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青海チベット高原横断鉄道周辺に生息する野生動物のインベントリ調査

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青海チベット高原横断鉄道周辺に生息する野生動物のインベントリ調査
J. Rakuno Gakuen Univ., 34 (1) :23∼33 (2009)
青海チベット高原横断鉄道周辺に生息する野生動物のインベントリ調査
及びチベットアンテロープの移動パターン
太 田
遥 ・星 野 仏 方 ・梶
光 一 ・伊吾田 宏 正
吉 田 剛 司 ・大泰司 紀 之 ・S. Ganzorig
The Inventory Database of Wildlife Inhabiting around the Qinghai-Tibetan Railway and
migration pattern of Tibetan antelope (Pantholops hodgsoni)
Haruka OTA , Buho HOSHINO , Koichi KAJI , Hiromasa IGOTA ,
Tsuyoshi YOSHIDA , Noriyuki OTAISHI and S. Ganzorig
(Accepted 27 July 2009)
1.は じ め に
た。
2.研究地の概要
1.1 背 景
2006年7月1日に中国青海省のゴルムド(Golmud)とチベット自治区のラサ(Lhasa)を結ぶ 青
海チベット横断鉄道(Qinghai-Tibetan Railway,
2.1 対象地域
青海チベット高原(中国語では青藏高原)は中国
青海省,チベット自治区,新疆ウイグル自治区南部,
,
(1,142km) が開通した。この鉄道が通る
QTR)
チベット高原には CITES
(絶滅のおそれのある野生
甘粛省南西部,四川省西部,雲南省北部にまたがる,
動植物の種の国際取引に関する条約)の附録 種,
国際自然保護連合(IUCN)の 絶滅危惧種 ,及び
標高 3,500∼5,500m にある中国南西部に広が
km ,
る世界最大で最高所の高原である。独特な高原寒冷
中国の国家一級重点保護野生動にリストされている
地帯のため,希少かつ脆弱な生態系をもち,絶滅に
東西約 2,000km,南北約 1,200km,面積約 250万
チベットアンテロープ(Pantholops hodgsoni,以下
した野生動植物やその祖先型が多く生息してい
チルーと呼ぶ)を含む希少な野生動物が数多く生
る。この高原は中国の揚子江
(長江),黄河,メコン
息・生 育 し て い る。チ ベット 高 原 に は コ コ シ リ
川の水源地を含む。 野生動物の最後の楽園 といわ
(Hohxil National Nature Reserve, HNNR)自然
保護区をはじめとするいくつかの保護区があり,鉄
れており,高標高であることなどから人間が簡単に
道がこれらの自然保護区域を通過しているため,保
たことにより,人間による影響がますます大きく
護区に生息する野生動物に影響を及ぼしていること
なっていくことが懸念されている 。
は入れない地域であったが,2006年に鉄道が造られ
が えられている 。
2.2 チルー
1.2 目 的
チルーはチベット高原固有の大型動物で,哺乳綱
前述のように青海チベット横断鉄道が開通したこ
偶蹄目ウシ科に属する。ガゼル亜科に 類されてい
とによって,鉄道 線やその周辺に生息する野生動
るが,近年の形態学的及び DNA
物の生息地が東西に 断されたと指摘されているこ
はヤギやヤギ亜科により近縁と示唆されている 。
析により,チルー
とから まず,本研究ではその評価の基盤となる青
チルーはチベット高原の高山性ステップと半砂漠
海チベット高原に生息する野生動物のインベントリ
地域に広く生息している。主な生息地は人里離れた
データベースを作成することにした。次いで,その
ココシリやチベット北西部のチャンタン地区であ
生息域の特定,資源の利用について,鉄道の影響を
る 。チャンタン自然保護区,アルジンサン自然保護
ふまえてチルーを中心に
区,ココシリ自然保護区に生息しており,三江源自
析することを目的とし
2008年度酪農学園大学環境システム学部生命環境学科卒業生
酪農学園大学環境システム学部生命環境学科
Rakuno Gakuen University Department of Biosphere and Environmental Sciences
東京農工大学農学部
Department of Ecoregion Science Laboratory of Wildlife Conservation Tokyo University of Agricultural and Technology
太 田
24
遥・他
然保護区にも少数生息している 。しかし,下毛のた
ル(shp)を作成した。
めの営利目的の狩猟,現地の家畜の群れとの競争,
SPOT VEGETATION 衛星データの NDVI(正
規化植生指数の 10日間最大値合成画像)は月毎に平
移動経路上における放牧地の柵作り,金の鉱山の採
掘等々による放牧地の開発によってその数・ 布と
もに急激に減少し,絶滅の危機に している 。
を とって
用 し た。SRTM (Shuttle Radar
営利目的の狩猟とは,すなわち密猟のことで,暖
Topography Mission)データは ENVI を用いて作
成した。このほかに Human Footprint,及び中国の
かでやわらかく上質である高価なシャトゥーシュと
白地図を背景データとして利用した。作成したこれ
して知られるチルーの下毛を得るために行われてい
ら鉄道路線図・チルーのポイントデータ・生息域と
る。この毛皮はチルーを殺すことによってのみ手に
入り,主にカシミール地方に密輸され,そこで織物
保護区のデータと,植生指数・標高データ・human
footprint のラスターデータ,及び文献などのデータ
となる。これがチルーにとって主な脅威となってい
を重ね合わせて生息環境の解析を行った。
る。また,オスの角は中国の伝統的な薬として わ
れている。保護対策は密猟を 50%まで減少させたと
言われている
すべてのデータの座標は,世界標準測地系WGS84 UTM 座標系 46帯に統一した。
。
4.結果及び
チルーは群れ生活をする動物で,時に 100頭強の
群れを成すことがある。メスは夏にたいてい1頭の
察
4.1 高原に生息する野生哺乳動物インベントリ
子供を生むために,300km 近く距離を移動して出
チベット高原に生息する野生哺乳動物には,食虫
産地へ行き,晩秋に越冬地へ戻る。そこで再びオス
目 Insectivora 6種,ツパイ目 Scandentia 1種,翼手
の群れに加わる。食性は,主には高山ステップ地帯
目 Chiroptera 8種,霊長目 Primates 10種,食肉目
のイネ科草本類,広葉の草本類である。毛皮をとる
Carnivora 39種,奇蹄目 Perissodactyla 2種,偶蹄目
Artiodactyla 29種,有鱗目 Pholidota 1種,齧歯目
ために密猟され,20世紀の変わり目には 100万頭近
くいたと推定されていた個体数が,75,000頭まで減
少した 。
3.方
Rodentia 28種,ウ サ ギ 目 Lagomorpha 8 種 の 計
132種が生息していることが かった(表1)
。
鉄道 線に生息する主要野生動物には,中国で国
法
家重点動物リストなどに登録されている貴重な動物
3.1 データの解析
が多いことがわかる
(表2)
。その中でも鉄道を挟ん
青海チベット高原に生息している野生動物のイン
で行き来する種があり,
有蹄類では主なものとして,
ベントリデータベース作成においては,現地調査及
チルー,チベットガゼル(Procapra picticaudata)
,
び 中国の野生哺乳動物
息している動物をリストアップした。鉄道 線主要
チベットノロバ(Equus hemionus kiang )があげら
れ,数千から1万頭が行き来しているとされる 。
動物のインベントリ作成においては,現地で調査に
肉食動物ではチベットオオカミ(Canis lupus chan-
携わっている研究者のデータと文献を参 に作成し
co)があげられ,数百頭のレベルで行き来している
とされている。これらの動物が主に鉄道による影響
から,チベット高原に生
た。
チルーについては,2007年8月に2頭のメスに装
を大きく受けることが
えられる。そのほかにバー
着した ARGOS の発信機(PTT)から取得した移動
ラル(Pseudois nayaur )
,アルガリ(Ovis ammon)
,
経路と時間の情報を用いてチルーの無線追跡を行っ
た。2頭のチルーはそれぞれ,ID 75835
・ID 75836と
ヤク(Bos grunniens)
,ヒグマ(Ursus arctos),オ
オヤマネコ(Lynx),なども 布しているが,これら
している。この衛星追跡データをリモートセンシン
は個体数が少なく,鉄道付近には 布しなくなった
グと GIS の解析ソフトウェア ENVI,Arc Map を
と報告されている
用いてポイントデータへと変換し,地図上にオー
,クチグロナキウサギ
(Ochotona
mota himalayana)
,チベットウサギ(Lepus oiostolus)やチ
curzoniae)
バーレイした。
チルーの生息範囲および4つの保護区範囲を特定
。ヒマラヤモーマット( Mar-
と今までの
ベットスナギツネ(Vulpes ferrilata)などの中・小
哺乳類は,鉄道付近に高密度で 布しているが,大
データ ベース を 用 い た。特 定 し た 範 囲 は Google
きな移動はしないため,影響は比較的少ないと え
Earth でポリゴンを作成し,kml ファイルから shp
ファイルへと変換し,Arc Map で作成した。青海鉄
られる。
するにあたって,過去の調査記録
道路線図は Google Earth を参
にシェイプファイ
青海チベット横断鉄道周辺に生息する野生動物
25
表 1 チベット高原に生息する野生哺乳動物
科名及び和名
1.食虫目
学名
布域
Insectivora
1)ハリネズミ科
シナジムヌラ
オオミミハリネズ
ダウリアハリネズミ
2)トガリネズミ科
トガリネズミ
コジネズミ
3)モグラ科
アッサムモグラ
Erinaceidae
Hylomys sinensis
Hemiechinus auritus
Hemiechinus dauuricus
Soricidae
Sorex caecutiens
Crocidura suaveolens
Insectivora
Eurossapton leucura
べランジェツパイ
Tupaia belangeri
1)オオコウモリ科
デマレルーセットオオコウモリ
2)アラコウモリ科
オオアラコウモリ
3)キクガシラコウモリ科
ルーキクガシラコウモリ
4)カグラコウモリ科
ヒマラヤカグラコウモリ
5)ヒナコウモリ科
ヨーロッパアブラコウモリ
ユーラシアコヤマコウモリ
グレーウサギコウモリ
6)オヒキコウモリ科
ヨーロッパオヒキコウモリ
Pteropodidae
Rousettus leschenaulti
Megadermatidae
Megaderma lyra
Rhinolophidae
Rhinolophus rouxii
Hipposideridae
Hipposideros armiger
Vespertilionidae
Pipistrellus pipistrellus
Nyctalus noctula
Plecotus auritus
Molossidae
Tadarida teniotis
1)オナガザル科
アカゲザル
ベニガオザル
アッサムモンキー
チベットモンキー
キンシコウ(チベットコバナテ
ングザル)
クロツメバナザル
ボウシラングール
ファイールルトン
ハヌマンラングール
2)テナガザル科
フーロックテナガザル
Cercopithecidae
Macaca mulatta
Macaca arctoides
Macaca assamensis
Macaca thibetana
西蔵南東部,青海南部,四川,雲南,甘粛
雲南
西蔵南東部,雲南
西蔵東部,青海南部,四川
Pygathrix roxellana
四川,甘粛
Pygathrix bieti
Semnopithecus pileatus
Semnopithecus phayrei
Semnopithecus entellus
Hylobatidae
Hylobates hoolock
西蔵東部と雲南の境界地域
雲南
雲南
西蔵東南部
1)イヌ科
タイリクオオカミ
アカギツネ
コサックギツネ
チベットスナギツネ
タヌキ
ドール
2)クマ科
ツキノワグマ
ヒグマ
ジャイアントパンダ
Canidae
Canis lupus
Vulpes vulpes
Vulpes corsac
Vulpes ferrilata
Nyctereutes procyonoides
Cuon alpinus
Ursidae
Ursus thibetanus
Ursus arctos
Ailuropoda melanoleuea
雲南,四川
甘粛
甘粛
西蔵東部,青海東部,四川,雲南,甘粛
青海東部,四川,甘粛
西蔵東部,四川,雲南
2.ツパイ目
西蔵東部,四川,雲南
3.翼手目
西蔵東部,四川,雲南
四川,雲南
四川,雲南
四川,雲南
四川,雲南
四川,雲南
青海北東部,甘粛
四川,雲南
4.霊長目
雲南
5.食肉目
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛,雲南
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛,雲南
新疆,青海北部,甘粛
西蔵,青海,四川,甘粛
四川,雲南,甘粛
西蔵東南部,青海東南部,四川,甘粛,雲南
西蔵東部,青海南東部,四川,甘粛,雲南
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛
四川
太 田
26
3)レッサーパンダ科
レッサーパンダ
4)イタチ科
タイリクイタチ(チョウセンイ
タチ)
イイズナ
アルタイイタチ
オコジョ
ステップケナガイタチ
キバライタチ
キエリテン
ムナジロテン
シナイタチアナグマ
アナグマ
ブタバナアナグマ
ユーラシアカワウソ
コツメカワウソ
5)ジャコウネコ科
インドジャコウネコ
コジャコウネコ
ハクビシン
プチリンサン
6)ネコ科
ハイイロネコ
ヨーロッパヤマネコ
マーブルキャット
ベンガルヤマネコ
アジアゴールデンキャット
マヌルネコ
ジャングルキャット
オオヤマネコ
ウンピョウ
ヒョウ
ユキヒョウ
トラ
6.奇蹄目
遥・他
Ailuruidae
Ailurus fulgens
Mustelidae
西蔵東南部,四川,甘粛,雲南
Mustela sibirica
西蔵東部,青海東南部,四川,甘粛,雲南
Mustela nivalis
Mustela altaica
Mustela erminea
Mustela eversmanni
Mustela kathiah
Martes flavigula
Martes foina
Melogale moschata
Meles meles
Arctonyx collaris
Lutra lutra
Aonys cinerea
Vierridae
Viverra zibetha
Viverricula indica
Paguma larvata
Prionodon pardicolor
Felidae
Felis bieti
Felis silvestris
Felis marmorata
Felis bengalensis
Felis temmincki
Felis manul
Felis chaus
Lynx lynx
Neofelis nebulosa
Panthera pardus
panthra uncia
Panthera tigris
青海南部,四川
新疆,西蔵東南部,青海東南部,四川,甘粛,雲南
新疆
新疆,西蔵東部,青海東南部,四川,甘粛
四川,雲南
西蔵南部,四川,甘粛,雲南
新疆,西蔵東部,青海,四川,甘粛,雲南
四川,雲南
西蔵東部,青海東部,四川,甘粛,雲南
西蔵東部,青海南東部,四川,甘粛,雲南
西蔵東部,青海東部,四川,甘粛,雲南
西蔵南部
モウコノウマ
アジアノロバ
Equus przewalskii
Equus hemionus
甘粛
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛
1)イノシシ科
イノシシ
2)ラクダ科
フタコブラクダ
3)ジャコウジカ科
カッショクジャコウジカ
ヒマラヤジャコウジカ
コビトジャコウジカ
ヤマジャコウジカ
4)シカ科
マエガミジカ
ホエジカ
キョン(タイワンキョン)
トビイロホエジカ
サンバー(スイロク)
ニホンジカ
アカシカ
クチジロジカ
Suidae
Sus scrofa
Camelidae
Camelus ferus
Moschidae
Moschus fuscus
Moschus leucogaster
Moschus berezovskii
Moschus chrysogaster
Cervidae
Elaphodus cephalophus
Muntiacus muntjak
Muntiacus reevesi
Muntiacus feae
Cervus unicolor
Cervus nippon
Cervus elaphus
Cervus albirostris
西蔵東部,四川,雲南
西蔵東部,四川,雲南
西蔵南部・東部,四川,甘粛,雲南
西蔵南部,四川,雲南
新疆,青海東部,四川,甘粛
新疆,青海北部,甘粛
雲南
西蔵東部,青海東部,四川,甘粛,雲南
西蔵東部,青海南部,四川,甘粛,雲南
新疆,西蔵北東部,青海,四川,甘粛
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛,雲南
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛
西蔵東部,四川,甘粛,雲南
西蔵東部,四川,甘粛,雲南
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛
西蔵南部
Perissodactyla
7.偶蹄目
新疆,西蔵南東部,青海東部,四川,甘粛,雲南
新疆,青海北部,甘粛
西蔵南東部
西蔵南西部
西蔵南東部,青海東部,四川,甘粛,雲南
西蔵東南部,青海,甘粛,四川,雲南
西蔵東部,青海東部,四川,甘粛,雲南
西蔵南部・東部,四川,雲南
四川,甘粛
西蔵東部,雲南
四川,雲南
四川
西蔵南部,青海東部,四川,甘粛,雲南
西蔵東部,青海,四川,甘粛,雲南
青海チベット横断鉄道周辺に生息する野生動物
ノロ(ノロジカ)
5)ウシ科
ヤク
コウジョウセンガゼル
チルー
チベットガゼル
モウコガゼル
プルジェワルスキーガゼル
スマトラカモシカ(シーロー)
ゴーラル
アカゴーラル
ターキン
ヒマラヤタール
アイベックス
バーラル(ブルーシープ)
アルガリ
8.有鱗目
Capreolus capreolus
Bovidae
Bos grunniens
Gazella subgutturosa
Pantholops hodgsoni
Procapra picticaudata
Procapra gutturosa
Procapra przewalskii
Capricornis sumatraensis
Nemorhaedus goral
Nemorhaedus cranbrooki
Budorcas taxicolor
Hemitragus gemlahicus
Capra ibex
Pseudois nayaur
Ovis ammon
青海東部,四川,甘粛
ミミセンザンコウ
Manis pentadactyla
西蔵東端,四川,雲南
1)リス科
クリハラリス
スウィンホーホオジロシマリス
シマリス
オーストンカオナガリス
イワリス
ダウリアハタリス
オナガマーモット
ヒマラヤマーモット
2)ムササビ科
カオジロムササビ
チベットムササビ
3)ネズミ科
タツアカネズミ
モリアカネズミ
ドブネズミ
オニネズミ
カヤネズミ
4)キヌゲネズミ科
タビキキヌゲネズミ
バラブキヌゲネズミ
ヒナカスナネズミ
スナネズミ
シナモグラネズミ
5)タケネズミ科
シラガタケネズミ
タケネズミ
Sciuridae
Callosciurus erythraeus
Tamiops swinhoie
Tamias sibiricus
Dremomys pernyi
Sciurotamias davidianus
Spermophilus dauricas
Marmota caudata
Marmota himalayana
Petauristidae
Petaurista alborufus
Petaurista xanthotis
Muridae
Apodemus draco
Apodemus sylvaticus
Rattus norvegius
Bandicota indica
Micromys minutus
Cricetidae
Cricetulus migratosius
Cricetulus barabensis
Meriones meridianus
Meriones unguiculatus
Myospalax fontanierii
Rhizomyidae
Rhizomys pruinosus
Rhiaomys sinensis
Arvicolidae(または
Microtidae)
新疆,西蔵,青海,四川
新疆,青海,甘粛
新疆,西蔵北部,青海,四川
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛
甘粛
青海東部
西蔵南東部,青海南部,四川,甘粛,雲南
西蔵南東部,青海南東部,四川,甘粛,雲南
西蔵南東部,雲南
西蔵南東部,四川,甘粛,雲南
西蔵南端
新疆,青海北部
新疆,西蔵,四川,甘粛
新疆,西蔵,四川,甘粛
Pholidota
9.齧歯目
6)ハタネズミ科
マスクラット
7)トビハツカネズミ科
スーチョワントビハツカネズミ
8)トビネズミ科
キタミユビトビネズミ
イツユビトビネズミ
9)ヤマアラシ科
アジアフサオヤマアラシ
マレーヤマアラシ
Ondatra zibethicus
Zapodidae
Eozapus setchuanus
Dipodidae
Dipus sagitta
Allactaga sibirica
Hystricidae
Atherurus macrourus
Hystrix brachyura
西蔵南東部,四川,雲南
西蔵東部,青海南東部,四川,甘粛,雲南
青海東部,甘粛
西蔵東部,四川,甘粛,雲南
四川,甘粛
青海北東部,甘粛
新疆
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛,雲南
四川,甘粛,雲南
西蔵東部,青海東北部,四川,甘粛,雲南
西蔵南東部,青海南東端,四川,甘粛,雲南
西蔵西部
青海東部,四川,甘粛,雲南
四川,雲南
西蔵東部,青海東端,四川,甘粛,雲南
新疆,青海東部,四川,甘粛
青海東部,甘粛
新疆,青海北部,甘粛
甘粛
青海東部,四川,甘粛
四川,雲南
四川,甘粛,雲南
新疆,青海北部
青海南東部,四川,甘粛,雲南
新疆,青海北部,甘粛
青海北東部,甘粛
四川,雲南
雲南
27
太 田
28
遥・他
10.ウサギ目
1)ナキウサギ科
ダウリアナキウサギ
クチグロナキウサギ
カンスーナキウサギ
オオカミナキウサギ
2)ウサギ科
ユンナンノウサギ
ケープノウサギ
チベットノウサギ
ヤルカンドノウサギ
Ochotonidae
Ochotona daurica
Ochotona curzoniae
Ochotona cansus
Ochotona macrotis
Leporidae
Lepus comus
Lepus capensis
Lepus oiostolus
Lepus yarkandensis
表 2 青蔵鉄道
和名
青海北東部,四川,甘粛
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛
西蔵南端,青海,四川,甘粛
新疆,西蔵,青海,四川
四川,雲南
青海北東部,四川,甘粛
新疆,西蔵,青海,四川,甘粛
新疆
線に生息する主要野生動物インベントリ
学名
英語名
目
科
チルー
Pantholops hodgsoni
Tibetan Antelope
偶蹄目,ウシ科
チベットガゼル
Propcapra picticaudata
Tibetan Gazelle
偶蹄目,ウシ科
Pseudois Nayaur
bule sheep
偶蹄目,ウシ科
アルガリ
Ovis ammon
Argali Sheep
偶蹄目,ウシ科
クチジロジカ
Cervus albirostris
White-Lipped Deer
偶蹄目,シカ科
ヤク
Bos mutus
Wide Yak
偶蹄目,ウシ科
Equus kiang
Tibetan Ass
奇蹄目,ウマ科
ヒマラヤマーモット
Marmota Himalayana
Himalayan marmot
齧歯目,リス科
ヒグマ
Ursus arctos
Brown Bear
食肉目,クマ科
チベットノウサギ
Lepus oiostolus
Gray-tailde hare
ウサギ目,ウサギ科
タイリクオオカミ
Canis lupus
Wolf
食肉目,イヌ科
コサックギツネ
Vulpes corsac
Corsac Fox
食肉目,イヌ科
クチグロナキウサギ
Ochotona curzoniac
Black-lipped Pika,Plateau Pika
ウサギ目,ナキウサギ科
オオヤマネコ
lynx lynx
lynx
食肉目,ネコ科
ハマヒバリ
Eremophila alpestris
Shore Lark
スズメ目,ヒバリ科
インドガン
Anser indicus
Bar-headed Goose
カモ目,カモ科
アカツクシガモ
Tadorna ferruginea
Ruddy Shel-duck
カモ目,カモメ科
チャガシラカモメ
Larus brunnicephalus
Brown-headed Gull
チドリ目,カモメ科
オグロヅル
Grus nigricollis
Black-necked Crane
ツル目,ツル科
ヒマラヤハゲワシ
Gyps himalayensis
Himalayan griffon
ハヤブサ目,タカ科
オオノスリ
Buteo hemilasius
Upland Buzzard
ハヤブサ目,タカ科
バーラル
(ブルーシープ)
チベットノロバ
(キャン)
中国国家重点
保護動物リスト
青海チベット横断鉄道周辺に生息する野生動物
29
図 1 チルーの生息域と自然保護区の 布
4.2 チルーの生息地
エリアとなる(図2,図3,図4)
1)チルーの生息地と出産地
2つ目の出産地は,新疆にある。この出産地を利
図1で示したようにチルーの生息域はチベット高
原の北部と南部に広がっていることが
。
用するチルーはチャンタン保護区北西部を生息地と
かった。多
している群れである
(図1,図2)
。2005年には5月
くのチルーはいくつかの保護区に連続して生息して
下旬から6月上旬にかけて北に位置する出産地へ,
おり,この保護区はチベット自治区にあるチャンタ
7月の上旬には生息地へ戻る移動を開始したことが
ン自然保護区,新疆の阿爾金(アルジンサン)自然
確認されている
。
保護区,青海のココシリ自然保護区と三江源自然保
これらのチルーの中でも三江源に生息する個体群
護区を含む。最東の生息域はノーリンフー(Noring
はココシリへ移動する際,鉄道を渡らなければなら
Hu)という湖であり,最西の生息域はインドのラ
ダック で,チ ルーは 東 西 お よ そ 1,600km に 広 が
ず,生息域が 断され,影響が出ている事が予想さ
る 。チルーにはいくつかの繁殖地があると
えら
機のデータから,チルーは越冬地から出産地に向か
れているが,本研究で2ヶ所の繁殖地を特定するこ
う期間より,子供を連れて越冬地へ戻ってくる期間
とができた。三江源自然保護区,アルジンサン自然
が2倍(14日∼16日)長い
保護区,チャンタン自然保護区東部に生息するチ
る鉄道 線付近での滞在は,鉄道の存在が警戒心の
ルーはココシリ自然保護区へと季節移動し,出産場
強いチルーに影響を与えているためと える。
所としてフーテュンノール(Huiten Nur,または
zhuonai lake とも言う)を中心とした草原(steppe)
を利用する。フーテュンノール
(35°30 E,91°50 E)
れる。実際に,2007年8月から受信されている発信
。この十数日間におけ
2)Human footprint
はチベット高原から来る群れを含む少なくとも3つ
Human footprint は,ロードマップを中心に人間
の足跡,
すなわち人間の手が加わっている度合い(値
の個体群の主な出産場所として重要な 地 域 で あ
が 0∼100の間に 布する)
を示し,値が高いほどそ
る
。この3つの個体群とはチャンタン自然保護区
の程度が高くなる。チルーの生息域ではこの値が自
南東部の群れ,青海省の南西,すなわち上記の三つ
然にほぼ0であることから,人の手が加わってない
の高原自然保護区に生息し季節移動してくる群れ,
地域を生息域としていることがわかる
(図2)
。しか
及び東−西の移動パターンを持つ群れである。おそ
し鉄道による 断が えられる三江源とココシリ自
ら く チ ルーは 新 彊 か ら レ シェウーダ ン 湖(Lexi-
然保護区では,human footprint は他の地域より高
くなっており,特に鉄道に って human footprint
(35°40 N,90°10 E)へ移動するた
ewudan lake)
め,このエリアもチルーの保護にとって特に重要な
の値は高いため,人為的影響がある可能性が えら
太 田
30
れる(図2)
。
遥・他
トデータからも,チルーがフーテュンノールへ移動
一方で,チャンタン北西部の生息域における値は
している事が かった。この周辺は越冬地より標高
0で人間の影響はないことが えられる。ただし,
が高い
(図3)。また,SRTM マップからはチルーは
出産地で値が高くなっており,人為的影響が出てい
山間部の平らな高山ステップ地域に繁殖しているこ
る可能性が えられる(図2)
。
とが
かる(図3)。チルーは標高 4,300m∼5,200
3)標 高
m の場所で繁殖し,4,500m の所で越冬しているこ
とが かった。また,PTT の発信記録から2個体の
前述した通り,フーテュンノールは三江源のチ
チルーの行動パターンは標高 4,500∼4,900m の間
ルーの主な出産地であるが,今回のチルーのポイン
をよく移動していることが かった。また,出産地
図 2 チルーの生息域における人間の足跡(human footprint)
(Human footprint とは人間の経済活動などによる環境への負荷としての指標である)
図 3 チルーの
布と鉄道・標高との空間関係(ARGOS 追跡データを用いた)
青海チベット横断鉄道周辺に生息する野生動物
にいたと推測される 2008年7月5日∼13日の間に
布していた標高は,2頭とも,およそ 4,800∼
4,900m であり,最も高い所で出産していることが
31
5.結
論
ココシリ自然保護区と新疆を主産地として利用し
かった。
ているチルーは標高 4,700∼5,000m の所で,相対
これらの解析によって三江源のチルーは標高が高
的に平坦で広い場所を出産地として利用していた。
く,相対的に平坦な地域であるココシリへと出産の
発信機を付けた三江源自然保護区に生息する2頭の
ために移動していると えられる。
チルーは,出産時期には普段の生息地よりも 200∼
チャンタン北西部のチルーの群れは,8月から翌
300m 標高の高いココシリ自然保護区へと移動して
年の5月の間は生息範囲の南部に生息しており,12
いたこと,また,出産時期における植生指数が出産
月にはそこで 尾を行う。群れは約2万 km と広範
地で越冬地より低かったことから,植生の質の高い
囲に散在している。5月から6月に北への移動を開
から出産地へ移動しているとは言えず,植生・標高
始し,6,350m のトゼカンガル(Toze Kangri)の西
の両面で生息環境として厳しい場所を出産地として
の山麓を通り,広大な平原を横断し,ヘイシュイバ
利用していることが示唆された。逆にいえば,
チルー
イフー(Heishi Beihu)湖水 地の中央を通り,や
がて新疆にある出産場所へと入る。そして北緯 35°
は1年間の3 の2を過ごす越冬地では植生の良い
41 東経 82°52 にある湖の東を通り,群れは広域に
地域を利用しているとも言える。
また,
チルーは出産地での滞在期間が 10日前後と
散らばる。何頭かは北と北東の方向に少数で移動し,
短い。チルーは群れで集団で出産時に出るにおいに
起伏の多い Shar Kul 湖の 地に向かう。しかし多
くは丘のある西と北西へ行き,Shar Kul 地を渡
よって天敵が生息地にくることを避けるため,出産
る。出産場所は南北 1,200km に及ぶが,主な出産場
れない。また,山間部の平坦な土地を出産地とする
所は 350km に集中している
場所を 300km も離れた場所に選んでいるのかもし
。またデータ解析
事で,天敵を発見しやすくなり,また天敵が来たと
ではこの主な出産場所の標高は 4,700m∼5,000m
しても丘陵地を登るのが得意なチルーは山へと逃げ
であることが かった。8月から翌年の5月の間の
ることができる。このような安全性がチルーにとっ
生息地は標高 4,400m 以上の高地であることが
て出産場所を選ぶ上で重要になっていることが え
かった
(図4)
。ここのチルーも平坦で広大な地域が
ある場所を主な出産場所として利用している事が
かった。
4)NDVI 値の比較
植食動物のチルーにとって地表面の植生の被覆状
況も季節移動の一つの要因になると えられる。本
研究では人工衛星から得られる正規化 植 生 指 数
(NDVI)を用いて,チルーの生息環境を評価した。
SPOT Vegetation の NDVI の値を5種類に けて
ピクセル数の割合を計算し,出産地であるココシリ
自然保護区と越冬地の三江源保護区で月別に比べた
(図 5a)
。植生指数は,値が高いほど植生の量が多く
活性度が高いことを意味する。出産時期である7月
を含め,ココシリ自然保護区の方が植生指数は低い
種類の割合が高いことが かった。チャンタン北西
部でも出産地のほうが植生指数の低い植物種の割合
が高い(図 5b)
。このことから三高原自然保護区と
チャンタン自然保護区のチルーは共に越冬地より植
物が少なく活性度の低い場所で出産を行っているこ
とが
かった。これは,チルーは良い草を求めて出
産地に移動しているのではなく,他の原因が えら
れる。
図 4 チャンタン自然保護区北西部の標高,およびチ
ルーの出産地への移動ルート
太 田
32
図 5(a) ココシリ自然保護区と三江源自 然 保 護 区 の
NDVI 値の比較
られる。
遥・他
図 5(b) チャンタン北西部における生息地と出産地の
NDVI 値の月別比較
2006: M igratory and calving behavior of
謝
Tibetan antelope population, Acta Theriologica Sinica, Vol.26(2), pp.105-113.
辞
本研究は日本科学技術振興会・科学研究費補助
5) George,B.Schaller.,Kang Aili.,Hashi Tashi-
金・基盤研究(A)19255005(代表:星野仏方)の
Dorjie.,et al.2007:A winter wildlife surveyin
補助で行った成果である。現地調査には姜兆文博士
the northern Qiangtang of Tibet Autonomous
(WM O),呉暁民所長・劉楚光研究員( 西省 物研
究所)
,浅川満彦教授(酪農学園大獣医学部)
,本川
Region and Qinghai Province, China, Acta
Theriologica Sinica, Vol.27(4), pp.309 -316.
雅治博士(京都大)
,崔慶虎博士(中国河南大学)
,
マハムト・ハリク教授(中国新疆大学)のご指導と
6) Andrew, T.Smith. and Yan Xie. 2008: A
guide to the M ammals of China, pp.394-480.
ご協力を頂きました。ここで深く感謝します。
7) Schaller, G. 1998, Wildlife of the Tibetan
引用文献及び参
文献
Steppe,Chicago:Universityof Chicago Press.
8) Lin Xia,Qisen Yang,Zengchao Li,2007:The
1) 呉暁民,王偉,
(編集)
2006:青海チベット鉄道
effect of the Qinghai-Tibet railway on the
設と野生動物の保護,中国・科学出版社.
migration of Tibetan antelope Pantholops
10-50.
(中国語).
2) 星野仏方,姜兆文,劉楚光,吉田剛司,S.Ganzorig 2009:チベット高原横断鉄道の野生動物へ
の影響,第 56回日本生態学会大会講演要旨集.
pp.240-241.
3) Qinghu CUI.2006:Influences of human activities and slope on the habitat of Tibentan
hodgsonii in Hoh-xil National Nature
Reserve, China, Oryx,Vol.41 (3),pp.352-357.
9) S.Ganzorig,H.Buho,Z.jiang,2009:Influence
of the Qinghai-Tibetan railway on the seasonal migration of the Tibetan antelope
(Pantholops hodgsonii),The 56 annual meet-
antelope (Pantholops hodgsoni)based on GIS
ing of the Ecological Society of Japan, pp.
240-241.
in Qinghai province, Thesis of Ph.D Degree,
10) 盛和林,大泰司紀之,陸厚基,
(編著)
2000:中
Graduate School of the Chinese Academy of
国の野生哺乳動物,中国林業出版社.55-100.
Sciences.
4) George, B.Schaller, Kang Aili, Cai Xinbin,
11) 張栄祖ら,1997:中国哺乳類動物の 布,中国
林業出版社.131.
(中国語).
青海チベット横断鉄道周辺に生息する野生動物
33
12) Lin Xia, Qisen Yang, Zengchao Li, Yonghua
目 Carnivora 39種,奇蹄目 Perissodactyla 2種,偶
Wu and Zuojian Feng. 2007. Assessment of
蹄目 Artiodactyla 29種,有鱗目 Pholidota 1種,齧
Traffic Disturbance to M igration of Tibetan
歯目 Rodentia 28種,ウサギ目 Lagomorpha 8種の
Antelopes (Pantholops hodgsonii)-in Hoh-xil
計 132種が生息していることが かった。また,コ
National Nature Reserve,China.Oryx.41(3):
352-357.
コシリ自然保護区と新疆を主産地として利用してい
要
るチルーは標高 4,700∼5,000m の所で,相対的に
平坦で広い場所を出産地として利用している。発信
約
機を付けた三江源自然保護区に生息する2頭のチ
本研究は青海チベット横断鉄道によって生息域が
ルーは,出産時期には普段の生息地よりも 200∼300
断されたと えられるチベット高原に生息する野
生動物のインベントリデータベースを作成すること
m 標高の高いココシリ自然保護区へと移動してい
たこと,また,出産時期における植生指数が出産地
と,生息環境の利用と鉄道の影響についてチルー
で越冬地より低かったことから,植生が良いから出
(Pantholops hodgsoni)を中心に調査した。その結
果,チベット高原に生息する野生哺乳動物には,食
産地へ移動しているとは言えず,植生・標高の両面
虫目 Insectivora 6種,ツパイ目 Scandentia 1種,翼
で生息環境として厳しい場所を出産地として利用し
ていることがわかった。
手目 Chiroptera 8種,霊長目 Primates 10種,食肉
Abstract
The result shows that the major habitation of 132 species of Tibetan plateau wild animals;including 6
species of Insectivora; Tupaia belangeri (Scandentia); 10 species of Primates; 8 species of Chiroptera; 39
species of Carnivora; 2 species of Perissodactyla; 29 species of Artiodactyla; Manis penntadactlya (Pholidota);
28-species of Rodentia; 8-species of Lagomorpha. Pantholops hodgsoni Tibetan antelope or also called as
chiru (Pantholops hodgsonii) is an endemic to the Tibetan plateau. The species has undergone a severe
decline in the past several decades. The population of chiru was formerly subjected to poaching but is now
one of the best protected wildlife in the area. However, the newly built Qinghai-Tibet railway cut across
the population of the chiru, and may disturb the migratory of population. In this paper we assess the
ranging patterns of migratorychiru in the Tibetan plateau in relation to the Qinghai-Tibet railway. We use
Argos Satellite Telemetry System on two chiru to quantify the time spent in different parts of the Plateau
with different levels of NDVI.
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