を複数の素子アンテナで分割し,各々の素子の
を,回転双曲面鏡(副反射鏡)により,主焦点
を,回転放物面(パラボラ)鏡により平面波面
励振位相を制御することにより所望のビーム方向へ平面波面を
を中心とする球面波に変換し,さらに回転放
に変換することでペンシルビームを実現す
形成し,ペンシルビームを実現する.メインビームはパイロッ
物面鏡により平面波面に変換することでペン
る.
ト信号到来方向に自動的に指向する.
シルビームを実現する.
12
・最も薄型.
・交差偏波特性が比較的良好.
・高速にビーム走査可能.
・高能率化や低サイドローブ化の鏡面修整技
・マルチビーム化が可能.
術などが適用可能.
・特にソフトウェアレトロでは多機能.
長所
・最もシンプルな構造.
・容易にペンシルビームを実現.
短所
・無線装置を主反射鏡の背面に設置する場
・副反射鏡の有効開口径を確保する
合,給電用接続線路長が比較的長い.
必要があり,波長に比べ小口径の
・無線装置を主焦点に設置する場合,鏡面の
アンテナには不向.
駆動に負担有.
・ビーム走査角に応じて利得低下有.
・ビーム走査角に応じて放射パターンが変化.
・一般的に高価.
寸法
・評価:△
・評価:△
・評価:○
ここでの評価はアンテナ部のみ
アンテナ接続機器の寸法はアプリによ
る
重量
・評価:○
・評価:○
・評価:○
ここでの評価は,反射鏡アンテナには
駆動マウント含む
熱
・評価:○
・評価:○
・評価:△
アレイアンテナでは発熱部の占有体積
率が大きい
・10波長以上
・517mm@5.8GHz以上
・40波長以上
・2000mm@5.8GHz以上
・直接放射素子により電気性能面での制約なし
・開口径∝素子数∝コストの関係から小開口が有利
開口能率
・評価:○
・評価:◎
・評価:△
開口能率は反射鏡が優位
マルチビーム化
・評価:△
・評価:×
・評価:○
反射鏡ではマルチビーム化は難易度大
ビーム走査性
・評価(シングルビーム):○
・評価(マルチビーム):△
・評価(シングルビーム):○
・評価(マルチビーム):×
・評価(シングルビーム):◎
・評価(マルチビーム):○
反射鏡アンテナは駆動マウント要
ビーム走査範囲
・評価(シングルビーム):◎
・評価(マルチビーム):×
・評価(シングルビーム):◎
・評価(マルチビーム):×
・評価(シングルビーム):○
・評価(マルチビーム):○
反射鏡では駆動マウントに応じた覆域
確保可
アレイではコンフォーマル化により覆域確保可
ビーム走査速度
・評価(シングルビーム):△
・評価(マルチビーム):×
・評価(シングルビーム):△
・評価(マルチビーム):×
・評価(シングルビーム):◎
・評価(マルチビーム):◎
アレイアンテナでは電子的にビーム走
査可能
・中規模局P-P用途に適合
・大規模局P-P用途に適合
・中小規模局のP-P/P-MP用途に適合
高速ビーム走査を要する中小規模局の
P-MP用途で差別化可能
特徴
機械性能面
適合開口径
電気性能面
適合用途
3-1.6 各種利用案(現状との代替可能性)
ICタグは関連機器の世界市場が 2008 年には40億ドル超に達するとの新聞報道もある。
安全、安心というキーワードへの対応が応用分野として考えられ、そこでは、ユビキタス
技術への期待が高まっている。
平成 15 年度に、通信機器、モニタ・センサ、コントローラ、表示板、電源機器などにつ
いて、利用案を調査している。その中では、一般の人工衛星・太陽光発電衛星としての用
途、無線で電力を送るICカード等の発想を元に、新聞情報他の調査活動を行っている。
社団法人日本航空宇宙工業会が、平成 15 年度に、日本の次世代宇宙プロジェクトとして
2020 年に向けたわが国の宇宙開発利用の方向性について検討を行っている。その中で、無
線での電力伝送に関して、短期的に事業性を認知できる先行的ビジネスとして、いくつか
のビジネスモデルを提案している。 このような状況に鑑みて、平成 16 年度は、下記を念
頭に利用案の調査を行った。
(1) 地上でのビジネスを意識した利用
(2) IC タグ等のビジネス拡大途上システムへの活用
(3) 近い将来に実用化が考えられるビジネス
調査の結果、学会誌レベルでも、ITS(Intelligent Transportation Systems)
、ウェア
ラブルコンピュータ、日常身体活動のモニタリングなどに適用の可能性があることが判明
した。
次にこれらの公知情報を基づき、多機能インテリジェント構造体を複数枚組合せて
利用するときの利用案について検討した。
まずは複数の多機能インテリジェント構造体の構成形態に応じたビーム形成能力向上の特
徴と展開可能な対称空間を明確にする。構成形態毎のトレードオフを表 3-1.3 に示す。本検
討から複数の多機能インテリジェント構造体の構成形態としては、共有照射領域あるいは
覆域拡大を対象とする用途において優位性が高いが、独立照射領域を対象とする場合には、
既存のアプリケーションと比べて付加価値発生要因に乏しいことが明らかとなった。
構成形態の検討を踏まえ、複数の多機能インテリジェント構造体を組合せて利用するとき
の利用案を5ケース創出した。表 3-1.4∼表 3-1.8 に個別の利用案を昨年のフォーマットを
念頭において示す。機能用途としては、IC タグに該当する通信あるいは小規模電力伝送用
途が応用・活用の幅が広いものとなっている。ここでは5ケースの利用案を示すのみに留
まっているが、複数の多機能インテリジェント構造体を組合せた際の基本的な活用構成は
網羅できていると考える。
なお、表 3-1.4∼表 3-1.8 には、複数の電源・アンテナ一体型パネルの総合動作試験との
13
関連も併せて示す。
次に今回検討した利用案の展開分野を、平成 15 年度と同様に、機能別にまとめた。平成
16 年度の機能分野として、下記を設定した。
(1) 通信機器
(2) レーダ・センシング
(3) 観測
(4) エネルギー伝送
(5) その他
利用案のまとめを表 3-1.9 に示す。表 3-1.9 から、複数の多機能インテリジェント構造体
を組合せて利用する際には、通信とエネルギー伝送分野との相関性が大きく、この結果は
IC タグ等への適用・応用が有効であることを示している。
14
表
3-1.3
複数の多機能インテリジェント構造体の構成形態
分散配置
構成形態
共有照射領域
覆域拡大
独立照射領域
構成例
概要
15
動作形態
複数の多機能インテリジェント構造体を相互に連携
することで、共有する照射領域内をきめ細かくビー
ム形成する.
連携方法は S/W レトロ、H/W レトロに限らず任意
の組み合わせ可能.
ほぼ独立の照射領域を複数連続配置する.
連携方法は相互の情報授受程度.
情報の授受は別途統合局を設けても良い.
所望の覆域範囲を、複数の多機能インテリジェ
ント構造体のビーム領域に分割するように配
置.
独立照射領域の延長形態であるが、個々の多機
能インテリジェント構造体が近接しているた
め、境界領域で連携したビーム形成をさせるこ
とが可能.
長所
・最も高機能ビーム形成が可能.
・単位照射領域あたりのパネル数は必要最小限.・コンフォーマル化の延長線で覆域拡大可能.
短所
・単位照射領域あたりのパネル数が多くコスト増.
・単一パネルでコンフォーマル化したパネルの方
・複数でもビーム形成などに付加価値発生ない.
が低コストな場合有り.
・ 特定空間内
・ 倉庫、待合室、レストランなど
・ 分散した空間のシームレス化
・ 対象空間:道路、線路、駅プラットホームなど
特徴
対象空間
展開
具体例
・ ケースB:
・
病院内携帯電話利用システム
・ ケースD:
・
広域分散 IC タグの捜査および当該 IC タグの位置
把握
ケースA:
特定移動体との情報授受
ケースE:
高精度測距および追尾システム
・ 対象空間(覆域)拡大
・ 倉庫等の特定空間や、市街地など開空間
・ ケースC:
広域分散 IC タグの走査および通信システム
・ ケースD:
広域分散 IC タグの捜査および当該 IC タグの
位置把握
表31.4 利用案ケースA
表題
特定移動体との情報授受
ケース
A
概念
・特定エリアをカバーするように送受信アンテナを複数個配置(親局)
・レトロディレクティブ機能を持たせることにより、パイロット信号
を受信したときに、電波を出した移動体だけに電力を送信
・電力を受けた端末との間で情報の授受を行う。
イメージ
多機能インテ
図
リジェント構
造体
端末 A
特長
端末 B
・特定の端末と親局間で情報・電力の授受が可能
・親局からの電波信号を制御することにより、情報授受時の秘匿性が
確保できるとともに送信パワーを低減できる。
・複数の端末と親局の間で、同時に、情報交換が可能
・端末は、微弱なパイロット信号を出すだけの電源を準備すれば通信
可能
実現性
・基本的には実現可能
・モジュールの選択、追尾にともなうモジュールの選択などの技術が
必要
試験計画
との関連
・端末と親局との相対位置と距離に応じて親局側で使用するモジュー
ルの位置と個数を選択
・選択した複数モジュールで協調動作をさせることにより、最小限の
出力で電力・情報の授受が可能
・上記機能の実現を図るためには、任意に選択した複数枚の送受信モ
ジュールで協調して、パイロット信号を出した端末に電力を送る
ことが基本になる。
市場性
有り
16
表31.5 利用案ケースB
表題
病院内携帯電話利用システム
ケース
B
概念
・携帯電話を収納する端末に送受信アンテナを設け、レトロディレク
ティブ機能を持たせる。
・携帯電話の発信信号をもとにパイロット信号を発信し、親局とリン
クをはり、通信を行う。
・親局の電波カバー範囲をあらかじめ限定させておくことにより、電
波を入れたくない領域には電波を送らないようにできる。
イメージ
多機能インテリジェ
図
ント構造体
ICU 等 の
電波禁止区
域には電波
端末
特長
が届かない
ように制御
端末
携帯電話
・病院内での携帯電話の利用を可能とするシステム
・指向性の高い電波を利用することにより、隣の人に電波が漏れず、
他人の電子機器に影響を及ぼさない。
実現性
・基本的には実現可能
・モジュールの選択、追尾にともなうモジュールの選択などの技術が
必要
試験計画
との関連
・端末と親局との相対位置と距離に応じて親局側で使用するモジュー
ルの位置と個数を選択
・選択した複数モジュールで協調動作をさせることにより、最小限の
出力で電力・情報の授受が可能
・上記機能の実現を図るためには、任意に選択した複数枚の送受信モ
ジュールで協調して、パイロット信号を出した端末に電力を送るこ
とが基本になる。
市場性
有り
17
表31.6 利用案ケースC
表題
広域分散ICタグの捜索および通信システム
ケース
C
概念
広範囲な、三次元空間に分散して設置してあるICタグ(例として、
ショッピングモールなどに展示している商品に添付しているICタグ
のようなもの)について、その位置を捜索検知し特定のICタグと通
信を行うことが可能な装置
イメージ
図
ビー ム 走 査 で
スキ ャン
多 面 体 で構 成 され た
多 機 能 イン テ リ ジ ェン ト
構 造体
特 定 ICを見 つ け た ら
ビー ム を絞 りICタ グ と 通
信 を行 う
特長
・多面体で構成されているため、捜索空間が広い。
・小規模なシステムで構成が可能
・DBFアレーアンテナの特徴を活かし、ビームを狭くしたり広くした
りアダプティブに変化させることが可能
実現性
低価格での実現性が最大の課題であり、10年後あたりの実現か?
試験計画
今年度の協調動作は2面のアンテナを平面に配置し制御している
との関連
が、この応用例のようにこれらを多面体で構成した場合でも今年度
の協調動作で得られた結果が基礎技術となる。
市場性
ICタグを管理する装置なので、民間含め市場性が高い。
18
表31.7 利用案ケースD
表題
広域分散ICタグの捜索および当該ICタグの位置把握手法
ケース
D
概念
広範囲な三次元空間に分散して、且つ互いに移動している物体に搭
載されたICタグ等について、その位置を捜索検知し、互いの位置情
報を共有することにより、衝突等の事故を回避し、且つ効率的な移
動経路を確保することが可能な装置
イメージ
図
物体の位置、移動方向を
レーダ的に探知
A、B に備えられた CPU により相互
の位置把握および移動経路を計算
物体 A の位置情報、
物体 B の位置情報、
移動方向を通信
移動方向を通信
多機能インテリジェント構造体
(レーダ機能と移動物体への他の移動物体の位置情報を通信
する機能を有する。
)
特長
・複数の面の集合体で構成可能であり、閉空間であっても開放空間で
あっても設置が可能
・システムの拡大が容易
・ICタグによらずとも、多用途アンテナの流用も可能(例:ETC用通
信アンテナ等)
実現性
低価格での実現性が最大の課題であり、10年後あたりの実現か?
試験計画
今年度の協調動作は2面のアンテナを平面に配置し制御している
との関連
が、この応用例のようにこれらを複数、分散的に配置したり、多面
体で構成したりした場合でも今年度の協調動作で得られた結果が基
礎技術となる。
市場性
交通安全および物流等に適用が期待され、民間含め市場性が高い。
19
表31.8 利用案ケースE
表題
高精度測距および追尾システム
ケース
E
概念
離れた2地点以上の複数の送受信装置(AIA)の情報を統合して、任意
の観測点からある移動体目標物までの高精度な距離測定、方位角度測
定および追尾を実現する。
イメージ
図
AIA#1
情報統合
AIA#2
移動体目標物
特長
離れた複数の観測点(AIA#1∼#nの設置位置)の位置情報、ビーム走
査角度情報などを統合、補間、あるいは補正することにより、移動体
目標物の位置、距離、速度などを正確に測定し、さらには追尾するこ
とが可能となる。
実現性
AIA装置の簡略化=低コスト化
試験計画
複数のAIAの設置位置・角度などの情報をもとに、それぞれのAIAのデ
との関連
ータを統合して処理(協調動作)することが確認できれば、将来的に
使用できる目処が立つ。
市場性
陸海空の防衛用のレーダ装置としてだけでなく、民生品としても、空
港や港湾内の監視、道路の渋滞情報など幅広い市場性あり。
20
表
用途
利用案
3-1.9 利用案まとめ
概要
21
通信/
エネルギー伝送
A. 特定移動体との情報授受
・特定エリアをカバーするように送受信アンテナを複数個配置(親局)
・レトロディレクティブ機能を持たせることにより、パイロット信号を受信したときに、電波を出した移動体だけ
に電力を送信
・電力を受けた端末との間で情報の授受を行う。
通信/
エネルギー伝送
B. 病院内携帯電話利用システ
ム
・携帯電話を収納する端末に送受信アンテナを設け、レトロディレクティブ機能を持たせる。
・携帯電話の発信信号をもとにパイロット信号を発信し、親局とリンクをはり、通信を行う。
・親局の電波カバー範囲をあらかじめ限定させておくことにより、電波を入れたくない領域には電波を送らな
いようにできる。
通信/
レーダ・センシング/
エネルギー伝送
C. 広域分散ICタグの捜索および
通信システム
広範囲な、三次元空間に分散して設置してあるICタグ(例として、ショッピングモールなどに展示している商
品に添付しているICタグのようなもの)について、その位置を捜索検知し特定のICタグと通信を行うことが可
能な装置
通信/
レーダ・センシング/
エネルギー伝送
D. 広域分散ICタグの捜索および
当該ICタグの位置把握手法
広範囲な三次元空間に分散して、且つ互いに移動している物体に搭載されたICタグ等について、その位置
を捜索検知し、互いの位置情報を共有することにより、衝突等の事故を回避し、且つ効率的な移動経路を確
保することが可能な装置
レーダ・センシング/
観測
E. 高精度測距および追尾システ
ム
離れた2地点以上の複数の送受信装置(AIA)の情報を統合して、任意の観測点からある移動体目標物まで
の高精度な距離測定、方位角度測定および追尾を実現する。
3-2
複数の電源・アンテナ一体型パネルの総合動作試験
試験の目的
3-2.1
電源・アンテナ一体型パネルは、電源(太陽電池等)、コンピュータ、送受信機、アンテナ
等を 1 枚のパネルに一体化・内蔵した多機能インテリジェント構造体であり、最近の例で
は IC タグや SUICA 等がこの考え方で設計・利用されている。本報告書第 1 章に示したと
おり、エネルギーおよび通信の分野で活用するためには、複数のパネルでの運用が重要で
ある。
そのために下記に示す平成 14 年度および平成 15 年度に試作した2組の発送電一体型パ
ネルを組み合わせることにより、将来の実用化に向けて必須である複数の平面アンテナの
総合動作・協調動作の確認を行う。
注)平成 14 年度、平成 15 年度試作品:参考資料 A1、A2 参照
(1) 平成 14 年度試作品
・分離した系での位相同期システム
・フェーズドアレイによるビーム制御システムと半導体アンプの高効率化:AIA#1
(2) 平成 15 年度試作品
・電源・アンテナ一体型パネル基本ユニット:AIA#2
3-2.2
実施内容
3-2.2.1 組み合わせ試験
位相同期装置(従局)と AIA#1、および位相同期装置(主局)と AIA#2 をそれぞれ組合せた
状態で各パネル性能確認を実施する。本試験では、総合動作試験の試験機材として基本性
能(放射電力、中心周波数、スプリアス特性等)が確保できることを確認する。
3-2.2.2
総合動作試験
複数パネル(AIA#1 および AIA#2)を組み合わせることにより、一体化したビーム合
成/ビーム制御/ビーム補正機能について確認を行う。
総合動作試験での試験実施内容は以下のとおり。
(1)ビーム合成確認試験
位相同期システムにより 2 枚の送電パネル間の同期を計ることにより、マイクロ波ビー
ムが合成されていることを確認し、複数枚送電パネルによるビーム合成の基本原理確認、
基本特性データ取得および技術課題の整理を行う。
(2)ビーム制御確認試験
2 枚の送電パネルによりビーム方向制御をする場合の、マイクロ波ビーム合成を確認し、
22
複数枚送電パネルによるビーム方向制御機能の基本原理確認、基本特性データ取得および
技術課題の整理を行う。
(3)パネル面補正機能確認試験
2枚の送電パネル面が角度を持った状態において、その角度情報に対する位相補正処理
により、マイクロ波ビーム合成を行うことができることを確認し、複数枚送電パネルの面
方向誤差に対するマイクロ波ビーム補正機能の基本原理確認、基本特性データ取得および
技術課題の整理を行う。
3-2.3 試験の構成
試験の構成を図 3-2.1 に示す。
位相同期システム
*
(主局)
位相同期システム
(従局)
(5.77GHz)
内部Ref.clock
移相器
*:主局出力(5.77GHz)は、終
端処理を行うこととする。
(10MHz)
ハイパワーアンプ
AIA#2(送電パネル2)
SOURCE-MDL
AIA#1(送電パネル1)
受信部
位相制御
コマンド
移相部
RF-PANEL
送信部
ANT-PANEL
送信アンテナ
送信アンテナ
PC
マイクロ波
ビーム
:改修部分
:追加部分
スペアナ
パイロット信号
送信機
(3.8GHz)
図 3-2.1 試験構成図
なお、複数のパネルを組み合わせて試験を実施するために、移相器およびハイパワーアン
プを試験系に追加する必要がある。
23
3-2.4 総合動作試験の実施
総合動作試験の事前確認を目的とした組合せ試験と、総合動作試験について、以下のと
おり実施した。
(1) 組合せ試験
実施期間:平成 17 年 1 月 20 日、21 日
場所:京都大学 生存圏研究所 マイクロ波エネルギー伝送実験装置(METLAB)暗室
(2) 総合動作試験
実施期間:平成 17 年 2 月 7 日∼11 日、14 日、15 日
場所:京都大学 生存圏研究所 マイクロ波エネルギー伝送実験装置(METLAB)暗室
3-2.4.1 組み合わせ試験結果
位相同期装置(従局)*1 と AIA#1*2、および位相同期装置(主局)と AIA#2*3 の、それぞれ組
合せた状態での性能確認を行った。組み合わせ試験セットアップのうち位相同期 IF 確認
試験の状況を図 32.2 に示す。
(基本性能に関する組み合わせ試験セットアップは、図
32.1 のセットアップのうち AIA#1、AIA#2 各系単独動作形態となる。
)
その結果、要求基準を満足しており、総合動作試験の試験機材としての基本性能(放射
電力、中心周波数、スプリアス特性等)が確保できたことを確認した。組合せ試験結果を
表 32.1 に示す。
*1)主局と従局から位相が同期したマイクロ波を出力する機能を持つ。
*2)外部からの位相制御コマンドに基づき、マイクロ波ビーム方向制御を行う機能を持
つ。
*3)受信したパイロット信号に基づき自動的にマイクロ波ビーム方向制御を行うハード
ウェアレトロディレクティブ機能を持つ。
24
表 3-2.1
No.
測定項目
測定内容
1.組合せ試験(AIA#1と位相同期装置(従局))
位相同期装置(従局)
1.1
出力電力
I/F 確認試験
中心周波数
スプリアス
25
1.2
基本性能確認
放射電力
中心周波数
注)○:良好、×:不良
組合せ試験結果(1/2)
基準
4.5W 以上
(@アンプ出力端)
5770MHz
±57.7kHz
中心周波数∼20GHz:
-50dBc 以下
10∼20W
5,770.010*MHz±50kHz
*:受信周波数(1.1 項より)
試験結果
5.0W
5,770.010MHz
中心周波数∼
20GHz:-53dBc
14.6W
(図 3-2.3)
5,770.010MHz
(図 3-2.3)
評価
○
○
○
○
○
備考
表 3-2.1
No.
測定項目
測定内容
2.組合せ確認試験(AIA#2と位相同期装置(主局))
2.1
位相同期装置(主局)
I/F 確認試験
出力電力
中心周波数
26
2.2
基本性能確認
基準
(1)AIA#2 への出力端:3dBm
±3dB
(2)パイロット信号送信器
への出力端:0dBm±3dB
10MHz±20Hz
29dBm ± 1dB @ RF-PANEL
内 MDL 出力端/1 素子
出力電力
放射電力
中心周波数
スプリアス
注)○:良好、×:不良
組合せ試験結果(2/2)
47dBm±1dB@ANT-PANEL ア
ンテナ放射面
5770MHz±12kHz
0∼20GHz において、-40dBc
以下
試験結果
評価
(1)4.09dBm
(2)0.95dBm
(1) ○
(2) ○
10.000004MHz
MDL#1:28.75dBm
MDL#2:28.71dBm
MDL#3:28.33dBm
MDL#4:29.38dBm
MDL#5:28.68dBm
MDL#6:28.77dBm
MDL#7:28.46dBm
MDL#8:28.54dBm
47.47dBm
(図 3-2.4)
5,769.997MHz
(図 3-2.4)
-55dBc
(図 3-2.5)
○
○
○
○
○
備考
ハイパワーアンプ
位相同期装置(主局)
位相同期装置(従局)
移相器
10MHz 出力
5.77GHz 出力
アッテネータ
5.77GHz 出力
時刻同期信号(1.25GHz)
27
アッテネータ
50Ω終端
周波数同期信号
位相同期信号
(Bluetooth)
スペクトラム
アナライザ
スペクトラム
アナライザ
位相同期装置(主局)
AIA#2組合せ試験セットアップ
AIA#1組合せ試験セットアップ
図 3-2.2
組合せ試験セットアップ(位相同期)
50
5770.010MHz
40
41.7dBm=14.6W
出力電力[dBm]
30
20
10
0
-10
-20
5.765
5.77
5.775
周波数[GHz]
図 32.3 組合せ試験 AIA#1 と位相同期装置(従局) 基本性能
放射電力および中心周波数
28
60
5769.997MHz
47.47dBm
出力電力[dBm]
40
20
0
-20
-40
5.769
5.7695
5.77
5.7705
5.771
周波数[GHz]
図 32.4 組合せ試験 AIA#2 と位相同期装置(主局) 基本性能
放射電力および中心周波数
位相同期装置
時刻同期信号
1.25GHz
30
5.77GHz
20
送電電力[dB]
10
55dBc
0
パイロット信号
3.844GHz
-10
-20
-30
-40
-50
-60
0
5
10
15
周波数[GHz]
図 32.5 組合せ試験 AIA#2 と位相同期装置(主局) 基本性能
スプリアス
29
20
3-2.4.2 総合動作試験結果
試験計画書に基づき、2 枚の送電パネル(AIA#1、AIA#2)を位相同期装置(主局/従局)
により協調動作させることによる、マイクロ波ビームの合成/制御/補正に関する原
理確認を目的とした、総合動作試験を行った。総合動作試験セットアップを図 32.6
に示す。
総合動作試験結果を表 32.2 に示す。また、試験結果よりビーム制御/合成試験結果
のまとめを図 32.7∼9(制御角度誤差:図 32.7、ビーム中心角:図 32.8、合成電力:
図 32.9)に記載した。
なお、合成電力の基準値については、組合せ試験および総合動作試験において測定し
た、各送電パネルの単体特性データに基づき設定を行った。
30
表
3-2.2 総合動作試験結果
No.
測定項目
測定内容
基準
試験結果
1
ビーム合成
確認
中心周波数
5770MHz±57.7kHz
5,770.018MHz
○
合成電力
2.4mW(3.8dBm)±20%
2.3mW
○
(1)位相同期時に 0°方向(±
1°以内)に中心を持つパター
ンであること。
(2)主局-従局間模擬距離条件
が変えても電力放射パターン
に差異がないこと。→ 0°方
向(±1°以内)に中心を持つパ
ターンであること。
10°:1.5mW(1.7dBm)±30%
20°:1.4mW(1.5dBm)±30%
ビーム制御方向に中心を持つ
パターンであること。
10°方向:10°±1°
20°方向:20°±1°
-0.3°にビーム中心
*1
を持つパターン
○
10°:1.4mW
20°:1.0mW
ビーム制御方向に中
心*1 を持つパターン
10°:10.4°
20°:19.5°
○
○
1.5mW(1.7dBm)±30%
1.6mW
○
放射
パターン
31
2
ビーム制御
確認
合成電力
放射
パターン
3
パネル面補正
機能確認
合成電力
放射
パターン
0°方向(±2°以内)に中心を
持つパターンであること。
注)○:良好、×:不良
*1)ビーム制御方向のローブのピーク点とした。
評価
2 枚のパネル間位相同期を図った状
態で、合成電力および放射パターン
ともに評価基準を満足することを確
認した。
よって、マイクロ波ビーム合成の原
理確認を行うことができた。
-0.8°にビーム中心
*1
を持つパターン
○
○
○
0.7°にビーム中心*1
を持つパターン
○
ビーム方向制御を行った場合に、合
成電力および放射パターンともに評
価基準を満足することを確認した。
よって、ビーム制御時のマイクロ波
ビーム合成について原理確認を行う
ことができた。
2 枚パネルの角度ずれに対して位相
補正した場合に、合成電力および放
射パターンともに評価基準を満足す
ることを確認した。
よって、パネル面補正時のマイクロ
波ビーム合成について原理確認を行
うことができた。
電源
電 波 暗 室
5m
電波暗室内の
100V 商用電源へ
位相制御用PC
(Bluetooth)
AIA#1
計測用アンテナ
(直線偏波アンテナ)
ハイパワーアンプ
位相同期装置従局
回転台
1m以下
AIA#2
パ イ ロ ッ ト信 号 送
アッテネータ
外部移相器
信アンテナ
32
移相器
シグナルジェネレータ
フィールドスキャナ
位相同期装置主局
制
御
室
スペクトラムアナライザもしくは、パターン計測装
図 3-2.6 総合動作試験セットアップ(1/2)
q
図32.6 総合動作試験セットアップ(2/2)
33
制御角度誤差(°)
2.0
1.0
目標:1.0°以下
0.0
0
10
20
ビー ム制御角度(°)
図 32.7 ビーム制御/合成試験結果 制御角度誤差
ビーム中心角度(°)
25
試験結果
基準値
20
15
10
5
0
0
10
20
ビー ム制御角度(°)
図 32.8 ビーム制御/合成試験結果 ビーム中心角度
5
合成電力(mW)
4
3
理論値
2
1
試験結果
0
0
10
ビーム制御角度(°)
図 32.9 ビーム制御/合成試験結果 合成電力
34
20
3-2.5
評価と今後の課題検討
3-2.5.1 総合動作試験評価
3-2.4 項の総合動作試験の結果、評価基準を満足し、2 枚の送電パネルの協調動作によるマ
イクロ波ビーム合成/制御/補正に関する基本原理について確認することができた。
3-2.5.2 今後の課題
複数枚の送電パネルによるマイクロ波ビームに関する課題として、以下の事項に関する課題
を表 32.3 に示す。
(1)複数枚パネルによる送電システムの基本技術以外に必要となる技術課題
本試験により確認した基本技術以外に、複数枚送電パネルから構成される将来システム実現の
ために必要となる、技術課題について整理を行った。
(2)その他検討事項
今回の試験により確認した代表的な条件以外の、応用条件に対する技術検討項目について整理
を行った。
表 32.3 今後の課題
技術課題
項目
複数枚パネルから ・各パネルの製造ばらつきの低減
構成されるシステ ・パネル面の機械的ズレに対する位相補正量の算出
ムの技術課題
・パネル毎または全体システムとして、ビーム制御方向(理論的な中心
点)に対する電気的中心点の補正
その他検討事項
・動的条件における応答特性の確認
・ハードウェアレトロディレクティブによるパネル面角度補正機能の
確認
・パネル間隔ずれに対する補正機能の確認
35
4.
スタディのまとめ・今後の展開
今年度は、複数組み合わせた多機能インテリジェント構造体としての利用の有効性・方向性の
検討および、平面状に並べた複数枚(2 枚)の送電パネルを相互に協調動作させることによりマ
イクロ波ビームの合成/制御/補正に関する試験を実施し各動作原理の確認を行った。
今年度の成果を以下の方針で、今後さらに発展展開させていくことで、マイクロ波送電の具体
化、インテリジェント構造体の具体化を図る必要がある。
(1) 複数の連続波送電用フェーズドアレイパネルによる無線送電システムの検証
今年度の試験では、基本的な複数インテリジェントパネルの協調動作が確認はできたが、対等
な条件(出力レベル、形状等)での複数パネルでの試験が未完である。今後この点をさらに確認
する必要がある。また将来の大規模マイクロ波送電を考えた場合に、独立した複数のパネルの更
なる協調運用により、最低 4 枚のパネルにより縦方向、横方向任意の方向へのマイクロ波送電の
実証確認が不可欠である。
(2)精密ビーム制御方式確認
マイクロ波送電で不可欠な、要求された方向にのみ電力を供給するレトロディレクティブ機能
の基本的な確認は、今年度も実施し特性を確認することができたが、インテリジェント構造体の
活用を前提にした場合に、動的環境下での精密ビーム制御性能の実現および確認が不可欠である。
今後、さらに望ましいビーム制御方式の検討および確認を実施する。
(3)軽量化無線送電システムの実現
将来の大規模システムに対応して、軽量化無線送電システムの実現は不可欠である。そのた
めには、軽量化半導体送信素子の適用、効率的な放熱、軽量アンテナ構造等の検討、実証を進め
る必要がある。
(4)マイクロ波送電時の環境への影響(電力密度分布、サイドローブ、電磁干渉、レクテナか
らの反射特性等)を評価
インテリジェント構造体でのマイクロ波送電、および将来の大規模マイクロ波送電システム
を実現するためには、マイクロ波送電の環境への影響、伝播特性等の検討をさらに進める必要が
ある。特に大規模マイクロ波送電システムに対応した大規模受電システムを構築するためには、
受電システム実現のための課題抽出を行い事前に問題点を解決していく必要がある。
この点についてもさらに検討、実証を進める必要がある。
以上
36
参考資料 A 既存の要素試作品の概要
<平成 15 年度報告書「マイクロ波による情報通信・電力送電用 電源・アンテナ一体型パ
ネルの研究に関するフィージビリティスタディ」より引用>
A.1 平成 14 年度試作品概要
(1) 分離した系での位相同期システム
大規模複数パネルを統合して運用する場合に、複数の送電ユニットを同時動作させる必要があ
る。しかし、各送電ユニットが個別に動作すると、送電マイクロ波ビームの方向が時間的に変動
し、所定の方向を指向することが出来なくなる。このため、本システムにて各送電ユニットの周
波数と位相を同期させる。基本性能を表 A.1.1 に、ブロック図を図 A.1.1 に、外観を図 A.1.2
に示す。
表 A.1.1 位相同期システム基本特性
項目
位相同期数
内容
2 ユニット
(主局:1 ユニット、従局:1 ユニット)
周波数安定度
0.59×10‐6 以下
位相安定度
±3.5°以下(距離減衰=20∼30dB)
位相同期:有線(2.885GHz、実験局上の制限の為)
ユニット間通信
時刻同期:無線(1.25GHz)
位相情報伝送:無線(2.4GHz)
図
A.1.2
位相同期シス
テム外観写真(主系、従系)
図 A.1.1 位相同期システムブロック図
(2) フェーズドアレイによるビーム制御システムと半導体アンプの高効率
大規模マイクロ波送電を行う場合、多数のマイクロ波送電ユニットを展開し、各ユニットから
のマイクロ波を合成してビームの方向制御を行い、所定の受電システムにマイクロ波を送電する
必要がある。本試作では、プロトタイプAIA(Active Integrated Antenna:アクティブ集積ア
ンテナ)を製作し、そのAIAを用いてHPA(High Power Amplifier:高出力アンプ)
、移相器
A-1
およびフェーズドアレイによる送電マイクロ波ビームの方向制御に関する基本特性確認試験を
実施した。基本特性を表 A.1.2 に、ブロック図を図 A.1.3に、外観を図 A.1.4に示す。
表 A.1.2 AIA供試体 基本特性
項目
システム構成
内容
受信部/移相部/送信部一体型構成
アレイアンテナ
9素子アレイアンテナ
HPA PAE*1)
50%以上
移相器
4dB 以下 @ 4ビット
入力レベル
0.1∼10mW
利得
30dB 以上(1000 倍以上)
ビーム制御幅
±20deg 以上
位相制御コマンド伝送
無線(2.4GHz Bluetooth)
*1)PAE : Power Added Efficiency(電力付加効率)
図 A.4.1.4 AIA 外観図および外観写真
図 A.1.3 フェーズドアレイアンテナブロック図
図 A.1.4 フェーズドアレイアンテナ外観
A-2
A.2 平成 15 年度試作品概要
本試作の電源・アンテナ一体型パネル基本ユニット(プロトタイプ)は、RF 放射機能および
ビーム制御機能の試作・評価を行う要素試作である。本試作においては、H/W 的にビーム制御
を行う原理的なレトロディレクティブ技術の評価を行った。概要は以下のとおり。表 A.2.1 に基
本特性を、図 A.2.1 にブロック図を、図 A.2.2 に外観写真をそれぞれ示す。
表 A.2.1 基本特性
項目
内容
出力周波数
5.766GHz
出力電力
1W/素子 標準、合計9W 標準
ビーム走査角
±20°程度
パイロット信号周波数
3.846666GHz
パイロット受信感度
-40dBmまでビーム走査が可能となること
電源電圧
100V(AC)
本システムは、3 つの構成に分かれており、それぞれの概要は以下のとおり。
ア、 SOURCE-MDL:基準信号を生成し、各素子への供給を行う。電源装置も兼ねる。
イ、 RF-Panel:パイロット信号を元にして、放射方向を制御した送信波を生成する。
ウ、 ANT-Panel:パイロット信号の受信と送信波の送信を行う送受共用アンテナを搭載する。
ANT-PANEL
RF-PANEL
SOURCE-PANEL
3-stage amp+BPF
Phase
Trimmer
ftx=5766MHz
+30dBm
MIX
VCO
PFC
Loop Filter
BPF or LPF 3-stage amp
fplt=3846.666MHz
-40dBm
×1.5 MULT
・
・
・
MDL(RETRO-RF)
・
・
・
・
・
MIX
・
・
・
8
D
I
V
VCO
PLL
3877.3MHz
8
D
I
V
VCO
10MHz
Reference
clock
12V
fplt=3846.666MHz
-40dBm
9V, 5V
MDL(S-PLO)
PS-DIV2
PLL
9V, 5V
・
・
・
・
・
46MHz
12V, 9V, -5V
ftx=5766MHz
+30dBm
MDL(C-PLO)
5724MHz
PS 9V
12V, 9V, -5V
PS 12V
A
SourceパネルをAC100V入力とし,
内部にAC/ DCコンバータを設け,DCに
変換してRFパネルに供給することで,
評価試験の際の利便性を向上した.
図 A.2.1システム全体構成ブロック図
A-3
PS -5V
PS-DIV1
AC100V
図 A.4.2.2 システム全体構成
図 A.2.2 外観写真
A-4
システム開発
−禁無断転載―
16−F−12
「超遠隔マイクロ波送電および通信技術の開発に関するフィージビ
リティスタディ」報告書
−要
旨−
平成 17 年 3 月
作 成 財団法人 機械システム振興協会
東京都港区三田一丁目 4 番 28 号
TEL 03−3454−1311
委託先 財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構
東京都千代田区神田小川町二丁目 12 番地
TEL 03−3294−4834
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