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研究成果の公開 - 国立民族学博物館

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研究成果の公開 - 国立民族学博物館
研究成果の公開 ─ 最近開催されたシンポジウムから
みんぱく公開講演会
「なんだ ? 日本の文化って
―芸能から MANGA まで」
日時:2013年3月24日
(日)
10:00∼18:00
場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
主催:国立民族学博物館
企画:竹沢尚一郎(国立民族学博物館)
機関研究「文化遺産の人類学―グローバ
ル・システムにおけるコミュニティとマテ
リアリティ」
国際シンポジウム
日時:2013年3月22日
(金)
18:30∼20:45
場所:オーバルホール
主催:国立民族学博物館・毎日新聞社
文化遺産はコミュニティをかた
どるか? アフリカの事例から
昨今、漫画やアニメ等の日本文化が輸出
日時:2013年5月27日(月)∼28日(火)
場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
主催:国立民族学博物館
企画:飯田 卓(国立民族学博物館)
され、国外で新しい日本ブームを引き起こ
している。また、世界遺産への登録や、震
災後の文化財の救援・保護、無形文化財の
継承等への関心の高まりを受けて、いま改
本シンポジウムでは、文化遺産とコミ
めて日本文化とは何かが問い直されている。
そこで、内からと外からみた日本文化
ュニティとの現代的な関わりを明らかにす
をテーマに 2 つの発表をおこなった。ひ
るため、ひとつの仮説をめぐって発表と討
とつは笹原亮二(国立民族学博物館)によ
論がおこなわれた。その仮説とは、「コミ
ュニティという受け皿に記憶や文化が満た
る発表で、南九州から奄美・沖縄の各地で
地震や津波、台風や竜巻のような自然
されるのではなく、逆に現代では、記憶や
を通じ、国や文化の境界について考えた。
の災害から、戦争や内戦、飢饉、大規模事
文化遺産を核としてコミュニティがたち現
もうひとつは、
王向華(香港大学)により、
故にいたるまで、世界は悲惨な出来事=カ
れる場合がある」というものである。今回
日本文化の受け入れられ方の違う香港と台
タストロフに満ちている。人びとのアイデ
は、ローカルな価値基準にもとづいたコミ
湾がとりあげられ、両国のアイデンティテ
ンティティのあり方に影響を与えてきたこ
ュニティの動きが活発なアフリカ地域を、
ィ形成における日本文化の役割を、両者の
れらの出来事に、博物館はどう立ち向かう
とくにとりあげた。
日本文化を受け入れた経済政治的な背景の
べきなのか。
おこなわれてきた民俗芸能の錯綜する実態
9 つの事例発表をふまえ、総合討論で論
博物館の重要な使命に、来館者に対し
じられたのは、文化遺産の表現(祭事や民
て明確なメッセージを伝えることで、対話
芸品、写真、映画、展示など)とその担い
する一面的な理解を刷新し、
異文化と混淆・
や思索を喚起することがある。であれば、
手との相互規定的な関係である。文化遺産
共生しながら発展してきた日本文化のダイ
博物館はこれらの出来事を積極的に展示し
の表現のしかたは、担い手どうしのあいだ
ナミズムについて考える機会の提供を試み
ていくべきなのではないか。
でもしばしば論争を呼ぶため、コミュニテ
違いに着目して比較した。
これらの発表を通じて、日本文化に対
た。
しかし、それにあたってはいくつかの
ィの力学に大きな影響をおよぼす。コミュ
留意が必要である。1.博物館の展示が陳
ニティの構成や価値観が変われば、文化遺
腐な意味付与や特定の思想に偏ることな
産の表現のしかたも変わっていく。こうし
く、広く議論を喚起するものになるには何
たプロセスには、グローバルな政治経済や、
に留意すべきか。2.大規模なカタストロ
「伝統」擁護者もはたらきかける。文化遺
フであれば、展示がその全体像を再現する
産は、プロダクツというよりプロセスであ
ことは不可能である。にもかかわらず、展
るというのが、シンポジウム参加者の合意
示をおこなうことが必要だと何ゆえに正当
点となった。
化できるのか。3.大規模な災害や出来事
は多くの人命とモノを破壊する。そのとき、
残された限られたモノでそれを再現しよう
と思えばいかなる技法が必要なのか。4.
これらの出来事は当事者の心に深い傷跡を
残すものだが、当事者を傷つけることのな
機関研究「モノの崇拝:所有・収集・表象
い展示とはいかなるものであるのか。
国際シンポジウム
ポーランドにおける戦争展示に関する発表
研究の新展開」
博物館は悲惨な記憶をどう展示
するか
以 上 の 課 題 に 対 し て、 日 本、 ド イ ツ、
と、2 つの震災(阪神淡路と東日本)の展
示に関する発表がおこなわれ、熱心な討議
へと続いた。
No. 141 民博通信
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