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ポストモダンの職場管理
ポストモダンの職場管理 ──コールセンターを対象として── 文京学院大学 髙木裕宜 1 目的 この報告の目的は、コールセンターを対象として、ポスト近代的な管理について探求することにある。コ ールセンターは、近年欧米諸国や日本でも急増した業界であるが、内部での管理については、コールセンタ ーの先進国といえるイギリスにおいて電子パノプティコン(一望監視施設)論が盛んとなっている。そこで は、オペレーターと顧客との会話の録音など、電子的に監視された労働現場となっていることが指摘され、 賛否両論が湧き起っている。しかしながら、これらの電子パノプティコン論は、近代的な規律・訓練的な管 理・権力論の範疇にとどまっているといえる。そこで本報告では、IT 化などによる管理ツールによって、あ らたな管理を行っているコールセンターを対象として分析することによって、ポスト近代の管理といえる要 件について摘出し、近代化のなかでの規律・訓練的な管理とは異なる様相を示している事態についての指摘 を行いたいと考えている。 2 方法 そこで、まず本報告では、日本国内中心にコールセンターのデータを分析することで、現状の問題点を指 摘する。またあわせて先行研究の問題点について、監視社会論のみならず、職場での管理の問題として勘案 し、理論的な検討を加える。 3 結果 日本国内でのコールセンターの現状は、専門業者への業務委託の拡大や、直接、消費者と対応を行うオペ レーターの確保やコスト削減のために地方へ移転し、雇用されたオペレーターは約 9 割が非正規雇用となっ ている。さらに、グローバル BPO(Business Process Outsourcing)の名の下に、コールセンター業務を中国など の海外へ移転するアウトソーシングも伸展している。そのため、コールセンター業界とは近年の日本経済を あらわす典型的な業界であるといえるであろう。 一方、先行研究での電子パノプティコン論は、監視労働への問題提議がなされているとはいえ、近代的な 規律・訓練的な管理・権力論の範疇にとどまっているといえる。現在でのコールセンターでは、オペレータ ーと顧客との会話の録音のみならず、コールに対しての応答率や、平均対応時間・処理時間を一定の指標で 評価することなど、IT 化を背景に、各種のプログラム化されたツールが導入されている。これらのツールよ って管理された職場であるコールセンターとは、あらたなポスト近代的といえる管理を可能にする条件とな っている。 4 結論 以上から、コールセンターでの管理とは、近代的な管理といえる、内面を形成することによって自律的な 労働者をつくるという規律・訓練的なものに対して、ポスト近代的な環境管理権力が行使されること、環境 としてのアーキテクチャーによって主体化によらない管理が行われているではないかと考えられる。 参考文献 池田芳彦・髙木裕宜(2008)「グローバル化における組織文化・ナレッジの構築―コールセンター を対象として」『文京学院大学総合研究所紀要』第 9 号 ■