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社会で活躍する女性たちへ - 中国経済産業局
新春座談会 社会で活躍する女性たちへ 座談会出席者: 持田 朝子氏 加藤 せい子氏 重道 泰造氏 塩田 康一 株式会社システム工房エム 代表取締役社長 NPO法人吉備野工房ちみち 理事長 株式会社アイグラン 代表取締役 中国経済産業局 総務企画部長 ■塩田部長 本日はお忙しいところお集まりいただき、ありが とうございます。最近、ダイバーシティ経営が注 目されており、多様な人材を活かしながら能力を 最大限発揮できる機会を提供することでイノベー ションを生み出し、価値創造に繋げていく経営が 求められています。 特に少子高齢化の中で、女性の活用が期待されて おり、重要になってくるということで、女性経営 対談風景 者として、活躍されておられる株式会社システム 工房エムの持田社長とNPO法人吉備野工房ちみちの加藤理事長をお招きしました。また、 女性の社会進出の支援、促進で、いろんな活動に取り組んでおられる株式会社アイグラン の重道社長をお招きして、女性が地域社会の中でどのように活躍していけばよいのか、あ るいは輝くことの重要性と可能性についてお話を伺いたいと思います。 最初に持田社長に伺います。御社は、Ruby による開発・サービス提供、Web アプリ開発など を行っておられますが、今年度は島根県の補助事業にも採択されたと聞いています。また、 (社)中国地域ニュービジネス協議会島根支部女性部会の立ち上げに携わり、現在、部会長 を務められ、積極的に活動されていると伺っています。それでは自己紹介と御社の取組内容 をお聞かせください。 ■持田社長 当社は島根県松江市で事業を行っている(株)システム工房エムです。ソフトウェアの専門 開発会社です。お客様の希望に合ったソフト開発をしており、その経営者の思いに即したシ ステムを作ることを目指してここまでやってきました。 夫が 1984 年に個人創業し、3年後の 1987 年に有限会社に、そして 1993 年に株式会社に変 更し、創業してから 28 年になりました。 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 1 この仕事をやっている人が余りいないと分かった のは、税務署へ申告に行った時でした。記入する 用紙にソフト開発の業種がなく、税務署の方から 一覧表を見せられ「この中のどれになりますか」 といわれました。そこで、プログラムを作り上げ ると考えて製造業を選びました。 最初は仕事がなく、個人営業している友人が見か ねて、販売管理のソフトを作って欲しいと頼んで くれました。それは友達の好意でしたが、一生懸 命に聞き取りしながら作りました。すると、 「こん なに便利なのか」と友人が驚いていました。夫を 助けようと思ったものが、とても便利なものだと 分かり、そこからは口コミで広がっていきました。 口コミの力は大きいと、このとき実感しました。 そこから徐々に仕事が入り始め、一人では間に合 わなくなった事から人を増やしていき、1987 年に は法人化に至った次第です。 (株)システム工房エム 持田 朝子 株式会社 代表取締役社長 氏 システム工房エム 所在地:島根県松江市西津田 3-2-3 設 立:1984 年 法人化:1987 年 5 月 ホームページ http://www.kouboum.co.jp/ では、なぜ私が代表取締役になっているかといいますと、1995 年に、突然夫が他界したか らです。それまでは「事業は自分がするから、君は家庭を守ってくれたらいいよ。」といっ ていましたので、私は主婦をしていました。 まさか夫が他界するとは思ってもみなかったわけで、昨日まで主婦だった者が、翌日には代 表取締役という役職になっていました。事業が生き物で、一つ間違えると怖いということも 分からずに継いでしまいました。 ■塩田部長 続いて、加藤理事長に伺いたいと思います。 加藤理事長は岡山県総社市でまちづくりに取り組んでおられます。子育て支援、中山間地域 支援、被災地の復興支援など、幅広く活動されています。昨年度は、内閣府主催の「女性の チャレンジ賞」の「女性のチャレンジ賞特別部門賞」を受賞されました。それでは加藤理事 長、よろしくお願いします。 ■加藤理事長 私たちは 2008 年にNPO法人を取得し、活動5年目になりました。活動内容は、 「地域を繋 ぐ」ということで、プロデュース事業、商品開発事業、情報発信事業、イベントやセミナー などを企画しており、NPO中間支援という行政と市民を繋ぐ新しいセクターを作りたいと 思い、活動しています。 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 2 きっかけは、1997 年の酒鬼薔薇聖斗事件という神 戸で起きた残虐な事件をテレビで見たときに、バ ブルがはじけ、混沌としている日本で、子供たち が被害者になったり、加害者になったりする社会 の中、大人はただ評論家をしている人が多いと思 いました。私にも子供がいましたので、汗を流し、 泥をかぶり、賢明に生きる姿を子供に見せたいと 思って、1999 年にボランティアグループを立ち上 げ、あえて“まちづくり”という視点で地域に出 ていきました。 子育てや男女共同参画は、どうしても横に置かれ る感覚があり、 “まちづくり”には、暮らし、子育 てという女性の視点を入れていかないと、「まち」 は変わらないとの思いで、1999 年からボランティ ア活動を始めました。 NPO法人吉備野工房ちみち 加藤 せい子 理事長 氏 NPO 法人吉備野工房ちみち 所在地:岡山県総社市三須 796 発 足:2007 年 4 月 NPO 法人認証:2008 年 5 月 ホームページ http://www.chimichi.org/ ボランティア活動をやって見えてきたことは、ま ちづくりの中に女性の視点がないことです。意志決定権があるのは、ほとんど男性です。ボ ランティアをする人は女性が多いのですが、決めごとのときは男性が中心で、とても違和感 を持ちました。 素晴らしい活動があるのですが、それを“繋ぐ”仕組みがなかったので、その視点が欲しい と思いました。皆さん、能力がありますし、やりたい思いがあるのですが、そういう人たち の出番と居場所がない社会を変えたい思いでまちづくりをやっていました。ただ、ボランテ ィアには限界がありました。2007 年にボランティアから脱皮をして、自分も法人の経営者 として責任を持つことを、女性の立場で発信しない限り、社会は変わらないと思い、2008 年にNPO法人を立ち上げました。 株式等の手法がありましたが、社会の課題解決を目的にやるので、NPO法人を選びました。 ちょうどその時、大分県の別府で、温泉を使った博覧会「オンパク」という手法を使って、 経済産業省の事業に手を挙げました。私たちは、「みちくさ小道」という体験交流プログラ ムを手法として使い、人が育つ場、情報発信をする場、資源を掘り起こす場ということで、 体験交流プログラム「みちくさ小道」を始めました。 今、9回目です。通常、こういう体験交流プログラムは観光でするのですが、私たちは観光 の視点は入れていません。人がチャレンジしたり、自分の能力に気づいて自分で考え、行動 できる人たちを育てたりすることを中心にしています。 総社には何もないといわれますが、資源を掘り起こすことや、ソーシャルメディアのフェイ スブック、ツイッター、ブログなどで情報発信することで、今まで繋がっていなかった人た ちが繋がっていき、とても面白い現象が起こっています。 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 3 2008 年に立ち上げた当初は、通過型の地域という大きな課題がありました。倉敷から車で 20~30 分ですが、総社には寄らず、通過される場所でした。活動を始めた今は、 「総社は面 白くて元気だね」という声を聞くことで、総社に“みちくさ”をしてくださるようになった と、効果を実感しています。また、女性たちが「チャレンジしていいんだ」という意識にな っていて、毎日のように、 「私はこんなことをやりたい!」 「子供がいるんだけど、今までこ んなことをしてきたんだ」という相談にこられます。それらを整理して、実際にみちくさ小 道でやることで、女性たちの支援もしています。 5年間、掘り起こした地域資源の「古墳」につい て、本にしました。タイミング良く、今日の新聞 にも取り上げていただきました。資源を見える形 にしないと、人には伝わらないので、女性が好む ような表現を使った形で発信しています。少しず つ、見えないものを形にしていくことが中間支援 という役割なのかなと思っています。 それから、中国経済産業局と一緒に、昨年 10 月から「みちくさ小道」のノウハウ移転事業 に取り組んでいます。場所は福島県田村市、会津若松市、宮城県亘理町、石巻市、気仙沼市 の5地域に、私たちの「みちくさ小道」のノウハウを移転しています。目的は、地域資源の 掘り起こし、人材を使った体験交流プログラムをつくること、それから、女性や若者が地域 リーダーになるための人材育成です。 「みちくさ小道」が地域のプラットホームの役割をしています。ひと、もの、サービスの情 報がそこに集まり、新たな形で事柄やものが生まれてくるプラットホームの構築を目指して います。 来年3月までの事業ですが、目的のとおり、女性や若者たちが被災地で活き活きと活動して いるので、この事業を受けて良かったと思っています。 このように、4年間の活動の中で、少しずつ、ビジネスとそれだけではない地域の課題を解 決することを目的に活動しています。 ■塩田部長 重道社長に伺います。御社はサービス業の視点を取り入れた株式会社による認可保育園と、 事業所内保育園の「保育サービス」事業により、女性の社会進出の促進に積極的に取り組ん でおられ、先日、日本ニュービジネス協議会連合会主催の「第7回ニッポン新事業創出大賞」 で、見事、最優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞されました。おめでとうございます。それで は、重道社長よろしくお願いします。 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 4 ■重道社長 (株)アイグランです。主な生業は、保育サービス事業が中心となっています。創業 46 年 で、私は2代目です。保育サービス事業は私の代から始めました。その他、旅行鞄(スーツ ケース)のレンタル事業もしています。 当社の保育事業には特長が2点あります。1点目 は、広島県、千葉県、茨城県で 10 ヵ所ほど認可保 育園を運営しています。通常、認可保育園の業界 では、民間といいますと社会福祉法人を指します。 今、公立私立併せて、全国で約2万3千ヵ所の認 可保育園が存在していますが、そのうち、株式会 社率は全国で 200 数十ヵ所しかなく、全体の1% 程度です。特に、株式会社率の認可保育園のほと んどが東京都や神奈川県に集中していますので、 (株)アイグラン 代表取締役 地方で株式会社が運営しているのは、全国的にも 重道 泰造 氏 珍しい事例だと思います。 2点目は、事業所内保育園です。事業所内保育園 株式会社 アイグラン とは、その企業に働いている社員様のお子様をお 所在地:広島市中区光南 2-1-20 預かりする保育園ですが、多くが病院内の保育園 創 業:1966 年 です。なぜ必要かといいますと、医療機関の場合 設 立:1987 年 11 月 は、勤務時間が 365 日 24 時間動いている施設です ホームページ ので、通常の認可保育園では、日勤は働けても夜 http://www.aigran.co.jp/ 勤ができないなど、職員が正社員として働き続け ることが難しい環境が生まれています。そこで、 当社が保育園を運営することで、夜間も 24 時間動いている日も、病児保育といって、医療 機関の中にある特長を活かして、病気の時でもお子様が診られる体制を整えたり、日曜も含 めて運営することで、ずっと働き続けられる環境をつくることがニーズとして強くあります。 現在、28 都府県で 110 カ所以上で運営していて、保育士は、パートも含め 1000 名程度の職 員がいます。利用児童は 2500 人くらいです。 当社が保育事業で大切にしていることは、いい意味で株式会社の視点を活かすことです。先 程も紹介いただいたように、私はこの保育事業もサービス業として捉えることを大切にして います。他の産業でもそうですが、やはり相手の立場に立って考えることが大切だと思いま す。もし自分が利用者や子供だったらどんな保育園がいいだろうかと考えて運営しています。 当社は、保育園の存在がお子様にとって「心の基地」になりたいと思っています。「ここに 来れば、絶対に自分を守ってくれる」とか、「絶対に安心して過ごすことができる」という 場所があることは、子供にとって大切なことです。 そして、当社が違った視点で見ているのは、保育園がどこまでお母様の応援団になれるかと いうことです。当社の認可保育園では、全室にウェブカメラが付いていて、お母様は、パソ 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 5 コンや携帯電話で、いつでも自分のお子様の様子を見ることができるようになっています。 これは、お母様の立場からすると、 「うちの子、ずっと泣いているんじゃないかな」とか、 朝、具合が悪そうだったら、「元気にしているかな」と心配する方もいると思います。皆さ ん、仕事をしていますので、ずっと見ている方は実際いらっしゃらないと思いますが、見よ うと思えばいつでも見ることができる安心感が保護者のサポートになると思います。 一方、保育園側からすると、見られない方が都合が良いので、ほとんどカメラは付いていま せん。結局、誰のための保育園かを考える時、当社はサービス業の視点をもって、もし自分 が利用者だったら、あった方が安心ということからカメラを付けています。 これ以外にも、当社の保育園は食育に力を入れて います。認可保育園は全て自園調理ですが、当社 では出汁も天然出汁にこだわっています。化学調 味料は、極力使用しません。加工済冷凍食品も使 用しません。通常の認可保育園ではプラスチック 製の食器を使用しています。プラスチック食器の 方が管理も簡単ですし安価です。ただし、大人で もそうですが、プラスチックの器で食べるのと、 磁器では違います。当社では全園で強化磁器を使 用しています。管理は大変ですが、子供にとっても、ものを大事にしないと“割れる”こと を学べますし、食は器も含めて味わうものですから、食に対する興味を持たせるためにも、 大切だと思っています。また、お母様も本当は自宅で手作りの天然だしを使ってお子様の食 事を作られたらいいのですが、実際は、1人親の家庭も多い中、疲れて帰って、スーパーの 総菜を買って食べさせるのがやっとの家庭もあると思います。しかし、それはお母様が悪い のではなく、それが現実なのです。それでも頑張って育てていること自体が素晴らしいこと です。その現実を保育園側が受け止めて、1日の中で全部のバランスが取れれば良いのです。 保護者が自分でやっていることを承認できることが大切と思います。 認可保育園は、待機児童が多い状況です。保育園は認可を受けるまでが大変ですが、認可保 育園の運営が始まると、園児の獲得はそれほど努力をしなくてもまかなっていけます。先程 のようなことはやらない方が儲かります。ここまでこだわる保育園は少ないのかも知れませ ん。小泉内閣の時から株式会社の参入が認められましたが、株式会社が認められた意味がな いといけません。多様性を持たせる中で、こういった選択肢もあるのではないか問うていき たいです。 また、当社は中国地域の中山間地域にある病院の中で多数の保育園を運営させていただいて おります。都市部の保育園も沢山ありますが、私は中山間地域の方が燃えます。保育士の確 保は大変ですが、地域医療は単に病院があるだけでなく、総合病院がなくなったら困るとい う地域が結構あります。病院は医者、看護師の数によって収入が決まるので、職員の確保は 大切です。先程述べたように、病院ではいろんなことが急に発生します。認可保育園では、 閉園時間にお母様が迎えに来ていないと、お母様に何度も電話がかかってきて、 「迎えに来 てください」といわれ、板挟みになって、自分が働き続けることが子供にとって悪いことを 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 6 しているのではないかと悩み、会社を退職される方も多いのです。当社が病院内保育を運営 しているのは、単に福利厚生だけでなく、お母様の辛い気持ちを理解した上で、 「お母様と 一緒に頑張ろう」という気持ちでやっていくことが大切と思っています。地域で安心して過 ごすためにも、医療機関の存在はとても大切と思います。この事業がその力になれれば良い と思っています。 ■塩田部長 女性が社会で活躍する上で苦労したこと、あるい は女性の視点を生かして成功できたこと、そして、 仕事と家庭の両立する上で工夫したことについて、 持田社長と加藤理事長に伺いたいと思います。 2人は女性経営者として積極的に活動されていま すが、おそらく見えないところで様々な苦労があ ったと思います。それについてお話しいただけま すか。 中国経済産業局 塩田 総務企画部長 康一 ■持田社長 夫の突然の他界だったため、葬儀や挨拶回りなどで泣く暇もなかった事を思い出します。 私が会社を継ごうと思ったきっかけは、当時、長女が高校2年、次女は中学1年で、子供が ある程度大きくなっていたことです。それともう1つ、「主人の夢の1つでも叶えてあげら れたら良いな」という思いと、持田の名前が残れば皆さんの記憶に残っていくと考えたから でした。 1995 年頃は“女性起業家”という言葉はありませんでした。当時、経営者といえば周りは 男性ばかりで、初めて会合に出たときに女性が見あたらず、女性が誰もいないと分かった瞬 間に、足がすくんでしまい、そのまま逃げて帰ろうかと思いました。 会合後の懇親会に出席しても、誰も声をかけてく れませんでした。解決策として「自分の方から声 をかけてみよう」と思い実際に声をかけ、それで 分かったのは声をかけると、さっきまで黙ってい たのは何だったのというくらいに、立て板に水の ごとく、話をしてもらえました。18 年間家庭の中 で過ごしていましたから、何を話してよいか分か りませんでしたので、出合う方を先生と思い、色々 教えてもらおうと努めました。 しかし、会合の場ではそれでよかったのですが、いざ仕事となると違います。 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 7 当時、女性でソフト会社を経営している方はいませんでしたので、まず珍しがられ興味を持 っていただきました。しかし、いざ仕事となると、 相手に真剣になってもらえませんでした。 大きな難点は、私がプログラムを組めなかったことでした。代表権を持った身として、何を 言いえばよいかも分かりませんでしたし、仕事の内容に関しても勉強不足でした。 また、18 年前は女性経営者と男性経営者では、社員の接し方、営業面、銀行の折衝の仕方 など、様々な場面で微妙に違うと感じました。分からないことを聞きたいと思っても、女性 の方と出会うことがなかったので、自分で考えてやるしかないと思いました。その時から、 試行錯誤で失敗したことも随分ありましたが、今振り返れば全て勉強になっています。 事業を継いだ2年後くらいに、中国地域ニュービジネス協議会の存在を知り中国5県のうち、 島根県だけ女性部会が立ち上がっていないことが分かりました。島根県では女性部会はでき ないと思われていたようでしたので、女性部会を作りたいとの気持ちになり、当時知りあっ た方を誘い女性部を立ち上げました。 女性部会には、経営者や一部門を任させている方 など 10 数名で活動しており、そこから波及して「鍋 の会」ができました。各家庭持ち回りで、休日の 夜に鍋を囲みながらお酒を手に、悩みや経験談、 そして情報を出し合っています。みんなが持って いる様々な情報をオープンにして、情報交換をし ています。集まり語り合う事でエネルギーが充電 でき、元気が湧いてくるのです。 次に女性の視点を活かされたことをお話します。 会合で名刺交換した方に会いたいと思い、会社に電話をすると総務でストップされ社長に電 話をつないでもらえないことがよくありました。どうすれは会えるのか、考え込みました。 ある日テレビで時代劇を見ていたとき、巻手紙が映りそれを見て「これだ」と閃きました。 巻き手紙はインパクトを与え、便箋で手紙を書くより相手に印象を残せると考えたのです。 自分がいかに会いたいと思っているかを、筆で巻手紙に書き、親展として出しました。これ は 90%くらいの確立で成功しました。 巻手紙を出した方の中にアメリカ人経営者の方もいます。秘書の方を通じて「是非、どうぞ」 と返事をいただき、東京で面会することができました。その方からは「日本に来て長いが、 巻手紙をもらったのは初めて」といわれました。電話を取り次いでもらえないというデメリ ットが、巻き手紙という女性ならではの方法がメリットに替わった出来事でした。 このことから、諦めずヒントがどこかにないか常に考え、アンテナを張っていることが大切 と気付きました。本当にちょっとしたことがヒントになります。 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 8 次に、仕事と家庭を両立する上で苦労したことをお話します。 私が事業を継いだ時は、長女が高校2年、次女が中学1年でした。それまで、子供たちが「た だいま」と帰ってきたら、 ほとんど私がいる生活でしたが、それができなくなったわけです。 子供なりに理解はしてくれましたが、「お帰り」といえなくなってしまいました。私はその 代わり、子供にはお弁当は欠かすまいと考えました。 また、仕事のつきあいや、思わぬことで帰れなくなることがあり、夜の帰宅時間も不規則に なりがちでもあり、仕事の途中で時間ができれば帰宅し、夕食の支度をして、また仕事に戻 るという生活をしたことが工夫した部分といえます。 8年前のことですが、娘が大病をしました。健康診断の翌日、病院の先生に呼び出されまし た。「血液を東京で検査をしないといえないが、即入院するように」といわれました。夫が 他界したのは 42 歳でその年齢十分若いのに、その半分くらいの年齢の娘まで失うのかと思 考停止に陥りました。 お陰様で、今は元気になり健康がいかに有難いか、また、仕事ができることがどんなに幸せ かを感じています。看病と仕事の両立をしなくてはならない時期も経験しました。またその 時に母も入院することになり、私には姉妹がいないため、自分1人で娘と母の看病をしなく てはなりませんでした。仕事が始まる前に病院に行き、仕事を定時までやり、また病院に行 く生活をしばらく続けました。病院についていることができず、娘にも随分我慢させたとい う気持ちは今も消えませんが、生半可な気持ちでは経営はできないと思った時期でもありま した。経営者は自分の健康管理をしっかりしなくてはならないと思います。健康であれば元 気も出ますし、アクシデントがあろうとも乗り越えられると考えています。 ■加藤理事長 女性が社会で活躍する上で苦労したことをお話しします。 私は 11 人姉妹です。両親が働くことは普通でしたし、母が中心で家がまわっていましたの で、私自身も働くことは苦に思っていませんでした。与えられたことが自分のやるべき事だ と思ってやってきました。 女性として一番苦労したことですが、私は感覚で ものをいいます。数字や理論は過去のもののよう な気がしています。未来をつくる場合、感覚や現 実に見えていることをどうしていくかが私の中 では重要なのです。しかし、説明に行くと「数字 を出してください」、 「形をはっきり見せてくださ い」といわれます。対応する行政の方は、大半が 男性で、 「加藤さんのいうことがよく分からない」 といわれました。私も経営の勉強をしていません し、言葉を知らないことも多々あったと思いますが、同じ共通言語を持っていなかったと思 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 9 います。そのことで随分苦労しました。 しかし、「3.11」以降、社会の考え方、価値観が少しずつ変わってきたと思います。今 までは経済優先の視点が多かったと思いますが、そうでない「心」の部分や、どのように豊 かな気持ちで暮らしていくか、ということで、反対に「話を聞かせてください」といわれる ようになりました。自分の感覚、感性を大事に持っていて良かったと思います。 持田社長もお話しされたように、私の場合も、どこに行っても女性経営者がいませんでした。 私も分からないことだらけでした。そんな中で、「分からないので教えてください」、「情報 提供してください」と素直にいえるのは、女性でよかったと思いました。 2008 年にNPO法人を立ち上げたとき、内閣府の 「地方の元気再生事業」に採択されたのですが、 お金の遣り繰りができませんでした。どう運営し ていけばよいのか分からず、県に相談し、悪戦苦 闘しました。私も主婦でしたので会社の経営をし たことはありません。ただ、親が商売をしていま したので、商売をする姿は見ていましたが、お金 がどう動いているか分かりませんでした。 まちづくりのNPO法人で、女性が理事長をしているところはありません。見本となる方が いませんし、誰に相談してよいのか分かりませんでした。NPO法人の代表者の大半は会社 の経営者ですので、私とは感覚が違い、見本になりにくく、1人で悩みました。 それが、あるときに気づきました。誰かを見本にするのではなく、自分が見本となれば良い のだと思いました。自分が見本となって、次に続く女性たちがリーダーとなり、地域で活躍 すれば良いと思っています。 私は今年9月に「みちくさ小道」のノウハウを伝えるために、タイに行きました。そのとき に思ったのが、タイの行政官の大半は女性でした。一緒にやる仲間も女性が大半でした。タ イの首相は女性ですし、 共働きが普通のようです。多様な人材が集まってやっていくことで、 新しいものが生まれることをタイに行って感じました。今後、女性もリーダーになれること を伝えたいと強く思いました。 次に、仕事と家庭を両立する上で工夫した点です。私は 11 人姉妹のなかで育ちましたが、 私の子供は1人でした。そのギャップに苦しみましたが、1人娘をしっかり育てたいと思っ て、主婦をしていました。 この仕事を始めて、「家にいることが子育てをしている」と思い込んでいましたが、そうで はなく、短時間でも一緒にいて、話を聞く時間を作ることが大切だと分かりました。子供だ ろうが、夫だろうが、誰でも食事が作れることが大切です。私の家では、順番で作るという 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 10 ルールを決めました。最初は、別の家庭と違うことがネックになるようですが、これは我が 家のルールといい続けるしかありませんでした。 昨年、夫が大けがをして入院しました。同時に、 義母も体調を悪くし入院しました。そのときは、 介護、看護、仕事が重なり、身体が悲鳴をあげる ような状態でしたので、NPO法人を辞めようと 思いました。私が病院に行っている間、義母を看 て欲しいと行政にお願いしました。今の介護保険 制度では、本人が「できます」というと介護保険 は貰えません。そのとき、私は手をさしのべて助 けて欲しかったのですが、「認定はできません」 といわれ、愕然としました。これでは家庭と仕事の両立はできないと思い、このままNPO を辞めようかと思いました。しかし、この小さな声である社会の課題を、法律や仕組みが解 決する仕組みになっていかなくてはいけないと思い、心を持ち直して今に至ります。 私の5番目の妹がスウェーデン人と結婚し、スウェーデンに住んでいます。スウェーデンの 女性の参画、家庭との両立を聞くと、法律、仕組み自体が生活者の視点に密着していること が分かります。働くこと、育てること、教育など、その仕組みがちゃんと生活者にむいてい る社会になってほしいと思います。 仕事と家庭の両立はどういうことなのか、どうしたら良いのか分からない方も多いと思いま す。私たちのNPO法人にもいろんな相談がきます。今では、家庭で仕事をすることもでき ますし、事務所にいるだけが仕事ではありません。私はまちづくりに正解があると思ってや ってきましたが、正解はないと分かりました。自分たちが暮らしやすいように、気持ちがよ いように作っていけば良いのだと分かりました。今後、そうしたことを提案したいと思って います。 私は女性に生まれて良かったですし、今の自分の立場を経験できることがありがたいと思っ ています。男性、女性関係なく、地球で暮らす 1 人の人間として、自分たちが何をやればよ いのか、どうしていかなければならないかを伝えたいなと思います。 ■塩田部長 女性の社会進出をサポートする側から、重道社長に伺いたいと思います。保育サービスの提 供によって、女性の社会進出をサポートされていますが、その成果や今抱えている課題を伺 いたいと思います。 ■重道社長 私がこの仕事をして思うことは、女性の皆さんは頑張っているということです。あるお母様 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 11 と話をしたとき、「子供を預けていたときのことを振り返ると、私は謝ってばかりいた気が する」といっていました。帰り時間を過ぎてから迎えに来たお母様は、「遅くなってごめん ね。先生も、遅くなってすみません」と謝っていました。このこと自体は人と人との関わり の中では大切なことだと思いますが、本当は、お母様は謝るような悪いことをしているわけ でも何でもなく、家庭を支えるために一生懸命頑張っているだけなのです。 皆さんにも「したかった子育て」があると思います。それが、専業主婦ならできていたこと が、働くとあきらめざるを得ないこともあると思います。それを私たちが保育園の中で少し でも解消することができれば、お母様はもっと自分を承認することができ、自信をもって家 庭と育児を両立することができると思います。 また、最近のお母様たちは、教育的要素に対するニーズが非常に高いものがあります。当社 では事業所内保育も含め、教育プログラムを本格的に導入しています。 働いているお母様が時には髪を振り乱して必死に 仕事と家庭を両立する姿を、その下の世代も見て いますので、 「こんなに大変だったら子供を産むの をやめよう」と思ってしまう人もいると思うので す。当社は、今の世代にこのような形のサービス を提供することが、次の世代に繋がることだと思 いますし、最終的には当社のミッションです。今 の日本の出生率の低下を食い止めて、少しでも上 げる手伝いをし、日本国民の1人として社会に役 に立てるとよいと思っています。 当社では、民間保育園や事業所内保育以外にも、広島県の委託を受けて、県内で5ヵ所ほど 『子育てサポートステーション』の運営をしています。これはショッピングセンターの中で、 お母様とお子様が遊べる場に保育士が常駐し、 一時預かりや子育て相談の機能があるもので す。 働いている方はもちろん、専業主婦も子育てに悩んでいる方はとても多いのです。昔は、い ろんなことを相談でき、世話をしてくれる人が近所にいたのでしょうが、今は核家族化が進 み、相談できる人が周囲にいない方も少なくありません。 例えば、当社の認可保育園も全部子育て相談の機能を持っていますので、いつでも相談しよ うと思えば相談できます。しかし、本当に悩んでいる人が、保育園のドアをノックして相談 してくるかというと、現実的に考えるとあり得ない選択肢と思います。それに対し、ショッ ピングセンターの中ですと、保育士とも仲良くなるので、様々な相談が非常にし易い環境と なるのです。 今の時代は、いろんな多様性を持たせた子育て支援の施策が求められています。働いている 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 12 人だけでなく、専業主婦も含めて課題があると思います。それと同時に、当社は民間でやっ ていますので、良い意味で自由度があります。それを活かした上でサポートができればと思 っています。 私は、保育士自身も良い環境で満足して働かないと、良いサービスは提供できないと思って います。 当社は毎年、数十人を新卒採用していますが、最 初に抱負を聞くと、「子供の頃からの夢です」と いいます。しかし、介護職と同様に離職率が高い 職場です。保育士は配置基準が決まっています。 例えばゼロ歳の子供ですと、3人の子供に1人の 保育士の配置が決まっています。これは、20 年働 き続けても配置基準は変わりません。普通の産業 は、経験を積んでいくと労働生産性が上がってい くので、給与が上がる余地が出てきます。しかし 保育業界では、このことから、労働生産性が上がりにくい仕組みになっており、これにより、 比較的低い賃金水準に陥ってしまいます。また、家族経営をしておられる認可保育園は多い のです。それが悪いとはいいませんが、そこで働いている一般保育士は、未来永劫、園長に なれません。当社は家族経営ではなく、また、保育園を多数運営していますので、保育士を 一生働き続ける仕事にしようと思ったら、主任・園長に昇格というキャリアプランとして収 入増の道があります。 働き手にとっても良い保育園であることが大事ですし、規模を展開するメリットが、社員に とっても希望にならなくてはいけません。実際、ここまで運営を拡げられ、冒頭の最優秀賞 を受賞できたのは、毎日きちんと仕事をこなしている社員が頑張ったお陰ですので、社員に 心より感謝しています。 ■持田社長 今日、重道社長にお会いするので、待機児童につ いて調べてきました。松江市内にいる待機児童数 は数年前から増えており、現在は 142 人です。待 機児童が常にあるという状況は、当社が保育所向 けのシステムを作る中で分かったものです。 世の中には、働きたいお母様は増えていると思い ます。しかし、働きたいけど、子供を預けられな いので働けないという状況だと思うのです。そう いう女性が社会に出ていくためには、待機児童の問題をなんとかしなくてはなりません。今、 重道社長のお話を聞いて素晴らしいと思いました。もう少し保育所が増えると良いと思いま す。 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 13 ■重道社長 142 人という数字は申込数ですので、潜在的な待機児童はもっと沢山います。申し込もうと 思ったら、働いていないと申し込めません。預けられるのであれば働きたいと思っている女 性はとても多いのです。全国の待機児童は、去年 10 月時点では約 4 万人でしたが、本当は 40 万人以上いるといわれています。 松江市も保育園の整備をしていますが、保育園ができると、預けられるということで、また 待機児童が増えます。保育園をつくるにはお金がかかるので、自治体としても、そう簡単に 認可することはできません。事業所内保育の良い点は、企業が応分な負担をして、皆で支え ることです。少しずつ良くはなっていると思いますが、まだまだ課題は多くあります。誰か が何かを少しずつやっていないと変わっていきません。自分たちは自分たちができることの 積み重ねが地域力だと思います。 ■塩田部長、 今後、事業や活動内容をどのように拡げ、チャレンジしようと考えているのか、皆さんの将 来展望をお話しいただけますか。 ■持田社長 1984 年に個人創業を始め、法人化して 26 年経ちま すが、受託事業を積み重ねています。地元で創業 し多くの方に支えられて今がありますので、これ からも地元に貢献していくような仕事をしていき たいと思っています。 仕事は多い時と少ない時があります。仕事がある ときは2つ3つ重なり、無いときは極端に少なく なります。絶えず仕事があるという柱を作りたい と思います。 それは社員の士気が下がらぬよう、社員がソフトを組んでいることを自覚しながら、製造業 者として請け負う柱を1つ作っておく事だと考えています。 今まで様々な仕事をしてきましたが、自分の会社独自のものを作ろうと、新聞販売店向けや 保育所向けのシステムを作りました。また島根県警には、警察向けのメール配信システムを 収めています。 この他、Ruby という松江市発祥のプログラミング言語があります。Ruby を作った会社と業 務提携をしましたので、この Ruby でシステム構築という大前提があります。島根県も松江 市も Ruby の市場拡大に力を入れており、最近では東京で Ruby の仕事が増えてきました。 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 14 ほかに当社が力を入れているのはタブレットの アプリ作成です。タブレットが随分普及していま す。しかし、タブレットは知っていても使い方が 分からない、それが自分の会社にとって、どうつ ながるか分からない経営者が多いと感じていま す。 当社はアプリ開発に強みを持っていますので、ま ずタブレットを使ってもらい、私たちはその経営 者の声をひろっていきたいと考えており、その企業にどういう使い方があるのか、提案して いきたいのです。 28 年間、地元で育ってきた会社ですので、地元に貢献したいと思います。事業は続けるこ とによって道は開けます。そして社員は宝だと思っています。私は、夫が他界した時に、何 がありがたかったかといいますと、社員が誰も辞めなかったことです。経営者が突然素人に 代わりましたので、ヘッドハンティングなどもあったと思いますが、誰も辞めませんでした。 私には技術はありませんが、ここまでやってくることができたのは、沢山の方に助けていた だいた人の御縁と心底感じています。 今後、社会で活躍したいと思っている方には、人の縁を大切にしていただきたいと思います。 技術があっても、自分の力だけではやっていけません。そこに協力者が現れた時、一緒にや っていけるのかだと思います。人間ですので、考え方や意見は違うかもしれませんが、目指 すところが同じであれば、対話をすることだと思います。現在では、様々な通信手段があり ますので、いろんな方と仕事ができますが、最後はやはり、人と人が顔を合わせることだと 思います。仕事をいただくのも、お願いするのも、顔を合わせ話すことが一番大切だと思い ます。 ■加藤理事長 今後の取組と展望ですが、日本では、まだNPO法人の事業型は難しく、ボランティアの延 長です。特に、地方では成り立っていないのが現状です。今後は、きちんと事業型としてや っていきたいと思います。 その理由は、私たちは 10 年間ボランティア活動をしてきました。しかし、NPO法人を立 ち上げた時に、その 10 年間のボランティアは対価として評価されませんでした。 男性は仕事をしているので年収がでます。それを逆算して、人件費を計算してくださいとい われましたが、私たち 10 年間のボランティアは一切評価がありませんでした。本当に悔し い思いをしました。 その積み重ねがあるからこそ、今、活動ができていますし、地域の方々とのネットワークが 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 15 できています。ボランティアでも、対価評価がで きる仕組みを作りたいと思います。そうしないと、 若い方も女性たちも、あとに続くことができない ので、NPO法人を事業型にしたいと思います。 お金だけでなく、社会の課題やコミュニケーショ ンを大切に、新しい形の事業を展開していきたい と思っています。 私たちは、講演会や研修会を開催していますが、 そこに子供たちを連れてくることにしています。会議をする時は、当事者を真ん中において モノを作ることは大切です。研修会で子供たちは走り回っています。最初は託児を考えまし たが、託児をやらなくても、子供は親の話を聞いています。今は、ワードカフェやプログラ ム作りして、賑やかに研修会をできる仕組みが増えたので、子供を連れてきて良くするとお 母さんは安心してきます。今までは、みんなに迷惑をかけてはいけない空気があったので、 まずそれを変えてみました。皆も子供を可愛がってくれます。 今後は、女性たちが子供を連れて出てこれる、そこで意見を述べられる場を作りたいと思い ます。そういった場で、子供は真剣な大人の背中を見ることになり、冒頭でお話した私なり の「子育て」にもつながると思うのです。 もう一つ、「初心手の市」を開催しています。月に1回、手作り品を販売しています。販売 するだけではなく、バイヤー、アドバイスをする人たちに集まっていただき、商品のブラッ シュアップをしています。 また、保育園のウェブカメラのお話しのときに思ったのですが、「みちくさ」という言葉は 死語になっているそうです。全て管理されている世の中で、自分でものを考え、行動する「み ちくさ」は大切だと思って聞いていました。誰にも邪魔されない感覚は、人間には絶対必要 ですし、その中から生まれてくる感性や研ぎ澄まされたものは、誰にも邪魔されない時間か らしか生まれてこないと思います。安全、安心面での管理は必要ですが、それが行き過ぎる のは、人間を壊してしまうのではないかと、最近、そう思うようになりました。 何もせずに影を踏む時間、何もせずに石を蹴る時間、何もせずに空を見る時間…これらを皆 さんにお伝えすることが、地域の課題解決に繋がるのではと思いながら、取り組んでいます。 これから社会で活躍したい女性へのアドバイスですが、夢をあきらめず、自分がやりたいと 思ったことは、無謀でも良いので、いろんな方に相談をして実行して欲しいと思います。 妄想、暴走、迷走女と呼ばれ続けた 10 年でしたが、やりたいことをいい続けることによっ て、「面白い」といってくださる方に出会えました。思ったことは口に出し、それが社会に 必要なことであれば、時間がかかるかもしれませんが、必ず叶います。私たちのNPO法人 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 16 に相談に来てください。 ■重道社長 自ら会社を運営して分かったことは、当社の社員 の多くは、社会に貢献したいと思って仕事をして いるということです。先程の保育園の問題の他に、 学童保育についても問題山積です。民間企業の力 が、これらの問題解決に少しでも貢献することが できたら良いと思っています。 また、当社は関東地域など全国展開しています。 今の時代は、東京が勝ちで、地方は負けの時代だ と思っています。しかし、地方の企業も頑張って事業を続けていけば、いけるということを 全国に示し、地方企業の時代になると思います。 当社は引き続き保育事業を通して、働くお母様を応援していきたいと思います。 ■塩田部長 ありがとうございました。最後に行政に求めることをお聞かせください。 ■持田社長 行政に求めることは、今年3月で政府の緩和措置が終了し、4月から倒産する企業が増える のではないかといわれています。土台がしっかりしている企業は問題ありませんが、綱渡り をしている企業も沢山あると思いますので、終了ではなく残すべきところは残す方向など、 吟味していただきたいと思います。 ■重道社長 冒頭、御紹介いただいた、 「第 7 回ニッポン新事業創出大賞」で最優秀賞を受賞したことは、 「おめでとう」というより、「もっと社会のために頑張れ」とエールを送っていただいたと 思っています。受賞したことを社員と一緒に喜びながらも、ここで満足していては、賞をい ただいた意味がないと思っています。社会に在って良かったと思われる会社になることが大 切だと思っていますので、いただいたエールに応えられるようになりたいと思います。 ■加藤理事長 私が思うことは、行政と対立してもしょうがないですし、行政と向き合ってもしょうがない と思っています。それは、課題が別のところにあるからです。 私たちが対立することで良いことはありません。日本人が幸せになる、未来を担う子供たち 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 17 が夢を持って生きて欲しいのです。 行政も誰も同じだと思います。きちんと課題や共通認識、 共通言語を持ち、対決するのではなく、多様な人たちが集まってアイデアを出すことで、イ ノベーションが起きるのではないかと思います。同じ「ものを考える仲間」として、一緒に やっていくことを、行政にお願いします。 最後に、経済産業省から推薦いただいた「女性のチャレンジ賞 地域を変える女性の力」の ネーミングが、私たちの後押しになりました。感謝しています。 「3.11」以降、空気が変わってきたと思います。みんなで協力し、努力すれば、必ずな しえることがあると思いますので、みんなで日本を元気にしていきたいと思います。 ■塩田部長 本日は、2人の女性経営者にお越しいただき、見本となる方がいないなか、主婦から経営者 として御苦労されながらやってこられた話を伺いました。 しかし、お2人は、今では、皆さんの見本となっています。女性にとっては大きな勇気にな ると思います。また一方で、重道社長のように、男性でありながら女性の気持ちを理解し、 サービス業の精神でサポートしていただくことで、社会的なインフラも整ってきています。 これを読んで、子育てや介護の問題などを抱えている方も、一歩踏み出すための勇気を持っ ていただければ幸いです。女性の社会進出がこれをきっかけに進み、日本経済も国も良くな ることを期待して、本日の座談会を終わりたいと思います。本日はどうもありがとうござい ました。 経済産業省 中国経済産業局 広報誌 旬レポ中国地域 2013 年 1 月号 Copyright 2013 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry. 18