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量産現場におけるはんだ付け技術 基本的な認識 リフロー②

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量産現場におけるはんだ付け技術 基本的な認識 リフロー②
HiROX Technical Report
SMT
Vol.3
量産現場におけるはんだ付け技術
基本的な認識 リフロー②
実装技術アドバイザー / 河合 一男
1. 何の疑問も抱かない現場
まま適応させており、基板や部品、設計、装置などすべての
最近の量産現場の多くは規格管理一辺倒で、誤解を恐れ
用いて何も疑問を抱かない、という状態だった。
ずにいえば、楽しくない。現場担当者はいわれたことのみ
中国の沿岸部においては作業員の確保が問題になってお
の作業に終始している状況である。
り、単純な手作業についてはロボット化の要求が強いこと
筆者は先月、中国のローカルや韓国の大手企業の工場訪
から、ロボットメーカーが急激に増えている。海外企業は
問・指導する機会があった。現場は基本的には日本と同じ
他にも賃金や優遇税などの直接コストに加え、労働者の雇
で、大手の工場であっても規格通りの作業であるが、品質に
用条件の変更などで従来のメリットが失われてきている。
関する基本的な取り組みは見られず、特にボイドに関して
特に韓国企業は日本よりもコストメリットが厳しく、国内
は認識が低いように見受けられた。
回帰や、さらにコストの低い国へと移転している。
良不良の判定基準が明確でなく、表面実装における温度
しかし、工場を移転させるたびに品質が不安定になって
プロファイルははんだメーカーの推奨プロファイルをその
しまうため、結果として、装置と規格頼みの製造になること
フィレット光沢不良
飛散
光沢なし
条件がことなる現場であっても、同じ温度プロファイルを
光沢不足
残渣に切れがない
フィレットに段差
フィレットが粗い
広がり不足
写真 1
—1—
フィレット表面が粗い
はんだボール
サイドボール
HiROX Technical Report SMT
Vol.3
量産現場におけるはんだ付け技術
基本的な認識 リフロー②
になる。
ものづくりは何かも規格で管理するのではなく、現場の
写真 1(前頁)は、国内外(中国・韓国・東南アジア、etc)
レベルに合わせて、1 〜 2 割は現場の判断や創意工夫を導
のメーカーの実装品で、外観検査機では大半が良品として
入させることによって、意識改革ができる他、同時に作業の
市場出荷されているものであるが、大半はボイドの問題を
楽しさを体験させることで、結果としてコストと品質の改
かかえている。同じ基板上でも、検査場所によっては熱風
善に繋がる。
による影響がことなる(基板外側、基板中央、スリット部、
たとえば筆者が以前、現場指導をした海外工場では、私が
etc)
。自動外観検査機を用いる場合は、特に設計を考慮し
訪問すると技術者がラインで自分の課題を用意して待って
た観察ポイントを選ぶ必要がある。たった 1 ポイントの見
いるものである。それも、単なる質問ではなく、自分の判断
①
落としが、市場トラブルに繋がりかねないからである。
に対する確認が主で、それに対しての確認実験方法や再現
写真 2 は、上記の基板の改善活動による成果である。言
②
実験方法の指導になっている。この過程で自己解析方法に
葉の通じない相手にも正しく理解してもらうためには、た
ついて学んでいるのである。
とえば動画を多用して原理を理解してもらうことで良否の
2. 基板不良の判定事例
判定と修正方法を体現させる必要がある。
また、適切な温度プロファイルによるセルフアライメン
ト効果を現場に体験させることで、ライン管理のポイント
基板ランドにはんだ弾きが見られる場合は、通常、基板の
を再検討させる。また、現場は絶えず作業者が変わること
酸化と判断されクてレーム対象になる。ただし温度プロ
を前提に検証方法を決める必要がある(写真 3、写真 4)。
ファイルが適切でなければ、わずかな酸化でもはんだは弾
適切な温度プロファイルでは部品をずらしても
強いセルフアライメントでもとにもどる
写真 3
写真 2
ぬれ広がりは十分であるが、
プリヒートが長く、
フィレットにも滑らかさがなく、大きな部品ではボイドが多発している
他の部品フィレットには特に異状は見られませんが特定部位では簡単に部品が剥がれボイドが見られる
写真 4
—2—
Vol.3
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基本的な認識 リフロー②
かれるので、基板上の他のランド状態も確認する必要があ
なる。フィレット光沢や滑らかさの不足も合わせて判断す
る(写真 5)。同写真の事例では、他のフィレットにはんだの
ると、やはり温度プロファイルを修正した後に再度ランド
ぬれ広がり不足とフィレット光沢及びフィレット表面の滑
のはんだ弾きを評価する必要がある。
らかさ不足が見られる。これは温度プロファイルが適切で
写真 7 は、海外のローカル工場の改善事例である。
ないことを示している。
コスト面から海外の基板や部品を使うことが常識となっ
ぬれ広がり不足ははんだの印刷不足の場合も発生する
ている。現場の対応力が低ければ不良が多発してしまうた
が、その場合はフィレット先端部は綺麗な曲線(弧)を描く
め、日本では多少品質が悪くても良品に仕上げる現場力が
が、写真 6 内の上の写真ではフィレット先端に滑らかさが
必要となってくる。それができなければ工場の価値はなく、
見られないので、温度プロファイルが不適切である証拠に
製造が海外に移されてしまうことになる。最近は、国内向
ぬれ広がり不足
ランドのはんだ弾き
フィレット光沢・滑らかさ不足
写真 5
ランドの酸化でぬれ広がり不足
下部ヒータの活用でぬれ性が改善している
写真 6
基板の酸化でぬれ広がりが不良
温度プロファイルの変更でぬれ性は改善されている
写真 7
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量産現場におけるはんだ付け技術
基本的な認識 リフロー②
け製品に関しては国内に戻り始めている製品もあるが(レ
あたったはんだの戻りでフラックス効果が失われている。
ノボや HP など)、現場に受け入れる力がなければ再び海外
このような個所ではフィレットが厚くなり異形やブリッジ
へ移っていくことになるだろう。
になりやすく、特にパターンの繋がっているホールでは完
現場の力とはつまり、良否の解析力とその対応力であ
全な熱不足現象が起こりやすい。マスク設計時には特に注
る。
意が必要である。
また、特にフローのはんだ付け技術に関しては情報が少
特にフロー関連では、現場が状況解析してメーカー(装
なく問題を抱えたままでその改善は進んでいない。どの
置、マスクメーカーなど)に改善などの要求を出すことはほ
セミナーを見てもリフロー関係が大半で、実際の現場のノ
とんどなく、与えられた条件下でしか検討していない。そ
ウハウが必要なフローでは修正があたりまえとなってい
して、メーカーとしても使う方からの意向がないことから、
る。
まるで一方的な押し付け状態になってしまっているようで
ある。フロー槽も従来の鉛はんだ同様、基板搬送角度が 3 °
3. フローにおけるブリッジ改善事例
以下であればほとんどの問題を改善することができる。装
一般的に、リフロー後のフローでは設計上マスク(パ
してはじめてその価値が出る。同様に現場にすぐ実験でき
レット)を使用する場合が多くあるが、市版のマスクは耐熱
るような基板や部品が無駄な在庫をもたないという理由で
性を重視しているために熱伝動が悪く、かつ切り込みが深
準備されていないのでは、現場の改善能力を活用する気が
くなっているために、はんだの流れが乱れ、ブリッジが発生
ないのと同じである。
しやすくなっていることから、マスクの材質と開口部の加
ちなみに、富山市の小さな工場では、自作のマスクによっ
工を見直す必要がある(写真 8)。
てフローの不良をなくしたり、通常無理といわれてきた基
写真 9 は、マスクの材質と厚い形状によって、リードに熱
板をフローではんだ付けしている(同社では、一部依頼を受
が十分供給できず、ブリッジを起しやすい上、マスクの淵に
けて、マスクを外部へも提供している)。また薄い FPC に
置や道具は与えられたまま使用するのではなく、使いこな
パレットが原因のブリッジ、
パレットの厚みを一部薄く削り、
はんだの流れを変えブリッジゼロにする
写真 8
マスク淵に当たったはんだがリードに戻りフィレット異状が起こる、
マスクが厚くリードの熱不足
写真 9
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量産現場におけるはんだ付け技術
基本的な認識 リフロー②
ミクロのバンプをフローはんだで形成している。適切な冶
部品である。早くから海外に進出した工場では、初期の技
具(マスク)を活用することによって、不可能と思われるレ
術情報は伝わっているが、その後の変更や新しい技術情報
ベルのはんだ付けもフローで行っている。
が十分伝わっていない。同様に、海外の大手工場も規格一
写真 10、写真 11 は、スル—ホール部分のみフローでは
辺倒のものつくりになっている。中小の工場ではわずかな
んだ付けしている。通常は手作業になるが、ブリッジやは
技術差が利益に影響するものである。
んだボールが発生した場合リードが長く、修正ができない
リフロー後の基板をフローではんだ付けしますがホール部分のみで、
リード先端にはんだ付けしない
写真 10
リード上部までのはんだ上がりで、
かつデンドライドや引け巣は見られない
※ 8 層のベタ多層基板
はんだ付け条件=①はんだ槽温度:250 ℃以下、②浸漬時間:5 秒以下、
③引け巣・デンドライドなし
写真 11
—5—
撮影機材
●デジタルマイクロスコープ KH-8700
●デジタルマイクロスコープ KH-1300
●X線検査装置
http://www.hirox.com E-mail:[email protected]
●本 社 〒166-0003 東京都杉並区高円寺南2-15-17 TEL:03-3311-9911 FAX:03-3311-7722
●大 阪 〒577-0013 大阪府東大阪市長田中2-2-30 長田エミネンスビル 7F-B TEL:06-6743-3328 FAX:06-6743-3329
●名古屋 〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄1-14-15 RS ビル 9F TEL:052-218-1702 FAX:052-218-1703
HIROX CO., LTD. http://www.hirox.com
2-15-17 Koenji Minami Suginami-ku Tokyo 166-003 Japan
TEL:(+81)3-3311-9911 FAX:(+81)3-3311-7722 E-mail:[email protected]
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HIROX ASIA Ltd. http://www.hirox-asia.com
Unit 826, 8/F, Ocean Centre, Harbour City, 5 Canton Road, Tsimshatsui Kowloon, Hong Kong
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HIROX EUROPE http://www.hirox-europe.com
Jyfel, 300 RN 6 Le Bois des Côtes, Bâtiment A F-69760 Limonest, France
TEL:+33 426 25 03 40 FAX:+33 426 23 68 13 E-mail:[email protected]
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