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平成25年度 新興国での新中間層獲得による日本再生事業

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平成25年度 新興国での新中間層獲得による日本再生事業
経済産業省 商務情報政策局
情報通信機器課 御中
平成 25 年度 新興国での新中間層獲得による
日本再生事業
(アジア各国のグリーン IT 動向調査)
報告書
2014 年 3 月
環境・エネルギー研究本部
報告書目次
目次
1. シンガポール ................................................................................................................... 1
1.1 政策動向調査 ............................................................................................................... 1
1.2 市場動向調査 ............................................................................................................. 15
2. インドネシア ................................................................................................................. 34
2.1 政策動向調査 ............................................................................................................. 34
2.2 市場動向調査 ............................................................................................................. 49
3. ベトナム ........................................................................................................................ 74
3.1 政策動向調査 ............................................................................................................. 74
3.2 市場動向調査 ............................................................................................................. 82
4. フィリピン .................................................................................................................... 93
4.1 政策動向調査 ............................................................................................................. 93
4.2 市場動向調査 ........................................................................................................... 102
5. まとめ ........................................................................................................................... 118
1. シンガポール
1.1
政策動向調査
(1) 政策
エネルギー消費量の削減目標は「持続可能な環境ブループリント」において、GHG の削
減目標は「環境変化への国家戦略 2012」において、それぞれ具体的に提示されている。
1)持続可能なシンガポール・ブループリント (Sustainable Singapore Blueprint)
2009 年 4 月、環境・水資源省と国家開発省が発表。本計画では、持続可能な経済成長を
達成するための包括的な長期計画を提示している。具体的には「国内におけるエネルギー消
費量を 2030 年までに 2005 年水準から 35%削減する」という目標を掲げたほか、エネルギ
ー及び水消費量の削減、省エネルギービルの建設促進、太陽電池及び電気自動車の実証実験
等、省エネルギーに関する施策の実施計画が示された。
この計画を受けて、2012 年には省エネルギー法(Energy Conservation Act)が施行、2013
年にはエネルギー管理士設置義務制度が制定される等、
本計画で提示された目標の実現に向
けた具体的な施策の導入が進められている。これらの内容は次節において詳説する。
2)気候変動国家戦略 2012 (NCCS: National Climate Change Strategy 2012)
2012 年 6 月、気候変動省庁間委員会(IMCCC: Inter-Ministerial Committee on Climate
Change)が発表。2020 年までに 7〜16%の GHG 削減目標を示し、その主要ドライバーと
して省エネルギーへの取組を促進していく意向を明らかにした。
1
(2) 制度
シンガポールの各セクターにおける省エネに関する主な制度を下表に示す。
表 1.1-1
シンガポールの省エネルギー関連制度
制度
産業
主管官庁
省エネルギー法
NEA
他の法律で規定されていた既存の省
エネルギー制度を包括的に統合。
エネルギー管理士設置義務制度
NEA
省エネルギー法に基づき、企業等にお
ける認定エネルギー管理士の設置義
務及び運用方法を定めた制度。
認定エネルギー管理士制度
NEA
認定エネルギー管理士の資格認定基
準を定めた制度。
ESCO 認定制度
NEA,
EMA
ESCO 事業者の認定制度。
エネルギーラベリング義務制度
NEA
家電 製品 を対 象とする ラ ベリ ング 制
度。エネルギー性能に基づいた評価ラ
ベルを取得することを義務付け。
エネルギー効率最低基準
HDB
家電製品におけるエネルギー効率の
最低基準を規定。
グリーン・マーク制度
BCA
建築物の省エネルギー性能及び環境
負荷に基づく認証制度。2008 年からは
一定床面積以上の建物についてグリ
ーン・マークの取得を義務付け。
グリーンデータセンタ基準
BCA,
IDA
データセンタのエネルギー効率向上及
び環境負荷低減に向けた取組及び基
準を定めた制度。
省エネルギー設備・技術に対する
加速償却制度
NEA
対象となる省エネルギー設備・技術に
ついて、1 年間での加速償却を認める
税制優遇制度。
燃費ラベリング制度
LTA
(2012.7-)
NEA
(-2012.6)
自動車を対象としたラベリング制度。
燃費性能(L/100km)に基づいた評価
ラベルの取得を義務付け。
炭素排出量ベース自動車制度
LTA
自動車の炭素排出量に応じ、追加登
録料における補助金の付与、または課
徴金の付加を実施する制度。
ロード・プライシング制度
LTA
渋滞税。特定区域へ進入する車両に
対して通行料を徴収する制度。
セクター
業務・家庭
セクター
運輸
セクター
概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
注)表中の主管官庁の正式名称は次の通り。
NEA:
環境庁
BCA: 建設庁
EMA: エネルギー市場庁
IDA: 情報通信開発庁
HDB: 住宅開発局
LTA: 陸上交通庁
2
1)産業セクター
a. 省エネルギー法 (Energy Conservation Act: ECA)
環境庁が主管する法律。2012 年 6 月 1 日施行。2030 年までにエネルギー消費量を 2005
年比 35%削減することを目標に、家庭セクター、産業セクター及び運輸セクターを対象と
した、具体的な省エネルギー施策を規定している。
このうち、当面は産業セクター、運輸セクターにおける省エネルギーの推進を目的とし、
エネルギーの年間消費量が 54TJ 以上の企業を対象に下記の義務を課している。

認定エネルギー管理士の任命

エネルギー消費量の報告

エネルギー効率改善計画の提出
なお、これらは本法律に基づいて施行されたエネルギー管理士設置義務制度によって、更
に具体的な実施内容が規定されている。
将来、他の法律に分散して規定されていた既存の省エネルギー施策については、適宜本法
律に統合される予定である。その対象には以下の制度も含まれている。

エネルギーラベリング制度

家電製品におけるエネルギー効率最低基準

乗用車及び軽貨物車両における燃費ラベリング制度
b. エネルギー管理士設置義務制度 (Mandatory Energy Management Requirements)
環境庁が主管する制度。省エネルギー法の下、企業におけるエネルギー管理手続きの詳細
を規定している。2013 年 4 月 22 日発効。
年間のエネルギー消費量が 54TJ を超える企業を対象に、下記の義務を課している。

認定エネルギー管理士の任命:
対象となる企業は、各企業で最低 1 名の認定エネルギー管理士資格を保有し、か
つ下記の業務を遂行可能な者を、エネルギー管理士として任命することが義務付けら
れている。
 エネルギー使用量及び温室ガス排出量報告書やエネルギー効率改善計画の作成
 エネルギー効率改善基準遵守のための施策の実施
 エネルギー効率改善実践に向けた従業者の訓練・教育
 企業のエネルギー効率改善への努力促進
なお、グループ企業や共通の親会社を持つ複数の企業が人的資源を共有している
場合でも、本管理士はそれぞれ個別の企業において設置する必要がある。また複数
箇所に事業所を持つ場合には、それぞれの事業所に 1 名以上設置することが推奨さ
れている。

エネルギー利用及び GHG 排出量の計測及び報告:
報告書には下記事項を記すことが求められている。
 エネルギー使用量
3
 エネルギー生産量
 温室効果ガス排出量

エネルギー効率改善計画の作成及び提出:
エネルギー効率改善計画を作成し、環境庁に提出する。
本制度における重要な期日は下記の通り。

環境庁への登録:
2013 年 10 月 22 日まで

エネルギー管理士の任命:
登録から 30 日以内

認定エネルギー管理士の取得:
2014 年 4 月 1 日まで

エネルギー利用報告書・改善計画書の提出: 2014 年 6 月 30 日まで
c. 認定エネルギー管理士制度 (SCEM: Singapore Certified Energy Manager Scheme)
環境庁が主管。2008 年 11 月施行。エネルギーサービスを行う技術専門家の能力向上を
目的とする資格認定制度である。認定プログラムはシンガポール国立大学・エネルギー持続
可能性ユニット(Energy Sustainability Unit, National University of Singapore)が開発。
認定資格はアソシエイト・レベルとプロフェッショナル・レベルの 2 段階に分かれてい
る。それぞれの資格認定基準は下表の通り。
表 1.1-2
認定エネルギー管理士制度における資格取得基準
出所)エネルギー効率化プログラムオフィス(E2PO)ウェブサイト
例えばアソシエイト・レベルの場合、資格取得のためには以下のいずれかの条件を満た
した上でコースワークを受講する必要がある。
 工学・技術のサーティフィケートかそれと同等の資格、及び最低 3 年間の関連
4
業務経験
 技術専門学校のディプロマかそれと同等の資格
 関連分野におけるスペシャリスト・ディプロマ.
プロフェッショナル・レベルの場合は更に上級の学位(ディグリー)が要求される上、
トレーニングの内容もより厳格になっている。
d. ESCO 認定制度 (ESCO Accreditation Scheme)
環境庁、経済開発局、エネルギー市場庁による支援の下、シンガポール国立大学・エネ
ルギー持続可能性ユニットが認定を実施している。2005 年開始。ESCO(エネルギーサー
ビス事業者)の認定制度であり、ESCO の経験及びその専門知識の水準に応じたランク別
の認定を付与する。
ESCO 事業者として認定されるには、下記の要件を満たす必要がある。

既存の ESCO 事業者(事業実績 3 年以上)
 認定エネルギーサービス・スペシャリスト(QuESS)を最低 1 名フルタイムで
雇用し、エネルギー監査及び本業務の遂行に従事させる
 エネルギー監査を遂行するために必要な適切に調整された機器/機材を保有して
いる
 過去 3 年以内に、詳細なエネルギー監査を 9 案件、遂行プロジェクトを 3 案件
実施している

新規設立された ESCO 事業者(事業実績 3 年以内)
単年更新の仮認定を、最大 3 年間まで認められる可能性がある。
 認定要件は、既存事業者とほぼ同等。(実績については必要とされない。)
2012 年 2 月 8 日現在、計 17 社が認定されている。
5
2)業務・家庭セクター
a. エネルギーラベリング義務制度 (Mandatory Energy Labeling Scheme)
環境庁が主管。2008 年施行。家電製品を対象とするラベリング制度であり、当初は空調
機、冷蔵庫が対象とされたが、2009 年 4 月から衣類乾燥機もこれに加えられた。消費者が
家電を購入する際に表示することで、エネルギー消費量の少ない高効率機器の選択を促進す
る狙いがある。
図 1.1-1
エネルギーラベリング義務制度におけるラベル
出所)http://www.mof.gov.sg/
b. エネルギー効率最低基準 (Minimum Energy Performance Standards)
環境庁が主管。2011 年施行。エネルギー市場庁及び住宅開発局とパートナーシップを構
築して運営している。家電製品(空調機、冷蔵庫)を対象とする性能基準を定めた制度であ
り、エネルギー効率の低い機器を市場から排除することを目的としている。
家庭用空調機における具体的な基準は下記の通りである。
表 1.1-3
家庭用空調機におけるエネルギー効率最低基準一覧
出所)http://app2.nea.gov.sg/
6
c. グリーン・マーク制度(省エネルギービル認証制度:Green Mark Scheme)
主管は建設庁。2005 年 1 月施行。建物の省エネルギー及び環境負荷軽減を目的とし、環
境性能が一定の基準を満たした建築物に対してグリーン・マークを付与する評価制度であり、
企業イメージや不動産価値を高める狙いがある。
評価項目はエネルギー性能と環境性能に大別され、環境性能については更に水効率、環境
保護、室内環境、その他の小分類に分けられている。
表 1.1-4
グリーン・マーク制度評価時のポイント割振一覧(非住居建築物の場合)
出所)建設庁ウェブサイト
http://www.bca.gov.sg
エネルギー関連基準で 35 ポイント以上、その他の環境負荷基準において 15 ポイント以
7
上を獲得することが本認証を獲得するための条件となっている。
また認証評価は上記項目で算出されるポイントの合計スコアに基づき 4 段階に区別され
ている。スコアと評価の対応関係は下表の通り。
表 1.1-5
出所)建設庁ウェブサイト
グリーン・マーク制度のスコアと評価の対応関係
http://www.bca.gov.sg
なお本認証の取得は一般に任意であるが、2008 年 4 月からは下記いずれかの条件を満た
した場合に、認証の取得が義務化された。

延床面積が 2,000 ㎡以上のビルを新築する場合

延床面積が 2,000 ㎡以上の既存ビルにおいて大規模改修を実施する場合

既存ビルにおいて延床面積 が 2,000 ㎡以上増加するような増改築を実施する場合
政府は、2030 年までに国内の建物の 80%以上をグリーンビルディングとする計画である
としている。
d. グリーンデータセンタ基準 (Green Data Centre Standard)
建設庁と情報通信開発庁が共同主管している制度。2011 年よりパイロットデータセンタ
の認証が実施され、2013 年に遂行ガイドが作成された。データセンタにおけるエネルギー
効率の改善及び環境負荷の低減を目的とした制度であり、本基準に基づいて独自のグリー
ン・マーク認定が実施される。
評価基準には、データセンタにおいて空調などを含む計算機以外の消費電力がどれだけ
効 率 化 さ れ て い る か 測 る た め の 指 標 と し て 用 い ら れ て い る PUE (Power Usage
Effectiveness)を全体指標として利用し、これにシステムレベルの効率性を加味する。新設
の場合と既設の場合で基準が異なっており、例えば PUE について見ると、新設の場合は設
計全負荷状況下で 2.0 を超えないこと、既設の場合はシンガポールの気候条件下で 2.2 を超
えないこととなっている。システム効率は冷却能力等がその基準とされている。
表 1.1-6
出所)建設庁ウェブサイト
PUE によるグリーンデータセンタの評価
http://www.bca.gov.sg/
8
e. 省 エ ネ ル ギ ー 設 備 ・ 技 術 に 対 す る 加 速 償 却 制 度 (ADAS: One-year Accelerated
Depreciation Allowance for Energy Efficient Equipment and Technology)
環境庁が主管。2002 年施行。認証された高効率・省エネルギー機器に対する資本支出に
ついて、通常 3 年間で減価償却するところ、1 年間での償却を認める税制優遇制度である。
機器、消耗品や設置費用を含む、プロジェクトに関連するすべての直接経費が本制度の
対象となるが、コンサルティング費用の計上は認められない。
対象となる機器は、場面に応じて 2 つのカテゴリーに大別されており、具体的には下記
の通りである。

既設機械・機器のからの交換時における対象項目(全 7 品目)
 空調機
 ボイラー
 ウォーターポンプ
 洗濯機及びドライクリーニング機器
 冷蔵庫
 エレベーター及びエスカレーター
 給湯システム

省エネルギー機器・デバイスの導入時における対象項目(全 8 品目)
 太陽(温冷)熱システム
 太陽光パネル(PV)の導入
 エコノマイザー等
 力率制御装置
 高効率電力モーター
 可変速度ドライブモーター制御システム
 高周波電灯システム
 コンピュータ化されたエネルギー管理システム
9
3)運輸セクター
a. 燃費ラベリング制度 (FELS: Mandatory Fuel Economy Labeling Scheme)
2009 年 4 月施行。乗用車及び軽貨物車両にした燃費ラベリング制度。
当該制度は環境庁に管轄されていたが、省エネルギー法に基づいて 2012 年 7 月からは陸
上交通庁が所管することとなった。これにあわせてラベルの評価基準も更新され、CO2 排
出量や性能水準のインジケーターなども表示されるようになった。
図 1.1-2
シンガポールにおける燃費ラベルの例(左が旧版、右が新版)
出所)環境庁ウェブサイト http://app2.nea.gov.sg 陸上交通庁ウェブサイト http://www.lta.gov.sg/
本ラベリング制度の具体的な評価基準及び記載事項は下記の通り。

メーカー名

車種・モデル

燃料種類

エンジン容量
[cc]

燃料消費量
[L/100km]
(UN ECE R101 に準拠)

CO2 排出量
[g/km]
(UN ECE R101 に準拠)
b. 炭素排出量ベース自動車制度(CEV: Carbon Emissions-Based Vehicle Scheme)
陸上交通庁が主管。2013 年 1 月施行。本政策では、2013 年 1 月以降に登録されたすべ
ての乗用車、
タクシー、
輸入中古車を対象に、
炭素排出量に応じて段階的なインセンティブ、
あるいはペナルティーを設定。具体的には、追加登録料(Additional Registration
Fee)に
ついて、160CO2・g/km よりも高効率な車両にはこれを減額し、211 CO2・g/km を上回る
高排出量の車両には課徴金を上乗せする。なお、タクシーに対する金額設定は、一般乗用車
の 1.5 倍の率となっている。
10
表 1.1-7
炭素排出量ベース自動車制度における炭素排出量と助成金・課徴金の関係
出所)陸上交通庁ウェブサイト
http://app.lta.gov.sg/
本制度は 2012 年末に失効したグリーン車両補助金制度を代替する政策として新たに導入
された制度である。2014 年 12 月 31 日まで有効であり、そこで効果等を踏まえた上で本政
策の見直しが実施される予定である。
c. ロード・プライシング制度 (Road Pricing Scheme - Congestion Charge)
陸上交通庁が主管。都市部の道路混雑の緩和を目的に、特定区域へ進入する車両に対して
通行料を課金する制度である。
1975 年にエリア・ライセンス制度(ALS: Area Licensing Scheme)が導入され、施行当初
は早朝の通勤車両の抑制を目的として午前中のピーク時間帯のみでロード・プライシングが
実施されていた。1989 年には夕方の混雑時にも導入され、更に 1994 年には日中の時間帯
も対象となった。また 1995 年からは渋滞の著しい高速道路を対象として道路通行料制度
(RPS: Road Pricing Scheme)の実施が開始された。更に 1998 年には電子ロード・プラ
イシング(ERP: Electronic Road Pricing)による自動徴収システムを採用。人件費削減等に
よる効率化が実現された。
ロード・プライシングの課金レートは、乗用車単位 (PCU: Passenger Car Unit) と制限
区域への入場時刻で決定されている。

自動車、タクシー、軽貨物車両は 1PCU、二輪車は 0.5PCU、重貨物車両と小型バス
は 1.5PCU、 超大型貨物車両と大型バスは 2PCU である。

ピーク時間帯には交通量を考慮の上、30 分毎に課金額が更新される。
11

将来の計画として、GPS を利用した距離ベース渋滞税も検討されている。
図 1.1-3
出所)陸上交通庁ウェブサイト
ERP(電子ロード・プライシング)システム
http://www.lta.gov.sg/
12
(3) 組織
これまで、省エネルギーにおいては特に環境庁、エネルギー市場庁が中心的な役割を果た
してきた。具体的には、環境政策及び家庭・業務セクターを対象とした省エネルギー政策は
環境庁が所管し、
発電セクター等における省エネルギー政策はエネルギー市場庁が所管する
といった縦割りの体制となっていたが、これらを包括的に運営することを目的に、両庁が省
エネルギープログラムオフィス(E2PO)を共同で設置した。
省エネルギー政策に関連する機関は下記の通りである。
個々の担当機関はそれぞれの管轄
するセクターにおいて、省エネルギー政策を遂行している。
エネルギー・水資源省
通商産業省
(MEWR: Ministry of Energy
and Water Resources)
(MTI: Ministry of Trade and
Industry)
運輸省
(MT: Ministry of Transport)
国家開発省
情報通信省
(MND: Ministry of National
Development)
(MCI: Ministry of
Communications & Information)
住宅開発局 (HDB)
Housing & Development Board
・エネルギー効率最低水準
家庭・業務セクター
国家環境庁 (NEA)
National Environmental
Agency
・省エネルギー法
・エネルギー管理市設置義務制度
・認定エネルギー管理士制度
・省エネルギー技術助成金
・エネルギーラベリング義務制度
・省エネルギー設備技術加速償却制度
家庭・業務セクター
エネルギー市場庁 (EMA)
Energy Market Authority
陸上交通庁 (LTA)
Land Transport Authority
・燃費ラベリング制度
・炭素排出量ベース自動車制度
・ロードプライシング制度
・ESCO認定制度
輸送セクター
発電セクター
建築・建設庁 (BCA)
Building and Construction
Authority
・グリーンマーク制度
・グリーンデータセンタ基準
建設セクター
情報通信開発庁 (IDA)
Infocomm development authority
・グリーンデータセンタ基準
情報・通信セクター
エネルギー効率プログラムオフィス (E2PO)
Energy Efficiency Program Office
図 1.1-4
シンガポールの省エネルギー関連組織
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
1)環境・水資源省 (MEWR: Ministry of Energy and Water Resources)
1972 年に設立。当初は環境省(Ministry of the Environment)という名称であったが、
2004 年に水資源も所管することとなり、現行名称に改められた。環境政策と環境規制の実
務を担当してきたが、2002 年に環境庁を傘下組織として分離した後は、国家環境計画であ
るグリーンプランや環境保護に関する法制度の立案・作成など、国家レベルの環境政策を策
定する機能を担っている。
a. 環境庁(NEA: National Environment Agency)
2002 年 7 月設立。環境規制の強化、効率的で迅速な環境管理の実現を目的とし、環境省
の環境政策規制部門及び公衆衛生部門と運輸省の気象部門が合併。環境モニタリング、各種
環境規制の実施から気象予報まで、幅広い業務を手がけている。
省エネルギー関連の制度では、省エネルギー法、エネルギー管理者設置義務制度、認定エ
13
ネルギー管理士制度、省エネルギー助成金、エネルギーラベリング制度を管轄している。
エネルギー市場庁とともに、エネルギー効率化プログラムオフィス(E2PO)の共同設立を
実施した。
ア) エネルギー効率化プログラムオフィス(E2PO: Energy Efficiency Programme Office)
2007 年 10 月、異なる省庁に分散していたエネルギー効率化の取組を統合し、産業セク
ターから家庭セクターまで幅広い領域を対象として省エネルギーを推進することを目的と
して、環境・水資源省により設置された機関。
本機関の共同主管官庁は環境庁とエネルギー市場庁とされており、協力機関として建設庁、
経済開発局、陸上交通庁、情報通信開発庁、住宅開発局、科学技術研究庁が挙げられている。
温暖化対策とエネルギー利用の効率化に関する取組を実施しており、
既存のエネルギー効
率化プログラムや支援資金が E2PO に集約されたほか、独自の支援プログラムも実施して
いる。
また、
様々なセクターにおけるエネルギー利用データを集積したデータベースを構築、
エネルギー効率指標の開発も行っている。
2)通商産業省 (MTI: Ministry of Trade and Industry)
1979 年 3 月に発足。貿易及び産業政策を担当する省。経済開発局、エネルギー市場庁を
管轄しており、産業セクターの省エネルギー政策にも携わっている。
ア) エネルギー市場庁(EMA: Energy Market Authority)
2001 年 4 月設置。電力・ガス・再生エネルギーを管轄している。シンガポールにおけ
る電力部門の自由化を背景に、電気・ガスの監督機能が公益事業局(PUB: Public Utilities
Board)から分離され、通商産業省が所管する法定機関として再編された。再生可能エネル
ギーの促進にも取り組んでいる。
環境庁とともに、エネルギー効率化プログラムオフィス(E2PO)の共同設立を実施した。
3)運輸省 (Ministry of Transport)
ア) 陸上交通庁 (LTA: Land Transport Authority)
1995 年 9 月設立。運輸省(Ministry of Transport)が所管する法定機関。
電子ロード・プライシングシステムをはじめとする、インテリジェント輸送システム(ITS:
Intelligent Transport Systems)の導入を実施。
燃費ラベリング制度、炭素排出量ベース自動車制度、ロード・プライシング制度を管轄し
ている。
14
4)国家開発省 (MND: Ministry of National Development)
a. 住宅開発局 (HDB: Housing & Development Board)
1960 年 2 月設立。国家開発省(Ministry of National Development) が所管する法定機関
であり、主に住宅問題への対応、公営住宅の計画・開発を実施している。
エネルギー効率最低基準を管轄している。
ア) 建設庁 (BCA: Building & Construction Authority)
1999 年 4 月設立。国家開発省(Ministry of National Development) が所管する法定機関。
建設産業における環境負荷軽減に関する施策を実施。グリーン・マーク制度、グリーンデー
タセンタ基準を管轄。
5)情報通信省 (MCI: Ministry of Communications & Information)
a. 情報通信開発庁 (IDA: Infocomm Development Authority)
1999 年 12 月設立。情報通信省(Ministry of Communications and Information)が所
管する法廷機関。母体は電気通信庁(Telecommunications Authority)と国家計算機局
(National Computer Board)であり、これらの合併によって設立された。
管轄する政策はグリーンデータセンタ基準。
1.2
市場動向調査
(1) 導入事例
1)BEMS
a. シティ・スクエア・モール
建物名
シティ・スクエア・モール (City Square Mall of Singapore)
所有者
City Developments Limited
導入サイト
MRT ファーラー・パーク駅直結 (総店舗面積 65,000m2)
導入設備
HVAC、LED、屋上 PV、人感センサー
Architect: Ong & Ong Architects Pte Ltd
Structural Engineer: Meinhardt (Singapore) Pte Ltd
参画企業
M & E Engineer: Parsons Brinckerhoff Pte Ltd
Landscape Consultant: Ong & Ong Pte Ltd
Quality Surveyor: Davis Langdon & Seah Singapore Pte Ltd
Main Contractor: Kajima Overseas Asia Pte Ltd
15
Solar Study: CPG Corporation Pte Ltd
Energy Consultant G-Energy Global Pte Ltd
Traffic Consultant: MWH Consultants (Singapore) Pte Ltd
*HVAC は三菱電機が担当
エネルギー
削減量
・通常の業界規範を用いたデザインと比べてエネルギー消費を約 39%削減
・2009 年 10 月から 2011 年 2 月の間に 1700 万 kWh の電力を削減
約 200 店舗が入る中所得者層向けのショッピングモール。
・HV や EV 専用の駐車スペースを設置
・モール内に設置されたスクリーンが環境パフォーマンスをリアルタイムで表示
・駐車場には人感センサーがあり、50,000kWh/年の省エネ効果を発揮
・空調は VAV(可変風量制御装置)を使用
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
16
b. タンピネス・グランデ
建物名
タンピネス・グランデ (Tampines Grande)
所有者
City Developments Limited
導入サイト
シンガポール東部、タンピネス(延床面積 33,600 m2)
導入設備
人感センサー、屋上 PV、PV 空調システム、ヒートポンプ
Architect: Architects 61 Pte Ltd
Structural Engineer: LSW Consulting Engineers
M & E Engineer: Conteem Engineers Pte Ltd
参画企業
Landscape Consultant: Coen Design International Pte Ltd
Quality Surveyor: KPK Quantity Surveyors (1995) Singapore Pte Ltd
Main Contractor: Dragages Singapore Pte Ltd
ESD Consultant: Building System & Diagnostics Pte Ltd
エネルギー
削減量
・当該地域の環境基準よりも 33%省エネルギー
チャンギ国際空港近くのオフィスビルであり、屋上を緑地化している。
・2010 年にシンガポールのビルとして初めて American LEED Gold environmental
certification を取得
・PV 面積は 940 m2 あり、PV で発電した電力を空調に供給
・CO2 検知システムによって、空調をコントロール
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
17
c. シンガポール人民協会本部
建物名
シンガポール人民協会本部 (People’s Association Headquarters of Singapore)
所有者
People’s Association
導入サイト
MRT ラベンダー駅近く、ジャラン・べサール・スタジアム横
導入設備
BIPV(Building integrated photovoltaic)、遮光解析システム、空調制御システム
Architect: Architects 61 Pte Ltd
Structural Engineer: JS Tan and Associates
M & E Engineer: Squire Mech Pte Ltd
Landscape Consultant: Tropical Environment Pte Ltd
参画企業
Quality Surveyor: Davis Langdon & Seah Singapore Pte Ltd
Main Contractor: Singapore Piling & Civil Engineering Pte Ltd
ESD Consultant: Connell Wagner Pte Ltd
Interior Designer: United Premas
Acoustics Consultant: Alpha Acoustics Specialist Pte Ltd
Transportation Consultant: Duffill Watts Pte Ltd
エネルギー
削減量
・年間エネルギー削減量の予測値は S$256,285(S$1=\80 換算で約\2000 万)
オフィス、会議室、パフォーマンスアートスタジオなどの施設が入る。
・北東方向からの風を活かして空調に要するエネルギーを削減するため、ビルの
エントランスを北東方向に設置
・延べ床面積の 38%を自然の風によって換気
・遮光をコンピュータシミュレーションで解析し、エネルギー効率改善
・空気の質を制御するシステムを設置
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
18
d. リパブリック・ポリテクニック
建物名
リパブリック・ポリテクニック (Republic Polytechnic)
所有者
Republic Polytechnic
導入サイト
MRT ウッドランズ駅近く、シンガポール北部(屋根面積 25,013m2)
導入設備
蓄熱システム、PV、照明シミュレーションソフト
Architect: DP Architects Pte Ltd
Structural Engineer: Meinhardt (Singapore) Pte Ltd
M & E Engineer: Beca Carter Hollings & Ferner (SE Asia) Pte Ltd
参画企業
Landscape Consultant: Ohtori Consultants Environmental Design Institute, Japan
Main Contractor: China Construction - Taisei Joint Venture
Acoustic Consultants: Nagata Acoustics (Japan)
Acoustic Consultants: Acviron Acoustics Consultants Pte Ltd
Facade Consultants: Meinhardt Facade Technology Pte Ltd
エネルギー
削減量
シンガポールで 5 つ目となる高等教育機関のキャンパス。
・当該地域では数少ない、蓄熱システムを用いたプロジェクト
・空調と機械換気システム(Mechanical Ventilation System)を併用
・照明などに必要な電力を PV で発電
・2D/3D 照明シミュレーションソフトを用いて照明システムを設計
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
19
e. 富士ゼロックス・タワーズ・シンガポール
建物名
富士ゼロックス・タワーズ・シンガポール (Fuji Xerox Towers of Singapore)
所有者
Hong Leong Properties Pte Ltd
導入サイト
MRT タンジョン・パガール駅近く、シンガポール CBD(面積-)
導入設備
LED、人感センサー、EMAS(Energy Monitoring and Analysis Services)
Developer: City Developments Limited / Hong Leong Properties Pte Ltd
参画企業
Facility Management: City Developments Limited / Hong Leong Properties Pte Ltd
ESCO: G-Energy Global Pte Ltd
エネルギー
削減量
・年間エネルギー削減量の予測は 2,998,596[kWh]
38 階建てのオフィスビル、リテールスペースと地下駐車場もあり。
・AHU(エアハンドリングユニット)にヒートパイプシステムを使用
・EMAS を用いてエネルギー使用を遠隔監視し、解析
・人感センサーをトイレ、階段に設置して照明を制御
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
20
f. ザイリンクス・アジア太平洋本部
建物名
ザイリンクス・アジア太平洋本部(Xilinx Asia Pacific Headquarters)
所有者
Xilinx Asia Pacific Pte Ltd
導入サイト
チャンギビジネスパーク内(延床面積 20,624m2、建物延面積 27,003m2)
導入設備
BAS、人感センサー、BMS、ヒートパイプ、LED
Project Manager: Bovis Lend Lease Pte Ltd
Architect: RSP Architects Planners & Engineers (Pte) Ltd
Structural Engineer: RSP Architects Planners & Engineers (Pte) Ltd
参画企業
M & E Engineer: Squire Mech Pte Ltd
Landscape Consultant: Envirospec Pte Ltd
Quality Surveyor: Davis Langdon & Seah Singapore Pte Ltd
Interior Design: Design Worldwide Partnership Singapore Pte Ltd
エネルギー
削減量
・年間 S$500,000(S$1=\80 換算で約\4000 万)
ファブレス半導体製造会社のザイリンクスが入る 6 階建てのオフィスビル。倉庫、
実験室、オフィス機能を有し、地下 1 階に駐車場がある。
・エネルギー効率の高いエアコンシステム
・BMS にリンクされた中央照明管理システム(Centralized Lighting Management
System)により、IT を用いて照明を制御
・人感センサーを会議室、トイレ、駐車場、階段に設置して照明を制御
・Green Mark Platinum を受賞した最初の民間工業ビル、2007 年に受賞
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
21
g. ゼロエナジービル・BCA アカデミー
建物名
ゼロエナジービル・BCA アカデミー(Zero Energy Building @ BCA Academy)
所有者
The Building and Construction Authority(BCA)
導入サイト
MRT ロロン・チュアン駅近く、200 Braddell Road(改修部分の延床面積 4,502m2)
導入設備
ACMV(Air Conditioning and Mechanical Ventilation)、PV、人感センサー
Developer: Building and Construction Authority
Architect: DP Architects Pte Ltd
Structural Engineer: Beca Carter Hollings & Ferner (SEA) Pte Ltd
参画企業
M & E Engineer: Beca Carter Hollings & Ferner (SE Asia) Pte Ltd
Quality Surveyor: Davis Langdon & Seah Singapore Pte Ltd
Contractors: ACP Construction Pte Ltd, Grenzone Pte Ltd
Researchers: National University of Singapore
エネルギー
削減量
・エネルギー効率化によって 208,236.3 kWh、
S$48,358.3(S$1=\80 換算で約\387 万)を削減
・既存のビルよりもエネルギー効率が 40-50%,上昇する予測
既存施設に 3 階分を増築したビル。追加部分には展示場、多目的ホール、教室、
図書館、オフィス、事務所等がある。
・PV 容量は 190[kWp]
・人感センサーを全部屋に設置
・天井にソーラーチムニーを設置し、空気循環を効率化
・既存建物のグリーン化改修技術の継続的な実証実験の場として使用
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
22
h. シンガポール国立図書館ビル
建物名
シンガポール国立図書館ビル (National Library Singapore)
所有者
National Library Board Singapore
導入サイト
59,000 m2
導入設備
BEMS: ABB i-bus(インテリジェント・ビル・コントロール・システム)
参画企業
エネルギー
削減量
T.R. Hamzah & Ken Yeang (Architect)
ABB (System Engineering)
当初の計画比 17%、シンガポール国内平均比 32%のエネルギー利用量を削減。
(現在の消費量は 150 kW/h/m2。目標値 178 kW/h/m2、国内平均 220kW/h/m2)
・バイオ・クリマティック・デザインを採用
・オープンエリアにおける自然光及び自然通風の活用
・二重窓による遮熱性の向上
・ファサードによる遮光及び遮熱
・室内緑化や屋上庭園の採用。屋上庭園では雨量センサーと自動灌漑システムが
導入されており、節水にも寄与している。
・動作センサーと光センサーを用いた照明コントロールシステムを採用。照明の照
度・スイッチが自動管理され、自動ブラインドも設置されている。
・空調設備もエネルギー効率を最適化するように自動調整されている
・環境性能について複数の賞を受賞。(建設庁グリーン・マーク・アワード 2007、
ASEAN エネルギー効率ビル・ベスト・プラクティス・アワード 2007)
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
23
i. マリーナ・ベイ・サンズ
建物名
マリーナ・ベイ・サンズ (Marina Bay Sands)
所有者
Marina Bay Sands Pte. Ltd.
導入サイト
249,843m2
導入設備
ビルディング・マネジメント・システム、LED, 地域冷房システム、ヒートポンプ
Safdie Associates (Design architects)
参画企業
Aedas (Local architect)
ARUP (Structural Engineer)
Ssangyong (Main Constractor)
エネルギー
削減量
ホテル、ショップ、公園、劇場、コンベンションセンター、カジノ、ミュージアムを備え
たウォーターフロント複合リゾート施設。
・統合されたビルディング・マネジメント・システムを利用。60,000 ヶ所を超えるコント
ロール・ポイントが、ビル全体の照明、熱・水供給を自動管理することを可能にして
いる。
・地域冷房システム(District Cooling System)に接続されている。空調は水冷チラー
を利用しており、空冷のモデルと比べ 80%以上効率的である。
・更にチラーから出る排熱はヒートポンプに戻され、ホテル及びレストランに向けて
温水を供給。エネルギー消費量を削減する。
・コンピュータ管理システムが時刻や天候に応じて自動で照明の輝度を調整。
・ガラス張りのファサードは自然光を最大限に活用して室内を照らし、エネルギーを
消費する照明機器の使用量を抑えることが可能。
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
24
2)FEMS・データセンタ
a. クレディスイス アジア太平洋地域データセンタ
建物名
クレディスイス アジア太平洋地域データセンタ
(Credit Suisse Asia Pacific Regional Data Centre)
所有者
Credit Suisse
導入サイト
第 12 地区 1 SERANGOON NORTH AVENUE 6 (床面積 14,000m2)
導入設備
高効率エアコンシステム及び IT 機器
参画企業
Architect: AWP Pte Ltd
Structural Engineer: Parsons Brinckerhoff Pte Ltd
M & E Engineer: Meinhardt (Singapore) Pte Ltd
Landscape Consultant: Stephen Caffyn Landscape Design Pte Ltd
Quality Surveyor: Turner & Townsend Pte Ltd
Main Contractor: Obayashi Corporation
Acoustic Consultant: Vipac Engineers & Scientists Pte Ltd
ESD Consultant: SuperSolutions Pte Ltd
エネルギー
削減量
839,542 kWh/年
・多層断熱システムにより 33.64W/m2 の ETTV1
・空調プラントシステムの全体効率 0.668kW/ton
・建物の外壁及び内部を、最も反射する色である白色に統一
・雨水利用及び再生水により冷却水やトイレ、植物用水を年間 1,311m3 節水
・2009 年に特別ビルカテゴリで、2010 年にオフィス内装カテゴリで、それぞれプラチ
ナ・グリーン・マーク認定。さらに、2013 年に開始されたグリーンデータセンタ基準
でプラチナ賞受賞。
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
1
Envelop Thermal Transfer Value:エンベロープ伝熱値
25
b. アボット・データセンタ
建物名
アボット・ラボラトリーズ・シンガポール・データセンタ
(Abbott Laboratories Singapore Data Centre)
所有者
Abbott Singapore
導入サイト
第 22 地区 20A Tuas South South Avenue 10, Singapore
導入設備
高効率の IT 機器と仮想化技術により、消費時の効率を最適化するモジュール設計
参画企業
Developer: Credit Suisse AG
Architect: AWP Pte Ltd
Structural Engineer: Parsons Brinkerhoff Pte Ltd
M & E Engineer: Meinhardt (S) Pte Ltd
Landscape Consultant: Stephen Caffyn Landscape Design
Quality Surveyor: Turner & Townsend Pte Ltd
Main Contractor: Obayashi Corporation
Project Manager: Meinhardt (S) Pte Ltd
ESD Consultant: Kaer Pte Ltd
エネルギー
削減量
全負荷時 100 万 kWh/年以上(予測値)
・設計時にエネルギー効率を目標とすることにより大きなコスト削減を実現
・冷凍機プラント全体の平均効率は 0.67kW/ton と良好
・CRAC2ユニットの RTI(Return Temperature Index)3が 90%以上
・広範囲にわたる ICT 機器のモニタリングと仮想化による電力使用の最適化
・エネルギーラベル認証機器の使用
・サーバーラックの各列における照明センサー制御付の二段階照明システム
・雨水利用及び再生水により冷却水やトイレ、植物用水を削減
・グリーンデータセンタ基準で新設データセンタとして初の受賞者。Gold賞受賞
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
2
Computer Room Air Conditioning:精密空調装置
3
理想値は 100%(IT ラックの出口温度が CRAC ユニットへの空気の還り温度と同じで、且つ CRAC ユニ
ットからの供給温度が IT ラックへの入り口温度と同じ状態)
26
c. エクイニクス・SG2・データセンタ
建物名
エクイニクス・SG2・データセンタ
(Equinix SG2 Data Centre)
所有者
Equinix, Inc.
導入サイト
第 22 地区 15 Pioneer Walk, #02-02 Pioneer Hub, Singapore
導入設備
冷気を封じ込めるインフラ設計、自動ファン、センサー付き LED 照明、電力品質マ
ネジメントシステム
参画企業
Developer: Equinix Singapore Pte Ltd
Architect: Alfred Wong Partnership Pte Ltd
Structural Engineer: Tham & Wong LLP
M & E Engineer: DSCO Group Pte Ltd
Quality Surveyor: WT Partnership (S) Pte Ltd
Main Contractor: Wah Loon Engineering Pte Ltd
エネルギー
削減量
電力消費削減率 10%、430 万 kWh/年(実績値)
・物理的障壁を設けて冷たい給気と暑い排気の混合を減らし、冷気を通路に封じ
込めることにより、電力消費を抑制し冷却効率を向上
・冷凍機プラントシステムの効率は 0.70kW/ton
・電動ファンの自動化システムにより、空気の流れと通気配分を改善する一方、騒
音レベルは低減
・冷水プラント効率のモニタリングのための持続的な計測と検証
・SG2 データセンタ全体にわたり、動作感知型 LED 照明
・遠隔監視、分析、性能追跡・評価、及びレポート作成を行う電力品質マネジメント
システム(PQMS)
・冷却水への再生水利用
その他概要
・グリーンデータセンタ基準で既設データセンタとしてGoldPLUS賞受賞
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
27
d. シンガポール環境局データセンタ
建物名
シンガポール環境局データセンタ
(Singapore Tourism Board Data Centre)
所有者
Singapore Tourism Board
導入サイト
第 10 地区 Tourism Court, 1 Orchard Spring Lane, Level 8, Singapore
導入設備
精密冷却システム、UPS、センサー付き T-5 照明、ブランクパネル
参画企業
Developer: Singapore Tourism Board
M & E Engineer: Emerson Network Power (Singapore) Pte Ltd
Main Contractor: Hewlett-Packard Singapore (Sales) Pte Ltd
Data Centre Consultant: Hewlett-Parkard Singapore (Sales) Pte Ltd
エネルギー
削減量
約 280,022.4 kW の電力削減(再設計後の実績値)
・シンガポール環境局のネットワークシステムに統合された、環境局ビルの IT イン
フラ全体をサポートするデータセンタ。PUE 向上を目的として再設計された。
・PUE が 50%改善、1.74 達成
・N+1 冗長性4を持つ TIER II5レベルのデータセンタ
・UPS の効率 94.5%
・Power Train Efficiency6 90%
・動作感知センサー付き、グリーンマーク認証 T-5 蛍光灯照明システム
・以下により空気の流れを調整し、室内温度を 25℃に設定
その他概要

上げ床(床下エアフロー)

冷気通路と暖気通路の効率的な配置

冷却装置を暖気通路と並べて配置(冷却効率最適化)

ブランクパネルをラックの未使用スペースへ設置し不要な漏れを防ぐ

ラックドアに穴を多く作ることにより放熱・空冷

高密度ラック用精密冷却システム(Precision cooling system)
・グリーンデータセンタ基準で既設データセンタとしてGold賞受賞
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
4
必要な N 台の装置に加えて 1 台の装置を予備として設置することにより、故障によるシステム停止を防
止すること。
5
米国の The Uptime Institute による、データセンタの稼働信頼性を評価する基準で、4 段階のうちの上位 3
番目。エンドユーザの稼働信頼性 99.74%以上。
6
Power Train Efficiency とは、高負荷率を維持しつつ必要なレベルの冗長性をもつ電力供給システムの効率
のこと。
28
3)スマートコミュニティ
a. プンゴル・エコタウン
事業名
導入サイト
参画企業、
機関
開発期間
プンゴル・エコタウン (Punggol Eco-town in Singapore)
シンガポール北部 プンゴル地区
Housing & Development Board (HDB)
Economic Development Board (EDB)
Energy Market Authority (EMA)
Sunseap: PV system developer
Panasonic: Energy Management Systems
2010 年~
・シンガポールで初のエコタウン
・住宅開発局(HDB)が主導
・HDB フラット7の 10 世帯から始まり、その後拡大
・Treelodge@Punggol という区画で、パッシブデザインとグリーン建築技術による、効
率の良いエネルギー利用、水・廃棄物マネジメントを実証
・2011 年に 2MW、2013 年に 3MW の太陽光発電システム導入。発電電力はエレベ
ーターや廊下・階段の照明、水用ポンプ等の共用部分に使用
・太陽光発電の余剰電力は蓄電池に貯め、夜間や停電時に活用
・高効率照明、階段に人感センサー導入
・回生電力利用により従来型から 10%省エネとなる機械室レスエレベーター
・2016 年までにネット・ゼロ・エネルギー・タウンにする目標
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
7
政府が提供する公団住宅。
29
b. クリーンテック・パーク
事業名
導入サイト
参画企業、
機関
開発期間
クリーンテック・パーク (CleanTech Park)
シンガポール西部 Nanyang Technological University(南洋理工大学)の隣、
Jurong Industrial Estate 及び Tuas 等の工業区域の前 50ha の土地
JTC Corporation
Economic Development Board (EDB)
Nanyang Technological University
Nanyang Environment & Water Research Institute (NEWRI)
Real Time Engineering (RTE): 燃料電池実証プラント実施企業
2010 年マスタープラン発表
3 つのフェーズに分かれて実施、完成予定は 2030 年
・シンガポールで初のエコビジネスパーク
・JTC 社が中心となって開発
・産学間における知識やアイデアの交流を推進する戦略的連携
・50ha の開発面積に 25 棟の建築物を建設予定
・最初の建築物である CleanTech One が 2013 年 8 月に正式開所
(CleanTech One は 6 階建てで 37,500m2、グリーンマークプラチナ賞受賞)
・省エネ率 40%以上、飲用水 25%削減ポテンシャルをもつ高効率なインフラに対して
グリーンマーク地区カテゴリでプラチナ賞受賞
・1MW 燃料電池プラントの水素燃料はバイオマスから生成
・次世代の有機系太陽電池を用いた屋根置き型太陽光発電システム
・センサーによる調光・スイッチング制御を行う高効率 LED 照明
・日射や風況のモデルを用いて、建物の配置や太陽光パネルの向きを決定
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
30
(2) 競合先
1)ABB
ABB は、スイスに本社を置く、電力・重工業を中心事業としたグローバル企業である。
シンガポールにおける省エネルギー分野においては、BEMS の製品である i-bus(インテ
リジェント・ビル・コントロール・システム)を、シンガポール国立図書館ビルをはじめ、
オフィス・ホテル・学校・スーパー・集合住宅まで幅広く導入してきた実績を持つ。当該製
品の制御対象としては、照明やシャッター、空調、換気、セキュリティー、エネルギー管理
等が挙げられる。
なお、この i-bus は KNX テクノロジーに準拠しており、インテリジェント・ビル・コン
トロールにおけるオープン・スタンダードに則ったシステムとなっている。
2)Siemens AG
Siemens AG は、ドイツに本社を置く、電機・電子機器及び電気工学分野におけるグロー
バル企業であり、ヘルスケア、産業、エネルギー、そしてインフラソリューションの 4 つ
のセクターにおいて事業を実施している。
シンガポールにおける省エネルギー分野においては、エネルギー効率化プログラムオフィ
ス(E2PO)と提携し、家庭・商業・運輸・通信の各セクターにおけるエネルギー利用パター
ンに関する研究を実施している。
3)IBM
IBM は“Smarter Cities”という名称で、図 1.2-1 に示すような 3 分野(計画・管理、
インフラ、人)
、9 要素から成るスマートシティコンセプトを提唱している。
 よりスマートなビルと都市計画
 環境
 エネルギー・水
 運輸
 教育
 医療
 社会的プログラム
 公共安全
 行政
図 1.2-1
IBM の提唱するスマートシティコンセプト
出所)IBM ウェブサイト
31
これら広範囲にわたる分野をよりスマートにするには、
日々刻々と発生する膨大なデータ
を収集・分析する必要があるとしている。そのために IBM は、都市全体から個々の要素に
まで対応する様々なツールを提供している。それらの例を表 1.2-1 に示す。
表 1.2-1
IBM のスマートシティ推進のためのツール例
分野/ツール
概 要
都市全体
IBM Intelligent Operations
Center for Smarter Cities
Smarter city assessment
tool
エネルギー
IBM Intelligent Utility
Network Solution
ビルディング
IBM TRIRIGA Energy
Optimization
都市全域にわたり、活動のモニタリング及び管理を行い、事
件・事故等に効果的に対処するように設計されたソフトウェ
ア。各管轄機関で横断的にデータが自動共有され、交通や
水・電力供給等の問題を合理的に解決する。
対象となる都市について、全体及び個々のシステムの現状を
把握し、ベストプラクティスと比較してベンチマークを設定、対
象都市の計画策定に寄与する。
スマートメーターや系統運用、通信ネットワーク等を包含する
システムで、ほぼリアルタイムでエネルギー需要を捕捉し、需
要家側でもエネルギー需給制御の一部を担うことにより、より
効率的なエネルギー供給を可能とする。
ビルのエネルギー消費と設備の運用データをリアルタイムで
収集・分析し、ビル管理の有効性やスタッフの生産性及びエ
ネルギー効率を向上させる、総合的なビル管理用ソフトウェ
ア。
出所)IBM ウェブサイトより三菱総合研究所作成
IBM は 1953 年にシンガポールへ進出した。
当初 3 人から始めた事業は瞬く間に拡大し、
2012 年には、シンガポールに対して経済的、社会的に貢献した企業に贈られる中で最も栄
誉ある賞といわれる Distinguished Partners in Progress Award を受賞している。
IBM は、
製造業からサービス業をベースとする経済への転換を目指しているシンガポールのビジョ
ンに沿った投資を行っており、その一つがスマートシティの共同研究である。IBM のスマ
ートシティ関連の取組を表 1.2-2 に示す。
表 1.2-2
IBM のシンガポールにおけるスマートシティ関連の取組
項目
概要
Smarter Cities
都市インフラへの高度なニーズをもつシンガポールは、理想的な“生きた
実験室”。隔年開かれる World Cities Summit のホスト国でもある。
Smarter Environment
2010 年に、政府、大学、研究所、企業が共同で都市問題に取り組む IBM
Smarter Cities Research Collaboratory (Collab)が発足。2012 年、気象や
公衆衛生の環境サービスを向上すべく NEA とのパートナーシップを発表
した。先進的な分析ツールを用いて大気汚染や災害、デング熱等への予
測と効果的な対処を行う。
Smarter Transport
LTA と長く協同してきた結果、公共交通の発展への寄与が認められ、
2012 年に the Land Transport Excellence Award for Best Collaboration
Partner を受賞。85%以上の精度で中央ビジネス地区の交通量を予測する
ツールを開発。LTA は Collab にも参画、陸上交通システムの研究チーム
で活動した。
32
Smarter and Greener
Data Centre
ショーケースとして IBM Systems Technology Group Benchmarking Centre
を建設。シンガポールのデータセンタの平均よりも 33%低い PUE 1.5。
Smarter Cities Challenge
2012 年に Jurong Lake District が選出。スマートで持続可能な繋がってい
る高密度の地域を目指し、革新的なソリューションを研究する。
Project Green Insights
学校での省エネ教育を支援する、Green Building Council 及び教育省との
共同事業。IBM のクラウドを用いて電力消費ルート、エネルギー削減、メ
ンテナンスコストのデータを取得、分析。
出所)IBM 資料より三菱総合研究所作成
(3) 協力先
1)エネルギー効率化プログラムオフィス(E2PO: Energy Efficiency Programme Office)
エネルギー利用の効率化に関する各種政策を実施している機関。
民間企業との提携として、
Siemens との共同研究等が実施されている。詳細は p.14 を参照のこと。
2)Meinhardt (Singapore)
Meinhardt (Singapore)は 、主要 なシン ガポール の国際 的コン サルタン トであ り、
Meinhardt グループの本社がある。Meinhardt グループは、世界中に 35 ヶ所以上の支社を
有し、土木建築、機械、電気、輸送等のエンジニアリング・サービスを提供するとともに、
インフラ及び環境のコンサルタンシー、プロジェクト・マネジメント、プラニングも行って
いる。(1) 導入事例で紹介したシティ・スクエア・モールやリパブリック・ポリテクニック、
アボット・データセンタ等を手がけている他、
グリーン・マーク等の賞を多数受賞している。
33
2. インドネシア
2.1
政策動向調査
(1) 政策
インドネシアにおける省エネルギー政策は、法律、政令、省令の 3 区分によって規定さ
れている。体系図を示すと以下の通りである。
法律とそれにより派生する省令、規則
関 連 規 制
国家エネルギー政策に関する
大統領令 No.05/2006
エネルギー法 No30/2007
温室効果ガス削減に関する国
家行動計画に関する大統領令
No.06/2011
省エネルギーに関する政令 No.70 /2009
原油燃料使用に関するエネルギー鉱物資源
省令 No01/2013
省エネルギー、省水資源に関す
る大統領令 No.13/2011
電力使用削減に関するエネルギー鉱物資源
省令 No13/2012
省水資源に関するエネルギー
鉱物資源省規則 No.15/2012
エネルギー管理に関するエネルギー鉱物資
源省令 No14/2012
エネルギー管理士の能力基準に
関する労働移住省規則
No.321No.323/MEM/Ⅻ/2011
電球型蛍光灯における省エネ・ラベリリング
添付文書に関するエネルギー鉱物資源省規
則 No06/2011
エネルギー監査士の能力基準に
関する労働移住省規則
No.614/MEM/Ⅸ/2011
エネルギー管理士の能力基準に関する
エネルギー鉱物資源省規則 No13/2010、
No14/2010
図 2.1-1
インドネシアにおける省エネルギーに関連する法律、政令、省令の体系
出所)Energy Efficiency and Conservation Policy in Indonesia(Ministry of Energy and Mineral
Resources)より三菱総合研究所作成
1)エネルギー法、No.30 /2007
エネルギー法により国家エネルギー協議会(DEN)が新たに設立され、国家エネルギー
政策作りを担当するとともに、国家エネルギー全体マスタープランが作成され、省エネルギ
ーマスタープランの基礎となる。
また、エネルギー法により、省エネルギーの詳細について政令にて詳細を明確化すること
として、政令 No.70 /2009 が定められている。
34
a. エネルギービジョン 25/25
インドネシアのエネルギー及び省エネルギーの目標としては、2010 年 11 月に採択され
たエネルギービジョン 25/25 がある。2025 年における一次エネルギー供給構成の中で新エ
ネルギー割合を 25%、石炭の割合を 32%、天然ガスの割合を 20%、原油の割合を 23%とす
る目標となっている。
BAU ケースと比べて、エネルギービジョン 25/25 においては、15.6%を省エネルギーに
よって削減することとしている。そのために、エネルギー弾性率を 1 未満、GDP 当たりの
エネルギー消費量を毎年 1%減らすこととしている。
表 2.1-1
インドネシアの一次エネルギー構成目標(2025 年)
通常の利用を想
定したケース
国家エネルギー政
策大統領令 No5. of
2006
エネルギービジョン 25/25
原油
41.7%
20%
23%
天然ガス
20.6%
30%
20%
石炭
34.6%
33%
32%
新エネルギー
3.1%
17%
25%
エネルギー種類
-15.6%
(BAU 比)
省エネルギー
出所)Energy Efficiency and Conservation Policy in Indonesia(Ministry of Energy and Mineral
Resources)
図 2.1-2
エネルギービジョン 25/25 における省エネルギーによる削減目標
出所)Energy Efficiency and Conservation Policy in Indonesia(Ministry of Energy and Mineral
Resources)より、三菱総合研究所作成
35
b. 省エネルギーマスタープラン(RIKEN)
省エネルギーマスタープランは 5 年間有効であり、毎年必要に応じて改定される。2011
年時のドラフトによれば、2025 年時点の削減ポテンシャル、目標値は以下の通りである。
表 2.1-2
2025 年における経済部門における削減目標
部門内における割合
国全体のエネルギー消費における割合
産業部門
10-30%
2025 年のエネルギー
削減目標
17%
商業部門
10-30%
15%
5%
0.7%
運輸部門
15-35%
20%
37%
7.4%
住宅部門
15-30%
15%
13%
2.0%
その他
15-30%
-
4%
0.0%
100%
17.0%
削減ポテンシャル
エネルギー消費に
占める割合
41%
2025 年の削減量に
占める割合
6.9%
全体
出所)Draft National Renewable Energy Master Plan RIKEN (Directorate of Energy Conservation)
2)省エネルギーに関する政令 No.70 /2009
2009 年に省エネルギーに関する政令が発布されており、その中で以下の項目が明記され
ている。

中央政府、地方政府、民間部門の責任と役割

上流から下流まで(エネルギー生産者、転換事業者、消費者)の省エネルギーの実施

6000 石油換算トン以上のエネルギーを使用する者への省エネルギー計画の作成、及
びそれに基づくエネルギー管理、エネルギー管理士の設置とエネルギー監査の実施

省エネ基準とラベリング

エネルギー使用者と省エネルギー機器製造者に対するインセンティブ及びディスイ
ンセンティブの提供

指導と監督
3)省エネルギー、水資源に関する大統領令 No.13/2011
電力使用量 20%、水使用量 10%、ガソリン使用量 10%の削減を達成するための大統領令
で、関係閣僚からなる国家委員会(ナショナル・チーム)が構成される。このナショナルチ
ームにおいて、省エネルギー、省水資源のための政策、戦略、プログラムが形成される。
また、この大統領令により実行体制が整備され、政府予算の割り当て、トレーニング、モ
ニタリング、
省エネルギー、
水資源技術の利用といった施策が展開されることとなっている。
36
省エネルギー、省水資源に関する大統領令
No13/2011
1.内閣を構成する大臣
2.最高裁判所長官
3.インドネシア国軍司令官
4.インドネシア警察長官
5.省クラスでない行政機関の長
6.国営企業の取締役
7.州知事
8.郡、市長
実施
省エネルギー、省水資源に関する政策
目
標
・20%の電力使用量削減
(大統領令発行前の6か月間平均電力使用量に対して)
・10%のガソリン使用量削減(すべての行政機関、州営企業、
県営企業で補助が支出されているガソリンの使用量を制限)
・10%の水使用量削減
(大統領令発行前の6か月間平均水使用量に対して)に対し
図 2.1-3
大統領令 No13/2011 の流れ
出所)Peer Review on Energy Efficiency in Indonesia (APEC)より三菱総合研究所作成
4)運輸部門における政策動向
運輸部門においては、国内の生産量だけでは需要を満たすに足りず、輸送用燃料を輸入に
頼っている状況が今後も続くこととされている(図 2.1-4)。また、ディーゼル燃料に含ま
れる硫黄成分の量が他国と比べて多いのも課題となっている(図 2.1-5)。こうした状況を
踏まえ、インドネシア国内では、燃費の改善と燃料の質の改善が求められており、主に環境
省が主導的に次の取組を進めている。
37
図 2.1-4
インドネシア国内の燃料需要量と国内生産量
図 2.1-5
輸送燃料中の硫黄濃度
出所)Cost Benefit Analysis on Fuel Quality and Fuel Economy Initiative in Indonesia, Ministry of
Environment, Indonesia, GFEI Global Networking Event, 20-21 June 2013
a. 燃料品質を改善するための政策

関係閣僚間の対話の実施:副大統領、経財大臣、エネルギー大臣、財務大臣、運輸大臣、
工業大臣、環境大臣等

リファイナリー施設に関する実現可能性調査の実施

燃料品質をアップグレードするための国内外の投資の呼び込み
38
b. 燃費を改善するための政策
2012 年から 2013 年の間での関係者の意識改革を進めるための取組として、以下の取組
が行われている。

EU 基準の導入を前倒しした場合のラベリングに関するキャンペーン

政策担当者、技術者、自動車業界、石油産業を対象とした燃費に関するトレーニング
の実施

燃費に関する政策対話の実施(2012-2013)

燃料品質と燃費に関する政策変更:

燃費に関する車両基準について、EU 基準4の導入を 2016 年から 2013 年に、
EU 基準5の導入を 2022 年から 2013 年に前倒し。

燃料品質に関する基準について、EU 基準4、EU 基準5の導入を 2016 年から
2013 年に前倒し。

燃費と燃料品質に関する基準を 2014 年度前半に発令

2013 年に燃費に関するロードマップの作成
c. 燃費改善のためのインセンティブ

具体的なインセンティブの付与

燃費の良い低排出車に対する税の減免

EU 基準を満たす車両に対する税の減免

消費者に対する良い燃料品質を使用する場合のインセンティブ:自動車登録税、
年間の自動車税、炭素税の減免の付与

自動車保有に関するクレジットスキームとその利率の付与
d. 政策を進めるための取組

定期的なコンサルタントグループの会合の実施

産業界への燃費改善のための技術支援

燃費基準に関する新しいマーケット創出のための対話(燃料と車両)

アジア地域、アセアン地域での燃費基準導入に関する対話の実施
39
(2) 制度
インドネシアにおける省エネの主要制度を表 2.1-3 に示す。
表 2.1-3
インドネシアにおける省エネの主要制度
制度
産業
セクター
業務・家庭
セクター
運輸
セクター
主管官庁
概要
エネルギー管理制度
工業省、
エネルギー鉱物
資源省
年間 6,000 石油換算トン以上のエ
ネルギー消費者を対象。
省エネルギービル基準
エネルギー鉱物
資源省
外皮、空調、照明等に関する基準。
ラベリング
エネルギー鉱物
資源省
電球蛍光灯、冷蔵庫、エアコン等に
対するラベリング制度。
燃費に関する基準(今後整備
予定)
環境省
燃費基準とそれに伴うインセンティ
ブの整備。EU基準を参考。
燃料品質(排出ガス)に関する
基準(今後整備予定)
環境省
排出ガス基準とそれに伴うインセン
ティブの整備。EU基準を参考。
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
1)産業セクター
a. エネルギー管理制度(Energy Management for large energy Users)
ア) 年間 6,000 石油換算トン以上のエネルギー消費を伴う者への義務
年間 6,000 石油換算トン以上を消費するエネルギー使用者については、以下のエネルギ
ー管理を行うことが求められている。

エネルギー管理者の任命

省エネルギー計画の策定

定期的なエネルギー監査の実施

エネルギー監査の結果に基づく提案の実施

年間の省エネルギー活動の報告(大臣、州知事、県知事、市長に対して)
具体的には、産業部門のエネルギー管理の基準が省令 No13/2010 に定められ、建設部門
については、省令 No14/2010 に定められている。
イ) インセンティブの付与
ある一定期間に省エネルギー目標(成功基準)を達成した場合には、インセンティブが付
与される。8
8
2012 年時点では、環境省が細則を準備中とのことである。
40
年間 6,000 石油換算トン以上を消費するエネルギー使用者の場合は、以下のインセンテ
ィブが与えられる。

省エネルギー製品への優遇税制

省エネルギー製品への地方税の減免、免除

省エネルギー製品を輸入する場合の特別関税

省エネルギー投資への低金利融資

政府によるパートナーシップ支援によるエネルギー監査
国内省エネルギー設備生産者の場合には、以下のインセンティブが付与される。

省エネルギー設備の生産に使われる部品、スペア部品、原材料への優遇税制

省エネルギー設備の生産に使われる部品、スペア部品、原材料への地方税の減免、免
除

省エネルギー設備の生産に使われる部品、スペア部品、原材料への特別関税

省エネルギー設備生産への低金利融資
ウ) ディスインセンティブの付与
省エネルギー計画を達成しなかった事業者に対しては、
以下のディスインセンティブが与
えられることとなっている。
・書面による警告
・メディアでの公表
・罰金
・エネルギー供給の削減
41
2)業務・家庭セクター
a. 省エネルギービル基準(Energy Conservation Building Codes)
インドネシアの省エネビル基準制度では、新エネルギー・省エネルギー総局(DJEBTKE:
Directorate General of New Renewable Energy and Energy Conservation)により、イン
ドネシア国家規格(SNI)が策定されている。現在、以下の 4 項目について SNI が制定さ
れている。

ビルにおける建物外皮の省エネ:SNI03-6389-2000

ビルにおける空調換気システムの省エネ:SNI03-6390-2000

ビルにおける照明システムの省エネ:SNI03-6197-2000

ビルのエネルギー監査手続:SNI03-6196-2000
これらの基準に従う省エネビルの建設を促進するために、Energy Efficient Building
Program が 実 施 さ れ て お り 、 そ の 一 環 と し て Energy Efficiency and Conservation
Clearing House Indonesia (EECCHI)オフィスの省エネルギー化が行われている(p.49 参
照)
。
b. ラベリング(Energy Labeling)と基準
インドネシアにおいては、個々の製品の省エネ性能に応じた 4 つ星までの評価システム
がある。2011 年には、電球形蛍光灯のラベリングが開始されており、2012 年に向けて、冷
蔵庫とエアコンに対する試験手続き及び規格が準備されている。
ラベリングの対象となるのは、以下の 10 品目である。

電球型蛍光灯(2013 年 5 月に義務化の予定)

冷蔵庫(2013 年中に基準が示される予定)

ルームエアコン(2013 年中に基準が示される予定)


TV
安定抵抗器

扇風機

炊飯器

モーター

洗濯機

電気アイロン
ア) 電球蛍光灯
電球型蛍光灯の基準は、SNI04-6958-2003 で定められており、その内容は以下の通りで
ある。
42
表 2.1-4
電球型蛍光灯の省エネルギーカテゴリ(Lumen/Watt)
各星のカテゴリの基準(単位:Lumen/Watt)
電力(Watt)
1星
2星
3星
4星
5~9
45~49
49~52
52~55
55 以上
10~15
46~51
51~54
54~57
57 以上
16~25
47~53
53~56
56~59
59 以上
26 以上
48~55
55~58
58~61
61 以上
出所)
「省エネ意識と購買行動(インドネシア・ベトナム)に関する調査調査
報告書(JETRO)」
なお、電球型蛍光灯の省エネラベルのデザインは、2003 年から現在まで以下の図のもの
が使用されている。このラベルには、1 ワット毎の光の強さの情報が表示される他、登録ナ
ンバー、製品モデル、星数が明記される。
図 2.1-6
電球型蛍光灯のラベルデザイン
出所)Energy Efficiency and Conservation Policy in Indonesia (Ministry of Energy and Mineral
Resources)
イ) 冷蔵庫
冷蔵庫のラベルのドラフト案については、冷凍庫の有無によって以下の案が示されている。
表 2.1-5
冷蔵庫のラベリングのドラフト案
1星
冷凍庫なし
=<465+1.378×Vabj×1.15
冷凍庫あり
=<465+1.378×Vabj×1.55
2星
=< 1 星×0.77
=< 1 星×0.77
3星
=< 2 星×0.77
=< 2 星×0.77
4星
=< 3 星×0.77
=< 3 星×0.77
注)Vabj:冷蔵庫の中の調整ボリューム
出所)FRAMEWORK of ENERGY EFFICIENCY LABELING PROGRAM PART2:TECHNICAL
PROVISION for REFRIGERATOR (DRAFT) rev.3rd (Technical Meeting for EE Labeling
Program in Indonesia)
43
ウ) エアコン
エアコンのラベルのドラフト案においては、
インバーター付とインバーター付でないもの
について、以下の基準案が示されている。
表 2.1-6
冷蔵庫のラベリングのドラフト案
1星
インバーターあり
2.64=<weighted COP<2.92
インバーターなし
2.5=<COP<2.64
2星
2.92=<weighted COP<3.34
2.64=<COP<2.92
3星
3.34=<weighted COP<3.76
2.92=<COP<3.05
4星
3.76=<weighted COP
3.05=<COP
注)COP: Coefficient of Performance(負荷 100%)
Weighted COP=0.4×COP(負荷 100%)+0.6×COP(負荷 50%)
出所)FRAMEWORK of ENERGY EFFICIENCY LABELING PROGRAM PART2:TECHNICAL
PROVISION for AC(Air Conditioner) (DRAFT) rev.3rd (Technical Meeting for EE Labeling
Program in Indonesia)
3)運輸セクター
運輸セクターにおける制度設計は、今後、進められていく予定であり、2013 年に燃費に
関するロードマップの作成、2014 年度に燃費、燃料品質に関する基準の発令、EU 基準の
前倒し導入の検討が進められている状況である。
44
(3) 組織
1)政府機関
省エネルギーに関する政策、制度設計等は、エネルギー鉱物資源省(Ministry of Energy
and Mineral Resources: MEMR)が担当し、産業部門については工業省(Ministry of
Industry)が担当している。また、運輸部門の排出基準、燃費基準に関する取組は環境省
(Ministry of Environment)が担当している。
大統領
MEMR
エネルギー鉱物資源省
MOI
工業省
MOE
環境省
省エネルギー政策全般を担当
産業部門を担当
運輸部門の燃費、排出基準
を担当
EECCHI
Indonesia ESCO
Association
省エネルギー政策の普及、
商業ビルの省エネプログラム、
人材育成等
インドネシアにおけるESCO事
業の普及推進等
図 2.1-7
省エネルギー政策に係る主要な省庁
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
インドネシアにおける各省庁の役割を表 2.1-7 に示す。
表 2.1-7
エネルギー
鉱物資源省
工業省
財務省
環境省
公共事業省
運輸省
貿易省
インドネシアの各省庁の役割
需要面管理
ESCO 事業
の育成
革新的ファイ
ナンスと機構
ラベリング、基
準による市場
変化
インセンティ
ブ、補助、
助成
エネルギー管
理士の能力
強化
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
45
○
需要面管理
市場監督委
員会
中央銀行
自治体、地方
政府、国家基
準
ESCO 事業
の育成
ラベリング、基
準による市場
変化
革新的ファイ
ナンスと機構
インセンティ
ブ、補助、
助成
エネルギー管
理士の能力
強化
○
○
○
○
出所)ESCO IN INDONESIA OPPORTUNITIES AND CONSTRAINS ON ENRGY EFFICIENCY
INVESTMENT POTENTIAL, Indonesia ESCO Association, SEMINAR MEMBUKA
SUMBATAN INVESTASI ENERGI EFFISIENSI DI INDONESIA : TANTANGAN DAN
PELUANG KEBIJAKAN DAN REGULASI JAKARTA, 20 MARET 2013 より三菱総合研究所作
成
a. エネルギー鉱物資源省(MEMR)
エネルギー鉱物資源省において、エネルギー法を実施するための組織として 2010 年に新
エネルギー・省エネルギー総局が設置されている。その下部組織として、省エネルギー局
(Directorate of Energy Conservation)が位置づけられている。
エネルギー鉱物資源省で行われている政策メニューの概要を表 2.1-8 に示す。
表 2.1-8
No
政策メニュー
1
政策と規制作り
2
3
4
5
6
7
内
容
・省エネルギー政令 No70/2009 のフォローと規制作り(エネルギー鉱物資
源省令 No6/2011、No13、14/2012、No01/2013)
・産業部門、商業部門、家庭部門、運輸部門での省エネルギー政策作り
インセンティブと ・省エネルギー部品の輸入関税に対するインセンティブ、具体的なインセン
ディスインセンテ
ティブ作り
ィブ
・リボルビングファンドの活用による省エネルギー推進のための財政支援
スキームの評価
・インセンティブ、ディスインセンティブの対象となる省エネルギー機器の基
準の評価
一般の意識形成 ・紙媒体、電子媒体、パンフレットを活用したセミナー、ワークショップ、一般
広告の実施
・国全体を対象とした省エネルギーの取組の表彰の実施
・ビルに対する省エネルギーガイドラインの整備
教育とトレーニン
グ
パートナーシップ
プログラム
エネルギー管
理、エネルギー
監査
基準とラベリン
グ
8
エネルギー鉱物資源省における省エネルギー推進政策
国際協力
・省エネルギーに関するトレーニングの実施
・海外での研修の実施
・エネルギー監査の無料化(ビル、工場)
・2003~2012 年の間に 806 ヶ所に対してエネルギー監査を実施。
・エネルギー管理士、エネルギー監査士の基準作り
・認証機関の準備
・エネルギー管理士の承認(2012 年:45 名)
・消費者に対する4つ星ラベルの情報提供、普及
・製造者への省エネルギー技術採用の働きかけ
・電球型蛍光灯ラベルの省エネラベルの PR
・冷蔵庫、エアコンの基準の PR
・MPES の普及
・ASEAN Energy Efficiency and Conservation サブセクターのネットワーク
・インドネシア-デンマークとの二国間プロジェクト
46
No
9
政策メニュー
内
容
・インドネシア-オランダとの二国間プロジェクト
・インドネシアー日本(NEDO)との二国間プロジェクト
・ICA による電気モーターとエアコンに対する MPES(Minimum Energy
Performance Standard)の実施
・BRESL:アジア 6 か国(バングラデシュ、中国、インドネシア、パキスタン、
タイ、ベトナム)での 7 家電(エアコン、扇風機、冷蔵庫、安定抵抗器、電
気モータ、電球型蛍光灯、炊飯器)についての基準作り
・UNIDO による ISO 基準採択の支援
・USAID による技術支援
・GIZ による道路照明置き換え戦略の支援
省エネ性能の優 ・道路照明の基準作り
れた道路照明
・道路照明における省エネルギー技術の推進
・省エネルギー技術を応用した道路照明のガイドライン作り
出所)Energy Efficiency and Conservation Policy in Indonesia (Ministry of Energy and Mineral
Resources)より三菱総合研究所作成
省エネルギー局の役割としては、①省エネルギーに関する政策、戦略、国家プログラムの
形成、②規制に関する調整、③省エネルギー対策の一般への周知普及、④省エネルギーに関
するガイドライン作り、
⑤省エネルギーに関するステークフォルダー間のフォーラムの運営、
⑥インセンティブの付与、⑦ベンチマークの実施、⑧モニタリング、⑨助言等がある。
エネルギー鉱物資源大臣
大臣直属の専門
家スタッフ
原油、ガ
ス総局
電力
総局
バイオエネ
ルギー局
エネルギー利用
プログラム担当部
国家エネルギー
協議会事務局
監理局
石炭鉱物
資源総局
地質局
新エネルギー・省
エネルギー総局
地熱局
省エネル
ギー局
省エネルギー監
督部
図 2.1-8
官房局長
研究開
発局
教育局
新エネル
ギー局
エネルギー技術経
済性評価部
クリーン・有用
技術応用部
技術ガイドライン、省エ
ネルギー協力担当部
エネルギー鉱物資源省の体制図
出所)Peer Review on Energy Efficiency in Indonesia (APEC) より三菱総合研究所作成
b. 地方政府
省エネルギーを実施するため、次の項目については州政府、郡・市町村の責任と役割が政
令 No.70/2009 にて定められている。

省エネルギー政策、戦略、プログラムの決定

省エネルギーに係る人材開発
47

省エネルギー技術利用のための総合的、包括的な対話の実施

省エネルギープログラム実施のための政策形成のための調査、準備、予算の割り当て

省エネルギープログラム実施のための調整、インセンティブの準備

事業者、エネルギー利用者、エンドユーザに対する技術指導の提供

省エネルギープログラムの実施、省エネルギー活動の実行

省エネルギープログラムの指導、管理
2)民間団体
省エネルギーの普及推進にあたる民間団体としては、下記の 4 つの団体が挙げられる。
a. Green ICT Council Indonesia
インドネシアにおいてグリーン IT の普及推進を図る団体であり、日本側におけるグリー
ン IT 推進協議会(Green IT Promotion Council)のカウンターパートである。
b. Energy Efficiency and Conservation Clearing House Indonesia
インドネシアのエネルギー鉱物資源省の管轄する団体であり、省エネルギーの関連政策、
イベント情報、データベース、ライブラリが整備されたポータルサイトを提供している。
EECCHI の目的は、①社会に対する省エネ政策の普及、②商業ビルに対する省エネプロ
グラムの普及、③工場及び商業ビルのエネルギー監査における人材育成、④地方政府が省エ
ネに関する地方条例を制定する際の提言の実施の 4 点である。
c. Bandung Techno Park
バンドンテクノパークは、情報通信系の技術系の大学、研究機関を中心に 2010 年に設立
された組織である。
d. Indonesia Supporting Companies Association for Energy Conservations (INDONESIA
ESCO ASSOCIATIONS)
インドネシアのエネルギー鉱物資源省の管轄する団体であり、2011 年 4 月 21 日に設立
された。インドネシア国内の ESCO 事業を普及させていくための組織として、以下の取組
を行っている。
① 資金提供者-ESCO 事業者―エンドユーザ間の戦略的な提携の推進と取組の活性化
② ESCO 提供者の強化
③ 会員の省エネ事業の取組支援等
48
2.2
市場動向調査
(1) 導入事例
1)BEMS
a. EECCHI Office
インドネシアのオフィスビルにおける省エネ設計・技術のモデルとすべく、Energy
Efficient Building Program の一環として、新エネルギー・省エネルギー総局の別館にある
Energy Efficiency and Conservation Clearing House Indonesia (EECCHI)のオフィスが
省エネ型に改築された。この事業はデンマークの支援により実施され、約 40%の省エネ効
果が得られている。
事業名
EECCHI オフィス省エネ改築事業
導入サイト
新エネルギー・省エネルギー総局別館 5 階 EECCHI オフィス
(ジャカルタ)
実施機関
新エネルギー・省エネルギー総局、
EINCOPS(Energy Efficiency in Industrial, Commercial and Public Sectors、
(インドネシア・デンマーク政府間協力の枠組の一つ)
事業期間
2009 年計画、2010~2011 年建設





可変冷媒流量制御技術採用マルチエアコン(従来エアコン比 30~40%省エネ)
エアコンの凝縮水や CO2 レベルの測定による空気制御
高効率の T5 蛍光灯及びセンサーによる照明コントロール
窓の遮熱
自然光の最大化や風通しに配慮したパーティション配置及び天井高の増加
導入設備
49
導入効果
Energy Index (kWh/m2/year)
Average temperature (oC)
9am - 3 pm
Before 8.30 and after 15.00
Average humidity (%RH)
9am - 3 pm
Before 8.30 and after 15.00
Average noise level (dB)
出所)EECCHI ウェブサイト
50
導入前
~170
導入後
~98
~26
~28-31
24-25
24-25
~65
~75
~57
~65
~65
~48
b. BCA Tower
2008 年に完成した BCA Tower は、
54 階建てで床面積が 25 万 m2、占有率が 85%であり、
低放射複層ガラスを使用したファサードとスマート制御システムのエレベーターを使用し
ている。商業向けオフィスビルでの省エネ効果が期待されており、グリーンシップ EB とい
うエネルギーシステム評価のプラチナ評価を達成することを目的として、
以下の省エネの取
組が行われている。
事業名
BCA Tower における省エネ導入
導入サイト
BCA Tower, Grand Indonesia
実施機関
・グリーン・ビルディング評価機関:GBCI (Green Building Council Indonesia)
・設計: RKTL
・デベロッパー: PT Grand Indonesia
事業期間
2010 年から 2011 年










MVAC システムでの VSD ポンプやバルブのリセット
冷凍装置のスケジュール運転の実施
加えられた変更に合わせてからのビル管理システムのリプログラミング
MVAC システムのレトロ試運転の実施
コンデンサーポンプは交換しないが、バルブだけはリセットされる
設定条件で、平均気温を 25℃に上昇させる
湿度を 60% (GREENSHIP NB 1.0).
ほとんどの照明を T5 と LED に交換する
各テナントに対する省エネキャンペーンの実施
新しい MVAC システムと照明の動作方法に関して定期的な訓練を実施
導入設備
導入効果
エネルギー消費指数(IKE)は、年間 250kWh/m2(2010 年)→年間 174.4 kWh/m2(2011 年)
に到達した。エネルギー削減が 30.24%となった。また、グリーンシップ EB プラチナ認定を
受けた。
出所)GBCI 等資料より三菱総合研究所作成
(GBCI ブログ:http://blog.gbcindonesia.org/?p=440)
(写真出典:http://www.regus.com/locations/business-centre/jakarta-menara-bca-grand-indonesia)
51
c. Sampoerna Strategic Square
1996 年より運用開始されており、約 15 万 m2 の床面積を有し、占有率 75%となる 32 階
建ての Sampoerna Strategic Square のツインタワーにおいて、グリーンシップ EB(エネ
ルギーシステム評価のプラチナ評価)を達成することを目的として BEMS が導入された。
設備導入や運用のほかに、
各テナントに対しての意識向上を図るためキャンペーンを実施し
ている。
事業名
Sampoerna Strategic Square ツインタワーにおける省エネ導入
導入サイト
Sampoerna Strategic Square
実施機関
GBCI (Green Building Council Indonesia)
事業期間
2011 年から 2015 年

エネルギーシステムのスケジューリングのため、建物の使用プロファイルを識別

大型ポンプを VSD 技術を有する小型ユニットに交換

古い冷却装置を高効率ユニットに改造

ユーザー数や他の節約パラメータに応じて、AHU の設定をリセット

高密度用 VSD 付き CO2 センサーを使用

変化に応じる BEMS を利用

冷却塔を交換し、4 台まで増設

冷却装置の交換後、MVAC システムをレトロ試運転の実施
導入設備
導入効果
2012 年のエネルギー監査で、年間 229.7 kWh/m2 の IKE 値を達成した。
将来的に年間 176.87 kWh/m2 の IKE 値を目指し、現在よりも 23%を削減する。
出所)GBCI 等資料より三菱総合研究所作成
(GBCI ブログ:http://blog.gbcindonesia.org/?p=440)
(写真出典:www.sampoernastrategicsquare.com)
52
d. Nusa Dua Beach Hotel & Spa
1983 年に建てられたバリ島にあるリゾート施設において、システム効率を上げてエネル
ギー消費を抑えつつ、
ホテルの営業と並行して施設の運用コストを抑えるための設備導入を
行った。
事業名
バリのリゾート施設における省エネ導入
導入サイト
Nusa Dua Beach Hotel & Spa,Bali
実施機関
エネルギー管理コンサルタント:Kaer Pte Ltd of Singapore
事業期間
2008 年 8 月から 2009 年 7 月

総合エネルギー調査と分析の実施

電気や水の無駄を減らすために、主にエネルギー使用量のピーク時間帯に、自動
制御を行う。

最大のメリット、メンテナンスの容易さと効率化のためのシステム設計を行う。

冷凍設備室、冷却水システム、給湯システム、空気処理とファンコイル装置や電気
システムに集中した更新作業を実施。
導入設備
53
・1 年間の運用により、3.4millionUSD の節約につながった。
・運用してから最初の 5 か月で初期投資を回収できた。
導入効果
出所)Kaer 等資料より三菱総合研究所作成
(Kaer 資料:http://www.kaer.com/pdfs/case/KAER_WEB_CASE_STUDY_1.pdf)
(写真出典:http://www.dreamstime.com/royalty-free-stock-photos-nusa-dua-beach-hotel-spa-baliindonesia-image21475998)
54
e. シナールマス・ランドプラザビル(Sinar Mas Land Plaza Building)
事業名
Sinar Mas Group における本社ビルの省エネ化
導入サイト
Sinar Mas Land Plaza Building、Tangerang、Indonesia
実施機関

所有者:Sinar Mas Group

デベロッパー:Sinar Mas Land(Sinar Mas Group の不動産開発子会社)

設計:Aedas(Singapore)Pte Ltd


M&E エンジニア/ESD コンサルタント:Beca Carter Hollings & Ferner (S.E.Asia)
Pte. Ltd
構造エンジニア:PT Haerte Widya Konsultan

景観コンサルタント:Aedas Landscape Ltd

インドネシアの財閥シナールマスグループ・グループの本社ビル。

エネルギー効率の高い冷却設備の導入

建物周辺の街灯に太陽光発電とエネルギー効率の高い LED 照明を採用。


建物内の照明は Philips 社が手掛け、LED 照明と LED 以外の照明を効果的に組
み合わせることでエネルギー効率とコスト効率の両面を達成。
排水再利用

電力消費量削減(推定):1200,216kWh/yr

節水量(推定):19,134 ㎥/yr

ETTV(断熱性能):42.0W/㎡

香港 Green Building Award 2012 受賞

シンガポール BCA Greenmark Award2013 外国建物部門受賞

ASEAN Energy Award 2013 Energy Efficient Building クラスにおけるベストプラク
ティス受賞
導入設備
導入効果
備考
出所)Sinar Mas Group、BCA Greenmark Award2013 よりより三菱総合研究所作成
写真出典)Sinar Mas Group
55
2)FEMS・データセンタ
a. セメント工場からの排熱回収による発電の実施
NEDO のエネルギー有効モデル事業として、インドネシアのセメンパダン社への 8.5MW
のセメント排熱回収発電設備導入を、
日本及びインドネシアの共同事業として実施しており、
年間 43,117tの CO2 削減を目標としている。
事業名
セメント焼成プロセスからの排熱回収による発電
導入サイト
セメンパダン社、インダリン(Indaring)、パダン(Padang)、西スマトラ島
日本側事業者
NEDO、JFE エンジニアリング(株)
インドネシア
側関係者
インドネシア工業省、セメンパダン社
実証期間
2009 年 1 月 15 日~2011 年 10 月 26 日(工事期間:16 か月)
事業予算
2400 億ルピア(うち 900 億ルピア:セメンパダン社、1500 億ルピア:JFE エンジニアリ
ング株)










Boiler (SP Boiler & AQC Boiler)
Turbine, capacity = 8.6 MW
Generator
Condenser
Cooling tower & Pump
Demineralizer
Flasher
Dust setting chamber
Transportation tools, Ducting & Piping
Make-up water (capacity = 115 m3/h)
導入設備
56
日本側による供給
インドネシア側による供給

導入効果


WHRG 発電容量平均は、6.9 MW(グロス)に達し、また使用することができる発
電能力は、6.2 MW(ネット)。
PLN(国営電気会社)への電力消費の削減は、57.6 百万 kWh/年。
二酸化炭素排出量の削減は、43.117 トン / 年。
出所)”WASTE HEAT RECOVERY POWER GENERATION di PT SEMEN PADANG”,2012,3,22
b. テレコムシグマ データセンタ
テレコムシグマは、
インドネシアにおける情報通信産業における有数のサービス提供者で
あり、テレコムグループの一員として、コンサルティングサービス、ソフトウエア開発、デ
ータセンタの運用サービスを提供している。インドネシア国内市場に、省エネルギー性能の
優れたデータセンタを導入すべく、データセンタを 3 か所に導入している。
事業名
導入サイト
インドネシア
側関係者
導入期間
PT SIGMA CIPTA CARAKA (Telkomsigma)
1) Telkomsigma Data Center Serpong German Centre Jl. Kapt. Subijanto Dj.
Bumi Serpong Damai Tangerang 15321, Indonesia
2) Telkomsigma Data Center Surabaya Citraland (Jl Bukit Bali B3 No.2),
Surabaya, East Java
3) Telkomsigma Data Center Sentul Jl. Ir H Juanda no 7 Sentul City, West
Java

PT SIGMA CIPTA CARAKA, subsidiary of PT Telekomunikasi Indonesia
Tbk

PT IBM Indonesia, subsidiary of IBM Corp.
1) Telkomsigma Data Center Serpong, Banten 1997年建築開始 1998年運
用開始
2) Telkomsigma Data Center Surabaya, East Java 2008年8月運用開始
3) Telkomsigma Data Center Sentul, West Java 2012年4月運用開始

生体認証技術を使用したサーバールームへのアクセス方式の採用

床上 60cm までの浸水検知システム、自動消火システム、湿度・気温のコントロ
ールシステム、バックアップ発電機システムの導入
導入設備

30 分まで使用可能な UPS の導入

ケーブル配線の効率性を追求

深さ 20m、厚さ 60cm におよぶ保持壁を建物に導入。

24 時間のデータセンタと顧客先とのネットワーク監視サービスの提供
57
全景
導入効果

テレコムシグマ データセンタは、最高クラスの省エネ性能を達成することを目
的として導入されている。
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
58
c. ビズネット テクノヴィレッジ データセンタ
ビズネットテクノビレッジは、Grade-A のクラスのオフィスと 6,000m2 の床面積を持つ
Tier-Ⅲクラスのデータセンタを有し、研究、情報通信、銀行、メディア、その他の部門の
ビジネスをサポートするための組織である。
ビズネットテクノヴィレッジは、インドネシアでの固定通信、マルチメディアを扱うビズ
ネットネットワークスのグループの一員である。
事業名
ビズネットテクノビレッジ Biznet Networks (PT Dinamika Raya Prima)
導入サイト
Cimanggis, West Java 16965 – Indonesia
(About 35 KM South of Jakarta Central Business District (CBD) and 20
KM North of Bogor)
インドネシア
側関係者
導入期間


Biznet Networks (PT Dinamika Raya Prima)
Architect: Andra Matin and Denise Salinger (St. Legere Design
International)
2010 年 12 月建設開始 2012 年 7 月オープン

2.5MW の変圧器 4 台の導入によるグリッドからの電源二重化

Dinamic Rotary UPS の導入によるバックアップの実現

3 日間連続運転可能なディーゼル発電機の導入

データセンタのビル管理システムの導入

LED ランプ照明の導入

気温 23℃、湿度 55%を保持する空調システムの導入

火災検知システムと消火システムの導入

光ファイバー回線の運用による通信の二重化

RFID、PIN 番号によるセキュリティ管理システムの導入
導入設備
59

導入効果


データセンタのビル管理システムの運用により、15~25%のエネルギー消費と
20%のコスト削減が期待できる。
水消費量の最小化が期待できる。
周辺への自然公園に対する景観の提供(風景、水景、オープンスペース等)
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
d. ホルシム インドネシア
ホルシム インドネシアは、インドネシア国内で 3 位のシェアを占めるセメント事業者
である。年間 1 千 30 万トンに及ぶセメントの生産能力を有する。ホルシム インドネシア
では、EARN プログラムを実施しており、①石炭利用の効率化、②代替燃料の最大利用、
③製造過程の熱エネルギーの削減、④電力エネルギーの削減、⑤セメント粉砕プロセスへの
リサイクル素材を通じたセメント製造過程で発生するクリンカーの削減を目標とした取組
を行っている。
事業名
ホルシム インドネシアにおける省エネ導入の取組(EARN プログラム)
導入サイト
ホルシム インドネシア シラカプ工場、中央ジャワ
ホルシム インドネシア シワダン セメント粉砕工場、西ジャワ
インドネシア
側関係者

導入期間
1977 年よりシラカプ工場が操業
導入設備
導入効果
ホルシム インドネシア

バイオマス、混合廃液、家庭ごみ、オイルスラッジ等代替燃料の投入設備

オゾン層破壊物質の削減システムの導入

黒液処理を行うための排水処理システム(施設内で水を循環させる)

生態系に配慮したセメント工場周辺への緩衝ゾーンとしての森林の植樹





温室効果ガスについて、2012 年にセメント 1t当たり、4%の削減効果があった。
2012 年末に、20,000kg のオゾン層破壊物質の削減に成功。
クリンカ削減量は 9%
2012 年には 9.1%の石炭由来の熱を代替した。
51,000 本の植樹をセメント工場周辺に実施。
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
60
e. セメンインドネシア
セメンインドネシアはインドネシア国内に4か所のセメント工場を有し、年間 1,200 万
tのセメント生産能力を誇る。環境負荷を削減するために、①燃焼炉の改善、②代替燃料の
受入設備の整備、③ID ファンシステムの改善を行った。
事業名
セメント工場における効率改善
導入サイト
東ジャワ島、Gresik 市
インドネシア
側関係者

導入期間
2008 年、2009 年運転開始
セメン インドネシア

燃焼炉の改善

コベイヤー、ホッパー等のバイオマス等の代替燃料受入設備の導入

ID ファンシステムの改善:燃焼室内部への戻し空気の制御により、ガスと材料
の接触時間を制御する。
燃焼炉の改善
導入設備
受入設備の導入
ID ファンシステムの導入
61


導入効果



燃焼炉の改善による不完全燃焼の防止、燃焼プロセスの最適化が図られた。
石炭消費量の削減:2009~2012 年までバイオマスにより 162,990tを代替し
た。
石炭消費の削減により、2009~2012 年まで、5,966,000USD を削減。
熱エネルギーをクリンカ1t当たり、3363MJ から 2830MJ に削減。
バイオマス利用により、二酸化炭素発生量を1tのクリンカ当たり、785kgCO2 か
ら 721kgCO2 に削減。
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
62
3)スマートコミュニティ
a. 工業団地におけるスマートコミュニティ実証事業
ジャワ島の工業団地において、NEDO がエネルギー鉱物資源省(MEMR)と共同でスマ
ートコミュニティ実証事業を進めている。日本の技術を活用して、省エネと高品質の電力供
給を可能とする「スマート&エコ工業団地モデル」の構築を目指す。
事業名
インドネシア共和国・ジャワ島工業団地におけるスマートコミュニティ実証事業
導入サイト
ジャワ島スルヤチプタ工業団地*
* ジャカルタから東に 55km
日本側事業者
住友商事、富士電機、三菱電機、NTT コミュニケーションズ
(NEDO より委託)
インドネシア
側関係者
エネルギー鉱物資源省(MEMR)
PLN(国有電力会社)、スルヤチプタ工業団地、
当該工業団地内の複数の入居民間企業
実証期間
2012 年度~2016 年度
事業予算
約 35 億円
実証項目
 電力品質の更なる安定化技術
 エネルギーマネジメントシステム導入による省エネ及び需給調整
 共通基盤通信インフラシステム





配電自動化システム
無停電電源装置
電圧安定化装置
デマンドサイドマネジメントシステム(DSM)
工場エネルギー管理システム(FEMS)
導入設備
出所)NEDO プレスリリース
63
b. 繊維工業地区におけるスマートコミュニティ型省エネルギーの導入事例
タンゲラン地区において、インドネシア環境省、インドネシア工業省、GIZ(ドイツ国際
協力公社)が民間でのパートナーシップ育成を目的として、2011 年から 2015 年の計画期
間において靴メーカーである Adidas に関連した 5 か所の工場を対象として省エネ設備の導
入を行っている。
事業名
環境·気候変動のためのポリシーのアドバイスのプログラム
導入サイト
タンゲラン地区
アパレルとフットウェア業界におけるエネルギー管理と温室効果ガス排出の削減〜気
候変動緩和の成功例
事業関係者
インドネシア環境省、インドネシア工業省、GIZ
プログラム
参加事業者
プログラム名
“Energy Efficiency Awareness Campaign”
“Employee Energy Efficiency Awareness
Campaign”
“Energy Efficiency in Sewing Garment”
“Efficient Production Lighting”
“Perfect Boiler”
事業期間
PT Glostar Indonesia (PGS)
PT Pancaprima Ekabrothers
PT Panarub Industry
PT Kahoindah Citragarment
プログラム参加者
導入効果
PT Pancaprima Ekabrothers
PT Panarub Industry
PT Kahoindah Citragarment
2011 年~2015 年
プログラム参加者
PT Shyang Yao Fung (SYF)
導入設備
プログラム参加者
PT Shyang Yao Fung (SYF)
PT Glostar Indonesia (PGS)
導入設備/取組
・誘導電動機をサーボモータに交換
・圧縮機に洩れがある場合、即時報告
・新しいメーターの設置
・各建物にデジタルメーターを設置。
・2013 年の年月末に生産の各ラインで、そのデ
ジタルメーターをインストールすることを計画
・工場での誘導モータの全機の 82%を、サーボ
モータに交換。
・2013 年に現在使用している誘導モーターの残
りの 18%をサーボモータに置き換える計画
・生産エリアの蛍光灯を LED に交換。
・1 ランプあたり US $22 の平均価格で LED メーカ
ーから 3 つの提案を受けた
・プラントの古いボイラーを新しいタイプの “パ
ーフェクトボイラー”に交換
削減電力量
(MWh/年)
CO2 削減量
(CO2t/年)
PT Shyang Yao Fung (SYF)
75
60
PT Glostar Indonesia (PGS)
840
660
PT Pancaprima Ekabrothers
1,100
870
662
520
PT Kahoindah Citragarment
2,395
500
合計
5,072
2,610
PT Panarub Industry
出所)GIZ 等資料より三菱総合研究所作成
64
c. Makassar Smart City
マカサール市は、インドネシアの南スラウェシに位置する自治体であり、スマートシティ
プログラムが展開されている。その中に、インフラプログラム、グリーンプログラム、社会
プログラムがそれぞれ展開されており、特にグリーンプログラムにおいて、湖の浄化、固形
廃棄物の処理、省エネプログラムが位置づけられている。
2014 年にマカサール市による将来ビジョン(地域の叡智を活用した世界規模の市を目指
す)が策定されるとともに、2025 年の長期ビジョン(地球規模の視点に立ち、環境配慮、
持続可能性、沿岸域を活用した貿易、教育、行政サービス、文化の実現を図る)も策定され
ている。
事業名
スマートシティーを目指したマカサール市プログラム(省エネルギープログラム)
導入サイト
南スラウェシ、マカサール市
インドネシア
側関係者
・PT Unilever Indonesia Tbk, Peduli Negeri Foundation and Harian Fajar(マカサール市
クリーン&クリーンプログラム)
・PT Telkom (サイバーシティプログラム)
実証期間
2004 年より開始
事業予算
 165,858,498,800Rp(湖水地域の整備)







<インフラ整備>
空港モノレールの整備
バス停の整備
カレボシスタジアム、スポーツ施設の整備
ロサリービーチの整備
排水処理プラントの整備
エネルギーセンターの整備
インドネシアセンターの整備
導入設備
排水処理プラントの計画
マカサール市エネルギーセンターの計画
65
インドネシアセンターの整備計画
導入方針
<グリーンプログラム>

政府系建物への LED 照明とエアコンの導入プログラム(2013 年実施予定)

道路照明の導入(LED 照明)

Balang Tonjong 湖周辺地域の整備

固形廃棄物処理施設の整備、施設の運用とともに、3R の推進

森林整備
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
d. Summarecon Agung
スマレコンの代表的なプロジェクトは、ジャカルタでの住宅地域と商業地域を統合した
Summarecon Kelpa Gading で あ る 。 こ の プ ロジ ェ ク ト の 成 功 の 後 に Summarecon
Serapong と Summarekon Bekasi というプロジェクトがスタートしている。
事業名
スマレコンによりコミュニティ開発
導入サイト
Summarecon Kelpa Gading
インドネシア
側関係者



PT Summarecon Agung
PT Serapong Agung
PT Sinarmegah Jayasentosa

Serapong Kelpa Gading は、1976 年より開始

Summarecon Serpong は、1991 年より開始
期間

Summarecon Bekasi は 2010 年より開始
<Serapong Kelpa Gading>

550ha の区画に、30,000 世帯、2,000 店舗の商業地域を建設

広大な緑地空間を提供

統合型の水管理システムを導入
導入設備
Summarecon Kelpa Gading の計画図、敷地内の様子
66
<Summarecon Serpong>

500ha に 12,000 世帯、ショッピングセンター、大学、病院、スポーツ施設、シャトル
バス、コンベンションセンター等を整備
Summarecon Serapong の計画図、大学
<Summarecon Bekasi>

下水処理及び家庭ごみの処理プラントの建設
Summarecon Bekasi の計画図

導入方針


その他

街づくりの考え方として、広大な緑地スペース用意し、良好な環境を居住者に提
供しつつ、排水システムを地下に設ける。
グリーンビルディングの考え方を推進し、建物の初期段階の設計から、エネルギ
ー計算のためにソフトウエアを活用する。
FIABCI BNI Prix d’Excellence Awards2012 “sustainable development runner up”
を受賞
Green Property Awards2012, Clister Palm Residence (Summarecon Bekasi)
Green Water Management category を受賞
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
67
e. Ciputra Property
シプトラ不動産は、ショッピングセンター、ホテル、アパート、オフィスビル、レクリエ
ーション施設等の不動産をインドネシア国内で扱う法人である。
シプトラ不動産の扱う建築
物においては、
「グリーンコンセプト」を進める取組が行われている。
事業名
シプトラ不動産における省エネの取組
導入サイト
シプトラワールド1,2等シプトラグループの導入した施設
インドネシア
側関係者





PT Ciputra development TbK
PT Jaya Konstrulsi Manggala Pratama Tbk
Tatamula Nusantara Indah and PT Nusa Raya Cipta
Digo Group
PT Telkom Tbk
期間

1993 年より営業開始(シプトラワールド1ジャカルタ)
事業予算
 RP 1,055 Trillion (シプトラワールド1ジャカルタ)
<シプトラワールド1ジャカルタ>

商店街、アパート、ホテル、高級アパート、事務所、美術館等すべての施設を
5.5ha の区画に納めるスーパーブロックプロジェクトが進行中。2012 年完成予定。

40 階建てのビジネスタワーは、省エネと環境に配慮した建築物として知られてい
る。
シプトラワールド1ジャカルタ
導入設備
<シプトラワールド2ジャカルタ>

シプトラワールド1と同じ道路に面しながら、3.1ha の敷地内に、2 棟つの集合住
宅、1 棟のアパート、ホテル棟、オフィスビル棟が整備される。シンガーポールの
建築会社によって整備される。

集合住宅、アパートは 2010 年から運用開始。集合住宅には、図書館、ジム、サ
ウナ、スパ等整備されている。
シプトラワールド2ジャカルタ
68




導入方針



グリーンコンセプトにより、建物の省エネルギー、省水資源、土地利用の最適
化、汚染の減少化、洪水制御、天然資源保全を目標とする。
インドネシアのグリーンビルディングの基準により、二重ガラス、目的階制御機
能を有するエレベータ、スピード制御されるエスカレータの運用を朝 10 時から夜
9 時まで運用する取組を行っている。
トイレの排水に、再処理水が使用されている。
更なる省エネの実現のために、ビルの効果的な照明、エアコンの温度設定の導
入が行われている。
エアコン使用量を抑制し、T5 ランプによる更なる省エネ実現のために、赤外線
防止ガラスが導入されている。
太陽光、太陽熱のマイナス効果を抑制するために二重ガラスが導入されてい
る。
情報技術分野に関連して、BEMS が導入されており、セキュリティー、空気、周
辺温度、CO2 濃度、紫外線強度等をモニタリングしながら、エレベータの制御、
電力消費量、空調等をコントロールすることが可能。
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
69
(2) 競合先
インドネシア国内における日本企業の競合先としては、以下の企業が挙げられる。
1)Honewell Indonesia
日本企業の競合先としては、インドネシアの鉄鋼業と深い関係がある Honeywell が挙げ
られ、プラントの省エネルギーに取り組んでいる。
2011 年 8 月 22 日付の Honeywell Indonesia のプレスリリースによれば、インドネシア
の製鉄会社である Pt Krakatau Steel Group(PTKS Group)の系列会社である Karakatau
DayaListrik(KDL)は 、省 エネ ルギー によ る長期 的な コスト 削減 のため に、 Honewell
Process Solutions9を採択すると報じられている。
PTKS Group は、年間最大で 245 万トンの生産能力を有しており、KDL は、PTKS Group
に電力を供給している。このパッケージを活用することによって、PTKS Group の生産性
に影響を与えることなく、エネルギー消費量のモニタリング、管理、コントロールが可能に
なるとされている。
2)Schneider Electric
Schneider Electric 社はジャカルタ市内の食料品工場に電気設備の最適化を図るための
ソフトウェア(ID Spec Large)を導入している。Schneider 社によると、同工場では低圧
配電盤の移設により電力損失を 35%削減し、配線を 50%削減することが可能となった。
3)Siemens AG
Siemens 社の 100%子会社である照明メーカーの Osram 社はジャカルタ市内の Pacific
Place10(敷地面積 4 万 8,000 ㎡)に LED 照明を含む照明機器を導入しており、エネルギー
効率化や照明の長寿命化に貢献している。
また Philips 社のインドネシア工場に生産プロセスの自動化及びコントロールシステム
を納入している。Siemens 社によると、同工場では照明器具の生産量が 1 時間当たり 1500
個に増加し、作業員の労働環境改善に貢献した。
4)IBM
IBM は 1937 年にインドネシアに進出(進出当時の社名:Watson Bedriffsmachine Java
NV)
。国営鉄道会社へのデータ処理機器の販売等で業務を拡大し、2010 年には、ジャカル
9
化学、発電、製紙等プロセスを伴うプラント向けのオートメーション、制御システム等のサービスを提
供するパッケージである。
10
Pacific Place はショッピングモール、オフィスビル、ホテル、住宅を含む複合施設。
70
タに敷地面積 750 ㎡のデータセンタ(IBM Data Centre)を開設した。同センターは
ISO20000 認証を取得している。
また 2010 年には IBM Smarter Cities Summit を開催し、教育、医療、政府、政策立案
者など 300 名以上の参加者を集め、
スマートシティ構築のための同社の技術等を紹介した。
近年は、地方政府、交通、教育、金融、労働環境等の分野でスマート化推進のためのビジネ
スを積極的に展開している。同社の取組を以下にまとめた。
表 2.2-1 インドネシアにおける IBM のスマートシティの取組事例
項目
概要
Smarter Government
スラバヤ州政府に対し、正確且つ最新の住民情報管理のための統合シ
ステムを提供。
Smarter Computing
世界最大手の国営液化天然ガス会社 PT Badak に対し、経営効率の向上
と営業コストの削減のための ERP システム(IBM Power System)を提供。
Smarter Cities Challenge
2011 年 3 月、ジャカルタ市に IBM Smarter Cities Challenge を供与。IBM
は同社の精鋭の専門家による住環境及びビジネス環境改善のための分
析と提言をジャカルタ市に提供する。
Smarter Transport
2011 年 5 月、IBM のシニアコンサルタントがジャカルタ市と共同で同市の
交通システムの調査を実施。IBM は IBM Smarter Transport Maturity
Model を導入し、ジャカルタ市の交通渋滞問題解消のためのロードマップ
を策定。
Smarter Education
IBM Global Technology Service が 、 中 部 ジ ャ ワ 州 の
SunanKalijagaYogyakarta 大学にスマートな IT 環境構築のためのコンサル
ティングサービスを提供。
Smarter Work
イ ン ド ネ シ ア 大 手 の レ ス ト ラ ン ・ チ ェ ー ン Bumbu Desa 社 に 対 し 、
IBMLotusLive Engage を導入。ウェブ会議、SNS、メールによる社内コミュ
ニケーションの迅速化・円滑化を支援。
Smarter Banking
地域開発銀行協会(ASBANDA)と連携し、スマート・バンキングのための
ソリューションを提供。また IT 訓練やワークショップも開催。
2012 年 8 月、ICB Bumiputera におけるデータセンタ及びデータ・リカバリ
ーセンターシステムを受注。
2012 年 9 月、国内大手の BII Maybank が顧客の口座開設プロセスの改善
を含むドキュメント管理システムの提供を依頼。
2012 年 11 月:HSBC 系の Bank Ekonomi Raharja が IBM Power770、
Power750、DS8700、i-HA をベースとしたスマート IT ソリューションを導
入。
出所)IBM 資料より三菱総合研究所作成
5)Philips
シナールマス・グループ本社ビル(Sinar Mas Land Plaza)において照明システムを手
掛ける。同ビルでは、LED 照明を効果的に導入することにより、TLD 利用時の 30~40%の
省エネが可能となると同時に、より高い明るさ(LUX)も実現された。
71
(3) 協力先
インドネシア国内における協力先の候補として、以下の組織・企業が挙げられる。
1)Green ICT Council Indonesia
インドネシアにおいてグリーン IT の普及推進を図る団体であり、日本側におけるグリー
ン IT 推進協議会(Green IT Promotion Council)のカウンターパートである。2011 年に
設立された。
2)Bandung Techno Park
バンドンテクノパークは、情報通信系の技術系の大学、研究機関を中心に 2010 年に設立
された組織で、2013 年 8 月 26 日にバンドンテクノパークにおいて、「Japan-Indonesia
Environmental Friendly High-Tech & Green IT Forum in Bandung」というフォーラムを
開催している。今後、バンドンテクノパークの開発整備が進められることになっており、現
地の日本企業の進出が期待されている。同日のフォーラムにおいて、グリーン IT 推進協議
会(Green IT Promotion Council)とバンドンテクノパークの間で、今後のグリーン IT の
普及推進に向けて相互協力していく趣旨の覚書が交わされた。
3)Sinar Mas Land
1994 年創業の国内大手不動産開発会社。インドネシアで金融、製紙、農業及び不動産業
を手掛けるシナールマス・グループの子会社。同グループは持続可能な環境への取組に積極
的であり、本社ビル Sinar Mas Land Plaza Building はその象徴として建設された。
Sinar Mas Land はグループ本社ビルのある BSD(Bumi Serpong Damai)グリーン・
オフィス・パークの開発を手掛けた。BSD は、開発地域としてインドネシアで初めて BCA
Greenmark Award を受賞(2010 年 Gold 受賞)
。
4)Ciptra Property
シプトラ不動産は、シプトラワールド1ジャカルタ、シプトラワールド2ジャカルタ等の
大規模ホテル、オフィスビル、複合施設等を手掛けている不動産グループであり、その行動
方針として、
建物の省エネ化を含むグリーン化、クリーン化を進める方針を打ち出している。
今後のインドネシア国内における大規模開発において、
同時並行で進められるであろう省エ
ネ化の取組において、日本企業の受け入れ先となることが期待される。
5)Summarecon Agung,Tbk
スマレコンは、Serapong Kelpa Gading、Summarecon Serpong、Summarecon Bekasi
72
等大規模開発を手掛けており、
設備導入に際しての省エネの導入が今後期待されることより、
日本企業の協力先となる可能性がある。
6)Makassar city
マカサール市は、今後のスマートシティの実現における柱の一つとして、グリーンプログ
ラムを掲げており、その中で省エネや排水処理が位置づけられている。今後の同市の整備事
業の展開において、日本企業が参画できる可能性のあることから、日本企業の協力先となる
ことが期待される。
73
3. ベトナム
3.1
政策動向調査
(1) 政策
ベトナムにおける省エネルギー目標は、ベトナムエネルギー効率化計画(VNEEP)にお
いて設定されており、VNEEP を踏まえて、2011 年より省エネルギー法が施行されている。
1)Vietnam National Energy Efficiency Programme (VNEEP)
2005 年に商工省(MOIT: Ministry of Industry and Trade)が、ベトナムエネルギー効
率化計画(VNEEP: Vietnam National Energy Efficiency Program)を発表し、2006 年に
首相による承認を経て発効された。VNEEP は 2006 年~2015 年を対象期間とする、ベト
ナム全体で省エネを推進するための包括的なプログラムであり、次の 2 つのフェーズに分
かれて省エネ目標が設定されている。

Phase 1(2006 年~2010 年)
:国全体で 3%~5%の省エネ目標11。
省エネルギー法等の関連する法的枠組の整備や、省
エネ教育・啓発、キャパシティビルディング等に焦
点を置いている。

Phase 2(2011 年~2015 年)
:国全体で 5%~8%の省エネ目標。
より拡大・発展したプロジェクトを実施。
VNEEP は全部で 11 のプロジェクトを含む 6 つの要素で構成されている。それらの概要
を表 3.1-1 に示す。
表 3.1-1 VNEEP の概要
要素
省エネに関する
国家管理の強化
プロジェクト
省エネルギー措置に関する法的枠組の整備
メディアを通じた省エネについての国民意識の向上
省エネ教育及び
情報発信
小学校から大学レベルまでの学校教育システムへの省エネ教育の導入
省エネ方策の実践や情報提供のための、家庭におけるパイロットモデルの開発
高効率機器の
開発と普及
産業部門に
おける省エネ
建築物の省エネ
11
指定製品に対する省エネ基準の開発及びラベリング
省エネ基準を遵守する国内メーカーへの技術支援
(白熱灯から蛍光灯へ生産転換するメーカーへの技術支援プログラム)
エネルギー管理システムの開発
省エネに資する生産技術の改善、エネルギー監査の実施、省エネ診断への支援
建物の設計・管理における省エネのキャパシティビルディング及び実践
建築物のエネルギー管理のパイロットプロジェクト
BAU(Business as usual)ケースとの比較。Phase 2 も同様。
74
運輸部門に
おける省エネ
公共交通機関のエネルギー高効率化及びディーゼル船の燃費向上の研究
出所)商工省ウェブサイト等より三菱総合研究所作成
2)省エネルギー法(The Law on Energy Efficiency and Conservation)
上記の VNEEP を踏まえて、ベトナムにおける省エネルギー政策の基本法となる省エネ
ルギー法(The Law on Energy Efficiency and Conservation)が 2011 年 1 月に施行され
た。省エネルギー法で規定されている主な内容を表 3.1-2 に示す。
表 3.1-2
ベトナムにおける省エネルギー法の概要
内容
産業部門に
おける省エネ
建築物・照明の
省エネ
・ 省エネ計画の策定及び報告書の提出
・ 生産設備の高効率化
・ 工場、採掘場、発電所が対象
・ 公共の照明システムのアップグレード
・ 照明、換気、冷暖房等の効率、断熱基準等の省エネ評価手法の導入
運輸部門に
おける省エネ
・ 公共交通機関における省エネ投資の促進
・ 車両メンテナンスに関する規制
・ 燃料構成の最適化
農業における
省エネ
・ 農村における系統電力及び灌漑システムの強化
サービス業及び
家庭における
省エネ
・
・
・
・
ピーク時間のエネルギー使用の制限
高効率機器の使用
家庭における自然光及び換気を利用した省エネの促進
ラベリングされた家電製品の使用
政府機関における
省エネ
・ 政府機関のプロジェクトや施設における詳細な省エネ計画の提出及びエ
ネルギー監査の義務化
エネルギー集約型
産業における
省エネ
・ 省エネ計画の提出と実行
・ エネルギー管理士の任命
・ エネルギー監査の実施
車両及び
電化製品の管理
省エネの促進
行政管理の義務
・ 義務的ラベリング制度の導入
・ エネルギー効率最低基準の施行
・ 研究施設の拡張
・ 優遇税制や融資制度の導入
・ 主に商工省が省エネルギー法の履行に責任
(建築物の省エネ基準は建設省)
・ エネルギー統計のデータベースの作成
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
これらのうち、家電製品へのラベリングについては比較的制度設計が進んでいるが、その
他については、JICA やデンマーク政府、世界銀行等の国外機関からの支援を得つつ、実効
性のある制度の構築が進められているところである。
75
(2) 制度
ベトナムの各セクターにおける省エネに関する主な制度を表 3.1-3 に示す。
表 3.1-3
ベトナムの省エネルギー関連制度
制度
産業セクター
概要
指定事業者
年間 1000toe 以上のエネルギーを消費する製造業等
事業者は指定事業者となり、エネルギー管理士の任
命や報告書の提出等が義務づけられている。
省エネラベリング制度
商工省が定める基準を超える製品への認証エネルギ
ーラベルと、5 段階の星印でエネルギー効率の比較が
できる比較エネルギーラベルの 2 種類がある。
建築物エネルギー基準
実効性に乏しかった従来の制度に代わる、新技術基
準が 2013 年 11 月より発効となる。
燃費ラベリング制度
7 シート以下の乗用車を対象にした燃費ラベリング制
度が準備中であり、2014 年から開始予定。
業務セクター
運輸セクター
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
1)産業セクター
a. 指定事業者への規制
2011 年に発布された、省エネルギー法の実施細則 Decree No 21/2011/ND-CP により、
エネルギー多消費事業者に対するエネルギー管理制度が定められた。
エネルギー管理が義務
づけられる指定事業者となる基準を表 3.1-4 に示す。2011 年度は 1,192 社が指定事業者で
あった。
表 3.1-4
ベトナムにおける指定事業者の基準
部門
基準エネルギー消費量
産業、農業、輸送
年間 1,000 toe 以上
業務
年間
500 toe 以上
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
指定事業者には、エネルギー管理士の任命や、エネルギー管理計画及び報告書を毎年提出
することが義務づけられている。また、外部のエネルギー監査士による 3 年毎のエネルギ
ー監査も行わなければならない。2012 年のエネルギー監査では、
製造業の電力使用量を 10%
低減することを目標としている。
ベトナムでは制度がまだ緒に就いたばかりであり、エネルギー管理士・監査士の数や能力
が不十分であるため、JICA や DANIDA(デンマーク国際開発援助活動)などの国外機関
が研修に協力している。
76
2)業務・家庭セクター
a. 省エネラベリング制度
ベトナムの省エネラベルには認証エネルギーラベル(Confirmative energy label)と、
比較エネルギーラベル(Comparative energy label)の 2 種類がある。認証エネルギーラベ
ルは商工省が定める High Energy Performance (HEP)を満たしている製品に添付するラベ
ルであり、
比較エネルギーラベルは星印の数によってエネルギー効率の比較をすることがで
きるラベルである。ラベルのデザインを図 3.1-1 に示す。
図 3.1-1 ベトナムの省エネラベル
(上:認証エネルギーラベル、下:比較エネルギーラベル)
出所)商工省ウェブサイト
省エネラベルの対象製品は表 3.1-5 に示すように、5 つのカテゴリに分かれている。
表 3.1-5
ベトナムのラベリング対象製品
カテゴリ
対象製品
家電製品
直管型蛍光灯、扇風機、冷蔵庫、エアコン、電球形蛍光灯、蛍光灯用電子
安定器・電磁安定器、炊飯器、洗濯機、テレビ
業務用製品
コピー機、パソコンモニター、プリンター、商業用冷蔵庫
産業用製品
電気モーター、三相配電用変圧器
運輸製品
7 シート以下の乗用車
その他
公共用照明、28kW 以上の水冷式エアコン
出所)商工省資料より三菱総合研究所作成
77
Decision No 51/2011/QD-TTg(Decision No 03/2013/QD-TTg でタイムライン延期の修
正)により、ラベリングのロードマップが上記のカテゴリ毎に定められている。ロードマッ
プを表 3.1-6 に示す。
表 3.1-6
カテゴリ
家電
製品
ベトナムのラベリング制度ロードマップ
2011
2012
下記以外
自主的
冷蔵庫
洗濯機
テレビ
自主的
業務用製品
2013
2014
延期
義務化
延期
義務化
自主的
産業用製品
自主的
2015
義務化
延期
義務化
運輸製品
自主的
その他
義務化
不明
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
また、2015 年 1 月より、最低エネルギー効率に達しない家電製品の製造及び輸入が禁止
されることも規定されている。
2013 年 6 月末時点で、表 3.1-7 に示す数のラベルが商工省によって付与されている。
表 3.1-7
ベトナムのラベリング付与数(2013 年 6 月末)
対象製品
ラベル付与数
照明デバイス
155
扇風機
700
エアコン
278
洗濯機
154
炊飯器
285
モーター
5
変圧器
30
合計
1607
出所)商工省ウェブサイトより三菱総合研究所作成
b. 建築物エネルギー基準(National Technical Standards for energy efficiency buildings)
ベトナムの建築物エネルギー基準制度は、2005 年に発効した No. 40/2005/QD-BXD にて
定められているが、具体的な指針や強制力に乏しかったため、広く実施されてこなかった。
建設省(MOC: Ministry of Construction)は、世界銀行グループの一員である国際金融
公社(IFC: International Finance Corporation)と、2012 年に MoU を、2013 年に協力
協定を締結し、
実効性のある建築物エネルギー基準制度の策定のための支援を受けることと
なった。IFC は 2013~2017 年の期間に、ユーザーガイドや技術チェックリスト、及び研修
教材の作成のための技術的支援を提供することとなっている。
78
これらを受けて 2013 年 9 月 26 日、省エネビルの国家技術基準を定める Circular
15/2013/TT-BXD が公布された。この技術基準 QCVN 09:2013/BXD は、新築・改築される
延床面積 2,500m2 以上の民生用ビル(事務所ビル、ホテル、病院、学校、商業用ビル、店
舗兼住居用ビル)
を対象としたものである。これは 2013 年 11 月 15 日より発効となり、
2005
年発効の基準に置き換わることとなる。この新基準を遵守することにより、建築物のエネル
ギー消費量は 15~20%削減されると見込まれている。
3)運輸セクター
a. 燃費ラベリング制度
2011 年 9 月に公布された Decision No.51/2011/QĐ-TTg により、7 シート以下の乗用車
がラベリング制度の対象となることが定められた。 基準値やラベルの内容等の詳細な設計
が進められているところである(2013 年 7 月時点)。ロードマップでは、2014 年 1 月から
自主的ラベリングが開始され、2015 年 1 月以降は義務化される予定である。
ラベルには、リッター/100km で示される燃費(都市部走行、地方部走行)
、試験方法、
省エネルギー量、省エネ性能ランキング等を表示するなどの検討が行われている。
79
(3) 組織
ベトナムでは商工省(MOIT)が省エネルギーに関する施策をとりまとめており、VNEEP
の実施についても監督している。VNEEP の一環で、省エネルギー局(EECO: Energy
Efficiency and Conservation Office)が商工省の下に設立されており、詳細なプログラムの
策定や、省エネモニタリング・報告に関する業務を担当している。
ベトナム政府
(Government of Viet Nam)
商工省
(Ministry of Industry and Trade)
建設省
(Ministry of Construction)
省エネルギー局 (EECO)
Energy Efficiency and
Conservation Office
ベトナム電力(EVN)
Electricity of Vietnam
エネルギー研究所(IE)
Institute of Energy
中央給電指令所(NLDC)
国家送電会社(NPT)
科学技術省
(Ministry of Science and
Technology)
ベトナム標準品質センター
(VSQC)
Vietnam Standards and
Quality Centre
省エネルギーセンター(EEC)
Energy Efficiency Centres
電力関連公社
商工省組織
図 3.1-2
科学技術省組織
ベトナムの省エネルギー関連組織
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
1)商工省(MOIT: Ministry of Industry and Trade)
ベトナム商工省は 2007 年 7 月に、工業省と商業省が統合することにより設立された。工
業省がエネルギー分野を所管していたため、
業務を引き継いだ商工省が省エネルギー政策に
ついても監督官庁となっている。
VNEEP の 遂 行 を 監 理 す る た め の 省 庁 間 組 織 と し て 、 The Programme Steering
Committee が設立されており、商工省はその委員長として関係省庁を主導・調整する役割
を担っている。The Programme Steering Committee は、建設省、運輸省、教育訓練省、
科学技術省、文化スポーツ観光省、計画投資省、法務省、財務省、及び科学技術協会により
構成されている。
a. 省エネルギー局(EECO: Energy Efficiency and Conservation Office)
省エネルギー局(EECO)は、VNEEP の実効性を高めるために、2006 年に商工省(当
時の工業省)の傘下に設立された。EECO は、他省庁と協力して VNEEP を成功させるた
80
めに必要なアクションプランや詳細なプログラムの策定を行っている。また、中央政府から
地方政府まで、省エネに関連する行政組織やシステムを開発、発展させるという重要な役目
も担っている。EECO はエネルギー効率のモニタリングと報告に関する業務を所管する、
唯一の機関となっている。
2)建設省(MOC: Ministry of Construction)
建設省は、建設計画、建築、建設投資、また都市開発やインフラ、不動産市場、建設資材
等の監督官庁である。省エネルギーに関しては、建築物のエネルギー基準制度の監理を担当
している。
3)その他
他に省エネプログラムに関係する団体としては、以下が挙げられる。

省エネルギーセンター(Energy Efficiency Centres)
:
Hanoi、Tiengiang, HCM City, Phu tho, Dongthap, Haiphong, Danang の
ような大都市に所在

ベトナム標準品質センター(VSQC: Vietnam Standards and Quality Centre)
:
科学技術省の標準・計量・品質総局(STAMEQ: Directorate for Standards,
Metrology and Quality)の傘下で基準・規格の作成等を担当

エネルギー研究所(IE: Institute of Energy)
:
商工省の管轄下にあり、電源開発計画の策定や調査研究を担当

ベトナム電力(EVN: Electricity of Vietnam)
:
発送配電事業を行うベトナムの電力公社
81
3.2
市場動向調査
(1) 導入事例
1)BEMS
BEMS 導入事例調査にあたっては、ASEAN エネルギーセンターによる ASEAN エネル
ギーアワードの受賞ビル、及び APEC(アジア太平洋経済協力)のスマートコミュニティ
や 省 エ ネ ビ ル 等 に 係 る イ ニ シ ア テ ィ ブ で あ る ESCI ( Energy Smart Communities
Initiative)におけるベストプラクティス等から以下の事例を抽出した。今回は抽出した事
例のうち、特に優良と考えられる事例について個票にとりまとめている。
表 3.2-1
ベトナムにおける導入事例
事業名
個票
Pandanus Resort of Vietnam
Landmark Building of Vietnam
Ana Mandara Villas Dalat of Vietnam
Tien Dat Tourist Limited Company of Vietnam
School Material Center-Can Tho University, Vietnam
Sai Gon Mui Ne Hotel, Vietnam
Majestic Hotel, Vietnam
Six Senses Hideaway Ninh Van Bay Resort, Vietnam
Diamond Plaza Building of Vietnam
●
Ocean Park Building of Vietnam
●
HITC Building
●
Ngu Hanh Son District in Danang City
Legend Hotel
●
出所)ASEAN Energy Awards, APEC Energy Smart Initiative 等より三菱総合研究所作成
82
a. ダイヤモンド・プラザ・ビル
建物名
Diamond Plaza
所有者
International Business Center Corporation
(Vietnam Steel 40%、POSCO 60%出資のジョイントベンチャー)
導入サイト
ホーチミン市、Diamond Plaza(延床面積 約 57,000 m2)
導入設備
BEMS(計測デバイスやセンサー等、電力・冷房の自動制御システム)、
エアコン・送風機等へのインバーター設備、
照明の自動遠隔制御システム、省エネランプ、LED 照明
参画企業
POSCO Engineering & Construction (建設)
エネルギー
削減量
インバーター導入効果
: 450 万 kWh 以上(2,000 t-CO2 相当)
1995 年着工。1999 年に住宅及びオフィス部分が、2000 年に百貨店部分がオープンし
た 22 階建ての複合施設。ベトナム・韓国政府間の合意により開発計画が進められ
た。 商用電力を 2 系統で受電、100%の非常用電源を持ち、安定的で信頼性の高い電
力を利用可能。
・エネルギー消費量の分析等、エネルギー管理を継続的に実施
・インバーター導入費用は 15 億ドン(約 700 万円)
・中央制御室のコンピューターにより、季節や天候に合わせて照明を調整
・省エネに配慮した、自然光・風を取り入れる設計
・ASEAN エネルギーアワードを、2007 年にビル部門で、2008 年にはエネルギーマネジ
メント部門で受賞
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
83
b. オーシャン・パーク・ビル
建物名
Ocean Park Building
所有者
Hanoi Maritime Holding Company (MARINA HANOI)
導入サイト
ハノイ市、Ocean Park Building(延床面積 34,640 m2)
導入設備
空調設備への BEMS、空調設備の冷媒変流量制御、
窓への断熱フィルム、エリアの用途に合わせた高効率照明
参画企業
-
エネルギー
削減量
空調設備への BEMS 導入効果 :152,000 kWh/年
高効率照明の導入効果
: 83,000 kWh/年
2006 年~2009 年の合計
:780,000 kWh
2001 年竣工、2004 年より全面オープン。21 階建てのオフィスビルで、1、2 階はトレード
センター、残りはオフィスが入居している。ハノイ電力会社の最大需要家の一つ。
・計画時より省エネに配慮し、エネルギーマネジメントシステムを導入
・BEMS 導入費用は 7 億ドン(約 330 万円)
・自動調整プログラムにより、季節・週・日毎にエアコンの運転時間や温度を調整
・執務室には高効率な電子ブラスタを用いた蛍光灯 18W×3 本、廊下には電球型蛍光
灯 13W~26W 等、場所により異なる照明を導入。初期費用は 2.5 億ドン(約 120 万
円)、効果は 8,300 万ドン(約 40 万円)
・商工省の“Energy efficiency Building”の受賞ビル
・2010 年の ASEAN エネルギーアワードのエネルギーマネジメント部門(大規模ビル)
で 3 位入賞
その他概要
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
84
c. HITC ビルディング
建物名
HITC (Hanoi International Technology Center) Building
所有者
Schmidt Group of Companies
導入サイト
ハノイ市、HITC Building(延床面積 12,000 m2)
導入設備
自動エスカレーター制御システム、ポンプへのインバーター設備、T5 蛍光灯、
セントラルタイマー(ビル内の機器の稼働スケジュールを設定・制御)
室内温度の中央コントローラー、換気システム、
ビル外壁のアップグレード(窓へのフィルム、屋根、太陽光パネル等)
参画企業
電力消費削減率
・空調システム
・エスカレーター
・水冷ポンプ
:20%
:30%
:16%
エネルギー
削減量
1995 年オープン。シュミットグループが全額出資して建設された、ハノイで初めてのグ
レード A オフィスビル。
・エスカレーター制御システム、セントラルタイマー、温度コントローラー、換気システム
は、HITC ビルに合わせて開発
その他概要
・オープン当初から省エネに取組
・省エネへの投資回収は、合計で 1.5 年以下
・商工省の“the winner in the Building energy management unique creation”を 2010 年
に受賞
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
85
d. レジェンド・ホテル
ホーチミン市内のレジェンド・ホテルにおいて、二国間クレジット制度を活用した経済産
業省の事業を、日比谷総合設備及び三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券が受託して実施し
た。この事業は、最初にホーチミン市内の他のホテル及びオフィスビルも含めて省エネ診断
を行ったが、その中でパイロットプロジェクトに積極的だったレジェンド・ホテルに設備を
導入することとなった。
ベトナムの政府系企業 VietESCO 社と協働して ESCO 事業を行い、日比谷総合設備が開
発した BEMS が導入されている。日比谷総合設備はこの事業の成果に基づき、ベトナムに
おける事業展開を目指している。
事業名
ベトナムにおける高効率電化機器普及促進発掘調査事業
導入サイト
レジェンド・ホテル(ホーチミン市内)
日本側
事業者
日比谷総合設備(株)、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券(株)(経済産業省より委託)
(株)ヴェリア・ラボラトリーズ(協力企業)
ベトナム側
関係者
商工省(MOIT)
建設省(MOC)
ECC-HCMC(ホーチミン市省エネセンター)
VietESCO 社(政府系企業)
事業期間
省エネ
効果
2011~2012 年
約 US$100,000/年、約 700 トン-CO2/年(想定)
導入設備・
スキーム
出所)NEDO 資料、日比谷総合設備(株)資料等より三菱総合研究所作成
86
2)FEMS・データセンタ
a. Cao Lanh Food processing factory
建物名
Cao Lanh Food processing factory
導入サイト
Cao Lanh city, Dong Thap
導入設備
自動エスカレーター制御システム、ポンプへのインバーター設備、T5 蛍光灯、
セントラルタイマー(ビル内の機器の稼働スケジュールを設定・制御)
室内温度の中央コントローラー、換気システム、
ビル外壁のアップグレード(窓へのフィルム、屋根、太陽光パネル等)
エネルギー
削減量
蛍光灯の置換効果
: 約 6,000 kWh/年(約 3 ton t-CO2 /年相当)
ファン配置の再設計
:12,000 kWh/年以上
全方策の合計
:113,000 kWh/年以上(約 48 t-CO2 /年相当)
Global Environment Fund (GEF)の資金援助、国連開発計画(UNDP)監修の下に行わ
れた、中小企業のエネルギー効率向上化プロジェクトの一環。
Center for Industrial Promotion and Development Consultancy of Dong Thap がエネル
ギー監査を行い実施された。
・輸出米 200ton/日を生産する工場。主な使用エネルギーは電力と、石炭 44ton/年。
年間稼働日数 312 日で 7.8 億 VND 以上のエネルギーコスト
・電力ピーク時間帯の製造を避けた結果、ピーク時の電力消費量は照明用だけとなり
平均電力単価が 731 VND/kWh となり生産コスト低減
・40W T10 蛍光灯を、電子バラスト付きの 28W T5 蛍光灯に置換した結果、1,200 万
VND の投資額で、約 400 万 VND/年以上相当の電力を削減
・ファンの配置が非合理のために圧力損失が生じていたのを、配管システムの再設計
により解決し、約 950 万 VND/年の電力コスト削減。初期投資額 500 万 VND を約半
年で回収
その他概要
・老朽化して効率の落ちたエンジンを新しくした結果、3,000 万 VND/年以上のコスト低
減
・エネルギー監査により提案された方策をすべて実施した結果、年間 8,500 万 VND の
コスト削減
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
87
3)スマートコミュニティ
a. ダナン市
ベトナム中部に位置するダナン市では、持続可能な発展を目指して以下の 4 つの主要な
環境プログラムが実施されている。
① Building Da Nang – an environment city, city plan 2008
② Sustainable Urban Energy and Emission Planning (financed by World Bank)
③ Low Carbon Model Town (supported by APEC)
④ Climate Change Resilience (financed by Rockefeller)
ここでは特にエネルギーに関連の深い②及び③を取り上げる。
ア) Sustainable Urban Energy and Emission Planning (SUEEP)
事業名
Sustainable Urban Energy and Emission Planning (SUEEP) Project
導入サイト
ダナン市
参画企業、
関連機関
Da Nang People’s Committee
Korea Energy Management Corporation (KEMCO)
LG Electronics Co. Ltd.
期間
SUEEP は 3 つのフェーズで実施。
2013 年 2 月、KEMCO が第 3 フェーズの支援(事業化可能性調査、技術支援)を
20 万 USD で行う旨の MOU 締結。
・SUEEP は都市のエネルギー消費・CO2 排出計画策定を支援するためのガイドライン
と包括的枠組み
・以下の分野を対象として、長期的に持続可能なエネルギー利用の戦略を開発

運輸:2016 年までに BRT (Bus rapid transit) 導入、電動バイク推進

建築物:エネルギー監理、レトロフィット、グリーンビルガイドライン、効率的
運転、コンピューター電力削減プログラム
その他概要

公共照明:LED の使用推進、時間による間引き運転

電力:工場での節電、最終需要モニタリング、電球型蛍光灯の使用推進

水:漏水検出、水圧管理システム

固体廃棄物:発電利用、埋立地ガスの捕集、収集料金構造の改善
・LG 電子は、空調システムを供給するための KEMCO のパートナーとして指名された。
また、ダナン市のエネルギー消費の分析を行い、省エネ手法を提案する。
・KEMCO は、エネルギー管理士・監査士の訓練支援も期待されている。
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
88
イ) APEC Low Carbon Model Town
事業名
APEC Low Carbon Model Town Project
導入サイト
ダナン市 Ngu Hanh Son 地区
参画企業、
関連機関
Da Nang People’s Committee
アジア都市整備コンサル機構(AUDEC):コンサルティング
期間
2013 年 5 月、第 3 フェーズのキックオフ
2013 年中に報告書とりまとめ(予定)
・Ngu Hanh Son 地区の再開発計画
・以下の方策により、低炭素型モデル都市を目指す


下記により製造したバイオ燃料を BRT の燃料として利用
-
下水汚泥や生ゴミからのメタン発酵
-
プラントの種子油からのバイオディーゼル
低炭素型運輸システム
-
電動バイクの推進:Ngu Hanh Son 地区にエンジンバイクの禁止エリア
を設けると共に、無料の充電所を建設

その他概要

空港から Ngu Hanh Son 地区への幹線道路に BRT を運行
高効率建築物
-
川や海の未利用水利用ヒートポンプを用いた空調システム
-
BEMS、HEMS、FEMS
-
太陽光発電システム
-
環境に配慮した設計
-
環境に配慮した建設に対する包括的な評価システム
-
建築物の環境配慮ガイドライン
環境に配慮した行動の可視化と住民参加の促進
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
89
(2) 競合先
1)Schneider electric
Schneider electric(仏)はエネルギーマネジメント事業に力を入れており、ベトナムと
タイに店舗を有するスーパーマーケット(ビッグ C)へ省エネ設備や太陽光発電等を納入し
ている。2010 年にエネルギー監査を受けたビッグ C は、Schneider のエネルギー監視・管
理システムを 30 億ドンで購入している。これにより、電力消費量が 40%削減可能とされて
いる。
Schneider は 2013 年 3 月に、前述のレジェンド・ホテル(p.86)に参画しているヴェリ
ア・ラボラトリーズを幹事とするコンソーシアムに参加し、日本において BEMS 導入補助
事業のエネルギー利用情報管理運営事業者(BEMS アグリゲーター)に認定されている。
Schneider はアジアにおけるエネルギーマネジメントの事業展開を図っていくものと推察
される。
2)Cisco
Cisco は持続可能性を指向する ICT のリーディングカンパニーとして、2006 年よりエネ
ルギーマネジメント技術を開発してきた。Cisco の戦略は、複数のプラットフォームに対応
した、ネットワークに基づくエネルギー管理システムの開発であり、以下の特徴を備える。

Cisco ネットワークのデバイスとエネルギーデータを結びつける

IT 設備と施設のエネルギー管理のための、一般的なプラットフォームと簡易なドメ
イン管理ストラクチャー

IP ネットワークをビル管理ネットワークに集結させる Cisco ビル・メディエーショ
ン技術による、施設の設備と IT 設備の統合

クラウドベースでの消費電力低減の自動化と報告を行う IP デバイスのモニタリング
と管理
これらの戦略により、IT 及び施設運営に電力使用量の測定・モニタリング・管理を行わ
せ る エ ネ ル ギ ー 管 理 ア ー キ テ ク チ ャ ー で あ る 、 Cisco EnergyWise が 開 発 さ れ た 。
EnergyWise は電力消費の指針と具体的な方法を与える事により、電力制御を多数のデバイ
スにまで拡張、自動化し、イーサネットデバイスや IP 電話、IP 接続可能なビル照明設備等
の電力消費量を削減するツールである。
90
図 3.2-1 Cisco EnergyWise の概念図
出所)Cisco 資料
Cisco は ベ ト ナ ム の 大 手 不 動 産 開 発 業 者 で あ る M&C Corporation と 、 Cisco の
「Smart+Connected Communities」をベトナムで実現すべく、2010 年に MoU を締結し
た。
「Smart+Connected Communities」とは、ネットワークで接続された情報に基づき機
能する未来のスマートシティ実現へ向け、新しいビジネスモデルやサービス等のアプローチ
を提供することにより、持続可能なエネルギー需要の拡大に対処し、増大する都市人口のニ
ーズに応えるという、Cisco が提唱するビジョンである。
Smart+Connected Communities を実現する最初のプロジェクトとしては、M&C のフラ
ッグシップビルであるサイゴン M&C タワーが選ばれた。ホーチミン市の中心に位置する
41 階建てのこのビルは、高速通信システムやインターネットを介した家庭用自動マネジメ
ントシステム、電力・水の自動計測システム等を備えた、ベトナムで最も先進的なビルとな
った。
(3) 協力先
1)省エネルギーセンター(Energy Efficiency Centres)
ベトナムの EEC(省エネルギーセンター)は商工省の関連団体で、ハノイやホーチミン
等の大都市に設立されている。省エネ機器の導入事業や BEMS 導入事業の推進など、ベト
ナムの省エネ政策では実務的な役割を果たしている。
2)VietESCO 社
VietESCO は ECC-HCMC(ホーチミン市省エネセンター)等から出資を受けている政府
系の企業で、前述のヴェリア・ラボラトリーズ も 10%出資している。VietESCO は
91
ECC-HCMC と協働で、
ホーチミン市から外へ ESCO 事業の活動を拡げていく狙いである。
3)Tan Tao Investment & Industry Corporation
Tan Tao Investment & Industry Corporation(ITACO)は、ベトナムの主要な工業団地
及びインフラ開発業者である。ITACO が開発した Tan Tao Industrial Park では、公共照
明システムを見直し、
250W 高圧ナトリウムランプを 150W の新型ランプに交換した結果、
48.7%の省エネとなり、3,780 万 VND に相当する電力消費量削減効果を上げた。Tan Tao
Industrial Park はパイロットモデルとして照明に関する取組であったが、今後、他の分野
や工業団地においても波及していく可能性がある。
92
4. フィリピン
4.1
政策動向調査
(1) 政策
1)省エネルギー政策体系
フィリピンでは現在(2013 年 10 月時点)省エネルギー法は存在していない。このため、
代替的に法律体系の中で下位に位置する、行政令(Administrative Order:AO)、大統領
令(Executive Order:EO)
、エネルギー省覚書回覧(Memorandum Circular)が用いら
れている。留意すべき点としては、いずれも法律ではなく、政府、大統領が個々の権限で発
する命令に類するものであるため、法律と同等の強制力を有しない。例えば、大統領令は民
間に対するもので執行に強制力はない。AO は政府に対するもので執行に強制力がある。ま
た、エネルギー省覚書回覧については執行に強制力はない。
過去には 1990 年までの時限付きで省エネルギー法が施行されていたが、それ以降は 1998
年、2002 年、2010 年に、省エネルギー法案が議会に提出されたが、いずれも成立していな
い。省エネルギー法が存在していない現状においては、産業や消費者に対して法的強制力の
ある省エネ対策を原則として課すことができていない。
JICA では技術協力として「省エネルギー計画調査」(2011 年 1 月~2012 年 3 月)を実
施し、省エネルギー法策定に向けてアドバイスを実施した。JICA によると 2012 年末現在、
同調査による JICA の提案を基にフィリピン政府と国会が、法案成立に向けた具体的な検討
を進めている。
2)フィリピンエネルギー計画(Philippine Energy Plan)2012-2030
2012 年 12 月から実施が開始される、フィリピンエネルギー省(DOE)が作成した計画
である。本計画では中長期的なエネルギー政策が示されており、毎年アップデートされてい
る。
省エネルギーに関する方針としては、以下の 3 点を掲げている。

エネルギー効率・保全法案の通過を主張

新しいビジネスモデルとして民間事業者たる ESCO(Energy Service Company)の
活動を促進

国家省エネルギープログラム(The National Energy Efficiency and Conservation
Program: NEECP)の実施を継続。その中で特に、情報・教育・コミュニケーショ
ン(Information Education and Communication: IEC)キャンペーン、政府エネル
ギー管理プログラム(Government Energy Management Program : GEMP)デマ
ンドサイドマネジメントプログラム(Demand Side Management Program: DSM)
と、エネルギーラベリングと標準化の普及を重視
また、省エネルギーに関する数値目標も設定されている。全体としての目標は、全セク
ターの年間エネルギー総需要を 10%削減することである。各セクターの数値目標は、以下
に掲げた表の通りである。
93
表 4.1-1
各セクターの省エネ数値目標
単位:ktoe
セクター
2012
2015
2020
2025
2030
農業
16
17
20
25
30
産業
157
197
283
408
583
業務
127
164
241
345
482
家庭
140
179
265
401
588
交通
408
516
689
894
1169
合計
848
1073
1499
2072
2850
繰延容量(MW)
384
486
679
938
1291
1,413,303
1,786,955
2,496,928
3,451,188
4,747,802
二酸化炭素換算(トン)
出所)フィリピン・エネルギー省「フィリピンエネルギー計画 2012-2030」を基に三菱総合研究所作成
94
(2) 制度
フィリピンの主要な省エネ関連制度を表 4.1-2 に示す。
表 4.1-2
フィリピンの省エネ関連制度
セクター
制度
概要
産業・業務・
運輸
DOE へのエネルギー消費量
の報告制度
一定の基準以上エネルギーを消費する消費者は、
DOE にエネルギー消費報告書を提出する制度。
業務・家庭
エネルギー効率基準・ラベリン
グ制度
一部の家電商品を対象として、エネルギー効率の最
低基準や、ラベリング制度を規定。貿易産業省製品
標準化局の協力のもとで、法的拘束力を有するフィ
リピンナショナルスタンダードに規定。
政府
政府エネルギー管理プログラ
ム(GEMP)
政府機関で電力消費や石油製品の消費を最低 10%
削減することが義務付け。
産業
エネルギー管理士・エネルギ
ー診断
エネルギー管理士は設置が義務化されてなく自主
的に活用されている状況。エネルギー診断は DOE
などの省庁が企業向けに省エネに関するアドバイス
を行う制度。
運輸
Fuel Economic Run
各自動車の燃費を測定するプロフラム。自動車を対
象としたラベリング制度を将来創設するために必
要。
産業
フィリピン産業エネルギー効率
プロジェクト(PIEEP)
ISO 50001 に基づいたエネルギー管理システムを導
入を目指すプロジェクト。
家庭、政府
フィリピンエネルギー効率プロ
ジェクト(PEEP)
家庭・庁舎・街灯などにおける省エネを推進する事
業を多数含むプロジェクト。
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
ここでは、政府の行政令とエネルギー省覚書回覧に基づく省エネ関連制度と、DOE が運
営している国家省エネルギープログラム(NEECP)の中に示されている省エネ関連制度に
ついて説明する。
NEECP は、エネルギー利用の効率化を推進するために、2004 年 8 月に大統領が打ち出
したプログラムである。NEECP は DOE の省エネルギー部によって実施されているが、省
エネ法が法制化されていない現状では、ほとんどの取組が任意となっている。ただ、一部は
行政令や、他省との協力などによって義務化されている。また、NEECP が対象とするセク
ターは、商業用ビル・政府庁舎、産業・メーカー、住宅、電力、交通、農業の 6 セクター
と広範囲に渡っている。下記の 1)以外は NEECP のプログラムである。
95
1)エネルギー省覚書回覧(DOE Memorandum Circular No.93-03-05)
本覚書回覧では、年間 1,000kloe12以上のエネルギーを消費する産業、業務、運輸セクタ
ーのエネルギー消費者は、DOE に対して四半期エネルギー消費報告書(Quarterly Energy
Consumption Report: QECR)を提出することが定められている。また、年間 2,000kloe
以上のエネルギーを消費する場合は、年間省エネルギープログラム報告書(Annual Energy
Conservation Program Report: AECPR)を提出することが規定されている。
本制度は法的拘束力がなく提出は任意であるため、
報告するエネルギー消費者は大企業が
中心である。
ただし、
本制度はドン・エミリオ省エネ大賞という表彰制度の選考に活用され、
省エネルギー活動推進へのインセンティブとなっている。
2)国家省エネルギープログラム(NEECP)
a. エネルギー効率基準・ラベリング制度(Energy Efficiency Standards& Labeling:EES&L
Program)
1993 年 10 月、ルームエアコンのラベリング制度を皮切りに開始。家庭用機器のエネル
ギー効率基準とラベリング制度は、省エネルギー法がない中で、DOE には拘束力を持たせ
る権限が無いため、貿易産業省(Department of Trade and Industry:DTI)の製品標準化
局(Bureau of Product Standards:BPS)の協力のもとで法的拘束力を有するフィリピン
ナショナルスタンダード(Philippines National Standard:PNS)に EES&L を規定する
ことで運営されてきている。PNS では、メーカー、輸入業者に対して、①最低エネルギー
消費効率基準(Minimum Efficiency Performance Standards:MEPS)の遵守義務、②製
品全数へのラベル表示義務などが規定されている。
対象製品を以下に示す。
表 4.1-3 EES&L の対象製品
商品名
MEPS
ラベリング
エアコン
○
○
冷蔵庫
×
○
電球型蛍光灯(CFL)
○
○
直管蛍光灯
○
○
環形蛍光灯
×
○
蛍光灯バラスト
×
○
出所)RAQUEL S. HULIGANGA(2011), “Philippine Energy Standards and Labeling Program for
Household Appliances”を基に三菱総合研究所作成
12
1 million litres of oil equivalent
96
b. 政府エネルギー管理プログラム(Government Energy Management Program : GEMP)
公共セクターを対象としたエネルギー管理プログラムである。政府のオフィスにつき、電
力消費や石油製品の消費などを最低10%削減することが目指されている。対象機関は、すべ
ての政府機関、国営企業、国立大学、国立病院などの政府関係機関である(司法、立法機関
は除く)。
本プログラムは、以下の行政令に基づいており、政府機関に実施が義務付けられている。
ア) 行政令 103(Administrative Order 103)
2004 年 8 月に施行。本行政令では、政府の建物について、燃料、水、電気その他公共料
金のコストを最低 10%削減することが義務づけている。
イ) 行政令 110(Adminisrative Order 110)
2004 年に施行。GEMP を公式に制度化している。政府機関は、2005 年 1 月から最低 3
年間の内に、電力消費(kWh)と石油製品の消費(L)を最低 10%削減することが義務づ
けられている。
具体的には、
各政府機関は、
2004 年 9 月 1 日の月間平均消費量と比べて 10%、
電力消費を減らすプログラムを採択・実行しなければならない。また、同様に各政府機関は、
2004 年 9 月 1 日の月間平均消費量と比べて 10%、運輸(公用車が念頭にある)における燃
料消費を減らすプログラムを採択・実行しなければならない。
履行を確保する手段としては、
政府の建物において、エネルギー診断・監査を行う必要があることが盛り込まれている。
ウ) 行政令 126(Administrative Order 126)
2005 年 8 月に施行。GEMP の取組を更に強化するため、公用車の利用目的の明確化や、
政府機関内の空調に関する規定が定められた。
エ) 行政令 183(Administrative Order 183)
2007 年 7 月に施行。政府建築物における省エネを推進すべく、高効率照明を利用するこ
とが義務づけられている。また、政府予算により建設される住宅や学校などの建物について
も、高効率照明の設置を義務づけている。
c. エネルギー診断(Energy Audit)
政府機関は GEMP の中でエネルギー監査が義務付けられている。
エネルギー診断については、DOE は任意に、メーカーの工場、商業ビルやその他エネル
ギー集約型の企業に対して、省エネに関わる技術的なアドバイスを有償で提供している。
DOE の他にも、科学技術省(Department of Science and Technology:DOST)のフィリ
ピン産業・エネルギー研究開発会議(Philippine Council for Industry & Energy &
Research and Development:PCIERD)や工業技術開発研究所(Industrial Technology
Development Institute:ITDI)もエネルギー診断を任意で行っている。エネルギー診断士
97
としての国家資格は存在していない。
d. 燃費走行プログラム(Fuel Economic Run)
各自動車の燃費を測るプログラムである。新型の自家用車や軽量自動車に燃費の観点から
ブランド付けするとともに、
消費者に最も省エネな自動車を選んでもらうために行っている。
将来自動車のラベリング制度を整備するためにも、
このように燃費のデータを集めることが
必要である。
e. フィリピン産業エネルギー効率プロジェクト(Philippine Industrial Energy Efficiency
Project: PIEEP)
2011 年 12 月から 2017 年 5 月まで実施されるプロジェクトであり、国連工業開発機関
(UNIDO)及び地球環境ファシリティ(GEF)が資金協力している。ISO 50001 に基づい
たエネルギー管理システムを導入することで、フィリピンでの産業セクターのエネルギー効
率を改善することを目指している。DOE、DTI-BPS(貿易産業省・製品標準化局)と国連工
業開発機関・地球環境ファシリティが実施機関となっている。
f. フィリピンエネルギー効率プロジェクト(Philippine Energy Efficiency Project:PEEP)
2009 年から 2013 年までのプロジェクトであり、アジア開発銀行から 3,100 万ドルの融
資を受けて実施されている。DOE が実施機関となって、家庭、政府庁舎、街灯などにおけ
る省エネを推進している。具体的なプログラムとしては、照明に関して、庁舎、住宅などの
照明を省エネな照明に変えるプログラムがある。また、ビルの省エネに関して、グリーンビ
ルディングの評価システムも推進されている。
98
(3) 組織
1)国内組織の全体像
省エネルギーに関する政策・制度設計は、エネルギー省(Department of Energy:DOE)
が中心となって進めている。また、科学技術省(Department of Science and Technology:
DOST)も、技術的な側面にフォーカスして主に中小企業を対象として省エネルギー政策を
担当している。さらに、貿易産業省(Department of Trade and Industry:DTI)はエネル
ギー効率基準・ラベリング制度において DOE に協力している。
省エネルギー政策に関わる主要な機関をまとめると下記の図の通りである
(ただし委員会
は除く)
。
図 4.1-1
フィリピンの省エネルギー関連機関
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
2)エネルギー省(Department of Energy:DOE)
1992 年設立。DOE はエネルギー分野の監督官庁である。その主要な役割は、エネルギ
ー政策の策定の他、各種規制措置の制定・遂行、緩和・撤廃、電力産業の改革の監督、エネ
ルギー資源開発計画の策定・遂行、省エネルギーの推進などである。
DOE の中で省エネルギー政策を担当している部署は、エネルギー利用管理局(Energy
Utilization Management Bureau:EUMB)の下にある省エネルギー部(Energy Efficiency
& Conservation Division:EECD)である。
EECD の所管するセクターは、政府庁舎、産業・製造業、業務、家庭、交通、農業、電
力などにわたっており、省エネルギー政策を横断的に調整している。具体的なプログラムと
しては、前記の NEECP を実施している。
この他、省エネルギーに一部関連する局として、エネルギー計画の作成とエネルギー政策
の立案を行うエネルギー政策計画局(Energy Policy and Planning Bureau:EPPB)や、
99
規制緩和・民間資本の導入が進められている電力分野での設備計画と地方電化事業を担当す
る電力管理局(Electric Power Industry Management Bureau:EPIMB)がある。
3)貿易産業省(Department of Trade and Industry:DTI)
1987 年設立。DTI は、国の経済的発展による貧困撲滅という目標の下、ビジネス環境の
創造と消費者の繁栄の両立を促進するという責務を負っている。具体的には、輸出の拡大、
投資の促進、中小企業(MSMEs: Micro, Small and Medium Enterprises)の支援などを行
っている。また、製造業者や輸出入業者を監督する省庁である。
省エネルギー分野については、高効率な機器の市場での普及促進という側面で、製品標準
化局(Bureau of Product Standards:BPS)が、家庭用電化製品の最低効率基準やラベリ
ング制度の導入・運営において DOE に協力している。
4)科学技術省(Department of Science and Technology:DOST)
1987 年設立。DOST は、科学技術政策の方向性の決定や関係者間の調整を行うほか、科
学技術の開発を支援する政策・プロジェクトを形成するという責務を負っている。推進する
プログラム・プロジェクトとして 11 分野が設定されているが、その中にエネルギー分野が
含まれている。省エネルギープログラム(Energy Conservation Program)もこれに含ま
れる。
a. フィリピン産業・エネルギー研究開発会議(Philippine Council for Industry & Energy &
Research and Development:PCIERD)
DOST 傘下の PCIERD は、は中小企業(SMEs: Small and Medium Enterprises)の省
エネルギー推進に向けた支援を行っている。PCIERD では、製造業の業界団体であるフィ
リピン産業連盟(Federation of Philippine Industry:FPI)の協力の下、中小企業(鋳物、
セメント業界)に対する省エネ推進活動、ベスト・プラクティスの共有を行っている。具体
的には、これまで以下の活動を実施している。

商業ビルのモデリング・デザインに関するガイドライン策定

セメント工場、砂糖工場におけるエネルギー管理(省エネ診断)

高効率照明、エアコン、冷蔵庫のエネルギー効率測定の技術支援
b. 工業技術開発研究所(Industrial Technology Development Institute:ITDI)
DOST 傘下の ITDI は、エネルギー変換技術・システム、工業プロセスエネルギー効率
化、技術交流・取得に関する R&D を担っている。また、再生可能エネルギーの利用促進、
バイオマス利用等も進めている。
省エネルギー分野においては、産業セクターを中心に商業・業務セクターにも、エネルギ
ー診断を提供している。1999 年よりエネルギー診断を開始し、これまで 100 社以上の個
別企業を対象に省エネ診断を実施している。現在は、食品加工業界、鉄鋼業界、鋳物業界を
対象にベンチマーキングをプロジェクトとして実施している。
100
5)電力保全・需要管理委員会(The Committee on Power Conservation and Demand
Management)
1993 年 2 月施行の大統領令(Executive Order 123)によって、電力分野での省エネと
需要管理を進めるために設立された。この委員会の議長は、エネルギー問題諮問委員会
(Council of Advisers on Energy Affairs)の委員長である。また、以下の省庁からも代表
者が参加している。エネルギー省、教育・文化・スポーツ省、貿易産業省、内務・自治省、
労働雇用省、マニラ首都圏庁、国営電力公社、国営石油会社、国家電化庁である。
6)道路交通における燃料保全・燃費効率化委員会(The Committee on Fuel conservation
and Efficiency in Road Transport)
1998 年 3 月施行の大統領令(Executive Order 472)によって、運輸分野での省エネと
燃費向上を推進するために設立された。また、道路交通にいて燃料の効率的な利用に関する
情報発信キャンペーンを全国的に企画・実行することを目的としている。また、道路交通に
燃料消費の状況を定期的にモニタリング・評価している。
101
4.2
市場動向調査
(1) 導入事例
1)BEMS
BEMS 導入事例調査に当たっては、ASEAN エネルギーセンターによる ASEAN エネル
ギーアワードの受賞ビル、及び APEC(アジア太平洋経済協力)のスマートコミュニティや省
エネビル当に係るイニシアティブである ESCI(Energy Smart Communities Initiative)
におけるベストプラクティス等から以下の事例を抽出した。
表 4.2-1
フィリピンにおける導入事例
事業名
個票
Zuellig Building
1800 Eastwood Avenue Building
The Enterprise Center
Meralco Management and Leadership
Center Foundation, Inc of Philippines
●
●
●
Development
JPMorgan Chase & Co of Philippines
Market! Market! Comprehensive Energy Management of
Philippines
Greenhills Shopping Center,
Iligan Cement Corporation
Polo Brewery San Miguel Corporation
Republic Cement Corporation
Toshiba Information Equipment (Phils), Inc of Philippines
UP Ayala TechnoHub of Philippines
Epson Optical Inc. of the Philippines
Rural Power Project
Makati Stock Exchange
●
BTTC Centre
●
McKinley Hill Cyberpark
●
出所)ASEAN Energy Awards, APEC Energy Smart Initiative 等 より三菱総合研究所作成
102
a. Zuellig ビル
計画名
Zuellig Building
導入サイト
(敷地面積)8,285 m2
所有者
Zuellig Group
開発事業者
完成時期

開発:Bridgebury Realty Corporation(Zuellig Group 子会社)

建築設計: Skidmore, Owings & Merrill LLP (SOM)

設計:W. V. Coscolluela & Associates, Manila

エンジニアリング・コンサルタント: Meinhardt Philippines

総合建設請負:Leighton Philippines
2011 年
 Siemens 社の Building automation solutions(具体設備不明)

Schindler 社のエレベータ及びエスカレータ (23 基、うち 17 基は高速の
Schindler7000、エレベータ用コンバータ(Schindler Power Factor One)、traffic
management system

二重構造のセラミック・フリット・ファサード等の採用による日中の採光と外景
の確保
概要
(導入設備)

オフピーク時の冷却水ポンプによる節水

節電型照明:
・
共用スペースにおける光電池を活用した自然光調整システムによる照
明の節電。
・

空調
・
導入効果
備考
オフィススペースにおける occupancy sensor の導入による照明の節電
占有率の高いエリアと RA ダクトへの CO2 センサーの設置
節電効果:年間 430 万 kW、 節水効果:年間 6 万㎥
米国グリーンビルカウンシルの定める LEED-CS のゴールドレベルにフィリピンで初
めて認定された。
全景
出所)アジアビジネスカウンシル等資料より三菱総合研究所作成
103
b. 1800 イーストウッド・アベニュー・ビル
計画名
1800 Eastwood Avenue Building
導入サイト
Quezon City
施主
Megaworld Corporation
開発事業者
管理:First Oceanic
AEA2009 年のエネルギー効率の高い建物部門の新設・既設の部で 3 位
備考
(受賞理由:照明管理、エレベータ利用、節水型トイレ、さらには入居企業(テナン
ト)と協力しての電力消費の最適化への取組等)。
全景
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
104
c. エンタープライズ・センター
計画名
Enterprise Center
導入サイト
Makati City (敷地面積:54,872 m2 )
施主
KSA Realty Corporation(Kuok Group、ING、A.Soriano Corporation の JV)
管理: Shang Properties Management Services Inc. (SPMSI)
開発事業者等
構造エンジニア:Aromin & Sy Associates, Inc.
設計:Wong & Tung International Limited(香港)、 ARADS & Associates(現地)
完成時期
1995 年(竣工)、1999 年(完成)

概要
(導入設備)
BMS を導入。DDC モニタを利用し、空調、防火設備、配管(水道・ガス)、電
力、セキュリティ及び動力系システムを制御。

空調システムによる冷却効果の低減を防ぐために、窓に熱反射ガラスパネル
を採用。
備考
AEA2008 年のエネルギー効率の高い建物部門の改修の部で 2 位
全景
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
105
d. マカティ証券取引所ビル改修プロジェクト
計画名
Makati Stock Exchange
導入サイト
Ayala Avenue, Makati City
所有者
Ayala Corporation
完成時期
1971 年、1996~2005 年にかけ改修
改修時に、空調、エレベータ、照明に最新技術を導入し、省エネ化を実現。

概要
(導入設備)
空調
•
冷却ユニットの更新
•
コンデンサー洗浄システムの導入
•
エア・ハンドリング・ユニットの冷却コイル交換
•
高効率のエア・ハンドリング・ユニットの導入
•
すべてのコンデンサーと冷却水ポンプに可変周波数ドライブ(VFD)を導入.

動力系
•

すべてのエレベータ・ユニットを効率性の高いユニットに交換.
照明
•
共有エリアにおける蛍光灯の電圧制御装置の導入
•
駐車場フロア、廊下及び非常階段における減灯
•
駐車場フロアにおけるラピッド・スタート型安定器から電子安定器への交換
•
賃貸及び共用スペースにおける電力計の校正
導入効果
年間約 127,000US ドル(941000kWh 相当)のコスト削減効果
備考
AEA2006 年の改修部門 2 位
全景
出所)アジアビジネスカウンシル等資料より三菱総合研究所作成
106
e. BTTC センター
計画名
BTTC Centre
導入サイト
Greenhills、San Juan City
所有者
開発:Hantex Land Corporation,
開発事業者
建築管理、構造設計:R. S. Caparros & Associates (RSCA)
建物管理:CBRE Philippines
完成時期
2012 年
概要
(導入設備)

建物内での水再利用

二重ガラス壁(自然光を取り込みつつ、外気熱の 7 割程度をカット)
備考
LEED ゴールドレベル認証取得、IT センターとして San Juan 市で初の PEZA 認定
全景
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
107
f. マッキンリー・ヒル・サイバーパーク
計画名
McKinley Hill Cyberpark
導入サイト
Fort Bonifacio Taguig City、(賃貸可能面積:3 万㎡(全 8 棟のビルの合計面積))
所有者
Megaworld Corporation
(http://www.megaworldcorp.com/Projects/OurCommunities.aspx)
開発事業者
Megaworld Corporation
完成時期
2008 年
概要
(導入設備)

セミ・オートメーション式のビルマネジメントシステム(BMS)

VRF 空調システム
備考
PEZA 認定、LEED ゴールドレベル認証
全景
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
108
2)FEMS・データセンタ
a. A Manufacturing Plant in Philippines
計画名
不詳
導入サイト
Taguig 近郊
参画事業者
Schneider Electric

エネルギー消費モニタリング
•
PowerLogic® Power Metering System
(6 サイト 84 個の電力メーターすべての電力消費量を計測)
•

PowerLogic データの定期的モニタリング及び分析
意識改革(15%の省エネ実現)
•
コンプレッサーの運転最適化
(新しい空気圧レベルへの設定で電力 8.14%削減)
•
概要
(導入設備)

退出時の照明・空調のスイッチオフ
照明の最適化・制御
•
自動制御
•
倉庫の照明を LED 化

モーター制御
•
冷凍システム 10HP の真空ポンプに可変速駆動(VSD)導入
•
メインのエアコンプレッサー75HP に可変速駆動(VSD)導入

エネルギーモニタリング
•
モニタリングシステム改善
(インターネットでエネルギーデータにアクセス可能、月次レポート作成)
これらの導入により、3,953,576 kWh の省エネ達成(4,300 万ペソ相当)
備考
フィリピンの製造業における Schneider Electric の導入実績
工場内の様子
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
109
b. ON Semiconductor Philippines, Inc.
会社名
ON Semiconductor Philippines, Inc.
導入サイト
Golden Mile Business Park, Governor’s Drive,
Barrio Maduya, Carmona,Cavite
参画事業者
RN Ferrer, AG Araja
施設概要


サーバー数の削減
・
仮想化とクラスタリングによるサーバーの整理
・
データセンタ内のハードウェアを減らし、空調費用を削減
熱効率の改善
・
サーバーラックの冷気吸入口と排気口を交互の通路に配して空気の循環
を管理することで空調コストを削減
外観
110
内部
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
c. Analog Devices Gen. Trias, Inc(ADGT)
会社名
Analog Devices Gen. Trias, Inc. (ADGT)
導入サイト
Gateway Business Park, Gen. Trias, Cavite, Philippines
参画事業者
DELL(サーバー)、VMware(仮想化ソフト)、EMC (記憶装置配列ソフト)、
A.G. Araja Construction and Development Corp(設計・建設コンサル)、
Eco Solutions(LEED コンサル)
施設概要


サーバーの統合
・
2010 年以来、サーバーの 82%を仮想化して統合
・
仮想化により 52 台のサーバーの削減に成功
・
ADGT の IT 部門が実施
新社屋の建設
LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)基準に準拠
備考
ADGT の第 3 号社屋は LEED からゴールド認証を受けた環境対応ビルである。
外観
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
111
d. Integrated micro-electronics Inc,
会社名
Integrated micro-electronics Inc,
導入サイト
Data One at Libis, Quezon City
参画事業者
Schneider Electric
施設概要

先進的な空調システム

サーバーの仮想化システム

EMS(電子機器製造委託サービス)企業

グリーン IT に関する現在までの取組は以下の通り。
備考

・
化学行程における3R運動(リデュース、リユース、リサイクル)
・
廃棄物の分別
・
廃棄物の堆肥化
排出される廃棄物の 97.5%を再利用する
外観
作業風景
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
112
3)スマートコミュニティ
a. クラーク・グリーン・シティ(Clark Green City)
計画名
導入サイト
Clark Green City Project
クラーク経済特別区(Clark Special Economic Zone(CSEZ))内
(総敷地面積 9,450ha)
開発主体
フィリピン共和国基地転換開発公社
(BCDA:Bases Conversion and Development Authority)
完成時期
2013 年~2016 年

フィリピン・ルソン島南西部のパンパンガ州にあるクラーク米空軍跡地に 1993
年に設立されたクラーク経済特別区(CSEZ)のサブゾーンにおけるプロジェク
ト(CSEZ は国際線・国内線の空港を中心としたメインゾーンと 7 つのサブゾー
ンで構成されており、クラーク・グリーン・シティはサブゾーンに位置する)。

2013 年 8 月に、BCDA が作成したクラーク・グリーン・シティのマスタープラン
が国家経済開発局(NEDA)により承認された。大統領の承認を受けたうえ
で、同計画が本格的に始動する見通しとなっている。

BCDA はマスタープランに基づき開発地域の事前調査と詳細計画の策定を担
うコンサルタント募集のための入札を行っている(2013 年 8 月に予備入札が
公示され、9 月初めに、応札した事業者から本入札に参加可能な 5 社を選定
予定)。
概要

クラーク・グリーン・シティは‘Green and Intelligent Metropolis’を目指してい
る。
 ‘Green’の要素:敷地内の全建物に、BMS、再生可能エネルギー等を
採用。
 ‘Intelligent’の要素:居住区、商業地区、政府地区に最先端の IT 光フ
ァイバー網を敷設予定。ICT 化を推進するために、BCDA は 2012 年
12 月に、CISCO システム社(米)、センティオス(Cisco と韓国 KT 社の
JV ) と 覚 書 を 締結 。 CISCO シ ス テ ム の Cisco Smart+Connected™
Communities をプラットフォームとして導入し、持続可能な都市の創設
を目指すとしている。CISCO システムとセンティオスはマスタープラン
をレビューし、BCDA に対し必要な情報提供を行う。
113
マスタープランにおける 5 つの開発区域
全景
プロジェクトにおける 5 つの開発区域:
青:Government District、赤:Central Business District、茶色:Academic District、
緑:Agri-Forestry R&D District、 黄色:Welness &Eco-Tourism District
出所)BCDA 資料
出所)各種資料より三菱総合研究所作成
114
(2) 業界構造
グリーンビルディング、グリーンファクトリー、グリーンデータセンタの各業界における
主要プレイヤーを掲載する。
1)BEMS
順位
(市場
シェア)
1
セクター
設計
RN Ferrer
A.G.Araja
Construction
and
Development
Corp.
2
ファシリティコ
ンサルタント
サプライヤ
ー
RN Ferrer
別表
デベロッパー
DMCI
A.G.Araja
Construction
and
Development
Corp.
TCGI
建設業者
DMCI-P1
CCT,
Taikisha,
A.G. Araja
Construction and
Development Corp.
サプライヤーのみの業界構造は以下の通り。
順位
(市場
シェア)
サプライヤー
駆動装置・
モーター関連
空調
自動化システム
照明
1
Atlas Copco
Schneider Electric
Schneider Electric
Edgetech
2
Gen. Elev. Corp
Dunham Bush
Serv Com.
NSIS
3
Edgetech
Trane Phils
N/A
Centron
4
Dunham Bush
BAC
N/A
N/A
5
Trane Philippines
LIANGCHI
N/A
N/A
2)FEMS/データセンタ
順位
(市場
シェア)
1
セクター
設計
N/A as per OSPI
N/A. Analog
Devices’ I.T.
executed the
consolidation
project
2
ファシリティコンサ
ルタント
N/A
建設業者
サプライヤー
別表
N/A
N/A
N/A
サプライヤーのみの構造は以下の通り。
順位
(市場
シェア)
1
サプライヤー
駆動装置・
モーター関連
Schneider
空調
Precision Aircon
自動化システム
N/A
115
照明
N/A
(3) 競合先
1)Siemens
シーメンスではビルの省エネシステムについて上述の Zuellig ビルに加え、ロビンソン・
ショッピングモールからも受注している。
2)Schneider electric
Zuellig ビルにエレベータ及びエスカレータを合計 23 基、エレベータの電力再利用シス
テム、並びに効率的な配置管理システム(traffic management system)を納入している。
また、
フィリピンエネルギー省と協力してエネルギー効率の高い構造や改造建物の建築に
取り組んでいる。
3)JEC(Jardeine Engineering Corporation)
香港に拠点を置き、アジア全域で事業を展開するジャーディン・マセソン・グループのエ
ンジニアリング事業子会社。1998 年にフィリピンに進出し、建物省エネ分野でプロジェク
ト・コントラクト及び設備運用・メンテナンスサービスを提供している。同社が手掛ける主
なプロジェクトを以下に挙げる:
表 4.2-2 フィリピンにおける JEC の主なプロジェクト
プロジェクト
IBM 技術施設
外資大手金融機関の
データセンタ
サービス分野と概要
不動産管理会社 Jones Lang LaSalle 社が管
理する IBM の技術施設における HVAC、電
気制御、サーマルスキャン、UPS、FDAS の
運営、メンテナンス
マニラ市内 3 件のデータセンタにおけるメイン
スイッチボード、冷水ファンコイルユニット、コ
ントロールパネル、漏水検知、オートダイヤラ
ーシステム、照明 PDU 電力測定機器のメン
テナンス
開始時期
2009 年
2009 年
Ayala Land 所有物件
Ayala Land が所有する 24 物件の空調・電気
制御システムの運営及びメンテナンス
2006 年
ON Semiconductor
Corporation
(半導体大手)
HVAC システム及び冷却塔水処理設備のメ
ンテナンス、ターボ冷凍設備の設置
2005 年
Universal Robina
Corporation(URC)
国内大手食品メーカーURC の 5 工場の空調
システムの BAS 設置、運営及びメンテナンス
2002 年
Coca-Cola Bottlers
商品開発・製造プラント 3 件の空調システム
の設計及び導入
2010 年
空調システム設計及び導入
2010 年
ePLDT BPO コールセンター
出所)JEC 資料より三菱総合研究所作成
116
(4) 協力先
1)Ayala Land
国内最大手デベロッパー。建設子会社 Makati Development Corporation(MDC)及び建物
管理子会社 Ayala Property Management Corporation(APMC)とともに、住宅、ショッ
ピングセンター、ビジネスセンターなどの開発運営を手掛ける。LEED 認証を得た Makati
Stock Exchange ビル(上掲)や AEA を受賞した UP Ayala TechnoHub を手掛けている。
2)Megaworld Corporation
国内大手デベロッパー。1989 年に設立され、現在では持ち株会社ライアンス・グローバ
ル・グループの不動産事業部門となっている。住宅用不動産開発(2005 年時点:約 200 件
の物件)を中心に、ホテル、リゾート、レジャー施設等の開発も行っている。
主なプロジェクトにはフィリピン経済区庁(PEZA)より経済特区に指定されている IT
パーク Eastwood Cyberpark がある。
3)PGBC(Philippine Green Building Council)
PGBC は、持続可能な環境の確保を目的に、不動産業界におけるグリーン・プラクティ
スに関する知見の共有を促進するために設立された国内 NPO。中立的立場から、グリーン・
ビルディング評価基準(Building for Ecologically Responsive Design Excellence (BERDE))
の策定に取り組んでいる。
117
5. まとめ
本調査では、我が国関連産業がグリーン IT をアジア展開するする際の基礎情報として、
アジア各国におけるグリーン IT 関連の政策動向、市場動向を調査した。これにより、アジ
ア各国のエネルギー消費量削減に貢献することを目的としている。
前章までに各国の動向を整理した。そこでここでは、政策動向、市場動向のそれぞれにつ
いて、各国横並びの視点から比較整理を行った。
(1) 政策動向
本調査で対象としたアジア 4 ヶ国における省エネルギー関連制度の整備状況を次表に示
す。
表 5-1 アジア各国の省エネルギー関連制度の整備状況
産業分野
国
エネ管
その他
制度
シンガポール
○
業務分野
標準化・
省エネ
ラベリング
建築基準
○
○
・エネ管資格認定
・ESCO 認定
その他
・グリーンデータセンター基準
・省エネ加速償却制度
インドネシア
○
○
○
ベトナム
○
○
○
フィリピン
○
○
○
グリーン IT の対象となる産業分野では、エネルギー管理士設置義務が基礎的な制度の一
つである。更に業務分野では、エネルギー効率標準化及びラベリング制度、省エネルギー建
築物基準が挙げられる。
これらの制度については、
調査対象のすべての国において施行されていることが明らかと
なった。すなわち、アジアではいずれの国においても、省エネルギーの必要性が認識されて
おり、法制度面での整備が進められ、グリーン IT など省エネルギー技術の市場が拡大する
素地が整えられつつあることを意味する。
一方で、省エネルギーへの取り組みについては、国により進展度に差があることを認識す
る必要がある。先進国であるシンガポールでは、エネルギー管理士設置義務制度を補完する
ために、エネルギー管理士の能力向上を目的とする資格認定制度を設けている。また、ESCO
認定制度も保有している。さらに、シンガポールの省エネルギー設備・技術に対する加速償
却制度など、省エネ導入を促進するための各種助成制度が制定されている。
このように、シンガポールなど省エネ関連制度が既に充実している国では、既に市場も立
ち上がっており、我が国のグリーン IT を積極的に事業展開していくことが望まれる。
その他のアジア各国では、省エネ関連制度がまだ緒についた段階である。そこで、制度設
計支援等の活動を継続し、グリーン IT など優れた省エネルギー技術が普及する環境づくり
を行っていく必要がある。
118
(2) 市場動向
アジア地域が、経済成長と地球環境問題への対応を両立させ、持続的な社会の実現を目指
すためには、
「IT 自身の省エネ」と「IT を用いた社会の省エネ」を軸とした我が国発の「グ
リーン IT」をアジア域内に普及させることが有効である。
「IT 自身の省エネ」に関しては、シンガポールの取り組みが注目される。シンガポール
は、自然災害が少なく、電力供給が安定しており、しかも通信環境と人材が充実しているた
め、情報通信基盤としてのデータセンターの整備が進んでいる。そこへ、シンガポール建設
庁と情報通信開発庁との共同主管により、「グリーンデータセンター基準」が制定されてい
る。これは、データセンターにおけるエネルギー効率の改善及び環境負荷の低減を目的とし
た制度である。このような背景により、シンガポールでは政府や産業界のデータセンター向
けにグリーン IT や省エネ技術の導入が進んでる。その他の国では、インドネシアでもデー
タセンターへのグリーン IT 導入事例が見受けられる。このように、アジアの経済成長が続
き、情報通信基盤の整備が進むにつれて、このようなデータセンターへのグリーン IT 市場
は拡大するものと予想される。
「IT を用いた社会の省エネ」に関しては、スマートコミュニティの取り組みが注目され
る。アジア各国では、経済成長に伴って都市化が進展しており、大都市への一極集中に伴う
弊害が深刻な状況となっている。そのため、大規模都市開発プロジェクトが各地で進められ
ており、それに伴ってスマートコミュニティプロジェクトが出始めている。今後はアジア各
国でこのような動きが強まる中、グリーン IT が必要とされる場面が増えていくものと期待
される。
119
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