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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ

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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
7章 酒の功罪(II部 健康づくりとくすり)
Author(s)
鶴, 大典
Citation
生活・地域からの健康づくり (長崎大学公開講座叢書 7) p.211-223
Issue Date
1995-03-05
URL
http://hdl.handle.net/10069/6330
Right
This document is downloaded at: 2017-03-29T18:41:05Z
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
7章 酒の功罪
鶴
大典
酒 (アル コール飲料)の最大の特徴 は, これが一方ではエネルギー源 とな
り,また,一方では薬物 として働 くところにある。酒 は多彩な薬理作用を示
気違い水」とも言われる由縁である。 薬は医者
し,昔か ら 「
百薬の長」 とも 「
や薬剤師がその使用量を きめるが,酒を飲む量 は自分で決める所に問題があ
る。
適量の酒は胃酸の分泌を促進 して食欲を増進 させ,ス トレスを解消 し,心地
よい興奮を招 き,熟睡を麗 らす。 しか し,過度の摂取は心身の麻痔を誘い,更
には,意識消失,呼吸麻痔による急性アルコール中毒死を招 く。
1節 盾と健康
Ⅰ-1 アルコールの吸収 と代謝 :アルコールはその2
0%が胃で,残 りは腸の
上部で吸収 される。一部は尿,汗,或いは呼気中に排滑 される。血中に入 った
アルコールは肝臓でアセ トアルデ ヒ ドに代謝 され,更に,酢酸 と水 に変化す
る。 3台のお酒がす っかり体から抜けるには 8時間を要するか ら酒豪 (1日 5
台以上)では翌朝に影響が残ることになる。顔が赤 くなったり,胸がどきどき
したり,頭痛,吐気を催すのはアセ トアルデヒ ドの作用であり,東洋人 (
特に
日本人)がお酒に弱いのはアセ トアルデ ヒ ドを酢酸にかえる酵素 (アセ トアル
デ ヒ ド脱水素酵素)が欧米人に較べて弱いためである。 しか し,この ことは決
して悪いことではない。酒に弱いお陰で日本人のアルコール依存症 (
俗に言 う
0
%程度
アルコール中毒症)や肝硬変患者の数はフランスのそれぞれ 5%及 び1
である。
1 21
1-
Ⅰ-2 アルコールと疾病 :適量の飲酒は生活を明るくし,人間関係を円滑に
する効用があるが,飲みす ぎは健康を害する。 ビール大瓶 1本はご飯 1膳半に
相当 し,飲酒によるカロリー過剰は肥満を招 き,成人型糖尿病や高血圧に至る
こともある。
酒豪には高血圧や動脈硬化症の人が多い。アルコールが直接血圧を上げるこ
とはないが,飲酒に伴 う塩分の取 りすぎや脂肪代謝の偏 りが高脂血症や動脈硬
化症或いは高血圧の原因であろう。 しか し, 1日 1台程度の飲酒は善玉 コレス
テロールを増加させ,む しろ動脈硬化を防 ぐと言われている。飲酒が胃潰癌や
胃ガンの直接の引き金となることはないが,胃潰癌患者にとってはその悪化を
招 き,また,飲み過ぎると急性胃炎を引き起 こし,更に, しば しば輝炎の発症
がみられる。
1日飲酒量1
6
0g以上
(n-1
8
0)
1
0% 1
4
%
1日飲酒量1
6
0g以下
(∩-1
8
0)
4
0
%
儀
%
平均飲酒歴 :
7.
9±4.
1
年
飲酒量/ 日 :1
0
1-1
5
2g
(
平均 :1
2
6.
5g)
均
1- 5年 (
平
3.
6年)
4
%
平
5
1
1年 ∼1
5
年 ( 均1
2.
9年
)
第 1図
4
2%
平均飲酒歴 :7.
9±3.
8
年
飲酒量/ 日 :1
8
0-2
6
6g
(
平均 :2
2
7g)
6
- 10 年
⊂コ 正常
旺
Ⅲ 汀脂肪肝
田
∈ヨ 脂肪肝+間葉系炎性 反応
肝硬変
(
平均3.3年 )
8
%
3
%
(
平均
4
1
5
年以上
21.
6% )
飲酒量,期 間 と肝組織変化 との関係
(
岡部和彦他,臨床栄養40,28
3,1
9
72よ り引用)
- 21
2-
∈ ∃ 慢性 肝炎
7章
酒の功罪
最 も注意すべ きは肝障害である。長年の飲酒 (1日 4台以上)は,脂肪肝
(
可逆佳)
,アルコール性肝炎 (
可逆餌)に続いて不可逆的な肝硬変の発症を
麗 らす (
第 1図及び 2図参照)
。第 2図で気になるのはワインの消費量が多い
国で肝硬変による死亡率が特に高いことである。 ワイン中のアルコール以外の
成分が肝硬変に関係 している可能性 も否定できない。肝硬変では肝細胞の変性
壊死が起 こり,繊維組織が拡大 しているため,肝機能は極端に低下 し,血液の
循環障害が激 しくて, しば しば食道静脈癌の破裂 を招 く (
歌手,水原 弘の
死)
0
女性は男性に較べて肝硬変になり易い。また,アルコール依存症にもなり易
い。大量飲酒の母親か らは低休重や奇形の乳児が生 まれる確率が高いか ら注意
すべ きである。
アルコールか ら肝臓を守る最 も良い方法は週 1回の休肝 日 (
お酒を断つ 日)
30
劫
死 亡率 二 〇万人当り)
5
1
0
1
5
2
0
2
5
3
0g
′y
r
成人1
人当 りの年間アルコール消費量 (
∫
)
第 2国
世 界各国 の年 間 アル コール消 費量 と肝 硬変死亡 率の関係
(
各国 の成績 は 1
9
6
6-1
9
6
7の もので ある)
.1
3
51
.1
9
7
3
. よ り引用)
(
高 田昭,臨床成 人病 ,3
- 21
3-
を設けることである。また,一般に酒豪 は副食を摂 る量が少ないので, ビタミ
ン不足になり易い。更に,アルコールは腸におけるビタ ミンの吸収を妨げ,肝
臓での ビタ ミンの活性化を阻害す るか ら,飲酒の前後にはビタ ミン (
特にビタ
) の供給が望 ま しい。体内にアルコールが残 っている時に睡眠薬を摂
ミンB1
ると薬が利 き過 ぎることがある (
マ リリン ・モンローの死)。 とにか く,飲酒
時及びその後ではビタ ミン剤や消化剤以外の薬物 は控えるべきである。
2節
酒と社会
Ⅱ-1 お酒 と上手 く付 き合う法 :お酒はス トレスを解消 し,普段無口な人 も
あまり抵抗な く自分の意見を述べ るようにな り,人間関係をスムースにする。
お酒は楽 しく,人に迷惑をかけないように心掛けて飲む ことが大切である。酒
は飲んで も酒に飲まされてはな らない。無理強いを した り,相手に絡んだ りす
る人は酒を楽 しむ資格はない。 日本酒が若者に敬遠 される原因の一つは杯のや
り取 りに気を使 うことにある。後輩は "
おこぼれ頂戴"に参上 しなければなら
ないし,上司や先輩の盃を断ると,あの若造 は "
横柄だ"と非難 される羽 目に
なる。また, 日本では [
いやいや三杯 また三杯] と遠慮 と本音が交錯 して,若
い人は戸惑 うことが多い。一寸淋 しい気 はす るが,欧米流に自分の適量を自分
のペースでゆっくりと杯をあげるのか現代風の酒の楽 しみ方であろう0
Ⅱ-2 酒 と日本の甘えの構造 :日本では忘年会,社員旅行をはじめ,商売上
の取引か ら行政にいたるまで [タテ]の人間関係に宴会が重要な意味を持 って
いる。厳 しい上下関係のなかで育 ってきたこともあって, 日本人は一般に上司
に自分の意見をはっきりと述べ るのか下手な人が多い。従 って,酒の席が意志
の疎通を図る上でそれな りの意味を持つ ことになる。 この こともあ って日本人
は酒の上での失敗には大変寛容である。欧米などでは酒席での 1回の失敗で重
役の座を追われ,一生を棒に振 った例 は多 い。 しか し, 日本人の この寛容 さ
が,わが国でアルコール依存症が少ない一因にな っていることも事実である。
とは言え,わが国で も酒の席での失敗には今後,世間の目がだんだん厳 しくな
ることを覚悟 しなければな らない。
Ⅱ-3 酒と税金 :酒類の製造 ・販売業界はこれまで色々な面で国の保護を受
- 21
41
7章
酒の功罪
けてきた。 これは酒税が国の大 きな財源になっているか らである。明治時代に
は酒税が全税収の30%にも達 していた し,現在で も2兆 6千億円を超える酒税
の収入があり,全国立大学の年間維持運営費の約 2倍に相当する。平成 5年度
の九州管区の酒類消費状況は日本酒に換算 して 1人,年間 1斗 5升であり,売
上総額,約6
,
0
00
億円,酒税1
,
80
0
億円に達する。 1人当たり年間1
8
,0
0
0円の税
金を納めたことになる。九州管区で売 られた酒類の割合はビール6
4%, 日本酒
1
0%,焼酎1
4%,ウイスキー (ブランデーを含む) 5%,残 りが ワイン,その
他である。焼酎の割合が高いのは九州の特徴であろう 平成 6年度は空前の猛
。
暑 と九州蔵出 しビールの好評か ら, ビールの比率は7
0%に迫る勢いにある。酒
税の引き上げ もあって,九州管区で も今年は恐 らく1人,年間, 2万円を超え
る酒税を納めることになると予想 される。 このような背景 もあって,連日,逮
夜,テ レビ ・コマーシャルには美男,美女が登場 してお酒を勧めるし,街角に
は酒の自動販売機が立ち並ぶ ことになる。 これ も外国ではあまり見 られない光
景である。お酒を飲まないと何か義務を怠 っているような錯覚に襲われる。一
時,酒類の売上が低迷 した頃,業界で [
女性に,ヤングに,昼間か ら]と言 う
標語が流行 ったが, さすがに, これは世間の肇磐を買って消滅 した。最近,出
雲では市条令で酒及び煙草の自動販売機の規制に乗 り出 し,業界 も官界 も漸 く
重い腰をあげてこの問題を取上げようとしているが,未成年者の飲酒の習慣を
防止する意味で も結構なことである。
先にも述べたように,欧米人は酒に強いこともあって,アルコール依存症患
者が多 い。 フォー ド大統領夫人 (
ペディー ・フォー ド)
,エ リザベス ・テー
ラーやマ リリン ・モ ンローが薬物 とアルコール依存症の二重苦に悩まされたこ
とは有名な話である。 日本ではアルコール依存症患者の数は比較的少ないが,
酒を語る上で, これは無視出来ない問題である。生真面 目で,相談出来る友達
が少な く,一人で思い悩むタイプの人が,隠れて 自棄酒を飲む うち依存症 とな
る場合が多い。良き相談相手と適切な治療が更生への第一歩である。アメ リカ
では酒の席での失敗や仕事上での トラブルか ら職場を追われ,依存症に至 る場
合が多 く, 日本 と同様,泥酔型である。一方,フランスなどでは,昼の飲酒の
習慣か ら本人が気付かぬ うちに依存症になっていることが多く,外の病気で入
院 した際に,禁酒を命ぜ られて幻覚症状 と手足の震えで,本人 も医者 も初めて
-
2 15 -
依存症に気付 くと言 う。
3節 潜の種類と特徴
Ⅲ- 1 日本酒 :日本酒は米,米麹,水 と酵母か ら作 られる。酒造用の米 とし
ては澱粉含量が多 く,大粒の軟質米が よ く,山田錦 (
兵庫県)や雄町 (岡山
県)などがよ く使われる。醸造用水としてはKとPが多 く,鉄分を含まない硬
質の水が絶対条件であり,西宮の宮水が有名である。硬めに蒸 した米に酒麹菌
を植えつけて米麹を作 り, これに水 と蒸 し米 と酒酵母 (
種母)を加えて,冷所
でゆっくりと糖化 とアルコール発酵を同時に行な う,所謂,並行複発酵が日本
酒の特徴である。醸造工程の概略を第 3図に示す。
純米酒 と 3倍増醸酒--戟前 は真冬に醸造 され,一夏を過 ぎて,秋に飲む酒
が一番美味 しいとされていたが,現在 は冷却施設の普及により四季醸造が可能
とな って,常 に高品質の 日本酒が供給 されている。発酵の終 った諸味 (もろ
2-2
5%で, これを搾 ったのか新酒である.搾 った酒に
み)はアルコール度,2
5-1
7%)
,殺菌,慮過,貯
水などを加えてアル コール分を調節 し (
普通 は1
蔵 ・熱成 して純米酒が得 られる。戟前の 日本酒はすべて純米酒であ ったが,昭
7
年頃より醸造米不足のため酒税法が改め られ,醸造酒にアルコールを添加
和1
して, これをのばす ことが認め られた。諸味に醸造用アルコール,水,ブ ドウ
糖及び適当な酸 とア ミノ酸を加えて,慮過,殺菌 し,貯蔵 ・熟成後,出荷 され
る (3倍増醸酒)
。そのため戟前の清酒に較べて,淡泊で無色 に近 い日本酒が
主流を占めるようになった。現在は消費者の好み も酒の鑑定会 (
品評会)で も
戟前の班鴇色を した,べ っとりとした重い感 じの酒は好 まれない。第 4図及び
5図に日本酒の色調の変化 と好みの時代的変化を示す。最近,戦前派の郷愁 と
レ トロブームに乗 って,純米酒が造 られ るようにな ったが,戟前の ものに較
べ,あ っさりとした特徴を保つよう工夫 されている。
吟醸酒 (
大吟醸)--良い原料米をよ く精白 (
重量の約半分 くらい) し,若
い麹を使 って低温で発酵 させ,果実風の香 りを持つよ うに造 られたお酒であ
る。一般にアルコール度 は高 く,冷酒 として賞味す るのに適 している。
山廃仕込み と速醸法・
-・
・
蒸 し米,麹に水を加えると,最初硝酸還元菌が生え
-2
1
6
-
7章
酒の功罪
清酒製造工程図
- 21
7-
水
第 3図
ケ-サ ー
麹
(
函詰機 )
水
レ ッテル
貼機
麹
水
噂 話 機
3
6
3
8
40
年
第 4図
42
4
4
4
6
47
度 (
昭和)
酒の色 (
黄色系)の うつ り変 り
(
「
美酒の設計図 」) よ り引用)
現在 は,特級 , 1級 , 2級 の分類 は廃止 されている。
て亜硝酸が生成 し,野性酵母の生育を抑える。次に乳酸菌が繁殖 して,pH を
下げ,有害菌による汚染が防止 され る。 ここで酒酵母を加えて増殖 させ る。 こ
れが伝来の山廃仕込み (
生箆
元)であ る。 しか し, この工程 は杜氏 (
酒作 り職
人)の長年の経験 と勘に頼 るところが大 きく,失敗す ることもある。そこで,
最初か ら "
諸味"に乳酸を加えることが江田氏によって始め られ, これが全国
に普及 した。所謂,速醸法である。現在の 日本酒は大部分が この速醸法を使 っ
て造 られている。
Ⅲ-2 焼酎 と泡盛 :酒 または酒粕を単蒸留 したのが焼酎の始 まりである。 し
か し,現在は麦,粟,薩摩芋,馬鈴薯などを原料澱粉 とした ものが多い。 これ
らは乙種焼酎 に分類 され る。一方,廃糖蜜を発酵 して造 ったアルコールに糖や
- 21
8一
7章
酒 の功罪
3
.
2
2.
8
2.
4
2.
0
六
1川
世
態
2
1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
グルコース、%
第 5図
甘,辛 の うつ り変 り (
佐 藤信 『
美酒 の設計図』 よた引用)
有機酸,ア ミノ酸などを加え,水で希釈 してアルコール度2
5-3
5
%に調整 した
のが甲種焼酎である。沖縄の泡盛は米を原料 とした蒸留酒である。
Ⅲ-3 その他の発酵酒(
a)
ビールとウイスキー :ビールは 2条大麦 (ゴールデ
ン ・メロン種)を発芽させて (
1
4-1
8℃, 8-1
0日間)麦芽を作 り,乾燥 して
5除根後,粉砕す る。 これにホ ップ*
, コーンスターチ,砕米 と水を加えて6
68℃に加熱 し,嬉過後,得 られた糖化液にビール酵母を加えて主発酵を行なう
(5℃,1
0-1
2日)
。更に, 0-2℃で4
0-6
0日の後発酵を経て製品となる。無
tbe
e
rと言い,
加熱殺菌 したものを l
age
rbe
e
rと言 う
菌液過 したものを draf
。
*ホ ップ :雌雄異株の多年性植物 (
桑科)の雌株の未受精の雌花を乾燥 したも
ので, ビールに苦みを加え,殺菌力がある。
- 21
9-
ビールの色の濃さは麦芽の乾燥 (
培焦)時の温度で決 まり, 日本に多い淡色
ビールでは8
0-8
5
℃, 4時間,黒 ビールでは9
5-l
o
o
℃, 4時間である。主発
酵及び後発酵を十分に行なって糖分を完全にアル コールに変えると,アルコー
ル度の高い ドライタイプの ビールとなる (アサ ヒスーパ ー ドライなど)
。 日本
では主に下面発酵酵母 (
発酵終了後,酵母が沈殿す る)が用いられているが,
イギ リスのスタウ ト,エールや 日本のアサ ヒZには上面発酵酵母 (
発酵終了
5-2
0
℃
級,上に浮 く)が使用 されている。 この場合には,主発酵時の温度 は1
と高い。 ドイツでは麦芽以外の澱粉原料を用いたアルコール飲料は雑酒と見徹
し, ビールの範噂に入れていない。従 って, ドイツ流に言えば,サ ン トリーの
"
モルツ"だけが真の ビールと言 うことになる。
ビールを日光に当てるとホ ップに由来す る有機黄硫化合物が光反応 して異臭
(
狐臭,日光臭)を与え,品質が著 しく低下す る。 これを防 ぐため ビールには
褐色の壕を使用する。何れに して も, ビールに直射 日光は禁物である。
ビールを蒸留 したのが ウイスキーである。ただ し, この場合にはホ ップは使
用 しない。 スコッチ ウイスキーの場合,大麦麦芽を泥炭 (ビー ト)で培焦 し
て,s
moker
l
av
orをっけ, これを酵母で発酵 して 7-8%の諸味を得て, こ
れを単蒸留 して6
5-7
5
%のアルコール原液 とし,カシの樽につめて 3-5年熟
成 させ る。 これを適 当にブ レン ドして填詰めす る。一方, アメ リカのバ ーボ
ン ・ウイスキーは トウモ ロコシや小麦澱粉を麦芽で糖化 し,酵母で発酵後,逮
続蒸留 した ものである。
(
b) ワインとブランデー :葡萄を粉砕後,果皮 も一緒に, メタ亜硫酸塩*存在
下, ワイン酵母で発酵 させたものが赤 ワインである。白ワインは果皮を除いて
2
0-2
5
℃で 1- 2時間,発酵 させて作 り,一方, ピンク色を したロゼは仕込み
級, 5日- 1週間 した ら果皮を除 き, 1- 2週間,発酵 させ る。 これを主発酵
0℃以下で 2- 3ケ月間,後発酵を行 い,お り引 きを した
と言 う その後, 1
。
後,低温で 2-3年,貯蔵 ・熟成 させ る。殺菌 した後,瓶詰 して市販 され る。
ワインは瓶詰後 も歳を歴 る程,味がよ くなるか ら空気に触れないよう注意 して
保存す る。
*メタ亜硫酸塩には殺菌力,酸化防止作用,蛋白沈殿性及び色調の鮮明化作用
がある。
- 220-
7章
酒の功 罪
ワインを寝かせて置 くのはそのためである。なお,上等の赤 ワインでは保存
中に "
お り"がたまる。飲酒時にこれが動かないように赤 ワインの壕 は上げ底
になっている。
貴腐 ワイ ンは貴腐菌 (
Bot
ul
i
t
i
sc
i
ne
r
e
a) に侵 されて表皮の娘が融け, し
ぽんで糖度が30%以上にも遷 した果実か ら造 られたワインであ り,味が濃厚で
まろやかで香 りの高い高級酒である。
一方,大変なブームとなったボージョレ ・ヌーポはフランスのその年の葡萄
で醸造 した新酒で,毎年, 1
1
月の第 3木曜の午前零時を期 して世界一斉に売 り
出され る。 ワイン通 には物足 りな くて,評価 は低 いが, フレッシュで, フル
チ-な味わいと季節感を楽 しむ若者向きの ワインと言えよう。
白いワインに砂糖 と酵母を加えて再発酵 し,炭酸含量を高めたのが シャンパ
ンであ る。 しか し,今度の ウルガイ ・ラウン ドで欧州共同体 は ["シャンパ
ン"はフランスのシャンパニー地方で造 られた発泡酒 (
s
par
kl
i
ngwi
ne)の
商標で,他の産地の発泡酒に "シャンパ ン"の名称を使 ってはな らない] と主
張 している。
第 1表
お酒 の アル コール濃度 と飲酒適 温
アル コール% 事
*
=
飲酒適温 ,℃
最近 はアル コール濃度 の違 った色 々な製 品が市販 され て い る。
新酒や吟醸酒 は 10
℃程度 に冷や して賞味 す る。
=' ウイスキ ー, ブラ ンデ ーや焼酎 は香 を楽 しむ意 味 で は ス トレー
トが一 番美 味 しいが ,体 に良 くない。
- 221-
ワインを蒸留 したのが ブランデーである。酸味の多い葡萄を用いて メタ亜硫
酸塩を加えずに発酵す る。 日本で はコニ ャック地方 (ボル ドー地方の北)で造
られたブランデー (コニ ャック)が有名で, その高級品がナポ レオ ンである。
しか し,アルマニャ ック地方 (ボル ドーの南)で造 られたブラ ンデー (アルマ
ニャ ック) もコニ ャックに劣 らず,或 いはそれ以上 に世界的評価が高 い。
紹興酒 (
黄酒)は中国の新江省を中心 に米を原料 と し,酒楽 (くもの巣かび
や毛かびの麦麹)を使 って糖化 し,発酵 させた もので, カメに入れて密封 して
貯蔵す る。古 くなる程,味がよ くなる (
老酒)
o
Ⅱ一
一4 お酒の美味 しい飲み方 :第 1表 に色 々なお酒のアル コール度 と飲用適
温をまとめてみた。 アル コール濃度の高い新酒や吟醸酒 は冷や して飲むのが一
般であ るが,従来か らの清酒 は何 と言 って も "
ぬ るめの欄が いい"
。 しか し,
真冬の熟燭 も乙な ものであ る。
日本酒の名産地 と しては,潔,伏見,秋田そ して広島が有名であるが,近年
は九州産 日本酒の評価が極めて高 い。 日航国際線の ファース ト・クラスで出さ
2銘柄の 日本酒の うち,香露,菊の城 (
熊本)
,西の関 (
大分)
, しげます
れ る1
(
福岡)が九州産であることもこれを裏付けている。
日本で はビールは多少冷や し過 ぎの感があ る。 ビールはあま り大 き くないタ
ンブラーに注 いで,泡を残 して一気 に飲み,空にな ってか ら次の ビールを満た
すのか,通の飲み方である。 ビールは新 しい もの程美味 しい。
〕蔵出 しビールが
よ く売れ るの はそのためである。最後 に,お酒を飲む上での十戒をまとめた。
1)
末成年,運転手,妊婦 は飲 まな い。
2)
自由な楽 しい雰囲気で飲む。やけ酒 はだめ。
3) 他人に無理強いを しない。
4) 毎 日続 けて飲 まない。
5)
昼間は飲 まない。
G) 限度を超えない (1日 2台程度)0
7) よ く食べなが ら飲む。
8)
夜1
2時を過 ぎて飲 まない。
9)
濃 い酒をそのまま飲 まない。
1
0) 薬 と一緒 に飲 まないC
,
一
22
2
-
-
7章
酒の功罪
1
9
7
6);小
なお,本文の執筆 に当たっては東京大学公開講座 "
宿":東京大学出版会 (
路敏彦 :長崎大学 ・学園だよ り (
1
9
7
0-1
98
0);朝 日新聞,毎 日新聞記事, その他 を参
考 に した。
- 22
3-
Fly UP