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欧州は日本を超える日本化、不良債権は完治せず

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欧州は日本を超える日本化、不良債権は完治せず
リサーチ TODAY
2016 年 4 月 7 日
欧州は日本を超える日本化、不良債権は完治せず
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
最近、欧州の金融機関問題が話題になることが多い。また、欧州では経済の停滞やインフレ率の低下が
続いており、こうした状況は今年3月にECBが中銀預金金利の▲0.4%への利下げも含む追加緩和策を決
定したことの要因となっている。みずほ総合研究所では『みずほ欧州経済情報』1を発表し、ECBの今回の
追加緩和策の背景を分析している。現在の欧州の状況は、「日本化現象」として説明されることがある。欧
州の金融機関を中心とした問題の本質は、下記の図表に示されるように、不良債権問題の残存である。欧
州の不良債権の水準は高止まりしており、すでにその水準が大幅に低下した日本や米国と大きく異なる。
■図表:日米欧大手行における不良債権比率推移
(%)
ユーロ圏
マイナス金利導入
6
欧銀
米銀
邦銀
5
4
3
2
1
0
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
(注)欧銀:ドイツ銀行、BNP パリバ、クレディ・アグリコル、ソシエテ・ジェネラル、サンタンデール、BBVA、クレディ・スイス、UBS の平均(各年
末時点の値)
米銀:JP モルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティ、ウェルズ・ファーゴの平均(各年末時点の値)
邦銀:みずほ銀行、みずほコーポレート銀行(2014 年第 1 四半期まで)、三菱東京 UFJ 銀行、三井住友銀行の
平均(各年度末時点の値)
(資料)各行決算資料より、みずほ総合研究所作成
次ページの図表は日本、米国、ユーロ圏の預貸率の推移である。日本と米国はバランスシート調整の進
展に伴い、貸出しが縮小することで、預貸率は100%以上の水準から傾向的に低下し、現在では70%程度
である。一方ユーロ圏では、預貸率が100%を超えており、バランスシート調整が進捗していないことが示唆
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リサーチTODAY
2016 年 4 月 7 日
される。すなわち、資産サイドに過剰なものが不良債権予備軍として残存していると考えられる。その結果、
資金調達力を上回る資産を保有し、資金繰りの観点から不安定な状況となる。結局、100%を超える預貸
率の水準は、1990年代以降の日本、米国の金融危機状況のメルクマールであり、欧州においても不良債
権率を含め、金融危機モードが残存していると考えられる。
■図表:日米ユーロ圏の預貸率推移
日本
(%)
米国
ユーロ圏
120
110
100
90
80
70
60
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
(資料)Eurostat、FRB、日銀よりみずほ総合研究所作成
昨今指摘される欧州金融機関の問題は、様々な要因が複合した構造問題だ。そのなかには、すでに1
年以上が経過する中央銀行のマイナス金利問題があり、これに伴う金融機関の低収益性の問題は日本と
しても他山の石とすべき論点である。ただし、これ以上に本質的な問題は、ユーロ圏が共通通貨を使うにも
かかわらず、財政移転制度がないことで、その結果各国は極端な財政緊縮により調整を行わざるをえない
という構造的な欠陥を抱えることになる。しかも、米国の景気減速懸念から、マイナス金利を強めてもユーロ
安政策に限界が生じている。さらに、こうした停滞が長引く下、抜本的な貸出債権の償却ができなかったた
め、先述のようにバランスシートに不良債権を残したままになっている。また、ユーロ圏ではスペイン等の南
欧諸国を中心に南米新興国への債権が多いために、今後南米諸国の景気減速が一層の負担になる可能
性がある。いまや、欧州の問題は「日本化現象」の本家本元である日本を上回る状況にあるかもしれない。
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『みずほ欧州経済情報』 (2016 年 3 月号 2016 年 3 月 28 日)
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき
作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
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