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米国の消費拡大が 本格化するのも時間の問題

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米国の消費拡大が 本格化するのも時間の問題
 ご参考資料
2016 年 8 月 9 日
55 米国の消費拡大が
本格化するのも時間の問題
チーフ・ストラテジスト
•
米国の消費が思いのほか拡大しない
•
4つの仮説・・・時間が解決しそう
•
リスクは消費者心理の改善の遅れ
神山 直樹 米国の消費が思いのほか拡大しない
米国の雇用は、2014 年 5 月ごろにリーマン・ショックで失われた分を回復し、2015 年後半には賃金を引き上げなけ
れば雇用を増やせなくなったという意味で、スラックを解消(失われた 7 年間の雇用以外に追加された求職者増加分)
したとみている。雇用と賃金が回復すれば即座に消費が回復する、と市場は 2015 年夏ごろまでは思っていた。1 米ド
ル=約 125 円、日経平均株価が 20,000 円を超えていた時期だ。その後、円高と株安が市場を襲ったのだが、その原因
の一つは、米国の雇用・賃金と消費との連動性が予想外に良くなかったことが影響したとみている(突然の中国人民
元の実質的な切り下げや、クレジット市場の揺らぎなどを無視するということではないが)。
小売売上高の推移
自動車、ガソリン、建材、食品を除くコア小売売上高
(3ヵ月平均の3ヵ月前比)(右軸)
小売売上高(3ヵ月平均の3ヵ月前比)
(右軸)
4,600
4,400
4,200
4,000
3,800
3,600
3,400
3,200
3,000
2,800
2,600
10
12
14
(2008年1月~2016年7月)
10 110
8
100
6
90
4
2
80
0
-2 70
-4 60
-6
50
-8
-10 40
小売売上高(左軸)
08
消費者信頼感指数の推移
(%)
(2008年1月~2016年6月)
(億米ドル)
16
(年)
ミシガン大消費者信頼感指数
08
10
12
14
16 (年)
*上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。 (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成) 米国では、2015 年後半から賃金の回復ペースが速まったにもかかわらず、小売売上高は勢いを失って見えた。小
売売上高にはネット通販などが含まれないため、念のため消費者信頼感指数で見ても、2015 年後半には勢いを失っ
ていた。小売売上高と異なり信頼感指数は一定の範囲内で推移する傾向にあるが、それでも最近のデータは、雇用に
は自信があるが、所得増にはあまり自信がない、といったことなどを示している。
4つの仮説・・・時間が解決しそう
なぜ消費拡大が思ったよりも遅いのか、4 つの仮説を提示してみる。①認知バイアス:賃金上昇や雇用の安定、さら
にガソリン価格下落などの消費環境の改善に自信が持てない、②雇用の質:雇用は回復したが、リーマン・ショック以
前の賃金や社会的地位は回復していない、③ミレニアル世代が景気低迷を長期に経験していることなどから、貯蓄率
が高い、④米国人全体がリーマン・ショックから立ち直れず貯蓄率を引き上げ続けている、の 4 つだ。
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境などについてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料で
はありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。■投資信託は、値動きのある資
産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま
す。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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KAMIYAMA REPORTS
VOL. 55
どの仮説も一理あるが、おおむね時間が解決するといえそうだ。まず①認知バイアスについては、文字通り時間が
解決する。例えばガソリン価格の下落は、米国においては一方向ではなく行きつ戻りつするという。ガソリン価格は値
下がりし、給与は確かに上昇したなどと自信を持てるようになるには、その状態が長く続けば良いはずだ。②雇用の質
も労働市場の流動性が高い米国では、景気回復につれて高い給与などが提示されやすくなるため、同じ職場でも昇
給や昇進など、時間の経過とともに調整されていくだろう。③は構造的な問題だが、これまでの実証分析などによれば、
世界各国で景気の悪い時期に社会人になった世代は貯蓄率が高い傾向にあるとされる。つまり、どこにでもある問題
なので、米国全体の問題とみなくてもよさそうだ。④だけは実際に起こって欲しくないが、そもそもリーマン・ショック直
前のような低貯蓄率の行き過ぎた状態に戻らないとしても、ある程度積極的な消費(貯蓄率の引き下げ)は、リーマン・
ショックからの脱却が明確になり、金利上昇・米ドル高などを伴なった進展を予想するのが適切だろう。全体的に、
人々の心理が時間の経過とともに改善していくことで、消費が回復すると期待できる。
リスクは消費者心理の改善の遅れ
米国経済におけるリスクは、雇用や賃金の回復が消費につながらない状態が長引くことだ。米国での調査
(Transamerica Center for Retirement Studies)によれば、米国人の 63%に金融危機の後遺症とも言える恐怖心が残
っており、賃金を引き上げるための転職をためらっているという。これは、米国で雇用が増大し、賃金を引き上げなけ
れば新たに人を増やすことができないほどになってきたにもかかわらず、「雇用の質」が改善され消費が拡大するとい
う道筋を今のところ妨げている。
米国では 2 年と言う短期間に約 870 万の雇用を失った。これを回復させるために 6 年程度の時間が必要だった。そ
れゆえ、雇用の質を改善するために多少の時間がかかったとしてもおかしくはない。問題は回復する時期だ。すでに
賃金が上昇し始めて 1 年近くが過ぎようとしている。いつからと予想することは難しいが、これから半年程度で回復の
兆しが見えてくる可能性はあるとみている。最新の消費者信頼感の統計を見ると、消費者の雇用の見通しは確かなも
のとなる一方、まだ明確に所得の改善は期待されていなかった。今後、米国の消費者信頼感や小売売上高、日本の
輸出数量などを確認しながら、世界経済が強いトレンドに戻る姿を探していくことになろう。
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産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま
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