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ル・カシオン アハバ
アハバ-ル・カシオン JICA シリア事務所 2004年4月15日 第28号 ● 特集企画 プレスツアー in Syria ― より多くの人に 日本の援助を理解してもらうために − 所長 長澤一秀 企画したものです。 施している援助ですから、シリア シリアに対する日本の援助は 2004 年 3 月 14 日から 16 日まで の方に感謝され、役に立つ援助を 1970 年に協力隊員を派遣すること の間、日本の ODA 現場をいろいろ から始まり、30 年以上に及ぶ協力 と見ていただきました。 隊員の総派遣人数は約 400 人に迫 また、それに併せて、せっかく ろうとしています。この地道な人 のチャンスでしたので、JICA 関係 と人との交流に加え、ここ数年は 者にレポーターを募集しましたと シリアに対して日本がトップドナ ころ、3 名の方の応募がありました。 ーの位置を占めてきました。これ 本特集はこの 3 名の方のプレスツ らが相まって、シリアにおいての アーレポートです。 「日本贔屓」を作り上げてきたも プレスツアーの初日 JICA のと確信しております。 事業の全体説明 近年 ODA の予算が急激に削減(5 するのはもちろんですが、それを 年間で 25%減)されており、シリア シリアの方々にきちんと伝え、日 も当然影響を受ける見込みです。 本の援助の理解者を広げるのも、 このような中、私共の行っている 同様に、否、それ以上に重要なこ 援助がシリアの方々に役立ってい とだと思います。 るか、感謝されているか、をきち んと伝えることが重要となってき このプレスツアーはシリアのメ ています。 ディアの方々に日本の ODA の現場 いい援助をやっていても誰も知 シリアテレビの取材 を見て頂き、シリアの人々に数多 らないのでは、やっていないのと く発信してもらうことを意図して 同じです。国民の税金を使って実 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ● 特集(其の一) プレスツアーに感謝 浅井 真樹(SV) システムエンジニア:教育省 ☆ ☆ ☆ ☆ JICA 主催の ODA プレス・ツアーにレ ポーターとして参加しましたので、ツ アーの概要を報告いたします。 1. WRIC (Water Resource Information Center) 本センターは水資源の情報収集と水資源開発の計画立案を目的として作られた センターです。現在、2地域において水資源情報収集システムの整備を支援して います。他の地域はプロジェクト完了後、シリア側が実施する予定だそうです。 データの収集は人手ですが、完全な自動測定・システムは保守が難しい事、電波 の使用に関する制約が大きい事などがその理由でした。コンピュータの機材も整 っており、これから本格的なシステムの運用が始まるように見受けられました。 2. UNRWA-DTC このセンターはパレスチナ難民の子弟を教育するセンターです。ここではエンジ ンの整備実習、木工実習、コンピュータの基礎教育、コンピュータによる会計処 理実習などの教室を見学しました。コンピュータ基礎教育では Z80(8 ビットのマ イクロコンピュータ)を実装した訓練用のキットを使ってプログラミングの実習 をしていました。基礎教育としては良い方法であり、各教室の訓練機材はかなり の水準であると思いました。卒業後彼らが良い仕事に付ける事を願っています。 -1- ☆ WRIC での講習会の様子 UNRWA の職員とSV 3. CBR (Community Based Rehabilitation) Project CBR とは、瀧本専門家によれば「障害のある人でも、生まれ育った村の中で皆 と同じように社会に参加できるような村にしていこう」と言う活動です。瀧本さ んの活動現場はダマスカス市内から 40Km ほどの村です。村民の意識改革を行う ためのボランティアによる寸劇、脳性麻痺の子供を持つ家庭に対するボランティ アの支援を見学しました。この活動は特別な機材を必要とするものではありませ んが、地域の人々の意識改革がなされ、その方々が積極的に参加して意味を持つ 活動です。瀧本さんと地元の方々の交流を見て、軌道に乗ってきたと思いました。 4. JANDAR 電力研修センター 本センターは火力発電所の維持、運営に必要な技術研修を実施するセンターで す。全国の発電所の人が対象で、宿泊施設もあります。伊藤 SV(電気機器)に拠 れば、受講者の技術レベルがマチマチなので能率は良くないとの事でした。又、 より良い火力発電所運営のためには訓練カリキュラムが日本に比べて少ない、と の事です。溶接はスティール、ステンレス、アルミについて実習しているそうで す。工作機械として設備されている旋盤が小さくて大きな物の加工が出来ないし、 フライス盤が設備されていないなど、工作機械の設備は貧弱であると感じました。 5. Baath University 獣医学部 ここでは、鶏のサルモネラ感染の検査、動物実験の現場などを見学しました。 獣医の仕事の内容や、獣医大学のカリキュラムを全く理解していないため、それ ぞれの教室を見学しても、何をしているか判りませんでしたが、多くの学生が熱 心に授業に取り組んでいる雰囲気を感じることができました。 6. Aleppo Museum 山崎 SV(考古学)より博物館の現状や発掘品について説明を受けました。この 博物館には日本の発掘隊が発掘した ネアンデルタール人の化石 や多量の土器、 石器等が収蔵されています。復元、整理、カタログ作成が追いつかない状態だそ うです。展示の仕方も改善の余地が沢山ありそうです。これだけのコレクション をもっと広く世に伝え、多くの研究者が集まる研究施設と、一般の人々が楽しく 見学できる環境が整えば、素晴らしい博物館になると思いました。 7. GOSM Project 片山専門家の案内で小麦種子の集荷センターと、ジャガイモの組織培養を行っ ているセンターを見学しました。 種小麦 は時期はずれのため装置は稼動して いませんでしたが、集荷時期になると十数時間連続して稼動するとの事でした。 この間所長は泊り込みで監督に当たるのだそうです。組織培養をして苗を作り、 その苗を試験場で育て小芋を作る。小芋を植えて又、小芋を作る(増殖させるわ けです)。種芋になるのに 3,4 年は掛かるとの事でした。 CBRでの講習会 研修センターで活動するSV 動物実験の様子 博物館で説明をする山崎SV GOSM 8. Kindergarten in Hama ここでは平川隊員(保育士)が活動しています。子供たちが非常になついてい て、彼女の合図で子供たちが遊戯をする様を楽しく拝見しました。又、最後に平 川隊員が園児に作らせた栞?を園児が我々にプレゼントしてくださいました。 <感想> 普段、話に聞く事はあっても、他の方々の活動現場を拝見するのは初めてでし たから、全てを非常に新鮮に感じました。活動の内容が多岐に渡り、十分理解で きないものも有りましたが、総じて皆様がシリアの方々と同じ志を持って活動さ れている事に感銘を受けました。JICA の活動は顔が無いとか、何でも手がけてい るが深みが無いとかの批判があるとの事ですが、今回のような説明会によって内 外に我々の活動の実態と意義を発信する事が今後益々重要になると思います。最 後ですが、今回のツアーに参加させていただいた事を感謝いたします。 -2- 平川隊員の活動 浅井SVとその同僚 ● 特集(其の二) 有意義だったプレスツアー 今から約1年1ヶ月前、派遣受 入希望調査表で、配属先概要や要 請概要で、私の配属先は シリア 婦人連盟・幼児教育部 というの を知りました。その当時は、自分 が保育士として活動することだけ しか認識していなかったので、婦 人連盟が何かもよく分かっていま せんでした。また、恥ずかしい話 ですが JICA についても把握してい ない部分が多く、 『何が分からない のか分からない状態』のままシリ アに来てしまったような気がしま す。 情報はアハバール・カシオンから 実際シリアでの生活が始まると、 私の配属先である婦人連盟を始め、 専門家や SV、協力隊員の方々が 色々な分野で活動なさっているこ とを知りました。しかし、内容に ついての話こそ聞くものの、同職 種以外ではなかなか見学に行く機 会も少なく、神秘のベールに包ま れているその活動内容はアハバー ル・カシオンによって得ていまし た。 そのような時、ODA プレスツアー に同行出来るお話を伺い、ホム ス・ハマ・アレッポの各地を回っ てきました。 ツアーに同行した2日間で、私 の知らない様々な JICA 事業を見学 することが出来ました。今まで名 前も知らなかった場所もありまし たが(ごめんなさい)、お忙しい中 実際に施設などを見学しながら、 何もかも分からない私に一からお 話を伺うことが出来ました。訪れ るマスコミの為の資料を作り、パ ワーポイントなどを利用して説明 を行う・・・。視覚に訴え、記録 に残すこの方法は、彼らにとって 効果的だったのではないかと思わ れます。英語・アラビア語での専 門的内容のプレゼンや、施設長の お話は語学力が追いつかず、私に は何を話しているのか理解出来ま 吉田 愛(JOCV15-2) 保育士:婦人連盟 せんでしたが・・・。 1 年後の姿を目指して 特に興味深く見学させて頂いた のは、同職種の平川隊員が活動を 行っているハマの保育園・幼稚園 でした。まだまだ先生達との人間 関係を作っている最中で、来月に は別の保育園に行き、新たに人間 関係を築いていかなければならな いなぁ・・・と思っている私にと っていい刺激になりました。経験 年数や年齢で勝っているシリアの 先生達は、たかが25歳の小娘の 話を初めから聞いてくれるはずが ありません。子どもとの人間関係 も「1年かかってやっとここまで 築けたね」というほど。先生達と の関係作りも容易ではなかったと 思われます。今は気持ちが焦って いる部分もありますが、1年後に は平川隊員と同じような活動が出 来るようになりたいものです。 ハマの幼稚園の園児 身近な人から発信 このツアーの目的は「日本の ODA を理解していただき、そこで得ら れた情報をシリア国民に伝える」 というものですが、正直私は一緒 に同行している人達が本当にメデ ィアに携わっている人達なのか疑 問に思ってしまいました。本当に 記事になるのだろうか?話は理解 しているの?そんな紙にメモして なくしちゃったらどうするの・・・ など不安はありましたが、翌日実 際に記事になった新聞をみて、妙 に嬉しかったのを覚えています。 例によってアラビア語の記事です ので、何を書いているか詳しい事 -3- 電力研修センターSVと吉田隊員 は分かりませんが・・・。 どれだけの国民がこの記事を見 るかも分かりませんし、テレビに しても同じで分かりません。たと え目にしたとしても感じ方、受け 止め方も人それぞれでしょう。こ のツアーに同行して JICA をより理 解した(つもりの)私は、JICA に 携わる一人間として、まずは身近 な人から、分かる範囲で話をして みようかなと思いました。 このツアーに同行出来たことは、 非常に有意義であったと思います。 自分の専門は保育ですが、幼児教 育以外の JICA 事業として実に様々 な分野でシリアを支えているとい うことを知りました。文化も習慣 も違うこの国で、日本式を全て当 てはめるわけには行きませんが、 私達を必要としてくれる人達がい る限り、私達はこのシリアという 国とつながっていることが出来る のだな・・・と感じます。そして 最後に痛感したこと。この国で生 活・活動していく上でアラビア語 は必要不可欠だということ。週一 回のレッスンの他にも、保育園の 先生達にも分からない言葉は辞書 を差し出し教えてもらっています が、更なる努力が必要で(・・・) 会話する事により交流を深め相互 理解に役立てたらいいなと思いま した。 吉田隊員とカウンターパート ● 特集(其の三) 今後の活動の勉強になった 五十嵐 景子(JOCV14-3) 音楽:青年同盟 私の特技は乗り物に乗るとあっ という間に寝てしまえること。ア レッポまでの道のり、芽吹いたば かりの緑、のどかに羊が歩く穀倉 地帯を楽しみながら、お昼寝、、、 をしたかったのですが、元気なシ リア記者の方々に付き合い、アラ ビア語が頭の中をぐるぐる回って います。タイトな日程でしたが、 (彼らが時間さえ守ってくれれば、 大竹次長とマラハさんも、もう少 し楽だったのではないでしょう か)とても陽気な方々で、思わず 大声で笑い転げることもしばしば でした。 電力研修センター内で 信頼関係と情熱をベースに 難しい話は抜きにして、専門家、 SVの方々が現場で体をはって仕 事をされ、信頼関係を築いている 姿を見て、大変勉強をさせていた だくとともに、私も、ああいう情 熱をもちつづけて年を重ねていき たい、と思いました。 アハバ−ル・カシオンや、お話 を伺ったり、映像を見たりして、 漠然と活動の内容を想像すること はあっても、彼らの細やかな工夫 や洗練された活動を実際に自分自 身の目にすると、全く印象が違っ て見えます。西川専門家の「彼ら は本当によく勉強してくれます」 をはじめ、皆さんの本当にちょっ とした言葉に、そこで働くシリア We are on the WEB. See us on www.jica.go.jp, www.jicasr.org 人スタッフへの愛情を感じ、そこ に至るまでの心境を想像して、訪 れた場所先々で頭が下がる思いが しました。 自覚あるプロを一人でも多く 現在私の活動では、音楽におい てより多くの人に援助がいきわた るように、という方向性が強く求 められています。音楽専門学校と いう現場で「音楽の裾野を増やす」 という活動の柱に関し、言葉は綺 麗であっても、その難しさ、自分 の無力さを痛感している中、「自 覚あるプロを一人でも多く育てて いきたい」とする専門家、SVの 方々の真摯な姿勢に非常に刺激を 受けました。殆どの企業が国営化 されている現状、自由競争の下で 国のためになるという自覚を持っ た技術者の育成が必要だというこ とだと思うのですが、何かを真面 目に学ぶ姿勢は、謙虚な気持ちを 育て、他人を尊重する気持ちを育 みます。 西川専門家の職場前(大竹次長と) もともとそうであったのか日本人 が入ったことによって微妙に変わ ったのか、訪れた先のシリア人の ひたむきさが印象的でした。 私事ですが、音楽も決して特定 の人間の利益ではありません。現 在のシリアで音楽を学ぶことがで きるのは、針の先をつついたよう 懇親会で言葉を交わす五十嵐隊員 な限られた層です。その中で私に できることは、音楽の基本を教え、 音楽を楽しむという本当に少しの ことです。しかし、工夫し彼らと 協力していくことは、彼ら自身が 今後も音楽を愛する心を育てる活 動を続ける、という持続的、波及 的な効果に繋がるのではないかと、 少し救われる想いがしました。 なかなか自分の活動以外を見学 できる機会はないため、9箇所訪 れた派遣先全て、そのたびに新鮮 な気持ちになり、あっという間の 3日間でした。 タクシーに乗ると、「日本製は 一番だ」とよく聞きます。その度 に自分が日本人であることを意識 するのですが、彼らのように真剣 に頑張っている日本の方々のおか げで、私は、ただ日本人というだ けで、シリアの方々から温かく迎 えてもらうことができ、こうして ここにいられるんだなあ、と改め て思います。 貴重な機会を頂き、本当にあり がとうございました。 最後に片山専門家より。 「今年は 急にニンジンが大きくなった」 「急 にイチゴが甘く、美味しくなった」 とホルモン剤投入を心配する隊員 の皆さん。確かに日本の3倍ほど もあるキャベツや、冬でもプック リ太ったキュウリは少々怖く感じ ますが、ヨーロッパから良品種の タネが入っただけとのこと。ご安 心してお召し上がり下さい。 お知らせ 本ニュースレター配信ご希望の方は当事務所まで氏名、メールアドレス、JICA との関係(所属)を連絡願います。 編集後記 プレスツアーによってシリア政府および国民がJICAに関しての理解を深めることができ、また隊員間の相互 理解なども含め、大変有意義なものであった。JICAへの理解を深める上で、今後とも定期的にプレスツアーを 行っていくことになるであろう。シリアへの援助が中東和平につながればと願うところである。 (K.T) -4-