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再認におよぼすコンピュータ画面の 紙文脈の効果

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再認におよぼすコンピュータ画面の 紙文脈の効果
平成 18年度修士論文
再艶におよぽすコンピュータ画面の
垂紙文脈の効果
「、
指導教員
漁田 武雄
学籍番号
7
0
5
3
-0
0
0
4
「ヽ
渥
美
貴
裕
静 岡大学大学院情報学研究科
情報学専攻
要約
1
1
■
再認 にお け る環 境 的 文 脈 依 存 効果 を説 明す る理 論 と して , Mu
ma
n
e
,P
h
e
l
p
s皮
Ma
l
mb
e
r
g(
1
9
9
9
)
による I
C
E理論 (
I
t
e
mCo
n
t
e
x
t
En
s
e
mb
l
et
he
o
r
y
)があげられるc I
C
E理論
によると,項 目と文脈は独立に処理 され るとし,それ とは別にターゲ ッ トと文脈の間に
有意味な関係 (
アンサンブル)が生 じない限 り再認成績には差が生 じないとする。これは,
Hi
tや F
Aのような単純な再認反応では,ターゲ ッ トと文脈の熟知度がそれぞれ独立に
再認照合過程に使用 され,熟知度が高いほど y
e
s反応が単純に増加 し,Hi
tや f
A単独
で文脈依存効果が生 じた としても,CRS(
Co
r
r
e
c
t
e
dRe
c
o
g
n
i
t
i
o
nS
c
o
r
e
,Hi
t率F
A率 )
の よ うなターゲッ トとデ ィス トラクター間の再認 における弁別 を示す指標で表 した場
戸
軌
合 に,環境的文脈依存効果が相殺 されて しま うとい う考えによる。また,I
C
E理論によ
m
e
a
ni
n
g
f
ulc
o
n
t
e
n
t
s
)を多 く含んだ文脈ほどアンサンブル
ると,絵画な どの意味内容 (
2
0
0
5
)では,背景色文脈を操作 した
は形成 されやす くなるとい う。漁 田 ・漁田 ・岡本 (
再認実験を行 った。 その結果,手がか り負荷を軽減 させれば,cRSでも背景色文脈依存
C
E理論に疑問を投げかけることとなった。
効果が生 じる結果を導き出 し,I
本研究では,漁田 ・尾関 (
2
0
0
5
)
や漁田ら (
2
0
0
5
)での背景色で環境的文脈依存効果が
C
E理論の問題点を検証す ることに した。本研究では,意
生 じた実験結果か ら生 じた,I
味内容 を多 く含む コンピュータ画面の壁紙を環境的文脈 として,学習時 と同 じ文脈下で
再認テス トを行 う条件が,そ うでない条件 よりも良い単語再認成績を示すか否かを 2つ
の実験を通 じて調べた。
実験 1では,項 目強度規定因のひ とつである提示速度の効果 と壁紙文脈依存効果の間
被験者間)」
に交互作用が生 じるか否かを調べ るため 「
壁紙文脈 (
被験者内)×提示速度 (
の実験計画を用いた。結果,意味内容を多 く含む文脈 を用い,かつ手がか り負荷が低い
「\
条件であったにも関わ らず,再認弁別の指標である CRSで環境的文脈依存効果は見出せ
C
E理論に疑問を投げかける結果 となった。 ここで考えられる疑問点は,Mu
ma
n
ee
t
ず ,I
a
l
.
(
1
9
9
9
)の実験では,意味内容を多 く含む文脈を用いた実験では,ターゲッ ト情報が
画像 に溶け込むように表示 され ていたことである。つま り,項 目と文脈の相互に注 目を
させ る換作が行われていたのではないだろ うか。
実験 2では,壁紙 と単語の連想関係 と文脈依存効果が関連す るか否かを,ターゲ ッ ト
と文脈の意味的関連性を評定 させ る換作を加 えることで検証 した。その結果,実験 1と
同様の実験材料を用い,偶発学習であったにも関わ らず環境的文脈依存効果が見出 され
た。結果か ら,単語 と壁紙文脈の意味的関連性に注 目させ る操作が記銘処理 ・再認判断
に影響を与えたのではないか と解釈す る。
本研究の結束を I
C
E理論で説明す ることは困難である。意味内容の多い文脈において
文脈依存効異が生 じるのは 「
項 目と文脈に注 目させ る」操作を加 える条件においてのみ
であ り,現状の I
C
E理論では意味内容の多い文脈における環境的文脈依存効果をオール
マイティーに説明することはできないといえよう。
今後,更に多様な条件の下で実験を行い,再認における環境的文脈依存効果を説明す
る理論を再考する必要がある。
「、
「\
目次
ー
第 1章
序論
1 1 2
第 1節
記憶 とは
1.記憶の分類
2.
記憶の測定法
4 4 5 5 6 8
第 2節
エ ピソー ド記憶 と文脈
1.文脈 とは
F
斡
2.文脈の分類 一環境的文脈
3.
環境的文脈依存効果
4.1
C
E理論
5.J
C
E理論の問題点
第 3節
本研究の 目的
莱
r
i
顔
章
2
第
1 2 4
r
︼
l■ r
i l1
.i
法 果 察
方 結 考
美
2
顔
辛
3
辛
6 6 7
r
」lL l
l L
Ll
法 果 察
方 結 考
第 4章
18
全体的考察
引用文献
21
資料
24
1
1
1
第 1章
第 1節
序論
記憶 とは
記憶 とは過去経験を保持 し,後 にそれ を再現 して利用す る機能である。人間にはこの
記憶能力が備わってお り,この能力がなければ,読書,計算,会話,推理など,人間が
日常生活の中で行っている認知活動 を遂行することはできない。本研究ではこのように
人間の様々な認知活動に影響 を与える記憶についての研究を行った。以下に簡単に本研
究の対象である記憶についての分類 をま とめる。
ピ恥
■
1.
記憶の分類
一 口に 「
記憶」 といって もその性質は多様である。そのためさまざまな観点か らの区
分がな され る。まず,保持期間の長 さによって,記憶 を感覚記憶 (
se
ns
o
ryme
mo
ry),短
期記憶 (
s
hort
-t
e
r
mme
mory),長期記憶 (
l
o
ng
-te
r
m me
mo
ry)に区分す ることがで きる
(
e.g.
,Atkinson良Shiffri
n,1
968)0
入力 された感覚刺激は,ごく短時間であれば 「
意味」に符号化 されずに感覚情報のま
ま貯蔵す ることができる。そのよ うなことが可能であるのは,感覚記憶があるか らであ
る。感覚記憶では,視覚情報の感覚記憶 (
視覚記憶, i
coni
cme
mory)や聴覚情報の感覚
hoi
cme
mory)な どを調べた研究によれば,その貯蔵期間は視覚記憶
記憶 (
聴覚記憶,ec
s
pe
rli
ng,1
960),聴覚記憶では約 5秒程度 (
Gl
uc
ks
be
rg&Co
wa
n,1
970)
では約 1秒以内 (
「ヽ
と,一瞬で消失 して しま う。そのよ うな感覚記憶に対 して注意 を向けられた情報だけが,
STS)に入 ると仮定 され る。 これが短期記憶 に相 当す る。 しか し S
TSには容
短期貯蔵庫 (
量に限界があるとされ る。加 えてその保持期間は 1
5秒か ら 30秒程度 と短い。これ に対
し,短期記憶に対 して リハーサル等の能動的な情報処理 をお こなった場合,情報は長期
貯蔵庫 (
LTS)に貯蔵 され る。 これが長期記憶に相 当す る。いったん長期記憶- と変換 さ
At
ki
ns
on良S
hi
ff
ri
n, 1
968)
0
れた記憶は,半永久的には消失す ることはない とい う(
長期記憶は記憶 され る情報の内容 によって,宣言的記憶 (
de
cl
arati
veme
mo
ry)と手続
き的記憶 (
p
roce
du
ralme
mo
ry)に分類 される (
Tul
vi
ng,1
983)
。宣言的記憶 とは,言葉 に
よって記述す ることができる事実についての記憶を指す。た とえば 「
東京タワーの高 さ
は 333メー トル」といった よ うな事実についての記憶が宣言的記憶である。これに対 し,
「自転車の乗 り方」や 「
スノーボー ドを使 った滑 り方 」 といった一連の手続 きに関す る
記憶が手続 き的記憶である。
s
e
ma
nti
cme
mo
ry)と,個人
さらに宣言的記憶は,一般的知識の記憶である意味記憶 (
的な経験に関連す るエ ピソー ド記憶 (
e
pi
s
o
d
i
cm
e
m
o
r
y
)の 2つに区分 され る (
T
u
l
vi
n
g
,
1
9
7
2
,1
9
8
3
)
。 エ ピソー ド記憶 とは,「
今週の月曜 日は家で納豆を食べた」 といったよ
うな時間的 ・空間的文脈 の中に位置づけることができる個人的な出来事の記憶を指す。
これに対 して意味記憶は, 「
納豆 とは,大豆を納豆菌によって発酵 させた食品である」
といったような一般的な知識 としての記憶である (
T
ul
vi
n
g
,1
9
7
2
,1
9
8
3
)
.
本研究では,このエ ピソー ド記憶に焦点を当てた。
2.
記憶の測定法
記 憶 の測 定法 と して よ く用 い られ る もの に,再 生法 (
r
e
c
al
lm
e
t
h
o
d
)と再認 法
r ヽ
(
r
e
c
o
g
ni
t
i
o
nm
e
t
h
o
d
)
がある。再生法 とは,「
イヌ, トリ,サル - ・」 のような項 目(
単
請,文,図形等)を実験参加者に学習 (
s
t
u
d
y
)させ,直後,もしくは適当な時間経過の後
にそれ らの学習 した項 目を思い出 して口頭または筆記で答 えさせ る方法である。これに
対 し再認法 とは,学習 した項 目(
ターゲ ッ ト)と学習 していない項 目(
ディス トラクター)
の混 じった リス トを提示 し,旧項 目と新項 目を区別できるかを検討する方法である。つ
ま り再認は再生 と異な り,想起場面において学習項 目その ものが想起手がか りとして提
c
o
p
yc
u
e
)と呼ぶ (
o
g
i
l
vi
e
,
示 され るこ とにな る。 この手 がか りを コピー手 がか り(
T
ul
vi
n
g
,P
a
s
k
o
wi
t
z&J
o
n
e
s
,1
9
8
0
)
。再認法は再生法に比べ,想起の手がか りとして
項 目そのものが提示 され るため,成績がよくなる。そのため再認法では再生法に比べ,
よ り多 くの学習項 目を使用す るのが一般的である。
再認法において,ターゲ ッ トを 「
あった(
学習 した)」 と回答 した場合を H
i
t
,ディス
A(
f
a
l
s
ea
l
a
r
m
)と呼ぶ (
T
a
b
l
el参照).再
トラクターを 「
あった」 と回答 した場合を F
「ヽ
i
t率が高ければ高いほど記憶成績がよい とは
認法における記憶成績の評価 は,単純に H
n
oi
s
e
)を取 り除き正 しい信号 (
s
i
g
n
a
l
)
いえず,一般的には記憶成績 に混 じった雑音 (
を検出す るための信号検出理論 (
s
i
g
n
a
ld
e
t
e
c
t
i
o
nt
h
e
o
r
y
)
が用い られる。具体的には,
Hi
tに基づ く成分か ら,F
Aに基づ く成分を差 し引き した C
R
S(
c
o
r
r
e
c
t
e
dr
e
c
o
g
n
i
t
i
o
ns
c
o
r
e
,
Hi
t率f
A率 ) (
e
.
g
.
,L
i
g
h
t良C
a
r
t
e
r
s
o
b
e
l
l
,1
9
7
0;W
o
o
d
w
o
o
r
t
h良S
c
h
o
l
o
s
b
e
r
g
,1
9
5
4
)
や,それぞれの確率に対す る標準正規分布の Z値 を求め,H
i
t率の Z値から F
A率の Z
値 を差 し引いた dー (
Fi
g
u
r
e
l
)のように,ターゲ ッ トとデ ィス トラクター間の再認 に
おける弁別を示す指標で当て推量による正答率を補正 し,記憶成績の高低を表す。本研
究では,この再認法に焦点をあて,エ ピソー ド記憶に関する研究を行った。
本研究では,再認弁別指標 として d,ではなく CRSを用いた。dーが考案 された当初
は,最 も洗練 された再認の指標 と評価 されていたが,その後の研究によって d'の前提
となる正規分布を満たさない条件が少なくないことが兄いだ されてきた。た とえば,F
A
における確信度 (
熟知度の主観的評定値)と記憶の正確 さには関係がない とい う報告が
少 な くない (
eg,Wa
ge
na
a
r
,1
988)
O この よ うな ことか ら,現在では ・CRSが最 も無難で
eg,Loc
k
l
a
r
t
,
2000)
。また,
あ り,d′の使用は慎重 にお こな う必要があるとされている (
本研究では,ni
t率 と FA 率で同程度に生 じた文脈依存効果が,相殺 され るか どうかの
検証 を 目的 としたoそのため ,d′では Z (
Hi
t率)-
Z
(
F
A率)での Z変換に問題 がある
Hi
t率 -FA 率で)求め られ る CRSが,再認弁別の指標 と し
ので , Z変換 を しないで (
て最適 と判断 した。
Ta
bl
el 反 応の分類
F
熟知度
Fi
g
ur
el:d′(
dl
SC
rl
mi
nabi
ll
ty i
nd
ex
)
第 2節
エ ピソー ド記憶 と文脈
1.文脈 とは
第 1節 で述べた ように,エ ピソー ド記憶は時間的 ・空間的文脈 の中に位置づけられ る
記憶である。 そのため,記憶 の焦点 となる情報 (
fo
c
ali
nf
o
r
mati
o
n)以外にも,いつ,
どこで,誰 と, といった時間的 ・空間的情報が付随す る。例 を挙 げると, 「
納豆を食べ
た」 とい う経験的記憶 に,いつ - 「
今週」, どこで - 「自宅で」,誰 と - 「
一人で」,の
よ うな情報が付随す る,とい う具合 である。このよ うな 「
納豆 を食べた」とい う焦点情
報以外 に付加 していた情報 「
今週」 「自宅で」 「
一人で」 を文脈 (
c
o
nt
e
xt
)と呼ぶ。
/
(ヽ
記憶実験 においては,記銘 の対象 となる項 目が焦点情報 とな り,それ以外のすべての
情報が文脈 となる。例 として単語 リス トを記憶す る課題 を実施 した とす る。 この とき,
実験参加者はただ単語 リス トのみを記銘 しているのではない。実験参加者は記銘 した単
語 を想起す るだけでな く,単語 リス トを暗記す るために用 いた様 々な方略 (
文章化.イ
メージ化等)やその結果産出 された派生物 (
文章,イメー ジ等),記憶課題 の困難度合い
の認知,課題時の気分,実験室 内の情景,実験者 の対人印象等々 といった文脈情報 を,
この場合の焦点情報である単語 とともに報告す ることができる (
漁 田, 1
9
91
)。 この よ
うに,エ ピソー ド記憶 は焦点情報のみでな く,文脈 自体 も想起可能であることか ら,焦
点情報 のみで構成 されてい るわけではないことが伺 える。
また,T
ho
ms
o
n良T
ul
vi
ng(
1
97
0)の実験において も焦点情報 の想起における文脈の重
e.g. ね こ) と記銘語に対す る
要性があげ られている。彼 らは,実験参加者 に記銘語 (
強い連想語 (
e
.
g.いぬ) との対 (
e.
g.ね こ-いぬ) または,弱い連想語 (
e.
g.あか)
管
e.g. ね こ-あか) を提示 した後,連想語 を手がか りとして記銘語の再生を させ
の対 (
e.g. ?-あか
る (
?-いぬ)実験 を行 った。 その結果 , どち らの種類 の連想語が手
がか りとして与え られ る場合で も,記銘時に提示 されていた連想語の方が記銘時に提示
され なかった連想語 に比べ記銘語の想起に有効であった。つ ま り,連想の弱い 「
あか」
が記銘時に提示 された場合 ,た とえ記銘時に提示 されなかった 「
いぬ」が記銘語 と強い
連想 関係 が存在 していて も「
いぬ」が記銘語に影響す ることはない。この実験結果か ら,
T
ho
ms
o
n良Tul
vi
ng(
1
97
0
) は, (
1
)
符号化 された情報 は,焦点情報 のみな らず,文脈 も
含 めてすべてエ ピソー ド記憶 に影響す る。 (
2)エ ピソー ド記憶情報の検索は,符号化 さ
れた情報のみによって規定 され る。 つま り,符号化時 に存在 しなかった情報は,た とえ
記銘材料 と強い意味的関係 を持 っていて も,エ ピソー ド記憶 には影響 しない と結論づ け
た。 この考 えは符号化特定性原理 (
e
nc
odi
n
gs
pe
ci
fi
ci
t
yp
ri
nci
pl
e
)と呼ばれてい る
(
T
ul
vi
ng&T
ho
ms
o
n,1
97
3
)
0
以上のよ うに,エ ピソー ド記憶 における文脈は,焦点情報 の想起 を促進す るな ど重要
な役 目を果たす。ゆえにエ ピソー ド記憶 を研究す る際には文脈 は欠かす ことのできない
研究対象である。
2.
文脈の分類 一環境的文脈
前述 のよ うに,焦点情報以外のすべての情報は文脈 とな りうる。ゆえに,文脈は多様
で多岐にわたる情報 を含 んでお り,研究対象はかな りの広範囲に及ぶ。そのため,文脈
はそれぞれの持つ特徴で分類 がな され,研究が行われ てい る。そのよ うな文脈の中で も,
本研究では環境的文脈 (
e
n
vi
ro
n
me
nt
alc
o
nt
e
xt
)に注 目した。
文脈 の中で,エ ピソー ドの識別 に役 立ち,記憶 にエ ピソー ド性 を付与す る文脈 をエ ピ
G
i
i
i
;
ソー ド定義文脈 (
e
pi
s
odede
fi
ni
ngc
o
nt
e
xt
)と呼んでい る (
Mu
ma
J
l
e
,
Phe
l
ps&Ma
lmb
e
r
g,
1
999)
0Mu
ma
nee
ta
l
.
(
1
9
9
9) によると,エ ピソー ド定義文脈は,学習時の さま ざまな環
境刺激,学習者の情緒 ・生理的状態,学習時の心理的状況な ど,ターゲ ッ トに対す る情
報処理の背景 となるさま ざまな情報か ら構成 されてい る とい う 。 これ らェ ピソー ド定義
文脈 の中で,出来事 の生起 してい る環境 に関す る情報 は,環境的文脈 (
e
nvi
r
o
n
me
nt
al
c
onte
xt
)と呼ばれ る (
e.
g.,S
mi
t
h,1
9
88,1
9
9
4;S
mi
t
h&Vel
a,2
001
)
C これに対 して,
現在処理 している情報か ら派生す る意味的情報か ら成 る文脈,ターゲ ッ トとな る項 目の
前 後 に提 示 され る単語 の よ うに ター ゲ ッ トの意 味 を規 定す る文脈 は意 味 的 文 脈
(
se
ma
nti
cc
o
nt
e
xt
)と呼ばれ(
e
.
g.
,Li
ht皮 Ca
g
rt
e
r
s
obe
l
l
,1
97
0
)
,ターゲ ッ トと相互作用的
に処理 され るとい う(
e
.
g.
,Ba
dd
e
l
e
y
,1
98
2Bj
o
r
k& Ri
c
ha
r
d
s
o
nKl
a
ve
m ,1
l
98
9
)
.環境的文脈
はターゲ ッ トとともに存在す るだけであ り,ターゲ ッ トの意味の認知 を規定 しないので,
偶発 的文脈(
i
n
d
e
en
p
de
ntc
on
t
e
x
t
)と 呼 ば れ て い る (
e
.
g.
,Ba
dd
e
l
e
y
,1
98
2 Bj
o
r
k&
「ヽ
Ri
c
ha
rds
o
n
Kl
a
ve
m,1
l
98
9
)
a
環境的文脈 は出来事 を通 じて変化 しないので,エ ピソー ド記憶 を構成す る要素のほ と
ん どすべて と適合 しうる。つ ま り,環境的文脈 はエ ピソー ド記憶の想起を促 し,また識
別す る文脈にな りうることを意味 している。
3.
環境的文脈依存効果
エ ピソー ド記憶の想起が,環境的文脈 に よって促進 され る現象 を,環境的文脈依存効
果(
e
n
vi
ro
n
me
nt
alco
nte
xt
-de
pe
nd
e
nte
ff
e
ct
)と呼ぶ。環境的文脈依存効果は,再生課
e
.
g
‥ S
mi
t
h, 1
988
)が,再認課題 においては,
題 においては確かなもの とされてい る (
環境的文脈依存効果 が生 じる とい う実験結果 (
Ca
nas良 Nel
s
o
n, 1
986;Dal
t
o
n, 1
993;
Emme
rs
om,1
98
6;R
uss
o,Wa
rd,Ge
urts
,良Sc
he
re
s
,1
9
99;S
mi
t
h
,1
9
8
6)と,生 じない
G
odde
n& Bad
del
e
y, 1
975
,1
9
80;S
mi
t
h,Gl
e
nbe
rg
,& Bj
or
k, 1
97
8)
とい う実験結果 (
が混在 し,未だ不明確な点が数多 く残 されている。そのため,再認課題における環境的
文脈依存効果のメカニズムを解明す ることがエ ピソー ド記憶の解明に近づ くものにな
るのではないか と考え,本研究では再認 における環境的文脈の影響を解明す ることに主
眼を置いた。
4.
I
C
E理論
g
l
o
b
a
l
再 認 にお け る環境 的 文 脈 依 存 効 果 を説 明す る理 論 に広 域 照合理 論 群 (
m
a
t
c
h
i
n
gt
h
e
o
ri
e
s
)がある。広域照合理論群では,再認を学習項 目とテス ト項 目の比較
照合のみではなく,学習時 とテス ト時に存在 したすべての情報が,文脈情報 も含めて広
c
f
‥C
l
a
r
k良G
r
o
n
r
u
n
d
,1
996)
。
域的に照合 される過程 ととらえている(
ma
n
ee
t
a
l
.
(
1
999)
による
そのような広域照合理論群の中で最 も有力な理論 として,Mu
I
C
E理論 (
I
t
e
mCo
n
t
e
x
t
En
s
e
mb
l
et
h
e
o
r
y)
があげられるoI
C
E理論では,再認を項 目(
i
t
e
m
)
情報,文脈 (
c
o
n
t
e
x
t
)
情報,アンサンブル情報 (
e
n
s
e
m
b
l
e
)の広域照合過程 ととらえる。
I
C
E理論によると,項 目と文脈 はまった く独立に処理 され るとし,それ とは別に項 目と
文脈 との間に有意味な関係 (
アンサ ンブル)が生 じることで再認弁別に差が生 じるとす
る。つま り,アンサンブルが生 じない ときには再認弁別には差が生 じないと主張 してい
る。また,I
C
E理論では Hi
tや F
Aのよ うに,ターゲ ッ トやデ ィス トラクターに対す る
単純な再認反応は,アンサンブル形成の有無に関わ らず,環境的文脈に依存す るとして
いる。アンサンブルが形成 されない ときを例にあげると,H
i
tや F
Aのような単純な再
認反応では,ターゲ ッ トと文脈の熟知度がそれぞれ独立に再認照合過程に使用 され る。
具体的には,ターゲ ッ トが学習時 と同 じ文脈 (
旧文脈 o
l
dc
o
n
t
e
x
t
)の元でテス トされ
た場合 と,学習時に存在 しなかった文脈 (
新文脈 n
e
wc
o
n
t
e
x
t
)でテス トされた場合に
は,ターゲッ ト自体の熟知度には差がないものの,文脈の熟知度には新 ・旧の差が生 じ
る。その熟知度が高いほど y
e
s反応は単純に増加 し,新 ・旧文脈の熟知度の差によって
Hi
t率に差が生 じる。また,この新 ・旧文脈による熟知度の差は,ターゲッ トとデ ィス
トラクターで同 じであるか ら,F
A率においても同方向に同 じだけ生 じるとす る。 ゆえ
i
t
,F
A単独で見た場合には文脈依存効果が兄いだ される。 しか し,Hi
tや F
A単独
に,H
で文脈依存効果が生 じた として も,新 ・旧文脈の熟知度の差が H
i
tと F
Aで同 じである
ため,
CRSのようなターゲ ッ トとデ ィス トラクター間の再認における弁別を示す指標で
表 した場合に,H
i
tと F
Aの文脈依存効果は相殺 され,環境的文脈依存効果が消失 して
しま うことになる。
s
i
m
pl
evi
s
u
a
lc
o
n
t
e
x
t
)を用いたい
以上の予測は,意味内容に乏 しい単純視覚文脈 (
くつかの実験 によって支持 されてい る (
D
o
u
g
a
l& R
o
t
e
l
l
o
,1
999;M
u
r
n
a
n
e良P
h
e
l
ps
,
1
993,1
9
9
4,1
995 M
u
r
n
a
n
ee
ta
1
.
,1
999)
。 ここで,単純視覚文脈 とは,コンビュ-
5.I
C
E理論の問題点
現在,再認における環境的文脈依存効果を説明す る理論 として I
C
E理論が有力な理論
と考えられているが,それ に対 して疑問の声をあげる研究がい くつか発表 されている。
漁 田 ・尾関 (
2
0
0
5
)は,I
C
E理論では環境的文脈依存効果が生 じない といわれている
背景色文脈を用い,
・旧文脈 (
テス ト時に提示 された文脈)内変動の効果 と文脈手がか り
C
E理論によると,アンサ ン
過負荷の関係 を調べた。背景色は意味内容に乏 しいため,I
C
E理論では,アンサンブルが形成 されなければ,
ブルが形成 されない と予測 され る。 I
文脈は 「
ターゲッ トと対提示 された」とい う経験は符号化 されず,単に 「
学習場面で提
示 された」 とい う経験のみが符号化 されると説明す る。
「、
た とえば,あるターゲ ッ トと対提示 された旧文脈 と,対提示 されなかった旧文脈が,
学習時にどちらも同 じ時間提示 されていれば, どちらも同 じ熟知度をもつ ことになる。
その結果,あるターゲ ッ トに対 して同等の手がか り効果をもつ ことになるo漁 田 ・尾関
(
2
0
0
5
)はこのことを実験的に検証 し,手がか り負荷が高い条件では,I
C
E理論の予測通
り対提示旧文脈 と非対提示 旧文脈の手がか り効果は同等であった。 しか し, 1文脈あた
C
E理論の予測に反 して対提示旧文脈の手がか り効
りの手がか り負荷を低減 させれば,I
果が非対提示 旧文脈 よりも有意に高い効果 を示 した。つま り,条件次第で旧文脈変動内
2
0
0
5
)は,タ
で も文脈依存効果が生 じることを兄いだ した。また,漁 田 ・漁 田 ・岡本 (
ーゲ ッ トを旧文脈で,ディス トラクターを新文脈 (
学習時に存在 しなかった文脈)で提
示す る方法で背景色文脈依存効果を検証 した結果,手がか り負荷を軽減 させれば再認弁
別指標である CRSでも背景色文脈依存効果が生 じることを兄いだ した。
このよ うに,意味内容の乏 しい背景色文脈でも再認弁別指標で文脈依存効果が生 じた
5
i
i
i
i
とい うことは,項 目と文脈が対提示 された とい う経験がエ ピソー ド記憶に符号化 され る
C
E理論の 「
アンサンブル形成によって文脈依存効
ことを意味 している。 この結果は,I
2
0
0
5
)
や 漁
果が生 じる」とい う考えでは説明 しきれないものである。また,漁 田・
尾関 (
2
0
0
5
)の結果は,Hi
tや F
Aでは文脈依存効果が生 じるが,再認弁別指標で文脈依
田ら (
存効果が消失す る現象 (
D
o
u
g
al良R
o
t
e
l
l
o
,1
9
9
9;M
u
ma
n
e良P
h
e
l
ps
,1
9
9
3
,1
9
9
4,1
9
9
5
)
が,手がか り過負荷による偽現象 (
a
r
t
i
f
a
c
t
)であった可能性 も示唆 している
意味内容に乏 しい文脈の実験ばか りではなく,意味内容の豊富な文脈の実験において
も,以下のような問題がある。具体的には,Mu
ma
n
ee
ta
l
.
(
1
9
9
9
)
での実験の問題点 とし
て,豊富視覚文脈の用い られ方があげられ る。I
C
E理論は,絵画文脈の場合にアンサン
ブルが形成 されるのは 「
豊富な意味内容を持っているか ら」と説明す る。 しか し,その
実証実験で用いた絵画文脈 は,項 目と文脈が統合 されやすいよ うに作 られていた (
e.
g.,
提示 され る項 目は,教室場面での黒板の文字や,リビングに置かれたテ レビ画面内に表
示 される文字等,文脈に溶 け込みやすい形で提示 されていた)(
Fi
g
u
r
e
2
) これでは,「
単
。
に豊富な意味内容を持っているか ら」 とい う理由づけの検証 とは青いがたい。 もしも
I
C
E理論の言 うように文脈の意味内容の豊富さがアンサンブル形成,つまり再認弁別指
標における文脈依存効果を規定するのであれば,項 目と文脈をマ ッチ させ るような換作
を加える必要はないはずである。その点を検証す るため,本研究では豊富観覚文脈 と項
目の提示方法に注 目した。
「
、
「・
第 3節
本研究の目的
本研究は, I
C
E理論の検証実験における豊富視覚文脈 と項 目の提示方法の問題に注
w
al
lp
a
p
e
r
),
目した。 このため,本研究では身近に存在するコンピュータ画面の壁紙 (
とくに風景画像を,意味内容 を多 く含んだ文脈 として設定 し,I
C
E理論に対する検証 を
行 った。
既述 したよ うに,Muma
nee
ta
l
.
(
1
999)
の実験では,ターゲ ッ トと意味内容を多 く含ん
だ文脈 (
絵画文脈)が提示 され る際,ターゲッ ト内容が文脈に溶け込むように表示 され
ていた。この点から,過去の研究では単語 と画像が相互に関連づけやすいような換作が
行われていた といえよう。つま り,Muma
n¢e
ta
l
.
(
1
999) では意味内容を多 く含んだ文
「 ヽ
脈 を用いるとい う換作 と,その文脈 と項 目に注 目させ るとい う操作の 2つが交絡 してい
た といえる。本当に I
C
E理論の言 う通 り,意味内容の豊富な文脈がアンサンブル形成 を
させやすいのならば,項 目と文脈 をマ ッチ させるよ うな操作は必要ないはずである。そ
こで,本研究では 「
項 目と文脈が統合 されやすい」とい う条件を取 り去 り,純粋に 「
意
味内容 を多 く含んだ文脈 」がもた らす影響 と I
CE 理論の妥当性を検証す ることを第 1
の 目的 とした。
具体的には,意味内容を多 く含む コンピュータ画面の壁紙を舜境的文脈 とした場合 に
文脈依存効果を検出できるか否かを検討す ることである。手がか り過負荷の問題 を回避
す るために,背景色文脈で再認弁別の文脈依存効果が生 じた実験 (
漁 田, 2
0
05
)と同様
の手がか り負荷がかかった条件 を用いた。
本研究の第 2の 目的は,漁 田 ・尾関 (
2
0
05
)
や漁田ら (
2
0
0
5
)と同様に,意味内容の豊
富な文脈において文脈依存効果が生 じた場合に,文脈手がか りとコピー手がか りの関係
「
\
が どのようになるかを調べ ることである。I
C
E理論では,コピー手がか りと文脈手がか
りの双方が独立に再認成績 に影響す ると想定す る。具体的には,文脈依存効果の大きさ
が,項 目強度規定因の一つである提示速度の変化に伴い,項 目強度の関数 として不変,
あるいは増加すると予測す る。これは,背景色文脈 を用いた過去の研究において支持 さ
005や漁 田ら,2
0
05
)
。ただ し,I
CE理論では,再認弁別では背
れている(
漁田 ・尾関,2
景色文脈依存効果が生 じない としているため,再認弁別指標については予測されていな
い。これに対 して,漁 田 ・尾関 (
2
0
05
)
や漁 田ら(
2
00
5
)は,背景色文脈における再認弁別
の文脈依存効果が,提示速度の関数 として変化 しない ことを兄いだ している。本研究で
はこの点についても検証 したC
1
0
第
2章
実験 1
実験 1では,コン ピュー タ画面 に表示 され る壁紙 を環境的文脈 と して,画面 の中央 に
学習項 目を置 き,学習時 と同 じ文脈 下で再認テス トを行 う条件 (
同文脈) と,学習時 と
は異 な る文脈 で再認テス トを行 う条件 (
異文脈)を換作 した。 さらに,項 目強度規 定因
のひ とつで ある提示速度 を操作 し,文脈依存効果 との関係 を調べた。
方
実験計画
∩
法
文脈 (
同文脈 :s
a
mec
o
n
t
e
x
t
,SCv
s
.
異文脈 :d
i
fe
r
e
n
tc
o
n
t
e
x
t
,DC) ×項 目提
.
0秒/語 vs
.
2.0秒/蘇)の 2要因混合計画 を用 いた。文脈条件 は被験者 内要因 ,
示速度 (
1
項 目提示速度 は被験者 間要因 と した。
実験参加者
.
0秒/語条件 も しくは 2.
0秒/
静岡大学情報 学部生 51名 をランダムに 1
語条件 に割 り当てた。
実験材料
0以上 のカ タカナ 2音節綴 (
林 ,1
97
6)7
2個 を相互 に無 関連 と
連想価 が 9
2個 を,3
6個ずつ,学習項 目(
ターゲ ッ ト)とデ ィス トラ
な るよ うに選 出 した。 さらに 7
クター とにランダムに割 り当てた。
文脈
f
an.
ne
t
,URL:ht
t
T
)
:
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A)
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年 2月 13日現在)
か ら,和 をイ メー ジ させ る京都 の風景画像 を 6種類 ,洋 をイ メー ジ
「ヽ
計1
2種類 を選 出 した。学習時に提示す る文脈 (旧
させ る ヨー ロッパ の風景画像 を 6種類 ,
文脈)と,再認テス ト時 に新 たに提示す る文脈 (
新文脈)は和 v
s
.
洋 あるいは洋 v
s
.
和 とな
るよ うに組み合わせ た。
手続き 実験 は個別 に行 った。 実験参加者 には,実験 の一連 の流れ (
学習課題 , 四文
字熟語 の穴埋 め課題 ,再認課題 とい う流れ)を教示 した後 ,1
.
0秒 (
提示時間 0
.
7秒 ,堤
.
3秒)も しくは 2.
0秒 (
提示時間 1.
7秒 ,提示 間隔 0.
3秒)どち らかの提示速 度
示 間隔 0
で, 1
2.1イ ンチ液 晶デ ィスプ レイ を用 いて学習 リス ト36項 目を 1項 目ずつ提示 した。
提示順 序は被験者 間で ランダムに変化 させ た。提示 の際,学習項 目 1項 目につ き背後 に
1画像 (
学習時 には 旧文脈 6種類 の うち 1画像,テ ス ト時 には新, 旧文脈 1
2枚 の うち 1
画像)を対 に して表示 させ た。 その際,各壁紙が同数 (
6回)選 出 され ること,捷示時 に
同一壁轟
氏が続 けて現れ るのは最大 3回まで,とい う条件 で行 った。学習時 と同 じ単語 と
壁紙 の組み合 わせ で提示 され た場合 を同文脈条件 ,学習時 とは異 なる単語 と壁紙 の組 み
l
l
合わせで提示 された場合 を異文脈条件 とした。リス ト提示の際,実験参加者には学習す
るのは項 目のみであ り,壁紙は覚 える必要がないことを伝 えた。学習方略は実験参加者
の 自由とした。学習項 目提示後,5分間の緩衝課題 (
四文字熟語の虫食い埋め課題)を行
2壁
わせた。その後,デ ィス トラクター36項 目と壁紙に新文脈 6種類を新たに含んだ 1
紘,72項 目の リス トを記銘時 と同様のディスプ レイに 1個ずつ提示 し,キーボー ドを
用いて表示 された単語が 「
学習時にあった (
yes
,Kキー)」 または 「
学習時になかった
(
no,Dキー)」 の再認判断をさせた。再認判断には制限時間を設けなかった。
結果
「、
条件 ごと,指標 ごとの結果 を Tabl
e
2に,各指標 ごとの分散分析表を Tabl
e3,4,5に
i
tでは,文脈の主効果
示す。文脈 ×提示速度の 2要因の分散分析 を行 った結果,H
[
p(
1
,
4
9
)≡5.966,p く.05],提示速度の主効果 [
F(
1
,
4
9
)
=10.354,p く.005]が有意
であったが,交互作用は有意でなかった [
P(
1
,
4
9
)
=1.513, p).1].FA では,文脈の
F(
1
,
4
9
)≡9.473, p く.005]が有意であったが,提示速度 と交互作用は有意で
主効果 [
なかった [
Fく1]。CRS では,提示速度の主効果 [
F(
1
,
4
9
)= 8.068,p く.01]が有意で
あったが,文脈の主効果 [
∫く1],交互作用 [′く1]ともに有意でなかった。
Tabl
e2 Me
anHi
tr
a
t
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a
t
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C
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、
Hi
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SC
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SC
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SC
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4
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28
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2
0
0.
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0.
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0.
1
8
0.
1
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0.
1
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0.
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M
0.
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0.
80
0.
23
0.
1
7
0.
6
0
0.
63
SD
0.
11
0.
1
3
0.
1
8
0.
1
9
0.
2
0
0.
23
1
2
Tabl
e3.
Ana
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i
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fVa
ia
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nc
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I
I
i
t
)
s
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c
e
SS
df
MS
F
1
0.
35
4
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01
p
A:
提示速度
0.
341
1
0.
341
e
rr
o
r
【
S(
A)
1
1
.
61
2
49
0.
033
B:
文脈
0.
07
4
1
0.
074
5.
966
<.
05
AB
0.
01
9
1
0.
01
9
1
.
51
3
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e
rr
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l
BS(
A)
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0.
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49
0.
01
2
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A
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FA)
Tabl
e
4.
8
0
ur
C
e
SS
df
MS
A:
提示速度
0.
036
1
0.
036
e
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r
o
r
【
S(
A)
】
2.
782
49
0.
05
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F
p
0.
640
>.
40
B:
文脈
0.
1
1
5
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0.
1
1
5
9.
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く01
AB
0.
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1
0.
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0.
28
2
>.
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e
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BS(
A)
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49
0.
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Tabl
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CRS)
√ヽ
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F
.
8.
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く.
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p
A:
提示速度
0.
600
1
0.
600
e
rr
o
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S(
A)
】
3.
645
49
0.
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B:
文脈
0.
004
1
0.
004
0.
27
8
>.
60
1
0.
006
0.
3
83
>.
5
0
49
0.
01
6
AB
e
r
r
o
r【
BS(
A)
】
0.
006
0.
787
1
3
考察
実験 1では,H
i
tや F
Aとい う単純再認では文脈依存効果が生 じたが,再認弁別指標
R
Sでは環境的文脈依存効果 を見出す ことはできなかった。 I
C
E理論によると,
である C
文脈の意味内容が豊富であればアンサンブルは形成 され,アンサンブルが形成 されれば
cRSのような再認弁別指標で も文脈依存効果が生 じると予測 している。 しか し実験 1の
C
E理論におけるア
結果は,意味内容の豊富な壁紙画像 を環境的文脈 とした条件でも,I
C
E理論で説
ンサンブルが形成 されない ことを兄いだ した。したがって,本研究結果を I
明す ることは非常に困難である。
一方,文脈手がか りとコピー手がか りの関係については,有意な文脈依存効果が生 じ
「、
i
t
,F
Aにおいて交互作用がみ られなかった。この結果は,もし実験 1が単純視覚文
たH
脈や背景色文脈であったな ら,項 目と文脈は独立に処理 され,再認成績に影響す るとい
うI
C
E理論の考えを支持す ることになっていたといえる。
本実験では,壁紙画像はコンピュータ画面に表示 され る壁紙 と同様に単なる背景 とし
て存在 し,その前面に記銘すべき単語を提示 させ る形をとり,関連性 を注 目させ るよ う
Fi
g
u
r
C
3)
.また,本実験は意図学習であったため,実験参加者 に
な操作は加 えなかった(
は単語 を注視 させ るような換作を加 えていた。一方,Muma
nee
ta
l
.
(
1
99
9
)
での意味内容
を多 く含む文脈を用いた実験では,ターゲッ ト情報が文脈に溶 け込むように表示 されて
いた (
e.g‥ 教室場面での黒板の文字, リビングに置かれたテ レビ画面に表示,道路 に
設置 された看板に表示)
。また,Muma
n
ee
ta
l
.(
1
999
)
の再認課題は偶発学習であ り,提
「どのように
示 され る単語が再認課題 として用い られ ることは教示 されていなかった (
単語が理解 されているかを調べる実験だ」といった方向付け課題 を用いるなど,単語 を
「ヽ
記銘す ることに意識を向けさせないよ うに していた)
。
つま り,過去の研究では単語 と文脈がひ とつの文脈 として組み合わされ,また相互に
関連づけやすいよ うな操作が行われ,かつ偶発学習であったため焦点情報以外の情報に
も注意が向けやす く,項 目と文脈が結び付けられやすいような換作がなされていた とい
える。では,実験 1と同 じ実験材料,同 じ提示方法を用いた としても,単語 と文脈に注
目をさせ る換作を加 えれば,意味内容の多い文脈 を環境的文脈 とした場合での再認判断
において,Mu
ma
nee
ta
l
.
(
1
999
)
の実験結果のように文脈依存効果がみいだされるのであ
ろ うか。すなわち 「
単語 と文脈に注 目させ る」 換作が文脈依存効果に関連するのかを改
めて検証 してみる必要がある。
そ こで,使用 した学習項 目と壁紙の関係 (
意味的な関連)が再認成衝に影響す るのか
どうかを実験 2で検討 した。
1
4
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1
第3
章 実験 2
実験 2では,単語 と文脈 の関係 に注 目させ る換作が文脈依存効果 に影響 を与 えるの
ma
nee
ta
l
.
(
1
9
9
9
) の条件 に近づけるため,実験参加者 にターゲ ッ トと文脈
かを,Mu
の意味的な関係 を評定 させ る換作 を加 えることで文脈依存効果の検証を行った。
方法
文脈 (
同文脈 :S
Cvs
.
異文脈
実験計画
5i
i
i
実験参加者
実験材料
文脈
:
DC,被験者 内)の 1要因計画
静岡大学情報学部生で,実験 1に参加 していない 2
6名 が参加 した。
実験 1と同様 とした。
実験 1と同様 とした。
手続き 実験は個別に行ったC実験参加者には 「
壁紙 と同時に提示 され る単語が, ど
れ ほ ど意味的にマ ッチ しているか,連想 Lやす いかを主観的判断で結構ですので 5段階
で評定 して もらいます」と教示 し,壁紙 と単語の意味的関連性 を時間無制限で 5段階評定
(
1:合っていない∼5:合っている)してもらった。単語 と壁紙の出現条件は,提示速度の制
限を設けなかったこと以外は実験 1の学習 リス ト提示時 と同様である.評定後,実験 1と
同様の緩衝課題を 5分間行わせ,その後,同様に再認テス トを行わせた。実験 1と異なる
管
点は,実験 1では学習 リス トを提示す る前に実験内容が再認記憶課題であることを伝えた
偶
(
意図学習)
が,実験 2 では実験内容が再認記憶課題であることを事前に知 らせなかった(
発学習)ことである。
結果
条件 ごと,指標 ごとの結束 を T
a
bl
e
6
.に示すo t検定 を行 った結果,Hi
tでは,SC条
=3.
0
2
4
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p<.
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。
FAでは,SC条件 と DC条
d50
)
件 と DC条件 間で有意差が見 られた l
件 間での有意差は見 られ なかった 【
t<1
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。CRSでは,S
C条件 と DC条件間で有意差が
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23
考察
実験 2では,実験 1と同様の実験材料 ・文脈を用いたにも関わ らず,再認弁別指標で
「ヽ
ある C
RSにおいて も有意な差が見 られた。実験 2の結果だけを見ると,Murnaneetal
.
(
1
999)
の予測 と一致 してお り,I
CE 理論を支持す る結果 となる。けれ ども実験 1で環境
的文脈依存効果が生 じなかった点を,あわせて考察す る必要がある。
単語 と壁紙を同時提示 しただけの実験 1に対 し,実験 2では単語 と壁紙の意味的関連
性 を評定させ ることで,壁紙 と項 目の双方に注 目をさせた。つま り,実験 1に比べ項 目
と文脈の関係 に注 目させやすい操作を加 えたものであった。この点か ら,意味内容を多
く含む文脈を環境的文脈に用いた再認実験の場合には,単語 と壁紙文脈の関連性に注 目
させ るとい う操作がアンサンブルを形成 させ,文脈依存効果 を引き起 こしたのではなか
ろ うか。
Giiii
1
7
第 4章
全体的考察
本研究では,意味内容が豊富な壁紙文脈 を環境的文脈 として用い, 2つの再認実験 を
漁 田ら,2
0
0
5
)と同 じ
行 った。実験 1では,背景色文脈で文脈依存効果が生 じた条件 (
項 目数 と文脈数の構成で,背景色文脈 を壁紙文脈 に変更 させて行 った。 その結果,再認
R
Sで壁紙文脈依存効果 は生 じなかった。 しか し,実験 1と同 じ材料 ,
弁別指標である C
提示方法を用い,単語 と壁紙 の意味的な関連に注 目させ る操作を加 えた実験 2では,再
I
C
E
認弁別指標で も壁祇文脈依存効果が生 じることを兄いだ した。これ らの実験結果は,
理論では説 明 しきれない。
nA
本研究では 1つ 目の 目的 として, 「
意味内容 を多 く含 んだ文脈 」がもた らす影響 を調
CE理論の妥 当性 を検証 したO実験 1では,再認弁別で背景色文脈依存効
べ ることで,I
nee
tal
.
果 が生 じた場合 と同 じ条件 (
手がか り過負荷が生 じない条件)を用いた。Muma
(
1
999)は,手がか り過負荷が生 じるよ うな条件下で も,意味内容の豊かな文脈であれ
ば,再認弁別で文脈依存効果が生 じることを兄いだ している。それにもかかわ らず,本
研 究は,意味内容の少ない背景色 を用いた場合に生 じた文脈依存効果が,意味内容の多
C
E
い壁紙 を環境的文脈 とした場合 では生 じない とい う結果 を兄いだ した。この結集は I
理論お よびその検証実験結果 (
Muma
nee
ta
1
.
,1
999)と矛盾す る。一方,実験 1と同 じ材料
を用いて壁紙 と単語 の意味的関連性 を評定 させた実験 2では,再認弁別指標 において も
環境的文脈依存効果が生 じた。再認弁別指標で文脈依存効果 が見 られた とい うことは,
項 目と文脈が対提示 された とい う経験が,エ ピソー ド記憶 に符号化 され ることを意味 し
ている。 しか し,この場合 の文脈依存効果 は,I
CE理論の よ うに 「
意味内容の多い文脈
を用いればアンサ ンブルが形成 され る」と鋭明す ることは難 しい。意味内容の多い文脈
∩
においては,項 目と文脈が単純に同時提示 され るだけではアンサンブルは形成 され ない
(
実験 1) が,項 目と文脈 がアンサ ンブル に統合 されやすい状況を作 ると,アンサ ンブ
ル が形成 され る (
実験 2) と説 明す る方がより妥 当 といえよ う。
また,先行研究 と本研究 の差異 として,文脈数 と手がか り負荷の違いがあげ られ る。
背景色のよ うな意味内容に乏 しい文脈 を用いた再認実験においては,1文脈あた り20
項 目程度の手がか り負荷がかかる条件では有意な文脈依存効果は引き出せない (
漁 田ら,
2
0
0
5;漁 田 ・尾関, 2
0
0
5
)が, 1 文脈 あた り4-6項 目と手がか り負荷 を低 くすれ ば
文脈依存効異が生 じると結論づ けている (
漁 田ら,2
0
0
5;漁 田 ・尾関, 2
0
0
5
)
。一方,
絵画 のよ うな意味内容 を多 く含む文脈 を用いた実験の場合,背景色文脈で文脈依存効果
が生 じなかった場合 と同程度の手がか り負荷がかかった場合で も,文脈依存効果が兄い
だ されてい る (
Muma
nee
ta1
.
,1
999)
。しか し,文脈依存効果が生 じた Muma
nee
tal
.
(
1
999)
での手がか り負荷 (
1文脈 あた り 16項 目)よ りも手がか り負荷 を低 くした本研究 (
1文
1
8
脈 あた り6項 目)では 「
手がか り負荷が低い条件 であったにもかかわ らず意味内容 の多
い文脈 において環境的文脈依存効果 が生 じなくなる」とい う従来の研究結果 と食い違 う
結果 を得た。
なぜ文脈数が多 く,かつ手がか り負荷の低い条件であったにもかかわ らず,実験 1に
おいて文脈依存効果が生 じなかったのであろ うか。今回実験 に用いた壁紙のよ うに,意
味内容 を多 く含む文脈 には,背景色文脈 とは異な り多様 な情報が含まれている。背景色
は意味内容が少 ないため,エ ピソー ド内では容易 に 「
地 」にな り得 るO これに対 して,
壁紙はエ ピソー ド内ではその情報量の多 さか ら存在 を主張 し, 「
図」 にな りやすい要素
を強 く持 っているOそのため,意味内容の多い文脈 と項 目をただ単に同時提示 しただけ
では,お互いの存在が主張 しあ うだけで,アンサンブルは形成 され ることな く独立に処
「ヽ
理 されて しま うのではなかろ うれ
Mu
ma
nee
ta
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.(
1
9
9
9
)において も,単語 と文脈 に注
目させ るよ うな条件操作 (
単語 を絵画文脈 に溶 け込ませ るよ うな提示の仕方)がな され
ていたため文脈依存効果が生 じたのであ り,単純 に項 目と文脈 を提示 させ るだけでは文
脈依存効果は生 じなかったのではなか ろ うか。
本研 究では 2つ 目の 目的 として,意味内容の多い文脈 において,文脈手がか りとコピ
)
。結果,C
RSにおいて文脈依存
ー手がか りが どの よ うな関係 にあるかを調べた (
実験 1
効果は見 られなかった。 しか し,H
i
t
,F
Aにおいては有意 な文脈依存効果がみ られ る と
ともに交互作用がみ られ なかったCこの結果は,もし実験 1が単純視覚文脈や背景色文
脈 であったな ら,項 目と文脈 は独立に処理 され,再認成績 に影響す るとい う I
C
E理論 の
考 えを支持す ることになっていた といえる。残念なが ら,提示速度 を変数 とした実験 1
では,再認弁別指標で文脈依存効果が生 じなかったため,意味内容の多い文脈における
文脈手がか りとコピー手がか りの関係 を深 く追究す ることはで きなかった。 ゆえに,今
「ヽ
後 はこの点か らも I
C
E理論 を検証 してい くことが課題 となるであろ う。
以上 の考察か ら,本研 究では 「
意味内容 の多い文脈 を用いた場合の再認にお ける環境
C
E理論で説明す ることは困難である」と結論づ けることが
的文脈依存効果 を,現状の I
できる。しか し,今回のよ うな意味内容 を多 く含 んだ文脈 における環境的文脈依存効果
研究 には,まだ問題点が残 されている。た とえば,本研 究では風景画像 (
写真)を文脈
ma
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.
(
1
9
9
9
)
で用いた文脈 はイ ラス トを用いた絵画文脈 で
として用いた。一方,Mu
あった。 「
意味内容の多い文脈 」 ひ とつ とってみて も,人物画や風景画,写真やイ ラス
トな ど文脈 の種類は多岐 にわた る。 「
意味内容の多い文脈 」の中に様 々な種類がある と
い うことは, 「
意味内容の多い文脈 」 内で も分類が可能 なはずであ り,その分類基準 と
して,情報量の差等 による区別 もできるはずである。 ゆえに,Mu
ma
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Ce
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.
(
1
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9
)
や本
研究の よ うに,風景画やイ ラス トを 「
意味内容の多い文脈 」 としてひ とま とめに考 え,
結果 を比較す るのは問題があるよ うに思われ る。今後は 「
意味内容の多い文脈 」 をある
程度細か く分類 した上での研 究がな され るべ きであろ う。
1
9
本研究は,過去の 2つの研究 (
漁 田ら,2
005;漁 田 ・尾関, 2005) と同様に,
I
C
E
理論に新たな疑問を投げかけるもの となった。本研究の結果か ら,意味内容の多い文脈
において文脈依存効果が生 じるのは 「
項 目と文脈に注 目させ る」換作を加 える条件にお
C
E理論では意味内容の多い文脈における環境的文脈依存効果
いてのみであ り,現状の I
をオールマイティーに説明す ることはできないもの といえる。今後は,文脈の種類,文
脈手がか り負荷の問題,再認課題の種類などに着 目し,多様な条件の下で実験を行い,
再認 における文脈的依存効果 を効果的に説明できる理論 をつ くりあげていくことが求
め られ る。また,本研究では,I
C
E理論における 「
意味内容 を多 く含んだ文脈」として,
コンピュータ画面に表示 され る壁紙を用いて検証 した。コンピュータ画面を実験場面に
置いたのは,現代人の多 くは 日常的にコンピュータに触れてお り,コンピュータ画面が
「、
日常生活における環境の一部 となっていると考えたか らである。本実験のように壁紙文
脈 を背景 とし,再認実験を行 うとい うことは 日常 コンピュータを使用す る上では考えら
れない。 しか し,報告書を書いた り,ゲームを した り,調べ物 を した りとコンピュータ
上で何か作業を行 う際には,どのような場合においても壁紙は必ず存在するはずである。
本研究の条件設定は,コンピュータ画面上で作業を行 う際の壁紙の影響や,再び同 じ壁
紙の下で作業を行った場合の作業効率の影響など,コンピュータ環境が及ぼす様々な影
響を見据えた基礎的な研究であると考えられる。ゆえに,本研究における条件設定は生
態学的妥当性が高い といえる。環境的文脈 としてコンピュータ画面を設定 し研究を行 う
ことは,現代社会において欠かす ことのできない P
C環境 を,より快連なものにす るた
めの一助 となるであろ う。さらに,本研究の結果は,今後発展 していくであろ うコンピ
ュータを利用 した教育分野の発展に関 しても有益な情報を提供できると考える。
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20
引用文献
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