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波乱の幕開けとなった 2016 年の注目点

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波乱の幕開けとなった 2016 年の注目点
No.5
2016 年 1 月 14 日
波乱の幕開けとなった 2016 年の注目点
公益財団法人 国際通貨研究所
経済調査部 上席研究員 森川 央
2016 年の金融市場は、大荒れの幕開けとなった。株価は世界的に下落し、円安見通し
が主流のなか円高も進行、そして原油価格が 1 バレル 30 ドルに下落した。以下では、今
年の注目点と考えられる中国景気と原油市場についての注目材料と、日本にとって気にな
るドル円相場の見方について参考になるチャートを紹介したい。
① 銅相場
年初の波乱のきっかけは、やはり中国株の大幅下落であろう。昨年 8 月の「チャイナ・
ショック」への対応で中国政府は大株主の株式売却を半年停止、その期限が 1 月 8 日に迫
っていた。政府は時間稼ぎをする間に経済の持ち直しを期待したのだろうが、製造業 PMI
は悪化が続き、けん引役を期待した非製造業についても、PMI 指数は 12 月 50.2 に鈍化し
た。この失望と停止期間明けが重なったことが急落の原因だったと思われる。
中国景気の更なる悪化は、日本及び世界経済にとって大きな不安材料である。だが、中
国経済の動きを捉えることは、統計の信頼性の問題もありなかなか難しい。
そうした中で、海外の一部アナリストは銅価格を重視している。銅価格は中国の需要で
決まるといわれ、中国の成長率を反映する鏡として扱われている。銅価格は足元で 4,300
ドル台(12 日 4,342 ドル/㌧)に下落してきており、鈍化傾向が続いていることを示唆し
ている。銅の値動きは今後もウォッチしておく価値があるだろう。
図 1. 中国の成長率と銅価格
(前年比、%)
(ドル/t)
14
14000
中国の実質成長率(左)
12
12000
銅価格(右)
10
10000
8
8000
6
6000
4
4000
2000
2
2008
2009
2010
2011
2012
(資料)トムソン・ロイター
1
2013
2014
2015
② 原油価格
中国景気の減速は原油価格の低下を招き、産油国の財政を悪化させる原因となっている。産
油国は財政赤字の穴埋めのために政府ファンドの投資を引き揚げ始めたといわれており、それ
が日本株の下落を手伝っている。しかし、原油価格の下落には需要の低迷に加え、もちろん供
給の増加も寄与している。
昨年前半までは、石油を増産し値崩れを引き起こしている「悪役」は米国であったが、足元
では増産の主役が代わってきている。それを示唆しているのが、北海ブレント価格に対する
WTI(米国産)とドバイ原油のかい離率の動きである。
9 月以降、北海ブレントとのかい離率を拡大させているのは中東産のドバイ原油である。足
元でかい離率は 17%に達しており、
それだけドバイ原油がだぶついていることを示している。
背景にあるのは、サウジアラビアとイランの対立であろう。
両国の対立はここにきてエスカレートしており、減産に向け協調する見通しはたっていない。
ドバイ原油の割安感は中東諸国のシェア争いの「指標」であり、これが続く限り原油価格の反
発は難しいのではないか。原油価格をみるうえで、ここに注目しておく価値はあろう。
図 2. 産地別原油価格のかい離率
10.0%
5.0%
0.0%
-5.0%
-10.0%
-15.0%
ドバイ
-20.0%
WTI
-25.0%
15/1
15/3
15/5
15/7
15/9
15/11
16/1
(資料)トムソン・ロイター
③ ドル円相場
米国の利上げ局面はドル高円安という思い込みが強いが、90 年代以降の 3 回の利上げ局面
をみると、趨勢は円高である。
図 3 は 90 年代以降の米国のフェデラルファンド・レートとドル円相場の動きと、各利上げ
局面の拡大図である。円高の規模はマチマチであるが、3 回とも利上げ開始前に円安のピーク
があり、利上げ後は円高になっている。円安へトレンド転換するのは、早くても半年後であり、
94 年の場合は転換するまでに 2 年以上かかっていた。
通説に反して円高になるのは、景気に配慮するため利上げは慎重に、十分告知してから実施
される傾向があるため、市場は事前に利上げを織り込むからと思われる。その結果、
「バイ・
オン・ザ・ルーマー、セル・オン・ザ・ファクト(噂で買い、事実で売る)」になるのだろう。
2
図 3. 米政策金利とドル円レート
150
(円/ドル)
(%)
(円/ドル)
8
140
ドル円レート(左)
7
130
FFレート(右)
6
120
110
100
4
110
80
70
1
60
1991
0
1994
1997
2000
2003
2006
2009
2012
(円/ドル)
2015
(%)
120
110
80
60
93/9
94/9
4
80
98/10
FFレート(右)
3.5
3
99/4
99/10
00/10
00/4
(円/ドル)
(%)
4.5
4
3.5
115
3
4.5
110
2.5
4
105
2
ドル円レート(左)
3
FFレート(右)
2.5
95/3
ドル円レート(左)
90
120
2
94/3
4.5
100
6
3.5
70
5
125
5
90
5.5
6.5
5.5
100
6.5
6
120
2
7
130
5
3
90
(%)
140
95
90
04/1
95/9
1.5
100
ドル円レート(左)
1
FFレート(右)
0.5
0
04/7
05/1
05/7
(資料)トムソン・ロイター
もっとも今回は、利上げペースは極めて緩慢で、足元の混乱を受けて利上げシナリオ自体に
も見直しが入りつつある。過去 3 回とは違う展開になる可能性がある。いずれにせよ先入観に
とらわれず、過去のデータを正確に確認して見通しをたてる必要があるだろう。
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