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国際鉄道連合(UIC)の 最近の活動
特集 国際活動 国際鉄道連合 (UIC)の 最近の活動 車両 軌道 構造物 防災 国際鉄道連合(UIC(☞参照) )の体制,技術・研究プラットフォーム,プロジェク 電力 トに関する活動のほか,最近の話題として UIC の標準化に対する取り組み,UIC 信号通信 情報 鉄道研究革新賞について,UIC に出向している立場から最新の状況を紹介する。 材料 環境 人間科学 浮上式鉄道 太田 勝 UIC とは して鉄道総研が加盟して活動していま UICは各国の国有鉄道/旧国有鉄道 す。昨年UICは設立90周年を迎えました。 Masaru Ohta を主な会員として組織された鉄道の国 UIC本部はフランス, パリの15区, エッ 総務部 主査 (UIC 出向) 際機関です。日本に限らず大方の国で フエル塔を望む場所に位置し(図2) , は幹線鉄道は国の運営でしたので,UIC 欧州を中心にアフリカ,アジアからも も設立同時は国家機関連合の色彩が強 スタッフが集まっています。また,ブ かったようですが,今では民間の組織 リュッセル,モスクワ,ニューデリー になり,鉄道事業会社・鉄道管理会社 にもスタッフを常駐させています。 の業界団体という一面もあります。現 UIC の使命は,世界レベルでの鉄道 在は5つの大陸を含む,世界から約200 を推進し,輸送の課題に立ち向かい, の会社・団体が加盟しています(図1)1)。 持続可能な発展を目指すことで,目標 会員種別は3つあり,正会員(Active として(1)会員相互の情報の共有を促 Member)約80団体,準会員(Asociate 進, (2)メンバーの間でのベストプラ Member)約80団体,賛助会員(Affiliate クティスの共有を促進,(3)新規事業 Member)約40団体という内訳になっ や新たな活動分野を開発するための支 ています。日本は1922年のUIC設立時 援, (4)技術的および環境的パフォー からの会員で,当時は鉄道省として加 マンスを改善するための新しい方法の 盟していました。現在,正会員として 提案, (5)相互運用性を促進し, 鉄道 (他 JR東日本,準会員としてJR東海,JR の交通機関との共通規格を含む)のた 西日本,JR九州,JR貨物,賛助会員と めの新しい国際規格の策定, (6)人材 育成(高速鉄道,安全,セキュリティ, ☞ UIC 正 式 名 称 は フ ラ ン ス 語 で Union Internationale des Chemins de Fer,略称でフランス語の頭文字をと って UIC を使っています。英語では International Union of Railways, 日本語で国際鉄道連合となります。 e- ビジネス,...)などをあげています。 UIC の現在とその活動 本稿執筆現在 UIC の会長は,JR 東 日本の清野会長が,前任の石田会長(前 JR 東日本副会長)から引き継ぎ勤めら 28 Vol.70 No.1 2013.1 UIC HEADQUARTERS ORGANISATION UIC TECHNICAL COOPERATION BODIES COORDINATION TECHNICAL GROUP INTERFACE 図1 UIC 会員 1) SPECIAL REGIONAL GROUP FREIGHT RAIL SYSTEM CER / UIC High Level Passenger Meeting CER / UIC High Level Freight Meeting UIC Rail System Forum UIC Passenger Forum UIC Freight Forum High Speed Plenary Committee CTG Combined Transport Group with INTERUNIT (UIRR) Track and Structures Sector Environment, Energy and Sustainabi ity Platform Station Managers Global Group -SMGG Special Groups Wagonload -Xrail -IFC Train Dynamics and Running Gear Sector Safety Platform Commercial Group Special Group RAILDATA Operations and Control, Command and Signalling Sector Security Platform Technical Group TAF TSI -Deployment -CCG Energy Management Sector Expertise Development Platform Use of Wagons -RIV -GCU Joint Committee (UIP, ERFA) Rolling Stock Sector International Railway Research Board (IRRB) REGIONAL INTERFACE TECHNICAL DEPARTMENTS Europe SPECIAL REGIONAL GROUP Africa, Asia, MiddleEast, North America, Latin America PASSENGERS FREIGHT RAIL SYSTEM FUNDAMENTAL VALUES SUPPORT DEPARTMENTS 図2 FINANCE HUMAN AND SOCIAL RELATIONS - LEGAL COMMUNICATIONS INSTITUTIONAL RELATIONS UIC 本部フランス パリ 15 区 図3 FUNDAMENTAL VALUES PASSENGERS DIRECTOR GENERAL UIC 本部組織 GTE Intercontinental Freight Corridors 図4 Research Coordination Group (RCG) UIC 技術作業部会 れており,任期は 2012 年 12 月までと で,UIC が他機関の支援も受けながら 大する計画ですが,進路には解決しな なっています。会員のコンセンサスが 推進しています。 ければならない問題が多く存在します。 UIC では鉄道の発展のためには優秀 得られ,本号が出版されるときにはヤ クニン Yakunin 氏(ロシア鉄道社長) UIC 標準化と鉄道研究革新賞 な人材が必要であると考え,人材育 が新会長に選出されていると思います。 以前は欧州国際直通列車といっても, 成プログラムを遂行しています。世 また常勤の理事長はルビヌーLubinoux 実際に直通するのは客車や貨車で,国 界 高 速 鉄 道 会 議 2012 の 際 に は, 学 氏(元フランス国鉄 SNCF)が勤めてお 境で機関車を付け替えていました。UIC 生プログラム Awards for Student り,実務の最高責任者となっています。 リーフレットはこの当時から使われて Competition を設け,優秀論文の学生 UIC に は 旅 客 Passangers, 貨 物 きた標準で,長い歴史がある反面,現 を会議に招待し,将来の鉄道の発展の Freight,鉄道システム Rail Syatem, 在の高速列車の固定編成車両からみる 寄与に期待する取り組みを行いました。 基礎Fundamental Valuesという4つの と,前時代的なものと言わざるを得ま また,ロシア鉄道研究所 VNIIZhT, 技術部門があり(図 3) ,前者 3 つには せん。しかし,UICリーフレットはUIC ラピドス Lapidus 氏が議長を務める国 フォーラム,横断的な事柄を扱う基礎 の貴重な財産と考える鉄道事業者も多 際鉄道研究委員会 IRRB がその活動の には 4 つのプラットフォームという技 く,欧州を中心にリーフレットの改定・ 一環として,今年,UIC 鉄道研究革新 術作業部会が設けられています。基礎 メンテナンスを求める声も大きいのが 賞 Global Rail Research & Innovation はさらに 2 つの研究部会,国際鉄道研 現状です。また,リーフレットを世界 Award を設置しました。この賞には, 究委員会 IRRB(International Railway に広めようという動きもあります。 24 カ国から 46 件のエントリーがあり, Research Board)と,研究調整グルー プ RCG を所管しています(図 4) 。 現在,UIC の技術作業部会では 180 ものプロジェクトを推進しています。 1つにはISOと協定を結び,鉄道事業 12 月の UIC 創立 90 周年記念総会で賞 者の業界団体がもつ鉄道標準,UICリー の授与が行われました。この審査作業 フレットを国際規格へアップグレード には鉄道総研も協力しています。 しようとする取り組みがあります。 代表的なプロジェクトは,欧州列車制 標準化については 2011 年に標準化 御システム ERTMS,鉄道無線通信プ 作業グループ SWG を立ち上げ活動し 文 献 ラットフォーム GSM-R,軌道システ てきました。また,2013 年には標準 ム刷新プロジェクト INNOTRACK 等 化プラットフォームを新設し活動を拡 1)U I C:A c t i v i t i e s R e p o r t 2010, 2011 年 Vol.70 No.1 2013.1 29