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資料2 事務局提出資料(PDF形式:2925KB)

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資料2 事務局提出資料(PDF形式:2925KB)
資料2
コト消費空間づくり研究会 取りまとめ
~マネジメント組織を中核とした地域協同システムの構築~
(案)
平成27年 7月
経済産業省
地域経済産業グループ
目次
1.“コト消費”の意義
2.コト消費空間づくりの進め方
3.コト消費空間づくりの効果的な推進体制
4.地域の協同システムの構築
5.コト消費空間づくりのプロセス
6.人材確保のための環境整備
7.横断的な取組を阻害する規制
8.コト消費空間づくり促進のための政策の方向性
1
1.“コト消費”の意義
2
情緒的な価値提供の重要性
○ 人口動態の変化による総需要の減少や、社会の情報化・高度化により消費の成熟化が進み、モノやサー
ビスの国内市場はより厳しいものとなっていく。
○ このような市場環境においては、消費者(買手)が支払う対価として、機能的な価値を提供するだけで
は十分ではなく、より直接的に顧客が満足感や高揚感を得られる、情緒的な価値を提供することが求め
られる。
○ 実際に、特に小売業・飲食業などB to C型産業において、店舗の大型化によって多様な商品・サービス
をミックスして提供したり、マクロ的な市場環境の悪化の中でも、空間的・時間的に消費自体をデザイ
ンすることで新たな価値を提供することで成長を続けている業種・業者が存在。
事例:蔦谷書店・家電(CCC)
○ DAIKANYAMA T‐STTEでは、生活提案型の商業施設として、蔦谷書
店を中心@に、本・映画・音楽・T‐Travel(トラベルコンシェル
ジェ)・カフェ・ダイニングバークリニック・エステ等のコン
テンツ(個店)が分棟型で配置され、顧客がガーデン内に散策
するように、ミックスされた消費体験が提供されている。
○ また、蔦谷家電(二子玉川)では、蔦谷書店・スターバック
ス・電動アシスト自転車、Appleなどの複合施設として生活提案
を行っている。
書籍・雑誌の売上が落ちる中、
蔦谷書店では売上・店舗数とも
に増加している。
※ 蔦谷書店・家電の書籍
・雑誌販売の推移
全国的に書籍・雑誌の売上
が落ち込むなかで、蔦谷書店
は複合的な消費空間を提供し
ていることから、右肩上がり
の売上を保っている。また店
舗数も年々増加している。
図:書籍・雑誌の売り上げの推移(出版科学研究所)
図:蔦谷書店の書籍・雑誌年間販売額
・店舗数の推移(MarkeZine)
3
コト消費への転換
○ 地域にしごとを生み、活気のあるまちを創るためには、地域外からの顧客の消費を呼び込み、地
域内の顧客の消費によりそれを循環させることが重要
○ そのためには、魅力的な消費空間を作り、関連する商品・サービスを「コト」として一体化して
提供することで、情緒的な価値を認知させ、地域内外からの誘客を促進することが必要。
○ 他方、従来の産業振興施策やまちづくり政策は、生産装置の高度化や周辺整備を行うことに
フォーカスされたものが多く、「モノ消費」や「ハコ消費」を促進する政策であった。
○ 本研究会は、マクロ市場環境の変化を踏まえ、主に中小都市の中心市街地や観光地域において、
より直接的に価値が認知される「コト消費」を促進する、魅力的な消費空間を創出するため、
地域が活用できる手法を検討・提案する。
モノ消費
ハコ消費
個別の製品やサービスの持つ機能的価値を消費するこ
と。商品価値の客観化(定量化)は原則可能。
在庫や輸出により時間的・空間的に広範に提供できる
ため、生産機器や施設などへの投資が生産性を高める。
公共事業・補助金による施設整備に
よって誘発された消費のこと。
資産取得を伴うため、数十年オーダー
で固定費を回収するビジネスモデル。
市場環境の変化
・人口構造の変化による総需要の減少、政府の固定資産の増加
→ 固定費回収型の経営モデルの限界
・モノが溢れ機能的価値による差別化が困難
→ 情動的な価値を提供する必要
コト消費
コ
ト
消
費
コト消費
4
「コト消費」について
○ コト消費とは、製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受するのではなく、
個別の事象とが連なった総体である“一連の体験”を対象とした消費活動のこと。
○ 集積した製品群・サービス群が、個々の製品やサービスに切り分けられることなく、一連の体
験として時間経過の中に溶け込み、1つの情動的価値を提供する“コト”として認知されるよう
に設計・管理することが、個々の価格や仕様だけではない非価格競争(差別化)の源泉を生む。
○ コト消費は、生産と消費が同じ時間・同じ場所で行われるため、消費の「場」に顧客を誘い込
むことが必要。そのため、コト消費を提供する個店を集積させ、来訪客と彼らの消費を呼び込
む魅力的な空間づくりが重要。また、コト消費型産業は、瞬間的な需要に応じてサービス等を
供給するため、変動費型の産業構造となる。
(イメージ)
①個別のサービス:カフェ・セレクトショップ・映画館等
→ コト消費:「まち歩き」
②個別のサービス:外湯・お土産屋・レストラン等
→ コト消費:「外湯巡り」
5
地域が一体となったコト消費空間の創出:米ポートランド
BID制度
条例
○ 特定エリアの不動産所有者(地権者575)
の固定資産税に一定額を上乗せし、その資
金(総額5億円程)で街の質を向上させる
取組みを行う制度。
○ 「セーフ&クリーン」が機能し、街のパト
ロールとツーリストガイド(セーフ)、公
共空間の清掃活動と軽犯罪の服役者の社会
復帰として職を与える仕組み(クリーン)
により、街への愛着が増している。
街のにぎわいと界隈性をつくりだす条例
○ 市中心部で1階の歩道に面した部分の50%以上を、
レストランや商店などの商業、もしくはショウ
ルームにする業種を特定したまちづくり条例。
パブリックアート2%条例
○ オレゴン州では、公共建築や道路整備のプロジェ
クト費用の2%をパブリックアートに充てる条例
がある。
組織
Portland Development Commission(都市開発局)、
BID委員会により、まちづくりのマネジメントが行われる
ファーマーズマーケット
Saturday マーケット
参考:松本大地「最高の「商い」をデザインする方法、x‐knowledge、2012
パブリックアート
クリーン&セーフ
6
写真出典:松本大地「生活文化を体験するコト消費」、第参回コト消費空間づくり研究会
コト消費空間の特性と課題
認知
顧客
コト消費空間
公地
個店
時間
消費
○ 顧客にとって空間的・時間的に一体的に認知される。
○ 魅力的な空間を作り上げることが出来れば、当該空間への来訪
客の増加、当該空間における顧客の消費マインドの活性化に
寄与する。(ex. ディズニーランド、イオンレイクタウン)
○ コト消費空間の造成による経済効果は、個店の集客増・
顧客単価上昇となって現れる。(正の外部効果)
→ 純粋な市場経済だけでは、過小供給されるリスクがある。
(市場の失敗)
○ 実際に、個店だけの取組で顧客の消費購買行動に影響を与える
(ex. 足を向ける。高揚感を得る)閾値を超えることは容易で
はない。
○ このような空間づくりに係る取組が、個店の事業活動や住民の
利便性といった点において、周辺区域のどこまでの範囲で裨益
するのか、特定が容易ではないため、その供給不足は、公益性
の観点から行政支出によって賄われてきた。
○ しかし、公共支出となったために、このような取組による受益
が過大に見積もられたり、マーケティング等の効果の把握・発
信が高度なものより、アウトプットが見えやすく受益を過大に
見積りがちな“ハコ”への投資により、これまで、多くの事業が、
経営上のガバナンスが効かないものとなってしまった。
○ また、行政が主体では、特定地域への集中的な投資が公平原則
と衝突する上、複数年の支出を前提とした事業計画を組むこと
や、民間組織のような集中的・機動的な取組が困難である。
また、このような制約が専門人材の育成を阻害する要因となっ
ている。
7
コト消費活性化空間づくりの政策的位置づけ
○ 地域においてコト消費が主に行われる場は、中心市街地・観光地域・商店街などが考えられる。
○ これまで、このようなエリアを開発するためのまちづくり政策・観光振興政策は、ファサード等
のハード整備やプロモーションなどソフト事業への支援が中心であった。
○ コト消費空間は統一されたコンセプトのもとに一体的に開発されることが重要であるところ、
このようなエリアの開発を一体的・持続的に進める主体として、従来の政策体系に縛られること
なく、関連する事業を総合的に設計・実行する組織体制を地域が整備する手法が求められている。
8
事例:ハワイ州ワイキキのコト消費空間創出
○ ハワイは温暖な気候とダイナミックな自然景観を活かした世界を代表するリゾート地であった
が、1990年代に入ると、主要顧客であった日本のバブル崩壊によって、その成長は途絶えるこ
とになった。主要産業の観光業が大きな影響を受けたため、1990年代後半に入り、ハワイは新
しい活性化策に乗りだした。
○ 1998年、宿泊事業者からの申し出により、増税分を観光地マーケティングの目的税とする事を条件に、宿泊
税を6%から7.25%へ増税し、その財源をもとにDMOであるHTA(Hawaii Tourism Authority)を創設。
HTAは、安定財源をもとに、中長期的な展望に立った戦略的なマーケティングを行い、ハワイがキーコンテ
ンツとして提供すべき魅力について、従来のビーチ主体のものから、ハワイの文化や海に留まらない自然資
源へと転換した。
○ ホノルル市ではWaikiki Livable Community Projectを立ち上げ、ハワイの文化や自然を活かした景観デザイ
ンを、コミュニティの視点から市民を巻き込んで策定した。そして、そのデザインコードを元に、道路や
ビーチなどの公共空間の再整備を実施した。このデザインコードは民間事業者にも提示され、新しいデザイ
ンコードに沿った建物改修及び新設を促した。これらの取り組みが全体として調和を持って進められるよう、
BIDを不動産オーナー/テナントで立ち上げることを促し、リゾートとして持続的に高質な空間とサービ
スを備えたワイキキエリアとして運用していく仕組みを作った。
コト消費空間の形成を促進するマネジメント体制
HTA
(DMO)
キーコンテンツとなる
コンセプトの転換
ハワイ州
ワイキキ
BID
ハワイの文化や自
然を活かした景観
デザインの導入
ワイキキエリア
9
コト消費空間づくりの空間的広がり
○ コト消費空間づくりは、街区レベルでの集中的な開発・マネジメントといった狭域の取組と、
デスティネーションレベルのマーケティング活動や周辺地域との連携など広域の取組がある。
○ 広域の取組はDMO、狭域の取組はBIDが組織構想として考えられており、対象とする空間
サイズの違う取組の双方について、それぞれ必要な取組を行う組織を整備し、また、これら組
織が一体的に活動できるような地域全体の体制の設計を行うことが必要。
コト消費空間の形成を促進するマネジメント体制
DMO
・マーケティング
(プロモーション含む)
・交通の整備
周遊滞在の促進
BID
・受入環境整備
・景観形成
街区の開発・管理
10
2.コト消費空間づくりの進め方
11
コト消費空間づくりの方向性
【“コト消費空間”となるための3要件】
A.コト消費型サービス
を提供する個店が集積
してコト消費が生まれて
いる。
B.「歩いて楽しめる空
間」を生む仕掛けが、
「まち」を横断して実施
されている。
C.空間的コンセプトの下、
多様な関係者が協力し
て、公物・私物がミック
スされた一体的な景観
形成が行われている。
【コト消費空間づくり3つの方向性】
A.個店が提供する
製品・サービスの
コト消費への転換
B.周遊に関する魅力
創造・環境整備のた
め、広域空間を活用
した事業実施
C.個店・自治体・規制
当局が一体となった
空間(景観)づくり
個店
商品
自治体
サービス
転換
・集客イベント
・プロモーション
個店
等
個店
商品
サービス
サービス
まち
歩いて
楽しめる
まちへ
デザイン
・コード
規制
当局
12
A.個店のコト消費への転換
コト消費活性化のための第一歩は、各事業者(個店)が提供する製品やサービスを、
一連の体験として時間経過の中に溶け込んだ“コト”として提供し、またそのような個店
が集積すること。
モノの機能やコンテンツの仕様を売りにするのではなく、それらがコト(時間)の中
に統合され、顧客に情動的価値として認知され、その対価として購買が行われるような
ビジネスモデルの組成、また店舗の設計やコンセプトの設定が重要。
事例1:フルーツ加⼯・店内飲⾷スペースの
あるフルーツショップ
事例2:カフェやお花屋を併設した
美容室
・小売中心から、
フルーツ加工
品・店内飲食
スペースを設
け、営業展開
・ナチュラル系の空間づくりを行い、ゆったり
とした中で美容が受けられる。
お花屋さん、小物もあって
楽しめるサロン
▼キッズスペースも提供
▲エステを満喫した後に併設
されたヘルシーカフェで余韻
を楽しむ
写真出典:事例1:長崎市平和町商店街振興組合 フルーツいながわ
13
B.広域的な空間の管理・活用
次は、「歩いて楽しめるまち」を生み出すため、集客イベントやまちの美化(清
掃・防犯等)などにより、もっと広域的な空間を管理・活用する。これは、個店だけ
で取組を進めることが難しく、連携して取組を進めて行くことが必要。
事例:㈱⼤分まちなか倶楽部
大分市の中心市街地において「商店街のテナントミックス事業」と「イベントミックス事業」
を中心に、戦略的なエリアマネジメントのもと、賑わいをとり戻す取り組みを行っている。
▼イタリアン料理店
▲セレクトショップ
中心市街地の店舗分類調査や業種別の売上
状況等をもとに、必要な業種を戦略的に誘致、
出店サポート。
各団体・企業が中心市街地でバラバラ
に企画・実施してきたイベントをトータ
ルにコーディネート。
写真出典:平成22年度中心市街地活性化シンポジウム 共通資料(経済産業省中心市街地活性化室)
㈱大分まちづくり倶楽部HP、FB
14
C.一体感のある空間(景観)づくり
さらに、地域の空間的コンセプト(デザイン・コード)を設定し、自治体・規制当局、
各事業者・地域住民等が、当該コンセプトを基に一体的に空間(景観)の整備等を行い、
一体感のあるコト消費空間の造成を目指す。
デザイン・コードを設定する際には、専門家等のアドバイスを受けながら、丁寧な合意
形成や利害調整を行い、地域づくりの方向感を統一する場を設定することが重要。
事例1:夢京橋キャッスルロード、四番町スクエア(彦根市)
伝統的な街並(景観)・街区づくりと運営
▼夢京橋キャッスルロード(夢京橋商店街振興組合)
・住民主導で地権者全員が参加する協議会が設置され、市と
の協議のもと、コンセプトづくり、地区計画の合意形成を
行い、連続した街並みが整備。
・商店街では観光客もターゲットにおき、雑貨・おみやげ、
食事・菓子、生活用品・サービス等を提供する店が形成。
写真出典:夢京橋商店街振興組合HP、株式会社四番町スクエアHP
▼四番町スクエア(四番町スクエア協同組
合)
・若手商店主が新たな街づくりを提言し、地元商店
街で商業集積を図るための検討が始まる。
・地権者により、まちづくりに関する協定を制定。
・大正ロマンの風情が薫る街並みをコンセプトに、
マスター・アーキテクト制度のもと建物・屋外空
間を整備。
・街区内には、民間の商業店舗、第三セクターの飲
食・情報発信 施設が立地。官民連携の情報発信
をしている。
15
事例1: 長野県小布施町
長野県北東の人口12,000人の町。栗と葛飾北斎が訪れたことで有名。新たに建設された北斎館の
周辺の老舗栗菓子屋が社内に文化事業や修景事業のセクションを立ち上げ、売るだけでなく、訪問
客のおもてなしを始める。1993年に第三セクター(株)ア・ラ小布施が設立され、民宿経営、農産品加
工、来訪者との交流、まちづくり情報の発信などを行う。
町並み修景事業により、小布施が本来持つ景観要素を生かしたまちづくりが進み、コト消費が観光
客を集めている。
A.北斎館を中⼼に
栗菓⼦屋などの
ビジネスが形成
B.(株)ア・ラ・⼩布施
によるまちづくり・
景観づくりのマネジメント
北斎館
(株)ア・ラ小布施
小布施堂(栗菓子)
(株)ア・ラ小布施のカフェ
C.修景事業による
景観づくり
修景事業によるまちづくり
写真出典:ア・ラ・小布施HP「http://www.e-obuse.com/shop/index.php/ala」
16
事例2:熊本県阿蘇市 門前町商店街
人口約28,000人。周囲は阿蘇岳を含む自然景観が広がる。阿蘇神社から伸びる「阿蘇一の宮門前
町商店街」に40軒ほどの個人商店が集まる。商店街は昭和50年頃をピークに賑わいを維持していた
が、平成10年から急激に衰退。平成13年に若い商店主による「若きゃもん会」が結成され、「夜市」の
イベントを見直す。日常的な商店街の再生のために「30分滞在してもらう仕組み」として、食をキー
ワードにした各商店のサービスと空間の改善に取り組む。加えて、豊富な湧水をいかした「水基」を
20ヵ所整備し、参道の景観を演出し、お座敷商店街のイベントも開催。
B.若きゃもん会による
イベント実施、商店街の
再⽣へのとりくみ
A.⾷をキーワードに
した各店舗のサービス
と空間の改善
30分滞在できる商店
街を目指し、各店舗が
食サービス提供や休憩
空間を整備する。
C.湧⽔をいかした
⽔基の整備による
空間演出
代表の杉本氏。若い
メンバーが中心となり、
アイデア出しと実行に
つとめる。
水基は20ヵ所整備さ
れる。平成20年からは
桜をいかしたお座敷商
店街のイベント。
お座敷商店街
写真出典:中小企業庁調査室「地域活性化100」
財団法人地域活性化センター「平成24年度地域活性化ガイドブック」
17
3.コト消費空間づくりの効果的な推進体制
18
効果的なコト消費空間づくりの要件 ①
① 公物・私物を一体的に利用(占有)した事業提案など、従来にない自由度の高い
横断的な取組が必要。
(ex)つくば市における公共空間活用研究
・各種の法規制や自治体と事業者及び事業者間で障壁があれば、コト消費空間作りは実行困難。
・公的事業として行う取組だけでなく、事業投資のためのファンディングの組成が可能。
→ 事業活動を幅広く行っていくためには、発想を広げていくことが重要。
・単体の事業者では実施困難。また、自治体でも困難
→ 官民双方の合意の上、特別な位置づけを持った、中間的な組織が必要。
・自由な事業展開を担保する権限(位置づけ)を明確化する。
→ 品質維持のために、規制をかける(ルールを作る)ことも出来るような仕組みを付与する。
事業者
事業者
事業者
間の障壁
民地
事業者
民地
公有地
の規制
事業者-
自治体
間の障壁
民地
横断的な利用を
促進する
半官半民の
組織体制が必要
自治体
公有地
19
(参考1)つくば市における公共空間活用研究
公物・私物を一体的に利用(占有)した事業提案など、従来にない自由度の高い横断的な取組み。
公共空間と私有空間との中間領域の概念図
【つくば市における公共空間活用研究】
公共空間と私的空間が隣接する領域を
中間領域と定義し、同空間の活用に適す
るように、片側の空間を延長して一体化
させる試行的な研究を実施。
新たな条例を制定し、オープンカフェ
やイベントを実施する際に、一時的な利
用ではなく、恒常的な利用を前提とした
ルールづくりに取り組むこととした。
○公共空間を利用しやすくなる制度の創設
現在の法体
系
認められて
いる事項
手続
○制度の概念図
ペデ(道路)
広場
公園
道路法
道路法施行令
つくば市道路占用料条例
つくば市道路占用規則
つくばセンター広場条例
都市公園法
都市公園法施行令
つくば市都市公園条例
基本的には工事等のみ占用可
(まつり等の一時的なイベントは
可)
道路課:道路使用届
警察:道路使用許可
対象となる公共空間
ペデストリアンウェイ:市内すべての歩行者専用道路,広幅員の歩道
つくばセンター広場 :つくばセンター広場条例で定められた広場
公園
:つくば市が管理するすべての公園
新制度(案)
現行
オープンカフェなどによる継続的な利用
・オープンカフェやイベント等で継続的に使用(8日以上
を想定)
幅広い事項で占用可能である
が,継続利用は不可
物品の販売等も認められている
が,活用には消極的
その他の利用(一時的利用)
・1日もしくは数日程度の短期間の使用
・工事等による使用
新たな制度で対応
現在の制度で対応
新たな制度でルールを定める
ペデ:つくば市道路占用規則
広場:つくばセンター広場条例
公園:つくば市都市公園条例
協議会の指定
都市施設課:広場占用許可
都市施設課:公園占用許可
・協議会は地域の関係者で組織
・指定された協議会のみに公共空間を貸出し
c
公共空間の使用・占用の申請
○申請者
オープンカフェなどの活用を継続的に行うためには,新たな条例が必要
何でもできるのではなく,一定のルールのもと活用が図れるようにする
c
指定した協議会
○占用可能な事項
オープンカフェ,路上店舗, パフォーマンス等
○貸出期間
最長1年間
c
継続的に利用が可能となるルールを明記した制度を創設し,公共空間の活用を図る
(出典) 24公共空間活用方策検討業務 報告書 平成25年3月 つくば市
○貸出許可基準
公共性が高い取組である等
現行の制度の範囲内で貸出し
公共空間の使用・占用の申請
○申請者
c
各実施団体
○占用可能な事項
条例の範囲内
○貸出期間
条例で定める範囲
○貸出許可基準
法律,条例に記載の基準
○その他
協議会に実施内容が通知される仕組みを構築
(参考)横断的な事業実施を阻害する壁
コト消費空間づくりを地域が一体となって進めていくためには、その地域の特性を踏まえた
コト消費空間のあり方と関係者に求められる役割などについて合意形成を図っていくことが
大前提。しかしながら、これまで、地域でマネジメントが強力に行われて来なかったのは、
その取組に対する関係者間の調整や合意形成が不十分であったこと等が原因として考えられる。
①自治体-事業者間の壁
公物が活用できない、曖昧な法解釈や規制の厳格すぎる運用、予算の単年度主義、特定地域に絞った開発が
困難(平等原則)、担当者の異動により継続性の限界、公への過度の依存(コミュニティの欠如)
②事業者間の壁
出る杭を打つ風潮、高齢者の逃げ切り意識(例:空き店舗の放置や外資への売払い)、競合である隣接事業者
との過当競争
③各種法規制
道路・河川・公園等の占有、食品衛生、用途変更(建築基準)、用途規制など
これまで、都市再生推進法人など、地域の関係者の合意の下、公物・私物へのアクセスが一定
程度可能な制度が整備されている。
自治体―事業者の壁
都市再生
推進法人
規制緩和
規制緩和
されない
○行政が土地を管理する
公共空間における占用条
件や手続きの緩和
○まちづくりの担い手として
公的位置付けが付与
○公共施設等の整備を適
切に行うために必要な都
市計画の変更の提案
○エリアマネジメント活動に
対する融資(収益事業含
×民地内であっても、
総合設計制度や特
定街区に基づく公
開空地等は利活用
の基準や要綱が規
定(制限あり)
×従来の補助金(単
年度)
む)
事業者間の調整
規制緩和
○公共空間
活用の計画
づくりと、そ
のエリア内
での管理・
調整
規制緩和
されない
各種法規制
規制緩和
○道路占用許可の特例
○河川敷地の占用許可
○都市利便増進協定
-
(土地所有者等の間で、施設の設
置・管理の方法や費用分担を定
める協定)
○都市再生(整備)歩行経路協
定(土地所有者等の間で、歩行
者経路の整備・管理の方法や費
用分担を定める協定)
規制緩和
されない
×公共空間の種類を
問わず、又民地で
あっても、飲食営業
を行う場合の食品
衛生法、火気を使用
する場合の消防法
等、利用形態による
規制が存在
21
効果的なコト消費空間づくりの要件 ②
② 個店単体の取組では、コト消費空間として認知されるための閾値を超えない。
複数の事業を戦略的・統一的に展開することが必要。
(ex)台東デザイナーズビレッジ
・現場感覚と大局観をマージさせ、事業ポートフォリオの設計とそれぞれのプライオリティを
決定する、高度な戦略的思考が重要。
・少子化、国際化等の変化や競合する他地域などの与件を分析し、コト消費空間に関する市場環
境について正確に把握することが重要。その上で、コト消費空間における1次的な消費をレバ
レッジにして、地域全体のコト消費型産業構造を造り替えるビジョンについて検討が必要。
・外資参入や高齢者の退出などの代謝が進む中で、コト消費空間が破壊、汚染されないように、
そのサービス品質を維持するためのルールづくりなど、全体のコントロールが必要。
・コト消費が提供する情緒的な価値は陳腐化しやすく、消費トレンドや市場環境を分析し、
個店の活動に新陳代謝をもたらす取組が必要。
個店
個店
個店
一体感を
持たせる
顧客
単体では顧客
に刺さらない
個店
顧客
空間づくりのビジョン
ブランド・コンセプト
事業活動の際のルール
個店
個店
個店
空間全体をマネ
ジメントするため、
統一的なビジョン
及び全体の事業
ポートフォリオを
設計する必要があ
る。
22
(参考2)台東デザイナーズビレッジ
個店単体の取組みでは、コト消費空間として認知されるための閾値を超えない。
複数の事業を戦略的・統一的に展開することが必要。
【台東デザイナーズビレッジ(インキュベーション施設)】
カチクラ(御蔵)エリアでは、2004年に設立された台東デザイナーズビレッジが、産業人材育成のインキュベー
ション施設として、台東で起業を目指すものづくりのデザイナーを育成。育成されたデザイナーへのマーケティン
グ支援、起業支援を行い、デザイナーの地域内の独立開業を戦略的に支援。
その結果、新規の個店が集積し、既存の職人とのネットワーク、古い建物をリノベーションした飲食やギャラ
リー等の店舗が集積している。なお、デザイナーは、既存の卸小売店から材料を購入する、また個店の来客者は飲
食店等で消費をするなどレバレッジ効果も上がっている。
卸小売
台東区
デザイ
ナー
デザイ
ナー
デザイ
ナー
・起業5年以内
・台東区起業希望者
台東モノマチ
協会
個店
協力・連携
台東デザイナーズ
ビレッジ
ファッション産業人材
インキュベーション施設
独立開業
卸小売
ネットワーク
構築
個店
飲食・商い・小売・
ものづくり体験等
の集積による
コト消費空間
テナント
ミックス
ギャラ
リー
個店
PRイベント
「モノマチ」
による集客
23
効果的なコト消費空間づくりの要件 ③
③ このような高いハードルを越えるためには、マネジメント人材が、
安定的・持続的に活動に専念できる環境を整備することが必要。
(ex)阿寒観光協会まちづくり推進機構
・官民双方の窓口となり、地域の合意を背景とした代表性を明らかにする。
・短期間では成果が見えにくい中、中長期的な戦略の下で事業の運営管理を進めるためには、
マネジメント人材の雇用環境を安定化させる、安定的・長期的な自主財源が必要。
→ 5年以上の一定期間にわたり安定した財源が必要。
→ 関係者からのガバナンスを効かせるため、10年程度で更新する仕組みの設計も重要
・ マネジメント活動は直接収益を上げるものではなく、関連する事業者等に裨益するもので
あり、特に、コストセンターとなる業務・活動を公的資金で担保する仕組みが必要。
・ 公的機関の給与体系と独立した、マネジメント人材の専門性を評価する賃金体系の設計と
新たな人材の参入を促進するための専門人材のマーケットの創出。
支出計画
経験学習
事業実施
財源確保
資金調達
活動に専念
ここが不安定だと、活動に専念できない。
24
(参考3)阿寒観光協会まちづくり推進機構
高いハードルを越えるためには、マネジメント人材が、
安定的・持続的に活動に専念できる環境を整備することが必要。
【阿寒観光協会まちづくり推進機構(NPO法人)】
阿寒観光協会まちづくり推進機構は、2005年にNPO法人化され、複数の財源により、マネジメント人材を安定的
に確保している。マネジメント活動は、観光商品開発、ツアーガイド等の人材育成、まちづくり活動に及び、地域
内の民間事業者(旅行会社等)に裨益している。
項目
概要
経緯
阿寒観光協会(1949年設立)、阿寒湖温泉まちづくり協議会(2001年6月設置)が統合され、
2005年7月に阿寒観光協会まちづくり推進機構としてNPO法人化される。
組織の位置づけ
官民双方の窓口を担う。釧路市職員の機構への派遣(2006~2007年)、民間事業者は旧阿寒観光
協会からの会員。
財源
会費、分担金、協賛金、負担金、釧路市補助金、観光まちづくり補助金、受託事業、事業収
入、その他。入湯税の徴収額は、釧路市観光振興臨時基金として積み立てられ、釧路市から
機構へ補助金として配分され、阿寒湖温泉で実施する観光振興事業にあてられる。入湯税を
原資とした補助金による観光推進事業の内容は、釧路市と地元関係団体との協議により決定
される。
組織体制と人材
管理部(インフォメーションセンター含む)、アイヌ文化部、まちづくり部、イベント部
(イベント・大会の誘致・営業)、誘致宣伝部(外客対応、MICE推進)などが設置され、専
任の常任理事兼事務局長の他、スタッフが雇用されている。
事業内容
全体計画は、阿寒湖創生計画2020に基づき、緑化プロジェクト、まりも倶楽部、商店街活性
化プロジェクトなどを実施。また、着地型観光の商品企画やツアーガイド養成を行うととも
に、阿寒湖スキー場の事業管理(指定管理制度)なども実施。
(参考) 観光地経営の視点と実践、公益財団法人 日本交通公社編著、「阿寒観光協会まちづくり推進機構」、pp.136-143
25
中長期的に安定な財源の確保
【自主財源の3要素】
網羅性
自立性
マネジメントの受益者となる特定
地域内の地権者・事業者等をもれな
く対象とする。
フリーライダーの発生を防止し、
組織活動の安定性をもたらす。
コト消費空間の創出という大目的
の下、財源確保の手法に拘わらず、
マネジメント組織が自身の事業活動
を主体的及び事後的に決定できるこ
とが重要。
持続性
費用負担を行う者からのガバナン
スが効く仕組みを担保した上で、単
年度ではなく、5年程度の一定期間、
持続的に活動できる財源を確保する
ことが、事業の実効性や人材確保等
の面で必要。
【従来のまちづくり組織の財源の課題】
財源の種類
網羅性
自立性
持続性
(汎用性)
補助金
-
×
×(単年度)
○
指定管理
-
×
△(複数年)
○
保有資産
活用
-
○
-
×
収益事業
-
○
×
○
×
会費制
×
(フリーライダー)
【あるべき財源の方向性】
・少なくとも5年程度は安定的に財源が担保されること → 持続性○
・事業効果が裨益する関係者から漏れなく拠出させること → 網羅性○
・フリーライダーを防止すること → 網羅性○
・固定資産への投資を前提としないこと → 自立性○
(ケースが限定的)
×
(事業設計の難易度高い)
○
26
海外事例:税・負担金方式による財源確保
北米や英国において、「コト」消費で魅力的な地域を創造している地域は、
税・負担金方式による網羅的・自立的・持続的な財源を持っていることが多い。
バンクーバー
ボルダー
人口58万人
市内に22のBID
ボルダー市人口10万人
固定資産税:$96,000
(サウスヒルBIA)
ワイキキ
ココナッツグローブ
の中心地区
ワイキキ人口2.3万人
の中心地区
人口1.8万人
の中心地区
固定資産税&会費:$344,650
固定資産税:$2,470,000
ナパ・バレー
負担金・税方式による財源で
は、地域づくりの取り組みで生
み出された個店での収益の一部
が、地域づくり組織の活動資金
として還元される。
特定地域・業種を網羅するため
フリーライドは発生しない。
駐車場利用税:$474,000
固定資産税:$443,000
地域づくり組織の取り組み
コト消費を生み出す環境を創造するが、収益は生まない
地域づくり
負担金・税方式
「個店」での取り組み
目前まで訪れた顧客の需要を収益に変える
宿泊税:$4,000,000
我が国においても、北米などの
ように、各地域において地域づく
り(まちづくり)のために持続的
な財源を確保することが出来れば、
地域振興はより多くの地域に拡大
可能なのではないか?
法定外税、分担金の徴収な
どの地域が取り組める制度は
あるものの、実践事例が乏し
く、ほとんど普及していない。
国名
BID地区数
統計時点
アメリカ
1,002
2011年
イギリス
197
本年5月
カナダ
400
不明
オランダ
112
2011年
ドイツ
35
2012年
※事務
局調べ
27
整理:効果的な組織体制のための3要件
① 公物・私物を一体的に利用(占有)した事業提案など、従来にない自由度の高い横断的な
取組が必要。
② マネジメント組織を中心に、複数の事業を戦略的・統一的に展開することが必要。
③ 上記のような高いハードルを越えるためには、マネジメント人材が、安定的・持続的に活動に
専念できる環境を整備することが必要。
地域のリソースを効率よく活用し、魅力的なコト消費空間づくりを強力に推進するためには、
専業的に携わる人材を中核としたマネジメント組織を創立し、以下のような権限や財源を担保し、
幅広い事業活動を実施していくことが必要。
効果的なマネジメント組織体制を構築するための3要件
1)横断的な取組みを実現化する経験と、多様な関係者とのコミュニケーション能力
を備えた人材確保
2)公的な仕組みを活用し、このような人材を中長期的かつ安定的に雇用して、
事業を実施できる財源の確保
3)調達した財源の使途を能動的に決定し、官民の多様な関係者と事業が実施できる、
地域を代表する公的な位置づけと権限の付与
28
先進事例における3要件
横断的な取組みを実現化
する経験と、多様な関係者
とのコミュニケーション能力
を備えた人材確保
公的な仕組みを活用し、こ
のような人材を中長期的か
つ安定的に雇用して、事業
を実施できる財源の確保
調達した財源の使途を能動
的に決定し、官民の多様な関
係者と事業が実施できる、地域
を代表する公的な位置づけと
権限の付与
(事例1)
長野県小布施町
・町役場、町内企業、商工
・主な財源は、ホテル、 会、金融機関、農業関係
・ 地 域 に 愛 着 と ネ ッ ト 喫茶、商品販売、視察・ 者、町民などが株式を出
ワーク(連帯感)をもち、 ガイド等の自主財源で、 資した第3セクター的な会
観光や広域連携に経 加えて補助金等を受け、 社である。
験を持つ人材が中心と 常勤1~2名、パート1 ・町役場等の出資により、
なっている。
名(6名シフト)で運営し 公的な意味合いを持つ組
ている。
織で、事業時のパイプも
強い。
(事例2)
熊本県阿蘇市
門前町商店街
・「阿蘇一の宮門前町商店
・商店街の若手商店主
10 人 に よ る 「 若 き ゃ も ・個店からの会費や協賛 街 」 と 、 「 若 き ゃ も ん 会
ん会」が結成され、商 金を集め、商店街活性 (NPO法人格等無し)」が
店 街 の 個 店 と の 円 滑 化にかかる事業を実施。 一体となり、商工会議所
なコミュニケーションに 商店街の個店等が費用 や各個店と密に連携して、
より、商店街活性化の 負担している。
地域に貢献する事業を
取組みを推進。
行っている。
29
4.地域の協同システムの構築
30
地域の協同システムの重要性
コト消費空間づくりは、マネジメント組織が従来の組織にない自由な発想の下、幅広い事業活動を実施しつつ、
来訪者に向けて、イベント開催を通じた直接的アプローチ、個店の事業のコト消費化を通じた間接的アプローチ
の双方から、魅力を創造し、認知させる取組を進めていくことである。
このような事業活動を可能とするためには、マネジメント組織に資金や管理権限の委譲を進め、事業活動の自
由度と安定性を担保し、戦略的・専業的な事業環境を整備することが必要。特に、その裏付けとして、持続的な
組織運営のために、安定した財源確保の方策を整備することが重要。
しかしながら、先述のように、主に行政から交付される、従来のまちづくり財源では、財源の使途の自由度な
どに制約があり、自治体の財政が厳しくなる中で、行政界の中の特定地域の開発と言えるコト消費空間づくりの
ためにその財源を確保することは、平等原則の点からも難しい。
他方、会費制など、民間セクターの中だけで資金調達をする場合は、外資の参入等による不安定化、フリーラ
イダーの発生、直接的に収益のあがりにくい事業への投資が回らない等の問題が発生する。
そこで、行政の強制徴収の仕組みを活用しつつ、自治体独自の判断で、特定財源を確保する資金調達手法とし
て、法定外税や分担金が存在するが、現在のところ、あまり活用されていない。周辺事業者への外部効果がアウ
トカムとなる事業特性を踏まえると、裨益する関係者に負担を求めつつ、再投資を促進することが方策として考
えられるが、海外の先進的な事例(BID制度など)では、このような負担を求める制度が整備されている。
英米のBIDのように、公的な強制徴収の仕組みを導入することが出来れば、コト消費空間づくりは、マネジ
メント組織を中心に、事業者や自治体などの関係者が協同するシステムを作り上げ、事業活動が生む外部経済効
果を資金に変換して、システムの中に循環させながら、継続的に実施されていく取組として、再定義される。
マネジメント組織は、自治体と連携しつつ、協同システムの全体像を空間づくりのビジョンと併せて提示しな
がら、資金の出し手である事業者・来訪者からこのシステムに関する理解(合意)得ることが必要。このような
システムが出来上がった後も、戦略的な事業実施とその効果の把握・発信に取組み、継続的に理解を得るための
取組を進めていくことが重要。
31
イメージ:協同システムのモデル化
財源(ⅰ)
使途(ⅱ)
事業資金の自由度、裁量権
(持続性)
後方支援
(規制緩和 等)
法定外税
合意形成
情緒的な評価
(自立性)
コト消費空間
づくりに係る
事業実施
事業の効果に関する
説明(事前・事後)
信頼感(監視)
消費額増大
満足度向上
事業者
賃料上昇
空室率低下
来訪者・利用者
テナント入居者
消費購買活動への反映
事業成果の証明、レバレッジの確保 (アウトカム・目的とする成果)
責任(B)
分担金
網羅性
持続性
有効な取組の
立案と実行力
自立性
リーダーシップ
議会による議決
マネジメント
組織
権限(A)
自治体
条例制定
税・分担金の制度設計 (資金の入口/循環の起点)
事業
資金
提供
コト消費空間づくりのノウハウの確立・実行環境整備 (アウトプット)
推進組織とその活動の公益性、代表性といった社会的位置づけの確保 (資金の出口)
32
事例①:釧路市(入湯税引上げ)
財源(ⅰ)
使途(ⅱ)
基金条例の制定
事業の効果に
関する説明
国際観光旅館
登録施設増加
国際観光旅館
入湯税支払
消費額増大
満足度向上
税負担による影響の効果に対する評価
入湯客
消費購買活動への反映
事業成果の証明、レバレッジの確保 (アウトカム・目的とする成果)
責任(B)
阿寒湖温泉で
実施する
観光振興事業
情緒的な評価
合意形成
48,000
千円/年
地元関係団体と
市による
事業検討会議
権限(A)
入湯税徴収
観光振興
臨時基金
個別事業の実施
(補助金の支出)
独自財源
研究会の設置
市税条例改正
税・分担金の制度設計 (資金の入口/循環の起点)
釧路市
事業実施
コト消費空間づくりのノウハウの確立・実行環境整備 (アウトプット)
推進組織とその活動の公益性、代表性といった社会的位置づけの確保 (資金の出口)
33
事例②:富士河口湖町(遊漁税)
財源(ⅰ)
使途(ⅱ)
治水組合
議会による議決
遊漁税徴収
・駐車場や
トイレの整備
・湖畔清掃
環境改善に
対する評価
合意形成
遊漁税支払
漁協組合
遊漁客
満足度向上
税負担による影響の効果に対する評価
継続的な遊漁行為
事業成果の証明、レバレッジの確保 (アウトカム・目的とする成果)
責任(B)
8,000
千円/年
事業の効果に関する
説明(事前・事後)
権限(A)
条例制定
税・分担金の制度設計 (資金の入口/循環の起点)
治水事業
特別会計
富士河口湖町
コト消費空間づくりのノウハウの確立・実行環境整備 (アウトプット)
推進組織とその活動の公益性、代表性といった社会的位置づけの確保 (資金の出口)
34
事例➂:宿泊税(東京都)
財源(ⅰ)
使途(ⅱ)
観光振興事業
(東京都)
議会による議決
後方支援
(規制緩和 等)
宿泊税
17.6億円
旅館・ホテル
宿泊税支払
消費額増大
満足度向上
宿泊客
賃料上昇
空室率低下
税負担による影響の効果に対する評価
消費購買活動への反映
事業成果の証明、レバレッジの確保 (アウトカム・目的とする成果)
情緒的な評価
合意形成
信頼感(監視)
責任(B)
※H27年度予算
事業の効果に関する
説明(事前・事後)
プロモーション
観光資源開発
観光まちづくり
への支援
権限(A)
東京都
条例制定
税・分担金の制度設計 (資金の入口/循環の起点)
事業
資金
提供
コト消費空間づくりのノウハウの確立・実行環境整備 (アウトプット)
推進組織とその活動の公益性、代表性といった社会的位置づけの確保 (資金の出口)
35
法定外税・分担金の比較
制度設計における制約
税の3原則
受益負担関係
想定される負担者
法定
外税
関係性の
説明が必要
利用者
事業者
満足する
必要あり
分担金
より直接的な
関係性の
説明が必要
地権者
事業者
-
「公平・中立・簡素」
36
分担金を活用したコト消費空間づくりの事例 ①
熊本県天草市~市による私的空間の整備~
「天草市重要文化的景観整備事業分担金徴収条例」
平成24年に国により「﨑津・今富の文化的景観」が重
要文化的景観に指定されたのに伴い、所有者の申出・
分担金による市の事業としての私的空間の整備に着手。
現在、2軒がモデル的に整備され、世界遺産登録に向け
て地区全体の機運も高まっている。
滋賀県高島市~分担金による水辺の生業空間の整備~
「高島市重要文化的景観整備事業受益者分担金徴収条例」
高島市では重要文化的景観に、①海津・西浜・知内の
水辺景観(平成20年)、②針江・霜降の水辺景観(平成
22年)、③大溝の水辺景観(平成27年)の3ヶ所が選定さ
れる。集落、河川、水田、湖をつなぐ水環境システムが
特徴である。
沖縄県北谷町~分担金による駐車場の維持管理~
「北谷町美浜駐車場管理運営事業受益者分担に関する条例」
平成12年に「北谷町美浜駐車場管理運営事業受益者
分担に関する条例」を定め、現在、町営駐車場の受益者
であるホテル、物販、飲食、ボウリング場、情報産業、ラ
イブハウス、映画館の21社から分担金を賦課し、町営駐
車場の維持管理費、駐車場改修・改築に備えた基金充
当金にあてている。
37
分担金を活用したコト消費空間づくりの事例 ②
導入目的
天草市重要
文化的景観
整備事業分
担金徴収条
例
重要文化的
景観の構成
要素の復旧
修理、修景
の事業費を
所有者を分
担するため
高島市重要
文化的景観
整備事業受
益者分担金
徴収条例
重要文化的
景観の構成
要素の復旧
修理、修景
の事業費を
所有者を分
担するため
北谷町美浜
駐車場管理
運営事業受
益者分担に
関する条例
駐車場の維
持管理費と
将来の改
修・改築費
用を事業者
等と分担す
るため
対象経費
事業内容
屋根の葺
き替え、
外壁の張
替え等
事業規模
6,278千円
(工事費・
設計管理
委託費)
12,000千円
建物修景、
(H.25)
石垣等景
1,200千円
観整備等
(H.26)
美浜駐車
場区画線
設置工事
等
7,321千円
(1㎡あたり
320円
徴収)
負担割合
分担金を
選択した
理由
合意形成
における
苦労・工夫 等
合意形成
プロセス
途中の
計画変更
合意形成
に関連す
る業務の
委託
総務省
への事
前相談
条例作
成に係
る業務
の委託
対象工事費
等の32.5%
を徴収
重要文化的景
観の修景等に
国庫補助がつ
くが、所有者
(受益者)負担
も生じるため、
分担金制度と
して明確化した
通常は設計管
理委託を行わな
いので負担額が
増えることへの
説明
(景観形成地区
指定の際には、
総会での説明)
―
―
―
―
所有者1/2
国補助1/2
重要文化的景
観の修景等に
国庫補助がつ
くが、所有者
(受益者)負担
も生じるため、
分担金制度と
して明確化した
個別に訪問して
制度を説明
(重要文化的景
観の範囲検討
時には総会、説
明会等実施)
―
―
―
―
事業者65%
町負担35%
(駐車場の
利用割合か
ら算出)
一般利用者か
らの直接徴収
も検討したが、
駐車利用率が
上がることで周
辺事業者の収
益が見込まれ
るため
駐車場利用者
ではなく、21社
の事業者が負
担することで合
意形成
―
―
不明
(資料
なし)
―
38
分担金の合意形成について
分担金について、制度上は負担者の合意を必要としないため、明確な合意形成の必要水準は示さ
れていない。しかし、事後的な訴訟リスクを軽減させるため、全員同意が事実上の要件となって
おり、合意が必要とされていないこと自体が、かえって制度導入・運営の足枷となっている。
また、海外のBID制度においては、当該制度の導入(強制負担の確保)について、合意形成に
必要な手続や水準について明文化されており、フリーライダーの防止(支払意思のない者への強
制徴収)の観点から、国内の分担金制度の導入についても、合意形成に必要な手続や水準に係る
ベンチマークを示す必要があるのではないか。
(参考1)開発事業に必要な合意形成の水準について【事務局調べ】(参考2)海外BID制度の導入に係る合意形成について【事務局調べ】
開発
種類
土地区画
整理事業
施工の種類
合意形成
個人(関係権利者全員)
全員の同意(100%)
組合(7人以上の地権者) 地権者の3分の2以上の同意
全員の同意(100%)
個人(関係権利者全員)
市街地
再開発事
組合(5人以上の地権者) 地権者の3分の2以上の同意
業
マンショ
ン
建替え決議
区分所有者及び議決権の
各5分の4以上の賛成
大規模修繕(軽微変更)
区分所有者及び議決権の
過半数の賛成
大規模修繕(重大変更)
コーポラ
ティブ
ハウス
-
区分所有者及び議決権の
各4分の3以上の賛成
建設組合員の過半数の賛成
地域
必要な手続
・BID地区の提案
アメリカ
ハワイ州 ・BID計画の策定
ホノルル ・公聴会
・BID委員会の設立
・BID地区関係者協議
必要な水準
総固定資産税額の25%相当以
上の地権者の同意
①総固定資産税額の51%以上
もしくは
②地権者数の51%以上
の反対でBIDの導入が中止
①総固定資産税額の51%以上
アメリカ
・行政による許可取得 もしくは
ニュー (市議会、公聴会)
②地権者数の51%以上
ヨーク州 ・BID制度の制定
の反対でBIDの導入が中止
イギリス
・利害関係者の協議
・BID委員会の結成
・BID協定の締結
・BID提案書の作成
・BID提案書への投票
賦課金対象者(非居住)の
①財産評価額の半分以上
かつ
②過半数(人数)
の投票でBID協定が成立
39
上辺: 事業資金の提供
組織が活用できる安定的な財源とするためには、関係者からの徴収に係る設計だけでなく、マ
ネジメント組織がその使途を裁量を持って決定できるよう、自治体から特定財源として「渡す」
方法も考慮する必要がある(自立性)。自治体からの交付に係るあり方、また交付より前段階か
ら、事業提案の形でマネジメント組織が設計できる仕組みの設計が重要。
また、釧路市のような得られた財源の基金化や、金融機関からの投融資を組み入れることに
よって、時間的に柔軟な運用を担保することで、事業活動の範囲を広げていく。
40
(事例)釧路市:観光財源の基金化
入湯税を引き上げた釧路市は、観光振興臨時基金を設置し、その引上げ分を当該基金に
繰り入れることにした。基金化により、税の引上げの目的である観光振興への安定的な財
源調達や、観光振興に関する事業計画の柔軟性が担保されることとなった。
基金の支出は、毎年度、阿寒観光協会まちづくり推進機構などの地域の関係者と相談し
ながら決定する。
現在、観光推進臨時基金は、阿寒湖バス、まりもコイン、フォレストガーデンに必要な
経費、つまり事業費に支出することとしているが、関係者の合意があれば、人件費など
管理費にも支出が可能である。
※釧路市観光振興臨時基金条例(抄)
第六条 基金は、第二条の規定により積み立てた額のうち次に掲げる各区域に所在する鉱泉
浴場における入湯に係る超過課税分納入金額に相当する額及び当該額に係る第三条に規定
する利子等に相当する額を合算した額の範囲内において、それぞれ当該各区域における観
光の振興に要する費用に充てる場合に限り、その全部又は一部を処分することができる。
一~四 (略)
まりも家族コイン
41
右辺:コト消費空間づくりに係る取組の整理
アウトカム
マネジメント
組織の活動領域
個店の
コト消費
への転換
各種物販・サービス等の
コト消費産業化促進
マネジメント
組織の役割
・人材育成プログラム
・インキュベーション
・個店への経営支援
(マーケティング、融資)
→ 飲食・小売・展示
・販売・宿泊
など
アウトカム
・来訪動機を喚起
(集客イベント、バーゲン等)
マネジメント
組織の役割
魅力・感動を創造し
誘客を促進する取組
・コト消費空間づくりに
関するビジョンの策定
・各種イベント企画・実施
・地域資源の開発
・マーケティングミックス
の設計及び実施
ベースライン維持
持続可能性の担保
関係者の連携体制の構築
・滞留スポットの増加による滞
在時間の拡大
(カフェ、カルチャー、スパ等)
・低利用空間を活用した新規ビ
ジネスの創出と美観形成
(水辺・公園、公共施設、町家等)
・地域から来訪客へのコミュニ
ケーション促進
(ブランディング、広報等)
など
マネジメント
組織の役割
アウトカム
・顕在化した課題を
解決するための取組
・ベースラインの維持基準
(コスト水準)に係る
合意形成の支援
・情報インフラ(案内板など)整備
・行政・地域住民・事業者等の
コミュニケーション促進と
全体の利害調整(マネジメント)
コト消費に係るビジネスの根
底をつくる環境整備
・治安維持
・美観形成
・サービス品質維持
・交通利便性確保
・顧客への情報提供の円滑化
など
42
(事例)観光地域づくりプラットフォーム
観光地域づくり
PFの活動領域
個店の
コト消費
への転換
マネジメント
組織の役割
・地域のホスピタリティの向上
・事業者のサービス品質の管理
マネジメント
組織の役割
魅力・感動を創造し
誘客を促進する取組
・観光地域づくり基本方
針の策定
・マーケティング実施
・地域全体の発信
・滞在プログラム提案
マネジメント
組織の役割
ベースライン維持
持続可能性の担保
関係者の連携体制の構築
出典:『観光地域づくり人材育成実践ハンドブック 2014』(H26.3)
図表 2‐8: 観光地域づくりプラットフォームの機能図
・来訪者に対する
ワンストップ窓口の整備
・各種交通の整備
・地域づくりへの
地域住民の参加促進
・地域資源の保全
・各機能の提供に係る
マネジメント
43
下辺:事業のアウトカムの評価・発信
資金の出口として、コト消費空間づくりに係る事業が実施され(右辺;アウトプット)、その事
業により整備・管理された空間に対する来訪客の情動的な評価が消費購買活動につながることに
よって、地域の事業者へと還流する(下辺;アウトカム)。
地域の事業者に対しては、左辺の負担(役割)とのバランスとして、アウトカム等を評価するこ
ととなる。そのため、顧客満足度の把握など積極的な情報発信により、関係者とのコミュニケー
ションを図ることが必要。
また、事業は複数年度にわたって重層的に取り組まれるため、アウトプットとアウトカムを明確
に対応させることは困難。そのため、それぞれの事業についてKPI(※)を設定するなど、アウ
トカムを関係者に客観的に理解させるための工夫を加える必要がある。
※ 定量的(来訪客数・消費額)、定性的(地域住民や来訪者の満足度)を組み合わせることが有用。
英米のBIDの場合は、5年程度のスパンで更新することが義務付けられているため、BID組
織がアウトカムに関する積極的な情報発信を行うインセンティブと地域の関係者からガバナンスを
効かせるシステムが担保されている。
(参考)ココナッツグローブBID
米フロリダ州マイアミ市の観光名所であるココ
ナッツグローブでは、BID制度が導入されており、
BID組織による事業活動は、アニュアル・レポー
トという形で対外的に発信されている。
当該レポートの中では、BID組織がどのような
事業活動を行い、どのような成果が上がっているの
か等について説明されている。
44
(参考)マネジメント組織単独での事業活動
コト消費空間づくりをマネジメント組織が単独で行う取組とすれば、関連する事業をそれぞれ
独立に運営管理することが求められ、事業活動が複雑になり、戦略的・統一的に空間づくりを進
めていくことは困難。
財源(ⅰ)
使途(ⅱ)
推進組織とその活動の公益性、代表性といった社会的位置づけの確保 (資金の出口)
役務の提供
会費支出
役務の提供
事業者・地域住民
消費額増大
地域内外からの
来訪者
事業成果の証明、レバレッジの確保 (アウトカム・目的とする成果)
責任(B)
コト消費
空間づくり
に係る
事業実施
消費(支払)
業務委託
補助金交付
権限(A)
マネジメント
組織
コト消費空間づくりのノウハウの確立・実行環境整備
(アウトプット)
基礎自治体
サービス提供
税・分担金の制度設計 (資金の入口/循環の起点)
業務委託
補助金交付
45
5.コト消費空間づくりのプロセス
46
コト消費空間づくりのフローチャート
1.コト消費空間づくりに向けた地域内の機運・意識の醸成
地域の課題や市場環境の把握
目指すべきコト消費空間のイメージに関する合意
2.事業内容の検討
財源確保策の検討
(行政需要の確認 → 課税目的・課税標準等の設計)
事業計画策定
3.協同システム構築のための制度設計
マネジメント組織体制の設計
(制度的位置づけの明確化)
関係者の役割分担・連携体制の確認
財源確保のための条例制定と合意形成
議会による支出承認
4.コト消費空間づくりに係る事業実施
マネジメント人材の確保
マネジメント組織の立ち上げ
事業実施に必要な
規制官庁・関係者との調整
空間づくりに関する事業実施
5.事業運営とその評価
事業の波及効果の把握と関係者への発信
組織体制・実施事業の改善
47
地域内での意識醸成と事業内容の検討
コト消費空間づくりのプロセスは、行政のフォローの下、地域の関係者が集まり、目指すべき
コト消費空間の方向性について共有し、それぞれが連携する場を構築することから始まる。
地域それぞれが持つ特性や周辺地域などの市場環境を踏まえ、どのようなコト消費空間づくり
を進めて行くのか、そのビジョンについて合意し、共有することが必要。
コト消費空間に向けた
ビジョン策定・共有
関係者の対話の場を作ることがファーストステップ
コト消費空間づくりの方向性を共有するため、
以下のような検討課題について議論を進める。
マネジメント組織
立ち上げへの合意
関係者それぞれの果たす
役割への意識の共有
・地域の特性(市場環境)を踏まえ、どのようなコト
消費空間を目指すのか。
・地域に転がっている課題やニーズに対して、どのよ
うに解決していくのか。
行政の役割
・場の設定
・合意形成へ
のサポート
関係者の巻き込み
外部の専門家
によるフォロー
48
6.マネジメント人材の調達・育成
49
マネジメント人材に求められる能力
○ 志・合意形成に関する能力
地域づくりの基本的な考え方や方向性を取りま
とめ、多様な主体との認識共有や合意形成を持続
的に実施できる。
○ リーダーシップ系統の能力
○ 持続性・公益性に関する能力
地域づくりに取り組む志を持ち、
関係者との認識共有及び合意形成
を行う能力
地域資源の保全・活用に関する調査を実施し、
地域内外の人と調整しながら、ブランド化を意識
した地域づくりの実行体制を構築できる。
○ 地域マネジメント計画に関する能力
○ マネジメント系統の能力
多様な関係者をとりまとめ、必
要な人材や資金を確保し、プロ
ジェクトの立案や進行管理を行う
能力
○ マーケティング系統の能力
地域の魅力を創造することで、
来訪者の新規獲得と既存顧客維持
を行う能力
展開
地域づくりの基本的な方向性に基づき、地域の
ブランドコンセプトを体感させる、複数の事業方
針を策定できる。
○ 受入環境に関する能力
地域での滞在に関する情報や滞在プログラム等
を一元化して収集・提供する仕組みを構築できる。
○ 地域マーケティング計画に関する能力
地域ブランドの基本概念を理解し、自地域にお
いて活用できる。また、個別事業の実施結果をモ
ニタリングして、改善を実現する。
○ 滞在プログラムに関する能力
『観光地域づくり人材育成実践
ハンドブック2014』(観光
庁;H26)を基に事務局作成。
マーケティング計画に基づき、ブランドコンセ
プトを体感できる複数の滞在プログラム(経験ス
トーリー)の企画ができる。
50
OJTをコアにした育成システム
○ コト消費空間の創造や管理に資する人材の能力分野や、その育成手法については、既に先行的な整理がなされている(例:観光
地域づくり人材育成実践ハンドブック;観光庁, 2014)。
○ その中で、各分野の能力育成にかかる知識体系の整備が課題となっているが、 MOOC (Massive open online course)など
ネットを利用した国際的な教育システムの登場もあり、講師(教育的メンター)の充実を図っていくことで、知識移転型の能力
育成環境は広がっていくと期待される(例:「オンライン講座『旅館経営教室』:観光庁, 2015)。
○ 一方、高度化した社会における人材育成事業については、「経験を通じた学習」手法の有効性が指摘されている。これは、単な
るOJTではなく、(実力を少し上回る)適切な経験と、経験後の内省がセットで実施されるものであり、助言型メンターの存在
が欠かせない。
○ また、プロとして育つには、5~10年の時間が必要である。すなわち、「経験」は5年以上、安定的に提供される必要がある。
○ これらより、コト消費づくり人材の育成には、実践者となる本人だけでなく、中長期的な能力育成環境を担保する安定的な雇用、
実践的な経験を積むことの出来る実行権限と費用の確保、そして、支援するインストラクター・メンターを交えた一体的な環境
を構築することが求められる。
○ さらに、こういったマネジメント事業に、新たな人材が参入してくるためには、数年単位での短期的な雇用の場だけでなく、
OJTで得た経験と知見を活用できるキャリア・パスが描けるような人材マーケットが形成されるよう検討する必要がある。
実行権限・費用の付与
※経験学習モデル(Kolb,
1984)をベースに、知識移
転要素を加味し事務局作成
経験・実践
体系的な知識の習得
内省
評価・報酬・安定的雇用の保障
メンター
インストラクター
知識
提供
概念化
計画立案
内省の
フォロー
51
組織のPL構造(イメージ)
○ エリマネ組織の収入源は、大きく補助金、指定管理などの公共からの業務委託、B2C、B2Bの民を対象とした
自主的な収益事業、そして、会費などが存在する。
○ 事業者に徴収する分担金を導入する場合、会費は置き換えられると考えられる。また、補助金も同じ公的支出
となることや、継続性の点で主たる財源とはなりにくい。
○ これをふまえ、主たる財源を業務委託、自主的な収益事業、そして、法定外税・分担金と設定した場合、収益
の構造は以下のように整理できる。
○ 一方、コト消費空間づくりに取り組むような既存組織のPLを参照すると、総支出と人件費は比例関係にあり、
概ね30%が人件費(福利厚生費含む)に適用されている(R²=0.53、n=25、METIデータより※)。すなわち、
エリマネ組織が人材の確保と育成を行っていくためには、そのために必要とする人件費の概ね3倍規模の収益
を安定的に確保することが必要となる。
○ これらをふまえ、エリマネ組織においては、人件費の3倍を目処とした規模感にて、(税・分担金に基づく)
エリマネ協働事業、公物の管理業務、その他のB2C,B2Bサービスといった事情を適切に組み合わせていくこと
で、コト消費空間づくりを進めつつ、人材の確保と育成に取り組んでいくことが求められる。
※ この数値は、コンサルタント業(45%)よりも低く、旅館・ホテル(32%)に近く、小間物小売業(17%)、旅行業(14%)より高い(TKCデータより)
コト消費空間づくり事業
収益
公物管理業務
(指定管理 等)
委託料
エリマネ組織のPL構造モデル
事業経費
費用
事業経費
人件費
事業経費
B2Cサービス
B2Bサービス
エリマネ
協働事業
事業売上
「人材」への
経験提供財源
事業経費
人件費
法定外税
分担金
人材育成効果
事業経費
人件費
事業経費
人件費
人件費
人件費
※事業経費は固定費を含む
「人材」の
安定的雇用財源
52
人件費と税・分担金の徴収水準の関係
○ 法定外税および分担金は、人数×単価によって規定されるが、現実的に多大な負担(単価)を設定する
ことは困難であるため、実質的に、地域の観光客数や事業規模によって左右される。
○ また、前述したように、人件費は総収益の概ね30%を占める(図1)。
○ そのため、人件費総額は、以下のような数式にて示すことが出来る。
人件費総額 = 税・分担金の負担者数 × 徴収単価 ÷ 総収益の税・分担金の比率 × 0.3
⇔ 税・分担金総徴収額(負担者数 × 徴収単価)= 人件費総額 × 総収益の税・分担金の比率 ÷ 0.3
・仮に宿泊行為を対象とした法定外税を創設する場合、総収益に占める税・分担金の比率を50%とすれば、一定程度の能力を持っ
た人材(ここでは社側負担含む年収800万円※1と設定)を1人雇用するには、単価100円の場合13万人泊、単価200円の場合7万
人泊が採算ラインの目安。
・宿泊者が13万人泊以上となる市町村は全体の30%程度、7万人泊以上では40%程度(※2)とされ、都市部や宿泊型観光地の多く
が対象となり得る。
・ただし、実際にはアシスタント、メンターの人件費も必要であり、なんらかの形で日帰り客を負担者とすることが求められる。
・また、事業者や住民が負担する分担金の場合、負担者数が限定されるため、分担金を基軸に雇用を確保することは難しく、
他の財源との組み合わせが求められる。
・また、この数式をベースにして、税の徴収実績と人件費(給与水準)が比例するように関係を固定すれば、集客実績を報酬の
インセンティブとする成果報酬型の賃金体系を設計することが出来る。
※1:給与所得の平均額は400万円。社側負担を含むと500万円程度が、平均となる。
※2:市場縮小期における持続的な観光振興施策に関する考察(山田, 2014)
50,000
※総収益に占める
税・分担金の比
率を50%と設定
(
(
40,000
人
件 30,000
費
千 20,000
円
10,000
3.5
雇
用 3.0
者 2.5
数
2.0
8
人
1.5
0
y = 0.3058x
1.0
0
R² = 0.531
万 0.5
円
0.0
80,000
100,000
/
)
単価200円
)
20,000
40,000
60,000
総収入額(千円)
図1 コト消費空間づくり関連組織の総収入額と人件費の関係
単価100円
0
50,000
100,000
150,000
200,000
税・分担金:負担者数(人)
図2 税・分担金負担者数と雇用者数の関係
53
ハイ・リターンの賃金体系の設計
○ 能力ある人材のマネジメント分野への参入を促進するためには、一定水準の報酬が獲得できる
可能性があるかどうかが一つのカギ。
○ 本来、公的機関に属していない限り、賃金体系は柔軟に設計できるものであり、実際に、公共性
のある業務を行っている組織においても、成果報酬型で比較的高い賃金を受け取ることのできる
雇用形態を取っているものもある。
○ 人頭税型であれば法定外税の課税実績と比例する来訪客数や、分担金の負担者への受益と相当
程度相関する固定資産価格等のKPIに連動させるなど、マネジメント人材への賃金の高額
支給を可能にするため、責任関係を明確にした報酬システムを設計することが重要。
※ 国内事例:成果報酬型及び比較的高水準の給与を支給する公共事業関連の役職
概要
報酬体系
中心市街地活性化
タウンマネージャー
(都城商工会議所)
中核施設周辺の空き店舗対
策や商店街の魅力向上などの
事業を通して、ハード・ソフトの
両面からまちなかの活性化を
図る。
・委託料
・月額70万円
・最長4年間の
1年更新
(1)商店街組織やまちなかで活動する個人や団体との信頼関係の
構築及び活動への参画、並びに次代を担う人材の発掘、育成
(2)賑わい創出に係るソフト事業などのサポート及び協働体制の構築
(3)空き店舗への積極的・計画的テナント誘導
(4)空き店舗、空き家等の既存ストックを活用した「リノベーション
まちづくり」の推進
(5)中心市街地に関わる情報の収集及び管理、並びに発信
(6)上記に関する事務的・総括的業務
指定された職務
内容の進捗状況 等
まちなみ再生
コーディネータ
(宮崎県日南市)
空き家の増加が顕著な地域
の活性化を図るため、町並み
の再生に必要な新しい人材(人
脈)・資金・技術・考え方などを
取り入れ、活性化に向け事業を
推し進める。
・委託料
・月額約65万円
・その他調査費
年100万円
・単年度更新
(1) 飫肥の町並み再生にかるコーディネーター業務
① 飫肥地区の空き家利活用に係る地域住民との意見交換及び調整
② 旧飯田医院の利活用に関すること
③ 伝統的建造物群保存地区内の空き家利活用に関すること
④ 飫肥地区景観まちづくり重点域における空き家利活用の仕組み
構築に関すること
(2)コーディネーター業務に係る調査
(3) その他、まちなみ再生に関する事業
業務態度及び目
標の達成が見込め
ない又は成果が認
められないと判断し
た場合は契約を解
除
大阪への一層の国際会議等
の誘致を行う。
・月額60万円
・出来高払いで
最高年額200
万円以内の
ボーナス支給
MICEの誘致業務を行う。具体的な成果指標に基づきMICE誘致戦略、
戦術の企画・立案・推進に従事する。国内外関係機関との連携拡大・
強化
MICEシニア
ディレクター
((公財)大阪観光
コンベンション協会)
職務内容
成果指標
大阪に誘致できた
国際会議の数 等
54
外部人材の活用:公的人材派遣制度の整理
制度名称
担当省庁
派遣目的
人件費
派遣形態
1
地方創生人材
支援制度
内閣府地方
創生推進室
地方創生に積極的に取り
組む市町村に対し、意欲と
能力のある国家公務員や
大学研究者、民間人材を、
市町村長の補佐役として派
遣する
・ 各派遣先の自治
体の人件費規定に
基づく(例:副市長
900万~1400万等)
・常勤職員は原則2年間派
遣、非常勤職員は原則1
~2年
・派遣中のポスト:副市町
村長、幹部職員、非常勤
職員(顧問、参与等)
・派遣者:国家公務員42名、大学
15名、民間12名
・派遣先:69市町村(31市、32町、
6村)
2
地域おこし協力隊
総務省
都市地域から過疎地域等
に住民票を移動し、一定期
間、地域に居住して、地域
おこしの支援を行う制度
・1人あたり上限400
万円/ 年(報償費等
200 万 円 、 活 動 経
費200万円)
・長期派遣、概ね1年以上、
3年以下(地方公共団体の
募集内容により派遣期間
が異なる)
・地方公共団体が実施主体とな
り、公募をかけ、人材を確保する。
・ 派 遣 実 績 : 1,511 名 、 444 団 体
(平成26年)
3
新・地域再生
マネージャー
(一財)地域
総合整備財
団(ふるさと財
団)
市区町村が地域再生に取
り組もうとする際の課題へ
の対応について、その課題
解決に必要な知識、ノウハ
ウ等を有する地域再生マ
ネージャー等の外部の専門
的人材を活用できるよう必
要な経費の一部を支援する
制度
・人件費単価は、申
請団体(自治体等)
の規定に基づく
・外部人材活用助成:短期 新・地域再生マネージャーの登
派遣が基本であるが、年 録者数47名(平成27年3月時点)
間80~100日程度の派遣
の場合もある
・外部人材派遣:短期派遣、
1回につき最大2日、合計6
回(12日)の派遣
4
地域人材ネット
(地域力創造アド
バイザー事業)
総務省
地域独自の魅力や価値の
向上、地域力を高めようと
する市町村に対し、外部専
門家を招聘し、情報提供を
行うための派遣制度
外部人材活用:
・助成対象:市町村
・ 助 成 額 : 2/3 以 内
(上限700万円)
外部人材派遣:
・謝金ベース
助 成上限(事業等
の諸経費含む)
・民間専門家:
560万円/年
・自治体職員:
240万円/年
・短期派遣、ワークショップ
等の諸経費を含めること
ができる
・市町村が、外部専門家を
年度内に延べ10日以上ま
たは5回以上招聘する場
合は、所要経費に対し特
別交付税措置
対象分野・人数
・分野:地域経営改革、地場産業
発掘・ブランド化、少子化対策、
企業立地促進、定住促進、観光
振興・交流、まちなか再生、若者
自立支援、安心・安全なまちづく
り、環境保全等
・民間専門家302名、市町村職員
18名、組織12組が登録(平成27
年5月1日時点)
55
制度名称
担当省庁
派遣目的
人件費
派遣形態
対象分野・人数
5
中心市街地
商業活性化
アドバイザー
派遣事業
独立行政
法人中小
企業基盤
整備機構
・中心市街地の活性化に悩み抱え
る団体等に、専門知識、ノウハウを
もつアドバイザーを派遣する事業
・対象は、中心市街地活性化協議
会、中心市街地活性化法第15条に
基づき中心市街地活性化協議会を
立ち上げようとする組織、認定民間
中心市街地活性化事業者である中
小企業者
・50,000円/日
・派遣累計日数が
3人・日(基本計画
認定地域では5
人・日)を超えた場
合は、受益者の費
用負担(17,200円/
日)が生じる
・短期派遣(相談、助言、アド
バイス等)
・派遣日数:60人・日が上限、
無料期間3人・日(基本計画
認定地域では5人・日)
・分野:商店街、商店経営指導、
まちづくり、都市・建築計画、財務
会計、人事管理、まちなか居住、
再開発、マーケティング等
・ 135 名 の ア ド バ イ ザ ー が 登 録
(平成27年度)
6
商店街
よろず相談
アドバイザー
派遣事業
株式会社
全国商店
街支援セ
ンター
・商店街の課題解決やイベント事業
などについて、専門人材を派遣し、
商店街の活性化を図るための相談
やアドバイス支援を行うもの
・対象者:①商店街振興組合、②商
店街の事業協力組合、③法人格を
持たない商店街組織、④複数の商
店街を取りまとめている連合体組織
・38,000円/ 日
(半日19,000円)
・短期派遣(相談、助言、アド
バイス等)
・派遣上限は、①1商店街に
つき年間3日まで(中活認定
エ リ ア 外 ) 、 ② 年 間 5 日まで
(中活認定エリア内)
・分野:活性化コンセプト、テーマ
づくり、イメージづくり、景観形勢、
空き店舗対策、テナントミックス、
各種イベント、広告・宣伝、ポイン
トカード、スタンプ事業等にかか
るアドバイス
7
ミラサポ
専門家派遣
中小企業
庁
新規事業を始めたい、資金調達の
方法を知りたい、販路拡大を図りた
い、などの中小企業・小規模事業者
に対し、専門人材の派遣を行い、課
題解決に協力するもの
・ 5,150 円 / 時 間 、
30,900 円 / 日 ( 上
限)
・短期派遣(相談、助言、アド
バイス等)
・派遣回数:年間3回まで
・税理士、公認会計士、弁護士、
中小企業診断士その他公的資格
を有する者、豊富な経営支援の
実績がある者
8
地域活性化
伝道師
内閣府地
方創生推
進室
地域活性化に向けて意欲的な取組
を行おうとする地域に対して、地域
興しのスペシャリスト(地域活性化伝
道)を紹介し、指導・助言を行うもの
・6,200円/時間
・1日あたり2時間
上限(現地調査を
含む場合は3時
間)
・旅費、日当、宿泊
費は別途支給
・短期派遣(相談、助言、アド
バイス等)
・分野:観光交流、地域産業・イノ
ベーション・農商工連携、まちづく
り、地域コミュニティ・集落再生、
地域交通・情報通信、地域医療、
福祉・介護、教育、環境、農・林・
水産
・民間人材等323名登録(平成26
年5月時点)
9
農山漁村活
性化支援人
材バンク
農林水産
省(農山漁
村人材バ
ンク事務
局)
農山漁村の活性化に取り組む地域
への専門的な知見を有する専門家
を紹介する制度
・人件費単価は、
申請団体(自治体
等)の規定に基づ
く
・短期派遣(講演、商品開発
デザイン、計画づくり、助言、
アドバイス、実技指導、法律・
行政相談等)
・分野:特産品開発、地域ブラン
ド創出、交流型観光、環境、景観、
地域福祉、防災、ICT、集落運営、
栽培支援等
・登録者数は404名(平成27年2
月時点)
56
イメージ:外部人材派遣制度の活用
マネジメント人材の確保
① 公募により地元で人材を確保
② 地域おこし協力隊【総務省】で外部から地域に定着する人材を確保
マネジメント人材の育成
◎全体マネジメント(マネジメント人材を業務横断的に教育・補佐(メンター))
① 地方創生人材支援制度【内閣府】
② 中心市街地商業活性化アドバイザー派遣事業【中小企業基盤整備機構】
◎個別事業のマネジメント(マネジメント人材の能力を補完し、業務の幅を広げる)
・長期
①中心市街地商業活性化アドバイザー派遣事業【中小企業基盤整備機構;再掲】
②新・地域再生マネージャー【ふるさと財団】
・短期
③地域人材ネット【総務省】
④農山漁村活性化支援人材バンク【農林水産省】
⑤地域活性化伝道師【内閣府】
57
7.横断的取組を阻害する諸規制へのアプローチ
58
【再掲】コト消費空間づくりに係る取組の整理
アウトカム
マネジメント
組織の活動領域
個店の
コト消費
への転換
各種物販・サービス等の
コト消費産業化促進
マネジメント
組織の役割
・人材育成プログラム
・インキュベーション
・個店への経営支援
(マーケティング、融資)
→ 飲食・小売・展示
・販売・宿泊
など
アウトカム
・来訪動機を喚起
(集客イベント、バーゲン等)
マネジメント
組織の役割
魅力・感動を創造し
誘客を促進する取組
・コト消費空間づくりに
関するビジョンの策定
・各種イベント企画・実施
・地域資源の開発
・マーケティングミックス
の設計及び実施
ベースライン維持
持続可能性の担保
関係者の連携体制の構築
・滞留スポットの増加による滞
在時間の拡大
(カフェ、カルチャー、スパ等)
・低利用空間を活用した新規ビ
ジネスの創出と美観形成
(水辺・公園、公共施設、町家等)
・地域から来訪客へのコミュニ
ケーション促進
(ブランディング、広報等)
など
マネジメント
組織の役割
アウトカム
・顕在化した課題を
解決するための取組
・ベースラインの維持基準
(コスト水準)に係る
合意形成の支援
・情報インフラ(案内板など)整備
・行政・地域住民・事業者等の
コミュニケーション促進と
全体の利害調整(マネジメント)
コト消費に係るビジネスの根
底をつくる環境整備
・治安維持
・美観形成
・サービス品質維持
・交通利便性確保
・顧客への情報提供の円滑化
など
(参考)コト消費空間づくりに関する規制の事例 ①
アウトカム
各種物販・サービス等の
コト消費産業化促進
→ 飲食・小売・展示
・販売・宿泊
など
アウトカムのイメージ
実施のためプロセス
解決可能なこと
・空き家、空き店舗の活用などに
よる消費空間の拡大と、中心市
街地の環境改善
・個店レベルでの消費空間、消
費サービスの拡大
【エリアにおける全体ビジョンづくり】
・事業化をにらんだ全体ビジョン
(コト消費空間)づくり
・全体ビジョン(コト消費空間)の
実現に向けた個店の役割を共有
・空き家の空間利用は、所有者
とテナントオーナーの合意形成
及び法的な契約が成立すれば
可能となる
・開業のための事業資金の調達
の一部は、補助金等による補填
が可能となる
・コト消費のための、個店の空間
づくりや経営方法、インキュベー
ションについては、アドバイザー
等の派遣制度の活用が可能
・地域全体のビジョンづくりにも
アドバイザーの派遣制度の活用
が可能
アウトカム
・来訪動機を喚起
(集客イベント、バーゲン等)
・滞留スポットの増加による滞
在時間の拡大
(カフェ、カルチャー、スパ等)
・低利用空間を活用した新規ビ
ジネスの創出と美観形成
(水辺・公園、公共施設、町家等)
・地域から来訪客へのコミュニ
ケーション促進
(ブランディング、広報等)
など
アウトカム
コト消費に係るビジネスの根
底をつくる環境整備
・治安維持
・美観形成
・サービス品質維持
・交通利便性確保
・顧客への情報提供の円滑化
など
出典:http://www.syoutengai‐
shien.com/knowhow‐tool/knowhow/05.html
柳ヶ瀬商店街内「やながせ倉庫」
マネジメント組織と個店の取組
【マネジメント組織】
・エリア全体ビジョンづくり
・所有者との調整
・事業者誘致、起業育成
・資金調達
・地域プロモーション
【個店】
・個店の改装、店舗空間の整備
・人材研修
・顧客受入、サービス提供
・事業継続、経営管理、収益管
理
【空き家・空き店舗所有者との調整】
・空き家・空き店舗所有者との全
体ビジョン(コト消費空間)の共
有
・空き家・空き店舗の解消の必
要性を共有
・全体ビジョン(コト消費空間)に
基づく業種の受け入れ調整
・住宅化している空き店舗の解
消
【事業者の誘致・起業育成】
・全体ビジョン(コト消費空間)の
実現に寄与する事業者の誘致、
もしくは事業者の育成(起業者育
成(インキュベーション))
【開業時の資金】
・資金調達
【事業継続】
・経営面の管理(収益管理)
・消費者ニーズに基づく販売内
容と販促内容の見直し
解決に時間を要すること
・所有者に空き家・空き店舗の解
消の必要性を理解してもらうこと
・住宅化している空き店舗に、新
たな商業空間を作ることに対す
る所有者からの同意取り付け、
店舗が開店することによる住空
間への影響に関する理解の醸
成
・所有者以外が店舗経営を行う
ため、テナント経営者の交代や、
流動化が否めない(継続性の問
題)
60
(参考)コト消費空間づくりに関する規制の事例 ➁
アウトカム
各種物販・サービス等の
コト消費産業化促進
→ 飲食・小売・展示
・販売・宿泊
など
アウトカムのイメージ
関連規制
解決可能なこと
・道路等の公共空間を活用した
オープンカフェ、歩行者天国、イ
ベント実施による、魅力・感動を
創造する空間と時間の創出
【関連規制】
・道路占用許可、工作物、物件、
施設の設置と継続利用(道路法
32条、道路法施行令第7条)
・道路使用許可(道路交通法第
77条)
・河川占用許可(河川法第24条)
・工作物の設置許可(河川法第
26条)
・公園の占用許可(都市公園法
第6条)
・飲食店営業許可(食品衛生法
第52条)
・道路の占用期間は、都市再生
特別措置法の一部を改正する
法律や自治体の条例等の制定
に基づき、長期間の占用が許可
される
・大規模開発地区などで、公共
空間や民地内の準公共空間の
管理・活用を、行政との協定に
基づいて民間まちづくり団体等
が行うことが可能(都市再生特
別法74条)
・歩道上にイベント等に伴う占用
物件を設置する場合は、十分な
歩行空間(交通量が多い場所は
3.5m 以 上 、 そ の 他 の 場所 で は
2m以上)を確保。ただし、歩行者
の円滑な通行が確保される場合
は、この限りではない
アウトカム
・来訪動機を喚起
(集客イベント、バーゲン等)
・滞留スポットの増加による滞
在時間の拡大
(カフェ、カルチャー、スパ等)
・低利用空間を活用した新規ビ
ジネスの創出と美観形成
(水辺・公園、公共施設、町家等)
・地域から来訪客へのコミュニ
ケーション促進
(ブランディング、広報等)
など
アウトカム
コト消費に係るビジネスの根
底をつくる環境整備
・治安維持
・美観形成
・サービス品質維持
・交通利便性確保
・顧客への情報提供の円滑化
など
出典:http://monogatari.hokuriku‐
imageup.org/news/2012/07/11/2712/%E5%BE%A1%E6%97
%85%E5%B1%8B%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%
83%B3%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7%EF%BC%91/
御旅屋オープンカフェ
マネジメント組織と個店の取組
【マネジメント組織】
・全体計画づくり
・公共空間占用許認可
・出店規制、管理規制
・収益管理、道路占有料支払い
・プロモーション、防犯対策、安
全対策、案内等
【個店(出店者)】
・出店料支払い、規則の遵守
・コト消費サービス提供(飲食、
販売、展示、イベント、休憩等)
・財務管理
恒常的なコト消費空間との関係
●道路等公共空間の占用は、
一時的占用で行われることが一
般的であり、長期占用はその都
度申請、警察との協議等が必要
で、時間と手間を要する
●道路利用者、沿道住民との合
意形成、沿道の店舗との利害関
係の調整に、時間と労力が必要
●道路占用許可、沿道住民・店
舗との調整、出店者との調整は、
経験やノウハウの蓄積がないと
円滑な実施運営が困難であるこ
とが多く地域で指摘されている
地域で継続的に企画・運営を行
うマネジメント組織および人材が
不可欠
解決不可能なこと
・道路(道路法第15条、第16条)、
河川(河川法第9条、第10条)、
都市公園(都市公園法 第2条)
により、行政管理であり、民間管
理にはならない。
・道路占用の判断は行政行為と
され、指定管理者制度でも民間
に委託できない。
61
(参考)コト消費空間づくりに関する規制の事例 ➂
アウトカム
各種物販・サービス等の
コト消費産業化促進
→ 飲食・小売・展示
・販売・宿泊
など
アウトカムのイメージ
関連規制
解決可能なこと
・伝統的建造物を利用した宿泊
事業。風情のある空間を利用し
た滞在施設の整備と宿泊や食
事サービスの提供
【関連規制】
・営業区分(ホテル、旅館、簡易
宿所、下宿)に応じた、営業許可
(旅館業法第2条)
・客室面積、客室数、トイレ、浴
室、玄関帳場(フロント)等の規
定(旅館業法施行令第1条1~4)
・防火規定(建築基準法第22条)
・用途地域の規制:第一種・第二
種低層住居専用地域ではホテ
ル、旅館は建てられない(建築
基準法第48条)
・文化財指定、伝統的建造物群
地区内の建物の保存と、宿泊施
設整備との規制と緩和の関係
(文化財保護法第2条、旅館法
施行令第2条)
・避難経路、避難施設の設置(消
防法第8条の2の2)、消防設備
の設置(消防法第17条)
・飲食店営業許可(食品衛生法
第52条)
・歴史的な町並みの保全や都市
部との交流促進による地域活性
化を図るため、町家などの伝統
的建造物の風情を生かし、旅館
営業を行う場合には、玄関帳場
等に代替する機能を有する設備
等を備えること等により、玄関帳
場の設置を適用除外する特例を
認める。(厚生労働省、健発
0106第4号、平成22年1月6日)
アウトカム
・来訪動機を喚起
(集客イベント、バーゲン等)
・滞留スポットの増加による滞
在時間の拡大
(カフェ、カルチャー、スパ等)
・低利用空間を活用した新規ビ
ジネスの創出と美観形成
(水辺・公園、公共施設、町家等)
・地域から来訪客へのコミュニ
ケーション促進
(ブランディング、広報等)
など
アウトカム
コト消費に係るビジネスの根
底をつくる環境整備
・治安維持
・美観形成
・サービス品質維持
・交通利便性確保
・顧客への情報提供の円滑化
など
出典:http://www.kyoto‐machiya.com/index.html 庵
マネジメント組織と個店の取組
【マネジメント組織】
・エリア内の物件情報管理
・町家再生活用計画の策定
・所有者との合意形成
・事業者との意見調整
・人材育成
・地域の集客プロモーション
【個店】
・旅館業の営業許可申請
・建物の設計、改修工事
・スタッフの育成
・旅行会社との提携、プロモー
ション
・事業運営、財務管理
恒常的なコト消費空間との関係
●文化財建築をコト消費空間に
転換していくための、町家の特
性の保存と宿泊空間の整備との
調整
●所有 者との合 意 形成、所有
者・事業者による維持管理
解決不可能(困難)なこと
・文化財建築は、建築基準法上
は、既存不適格建築物となるこ
とが多く、防火や耐震性への対
策を含む増改築の際、大規模改
修が必要とされる場合は、町家
の特性が失われてしまう
・改修コストが高いため、相当規
模の事業立ち上げ資金の確保
が必要
・小規模な運営となるため、事業
運営の収支見通し、財政基盤が
安定しないと、良い人材が確保
できない
62
(参考)コト消費空間づくりに関する規制の事例 ④
アウトカム
各種物販・サービス等の
コト消費産業化促進
→ 飲食・小売・展示
・販売・宿泊
など
アウトカムのイメージ
マネジメント組織と個店の取組
・食とまちの空間(店舗含む)を
一体的に楽しむ「街バル」の実
施と集客プロモーション
・店舗集積による集客システム
【マネジメント組織】
・イベントの企画、参加者募集
・規則策定(料金、サービス等)
・イベントのプロモーション活動
・公共空間占用許可(必要な時)
・運営管理、スタッフ人員管理
・清掃活動、衛生管理、治安維
持等
アウトカム
・来訪動機を喚起
(集客イベント、バーゲン等)
・滞留スポットの増加による滞
在時間の拡大
(カフェ、カルチャー、スパ等)
・低利用空間を活用した新規ビ
ジネスの創出と美観形成
(水辺・公園、公共施設、町家等)
・地域から来訪客へのコミュニ
ケーション促進
(ブランディング、広報等)
など
アウトカム
コト消費に係るビジネスの根
底をつくる環境整備
・治安維持
・美観形成
・サービス品質維持
・交通利便性確保
・顧客への情報提供の円滑化
など
出典:http://www.hasuda‐
machibar.com/?page_id=718
蓮田市 2014年はすだ街バル
【個店】
・イベント参加、サービス提供
・規則の遵守
・協賛金(会費等)
・個店のプロモーション
・収益管理
関連規制
公共空間を使うイベントを開催
する場合は、以下が必要。
・道路占用許可、工作物、物件、
施設の設置と利用(道路法32条、
道路法施行令第7条)
・道路使用許可(道路交通法第
77条)
・飲食店営業許可(食品衛生法
第52条)
課題等
・個店レベルで提供されるサービ
スの質の向上
・街バル参加店以外の訪問先の
充実による滞在と消費の拡大
アウトカムのイメージ
マネジメント組織と個店の取組
実施の留意点
・地域に潜在する資源・魅力を発
掘し、地域のプロダクトとして売
り出す(地域ブランディング)
【マネジメント組織】
・地域資源(ヒト・コト・モノ)のス
トーリー化、プロモーションツー
ル(WEB、ポスター等)
・個店との連携、意見調整
・マーケティングミックスとプロ
モーション計画策定
・ブランディングイメージと、実際
の街、ヒトのギャップを小さくする
・ 来 訪客と の 直接 的な コ ミ ュ ニ
ケーションや、SNS等による継続
的なコミュニケーションで、口コミ
の拡大や、地域へのリピーター
客を増加させる
【個店】
・各個店のコト消費サービス、ス
トーリーの情報提供
・個店のプロモーション(SNS等)
による地域プロモーションへの
貢献
・来訪客の受入、ホスピタリティ
課題等
・地域のストーリーを見つけ出し、
カタチにする専門的支援(人材
派遣等)が必要
・広報媒体のコンテンツ作成を地
域ぐるみで行うための個店の経
費負担
63
(参考)コト消費空間づくりに関する規制の事例 ⑤
アウトカムのイメージ
マネジメント組織と個店の取組
留意点・課題等
・地域の治安を守る「防犯活動」
や「清掃活動」は、来訪者の安心
と満足度を向上させる
【マネジメント組織】
・防犯、清掃活動の計画策定、
協力呼びかけ
・人材雇用、ボランティア確保
・人件費等の支払い、保険の加
入など
・活動範囲の規定、活動管理、
人員ローテーション管理等
・防犯活動では、警察と権限が
異なるため、例えば加害行為は
しないなど、行動規範を明確に
する必要がある
・防犯パトロール等の不慮の事
故やケガに対応するための保険
の加入など
【個店】
・清掃活動、防犯活動への協力
(必要に応じた人材の提供等)
・費用負担(会費、負担金など)
・防犯活動では、警察と同等の
権限を持つことは不可能なため、
あくまで防犯パトロール的な活
動となる。
アウトカム
各種物販・サービス等の
コト消費産業化促進
→ 飲食・小売・展示
・販売・宿泊
など
アウトカム
・来訪動機を喚起
(集客イベント、バーゲン等)
・滞留スポットの増加による滞
在時間の拡大
(カフェ、カルチャー、スパ等)
・低利用空間を活用した新規ビ
ジネスの創出と美観形成
出典:
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h16/01_honpe
n/hm41400.html
NPO法人 日本ガーディアン・エンジェルス
(水辺・公園、公共施設、町家等)
アウトカムのイメージ
マネジメント組織と個店の取組
・地域から来訪客へのコミュニ
ケーション促進
・広報物、情報インフラ、案内板
等の整備
【マネジメント組織】
・広報物、案内板等の設置計画
の立案
・屋外広告物、道路占用許可等
の申請
・広報物、案内板等の作成、設
置、維持管理
(ブランディング、広報等)
など
アウトカム
コト消費に係るビジネスの根
底をつくる環境整備
・治安維持
・美観形成
・サービス品質維持
・交通利便性確保
・顧客への情報提供の円滑化
など
不可能なこと
出典:
http://www.mlit.go.jp/road/sisaku/senyo/se
nyo.html
札幌駅・大通駅周辺の広告塔の設置
【個店】
・広報物、案内板の情報確認、
作成への協力
・作成、維持管理にかかる費用
負担(協賛金など)
関連規制
・屋外広告物法(第3条):都市計
画法の用途地域、文化財保護法
により指定された建物及び地区、
景観法による景観重要建造物
等に近接した広告物の表示や設
置規制
・道路占用許可、工作物、物件、
施設の設置と継続利用(道路法
32条、道路法施行令第7条)
不可能なこと
・設置対象及び周辺の景観等に
配慮し、掲載内容、デザイン、色
彩、大きさ等を調整し、管理主体
からの許認可を得られれば、特
に不可能なことはない
64
整理:マネジメント組織に求められる機能
役割
ビジョンづくり
空間づくり
にぎわいづくり
活動範囲
個店のコト消費への
転換
魅力・感動を創造し
誘客を促進する
取組
ベースライン維持
持続可能性の担保
関係者の連携体制
の構築
ヒトづくり
連携体制構築
財源管理・運用
・エリア全体ビジョン
策定、個店の役割
の共有
・空き家等情報管理、
テナント等誘致
・個店のコト消費空
間づくりへの助言、
支援
・個店のサービス向
上への支援
・個店集積を束ねた
プロモーション活動
・コト消費空間づくり
への個店のへの参
加促進、合意形成
・個店の人材育成、
経営支援
・インキュベーション
・起業や経営促進の
ための融資
・個店支援のための
補助金等受入
・コト消費空間づくり
のビジョン策定
・イベントや集客事
業の計画づくり(規
模、エリア、期間、
予算等)
・イベント等のため
の公共空間占用許
認可申請
・地域資源の開発
・イ ベ ン ト 等の た め
の防犯、清掃活動
・イベント等実施
・情報発信
・マーケティングミッ
クスの設計・実施
・地 域 ス ト ー リ ー 策
定と地域プロモー
ション
・店舗、住民、出店
者、事業者等との合
意形成、関係構築
・地域一体のイベン
ト実施
・自治体等との協力
関係構築
・業務受託、事業資
金受入
・イベント等の運営
規則に基づく、参加
料徴収と財務管理
・美観形成、サービ
ス維持等の計画づく
り
・情報インフラ整備、
維持管理
・屋外広告物設置許
可、道路占用許可
・美観整備、日常の
清掃活動
・にぎわいづくりを支
える治安維持活動
の実施・運営
・地域の利害関係調
整、合意形成
・地域住民、ボラン
ティアとの協力
・自治体等との協力
関係構築
・広告料徴収と管理
・地域住民、事業者
等が負担する財源
の徴収・管理
・清掃、治安維持等
人件費支払い
65
事業活動を阻害する諸規制への対応の方向性
○ 「法律上」できる(明文の規制が存在しない)ことと、「実際に」できることには大きな
ギャップが存在。それは、曖昧な規定による現場担当者の消極的な判断、手続など規制をクリ
アするための実質的な負担が大きいことなどに起因する。
○ また、条例制定により、法律の「上乗せ」として、自治体が規制を強化している場合がある。
※ 建築基準法、食品衛生法 等
○ コト消費空間を収益化する個店の取組や、空き店舗の利活用、公地と民地を一体的に活用する
イベント開催などにおいては、行政・規制機関だけでなく、民間ベースでの協力が不可欠。
○ 規制機関・民間事業者等へのコミュニケーション能力が必要。
・規制機関の現場担当者への適切な情報提供
・省力化するための運用ルール(手続の自動化)の設定
・最適な規制水準となるよう働きかけ
・民間の関係者との信頼関係構築
・民間事業者間における拘束力のあるルールの設定
・官民の利害関係者を巻き込んだ協議会の設定
⇒ 地域の代表性と法律等に基づく公的な位置づけを組織に付与することが必要。
マネジメント組織に必要な3要件
① 横断的な取組みを実現化する経験と、多様な関係者とのコミュニケーション能力を備えた人材確保
② 公的な仕組みを活用し、このような人材を中長期的かつ安定的に雇用して、事業を実施できる財源の確保
③ 調達した財源の使途を能動的に決定し、官民の多様な関係者と事業を行うための、
地域を代表する公的な位置づけと権限の付与
66
諸規制に対する組織のアプローチ(イメージ)
規制
規制(障害)の分類
組織のアプローチ
現行の法律で
禁止されている
現行の法制度では
実施が不可能
Ex. 既存不適格建物の活用
法律の壁
条例の上乗せにより
より厳しい規制に
Ex. 旅館業法・食品衛生法
柔軟性
現行の法制度で
実施が可能
都道府県へ条例上
乗せ部分の規制緩和
に関する働きかけ
現場担当者へ一般的
な運用ルール及び他地
域における先行事例等
を説明して働きかけ
法律上可能だが
現場の解釈・裁量に
より実施が困難
Ex. 前例のない地域での公物占用許可
法律上可能だが
手続等により
実質的に困難
Ex. 長期・恒常的な道路占用
運用
条例の壁
政府機関(規制改
革会議等)へ規制緩
和に関する働きかけ
法律上可能で
実行が容易
手続等の負担軽減の
ため、運用ルール設定
を規制機関に働きかけ
現場の壁
すぐに実行! 67
8.コト消費空間づくり促進のための政策の方向性
68
① 先進的地域での導入支援
○ 本研究会は、法律や税制といった現行制度の中で、どのようにマネジメント体制(協同システ
ム)を構築するのか、その手法について検討してきた。
○ この手法が広く活用されるためには、第1回でプレゼンをいただいた倶知安町など、意欲的な
地域が先進的に取組、他地域に展開・波及させていくことが重要。
○ 地域の特性(目指すべきコト消費空間のビジョン・顕在化している課題 等)を踏まえ、
関係者の理解を得る取組を進めつつ、地域ごとにオーダーメイドで作成することが必要。
○ 政府としては、このような地域の取組を支援するため、専門人材の調達、合意形成を円滑に
進めるための手法の導入、税・分担金条例の設計・制定、インセンティブとなるハード整備や
スタートアップの資金調達などを促進するための予算措置等の施策を検討していく必要がある。
北海道倶知安町が抱える課題
○ 不動産売買による地元住民の減少と
外国人不在不動産所有者の増加
○ 町内会会員数減少
○ 街灯、ゴミステーション、防犯、
除雪、草刈り等の住民主導の
公共サービスの質の低下
○ 観光地としての魅力低下
○ 地域住民の負担増
地域住民の求める
エリアマネジメント
69
(参考)研究会における議論とその実践
4月
委員会における検討
地域のサービス産業活性化に資するサービス空間(集積)をマネジメントする
持続可能な組織の創立のため、地域の抱える合意形成や制度に関わる具体的課題
をヒアリング等を通じて検討
7月初旬
研究会
取りまとめ
実践する地域(  湯沢町、倶知安町 等)のフォロー
委員会での議論を取りまとめ、既存の制度活用のための具体的指針及び望ましい
制度のあり方等について提言。
→ 本研究会で提案する手法の活用の有効性を広く周知し、このような手法の活用に
意欲的な地域に入り込み、合意形成に至るまでフォロー
来年
3月末
70
② 既存の政策との連携
○ コト消費空間づくりに係るマネジメントは、まちづくりや観光振興・商店街振興にも適用可能。
○ 当該分野においては、これまでも、マネジメント組織の創出や広域連携の促進のための施策が
関係省庁により実施されてきた。このような予算事業は、協同システムの右辺のスタートアップ
を支援する取組として、特に中小規模の地域におけるコト消費空間づくりにとって重要。
(ex.)都市再生推進法人、中心市街地整備推進機構、商店街振興組合、観光地域づくりPF
○ コト消費空間づくりは、このような施策を活用して創設された組織を中核として、地域の関係者
がガバナンスを効かせながら持続的に事業活動を進めていくためのシステムへと転換させる。
イニシャル・コスト →
観光圏事業
国が措置
ランニング・コスト →
認定中活計画
に対する支援
TMO
観光地域
づくりPF
観光地域
づくりPF
都市再生
推進法人
民間まちづくり
活動促進・普及
啓発事業
地域(関係者)で確保
TMO
TMO
まちづくり会社
まちづくり会社
まちづくり会社
都市再生
推進法人
商店街組織
商店街組織
地域自立商業
促進事業
地域独自の財源を調達することで、事業の
継続性・安定性を担保するとともに、受益者
(負担者)からのガバナンスが効くシステム
を導入。
71
③ 目指すべきコト消費空間づくりの将来像
○ 現行法の枠内でも、公的な徴収制度を活用して、マネジメント組織を活動することは一応可能。
○ しかし、地域の活動を国が法的にサポートする仕組みが整備されていないため、分担金の事実上
の合意形成のハードルが高く、 自治体の訴訟リスクを完全に排除することが出来ない、特定地
域の固定資産税の不均一課税や組織財源に使途を限定した課税が不可能等、現行法には限界があ
ることも事実。
○ 域内事業者の新陳代謝や効率的な開発を阻害する平等原則に縛られることなく、地域(自治体)
がエリアを限定した集中的な再開発を行うことが出来るよう、エリアからエリアへの資金循環・
再投資を可能とするシステムを構築するため、更なる研究が必要。
イメージ
【組織活動の支援イメージ】
パス・スルー
○ マネジメント組織の代表性を公的に位置づけ
事業計画認定
公的資金支出
・ 地域の公物の一元的な管理を可能に
・規制機関や事業者等が参画する協議会の設置
○ 公物・私物の利活用に対する諸規制の合理化
自治体
複数年の
事業計画申請
受益者への不均一な課税
↑↓
合意形成の意思表示
マネジメント組織
・集中的な開発・再投資
・横断的な運営管理
・主導的な利害調整
・規制機関へのアプローチ
コト消費空間
○ 新たなシステムの導入への挑戦を応援する
国の予算措置・地方創生交付金等の重点配分
○ 商業集積を促進するインセンティブ税制の設計
○ コト消費空間として、
集中的に開発・管理
するエリアの設定
72
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