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再生医療等製品の品質と 製造管理及び品質管理における要点

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再生医療等製品の品質と 製造管理及び品質管理における要点
本発表は演者の個人的見解を示すものであり、所属する組織の公式な見解ではないことをご留意ください。
発表に関連し、開示すべきCOI関係にある企業などはありません。
再生医療等製品の品質と
製造管理及び品質管理における要点
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
再生医療製品等審査部
尾山 和信
2015/3/19
第14回日本再生医療学会総会
本日の内容
1. 再生医療等製品の品質について
2. 製造管理及び品質管理について
2
本日の内容
1. 再生医療等製品の品質について
 再生医療等製品の特徴
 品質の基本の考え方
 CMC研究開発での留意点
2. 製造管理及び品質管理について
3
再生医療等製品の例
コラーゲンゲル内で
細胞を培養する。
自家軟骨細胞
【細胞を使って身体の構造等の再建等を行う例:軟骨再
生製品】
自家軟骨細胞を生体外のコラーゲンゲル中にて、培養
した物。外傷等により欠損した軟骨部位に移植し、軟骨
細胞-コラーゲンゲル等からなる軟骨様組織により、軟
骨機能の修復が期待される。
軟骨
混合
培養
<患者の体内に投与>
アテロコラーゲン
【細胞を使って疾病の治療を行う例:癌免疫製品】
他家線維芽細胞
免疫活性化物質を表面に 癌 抗 原 遺 伝 子 か ら癌
結合させ、癌抗原遺伝子を 抗原ペプチドを発現さ
細胞内に取り込ませる。
せる。
免疫細胞を活性化する物質及び癌抗原ペプチ
ドを含む細胞により、癌免疫機能を増強させる
混合
ことで、癌治療効果が期待される。
免疫活性化物質
遺伝子
※この製品では遺伝子導入も行っている。
培養
導入
癌抗原遺伝子
癌抗原ペプチド
【遺伝子治療の例:遺伝性疾患治療製品】
ウイルスに先天的に欠損した遺伝子(例えば、
アデノシンデアミナーゼ遺伝子など)を保持さ
せ、患者に投与した後に、導入遺伝子が発現
することで、遺伝性疾患の治療効果が期待さ
れる。
アデノウイルス
ウイルスベクター
遺伝子
操作
欠損酵素
遺伝子
<患者の体内に投与>
患者に投与した後、体内
で、遺伝子から酵素が発
現する。
細胞を介
して発現
欠損酵素
<患者の体内に投与>
再生医療等製品の品質特性
評価項目の例
試験方法の例
(試験の位置づけに応じてケースバイケース)
確認試験
性状、細胞表現型、分化能、細胞種等
細胞の純度試験
細胞表現型、異常増殖等
製造工程由来不純物
製造工程由来物質(血清由来アルブミン、抗生物
質等)
目的外生理活性不純物 生理活性物質等


安全性
染色体異常、軟寒天コロニー形成能、ウイルス、
マイコプラズマ、エンドトキシン、無菌等
力価試験、効能効果試
験、力学的適合性
タンパク質発現、生理活性物質の分泌能、分化
能、細胞表現型、細胞増殖能、耐久性等
含量
細胞数、細胞生存率等
有効性及び安全性に関係のある品質特性が重要品質特性になり得るが、細胞を含む製品でどのような
品質特性が該当するのか、考え方の整理、議論が必要。
特に、力価試験ではどのような品質特性の項目を設定し、規格値を設ければよいか、悩ましいところ。
5
再生医療等製品の特徴





生きた細胞等を含む製品。
有効性及び安全性に関する品質特性が特定しづらい。
不均一性が高い。
試験法のばらつきが大きい。
適切な標準品がない。
⇒ 最終製品に対する試験で品質は確保できるか?
6
品質のつくり込み
バイオ医薬品のイメージ
再生医療等製品のイメージ
原材料・工程変動
原材料・工程変動
工程内管理
特性解析
規格
工程内管理
特性解析
規格


規格で品質をすべて把握することは困難。再生医療等製品ではその特徴から限られた情報しか得られない。
製造工程のコントロールにより品質を管理する考え方が重要となる。
7
品質とは何か
品質とは、「要求事項が達成されているか判断するための特性全体」
医薬品規制における「品質」とは、物質としての医薬品であり、医薬品の構造、特性、
製造方法、規格及び試験方法、安定性にて記述されるもの。
ISO9000:
品質とは、「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」と定義されて
いる。特性とは、「そのものを識別するための性質」のこと。
JIS Z 8101:
品質とは、「品物またはサービスが、使用目的を満たしているかどうかを決定するため
の評価の対象となる固有の性質・性能の全体」。品質は品質特性によって構成される。



効果が望めないならクスリになり得ない(有効性)
効果があってもそれ以上に危険であれば使用できない(安全性)
有効かつ安全と確認できたものをつくる必要がある(品質)
品質は有効性と安全性の土台となるもの
(安全性と有効性を確保するための必須要件)
8
品質を確保することの意味
投与前に評価は不可能
安全性
有効性
効果、信頼性
を支える
効果、信頼性
を支える
品質
投与前に、製造毎に確認が可能
保証されたモノ
有効性及び安全性に関連す
る重要な品質特性は事前に
特定されている必要がある
一般的な研究開発の全体像
【一般的な開発の道筋】
非臨床
安全性
試験
目的とする
製品の特性
臨床試験
Phase 1
Phase 2
Phase 3
承
認
市販後
設計品質と製品品質の確立が重要
CMC(chemistry, Manufacturing, and Control)
治験製品の管理戦略
治験製品の管理戦略
品質特性の抽出
治験製品の管理戦略
重要品質特性の決定
プロセスパラメーターの検討
製品品質の
管理戦略/
品質照査
重要パラメーターの決定
品質の一貫性
品質の同等性
知識管理/品質リスクマネジメント
治験製品の製造管理及び品質管理
市販製品のGCTP
再生医療等製品のライフサイクル
※あくまでも個人のイメージ
被験者の保護
治験製品の保証レベル
治験製品の
ベリフィケーション
求められる
保証レベル
Phase 1

バリデーション
GCTP調査
再生医療等製品
医薬品

治験製品の
ベリフィケーション
治験製品の
ベリフィケーション
バリデーション
GCTP調査
Phase 2
市販後の継続した
ベリフィケーション
Phase 3
開発段階
再生医療製品の特性から開発後期での大きな変更は同等性の観点からリスクが大きい。
条件付き期限付承認であれば、本承認までに管理戦略の妥当性の確認が求められ、通常の医薬品
とは製品ライフサイクルの対応の相場感が異なる。
11
知識管理から管理戦略へ
研究開発・臨床研究
医薬品開発
グルー
プの知
識
個人の
知識
組織の
知識
商業生産
・研究開発レポート
・ベリフィケーションに必要な知識
・バリデーションに必要な知識
・製造管理・品質管理の文書
・技術移管に必要な知識
・品質リスクマネジメント
⇒ 知識の蓄積
⇒ 管理戦略の構築
⇒ 製造管理・品質管理の構築
12
管理戦略の概念
最新の製品及び製造工程の理解から導かれる、製造プロセスの稼働性能及び製品
品質を保証する計画された管理の一式。管理は、原薬及び製剤の原材料及び構成
資材に関連するパラメータ及び特性、設備及び装置の運転条件、工程管理、完成品
規格及び関連するモニタリング並びに管理の方法及び頻度を含み得る。(ICH Q10)
製造工程の上流から下流、原料から製品においてど
のように管理すれば、いつでも期待する結果が得られ
るか、そのために必要となる管理のひとセットを戦略
的に(系統立てて)設計する。
例えば、
 工程に関する知識・理解を基盤に確立された工程管理の方法論
 重要管理ポイントの手順および監視(モニタリング)方法
 原料管理の項目、中間体管理の項目
 工程内管理試験のタイミング
13
本日の内容
1. 再生医療等製品の品質について
2. 製造管理及び品質管理について
 GMPとGCTP
 治験製品の製造管理及び品質管理
14
再生医療等製品の品質管理に関わる省令
●平成26 年8月12 日付薬食発0812 第11 号厚生労働省医薬食品局長通知「再生医療等製品
に係る構造設備規則、GCTP省令及びGQP省令について」
●平成26 年10月9日付薬食発1009 第1号厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課超通
知「再生医療等製品に係る構造設備規則、GCTP省令及びGQP省令の取扱いについて」
医薬品規制と同様に3省令が規定
・構造設備規則:
製造業の許可要件、製造所の構造設備に関する規定
・製造管理及び品質管理の基準:
再生医療等製品の承認要件
製造所の製造工程における製造管理及び品質管理の方法に関する規定
・品質管理の基準:
製造販売業の許可要件、製造販売業者の再生医療等製品に対する品質管理の基準
15
そもそもGMPとは何か
GMP省令(Good Manufacturing Practice)
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準
に関する省令(平成16年厚生労働省令第179号)
GMPの三大原則
◆人為的ミスを最少限にすること
◆汚染および品質低下を最少限にすること
◆信頼性の高い品質保証システムを構築すること
すでに確立した製品と同等の品質の製品
を恒常的に造ること
16
製品品質の科学的な理解
製品品質
設計品質
製法
製造されるべ
き製品品質
実際に製造さ
れた製品品質
プロセス
原料
設備
製造・品質管理
品質リスクマネジメント/知識管理
製造される品質は、各種の要因により影響を受け、変動することになる。
 プロセスにおける変動要因を把握、管理できるようにすることが、製造方法の確立、
品質の管理につながる。

17
品質リスクの管理について






必ず品質リスクが存在する。
品質リスクは、その潜在的要因による危害(健康被害、品質不
良等)の起こりやすさとそれが発生したときの重大性の組み合
わせで考える。
すなわち、重大性×発生頻度×検出力により評価されるもの。
リスクはゼロにはできないが、低減することは可能である。
方法は何でも良いが、リスクを検出し、そのリスクを低減化でき
ることが必要である。
好ましくない結果、問題が発生してからではなく、未然に防ぐ手
立てを講じる考え方が重要である。
18
GCTP省令について
市販用の製造管理及び品質管
理を適切に実施するための運用
方法の枠組みを示したもの
Good Gene, Cellular and Tissue-based products Manufacturing Practice
再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する
省令(平成26年厚生労働省令第93号)












第1条
第2条
第3条
第4条
第5条
第6条
第7条
第8条
第9条
第10条
第11条
第12条
趣旨
定義
適用の範囲
品質リスクマネジメント
製造部門及び品質部門
製造管理者
職員
製品標準書
手順書
構造設備
製造管理
品質管理











第13条 製造所からの出荷の管理
第14条 バリデーション又はベリフィケーション
第15条 製品の品質の照査
第16条 変更の管理
第17条 逸脱の管理
第18条 品質等に関する情報及び品質不
良等の処理
第19条 回収処理
第20条 自己点検
第21条 教育訓練
第22条 文書及び記録の管理
第23条 記録の保管の特例
※下線:GCTPで新たに規定された事項、二重波線:再生医療等製品の特性を踏まえた事項が考慮
19
GCTP省令の運用イメージ
製品品質の高
いレベルでの
実現の枠組み
管理監督のシステム
(組織体制、出荷管理、逸脱管理、変更管理、自己点検、
教育訓練、品質情報の管理、回収処置)
GCTP省令の運用においては、実効性を
もった堅牢な仕組みを構築することが重要。
条文の要件が達成できるようGCTPの活動
をプロセスとして管理する手法が効果的。
製品品質の照査
バリデーション/ベリフィケーション
製造管理のシステム
原材料管理のシステム
(製造プロセスの稼働性能、無菌保証、
製品品質のモニタリング)
品質管理のシステム
構造設備のシステム
(試験室管理)
(適格性確認、校正、メンテナンス)
文書管理のシステム(製品標準書、基準書、手順書、記録)
承認書における規定を反映したもの
品質リスクマネジメント/知識管理
20
バリデーション/ベリフィケーション
平成26 年10月9日付薬食発1009 第1号厚生労働省医薬食品局監
視指導・麻薬対策課超通知「再生医療等製品に係る構造設備
規則、GCTP省令及びGQP省令の取扱いについて」


GCTP省令上の運用の枠組み
バリデーション等の目的
製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理
の方法が期待される結果を与えることを検証し、又は与えたことを確認し
、これを文書とすることによって、目的とする品質に適合する製品を恒常
的に製造できるようにすることを目的とするものである。

バリデーション等の実施
・適格性評価(設備、システム又は装置の設計時適格性、据付時適格
性、運転時適格性、性能適格性の一連の評価)
・プロセスバリデーション/ベリフィケーション
・継続的に行うベリフィケーション
21
バリデーションとベリフィケーションの違い
プロセスバリデーション

工業化研究の結果や類似製品の製造実績等に基づき、あらかじめ特定した製品の品質に影響を及ぼす変動要因(原料及び資
材の物性、操作条件等)を考慮した上で設定した許容条件の下で稼動する工程が、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製
造するために妥当であることを確認し、文書化すること。検証の方法は、原則、実生産規模での製造スケールとして、3ロット又は製
造番号の繰り返し又はそれと同等の以上の手法とする。
⇒ 変動因子を特定された後に、製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を
与えるか3ロットで検証する。(事前の検証)
ベリフィケーション

例えばヒト(自己)細胞加工製品に係る製品のように、倫理上の理由による検体の量的制限、技術的限界等のため、プロセスバ
リデーションの実施が困難な製造工程(試験的検体の利用等により適切にプロセスバリデーションを実施しうる製造工程を除く。)
に関し、実生産において、あらかじめ特定した製品の品質に影響を及ぼす変動要因が許容条件の範囲内にある等、製造手順等が
期待される結果を与えたことを各ロット番号又は製造番号の製品ごとに確認し、文書化することをいう。
なお、ベリフィケーションの適用対象となる製品の製造工程に関しては、原則として、引き続きベリフィケーションを行うことが求め
られ、再バリデーション(当該製造工程を構成する設備、システム及び装置の適格性評価並びに当該製造工程に係る洗浄作業の
洗浄バリデーションを除く。)を行うことは求められないこと。
⇒
変動要因は十分に特定されてはないものの、期待される品質が得られたことを手順
書、計画書、記録、報告書等から確認しその妥当性や適切性の評価確認のために行う。
(製造毎の確認)
実施の際の前提として、確認のための適切な計画に基づいたパラメータ等の設定があり、その上での結果とし
て評価し、確認されることを意図している。
22
ベリフィケーションの運用のイメージ
製品の作用機序・特性
臨床試験の成績
重要品質特性
検証ロットでの確認
市販用製造毎での確認
計画書
報告書
最終的な結果
管理戦略
製造方法、プロセスの重要な条件、工程
内管理
原料、中間体の規格
製品の規格



背景情報(知識管理)





実験検討結果
試作製造経験
品質リスクマネジメント
管理の手法
会議等での議論

整合性の
評価



製造記録
原料・中間体の試験記録
工程管理の試験記録
出荷判定の記録
堅牢でバリデートされた製造工程の確立に向けた
活動(GCTPにおける製品の品質の照査の実施)
 重要品質特性の理解
 工程パラメーターと重要品質特性の関係性の理解
 変動要因の特定と管理方法の構築
⇒ 継続的な改善の実施、管理戦略の見直し
23
治験製品の製造管理及び品質管理
治験製品の特徴





開発段階の初期では、有効性及び安全性が確立していない。
製造毎にスケール、製造方法、操作方法が変更され得る(手作業、マ
ニュアル操作となりがち)。
限定的に管理された環境、他品目・多目的の設備で製造される。
製造が定常的でなく、単発かつ不定期であり、研究者も製造作業として
参画することが多い(逸脱、ヒューマンエラーのリスクが高い)。
試験方法、評価項目が発展途上である。
GCTPと考え方の違いは?
治験製品と市販後製品との違いは製造上の違い、すなわち、規
格、試験方法、製造方法が確立していないことに起因する。
24
開発段階に応じたGCTPのイメージ
被験者の保護
※あくまでもGCTPを開発段階で運用する場合のイメージ
治験製品の保証レベル
求められる
保証レベル
開発初期では得られた知
識が限られるため、実施
できる保証レベルは低い
ものの、柔軟に対応する
ことで求められる品質の
レベルを確保している。
Phase 1
Phase 2
Phase 3
開発段階
開発段階では品質の確立の発展途上である。したがって、通常の製品製造と同じく一律的なGCTPの
運用は不合理であり、時には不適切となりえる。そのためにも、より科学的でリスクに基づいた運用が
必要。
25
最後に



品質の基本的の考え方、品質リスクマネジメント、知識管理、
管理戦略の概念について理解できましたでしょうか。
治験製品及び市販製品の製造管理及び品質管理の運用に
おいては、記載された基準に合うか否かを問うのではなく、自
らの管理においてその品質リスクが許容できるか、構築した
管理戦略が妥当性かを問うことが、必要です。
開発当初から知識管理の必要性、リスク管理の手法の重要
性を十分に理解することは、迅速な開発につながるものと考
えます。
26
ご清聴ありがとうございました
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
再生医療製品等審査部
http://www.pmda.go.jp/(日本語)
http://www.pmda.go.jp/english/index.html(英語)
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