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PDF:3.5MB - AIST: 産業技術総合研究所

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PDF:3.5MB - AIST: 産業技術総合研究所
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
Vo .1 No.11
産業技術を先導する
産業技術を先導する!
●今月の特集
エネルギー分野の動向と産総研の取り組み
独立行政法人
人産業技術総合研究所
2001.12
Vol.1 No.11
CONTENTS
● メッセージ
3
産業技術力雑感
● トピックス
4
産総研国際シンポジウム「ナノテクノロジーが拓く21世紀の産業技術」
● 最新情報
8
原索動物ホヤに見る感覚神経の分化
9
生物時計が支配する交尾行動リズム
10
リポソームを利用した遺伝子導入法
11
蛍光標識磁気ビーズでSNP検出
12
ナノ微粒子でタンパク質を釣る
13
触媒法で有機リン類のクリーン合成
14
NOx浄化で世界最高性能
15
環境にやさしい吸着材
16
超高効率薄膜太陽電池
17
オレフィン系高分子の機能化
18
次世代半導体:鉄シリサイド
19
ガラス材料の微細加工と新機能発現
● 特集
20
エネルギー分野の動向と産総研の取り組み
● テクノ・インフラ
26
標準供給の新しい考え方 ほか
● パテント
28
技術移転いたします! 多層ガスセンサー ほか
● 産学官連携
30
研究者と起業家の連携推進の場
● フロンティア
32
クラスタープロセス研究の新展開
● AIST Network
33
産総研モニュメントおよび地質標本館門柱の除幕式 ほか
表紙写真
本号の記事から
産業技術力雑感
●東北大学総長
産業技術力をどう先導していくかについて
以上についてのリーダーシップを期待でき
考えてみる。
るのは産総研をおいて他にないように思える
第一は、戦略的産業技術の組織的追求であ
が、いかがであろうか。もちろん産総研への
ろう。とりわけ 21 世紀が強く望んでいる地
期待は上記だけではない。産業技術に係る科
球環境やエネルギーの問題の解決を先導する
学研究も不可欠であり、安寧を貪っている大
長期的な産業技術力の組織的な育成・強化を
学があれば、遠慮無く攻撃してほしい。
あげることができる。もちろん大学において
さてわが国のリーダーは、専門において国
も積極的な取組みが期待されているが、産業
際的水準にあるものの、歴史観や文明観に基
技術の体力づくりに特化した組織的追求は大
づく深い洞察力において、欧米に水をあけら
学向きではない。
れていると言われる。そうであるとすれば、
第二に、現状の産業技術力の長短を分析
産業技術力の未来を左右することにもなり、
し、経済産業省本体やNEDOと連携し、強
教育界の責任は極めて大きい。
化すべき研究開発分野ないしテーマを選別
し、それぞれに研究開発の長期的推進体制を
以上勝手な期待と夢を述べさせていただい
つくり、大学や民間に得意なところがあれ
たことをお許し願いたい。
ば、積極的に分担を促す、といった体制がで
きないだろうか。
第三に、産業技術に関する標準物質、計量
標準、分析技術などのデータベースの構築
は、人類はもとより、わが国の共通財産とも
いうべきものである。
MESSAGE
阿部 博之
TOPICS
産業技術総合研究所国際シンポジウム
2001 年 11 月 13 日・14 日:国際研究交流大学村
11 月 13 日(火)
・14 日(水)に国際研究交流大学村 東京国際交流館
プラザ平成において「ナノテクノロジーが拓く 21 世紀の産業技術」と
題して産総研国際シンポジウムを開催しました。9月のアメリカでの
テロ事件の影響により、当初予定していた講演者の来日が急遽中止に
なるなどのアクシデントもありましたが、当日は予想を上回る 488 名
の方々にご参加いただきました。
オープニングセッション
科学技術基本計画と産総研の研究戦略
産総研理事長 吉川 弘之
従来の科学技術会議は自然科学
系だけでしたが、これからは調和
のある科学技術の発展を行わなけ
ればならないという観点で、新た
に発足した総合科学技術会議では
社会科学系や人文科学系の議員の
方が入って議論が行われました。
第2期科学技術基本計画での基
本的な考えとしては、課題の重点
化、効果的な成果の出る仕組みの
追求、
インフラへの大きな投資、
成
果の社会への還元、科学技術の国
際的な貢献等です。そのため具体
的には、5年間に24兆円を投資す
ることにしていますが、ばらまき
ではなく毎年成果を見ながら見直
すこととしています。また重点化
により研究開発の質を高めるとと
もに、
科学技術予算の効率化・透明
化を図ることにしています。最終
的に決められた戦略的な重点課題
は、
「 ライフサイエンス」
「 情報技
術」
「環境」
「ナノテクノロジー・材
4
AIST Today 2001.12
料」
の4つとなっています。
これま
で我が国では、重点課題を全体と
して議論したことはなかったの
で、
その意味では今年はまさに
「科
学技術元年」と言ってもいいと思
います。
それを受けて産総研での取り組
みについて述べます。
産総研は、
独
法化に際して 15 の研究所が1つ
になって形成されました。これに
よって、従来の伝統的な学問的区
分けが取り除かれて、共通の課題
に対して研究者集団が取り組むこ
とができるようになりました。具
体的には、5 4 の研究ユニットを
作って、夫々が独自の研究思想を
持ち、共通の目標に向かって研究
活動できるようにしました。すな
わち、従来の研究所の階層構造は
なくなり、フラット化によってや
る気のあるものがリーダーシップ
をとり、それに共感したものがグ
ループを作るという研究所として
は新しい組織になったわけです。
産総研のミッションは、次の3
つに分けられます。
1番目は、
旧工
技院傘下の研究所で伝統的に行わ
れていた計量標準や地質調査等の
ような研究です。これらは今も高
いポテンシャルを持ち、また今後
は他の産業技術開発にとっても不
可欠な社会の基盤技術となるもの
です。2番目はナノテク、情報通
信、バイオのような先端的な研究
で、これらはまさに国際産業競争
力の強化に直接関連するもので
す。
3番目は、
国策としてあるいは
人類目的として取り組まなければ
ならないようなエネルギー・環境
技術などの研究であり、これらは
国の研究所の義務と考えられるも
のです。以上の3つが関係しなが
ら研究を展開していくこととして
います。
産総研がカバーする主な研究分
野は、
ライフサイエンス、
情報技術、
環境、
ナノテクノロジー・材料、
エネ
ルギー、
機械・製造技術、計測標準、
地質などの8つです。これらのさ
まざまな分野において従事する各
研究ユニットは、世界に例のない
独自の研究をすべきであり、その
ためには基礎研究から応用研究ま
で幅広く取り組むことにしていま
す。
また、
従来の縦割りではなく、
融
合的な研究によって科学のフロン
ティアを拓くこととしています。
ナノテクノロジーに関しては、
我が国および産総研は長い歴史を
持っています。旧工技院の研究所
に関して言えば、10年計画で行わ
れ た「 ア ト ム テ ク ノ ロ ジ ー プ ロ
ジェクト」
は、
ナノテクノロジーに
関して多くの研究成果をあげて来
年終わろうとしています。産総研
としましては総合科学技術会議が
まとめたナノテクノロジーの研究
は、このアトムテクノロジープロ
ジェクトの成果を全面的に活かす
研究になるだろうと考え、それに
取り組んでいるところです。
ナノテクノロジーは、従来の学
問分野を超えた大きな研究分野に
なると思われますが、産総研のよ
うにさまざまな専門家がいるとこ
ろでは、いろいろなアプローチを
する過程の中で、個々の成果をあ
げるとともに、1つの大きな知識
分野としてのナノサイエンスを構
築するのが大きな責務と考えてい
ます。
最終的には、
それらの知識が
将来のナノインダストリーを構築
していくことを期待しており、そ
のためには、産学官連携のもとで
地域とも協力して研究を展開して
いくことにしています。
プレーナリーセッション
プレーナリーセッションでは、
国内外の産学官のナノテクノロ
ジーをリードする研究者5名の
方々の講演がありました。
はじめに、MIT 教授であり、米
国エネルギー省の科学局長として
も米国ナノテクノロジー研究開発
を指導されたM. S. Dresselhaus博
士に講演いただきました。講演内
容は政策的な部分よりむしろ
MIT での専門的な研究に関する
部分が主で、アメリカのナノテク
政策方針もこのような確かなバッ
クグラウンドに立脚している事が
伺われました。オランダの DSM
Research の J. Put 部長の講演で
は、科学・社会的ニーズ・事業に
立脚する産業研究という視点か
ら、ヨーロッパでの現状を踏ま
え、特に新技術のインパクトの趨
勢を意識した、ナノテクノロジー
への取り組み方について説明があ
M. S. Dresselhaus 教授
J. Put 部長
りました。田中一宜産総研理事
講演者と演題
は 、「 ア ト ム テ ク ノ ロ ジ ー プ ロ
Carbon Nanotubes, Bismuth Nanowires,
ジェクト」のプロジェクトリー
and Low-Dimensional Thermoelectric
ダーとして、同プロジェクトとそ
Materials
の中核であるユニークな産学官集
Mildred S. Dresselhaus
Massachusetts
Institute of Technology)
(
中共同研究体アトムテクノロジー
研究体(JRCAT)での業績を中心
Industrial Polymer Research ; What
に紹介されました。物質・材料研
Role Could Nanotechnology Play?
究機構 ナノマテリアル研究所の
Joseph Put
(DSM
Research)
吉原一紘所長からは、同機構にお
けるナノテク研究について講演い
アトムテクノロジープロジェクト
ただきました。産総研のナノテク
田中 一宜
(産総研)
ノロジーとの類似点・相違点・得
意分野などが知ることができ、興
物質・材料研究機構におけるナノテ
味深いものでありました。NEC基
クノロジー・材料研究
礎研究所の曽根純一所長には、産
吉原 一紘
業応用の視点から講演いただきま (物質・材料研究機構 ナノマテリアル研究所)
した。飯島澄男博士の発見に端を
ナノテクノロジーのエレクトロニク
発するカーボンナノチューブの研
ス応用
究はさすがに応用面まで幅広く展
曽根 純一
(日本電気株式会社
基礎研究所)
開されているのが印象的でした。
田中一宜理事
吉原一紘所長
曽根純一所長
AIST Today 2001.12
5
テーマセッション
ナノ構造を創る
P. R. Herman 教授
カナダ Toronto 大学 P. R. Herman 教授からはフェムト秒短波長
レーザーの非線形吸収効果を利用する事により、波長の壁を越
え「ナノ」の領域に入った微細加工技術とその現状、ソニー(株)
コアテクノロジー&ネットワークカンパニーの渡辺健次郎統括
渡辺健次郎統括部長
部長からはハードディスクなどの記録媒体の高密度化に伴い期
待されている高密度光学記録媒体の作製と光学系等その周辺技
術、矢部 彰マイクロ・ナノ機能広域発現研究センター長からは
同センターの研究スタンスとナノ微粒子やナノ気泡作製などの
業績についての講演が行われ、ナノ構造作製の現状や将来性に
ついて議論がなされました。
矢部 彰センター長
ナノ構造を見る
M. Salmeron 教授
走査型プローブ顕微鏡(SPM)に焦点がおかれた講演が行われ、
米国 Lawrence Berkeley 国立研究所の M. Salmeron 教授から濡れ
性および液体構造観測、大阪大学青野正和教授からナノワイ
ヤーやナノフィルムの電気特性計測、横山 浩ナノテクノロジー
研究部門長から摩擦によるナノパターン構造作製、スイスBasel
大学 H. J. Güntherodt 教授からは有機分子操作や単一分子の力学
特性評価等、ナノテクノロジーに応用できる多様なツールとし
て活用されている現状について報告されました。またコン
青野正和教授
H.J.Güntherodt 教授
大野隆央副センター長
ピュータシミュレーション予測のナノテクノロジーへの応用に
ついての講演が物質・材料研究機構 計算材料科学研究センター
の大野隆央副センター長からありました。
横山 浩部門長
ナノ機能を発現する
馬場嘉信教授
NTT 物性科学基礎研究所藤木道也主幹研究員からは分子スイッ
チやメモリとして期待されるらせん型ポリシランの転移特性、
徳島大学馬場嘉信教授からは半導体集積化技術によって発達し
たナノ微細加工技術を応用した極微量DNA用解析チップ、京都
大学松重和美教授からは究極の記録ユニットである分子メモリ・
分子コンピュータへの展望、清水敏美界面ナノアーキテクトニ
クス研究センター長からは両親媒性物質を使った水性ナノ
清水敏美センター長
藤木道也主幹研究員
チューブの設計・作製技術など、有機分子・生体分子に関わる
科学技術についての講演がなされました。
松重和美教授
ナノ構造を応用する
J. M. Kim 副社長
韓国サムソンAITのJ. M. Kim副社長からは実用レベルに達しつ
つあるカーボンナノチューブを使ったフルカラーパネルディス
小田俊理教授
プレイ、東京工業大学小田俊理教授からは単電子素子として注
目されているシリコンナノ粒子作製制御と応用、エレクトロニ
クス研究部門スピントロニクスグループの鈴木義茂研究グルー
プ長からは超高密度記録が期待されるトンネル磁気抵抗デバイ
スなどが紹介され、さまざまな分野に展開しつつあるナノ構造
利用技術の現状と将来について報告がなされました。
6
AIST Today 2001.12
鈴木義茂研究グループ長
Advanced Laser Microfabrication and Its Applications
Peter R. Herman
(University of Toronto)
Nano-Manufacturing in Storage Industries
渡辺 健次郎
(ソニー株式会社コアテクノロジー&ネットワークカンパニー)
Nano-Manufacturing : Its Role and Importance
矢部 彰
(産総研 マイクロ・ナノ機能広域発現研究センター)
Imaging of Liquid Structures at the Nanometer Scale :
Wetting and Capillarity Miquel Salmeron
(Lawrence Berkeley National Laboratory)
Direct Measurement of Electrical Conductivity of
Nanoscale Films and Wires Using Multiple-Probe STMs
青野 正和
(大阪大学、理化学研究所)
Use of Scanned Probes for Fabricating Nanostructured
Materials and Devices 横山 浩
(産総研 ナノテクノロジー研究部門)
Computational Science for Nanotechnology
大野 隆央
(物質・材料研究機構 計算材料科学研究センター)
SPM Observation of Organic Materials
Hans Joachim Güntherodt
(University of Basel)
Switchable Hyper Helical Polymers toward Molecular
Processors
藤木 道也
(NTT 物性科学基礎研究所)
今回のシンポジウムでは、そのタイトルにも
あるようにナノテクノロジーの産業応用も視野
に入れたシンポジウムとして企画された事もあ
り、参加者のうち約6割は産業界からで、それ
も研究者から企画部門の方までと幅広くご参加
いただき、ナノテクノロジーへの期待の大きさ
が伺われました。また、1人当たりの講演時間
が短かったという事もあってか、時間がずれ込
む事もしばしばでしたが、それだけ内容の濃い
シンポジウムであったかと思われます。
今後も産総研では、このように科学技術の重
点分野に焦点を合わせた国際シンポジウムを年
1回開催する予定です。
Micro- and Nanofabricated Chip Technology for
Genomic / Proteomic Analysis and a Single DNA
Molecule Manipulation 馬場 嘉信
(徳島大学)
Ultra-High Density Molecular Memory and Molecular
Computer 松重 和美
(京都大学)
Molecule-up Approach for Versatile Nanotube Technology
清水 敏美
(産総研 界面ナノアーキテクトニクス研究センター)
Flat Panel Display using Carbon Nanotubes
Jong Min Kim
(Samsung AIT/Samsung SDI)
Fabrication and Device Application of Silicon
Nanostructures 小田 俊理
(東京工業大学)
Resonant Tunneling Magneto-Resistance Devices and Its
Development into Nano-Spinelectronics
鈴木 義茂
(産総研 エレクトロニクス研究部門)
なお、要旨集などの当日配布資料に多少残部がござ
いますので、ご希望がございましたら
●産総研国際シンポジウム事務局
e-mail: [email protected]
fax: 0298-61-3258
までお知らせいただければ、送料
着払いにてお送りします。
AIST Today 2001.12
7
原索動物ホヤに見る感覚神経の分化
− 神経堤細胞の分化メカニズム解明に向けて −
神経堤は脊椎動物の発生初期に神経板と表皮の境
界部に生じる細胞集団で、その細胞は神経管が閉じ
たあと体内を移動し分化する(図1)。神経堤細胞は
感覚神経、内分泌細胞、色素細胞など様々な細胞種
に分化することから、その分化メカニズムの解明は
再生医学や発生工学の分野で重要な課題となってい
る。神経堤細胞が発生過程でどのような細胞種にな
るかは移動前の位置、移動開始時期、移動経路、移
動先などの複合的要因により決定することが知られ
ているが、分化制御メカニズムはほとんど分かって
いない。
我々は神経堤細胞の分化メカニズム解明を目指
し、海産無脊椎動物のホヤを用いて、感覚神経の分
化発生を研究している。ホヤを使う理由として、
図1 ホヤと脊椎動物における感覚神経分化の比較
おおつか [email protected]
脳神経情報研究部門
図2 ゲルゾリンの発現で見るホヤ感覚神経の分布
1)単純な神経系で関連する遺伝子が少ないこと、
2)胚の形態および発生様式が脊椎動物と類似して
いること、3)
胚細胞の分裂パターンに個体差がほと
んどないこと、4)
遺伝子導入などの実験操作が確立
していることが挙げられる。
我々は感覚神経の分化に関する研究の中で、ゲル
ゾリン(アクチン結合タンパク質の一種)がホヤ感覚
神経に特異的に発現することを見出し、その結果を
もとに、ゲルゾリンを感覚神経のマーカーとして利
用する手法を開発した(図2)。この手法を用いるこ
とにより、感覚神経の前駆細胞が表皮と神経板およ
び表皮と筋肉の境界部に存在し、神経管が閉じたあ
とに正中線上で分化することを明らかにした
(図1)
。
また、感覚神経の分化誘導が胚の前方と後方で異な
ることを明らかにした。ホヤ感覚神経の細胞系譜お
よび分化誘導は脊椎動物のものとよく似ており、ホ
ヤ感覚神経の前駆細胞は神経堤細胞の祖先型とも言
うべき細胞であることを示唆している。我々はホヤ
という単純な系を神経堤細胞分化の研究モデルに用
いることで、神経堤細胞分化の解明に向けた新たな
道を拓いた。
(この研究成果は Developmental Biology 誌11月号に掲載
された。)
関連情報
・ Ohtsuka, Y., Okamura, Y., and Obinata, T. : Changes in gelsolin expression during ascidian metamorphosis. Dev. Genes Evol. 211, 252-256 (2001).
・ Ohtsuka, Y., Obinata, T., and Okamura, Y. : Induction of ascidian peripheral neurons by vegetal blastomeres. Dev. Biol. 239, 107-117 (2001).
8
AIST Today 2001.12
ゆ き お
大塚 幸雄
生物時計が支配する交尾行動リズム
− 少子化時代への時間生物学的ヒント −
動物の交尾行動は、良いパートナーを選び、その
子孫を維持するために重要な行動である。昆虫から
ラットなどの幅広い種において、交尾行動を起こし
やすい時刻に種による違いがあることは1946年以来
よく知られた事実であったが、この行動を司る遺伝
子発現機構に関して全く解明されていなかった。
一方、血圧、体温、覚醒睡眠などの約24時間周期
を作り出す元となる遺伝子群の研究
(サーカディアン
リズム)
が近年急速に進歩し、時計遺伝子と呼ばれて
1)
いる 。
時計遺伝子として最初に単離されたのがショウ
ジョウバエ period 遺伝子で、1984年のことである。
この発見に引き続き、当時 D rosophiologist の最高峰
にいたKyriacouらは当然のごとく、この遺伝子欠損
株が交尾行動リズムに影響を与えるとの仮定のもと
数々の実験を行った 2)。しかし、今一つその結果は釈
然としないものであった。
1997年の暮れ、生物時計グループに何人かのポス
ドク候補者の中から坂井貴臣
(現群馬大学行動遺伝学
助手)
を迎えた。彼はこの古くて新しい問題に興味を
抱き、Kyriacouらの取ったオスの求愛行動(courtship
song)のみを測定する方法に疑問を抱いた。そこで
我々は、この系とは全く異なる観点で実験をした。
ショウジョウバエ雄と雌 5 匹ずつを同じビンに入れ、
20分後に雌の受精率を直接顕鏡するという方法で交尾
リズムを測定した(arranged marriage法 3) )。見事に昼
と夜にピークを持つ交尾リズムが取れ、さらにそれが
雌の時計遺伝子欠損株と野生型の雄の組み合わせで失
われることが示され、その成果を2001年のPNAS USA
に発表した 4)。この結果は、雌の性的受容性が時計遺
伝子に支配されている事を示している。
さらに、同じ地域に生息する近縁種のショウジョ
ウバエの交尾リズムを調べてみると、まったく逆の
パターンを示したことから、時計遺伝子による交尾
い し だ の
り
お
石田 直理雄
[email protected]
分子細胞工学研究部門
時間の違いが種の保存にも影響を及ぼしていると考
えられた。
この原理が直ちにヒトの問題に応用できるかはと
もかく、今後少子化を迎える我が社会において、東
洋的な「気が合う、間が合う」という言葉の本質を、
意外にも時計遺伝子で語れる日もそう遠くないかも
しれない。
写真1 オスの求愛行動(下がオス)
ハネを特定のリズムで振動させる行動は、
courtship song(求愛歌)
と呼ばれる。
(写真提供:坂井 貴臣)
写真2 キイロショウジョウバエの交尾行動
(写真提供:坂井 貴臣)
関連情報
1) N. Ishida, M. Kaneko and R. Allada : PNAS USA 96, 8819-8820 (1999).
2) F.V. Schilcher : TINS 12, 311-313 (1989).
3) N. Ishida, K. Miyazaki and T. Sakai : BBRC 286, 1-5 (2001).
4) T. Sakai and N. Ishida : PNAS USA 98(16), 9221-9225 (2001).
AIST Today 2001.12
9
リポソームを利用した遺伝子導入法
− バイオサーファクタントで飛躍的に効率アップ −
きたもと [email protected]
環境調和技術研究部門
特定の遺伝子を細胞に入れることは、癌などの
「遺
伝子治療」
において必須の操作である。これまでの遺
伝子治療では、遺伝子の「運び屋」として、病原性を
植物油脂
抑制したウィルスが利用されてきたが、ウィルスの
感染性や抗原性が大きな問題であった。
酵母菌による発酵生産
「運び屋」
としてリポソーム
(脂質から作られる微小
なカプセル)
を用いる方法は、ウィルス法に比べ非常
に簡便かつ安全であるが、導入効率が低かった。
我々は、名古屋市立大学薬学部の中西 守教授のグ
ループと共同で、バイオサーファクタント
(微生物が
C H3
HO
作り出す機能性脂質)
を材料とした新しいタイプのリ
OH
n
H3 C
O
ポソームの開発を試みた。その結果、動物の培養細
OAc
n
胞への遺伝子導入効率を、従来に比べ最大70倍と世
OH
O
O
O
界一のレベルまでアップさせることに成功した。
O
AcO O
n = 6∼10
我々は、環境にやさしい機能性材料の開発研究に
おいて、酵母菌が植物油から大量に作り出すバイオ
バイオサーファクタント
サーファクタント
(図1)
が、抗癌剤に類似した機能を
図1 酵母により作り出されるバイオサーファクタント
持つことを見出していた。一方、中西教授のグループ
は、新しい陽イオン性脂質(コレステ
ロール誘導体)を含むリポソームを開
発し、遺伝子導入効率を改善すること
バイオサーファクタント
新しいリポソーム
陽イオン性脂質+リン脂質
に成功していた。
今回、これらの技術を総合して、
遺伝子とリポソームが
従来のものに比べ、遺伝子との結合
効率よく結合する
遺伝子
(DNA)
性が高く、サイズがコンパクトで細
胞への付着や取り込みが起こり易い
サイズがコンパクト
画期的な新しいリポソームの開発に
になる
成功した(図2)。
この新しいリポソームを用いる手
細胞に付着して、効率
細胞
良く取り込まれる
法によって、遺伝子導入操作が大幅に
細胞核
効率化され、ライフサイエンスにおけ
遺伝子が働き出す
る遺伝子機能の研究や、医療における
遺伝子治療の研究が大きくスピード
アップできるものと期待される。
図2 リポソームを利用した細胞内への遺伝子導入
関連情報
・ D. Kitamoto, et al. : Chem. Commun., 861-862 (2000).
・ D. Kitamoto, et al. : Biotechnol. Progress 17, 362-365 (2001).
・ D. Kitamoto, et al. : Biotechnol. Lett. 23, 1709-1714 (2001).
・ Y. Inoh, et al. : Biochem. Biophys. Res. Commun. 289, 57-61 (2001).
10
AIST Today 2001.12
だ い
北本 大
蛍光標識磁気ビーズでSNP検出
− ヒトゲノム検査の高速自動化 −
ま ち だ まさゆき
町田 雅之
[email protected]
分子細胞工学研究部門
のなど、医療面として重要な個人の性質に関わるも
のが存在する。そこで、どのSNPがどの様な性質に
関っているかが明らかになれば、予防医療やオー
ダーメイド医療などでの意味は大きく、製薬企業や
ベンチャー企業が解析にしのぎを削っている。
我々は、SNPを高速かつ簡便に解析するための技術
について、磁気ビーズと蛍光検出を利用して開発を進
めている。磁気ビーズは、磁石を近づけたり遠ざけた
りすることによって、水溶液中から回収したり分散さ
せたりすることが容易で、生体物質を自動的に分離抽
出するために優れた素材であ
る。我々は、蛍光標識された
ビオチン
SNP(A又はG)
DNA断片の塩基配列特異的な
ゲノムDNA
G/G
連結反応と、磁気ビーズへの
DNAの増幅
制限酵素認識配列
結合を利用して、SNPを高い
信頼性で検出する技術を開発
制限酵素による切断
A/G
AG又は
GG
した(図1)。また、蛍光標識
FITC
アダプター TC
によって異なるDNA断片を固
連結反応
Cy5
A/A
CC
定化した磁気ビーズの1 個 1個
を識別する技術を開発し、こ
磁気ビーズへの結合
れまで個別の反応容器中で
FITC
行っていた複数のDNAの検査
を一括して行うことができる
図1 磁気ビーズと蛍光検出によるSNPの解析
技術を開発した(図2)。これ
らの解析技術は、ベンチャー
企業であるプレシジョン・シス
識別用蛍光色素
テム・サイエンスなどと共同で
リガンド(DNA等)
開発を進めており、ハイス
ループットな磁気ビーズ処理
装置として自動化している。
今後、医療検査やバイオテク
ノロジーの生産管理などの分
野において、熟練した技術者
異なるビーズを異なる
フローサイトメトリー
混合して複数の反応を同時に進行
でなくても短時間で容易に分
蛍光でコード化
で検出と読取り
析が可能な検査装置の開発を
目指している。
図2 蛍光標識された磁気ビーズによる多重化反応
Cy5
ヒトゲノムの全塩基配列の解析はほぼ完了し、こ
の貴重で膨大な情報の意味を明らかにし、如何に有
効に利用するかについての様々な研究が進められて
いる。ヒトゲノムの塩基配列は、個人毎に欠失、挿
入、置換などの様々な異なる変異が存在するが、そ
の中でも最近一塩基多型(SNP)が注目されている。
SNPとは、点突然変異による1 塩基の置換、挿入、欠
失を含む総称であり、約30億の塩基対からなるヒト
ゲノム中に約300万個存在すると言われている。これ
らの中には、病気の原因や薬効・副作用に関わるも
関連情報
・ 特願平10-206057「標識化複合粒子並びにその製造及び使用方法」
・ 13th International Genome Sequencing and Analysis Conference (TIGR), Abstracts, 69(P065) and 95(P159).
AIST Today 2001.12
11
ナノ微粒子でタンパク質を釣る
− 損傷DNAに結合するタンパク質の精製と解析 −
化学物質や紫外線、活性酸素などが引き起こす
DNAへのストレスは多様な疾病を生む。しかし、損
傷などによるDNAの構造変化を認識するタンパク質
の解析は、その結合が比較的弱いことやタンパク質
の種類が多岐に渡るため決して容易ではなかった。
そこで我々は、抗癌剤シスプラチン
(CDDP)
に注目し
て、そのDNA損傷に関わるタンパク質を簡便かつ網
羅的に精製・解析する手法を探索した。
通常、親和性タンパク質を精製する場合は、数十
∼数百µmの多孔質なアガロース担体などによるア
フィニティーカラム法を用いる。しかし、高価な精
製装置が必要なことや粒子内部への拡散などによる
タンパク質の吸着が多く、特に親和性の小さいタン
パク質の精製にはかなりの労力が必要であった。
そこで我々は、東京工業大学フロンティア創造共同
研究センターの半田 宏教授と共同で、スチレン−
グリシジルメタクリレート共重合体を核とする充密
な担体
(SG beads)
にCDDPで損傷させたDNAを固定し
た直径200nmの均一な微粒子を作製した
(図1)
。その
性タンパク質を精製した結果
(SDS-PAGE)
を図2に示
す。HPLCなどの3 種類の精製過程を経た従来法
(左側)
に比較し、1.5mLの遠心チューブを用いて数時間でワ
ンステップ精製したもの(右側)は明らかに非特異的
吸着が少なく、結果的には既に報告されているもの
を含め複数の親和性タンパク質を精製・確認するこ
とができた。現在は各種のCDDP誘導体で比較しなが
ら、DNA構造変化と作用機構との関連を検討してい
る。新しい手法や材料は研究を飛躍的に展開させる
力があり、化学と生物学などの異分野融合によるナ
ノバイオ研究に一層取り組む方針である。
関連情報
・ T. Tomohiro, et al.: Proceedings of 219th ACS meeting, BIOT 202 (2000).
AIST Today 2001.12
たけのり
[email protected]
分子細胞工学研究部門
表面には多数のエポキシ基が存在するため、少量の
微粒子に多くのDNAを容易に固定できる。ヒト子宮
頸癌HeLa細胞のタンパク質粗抽出液から直接、親和
図1 CDDP-DNA固定微粒子
12
ともひろ 友廣 岳則
図2 CDDP-DNAに対する親和性タンパク質の精製
触媒法で有機リン類のクリーン合成
か ん − 古典的合成手法からの脱却を目指して −
リンは地殻で10番目に多い資源量豊富な元素であ
り、また生物のライフプロセスに深い関わりを持つ
元素でもある。有機リン化合物は殺虫剤や抗生物
質、さらにウランなどの放射性物質の抽出剤やその
廃液の処理剤に広く用いられている。
このように多岐の用途を有する有機リン化合物の合
成には、古くから有機リチウムや有機ハロゲン化合物
などを原料とする置換反応が頻用されてきた(式1)。
しかし、これらの反応からは必ず目的物
(C)
と等量の
非目的物
(D)
が併生してしまう。一方、水素−リン結
合を持つ水素ホスホン酸エステル(HP(O)(OR)2)やホ
スフィンオキシド
(HP(O)R2)
類は、安価で入手容易な
リン化合物原料である。金属触媒を用い、これらの
化合物を炭素−炭素不飽和結合に効率よく付加させ
ることができれば(式2)、様々な有機リン化合物を
これら安価な原料から副生成物の発生を伴うことな
く高効率的に合成することができ、魅力的な合成法
と言える。しかし、有機リン化合物は金属触媒に配
位し触媒を不活性化する(触媒毒)性質を持つ。この
ため、その合成に敢えて金属触媒を用いる方法は当
時無謀とも考えられ、誰も試みなかった。
式1
A
+
[email protected]
グリーンプロセス研究ラボ
我々は、まず遷移金属錯体による水素−リン結合
活性化から着手し、意外にもこれらの結合が容易に
切断され、反応活性な水素−金属結合を有する活性
種を与えるという結果を見出した(式3)。さらに触
媒的付加反応へと研究を展開したところ、図に示す
ようにわずかな金属錯体触媒で効率よく付加反応が
進行することを見出した 1)。すなわち、金属錯体触媒
を用いることにより、ホスホン酸ジエステルなどが
アセチレン化合物への効率的な付加を実現し、有用
でありながらも通常の方法で合成困難な一群のビニ
ルリン化合物の合成に成功した。開発した新規触媒
付加反応では、用いる触媒の種類や添加物の有無に
より、その立体および位置選択性を完全に制御する
ことができる。
我々が開発したこれらの新規触媒反応は、古典的
な手法とは異なる数少ない有機リン化合物のクリーン
な合成法として内外から注目され始めている 2)。大き
なスケールへと展開できるなどの特徴も持つので、
その実用化を目指して、低コストで目的物を合成で
きるように、触媒性能の向上や安価な触媒を用いた
反応の開発などを精力的に行っている。
R
B
C
+
D
PhZ
二種類の原料
目的物
R
非目的物
P(O)Ph2
R
R
P(O)(OR')2
[ Pd]
R
R
触媒
R
+ H—P(O)Z2
=
O PEt3
(EtO)2P Pt H
PEt3
式 研究のストラテジー
[ Pd]
R
R
・
R2
R1
R2
P(O)(OR')2
[Rh]
( Z = S, Se)
R1
O
=
O
(EtO)2P—H + Pt(PEt3)3
=
式3
P(O)Ph2
PZ2
Z = RO, R
(R'O)2P(O)H
Ph2P(O)H
(R'O)2P(O)(ZPh)
R
P(O)(OR')2
[ Pd]
[ Pd/Ph2P(O)OH]
式2
りつぴょう
韓 立彪
R
[ Pd]
[ Pd]
[ Pd]
R
P(O)(OR')2
P(O)(OR')2
P(O)(OR')2
R
P(O)(OR')2
図 新規高効率触媒反応による有機リン化合物の合成
関連情報
1) L.-B. Han, C.-Q. Zhao and M. Tanaka : J. Org. Chem. 66, 5929 (2001) ; C.-Q. Zhao, L.-B. Han, M. Goto and M. Tanaka : Angew. Chem. Int. Ed. 40, 1929
(2001) ; F. Mirzaei, L.-B. Han and M. Tanaka : Tetrahedron Lett. 42, 297 (2001) ; C.-Q. Zhao, L.-B. Han and M. Tanaka : Organometallics 19, 4196
(2000) ; L.-B. Han, F. Mirzaei, C.-Q. Zhao and M. Tanaka : J. Am. Chem. Soc. 122, 5407 (2000) ; L.-B. Han and M. Tanaka : Chem. Lett. 663 (1999) ;
L.-B. Han, R. Hua and M. Tanaka : Angew. Chem., Int. Ed. Eng. 37, 94 (1998) ; L.-B. Han, N. Choi and M. Tanaka : Organometallics 15, 3259 (1996) ;
L.-B. Han, N. Choi and M. Tanaka : J. Am. Chem. Soc. 118, 7000 (1996) ; L.-B. Han and M. Tanaka : J. Am. Chem. Soc. 118, 1571 (1996).
2) 化学工業日報(2000年4月19日) ; Chemical & Engineering News (September 4, 2000) ; 韓, 田中 : 化学と工業 54, 187 (2001) ; 韓 : 化学と工業
52, 142 (1999).
AIST Today 2001.12
13
NOx浄化で世界最高性能
あ わ の − 電気化学セルの高次構造制御で実用化へ前進 −
14
[email protected]
シナジーマテリアル 研究センター
年々深刻化する地球環境問題の解決の一つとし
て、自動車排ガス中に含まれるNOxなどの有害物質
の分解浄化が不可欠である。その一方で、環境対策
と同時にエネルギー問題も併せて考える必要があ
る。低燃費運転(リーンバーン条件)では、エンジン
燃焼ガスに過剰酸素が含まれるため、従来の排ガス
浄化触媒材料では、NOx浄化機能が激減する点が問
題である。
当研究センター環境浄化材料チームでは、「シナ
ジーセラミックス」
プロジェクトにおいて、NOx浄化
触媒の表面から連続的に酸素を取り除いて高いNOx
浄化性能を実現するための材料開発 1) を進めている。
その中で、従来は実用化が困難と見られていた
「電気
化学セル」
方式において、高効率NOx浄化が可能であ
ることを見出した 2), 3) 。
電気化学セルは、NOx浄化の妨げとなる触媒表面
に吸着した酸素分子をイオン化して酸素イオン伝導
体を通じて取り除くもので、現状技術で触媒活性化
のために行われる燃料の間欠的導入が不要という特
長がある。しかし、共存する酸素のイオン化と除去
に大電流を必要とする点が問題であった。そこで、
電気化学セルの作動電極側に、三次元的に貫通した
ナノポアを取り巻いて、ナノ∼ミクロレベルでネット
ワーク状構造を形成する酸素イオン伝導体と電子伝導
体の壁ができるように高次構造制御を行った
(図1)
。
その結果、共存酸素分子が上部層でトラップされイ
オン伝導体を通じて除去され、セルに加えた電流が
共存酸素の除去よりも、NOx浄化自体により多く使
われることにより、反応時の必要電流が大幅に低減
した(図2)。
今回開発した電気化学セルは、自動車の排ガス廃
熱を利用した熱電変換技術との組み合わせにより、
外部からのエネルギー供給を必要とせず連続的な
NOx浄化を可能とする、「自立型浄化材料」の実現を
図る上で重要な成果である。
図1 高次構造制御された電気化学セルの断面構造
図2 NOx浄化性能と電気化学セル作動電流の関係
関連情報
1) http://unit.aist.go.jp/synergy/tm3-j.htm または http://www.synergy.or.jp/index.html
2) S.Bredikhin, K.Maeda, M.Awano : J.Ionics Vol.7, 109-115 (2001).
3) S.Bredikhin, K.Maeda, M.Awano : Solid State Ionics Vol.144, 1-9 (2001).
AIST Today 2001.12
まさのぶ
淡野 正信
環境にやさしい吸着材
いぬかい − 多糖類系半金属吸着材の開発 −
元素周期表で金属と非金属の中間に位置するゲル
マニウム、セレン、ホウ素などの半金属は半導体材
料やガラス工業などに使われ、ほとんど全量を輸入
している有用元素であるが、一方、セレン、ホウ素
などの半金属は、健康障害を引き起こす有害元素で
もある。このように半金属は二面性を持っており、
有用半金属の回収および有害半金属の除去という観
点から、半金属選択性吸着材が産業界から広く求め
られている。しかし、半金属は弱酸性∼アルカリ性
で無電荷のオキソ酸またはその陰イオンとして溶存
しているため、従来の金属陽イオンを対象とした吸
着材は適用できない。
ホウ素、ゲルマニウムなどのオキソ酸またはオキ
ソ酸陰イオンは、多数の水酸基を有するポリオール
化合物と錯体を形成することが知られており、我々
は、この錯形成反応を利用して水溶液中の半金属を
選択的に捕捉するための多糖類系吸着材開発を目指
してきた(図1)。また、陰イオン交換反応を利用す
母材
官能基の導入
キトサン
(ジエタノールアミン)
CH2OH
O
[email protected]
基礎素材研究部門
ることも考え、多糖類系セレン吸着材の開発も行っ
てきた(図1)。天然高分子である多糖類を母材とす
ることにより、使用後の廃棄処分が容易な環境調和
型吸着材となるので、これまでに各種のキトサン系
半金属吸着材を創製した。
今回、キレスト(株)および中部キレスト(株)と共
同で、セルロース系のゲルマニウム吸着材およびセ
レン吸着材を開発した。セルロースにジエタノール
アミンまたはポリエチレンイミンを化学結合させた構
造の吸着材で、それぞれ、ゲルマニウム
(Ⅳ)
(図2)
ま
たはセレン(Ⅵ)を他の半金属が共存する水溶液から
選択的に、しかも素早く吸着することができる。合
成高分子系の半金属吸着材も存在するが、これらのセ
ルロース系吸着材は、合成高分子系吸着材よりも吸着
速度が速くて吸着量も多く、大量の水処理に適した環
境にやさしい半金属吸着材であるのが特徴である。
吸着される半金属
B
水酸基
O
OH
n
NH2
よしなり
犬養 吉成
セルロース
-OH
Ge
(Ⅳ)
(ポリエチレンイミン)
CH2OH
O
アミノ基
O
Se
(Ⅵ)
-NR1R2
OH
OH
n
図1 多糖類系半金属吸着材の開発
図2 カラム漏出曲線(ゲルマニウムの選択吸着)
関連情報
・ キトサン系半金属吸着材 : Anal. Chim. Acta, 343, 275 (1997) ; 371, 187 (1998) 等.
・ セルロース系半金属吸着材 : 公開特許公報, 2001-113179 ; 2001-113272
AIST Today 2001.12
15
超高効率薄膜太陽電池
や ま だ − 低コスト化と高効率化へ新プロセスの芽 −
地上に到達する太陽光エネルギーは密度が小さい
のでまとまったエネルギーを得るには広大な面積の
太陽電池を必要とする。このため、製造コストを極
力小さくすることが求められる。また、光−電気変換
効率を高くすると面積を小さくできるので、コスト
を下げることができる。高効率太陽電池の光吸収層
材料の一つとして、Cu(InGa)Se2がある。CuInSe2から
出発してInに対するGaの比率を変えることによって
地上の太陽光スペクトルのもとで理論的な限界効率
(25∼26%)を得られる禁制帯幅(半導体中の電子が自
由に動けるようになるために必要なエネルギー)
に合
わせることが可能であり、15%を超える実用効率を
目標にできる。しかし、最適化は必ずしも完成してお
らず、末端物質であるCuGaSe2も含めて材料研究が世
界的に進められている。材料固有の性質を明らかに
する研究においては、それが不純物を含まず単一の
結晶(原子が規則正しく並んだ固体)になっているこ
とが不可欠である。我々は、真空中で成分元素を原
子あるいは分子の形で堆積させることでこのような
材料を膜状に作り、その膜を分析することによって
初めて明らかになった様々な知見を得てきた 1)。その
一端を以下に紹介する。
CuGaSe2はCuInSe2と異なって双晶
(原子の配列が鏡
[email protected]
電力エネルギー研究部門
対称になった部分を含む結晶で、その境界は欠陥と
みなされる)
の発生が著しいことが解り
(図1)
、Ga組
成比の高い吸収層作製に当たって考慮すべき要素の
一つと考えられる 2)。また、CuGaSe2化学量論比より
Gaが多いCu-Ga-Se化合物の単結晶膜を酸素を含む気
体の中で加熱すると、表面で酸化反応が起こり酸化
物の層ができる。図2はこのような膜をEPMAで組成
分析した結果の一例である。EPMAは細くした電子
ビームの照射に応じて発生する元素の特性X線の強度
を測定して組成比を決める方法である。電子の加速
電圧に対応して侵入の深さが変わるので、図の横軸
から厚み方向の情報を得ることができる3)。これを解
析・照合した結果、表面にGa2O3 が生成されるととも
に、Cu-Ga-Se化合物が化学量論比のCuGaSe2 に変わ
り、材料の品質が向上することが解った。Ga2O3 は禁
制帯幅が大きく伝導型がCuGaSe2 固有のそれとは反対
の半導体であるので窓層材料としての条件を備えて
おり、酸化によって自然に作り込まれた接合を形成
できる可能性がある。このことより作製法が単純に
なるため、低コストプロセスの開発が期待できる。
50
Se
Ga過剰
Ga大いに過剰
Atomic percent
40
CuGaSe2
30
Ga
20
Cu
10
O
0
・単一結晶による回折のみ
が4回対称の斑点として現
れる。
・単一結晶の他に双晶によ
る回折が2回対称の斑点と
して現れる。
・単一結晶と双晶に加えて
結晶の向きが変わった部分
による回折斑点が現れる。
図1 Ga組成比と欠陥の増加(X線解析の極点表示)
4
6
8
10
12
Accelerating voltage (kV)
図2 厚み方向の結晶膜組成変化(EPMA法)
関連情報
1) A. Yamada, P. Fons, R. Hunger, K. Iwata, K. Matsubara, S. Niki : Appl. Phys. Lett. Vol. 79, No. 5, 608-610 (2001).
2) A. Yamada, P. Fons, S. Niki, H. Oyanagi : Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 39, Suppl. 39-1, 200-202 (2000).
3) A. Yamada, P. Fons, S. Niki, H. Oyanagi : Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 38, L96-L98 (1999).
16
AIST Today 2001.12
あきまさ
山田 昭政
オレフィン系高分子の機能化
はぎはら − 水酸基含有ポリオレフィンの合成 −
ポリエチレン、ポリプロピレンといったオレフィ
ン系高分子(ポリオレフィン)は優れたプラスチック
材料として様々な分野で用いられており、現在もそ
の需要は拡大している。これらの特徴としては、高
分子の立体的な構造を変えることでいろいろな物理
的性質を持つ材料を作れることや、比較的安価で製
造できること、また基本的に炭素と水素しか含まな
いため環境に対する負荷が非常に小さい事などが挙
げられる。
しかし一方で、炭素と水素しか含まない材料は、
色が付かない・接着性がよくないなど、機能に乏し
いという面がある。こういった機能性を出すために
は、高分子中に酸素原子などを含む極性部位がない
と難しい。もし、少量の極性部位を有するポリオレ
フィンが合成できれば、上記のような特徴と機能性
を併せ持った、より様々な用途や製品に利用できる
材料となることが期待できる。
OH
CH2
エチレンと共重合
CH2
[email protected]
高分子基盤技術研究センター
一般的にポリオレフィンは、チタンやジルコニウ
ムといった遷移金属の化合物を触媒とし、エチレン
やプロピレンを重合して作られる。しかし、これら
の触媒は極性基が反応系中にあると、ほとんどの場
合働かなくなってしまう。そこで我々は、水酸基を
もつオレフィン類をアルミニウム化合物で処理し、
これをジルコニウム触媒によりエチレンやプロピレ
ンと共重合する方法を開発してきた(図)。
この方法では、体積の大きいアルミニウム化合物
を用いると効率よく反応を進行させることができ
る。また触媒の構造を変えることで、様々な構造の
水酸基含有ポリオレフィンを合成することができ
る。例えばこれまでに、エチレンと水酸基ユニットが
交互に並んだものや、結晶性のポリプロピレン中に水
酸基を含むものなどの合成に成功している。これらの
材料はこれまでのポリオレフィンに比べて水によく
なじむため、染色性や接着性の向上が期待される。
H2C
H2C
ひであき
萩原 英昭
OH
OH
OH
H2C
CH2
H2C CH
Si
Zr
Cl
CH3
O Al n
Cl
水酸基含有モノマー
(触媒)
R
R Al
O
CH3
CH
H2C
水酸基を
アルミニウム化合物で
処理
水酸基を含むポリオレフィン
プロピレンと共重合
Si
Zr
Cl
Cl
OH
CH3
O Al n
(触媒)
図 水酸基含有ポリオレフィンの合成方法
関連情報
・ Hagihara H., Murata M., Uozumi T. : Macromol. Rapid Commun. 22, 353-357 (2001).
AIST Today 2001.12
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次世代半導体:鉄シリサイド
な が い − 微小重力下での新しい合成法 −
[email protected]
微小重力環境利用材料研究ラボ
半導体と言えば、今やあらゆるところで使用され
るほどポピュラーな材料で、現在の主流はケイ素
(シ
リコンとも呼ばれている)単体でできており、更な
る高機能を求めてガリウム砒素やインジウム燐など
の化合物半導体が研究、製造されている。しかし、
これらの化合物半導体はその資源量が少なく有毒な
原料を用いることが多いため、次世代の化合物半導
体として資源量が豊富で無毒な鉄とケイ素でできた
β−鉄シリサイド
(β相)
が注目を集めている。β−鉄
シリサイドは鉄とケイ素が 1:2 の原子比で結びつい
たもので、熱を電気に変換する熱電半導体や高効率
な発光素子、太陽電池としての利用が期待されてい
る。良いことずくめのように聞こえるが、鉄とケイ
素の化合物は多種多様で半導体としての特性を示す
β相以外に鉄とケイ素が 1:1 の化合物
(ε相)
と1:2.25
の化合物(α相)などが存在するので、融液から単純
に冷却しただけではβ相単相を得ることは難しい。
β相組成の凝固物をメカニカルアロイ法で一旦微粉砕
混合し、その熱処理によるβ相単相の作製が試みられ
ているが、現在のところβ相単相は得られていない。
本研究では、ケイ素と鉄がナノレベルで均一に分
散した原料を微小重力下で融液を急速に凝固するこ
とで作製し、ナノレベルで分散したケイ素と鉄の熱
処理により、β相単相を作製することを試みた。その
結果、微小重力下では重力の影響が無視できるほど
小さくなるため、熱対流や比重差による物質の沈降
が抑制され、均一な融液の状態が維持できる。この
融液を銅板などの冷却媒体に衝突させることによっ
て均一な融液の状態を急速に凝固させることがで
き、ナノレベルでケイ素と鉄が分散した凝固物が得
られた。この凝固物を850℃に昇温するだけでβ相単
相が得られた。
今後は、融液を利用できることを生かした半導体
特性の制御に不可欠な不純物の均一添加や、均一な
凝固物を出発原料とした単結晶材料の合成を試みる
予定である。
写真 微小重力下で急速凝固したFe-Si合金
図 Fe-Si合金の急冷装置の概略
関連情報
・ 奥谷猛, 永井秀明, 皆川秀紀, 中田善徳, 鶴江孝, 折橋正樹 : 特許第3087964号「自由落下液滴の衝突凝固による高品質結晶材料の製造方法」
18
AIST Today 2001.12
ひであき
永井 秀明
ガラス材料の微細加工と新機能発現
に し い じゅんじ
西井 準治
− 光通信分野におけるガラス材料の高機能化 −
[email protected]
光技術研究部門
光情報通信分野では様々なガラス製機能素子が使
われており、その一部は半導体分野と同じフォトリ
ソグラフィーとよばれる微細加工技術を駆使して作
られている。しかしながら、ガラス材料は微細加工
が極めて難しく、小型化や機能集積化には限界があ
る。我々は、次世代光デバイスへの応用を目指し
て、ガラス表面や内部への高精度な二次元的あるい
は三次元的な微細加工技術の開発に取り組んでいる。
図1は、ガラス表面に蛾の目を模倣した周期構
造を形成した例である。写真中の一つの構造単位
は1/1000mmであるが、さらに極微な加工も可能にな
りつつある。蛾は微弱な光を捕らえて暗いところで
も飛ぶことができる。このような構造を光デバイス
表面に形成すれば、微弱な光信号をたとえ斜めから
入射しても、常に反射率0.1%以下で素子内部に取り
込むことができる。この技術はフラットパネルディ
スプレイにも応用でき、斜めから見ても明るく鮮明
な画像が映し出されることが期待できる。
一方、光通信の分野では、信号をユーザー毎に分
別するためにフィルターが使われる。図2は
「光導波
路」とよばれる素子の上面写真である。その途中に
は、必要な信号だけを取り出すために1/2000mmの周
期構造をもつフィルターが形成されている。このデ
バイスは電柱やマンホールなどの過酷な環境下に置
かれ、現状では厳密な温度制御をしなければ安定し
た通信状態が得られない。温度制御にはペルチェ素
子とよばれる半導体デバイスが使われ、デバイス1個
あたり数十Wの電力の供給が必要である。
我々は、ガラス組成を改良することによって、
フィルター特性の温度による変動を従来比で2/3に低
減させ、今後は温度制御を不要にするために、さら
に1/10以下を目指す。このような技術は、情報通信
分野だけでなく、電子デバイスの間を接続するメタ
ル配線を光配線に置き換える際にも有効であり、情
報処理の一層の高速化への貢献が期待される。
図1 ガラス表面に形成した無反射構造
(大阪府立大学 菊田博士との共同研究)
図2 光導波路フィルターのアサーマル化
関連情報
・ K. Kintaka, J. Nishii, A. Mizutani, H. Kikuta, and H. Nakano : Opt. Lett. Vol. 26, No. 21, pp. 1642-1644 (2001).
AIST Today 2001.12
19
今月の特集 ●
エネルギー分野の動向と
産総研の取り組み
研究コーディネータ
大屋 正明
大量のエネルギー消費などがもたらした地球温暖化の問題は20世紀が残した大きな課題となっている。
そ
して 21 世紀を迎えた今日、エネルギー問題に対する地球的視野からの取り組みがこれまで以上に求められ
ている。特に、我が国にとってはエネルギーの安定供給(Energy Security)、環境保全(Environmental
Conservation)、経済成長(Economic Growth)の 3 つのEを同時に達成することが要請されている。
本特集では、産総研エネルギー分野の個々の研究ユニット紹介に先立ってエネルギー研究分野における科
学技術政策の概要と産総研におけるエネルギー研究開発の取り組みについて紹介する。
総合科学技術会議における重点領
域・項目
総合科学技術会議では、ライフ
サイエンス、情報通信、環境、ナ
ノテクノロジー・材料、エネル
ギー、製造技術、社会基盤、フロ
ンティアの 8 分野について、分野
別推進戦略を作成した。この内容
は、今後 5 年間にわたる当該分野
の現状、重点領域、当該領域にお
ける研究開発の目標および推進方
策を明確化したものである。エネ
ルギー分野は重点 4 分野には入ら
ず、その他 4 分野として扱われて
いるが、国の存立にとって基盤的
であり、国として取り組むことが
不可欠な領域とされ、これを重視
して研究開発を推進することとし
ている(表1)。
国の存立にとって基盤的であり、国として取り組むことが不可欠な領域を重視
エネルギー分野
1.重点領域及び5年間の研究開発目標
①供給、輸送、変換、消費のエネルギートータルシステムの変革をもたらす研究開発
3E達成への抜本的、効率的な取り組み。
②エネルギーインフラを高度化していくため必要な研究開発
エネルギーインフラに係る諸要素の研究開発。効率性、環境面等からの高度化。
③エネルギーの安全・安心のための研究開発
エネルギーのあらゆる側面において安全を確保し国民の安心を得る研究開発。
④エネルギーを社会的・経済的に総合評価・分析する研究
社会、経済、環境の諸面の総合分析評価、社会的理解を深める研究開発、産業創出の観点
からの研究等。
*上記項目に対応した5年間の目標を設定。
2.推進方策
1.研究開発の質と効率の向上を図るための重要事項
(1)発展途上国等へ移転可能な成果の創出、国際共同研究への参加等の国際協力の積
極的活用。
(2)研究開発成果に対する社会的理解の促進、普及、導入環境を踏まえた取り組み条
件の明確化。
(3)システム技術の効率的開発促進のための産学官の役割分担、連携。
産総研における取り組み
産総研におけるエネルギー分野
の研究開発の現状での取り組みの
状況の概要を図1に示す。
エネルギー科学技術においては
長期的展望に立ちつつ、エネル
20
AIST Today 2001.12
(4)省庁横断的課題についての省庁間の連携による効率的推進。
(5)短・中・長期的研究開発課題の整合性ある取り組み。
2.必要となる資源に関する留意事項
人材の確保・育成。エネルギー利用、安全に係る教育の充実。
表1 総合科学技術会議におけるエネルギー分野の重点領域・推進方策
ギー源の多様化、エネルギーシス
テムの脱炭素化、エネルギーシス
テム全体の効率化、基盤科学技術
の充実の重点化の視点を踏まえ、
産総研の具体的研究課題を総合科
学技術会議の重点領域に当てはめ
分類すると表2の通りである。
産総研では、環境・エネルギー
分野を重点分野と位置づけ、現
在、産総研中期目標を踏まえつ
つ、この分野の将来に向けた技術
戦略を検討しているところであ
る。何づれの機会に紹介したいと
考えている。
エネルギー分野の研究ユニット
エネルギー分野の研究実施部門
(以下、研究ユニットと称す)は、
ライフサイクルアセスメント研究
センター(研究職員11名)、パワー
エレクトロニクス研究センター
(同 11 名)、光反応制御研究セン
ター(同 26 名)、エネルギー利用
研究部門(同 107 名)、電力エネル
ギー研究部門(同 89 名)、生活環
境系特別研究体(同 51 名)、薄膜
シリコン系太陽電池開発研究ラボ
(同 4 名)があるが、この他にも環
境関連や資源関連、材料関連等で
エネルギー分野に係わる研究に従
環境問題
電力自由化
地球環境保全
技術等
分散エネルギーシステム
技術
エネルギーネットワーク技術
・分散電源ネットワーク制御技術
・代替燃料(水素等)ネットワーク技術
・超電導技術
エネルギー貯蔵技術
・水素貯蔵
・二次電池
エネルギー源の多様化
新エネルギー技術
・燃料電池
・太陽光発電
・風力発電
・バイオマス
省エネルギー技術
・超低損失電力素子
技術(SiC等)
・熱利用技術
・高効率燃焼技術
エネルギー・
セキュリティ、
安定供給
・化石燃料クリーン化
・燃料多様化
トータルエネルギーシステム解析・評価技術
図1 産総研におけるエネルギー分野の取り組み
事している研究ユニットは数多い。
エネルギー分野内外の連携強化
エネルギーシステムの研究開発
は、関連技術の集合体でもあり、
一つの主体が全体に取り組むこと
は非効率的でもある。したがっ
て、ユニット間の有機的な連携は
勿論のこと、従来にない産学官の
密接な連携を持ち多面的な課題解
決のアプローチと実用化を行うこ
とが急務であり、産総研はその一
翼を担う必要があると考えてい
る。また、国際的な共同研究等に
参画し世界に貢献してゆきたいと
考えている。
おわりに
以上、産総研のエネルギー分野
の概要を紹介した。各研究ユニッ
トでは、エネルギー分野への社会
的要請に応えるべく精力的に研究
開発を推進している。今後ともご
指導、ご協力をお願いする次第で
ある。
①供給、輸送、変換、消費のエネルギートータルシステムの変革をもたらす研究開発
・新たなエネルギーシステムの研究開発
水素エネルギー技術、バイオマス、燃料製造・利用技術
・輸送・変換の新たな電力エネルギーシステム研究開発
超電導技術、エネルギーネットワーク技術
・長期的研究課題
核融合、メタンハイドレート開発等
②エネルギーインフラを高度化していくために必要な研究開発
・エネルギー機器等の効率向上
燃料電池、太陽光発電、太陽光エネルギー利用技術、クリーンコールテクノロジー、
クリーン化技術、分散エネルギーシステム
・革新的技術
革新的燃焼技術
③エネルギーを社会的・経済的に総合評価・分析する研究
・エネルギーシステムの経済、環境面を含む総合分析評価する手法の開発
表2 産総研におけるエネルギー分野の研究開発課題の概要
AIST Today 2001.12
21
パワーエレクトロニクス研究センター
日本でエネルギーが電気として使
現在、
「超低損失電
われる割合は、現在 40%程度である
が、今後ますます増加すると予想さ
力素子技術開発電力」
プロジェクト(1998-
れる。家電、電車、自動車、各種産業
機器に使われているインバータで代
2002)を、産学官を結
集して、基板結晶成
表されるパワーエレクトロニクスは、
電力の発生(発電)、蓄積、輸送と電
長からデバイスプロ
セス、基本素子での
力の消費を最適化するためには欠か
せない技術である。現在その中核と
性能実証の一貫研究
を進めている。
なっているシリコンパワー素子では、
シリコンの物性値からくる性能限界
当研究センターで
は、実用化を目指し
パワーエレクトロニクス研究センター
ー(20011−20077年)
−新パワーシステム概念の創出を促す革新的パワー素子と統合化技術の確立−
電気自動車
電力ネットワーク
通 信
スーパーノードネットワーク
2007年
7
信頼性技術
材料・部品・実装技術
回路・システム化技術
革新的パワー素子
プロセス技術
超低損失電力素子
力素子
2001年
1
デバイス
基板結晶
プロセス
基本デバイス
素子化概念設計
スーパーデバ
バイス
バ
スーパーデザ
ザイン
ザ
1998∼
8∼2002
2年
超低損失電力素子技術開発
が見えはじめている。シリコンカー
たデバイス開発
バイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN) (スーパーデバイス)
を進めるとともに、回路・部品・材料・
実装などのパワエレ機器構成技術
ル抵抗の低減を、酸化/後処理条
件の系統的な研究から攻め、世界
温動作、高速制御可能なパワー素子 (スーパーデザイン技術)とシステム
を実現するものと期待されている。 の電力変換ノードとして組み込むた
でもっとも低い値を実現。実用化
へ向けての大きな前進。
などの新しいワイドギャップ半導体
は、この限界を超える低電力損失、高
基板結晶成長
デバイスプロセス
電極
チャンネル抵抗
材料科学
デバイス科学
めの性能仕様・効果予測(スーパー
ノードネットワーク技術)を同時並
・デバイスプロセス2(奥村リーダ)
エピタキシャル成長技術を軸に
行に進めることによって、早期実用
化への貢献を目指している。
展開。GaN の MBE 成長技術でブレ
ーク。高周波素子としてのHEMT素
研究チーム紹介
子の試作で高性能を実証。
・スーパーデザイン
人材を求めている。現在、外部の
電力エネルギー、エレクトロニクス
研究部門と密接な連携で進めている。
オン抵抗
Si
実際
原因
除去
理
論
値
・結晶成長・評価(西澤リーダ)
昇華法という特異なSiC バルク結
SiC
欠陥
欠陥
欠陥
電極抵抗
チャンネル抵抗
理論値
耐 圧
基本デバイス作製
晶成長を、材料科学的アプローチ
で攻めている。初期過程を直接観
察する手法を開発し、欠陥抑制手
法を開発した。
・デバイスプロセス1(福田リーダ)
MOS 素子最大課題であるチャネ
委員会で産学の協力を得て課題の
絞り込みを進めている。新しい開
発形体も模索。
・スーパーノード(石井リーダ併任)
電力エネルギー研究部門と協力
して推進。
「SiC、GaN 素子導入によ
る最もインパクトの大きなシステ
ムは何か?」を詰めている。
(荒井 和雄)
光反応制御研究センター
22
当研究センターのミッション
そのため、基礎・基盤研究を主担当
の発展に貢献すると共に、光反応制
21 世紀は光の時代と言われ、エネ
ルギー資源の枯渇や地球環境問題の
とする光反応機構チーム、レーザー
反応制御チームと実用化技術を主担
御技術の世界におけるセンター・オ
ブ・エクセレンス(COE)となること
解決に、高度に制御された光反応技
術が大きく貢献することが期待され
当とする太陽光エネルギー変換チー
ム、レーザー精密プロセスチームの 4
を目指している。今回は太陽光エネ
ルギー利用技術の研究開発の中から二
ている。このような社会的背景から、
当研究センターでは無尽蔵でクリー
チームを編成し、光誘起電子移動な
どの光化学反応の基礎過程から実用
つのトピックスについて紹介する。
ンな太陽光エネルギーを効率良く利
用できる革新的な光反応制御技術と、
化プロセス技術までの一貫した研究
開発を4チームの有機的な連携の基に
太陽電池の普及拡大のためには、
その低価格化が喫緊の課題となって
環境を汚染せず欲しいものだけを造
る高選択性レーザー光化学プロセス
行うことを特徴としている。図1に
当研究センターでの具体的な研究課
いる。安価で高性能が期待される革
新的な次世代太陽電池の一つに色素
技術確立のための波及効果の高い研
究開発をミッションとしている。 題例を示す。エネルギー・環境問題の
解決の立場から、我が国の産業技術
増感太陽電池がある。我々は、色素増
感太陽電池の高性能化と、より安価
AIST Today 2001.12
新しい色素増感太陽電池の開発
光反応機構
な色素増感太陽電池の開発を目標と
しているが、高性能化の研究では太
レーザー選択反応
光誘起電子移動反応
陽電池変換効率 8.4 %を達成した。ま
た有機色素を用いた、より安価な太
極短パルスレーザー
陽電池では(株)林原生物化学研究所
との共同開発により世界最高の変換
ドナー
効率 6%を達成した。これらについて
は今後更に高性能化が期待される。
モデル化
基本波
超高速反応解析システム
e
分子の励起状態
3倍波
アクセプター
e
分子の
波動関数の干渉
時間
電子移動制御
光活性中心
ドナー
レーザー精密加工プロセス
e
レーザー(A)
ー
反応原料
料
反応追跡
制御装置
人工光合成
光
モデル化
コヒーレント制御
ント
ント制御
アクセプター
M
無尽蔵の水と太陽光からクリーン
な水素エネルギーを効率的に製造す
10 %
結合選択反応
色素増感太陽電池
e 光
e
可視光応答性光触媒による水の直
接分解
90 %
反応量
活性種生成
半導体・色素
レーザー(B)
ー
選択励起
反応性ガス
る技術は人類の夢技術の一つである。
安価な酸化物半導体粉末を用いる光
水
励起
炭酸ガス
水素
高性能化・高機能材料
有機物
光・レーザー反応
光エネルギー変換
触媒プロセスは、その有望な候補技
術である。我々は今までに、炭酸塩添
太陽光エネルギーの有効利用
加法 NiO/TiO2 光触媒を開発し、太陽
光で直接水を分解し、水素と酸素を
環境に優しい高選択的物質材料創製
図1 光反応制御研究センターの研究課題
製造できる事を実証してきたが、太
陽光の約半分を占める可視光を利用
植物の光合成メカニズムを模倣した光触媒水素製造プロセス
出来ない欠点があった。そのため、可
視光応答性光触媒プロセスの開発を
*
P700
AO
A1
* Pheo a
P680
Fx
FA
QA
Fd
QB
FNR
PQ
Fe S
H2O
C ytf
NADP+
PC
P700
Mn
light
z
O2
P680
e0
e-
H2
H2O
H+/H2
eOx/Red
O2/H2O
1.23
light
を水素と酸素に完全分解することに
成功した。図2に、その概念を示す。
水素生成効率は、まだ非常に低いが、
可視光を利用するという難しい課題
PS2[O2]
PS1[H2]
Small bandgap semiconductor or Dye
PSⅠ
Energy(eV)
光触媒プロセスを開発し、世界で初
めて可視光照射下で光触媒により水
PSⅡ
Energy
鋭意検討してきたが、最近、植物の光
合成の反応機構を模倣した2段階励起
h+
O2
H2O
h+
redox mediator
Mechanism of the photosynthesis in
green plant(Z-scheme)
Two-step water splitting using a redox mediator
をブレーク・スルーした意義は大き
い。水素生成効率の向上に向けて、新
・光合成メカニズムの原理と同じく、分子・原子レベルでの電荷分離を利用。
しい光触媒の開発に努力する所存で
ある。
・従来の1段光励起法と比較して、電化分離効率が高い、生成した水素と酸素を別々に発生できる、
利用できる色素や半導体粉末の種類が多い、等の長所がある。
(荒川 裕則)
・安価で単純な反応システムが構築できる 太陽エネルギー変換を目的として広面積化し易い。
図2 光合成プロセス模倣型の水の可視光分解光触媒プロセス概念図
エネルギー利用研究部門
利用
貯蔵・輸送
循環型社会の構築に向けて
我が国の産業の発展と住み良い社
会の実現のために、エネルギー利用
転換・改質
運輸分野
に伴う CO 2 の排出抑制やエネルギー
の安定供給技術の確立が強く期待さ
れている。このため、当研究部門で
は、エネルギー源の多様化を図りな
がら、よりクリーンなエネルギーへ
の変換と、それらエネルギー源の輸
石炭
石油 天然ガス
バイオマス
クリーン燃料製造
カスケード利用
リサイクルシステム
太陽
産業分野
発電事業
風力
利用システム
送や貯蔵技術についての研究を行う
とともに、これらの資源を熱や動力
等へ変換する技術あるいは徹底的に
効率的な利用を図る技術等の開発を
民生分野
分散型エネルギー利用
回収・再生
エネルギー源の多様化
AIST Today 2001.12
23
通じて、エネルギーの安定供給の確保
(18 研究グループ)を抱える産総研の
と地球環境の保全を目指した環境調和
型エネルギー需給構造の構築に貢献し
中で3番目に大きな研究ユニットであ
り、取り組む課題も多岐に亘るため
ていく。
運営に難しさは伴うものの、当分野
の長期ビジョンに基づく明確で大き
重点技術開発分野
これらの目標達成に向け、具体的
には電気と熱を効率よく使い、総合
な目標に向け研究を集約し、産業界
への貢献を最大の目的として、厳し
い競争を意識しつつ鋭意研究に取り
組んでいる。
(請川 孝治)
エネルギー・環境技術分野の長期ビジョン
2000
エネルギー効率を飛躍的に向上させ
る「小型分散エネルギーシステム
小型分散エネルギーシステム」、
小型分散エネルギーシステム
社会的要請
技術の潮流
廃棄物や自然熱・未利用熱を有効に
使う「カスケード
カスケード・
リサイクル技術」、
カスケード
・リサイクル技術
革新的「エネルギー輸送
エネルギー輸送・
貯蔵技術」
エネルギー輸送
・貯蔵技術
10
20
ZEV導入
COP3
ゼロエミッション化
30
石油タイト化
環境調和型社会
複合型システム
分散型
エネルギー
システム
、水素等の次世代クリ−ン燃料を製
造する「クリーン燃料製造技術
クリーン燃料製造技術」、エ
クリーン燃料製造技術
ネルギー安定供給を可能とする「エ
エ
カスケード
・リサイクル
貯蔵輸送
ネルギー源の多様化技術
ネルギー源の多様化技術」の 5 つの技
術開発に重点を置き、循環型社会の
クリーン動力変換
ハイブリッド車
システム最適化
熱電併給システム
自立型分散型
システム
可変速風車
ゼロエミッションビークル
環境調和型燃焼
天然ガス
貯蔵輸送技術
統合型システム
分散貯蔵
大量貯蔵輸送
構築に向けた新たなコンセプトとプ
ロトタイプの提案を行っていく。
当研究部門は、約 120 名の研究者
地
球
環
境
保
全
クリーン
燃料製造
水素メタン製造
エネルギー
源の多様化
自然熱利用
バイオマス利用
未利用エネルギー
再生可能エネルギー
技術導入
未利用化石
エネルギー利用
エ
ネ
安ル
定ギ
供ー
給
循
環
型
社
会
の
構
築
電力エネルギー研究部門
柔軟な高効率エネルギーシステム
の構築を目指して
ている。
当研究部門は、環境負荷低減やセ
術、パワーエレクトロニクスと情報
技術に支えられたネットワーク技術、
エネルギーは、人類の生活や生き
生きとした知的・経済的活動を支え
キュリティの確保に配慮しつつ、拡大・
多様化する人間活動をサポートするこ
長期的に理想的なエネルギー源を追
求する水素エネルギーや核融合エネ
るために無くてはならない。中でも
電力エネルギーは、その利便性ゆえ
とを目的に、電力エネルギーを中心と
した使いやすく経済的なエネルギー供
ルギーの技術、などをテーマとして
取り上げている。
に需要が急速に増大する一方、供給
構造は、環境負荷低減のための二酸
給・利用システムの構築に貢献するこ
とを目標としている。
ミッションに応じた多様なフォー
メーション
化炭素排出の少ない一次エネルギー
源へのシフト、省エネルギー・高効率
主要な研究開発課題
このため当研究部門では、「高効
当研究部門は、現在常勤職員約 100
名を含む総勢約 160 名で構成され、つ
化や供給自由化に伴う電源の小型・
分散化、クリーン自動車や携帯情報
率・小型分散電源技術の開発」、
「エネ
ルギー供給ネットワークの強化と高
くば中央第 2、第 5 事業所を拠点とし
ている。最大 13 名、最小 3 名の職員か
端末のための可搬電源への需要の急
速な増大、などの大きな変化を迎え
機能化」、「長期的な視野に立ったエ
ネルギー源の開発」
、などを中心課題
ら成る 14 のグループをフラットに配
置し、テーマの消長に応じて柔軟に
として取り上げ、基礎か
ら実用に近い段階まで幅
フォーメーションを組替えていく方
針である。
広い研究開発を長期的技
術開発戦略に則って展開
エネルギー技術は、最先端の材料、
エレクトロ・イオニクス、情報技術な
する。
具体的には、燃料電池
ど、様々な分野の研究成果を結集し
てはじめて実用化される性格をもっ
や太陽光発電、熱電発電
などのクリーンな小型分
ているため、例えば次世代の固体酸
化物燃料電池の開発に対しては、材
散電源の開発、これらの
電力を大量に損失少なく
料とシステムの開発を融合した大き
なグループを構成し、超電導応用技
運び、安定して使うため
の超電導技術や貯蔵技
術に対しては、電力機器と材料に関
する2つのグループの連合で取り組ん
試作した固体酸化物燃料電池スタック
24
AIST Today 2001.12
でいる。さらに太陽光発電技術開発
については、当研究部門の 3 グループ
の明確化と導入シナリオを
構築するため、分散電源を
をはじめ、他の研究ユニットも参加
した大きな連合を組み、先進的太陽
主体にした実験実証システ
ムの検討をエネルギーネッ
電池、発電システムの開発や性能評
価、リサイクル技術の開発などに総
トワークグループを中心と
して戦略的に行っており、
合的に取り組んでいる。
個別要素技術のみに特化せず、エ
研究ユニットを越えて多く
の研究者が参加し、夢を
ネルギーシステム全体の中での役割
語っている。
(大和田野 芳郎) 70kW太陽光発電システム
薄膜シリコン系太陽電池開発研究ラボ
太陽電池の大量普及に向けて
・膜構造制御手法の開発
環境負荷の少ないシリコンで、また
低コスト化のために薄膜を用いた太陽
太陽電池材料として最適な微視的
構造を有する薄膜の作製過程を制御
電池を大量導入する計画が政府主導で
進められている。そのためには低コス
するため、プラズマの制御に加え、
新しい薄膜作製方法を構築する。
トで高性能な薄膜シリコン系太陽電池
の開発が急務となっている。当研究ラ
・太陽電池の試作
薄膜シリコン系太陽電池の試作
ボでは産学官共同体制で、微結晶シリ
コンを主軸に、高安定化アモルファス
を通し、界面制御技術等の基盤要
素技術を開発する。
シリコンやナノクリスタル系新材料か
らなる、薄膜シリコン系太陽電池の基
最近の主な成果
盤要素技術の開発研究を行っている。
プラズマ電子温度制御法を用いて、
産学官共同による集中研究
高速(20 Å / s)で作製されたアモル
ファスシリコン太陽電池において世界
太陽電池メーカーを始め、基板メー
カー、装置メーカー、さらには国内外
最高安定化効率 8.2%を実現した。図
2は安定化アモルファスシリコン太陽
の大学や研究機関との共同で図1のよ
うな集中研究体制で開発研究に取り組
電池の通常の方法で作製されたものと
の光劣化挙動を比較したものである。
んでいる。
主な研究課題と研究手法
高品質微結晶シリコン成長方法で
ある「高圧枯渇法」を用い、140℃の
・シリコン系薄膜の成長機構の解明
反応性プラズマからのシリコン系
低温プロセスで作製された微結晶シ
リコン太陽電池で世界最高効率 9.4%
薄膜の成長機構を各種反応診断法の
開発・導入により解明する。
を実現した。図3はこの太陽電池の
光電流−電圧特性を示す。
図2 アモルファスシリコン太陽電池の
光劣化特性
(松田 彰久)
図1 ラボにおける産学官共同集中研究体制
図3 微結晶シリコン太陽電池光電流−
電圧特性
AIST Today 2001.12
25
T E C H N O * I N F R A S T R U C T U R E
標準供給の新しい考え方…e-measure の概念
計測標準研究部門 吉田 春雄 標準供給の現状
新しい標準供給体系の提案
を一挙に解決できる可能性が見えてく
る。たとえば、量子効果の一つである
昨今の経営環境の激変に、経営者は
従業員をゴムボートにのせて激流を下
我々の提案するe-measureの概念を
下図に示す。国際的な相互認証を得た
ACジョセフソン効果と、GPSから復
元する周波数基準源と通信技術による
る船頭の気持ちに違いない。変化する
状況に対する経営者の一瞬の判断ミス
標準を持つ標準機関(または認定事業
者)が被校正機器をもつ産業界に仲介
条件設定という手段によって電圧の遠
隔校正の可能性がある。ここでそれを
は全員を遭難させる。産業界は安い労
務費を求めて海外に工場立地し、いわ
器を送り、同時にインターネットを介
して被校正機器の設定情報、不確かさ
考えてみよう。
電圧は基本単位からの組み立て単位
ゆる系列工場の鎖を断ち切って要求仕
様をみたす部品をインターネット調達
の情報、測定データなどを相互に通信
し、取得データを標準機関
(または認
であるが、最近の電圧標準は端的に言
えば周波数から電圧に変換する巨視的
する生産形態に移行し、市場の要求に
ジャストフィットするもののみを必要
定事業者)が解析して中心値および不
確かさが期待される値の許容範囲に
量子効果(A C ジョセフソン効果)に
よって実現されており、量子化電圧は
な時に生産する。その時、どのように
して瞬時にマーケットニーズを把握
入っていれば校正証明書をネット経由
で交付する。
次のようなきわめて簡潔な式で表わさ
れる。
し、生産調整し、品質を確保し、商
取引決済をするかが企業の存続を決
仲介器は大別すると二種類あり、一
つは周波数そのものが仲介器の役目を
める。
産業界においてはマーケットニーズ
果たして周波数および周波数に直接関
連付けられる量(時間、時刻、電圧、
ここで Vn は次数nの量子化電圧、n
は整数、f はジョセフソン接合に照射
を瞬時に把握し、生産調整し、商取引
決済を電子的に行うシステムはかなり
長さなど)を伝播するものであり、も
う一つは周波数に関連付けられない量
するミリ波周波数、KJ-90 は1990年か
ら世界中で統一的に使われているジョ
できつつあるが、品質保証の原点であ
る標準供給のやり方はいわゆる「手渡
(温度、流量、質量、圧力など)
を伝播
する物理的な仲介器である。
セフソン定数協定値( = 2 e / h =
483,597.9 GHz/V)である。 (1)式か
し」で、国家標準を頂点とした上位精
度の基準量から順次下位の精度に伝播
周波数を仲介器と考え、量子力学的
現象と組み合わせることにより、現在
らわかるようにその正確さはジョセフ
ソン接合に照射するミリ波周波数の正
させる方法のままである。しかし、
この体系の問題点は、下記の制約に
の手渡しによる標準供給のもつ問題点
確さに対応する。その量子化電圧群の
ある。
1)
時間的制約‥‥
(リアルタイム性がない)
2)
空間的制約‥‥
e-measure(計量器校正情報システム)の概念
最新の情報通信技術(インターネット、光通信、GPSなど)を駆使して
品質保証の原点である標準供給を速く、安く、正確に行うことをめざす
(上位の基準のある場所での校正作業)
3)
階層的制約‥‥
Vn = nf/K J-90 --- (1)
GPS
輸出
国際相互認証
(階層が下がるごとに精度が劣化する)
仲介器
このような制約のもとであってもい
(周波数、時間、時刻、電圧、長さ…)
ままでは十分に機能を果たしてきた
が、産業界の生産形態が海外立地やイ
ンターネット依存型に急激に変わりつ
つあることを考えると、近い将来に標
情報
標準機関&
認定事業者
準供給体系がこのままでは時代にそぐ
わなくなるのではないかという危惧を
持たざるを得ない。情報通信技術の進
歩を利用して上記の制約を克服できる
新たな標準供給の可能性は期待できな
いだろうか?
26
AIST Today 2001.12
1)周波数を仲介器とした物理量
インターネット
2)物理的仲介器
(温度、流量、圧力、三次元量、
AC/DC、放射能…)
機器設定情報、取得データ、不確かさ情報
校正証明書
産業界
(国内、海外)
中で最も被校正電圧に近い次数を選択
して基準電圧とし、その基準電圧と被
ロックから復元する。また、校正装置
の設定条件(ジョセフソン接合に照射
校正電圧の差を平衡検出器で検出し、
その差が出来るだけ小さくなるように
するミリ波周波数、量子化次数n、装
置としての総合的不確かさ)を通信で
本プロジェクトの最大の難問は、
「遠隔校正の精度を信頼してもらえる
ミリ波周波数を制御し平衡させる。液
体ヘリウム温度のジョセフソン電圧と
伝えれば、遠く隔たっていても同等の
基準電圧を復元できる。その復元した
かどうか」という点にある。どのよう
な利点を強調しても、精度を信頼して
室温の被測定電圧をつなぐ信号線の熱
起電力をキャンセルする手順をふみな
基準電圧と被校正対象電圧との平衡電
圧差はいくらであるかという測定をす
もらえなければ絵に描いた餅にすぎな
い。その意味で、研究期間内にシステ
がら、統計的に意味のある回数の測定
を繰り返し、基準電圧に平衡電圧を加
れば、遠隔地の間でも同等の校正が可
能になる
(空間的制約の克服)
。
ムの原型をつくり、この方法での精度
を確認する実証実験にまい進しなけれ
算または減算して最終的な値付けをす
る。熱起電力だけでなく、絶縁抵抗に
さらには従来のトレーサビリティ体
系の末端である工場の生産現場におい
ばならない。担当者の一層の努力と、
標準にかかわる皆様のご鞭撻とご支援
よるリーク電圧など、不確かさの原因
となるものは細大もらさず校正値の不
てさえ、国家標準と同等の精度が得ら
れる
(階層的制約の克服)
。
をお願いする次第である。本プロジェ
クトは平成1 3 年度より1 7 年度まで
確かさの中に盛り込まなければならな
い。このような手順はインターネット
周波数に関連付けられない量につい
ては、物理的仲介器を校正機関から認
NEDOの資金を得て実施する産総研主
体の横断的プロジェクトである。
を介した計算機制御により短時間で実
施できる
(時間的制約の克服)
。 定事業者に送って画像通信技術などを
活用しながら設定条件を確認し、取得
ミリ波周波数は位相制御技術によっ
て高精度に周波数安定化されるが、そ
データをインターネット経由で送ると
いう手段を取らざるを得ないが、それ
の基準となる周波数は全地球測位シス
テム(GPS)衛星から送られる信号ク
でも認定審査時間の大幅短縮が期待さ
れる。
遠隔校正精度の実証
韓国地質資源研究院(KIGAM)の紹介 成果普及部門 地質調査情報部
木村 克己 韓国地質資源研究院(Korea Institute of Geoscience & Mineral
円程で、多くが国からサポートされて
いるが、民間企業から総額の22%に
第2版が全国13区画中9区画が出版済
みとなっている。精力的に地質図整備
Resources,略してKIGAM; http://
www.kigam.re.kr)
は、地質調査に関す
あたる収入がある。また、KIGAMは
産総研つくば中央地区に匹敵する広大
に力を入れていることが伺える。
KIGAMにおいても、地質情報の整
る韓国のナショナルセンターであり、
日本で言えば旧地質調査所にあたる。
な敷地と恵まれた建物容積を誇り、現
在、恐竜の展示を盛り込んだ地質博物
備に関して、従来型の紙に印刷した地
質図だけでなく、その数値化を推進
この夏にK I G A M を訪問する機会が
あったので、その時に得た情報を基に
館とそれに隣接してボーリングコアや
地質試料の収納センター(コアライブ
し、GISを用いた利用が可能となる所
内相互利用システムや、さらに岩石試
KIGAMの紹介をする。 KIGAMが位置するソウル南部の大
ラリーと呼称)を建設中で、この秋に
開館する予定だ。コアライブラリーは
料、ボーリングコア試料も含めた総合
的な地球科学情報センターとしての機
田廣域市
(テジョン)
は、国・民間の研
究機関や大学が集中した都市として発
将来的には国の地質試料のセンター化
を目指すという紹介があった。
能を拡充しようとしている。地質情報
のデータセンター機能は、産総研にお
展してきている。都市設計にあたって
は、筑波研究学園都市は一つのモデル
地質図幅の整備は、韓国でも国土の
基本情報として重視されており、我が
いても現在重要課題として取り組んで
いるところであり、KIGAMとは今後
として参考にしたという話しだ。
KIGAMは、総勢345人、内250人の
国と同様に、オリジナルな調査データ
を基に作成する1/5万縮尺の地質図お
とも数値情報の整備に必要な技術開発
の共同研究や日韓にわたる垣根のない
研究者で、その専門の内訳は、地質学
分野107人、資源工学分野73人、そ
よび説明書の整備を基本とし、編纂図
として、 1/25万、1/100万縮尺の地
地質情報の整備・共有に向けた協議を
進めることが期待される。
の他金属・化学・物理関係の工学分野
65人などである。さらに加えて臨時
質図を整備している。最近、大都市地
域や工業都市においては、1/25000
で技術者・研究者・補助員など160人
を雇用し、貴重な推進戦力となってい
縮尺の詳細地質図の発行を進めてい
る。カバー率では1/5万で85%、1/
る。予算は人件費を含めて総額55億
25万では1973年に第1版が完成し、
AIST Today 2001.12
27
PATENT
技術移転いたします!
多層ガスセンサー
− ガス漏れ検知 −
1.特許
3.技術の概要、特徴
特許 2972874 号(出願 1998.5)
「多層ガスセンサー」
●関連特許(登録済み) 5 件
●関連外国特許(登録済み) 2 件
静電気特性を利用して、一酸化炭素ガスセンサー
をメタンガスセンサー表面に積層して一体化させた
複数ガス検知のガスセンサーであり、一酸化炭素ガ
スセンサーがメタン検知の妨害となる一酸化炭素を
遮断する機能を持っています。
本センサーは、従来製品に比べ、コンパクトな上
に、高精度・高応答性である点で優れています。
2.目的と効果
都市ガスの主成分であるメタンと不完全燃焼の際
に生じる一酸化炭素を一つの素子で同時に検知でき
るセンサーを提供します。
適用例
●家庭などでの都市ガスのガス漏れおよび
不完全燃焼検知器に使えます。
4.発明者からのメッセージ
同センサーおよび製造方法を利用して、前述の適
用例を実用化するための、あるいは新たな用途を開
発するための共同研究などの実施が可能です。
多層ガスセンサーのデザイン
二酸化炭素
(安全)
一酸化炭素
(危険)
酸素
電気信号
検知
水、二酸化炭素
(安全)
一酸化炭素
ガスセンサー
メタンガス
(危険)
酸素
化学
反応
電気信号
検知
化学反応
電気信号
取り出し用
電極
基板
メタンガスセンサー
〈本発明を利用したイメージ〉
設置例
<多層ガスセンサーの構成(例)>
<センサーユニット>
カバー
多層ガス
センサー
ベース
ガス
湯沸し機
ガス漏れ
警報機
流し台
台所
車
車庫
− セラミックス研究部門 − 28
AIST Today 2001.12
塑性加工が可能な炭酸アパタイト
− 製造の容易な塑性加工を適用 −
1.特許
3.技術の概要、特徴
特開 2000-72572(出願 1998.8)
「塑性セラミックス及びその製造方法」 ●関連特許(登録済み) 3 件
●関連特許(出願中) 3 件
炭酸アパタイトの材料製法、高温特性、すなわち、
780℃以下、
1MPa程度の温度と加圧力で極めて大き
な塑性変形を得る技術を提供します。
セラミックスは一般的に加工が難しく、特に人工
骨などの患者ごとに形状が異なり且つ複雑な形状を
必要とする成形体の製造はこれまで困難でした。
本発明では、求める形状や表面性状、精度などを持
つセラミックス成形体を効率よく製造する事ができ
ます。特に多孔質体であっても大きな加工塑性を示
す材料を開発したことで生体親和性に優れた成形体
を簡単に製造する技術を提供します。
2.目的と効果 生体適合性に優れた炭酸アパタイトを、量産の容
易な塑性加工することで、複雑形状や精密な形状の
医療機器や人工骨、人工歯根の成形体を製造する技
術を提供します。
適用例
●製造:加工、成形生産工程の簡便化
●医療機器
●人工骨、人工歯根
4.発明者からのメッセージ
同セラミックスおよび製造方法を利用して、前述
の適用例を実用化するための、あるいは新たな用途
を開発するための共同研究などの実施が可能です。
塑性加工の例
加圧
塑性材料
塑性材料
加圧
頭蓋骨などに使える
他材料との接合
− セラミックス研究部門 − 他にも多くの技術移転可能案件がございます(産総研が所有する特許件数 1 万件以上)。
実用化に向けた研究を促進するための技術移転型共同研究制度もございます。
ご遠慮なくお問い合わせ下さい。
産総研が所有する特許のデータベース(IDEA )
http://www.aist.go.jp/aist_j/database/database.html 連絡先:産総研イノベーションズ(経済産業省認定 T L O )
ご紹介案件担当者 佐村
〒 305-8568 つくば市梅園 1-1-1 産業技術総合研究所つくば中央第 2
TEL 090-5322-3396 FAX 0298-61-5087 E-mail: [email protected]
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研究者と起業家の連携推進の場
― 研究成果情報の発信と技術移転の積極的推進 ―
関西産学官連携センター
産学官連携のキーステーション
関西地域は研究開発における産・学の集積効果が大変有効に働いているという特色を持っていま
す。たとえば近畿バイオインダストリー振興会議が設置されていて、関西地域の異なる省庁に属す
る国立研究所、多数の大学、地方自治体、経済団体等が一堂に会してバイオ産業振興のための各種
施策を協調して推進しています。関西センターではこれを受けて、人間と暮らしに密着した技術領
域で分野融合を特徴とする課題にチャレンジしつつ、地域の恵まれた環境を活用し、産業界や学界
との連携がさらに活発かつ円滑に進むように運営しています。
具体的には、関西産学官連携センターは連携センター長をはじめライフサイエンス、材料・プロ
セス、エネルギー・環境、情報・電子、計量分野を担当する 4 人の産学官連携コーディネータを頂
点として、近畿経済産業局をはじめ、企業、大学、公的研究機関、自治体および企業団体やベンチャー
支援団体等との連携を強力に進めています。各研究ユニットと関西地域の外部機関との連携への寄
与だけではなく、産総研における産学官連携の関西前進基地として、さらに海外までを視野に入れ
た産業技術交流の核として、
「産総研における産学官連携のキーステーション」としての役割を担い、
「産総研内外の研究者が是非参加したくなる連携研究の場」とすることを目指しています。
技術移転のための基盤作り
(2)連携構築に係る取り組み
造機構等との連携による研究会
産総研は、我が国の産業技術競争
①関経連、同友会、大阪工業会、大
等の設置企画支援
力向上の一翼を担うために、技術移
阪商工会議所等、各種団体との連
④連携大学院、大学研究所との個
転を積極的に推進するとともに、時
携の下、地域経済活性化のための
別連携契約締結等による協力関
代の要請を先取りしつつ新しい産業
企画作り支援
係強化
技術の創出を目指す活動を進めてい
②近畿経済局との綿密な連携の下、
⑤研究ユニットが行うシンポジウ
ます。関西センターにおいては、この
地域の立地施策、産業活性化施策
ム等の支援
取り組みが一層有効に働くため、産
等のための企画支援
等々、関西の産業集積、人材集積、風
総研の全国ネットワークを活用しつ
③大阪科学技術センター、新産業創
土を考慮に入れた、産学官連携を実
つ、いろいろな仕組みを提案、構築し
ています。具体的な取り組みは、
(1)技術移転に係る取り組み
①産総研イノベーションズの活用
による技術移転促進
②人材育成のためのベ ン チ ャ ー 創
業 基 礎 講 座 、 コーディネーティ
ング研究会の立ち上げ
③地元銀行や信用金庫との連携下
でのマッチングフェアへの出展
④東大阪市、堺市、尼崎市等、産業
集積地域との連携による具体的
ニーズの把握、技術相談、技術移
転の実施
研究所公開での連携研究相談コーナー
30
AIST Today 2001.12
践しています。これらは、単に産総研
の成果技術移転だけにとどまらず、
ベンチャー企業育成、新規産業創出、
産業活性化のための基礎基盤を作っ
ていると言えます。
我が国の明治以降の産業史におい
て、関西で起業し企業規模の拡大と
ともに東京に進出していった事例も
多く、ベンチャー企業創出がこの地
域の特徴であると言えます。関西セ
ンターでは、すでに「イーメックス
(株)」
「アンジェスエムジー(株)」と
いったベンチャー企業が当敷地内で
研究講演会ロビーでのポスター発表
活動していますが、さらに「次」に続
くベンチャーを育てるべく、産総研
内外の研究者に開放した「ベン
講演会(11/7)」を開催しました。予
一方、対外的な活動として、関西地
チャー創業基礎講座」を 11 月より開
想を上回る参加があり、一定の効果
域の外部機関主催の技術交流、ビジ
始し、起業化マインド醸成に取り組
が期待できると感じさせるものがあ
ネスマッチングフェア、特許流通、科
んでいます。
りました。
学技術振興等にも積極的に参加し、
メディア的広報として、ホーム
新生産総研と関西センターでの研究
ページ < h t t p : / / u n i t . a i s t . g o . j p /
成果等を広報しました。さらに、世界
kansai/> を立ち上げています。情報
のハイテク・ベンチャー企業 44 社か
広報活動
の新鮮さに心がけ、研究成果やイベ
らのビジネスプラン発表・商談等を
本年は産総研発足の年であり、産
ント情報等を紹介しており、また講演
行った「グローバル・ベンチャー・
総研および関西センターを広く知っ
会やセミナー等の映像コンテンツの充
フォーラム(大阪 10/25-26)」では、
てもらうため、ビッグイベントとし
実に努めています。さらに、企業等の
出展募集の企画段階から協力するな
て「産総研関西サミット(7/6)」
「産総
希望の方々には「産総研関西 e-news」
ど、内外企業との交流の場づくりに
研関西センター設立記念シンポジウ
として能動的に e メールで情報を配信
も努力しています。
ム(7/6)」
「研究所公開(9/28)」
「研究
しています。
連携研究支援を念頭においた
受託研究への積極的な取り組み
独立行政法人移行に伴う変化は受
託研究件数に顕著に現れています。
昨年度に企業から受託した研究は旧
工業技術院傘下の全研究所で 5 件に
すぎませんでしたが、産総研となっ
た本年度前半で既に 41 件の契約とな
りました。そのうち関西センターでは
対研究者数比と比べて 2 倍以上の 9件
(22%)の契約となっており、その寄
与する所も大きく、今後とも産学官連
携のホットステージとなるよう努力し
ていく所存ですので、積極的に活用い
サイエンス・フェスタ(大阪 8/25-26)に出展
ただきますようお願いします。
■ 関西センターのホームページでは、研究成果やイベント情報等を適宜紹介しています。
h t t p : / / u n i t . a i s t . g o . j p / k a n s a i /
■ 相談窓口
○ 見学 0727-51-9606 ○ 受託研究・共同研究・技術研修 0727-51-9681
○ 特許関連 0727-51-9606 ○ものづくり基盤技術支援室 0727-51-9688
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31
F
rontier
クラスタープロセス研究の新展開
− 産業ニーズから生まれたクラスタープロセス連携研究体 −
クラスタープロセス連携研究体 岩田 康嗣 [email protected] Si、Geなどの半導体やFe、V、Mo、
W あるいは Ni、Cu、Ag、Pt などの金
属材料は正四面体や立方体などそれ
ぞれに安定な結晶構造を持つ。とこ
ろがこれらの材料が原子クラスター
と呼ばれる直径 3nm
(1nm=1×10 -9 m)
以下の微粒子になると、ほとんど全
ての材料で数十個から千個程度まで
の原子で構成される正二十面体構造
が最も安定になる。クラスターのサ
イズと結晶構造の揃ったクラスター
は基板上で長距離にわたって相互作
用しながら自己秩序を形成し、ナノ
スケールの微細構造を形成する。こ
れまでクラスターのサイズを揃えて
生成する技術はC60フラーレンなど炭
素クラスターに限られたものであっ
たが、このほど特定サイズのシリコ
ンクラスター Si 23 が特徴的に高い強
度を持つクラスタービームの生成に
成功した。このクラスターの生成源
は、レーザー照射で気相中に発生す
る衝撃波を利用して、クラスターの
生成領域を成長に必要な一定時間気
相空間に局在させることで、クラス
ター成長に必要な条件を均一にし、
特定サイズのクラスターを生成する
新しい原理の生成機構を持つ(図)。
この開発によって、ナノスケールの微
細構造制御を可能にする新しい真空薄
膜生成プロセス技術としてクラスター
ビームを利用する「クラスタープロセ
ス」への期待が一挙に高まり、多方面
の分野の企業、大学との連携研究に
至っている。
ナノスケールのシリコン結晶は、光
論理ゲートとしての非線形光学応答、
画像メモリーとしての発光性メモリー
効果、指向性に優れた高輝度ビームと
しての弾道電子放出、超音波発生源と
しての高効率熱音響効果など、優れ
た物性を示す。粒径分散の小さなナノ
スケール磁性粒子のサイズ、結晶配向
性、磁性配向性の揃った磁性薄膜は安
定した高密度磁気記録媒体として高い
期待が持たれている。 また、ナノス
ケールの微細構造キャパシターの開
発により、低環境負荷の高電力密度蓄
電素子が期待できる。
クラスタープロセス連携研究体で
は、こうしたナノスケールの微細構造
制御が技術開発の重要な鍵を握る多岐
の分野において、リスキーな産業技術
課題を抱える企業の方々が積極的に参
加し、クラスタープロセスを共通の基
盤技術として、大学客員研究員の方々
と共にそのニーズに則して課題解決
に取り組んでいる。今後、新産業の誕
生につながる先駆的な産学官連携研
究に発展することを願っている。
蒸気波面
試料
ヘリウムガス
2mm
シリコン試料
クラスタービーム
Nd:YAG レーザー
クラスター生成セル
図 ヘリウム気相中に局在する
クラスター生成領域
写真 日立造船株式会社重籐毅直社長が来訪(11月6日)
クラスタープロセス連携研究体への参加研究機関
企業の共同研究員 9 名、大学客員研究員 8 名、産総研研究員 4 名
日立造船(株)、松下電工(株)、甲子園金属(株)、(株)バックス・エスイーブイ、K.Shimotsuma & Associate, Inc.(米)、
東京大学澤田研究室、東京農工大学東野研究室、大阪大学島田研究室、東京農工大学越田研究室、東北大学高橋研究室、
和歌山大学神野研究室、南京大学韓研究室(中国)
32
AIST Today 2001.12
AIST Network
●事業報告
●講演会等報告
●受賞・表彰 ●お知らせ
産総研モニュメントおよび
地質標本館門柱の除幕式
つくばセンターでは、シンボルマー
また、産総研の公開
クをデザインした産総研モニュメント
と地質標本館門柱を正門前に設置し、
施 設であ る地 質標 本
館も、その名称を刻ん
11月5日(月)除幕式を行いました。
モニュメントは、産総研(AIST)のイ
だ門柱(高さ 約5m,巾
約6 0 c m )を設置しま
ニシャル「A」をフォルムとしてとり入
れたシンボルマークを立体的に彫刻
した。同じく稲田みか
げ石を使用していますが、縦中央を別
したもので「常に先端を切り開く産総
研の姿勢」を表したものです。石材と
の 細 粒 み か げ 石 の 岩 脈 が 貫 い てい
る、標本としても大変珍しいもので、
して筑波山地を構成する稲田みかげ
石(花崗岩)
を使用しました。
地質標本館ならではのものとなって
います。
尾身科学技術政策担当大臣関西センター来訪
11月4日(日)
、尾身科学技術政策担
当大臣が、近畿地域産学官連携サミット
の大阪大学発バイオベンチャー企業
で、関西センターをインキュベーション
出席に先立ち、関西センターに来訪さ
れました。吉川理事長、諏訪理事による
として成長が期待されている、アンジェ
スエムジー(株)
を視察されました。
概要説明の後、ティッシュエンジニアリ
ング研究センターを視察され、立石研
翌5日
(月)
の近畿地域産学官連携サ
ミットは、その趣旨が「近畿地域の産学
究センター長が、特定の機能を有する
細胞を培養・組織化する細胞組織工学
官連携を強化・推進するため、産業界、
大学、研究機関等のトップが一堂に会
であるティッシュエンジニアリングを、
現在同研究センターで行っている骨と
し、対話・交流し相互の理解増進と信頼
関係の構築を図り、もって科学技術創
同じくするものです。今回大臣が視察
神経細胞についてヒト細胞を利用した
研究を交えて説明しました。続いて、同
造立国の実現に資する」
ことであり、産
総研が取り組む
「産学官連携によるベン
されたティッシュエンジニアリング研究
センターとアンジェスエムジー
(株)
の
じ敷地内にある遺伝子治療薬を開発中
チャーおよび新産業の創出」
と位相を
2例はそれらの先行事例と言えます。
ユーゴスラビア連邦開発科学長官つくばセンター来訪
ユーゴスラビア連邦共和国Vuko また、情報処理研究部門および知能
Domazetovic連邦開発科学長官が、
11月1日(木)つくばセンターに来訪
システム研究部門の関連研究室で、マ
ルチリンガル情報処理の研究、マイク
されました。平石副理事長との会談の
中で、長官はユーゴスラビア連邦共和
ロマニピュレーターに関する研究、3D
ビジョンの研究、自己組織ロボットの研
国が、戦争の混乱から立ち直り、科学
研究の分野でも、海外との協力・連携
究について、研究者による説明とデモ
ンストレーションを熱心に見学されま
を強く望んでいると述べられました。
した。
AIST Today 2001.12
33
AIST Network
中国センター 一般公開
http://unit.aist.go.jp/chugoku/
中国センターでは、11月2日(金)
に
一般公開を実施しました。瀬戸内海大
関係では水素による材料の変化、共同
研究での開発、超音波が固体表面を伝
型水理模型(水平縮尺1/2000、垂直縮
尺1/159の世界最大級)により潮の干
わる様子を動画により紹介しました。
同時開催された呉市市民科学技術
満や流れを再現し、広島湾で染料を流
して拡散の様子を紹介しました。海洋
セミナーでは、サックス奏者の坂田明
氏による講演が行われました。天候に
関係では海洋調査の様子、マリンラボ
(海上実験室)および海洋生物・微生物
も恵まれ、小・中学生、企業関係、主婦
等、約700人の見学者で賑わいました。
による浄化方法の紹介を、また、材料
広島中央テクノフェア 2001
中国センターは、研究成果を幅広く
紹介し、地域とのさらなる交流を図る
検査装置」
を出展しました。オープニン
グセレモニーには、横山センター所長
ため、東広島市で11月3日から4日に
開 催 され た「広 島 中 央テクノフェア
が出席し、テープカットを行いました。
両日併せて3 万人を超える来場者
2001 ∼つながる技術広がる未来∼」
に基礎素材研究部門予測診断技術研
があり、多数の問い合わせや技術相
談が寄せられ、有意義な交流の場と
究グループの「移動ロボット」
「 微少傷
なりました。
北陸技術交流テクノフェア 2001
10月26・27の両日、福井県産業会
産総研では、産総研イノベーション
館において開催された北陸技術交流
テクノフェア2001は、今年で12回目
ズと共同で、出展団体としては最大規
模の8区画に10研究ユニットから最新
を迎えた北陸最大規模の技術展です。
新技術・新製品・情報を幅広く展示す
の技術情報・研究成果を展示するとと
もに、技術シーズの情報提供を行いま
るとともに、産学官が一堂に会する交
流の場として技術提携、共同研究など
した。また、技術プレゼンテーションで
は、産総研での最新の技術情報や事業
多くのビジネスチャンスの創出を目的
としています。
化が期待される研究開発の成果8件を
発表しました。
関西センター 研究講演会
http://unit.aist.go.jp/kansai/
34
関西センター主催による研究講演
会が11月7日(水)池田市民文化会館
して、大塚榮子産総研フェロー・北海道
大学名誉教授、森下竜一大阪大学医学
において、産・学・官等から500名を超
える来聴者の下で開催されました。関
部助教授、西川伸一京都大学医学部教
授によ る3 件の 特別 講演、関西セン
西センターは、産総研のライフサイエ
ンス分野の拠点と位置付けられていま
ターに展開されるライフサイエンス分
野の4つの研究ユニットおよび最新の
す。本講演会では、
「人間の自立を支え
る新技術 −人間・ゲノム・細胞−」
と題
トピックスの紹介が行われました。ま
た、会場ロビーにおいては関西セン
AIST Today 2001.12
ター全研究ユニットによるポスター
セッションが催され、活発な意見およ
び情報交換が行われました。
平成 13 年秋の叙勲 受章者 11 月 3 日発表
勲三等瑞宝章 矢野 宏 (元工業技術院計量研究所力学部長)
栗山 洋四 (元工業技術院製品科学研究所応用人間工学部長)
服部 典徳 (元工業技術院総務部長)
勲四等旭日小綬章 織方 郁映 (元工業技術院化学技術研究所長)
角 清愛 (元工業技術院東北工業技術試験所長)
柴田 正三 (元工業技術院名古屋工業技術試験所セラミックス応用部長)
鍋谷 弘 (元工業技術院公害資源研究所北海道石炭鉱山技術研究センター所長)
山内 愛造 (元工業技術院繊維高分子材料研究所素材合成部長)
勲四等瑞宝章 尾崎 省太郎 (元工業技術院機械技術研究所生産工学部長) 相山 義道 (元工業技術院電子技術総合研究所エネルギーシステム部長)
藤井 紀之 (元工業技術院地質調査所海外地質調査協力室長)
産業技術連携推進会議
「物質工学部会」
「資源・エネルギー・環境部会」
合同総会開催
http://unit.aist.go.jp/collab/collab-hp/wholesgk/sangiren.htm
10月29日(月)
、つくばセンター共
本総会では、両部会長の選出を行
の活動方針の提案があり、承認され
用講堂において産業技術連携推進会
議「物質工学部会」
「資源・エネルギー・
い、物質工学部会長および環境部会長
に産総研の佐藤眞士および綱島群の
た。また環境部会長からは3分科会の
活動として、来年1月31日∼2月1日に
環境部会」の合同総会が103名(77機
関)の参加のもと開催された。両部会
コーディネータが選出され、続いて、産
技連総会事務局から、産総研発足の概
仙台で研究発表会
(3分科会)
を開催す
る事と、その発表テーマの募集が案内
は、産総研と公設試験研究機関(公設
研)における、物質工学(材料・プロセ
要、国の技術開発関連の施策などが紹
介された。特に平成14年度施策では、
された。
翌30日(火)に物質工学部会研究発
ス技術を含む)
に関する研究協力体制
および資源・エネルギー・環境に関す
強化される地域コンソーシアムなどと
ともに、今年度の補正予算の動向が注
表会が同会場で行われ、公設研と産総
研から計9件の地域の具体的な課題や
る技術分野での研究協力体制を強化
し、研究機関相互の研究開発を効果的
目を集めた 。
また、産総研地域連携室長から産総
物質工学全体の課題についての研究
発表や共同研究の提案が行われた。
に推進し、両分野の技術の向上を図
り、技術開発による経済の発展に資す
研の産学官連携部門について、両部会
長からは物質工学部会および環境部
ることを目的としている。
産技連として改めて公設研等に部
会にそれぞれ関係する産総研の研究
ユニットについて概要説明がなされ
会参加者を募ったところ、物質工学部
会6 2 5 名(1 1 4 機関)
、資源・エネル
た。会議では、今後の総会と分科会活
動について、これまでの活発な分科会
ギー・環境部会(本会議での略称「環境
部会」)280名(84機関)
よりなる組織
活動を継承しつつ、総会および分科会
活動を進めることと、それに伴う物質
となった。
工学部会7分科会、環境部会3分科会
お詫びと訂正 AIST Today 2001.11(Vol.1 No.10)に誤りがありました。ここにお詫びして訂正いたします。
ご面倒をおかけいたしますが、別添のシールにて訂正していただくようお願いいたします。
ページおよび記事
正
誤
14P
本文右列 9 行目
直径数 µm
直径数 mm
30P
下表 産総研ナノテク関連ユニット一覧 生物情報解析研究センター
生命情報解析研究センター
界面ナノアーキテクトニクス研究センター
(欠落)
微小重力環境利用材料研究ラボ
微少重力環境利用材料研究ラボ
37P
上から 3 行目 植物成長剤開発応用連携研究体
植物整腸剤開発応用連帯研究体
40P
在庫切れ地質図の注文プリント開始
本文右列 5 行目
1,300 円 + 消費税
1,300 円 +300 円 + 消費税
AIST Today 2001.12
35
AIST Network
「ベンチャー支援室」発足
産総研では11月15日付けで産学官
連携部門に、
「ベンチャー支援室」
を発
済・産業への発展につながることを期
待するものです。
するときに、職員個人に対する相談窓
口、組織的な起業化支援策の企画・調
足させました。保有する人材や技術
シーズなどを適正かつ効率的に投入
ベンチャー支援室では、職員が研究
開発によって得られた成果の技術移
整、内外に対する情報発信、人的・組織
的ネットワーク構築など、起業化に不
することによって達成される起業化へ
の様々な取り組みに対する支援を組織
転を効果的に推進するために、特許等
を活用して職員自身が退職、兼業等に
可欠な多種多様な取り組みを総合的、
かつ、機動的に実施し、ベンチャー支
的に展開して行きます。これによって、
産業界への成果の普及、ひいては経
より起業化を図ろうとするとき、また
は、職員自らがベンチャー企業を設立
援のためのワンストップサービスを提
供して行きます。
カレンダー
期 間
2001.12.18
2001.12.21
2001.12.21
2002. 1 .18
2002. 1 .18- 1 .19
2002. 1 .23
2002. 1 .25
2002. 1 .31- 2 . 1
2002. 1 .31- 2 . 1
2002. 2 . 1
2002. 2 . 6
2002. 2. 7 - 2 . 8
2002. 2 .12- 2 .13
2002. 2 .15
2002. 2 .16- 2 .17
2002. 2 .21- 2 .23
http://www.aist.go.jp/aist_j/event/event_main.html
件 名
メゾテクノロジーフォーラム ―メゾスコピックとナノスコピックー
日本情報地質学会シンポジウム2001「インターネット時代の地質図標準」
「複合糖質生産利用技術」研究成果報告会
産総研光反応制御研究センター第1回研究発表講演会
―21世紀を拓く光反応制御技術―
2002年北海道技術・ビジネス交流会 & 特許流通フェア北海道
フォーラム
「ネットワーク社会とエネルギー」
―ネットワーク社会を支えるエレクトロニクス技術―
公開研究討論会
「生体の計測と制御」未来の進路を問う
産業技術研究交流フェア
―第1回東北産業技術研究交流会、平成13年度産技連環境部会分科会―
第6回シナジーセラミックスシンポジウム
ポストゲノム時代のバイオ戦略
ー産総研ライフサイエンス分野の最近の成果からー
産総研九州センター研究講演会「安全・持続的社会を目指す先端技術」
ーマイクロ−ナノテクノロジー & 環境ー
ライフサイエンス分野融合会議・生命工学部会バイオテクノロジー研究会
合同研究発表会・講演会
産総研中国センター研究講演会及び海洋環境・バイオ・エネルギーフォーラム
第1回エコカーボン研究会
知ってますか? あなたの町の地質 ―近畿の地質図展―
ファインセラミックスフェア2002
開催地
11月28日現在
問い合わせ先
つくば
つくば
東京
0298-61-7185
06-6605-2593
03-3595-0371
●
東京
札幌
0298-61-4688
011-716-9150
●
東京
東京
0298-61-5814
0761-51-1660
●
仙台
名古屋
022-237-5218
03-3437-3651
●
東京
0298-56-9010
鳥栖
0942-81-3606
●
つくば
0298-61-5074
●
呉
つくば
大阪
名古屋
0823-72-1903
03-3815-8514
0298-61-3601
052-221-0732
●
●は、産総研内の事務局を表します。
AIST Today 2001.12 Vol.1 No.11
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〒305-8563
茨城県つくば市梅園1−1−1
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電話番号 0298
(61)
9102
FAX番号 0298
(61)
4129
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産総研ホームページ http://www.aist.go.jp/
●
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