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スクールソーシャルワークの マクロレベルの発展
鈴木庸裕・沢田安代 : スクールソーシャルワークのマクロレベルの発展 15 スクールソーシャルワークの マクロレベルの発展 ── ノルウェーの教育法における「持続可能な開発のための教育」の視点より ── 鈴 木 庸 裕・沢 田 安 代 はじめに されるようになった。ESD とは,さまざまな社 会問題を多面的に学ぶこと,そして個々の生徒の 今日,福島県では,震災という困難の渦中にあ 潜在能力や市民性を引き出すための学習指導の方 る学校でのあらゆる困難を最少に抑え,さらに経 法や教育行政の実現の両面を通じて1,人同士や 験をばねにして物事を考え,自らのよさを生かし 人と自然の共生を目指すものである。2002 年, た使命を見つけて,持続可能な社会の実現に向け 国 連 で 日 本 か ら 提 案 が 採 択 さ れ,2005 年 か ら て活躍できる子どもを育てる学校教育が求められ 2015 年まで「国連持続可能な発展のための教育 ている。そのような学校づくりのための役割を担 (ESD)の 10 年」に,ユネスコを中心に各国が教 う一員として,スクールソーシャルワーカー(以 育改革に取り組んでいる。例えばフィンランドで 下 SSWr)という専門職の配置が進んでいる。 は義務教育での学びや制度のみならず教員養成課 しかし,今の SSWr の主な活動は,現行の教育 程や高等教育の ESD 化なども意欲的2 に行ってい 目標の実現に向けた生徒指導や教育相談への対応 る。一方で,日本では主に小・中学校で現行の学 というミクロレベルやメゾレベルの支援が中心で 校教育に追加して環境教育を行う形に留まってい あり,マクロレベルへの支援の構築は十分になさ る。 れているわけではない。よって,SSWr は現状, そこで,本稿では,社会福祉国家として ESD 子ども,保護者,教師の目の前の困り感として現 に先駆的に取り組んでいるノルウェーの初等・中 れる問題への対応をすることが多い。しかし,そ 等教育について定めた法律,通称「教育法3」 (英 れらの問題は,根本的には今日の新自由主義論に 訳の和訳。原語では「トレーニング法」 )に, ソー 基づく教育目的観,一斉指導,教育の法的な規定 シャルワーカーの立場から着目する。教育法は, によって生み出されてきているという視点をもっ すべての子どもが地域の公立学校で個々にカスタ た実践が大切である。 マイズされた教育を受けられるよう定めており, これらの視点は,持続可能な開発のための教育 日本が抱える教育の問題への示唆に富む。また教 (Education for Sustainable Development。 以 下 育行政のトップを県や市でなく国が担う点で日本 ESD)とも重なる。 「持続可能な開発」とは,国 とも共通している点でも,参考になると考えた。 連「環境と開発に関する世界委員会」が 1987 年 また,ノルウェーの小・中・高校には教育心理や に発行した,環境問題に関する報告書で中心と 進路の相談援助を行うスクールカウンセラーが配 なった考え方である。委員長ブルントラント氏は 置されており,その職務は日本の SSWr とも共通 公衆衛生が専門の医師で,当時ノルウェーの首相 点がある。しかし日本の SSWr は主に社会福祉士 であった。これを機として,次第に環境問題には や精神保健福祉士など福祉専門職が担っている点 多くの社会問題が影響しておりその解決には教育 に対して,ノルウェーでは主にベテランの教員が が必要という議論が高まり,ESD と呼ばれ実践 担っている4。そこで,ノルウェーで教員に相談 16 人間発達文化学類論集 第 21 号 2015 年 6 月 援助職が務まる理由は,学校教育全体が福祉的見 どもにはさらに専門家がつき本人・両親の同意の 地に立脚しているからではないかとの仮説を立て もとで子ども中心に指導されていること。 そして, た。教育法並びにその論点を整理し,SSWr,ソー 子どもの権利擁護が具体的な手続きとともに法に シャルワーカーのみならず,教師やスクールカウ しっかり整備されていることなどがわかった。 ンセラーなどとも共有すべきテーマとして考えた い。 2. 初等・中等教育および訓練に関する法律 (教育法)の目次 1. 研究の方法 次に,教育法の目次と,義務教育である小・中 本稿では,第 1 に,ノルウェーの「教育法」の 学校の大枠について規定した 1,2 章を訳出する。 訳出と紹介を通じて,子どもの潜在能力や市民性 訳出しない章の内容を一部紹介すると,3 章が後 を伸ばしてよりよい社会を作るために,教育法が 期中等教育,4 章がインターンシップ,5 章が特 どのような方策をもっているのかを明らかにす 別支援教育,8 章が学級編成,10 章が教職員につ る。第 2 に,教育法が,日本の SSWr が学校で対 いてなどとなっている。 峙する主な社会問題の解決のためにどのような指 特徴としては,9 章の学校の環境を定めている 針となるのかを分析する。 中に,スクールカウンセリングを受ける権利が学 ノルウェーの教育法の英訳(公的なウェブサイ 校図書館と並んで規定されている点,11 章の生 トで一般公開中5)を和訳する際には,ノルウェー 徒と保護者の学校への参加を定めている中に,校 語原文とも引き合わせてより忠実な翻訳を心がけ 内での協議会の他に全国協議会の規定や参加の場 た。訳出した個所は,全体をつかむために目次全 合の公欠扱いが規定されている点,12 章の職業 部と,小学校,中学校の基礎的な規定にあたる 1, 訓練機関について定められている中にこちらも協 2 章である。なお,ノルウェーの初等・中等教育 議会の設置や機関としての認証の方法が明記され を規定する主な法律は教育法およびカリキュラム ている点,15 章の行政法を定めた部分に,子ど の 2 つであり,最初に分析する法律としてこれが もを守るために学校は行政に情報提供をする義務 適切であると考えた。これを全訳した資料または があると明記されている点などがあげられるだろ 先行研究は,文科省や主な研究者の間でも確認さ う。 れていない。 本章は以下,目次の訳出を引用する。 次に分析の視点として,①ノルウェーの教育目 的観,②ノルウェーの学習指導の方法,③ノル 1998 年 7 月 17 日 ナンバー 61 に関連する, 初等・ ウェーの学校教育の規定における権利擁護に着目 中等教育および訓練に関する法律(教育法) する。 (施行年省略6) その結果,ノルウェーの教育は明確な vocational guidance 使命の手引き,すなわちキャリア 第 1 章 目的,範囲,適合させた教育 など カウンセリングであることがわかった。具体的に 1-1. 教育と訓練の目的 は,全体が自己実現のために必要な考える力や行 1-2. 教育法の適用範囲 動する力を養うためのトレーニングであること。 1-3. 適合させた教育 また多様性社会の発展を主体的に担う市民を育て 1-4. 実験的活動 るために必要な相互理解のための情報やコミュニ 1-5. 規制 ケーションの訓練であること。そのような教育目 的の達成のために,個々に学習指導の目標設定が 第 2 章 小学校および中学校 なされていること。その上で特別ニーズがある子 2-1. 初等・前期中等教育に通う権利と義務 鈴木庸裕・沢田安代 : スクールソーシャルワークのマクロレベルの発展 17 2-2. 初等・前期中等教育のための時間構成 第 4 章 企業における後期中等教育および訓練 2 3. 初等・前期中等教育の内容と評価 4-1. 実習生と訓練候補者の期間 の定義 2-3A. 教育活動などの免除 4-2. 実習生と訓練候補者のための特別な権利と 2-4. 「宗教・人生の哲学・倫理」の科目の教育 義務 2 5. 初等・前期中等教育におけるノルウェー語 4-3. 訓練機関の承認 の形式 4-4. 訓練機関の権利や義務など 2-6. 初等・前期中等教育における手話教育 4-5. 徒弟契約と訓練契約 2-7. クヴェン・フィンランド の背景を持つ生徒 4-6. 徒弟契約と訓練契約の修正及び取消し のためのフィンランド語での教育 4-7. 個々の訓練機関の内部規制 2-8. 言語少数派の生徒のための適合させた言語 4-8. 職業教育と職業訓練に関する県の職務 - - 教育 2-9. 校則など 第 4A 章 大人のために特別に計画される教育と 2 10. 授業からの除外 訓練 2-11. 義務教育からの休暇 4A-1. 大人のための初等・前期中等教育の権利 2-12. 私立小・中学校 4A-2. 初等・前期中等レベルでの特殊教育 の権 2 13. 家庭内での私的な教育への法律の適用 利 2-14. 点字教育等 4A-3. 大人のための後期中等教育と訓練の権利 2-15. 無料の公立初等教育および前期中等教育 4A-4. 大人のための初等・中等教育と訓練を提 の権利 供するための市や県の義務 2 16. 代替・補助コミュニケーションを必要と 4A-5. 教師の資格要件 する生徒のための教育(ASK) 4A-6. 教育と訓練の内容 - - - 4A-7. 学校輸送 など 第 3 章 後期中等教育と訓練 4A-8. カウンセリング 3-1. 若者のための後期中等教育および訓練の権 4A-9. 授業からの除外 利 4A-10. 管理,規制,抗議 3-2. 後期中等教育と訓練の時間構成 4A-11. 実験的活動 3 3. 後期中等教育と訓練の組織 4A-12. 適応させた教育 3-4. 後期中等教育と訓練の内容と評価 4A-13. 代替・補助コミュニケーションを必要と 3-5. 徒弟制度や学校教育によらない,商業と職 する大人への教育(ASK) - 人の試験 3-6. 継続 サービス 第 5 章 特別な教育 3-7. 校則など 5-1. 特別な教育を受ける権利 3-8. 授業からの除外と権利の喪失 5-2. (2000 年 6 月 30 日ナンバー 63 の法律によ 3 9. 後期中等教育における手話教育 り廃止。 (2002 年 4 月 26 日ナンバー 414 の法令 3-10. 点字教育等 に従って,2002 年 8 月 1 日施行。 ) ) 3-11. 私立高等学校に関する国際協定 5-3. 専門家による評価 3 12. 言語少数派の生徒のための適合させた言 5-4. 特別な教育に関する決定に関連した行政手 語教育 続きについての詳細 3-13. 代替・補助コミュニケーションを必要と 5-5. 教育の内容と資格取得条件に関する規定の する生徒,実習生,訓練候補者の教育(ASK) 例外 - - 18 人間発達文化学類論集 第 21 号 2015 年 6 月 5-6. 教育・心理カウンセリングサービス 9-5. 学校の建物 5 7. 義務教育年齢未満の子どものための特殊教 9-6. 学校で広告することについて - 育支援 5-8. 保健サービス 第 9a 章 生徒の学校環境 5 9. 補助教材の入手可能性を確実にすることの 9a-1. 一般的な要件 国家の義務 9a-2. 物理的環境 - 9a-3. 心理社会的環境 第 6 章 サーミ文化・サーミ語 での教育 9a-4. 生徒の健康,環境,安全を促進するため 6 1. 定義 の体系的な努力(内部統制) 6-2. 初等・前期中等教育でのサーミ文化・サー 9a-5. 学校環境作業への生徒の参加 ミ語教育 9a-6. 情報を明らかにする義務と見解を述べる 6 3. サーミ文化・サーミ語での後期中等教育と 権利 訓練 9a-7. 罰則 6-4. 教育と訓練の内容 9a-8. 損害賠償責任と立証責任 - - 9a-9. 学童保育施設 第 7 章 輸送と宿泊設備 9a-10. 規制 7-1. 初等・前期中等教育における輸送と宿泊設 備 第 10 章 学校職員 7 2. 後期中等教育における輸送と宿泊 10-1. 教員の資格要件 7-3. 障害者や,一時的に病気やけがをした生徒 10-2. 教科教育者の関連資格の要件 のための,輸送 10-3. 永続的な野外学校の職員 7-4. 護送と管理 10-4. 求人広告 7 5. (2000 年 6 月 30 日ナンバー 63 の法律によ 10-5. 二人以上の応募者の間での選択 り廃止。(2002 年 4 月 26 日ナンバー 414 の法令 10-6. 一時的な約束 に従って,2002 年 8 月 1 日施行) ) 10-6a. 特別な条件での選任 7-6. 義務教育年齢未満の子どものための輸送 10-7. 学校における教育実習生 - - 10-8. 能力の強化 第 8 章 教育の組織 10-9. 警察の証明書 8-1. 学校 10-10. 賃金と労働条件に関する協定 8 2. 生徒のグループの組織 10-11. 教育支援を志望する,教職に任命されて 8-3. 教師と生徒の比 いない職員 - 8-4. (2003 年 6 月 27 日ナンバー 69 の法律によ り廃止。(2003 年 6 月 27 日ナンバー 774 の法令 第 11 章 学校での利用者参加のための組織 に従って,2003 年 8 月 1 日施行) ) 11-1. 小・中学校での委員会の調整 11-1A. 小・中学校における学校環境委員会 第 9 章 学校の管理,機能,機器や教育資源 11-2. 小・中学校での生徒協議会 9 1. 経営 11-3. (2003 年 6 月 27 日ナンバー 69 の法律に 9-2. カウンセリングや学校図書館設備 より廃止。(2003 年 6 月 27 日ナンバー 774 の法 9-3. 機器 令に従って,2003 年 8 月 1 日施行。 ) ) 9-4. 教科書やその他の教材 11-4. 小・中学校での両親協議会 - 鈴木庸裕・沢田安代 : スクールソーシャルワークのマクロレベルの発展 11-5. 高等学校での学校委員会 19 13-10. 責任範囲 11 5a. 高等学校における学校環境委員会 - 11-6. 高等学校における生徒協議会と総会 第 14 章 管理と規制 11-7. 共同規定 14-1. 国の管理と規制 11 8. 県の委員会における生徒の代表 14-2. 家庭内授業への市の管理 - 11-9. 初等・前期中等教育のための国民両親委 員会 第 15 章 行政法の適用,情報提供の義務など 11-10. 免除 15-1. 行政法の適用 15-2. 抗議組織に関する特例 第 12 章 訓練機関での職業訓練に関連した組織 15-3. 児童福祉サービスに情報を提供する義務 12-1. 職業訓練における協同のための組織 15-4. 社会福祉サービスに情報を提供する義務 12 2. 諮問評議会 15-5. 個別カリキュラムを用意する作業に参加 12-3. 県の,職業訓練組織と職業訓練委員会 する義務 - 12-4. 県の職業訓練組織の職務 12-5. カリキュラムのグループ 第 16 章 発効と経過規定。他の法律の改正 12 6. 工芸と職人の検査控訴組織 16-1. 発効 12-7. 組織,協議会,委員会のメンバー 16-2. 経過規定 - 16-3. 他の法律の廃止 第 13 章 市,県,国の責任 16-4. (1999 年 12 月 17 日ナンバー 97 の法律に 13-1. 初等教育,前期中等教育,特殊教育の支 より廃止。 (2000 年 1 月 1 日施行。 )) 援の提供に関する市の義務 13-2. 初等および前期中等教育,特殊教育の支 3.教育法の第 1 章および第 2 章 援の提供,および児童福祉法に基づく施設におけ 第 1 章では,教育の目的観,学習指導のあり方, る後期中等教育の提供に関する県の義務 行政法としての適用範囲など,学校教育の大枠の 13-2a. 刑務所における初等,前期中等,後期中 指針が示されている。これにより,教育活動の根 等教育の提供に関する県の義務 底にある思想をおおよそつかむことができる。 13 3. 後期中等教育と訓練を提供することの県 第 2 章では,小・中学校での教育活動のあり方 の義務 がより具体的に示されている。 13-3a. 保健機関における初等,前期中等,特殊 本章は,以下,第 1 章および第 2 章の訳出を引 教育の支援,後期中等教育,訓練を提供すること 用する。 - の県の義務 13-3b. 事故保険を提供することの市と県の義務 第 1 章 目的, 範囲,適合させた教育など 13-4. 学校輸送を提供することの責任など 2008 年 6 月 20 日ナンバー 48 の法律で見出し 13 5. 2014 年 6 月 20 日ナンバー 54 の法律によ 変更。(2008 年 6 月ナンバー 621 の法律に従って り廃止 2008 年 8 月 1 日施行。 ) - 13-6. 音楽や他の文化活動のコースの提供 13-7. 学童保育設備 1 -1. 教育と訓練の目的 13-7a. 宿題支援を提供することの市の義務 学校や訓練施設での教育と訓練は,家庭との連 13-8. オスロ市 携・協定の中で,世界への扉を開き,生徒と実習 13-9. 国の支援 生に歴史的,文化的な洞察力と足場を与えるもの 20 人間発達文化学類論集 第 21 号 2015 年 6 月 きる。教育法は,教育と訓練に適用される。賢明 である。 教育と訓練は,人間の尊厳と自然の尊重,知的 かつ必要である限り,省はそれにもかかわらず, 自由,慈善,寛容,平等と連帯,異なる宗教や信 法および法の規則の規定から免除を行うことがで 条にも現れる人権に根ざした価値など,キリスト きる。省は状況によって,期間と条件を変更する 教の根本的な価値観や人本主義の遺産 や伝統に ことがあり,また,与えた許可を必要に応じて撤 7 基づくものでなければならない。 教育と訓練は,国の文化遺産と私たちの共通の 回することもできる。 (施行年省略12) 国際的な文化的伝統の知識と理解を高めるのを助 けるものとする。 1 -3. 適合させた教育 13 教育と訓練は,文化の多様性への洞察を提供し, 個人の信念に敬意を示さなければならない。教育 と訓練は,民主主義,平等と科学的思考を促進す 教育は,個々の生徒,実習生,訓練候補者の能 力や適性に適合されなければならない。 (施行年省略14) るためのものである。 生徒と実習生は,自分たちの生活を修め,職業 生活や社会に参加することができるように, 知識, 1 -4. 実験的活動 省は,市または県からの申請に応じて,期間限 技能,態度を発達させるものとする。彼らは,創 定の教育や組織的な実験に関連して,合法的に, 造的で,専心8 し,好奇心旺盛である機会を持つ 法と規制からの逸脱を許可することができる。 ものとする。 生徒と実習生は,批判的に考え,倫理的,環境 1 -5. 規制 意識を持って行動するために学ぶものとする。生 評議会における王15 は,教育と訓練のための全 徒と実習生は,共同責任と参加する権利を有する。 体的な目標と原則を補完する規則を発行すること 学校や訓練施設は,生徒と実習生を信頼,尊敬, 要求によって満たし,また形成 と学習意欲を促 9 ができる。 (施行年省略16) 進する課題を与える。あらゆる差別を除去すべく 第 2 章 小学校と中学校 努める。 (施行年省略 ) 10 2 -1. 初等・前期中等教育に通う権利と義務 子どもや若者は,初等・前期中等教育に通う義 1 -2. 同法の適用範囲 務があり,法律及び同法に基づく規則に基づく初 同法は,特に定められていない限り,公立学校 等・前期中等教育の権利がある。義務は,公立小・ や訓練施設での初等,前期中等,後期中等教育と 中学校,又は他の同等の教育の手段によって満た 訓練に適用する。 すことができる。 同法は,私立学校法11 に基づく国の支援を受け その子どもが 3 カ月以上の期間ノルウェーに住 ない学校での初等・前期中等教育と訓練と,自宅 む可能性が高い時には,初等・前期中等教育への での私的な初等・中等レベルの授業にも適用する。 権利が適用される。居住が 3 カ月間続くとただち 第 4A 章は,市または県が担当する,大人のた に,初等・前期中等教育に通う義務が開始する。 めに特別に設計された教育にも適用する。 省は,県からの申請によって,県が海外での後 省は,特殊なケースではこの義務から生徒を免除 することができる。 期中等教育についての責任をもつ目的で,教育や 子どもたちは通常,満 6 歳になる暦年17 に学校 訓練を終了し試験に合格した生徒が卒業証書を得 への通学を開始する。 専門家の評価にかんがみて, るための許可書を,県に対して発行することがで その子供が学校に通い始めるために十分に成熟し 鈴木庸裕・沢田安代 : スクールソーシャルワークのマクロレベルの発展 21 ていることについて何らかの疑いがある場合に 関する規制を発行することができる。 は,両親が要求するときは,その子どもは入学を 2 - 3. 初等・中等教育の内容と評価 1 年間延期する権利を有する。専門家による評価 初等・中等教育は, 「宗教・人生の哲学・倫理23」 , の根拠と両親の書面による同意を得て,市は特別 ノルウェー語,数学,外国語,体育,家庭科24, 「社 な場合には 1 年間入学の延期を決定できる。両親 会・自然科学25」 ,「美的・実用的・社会的訓練26」 が要求または同意する場合,市は,専門家の評価 を含むものとする。セクション 2-2 に関連して, に基づいて,その子どもが 4 月 1 日までに 5 歳の 授業時間の中のいくつかは,学校や生徒が選択し 年齢に達する場合に,1 年早い入学を許可するこ た,学校キャンプ活動や,他の学校での授業また とができる。 は校外の作業場での科目や活動に割り当てること 学校に通う権利と義務は,生徒が学校教育の ができる。市は,セクション 2-2 に基づく規則で 10 年目を完了するまで続く 。市は,専門家によ 置かれる,最小限の数を上回る授業時間の使用許 る評価の根拠と両親の書面による同意を得て,そ 可を決定することに責任をもつ。 の生徒の利益であることが判明した場合は,教育 小学校および中学校は,初等レベルと前期中等 を受ける義務の全体的または部分的な免除を決定 レベルに分かれている。初等レベルは 1 から 7 学 することができる。 年で構成されていると同時に,中学校レベルは 8 生徒がそうする権利がないのに義務教育を欠席 から 10 学年で構成されている。 するとき,子どもの両親や親代わりの立場にある 省は,学校の科目,教育目標,教育の期間,科 人 の側の故意または怠慢行為 の結果である場 目の内容,教育方法の内容に関する規制を発行す 合には,罰金刑を科されうる。市がそのように決 る。省は,生徒や民間の候補者27 の評価および評 定しない限り,公的な起訴はされない。 価に対する上訴,試験,証明書に関する規制を発 18 19 20 行する。 (施行年省略21) 生徒は, 教育に積極的28 に参加するものとする29。 2 -2. 初期・前期中等教育の時間構成 教員は,教育法30 によって発行されるカリキュラ 省は,初等・中等教育における授業時間数の総 ムに従い,教育を計画して行う。校長31 は,第 1 数に関する規則を発行する。 の段落, 第 3 の段落に基づく規則, およびセクショ 市は,第 1 の段落に基づく規則に明記された時 ン 1-1 やセクション 1-532 に基づく規則に従って, 間の配分を上回る授業時間に関する規則を発行す 学校を組織しなければならない。 ることができる。行政法セクション 38(C)の最 省は,市からの申請に応じて,教育の要件が総 初の段落の,ノルウェーの法律官報にて発表の要 計より低下しない場合には, 学校が第 1 の段落や, 件は適用されない。 従属するカリキュラムに関する規則から逸脱する 授業に割り当てられた時間は,その年度の連続 ことを許諾しうる。許可を受けるためには,事前 する 45 週を超えない構成の中で 38 週未満であっ に,学校調整委員会33 が案となる文書34 を提出す てはならない。 る必要がある。 市は,その年度の,生徒のための登校日 と休 22 (施行年省略35) 日に関する規制を発行する。これらの規制は,全 国テストや全国試験に適合されなければならな 2 -3A. 教育活動などの免除 い。行政法セクション 38(C)の最初の段落の, 学校は,生徒や両親の宗教や哲学的信念を尊重 ノルウェーの法律官報にて発表の要件は適用され し,等しい教育36 の権利を保証しなければならな ない。 い。 省は生徒のための授業時間と休憩の毎日の数に 両親による書面での届出ののち,生徒は,自分 人間発達文化学類論集 第 21 号 22 2015 年 6 月 自身の宗教や自分自身の信念の37 基準に基づき, ばならない43。 他の宗教の習慣や他の信念の順守,あるいは同様 (施行年省略44) の基準に基づき不愉快または不快を感じる各学校 での教育の部分への参加を免除される。 2 -5. 初等・前期中等教育におけるノルウェー語 前文 について,免除の届書のために,根拠を告 の形式 げる必要はない。 市は, 各学校でどちらのノルウェー語形式 (ブー カリキュラムの様々な話題の中の学究的な内容 クモールまたはニーノシュク45)を第一次の46 言 の教育から,免除を要求することはできない39。 語形式とするか規定する。第一次のノルウェー語 38 学校がそのような根拠で免除の届出を受け入れな 形式は,書く指導と書く練習に使用される。8 年 い場合,学校は行政法に規定された個々の意思決 生以降からは,生徒自身が使用したい第一次のノ 定に関する規定に従って問題に対処しなければな ルウェー語の筆記形式を選ぶ。 らない。 口頭での指導では,生徒と教師自身が,どちら 免除の届出に基づき,学校は免除を実施するこ の言語形式を使いたいか選ぶ。しかし,語の選択 とを保証し,カリキュラムの範囲内で適合させた や表現方法については,教員や学校の指導者は, 教育のための規定を作る。 可能な限り生徒が使用する口頭の形式を考慮して 学校の所有者は,毎年,生徒や 15 歳未満の生 とるものとする。 徒の両親に,免除のための規定を通知しなければ 両親は,生徒が教科書で使うノルウェー語の形 ならない。 式を,7 年生まで決める。8 年生以降からは,生 最初の段落で言及されるように,15 歳に達し 徒自身がどちらの言語形式を使うか決める。ノル た生徒は,生徒自身が書面による届出を出すもの ウェー語を教えるために使用される教科書は,第 とする。(注 1) 一次のノルウェー語形式でなければならない。 (施行年省略 ) 1 つの市において,1 から 7 年生のうちのある (注 1)第 2 段落を参照せよ。 学年に出席している最少 10 人の生徒が,市が規 40 定した以外の言語形式で書く指導を受けることを 2 -4. 「宗教・人生の哲学・倫理」の科目の教育 希望する場合,その生徒たちは別個のグループに 「宗教・人生の哲学・倫理」は,標準的にすべ 属する権利がある。この権利は,少なくとも 6 人 ての生徒が出席しなければならない,通常の学校 の生徒がグループに残る限り,有効である。その の教科である41。この教科の教育は,説教42 を含 生徒が市内の複数の学校に通う場合には,両親が んではならない。 多数決によって,どの学校が主要言語形式での関 「宗教,人生の哲学,倫理」は,キリスト教の 連する指導を提供しなければならないか決める。 知識,他の世界の宗教や人生の哲学,文化遺産や 1 から 4 年生のときに使っていたのとは異なる 倫理的また哲学的話題としてのキリスト教の重要 ノルウェー語形式の学校に転校した生徒は,元の 性についての知識を,提供するものとする。 ノルウェー語形式で書く指導を受ける権利を持ち 「宗教,人生の哲学,倫理」の教育では,理解, 続ける。彼らは人数に関係なく,別個のグループ 尊重,信念や人生の哲学に関する異なる見解を持 でノルウェー語の授業を受ける権利を有する。 つ人々との間で対話を行う能力を推進する。 小学校と中学校の最後の 2 年間に,生徒は両方 「宗教,人生の哲学,倫理」の教育は,客観的, のノルウェー語形式で指導を受けなければならな 批判的,多元的な方法で,いろいろな世界の宗教 い。省は,特別な語学教育を受ける生徒のために や人生の哲学を提供しなければならない。異なる 第二次のノルウェー語形式の指導免除の付与に関 話題での教育は,同じ教育の原則に基づかなけれ する規制を発行することができる。 鈴木庸裕・沢田安代 : スクールソーシャルワークのマクロレベルの発展 23 第一次のノルウェー語形式の変更について,市 8 年生以降から,生徒はフィンランド語で指導を 議会,または,投票権がある人の最低 4 分の 1 が 受けることを希望するかどうか自分自身で決め それを必要とした場合,諮問の国民投票を行う。 る。 学校の学区(セクション 8-1 参照)に住んでいる 省は,第一の段落について,適当な教師によっ 誰でも,また選挙法のセクション 2 2 の規定によ てそのような指導が提供できない場合には,指導 り投票する権利を有する誰でもが,そのような国 の代替方式に関する規制を発行することができ 民投票で投票する権利をもつ。小学校に通う生徒 る。 - の両親および子どもの保護者 は,書き言葉の指 47 (施行年省略50) 導について,居住場所または国籍に関係なく,投 票権がある。省は,更なる規則を出すことができ 2 -8. 言語少数派の生徒のための適合させた言語 る。 教育 (施行年省略 ) 小学校や中学校に通うノルウェー語やサーミ語 48 以外の母語をもつ生徒は,学校の通常の指導に従 2 -6. 初等・前期中等教育における手話教育 うためにノルウェー語が十分熟達するまで,適合 第 1 言語として使っている,または専門家の評 させたノルウェー語教育の権利をもつ。必要であ 価に基づきそのような指導が必要な生徒は, 初等・ れば,そのような生徒は,母語での教育,バイリ 前期中等教育において,手話の使用および手話の ンガル対象の教育,あるいはその両方を受けるこ 媒体を介した教育を受ける権利をもつ。教育の内 とができる。 容とそれに割り当てられた時間の量は,この法律 母語での教育は,通常児童が通っているのとは のセクション 2 2. と 2 3. に基づき,条例で決定 別の学校で提供してもよい。 する。 母語での教育とバイリンガル対象の教育が適当 市は,手話を媒体とする指導や,手話を使用し な教員によって提供することができない場合,市 た指導が,生徒の地元の学校とは異なる場所で提 は可能な限り,生徒の能力に適合させた他の教育 供されるものと決定することができる。 を提供するものとする。 手話の特別ニーズをもつ義務教育の就学年齢未 市は,適合させた言語での教育の提供を決定す 満の子どもは,手話教育を受ける権利をもつ。省 る前に,その生徒がノルウェー語のどのような技 はさらに規制を発行する。 能があるか図示51 しなければならない。このよう 市は,第 1 および第 3 段落に基づくいかなる決 な図示は,規則に従って,その生徒が通常の学校 定よりも前に,専門家による評価を行わなければ 教育に従うためにノルウェー語に十分に熟練した ならない。 かどうかを評価するために,適合させた言語で教 - - (施行年省略 ) 49 育を受ける間にも実施しなければならない。 市は最近到着した52 生徒のために,別個のグ 2 -7. クヴェン -フィンランドの背景を持つ生徒 ループ,別個のクラス,別個の学校での特別な教 のためのフィンランド語での教育 育施設を組織することができる。教育の一部また トロムソとフィンマルクで小学校および中学校 はすべてがそのようなグループ,クラス,学校で に通う最低 3 名のクヴェン-フィンランド語(ク 行われる場合,適合させた言語での教育を提供す ヴェンズ)話者が必要とする場合,生徒はフィン るという決定において明記する必要がある。それ ランド語で指導を受ける権利をもつ。教育の内容 が生徒の最善の利益のために考慮された場合にお とそれに割り当てられた時間の量は,この法律の いてのみ,特別に組織された施設での教育を決定 セクション 2-2. と 2-3. に基づき, 条例で規定する。 することができる。特別に編成された施設内での 24 人間発達文化学類論集 第 21 号 2015 年 6 月 教育は,最大で 2 年間継続できる。決定は,一度 市がそれ以外の決定をしない限り,校長は,教 に 1 年間分について行うことができる。対象の生 師が,自身の授業からの除外を 2 時間以内の授業 徒のニーズのためにある程度必要な場合,決定に 時間について決定する権限があると決めることが よってこの期間にはカリキュラムからの逸脱を行 できる。 うことができる。このセクションに基づく決定は, (施行年省略56) 生徒または生徒の両親または保護者 の同意を要 53 する。 2 -11. 義務教育からの休暇 (施行年省略 ) 安全である場合には,市は申請によって各生徒 54 に最大 2 週間の休暇を与えることができる。 2 -9. 校則など ノルウェー国教会以外の宗教的なコミュニティ 市は,個々の小・中学校の校則に関する規制を に属している生徒は,申請によって,宗教的なコ 発行しなければならない。規則は,法律または他 ミュニティが聖なる日を祝うときに学校を欠席す の方法によって定められていない限り,生徒の権 る権利がある。この権利は,生徒が休暇期間後に 利と義務を定めなければならない。規則は,行い 通常の授業に遅れないよう,休暇中に両親が必要 に対する規則,規則を破る生徒に対して使用でき な指導を確実に行うことが条件である。 る措置とそのような問題に対処するための手順を 含まなければならない。 2 -12. 私立小中学校 校則は,生徒や両親に知らされなければならな 私立小中学校は,省によって承認されなければ い。行政法セクション 38(C)の最初の段落の, ならない。承認は,学校が第 2,第 3 段落に規定 ノルウェーの法律官報にて発表の要件は適用され された要件を満たしたときに与えられる。そのよ ない。 うな承認なしで私立小中学校を経営する者には, 体罰または他の屈辱的な処置の形式をとっては 罰金の可能性がある。 ならない。 こ の法 律お よび 規則の セ クショ ン 1-1., 1-3., 指導からの排除を含む懲戒処分についていかな 2-3., 2-3a., 2-4. は,私立小中学校の教育内容と評 る決定を行うよりも前に,生徒は口頭で,決定を 価についてであり,ノルウェーの国際的な義務に 行う責任がある人に,自らの立場 を提示する機 は反しない57。 会を与えられる。 私 立 小 中 学 校 に つ い て は, セ ク シ ョ ン 2-2., 55 2-5. の第 1,第 2,第 3 および第六の段落,2-9., 2 -10. 授業からの除外 2-10., 2-11., 8-2., 9-1., 9-2., 9-3., 9-4., 9-5., 9-6., 市は,重い,または度重なる規則違反で有罪な 9a., セ ク シ ョ ン 10-1., 10-2., 10-6., 10-6a., 10-9., 8 から 10 学年に通う生徒は最高 3 日間授業から 11-1., 11-2., 11-3., 11-4., 11-7., 11-10., 13-3b., 13- 除外されうること,また 1 から 7 学年に通う生徒 7a., 13-10., 14-4., 15-3., 15-4. も適用される。 は個別の期間またはその日の残りの時間授業から 省はノルウェーにおける,外国やインターナ 除外されうることを,校則に定めることができる。 ショナルな私立小中学校に関して,第 2,第 3 段 授業からの除外についての決定は,生徒の教師 落で定められた要件の免除を与えることができ に意見を聞いた後,校長自身が行う。そのような決 る。 定が行われる前に,他の是正または懲戒措置が検 (施行年省略58) 討されるものとする。 1 から 7 学年に通う生徒の両 親は,そのような生徒がその日の残りの時間授業 2 -13. 家庭内での私的な教育への法律の適用 から除外される前に通知されなければならない。 規制が国際法の下でノルウェーの義務に反しな 鈴木庸裕・沢田安代 : スクールソーシャルワークのマクロレベルの発展 い限り,セクション 1-1., 1-3., 2-3., 2-4. は,家庭 25 内での私的の初等・前期中等教育の内容に適用す 4. 考 察 る。 教育法において,子どもの潜在能力を伸ばすた (施行年省略 ) めの方策,また,市民性を伸ばしてよりよい社会 59 を作るための方策がどのように規定されているか セクション 2 14. 点字教育等 考察する。まず 1-1. で, 「学校や訓練施設での教育 視覚障害や盲目の生徒は,点字や,必要な技術 と訓練は,家庭との連携・協定の中で」行うもの 的な援助の使用に必要な指導を受ける権利をも とし,家庭と学校の対等な立場を示すとともに, つ。このような生徒は,学校,学校と家の間,家 翻って,学校教育は人としての学び全体の一部で 庭に関して,必要なオリエンテーションと移動の ある点を示している。続いて公平性の担保,人権 指導を受ける権利をもつ。指導の期間と内容はこ 尊重,共生思想の実現のためのものであることが の法律のセクション 2 2. と 2 3. に基づき条例で 明記されている。具体的には「教育と訓練は,国 決定する。そのような指導に関する決定をする前 の文化遺産と私たちの共通の国際的な文化的伝統 に,専門家の評価を行わなければならない。 の知識と理解を高めるのを助けるものとする」こ - - - とや「教育と訓練は文化の多様性への洞察を提供 (施行年省略 ) 60 し,個人の信念に敬意を示さなければならない。 2 -15. 無料の公立初等教育および前期中等教育 教育と訓練は,民主主義,平等と科学的思考を促 の権利 進するためのものである」とあり,学校教育の直 生徒は,無料の公立初等教育および前期中等教 接の目的を示している。それらを踏まえた上で, 育の権利を有する 。市は,生徒または両親に初 学校教育の広義の目的を「職業生活や社会に参加 等および前期中等教育の,例えば,教材,学校の することができるように,知識,技能,態度を発 時間における輸送,学校キャンプの宿泊,遠足ま 達させる」ことと示し,すなわちキャリアカウン たは初等および前期中等教育の一部である他の外 セリングだと明確にうたっている。学校は生徒が 出の費用を負担することを要求してはならない。 「創造的で,専心64 し,好奇心旺盛である機会を持」 61 (施行年省略62) てる教育を提供するよう定めており,教育とは個々 の生徒に向けてカスタマイズして提供するもので 2 16. 代替・補助コミュニケーションを必要と あって,それを実現するのが教師の専門性である する生徒のための教育(ASK) ことが読み取れる。ノルウェーの小学校では各教 全体的または部分的に機能的な発話を欠き,代 科の成績表は(中学校以上のような 6 段階評価で 替・補助コミュニケーションを必要とする生徒は, はなく)すべて文章でつけられているが,それは 教育における独自のコミュニケーション形式や この規定をもとにした運用の一端だろう。生徒が ニーズのあるコミュニケーション手段の便益を得 主体的に参加できるための方策として,参加する る。 権利の保障や差別の除去にも重きを置いている。 生徒が,通常の授業から利益を受けない,また さらに,1-3 にあるように,学習指導(すなわち進 は利益を受けることができない場合は,第 5 章の 路指導と同義)は個々の子どもを中心におき, 得意・ 規定に基づき,特別な教育を受ける権利を有する。 不得意や立場・事情に合わせてカスタマイズして これは,代替・補助コミュニケーションを使用す 提供することが定められている。これらはまさに - るために必要な指導を含む。 (施行年省略63) 日本の SSWr の立場や職務と重なり,ノルウェー でベテラン教員が相談援助職を担える理由がこの 点で証明できる。SSWr の 2 国間比較のために,今 26 人間発達文化学類論集 第 21 号 2015 年 6 月 後,教員養成課程の内容を分析する必要がある。 格差が再生産される65。 第 2 に,教育法が,日本の SSWr が学校で対峙 一方で,ノルウェーの場合には,学校教育は する社会問題の解決のためにどのようにな示唆を vocational guidance 使命を見つけるための手引き 与えてくれるのか考察する。まず日本の学校教育 である。個々の潜在能力に応じた目標を(本人や の実態を考えると,教育の目的は競争社会と自己 保護者と相談の上で)教師が設定して合った方法 責任論を前提としたジェネラリストの再生産,そ で指導する。自己実現の段でも職などの募集は業 れも知識をより多くインプットしアウトプットで 務内容や求める専門性や経験を明示して行われる きる人材の育成であり,その到達目標はいわば ため, 人は自己実現をする喜びを感じながら学び, Mr. Average 架空の標準の子どもを想定して定め 働くことができる。塾も受験も存在意義自体がな てある。学習指導についても,個々の子どもに合 いため,この点で格差は起き得ない。その上で家 わせてカスタマイズする余裕は教師にはないだろ 庭環境によって必要な家庭には公的な宿題ヘルプ う。教員養成課程においても個々の子どもの事情 サービスが提供され,格差が再生産されないよう や潜在能力をアセスメントできる力量が養われる 配慮されている。よって,低い自己肯定感,発達 機会はないからだ。さらにいえば教員養成課程自 障害,経済格差,被災などによる,不登校や不利 体も一斉指導である。個々の生徒への配慮は,メ 益の問題などは根本的に起きない仕組みになって ゾレベル,この場合は地域や市区町村教育委員会 いる。仮に不利益が起きても解決の方法が定めら など,またはミクロレベル,この場合は学校,学 れている。 年,担任に委ねられている。ただし,仮に小・中 これらの点からいえることは,震災後の福島県 学校がメゾ・ミクロレベルで配慮しても,それは の学校,また見えにくいが全国の学校でも起きて 時に子どもの権利をより高い次元では害するかも いる問題のほとんどは,日本の学校教育のマクロ しれない状況にある。なぜなら,社会は人物の能 の規定やそれによって形作られる社会情勢によっ 力の評価基準として最低でも高校卒業,最近では て大人が引き起こしたものだということである。 大学卒業を求めており,このレールを外れると, 根本的な問題解決のためには,マクロのソーシャ 職などを通じた自己実現に困難が増すからだ。高 ルワークが欠かせない。翻っていえば,SSWr は 校入試は,全国一律で国や県の規定によって行わ マクロレベルの問題の解決後に初めて,真に対応 れる。そのため,小・中学校でも保護者や社会が すべきメゾ,ミクロレベルの問題に取り掛かるこ 高校入試のための学習指導をするよう要求する。 とができるともいえるだろう。 これらを追求すればするほど,学校教育は個々の また,日本では架空の標準から外れていると教 子どもから離れていってしまうといえよう。 また, 師が判断する子どもは特別支援教育で指導する 教育の目的が単に知識をより多くインプットしア が, 「標準から外れる」という発想と,その判断 ウトプットする能力のある者の養成になっている を就学指導審議会等で「教師」がする点が,特別 ために,子どもは学習を興味関心によらず,しか 支援教育への保護者や社会の偏見・拒否感を引き も最も効率的な方法,例えば丸暗記によって行わ 起こす原因になっているのではないだろうか。 なければならない。これが勉強嫌い,無気力,大 これに対してノルウェーでは,そもそも社会保 人が定めた学校教育にさまざまな事情で従順に努 障の対象がミーンズテストによらずすべての市民 力できない子どもを教育から排除する原因になっ であると規定されている66。つまり,学校教育に ているだろう。効率を求めると学習塾が存在意義 限らず社会の仕組み全体が,いつだれが福祉サー をもつため経済的困難のある子どもなどにとって ビスの対象になってもおかしくない,または誰に 不利な状況も起きる。受験競争などによってどの でもニーズがあるという発想で設計されており, 学校に行くかという時点ですでに経済的・文化的 市民もそのように理解している。それゆえ,特別 鈴木庸裕・沢田安代 : スクールソーシャルワークのマクロレベルの発展 支援学校はなく,地域の学校で学べる(スローガ ンは en skole for alle. 英語で one school for everyone. 直近数年間の議論は LGBT への配慮 や,よ 67 くできる生徒への配慮68 などより高次のものに 移っている)。特別支援教育は専門家の判断の上 で決定され,専門性をもった教師が全力で対応す る。自己実現の段でも特別支援教育を受けたこと が不利になることはない。そのため,支援を受け る側も当然の権利として享受しようとする状況が ある。ノルウェーでこれらの公平な規定ができた 背景には,公は私が協力してつくるものという発 想がある。つまり,丸山眞男のいう「民主主義の 永久革命」を実践してきた結果である。この姿勢 は,学校教育に限らず,多くの社会問題と,その 解決策を考えるために示唆に富む事実である。 27 きていくことを困難にするような問題をについて考 え,立ち向かい,解決するための学びです。ESD は 持続可能な社会の担い手を育む教育です。 ESD の実践には,特に次の 2 つの観点が必要です。 人格の発達や,自律心,判断力,責任感などの人間 性を育むこと 他人との関係性,社会との関係性,自然環境との関 係性を認識し,「関わり」「つながり」を尊重できる 個人を育むこと そのため,環境教育,国際理解教育等の持続可能な 発展に関わる諸問題に対応する個別の分野にとどま らず,環境,経済,社会の各側面から学際的かつ総 合的に取り込むことが重要です。」 2 フィンランド教育省ほか編『フィンランドの高等教 育 ESD への挑戦―持続可能な社会のために―』明 石書店,2011。p.97,p.108。 3 Act of 17 July 1998 no. 61 relating to Primary and Secondary Education and Training(the Education Act) 4 今日,日本の SSWr に当たるノルウェーのスクール おわりに カウンセラーには資格要件がない。ノルウェースクー 日本では,スクールソーシャルワークに限らず, イル・ラウブダール氏に 2015 年 4 月に E メールで ソーシャルワーク全般が,主にメゾ・ミクロレベ ルの支援になっている。しかし,ノルウェーの教 育法にみるように,マクロレベルの改善により, そもそも問題がほとんど起きない社会の実現も可 能である。ESD の発想を引き合いに出すまでも なく,学校教育とは本来,社会問題を解決するた めにあるもので,学校教育自体が社会問題,また 他の社会問題の原因になっている場合ではない。 よって,今の日本の学校教育が抱えるような,い わば発想の転換で解決可能な問題はマクロのソー シャルワークによってすみやかに解決へ向けて動 くことが,福島県においては復興,その他の地域 では改善や予防につながるだろう。そしてより見 えにくく複雑な高次の問題の発見や解決を行うこ とこそ,持続可能な社会の実現に向けた先進国, また地球市民としての責務だと考える。 ルカウンセラー協会(Rådgiverforum-Norge)会長ゲ 質問したところ,スクールカウンセラーのほとんど は教員養成課程を修めたベテラン教員であること, その中の一部が修士課程でスクールカウンセラー養 成課程を修めること,ノルウェースクールカウンセ ラー協会としては「スクールカウンセラー」の今後 公的な資格要件が定められるよう政治運動中である 旨の回答を得た。 5 https://www.regjeringen.no/contentassets/b3b9e92cce 6742c39581b661a019e504/education-act-norway-withamendments-entered-2014-2.pdf 2015 年 4 月 16 日 9 : 00 参照。 6 with amendments as of 25 June 2010, 31 May 2011, 2012, 2013 and 2014. In force as of 1 August 2010 7 humanist heritage 8 comitted 9 formation 10 Amended by Acts of 17 Sep 1999 no. 74(in force 17 Sep 1999, pursuant to the Decree of 17 Sep 1999 no. 1011), 30 June 2000 no. 63(in force 1 Aug 2000, pursuant to the Decree of 30 June 2000 no. 645), 4 July 2003 no. 84 (in force 1 Oct 2003), 19 Dec 2008 no. 118(in force 1 注 1 ユ ネ ス コ ス ク ー ル http://www.unesco-school.jp/esd/ 2015 年 4 月 16 日 9 : 00 参照「持続可能な開発のた め の 教 育(ESD : Education for Sustainable Development)は,私たちとその子孫たちが,この地球で生 Jan 2009, of 19 des 2008 no. 1424) . 11 Independent schools act 12 Amended by Acts of 30 June 2000 no. 63(in force 1 Aug 2000, pursuant to the Decree of 30 June 2000 no. 645), 20 June 2008 no. 48(in force 1 Aug 2008, pursuant to the Decree of 20 June 2008 no. 621), 19 Dec 2008 no. 人間発達文化学類論集 第 21 号 28 2015 年 6 月 118(in force 1 Jan 2009, pursuant to the Decree of 19 1999, pursuant to the Decree of 17 Sep 1999 no. 1011), des 2008 no. 1424)and by Act of 31 May 2011. 12 april 2002 no. 10(in force 1 Aug 2002, pursuant to 13 Adapted education ノ ル ウ ェ ー 語 で は Tilpassa op- the Decree of 12 april 2002 no. 349), 17 June 2005 no. plæring= 「カスタマイズされた教育と訓練」。日本語 105(in force 17 June 2005, pursuant to the Decree of 17 の「特別支援教育」は本人を架空の標準から切り離 June 2005 no. 660), 27 June 2008 no. 70(in force 1 Aug す意味合いももつ表現だが,本人を尊重し教育のほ 2008, pursuant to the Decree of 27 June 2008 no. 724), うを本人に合わせる発想が見て取れる表現である。 19 Dec 2008 no. 118(in force 1 Jjan 2009, pursuant to 14 Added by Act of 20 June 2008 no. 48(in force 1 Aug 2008, pursuant to the Decree of 20 June 2008 no. 621), previous section 1-3 becoming new section 1-5. 15 King in council ノルウェー語 statsråd=王によって指 the Decree of 19 Dec 2008 no. 1424) . 36 Equal education ノ ル ウ ェ ー 語 likeverdig opplæring 公平な教育 37 Own philosophy of life ノルウェー語 eige livssyn 定された,首相と最低 7 人のメンバーによる国の評 38 First sentence 議会 39 Exemption cannot be demanded from instruction in the 16 Amended by Act of 20 June 2008 no. 48(in force 1 Aug academic content of the various topics of the 2008, pursuant to the Decree of 20 June 2008 no. 621), curriculum. つまり,カリキュラムに基づいて,あ section number changed from section 1-3. るテーマをさまざまな知識の一つとして学ぶ際には, 17 Calendar year 就学年齢が日本より 1 年早い。学年 免除は認めないということ。たとえば,イスラム教 は 1 月 1 日∼12 月 31 日までに生まれた子どもで分 の信者が,知識としてキリスト教を学ぶこと自体を ける。 18 The right and obligation to attend school last until the 拒否することはできないということ。 40 Added by Act of 17 June 2005 no. 106(in force 17 June pupil has completed the tenth year of schooling ノル 2005, pursuant to the Decree of 17 June 2005 no. 661), ウェー語 Retten og plikta til opplæring varer til eleven amended by Act of 27 June 2008 no. 70(in force 1 Aug har fullført det tiande skoleåret 19 In loco parentis 20 Negligent actions 21 Amended by Act of 31Jan 2003 no.10. 2008, pursuant to the Decree of 27 June 2008 no. 724). 41 Religion, Philosophies of life and Ethics is an ordinary school subject that shall normally be attended by all pupils. Teaching in the subject shall not involve preaching. 22 School days 42 Preaching 伝道 23 Religion, Philosophies of life and Ethics 43 The teaching of in the different topics shall be founded 24 Home economics 25 Social and natural sciences 26 aesthetic, practical and social training ノルウェー語 estetisk, praktisk og sosial opplæring 27 External candidates 外部候補 ノルウェー語 privatistar 候補者 28 actively 29 The pupils shall be actively involved in the learning on the same educational principles. 44 Amended by Acts of 12 April 2002 no. 10(in force 1 Aug 2002, pursuant to the Decree of 12 April 2002 no. 349), 17 June 2005 no. 106(in force 17 June 2005, pursuant to the Decree of 17 June 2005 no. 661), 27 June 2008 no. 70(in force 1 Aug 2008, pursuant to the Decree of 27 June 2008 no. 724). 45 ノルウェー語には 2 種類がある。デンマークの統治 situation ノルウェー語 Elevene skal være aktivt med 下にあった影響でデンマーク語を元にしたブーク i opplæringa モール(直訳で「本の言葉」),19 世紀半ばに歴史言 30 ノルウェー語 i samsvar med læreplanar gitt etter lova her この法律に基づくカリキュラムに従い 31 Head teacher ノルウェー語 rektor 校長(Studieleder 教頭) 32 英語版ではセクション 1-3 だが,ノルウェー語版で は 1-5 33 School’s coordinating committee ノルウェー語 samarbeidsutvalet 34 consultation statement ノ ル ウ ェ ー 語 føre fråsegn 仮の文書 35 Amended by Acts of 17 Sep 1999 no. 74(in force 17 Sep 語学者イーヴァル・オーセンが地方の方言を集めて 作ったニーノシュク(直訳で「新ノルウェー語」)で ある。これに少数民族のサーミ語を加えた 3 言語が いずれも公用語である。 46 Primary 一次の ノルウェー語 hovud 主要な 47 guardians of children 48 Amended by Acts of 30 June 2000 no. 63(in force 1 Aug 2000, pursuant to the Decree of 30 June 2000 no. 645), 27 June 2003 no. 69(in force 1 Aug 2003, pursuant to the Decree of 27 June 2003 no. 774), 17 June 2005 no. 105(in force 17 June 2005, pursuant to the Decree of 17 鈴木庸裕・沢田安代 : スクールソーシャルワークのマクロレベルの発展 29 June 2005 no. 660), 20 June 2008 no. 48(in force 1 Aug 61 ノルウェーの公教育は大学まで学費無料である。後 2008, pursuant to the Decree of 20 June 2008 no. 621). 期高等教育以降では教科書代などは自己負担である 49 Amended by Acts of 17 Sep 1999 no. 74(in force 17 Sep が,学校指定の服や靴などはなく負担は最低限である。 1999, pursuant to the Decree of 17 Sep 1999 no. 1011), 62 Added by Act of 31 Jan 2003 no. 10. 20 June 2008 no. 48(in force 1 Aug 2008, pursuant to 63 Added by Act of 22 June 2012 no. 53(in force 1 August the Decree of 20 June 2008 no. 621). 50 Amended by Act of 17 June 2005 no. 105(in force 17 June 2005, pursuant to the Decree of 17 June 2005 no. 660) . 51 Map 地図にする ノルウェー語 kartleggje 52 移民,難民など,何らかの理由で海外から移住した 人を想定した文言だと考えられる。 2012, pursuant to Decree of 22 June 2012 no. 582) 64 comitted 65 小谷敏ほか編『若者の現在 労働』日本図書セン ター,2010。p. 185。 66 岡沢憲芙ほか編『ノルウェーの経済』早稲田大学出 版部,2004。p. 48。 67 ノルウェーの LGBT 支援団体のキャンペーンポス 53 guardians ター。http://www.llh.no/nor/om_deg/brosjyrer/NY!+En 54 Amended by Acts of 4 July 2003 no. 84(in force 1 Oct +skole+for+alle.b7C_wBjQ4X.ips 2015 年 4 月 16 日 2003) , 2 July 2004 no. 69(in force 1 Sep 2004, pursuant to the Decree of 2 July 2004 no. 1064)19 June 2009 no. 9 : 00 参照。 68 ノルウェー内閣ウェブサイト「全員のための一つの 94(in force 1 August 2009, pursuant to the Decree of 学校─よくできる生徒に対しても─」https://www. 19 June 2009 no. 675), 22 June 2012 no. 53(in force 1 regjeringen.no/nb/aktuelt/En-skole-for-alle--ogsa-de- August 2012, pursuant to the Decree of 22 June 2012 flinkeste/id761114/ 2015 年 4 月 16 日 9 : 00 参照。 no. 582). <参考文献> 55 case 56 Amended by Acts of 17 June 2005 no. 105(in force 17 June 2005, pursuant to the Decree of 17 June 2005 no. 660) , 25 June 2010 no. 49(in force 1 Aug 2010, pursuant to the Decree of 25 June 2010 no. 982). 57 私立学校の承認制度は,国が教育内容を故意に統制 するためではないという意味だと考えられる。 58 Amended by Acts of 20 Dec 2002 no. 112(in force 1 April 2003, pursuant to the Decree of 20 Dec 2002 no. 1735) , 27 June 2003 no. 69(in force 1 Aug 2003, pursuant to the Decree of 27 June 2003 no. 774), 17 June 2005 no. 106(in force 17 June 2005, pursuant to the Decree of 17 June 2005 no. 661), 29 June 2007 no. 91 ・藤本典裕・制度研編『学校から見える子どもの貧困』大 月書店,2009。 ・鈴木庸裕『震災復興が問いかける子どもたちのしあわせ 地域の再生と学校ソーシャルワーク』ミネルヴァ書 房,2013。 ・山下英三郎ほか編『新スクールソーシャルワーク論 こ どもを中心にすえた理論と実践』学苑社,2012。 ・フィンランド教育省ほか編『フィンランドの高等教育 ESD への挑戦 持続可能な社会のために』明石書店, 2011。 ・岡沢憲芙ほか編『ノルウェーの経済』早稲田大学出版部, 2004。 (in force 1 Aug 2007, pursuant to the Decree of 29 June ・北川邦一『ノルウェーの社会科,宗教・道徳教育及び生 2007 no. 758), 19 Dec 2008 no. 118(in force 1 Jan 2009, 活指導に関する比較教育学的調査研究』科研基盤研 pursuant to the Decree of 19 des 2008 no. 1424), 19 究 C-2 成果報告書,2005。 June 2009 no. 103(in force 28 Dec 2009, pursuant to the Decree of 19 June 2009 no. 672), 25 June 2010 no. ・小谷敏ほか編『若者の現在 労働』日本図書センター, 2010。 49(in force 1 Aug 2010, pursuant to the Decree of 25 ・佐藤学『学びの快楽』世織書房,1999。 June 2010 no. 982). Amended by Act of 22 June 2012 ・ 佐藤学ほか編『未来への学力と日本の教育 10 揺れる no. 53(in force 1 January 2014, pursuant to Decree of 22 June 2012 no. 582), 20 June 2014 no. 54(in force 1 Aug 2014, pursuant to the Decree of 20 June 2014 no. 世界の学力マップ』明石書店,2009。 ・A・H アンドレセン『新しく先生になる人へ ノルウェー の教師からのメッセージ』新評論,2008。 842). 1 § 11-3 has been repealed by Act of 27 June ・平原春好『教育行政学』東京大学出版会,1993。 2003 no. 69. ・黒崎勲『教育行政学』岩波書店,1999。 59 Amended by Act of 19 Dec 2008 no. 118(in force 1 Jan 2009, pursuant to the Decree of 19 des 2008 no. 1424). 60 Added by Act of 30 June 2000 no. 63(in force 1 Aug 2000, pursuant to the Decree of 30 June 2000 no. 645). ・開沼博『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたの か』青土社,2011。 (2015 年 4 月 16 日受理) 30 人間発達文化学類論集 第 21 号 2015 年 6 月 The Development of Macro Level Social Work in School ── Education for Sustainable Development Point of View in the Norwegian Education Act ── SUZUKI Nobuhiro and SAWADA Yasuyo This is a research about macro level social work in primary and lower secondary school in Norway to improve Japanese social problems in education. For this purpose we choose the Norwegian Education Act(Act relating to Primary and Secondary Education and Training)because this law has the education for sustainable development point of view. Through this law we found necessity of macro level social work in school and it may help our social problems in our education.