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ナノドットを電荷保持ノードとする 薄膜トランジスタ型不揮発性メモリの
ナノドットを電荷保持ノードとする 薄膜トランジスタ型不揮発性メモリの研究 博士学位論文 2008 年 3 月 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 物質創成科学専攻 市川 和典 目次 第 1章 緒言 1-1 研究背景 1 1-2 システムオンパネルとは 3 1-3 微細化への課題 5 1-4 バイオテクノロジーを用いたデバイスの提案 6 1-5 フラッシュメモリについて 7 1-6 研究の位置づけと特徴 11 1-7 本研究で目指すフラッシュメモリのメモリ特性 12 1-8 本論文の構成 12 第 2章 Side-Wall 電 極 型 PECVD に よ る Si ド ッ ト の 形 成 と MOS キ ャ パ シ タ の 電 気 特 性 評 価 2-1 はじめに 2-1-1 Si ド ッ ト を 用 い る 利 点 つ い て 14 2-1-2 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ に つ い て 15 2-1-3 Side-Wall 電 極 型 PECVD に つ い て 17 2-2-1 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 作 製 19 2-2-2 Si ド ッ ト 形 状 評 価 21 2-2-3 C-V 測 定 に よ る Si/SiO 2 の 界 面 評 価 23 2-2-4 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の C-V 特 性 お よ び I-V 特 性 評 価 27 2-2-5 C-V 特 性 の 周 波 数 依 存 性 お よ び Sweep rate 依 存 性 の 評 価 30 2-2-6 1 ドットに保持される電子数の計算 32 2-2-7 Si ド ッ ト の 粒 径 の ば ら つ き と し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 の 関 係 34 2-2-8 ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド 効 果 と 低 温 C-V 測 定 35 2-2-9 電流測定および容量測定からの電荷量の比較 38 2-2 2-3 実験 39 まとめ i 第 3章 Si ド ッ ト MOSFET の 作 製 と メ モ リ 特 性 評 価 3-1 はじめに 41 3-2 Si ド ッ ト MOSFET の メ モ リ 特 性 評 価 41 3-2-1 Si ド ッ ト MOSFET の 作 製 手 順 と 評 価 41 3-2-2 MOSFET の 初 期 特 性 43 3-2-3 入力特性評価 44 3-2-4 リテンションタイム(電子の保持時間)の測定 47 3-3 49 電子の注入機構 3-3-1 ドレイン電流の経過時間変化 49 3-3-2 入力特性の充電時間依存性 50 3-3-3 Si ド ッ ト へ の 電 荷 注 入 量 の 算 出 51 3-3-4 電子の注入の電圧依存性 51 3-3-5 電子の注入の温度依存性 52 3-3-6 信頼性評価 53 3-4 54 まとめ 第 4章 積 層 型 Si ド ッ ト MOS メ モ リ の 電 気 特 性 評 価 4-1 はじめに 56 4-2 実験 57 4-2-1 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ お よ び MOSFET の 作 製 57 4-2-2 積 層 型 Si ド ッ ト 形 状 58 4-2-3 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の C-V 特 性 評 価 59 4-2-4 注入電子量依存性 59 4-3 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET の 特 性 62 4-3-1 入力特性評価 62 4-3-2 電子の注入のゲート電圧依存性 63 4-3-3 リテンションタイムの測定 64 4-4 まとめ 65 ii 第 5章 Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 と メモリ特性評価 5-1 はじめに 67 5-2 poly-Si TFT と MOSFET 68 5-3 実験 69 5-3-1 低 温 poly-Si TFT メ モ リ 作 製 プ ロ セ ス に お け る 改 良 点 69 5-3-2 Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 と 評 価 70 5-3-3 低 温 poly-Si TFT の 初 期 特 性 72 5-3-4 低 温 poly-Si 基 板 上 の Si ド ッ ト の 形 状 評 価 73 5-3-5 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 入 力 特 性 評 価 74 5-3-6 リテンションタイムの測定 78 5-3-7 トンネル酸化膜厚依存性 78 5-4 高圧水蒸気処理による特性改善効果 79 5-4-1 高圧水蒸気処理とは 79 5-4-2 高圧水蒸気処理後の特性 80 5-4-3 リテンションタイムの測定 82 5-5 83 まとめ 第 6章 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 と メモリ特性評価 6-1 フェリチンコアの特徴 84 6-2 フェリチンコアの形成 85 6-2-1 アポフェリチンへのコア導入と精製 85 6-2-2 ゲルろ過によるフェリチン単量体(モノマー)の採取 86 6-2-3 純水置換法 87 6-3 87 実験 6-3-1 APTES 修 飾 膜 を 利 用 し た フ ェ リ チ ン コ ア の 高 密 度 吸 着 87 6-3-2 フェリチンコアの形状評価 89 6-3-3 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 90 6-3-4 入力特性評価 91 6-3-5 クーロンブロッケードについて 94 iii 6-3-6 リテンションタイムの測定 95 6-3-7 書き込み消去特性評価 96 6-3-8 信頼性の測定 97 6-4 超 高 密 度 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ 98 6-4-1 はじめに 98 6-4-2 フェリチンコアの密度評価 98 6-4-3 高 密 度 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 入 力 特 性 99 6-4-4 リテンションタイムの測定 100 6-5 まとめ 第 7章 結論 7-1 本論分の主要結果 102 7-2 今後の課題と指針 104 参考文献 105 研究業績 108 謝辞 112 iv 第1章 緒言 1-1 研 究 背 景 大 量 の 情 報 を 高 速 に 処 理 す る こ と の で き る コ ン ピ ュ ー タ の 出 現 に よ り 、高 度 情 報 化 社 会 が 到 来 し 、情 報 通 信 機 器 の 高 速 化 、高 機 能 化 や 家 電 製 品 の デ ジ タ ル 化 が 急 速 に 進 展 し 、生 活 は よ り 便 利 に よ り 豊 か に な っ た 。さ ら に 、ネ ッ ト ワ ー ク が 隅 々 ま で 行 き 渡 り 、時 間 や 場 所 の 制 限 を 受 け ず 、必 要 と す る 情 報 や 知 識 を 、誰 も が 自 由 に 共 有 で き る ブ ロ ー ド バ ン ド ネ ッ ト ワ ー ク ( Broad Band Network) が 構 築 さ れ つ つ あ る 。こ れ ら の 背 景 に は 大 規 模 集 積 回 路( LSI:Large Scale Integration) や 、 液 晶 デ ィ ス プ レ イ ( LCD: liquid crystal display) に み ら れ る よ う な め ざ ま し い 半 導 体 技 術 の 進 歩 に よ る も の で あ る [1]。 従 来 型 の ブ ラ ウ ン 管( CRT: Cathode Ray Tube)は 安 価 で 高 精 細 で あ る が 、奥 行 き や 軽 量 化 に 課 題 が あ り 、 CRT に 代 わ る デ ィ ス プ レ イ 技 術 と し て 、 液 晶 デ ィ ス プ レ イ 、 プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ ( PDP : Plasma Display Panel)、 エ レ ク ト ロ ル ミ ネ ッ セ ン ス デ ィ ス プ レ イ( ELD : Electro Luminescence Display)な ど の フ ラ ッ ト パ ネ ル デ ィ ス プ レ イ ( FPD : Flat Panel Display) が 注 目 さ れ て い る 。 そ の 中 で も 液 晶 デ ィ ス プ レ イ は 、こ れ ら の デ ィ ス プ レ イ の 中 で も 薄 く て 軽 く 、消 費 電 力 の 少 な い た め 、携 帯 電 話 や デ ジ タ ル カ メ ラ 、ノ ー ト パ ソ コ ン な ど の 携 帯 機 器 に使用されている。 そ の 駆 動 方 式 は 、現 在 ア ク テ ィ ブ・マ ト リ ッ ク ス 駆 動 が 主 流 で あ り 、マ ト リ ッ クス状に構成された表示画素の一つ一つにスイッチ素子を搭載したものである。 液 晶 デ ィ ス プ レ イ の 画 素 部 分 の 等 価 回 路 を 図 1-1 に 示 す 。こ の ス イ ッ チ 素 子 に は 、 薄 膜 ト ラ ン ジ ス タ ( TFT: Thin Film Transistor) が 用 い ら れ 、 走 査 線 を 介 し て ゲ ー ト 電 極 に 選 択 電 圧 が 印 加 さ れ る と 、信 号 線 を 介 し て ド レ イ ン 電 極 に 印 加 さ れ た 信 号 電 圧 が 、ソ ー ス 電 極 、画 素 電 極 か ら 液 晶 と 補 助 容 量 に 蓄 積 さ れ る [ 2 ] 。ゲ ー ト 電 圧 に 非 選 択 電 圧 が 印 加 さ れ る と 、液 晶 と 補 助 容 量 に 印 加 さ れ た 電 圧 は 保 持 さ れ る こ と に な る 。こ の 動 作 を 走 査 線 ご と に 順 次 行 い 、デ ィ ス プ レ イ 全 体 を 表 示 す る 。 こ の よ う に 、 液 晶 デ ィ ス プ レ イ 内 で の TFT の 役 割 は 非 常 に 大 き く 、 高 精 細 化 な ど の 性 能 能 向 上 に は 、 微 細 化 、 移 動 度 、 S 値 ( Subthreshold)、 信 頼 性 な ど が重要となる。 1 信号電極駆動回路 走査電極 信号電極 付加容量 走査電極駆動回路 液晶セル TFT 共通電極 図 1-1 ア ク テ ィ ブ マ ト リ ク ス LCD 付 加 電 極 方 式 の 等 価 回 路 TFT に は 形 成 方 法 や 結 晶 化 の 温 度 に よ っ て 、非 晶 質 シ リ コ ン( a-Si: amorphous silicon)TFT、高 温 poly-Si TFT( HTPS-TFT:High temperature poly-Si TFT) 低 温 poly-Si TFT( LTPS-TFT:Low temperature poly-Si TFT)に 分 け ら れ る 。 そ れ ぞ れ の TFT の 特 徴 を 表 1-1 に 示 す 。 液 晶 デ ィ ス プ レ イ に は 開 発 当 初 、 a-Si TFT が 用 い ら れ 、 無 ア ル カ リ ガ ラ ス 基 板 上 に プ ラ ズ マ CVD( PECVD: Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition) 法 を 利 用 し て 、 約 350℃ の 基 板 温 度 で 堆 積 し 、安 価 で 大 面 積 に TFT を 作 製 し て き た [ 3 - 4 ] 。し か し 、1983 年 ご ろ か ら a-Si TFT に 比 べ 電 界 効 果 移 動 度 が 100 倍 以 上 高 い 、 poly-Si TFT の 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ る よ う に な り 、1986 年 a-Si 膜 を エ キ シ マ レ ー ザ ー ア ニ ー ル( ELA: Excimer Laser Annealing) に よ る 結 晶 化 を 行 い 、 そ の 技 術 を 用 い た 低 温 poly-Si TFT の 作 製 が 報 告 さ れ て 以 来 、 そ の 主 役 は 低 温 poly-Si TFT へ と 変 わ り つ つ あ る [ 5 - 1 0 ] 。 さ ら な る 移 動 度 の 向 上 を 目 指 し 、 poly-Si の 大 粒 径 化 の 研 究 が 盛 ん に な り 、 1992 年 東 工 大 の 松 村 ら に よ っ て ELA 誘 起 ラ テ ラ ル 成 長 で 大 結 晶 粒 を 形 成 で き る 、 位 相 制 御 ELA( PMELA : Phase- modulated ELA) 法 や [ 11 ] 、 PMELA の 問 題 点 で あ る 間 隙 揺 ら ぎ を 抑 制 し た 、振 幅・位 相 制 御 PMA-ELA ( PAMELA : Phased and Amplitude Modulated ELA)が 提 案 さ れ [ 1 2 ] 、ELA を 用 い た 結 晶 の 大 粒 径 化 の 研 究 は 日 に 日 に 進 歩 し て い る 。そ れ に 伴 い 、低 温 poly-Si TFT に お い て も 電 界 効 果 移 動 度 は 約 500 cm 2 /Vs を 有 し 、単 結 晶 Si 並 の 移 動 を 達 成 し つ つ あ る 。こ の よ う な 低 温 poly-Si TFT の 高 移 動 度 化 に よ り 、画 素 駆 動 回 路 と デ ィ ス プ レ イ を 同 一 基 板 上 に 作 製 し た シ ス テ ム オ ン パ ネ ル ( SOP : System On Panel) が 次 世 代 デ ィスプレイとして注目されている。 2 表 1-1 各 TFT の 特 徴 TFT の 種 類 成膜方法 温度 基板 大面積 信頼性 コスト 移動度 a-Si TFT CVD 低温 ガラス ○ △ ○ × 高 温 poly-Si a-Si を 熱 処 理 高温 石英 × ○ × △ 低 温 poly-Si a-Si を レ ー ザ ー 低温 ガラス ○ ○ ○ ◎ TFT により結晶化 TFT a-Si の 100 倍 1-2 シ ス テ ム オ ン パ ネ ル と は 画 素 駆 動 回 路 と デ ィ ス プ レ イ を 同 一 基 板 上 に 作 製 が 実 現 す れ ば 、部 品 点 数 が 削 減 で き 、外 部 回 路 の 接 続 数 を 大 幅 に 低 減 で き 、信 頼 性 の 向 上 や 、コ ス ト ダ ウ ン や 組 み 立 て の 簡 便 化 に つ な が る 。ま た 、応 用 機 器 の 実 装 面 積 の 削 減 に よ る 小 型 化 や 、 低消費電力化が可能となり、ユビキタス社会の扉が開かれると言われている [13-14]。 2002 年 に ソ ニ ー が 低 温 poly-Si TFT 技 術 を 用 い て 、PDA( Personal Digital Assistant ) 用 の 26 万 色 表 示 の Half-VGA ( Video Graphics Array ) ( 320-RGB-480)TFT-LCD に 要 求 さ れ る す べ て の 駆 動 回 路 を 、ガ ラ ス 基 板 上 に 世 界 で 初 め て 成 功 し た [ 1 5 ] 。 更 に 、 2007 年 に NEC が 4.1 型 な が ら WVGA ( 800×480pixel) 表 示 を 実 現 す る な ど [ 1 6 ] 、 多 く の 企 業 や 研 究 機 関 で シ ス テ ム オ ンパネルの研究がされている。 ゲ ー ト ド ラ イ バ や デ ー タ ド ラ イ バ な ど を 同 一 基 板 上 に 形 成 し 、コ ン ト ロ ー ラ や コ ン バ ー タ な ど は 外 部 よ り 接 続 し た シ ス テ ム オ ン パ ネ ル を 、シ ス テ ム オ ン パ ネ ル 第 一 世 代 ( 図 1-2) と 言 わ れ る の に 対 し 、 コ ン ト ロ ー ラ や コ ン バ ー タ を 同 一 基 板 上 に 作 製 し た シ ス テ ム オ ン パ ネ ル は 、シ ス テ ム オ ン パ ネ ル 第 二 世 代 と い わ れ て い る ( 図 1-3) [ 1 7 ] 。 さ ら に 第 二 世 代 に 続 く 、シ ス テ ム オ ン パ ネ ル 第 三 世 代 と し て 、電 界 効 果 ト ラ ン ジ ス タ ( MOSFET : Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor) で 用 い ら れ て い た 微 細 加 工 技 術 や 、 CMOS (Complementary MOS) 回 路 技 術 を 融 合 3 さ せ 、 周 辺 の 駆 動 回 路 だ け で は な く 、 中 央 演 算 処 理 装 置 (CPU : Central Processing Unit)、 DRAM( Dynamic random access memory)、 SRAM( Static Random Access Memory)、 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ な ど の メ モ リ 素 子 や LSI を 、 デ ィ ス プ レ イ と 同 一 基 板 上 に 作 製 し 、外 部 接 続 を 一 切 行 わ な い シ ス テ ム オ ン パ ネ ル の 実 現 に 向 け て 研 究 が さ れ て い る( 図 1-4) [ 1 7 ] 。そ の 実 現 の 背 景 に は 、主 流 と な っ て い た レ ー ザ ー に よ る poly-Si の 結 晶 化 の 他 に 、 Ni シ リ サ イ ド を 結 晶 核 と し て Si 結 晶 成 長 さ せ 、 低 温 で 大 粒 径 の 結 晶 を 成 長 さ せ る 金 属 誘 起 固 相 成 長 法 ( MIC: Metal Induced Crystallization) [ 1 8 - 1 9 ] や 金 属 誘 起 横 方 向 成 長 法 ( MILC: Metal Induced Lateral Crystallization)[ 2 0 - 2 1 ] や 熱 プ ラ ズ マ ジ ェ ッ ト 法 [ 2 2 ] な ど 、Poly-Si の 結 晶 粒 の 大 粒 径 化 技 術 の 進 歩 に よ る も の で あ る 。ま た 、高 圧 水 蒸 気 処 理 装 置 な ど を 用 い た 、 界 面 準 位 低 減 技 術 や LSI の 集 積 技 術 の 進 歩 も 大 き く 、 2007 年 に NEC が 230k ビ ッ ト DRAM と 、6 ビ ッ ト DAC、コ ン ト ロ ー ラ な ど で 構 成 さ れ る 周 辺 回 路 を 液 晶 デ ィ ス プ レ イ と 同 一 ガ ラ ス 基 板 上 に 形 成 し 、ガ ラ ス 基 板 上 に 集 積 し た 回 路 と し て は 世 界 最 大 規 模 と な る 、 40 万 個 の ト ラ ン ジ ス タ を 含 む シ ス テ ム LSI の 構 築 に 世 界 で 初 め て 開 発 に 成 功 し て い る [ 2 3 ] 。 そ し て 第 四 世 代 と し て 、プ ラ ス チ ッ ク な ど の 安 価 な フ レ キ シ ブ ル 基 板 上 に 、第 三 世 代 に 搭 載 さ れ た 周 辺 回 路 や CPU や メ モ リ な ど を 形 成 し フ レ キ シ ブ ル シ ー ト コ ン ピ ュ ー タ を 作 製 す る こ と で あ る ( 図 1-5)。 こ の 実 現 に よ り 、 衣 服 に コ ン ピ ュ ー タ を 取 り 付 け た ウ エ ア ラ ブ ル デ ィ ス プ レ イ や 壁 掛 け テ レ ビ 、商 品 な ど に 付 け る IC( Integrated Circuit)タ グ が 実 現 可 能 と な り 、ユ ビ キ タ ス ネ ッ ト ワ ー ク 社 会 の 実 現 に 大 き く 前 進 す る 。 し か し 、 プ ラ ス チ ッ ク 基 板 上 に 直 接 TFT を 作 製 す る に は 、低 温 プ ロ セ ス 、熱 や 水 分 な ど で の 基 板 の サ イ ズ 変 化 、基 板 の 反 り な ど の 課 題 が あ る 。ま た 、プ ラ ス チ ッ ク 基 板 の 耐 熱 温 度 は 、一 般 的 に プ ラ ス チ ッ ク 基 板 と し て 用 い ら れ る ポ リ カ ー ボ ネ ー ト ( Polycarbonate) や ポ リ エ チ レ ン ナ フ タ レ ー ト ( PEN : polyethylene naphthalate ) や ポ リ エ ー テ ル ス ル ホ ン (PES : polyethersulfone)で 約 200℃ 程 度 で あ り [ 2 4 ] 、 従 来 の a-Si の 堆 積 温 度 は 300℃ 程 度 に 比 べ 低 い 。こ れ ま で 直 接 TFT 作 製 技 術 が 研 究 さ れ て き た が [ 2 5 - 2 6 ] 、低 温 プ ロ セ ス は 、 TFT の 駆 動 電 流 の 低 下 、 OFF 電 流 の 増 加 に よ る ON/OFF 比 の 低 下 や 、 信 頼 性 の 低 下 を 引 き 起 こ し て し ま う 。 現 在 フ レ キ シ ブ ル TFT は 、 一 度 従 来 の 低 温 poly-Si TFT の 技 術 を 用 い て TFT を 作 製 し 、 プ ラ ス チ ッ ク 基 板 に 転 写 す る 転 写 技 術 が 用 い ら れ て い る が 、 コ ス ト な ど に 問 題 が あ り 課 題 は 多 い [27]。 4 図 1-2 図 1-4 システムオンパネル第 1 世代 図 1-3 システムオンパネル第 3 世代 図 1-5 システムオンパネル第 2 世代 システムオンパネル第 4 世代 1-3 微 細 化 へ の 課 題 TFT の 高 性 能 化 に は 、 移 動 度 の 増 加 と チ ャ ネ ル 長 の 微 細 化 や ゲ ー ト 絶 縁 膜 の 薄 膜 化 が 重 要 で あ り 、 今 後 は LSI 並 み の 微 細 加 工 技 術 を 用 い て 、 よ り 高 性 能 な TFT を 作 製 す る こ と が 必 要 に な る 。 こ れ ま で の LSI の 集 積 技 術 は 、 そ の 集 積 率 が 3 年 で 4 倍 に な る と い う ム ー ア の 法 則 に 従 っ て 現 在 に い た る ま で 成 長 し て き た 。近 年 の 集 積 回 路 は 、高 速 化 や 低 消 費 電 力 化 や 高 集 積 化 へ の 要 求 に は MOSFET を 微 細 化 す る こ と で 達 成 し て き た [28]。 そ の 基 盤 と な る 技 術 と し て 、 フ ォ ト リ ソ グ ラ フ ィ ー を 主 流 と し て 微 細 化 を 行 っ て き た が 、 こ の 後 の MOSFET の ゲ ー ト 長 は ITRS ( International Technology Roadmap for Semiconductors)の 予 測 に よ る と 、2015 年 に は 10nm に 達 す る と み ら れ 、リ ソ グ ラ フ ィ ー の 技 術 は 光 の 波 長 に よ る 制 限 で 加 工 限 界 に 達 する。そこで、フォトリソグラフィーに変わる加工技術として電子線や X 線を 5 用いたリソグラフィーが用いられており、ナノメートルの加工が可能であるが、 コ ス ト や 生 産 効 率 な ど 課 題 が 残 る 。さ ら に 微 細 化 に よ り 、駆 動 電 流 な ど は 向 上 す るものの、短チャネル効果が顕著に現れ、パンチスルーやしきい値電圧の低下 ( V t h ロ ー ル オ フ )や サ ブ ス レ ッ シ ョ ル ド 係 数 S の 劣 化 に よ り 、オ フ の リ ー ク 電 流 が 増 大 す る 。そ の た め 、従 来 の デ バ イ ス 構 造 で は 実 現 困 難 で あ り 、LDD( Lightly doped drain)構 造 [ 2 9 ] や ダ ブ ル ゲ ー ト 構 造 、FinFET 構 造 [ 3 0 ] な ど 三 次 元 的 な マ ル チゲート構造などを用いた、短チャネル効果抑制技術が必要となる。 ゲ ー ト 絶 縁 膜 に つ い て は 、 MOSFET の ス ケ ー リ ン グ 則 に よ る と 、 今 後 の 微 細 化 を 行 う こ と で SiO 2 の 有 効 膜 厚 ( EOT : Equivalent Oxide Thickness) は 1nm で あ る と い わ れ て い る 。こ の 厚 さ で は 酸 化 膜 を 流 れ る ト ン ネ ル 電 流 が 増 加 し 、集 積 回 路 の 待 機 時 さ え 消 費 電 力 が 非 実 用 的 に 大 き く な る 。そ こ で 、こ れ ま で ゲ ー ト 絶 縁 膜 に 用 い ら れ て き た SiO 2 に 代 わ る 材 料 と し て 、高 誘 電 率 材 料( High-k 材 料 ) が 盛 ん に 研 究 さ れ て い る [ 3 1 - 3 2 ] 。こ の よ う に 諸 問 題 に よ り 今 後 、MOSFET や TFT の特性向上には新材料や新構造の導入と新しいナノ構造作製技術の開発が望ま れている。 1-4 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー を 用 い た デ バ イ ス の 提 案 現 在 の バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー 分 野 に お け る 研 究 は め ざ ま し く 発 展 し て い る 。こ の 分 野 の 基 本 と な る サ イ ズ 単 位 は 、nm あ る い は 分 子 単 位 で あ り 、こ の よ う な ナ ノ メ ー ト ル サ イ ズ の 材 料( ナ ノ ブ ロ ッ ク )が 自 己 組 織 的 に 組 み 上 が る こ と に よ り 微 細 構 造 を 構 築 し て い る 。半 導 体 の 分 野 で は 、フ ォ ト リ ソ グ ラ フ ィ ー に 代 表 さ れ る よ う に 、大 き な も の を 削 る こ と で 、小 さ い も の を 作 製 す る ト ッ プ ダ ウ ン 方 式 が 行 わ れ て き た が 、生 物 の 世 界 で は 、小 さ い も の か ら 積 み 上 げ て 大 き い も の を 作 製 す る 、ボ ト ム ア ッ プ 方 式 が 基 本 的 手 法 と な っ て い る 。こ の ボ ト ム ア ッ プ 方 式 を 可 能 に し て い る の は 「 DNA」 と い う 設 計 図 で あ る 。 そ の 設 計 図 に よ っ て 、 全 く 同 一 の 生 体 超 分 子 が 合 成 さ れ る 。新 し い ナ ノ 構 造 作 製 技 術 の 構 築 を 目 指 す 時 、生 物 が 長年培ってきたボトムアップの手法を模倣することは非常に期待できるアプロ ー チ で あ る と 考 え ら れ る 。 こ こ で 、 同 じ 設 計 図 ( DNA) か ら 作 ら れ る 全 く 同 じ 構造をもつタンパク質に無機材料を担持させて「ナノブロック」として利用し、 ナ ノ 構 造 を 作 製 し て タ ン パ ク 質 部 分 な ど の 有 機 物 を 除 去 す れ ば 、非 常 に 精 密 な 無 6 機 材 料 の ナ ノ 構 造 が 作 製 で き る 可 能 性 が あ る 。こ の 手 法 を 用 い た デ バ イ ス 作 製 プ ロセスは、微細化の限界を打ち破る手法の一つとして期待できる。 本 研 究 で は 、そ の タ ン パ ク 質 に フ ェ リ チ ン を 用 い る 。フ ェ リ チ ン は 生 体 内 に 存 在 す る か ご 状 タ ン パ ク 質 で あ る 。 図 1-6(a)お よ び (b)に フ ェ リ チ ン の 外 部 構 造 と 内 部 構 造 を 示 す 。通 常 、生 体 内 の フ ェ リ チ ン は 直 径 12nm の 球 状 の 外 殻 タ ン パ ク 質 を 持 っ て お り 、 内 側 に 直 径 7nm の 酸 化 鉄 コ ア ( 5 Fe 2 O 3 ・ 9H 2 O、 フ ェ リ ハ イ ド ラ イ ト )を 保 持 し て い る 。外 殻 の タ ン パ ク 質 部 分 は 1 本 の ポ リ ペ プ チ ド 鎖 か ら 形 成 さ れ る 2 種 類 の サ ブ ユ ニ ッ ト ( L-サ ブ ユ ニ と H-サ ブ ユ ニ ッ ト 、 た だ し L は Light、H は Heavy を 意 味 す る )が 合 計 で 24 個 集 合 す る こ と で 形 成 さ れ て お り 、 そ の 割 合 は さ ま ざ ま で あ る 。通 常 の タ ン パ ク 質 に 比 べ 高 い 熱 安 定 性 と pH 安 定 性 を 示 す 。本 来 フ ェ リ チ ン は 生 体 内 で の 鉄 イ オ ン 量 を 調 節 す る 働 き を す る 。す な わ ち 周 囲 の 環 境 に 応 じ て 鉄 イ オ ン の 吸 収 と 供 給 が 可 能 と な る 。こ の 鉄 イ オ ン の 吸 収 は H-サ ブ ユ ニ ッ ト だ け が 持 つ 酸 化 活 性 部 位 に よ っ て 行 わ れ 、 そ の 結 果 、 タ ン パ ク質球殻内に酸化鉄結晶を形成する。 一 方 、L-サ ブ ユ ニ ッ ト に は カ ド ミ ウ ム 結 合 部 位 と い わ れ る 箇 所 が 存 在 す る 。こ れをフェリチンーフェリチン間でカドミウムを塩橋とした結合を結ぶことで可 能 に す る 部 位 で あ る 。し た が っ て 、カ ド ミ ウ ム 結 合 部 位 を 利 用 す る こ と で フ ェ リ チ ン タ ン パ ク 質 結 晶 を 作 製 す る こ と も 可 能 で あ る 。本 研 究 室 で 用 い た フ ェ リ チ ン タ ン パ ク 質 は DNA と い う 設 計 図 に よ っ て 、精 密 に 構 造 が 規 定 さ れ て い る 。こ の DNA を 用 い る こ と で 同 一 の タ ン パ ク 質 を 無 数 に 生 成 で き る 。現 在 で は 、DNA の 解 読・操 作( 置 換 )技 術 の 発 展 に よ り 自 然 界 に は 存 在 し な い 人 工 の タ ン パ ク 質 構 造 を 生 成 す る こ と が 可 能 で あ る 。こ の DNA の 置 換 、い わ ゆ る 遺 伝 子 操 作 技 術 に よって特定の構造に再構成されたフェリチンをリコンビナントフェリチンとよ ぶ。また、自然界のフェリチンコアは酸化鉄で構成されることを既に述べたが、 こ の コ ア は 人 為 的 に 抽 出・内 包 す る こ と が 可 能 で あ る 。現 在 で は ニ ッ ケ ル 、イ ン ジ ウ ム 、コ バ ル ト 、亜 鉛 な ど の 酸 化 物 や カ ド ミ ウ ム セ レ ン な ど の 化 合 物 の 内 包 が 可 能 に な っ て お り 、さ ら に 金 や 白 金 な ど の 貴 金 属 の 内 包 も 研 究 さ れ て い る 。我 々 は 新 材 料 や 新 構 造 の 導 入 と 新 し い ナ ノ 構 造 作 製 技 術 の 開 発 に 、従 来 の 半 導 体 プ ロ セス技術とバイオテクノロジーを融合した新しいデバイス作製プロセスである 「 バ イ オ ナ ノ プ ロ セ ス ( BNP)」 を 提 案 し て い る 。 [ 3 3 - 3 5 ] 7 ( a) ( b) 図 1-6 フ ェ リ チ ン ( a) 外 部 構 造 ( b) 内 部 構 造 1-5 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ に つ い て フラッシュメモリは不揮発性メモリとして携帯電話やビデオカメラのメモリ と し て 用 い ら れ る Si/SiO 2 の 二 重 障 壁 構 造 か ら 成 る 共 鳴 ト ン ネ ル デ バ イ ス で あ る 。 こ の メ モ リ の 構 造 は 、通 常 の MOSFET 構 造 と ほ ぼ 同 様 で あ る が 、ゲ ー ト 絶 縁 膜 中 に Si に 代 表 さ れ る よ う な 電 荷 保 持 ノ ー ド を 埋 め 込 ん だ 構 造 で あ り 、 こ の 電 荷 保 持 ノ ー ド が 、ゲ ー ト 絶 縁 膜 中 で 浮 遊( フ ロ ー テ ィ ン グ )し て い る よ う に 見 え る た め 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト メ モ リ と も 呼 ば れ て い る 。こ の フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト 直 下 の 酸 化 膜 を ト ン ネ ル 酸 化 膜 と 呼 ば れ 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト の 周 り の 酸 化 膜 を コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 と 呼 ば れ る 。そ の 構 造 を 図 1-7 に 示 す 。こ の フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に 電 子 を 注 入 し 、ト ラ ン ジ ス タ の し き い 値 を 変 化 さ せ る こ と に よ っ て 書 き 込 み /消 去 の 認 識 が 行 わ れ る 。 電極 コントロール酸化膜 フローティングゲート n+ n+ トンネル酸化膜 図 1-7 フラッシュメモリの構造 半導体メモリの理想的な形は電源を切っても記録された情報が保持される不 揮 発 性 メ モ リ で あ る 。近 年 、セ ル サ イ ズ の 小 さ な フ ラ ッ シ ュ メ モ リ で あ る NAND 型 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ が 出 現 し 、そ の 集 積 の し や す さ か ら 最 終 的 に 集 積 化 が 進 め ば 現 在 の HDD( Hard disk drive) に 代 わ る メ モ リ と し て も 期 待 さ れ て お り [ 3 6 ] 、 今 後 の シ ス テ ム オ ン パ ネ ル 実 現 を 考 え た 時 、同 一 基 板 上 に 搭 載 す る こ と で 、デ バ 8 イ ス の 大 き さ が 現 状 の サ イ ズ よ り 大 き く な ら な い よ う 、低 消 費 電 力 化 、集 積 化 に 優れたフラッシュメモリは欠かせないメモリである。 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ に は 、そ の 書 き 込 み 消 去 の メ カ ニ ズ ム や 回 路 構 成 な ど の 違 い か ら 、NAND 型 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ と NOR 型 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ が 存 在 す る 。NOR 型 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の 書 き 込 み は 、ド レ イ ン と ゲ ー ト の 電 圧 の 両 方 に 高 電 圧 の 印 加 し 、メ モ リ セ ル の ド レ イ ン 近 傍 で 発 生 し た ホ ッ ト エ レ ク ト ロ ン を フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に 注 入 し て 行 う 。書 き 込 み を ホ ッ ト エ レ ク ト ロ ン で 行 っ て い る た め 、メ モリセルトランジスタに大電流が流れるという欠点がみられる。 一 方 、 NAND 型 の フ ラ ッ シ ュ メ モ リ は 、 書 き 込 み 消 去 は 共 に チ ャ ネ ル 前 面 の F-N ( Fowler Nordheim) 電 流 を 流 し て 、 基 板 と の フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト と の 間 で の 電 荷 の 出 し 入 れ を す る 方 式 を と っ て い る 。し た が っ て 、メ モ リ セ ル に 関 し て の み 考 え れ ば 、原 理 的 に は 書 き 込 む た め に 必 要 な 電 流 は 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト へ の FN 電 流 の み で あ り 、ホ ッ ト エ レ ク ト ロ ン 注 入 に よ る NOR 型 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ と 比 較 し て 非 常 に 小 さ く 、何 ビ ッ ト 同 時 に 書 い て も 消 費 電 力 の 増 加 は ほ と ん ど な い 。こ の こ と か ら 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 の 膜 厚 を 薄 く し 、電 子 の ト ン ネ ル 確 率 を 向 上 さ せ る こ と で 、ゲ ー ト の 電 圧 を よ り 小 さ く す る こ と が で き る た め 、低 消 費 電力が可能である。また、酸化膜容量も増加するため駆動電流も向上する。 書 き 込 み /消 去 の 過 程 に お い て 、 電 子 が ト ン ネ ル 酸 化 膜 を ト ン ネ ル す る た め 、 ト ン ネ ル 酸 化 膜 に と っ て 負 担 が 大 き く 、耐 久 性 の 問 題 が 生 じ る 。現 在 実 用 化 さ れ て い る フ ラ ッ シ ュ メ モ リ は 、図 1-7 に 示 す よ う な フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト が 層 状 に な っ た プ レ ー ト タ イ プ が 用 い ら れ て い る が 、書 き 込 み 消 去 の 繰 り 返 し に よ り 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 の Si-Si 結 合 や Si-O 結 合 が 切 断 さ れ る こ と で 、 リ ー ク パ ス が 発 生 し た 場 合 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト 中 に 保 持 し て い た 電 荷 が す べ て 消 失 し 、メ モ リ と し て の 役 割 を 果 た さ な く な る 。さ ら に 充 電 後 、電 源 を 切 っ た 場 合 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト か ら ト ン ネ ル 効 果 に よ り 、直 接 電 子 が リ ー ク し 不 揮 発 性 メ モ リ と し て の 役 割 を 果 た さ な く な る 。現 在 実 用 化 さ れ て い る メ モ リ の ト ン ネ ル 酸 化 膜 の 膜 厚 は 約 10nm で あ り 、 現 状 の 構 造 に お い て 薄 膜 化 は 難 し い と い え る [ 3 7 ] 。 こ の 問 題 の 解 決 方 法 の 1 つ と し て 、ナ ノ ド ッ ト を フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト と し た フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト メ モ リ が あ る 。そ の 構 造 を 図 1-8 に 示 す 。こ の メ モ リ の 特 徴は、フローティングゲートがドットタイプの場合、酸化膜が一部破損しても、 一 つ の ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 荷 が 消 失 す る だ け で 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト は 9 維 持 さ れ 、メ モ リ と し て の 機 能 は 保 持 さ れ る 。よ っ て 、ド ッ ト タ イ プ の も の は 従 来 の プ レ ー ト タ イ プ に 比 べ 信 頼 性 に 優 れ て い る 。こ れ に よ り 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 の 薄 膜 化 も 可 能 と な り 、更 に ド ッ ト の サ イ ズ を 小 さ く し 、量 子 効 果 と し て 電 子 を 閉 じ 込 め る こ と が で き れ ば 、電 子 の 保 持 時 間 も 向 上 す る 。す な わ ち 、高 い 信 頼 性 を 維 持 し た ま ま 書 き 込 み 電 圧 の 低 電 圧 化 や 、電 子 の 保 持 時 間 の 向 上 な ど 、デ バ イ ス 特 性 を 向 上 が 期 待 で き る 。こ の ド ッ ト 型 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ は 、ド ッ ト の 密 度 、サ イ ズ が デ バ イ ス の 特 性 に 影 響 を 与 え る 。ド ッ ト の 密 度 は メ モ リ ウ イ ン ド の 大 き さ に 寄 与 し 、サ イ ズ の ば ら つ き は 、し き い 値 な ど の 素 子 特 性 に ば ら つ き を も た ら す 。 す な わ ち 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト メ モ リ に お い て は 、粒 径 が 均 一 な ド ッ ト を 高 密 度に形成することが必要となる。 ナノドット n+ 図 1-8 n+ ドット型フラッシュメモリの構造 こ れ ま で ド ッ ト の 材 料 に は 、 現 状 の プ ロ セ ス と 互 換 性 の 高 い Si の 半 導 体 ド ッ ト が 主 に 用 い ら れ て き た 。し か し 、半 導 体 ナ ノ ド ッ ト は メ モ リ 保 持 特 性 を 考 え る 上 で 、い く つ か の 問 題 点 が 存 在 す る 。標 準 的 な 大 き さ で あ る 直 径 5nm の Si ド ッ ト で は 、 量 子 閉 じ 込 め 効 果 に よ り 、 Si ド ッ ト の バ ン ド ギ ャ ッ プ は Si 基 板 の バ ン ド ギ ャ ッ プ よ り も 大 き く な り 、 導 伝 帯 底 は 約 0.1eV 上 昇 す る 。 そ の た め 電 荷 保 持 状 態 で は 、 Si 基 板 へ の バ ッ ク ト ン ネ ル が 起 こ り や す く 、 結 果 的 に リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は 減 少 す る 。そ こ で 現 在 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に 半 導 体 ナ ノ ド ッ ト を 用 い る の で は な く 、金 属 ナ ノ ド ッ ト を 用 い た フ ラ ッ シ ュ メ モ リ が 注 目 さ れ て い る 。 金属ナノドットは仕事関数が大きいため電荷注入効果を損なうことなく長い 電 荷 保 持 特 性 を 実 現 す る こ と が 可 能 と な る 。ド ッ ト の 低 温 形 成 や 粒 径 の 均 一 性 な ど 課 題 が 残 る が 、フ ェ リ チ ン を 用 い る こ と で 、粒 径 の 均 一 な 金 属 ド ッ ト を 高 密 度 に形成することが可能となる。この特徴については第 6 章で詳しく説明する。 10 1-6 研 究 の 位 置 づ け と 特 徴 シ ス テ ム オ ン パ ネ ル の 有 用 性 や 必 要 性 が 言 わ れ て い る が 、 2007 年 に 行 わ れ た TFT の 国 際 学 会 で あ る ITC07( International TFT Conference) で 発 表 さ れ た ポ ス タ ー セ ッ シ ョ ン を 含 む 全 81 件 の 内 、poly-Si を 用 い た メ モ リ の 発 表 わ ず か 2 件 で あ っ た 。ま た 、AM-FPD07( Active Matrix Flatpanel Displays and Device) で は 75 件 中 、本 研 究 の 1 件 で あ っ た 。TFT の 分 野 で は 移 動 度 の 向 上 の 研 究 や 結 晶 化 技 術 や 信 頼 性 評 価 が 主 流 で あ り 、 TFT メ モ リ の 分 野 で は ほ と ん ど 研 究 さ れ ていない。 低 温 poly-Si TFT フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の 研 究 が 盛 ん で は な い 理 由 と し て 、 a-Si TFT の 基 板 と し て 用 い ら れ る 無 鉛 ア ル カ リ ガ ラ ス の 耐 熱 温 度 で あ る 600℃ 以 上 の 高 温 プ ロ セ ス が 使 え な い こ と 、す な わ ち 、熱 酸 化 膜 が 使 用 す る こ と が で き な い と い う 問 題 点 が あ る た め で あ る 。酸 化 膜 の 膜 質 は 、フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の 特 性 を 決 め る 大 き な 要 因 で あ る た め 、い か に 低 温 プ ロ セ ス で 高 品 質 の 膜 を 形 成 し 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 に ダ メ ー ジ を 与 え ず ド ッ ト を 高 密 度 に 堆 積 し 、堆 積 後 の 後 処 理 を ど の よ う に 行 う か な ど プ ロ セ ス の 検 討 が 重 要 と な る 。 酸 化 膜 に は 、 CVD ( Chemical Vapor Deposition)や ス パ ッ タ な ど の 堆 積 に よ っ て 形 成 す る ゲ ー ト 絶 縁 膜 の 中 で 、 良 好 な 絶 縁 耐 性 が 得 ら れ る TEOS( Tetraethoxysilane) ガ ス を 原 料 と す る SiO 2 を 活 性 化 ア ニ ー ル と 同 時 に 熱 処 理 す る こ と で 絶 縁 耐 性 を 向 上 さ せ 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 に 用 い て い る 。 ま た フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト は 、 従 来 の 平 行 平 板 型 CVD よ り も プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ が 小 さ い Side-Wall 電 極 型 プ ラ ズ マ CVD に よ り 形 成 さ れ た Si ド ッ ト を 用 い て い る 。 本 研 究 で は 、 単 結 晶 Si 基 板 を 用 い た 現 在 の フ ラ ッ シ ュ メ モ リ 技 術 を 応 用 し 、 第 3 世 代 シ ス テ ム オ ン パ ネ ル 搭 載 に 向 け て 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 の ト ン ネ ル に よ る 書 き 込 み 消 去 方 式 を 用 い て 、 ド ッ ト 型 低 温 poly-Si TFT フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の 研 究 を 行 う 。プ ロ セ ス 技 術 お よ び 評 価 技 術 を 確 立 後 、最 終 目 標 と し て フ ェ リ チ ン コ ア を 用 い た 、金 属 ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の 作 製 評 価 を 目 指 す 。 そ の 金 属 ド ッ ト の 形 成 に 、低 温 、低 ダ メ ー ジ で 粒 径 の 均 一 性 が 高 い フ ェ リ チ ン コ ア を 用 い て 作 製 を 試 み る 。仕 事 関 数 が 大 き な 金 属 ナ ノ ド ッ ト を 用 い て い る こ と や 、 ウエットプロセスを用いるため、トンネル酸化膜へのダメージが小さくなり、 Si ド ッ ト を 用 い た 場 合 よ り も 電 子 の 保 持 時 間 ( リ テ ン シ ョ ン タ イ ム ) な ど の メ 11 モリ特性の大幅な向上や低電圧動作が期待できる。 1-7 本 研 究 で 目 指 す フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の メ モ リ 特 性 本 研 究 で は DRAM の よ う な メ イ ン メ モ リ 応 用 を 目 指 す の で は な く 、 大 容 量 メ モ リ へ の 応 用 を 目 指 す 。そ の メ モ リ 特 性 の 中 で も 重 要 な 信 頼 性 、電 子 の 保 持 時 間 、 書 き 込 み 速 度 の 3 点 に つ い て 現 在 実 用 化 さ れ て い る 値 よ り 、本 研 究 で 目 指 す メ モ リ 特 性 の 目 標 値 を 設 定 し た [ 3 8 ] 。信 頼 性 に つ い て は 1 万 回 か ら 10 万 回 の 書 き 込 み 消 去 後 し き い 値 電 圧 の シ フ ト を 維 持 。 電 子 の 保 持 時 間 は 10 年 、 書 き 込 み 速 度 を 1s 以 下 と し た 。 1-8 本 論 文 の 構 成 本 研 究 で は 、最 終 的 に 低 温 プ ロ セ ス を 用 い て シ ス テ ム オ ン パ ネ ル に 搭 載 可 能 な フ ェ リ チ ン コ ア を 用 い た 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 開 発 を 目 指 す 。本 研 究 で は 次 の 6 つのステップで研究を進めた。 ① Si ド ッ ト の 形 状 評 価 お よ び MOS キ ャ パ シ タ 構 造 で の 電 子 の 充 放 電 を 評 価 ② Si ド ッ ト MOSFET で の メ モ リ 特 性 の 評 価 ③ 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET で の 充 放 電 の メ カ ニ ズ ム の 解 明 ④ Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の メ モ リ 特 性 評 価 お よ び 高 圧 水 蒸 気 処 理 によるメモリ特性評価 ⑤ Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の メ モ リ 特 性 評 価 ⑥ フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の メ モ リ 特 性 評 価 本論文の構成は以下の通りである。 第 2 章 で は 、Side-Wall 電 極 型 PECVD に つ い て 述 べ た 後 、走 査 型 電 子 顕 微 鏡 ( SEM:Scanning Electron Microscope)、原 子 間 力 顕 微 鏡( AFM:Atomic Force Microscopy)、 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 ( TEM: transmission electron microscopy) を 用 い て 、 Si ド ッ ト の 形 状 に つ い て 述 べ る 。 そ の 後 、 Al ゲ ー ト を 用 い た MOS 12 キ ャ パ シ タ 構 造 を 作 製 し 、高 周 波 C-V( 容 量 -電 圧 )特 性 お よ び I-V( 電 流 -電 圧 ) 特 性 の 電 気 的 特 性 評 価 か ら Si ド ッ ト へ の 電 子 の 充 放 電 特 性 に つ い て 述 べ る 。 さ ら に 、ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド の 起 こ る 条 件 や 、ド ッ ト の ば ら つ き が し き い 値 電 圧 のシフト量に及ぼす影響について考察する。 第 3 章 で は 、ド ッ ト が 埋 め 込 ま れ て い な い MOSFET の 作 製 プ ロ セ ス を 確 立 後 、 Si ド ッ ト を 酸 化 膜 中 に 埋 め 込 み 、 Si ド ッ ト MOSFET の 電 気 特 性 か ら Si ド ッ ト への電子の注入および放出をドレイン電流のしきい値電圧のシフトより測定す る 。 さ ら に 、 Sweep rate 依 存 性 や 電 圧 幅 依 存 性 よ り 、 電 子 注 入 量 の 変 化 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト を よ り 詳 細 に 調 べ る 。ま た 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム や 信 頼 性 評価からメモリ特性を評価について述べる。 第 4 章 で は 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 の 増 加 お よ び リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 向 上 を 目 指 し 、 Si ド ッ ト を 積 層 構 造 に し 、 そ の メ モ リ 特 性 に つ い て 述 べ る 。 ま た そ の 結 果 よ り 、 Si ド ッ ト へ の 電 子 注 入 の メ カ ニ ズ ム に つ い て 考 察 す る 。 第 5 章 で は 、 Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 入 力 特 性 、 信 頼 性 、 リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の ト ン ネ ル 酸 化 膜 依 存 性 な ど の メ モ リ 特 性 を 評 価 す る 。ま た 、メ モ リ 特 性 向 上 の た め 高 圧 水 蒸 気 処 理 を 行 い 、そ の 処 理 後 の メ モ リ 特 性 評 価 に つ い て も述べる。 第 6 章 で は 、フ ェ リ チ ン コ ア を 用 い て 低 温 poly-Si TFT メ モ リ を 作 製 し 、入 力 特 性 に よ り 評 価 し 、信 頼 性 や リ テ ン シ ョ ン タ イ ム や 書 き 込 み 消 去 速 度 な ど の メ モ リ 特 性 を 評 価 す る 。こ れ ら の 結 果 と Si ド ッ ト を 用 い た 場 合 と を 比 較 し て 述 べ る 。 更 に ド ッ ト 密 度 を 向 上 さ せ 、ド ッ ト 密 度 と し き い 値 電 圧 幅 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の関係について考察した。 第 7 章では、以上をまとめて結論とする 13 第 2章 Side-Wall 電 極 型 PECVD に よ る Si ド ッ ト の 形 成 と Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 電 気 特 性 評 価 2-1 2-1-1 はじめに Si ド ッ ト を 用 い る 利 点 つ い て フ ラ ッ シ ュ メ モ リ は 次 世 代 メ モ リ と し て 研 究 さ れ て お り 、そ の フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト の 材 料 に は 主 に Si ド ッ ト が 用 い ら れ て い る 。そ の 理 由 と し て 、CVD や ス パ ッ タ な ど と い っ た 、 こ れ ま で の プ ロ セ ス と の 互 換 性 が あ る 手 法 を 用 い て Si ド ッ ト を 形 成 し て い る こ と で あ る 。そ れ に よ り 、従 来 技 術 を そ の ま ま 使 用 す る こ と が で き 、 コ ス ト 面 に お い て も ド ッ ト の 形 成 時 間 も 数 秒 間 と 短 く 、 大 面 積 に Si ド ットを高密度に形成することが可能である。 バ ン ド 構 造 お い て も 特 徴 を 持 つ 。 図 2-1 に Si ド ッ ト フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の バ ン ド 構 造 を 示 す 。 基 板 に P 型 の Si 基 板 を 用 い て MOS 構 造 を 作 製 す る と 、 真 性 半 導 体 で あ る Si ド ッ ト の フ ェ ル ミ 準 位 ( E F ) と P 型 Si 基 板 の フ ェ ル ミ 準 位 が 同 じ エ ネ ル ギ ー 準 位 に な る た め 、 Si ド ッ ト の 導 電 帯 ( Ec) の エ ネ ル ギ ー 準 位 が 、 Si 基 板 の 導 電 帯 の エ ネ ル ギ ー 準 位 よ り も 低 く な る 。 そ の た め 、 電 圧 を 印 加 す る こ と で で き た 反 転 層 の 電 子 が 低 い 電 圧 で 注 入 が 起 こ る 。ま た 、電 圧 を 印 加 し て な い V g = 0V の 状 態 で は 、ド ッ ト の 導 電 帯 の エ ネ ル ギ ー が 低 い た め 、電 子 も 放 出 さ れ に く い 。こ れ ら の 理 由 か ら 、低 電 圧 動 作 や 長 い リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 得 ら れ る 。 Ec EI EF EV EF Al電 極 P型 Si基 板 コントロール 酸化膜 トンネル酸化膜 Siド ッ ト 図 2-1. Siド ッ ト を 用 い た フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の バ ン ド 構 造 14 2-1-2 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ に つ い て フ ラ ッ シ ュ メ モ リ は 、ド ッ ト へ 電 子 が 充 放 電 さ れ 、電 子 保 持 ノ ー ド と し て 機 能 す る こ と で 、 書 き 込 み /消 去 を 認 識 し 、 メ モ リ と し て 動 作 す る こ と が 知 ら れ て い る 。図 2-2 に フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト MOS キ ャ パ シ タ の 等 価 回 路 を 示 す 。従 来 の MOS キ ャ パ シ タ の ゲ ー ト 絶 縁 膜 層 の 中 に フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト が 埋 め 込 ま れ て い る 構 造 の た め 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト か ら 基 板 の 容 量( シ リ コ ン 表 面 の 容 量 を 含 む ) CFS と フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト か ら の 容 量 CFG の 二 つ の 容 量 が 存 在 す る 。 そ の 評 価 に は 、MOS キ ャ パ シ タ 構 造 で の C-V 測 定 や I-V 測 定 な ど が 用 い ら れ る 。C-V 測 定 に お い て MOS キ ャ パ シ タ の ゲ ー ト 電 極 に 電 圧 を 印 加 し 、電 荷 が 注 入 さ れ る と 、し き い 値 の シ フ ト( ⊿ Vth)が 現 れ る こ と で ‘1’お よ び ‘0’を 認 識 す る 。 VCG 制御ゲート CFG フローティング ゲート CFS Si基板 図 2-2. フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト MOSキ ャ パ シ タ の 等 価 回 路 フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト と 制 御 ゲ ー ト が 容 量 結 合 し て い る と す る と 、ゲ ー ト 電 圧 と 蓄 積 電 荷 量 Q の 関 係 は 、 次 の 式 で 表 さ れ る [39]。 Q = CV よ り C FS (VFG − VS ) + C FG (VFG − VCG ) + Q = 0 ・ ・ ・( 2-1) V F G =フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト 電 圧 、 V C G = ゲ ー ト 電 圧 、 Vs=基 板 電 圧 、 Q= フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト 内 に 蓄 積 さ れ た 容 量 15 フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に 電 荷 が 注 入 さ れ て い な い 時 の フローティングゲート電圧は V FG = C FG VCG ・ ・ ・( 2-2) CT CT= 総 容 量 ( CFS+ CFG) フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト 内 に 電 荷 が 注 入 さ れ た 場 合 、 し き い 値 電 圧 の 変 化 量 ⊿ Vth は ΔVth = 1 Q = C FG C FG t ∫J 0 G dt ・ ・ ・( 2-3) JG= フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト へ の 注 入 電 流 密 度 このときのフローティングゲート電圧は VFG = C FG VCG − ΔVth ・ ・ ・( 2-4) CT 電 子 が フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に 蓄 積 さ れ る と 、基 板 の チ ャ ネ ル 表 面 に 正 孔 が 誘 起 さ れ る た め 反 転 層 が で き に く く 、制 御 ゲ ー ト か ら み た し き い 値 電 圧 は 高 く な り 、 し き い 値 電 圧 の シ フ ト が お こ る 。注 入 の 機 構 は 次 章 で 詳 し く 述 べ る が 、市 販 さ れ て い る フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の 電 子 の 注 入 機 構 は 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 に 10nm 以 上 の 酸 化 膜 が 用 い ら れ て い る た め 、 F-N ト ン ネ ル 電 流 に よ る 注 入 が 行 わ れ る [ 4 0 - 4 1 ] 。 し か し 本 研 究 で は 、前 章 に 記 述 通 り 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に ド ッ ト を 用 い る 特 徴 を 活 か し 、 ト ン ネ ル 酸 化 膜 を 3nm ま で 薄 膜 化 し 、 直 接 ト ン ネ ル に よ り フ ロ ー テ ィングゲートへ電子注入を試みた。 メ モ リ 特 性 を 決 定 す る 1 つ の 要 因 と し て 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 の 膜 質 が 大 き く 影 響 す る 。 特 に 、 Si ド ッ ト 形 成 時 の ト ン ネ ル 酸 化 膜 へ の ダ メ ー ジ に よ る 膜 質 の 劣 化 は 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム に 大 き く 影 響 す る 。こ れ ま で の Si ド ッ ト の 形 成 方 法 は 、 LPCVD、 ス パ ッ タ 法 や Si リ ッ チ の SiO 2 膜 を ア ニ ー ル す る 方 法 が 主 に 用 い ら れ 16 て き た [42-45]。 し か し 、 こ れ ら は 従 来 技 術 が 使 用 で き る 反 面 、 高 温 プ ロ セ ス で あ る こ と や 、低 温 プ ロ セ ス で 行 う 場 合 で も 、プ ラ ズ マ や ス パ ッ タ に よ り 膜 中 に ダ ン グ リ ン グ ボ ン ド( 未 結 合 手 )な ど の 欠 陥 を 形 成 す る た め 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 へ の ダ メ ー ジ が 懸 念 さ れ て い る [ 4 6 ] 。 そ こ で 、 従 来 用 い ら れ て い る 平 行 平 板 型 PECVD を 用 い て Si ド ッ ト を 形 成 す る の で は な く 、 新 し い 堆 積 手 法 で あ る Side-Wall 電 極 型 PECVD 法 を 用 い る こ と で 下 地 の 酸 化 膜 へ の ダ メ ー ジ も 少 な く 、 Si ド ッ ト を 形 成 す る こ と が で き る [47]。 本 章 で は 、ド ッ ト の 評 価 、デ バ イ ス 作 製 プ ロ セ ス の 確 立 、電 子 注 入 の メ カ ニ ズ ム を 理 解 す る た め 、単 結 晶 Si 基 板 を 用 い て Si ド ッ ト を フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト と し た 、 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ を 作 製 し 、 そ の C-V 特 性 や I-V 特 性 か ら 、 充 放 電 の メ カ ニ ズ ム の 考 察 を 行 っ た 。 Si ド ッ ト の 密 度 、 形 状 、 大 き さ 、 お よ び 組 成 は そ れ ぞ れ 、 SEM( JEOL JSM-7400)、 AFM( SPI-3800)、 TEM( H-9000) を用いて観察を行った。 2-1-3 Side-Wall 電 極 型 PECVD に つ い て プ ラ ズ マ CVD は 、 原 料 ガ ス プ ラ ズ マ 中 で 生 成 さ れ た 活 性 な 粒 子 に よ り 、 基 板 表 面 で の 化 学 反 応 を 促 進 さ せ 、薄 膜 を 形 成 す る 技 術 で あ る 。そ の 主 流 は 、電 極 が 並 行 に 設 置 さ れ て い る 平 行 平 板 型 PECVD で あ る 。し か し 、プ ラ ズ マ を 用 い る こ とで下地の基板へのプラズマダメージは避けられないのが現状である。そこで、 電 極 を チ ャ ン バ ー の 側 壁 に 設 置 す る こ と で プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ を 抑 制 し 、低 温 で 高 品 質 膜 の 成 膜 が 可 能 と い う 特 徴 を 持 つ 、 Side-Wall 電 極 型 PECVD を Si ド ッ ト の 形 成 に 用 い た 。 図 2-3( a) に そ の 装 置 の 側 面 図 を ( b) に 上 面 図 を 示 す 。 こ の 装 置 を 用 い た Si ド ッ ト の 生 成 過 程 は 、 SiO 2 上 に 水 素 プ ラ ズ マ 中 の Si 原 子 の マ イ グ レ ー シ ョ ン に よ り 核 形 成 を 行 う「 核 形 成 過 程 」と 、そ の 核 形 成 層 に シ ラ ン プ ラ ズ マ を 用 い て 低 温 で Si ド ッ ト を 堆 積 す る「 Si 成 長 過 程 」の 2 段 階 の ス テ ッ プ によって形成される。 17 ( a) ( b) O2 ガス SiH4ガス ~ プラズマ 66 8 720 560 Substrat e TMP ヒーター M.B 600 60MHz RF 電源 M.B M.B 基板 RF 電源 M.B 図 2-3. (a) Side-Wall電 極 型 PECVDの 側 面 図 (b)上 面 図 プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ を 抑 制 し 、高 品 質 膜 の 成 膜 を 可 能 に す る た め に は 、低 プ ラ ズ マ ポ テ ン シ ャ ル で 高 密 度 に プ ラ ズ マ を 形 成 し 、シ ラ ン ガ ス を 高 分 解 効 率 で 解 離 さ せ る 必 要 が あ る 。 そ の た め 、 Si 成 長 過 程 に お い て 低 ポ テ ン シ ャ ル で 、 高 密 度 の プ ラ ズ マ を 低 い プ ロ セ ス 圧 力 で 安 定 に 維 持 す る た め 、電 極 に VHF 帯 の 高 周 波 励 起 を 可 能 と す る RF 電 極 を 設 置 し て い る 。こ の 電 極 は 、側 壁 に 絶 縁 体 で 保 持 さ れ て 設 置 さ れ て お り 、4 分 割 さ れ て い る 。従 来 の 平 行 平 板 型 で は 、電 極 に 13.56MHz の 高 周 波 電 源 が 用 い ら れ て い る が 、こ の 装 置 で は 、各 コ ー ナ ー か ら 整 合 器 を 介 し て 60MHz の 高 周 波 電 力 が 供 給 さ れ る 。ま た 、4 台 の 高 周 波 電 源 は 、60MHz の 波 形 を 同 期 し 位 相 制 御 も 可 能 で あ り 、 1 台 あ た り 最 大 2kW で 同 時 に 供 給 す る こ と で 8kW の 電 力 が 供 給 で き る 。 よ っ て 、 同 じ プ ラ ズ マ 体 積 で 比 較 し た 場 合 、 Side-Wall 電 極 型 PECVD の ガ ス 圧 は 0.665Pa に 対 し て 平 行 平 板 型 で は 、66.5Pa で あ り SiH 4 の 分 子 の 密 度 は 約 100 倍 で あ る 。 一 方 供 給 す る 高 周 波 電 力 は 、 Side-Wall 電 極 型 PECVD が 6000W に 対 し て 平 行 平 板 型 で は 200W で あ り 、 約 1/30 倍 の 高 周 波 密 度 と な る 。 よ っ て SiH 4 の 1 分 子 に 与 え る 励 起 電 子 密 度 は 、平 行 平 板 型 の 場 合 、Side-Wall 電 極 型 PECVD の 1/3000 と な り 、SiH 4 分 子 の 分 解 率 は Side-Wall 電 極 型 PECVD の 方 が 極 端 に 高 くなる。 通 常 、平 行 平 板 型 PECVD の 場 合 、プ ラ ズ マ 密 度 を 増 加 さ せ る 為 に は 、高 周 波 電 力 を 増 加 す る 必 要 が あ る が 、プ ラ ズ マ 密 度 の 増 加 に よ り プ ラ ズ マ ポ テ ン シ ャ ル が 増 加 し て し ま う 。し か し 、こ の 装 置 で は 電 力 の 増 加 に 対 し 大 き な 増 加 傾 向 を 示 さ ず 6000W の 大 電 力 を 投 入 し て も プ ラ ズ マ ポ テ ン シ ャ ル を 低 く 維 持 す る こ と が 18 で き る 。す な わ ち 、Side-Wall 電 極 型 PECVD は シ ラ ン ガ ス の 分 解 効 率 お よ び プ ラ ズ マ 密 度 が 高 い ま ま 、プ ラ ズ マ ポ テ ン シ ャ ル を 低 く 維 持 す る こ と が で き 、プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ を 抑 制 で き る 。ま た 、マ ル チ チ ャ ン バ ー を 装 備 し て い る た め 、真 空 搬 送 に よ り 各 チ ャ ン バ ー に 移 動 さ せ る た め 、 Si ド ッ ト と コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 を 一 度 も 大 気 暴 露 せ ず 連 続 性 膜 が 可 能 と な る 。そ れ に よ り 、汚 染 も 少 な く 高 品 質 な 薄膜を形成することが可能である。 2-2 実験 2-2-1 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 作 製 Side-Wall 電 極 型 PECVD を 用 い て 形 成 し た SiO 2 の 膜 質 お よ び Si ド ッ ト の 形 状 や 密 度 の 評 価 の た め 、 MOS キ ャ パ シ タ 構 造 を 作 製 し 評 価 し た 。 単 層 膜 の MOS キ ャ パ シ タ の 作 製 プ ロ セ ス を 図 2-4 に 、 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 作 製 プ ロ セ ス を 図 2-5 に 示 す 。 ① P 型 Si(100)基 板 ( 2~ 5Ω・cm) の RCA 洗 浄 を 以 下 の プ ロ セ ス で 行 っ た 。 基 板 を 80℃ の 温 浴 で 温 め ら れ た 濃 硫 酸 に 15 分 間 浸 し 、 さ ら に 過 酸 化 水 素 水 を 同 量 加 え 10 分 間 温 浴 さ せ 有 機 汚 染 物 を 除 去 し た 。 次 に SC1 溶 液 ( ア ン モ ニ ア 水 : 過 酸 化 水 素 水 : 水 : = 1: 1: 5) 中 で 5 分 間 温 浴 し な が ら 洗 浄 を 行 い 、 超 純 水 で 洗 浄 後 、 SC2 溶 液 ( 塩 酸 : 過 酸 化 水 素 水 : 水 = 1: 1: 5)中 で 5 分 間 温 浴 し 洗 浄 を 行 っ た 。次 に 超 純 水 で 洗 浄 後 、0.5% 希 フ ッ 酸 に 1 分 間 浸 し 、 基板に形成された化学酸化膜を除去した。最後に超純水で洗浄後、窒素ブロ ーによって基板を乾燥させた。 ② 自 然 酸 化 膜 を 最 小 限 に 抑 え る た め 、 直 ち に サ ン プ ル を 700℃ の 加 熱 さ れ た 熱 酸 化 炉 内 に 搬 送 し 、 酸 化 温 度 950℃ ( N 2 :O 2 =4.5slm/0.5slm)、 酸 化 時 間 8 分 で ト ン ネ ル 酸 化 膜 で あ る 熱 酸 化 膜 を ド ラ イ 酸 化 法 に よ り 3nm 形 成 し た 。酸 化 膜 形 成 後 、950℃ -1 時 間 窒 素 雰 囲 気 中 で ア ニ ー ル 処 理 を 行 い 、1 時 間 か け て 700℃ ま で 冷 却 し 、 酸 化 炉 か ら 取 り 出 し た 。 そ の 後 膜 厚 評 価 は 分 光 エ リ プ ソ メトリにより行った。 19 ③ Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ を 作 製 す る 場 合 、 基 板 を Side-Wall 電 極 型 PECVD の Si ド ッ ト 形 成 用 の チ ャ ン バ ー に 入 れ 、 圧 力 1×10 - 4 Pa 以 下 の 真 空 度 中 に 、 シ ラ ン ガ ス (SiH 4 )/ H 2 を 導 入 し 、 成 膜 温 度 430℃ で 熱 酸 化 膜 上 に Si ドットの形成を行った。その後真空搬送により、コントロール酸化膜堆積用 の チ ャ ン バ ー に 移 動 さ せ 、 コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 を 堆 積 し 、 Si ド ッ ト を 埋 め 込 ん だ 。 膜 質 評 価 用 の Si ド ッ ト が 埋 め 込 ま れ て い な い も の 場 合 は 、 Si ド ッ ト を堆積せずコントロール酸化膜のみを堆積した。これらの構造の総膜厚が 20nm に な る よ う に 、 コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 の 膜 厚 を 調 節 し た 。 ④ 試 料 の 表 面 に 3000rpm、 15 秒 の ス ピ ン コ ー ト に よ っ て レ ジ ス ト ( ク ラ リ ア ン ト ジ ャ パ ン 製:AZ GXR-602 (29cP)を 塗 布 し 、ホ ッ ト プ レ ー ト で 100℃ 、 5 分 間 プ リ ベ イ ク を 行 い 、表 面 保 護 膜 を 形 成 し た 。そ の 後 、BHF( HF:4.7% 、 NH4F:36.1%、 pH=5.9) に 5 分 間 浸 し 裏 面 の 酸 化 膜 を 除 去 し 、 ア セ ト ン 、 メ タノールの順で洗浄を行い、レジストを除去した。 ⑤ 抵 抗 線 加 熱 式 の 真 空 蒸 着 装 置 ( ア ル バ ッ ク 製 : 真 空 蒸 着 ユ ニ ッ ト VPC 型 VOC-110ST)を 用 い て 以 下 の 方 法 で ア ル ミ を 蒸 着 し た 。ア ル ミ の 粒 を 1 粒 蒸 着用のタングステンボートに乗せ、チャンバー内をターボ分子ポンプにより 4×10 - 4 Pa 以 下 ま で 真 空 引 き を 行 い 、電 流 50mA で 1 分 間 加 熱 し 、試 料 の 裏 面 に ア ル ミ を 約 300nm 蒸 着 さ せ 、 1 時 間 の 自 然 冷 却 後 、 裏 面 電 極 を 形 成 し た 。 続いて同様に表面にアルミを蒸着した。 ⑥ 裏 面 電 極 の オ ー ミ ッ ク 接 合 性 お よ び 基 板 と SiO 2 と の 界 面 特 性 を 向 上 さ せ る た め 、 室 温 か ら 400℃ ま で は 窒 素 雰 囲 気 で 約 1 時 間 か け て 昇 温 さ せ 後 、 フ ォ ー ミ ン グ ガ ス 中 ( N 2 :H 2 =4.5slm/0.5slm ) 400℃ -30 分 で PMA ( Post Metallization Anneal)を 行 い 、そ の 後 も 水 素 を 流 し な が ら 降 温 し 、200℃ 以 下 で 取 り 出 し 、 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ を 作 製 し た 。 C-V 特 性 評 価 は 、 プ レ シ ジ ョ ン LCR メ ー タ( ア ジ レ ン ト テ ク ノ ロ ジ ー 製 : 4284A)を 、絶 縁 破 壊 耐 性 の 評 価 は 半 導 体 パ ラ メ ー タ ・ア ナ ラ イ ザ ー( ヒ ュ ー レ ッ ト パ ッ カ ー ド 製 : HP4156B)を 用 い て 行 っ た 。Si ド ッ ト の 密 度 、形 状 、大 き さ 、お よ び 組 成 の 評 価 は SEM、 AFM、 TEM を 用 い て 観 察 を 行 っ た 。 20 20nm p-Si(100) PECVD に よ る 酸化膜の形成 RCA 洗 浄 電極蒸着 PMA 図 2-4. Side-Wall 電 極 型 PECVD 単 層 膜 の 作 製 プ ロ セ ス 20nm 3nm p-Si(100) RCA 洗 浄 PECVD に よ る 酸化膜の形成 熱酸化膜の 形 成 ( 3nm) 電極蒸着 PMA 20nm PECVD に よ る Si ド ッ ト の 形 成 PECVD に よ る 酸化膜の形成 電極蒸着 PMA TEM 観 察 AFM,SEM観察 図 2-5. Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 作 製 プ ロ セ ス 2-2-2 Si ド ッ ト 形 状 評 価 AFM、SEM で 観 察 し た Si ド ッ ト の 形 状 を 図 2-6( a)お よ び( b)に 示 し 、TEM で 観 察 し た Si ド ッ ト の 形 状 を 図 2-7( a)お よ び( b)に 示 す 。AFM お よ び SEM に よ る 評 価 に お い て 、 球 状 の Si ド ッ ト が 観 察 さ れ 、 Si ド ッ ト が 高 密 度 に 形 成 さ れ て い る こ と が 分 か る 。AFM 像 よ り 求 め た Si ド ッ ト の 直 径 は 10~ 30nm で あ り Si ド ッ ト が 積 み 重 な っ た よ う な 積 層 構 造 に 見 え る 。こ れ は 、AFM の カ ン チ レ バ ー の チ ッ プ ( 材 料 Si) の 直 径 が 約 20nm で あ る こ と か ら 、 Si ド ッ ト の 直 径 は 実 際よりも大きく観察され、積層構造のようにみえたものと考えられる。 21 断 面 TEM に よ る 評 価 に お い て も 、 球 状 の Si ド ッ ト が 見 ら れ た 。 こ の と き の ド ッ ト の 直 径 は 約 5nm で あ り 、 Si ド ッ ト は AFM で の 測 定 に み ら れ た よ う な 積 層 構 造 で は な く 、単 層 構 造 で あ る こ と が わ か る 。さ ら に 結 晶 格 子 が 確 認 さ れ 、こ の 結 晶 格 子 は Si の 格 子 間 隔 5.4307Å と ほ ぼ 一 致 す る た め 、 こ の Si ド ッ ト は 単 結晶であることが分かる。 SEM 像 を 用 い 10μm 2 の 領 域 か ら Si ド ッ ト の 密 度 を 計 算 し た と こ ろ 、 ド ッ ト 密 度 は 約 8.5×10 11 /cm 2 で あ っ た 。 こ の 密 度 は 再 現 性 に す ぐ れ て お り 、 そ の 後 堆 積 を 繰 り 返 し て も 同 様 に 高 密 度 が 得 ら れ た 。こ れ ら の 結 果 よ り 、従 来 の LPCVD に よ る 単 一 Si ド ッ ト の 作 製 方 法 と は 異 な っ た 、 低 温 の プ ラ ズ マ CVD に よ っ て も ナ ノ サ イ ズ の 単 一 Si ド ッ ト の 形 成 が 可 能 で あ る こ と が わ か っ た 。 ( a) ( b) 100nm ( b) 図 2-6. (a) Siド ッ ト の AFM像 (b)SEM像 SiO2 Poly-Si ( a) ( b) 5nm Si dot Si dot Si基板 50nm 10nm 10 nm Si基板 図 2-7. Siド ッ ト の TEM像 (a) Poly-Si膜 中 (b)SiO 2 膜 中 TEM 22 2-2-3 C-V 測 定 に よ る Si/SiO 2 の 界 面 評 価 デ バ イ ス の 特 性 に は 、界 面 準 位 や 固 定 電 荷 な ど の 界 面 特 性 が 、し き い 値 電 圧 や 移 動 度 な ど の デ バ イ ス 特 性 に 大 き く 影 響 を 及 ぼ す た め 、界 面 状 態 の 評 価 は 非 常 に 重 要 と な る 。熱 酸 化 に よ る 酸 化 膜 は 、種 々 の 絶 縁 膜 の 中 で も 最 も 安 定 し た 絶 縁 膜 と い え る が 、プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ な ど で 、膜 中 に キ ャ リ ア が 注 入 さ れ る と 界 面 準 位 が 形 成 し 、キ ャ リ ア の 捕 獲 が 起 こ る 。酸 化 膜 中 に 注 入 さ れ た キ ャ リ ア の 大 部 分 が 酸 化 膜 中 の 電 界 に よ り ド リ フ ト に よ っ て ゲ ー ト 電 極 に 流 れ 込 む が 、一 部 は 酸 化 膜 中 に 存 在 す る 深 い レ ベ ル に 捕 ま っ て そ の ま ま 保 持 さ れ る 。SiO 2 膜 中 に 3 価 Si で 界 面 近 傍 に 存 在 す る と Si 基 板 と 相 互 作 用 し 、 正 の 固 定 電 荷 と し て 作 用 す る 。 界 面 準 位 は 界 面 に 局 在 す る 準 位 で 、Si の バ ン ド ギ ャ ッ プ 内 に 分 布 し 、4 つ の 結 合 の う ち 周 り の 3 つ を Si と 結 合 し 、 残 り の 1 つ が 未 結 合 手 の 状 態 を い う 。 界 面 準 位 は バ ン ド ギ ャ ッ プ の 中 心 で 最 小 と な り 中 心 か ら 離 れ る と 増 加 し 、 面 方 位 ( 100) で 最 も 小 さ い た め 、LSI 用 の 半 導 体 基 板 に は Si( 100)面 が 主 に 用 い ら れ る 。そ のため、熱酸化膜形成前の基板洗浄の技術は非常に重要なプロセスである。 界 面 準 位 や 固 定 電 荷 な ど の 算 出 方 法 と し て 、 一 般 的 に は MOS キ ャ パ シ タ の C-V 特 性 を 評 価 す る こ と で 可 能 と な る 。そ の 算 出 法 と し て 、C-V 特 性 を 積 分 し て 求 め る 低 周 波 C-V 法( Berglund 法 )[ 4 8 ] や 、C-V の 温 度 依 存 性 や 周 波 数 依 存 性 お よ び コ ン ダ ク タ ン ス か ら 求 め る G-V 法 な ど が あ る [ 4 9 ] 。 今 回 は 、 ト ラ ッ プ が な い 理 想 の C-V 特 性 を 基 準 と し て 、 界 面 準 位 密 度 、 固 定 電 荷 密 度 を 算 出 す る こ と が で き る Terman 法 を 用 い た [ 5 0 ] 。 こ の 方 法 で は 、 蓄 積 か ら 反 転 に ゲ ー ト 電 圧 を 印 加 し た 場 合 、理 想 曲 線 に 比 べ 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト が 正 側 も し く は 負 側 に シ フ ト し て い る か に よ っ て 、固 定 電 荷 を 評 価 す る こ と が で き る 。し き い 値 電 圧 の シ フ ト が 正 側 に シ フ ト 場 合 、酸 化 膜 中 に は 負 の 固 定 電 荷( 電 子 )が 、負 側 に シ フ ト し た 場 合 、正 の 固 定 電 荷( ホ ー ル )が 存 在 す る 。固 定 電 荷 は 、C-V 測 定 の 理 論 曲 線 で の フ ラ ッ ト バ ン ド シ フ ト を ⊿ V と し 、金 属 半 導 体 仕 事 関 数 差 φ m s と す る と 次 式 が成立する。 Q fix = C OX (ΔV + φ ms ) ・ ・ ・( 2-5) q 23 界 面 準 位 密 度( D i t )は 単 位 面 積 当 た り の 界 面 電 荷 量 を Q s s 、表 面 ポ テ ン シ ャ ル を φs と し た 時 、 次 式 で 表 さ れ る 。 Dit = 1 dQ SS q dφ S ・ ・ ・( 2-6) 表 面 ポ テ ン シ ャ ル φ s か ら φ s +dφ s に 変 化 す る 時 、表 面 電 荷 が Q s s か ら Q s s +dQ s s に 変 化 し 、そ の 結 果 、高 周 波 C-V 曲 線 の 理 論 曲 線 と の ず れ が V d か ら dV d に 変 化 し た 場 合 、 COX を 酸 化 膜 容 量 、 q を 電 荷 素 量 と す る と 次 式 が 成 立 す る 。 dQ SS = C OX ⋅ dV d ・ ・ ・( 2-7) Dit = C OX dV d ・ ・ ・( 2-8) q dφ S φ s は 半 導 体 の 不 純 物 密 度 か ら 計 算 で き る た め 、上 式 に よ り D i t の エ ネ ル ギ ー 分 布 を 求 め る こ と が で き る 。 測 定 は LCR メ ー タ を 用 い て 高 周 波 ( 1MHz) C-V 測 定 を 行 い 、表 面 ポ テ ン シ ャ ル と フ ェ ル ミ 準 位 か ら 界 面 準 位 密 度 の エ ネ ル ギ ー 分 布 を求めた。 絶 縁 破 壊 の 評 価 は I-V 特 性 よ り F-N ト ン ネ ル 電 流 を プ ロ ッ ト す る こ と で 算 出 で き る 。 F-N ト ン ネ ル 電 流 と は 、 電 圧 を 印 加 す る こ と で 絶 縁 膜 中 に か か る 電 界 に よ っ て 、電 極 と 界 面 に 形 成 さ れ る 三 角 ポ テ ン シ ャ ル を 通 じ て ト ン ネ ル 効 果 に よ り キ ャ リ ア が 伝 導 す る 電 流 伝 導 機 構 で あ る 。F-N ト ン ネ ル 電 流 は q を 電 荷 素 量 、 φ s n を 障 壁 高 さ 、E F N を 電 荷 強 度 、h を プ ラ ン ク 定 数 、m s n を 膜 中 の 電 子 有 効 質 量 、 m を電子の静止質量とすると以下に示した式により表される。 ⎛ − E FN ⎞ J FN = C FN E 2 exp⎜ ⎟ ・ ・ ・( 2-9) ⎝ E ⎠ C FN q 3m = ・ ・ ・( 2-10) 16π 2 h 2 msnφ sn 24 E FN = 8πφsn 3/ 2 (2msn )1/ 2 3qh ・ ・ ・( 2-11) 上 記 の 式 か ら ln( J F n /E 2 )と 1/E が 直 線 性 を 示 せ ば 電 流 伝 導 機 構 は F-N Tunneling 電流であると判断できる。 電 圧 は ゲ ー ト 電 極 側 か ら 印 加 し 、電 気 的 に シ ー ル ド さ れ た 暗 状 態 で 測 定 を 行 っ た。測定条件は以下の通りである。 測定条件 ・ 電 極 直 径 : 200μm ・ 周 波 数 : 1MHz ・ 振 幅 : 30m V ・ ス テ ッ プ : 40m V ・ 理 想 酸 化 膜 容 量 : 47.2 pF ド ッ ト が 埋 め 込 ま れ て い な い 熱 酸 化 膜 と CVD 酸 化 膜 の 積 層 MOS キ ャ パ シ タ お よ び 、PECVD 単 層 MOS キ ャ パ シ タ に お け る C-V 特 性 評 価 の 結 果 を 図 2-8( a) お よ び ( b) に 示 す 。 高 周 波 (1MHz)C-V 測 定 に お い て 、 ゲ ー ト 電 圧 を 蓄 積 側 の V g =-4V か ら 正 方 向 に V g =4V ま で 掃 引 後 、折 り 返 し V g =4V か ら 負 方 向 に V g =-4V ま で 掃 引 さ せ た 場 合 、ど ち ら も 掃 印 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト は み ら れ な か っ た 。 こ れ は 、 プ ラ ズ マ CVD 法 で 堆 積 さ れ た SiO 2 膜 中 に 固 定 電 荷 や 深 い 界 面 準 位 が 存 在 し て も 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 を 介 し て の 電 荷 の や り と り が 可 能 な 浅 い 準 位 は 存 在 し な い こ と を 示 し て い る 。ま た 、蓄 積 側 の 酸 化 膜 容 量 が 理 論 値 の 40.2pF と ほぼ一致した。 積 層 MOS キ ャ パ シ タ の 固 定 電 荷 密 度 は 負 の 固 定 電 荷 が 6.9×10 1 0 cm - 2 存 在 し 、 フ ラ ッ ト バ ン ド 電 圧 は -1.04V で あ っ た 。 ま た PECVD 膜 単 層 に つ い て は 、 負 の 固 定 電 荷 が 2.5×10 11 cm - 2 存 在 し 、 フ ラ ッ ト バ ン ド 電 圧 は -1.56V で あ っ た 。 こ の 結果より、固定電荷の量も少なく良質な膜が形成していることがわかる。 25 ● accumulation→inversion □ inversion→accumulation Capacitance(pF) ( a) 0.6 ● accumulation→inversion □ inversion→accumulation 1 0.8 0.4 0.2 0.8 0.6 ( b) 0.4 0.2 -4 -2 0 2 Gate Voltage(V) -4 -2 0 2 Gate Voltage(V) 図 2-8. MOSキ ャ パ シ タ の C-V特 性 (a)PECVD単 層 (b)積 層 膜 ( PECVD+熱 酸 化 膜 ) 次 に こ の C-V 曲 線 よ り 求 め た 界 面 準 位 の エ ネ ル ギ ー 分 布 を 図 2-9 に 示 す 。 ゲ ー ト 酸 化 膜 を 積 層 に し た 場 合 の 界 面 準 位 は 、ミ ッ ド ギ ャ ッ プ 付 近 の 界 面 準 位 密 度 か ら 3.1×10 11 cm - 2 eV - 1 で あ り 、 PECVD 単 層 の 場 合 の 界 面 準 位 密 度 は 、 6.1×10 11 cm - 2 eV - 1 で あ り 、両 方 の 膜 に お い て 良 好 な 界 面 特 性 を 得 る こ と が で き た 。 -2 -1 Interface State Density (cm eV ) Capacitance(pF) 1 1014 ○ PECVD単層 十 PECVD+熱酸化膜 1013 1012 1011 1010 -0.5 0 0.5 1 Surface Potential φs (eV) 図 2-9. C-V特 性 よ り 求 め た 界 面 準 位 の エ ネ ル ギ ー 分 布 さ ら に 、I-V 測 定 よ り 電 流 密 度 -電 界 強 度( J-E)特 性 を 求 め 、そ の 結 果 か ら ln ( J F n /E 2 ) -1/E 特 性 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 2-10( a) お よ び ( b) に 示 す 。 熱 酸 化 膜 に 比 べ 比 較 的 リ ー ク し 易 い PECVD 膜 単 層 で も 、 20nm の 膜 厚 に お い て 5MV/cm 以 上 の 高 電 界 領 域 で も 絶 縁 破 壊 電 界 に 達 し て い な い 。ま た 、積 層 膜 に お い て は 良 好 な 絶 縁 耐 性 を 有 し ln( J F n /E 2 )と 1/E の グ ラ フ に お い て 直 線 性 が み ら れ F-N ト ン ネ ル 電 流 が 見 ら れ た 。 こ れ ま で の C-V 特 性 お よ び I-V 特 性 の 結 果 か ら 、PECVD 膜 お よ び 熱 酸 化 膜 の 26 界 面 特 性 、 膜 質 と も に 良 好 で あ り 、 こ の CVD 装 置 で 形 成 さ れ た SiO 2 膜 は 、 メ モリに用いる酸化膜として十分な特性であるといえる。 -30 ○ PECVD単層 10-1 ○ PECVD単層 十 PECVD+熱酸化膜 十 PECVD+熱酸化膜 10-3 ( a) In(J/E-2) Current Density (A/cm2) 101 10-5 ( b) -40 10-7 -50 10-9 10-11 5 10 1/E Electric Strength (MV/cm) 図 2-10. (a) J-E曲 線 (b) In( J F n /E 2 ) -1/E特 性 2-2-4 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の C-V 特 性 お よ び I-V 特 性 評 価 Si ド ッ ト へ の 電 子 の 充 放 電 を 評 価 す る た め 、C-V 特 性 評 価 よ り Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 充 放 電 特 性 を 評 価 し た 。そ の 結 果 を 図 2-11 に 示 す 。高 周 波 (1MHz) の C-V 測 定 に お い て 、 ゲ ー ト 電 圧 を V g =-5V か ら 正 方 向 に 掃 引 後 、 折 り 返 し V g =4V か ら 負 方 向 に 掃 引 さ せ た 場 合 、C-V 曲 線 に V g =0V 付 近 で ピ ー ク が 現 れ 、し き い 値 電 圧 は 正 方 向 に 1.2V シ フ ト が 見 ら れ た 。 こ の シ フ ト は ド ッ ト が 埋 め 込 ま れ て い な い MOS キ ャ パ シ タ で は 見 ら れ な い こ と か ら 、Si ド ッ ト へ の 電 子 の 充 放 電 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト で あ る と 考 え ら れ る [44]。 こ の 電 子 注 入 の メ カ ニ ズ ム を バ ン ド 図 2-12( a) -( d) を 用 い て 説 明 す る 。 ゲ ー ト 電 圧 を 正 バ イ ア ス 方 向 に 掃 引 し た 場 合 、 反 転 層 が 形 成 さ れ Si 基 板 中 の 電 子 が ト ン ネ ル 酸 化 膜 を ト ン ネ ル し 、 Si ド ッ ト へ 電 子 が 注 入 さ れ る 。 そ の た め 、 し き い 値 電 圧 が シ フ ト し た も と の 推 測 で き る [51]。 次 に ゲ ー ト 電 圧 を 負 バ イ ア ス 方 向 に 電 圧 を 掃 引 し た 場 合 で は 、 フ ラ ッ ト バ ン ド 電 圧 に 達 し た 後 、 Si ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 放 電 が 開 始 さ れ る 。さ ら に ゲ ー ト 電 圧 を 負 バ イ ア ス 方 向 に 掃 引 す る と 、 容 量 値 が 減 少 し て い き 電 子 が す べ て 放 出 さ れ る と 、 V g =-0.7V 付 近 か ら 再 び 多 数 キ ャ リ ア で あ る 正 孔 が 蓄 積 し 始 め る こ と で 容 量 値 が 上 昇 し 、V g を -5V か ら 掃 引 し た と き の C-V 曲 線 と 一 致 す る と 考 え ら れ る 。 27 I-V 特 性 で は 、C-V 特 性 と 同 様 に 掃 引 さ せ て い く と あ る 電 圧 に お い て 、正 も し く は 負 の 電 流 の ピ ー ク が 現 わ れ る 。こ の 電 流 の ピ ー ク が 正 の 電 流 の 場 合 、正 の 電 荷 す な わ ち 正 孔 の 放 出 を 表 し 、負 の 電 流 の 場 合 電 子 の 放 出 を 表 す 。電 子 の 放 出 は フ ラ ッ ト バ ン ド 電 圧 に 達 し た 時 に 起 こ る た め 、C-V 特 性 と 合 わ せ て 考 え る と 、電 子 の 放 出 す る 量 と そ の 電 圧 を 知 る こ と が で き る 。 I-V 特 性 評 価 の 結 果 を 図 2-13 に 示 す 。 V g =-5V か ら 正 方 向 に 掃 引 し た 場 合 、 -2V 付 近 で 正 電 流 の ピ ー ク が 見 ら れ た 。 こ れ は 、 -5V か ら の 掃 引 に よ っ て Si ド ッ ト に 注 入 さ れ た 正 孔 が 放 出 す る こ と に よ る も の と 考 え ら れ る 。さ ら に 、折 り 返 し V g =-4V か ら 負 方 向 に 掃 引 さ せ た 場 合 、 V g =0V 付 近 で 負 電 流 の ピ ー ク が み ら れ る 。 C-V 特 性 に お い て こ の ピ ー ク の ゲ ー ト 電 圧 と 同 じ 電 圧 で は 、容 量 値 が 減 少 し 始 め る ゲ ー ト 電 圧 の 値 と は ほ ぼ 同 じ 値 を 示 し て い る 。 す な わ ち こ の 電 流 は 、 Si ド ッ ト か ら の 電 子 の 放 電 に 伴 う 過 渡 電 流 で あ る と 考 え ら れ る 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 Si ド ッ ト へ の 電 子 の 充 放 電 の可能性が示唆される。 -10 6.0x10 1 MHz -10 Capacitance (F) 5.0x10 放電 -10 4.0x10 -10 3.0x10 -10 2.0x10 -10 1.0x10 0.0 -4 -2 0 2 4 Voltage (V) 充電(正ゲート電圧) 図 2-11. Siド ッ ト MOSキ ャ パ シ タ の C-V特 性 ( b) ( a) 電子 Ec EI EF EV EF Vg EF Al電 極 P型 Si基 板 トンネル酸化膜 コントロール Siド ッ ト 酸化膜 28 Ec Ei EF EV ( c) ( d) EF EF Ec EI EF EV Vg 図 2-12. Siド ッ ト MOSキ ャ パ シ タ の バ ン ド 構 造 (a)V g =0V( b) 電 子 注 入 ( c) 電 子 保 持 ( d) 電 子 放 出 Current(pA) 40 20 0 -20 -40 -4 -2 0 2 Gate voltage(V) 4 Si ド ッ ト か ら の 放 電 電 流 図 2-13. Siド ッ ト MOSキ ャ パ シ タ の I-V特 性 C-V 特 性 お よ び I-V 特 性 の 結 果 よ り 、 こ の V g =0V 付 近 の 容 量 値 の ハ ン プ の メ カ ニ ズ ム を 考 察 す る 。 図 2-14 に 示 す よ う に 、 理 想 的 な メ モ リ 特 性 は 、 ハ ン プ の ような容量の減少は起こらずしきい値のシフトを維持したまま平行シフトする。 Si ド ッ ト へ の 電 子 の 注 入 量 は 容 量 値 の 増 減 に は 影 響 せ ず 、 し き い 値 電 圧 の シ フ ト は 注 入 量 に 起 因 す る た め 、 フ ラ ッ ト バ ン ド 電 圧 に 達 し 容 量 値 が 減 少 す る Vg =0.3V 付 近 か ら 、 Si ド ッ ト 中 の 電 子 の 放 電 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 の 減 少 と 、ゲ ー ト 電 圧 掃 引 に よ る 蓄 積 層 形 成 ま で の 空 乏 層 の 広 が り に よ る 容 量 値 の 減 少 が 同 時 に 起 こ る と 考 え ら れ る 。 Si ド ッ ト か ら 電 子 が 放 電 し 、 蓄 積 層 が 形 成 さ れ 始 め る と 容 量 値 の 上 昇 が お こ り 、 V g を -5V か ら 掃 引 し た と き の C-V 曲 線 と 一 致 す る も の と 考 え ら れ る 。 こ の V g を -5V か ら 掃 引 し た と き C-V 曲 線 と 一 致 す る 現 象 は 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト へ の 注 入 お よ び 放 出 を ゲ ー ト 電 圧 に よ り 制 御 し て 29 い る と 考 え ら れ る た め 、界 面 準 位 な ど の ト ラ ッ プ サ イ ト へ の ト ラ ッ プ の 影 響 は 小 さいと考えられる。 -10 6.0x10 ① Parallel shift 5.0x10 Capacitance (F) 1 MHz ② Decrease of capacitance -10 -10 4.0x10 ① -10 ② 3.0x10 -10 2.0x10 -10 1.0x10 0.0 -4 -2 0 2 4 Voltage (V) 図 2-14. ハ ン プ の メ カ ニ ズ ム 2-2-5 C-V 特 性 の 周 波 数 依 存 性 お よ び Sweep rate 依 存 性 の 評 価 先 の 項 で も 記 述 し た が 、 し き い 値 電 圧 が 正 方 向 に シ フ ト し た 場 合 、 電 子 が Si ド ッ ト に 保 持 す る 場 合 と 、界 面 準 位 や ゲ ー ト 酸 化 膜 中 の 欠 陥 に よ る ト ラ ッ プ サ イ ト に ト ラ ッ プ さ れ る 場 合 の 2 つ の 可 能 性 が 考 え ら れ る 。先 ほ ど の I-V 特 性 の 結 果 では界面準位などのトラップサイトへのトラップの影響は小さいと考えられる が 、 更 に 詳 し く 調 べ る に は C-V 特 性 の 周 波 数 依 存 性 を 測 定 す る こ と が 必 要 と な る 。実 際 に は 1MHz か ら 10KHz ま で 周 波 数 の 値 を 変 化 さ せ 、C-V 特 性 の 周 波 数 依 存 性 を 評 価 し た 。 そ の 結 果 を 図 2-15 に 示 す 。 も し 、 電 子 が 界 面 準 位 に ト ラ ッ プ さ れ て い た 場 合 、ト ラ ッ プ 、デ ト ラ ッ プ に 時 定 数 が 存 在 し 、周 波 数 依 存 性 に 分 散 が 考 え ら れ る 。測 定 周 波 数 の 低 下 に 伴 い 界 面 準 位 の 時 定 数 が 信 号 周 波 数 に 追 随 で き る よ う に な る た め 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 に 周 波 数 依 存 性 が 現 れ る 。一 方 ド ッ ト に 電 荷 が 注 入 さ れ て い る 場 合 、電 荷 の 充 放 電 は 掃 引 電 圧 の み に 依 存 し 周 波 数 依 存 性 は ほ と ん ど 現 れ な い こ と が 知 ら れ て い る [52]。 こ の Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ に つ い て 、 周 波 数 を 変 化 さ せ た C-V 特 性 を み る と 、ど の 周 波 数 に お い て も 、正 の 電 圧 を 印 加 す る と 充 電 し フ ラ ッ ト バ ン ド に 達 し た 時 に 容 量 値 が 減 少 し 元 の 曲 線 に 戻 っ て い る こ と か ら 、周 波 数 依 存 性 は 少 な い と い え る 。 ま た 、 V g =0V 付 近 で の 容 量 ピ ー ク の 最 大 容 量 値 が 周 波 数 を 低 く し て 30 い く に つ れ て 増 加 す る 傾 向 が み ら れ た 。 こ れ に つ い て 図 2-16( a) お よ び ( b) の バ ン ド 図 を 用 い て 説 明 す る 。周 波 数 を 高 く し て い く に つ れ て キ ャ パ シ タ の 総 容 量 は 、電 子 お よ び 正 孔 が ト ン ネ ル 酸 化 膜 を ト ン ネ ル し に く く な る た め 、コ ン ト ロ ール酸化膜の容量とドットの容量とトンネル酸化膜の容量 3 つの直列の容量の 和 と な る 。一 方 、低 周 波 の 場 合 で は 、電 子 お よ び 正 孔 が ト ン ネ ル 酸 化 膜 を ト ン ネ ル し 基 板 の 伝 導 帯( 正 孔 は 価 電 子 帯 )と ド ッ ト の 価 電 子 帯( 正 孔 は 価 電 子 帯 )を 行 き 来 す る た め 、容 量 は 高 周 波 の も の と 異 な り 、コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 の み の 容 量 に な る た め 容 量 が 大 き く な る [53]。 す な わ ち 、 容 量 値 は ド ッ ト の 注 入 量 に 大 き く 依 存 す る と 考 え ら れ る 。ま た 、高 周 波 に す る と し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 が 小 さ く な る の も こ の よ う な 理 由 か ら で あ り 、界 面 準 位 な ど の ト ラ ッ プ に よ る も の で は な いと考えられる。 Capacitance(pF) ▲ 10 kHz △ 100 kHz ● 1 MHz 20 容量増加 10 -5 0 Gate voltage(V) 5 図 2-15. C-V特 性 の 周 波 数 依 存 性 ( a) ( b) 高周波 低周波 Ec EF Ei EF EV Ec Ei EF EV Vg Vg EF 低周波 高周波 図 2-16. 注 入 の 周 波 数 変 化 に よ る バ ン ド 構 造 ( a) 電 子 ( b) 正 孔 31 電 子 の Si ド ッ ト へ の 充 放 電 特 性 を さ ら に 詳 し く 解 析 す る た め 、 高 周 波 (1MHz)C-V 測 定 に お け る Sweep rate 依 存 性 ( Step 40mV/s Speed 1m~ 1s) を 評 価 し た 。そ の 結 果 を 図 2-17 に 示 す 。Sweep rate が 増 加 す る に つ れ て 、V g =0V 付 近 で の 容 量 ピ ー ク の 最 大 容 量 値 が 増 加 す る 傾 向 が み ら れ る 。こ れ は 容 量 ピ ー ク の 位 置 ( ゲ ー ト 電 圧 ) は Sweep rate に 依 存 し な い が 、 容 量 が 減 少 し 再 び 増 加 す る 電 圧 を み る と 、 Sweep rate を 速 く す る に つ れ て マ イ ナ ス 側 に シ フ ト し て い る こ と が 分 か る 。 先 の 周 波 数 依 存 性 よ り 容 量 値 は Si ド ッ ト へ の 注 入 量 で 変 化 す る ことがわかっており、再び増加する電圧に周波数依存はみられない。すなわち Sweep rate を 速 く し て い く に つ れ て 放 電 が 遅 れ て い る こ と が 分 か る 。 こ の こ と か ら 、Sweep rate が 速 い 場 合 、放 電 が 遅 れ る た め Si ド ッ ト へ の 注 入 量 が 多 く な り 、先 の 低 周 波 に お け る 容 量 増 加 の よ う な 状 態 に な り 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 Capacitance(pF) 増加と容量ピークの最大値が増加すると考えられる。 ▲ △ ● ― 20 4 V/s 400 mV/s 40 mV/s 理想曲線 10 放電電圧 -5 0 Gate voltage(V) 5 図 2-17. C-V特 性 の sweep rate依 存 性 2-2-6 1 ドットに保持される電子数の計算 1 つ の Si ド ッ ト に 充 電 さ れ て い る 電 子 の 数 の 平 均 を し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 か ら 算 出 す る こ と が 可 能 で あ る 。 こ れ ま で の C-V 特 性 の 結 果 か ら 、 Si ド ッ ト 1 個 に 保 持 さ れ て い る 電 子 数 の 計 算 を 式 ( 2-12) を 用 い て 行 っ た [ 5 4 ] 。 ΔV = ⎞ en dot ⎛ 1 ε OX ⎜⎜ t upper + t dot ⎟⎟ ・ ・ ・( 2-12) ε OX ⎝ 2 ε Si ⎠ 32 e:電 荷 素 量 ⊿ V:し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 ε s i :Si の 誘 電 率 ε o x :酸 化 膜 の 誘 電 率 n d o t :ド ッ ト 密 度 t u p p e r :コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 の 膜 厚 tdot:ド ッ ト 直 径 計算で使用した値 Si ド ッ ト 密 度 8.5×10 11 /cm 2 ( SEM よ り ) ⊿ Vth Capacitance (F) 5.0x10 コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 厚 20 nm 1.6×10 - 1 9 C Si の 誘 電 率 1 MHz -10 Si ド ッ ト 直 径 5 nm( TEM よ り ) 電荷素量 -10 6.0x10 -10 4.0x10 -10 3.0x10 -10 2.0x10 -10 1.0x10 11.9 0.0 -4 SiO 2 の 誘 電 率 3.9 0 2 4 Voltage (V) 真 空 の 誘 電 率 8.85×10 - 1 2 F/m 1.60 × 10 −19 × 8.5 × 10 −11 ΔV = 3.5 × 10 −13 -2 図 2-18 各 Sweep rateの 実 測 値 ⊿ V t h ⎛ ⎞ 1 3.5 × 10 −13 −6 ⎜⎜ 20 × 10 + × × 5 × 10 − 6 ⎟⎟ = 0.82V −12 2 1.1× 10 ⎝ ⎠ 上 記 の 計 算 結 果 よ り 、 Si ド ッ ト 間 で の 電 子 注 入 に よ る 影 響 が な く 、 Si ド ッ ト の 直 径 が 5nm と 均 一 な 場 合 こ の 構 造 で は 、 0.82V の シ フ ト が み ら れ る 。 各 Sweep rate の 実 測 値 ⊿ V t h は 、図 2-18 に 示 す よ う に 放 電 が 始 ま る ハ ン プ の 頂 点 か ら 再 び 容 量 値 が 上 が る ま で の 電 圧 と し 、計 算 で 求 め た 理 想 的 な シ フ ト 量 か ら Si ド ッ ト 1 個 に 保 持 さ れ て い る 電 子 数 を 求 め た 。 そ の 結 果 を 表 2-1 に 示 す 。 Sweep rate を 速 く し て い く に つ れ て 、 ド ッ ト 1 個 あ た り に 注 入 さ れ る 電 子 の 数 が 増 大 し て い る 。 こ の 結 果 よ り 、 ト ン ネ ル し た 電 子 が す べ て Si ド ッ ト に 注 入 さ れ る と 考 え る と 、1 ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 数 の 平 均 は 1 個 以 上 で あ る こ と が わ か っ た 。し か し 、こ の 結 果 は 2-2-2 の Si ド ッ ト 形 状 評 価 で 示 し た よ う に 、 Si ド ッ ト の 粒 径 に ば ら つ き が あ る た め 、 計 算 結 果 と 実 測 値 に 誤 差 が あ る こ と を 考 慮 す る 必 要 が あ る 。 Si ド ッ ト の ば ら つ き と し き い 値 電 圧 の 関 係 は 次 の 項 で 検 討する。 33 表 2-1. Siド ッ ト 1つ に 保 持 さ れ て い る 電 子 数 Sweep rate し き い 値 電 圧 シ フ ト [V] Si ド ッ ト の 電 子 の 数 [個 ] 40 mV/s 0.68 0.84 400mV/s 0.96 1.19 4V/s 1.04 1.29 2-2-7 Si ド ッ ト の 粒 径 の ば ら つ き と し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 の 関 係 こ れ ま で 、 SEM 像 に 3nm~ 8nm の Si ド ッ ト の 粒 径 に ば ら つ き が み ら れ た 。 こ の ば ら つ き が し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る か を ( 2-12) の 計 算 式 を 用 い て 考 察 し た 。こ の 時 の 計 算 に 用 い た 値 は 、前 項 の 1 ド ッ ト に 保 持 される電子数の計算で用いた値を使用した。 Si ド ッ ト の 粒 径 3nm の 場 合 1.60 × 10 −19 × 8.5 × 10 −11 ΔV = 3.5 × 10 −13 ⎛ ⎞ 1 3.5 × 10 −13 −6 ⎜⎜ 20 × 10 + × × 3 × 10 − 6 ⎟⎟ = 0.81V −12 2 1.1× 10 ⎝ ⎠ Si ド ッ ト の 粒 径 5nm の 場 合 ΔV = 1.60 × 10 −19 × 8.5 × 10 −11 3.5 × 10 −13 ⎛ 1 3.5 × 10 −13 −6 ⎞ ⎜⎜ 20 × 10 − 6 + × ⎟⎟ = 0.82V × 5 × 10 −12 2 1 . 1 × 10 ⎝ ⎠ Si ド ッ ト の 粒 径 8nm の 場 合 1.60 × 10 −19 × 8.5 × 10 −11 ΔV = 3.5 × 10 −13 ⎛ ⎞ 1 3.5 × 10 −13 −6 ⎜⎜ 20 × 10 + × × 8 × 10 − 6 ⎟⎟ = 0.84V −12 2 1.1× 10 ⎝ ⎠ こ れ ら の 計 算 結 果 か ら 、 Si ド ッ ト の 粒 径 の ば ら つ き は し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 に 影 響 が 少 な い こ と が 分 か る 。こ れ は こ の 式 か ら わ か る よ う に 、コ ン ト ロ ー ル 34 酸化膜の膜厚が非常に厚くコントロール酸化膜の膜厚の項が支配的になるため、 数 nm の ド ッ ト の ば ら つ き で は 大 き く 影 響 し な い と い え る 。こ の 結 果 か ら 、20nm か ら 10nm に 薄 膜 化 し 同 様 に 計 算 を 行 う と 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 は 大 き く 変 化する。 20nm の 場 合 1.60 × 10 −19 × 8.5 × 10 −11 ΔV = 3.5 × 10 −13 ⎛ ⎞ 1 3.5 × 10 −13 −6 ⎜⎜ 20 × 10 + × × 5 × 10 − 6 ⎟⎟ = 0.82V −12 2 1.1× 10 ⎝ ⎠ 10nm の 場 合 1.60 × 10 −19 × 8.5 × 10 −11 ΔV = 3.5 × 10 −13 ⎛ ⎞ 1 3.5 × 10 −13 −6 ⎜⎜10 × 10 + × × 5 × 10 − 6 ⎟⎟ = 0.43V −12 2 1.1× 10 ⎝ ⎠ コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 を 10nm 薄 く し た 状 態 で の 粒 径 の ば ら つ き を 同 様 に 計 算 す る と 、Si ド ッ ト の 粒 径 を 3nm、5nm、8nm で は そ れ ぞ れ 0.41V、0.43V、0.45V と ほ と ん ど 変 化 は 見 ら れ ず 、ド ッ ト の 粒 径 の 影 響 は 少 な い こ と が い え る 。し か し 、 ド ッ ト 密 度 は 大 き く 影 響 し 、 コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 20nm、 ド ッ ト の 粒 径 を 5nm と し 、ド ッ ト の 密 度 を 4.2×10 11 /cm 2 と 半 分 に し て 計 算 す る と 0.41V に 減 少 す る 。 こ の こ と か ら 、大 き な し き い 値 電 圧 の シ フ ト を 得 る に は 、理 論 上 コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 を 厚 く す る こ と が 必 要 で あ る が 、膜 厚 を 厚 く す る と 電 子 注 入 に 大 き な ゲ ー ト 電 圧 を 必 要 と す る た め 、実 デ バ イ ス の 応 用 に は 適 し て い な い 。よ っ て 同 じ コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 厚 で high-k 材 料 な ど を 用 い て 物 理 膜 厚 を 小 さ く す る こ と や 、 ド ットを高密度に形成するなどの工夫が必要である。 2-2-8 ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド 効 果 と 低 温 C-V 測 定 Si ド ッ ト な ど の 量 子 ド ッ ト は そ の サ イ ズ を 変 え る こ と で 、 バ ル ク に は な い 物 理 現 象 が み ら れ る た め 、近 年 注 目 さ れ て い る 。そ の 応 用 例 は 、本 研 究 の よ う な 高 密 度 の ド ッ ト が 必 要 と さ れ る メ モ リ だ け で は な く 、単 電 子 メ モ リ や 単 電 子 ト ラ ン ジ ス タ な ど さ ま ざ ま な 場 所 で 提 案 さ れ て い る [55]。 ナ ノ サ イ ズ の 半 導 体 に 閉 じ 込 め ら れ た 電 子 の エ ネ ル ギ ー は 、バ ル ク で み ら れ る よ う な 連 続 的 な バ ン ド 構 造 で は な く 、離 散 的 な エ ネ ル ギ ー 準 位 を と る よ う に な る 。 35 また、電子に閉じ込めている壁である量子ドットのサイズが変化することでも、 電子のエネルギー状態も変化する。一般に量子ドットのサイズが小さくなると、 最 も 低 い 位 置 に あ る エ ネ ル ギ ー 準 位 が 上 昇 し 、他 の エ ネ ル ギ ー 準 位 と の 差 も 大 き く な る 量 子 サ イ ズ 効 果 が 現 れ る 。ま た 、ド ッ ト の 性 質 は 閉 じ 込 め ら れ た 電 子 数 の 違 い に よ っ て も 変 化 す る 。複 数 個 の 電 子 が ド ッ ト に 閉 じ 込 め ら れ た 場 合 、電 子 同 士 の 影 響 が 見 ら れ 1 つ の ド ッ ト に 電 子 が 閉 じ 込 め ら れ た 場 合 、新 た に 別 の 電 子 が 注 入 さ れ る と そ の 反 発 力 を 受 け て 電 子 の 移 動 が ブ ロ ッ ク さ れ る「 ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケード現象」がおこる。電子の移動によるエネルギー変化 E は以下の式によっ て求められる。 < E ・ ・ ・( 2-13) e2 E = 2C ・ ・ ・( 2-14) KT KT: 静 電 エ ネ ル ギ ー C: 微 小 電 気 容 量 e:電 荷 素 量 誘 電 体 中 の 孤 立 Si ナ ノ ド ッ ト の 静 電 容 量 C は 以 下 の よ う に 表 さ れ る 。 C = 4πε 0 ε Si r ・ ・ ・( 2-15) ε 0 :真 空 の 誘 電 率 ε S i :Si の 誘 電 率 r:ド ッ ト 直 径 π:円 周 率 す な わ ち ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド を お こ す 場 合 、ド ッ ト の 粒 径 を 小 さ く す る か 温 度 を 下 げ る 必 要 が あ る 。そ こ で 、今 回 の Si ド ッ ト の 直 径 を 5nm と 均 一 と し た 場 合のクーロンブロッケードがおこる温度を計算した。 計算に用いた値 Si ド ッ ト 直 径 5 nm( TEM よ り ) 電荷素量 1.6×10 - 1 9 C 酸 化 膜 の 誘 電 率 3.9 真 空 の 誘 電 率 8.85×10 - 1 2 F/m ボルツマン定数 K 1.38×10 - 2 3 1V= 6.24×10 1 8 eV 36 ( ) 2 1.6 ×10 −19 e2 e2 = = E= = 3.87 ×10 − 21 V = 24meV −12 −9 2C 8πε 0 ε S i r 8 × 3.14 × 8.85 ×10 ×11.9 × 3.5 ×10 e2 T = 2 CK 3.87 × 10 = 1 . 38 × 10 − 21 23 = 280 K = 7 o C こ の 結 果 よ り Si ド ッ ト の 直 径 が 5nm と 均 一 と し た 場 合 、計 算 上 で は 7℃ ま で 冷 却 す る こ と で ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド が お こ る 。 ま た 、 今 回 作 製 し た Si ド ッ ト に ば ら つ き が あ る こ と か ら 8nm の 場 合 で 同 様 に 計 算 し た と こ ろ 、-97℃ で ク ー ロ ン ブロッケードがおこる。逆に室温でクーロンブロッケードを起こす場合では 4.6nm 以 下 の ド ッ ト 粒 径 が 必 要 と な る 。 こ の こ と か ら 、 ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド に お け る ド ッ ト の 粒 径 は nm 単 位 で 大 き く 影 響 を 与 え る と い う こ と が 分 か っ た 。 こ れ ま で に 、5nm の Si ド ッ ト を 用 い た 単 電 子 ト ラ ン ジ ス タ に お い て 、ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド が 観 測 さ れ て お り [ 5 6 ] 、 更 に 8nm の 粒 径 の Si ド ッ ト を 酸 化 処 理 に よ り 粒 径 を 小 さ く し 、25nm の ゲ ー ト 長 を 持 つ 極 微 細 構 造 に お い て 、単 電 子 メ モ リ と し て 動 作 が 報 告 さ れ て い る [55]。 こ の こ と か ら も 、 上 記 の 計 算 結 果 は 妥 当 で あるといえる。 次 に 低 温 下 で の Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の C-V 測 定 を 行 っ た 。 先 ほ ど の 計 算 式 よ り 250K で ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド が 起 こ る ド ッ ト の 直 径 を 調 べ た と こ ろ 5.6nm で あ り 、 150K で は 9.4nm と な る 。 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の C-V 測 定 の 結 果 を 図 2-19 に 示 し 、 表 2-2 に 各 温 度 に お け る 放 電 が 始 ま る ハ ン プ の 頂 点 か ら 再 び 容 量 値 が 上 が る ま で の 電 圧 の 幅 を 示 す 。温 度 を 室 温 か ら 250K ま で 冷 却 し た 時 に 、放 電 が 始 ま る ハ ン プ の 頂 点 か ら 再 び 容 量 値 が 上 が る ま で の 電 圧 の シ フ ト 量 が 大 幅 に 小 さ く な る 。更 に 低 温 に し て い く と 200K と 150K と で は 、シ フ ト 量 の 差 は ほ と ん ど 見 ら れ な か っ た 。室 温 か ら 低 温 に す る に つ れ て し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 が 急 激 に 減 少 し て い る こ と か ら 、ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド の 効 果 が 考 え ら れ る が 、こ れ ま で 隣 接 す る ド ッ ト 間 の 影 響 な ど に よ る 見 解 は ほ と ん ど な く 、今 後 詳しい解析が必要になる。 37 Capacitance(pF) 40 ▲ 300 K △ 250 K ● 200 K 十 150 K 30 20 10 0 -4 -2 0 2 Voltage(V) 4 図 2-19. C-V特 性 の 温 度 依 存 性 表 2-2. Siド ッ ト 1つ に 保 持 さ れ て い る 電 子 数 電 圧 幅 [V] 2-2-9 室温 250K 200K 150K 0.84 0.58 0.40 0.41 電流測定および容量測定からの電荷量の比較 C-V 特 性 の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 か ら 電 荷 量 を 求 め 、そ の 理 論 値 と I-V 特 性 から実際に流れた電流値から求めた電荷量とを比較検討を行った。 理 論 値 の 計 算 方 法 は 、2-2-6 の 1 ド ッ ト に 保 持 さ れ る 電 子 数 の 計 算 で 用 い た 計 算 式 ( 2-12) か ら 電 荷 量 を 求 め た 。 I-V 測 定 の sweep rate は 100mV/s で あ り そ れ に 近 い sweep rate で あ る 40mV/s の 値 か ら 求 め た 電 荷 量 は 1.4×10 - 5 C/cm 2 で あった。 I-V 測 定 の 実 測 値 か ら の 計 算 は 、 C-V 特 性 に お い て 正 か ら 負 の 電 圧 を 印 加 後 、 負 の 方 向 に 電 圧 印 加 し た と き 、 V g =0V 付 近 で 電 子 が 放 電 さ れ 、 さ ら に ゲ ー ト を 負 バ イ ア ス 方 向 に 電 圧 を 掃 引 す る と 容 量 値 が 減 少 し て い く が 、再 び 容 量 値 が 上 昇 し て い く こ の 領 域 に 電 子 が 放 出 す る も の と 考 え 、こ の 領 域 の 電 流 値 の 積 分 値 か ら 電荷量を求めた。電荷量と時間の関係は次の式で表される。 Q = It ・ ・ ・( 2-16) Q=電 荷 量 、 I=電 流 , 38 t= 放 電 時 間 こ の 式 か ら 電 荷 量 を 求 め る に は 放 電 時 間 が 必 要 で あ る 。 こ の 時 の V g が 0.3V か ら -0.7V の 1V を 放 電 領 域 と 考 え 、 sweep rate は 100mV/s で あ る た め 、 こ の 領 域 の 時 間 は 10s と な る 。 時 間 と 電 流 密 度 の 積 分 値 よ り 電 荷 量 を 計 算 し た と こ ろ 、 電 荷 量 の 絶 対 値 は 1.95×10 - 5 C/cm 2 で あ っ た 。 こ の 値 は 理 論 値 と ほ ぼ 同 じ で あ り 、こ の 電 荷 量 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 を 計 算 し た と こ ろ 1.4V で あ り 、 理論値と一致することがわかった。 2-3 まとめ Side-Wall 電 極 型 PECVD を 用 い た Si ド ッ ト の 形 状 お よ び ド ッ ト 密 度 の 評 価 の た め 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 上 に 堆 積 し た Si ド ッ ト の 様 子 を SEM、AFM お よ び TEM に よ り 観 察 し た 。 そ の 結 果 、球 状 の Si ド ッ ト が 8.5×10 11 /cm 2 の 高 密 度 に 形 成 し た 。 し か し 、 粒 径 に ば ら つ き が み ら れ 3nm~ 8nm で あ っ た 。 ま た 、 隣 接 す る ド ッ ト ど う し は 孤 立 し 、 Si ド ッ ト は 単 結 晶 で あ る こ と が わ か っ た 。 よ っ て 、 新 規 堆 積 法 よ っ て ナ ノ サ イ ズ の Si ド ッ ト の 形 成 が 可 能 で あ る こ と が わ か っ た 。 し か し 今 後 、 堆 積 温 度 や 圧 力 な ど を 変 化 さ せ 、 Si ド ッ ト の 粒 径 の ば ら つ き を な く す ような条件の最適化が必要である。 PECVD 膜 単 層 お よ び 積 層 膜 の C-V 特 性 お よ び I-V 特 性 よ り 算 出 さ れ た 、固 定 電 荷 や 界 面 準 位 密 度 や 絶 縁 耐 性 の 結 果 か ら 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 お よ び コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 の 界 面 特 性 、膜 質 と も に 良 好 で メ モ リ に 用 い る 酸 化 膜 と し て 使 用 す る こ と ができる特性を示した。 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ を 作 製 し 、 Si ド ッ ト へ の 電 子 の 充 放 電 特 性 を C-V 特 性 、I-V 特 性 に よ り 行 い 評 価 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 C-V 曲 線 に 掃 引 に よ る ヒ ス テ リ シ ス が 現 わ れ た 。 こ の シ フ ト は Si ド ッ ト へ の 電 子 注 入 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト で あ る と 考 え ら れ る 。ま た 周 波 数 依 存 性 を 測 定 し た と こ ろ 、界 面 準 位 の 影 響 が 少 な い こ と が わ か っ た 。さ ら に 周 波 数 を 低 く す る こ と で 、容 量 値 に 増 加 が み ら れ 、こ れ は 低 周 波 に す る こ と で 、基 板 の 電 子 が ト ン ネ ル し や す く な る た め で あ る こ と が わ か っ た 。 sweep rate 依 存 性 を 測 定 す る と 、 正 方 向 に 0.68~ 1.04V シ フ ト が 見 ら れ 、 sweep rate を 速 く す る と 容 量 ピ ー ク は 増 大 す る が 、 こ れ は 速 い 電 圧 の 変 化 に 電 子 の 放 出 が 遅 れ る た め で あ る と 考 え ら れ る 。 各 sweep rate の しきい値電圧のシフト量から 1 ドットに保持されている電子の数を算出した結 39 果 、1 ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 数 は 1 個 以 上 で あ る こ と が 分 か っ た 。こ の シフト量からの電荷量と実測値からの電荷量がほぼ一致していた。 ド ッ ト の ば ら つ き は ヒ ス テ リ シ ス 幅 に 影 響 は 少 な い が 、ク ー ロ ン ブ ロ ケ ー ド 効 果 を 起 こ す に は ナ ノ 単 位 で の 制 御 が 必 要 で あ る と い う こ と が 分 か っ た 。更 に 、広 い ヒ ス テ リ シ ス 幅 を 得 る 場 合 は 、理 論 上 は コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 厚 を 厚 く す る 必 要 が あ る が 、電 子 注 入 に 高 電 圧 を 必 要 と す る た め 、ド ッ ト の 密 度 を 高 く す る こ と や high-k 材 料 を 用 い る な ど 工 夫 が 必 要 と な る 。 こ れ ら の 結 果 よ り こ の Si ド ッ ト は 形 状 に ば ら つ き が あ る も の の 、 新 規 堆 積 法 を 用 い て 作 製 し た Si ド ッ ト を フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に 用 い た メ モ リ に 応 用 可 能 であることが示唆された。 40 第 3章 3-1 Si ド ッ ト MOSFET の 作 製 と メ モ リ 特 性 評 価 はじめに こ れ ま で の 結 果 か ら 、MOS キ ャ パ シ タ 構 造 で の Si ド ッ ト へ の 充 放 電 が 確 認 さ れ 、 こ の Si ド ッ ト は 実 際 の フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト メ モ リ に 応 用 可 能 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 そ こ で 、 MOSFET 構 造 で の 評 価 を 行 う た め 、 基 本 と な る ト ラ ン ジ ス タ 作 製 プ ロ セ ス を 確 立 さ せ 、Si ド ッ ト MOSFET の 試 作 お よ び 評 価 を 行 っ た 。 本 章 で は 、 キ ャ パ シ タ の 時 と 同 様 に Side-Wall 電 極 型 PECVD を 用 い て Si ド ッ ト と コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 を 連 続 成 膜 し 、Si ド ッ ト MOSFET を 作 製 し た 。MOS キ ャ パ シ タ 構 造 で は 容 量 値 で 測 定 し て い た が 、 MOSFET 構 造 に す る こ と で ド レ イ ン 電 流 を 測 定 す る こ と が 可 能 に な る 。そ の た め 、こ れ ま で 測 定 で き な か っ た リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 な ど が 行 え る よ う に な り 、よ り 詳 し い メ モ リ 特 性 に つ い て評価をおこなった。 3-2 Si ド ッ ト MOSFET メ モ リ 特 性 評 価 3-2-1 Si ド ッ ト MOSFET の 作 製 と 評 価 Si ド ッ ト MOSFET の プ ロ セ ス フ ロ ー を 図 3-1 に 示 す 。 ① P 型 Si(100) 基 板 上 に 素 子 分 離 の た め 、 LOCOS ( Local oxidation of sillicon) ( 90nm)を 形 成 し 、ソ ー ス /ド レ イ ン( S/D) ( ド ー ズ 量 4×10 1 5 /cm 2 ) と し き い 値 電 圧 制 御 の た め の イ オ ン 注 入 を 行 い 、活 性 化 を 行 っ た 後 、0.5% 希 フ ッ 酸 に 7 分 間 浸 し LOCOS に よ っ て 酸 化 さ れ た ゲ ー ト 領 域 の 酸 化 膜 20nm を 除 去 し た 。 ② こ の 基 板 を キ ャ パ シ タ と 同 様 の 方 法 で RCA 洗 浄 を 行 っ た 後 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 で あ る 熱 酸 化 膜 を 950℃ で 3nm 堆 積 し 、 Side-Wall 電 極 型 PECVD で Si ド ッ ト と SiO 2 を 連 続 堆 積 し た 。 ③ 試 料 の 表 面 に 3000rpm-15 秒 で ス ピ ン コ ー ト に よ っ て レ ジ ス ト を 塗 布 し 、 41 ホ ッ ト プ レ ー ト で 100℃ 、 5 分 間 プ リ ベ イ ク を 行 っ た 後 、 マ ス ク ア ラ イ ナ ー ( SUSS 製 MJB) で 8 秒 間 露 光 を 行 い 、 現 像 溶 液 ( 東 京 応 化 工 業 製 : NMD-3)に 1 分 間 浸 し 現 像 を 行 い 、超 純 水 で 洗 浄 後 、窒 素 ブ ロ ー を 行 い 乾 燥 さ せ た 。 さ ら に 、 ホ ッ ト プ レ ー ト で 120℃ 、 5 分 間 ポ ス ト ベ イ ク を 行 っ た 後 、 BHF に 1 分 間 浸 し 、 超 純 水 で 洗 浄 後 、 超 音 波 洗 浄 に よ り ア セ ト ン 、 メタノールの順番でレジストを除去および洗浄を行い、コンタクトホール を形成した。 ④ コンタクトホール形成後、再度レジスト、ベーキング、露光、現像を行 い 、 電 極 領 域 を 作 製 し た 。 ゲ ー ト 電 極 に は EB( electron beam) 蒸 着 装 置 を 用 い て Ti を 約 300nm 蒸 着 さ せ 、 リ ム ー バ( AZ remover 200) の 中 に 試 料 を 入 れ 、 80℃ に 温 め ら れ た 温 浴 に 浸 し 、 リ フ ト オ フ に よ っ て ゲ ー ト 電 極 お よ び ソ ー ス /ド レ イ ン 電 極 を 形 成 し た 。そ の 後 PMA を 400℃ で 30min 行 い MOSFET を 作 製 し た 。 ド ッ ト の 有 無 に よ る 特 性 の 比 較 の た め 、 ド ッ ト が 埋 め 込 ま れ て い な い MOSFET( 以 下 積 層 膜 MOSFET) も 作 製 し た 。 ⑤ Si ド ッ ト に お け る 電 子 の 充 放 電 特 性 を 入 力 特 性 に よ り 評 価 し 、 さ ら に 、 リテンションタイムの測定や信頼性について検討を行い、メモリ特性を評 価した。 n+ n+ n+ n+ n+ n+ p-Si(100) ・ RCA 洗 浄 ・ 熱 酸 化 膜 の 形 成 (3nm) ( a) n+ n+ PMA PECVD に よ る Si ド ッ ト の 形 成 n+ PECVD に よ る 酸化膜の形成 ( 20nm) n+ ・ 電極蒸着 ・ リフトオフ 図 3-1. Si ド ッ ト MOSFET の 作 製 プ ロ セ ス 42 n+ n+ コンタクト ホールの形成 3-2-2 MOSFET の 初 期 特 性 図 3-2 に 実 際 に 作 製 し た MOSFET の 微 分 干 渉 顕 微 鏡 像 と 図 3-3 に 素 子 構 造 を 示 す 。 マ ス ク 合 わ せ の 精 度 は 1μm 以 下 で あ り 、 設 計 で の 最 も 大 き な サ イ ズ は W/L= 50μm/20μm で あ り 、最 も 小 さ い サ イ ズ は W/L= 2μm/0.5μm で あ る 。ゲ ー ト 絶 縁 膜 に は MOS キ ャ パ シ タ と 同 様 に 20nm の PECVD 単 層 を 用 い て い る 。 図 3-4( a) に MOSFET の 入 力 特 性 ( ド レ イ ン 電 流 -ゲ ー ト 電 圧 特 性 ) と ( b) に 出 力 特 性 ( ド レ イ ン 電 流 -ド レ イ ン 電 圧 特 性 ) の 基 本 特 性 を 示 す 。 ゲ ー ト 電 圧 に よ り チ ャ ネ ル が 形 成 さ れ て お り 、ト ラ ン ジ ス タ 動 作 し て い る こ と が 分 か る 。ま た 、OFF 電 流 も 10 - 1 3 A と 低 く 、On/Off 比 が 8 桁 と 良 好 な ト ラ ン ジ ス タ 特 性 を 示 し て い る 。 こ の MOSFET の 初 期 特 性 を 以 下 に 示 す 。 電 界 効 果 移 動 度 = 200cm 2 /Vs し き い 値 電 圧 = 1.5V S 値 ( subthreshold) = 0.1V/dec 線 形 領 域 で の On/off 比 =8 桁 こ の 特 性 は 、 従 来 の MOSFET に 比 べ 移 動 度 が 低 い が 、 こ の MOSFET が メ モ リに用いる基本トランジスタとして十分な特性を有している。 電極Al(300nm) LOCOS(60nm) n+ n+ ゲート絶縁膜SiO2(20nm) 100μm As(4×1015/cm2 ) P基板(3.26~4.24Ωcm ) b) 図 3-2. 実 際 に 作 製 し た MOSFET 図 3-3. MOSFET の 素 子 構 造 43 -4 [×10 ] 1 DRAIN CURRENT(A) Vd=5V Vd=50mV 1 Gate bias (V) 2 0.6 0.4 3V 0.2 0 0 3 Vg=4V 0.8 ( b) 1 2 3 DRAIN BIAS(V) 4 2V 0V1V 図 3-4.( a) MOSFET の 入 力 特 性 ( b) 出 力 特 性 3-2-3 入力特性評価 積 層 膜 MOSFET と Si ド ッ ト MOSFET の 入 力 特 性 評 価 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 3-5( a)お よ び( b)に 示 す 。ド レ イ ン 電 圧 を 50mV と 一 定 と し 、ゲ ー ト 電 圧 を V g =-2V か ら 正 方 向 に 掃 引 後 、 折 り 返 し V g =3V か ら 負 方 向 に 掃 引 す る と 、 積 層 膜 MOSFET の 場 合 で は 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト は み ら れ な か っ た が 、Si ド ッ ト MOSFET に つ い て は 、 掃 引 に よ り し き い 値 電 圧 は 正 電 圧 側 に 0.7V の シ フ ト が み ら れ た 。Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 結 果 か ら も 、こ の シ フ ト は 、ド ッ ト へ の 電 子 注 入 に よ り 起 こ る し き い 値 電 圧 シ フ ト で あ る と 考 え ら れ る 。ま た 、図 3-6 に 示 す ゲ ー ト 長 W/L が 2μm/0.5μm の 狭 チ ャ ネ ル MOSFET の 入 力 特 性 に お い て も 、掃 引 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト を 確 認 し て い る 。こ の こ と か ら 、集 積 化 に も適したメモリの作製技術といえる。 10-5 10-6 10-7 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 10-13 10-14 -1 Vd=50 mV sweep rate=10 mV/s room temperature Drain current (A) Drain current (A) Drain current (A) 10-4 10-5 10-6 ( a) 10-7 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 10-13 10-14 -1 0 ( a) 0 1 Gate bias (V) 2 3 10-5 10-6 10-7 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 10-13 10-14 -1 Vd=50 mV sweep rate=10 mV/s room temperature ( b) 0 1 Gate bias (V) 2 図 3-5. ( a) 積 層 膜 MOSFET の 入 力 特 性 ( b) Si ド ッ ト MOSFET の 入 力 特 性 44 3 Drain current (A) 10-4 10-5 Vd=50mV sweep rate=10mV/s 10-6 10-7 10-8 10-9 10-10 ●W/L=2μm/0.5μm 10-11 ▲W/L=5μm/0.5μm △W/L=10μm/0.5μm 10-12 -13 10 -2 -1 0 1 2 3 Gate bias (V) 図 3-6. Si ド ッ ト MOSFET の ゲ ー ト 長 依 存 性 次 に 電 子 の 注 入 量 と し き い 値 電 圧 の 関 係 を 調 べ る た め に 、正 の ゲ ー ト 電 圧 を 増 加 さ せ 、し き い 値 電 圧 の ゲ ー ト 電 圧 依 存 性 を 測 定 し た 。そ の 結 果 を 図 3-7 に 示 す 。 正 の ゲ ー ト 電 圧 を 増 加 さ せ る に つ れ て 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 は 増 加 し て い る こ と が 分 か る 。こ れ は 、ゲ ー ト 電 圧 を 高 く す る に つ れ て 電 界 が 強 ま り 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 を ト ン ネ ル す る 電 子 の 量 が 増 加 し 、Si ド ッ ト へ の 注 入 量 が 増 加 す る た め 、 Drain current (A) しきい値電圧のシフト量も増加すると考えられる。 10-5 Vd=50mV 10-6 sweep rate=10mV/s 10-7 △-2~5V 10-8 ▲-2~4V □-2~3V 10-9 十-2~2V 10-10 10-11 10-12 10-13 -2 0 2 Gate bias (V) 4 図 3-7.電 圧 依 存 性 さ ら に 図 3-8 に 示 す よ う に Sweep rate を 変 化 さ せ 電 子 の 注 入 量 を 変 化 さ せ た と こ ろ 、 Sweep rate を 遅 く す る に つ れ ヒ ス テ リ シ ス の 幅 が 増 大 し て い る 結 果 か らも、電子の注入量の増加によるものであると示唆される。 こ れ ま で の 入 力 特 性 の 結 果 か ら 、 酸 化 膜 や ド ッ ト な ど の 構 造 は MOS キ ャ パ シ タ の 場 合 と 同 じ 構 造 で あ る が 、低 い 印 加 電 圧 で ヒ ス テ リ シ ス が 大 き く 現 れ て い る 。 こ れ は 、容 量 値 と ド レ イ ン 電 流 を 測 定 し て い る こ と の 違 い も あ る が 、ソ ー ス よ り 45 反 転 の 電 子 が 供 給 さ れ 、 MOS キ ャ パ シ タ の 場 合 よ り 反 転 層 が 形 成 さ れ や す く 、 フローティングゲートに注入される電子が低電圧で形成するものと考えられる。 正 電 圧 側 に 大 き く 電 圧 を 上 げ た 場 合 や Sweep rate を 変 化 さ せ 電 子 の 注 入 量 を 増 加 さ せ た 場 合 、し き い 値 電 圧 幅 の 変 化 量 が MOS キ ャ パ シ タ と 大 き く な る の も こ の よ う な 理 由 で あ る と 考 え ら れ る 。 ま た 以 上 の 理 由 と 3nm の ト ン ネ ル 酸 化 膜 を 使 用 す る こ と で 、直 接 ト ン ネ ル が 支 配 的 に な る こ と も 低 電 圧 で の 注 入 が 起 こ る こ Drain current (A) とに起因しているものと考えられる。 10-5 Vd=50 mV 10-6 ●10mV/s 10-7 △20mV/s -8 10 □30mV/s -9 10 10-10 10-11 10-12 10-13 -2 -1 0 1 2 3 Gate bias (V) 図 3-8.の 掃 引 速 度 依 存 性 4 メ モ リ 特 性 を さ ら に 詳 し く 解 析 す る た め に 、掃 引 前 の 電 子 の 放 電 時 間 の 依 存 性 に つ い て 評 価 し た 結 果 を 図 3-9 に 示 す 。 Si ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 を 放 電 す る た め に -2V の 電 圧 を 0~ 60s 印 加 後 、 ゲ ー ト 電 圧 を V g =-2V か ら 正 方 向 に Vg=3V ま で 掃 引 後 、折 り 返 し V g =3V か ら 負 方 向 に 掃 引 す る と 、立 ち 上 が り の し き い 値 電 圧 が 負 方 向 へ の シ フ ト が 見 ら れ た 。さ ら に 、-2V で の 保 持 時 間 を 長 く す る に つ れ て 、し き い 値 が 負 方 向 に シ フ ト し て い る こ と が わ か る 。し か し 、立 下 り の 電 圧 に 変 化 は み ら れ な か っ た 。 こ れ は 、 Si ド ッ ト に 多 数 キ ャ リ ア で あ る 正 孔 が 注 入 さ れ 、 Si ド ッ ト 内 が 正 に 帯 電 し チ ャ ネ ル 部 に 電 子 が 集 ま り や す く な り 、 し き い 値 が シ フ ト し た も の と 考 え ら れ る 。す な わ ち こ の 結 果 か ら 、こ の し き い 値 電 圧 の シ フ ト は 、電 子 の 注 入 の み で お こ る の で は な く 、正 孔 と 電 子 の 両 方 の 成 分 によりシフトしていることが分かった。 こ れ ま で 電 圧 幅 依 存 性 の 入 力 特 性 の 結 果 か ら 、Si ド ッ ト 1 個 に 保 持 さ れ て い る 電 子 数 の 計 算 を 第 2 章 の( 2-12)式 を 用 い て 行 っ た 。計 算 に 使 用 し た 値 は 、MOS キ ャ パ シ タ と 同 様 で Si ド ッ ト の 密 度 は 8.5×10 11 /cm 2 、 Si ド ッ ト の 直 径 は 5nm、 コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 厚 は 20nm、 ⊿ V は 入 力 特 性 の 各 電 圧 幅 の 実 測 値 よ り 0.6~ 46 4.04V を 用 い た 。そ の 結 果 を 表 3-1 に ま と め た 。こ の 結 果 よ り 、Si ド ッ ト の 粒 径 が 均 一 で 、 ト ン ネ ル し た 電 子 が す べ て Si ド ッ ト に 注 入 さ れ る と 考 え る と 、 1 ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 数 は 0.73 個 か ら 4.9 個 で あ る こ と が わ か っ た 。 し か し 、 こ の 値 は 、 MOS キ ャ パ シ タ の 時 と は 異 な り 、 正 孔 に よ る 負 バ イ ア ス 側 の シフトと電子注入によるシフトの両方の成分を含んでいるため正確とは言えな いが、電圧幅から見ても 1 ドットに電子は 1 個以上注入されることがわかり、 Drain current (A) クーロンブロッケードのような現象はみられていないことが分かる。 10-5 10-6 Vd=50 mV sweep rate=10 mV/s 10-7 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 10-13 10-14 -2 -1 0 1 Gate bias (V) ●0s ▲30s □60s 2 3 図 3-9. Si ド ッ ト MOSFET 負 電 圧 保 持 時 間 依 存 性 表 3-1. 1 ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 数 の 計 算 ゲ ー ト 電 圧 [V] し き い 値 電 圧 シ フ ト [V] Si ド ッ ト の 電 子 の 数 [個 ] -2~ 2 0.60 0.73 -2~ 3 0.75 0.91 -2~ 4 2.47 3.0 -2~ 5 4.04 4.9 3-2-4 リテンションタイム(電子の保持時間)の測定 リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は 情 報 の 記 録 時 間 を 示 す た め 、メ モ リ 特 性 に お い て 非 常 に 重 要 と な る パ ラ メ ー タ で あ る 。リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 方 法 は 、ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 を 充 電 ま た は 放 出 後 、読 み 出 し 電 圧 で ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 を 測 定 す る 。電 子 を 放 出 し た も の は 、時 間 経 過 と 共 に 電 子 が 注 入 さ れ ド レ イ ン 電 流 が低下し、逆に注入したものは電子が抜け落ちるためドレイン電流は増加する。 47 こ の 二 つ の 曲 線 が 重 な る と こ ろ が リ テ ン シ ョ ン タ イ ム で あ る 。リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は ト ン ネ ル 酸 化 膜 の 膜 厚 や 膜 質 に 大 き く 依 存 す る 。現 在 実 用 化 さ れ て い る メ モ リ の ト ン ネ ル 酸 化 膜 厚 は 、信 頼 性 を 考 慮 し た 結 果 、10nm 以 上 と 厚 膜 を 使 用 し て いる。しかし、厚膜を使用することで書き込み消去スピードを犠牲にしながら、 目 標 値 で あ る 10 年 間 の リ テ ン シ ョ ン タ イ ム を 実 現 し て い る 。 本 メ モ リ の リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 結 果 を 図 3-10 に 示 す 。 測 定 前 に -2V の 電 圧 を 30 秒 間 印 加 し 、 保 持 さ れ て い る 電 子 を す べ て 放 電 さ せ ド レ イ ン 電 圧 を 50mV と 一 定 と し 、 読 み 出 し 電 圧 0.5V で ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 の 測 定 を 行 っ た 。読 み 出 し 電 圧 は 0V に 近 い 電 圧 で 、入 力 特 性 の 書 き 込 み 消 去 時 の ド レ イ ン 電 流 差 が 大 き い 0.5V の 電 圧 を 用 い た 。 次 に +3V の 電 圧 を 30 秒 間 印 加 し 電 子 を 充 電 さ せ 、同 様 に ド レ イ ン 電 圧 を 50mV と 一 定 と し 、読 み 出 し 電 圧 0.5V で ド レ イ ン 電 流 の 測 定 を 行 い 、こ れ ら 2 つ の ド レ イ ン 電 流 か ら リ テ ン シ ョ ン タ イ ム を 測 定 し た 。時 間 の 経 過 と と も に 、両 曲 線 の ド レ イ ン 電 流 が 変 化 し 二 つ の 曲 線 の 幅( メ モ リ ー ウ イ ン ド )が 狭 く な っ て い る が 、 1200s 以 上 で も 二 つ の 曲 線 は 重 な ら な い こ と が わ か る 。リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 目 標 値 は 10 年 以 上 の デ ー タ 保 持 の た め 、実 用 的 な レ ベ ル と は 言 え な い が 、3nm の ト ン ネ ル 酸 化 薄 膜 を 用 い て も メ モ リ 動 作 を 確 認 す る こ と が で き た 。リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 向 上 に は 、電 子 注 入 す る た め の ゲ ー ト で 電 圧 は 向 上 す る も の の 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 厚 を 厚 く し 直 接 ト ン ネ ル さ せ る 機 構 か ら 、F-N ト ン ネ ル に す る こ と で 自 然 放 出 を 抑 え る こ と や 、 Si ド ッ ト を 2 層 構 造 に し 、 上 下 間 の 電 子 ク ー ロ ン 力 で リ テンションを向上させるなど、まだまだ改善は可能である。 Read Vg=0.5 V Vd=50 mV After Erasing at Vg=-2 V Drain current (A) 10-10 10-11 After writing at Vg=+3 V 10-12 200 400 600 800 Time (s) 1000 1200 図 3-10. Si ド ッ ト MOSFET の リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 測 定 48 3-3 電子の注入機構 3-3-1 ドレイン電流の経過時間変化 Si ド ッ ト に 注 入 さ れ る 電 子 の 注 入 機 構 に つ い て 調 べ る た め 、 ゲ ー ト 電 圧 印 加 時 の ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 を 測 定 し た 。 第 二 章 で も 少 し 述 べ た が 、 Si ド ッ ト に 注 入 さ れ た 電 子 に よ っ て 膜 中 に 負 の 電 荷 が 増 加 し 、正 電 圧 を 印 加 し て い る ゲ ー ト の 電 界 が 弱 ま る こ と で ド レ イ ン 電 流 は 減 少 し 、し き い 値 電 圧 が シ フ ト す る 。す な わ ち 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 測 定 の 時 と 同 様 に 、正 の ゲ ー ト 電 圧 を 印 加 し な が ら ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 を 測 定 す る こ と で 、 ど の よ う な 機 構 で Si ド ッ ト に 電 子 が注入されるかが理解できる。 測 定 前 に Si ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 を 放 電 さ せ る た め 、-2V の 電 圧 を 30 秒 間 印 加 し 、 ド レ イ ン 電 圧 50mV、 V g =5V で 充 電 し な が ら ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 の 測 定 を 行 っ た 。ま た 、Si ド ッ ト の 影 響 を み る た め に 、積 層 膜 MOSFET も 同 様 に 測 定 を お こ な っ た 。 そ の 結 果 を 図 3-11( a) お よ び ( b) に 示 す 。 こ の 測 定 の 結 果 、積 層 膜 MOSFET で は ド レ イ ン 電 流 の 時 間 経 過 に よ る 変 化 は 見 ら れ な か っ た が 、Si ド ッ ト MOSFET の 場 合 、ド レ イ ン 電 流 は 時 間 経 過 と 共 に 段 階 的 な 変 化 が み ら れ た 。 注 入 開 始 か ら 6s ま で の ド レ イ ン 電 流 に ほ と ん ど 変 化 が な く 、 Si ド ッ ト に 電 子 が 注 入 さ れ て い な い よ う に 見 え る 。こ れ は 、図 3-12 に 示 す 同 時 に 測 定 し た ゲ ー ト 電 流 を み る と 、ゲ ー ト 電 圧 印 加 と 同 時 に ゲ ー ト 電 流 が 流 れ 始 め 、 Si ド ッ ト へ の 電 子 注 入 が 開 始 さ れ る 。 そ し て 、 時 間 経 過 と と も に 、 ゲ ー ト 電 圧 印 加 に よ る 電 界 に 影 響 を 与 え る ほ ど の 電 子 が 注 入 さ れ る と 、電 界 が 弱 め ら れ ド レ イン電流が急激に低下する。それと同時に電子注入の量も減少し注入開始から 10-3 After Erasing at Vg=-2V 30s Vg=5V Vd=50mV 10-4 10-5 10-6 ( a) 10-7 10-8 -1 10 0 10 1 10 Time(s) 10 DRAIN CURRENT(A) DRAIN CURRENT(A) 100s の 辺 り で 、 安 定 し た 状 態 に な り ド レ イ ン 電 流 は 変 化 し な く な る 。 10-3 10-4 10-5 ( b) 10-6 10-7 10-8 2 After Erasing at Vg=-2V 30s Vg=5V Vd=50mV 10-1 100 101 Time(s) 102 図 3-11. ド レ イ ン 電 流 変 化 測 定 ( a) 積 層 膜 MOSFET( b) Si ド ッ ト MOSFET 49 Gate current (A) 10-10 After Erasing at Vg=-2V 30s Vg=5V Vd=50mV 10-11 10-12 10-13 10-14 -1 10 100 101 Time(s) 102 図 3-12. Si ド ッ ト MOSFET の ゲ ー ト 電 流 変 化 3-3-2 入力特性の充電時間依存性 3-3-1 で 考 察 し た 電 子 の 注 入 状 態 を 、 入 力 特 性 の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 か ら も 理 解 す る こ と が で き る 。 測 定 前 に Si ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 を す べ て 放 電 さ せ る た め -2V の 電 圧 を 30 秒 間 印 加 し 、5V の 電 圧 を 500s 間 充 電 さ せ た あ と 、 ド レ イ ン 電 圧 を 50mV、 ス テ ッ プ 10mV/s で 、 電 圧 5V か ら -2V ま で 掃 引 さ せ た 時 の 入 力 特 性 を 測 定 し た 。 そ の 結 果 を 図 3-13( a) お よ び ( b) に 示 す 。 積 層 膜 MOSFET に お い て 充 電 時 間 0s と 500s で は し き い 値 電 圧 の シ フ ト は 見 ら れ な か っ た が 、Si ド ッ ト MOSFET の 場 合 、充 電 時 間 に よ っ て 異 な る し き い 値 電 圧 の シ フ ト が み ら れ た 。ま た 充 電 時 間 を 長 く し て い く に つ れ て 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト が 大 き く な る の が 分 か る 。さ ら に 電 圧 を 印 加 し 、先 の ゲ ー ト 電 流 の 時 間 変 化 の 測 定 し た 安 定 状 態 で あ る 充 電 時 間 100s で は 、 30s 印 加 し た 時 の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 と ほ と ん ど 変 化 が み ら れ な か っ た 。以 上 の 結 果 よ り 、ゲ ー ト 電 圧 印 加 直 後 か ら Si ド ッ ト に 電 子 注 入 が 行 わ れ 、 約 30s の ゲ ー ト 電 圧 印 加 に よ り 、 す べ て の 10-3 10-4 10-5 10-6 10-7 10-8 10-9 ( a) 10-10 10-11 10-12 10-13 -2 0 Vd=50mV sweep rate=10mV/s ●0s □500s Drain current (A) Drain current (A) Si ド ッ ト に 電 子 が 注 入 さ れ る と い う こ と が 分 か っ た 。 10-5 Vd=50mV 10-6 sweep rate=10mV/s 10-7 5s 10s 0s 10-8 10-9 10-10 ( b) 10-11 10-12 30s,100s,500s 10-13 10-14 -2 0 2 4 Gate bias (V) 2 4 Gate bias (V) 図 3-13. 正 電 圧 印 加 後 の 入 力 特 性( a)積 層 膜 MOSFET( b)Si ド ッ ト MOSFET 50 3-3-3 Si ド ッ ト へ の 電 荷 注 入 量 の 算 出 3-3-1 お よ び 3-3-2 で の 結 果 よ り 、Si ド ッ ト へ の 注 入 さ れ た 電 荷 量 に つ い て 計 算 を 行 っ た 。3-3-1 で の ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 の 測 定 と 同 時 に 測 定 し た ゲ ー ト 電 流 量 か ら 、 積 分 に よ っ て 求 め た W/L = 10μm/10μm の メ モ リ の 電 荷 量 値 は 8.3×10 - 5 C/cm 2 で あ っ た 。 こ の 値 を 電 荷 素 量 1.6×10 - 1 9 C で 割 っ て 算 出 し た 電 子 の 数 は 5.2×10 1 4 個 /cm 2 で あ る 。 こ の 値 は MOS キ ャ パ シ タ 構 造 で の I-V 特 性 の 積 分 に よ っ て 求 め た 電 荷 量 値 の 1.95×10 - 5 C/cm 2 と 、 ほ ぼ 同 じ 電 荷 量 を 示 す こ と が わ か っ た 。さ ら に 、3-3-2 の 入 力 特 性 か ら 5V 電 圧 を 印 加 し た 場 合 、100s に お い て ほ ぼ す べ て の Si ド ッ ト に 電 子 が 充 電 す る こ と が 分 か っ て お り 、 そ の 時 の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 は 約 6V で あ る 。こ の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 か ら 電 荷 量 を算出した。理論値の容量値には測定用の針を置くパッドの大きさを考慮して ( 図 2 参 照 ) 計 算 し た と こ ろ 、 1.7×10 - 8 C/cm 2 で あ っ た 。 こ れ は 実 測 値 よ り も 約 3 桁 小 さ く な り 、実 測 値 の 電 荷 量 と 一 致 し な か っ た 。こ の 考 察 は 、パ ッ ド 下 の 膜 の 構 造 を 考 え な く て は な ら ず 、 LOCOS( 60nm) の 上 に Si ド ッ ト と コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 が 堆 積 さ れ た 構 造 を し て お り 、理 論 値 の 容 量 値 の 算 出 に 単 純 に 膜 厚 と 面 積から算出できず、シフト量と実測値の比較は難しいと考えられる。 3-3-4 電子の注入の電圧依存性 注 入 機 構 を さ ら に 詳 し く 調 べ る た め に 、ゲ ー ト 電 圧 を 変 化 さ せ 、ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 を 測 定 し た 。そ の 測 定 方 法 は 3-3-1 と 同 様 な 測 定 方 法 で あ り 、ゲ ー ト 電 圧 を 3V、5V、8V と 変 化 さ せ た 。そ の 結 果 を 図 3-14( a)に 示 す 。ど の ゲ ー ト 電 圧 に お い て も 、ド レ イ ン 電 流 は 時 間 経 過 と 共 に 段 階 的 な 変 化 が み ら れ 、ゲ ー ト 電 圧 を 高 く す る に つ れ て 、ド レ イ ン 電 流 が 大 き く 変 化 す る ま で の 時 間 が 短 く な る 。 こ れ は ゲ ー ト 電 圧 を 高 く す る こ と で 、チ ャ ネ ル 領 域 で の 電 荷 密 度 が 増 大 し 、電 子 が ト ン ネ ル 酸 化 膜 を ト ン ネ ル す る 確 率 が 増 え る た め 、 Si ド ッ ト へ の 注 入 量 が 増 加 し た も の と 考 え ら れ る 。さ ら に 、こ れ ま で と 同 様 に 各 電 圧 の ゲ ー ト 電 流 と 時 間 の 積 分 値 か ら 、総 電 荷 量 を 計 算 し た 。各 ゲ ー ト 電 圧 に お け る ゲ ー ト 電 流 測 定 の 結 果 を 図 3-14(b)に 示 す 。 ゲ ー ト に 8V 印 加 し た と き 8.6×10 - 5 C/cm 2 、 5V 印 加 し た と き 5.4×10 - 5 C/cm 2 、3V 印 加 し た と き 2.7×10 - 5 C/cm 2 で あ り 、電 圧 を 変 化 さ せ て 51 も 総 電 荷 量 は ほ ぼ 同 じ で あ る こ と が わ か っ た 。 こ れ は 、 メ モ リ で の 書 き 込 み /消 去 状 態 で 説 明 す る と 、Si ド ッ ト に 閉 じ 込 め ら れ る 電 荷 量 が 5.6×10 - 5 C/cm 2( 3 つ の 電 圧 か ら の 平 均 の 電 荷 量 ) 以 下 で は 消 去 状 態 を 示 し 、 5.6×10 - 5 C/cm 2 以 上 で は 書 き 込 み 状 態 を 示 す 。 す な わ ち 、 書 き 込 み /消 去 の 状 態 を 識 別 す る 境 界 の 電 荷 量 が 存 在 す る こ と を 示 し て い る 。さ ら に 、こ の 電 荷 量 に ゲ ー ト 電 圧 依 存 性 し な い こ と か ら 、実 際 の メ モ リ と し て 使 用 す る 時 の 設 計 に お い て 、書 き 込 み の 時 間 や 印 加 電圧を任意に決定することができる。 ● Vg=3 V △ Vg=5 V ▼ Vg=8 V 10-7 ( a) 10-8 10-9 10-10 10-11 10-1 0 10 1 10 Time (s) ● Vg=3 V △ Vg=5 V ▼ Vg=8 V 10-10 ( b) 10-11 10-12 10-13 10-14 -1 10 2 10 図 3-14. ゲ ー ト 電 圧 依 存 性 3-3-5 10-9 Gate current (A) Drain current (A) 10-6 100 101 Time (s) 102 103 ( a)ド レ イ ン 電 流 測 定( b)ゲ ー ト 電 流 測 定 電子の注入の温度依存性 ゲ ー ト に 印 加 す る 電 圧 を 5V と 一 定 と し 、 測 定 温 度 を 150K か ら 300K と 温 度 を変え、ドレイン電流の経時変化およびゲート電流を測定した。その結果を図 3-15 ( a) お よ び ( b) に 示 す 。 ど の 温 度 に お い て も こ れ ま で と 同 様 に 、 ド レ イ ン 電 流 は 時 間 経 過 に よ り 段 階 的 な 変 化 が み ら れ た 。ま た 温 度 を 低 く す る に つ れ て 、 ド レ イ ン 電 流 の 最 大 値 が 減 少 し 、大 き く 変 化 す る ま で の 時 間 が 長 く な る 。ド レ イ ン 電 流 の 最 大 値 の 減 少 は 、 電 子 は Si の 価 電 子 帯 か ら 導 電 帯 の 遷 移 が 低 温 に な る に つ れ て 減 少 し 、反 転 層 が で き に く く 電 子 の 注 入 量 も 減 少 た め で あ る と 考 え ら れ る 。ま た ド レ イ ン 電 流 が 大 き く 変 化 す る ま で の 時 間 は 注 入 量 の 減 少 に 加 え 、第 2 章 で の ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド の 効 果 が 考 え ら れ る が 、こ れ に つ い て も 更 な る 見 当 が必要となる。 さ ら に 、こ れ ま で と 同 様 に 各 温 度 の ゲ ー ト 電 流 と 時 間 の 積 分 値 か ら 、総 電 荷 量 を 計 算 し た 。そ の 結 果 、300K と き 8.7×10 - 5 C/cm 2 、250K と き 7.2×10 - 5 C/cm 2 、 52 200K と き 2.6×10 - 5 C/cm 2 、 150K と き 7.5×10 - 5 C/cm 2 で あ る 。 こ の 4 つ の 温 度 の 電 荷 量 の 平 均 で あ る 6.5×10 - 5 C/cm 2 と 、 電 圧 依 存 性 の 電 荷 量 の 平 均 で あ る 5.6×10 - 5 C/cm 2 と を 比 較 し て も 、 ほ ぼ 一 致 し て い る 。 す な わ ち 、 書 き 込 み /消 去 の 境 界 の 電 荷 量 は 、ゲ ー ト に 印 加 す る 電 圧 や 温 度 に 依 存 せ ず 、そ の 素 子 で は 一 定 であることが分かる。 10-4 Gate current (A) 10 Drain current (A) 10-11 ● 300 K △ 250 K □ 200 K ▲ 150 K -5 10-6 10-7 10-8 ( a) 10-9 Vg=5 V Vd=50 mV 10-10 0 10 1 2 10 10 Time (s) 10 ● 300 K △ 250 K □ 200 K ▲ 150 K ( b) 10-12 10-13 10-14 0 10 3 Vd=50 mV Vg=5 V 101 102 Time (s) 図 3-15. 温 度 依 存 性 ( a) ド レ イ ン 電 流 ( b) ゲ ー ト 電 流 3-3-6 信 頼 性 評 価 実 際 集 積 回 路 に 使 用 さ れ る 場 合 、書 き 込 み 消 去 の 繰 り 返 し で 高 い 信 頼 性 が 要 求 さ れ る た め 、信 頼 性 評 価 は メ モ リ 特 性 を 評 価 す る 上 で 非 常 に 重 要 と な る 。実 際 の 測 定 方 法 は 、 ±5V の 電 圧 を パ ル ス 幅 1ms で 書 き 込 み 消 去 を 繰 り 返 し 、 そ の 時 の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 か ら 評 価 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 3-16 に 示 す 。 書 き 込 み 消 去 を 10 4 回 繰 り 返 し た 辺 り か ら 、 ス ト レ ス 印 加 直 後 の し き い 値 電 圧 に 比 べ 、 書 き 込 み と 消 去 の し き い 値 が 正 側 に シ フ ト し 、特 に 消 去 側 の し き い 値 が 大 き く 正 側 に シ フ ト し て い る と い う 劣 化 が み ら れ た 。フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の 劣 化 は 書 き 込 み 時 よ り も 、消 去 時 に 劣 化 が 起 こ り や す く 、一 般 的 に Si 単 結 晶 か ら SiO 2 へ と の 構 造 の 変 化 す る 遷 移 層 に 存 在 す る 、Si-Si 結 合 の 歪 や Si-OH、Si-H 結 合 が 電 圧 の 印 加 に よ っ て 簡 単 に 破 壊 さ れ 、界 面 の 固 定 電 荷 や 界 面 準 位 を 形 成 す る [ 5 7 ] 。す な わ ち こ の 劣 化 は 、ス ト レ ス 印 加 に よ り 界 面 に 形 成 さ れ た 界 面 準 位 に 電 子 が ト ラ ッ プ さ れ る こ と で 、 Si ド ッ ト に 電 子 が 注 入 さ れ に く く な り 、 し き い 値 電 圧 が 正 側 に シ フ ト し た も の と 考 え ら れ る 。 し か し 、 10 7 回 書 き 込 み 消 去 を 繰 り 返 し て も 、 し き い 値 電 圧 の シ フ ト が み ら れ る こ と か ら 、実 用 化 に は 最 低 10 8 回 の 信 頼 性 が 必 要 53 103 Threshold voltage shift (V) であることを考えると、このメモリの信頼性は比較的高いと言える。 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 pulse voltage +5V pulse width 1ms Write Erase 3 nm tunneling SiO2 0 10 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 6 10 7 10 Number of write/erase cycle 図 3-16. 信 頼 性 評 価 3-4 まとめ 前 章 の MOS キ ャ パ し た 構 造 で の 評 価 の 結 果 か ら 、Si ド ッ ト を フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト と し た Si ド ッ ト MOSFET の 電 気 特 性 と メ モ リ 特 性 評 価 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、Si ド ッ ト MOSFET の 入 力 特 性 に お い て 、キ ャ パ シ タ 構 造 と 同 様 に 掃 引 に よ る ヒ ス テ リ シ ス が み ら れ 、キ ャ パ シ タ 構 造 の 時 よ り も 低 電 圧 で 動 作 し た 。ま た 負電圧で保持する時間や電圧幅を変え、電子の注入量を変化させることにより、 し き い 値 電 圧 の 幅 が 変 化 し 、こ の こ と か ら し き い 値 電 圧 の シ フ ト は 、正 孔 お よ び 電子の成分を含んでいることが分かった。 リ テ ン シ ョ ン タ イ ム を 測 定 し た と こ ろ 、十 分 な 保 持 時 間 と は 言 え な い が 、1200 秒 後 も メ モ リ ウ イ ン ド が み ら れ る こ と か ら 、 こ の Si ド ッ ト は メ モ リ と し て 動 作 す る こ と が 分 か っ た 。電 子 の 注 入 機 構 を 調 べ た 結 果 、電 圧 印 加 後 か ら 電 子 の 注 入 が 始 ま り 、 段 階 的 に ド レ イ ン 電 流 が 変 化 し 、 Si ド ッ ト に 注 入 さ れ る こ と が わ か っ た 。 こ の 変 化 は Si ド ッ ト を 埋 め 込 ん だ 時 の み に 見 ら れ る も の で あ る 。 さ ら に ゲ ー ト 電 圧 を 高 く し 注 入 量 を 増 加 さ せ る と 、こ の 段 階 的 な ド レ イ ン 電 流 の 変 化 が 早 く 現 れ る こ と が わ か っ た 。 し か し 、 Si ド ッ ト に 保 持 さ れ る 総 電 荷 量 は 温 度 や ゲ ー ト に か け る バ イ ア ス に 依 存 せ ず 、ゲ ー ト 電 流 値 か ら 算 出 し た ド ッ ト へ の 注 入 電 荷 量 は 一 定 の 値 を と る こ と が 分 か っ た 。信 頼 性 も 10 7 回 書 き 込 み 消 去 を 繰 り 返 し て も 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト が み ら れ る こ と か ら 、こ の メ モ リ の 信 頼 性 は 比 較 54 的高いと言える。 以 上 の 結 果 よ り 新 規 堆 積 法 を 用 い て 形 成 し た Si ド ッ ト は 、 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ に 応 用 可 能 で あ り 、目 標 で あ っ た プ ロ セ ス お よ び 評 価 方 法 を 確 立 を 行 う こ と が で きた。 55 第 4章 積 層 型 Si ド ッ ト MOS メ モ リ の 電 気 特 性 評 価 4-1 は じ め に 前 章 に お い て Si ド ッ ト MOSFET の メ モ リ 動 作 に 成 功 し た 。 更 な る し き い 値 電 圧 シ フ ト 量 の 増 加 や 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 向 上 を 目 指 し 、ド ッ ト を 2 層 構 造 に す る 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET メ モ リ を 提 案 し た 。 図 4-1 に 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET の 等 価 回 路 を 、 図 4-2 に 素 子 構 造 を 示 す 。 2 層 の フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト を 用 い る 特 徴 と し て 、ま ず 単 純 に ド ッ ト の 密 度 は 2 倍になりヒステリシスの幅は増大する。また、2 層目のドットへ電子が注入さ れると、放出するには 2 層目から 1 層目および 1 層目から基板への 2 回のトン ネ ル を 必 要 と す る 。そ の た め 2 層 目 に 注 入 後 、1 層 目 に 電 子 が 注 入 さ れ て い る と 、 クーロン反発から 2 層目の電子は放出されにくくなるためにリテンションタイ ムが向上する。さらに 1 層目の注入と 2 層目への注入を制御することができれ ば 、し き い 値 電 圧 の 多 値 化 に よ り 、多 値 メ モ リ へ の 応 用 が 可 能 と な る 。こ れ に よ り 、FET の 数 を 増 や す こ と な く 、bit 数 を 向 上 さ せ る こ と が で き 、大 容 量 メ モ リ へ の 応 用 が 期 待 で き る [58]。 本 章 で は 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト を 2 層 に 積 層 し 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム な ど の メ モ リ 特 性 の 向 上 を 試 み た 。今 後 、ゲ ー ト 電 極 に 近 い フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト を 2 層 目 の ド ッ ト と 呼 び 、 キ ャ パ シ タ 構 造 を 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ 、 MOSFET 構 造 を 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET と 呼 ぶ こ と に す る 。 VCG VCG 制御ゲート 制御ゲート CFG1 CFG フローティング ゲート1 フローティング ゲート CFG2 フローティング ゲート2 CFS CFS Si基板 Si基板 図 4-1. 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET の 等 価 回 路 56 電極Al300nm ドット間の距離10nm S-CVD膜20nm S-CVD膜10nm 熱酸化膜3nm P型基板 図 4-2. 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET の 素 子 構 造 4-2 4-2-1 実験 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ お よ び MOSFET の 作 製 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ お よ び MOSFET を 以 下 の 方 法 で 作 製 し 評 価 を 行 っ た 。 こ れ ま で と ゲ ー ト 絶 縁 膜 構 造 の み が 異 な る た め 、 図 4-3 に MOS キ ャ パ シ タ の み の プ ロ セ ス フ ロ ー を 示 す 。特 に 条 件 が 記 載 さ れ て い な も の に つ い て は 、 こ れ ま で の MOS キ ャ パ シ タ や MOSFET の 作 製 方 法 の 時 に 用 い た 条 件 と 同 条 件 で 作製を行った。 ① P 型 Si(100)基 板 お よ び MOSFET 基 板 を RCA 洗 浄 後 、 熱 酸 化 膜 を 3nm 形成しトンネル酸化膜とした。 ② 次 に Side-Wall 電 極 型 PECVD 法 を 用 い て 、Si ド ッ ト と コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 を 堆 積 し 積 層 構 造 を 作 製 し た 。1 層 目 の コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 は 電 子 が 2 層 目 に ト ン ネ ル す る ト ン ネ ル 酸 化 膜 と し て も 用 い る た め 、ド ッ ト の 最 大 直 径 の 10nm の ド ッ ト が 埋 め 込 ま れ る よ う に 、 膜 厚 は 10nm と し た 。 ③ 次 に 2 層 目 の Si ド ッ ト と コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 を 連 続 で 堆 積 し 、 2 層 の フローティングゲートを作製した。この時のコントロール酸化膜の厚さ は 従 来 通 り 20nm と し た 。Si ド ッ ト が 埋 め 込 ま れ て い な い も の に つ い て は 、 Si ド ッ ト を 堆 積 せ ず コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 の み を 堆 積 し た 。 ④ MOS キ ャ パ シ タ の 場 合 、 裏 面 酸 化 膜 除 去 後 、 ア セ ト ン 、 メ タ ノ ー ル の 57 順 で 超 音 波 洗 浄 を 行 い 、レ ジ ス ト を 除 去 し 試 料 の 裏 面 と 表 面 の 順 に Al を 蒸 着 し た 。 MOSFET 場 合 は 、 コ ン タ ク ト ホ ー ル を 形 成 後 、 Ti 電 極 を 形 成 し た 。 両 サ ン プ ル を フ ォ ー ミ ン グ ガ ス 中 で PMA を 行 い 、 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ お よ び MOSFET を 作 製 し た 。 10nm 3nm ・ RCA 洗 浄 PECVD に よ る Si ド ッ ト の 形 成 ・ 熱 酸 化 膜 の 形 成 (3nm) ・ 電極蒸着 ・ PMA PECVD に よ る 酸化膜の形成 ( 10nm) PECVD に よ る 酸 化 膜 の 形 成 ( 20nm) PECVD に よ る Si ド ッ ト の 形 成 図 4-3. 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 作 製 プ ロ セ ス 4-2-2 積 層 型 Si ド ッ ト 形 状 図 4-4 に 積 層 型 Si ド ッ ト の 断 面 TEM 像 を 示 す 。 こ の TEM 像 よ り 2 層 の ド ッ ト が 形 成 さ れ て い る こ と が わ か る 。 ま た 1 層 目 と 2 層 目 の 酸 化 膜 の 膜 厚 が 12nm か ら 15nm と 厚 い が 、 こ の 膜 が CVD 酸 化 膜 で あ る た め 、 高 電 圧 を ゲ ー ト に 印 加 することで、2 層目への電子のトンネルが可能であると考えられる。 2層目 1層目 5nm 図 4-4. 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 断 面 TEM 像 58 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の C-V 特 性 評 価 4-2-3 単 層 型 の Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ と 同 様 に 、 C-V 特 性 よ り 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 充 放 電 特 性 を 評 価 し た 。 そ の C-V 特 性 の 結 果 を 図 4-5( a) に 示 す 。 高 周 波 (1MHz)C-V 測 定 に お い て ゲ ー ト 電 圧 を V g =-10V か ら 正 方 向 に 掃 引 後 、 折 り 返 し V g =6V か ら 負 方 向 に 掃 引 さ せ た 場 合 、 C-V 曲 線 に V g =1.5V 付 近 で ピ ー ク が 現 れ 、 し き い 値 電 圧 は 正 方 向 に 2.2V シ フ ト し た 。 第 2 章 で 測 定 し た 単 層 型 と 積 層 型 を 同 じ sweep rate( 40mV/s) の ゲ ー ト 電 圧 幅 で 比 較 す る と 、 積 層 型 に す る こ と で 、単 層 型 よ り も ヒ ス テ リ シ ス 幅 の 増 大 が み ら れ た 。更 に 、放 電 が 開 始 さ れ る ピ ー ク 位 置 か ら 再 び V g =-10V か ら の 曲 線 に 戻 る ま で に 必 要 な 電 圧 が 、 単 層 の 場 合 で は 0.6V で あ り 、積 層 構 造 の 場 合 で は 1.8V と 放 電 に 約 3 倍 必 要 で あ ることから、放電が起こりにくく、積層構造による効果の可能性がみられた。 単 層 型 の 場 合 で は 、ピ ー ク の 減 少 か ら 再 び 上 昇 す る と 同 時 に 元 の 曲 線 に 戻 る が 、 積 層 型 の 場 合 、 元 の 曲 線 に は 戻 ら ず 、 約 0.4V の し き い 値 電 圧 の シ フ ト の 維 持 が み ら れ た 。こ れ は 1 層 目 が 放 電 し た 後 も 、2 層 目 に 電 子 が 保 持 さ れ る こ と に よ る しきい値電圧のシフトの可能性が考えられる。 ( a) 20 Capacitance(pF) Capacitance(pF) 0.6V 0.4V 1.8V 30 20 ( b) 10 10 -10 -5 0 Gate Voltage(V) -10 5 -5 0 Gate voltage(V) 5 図 4-5. MOS キ ャ パ シ タ の C-V 特 性 ( a) 積 層 型 Si ド ッ ト ( b) 単 層 4-2-4 注入電子量依存性 フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に 注 入 す る 電 子 の 量 を 増 加 さ せ た 時 の C-V 特 性 の 変 化 を 調 べ る た め 、 高 周 波 (1MHz)C-V 測 定 に お け る Sweep rate 依 存 性 ( Step 40mV/s Speed 1m~ 600ms) を 評 価 し た 。 そ の 結 果 を 図 4-6 に 示 す 。 Sweep rate が 増 加 す 59 る に つ れ て 、容 量 ピ ー ク の 最 大 容 量 値 が 増 加 す る 傾 向 が み ら れ 、さ ら に ピ ー ク の 減 少 か ら 再 び 上 昇 す る ま で の 電 圧 も 増 加 し た 。ま た 、僅 か な が ら 再 び 上 昇 し た 後 の シ フ ト 量 に 増 加 が み ら れ た 。こ の 結 果 か ら 、再 び 上 昇 し た 後 の シ フ ト は 2 層 目 へ の 電 子 注 入 に よ る シ フ ト で あ り 、1 つ 目 の シ フ ト は 1 層 目 と 2 層 目 へ の 両 層 の 電 子 注 入 に よ る シ フ ト で あ る と い う こ と が 分 か っ た 。 こ の 結 果 か ら 、 積 層 の Si ド ッ ト へ の 電 子 の 充 放 電 の メ カ ニ ズ ム を 図 4-7 に 示 す よ う な バ ン ド 図 を 用 い て 考察する。 1 層と 2 層への注入 30 Capacitance(pF) 2 層目の電子 □ 40mV/s △ 20mV/s ● 10mV/s 20 10 -10 -5 0 Gate Voltage(V) 5 図 4-6. 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の 掃 引 速 度 依 存 性 Vg=10V の 高 電 圧 を 印 加 し た 場 合 、 1 層 及 び 2 層 目 の 両 方 に 電 子 が 注 入 さ れ る ( 状 態 ① )。1 層 目 と 2 層 目 の 間 の ト ン ネ ル 酸 化 膜 は 12~ 15nm の 厚 膜 で あ る た め 、 F-N ト ン ネ ル に よ り 電 子 が 注 入 さ れ る 。 一 方 、 基 板 と 1 層 目 の 酸 化 膜 は 3nm の ト ン ネ ル 酸 化 膜 で あ り 、直 接 ト ン ネ ル に よ り 電 子 が 注 入 さ れ る 。そ の 膜 厚 に よ る ト ン ネ ル 確 率 の 違 い か ら 、フ ラ ッ ト バ ン ド 電 圧 に 達 し た 時 に 1 層 目 の 電 子 が 先 に 放 出 を 始 め る( 状 態 ② )。1 層 目 の 電 子 の 放 出 後 、2 層 目 に 注 入 さ れ た 状 態 か 、も し く は 2 層 目 か ら 1 層 目 へ と 電 子 が ト ン ネ ル し 、1 層 目 に 注 入 さ れ た 状 態 と な り 、 元 の 曲 線 に は 戻 ら ず し き い 値 電 圧 は シ フ ト し た ま ま に な る 。( 状 態 ③ ) 1 層 目 が 注 入 さ れ た 後 に 2 層 目 に 電 子 注 入 が 行 わ れ る た め 、電 子 の 注 入 量 は 1 層 目 の 方 が 大きく、1 層目と 2 層目のヒステリシスの幅が異なると考えられる。 60 EF Ec Ei EF EV EF Vg Ec Ei EF EV 1 層目の電子放出 Vg=0V 状態③ 電子注入 EF Ec Ei EF EV Vg Ec Ei EF EV Vg EF 1 層目の電子注入 状態① 2 層目から 1 層目 状態③ EF Ec Ei EF EV Vg Ec Ei EF EV Vg EF 1 層目の電子放出 2 層目の電子注入 状態② 状態① 61 Capacitance(pF) 30 ③ ② ① 20 10 -10 -5 0 Gate Voltage(V) 5 図 4-7. 各 電 子 注 入 状 態 の エ ネ ル ギ ー バ ン ド 図 4-3 4-3-1 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET の 特 性 入力特性評価 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET の 入 力 特 性 評 価 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 4-8( a) に 示 す 。ド レ イ ン 電 圧 を 50mV と 一 定 と し 、ゲ ー ト 電 圧 を Vg=-5V か ら 正 方 向 に 掃 引 を 行 う と 、 図 4-8( b) に 示 す 単 層 型 に は 見 ら れ な い よ う な 、 立 ち 上 が り の ド レ イ ン 電 流 に 2 段 階 の シ フ ト が 見 ら れ た 。こ れ は 1 層 目 へ の 注 入 と 2 段 目 の 注 入 に よ る 多 段 階 注 入 に よ る も の と 考 え ら れ 、先 ほ ど の 注 入 の メ カ ニ ズ ム よ り 考 え る と、始めのドレイン電流の変化は 1 層目への電子注入であると考えられる。 ま た 図 4-9 に 示 す よ う に 、 Sweep rate を 変 化 さ せ 電 子 の 注 入 量 を 変 化 さ せ た と こ ろ 、Sweep rate を 遅 く す る と 、立 ち 上 が り の ド レ イ ン 電 流 に は 変 化 が な か っ た が 、 立 下 り で ヒ ス テ リ シ ス の 幅 が わ ず か に 正 側 に 増 大 し て い る 。 こ れ は 、 Sweep rate を 遅 く す る こ と で 、 電 子 の 注 入 量 が 増 加 し 、 2 層 目 に 注 入 さ れ た 電 子 の 量 が 増加したため、立下りのしきい値電圧のシフト量が増加したものと考えられる。 以 上 の 結 果 よ り 、 Si ド ッ ト を 積 層 に す る こ と で し き い 値 電 圧 の 段 階 的 な シ フ ト が見られたことから、多値メモリへの応用の可能性が示唆された。 62 Drain current (A) 10-5 10-6 Vd=50 mV sweep rate=10 mV/s 10-7 room temperature 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 10-13 10-14 -1 0 1 Gate bias (V) ( b) 2 3 図 4-8. Si ド ッ ト MOSFET の 入 力 特 性 ( a) 積 層 型 Si ド ッ ト ( b) 単 層 DRAIN CURRENT(A) DRAIN CURRENT(A) 1 層目への注入 2 層目への注入 10-5 Vd=50 mV 10-6 sweep rate=20 mV/s room temperature 10-7 -8 10 ( a) 10-9 10-10 10-11 10-12 10-13 10-14 -5 0 5 10 GATE BIAS(V) 10-5 Vd=50 mV 10-6 sweep rate=20 mV/s room temperature 10-7 -8 10 10-9 10-10 10-11 ●2V/s 10-12 △200mV/s 10-13 10-14 -5 0 5 10 GATE BIAS(V) 図 4-9. 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET の 掃 引 速 度 依 存 性 4-3-2 電子の注入のゲート電圧依存性 先 の 結 果 よ り ド レ イ ン 電 流 に 多 段 階 の 変 化 が み ら れ た こ と か ら 、さ ら に 詳 し く 注 入 機 構 を 調 べ る た め に 、ゲ ー ト 電 圧 を 変 化 さ せ 、ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 の 測 定 を 行 っ た 。 そ の 測 定 方 法 は 、 第 3 章 と 同 様 に 測 定 前 に Si ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 を す べ て 放 電 さ せ る た め -5V の 電 圧 を 30 秒 間 印 加 し 、 ド レ イ ン 電 圧 を 50mV と 一 定 と し 、ゲ ー ト 電 圧 を 正 電 圧 の 3V、5V、8V と 変 化 さ せ ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 の 測 定 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 4-10( a) に 示 す 。 ど の 電 圧 に お い て も ド レ イ ン 電 流 は 時 間 経 過 と 共 に 、 段 階 的 な 変 化 が み ら れ た 。 ゲ ー ト 電 圧 を 8V と 5V と す る と 、 充 電 開 始 か ら そ れ ぞ れ 2~ 3s と 10s か ら ド レ イ ン 電 流 が 大 き く 変 化 し 、 そ の 変 化 は 1 段 階 し か み ら れ な か っ た 。 し か し 、 ゲ ー ト 電 圧 を 3V と し 63 た 場 合 、ド レ イ ン 電 流 の 2 段 階 の 変 化 が 見 ら れ た 。こ の 結 果 よ り ド レ イ ン 電 流 の 経時変化においても、2 段階の変化がみられたことから、2 段階の電子注入が行 わ れ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 よ っ て 、 ゲ ー ト 電 圧 5V と 8V の 電 圧 で は 、 1 層 目 と 2 層 目 に 同 時 に 注 入 さ れ る も の と 考 え ら れ 、 3V の 低 電 圧 で も 充 電 時 間 を 長 くすることで両方の層に注入されることが分かった。 こ れ ま で と 同 様 に 各 電 圧 の ゲ ー ト 電 流 と 時 間 の 積 分 値 か ら 、総 電 荷 量 を 計 算 し た 。 そ の と き 用 い た ド レ イ ン 電 流 の 測 定 と 同 時 に 測 定 し た ゲ ー ト 電 流 を 図 4-10 ( b ) に 示 す 。 そ の 結 果 そ れ ぞ れ の 電 荷 量 は 、 ゲ ー ト に 8V 印 加 し た と き 2.8×10 - 5 C/cm 2 、 5V 印 加 し た と き 1.05×10 - 5 C/cm 2 、 3V 印 加 し た と き 2.7×10 - 6 C/cm 2 で あ っ た 。 3V の 場 合 多 段 階 の ド レ イ ン 電 流 の 変 化 は み ら れ た も の の 、 他 の 二 つ に 比 べ 電 荷 量 が 減 少 す る と い う 結 果 に な っ た 。ま た 、入 力 特 性 の 結 果 で は 、単 層 に 比 べ し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 は 向 上 し た こ と に よ り 、電 子 の 注 入 量 が 増 加 し た は ず で あ る が 、今 回 の ゲ ー ト 電 流 か ら 求 め た 電 荷 量 は ほ ぼ 同 じ 値 を 示 し た 。こ れ については更なる検討が必要である。 10-9 10-5 ( a) Vg=5V Vg=3V 10-6 100 101 102 GATE CURRENT(A) DRAIN CURRENT(A) Vg=8V 10 Vg=8V ( b) Vg=5V -11 10-12 Vg=3V 10-13 10-14 10-1 103 Time(s) 1 層目への注入 10-10 100 101 Time(s) 102 103 2 層目への注入 図 4-10. ( a) ド レ イ ン 電 流 の ゲ ー ト 電 圧 依 存 性 ( b) ゲ ー ト 電 流 の ゲ ー ト 電 圧 依 存 性 4-3-3 リテンションタイムの測定 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET の リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 を 行 っ た 。そ の 結 果 を 図 4-11 に 示 す 。こ れ ま で の 測 定 方 法 と 同 様 に 、±5V の 電 圧 で 書 き 込 み お よ び 消 去 を 行 っ た 後 、 読 み 出 し 電 圧 0.5V で ド レ イ ン 電 流 の 時 間 変 化 を 測 定 し た 。 時 間 64 の 経 過 と と も に 、メ モ リ ー ウ イ ン ド ウ が 狭 く な っ て い る が 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム を メ モ リ ー ウ イ ン ド ウ の 幅 が な く な る と 仮 定 す る と 、単 層 の リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は 3000 秒 で あ っ た が 、 積 層 構 造 の 場 合 20000 秒 と リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 大 幅 に 向上していることがわかる。 こ こ で 、積 層 型 の 電 子 の 注 入 後 の ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 に 着 目 す る と 、直 線 で 示 し た よ う に 、ド レ イ ン 電 流 の 傾 き に 二 段 階 の 変 化 が み ら れ る 。始 め の 直 線 の 傾 き で の リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は 約 4000s で あ り 単 層 の リ テ ン シ ョ ン タ イ ム と ほ ぼ 同 じ 値 に な る 。す な わ ち こ の 二 段 階 の ド レ イ ン 電 流 の 変 化 は 、1 層 目 の 電 子 が 抜 け 始 め た 後 、2 層 目 に 保 持 さ れ た 電 子 に よ っ て リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 向 上 し た ものと考えられる。 こ れ ま で の 多 段 階 の 電 子 注 入 に お い て は C-V 特 性 や MOSFET の 入 力 特 性 に よ っ て 確 認 し て き た が 、1 層 目 の 放 出 後 2 層 目 の 電 子 が 放 出 す る と い う 多 段 階 の 放 DRAIN CURRENT(A) 電を今回の結果により明らかにすることができた。 10-10 積層 2層目 10-11 1層目 単層 3000s 10 -12 102 103 Time(s) 4000s 104 図 4-11. リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 4-4 まとめ リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 向 上 を 目 指 し 、Si ド ッ ト を 2 層 の 積 層 構 造 に し 、特 性 を 評 価 し た 。 そ の 結 果 、 積 層 型 Si ド ッ ト MOS キ ャ パ シ タ の C-V 特 性 に お い て 、 再 び 容 量 値 が 上 昇 し て も 元 の 曲 線 に は 戻 ら ず 0.4V の シ フ ト が 維 持 さ れ 、 2 段 階 の し き い 値 電 圧 の シ フ ト が み ら れ た 。ま た 積 層 型 Si ド ッ ト MOSFET で は 、立 ち 上 がりのドレイン電流に、多段階注入を表す 2 段階の変化が見られた。 電 子 の 注 入 を ゲ ー ト 電 圧 別 に 見 て み る と 、 5V の 電 圧 で も 10s 程 度 の 印 加 で 電 65 子 が 注 入 さ れ 、 3V の 低 電 圧 に お い て も 、 印 加 時 間 を 長 く す る こ と で 2 層 目 の 注 入 が 可 能 で あ る こ と が 分 か っ た 。リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 で は 、単 層 型 に 比 べ リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 大 幅 に 向 上 し 、充 電 後 の ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 の 測 定 に お い て 、2 段 階 の ド レ イ ン 電 流 の 変 化 が み ら れ 、多 段 階 の 電 子 放 出 を 確 認 す る こ とができた。 以 上 の 結 果 よ り 、Si ド ッ ト を 積 層 構 造 に す る こ と で 比 較 的 低 電 圧 で ド ッ ト へ の 電 子 注 入 が 可 能 で あ り 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム も 大 幅 に 向 上 す る こ と か ら 、メ モ リ 特性を向上させる技術として非常に有望である。 66 第 5章 Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 と メモリ特性評価 5-1 はじめに Poly-Si TFT は 移 動 度 が 従 来 の a-Si TFT よ り 移 動 度 が 100 倍 近 く 高 い こ と か ら 液晶ディスプレイのスイッチ素子として用いられている。その中でも低温 poly-Si TFT は 安 価 な ガ ラ ス 基 板 を も ち い る こ と か ら 、 デ ィ ス プ レ イ 技 術 の 主 流 と な り つ つ あ る 。 現 在 そ の 移 動 度 の 向 上 に よ り 、 低 温 poly-Si TFT を 用 い た メ モ リなどのデバイスが期待されている。 低 温 poly-Si TFT を 用 い た メ モ リ の 問 題 点 と し て 、600℃ の 温 度 制 限 の 中 で 熱 酸 化膜に代わる低温形成された良質のトンネル酸化膜を用いなければならないこ と で あ る 。そ こ で 、成 膜 温 度 が 300℃ と 低 温 形 成 が 可 能 で あ り 、絶 縁 耐 性 が 堆 積 膜 の 中 で も 良 好 で あ る TEOS ( Tetraethoxysilane ) ガ ス を 原 料 に 用 い た SiO 2 膜 ( TEOS-SiO 2 ) に 着 目 し 、 ト ン ネ ル 酸 化 膜 に 応 用 す る こ と を 提 案 し た 。 こ の TEOS-SiO 2 は 、基 板 上 で の マ イ グ レ ー シ ョ ン が 大 き い こ と や 、平 均 自 由 行 程 が 小 さ く シ ャ ド ー イ ン グ が 生 じ な い た め 、 側 壁 の ス テ ッ プ カ バ レ ー ジ 98% 、 溝 部 の カ バ レ ー ジ が 86% と 良 好 な 段 差 被 覆 性 が 得 ら れ る 。 そ の た め 、 表 面 ラ フ ネ ス が 多 い poly-Si TFT の ゲ ー ト 絶 縁 膜 な ど に 用 い ら れ て い る [59] 。本 研 究 室 の TEOS-CVD 装 置 を 用 い て 堆 積 時 の 条 件 が RF パ ワ ー 150W、 圧 力 80Pa、 基 板 温 度 300℃ 、 TEOS/O 2 の 流 量 費 3/300sccm の 時 、 界 面 準 位 密 度 や 固 定 電 荷 密 度 が 良 好 な 値 を 示 す こ と が 報 告 さ れ て い る [60]。 こ れ ま で 、 温 度 制 限 に よ る 信 頼 性 の 低 下 の た め 、 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 報 告 は 少 な く 、 こ の よ う に 低 温 形 成 さ れ た TEOS 酸 化 膜 を ト ン ネ ル 酸 化 膜 に 用 い た メ モ リ の 作 製 は 、 初 め て の 試 み で あ る 。 本 章 で は 、低 温 poly-Si 基 板 上 に ト ン ネ ル 酸 化 膜 と し て TEOS-SiO 2 を 用 い 、Si ド ッ ト を フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト と す る Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ 作 製 と 評 価 を 目 指 す 。 そ の た め に 、 イ オ ン 注 入 条 件 や TEOS-SiO 2 を 用 い た 素 子 構 造 な ど の TFT 作 製 プ ロ セ ス の 確 立 を 行 い 動 作 確 認 後 、Si ド ッ ト を 埋 め 込 み Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ を 作 製 し 、 特 性 評 価 を 行 っ た 。 67 5-2 poly-Si TFT と MOSFET poly-Si TFT と MOSFET は ど ち ら も ト ラ ン ジ ス タ で あ る た め 、 基 本 的 な 特 性 は 同 じ で あ る が 最 も 大 き な 違 い は 、 poly-Si TFT に は 粒 界 が 存 在 す る こ と で あ る 。 図 5-1( a) に poly-Si の 結 晶 粒 界 の 模 式 図 を ( b) に バ ン ド 構 造 を 示 す 。 こ の よ う に 、粒 界 が 持 つ ト ラ ッ プ に よ り 、障 壁( バ リ ア ハ イ ト )を 形 成 す る た め 、電 子 の 移 動 に こ の バ リ ア ハ イ ト を 超 え る エ ネ ギ ー が 必 要 と な る 。そ の た め 、粒 界 の 存 在 が 移 動 度 の 低 下 に つ な が り 、デ バ イ ス 特 性 に 大 き な 影 響 を 与 え る 。ま た 、TFT では通常、チャネルの形成はソースからのキャリアの供給のみで行われるため、 MOSFET よ り 高 い ゲ ー ト 電 圧 を 必 要 と す る 。 ( a) ( b) 結晶粒界 障壁(バリアハイト) 電子 e- 結晶粒界 電子 e- 結晶粒界 Ec EF 結晶粒 Ev 結晶粒 Poly-Siの結晶粒 図 5-1( a) poly-Si の 結 晶 粒 界 の 模 式 ( b) poly-Si の バ ン ド 構 造 ま た 、 MOSFET で は 最 も 界 面 準 位 が 小 さ い ( 100) 面 が 用 い ら れ る が 、 poly-Si TFT で は さ ま ざ ま な 結 晶 方 位 が 存 在 す る た め 、熱 酸 化 を 行 う と 酸 化 速 度 の 違 い よ り 、 10nm 以 下 の 薄 膜 の 場 合 で は ラ フ ネ ス が 謙 虚 に 現 れ 、 更 に 界 面 準 位 が 増 加 す る 。 式 ( 5-2) に 線 形 領 域 で の ON 電 流 ( ド レ イ ン 電 流 ) I D を 次 式 に 示 す [ 1 3 ] 。 C OX = ID = ε OX TOX ・ ・ ・( 5-1) W [Cox μ (VG − Vth )]VD ・ ・ ・( 5-2) L ⎡ ⎤ − q 3 Nt 2 t ⎥ ・ ・ ・( 5-3) ( ) 8 ε kTC V − Vth ox G ⎣ ⎦ μ = μ 0 exp ⎢ こ こ で 、 Tox は ゲ ー ト 絶 縁 膜 の 膜 厚 、 ε ox は ゲ ー ト 絶 縁 膜 の 誘 電 率 、 W は チ ャ 68 ネ ル 幅 、 l は チ ャ ネ ル 長 、 Cox は 単 位 面 積 あ た り の 絶 縁 膜 容 量 、 μ は 移 動 度 、 VG は ゲ ー ト 電 圧 、V t h は し き い 値 電 圧 、V D は ド レ イ ン 電 圧 、μ 0 は 定 数 、q は 電 荷 素 量 、 N t は 単 面 積 あ た り の ト ラ ッ プ 密 度 、 t は poly-Si の 膜 厚 、 ε は poly-Si の 誘 電 率、kはボルツマン係数、T は絶対温度である。 ま た し き い 値 電 圧 に つ い て MOSFET は 次 式 で 表 さ れ る 。 Vth = FVB + 2φ F + 2ε S ε 0 qN A (2φ F ) C OX ・ ・ ・( 5-4) 一 方 poly-Si TFT の 場 合 で は 、通 常 の MOSFET と は 異 な り 、石 英 や ガ ラ ス 基 板 な ど の 絶 縁 基 板 上 に 作 製 さ れ る た め 、 poly-Si の 膜 厚 が 薄 い 完 全 空 乏 型 の 場 合 で は 、空 乏 層 の 広 が り は poly-Si の 膜 厚 t に 規 制 さ れ る の で 、次 の 式 が 用 い ら れ る 。 Vth = φ ms + 2φ F + Qi Q qN t + i A ・ ・ ・( 5-5) C OX C OX よ っ て poly-Si 膜 厚 を 薄 く す る こ と で 、 反 転 層 の 形 成 に ゲ ー ト 電 圧 が よ り 有 効 的 に 作 用 す る よ う に な り 、S 値 や ON 電 流 の 増 加 を も た ら す 。し か し 、poly-Si の 薄 膜 化 は 移 動 度 の 効 果 は 認 め ら れ ず 、ソ ー ス ド レ イ ン の 寄 生 抵 抗 が 増 加 し て し ま う という問題点がある。 実験 5-3 5-3-1 ① 低 温 poly-Si TFT メ モ リ 作 製 プ ロ セ ス に お け る 改 良 点 poly-Si の 形 成 に 固 層 成 長 法 ( SPC: Solid Phase Crystallization) を 用 い た 現 在 の 結 晶 化 の 主 流 は 大 粒 径 が 得 ら れ る ELA が 用 い ら れ て い る が 、結 晶 化 後 の 表 面 ラ フ ネ ス が 大 き く な る 。ス イ ッ チ 素 子 と し て の TFT の 場 合 、ゲ ー ト 絶 縁 膜 の 膜 厚 は 100nm 程 度 の 厚 膜 を 用 い て い る 。 し か し 、 メ モ リ 応 用 の 場 合 で は 、 3nm の 薄 膜 を 用 い る た め 下 地 の ラ フ ネ ス の 影 響 が 顕 著 に 現 れ る 。 ラ フ ネ 69 スが顕著に現れた場合、薄い部分に電界が集中しブレイクダウンを起こりや す く 信 頼 性 の 低 下 に つ な が る 。そ の た め 、表 面 ラ フ ネ ス が 小 さ い poly-Si 薄 膜 を 形 成 す る た め SPC 法 を 用 い た 。 ② 薄膜トンネル酸化膜をエッチングにより形成 TEOS-SiO 2 は 良 好 な 段 差 被 覆 性 を 持 つ た め 、 酸 化 膜 厚 を 厚 く 堆 積 す る こ と で 基 板 表 面 の ラ フ ネ ス を 緩 和 す る こ と が で き る 。そ の た め ト ン ネ ル 酸 化 膜 は 、 TEOS-SiO 2 を 始 め 10nm と 厚 く 堆 積 し 、そ の 後 BHF に よ っ て 3nm ま で 薄 膜 化 をおこない、種々のトンネル酸化膜厚を形成した。コントロール酸化膜の膜 質はメモリ特性に影響を及ぼすためエッチング方法は、プラズマエッチング で は な く 、 ダ メ ー ジ の 少 な い ウ エ ッ ト エ ッ チ ン グ を 用 い た 。 ま た こ の 10nm の 設 定 は 、後 の ソ ー ス /ド レ イ ン 形 成 時 の イ オ ン 注 入 プ ロ セ ス に お い て 、低 エ ネ ル ギ ー で 注 入 で き る 膜 厚 で あ る た め 、 低 温 活 性 化 を 考 慮 し 10nm と し た 。 ③ 活性化アニールと同時にトンネル酸化膜を加熱し膜質の向上を行った トンネル酸化膜の膜質はメモリ特性に大きく影響されるため、主に熱酸化 膜 が 用 い ら れ て き た 。 今 回 は 低 温 プ ロ セ ス の た め 、 基 板 温 度 300℃ で 堆 積 さ れ た CVD 膜 を 用 い て お り 、熱 酸 化 膜 を 用 い た 場 合 に 比 べ 絶 縁 性 な ど の 膜 質 は 大きく低下する。そこで、膜質を向上させるためイオン注入後酸化膜を剥離 せず、活性化アニールと同時にトンネル酸化膜も熱処理を行い、メモリ特性 の向上を試みた。 5-3-2 Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 と 評 価 以 下 の 方 法 を 用 い て Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ を 作 製 し た 。図 5-2 に プ ロセスフローを示す。 ① P 型 Si(100)基 板 上 に 絶 縁 層 と し て 熱 酸 化 膜 を 150nm 形 成 し 、 そ の 上 に LPCVD に よ っ て a-Si を 50nm 堆 積 し た 。 そ の 後 SPC 法 に よ り 、 600℃ に 加 熱 さ れ た 熱 酸 化 炉 内 に 試 料 を 搬 送 し 、 窒 素 雰 囲 気 中 ( 3slm) で 20h ア ニ ー ル を 行 い 低 温 poly-Si を 形 成 し た 。 70 ② 素 子 分 離 の た め 、poly-Si 基 板 に こ れ ま で と 同 じ 方 法 で 、レ ジ ス ト を 塗 付 、 プ リ ベ ー ク 、 露 光 、 現 像 、 ポ ス ト ベ ー ク の 順 に 行 い 、 そ の 後 RIE( reactive ion etching) 装 置 を 用 い て 、 CF 4 /O 2 の 混 合 ガ ス に よ っ て poly-Si を エ ッ チ ン グ し 、 活 性 層 ( Si ア イ ラ ン ド ) を 形 成 し た 。 ③ そ の 基 板 を RCA 洗 浄 後 、 ト ン ネ ル 酸 化 膜 と し て 、 TEOS-SiO 2 を 10nm 形 成 し た 。ソ ー ス /ド レ イ ン 形 成 の た め 、試 料 の 表 面 に リ フ ト オ フ 用 の レ ジ ス ト ( マ イ ク ロ ケ ミ カ ル 製 LOR-5A) を 塗 付 し 、 160℃ の ホ ッ ト プ レ ー ト 上 で 1 分間ベーク後、露光用のレジストを塗布しプリベーク、露光、現像、ポ ストベーク行いフォトリソグラフィーによりゲート領域をパターングした。 ④ 抵 抗 線 加 熱 蒸 着 装 置 を 用 い て Al を 全 面 蒸 着 し 、80℃ の 恒 温 槽 の 中 で 温 め ら れ た リ フ ト オ フ 用 レ ジ ス ト 専 用 リ ム ー バ (マ イ ク ロ ケ ミ カ ル 製 Remover PG) の 中 に 試 料 を 入 れ 、 リ フ ト オ フ を 行 い 、 ア セ ト ン 、 メ タ ノ ー ル で 洗 浄 し 、 ゲ ー ト 領 域 形 成 用 の Al マ ス ク を 形 成 し た 。 ⑤ そ の 基 板 に 、リ ン を 1×10 1 5 /cm 2 の ド ー ズ 量 で イ オ ン 注 入 を 行 っ た 後 、リ ン 酸 を 用 い て Al マ ス ク を 完 全 に 除 去 し 、 BHF を 用 い て ト ン ネ ル 酸 化 膜 を 3nm( 分 光 エ リ プ ソ メ ト リ ー に よ り 屈 折 率 を 固 定 し て 測 定 ) ま で エ ッ チ ン グし、活性化アニールとトンネル酸化膜の膜質向上を同時に行うため、 600℃ に 加 熱 さ れ た 熱 酸 化 炉 内 に 試 料 を 搬 送 し 、 窒 素 雰 囲 気 中 ( 3slm ) で 1h ア ニ ー ル を 行 っ た 。そ の 後 、Side-Wall 電 極 型 PECVD を 用 い て Si ド ッ ト を 作 製 し 、 大 気 曝 露 せ ず に 20nm の 膜 厚 の SiO 2 を 連 続 堆 積 し 、 Si ド ッ ト を 埋め込んだ。 ⑥ これまでの方法と同様にフォトリソグラフィーによりコンタクトホール を パ タ ー ニ ン グ し 、BHF を 用 い て コ ン タ ク ト ホ ー ル を エ ッ チ ン グ に よ り 形 成した。その後、再度リフトオフ用のレジストおよび露光用のレジストを 用 い て フ ォ ト リ ソ グ ラ フ ィ ー を 行 い 、 EB 蒸 着 装 置 を 用 い て Ti を 約 300nm 全面蒸着を行った。その後リフトオフを行い、ゲート電極およびソース/ ドレイン電極を形成した。 71 ⑦ 最 後 に PMA を 450℃ で 1h 行 い 、Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ を 作 製 した。入力特性やリテンションタイムの測定などの、これまで確立した測 定 技 術 よ り メ モ リ 特 性 を 評 価 し た 。ド ッ ト の 有 無 に よ る 特 性 の 比 較 の た め 、 ド ッ ト が 埋 め 込 ま れ て い な い TFT( 以 下 積 層 膜 低 温 poly-Si TFT)も 同 時 に 作製した。 Si(50nm) SiO2(100nm) Si ・ SPC に よ る 結 晶 化 LPCVD よ る a-Si 堆 積 ・ TEOS-SiO 2 堆 積 ( 10nm) ・ RIE に よ り 活 性 層 作 製 P+ SiO2(3nm) Al n+ n+ n+ n+ ・ Al マ ス ク 形 成 コントロール酸化膜形成 ・ イオン注入(リン) ( 20nm) ・ 活 性 化 ア ニ ー ル( 600℃ -1h) n+ n+ Ti 電 極 蒸 着 PMA 図 5-2. Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の プ ロ セ ス フ ロ ー 5-3-3 低 温 poly-Si TFT の 初 期 特 性 図 5-3 に 実 際 に 作 製 さ れ た 低 温 poly-Si TFT の 微 分 干 渉 顕 微 鏡 像 を 示 す 。 設 計 で の 最 も 大 き な ゲ ー ト の サ イ ズ は W/L= 50μ m/50μ m で あ り 、 最 も 小 さ い サ イ ズ は W/L= 10μ m/5μ m で あ る 。 低 温 poly-Si TFT の 基 本 特 性 で あ る 入 力 特 性 と 出 力 特 性 を 図 5-4( a) お よ び ( b) に 示 す 。 OFF 電 流 は 低 く 、 ゲ ー ト 電 圧 0V の 場 合 、チ ャ ネ ル は 形 成 し て お ら ず 、ゲ ー ト 電 圧 を 印 加 す る こ と に よ り チ ャ ネ ル が 形 成 さ れ FET 動 作 し て い る こ と が わ か る 。 こ の TFT の 初 期 特 性 を 以 下 に 示 す 72 電 界 効 果 移 動 度 = 13cm 2 /Vs し き い 値 電 圧 = 3.3V S 値 ( subthreshold) = 0.7V/dec 線 形 領 域 で の On/off 比 =6 桁 図 5-3 実 際 に 作 製 し た TFT こ の 特 性 は TFT と し て 十 分 な 特 性 を 示 し て お り 、 今 後 こ の TFT を 基 本 構 造 と 0 Vd=5V Vd=50mV 5 10 GATE BIAS(V) 20 [×10-7] 15 10 5 DRAIN CURRENT(A) 10-5 W/L=10μm/50μm 10-6 ( a) 10-7 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 Mobility (cm2/Vs) DRAIN CURRENT(A) し て 、 Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 を 行 っ た 。 0 15 6 Vg=5V ( b) 4 4V 2 0 0 1 2 3 DRAIN BIAS(V) 4 3V 0V1V 2V 5 図 5-4. Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の (a)入 力 特 性 (b)出 力 特 性 5-3-4 低 温 poly-Si 基 板 上 の Si ド ッ ト の 形 状 評 価 図 5-5 に 低 温 poly-Si 基 板 上 の TEOS-SiO 2 上 に 形 成 し た Si ド ッ ト の SEM 像 を 示 す 。こ れ ま で の 単 結 晶 Si 基 板 上 の 熱 酸 化 膜 上 に 形 成 さ れ た Si ド ッ ト と 同 様 に 、 球 状 の Si ド ッ ト が 観 察 さ れ た 。ド ッ ト 密 度 も 単 結 晶 Si 基 板 上 に 形 成 し た 場 合 と ほぼ同じ密度で形成されている。この結果より、本手法は基板の種類を問わず、 高 密 度 に Si ド ッ ト の 形 成 が 可 能 で あ る こ と が わ か っ た 。 73 20nm 図 5-5. 低 温 poly-Si 基 板 上 の TEOS-SiO 2 上 に 形 成 し た Si ド ッ ト の SEM 像 5-3-5 Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 入 力 特 性 評 価 積 層 膜 低 温 poly-Si TFT と Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 入 力 特 性 の 評 価 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 5-6( a) お よ び ( b) に 示 す 。 積 層 膜 低 温 poly-Si TFT は 掃 引 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト は み ら れ な か っ た が 、 Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ に つ い て は 、掃 引 に よ り し き い 値 電 圧 は 負 バ イ ア ス 側 に 4V 以 上 の 大 き な シ フ ト が み ら れ た 。 こ れ ま で の 結 果 よ り 、 Si ド ッ ト へ の 電 子 注 入 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト で あ る と 考 え ら れ る 。ま た 、ゲ ー ト 長 を 小 さ く し た 場 合 で も 10-5 Room temperature μm/10 μm 10-6 W/L=50 Vd=50 mV 10-7 ( a) 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 0 5 Gate bias (V) Drain current (A) Drain current (A) 同様に大きなヒステリシスがみられた。 10 10-5 Room temperature μm/10 μm 10-6 W/L=50 Vd=50 mV 10-7 ( b) 10-8 10-9 10-10 ドレイン電流増加 10-11 10-12 OFF電流増加 0 理想曲線 5 Gate bias (V) 図 5-6. 入 力 特 性 (a)積 層 膜 TFT(b)Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ 74 10 今 回 用 い た 基 板 は 、 厚 さ 150nm の 熱 酸 化 膜 上 に 50nm の poly-Si 薄 膜 が 形 成 さ れ て お り 完 全 空 乏 型 の TFT で あ る 。 poly-Si に は 不 純 物 の ド ー プ は 行 っ て お ら ず 真 性 半 導 体 で あ り 、 フ ェ ル ミ レ ベ ル は Si の バ ン ト ギ ャ ッ プ の 真 ん 中 に 存 在 し て い る 。 単 結 晶 Si 基 板 の 場 合 、 Si 基 板 表 面 に 電 界 が 集 中 す る た め バ ン ド の 曲 が り は Si 基 板 表 面 に 集 中 す る 。し か し 、完 全 空 乏 型 の 場 合 50nm と 薄 膜 で あ り 、poly-Si 層 す べ て に 電 界 が か か る た め 、 poly-Si 層 の バ ン ド の す べ て が 曲 が る 。 こ の フ ェ ル ミ レ ベ ル の 位 置 と バ ン ド の 曲 が り を 考 慮 し た 、Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 電 子 の 充 放 電 の バ ン ド 図 を 図 5-7 に 示 す 。 Poly-Si Ec EF EF EV Ei Ec EF EV Vg EF 下層酸化膜 電極 Siドット コントロール 酸化膜 トンネル酸化膜 電子注入 Vg=0V EF Ec EF Ec Vg EF EV EF EV 電子放出 電子保持 図 5-7. Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 電 子 の 充 放 電 の バ ン ド 図 更 に 詳 し く 図 5-6 の 入 力 特 性 を 見 て み る と Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の OFF 電 流 は 、 積 層 膜 低 温 poly-Si TFT に 比 べ 一 桁 電 流 値 が 大 き く な っ た 。 さ ら に 正 電 圧 か ら の 掃 引 後 再 び 戻 る 時 の ド レ イ ン 電 流 値 が 一 桁 高 く な っ て お り 、単 結 晶 Si 基 板 を 用 い た 場 合 で は 見 ら れ な か っ た こ と か ら 、 酸 化 膜 の ダ メ ー ジ に よ る リ 75 ーク電流が考えられる。 こ の リ ー ク の メ カ ニ ズ ム に つ い て 考 察 す る 。こ の リ ー ク は プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ よ り Si-O 結 合 や Si-H 結 合 が 切 断 し 、酸 化 膜 ト ラ ッ プ 電 荷 を 形 成 し そ の 欠 陥 を 介 し て 起 こ る リ ー ク 電 流 で あ る と 考 え ら れ る 。こ の よ う な 、プ ラ ズ マ で 形 成 し た 欠 陥 を 介 し た リ ー ク は 電 圧 印 加 時 に 起 こ る ス ト レ ス 誘 起 リ ー ク 電 流 ( SILC: Sress Induced Leakage Current)[ 6 1 ] よ ば れ 、そ の 伝 導 機 構 は TAT( Trap Assisted Tunneling) と し て 提 案 さ れ て い る [ 6 2 - 6 3 ] 。 こ の こ と か ら 図 5-8 に 示 す よ う に OFF 電 流 の 増 加 は ① に 示 す よ う に poly-Si/SiO 2 界 面 の 界 面 準 位 を 介 し て リ ー ク し 、ド レ イ ン 電 流 の増加は②に示すように膜内にダングリングボンドを介してリークしているも のと考えられる。 Siドット e- e- e- ② ① e- e- e- e- e- e-= 電 子 X= ダ ン グ リ ン グ ボ ン ド 図 5-8. 入 力 特 性 (a)積 層 膜 TFT(b)Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 場 合 、 単 結 晶 Si 基 板 を 用 い た Si ド ッ ト MOSFET に 比 べ 、 プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ の 影 響 が 顕 著 に 現 れ る 。 そ の た め こ の 大 き な シ フ ト は 、熱 酸 化 膜 よ り も 固 定 電 荷 な ど の 欠 陥 が 多 い 薄 膜 の TEOS- SiO 2 を ト ン ネ ル 酸 化 膜 に 用 い た こ と と 、プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ に よ っ て 欠 陥 が 増 加 し た こ と で 、 欠 陥 を 介 し た ト ン ネ ル 確 率 の 増 加 に よ り 、こ の よ う な 広 い ヒ ス テ リ シ ス が 得 ら れ た も の と 考 え ら れ る 。さ ら に 図 5-9( a)に ゲ ー ト 電 圧 幅 依 存 性 、 ( b)に sweep rate 依 存 性 の 測 定 結 果 を 示 す 。ゲ ー ト 電 圧 幅 を 大 き く し て 電 子 の 注 入 量 を 増 加 さ せ る と 、ヒ ス テ リ シ ス 幅 も 増 加 し て い く こ と が 分 か る 。さ ら に -3V か ら 10V の 電 圧 幅 で sweep rate を 遅 く し 注 入 量 を 増 加 し て も 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 は 僅 か な が ら 減 少 が み ら れ た 。 こ れ ま で の Si ド ッ ト MOSFET で は 、 sweep rate を 遅 く す る こ と で し き い 値 電 圧 は 増 加 し た が 、Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ で は 減 少 し た こ と か ら 、掃 引 速 度 を 遅 く す る こ と で 、電 子 の リ ー ク が 顕 著 に 現 れ 電 圧 を 掃 引 し な が ら Si ド ッ ト へ 注 入 さ れ た 電 子 が 、 ト ン ネ ル 酸 化 膜 を ト ン ネ ル し 、 し き い 値電圧が減少したものと考えられる。 76 し き い 値 電 圧 の 幅 は 大 き く 現 れ た に も か か わ ら ず 、 -3V か ら 3V の 低 電 圧 を 印 加 し た 場 合 し き い 値 電 圧 の シ フ ト が 見 ら れ な か っ た 。こ の し き い 値 電 圧 が 、電 子 お よ び 正 孔 が 注 入 さ れ て い な い 状 態 の し き い 値 電 圧 で あ る と 考 え 、こ の し き い 値 よ り 正 方 向 側 に シ フ ト し た 幅 を 電 子 の 注 入 量 と し 、こ れ ま で と 同 様 に 、1 ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 量 を 計 算 し た 。そ の 結 果 を 表 5-1 に 示 す 。こ の 結 果 よ り ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 数 は 1 つ 以 上 で あ る と 分 か る 。 sweep rate 依 存 性 や 1 ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 量 の 計 算 の 結 果 か ら も 、 単 結 晶 Si 基 板 を 用 い た も の に 比 べ 大 き く 、入 力 特 性 で の 大 き な し き い 値 電 圧 の シ フ ト は 、電 子 ト ラ ップによるものであることが支持される。 10 -6 10-7 10-8 10-5 Room temperature W/L=50/10 Vd=50mV ( a) 10-9 10 Drain current (A) DRAIN CURRENT(A) 10-5 ●delay 0.001s △delay 0.01s □delay 0.1 -10 0 5 GATE BIAS(V) 10 -6 10-7 10-8 Room temperature W/L=50 μm/10 μm Vd=50 mV ( b) 10-9 10 ● -3V~10V ○ -3V~8V △ -3V~5V ■ -3V~3V -10 10 0 5 Gate bias (V) 図 5-9. 入 力 特 性 (a)積 層 膜 TFT(b)Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ 表 5-1. 1 ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 数 の 計 算 ゲ ー ト 電 圧 [V] し き い 値 電 圧 シ フ ト [V] Si ド ッ ト の 電 子 の 数 [個 ] -3~ 3 0 0 -3~ 5 0.7 0.9 -3~ 8 3.3 4.0 -3~ 10 4.2 5.1 77 10 5-3-6 リテンションタイムの測定 リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 を 行 っ た 結 果 を 図 5-10 に 示 す 。 こ れ ま で の 測 定 方 法 と 同 様 に 、 ±5V の 電 圧 で 書 き 込 み お よ び 消 去 を 行 っ た 後 、 読 み 出 し 電 圧 0.5V で ド レ イ ン 電 流 の 時 間 変 化 を 測 定 し た 。こ の 図 か ら リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は 約 350 秒 で あ る こ と が わ か り 、 こ れ ま で の MOSFET を 用 い た 場 合 の 約 3000 秒 に 比 べ 、 大 幅 に 低 減 し て い る こ と が 分 か る 。こ れ は こ れ ま で の 結 果 よ り 、プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ に よ る 欠 陥 を 介 し た リ ー ク が 原 因 で あ る と 考 え ら れ る 。こ の リ ー ク は ト ン ネ ル 酸 化 膜 に 依 存 す る た め 、ま ず は ト ン ネ ル 酸 化 膜 厚 を 厚 く す る こ と で 電 子 の ト ン ネ ル 確 率 を 低 下 さ せ 、 リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 向 上 お よ び OFF 電 流 の 低 下 を 試 み た 。 Drain current (A) Read V g=0.5 V Vd=50m V After erasing at V g=-5 V 10-10 After writing at V g=+5 V 0 100 200 Time (s) 300 400 図 5-10. リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 測 定 5-3-7 トンネル酸化膜厚依存性 リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は ト ン ネ ル 酸 化 膜 厚 に 依 存 し 、厚 く す る こ と で ト ン ネ ル 確 率 を 減 少 さ せ 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 向 上 さ せ る こ と が で き る 。今 回 ト ン ネ ル 酸 化 膜 を 5nm と 厚 く し 、 こ れ ま で と 同 様 の 方 法 で 入 力 特 性 と リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 5-11( a) お よ び ( b) に 示 す 。 入 力 特 性 を 見 る と 、 膜厚を厚くするにつれて掃引によるしきい値電圧のシフト量は小さくなってい る 。5nm 以 上 の ト ン ネ ル 酸 化 膜 で は 、直 接 ト ン ネ ル が 起 こ り に く く 、ド レ イ ン 電 圧 を 高 く す る 必 要 と な る た め 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 が 減 少 し た も の と 考 え ら れ る 。ま た リ テ ン シ ョ ン タ イ ム に つ い て は 、酸 化 膜 を 厚 く す る こ と で リ テ ン シ ョ ンタイムが向上するが僅かな変化しか見られなかった。 78 そ こ で ト ン ネ ル 酸 化 膜 を 厚 く す る の で は な く 、欠 陥 終 端 処 理 が 有 用 で あ る と 考 え 、 現 在 TFT を 低 温 で 熱 処 理 を 行 う こ と で 結 晶 粒 界 や 界 面 特 性 が 向 上 す る と 報 告 さ れ て い る 高 圧 水 蒸 気 処 理 法 を 用 い て 、 膜 質 と 界 面 特 性 を 向 上 さ せ OFF 電 流 10-5 Room temperature 10-6 W/L=50μm/10μm Vd=50mV 10-7 ( a) 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 0 5 GATE BIAS(V) DRAIN CURRENT(A) DRAIN CURRENT(A) の 低 下 な ど の 、 TFT 特 性 の 向 上 を お こ な っ た 。 ●3nm △5nm Read Vg=0.5V ( b) Vd=50mV After Erasing at Vg=-5V 10-10 10 △5nm ●3nm After writing at Vg=+5V 0 100 200 Time(s) 300 400 図 5-11. ト ン ネ ル 酸 化 膜 厚 依 存 性 ( a) 入 力 特 性 ( b) リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 5-4 5-4-1 高圧水蒸気処理による特性改善効果 高圧水蒸気処理とは 高 圧 水 蒸 気 処 理 は 東 京 農 工 大 の 鮫 島 ら の 研 究 グ ル ー プ に よ り 、 低 温 poly-Si TFT の 低 温 パ ッ シ ベ ー シ ョ ン 技 術 と し て 注 目 さ れ て お り [ 6 4 - 6 6 ] 、 TEOS-SiO 2 や High-k 膜 へ の 効 果 も 報 告 さ れ て い る [ 6 7 - 6 8 ] 。 図 5-12( a) お よ び ( b) に 実 際 に 使 用 し た 装 置 図 と 内 部 の 構 造 を 示 す 。こ れ ま で 高 圧 水 蒸 気 処 理 つ い て 多 く の 研 究 が 行 わ れ 、 特 に 270℃ 、 1.3MPa の 条 件 で 高 圧 水 蒸 気 処 理 を 行 う こ と に よ っ て 、 酸 化 膜 中 の 酸 素 欠 損 に よ り 生 じ て い た Si ダ ン グ リ ン グ ボ ン ド を 低 減 し て 、 固 定 電 荷 を 減 少 さ せ る 効 果 や 、 水 蒸 気 か ら 生 じ た 水 素 に よ っ て Si の ダ ン グ リ ン グ ボ ン ド を 終 端 し て SiO 2 /poly-Si の 界 面 準 位 を 低 減 す る 。 ま た poly-Si 膜 中 の 粒 界 欠 陥 に よ り 安 定 な Si-O 結 合 を 作 る た め 移 動 度 も 向 上 す る [67]。 よ っ て フ ォ ー ミ ン グ ガ ス の よ う な 酸 素 を 含 ま な い 水 素 ガ ス の み の 処 理 よ り も 、特 性 は 大 幅 に 改 善 す る 。 更 に 本 手 法 で は ガ ス を 使 用 せ ず 、超 純 水 の み 使 用 す る 熱 処 理 で あ る た め 、非 常 に 簡便に処理が行えるという特徴をもつ。 79 ( b) ( a) chamber sample 高圧水蒸気 ヒ ー タ ー 図 5-12. ( a) 高 圧 水 蒸 気 処 理 装 置 ( b) 内 部 構 造 実 際 の 高 圧 水 蒸 気 処 理 方 法 は 、基 板 を チ ャ ン バ ー 内 に 導 入 し ガ ス ケ ッ ト を 入 れ チ ャ ン パ ー を 閉 め る 。そ の 後 ホ ッ ト プ レ ー ト 上 で 加 熱 し 、所 定 の 温 度 に な っ た ら 、 上 部 の バ ル ブ を 開 け て 1cc の 氷 を 入 れ 、す ぐ に 蓋 を 閉 め 、処 理 時 間 放 置 す る 。処 理 時 間 が 経 過 し た ら 上 部 の バ ル ブ を 開 け 圧 力 を 開 放 し 、自 然 冷 却 後 サ ン プ ル を 取 り 出 す 。 こ の 方 法 は 、 1cc の 氷 を 温 め る 温 度 に よ っ て 内 部 の 圧 力 を 調 節 す る こ と が で き 、更 に 処 理 時 間 終 了 と 同 時 に バ ル ブ を 開 け 圧 力 を 開 放 す る た め 、処 理 時 間 の 制 御 が 行 い や す い と い う 特 徴 を 持 つ 。 今 回 、 積 層 膜 低 温 poly-Si TFT お よ び Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ を 作 製 し た 後 、 温 度 を 270℃ に す る こ と で 圧 力 を 1.3MPa と し 、1h 処 理 を 行 っ た 後 入 力 特 性 な ど の 電 気 特 性 と リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の測定を行った。 5-4-2 高圧水蒸気処理後の特性 高 圧 水 蒸 気 処 理 の 効 果 を 調 べ る た め 、 高 圧 水 蒸 気 処 理 後 の 積 層 膜 低 温 poly-Si TFT の 入 力 特 性 お よ び 出 力 特 性 を 測 定 し た 。 そ の 結 果 を 図 5-13( a) お よ び ( b) に 示 す 。入 力 特 性 に お い て 、高 圧 水 蒸 気 処 理 を 行 う こ と で ON 電 流 が 増 加 し OFF 電 流 が 減 少 し て い る こ と が 分 か る 。こ れ は 処 理 に よ り 、界 面 準 位 や 粒 界 の ト ラ ッ プサイトが終端され、欠陥を介してのリーク電流が減少したものと考えられる。 さ ら に 、 し き い 値 電 圧 の マ イ ナ ス 側 の シ フ ト が み ら れ た 。 こ れ ま で 、高 圧 水 蒸 気 処 理 時 の 素 子 構 造 に お い て 、電 極 形 成 前 後 の 処 理 に よ り し き い 値 電 圧 の シ フ ト の 方 向 が 変 わ る こ と が 報 告 さ れ て い る [69]。 電 極 形 成 前 の 処 理 の 場 合 、 高 圧 水 蒸 80 気 中 の 水 分 子 は SiO 2 膜 中 を 拡 散 し 再 酸 化 反 応 に よ り 、 水 分 子 か ら 乖 離 し た OH イ オ ン が 酸 化 膜 中 に 取 り 込 ま れ る こ と よ り 、負 の 実 効 固 定 電 荷 が 増 加 す る 。ま た 、 電 極 に Al を 用 い た 場 合 で は 、 Al と SiO 2 界 面 で 水 分 子 が 反 応 す る こ と で 、 水 素 が 発 生 し 、 SiO 2 膜 中 に 正 の 固 定 電 荷 を 発 生 す る こ と が 報 告 さ れ て い る [ 7 0 - 7 1 ] 。 今 回 の こ の シ フ ト は 報 告 さ れ た 結 果 と 一 致 し て お り 、 ゲ ー ト 電 極 に Ti を 用 い た 場 合 で も 、正 の 固 定 電 荷 が 形 成 さ れ た こ と よ り 、正 の 固 定 電 荷 の 発 生 に 電 極 の 材 料 を問わないことが分かった。 S 値 は 0.7V/dec か ら 0.4V/dec に 向 上 し 移 動 度 は 、 処 理 に よ り 13cm 2 /Vs か ら 25cm 2 /Vs と 約 2 倍 に 向 上 し た 。 こ れ は 図 5-14 に 示 す よ う に 、 高 圧 水 蒸 気 処 理 に よ り 界 面 準 位 や 粒 界 の ト ラ ッ プ サ イ ト が 終 端 さ れ る こ と に よ り 、界 面 準 位 の 低 下 と 結 晶 粒 界 に 存 在 す る バ リ ア ハ イ ト が 低 く な っ た た め 、電 子 が 結 晶 粒 間 を 移 動 し やすくなり移動度が向上したものと考えられる。 以 上 の 結 果 よ り 、 温 度 270℃ 、 圧 力 1.3MPa、 処 理 時 間 1h で 高 圧 水 蒸 気 処 理 法 は 、 本 低 温 poly-Si TFT に お い て も 特 性 が 向 上 す る こ と が 分 か り 、 高 圧 水 蒸 気 処 理によるメモリ特性向上が期待できる。 10-7 10-8 Room temperature W/L=10μm/50μm Vd=50mV △After anneal -9 10 10-10 ●Befor anneal ( a) -11 10 10-12 0 10 GATE BIAS(V) 45 [×10-6] △After anneal 40 4 ●Befor anneal 35 30 3 25 20 2 ( b) 15 1 10 5 0 0 0 1 2 3 DRAIN BIAS(V) Vg=5V DRAIN CURRENT(A) DRAIN CURRENT(A) 10-6 4V 3V 4 2V 1V 0V 5 図 5-13. (a)高 圧 水 蒸 気 処 理 後 の 入 力 特 性 (b)出 力 特 性 結晶粒界 障壁(バリアハイト) 結晶粒界 結晶粒界 電子 e- 結晶粒界 電子 障壁(バリアハイト) Ec Ei e- 欠陥準位 Ev Ev 結晶粒 高圧水蒸気処理前 Ec Ei 結晶粒 高圧水蒸気処理後 図 5-14.高 圧 水 蒸 気 処 理 前 後 バ ン ド 構 造 81 5-4-3 リテンションタイムの測定 こ れ ま で と 同 様 に リ テ ン シ ョ ン タ イ ム を 測 定 し た 。そ の 結 果 を 図 5-15 に 示 す 。 測 定 前 に Si ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 を す べ て 放 電 さ せ る た め 、 ±10V の 電 圧 を 30 秒 間 印 加 し 、読 み 出 し 電 圧 0.5V で ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 の 測 定 を 行 っ た 。こ の 結 果 を み る と 高 圧 水 蒸 気 処 理 を 行 う こ と で 大 幅 に リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 向上した。 一 般 的 に 単 結 晶 基 板 を 用 い た Si ド ッ ト MOSFET の 方 が 高 温 プ ロ セ ス の た め 信 頼 性 が 高 く 、メ モ リ 構 造 に お い て も ト ン ネ ル 酸 化 膜 の 膜 質 よ り 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 長 く な る と 予 想 さ れ た が 、 3nm の TEOS-SiO 2 薄 膜 を 用 い た 場 合 で も 、 高 圧 水 蒸 気 処 理 よ っ て 、 Si ド ッ ト MOSFET の 場 合 よ り も リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 長 DRAIN CURRENT(A) いという結果となった。 Vd=50mV Read Vg=0.5V 10-8 After anneal 10 After Erasing at Vg=-10V 30s -9 10-10 Before anneal 10-11 After writing at Vg=+10V 30s 200 400 600 800 Time(s) 1000 1200 図 5-15. リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 こ の リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 向 上 の メ カ ニ ズ ム を 図 5-16 の バ ン ド 図 を 用 い て 考 察 す る 。 Si ド ッ ト の 保 持 さ れ た 電 子 の 放 電 は 、 図 中 の ① で 示 さ れ た ト ン ネ ル 酸 化 膜 と 基 板 と の 界 面 準 位 へ の ト ラ ッ プ が 全 体 の 40% ~ 60% で あ る と い わ れ 、 残 り は 図 中 の ② で 示 さ れ る よ う な 、 Si ド ッ ト の 導 電 体 か ら 基 板 の 導 電 体 へ の バ ッ ク ト ン ネ ル に よ る と わ れ て い る [72-74]。 リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 向 上 は 、 高 圧 水 蒸 気 処 理 こ の 界 面 準 位 が 減 少 し ト ラ ッ プ が 減 少 し た こ と と 、膜 中 の 欠 陥 終 端 に よ り 基板の導電体へのリークが減少したことによるものと考えられる。 こ の 結 果 は 、高 圧 水 蒸 気 処 理 は 低 温 で メ モ リ 特 性 を 大 き く 改 善 さ せ る こ と が 可 能 な 手 法 で あ る こ と を 示 し て い る 。し か し 、こ の 特 性 向 上 は 単 に ト ン ネ ル 酸 化 膜 82 の 膜 質 向 上 に よ る も の だ け で は な く 、 Si ド ッ ト へ の 酸 化 の 影 響 も 考 え ら れ る 。 今後詳細なメカニズムの解析が必要となる。 ② 電子 Ec Ec ① Eg Dit Eg Ev Ev Poly-Si Si dot トンネル酸化膜 コントロール 酸化膜 図 5-16. リ テ ン シ ョ ン タ イ ム 向 上 の メ カ ニ ズ ム 5-5 まとめ 本 章 で は Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の メ モ リ 特 性 を 評 価 し た 。Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 入 力 特 性 に 約 4V の 大 き な ヒ ス テ リ シ ス が 見 ら れ た が 、 OFF 電 流 は 増 加 し リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 低 く 、 TEOS-SiO 2 へ の Si ド ッ ト 堆 積 時 の プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ が 顕 著 に 見 ら れ た 。そ の 後 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 厚 を 厚 く す る こ と で 特 性 の 向 上 を 試 み た と こ ろ 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は わ ず か に 向 上 す る も の の 、 しきい値電圧のシフト量が大幅に減少した。 高 圧 水 蒸 気 処 理 を 行 う こ と で 移 動 度 、S 値 、し き い 値 電 圧 が 向 上 し 、特 に リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は 大 幅 に 向 上 し 、 熱 酸 化 膜 を ト ン ネ ル 酸 化 膜 に 用 い た Si ド ッ ト MOSFET よ り も 、 リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 長 い と い う 結 果 と な っ た 。 こ の 特 性 向 上 は 単 に ト ン ネ ル 酸 化 膜 の 膜 質 向 上 に よ る も の で は な い と 考 え ら れ 、こ の 詳 細 な メ カ ニ ズ ム の 解 析 が 今 後 の 課 題 と な る 。し か し こ れ ま で 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 に 堆 積 膜 を 用 い て Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ を 作 製 さ れ た 報 告 が 少 な い た め 、こ の結果はシステムオンパネル実用の大きな一歩となると言える。 83 第 6章 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 と メモリ特性評価 6-1 フェリチンコアの特徴 フ ェ リ チ ン を 用 い る 特 徴 は バ ン ド 構 造 に み ら れ る 。 図 6-1( a) に Si ド ッ ト を 用 い た 場 合 、( b) に フ ェ リ チ ン コ ア ( Fe の 金 属 ナ ノ ド ッ ト ) を 用 い た 場 合 の フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の バ ン ド 構 造 を 示 す 。Si ド ッ ト は 基 板 と 同 じ バ ン ド 構 造 の た め 、 Si 基 板 と の ポ テ ン シ ャ ル が 浅 く 、 Si 基 板 へ の バ ッ ク ト ン ネ ル に よ っ て 電 子 が 抜 け や す い 。し か し 、フ ェ リ チ ン コ ア は 大 き な 仕 事 関 数 を 持 ち 、フ ェ ル ミ 準 位 と 導 電 帯 の 準 位 が 同 じ エ ネ ル ギ ー 準 位 の た め 、 金 属 の 導 電 帯 は Si 基 板 の 導 電 帯 よ り も 低 い エ ネ ル ギ ー を 持 つ 。 そ の た め 、 ゲ ー ト 電 圧 を 印 加 し な い 場 合 、 0.1eV と 僅 か な が ら バ ン ド の 曲 が り が み ら れ 、低 電 圧 で の 注 入 が 可 能 と な る 。更 に 、電 荷 注 入 効 果 を 損 な う こ と な く Si ド ッ ト を 用 い た フ ラ ッ シ ュ メ モ リ に 比 べ 、 長 い 電 荷 保 持 特 性 を 実 現 す る こ と が 可 能 と な る 。こ れ ら の こ と か ら 、フ ェ リ チ ン コ ア を 用 い た フ ラ ッ シ ュ メ モ リ は Si ド ッ ト を 用 い た 場 合 に 比 べ 大 き な 特 徴 を 持 つ 。 ( a) ( b) Eac Eac 4.5eV 4.05eV 4.05eV 4.05eV 3.1eV 0.1eV 1.1eV 1.1eV Ec EF Ev Ec EF Ev Si基板 Si基板 コア(Fe) Siドット 図 6-1. フ ラ ッ シ ュ メ モ リ の バ ン ド 構 造 ( a) Si ド ッ ト ( b) フ ェ リ チ ン コ ア ( Fe ナ ノ ド ッ ト ) 更 に 、そ の 形 成 方 法 に も 特 徴 を 持 つ 。こ れ ま で の 金 属 ナ ノ ド ッ ト の 作 製 方 法 は 、 ス パ ッ タ 法 に よ り 直 接 金 属 を ス パ ッ タ さ せ る 方 法 や 、シ リ サ イ ド の 層 を 形 成 し 熱 処理によりドットを形成させる方法が用いられてきた 84 [75-76] 。こ れ ら の 方 法 で は 、 粒径が均一でないことやトンネル酸化膜へのダメージが懸念されるということ が 課 題 で あ っ た 。さ ら に 、温 度 に お い て も 高 温 の 熱 処 理 を 行 う た め 、本 研 究 に 用 い る 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 応 用 に は 適 し て い な い 。そ こ で 、金 属 ド ッ ト の 形 成 に フ ェ リ チ ン を 用 い 、フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に 応 用 す る こ と で 、こ の 課 題 を 解 決することができる。 表 6-1 に こ れ ま で 手 法 と フ ェ リ チ ン を 用 い た バ イ オ ナ ノ プ ロ セ ス と の ド ッ ト 形 成 時 の 比 較 を 示 す 。フ ェ リ チ ン を 用 い た 場 合 で は 、タ ン パ ク 質 を 鋳 型 と す る た め 、ド ッ ト の 粒 径 は 均 一 で あ り 、ま た ウ エ ッ ト プ ロ セ ス の た め 大 型 装 置 を 必 要 と せ ず 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 へ の ダ メ ー ジ が 小 さ い た め 、こ れ ま で の 手 法 を 用 い た 場 合 や Si プ ロ セ ス を 用 い た も の に 比 べ 、 特 性 が 大 き く 向 上 す る こ と が 期 待 で き る 。 自 然 界 の フ ェ リ チ ン コ ア は 鉄 で 構 成 さ れ る こ と を 述 べ た が 、こ の フ ェ リ チ ン コ ア は Ni や Co な ど を 人 為 的 に 抽 出 ・ 内 包 す る こ と も 可 能 で あ る 。 し か し 、 今 回 の 研 究 で は 、最 も コ ア の 形 成 率 、お よ び 収 率 が 高 く 、ま た そ の 手 法 も 簡 便 で あ る ことから、フェリチンコアに鉄を用いた。 表 6-1. フ ェ リ チ ン コ ア の 特 徴 高密度 ドットの 酸化膜への ドット形成時の 均一性 ダメージ 温度 従来法 △ × × 高 い ( > 400℃ ) BNP ○ ○ ○ 低 い ( > 110℃ ) 本 章 で は 、こ れ ま で 確 立 し た 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 プ ロ セ ス を 応 用 し 、 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 お よ び 特 性 評 価 を 行 い 、Si ド ッ ト 低 温 poly-Si TFT メ モ リ と の 比 較 検 討 を お こ な っ た 。 ま た 、 ド ッ ト 密 度 を 更 に 向 上 さ せ 、ド ッ ト 密 度 と し き い 値 電 圧 幅 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 関 係 に つ い て 考 察 した。 6-2 6-2-1 フェリチンコアの形成 アポフェリチンへのコア導入と精製 フ ェ リ チ ン を 構 成 す る サ ブ ユ ニ ッ ト に は 分 量 が わ ず か に 異 な る L-サ ブ ユ ニ ッ 85 ト と H-サ ブ ユ ニ ッ ト の 2 種 類 が 存 在 す る 。 本 研 究 で は 、 メ モ リ 応 用 を 目 的 と し て い る た め 、均 一 な フ ェ リ チ ン が 望 ま し い と い う 点 、ま た タ ン パ ク 質 接 合 部 位 を 持 つ と い う 点 か ら 、 遺 伝 子 工 学 的 に 作 製 し た L-サ ブ ユ ニ ッ ト の み か ら な る ア ポ フ ェ リ チ ン を 用 い て い る 。こ の ア ポ フ ェ リ チ ン に 水 溶 液 中 の Fe(Ⅱ )イ オ ン を 酸 化 活 性 部 位 に よ り Fe(Ⅲ )イ オ ン と し て 内 部 に 取 り 込 ま せ 、 直 径 7nm の Fe 2 ・ 5H 2 O コ ア を 持 つ Fe-fer8 を 作 製 し た 。 100mμ HEPES バ ッ フ ァ ー ( pH7.0、 溶 媒 : mili-W、 < 10 1 8 MΩ ) を 窒 素 で ① 10min 以 上 パ ー ジ し 溶 存 酸 素 を 除 去 し 、リ コ ン ビ ナ ン ト ア ポ フ ェ リ チ ン を 最 終 濃 度 が 0.5mg/ml に な る よ う に 加 え た 。 ② 硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム 鉄 を 最 終 濃 度 が 5mM に な る よ う に 加 え 、12 時 間 室 温 放 置 し フ ェ リ チ ン に Fe 原 子 を 内 包 さ せ た 。 ③ 3000rpm で 20 分 間 遠 心 さ せ 、 溶 液 中 の 酸 化 鉄 と リ コ ン ビ ナ ン ト フ ェ リ チ ンを分離するため、上清のみを分取し、チューブの底に酸化鉄の沈殿がみ られなくなるまで遠心分離を繰り返した。 6-2-2 ゲルろ過によるフェリチン単量体(モノマー)の採取 金属コア導入直後のフェリチン溶液には単量体フェリチンと多量体フェリチ ン や フ ェ リ チ ン が 崩 壊 し た も の が 混 在 し て い る 。そ こ で 、ゲ ル ろ 過( カ ラ ム ク ロ マトグラフィー)を用いて、フェリチンの単量体の採取をおこなった。 ゲ ル ろ 過 法 と は 、タ ン パ ク 質 を 分 子 量 の 大 き さ で 分 け る 手 法 で あ り 、分 子 量 の 差 に よ り 分 離 す る 方 法 で あ る 。 サ イ ズ 排 除 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( SEC : size exclusion chromatography)、 ゲ ル 浸 透 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( GPC: Gel permeation chromatography) と も 呼 ば れ る 。 ゲ ル 粒 子 は 網 目 構 造 で あ り 、 ゲ ル 粒 子 と タ ン パ ク 質 の 立 体 障 害 に よ り 、大 き い 分 子 は ゲ ル 粒 子 中 に 拡 散 が で き な い た め に 直 ち に 析 出 す る 。一 方 、小 さ い 分 子 は 立 体 障 害 が 少 な く ブ ラ ウ ン 運 動 で ゲ ル 流 市 中 を 自 由 に 拡 散 し 、網 目 構 造 の 奥 ま で 寄 り 道 な が ら 溶 出 す る こ と に な り 遅 れ て 溶 出 す る 。 網 目 の サ イ ズ に よ っ て 多 く の 種 類 が あ り 、目 的 と す る タ ン パ ク 質 の 分 子 量 に 応 じ 86 て 選 択 す る 。 今 回 ゲ ル 濾 過 用 の 溶 媒 と し て 、 50mM Tris (pH 8.0)の 緩 衝 液 を 脱 気 し た も の を 用 い た 。 カ ラ ム は Sepacryl S-300 HR (GE Healthcare)を 用 い 、 吸 光 度 測定用の光源には重水素ランプを用いた。 6-2-3 純水置換法 ゲルろ過法で採取されたフェリチンタンパク溶液に含まれるアルカリ金属イ オ ン ( Na) の 濃 度 を 最 小 限 に 抑 え る た め 、 フ ィ ル タ ー ( microcon, 50kDa) を 用 いた純水置換によって溶媒を純水に置換した。 ① フ ィ ル タ ー を 装 備 し た チ ュ ー ブ に フ ェ リ チ ン 溶 液 を 100μ l 入 れ た 後 、純 水 を 400μ l 入 れ 希 釈 し た 。 ② ① の チ ュ ー ブ を 遠 心 分 離 ( 7000rpm 2min) に か け て 液 量 を 100μ l ま で 濃 縮した。この時余分なバッファーはフィルターを通り抜けて除去される。 ③ ② を 濃 縮 後 、 純 水 を 400μ l 加 え 希 釈 し 、 そ の 後 ② と 同 様 に 濃 縮 し た 。 ② お よ び ③ を 10 回 繰 り 返 す こ と で Na イ オ ン の 濃 度 を nM オ ー ダ ー に 低 下 さ せた。 純水置換を終了後の得られたフェリチン溶液を高分解能型電子顕微鏡で観察 に よ り 、 フ ェ リ チ ン コ ア が 内 包 さ れ て い る こ と が 確 認 さ れ て い る [60]。 6-3 6-3-1 実験 APTES 修 飾 膜 を 利 用 し た フ ェ リ チ ン コ ア の 高 密 度 吸 着 フ ェ リ チ ン の SiO 2 酸 化 膜 上 へ の 高 密 度 吸 着 の た め に 、 基 板 と タ ン パ ク 質 間 の 静 電 相 互 作 用 を 利 用 し た 。本 研 究 で 使 用 し て い る ア ル カ リ 金 属 イ オ ン を 除 去 し た フ ェ リ チ ン の 溶 液 は 、負 の 表 面 電 位 を 持 つ こ と が 知 ら れ て い る 。一 方 、タ ン パ ク 質 を 塗 付 し た い SiO 2 表 面 も 負 の 表 面 電 位 を 持 つ こ と が 知 ら れ て い る [ 7 7 ] 。 そ の た め 、フ ェ リ チ ン 粒 子 と 基 板 の 表 面 の 間 に は 静 電 的 な 反 発 力 が 働 い て 吸 着 は 抑 制 さ れ る 。吸 着 さ せ る た め に は 、フ ェ リ チ ン か 基 板 の 表 面 の ど ち ら か に 正 の 電 荷 を 導 87 入し、フェリチンと基板の間に静電的な引力が働くようにする必要がある(図 6-2)。 そ こ で 、 ア ミ ノ シ ラ ン 材 と し て APTES( 3-aminopropyltriethoxysilane) を 用 い 、 気 相 で 基 板 表 面 に シ ラ ン 化 反 応 さ せ る 、 蒸 気 法 APTES 処 理 に よ る 基 板 表 面修飾を行った。 Si SiO2 OH OH OH OH + EtO EtO EtO CH2 CH2 NH2 CH Si 基板 2 Repulsion APTES Ferritin Attraction 蒸発 Si SiO2 O EtO CH CH2 2 + O Si CH2 NH3 O OH + SiO2 + + APTES 図 6-2. 蒸 気 法 APTES 表 面 修 飾 処 理 さ ら に 高 密 度 吸 着 の た め に は 、基 板 と の 表 面 電 位 の ほ か に フ ェ リ チ ン 間 の 反 発 を抑える必要がある。そこで、フェリチン間の反発を抑えるため。 MES( 2-N-morpholino ethanesulfonic acid)お よ び Tris (2-Amino-2-hydroxymethyl-1, 3-propanediol)の 混 合 液 を 緩 衝 剤 と し て 用 い た 。 今 回 用 い た 緩 衝 剤 の イ オ ン 強 度 は ど ち ら も 約 5mM と し た 。 そ の プ ロ セ ス フ ロ ー を 図 6-3 に 示 す 。 ① こ れ ま で と 同 様 に 、ト ン ネ ル 酸 化 膜 と し て TEOS-SiO 2 を 堆 積 さ せ た 後 、 110℃ 10 分 間 UV/O 3 処 理 を 行 い 、表 面 に 吸 着 し た 有 機 汚 染 物 質 を 除 去 お よ び清浄化した。 ② APTES に よ る 基 板 修 飾 を 行 う た め 、基 板 と 少 量 の ARTES と 共 に 密 封 容 器 に 入 れ 、 室 温 で 3 時 間 放 置 し 、 SiO 2 表 面 と APTES 分 子 を 反 応 さ せ た 。 3 時 間 後 、脱 水 エ タ ノ ー ル で 3 回 洗 浄 後 、純 粋 洗 浄 を 行 い 窒 素 ブ ロ ー に よ って基板を乾燥させた。 ③ MES お よ び Tris を 入 れ pH7 に 調 節 さ れ た 濃 度 2mg/ml フ ェ リ チ ン を 、 ATPES が 塗 付 さ れ た 基 板 の 上 に 吸 着 さ せ 、1 分 間 放 置 後 、純 水 で リ ン ス し 88 窒 素 ブ ロ ー で 乾 燥 後 、 UV/O 3 装 置 に 入 れ 110 ℃ 10 分 間 UV 光 を 照 射 し ATPES と 外 殻 タ ン パ ク を 除 去 し た 。 ④ フ ェ リ チ ン コ ア の 密 度 や 粒 径 を SEM に よ っ て 観 察 し 、 コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 を 堆 積 し た サ ン プ ル の 断 面 を TEM に よ り 測 定 し た 。 UV/O3 ・ RCA 洗 浄 ・ 脱水エタノール洗浄 APTES 蒸 着 ・ TEOS-SiO2 膜 の 形 成 ・ 純水洗浄 UV/O3 コントロール酸化膜堆積 ・ フェリチン吸着 ( 20nm) ・ 外殻タンパク除去 図 6-3. フ ェ リ チ ン コ ア 吸 着 プ ロ セ ス 6-3-2 フェリチンコアの形状評価 外 殻 タ ン パ ク 除 去 後 の SEM 像 と TEM 像 を 図 6-4( a)お よ び( b)に 示 す 。SEM に よ る 評 価 に お い て 、 Si ド ッ ト の 密 度 よ り も 少 し 劣 る が 、 粒 径 が 均 一 な 球 状 の フ ェ リ チ ン コ ア が 観 察 さ れ 、高 密 度 に ド ッ ト が 形 成 さ れ て い る こ と が 分 か る 。こ の 密 度 は 3.2×10 11 /cm 2 で あ り 、 単 結 晶 Si 基 板 を ド ラ イ 酸 化 に よ っ て 作 製 し た 熱 酸 化 膜 上 や 、 High-k 膜 上 に 形 成 し た フ ェ リ チ ン コ ア の 密 度 と ほ ぼ 一 致 す る [ 7 8 ] 。 断 面 TEM 像 よ り フ ェ リ チ ン コ ア の 直 径 は 7nm で あ り 、隣 接 す る ド ッ ト ど う し は 孤 立 し て い る 。ま た コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 堆 積 時 に プ ラ ズ マ 照 射 を 行 っ て も 、ド ッ ト の 球 状 は 保 た れ て い る こ と か ら 、プ ラ ズ マ に よ る コ ア の 破 壊 な ど は 見 ら れ な 89 かった。 ( a) ( b) 100nm 図 6-4. (a) フ ェ リ チ ン コ ア の SEM像 (b)TEM像 UV/O 3 処 理 を 用 い て 外 殻 タ ン パ ク と ATPES が 完 全 に 除 去 し て い る か を XPS に よ っ て 測 定 し た 。そ の 結 果 を 図 6-5 に 示 す 。除 去 で き て い る か の 有 無 は N1s ピ ー ク を 測 定 す る こ と で 分 か る 。UV/O 3 を 行 っ て い な い 場 合 で は 、N1s の 396~ 399eV の 間 に 大 き な ピ ー ク が 見 ら れ る が 、UV/O 3 を 照 射 し た 後 の 場 合 で は ピ ー ク が な く な っ て い る こ と か ら 、外 殻 タ ン パ ク お よ び APTES は UV/O 3 照 射 を 行 う こ と で 除 去されていることが分かった。 Intensity [Arb.units] ○除去前 N1s ●除去後 401 400 399 398 397 396 395 Binding Energy [eV] 図 6-5. 6-3-3 タ ン パ ク 除 去 前 後 の XPS 測 定 結 果 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 前 章 で 確 立 し た 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 技 術 を 用 い て 、フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 を 以 下 の プ ロ セ ス で 作 製 し た 。そ の プ ロ セ ス フ ロ ー を 90 図 6-6 に 示 す 。ド ッ ト の 形 成 方 法 の み が 前 章 と 異 な る た め 、プ ロ セ ス フ ロ ー の み の 説 明 と す る 。ま た 、ド ッ ト の 埋 め 込 ま れ て い な い TFT( 積 層 膜 低 温 poly-Si TFT) を比較のため作製した。 Si(50nm) SiO2(100nm) Si LPCVD よ る a-Si 堆 積 ・ TEOS-SiO2 堆 積 ( 10nm) ・ SPC に よ る 結 晶 化 ・ RIE に よ り 活 性 層 作 製 P+ SiO2(3nm) UV/O3 Al n+ n+ n+ n+ n+ ・ Al マ ス ク 形 成 ・ APTES 蒸 着 ・ イオン注入(リン) ・ フェリチン吸着 ・ 活 性 化 ア ニ ー ル( 600℃ -1h) n+ n+ n+ コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 形 成 ( 20nm) n+ ・ 外殻タンパク除去 ( 110℃ -40 分 ) n+ Ti 電 極 蒸 着 PMA 図 6-6. フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の プ ロ セ ス フ ロ ー 6-3-4 入力特性評価 積 層 膜 低 温 poly-Si TFT と フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 入 力 特 性 の 評 価 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 6-7( a) お よ び ( b) に 示 す 。 こ れ ま で と 同 様 に 積 層 低 温 poly-Si TFT は 掃 引 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト は み ら れ な か っ た が 、 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ に つ い て は 、 掃 引 に よ り し き い 値 電 圧 は 負 91 バ イ ア ス 側 に シ フ ト し 、そ の シ フ ト 量 は 最 大 で 約 2V で あ っ た 。こ れ は 、Si ド ッ ト を 用 い た 場 合 の シ フ ト 量 よ り 小 さ い が 、密 度 が 低 い こ と や 、プ ラ ズ マ ダ メ ー ジ の低下によりダングリングボンドへのトラップの量が減ったためであると考え ら れ る 。さ ら に 、off 電 流 が Si ド ッ ト の 時 と 比 べ 一 桁 小 さ い こ と か ら 、プ ラ ズ マ ダメージの低減が示唆される。 今 回 の 測 定 結 果 で は Si ド ッ ト の 場 合 と 異 な り 、 立 ち 上 が り と 立 ち 下 り で し き い 値 電 圧 シ フ ト が 平 行 シ フ ト し な か っ た 。こ れ は 、フ ェ リ チ ン コ ア を 埋 め 込 ん だ 後 、 400℃ 程 度 の 水 素 ガ ス 中 で 5 分 以 上 の ア ニ ー ル を 行 う こ と で Fe 2 O 3 で あ る フ ェ リ チ ン コ ア が 還 元 さ れ 、 XPS 測 定 か ら Fe 2 O 3 と Fe の ド ッ ト が 混 合 し た よ う な 状 態 と な る [79]。 こ の 二 つ の バ ン ド 構 造 の 違 い が シ フ ト 量 に 大 き く 影 響 を 及 ぼ し て い る 。図 6-8( a)に Fe 2 O 3 の バ ン ド 構 造( b)に Fe の バ ン ド 構 造 を 示 し 、ド ッ ト間の相互作用は無いものと考え、単純化することで考察を行った。 Fe の 場 合 、 先 に 示 し た よ う に 、 Fe の 導 電 帯 は Si 基 板 の 導 電 帯 よ り 低 い エ ネ ル ギ ー 準 位 を 持 つ た め 低 電 圧 で 電 子 注 入 を 行 う こ と が で き る 。 し か し 、 Fe 2 O 3 の 場 合 Fe に 比 べ て 仕 事 関 数 が 5.78eV と 非 常 に 大 き く 、ゲ ー ト 電 圧 0V に お い て 1.18eV の バ ン ド の 曲 が り が 見 ら れ る 。そ の た め Fe 2 O 3 に 電 子 を 注 入 す る 場 合 、Fe に 比 べ 反 転 層 形 成 に 高 い 電 圧 を 必 要 と す る 。す な わ ち 、こ の シ フ ト は 電 子 が 注 入 さ れ や す い Fe か ら 注 入 が 起 こ り 、さ ら に 電 圧 を 高 く し て い く と 、Fe 2 O 3 に も 注 入 さ れ る ため、このようなシフト量の変化がみられたものと考えられる。 今 後 低 電 圧 駆 動 の メ モ リ 応 用 を 考 え る と 、 低 電 圧 で 注 入 可 能 な Fe の み の ド ッ ト の 形 成 が 必 要 と な る 。現 在 水 素 雰 囲 気 中 で 800℃ 以 上 の 高 温 で 還 元 す る こ と で 、 ほ ぼ 完 全 に Fe に な る こ と が 知 ら れ て い る が 、 こ の プ ロ セ ス は 低 温 poly-Si プ ロ セスには適しておらず、実メモリを考える上で低温還元は今後の課題である。 10 . -6 10 -7 10 -8 10-5 Room temperature W/L=50μm/10μm Vd=50mV 10-9 Drain current(A) Drain current(A) 10-5 ( a) 10-10 10-11 10-12 -5 0 5 Gate bias(V) 10 10 -6 10 -7 Room temperature W/L=50μm/10μm Vd=50mV 10-8 10-9 ( b) 10-10 10-11 10-12 -5 0 5 Gate bias(V) 図 6-7. 入 力 特 性 (a)積 層 膜 TFT(b)フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ 92 10 ( b) ( a) Eac 4.5eV 5.73eV Eac 4.05eV 4.05eV 0.1eV 1.1eV 1.18eV 1.1eV 0.1eV Ec EF Ev Ec EF Ev Si基板 Si基板 コア(Fe) コア(Fe3O4) 図 6-8. バ ン ド 構 造 (a)Fe 2 O 3 (b)Fe 更 に 図 6-9 に 示 す よ う に 、掃 印 す る 電 圧 を 正 方 向 に 増 や し 注 入 量 を 増 加 さ せ る と 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 も 正 方 向 に 増 加 し 、そ の シ フ ト 量 は 8V で ほ ぼ 飽 和 す る 。 ま た 3V と い う こ れ ま で と 比 べ て 低 電 圧 で 、 約 1V の 大 き な し き い 値 電 圧 の シ フ ト が 見 ら れ 、 Si ド ッ ト を 用 い た 場 合 よ り も 低 電 圧 で 動 作 し 、 こ の 結 果 も バンド構造の考察を支持するものである。 Drain current(A) 10-5 10 -6 10 -7 Room temperature W/L=50μm/10μm Vd=50mV 10-8 10-9 10-10 ● -5V~10V ○ -5V~8V △ -5V~5V ■ -5V~3V 10-11 10-12 -5 0 5 Gate bias(V) 10 図 6-9.フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 電 圧 幅 依 存 性 次 に 第 2 章 の 式 ( 2-12) か ら す べ て の ド ッ ト が Fe 2 O 3 の 場 合 の 、 1 つ の 電 子 が 保 持 さ れ た 時 の 、 し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 の 理 論 値 を 計 算 し た 。 ま た 、 Fe の 誘 電 率 は 明 ら か と な っ て い な い た め 、 Fe 2 O 3 の み の 計 算 と し た 。 93 計算 フ ェ リ チ ン コ ア の 密 度 3.2×10 11 /cm 2 ( SEM 像 よ り ) フ ェ リ チ ン コ ア の 直 径 7 nm( TEM よ り ) コ ン ト ロ ー ル 酸 化 膜 厚 20 nm 電荷素量 1.6×10 - 1 9 C Fe 2 O 3 の 誘 電 率 14 酸 化 膜 の 誘 電 率 3.9 真 空 の 誘 電 率 8.85×10 - 1 2 F/m 1.60 × 10 −19 × 3.2 × 10 −11 ΔV = 3.5 × 10 −13 ⎛ ⎞ 1 3.5 × 10 −13 −6 ⎜⎜ 20 × 10 + × × 7 × 10 − 6 ⎟⎟ = 0.31V −12 2 1.2 × 10 ⎝ ⎠ 上記の計算結果より、フェリチンコア間での電子注入による影響がない場合、 031V の シ フ ト が み ら れ る 。 こ れ ま で 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 よ り 1 ド ッ ト に 保 持 さ れ て い る 電 子 の 数 を 計 算 し て き た が 、 こ の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 は Fe へ の 電 子 注 入 と 正 孔 注 入 に よ る シ フ ト 量 を 含 ま れ る た め 、今 回 1 ド ッ ト あ た り の 電 子 の 数 の 算 出 は 行 わ な か った。 6-3-5 クーロンブロッケードについて 2 章 で 行 っ た 場 合 と 同 様 に 、今 回 用 い た フ ェ リ チ ン コ ア に つ い て 室 温 で ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド の 起 こ る サ イ ズ と 、現 在 の ド ッ ト サ イ ズ で の ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ドが起こる温度を計算した。 計算 フ ェ リ チ ン コ ア の 直 径 7 nm( TEM よ り ) 電荷素量 1.6×10 - 1 9 C 酸 化 膜 の 誘 電 率 14 真 空 の 誘 電 率 8.85×10 - 1 2 F/m 94 ボルツマン定数 K 1.38×10 - 2 3 1V= 6.24×10 1 8 eV ( ) 2 1.6 ×10 −19 e2 e2 = = E= = 2.35 ×10 − 21 V = 14.7meV −12 −9 2C 8πε 0 ε Fe 2O 3 r 8 × 3.14 × 8.85 ×10 ×14 × 3.5 ×10 e2 T = 2 CK 2 . 35 × 10 = 1 . 38 × 10 − 21 23 = 170 K = − 103 o C こ の 結 果 よ り の す べ て の ド ッ ト が Fe 2 O 3 の 場 合 、計 算 上 で は -103℃ ま で 冷 却 す る こ と で ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド が お こ る 。逆 に 室 温 で ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド を 起 こ す 場 合 で は 4nm 以 下 の ド ッ ト 粒 径 が 必 要 と な る 。 こ の 計 算 結 果 お よ び 図 6-9 に 示 し た 入 力 特 性 の ゲ ー ト 電 圧 幅 依 存 性 に お い て 、今 回 の 電 圧 幅 を 大 き く す る に つ れ し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 も 増 加 し て い る こ と か ら 、ク ー ロ ン ブ ロ ッ ケ ー ド は 観測できなかったものといえる。 6-3-6 リテンションタイムの測定 こ れ ま で と 同 様 に ±5V の 電 圧 を 30s 印 加 し て 書 き 込 み 消 去 を 行 い 、 読 み 出 し 電 圧 0.5V で リ テ ン シ ョ ン タ イ ム を 測 定 し た 。 フ ロ ー テ ィ ン グ ゲ ー ト に フ ェ リ チ ン を 用 い た 場 合 と 、 前 章 の Si ド ッ ト を 用 い た 場 合 と 比 較 を お こ な っ た 。 そ の 結 果 を 図 6-10 に 示 す 。 Si ド ッ ト を 用 い た 場 合 で は 、 リ テ ン シ ョ ン タ イ ム は 約 350 秒 で あ っ た が 、フ ェ リ チ ン コ ア を 用 い た 場 合 で は 、1200s で も メ モ リ ウ イ ン ド が み ら れ 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 大 幅 に 向 上 し た 。こ れ は 、ド ッ ト 形 成 時 の ト ン ネ ル 酸 化 膜 へ の ダ メ ー ジ が 小 さ い た め 、 電 子 の リ ー ク が Si ド ッ ト に 比 べ 小 さ く 、 更 に 金 属 ド ッ ト を 用 い た こ と に よ り 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 向 上 し た も の と 考 え られる。 こ の 結 果 は 、 ト ン ネ ル 酸 化 膜 に CVD 膜 を 用 い た メ モ リ に お い て 、 高 圧 水 蒸 気 処理のような後処理を行わなくても長時間のリテンションタイムを実現できる ことを示している。 95 DRAIN CURRENT(A) 10-9 Read Vg=0.5V Ferritin 10-10 Vd=50mV After Erasing at Vg=-5V 30s Si dot After writing at Vg=+5V 30s 200 400 600 800 Time(s) 1000 1200 図 6-10. リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 測 定 6-3-7 書き込み消去特性評価 良 好 な リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 得 ら れ た こ と か ら 、更 に 詳 し く メ モ リ 特 性 を 評 価 す る た め 。書 き 込 み 消 去 速 度 の 測 定 を 行 っ た 。そ の 結 果 を 図 6-11( a)お よ び( b) に 示 す 。 書 き 込 み 速 度 は 、 -5V の ゲ ー ト 電 圧 を 1s 間 印 加 し 、 ド ッ ト に 注 入 さ れ る 電 子 を す べ て 放 出 後 、各 正 の ゲ ー ト 電 圧 を パ ル ス 印 加 し 、そ の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 が 、 -10V の 電 圧 を 1 秒 間 充 電 し た 時 の し き い 値 電 圧 に な る ま で の 、 時 間 を 測 定 し た 。ゲ ー ト 電 圧 を 高 く す る に つ れ て 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト の 変 化 量 は 大 き く な り 、 1ms~ 1s で 書 き 込 み が 行 わ れ る こ と が わ か っ た 。 消 去 速 度 は 、 書 き 込 み の 場 合 と 逆 に な り 、 10V の ゲ ー ト 電 圧 を 1s 間 印 加 し 、 ド ッ ト に 電 子 を 注 入 後 、各 負 の ゲ ー ト 電 圧 を パ ル ス 印 加 し 、そ の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 が 、-5V の ゲ ー ト 電 圧 を 1 秒 間 放 電 し た 時 の し き い 値 電 圧 に な る ま で の 消 去 時 間 を 測 定 し た 。書 き 込 み の 測 定 と 同 様 に 、ゲ ー ト 電 圧 を 高 く す る に つ れ て し き い 値 電 圧 の シ フ ト の 変 化 量 は 大 き く な り 、1ms~ 1s で 書 き 込 み が 行 わ れ る こ とがわかった。 書き込み消去速度はゲート電圧やトンネル酸化膜およびコントロール酸化膜 の 膜 厚 に 依 存 す る 。こ の 構 造 の 場 合 は ms オ ー ダ ー で あ り 目 標 値 で あ る 1s 以 下 を 達 成 で き た 。 ま た 、さ ら に 薄 膜 化 な ど を 行 う こ と で μ s オ ー ダ ー の メ モ リ を 作 製 可 能 で あ り 、そ の 用 途 に よ っ て 構 造 を 変 え て い く こ と が 必 要 で あ る 。こ の こ と か ら 、 フ ェ リ チ ン を 用 い た 低 温 poly-Si TFT メ モ リ に お い て も 、 従 来 の メ モ リ に 近 いスピードが得られたといえる。 96 0 Program Vg=10V 1s Vd=50mV Initial ( a) 0.3 ● Vg=9V, Vd=50mV △ Vg=10V, Vd=50mV ○ Vg=11V, Vd=50mV 0.2 0.1 10-6 10-5 10-4 10-3 Program time(s) 10-2 Vth shift(V) 0.4 -0.2 ( b) -0.4 ● Vg=-5V, Vd=50mV △ Vg=-6V, Vd=50mV ○ Vg=-7V, Vd=50mV Initial 10-1 -0.6 -6 10 10-5 10-4 10-3 Erase time (s) 10-2 10-1 図 6-11. (a)書 き 込 み 速 度 測 定 (b)消 去 速 度 測 定 6-3-8 信頼性評価 信 頼 性 評 価 の た め ±10V の 電 圧 を パ ル ス 幅 1ms で 書 き 込 み 消 去 を 繰 り 返 し 、そ の 時 の し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 か ら 信 頼 性 を 評 価 し た 。 そ の 結 果 を 図 6-12 に 示 す 。書 き 込 み 消 去 を 10 4 回 繰 り 返 す と 、書 き 込 み 側 で 僅 か な し き い 値 電 圧 の 変 化 は あ る も の の 、 10 4 回 繰 り 返 し て も メ モ リ ウ イ ン ド は 維 持 さ れ て い る 。 目 標 値 で ある 1 万回の書き込み消去後しきい値電圧のシフト量を維持していることから、 高 い 信 頼 性 を 示 し て い る と 言 え る 。消 去 側 で し き い 値 電 圧 の シ フ ト が 負 方 向 に な るのは、負電圧印加による正孔注入によるものと考えられる。 こ の 結 果 は ト ン ネ ル 酸 化 膜 の 高 い 信 頼 性 を 持 ち 、シ ス テ ム オ ン パ ネ ル に 使 用 可 能なメモリであることがいえる。 3 Vg=±10V pulse 1ms Voltage shift (V) Vth shift(V) 0.5 Erase Vg=-5V 1s, Vd=50mV 2 write 1 Memory window 0 -1 -2 0 10 Erase 101 102 103 104 Number of cycles 図 6-12. 信 頼 性 評 価 97 105 6-4 6-4-1 高 密 度 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ はじめに 第 4 章 に お い て 、 Si ド ッ ト を 積 層 に す る こ と で リ テ ン シ ョ ン タ イ ム や し き い 値 電 圧 幅 が 向 上 す る こ と が 分 か っ た 。CVD に よ る Si ド ッ ト の 形 成 メ カ ニ ズ ム は 、 基 板 上 に ラ ン ダ ム に 発 生 し た 結 晶 核 に Si が マ イ グ レ ー シ ョ ン し 、 結 晶 核 に 集 ま る こ と で ド ッ ト を 形 成 す る [58]。 す な わ ち 、 ド ッ ト の 上 部 に 結 晶 核 を 作 る こ と や マ イ グ レ ー シ ョ ン が 起 こ ら ず 、堆 積 時 間 を 長 く し て も ド ッ ト を 積 層 に す る こ と は で き な い 。そ の た め Si ド ッ ト の 単 層 を 形 成 し 、SiO 2 に 埋 め 込 み 再 度 Si ド ッ ト を 形 成 す る 方 法 を 用 い て 積 層 構 造 を 作 製 し た 。し か し フ ェ リ チ ン の 場 合 、元 々 が フ ェ リ チ ン と い う 分 子 で あ る た め 、フ ェ リ チ ン と フ ェ リ チ ン 間 の 相 互 作 用 に よ っ て 、 フ ェ リ チ ン の 上 部 に も ド ッ ト の 形 成 が 可 能 と な る た め 、フ ェ リ チ ン を 塗 付 す る だ け で 積 層 構 造 が 作 製 で き 、ヒ ス テ リ シ ス 幅 や リ テ ン シ ョ ン タ イ ム が 向 上 す る は ず である。 そ こ で 、フ ェ リ チ ン コ ア を 積 層 構 造 に す る こ と で の 特 性 向 上 を 目 指 し 、超 高 密 度 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 作 製 を 試 み た 。 実 際 に は フ ェ リ チ ン と フ ェ リ チ ン の 強 い 負 の 反 発 力 を 緩 和 す る た め 、 MES お よ び Tris を 入 れ pH7 に 調 節 さ れ た 濃 度 2mg/ml フ ェ リ チ ン を 用 い て 、ATPES を 用 い ず リ ン ス を 行 わ な い で高密度のドットを形成した。 6-4-2 高密度フェリチンコアの密度評価 APTES を 用 い た 場 合 と 用 い な い 場 合 の 外 殻 タ ン パ ク 除 去 後 の フ ェ リ チ ン コ ア の SEM 像 を 図 6-13( a)お よ び( b)に 示 す 。APTES を 用 い な い 場 合 、単 層 構 造 の 場 合 に 比 べ 大 幅 に ド ッ ト の 密 度 が 向 上 し て い る こ と が 分 か る 。コ ア は 孤 立 し て い る の で は な く 接 し て い る よ う な 状 態 で あ る 。こ の 時 の 密 度 は 積 層 構 造 の た め 見 積もることができなかったが、かなりの高密度であると言える。 98 ( a) 100nm 100nm 図 6-13. SEM 像 (a)APTES あ り (b)APTES な し 6-4-3 高 密 度 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 入 力 特 性 高 密 度 フ ェ リ チ ン コ ア 低 温 poly-Si TFT メ モ リ の 入 力 特 性 評 価 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 6-14 に 示 す 。 こ れ ま で と 同 様 に 、 ゲ ー ト 電 圧 を Vg=-5V か ら 正 方 向 に 掃 引 を 行 う と 、単 層 型 に 比 べ 大 き な し き い 値 電 圧 の シ フ ト が 得 ら れ た 。こ れ は ド ッ ト 密 度 の 向 上 に よ る し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 が 増 加 し た も の と 考 え ら れ る 。ま た 矢 印 で 示 す よ う な 、立 下 り と 立 ち 上 が り の 両 方 の ド レ イ ン 電 流 に 数 段 階 の シ フ ト が 見 ら れ た 。 立 ち 上 が り の ド レ イ ン 電 流 の 変 化 は Si ド ッ ト を 積 層 と し た 場 合 の 結 果 か ら 考 え る と 、1 層 目 へ の 注 入 と 2 段 目 の 注 入 に よ る 多 段 階 注 入 に よ る も の と 考 え ら れ る 。こ の 場 合 、数 段 階 の 注 入 が 見 ら れ る た め 隣 接 す る ド ッ ト 間 の 電 子 移 動 が 考 え ら れ る 。ま た 、立 ち 下 が り の ド レ イ ン 電 流 に 数 段 階 の 放 出 が 見 ら れ 、 ドット 1 つの周囲にあるドットの数が影響するものと考えられる。 DRAIN CURRENT(A) 10-5 10 -6 10 -7 Room temperature W/L=50μm/20μm Vd=50mV 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 -5 0 5 GATE BIAS(V) 図 6-14. 入 力 特 性 99 10 リテンションタイムの測定 6-4-4 こ れ ま で と 同 様 に ±5V の 電 圧 を 30s 印 加 し て 書 き 込 み 消 去 を 行 い 、 読 み 出 し 電 圧 0.5V で リ テ ン シ ョ ン タ イ ム を 測 定 し た 。 高 密 度 に 配 置 し た フ ェ リ チ ン を 用 い た 場 合 と 、こ れ ま で の 密 度 を 用 い た 場 合 と 比 較 を お こ な っ た 。こ の 二 つ の 比 較 は 図 6-15( a)に 示 す よ う に ド レ イ ン 電 流 に 差 が あ る た め 、 単 純 な 比 較 で は な く メ モ リ ウ イ ン ド の 幅 の 時 間 経 過 に よ る 減 少 を 比 較 し た 。 そ の 結 果 を 図 6-15( b) に 示 す 。フ ェ リ チ ン を 高 密 度 に す る こ と に よ っ て 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム の 向 上 が 予 測 さ れ て い た が 、測 定 開 始 直 後 は 積 層 構 造 の 方 が 電 子 の 放 電 量 が 多 い が 、時 間 が 経 過 す る と 、ウ イ ン ド の 幅 の 傾 き は 両 方 と も ほ ぼ 変 わ ら な い こ と か ら 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム に つ い て は 積 層 構 造 に よ る 効 果 は 見 ら れ な か っ た 。こ れ ま で の 結 果 か ら 考 察 を 行 う と 、ド ッ ト の 密 度 が 増 加 す る と ヒ ス テ リ シ ス 幅 が 増 大 し 、密 度 依 存 性 が み ら れ る が 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム に つ い て は ド ッ ト 密 度 に 依 存 し な い こ と Drain current(A) 10-9 ( a) single 10-10 Memory window stack 10 -11 Memory window 500 Time(s) Width of memory window が明らかになった。 1000 Read Vg=0.5V Vd=50mV ( b) single Stack 100 101 102 103 Time(s) 図 6-15. (a)ド レ イ ン 電 流 の 経 時 変 化 (b)メ モ リ ウ イ ン ド の 経 時 変 化 6-5 まとめ 本章では世界で初めてフェリチンコアをフローティングゲートとした低温 poly-Si TFT メ モ リ の 動 作 に 成 功 し た 。こ の 方 法 は 従 来 の Si ド ッ ト を 用 い た 場 合 に く ら べ 、低 温 で ト ン ネ ル 酸 化 膜 に ダ メ ー ジ が 少 な く ド ッ ト を 形 成 す る こ と が 可 能 で あ る 。さ ら に 金 属 ド ッ ト を 高 密 度 で 形 成 し 、低 電 圧 動 作 や リ テ ン シ ョ ン タ イ ム な ど の メ モ リ 特 性 の 大 幅 な 向 上 に 成 功 し た 。 ま た 、 ト ン ネ ル 酸 化 膜 に CVD 酸 100 化 膜 を 用 い た 場 合 で も 信 頼 性 は 非 常 に 高 く 、書 き 込 み 消 去 特 性 も 良 い 特 性 を 示 し た 。し か し 、メ モ リ 作 製 後 の 水 素 ア ニ ー ル 処 理 に よ り フ ェ リ チ ン コ ア が 還 元 さ れ 、 Fe 2 O 3 と Fe を 主 成 分 と す る ド ッ ト が 混 在 し 、し き い 値 電 圧 の シ フ ト が 平 行 シ フ ト し な か っ た 。現 在 800℃ 以 上 の 高 温 処 理 に よ る 還 元 方 法 が 確 立 さ れ て い る が 、今 後低温でのコアの還元が課題となる。 フ ェ リ チ ン は そ の 濃 度 と 、 緩 衝 材 や ATPES の よ う な 修 飾 膜 を 用 い る こ と で 、 ド ッ ト 密 度 の 調 節 が 可 能 で あ る 。そ の 特 徴 を 利 用 し て 超 高 密 度 の ド ッ ト を 形 成 し た と こ ろ 、立 ち 上 が り 立 下 り に 多 段 階 の ド レ イ ン 電 流 の 変 化 が み ら れ 、ヒ ス テ リ シ ス の 幅 は 大 き く 向 上 す る も の の 、リ テ ン シ ョ ン タ イ ム に 変 化 は 見 ら れ な か っ た 。 こ の こ と か ら し き い 値 電 圧 の シ フ ト 量 は ド ッ ト 密 度 に 依 存 す る も の の 、リ テ ン シ ョンタイムはドットの密度に依存しないことが分かった。 これらの結果はシステムオンパネル搭載可能なメモリとして非常に有望な技 術であるといえる。 101 第7章 結論 本研究では、低温プロセスを用いてシステムオンパネルに搭載可能なフェリチンコア 低温 poly-Si TFT メモリの研究を行ってきた。実際に Si ドットをフローティングゲー トとした、ドット型フラッシュメモリを作製し、その入力特性やリテンションタイムよ りその評価技術を確立した。 MOS キャパシタ構造や MOSFET 構造から測定した C-V 特性や入力特性から、ドッ トへの電子の充放電がみられ、新規堆積法用いたメモリ作製に成功した。さらに、周波 数依存性や一定のゲート電圧を印加しながらドレイン電流の時間変化を測定し、ドット への注入機構の詳細な解析をおこなった。ドットのばらつきやコントロール酸化膜厚に よるしきい値電圧のシフト量への影響を調べた。また Si ドットを積層構造にすること でメモリ特性の大幅な向上に成功した。 これまでの技術を低温 poly-Si TFT に応用し、トンネル酸化膜に低温形成された TEOS-SiO2 を用いて Si ドット低温 poly-Si TFT メモリを作製した。プラズマダメージ によりリテンションタイムが大幅に低下したが、高圧水蒸気処理によって特性が向上す ることがわかった。 フェリチンコアを用いた場合、金属ドットを用いていることと、トンネル酸化膜への ダメージが低減できることにより、入力特性やリテンションタイムにおいて、従来の Si ドットの場合に比べ大幅に特性の向上に成功した。 7-1 本論分の主要結果 ① Side-Wall 電極型 PECVD 法を用いて Si ドットをこれまでに比べ低温で形 成し、メモリへの応用に成功した Side-Wall 電極型 PECVD 法により Si ドットを低温で約 8.5×1011/cm2 の高密度 で形成することに成功し、この Si ドットをフローティングゲートにした MOSFET を用いてメモリ特性を評価したところ、低電圧でドットの充放電を示す掃引による しきい値電圧のシフトが現れた。リテンションタイムは 1200 秒以上であり、この手 法を用いたメモリがドット型フラッシュメモリ作製技術に有望であること示した。 102 ② Si ドットのばらつきによる影響は小さい SEM や TEM などの Si ドットの形状にばらつきが見られたが、3nm と 8nm の粒径 のばらつきがあっても、しきい値電圧のシフト量は 0.03V の変化のみで、ほとんど影 響がないことが分かった。しかし、コントロール酸化膜厚やドットの密度には大きく影 響することが分かった。 ③ Si ドットを積層にすることでメモリ特性が向上 ドットを積層構造にすることで入力特性に多段階のドレイン電流の変化がみられ、 多値メモリへの応用が可能であることを示した。単層のメモリに比べしきい値電圧のシ フト量は増大し、特にリテンションタイムについてはトンネル酸化膜厚を厚くすること なく約 10 倍向上した。 ④ 高圧水蒸気処理を行うことで Si ドット低温 poly-Si TFT メモリの特性が向 上した これまで、信頼性の観点から低温 poly-Si TFT メモリがほとんど研究されていなかっ たが、TEOS-SiO2 をトンネル酸化膜に用いることで低温 poly-Si TFT メモリの作製を 行った。メモリ特性評価から Si ドット形成時のトンネル酸化膜へのダメージがみられ、 リテンションタイムや OFF 電流が単結晶 Si 基板を用いた場合に比べ大きく低下した。 しかし、高圧水蒸気処理を行うことによって特性が大幅に向上し、特にリテンションタ イムは単結晶 Si 基板を用いた場合よりも向上し、Si ドット低温 poly-Si TFT メモリの メモリ特性を向上させることができた。 ⑤ フェリチンコア低温 poly-Si TFT メモリの作製に世界で初めて成功し、Si ドットを用いた場合よりも初期状態で大幅に特性が向上した フェリチンコアを用いることで、粒径が均一な鉄ナノドットをトンネル酸化膜へダメ ージを小さく形成することに成功した。その特性は Si ドットの場合にくらべ、-5V か 103 ら 3V での低電圧においてもしきい値電圧のシフトが現れ、リテンションタイムも大幅 に向上した。信頼性評価や書き込み消去速度測定などメモリ特性の詳細な解析からフェ リチンコアを用いることで低温 poly-Si TFT メモリも従来型と同様な特性を示す可能 性を示し、さらにシステムオンパネル搭載可能なメモリとして有望であることを示した。 7-2 今後の課題と指針 本研究ではフェリチンコアを用いることで従来の Si ドットを用いたメモリに比べメ モリ特性が向上し、ドット型低温 poly-Si TFT メモリ実現の可能性を示した。 フェリチンコア低温 poly-Si TFT メモリの実用化を考える上で、しきい値電圧のシフ ト幅に平行シフトせずばらつきがみられたように、低温でのコアの還元が課題である。 これまで Si ドット低温 poly-Si TFT メモリの高圧水蒸気処理を行うことで、低温で特 性向上が可能であることを報告した。この技術を応用しコアの低温還元が行えるのでは ないかと考えている。 コア密度についても非常に重要な課題であり、これまでフェリチンよりも更に小さい リステリアフェリチンを用いて 1012 オーダーの高密度でのメモリ特性評価が報告され ている。このフェリチンを用いることで更に密度の高いメモリを作製する。また、ドッ トの粒径が小さくなることから量子サイズ効果も見え始めるため、クーロンブロッケー ロなどの量子効果も検討する。サイズ効果の知見が得られれば、逆に低密度にすること で、単電子トランジスタや単電子メモリの作製も可能であると考えている。 素子構造においても更なる微細化を目指し、LDD 構造や FinFET 構造などの新構造 や High-k 膜などの新材料の導入によるメモリ特性向上が期待できる。 最後にフェリチンコアを用いることで、更なる特性向上やブレイクスルーが起き、新 しい原理や構造を持ったデバイスが近い将来実現することを願い、本論文の結びとする。 104 参考文献 [1] プレスジャーナル、Semiconductor FPD World 9, 2001 [2] 山崎照彦、川上英昭、堀浩雄、カラーTFT 液晶ディスプレイ、1996 [3] P.G.Le Comber et al, Electron Letters,15,pp179(1979) [4] S.Hotta et al, SID86 Digest 99.66(1985) [5] T.sameshima. 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Lett, 89 093502 (2006) [79] R.M.Cornell et al,「The Iron Oxides」, Wiley-Vch (2003) 恒雄 監修「半導体デバイスの信頼性技術」 (1988)p185 松村貴志 武田大輔 修士論文(2006) 修士論文(2007) 107 研究業績 原著論文 ① Electron Injection into Si Nanodot Fabricated by Side-Wall Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition Kazunori ICHIKAWA, Prakaipetch PUNCHAIPETCH, Hiroshi YANO, Tomoaki HATAYAMA, Yukiharu URAOKA, Takashi FUYUKI, Eiji TAKAHASHI,Tsukasa HAYASHI and Kiyoshi OGATA Japanese Journal of Applied Physics, Vol.44, No.26, (2005), pp.L836-L838. ②New Fabrication Technique Using Side-Wall-Type Plasma-Enhanced Chemical-Vapor Deposition for a Floating Gate Memory with a Si Nanodot Kazunori ICHIKAWA, Prakaipetch PUNCHAIPETCH, Hiroshi YANO, Tomoaki HATAYAMA, Yukiharu URAOKA, Takashi FUYUKI, Atsushi TOMYO, Eiji TAKAHASHI,Tsukasa HAYASHI and Kiyoshi OGATA Journal of the Korean Physical Society, Vol.49, No.2, (2006), pp.569-576. ③Low Temperature Polycrystalline Silicon Thin Film Transistors Flash Memory with Silicon Nanocrystal Dot Kazunori ICHIKAWA, Yukiharu URAOKA, Hiroshi YANO, Tomoaki HATAYAMA, Takashi FUYUKI, Eiji TAKAHASHI, Tsukasa HAYASHI and Kiyoshi OGATA Japanese Journal of Applied Physics, Vol.46, No.27, (2007), pp.L661 - L663. ④Low-temperature Polycrystalline Silicon Thin Film Transistor Flash Memory with Ferritin Kazunori ICHIKAWA, Yukiharu URAOKA, Prakaipetch PUNCHAIPETCH, Hiroshi YANO, Tomoaki HATAYAMA, Takashi FUYUKI and Ichiro YAMASHITA Japanese Journal of Applied Physics, Vol.46, No.34, (2007), pp.L804 – L806. 共著論文 ①Experimental investigation of tunnel oxide thickness on charge transport through Si nanocrystal dot floating gate memories Prakaipetch Punchaipetch, Kazunori Ichikawa, Hiroshi Yano, Tomoaki Hatayama, Yukiharu Uraoka, Takashi Fuyuki, Atsushi Tomyo, Eiji Takahashi and Tsukasa Hayashi J.Vac. Sci. Technol. B, Vol. 24, No.3, (2006), 1271-1277. 108 ②Effect of SiO2 Tunnel Oxide Thickness on Electron Tunneling Mechanism in Si Nanocrystal Dots Floating-Gate Memories Prakaipetch PUNCHAIPETCH, Kazunori ICHIKAWA, Yukiharu URAOKA, Takashi FUYUKI, Eiji TAKAHASHI, Tsukasa HAYASHI and Kiyoshi OGATA Japanese Journal of Applied Physics, Vol.45, No.5A , (2006), 3997. 国際学会発表 ① Electron injection into Si nano dot fabricated by side wall plasma enhanced chemical vapor deposion 2005 IMFEDK(The International Meeting for Future of Electron Devices, Kansai) Kazunori Ichikawa, Prakaipetch Punchaipetch, Hiroshi Yano, Tomoaki Hatayama, Yukiharu Uraoka, Takashi Fuyuki, Eiji Takahashi,Tsukasa Hayashi and Kiyoshi Ogata 2005 年 4 月 ②Si Nano-Crystal Dot Fabricated by Side-Wall Type Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition Kazunori Ichikawa, NAIST/GIST joint symposium on advanced materials in Gyeongju Korea 2005 年 11 月 ③Low-Temperature Fabrication of Si Nanocrystal Dots For Floating Gate Memory IEEE 2006 Silicon Nanoelectronics Workshop in Kyoto Kazunori Ichikawa, Masato Mukai,Prakaipetch Punchaipetch, Hiroshi Yano, Tomoaki Hatayama, Yukiharu Uraoka, Takashi Fuyuki, Eiji Takahashi,Tsukasa Hayashi and Kiyoshi Ogata 2006 年 6 月 ④Low temperature poly-Si TFT Flash memory with Si nano crystal dot International TFT conference 07 in Rome Kazunori Ichikawa, Hiroshi Yano, Tomoaki Hatayama, Yukiharu Uraoka, Takashi Fuyuki, Eiji Takahashi,Tsukasa Hayashi and Kiyoshi Ogata 2007 年 1 月 ⑤Improvement of Memory Properties in Si nanodot TFT Flash Memory by High Pressure Vapor Annealing 109 IEEE 2007 Silicon nano electronics workshop in Kyoto Kazunori Ichikawa, Hiroshi Yano, Tomoaki Hatayama, Yukiharu Uraoka, Takashi Fuyuki, Eiji Takahashi,Tsukasa Hayashi and Kiyoshi Ogata 2007 年 6 月 ⑥Low temperature poly-Si TFT flash memory with Ferritin Protein AM-FPD07 in Awaji(Active-Matrix Flat panel Displays and Devices) Kazunori Ichikawa, Hiroshi Yano, Tomoaki Hatayama, Yukiharu Uraoka, Takashi Fuyuki, Yamashita Ichiro 2007 年 7 月 国内学会発表 ① 積層型 Si ナノドットフローティングゲートメモリにおける充放電特性評価 第 65 回応用物理学関係連合講演会 2004 年秋季 市川和典、P.パンチャイペッチ、矢野裕司、畑山智亮、浦岡行治、冬木隆、高橋英治、林司、 緒方潔 2005 年 3 月 ② Si nano-crystal Dot Fabricated by Side-Wall Type Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition and Its Application to Floating Gate Memory 第 18 回プラズマ材料シンポジウム 市川和典、P.パンチャイペッチ、矢野裕司、畑山智亮、浦岡行治、冬木隆、高橋英治、林司、 緒方潔 2005 年 6 月 ③ Si ドットフローティングゲートメモリにおける充放電特性評価 第 66 回応用物理学関係連合講演会 2005 年秋季 市川和典、矢野裕司、畑山智亮、浦岡行治、冬木隆、高橋英治、林司、緒方潔 05 年 9 月 ④ シリコンナノクリスタルドットを用いた低温ポリシリコン TFT フローティングゲートメ モリ 第 67 回応用物理学関係連合講演会 2006 年秋季 市川和典、矢野裕司、畑山智亮、浦岡行治、冬木隆、高橋英治、林司、緒方潔 06 年 9 月 110 ⑤ 自己組織化ナノドットのメモリ応用 STARC シンポジウム 2006 市川和典、矢野裕司、畑山智亮、浦岡行治、冬木隆、高橋英治、林司、緒方潔 06 年 9 月 ⑥ Si ナノクリスタルドットを用いた低温 Poly-Si TFT フラッシュメモリ 第 3 回薄膜材料デバイス研究会 市川和典、矢野裕司、畑山智亮、浦岡行治、冬木隆、高橋英治、林司、緒方潔 06 年 11 月 ⑦ Si ドット低温 poly—Si TFT フラッシュメモリにおける高圧水蒸気処理効果 第 53 回応用物理学関係連合講演会 2007 年春季 市川和典、矢野裕司、畑山智亮、浦岡行治、冬木隆、高橋英治、林司、緒方潔 07 年 3 月 ⑧ バイオナノドットを用いた低温 poly—Si TFT フラッシュメモリ 第 68 回応用物理学関係連合講演会 2007 年秋季 市川 和典, 矢野 裕司, 畑山 智亮, 浦岡 行治, 冬木 隆, 山下 一郎 07 年 9 月 受賞歴 ① 2005 NAIST/GIST joint symposium on advanced materials. Best poster award 受賞(2005 年 11 月) ② ③ STARC シンポジウム 2006 優秀学生賞受賞(2006 年 9 月) AM-FPD07 Best student award(2007 年 7 月) 111 謝辞 本研究は多くの方々の御指導、御協力の下で遂行されました。末文ではありますが、皆様に感謝 の辞を述べさせて頂きます。 冬木隆教授には、本研究の機会を与えて頂き、研究を進める上で非常に有益な御指導を多く頂き ました。また、学会や研究会などを通じて、多くの助言を頂き深く感謝致します。 浦岡行治准教授には、直接御指導して頂き、毎日夜遅くまで研究指導、および協力をして頂きま した。また、研究に対する心構えを教えて頂き、深く感謝致します。 畑山智亮助教、矢野裕司助教には、装置面での御指導、その他研究で必要となるノウハウなどの 助言を頂き、研究が滞ることなく行えたと感じています。誠にありがとうございます。 アドバイザーである本学メゾスコピック物質科学講座の山 下 一 郎 教授には、異なる研究室であ りながら、御指導頂けたことを深く感謝致します。 アドバイザーである本学光機能素子科学講座の太田淳教授には、本研究に対し多くのご助言と有 意義かつ適切なご指導を受け賜りました。ここに深く感謝いたします。 本研究に際し貴重な Si ドットの試料を提供して下さり、また貴重な助言を下さった日新電機の 緒方潔博士、林司博士、加藤健治博士、高橋英治博士、藤原将喜博士、東名敦志博士、可貴裕和博 士に厚く御礼を申し上げます。 本研究に際し、ご指導ならびに貴重な助言を下さった松下電器産業先端技術研究所の松川望博士、 西尾和晃博士、松井拓郎博士、熊谷慎也博士、奥田充宏博士、田中秀典博士、山田聖人博士には本 研究に重要なフェリチンの提供や、研究方法について多くのご助言や、ご協力を受け賜りました。 厚く御礼を申し上げます。 MOSFET の作製やマスク作製に際しご指導ならびに貴重な助言を下さった、松下電器産業先端 技術研究所 吉井重雄氏、上田路人博士に厚く御礼を申し上げます。 Prakaipetch punchaipetch 博士には、実際に一緒に研究をおこない、研究内容に関する技術指 112 導ならびに御助言をいただきました。また研究に関する論文を多く提供していただき、論文執筆の 際にも多くのアドバイスをうけ賜わりました。厚く御礼を申し上げます。 三浦篤志博士には AFM を用いた Si ドットの形成の確認にご協力いただいただけでなく、有益な 御助言、御指導をうけ賜りました。厚く御礼を申し上げます。 戦略的創造研究推進事業チーム(CREST)の岩堀健治博士、三島由美子博士、杉本健治博士、 村岡雅弘博士、小林未明博士、中川博道博士、塚本里加子女史、慶澤景子女史、岸本直子女史、門 谷文子女史、山根みどり女史にはバイオテクノロジーの基礎を幅広く教えていただき、ここに深く 感謝いたします。 本研究室のバイオナノ研究グループの河北あゆみ女史、梅田朋季氏、越知誠弘氏、入船裕行氏、 小原孝介氏、東條陽介氏、ご卒業された桐村浩哉博士、彦野太樹夫博士、村瀬共美氏、山田圭祐氏、 松村貴志氏、向正人氏、猪飼順子氏、川嶋宏之氏、田中亮大氏、南条 泰弘氏、TFT グループの菅 原祐太氏、ご卒業された宮本隆正氏、上野仁氏、メゾスコピック物質科学講座石川和高氏、高木理 江氏、齊木惇高氏、立石卓也氏には実際の研究活動においても惜しみないご協力を頂き、また研究 以外にもさまざまなアドバイスをうけ賜わりました。心から感謝いたします。 また本研究室の在学生、博士課程の高橋優氏、大鐘章義氏、岩崎吉紀氏、修士 2 回生の岸山友紀 氏、堀内昂陽氏、岡本大氏、清水智也氏、伊藤宏樹氏、修士 1 回生の大城ゆき氏、纐纈英典氏、平 田憲司氏、藤井茉美氏、山下毅彦氏、秘書の上川優子氏、前秘書の佐藤久美子氏には研究に研究全 般だけでなく研究活動以外にも数々の御協力をして頂き、大変感謝しています。 最後に研究機会や経済支援など生活面で支援していただいた両親、兄弟に感謝します。 113