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外部評価資料 - 北海道大学低温科学研究所
北 海 道 大 学 低温科学研究所 外部評価資料 平成12年11月 目 次 ○ COEプロジェクトの研究課題と成果(1996~2000) はじめに ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1 I オホーツク海研究 (A)オホーツク海氷の実態と気候システムにおける役割の解明 ‥‥‥‥ 2 (1)研究概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2 (2)研究(観測)実施内容 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2 (2-1)ロシア船「クロモフ号」を用いた大気・海洋観測 ‥‥‥‥‥‥ 2 (2-2)ロシア航空機「イリューシン18」を用いた海氷域上の 大気観測 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2 (2-3)砕氷船「そうや」による海洋・海氷観測 (水路部との共同観測) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3 (2-4)北海道湧別沖の海氷漂流・氷厚係留観測 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3 (3)研究成果(速報) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3 (3-1)海洋循環 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3 (3-2)水塊形成 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4 (3-3)物質循環 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4 (3-4)海氷の成長履歴 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4 (3-5)オホーツク高気圧の構造 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5 (3-6)海氷上の大気境界層 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5 (3-7)古海洋 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6 II カムチャッカ研究 (B)陸域雪氷圏の維持機構の解明および氷コア解析による 古環境復元 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6 (1)はじめに ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6 (2)研究成果の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7 1) 陸域雪氷圏の維持機構の解明 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7 2) 氷コア解析による古環境復元 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8 (3)今後の課題 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10 1) 陸域雪氷圏の維持機構の解明 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10 2) 氷コア解析による古環境復元 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10 (C)カムチャツカ半島における植生動態と環境変動の 相互作用過程の解明 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11 (1)研究目的 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11 (2)研究内容 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11 (3)研究成果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 12 図A-1;M2係留点、217mおよび447mでの流速、 水温の時系列 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13 図A-2;係留点位置と、500m深及び海底での月平均流速 (1999年2月)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14 図A-3;アルゴス漂流ブイから得られたブイの流跡 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 15 図A-4;北西部大陸棚域の海水密度の東西断面 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15 図B-1;カムチャッカ半島地図 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 図B-2;カレイタ氷河の正味収支の年々変動及び 積算正味収支(1939-1997年)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 ○ 各部門の研究課題と成果・研究業績(1995~1999) 寒冷海洋圏科学部門 大気海洋相互作用 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 17 (研究業績) 竹 内 謙 介(TAKEUCHI,Kensuke) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 19 遠 藤 辰 雄(ENDOH,Tatsuo) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 20 豊 田 威 信(TOYOTA,Takenobu)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 22 海洋動態 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 23 (研究業績) 若 土 正 曉(WAKATSUCHI,Masaaki) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 26 大 島 慶一郎(OHSHIMA,Keiichiro)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 28 河 村 俊 行(KAWAMURA,Toshiyuki) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 30 深 町 康(FUKAMACHI, Yasushi)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 31 海洋環境 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 32 (研究業績) 河 村 公 隆(KAWAMURA,Kimitaka)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 46 中 塚 武(NAKATSUKA, Takeshi)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 50 大河内 直 彦(OHKOUCHI,Naohiko) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 52 環境数理 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 54 (研究業績) 藤 吉 康 志(FUJIYOSHI,Yasushi)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 57 川 島 正 行(KAWASHIMA,Masayuki) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 59 寒冷陸域科学部門 雪氷変動‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 61 (研究業績) 本 堂 武 夫(HONDOH,Takeo) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 65 成 田 英 器(NARITA,Hideki)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 68 堀 彰(HORI,Akira) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 70 雪氷循環‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 71 (研究業績) 小 林 大 二(KOBAYASHI, Daiji)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 72 石 井 吉 之(ISHII,Yoshiyuki)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 73 雪氷環境‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 75 (研究業績) 秋田谷 英 次(AKITAYA,Eiji)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 79 大 畑 哲 夫(OHHATA,Tetsuo)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 80 山 田 知 充(YAMADA,Tomomi) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 81 西 村 浩 一(NISHIMURA,Kouichi) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 83 曽 根 敏 雄(SONE,Toshio) 寒冷生物圏変動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 86 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 87 (研究業績) 原 登志彦(HARA,Toshihiko) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 89 佐 藤 利 幸(SATO,Toshiyuki) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 91 鈴 木 準一郎(SUZUKI, Jun-ichirou) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 92 氷河氷床 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 93 (研究業績) 成 瀬 廉 二(NARUSE,Renji) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 97 白 岩 孝 行(SHIRAIWA,Takayuki)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 99 松 岡 健 一(MATSUOKA, Kenichi)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 102 融点附近の雪氷現象 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 103 (研究業績) 堀 口 薫(HORIGUCHI,Kaoru) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 104 水 野 悠紀子(MIZUNO,Yukiko) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 105 雪氷気象 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 106 (研究業績) 石 川 信 敬(ISHIKAWA,Nobuyoshi) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 107 兒 玉 裕 二(KODAMA,Yuji) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 109 低温基礎科学部門 雪氷物性・惑星科学 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 111 (研究業績) 前 野 紀 一(MAENO,Norikazu) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 115 香 内 晃(KOUCHI,Akira) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 117 荒 川 政 彦(ARAKAWA,Masahiko) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 118 渡 部 直 樹(WATANANABE,Naoki) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 120 生物適応科学(~H10年)・環境低温生物(H10年~) ‥‥‥‥‥‥‥ 122 (研究業績) 吉 田 静 夫(YOSHIDA,Shizuo) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 124 藤 川 清 三(FUJIKAWA,Seizo) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 125 荒 川 圭 太(ARAKAWA,Keita) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 128 竹 澤 大 輔(TAKEZAWA,Daisuke)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 129 生物適応(H10年~)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 131 (研究業績) 田 中 歩(TANAKA, Ayumi) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 132 田 中 亮 一(TANAKA, Ryouichi) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 133 生命科学 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 134 芦 田 正 明(ASHIDA,Masaaki) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 136 早 川 洋 一(HAYAKAWA,Youichi) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 138 島 田 公 夫(SHIMADA,Kimio) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 140 片 桐 千 仭(KATAGIRI,Chihiro) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 141 落 合 正 則(OCHIAI,Masanori) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 142 雪氷相転移ダイナミクス ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 143 (研究業績) 古 川 義 純(FURUKAWA,Yoshinori) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 145 石 崎 武 志(ISHIZAKI,Takeshi) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 148 寒冷圏総合科学部門 気候変動 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 149 (研究業績) 福 田 正 己(FUKUDA,Masami) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 151 串 田 圭 司(KUSHIDA,Keiji) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 154 生物多様性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 155 (研究業績) 戸 田 正 憲(TODA,Masanori J.)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 156 大 串 隆 之(OHGUSHI,Takayuki)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 158 大 舘 智 志(OHDACHI, Satoshi) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 160 附属流氷研究施設 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 161 (研究業績) 青 田 昌 秋(AOTA,Masaaki) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 163 白 澤 邦 男(SHIRASAWA,Kunio)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 165 ○ 資料編 1.組織・運営 ①理念および基本方針 1)目的・使命 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 169 2)組織改編の経緯 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 169 3)研究および教育理念 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 169 ②組織・運営に関する資料 1)組織 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 171 2)運営 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 172 3)定員と現員 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 173 4)各部門の教員の変遷 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 174 2.教員の人事 ①教員選考方法の基本方針 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 176 ②教員の流動性 1)転出入状況(平成7年度以降) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 178 2)在職年数状況 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 179 ③教員の構成分布 1)年齢構成 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 180 2)出身大学分布 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 181 3.予算 ①校費等の予算額 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 181 ②文部省科学研究費の取得状況 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 182 ③大型研究費の取得状況 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 183 ④特別設備の取得状況 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 183 4.研究活動・業績 ①研究業績等 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 184 ②国際交流 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 184 ③国際共同研究 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 185 ④国際シンポジウム ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 185 5.教育活動 ①大学院担当 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 186 ②大学院生・研究生 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 186 ③学位授与件数 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 187 6.研究支援体制 ①技術部職員数 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 187 ②研究支援推進員 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 187 ③技術部の主な設備,装置 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 187 ④図書・雑誌数 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 188 7.将来構想 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 188 研究課題と成果 (1996~2000) (COE研究プロジェクト) COE研究プロジェクト) COE研究プロジェクト 「オホーツク海と周辺陸域における大気-海洋-雪氷圏相互作用」 (Atmosphere-Ocean-Cryosphere Interaction in the Sea of Okhotsk and the Surrounding Environment) はじめに 低温科学研究所は、1996年にCOE研究機関に指定されたのを機会に、研究所を挙げて、 オホーツク海とその周辺陸域の総合的な研究に取り組むべく上記の研究プロジェクトを立上げ た。オホーツク海は、海氷を有する海としては、地球上で最も低緯度に位置していることから、 地球温暖化などの気候の変化の影響が最も顕著に現れる場所として最近注目されている。この オホーツク海氷と大気や周辺の陸域雪氷圏との相互作用の結果として、この地域特有の気候シ ステムが形作られ、維持されている。雪氷圏の南限に位置することを特徴に生じるこの気候シ ステムは、地球温暖化などの気候の変化に対して鋭敏に応答し、影響を受け易いことが指摘さ れている。そのため、短期間の観測でもいろいろな角度から集中的に実施していけば、複雑な 相互作用のメカニズムを解明できる可能性が高い。 本研究は、オホーツク海とカムチャッカ半島で観測を主体に推進してきた。両観測域から多 くの貴重なデータが得られ、現在それらの解析作業が精力的に進められている。解析結果に基 づいた今後の研究展開によって、いくつかの相互作用(海-陸、大気-海氷-海洋、植生動態 -物理環境など)のメカニズムに関する理解が深まり、この地域特有の気候システムの実態が 明らかになっていくものと期待される。 研究組織; 若土正曉(研究代表、教授、海洋物理学、A) 竹内謙介(教授、気候学、A) 河村公隆(教授、地球化学、A) 藤吉康志(教授、大気物理学、A) 本堂武夫(教授、雪氷学、B) 原登志彦(教授、植物生態学、C) 青田昌秋(教授、海洋学、A) 大島慶一郎(助教授、海洋物理学、A) 遠藤辰雄(助教授、気象学、A) 中塚武(助教授、地球化学、A) 成瀬廉二(助教授、雪氷学、B) 隅田明洋(助教授、植物生態学、C) 白澤邦男(助教授、海洋気象学、A) 河村俊行(助手、雪氷学、A) 深町康(助手、海洋物理学、A) 豊田威信(助手、気象学、A) 川島正行(助手、大気物理学、A) 白岩孝行(助手、雪氷学、A) 曽根敏雄(助手、地形学、C) 鈴木準一郎(助手、植物生態学、C) *A(オホーツク海),B(カムチャッカ雪氷),C(カムチャッカ植生) は担当した研究課題を示す。 ― 1 ― Ⅰ オホーツク海研究 (A)オホーツク海氷の実態と気候システムにおける役割の解明 (1)研究概要 高緯度海域に広く分布する海氷が、世界の気候に大きな役割を果たしている事はよく知られ ている。なかでも、オホーツク海は地球上で最も低緯度に位置する海氷域であり、地球温暖化 の影響が最も顕著に現れる場所として、近年特に注目されている。また、オホーツク海は北太 平洋中層水の起源水域であり、二酸化炭素の吸収域、高生物生産域など物質循環の見地からも 重要な海域である。 しかし、オホーツク海はこれまで観測が少なく、何故そのような低緯度で海氷が形成・発達 できるのか等、基本的な問題が未解決である。本研究では、ロシアの協力による、ロシア船「ク ロモフ号」を用いたオホーツク海ほぼ全域の、日・露・米共同海洋観測(1998-2000; 計3回)やロシア航空機を用いた海氷域上の大気観測、砕氷船「そうや」を用いて過去5年間 継続して実施した冬季海洋・海氷観測(海上保安庁水路部との共同観測)、などの現場観測を 中心に、リモートセンシング、モデリングなどの手法も総動員して、海氷の消長過程、北太平 洋中層水の起源水の生成機構、海氷変動とそのインパクト、大気ー海洋相互作用などを明らか にし、オホーツク海における海氷の実態と気候システムにおける役割の解明をめざしている。 今までに得られた多くの、貴重な観測データは現在解析を開始したところであり、これはそ の第一報である。今後は、我々の得たデータの解析だけでなく、ロシアの永年にわたる観測デ ータも調べ、モデリングなどを平行させながら、地球環境におけるオホーツク海の役割を明ら かにしていきたい。 (2)研究(観測)実施内容 (2-1)ロシア船「クロモフ号」を用いた大気・海洋観測 1)1998年7月7日~8月7日(一回目) 観測項目;CTD/採水観測・流速計係留観測(海洋循環、物質循環の実態把握)、 ゾンデ集中観測(オホーツク高気圧の構造把握)、セジメントトラップを 用いた係留観測・採水観測(高生物生産性の実態把握)、海底堆積物コア のサンプリング(オホーツク海古海洋研究)。 2)1999年8月27日~9月28日(二回目) 観測項目;流速・水温・塩分計・セジメントトラップからなる係留系の回収及び設 置、CTD/採水観測、海底堆積物コアのサンプリング、アルゴスブイ(20基) による海洋表層循環の観測。 3)2000年6月2日~7月5日(三回目) 観測項目;流速・水温・塩分計・セジメントトラップからなる係留系の回収、CTD /採水観測、海底堆積物コアのサンプリング、中層フロート(4基)による海洋中層 循環の観測。 (2-2)ロシア航空機「イリューシン18」を用いた海氷域上の大気観測 観測日時;2000年2月9日・14日・18日(計三回のフライト) 観測項目;寒気吹き出しの風向と平行に飛行経路をとり、高度100m、 300m、 800mの三高度について、気温・露点温度、風向・風速などの気象デー タ観測、 乱流フラックス観測、長・短波放射観測、PMS による雲物理観測 (雲水量、雲粒粒径分布、降水粒子粒径分布、エアロゾ ル粒径分布)、 ― 2 ― 可視・赤外線ビデオカメラによる海氷密接度・海氷面温度観測。 (2-3)砕氷船「そうや」による海洋・海氷観測(水路部との共同観測) 観測日時;1996年から毎2月(約10日間) 観測項目;CTD-XBT観測、高層ゾンデ観測、海氷の厚さ・面積のビデオ観測、 海氷サンプリング、バルク法による熱収支の観測。 (2-4)北海道湧別沖の海氷漂流・氷厚係留観測 観測日時;1998年12月初~1999年3月末 1999年12月初~2000年4月初 観測項目;氷厚計・ADCP(流速計)・水温計・塩分計等の係留観測(海流速、海 氷漂流速、水温、塩分などの連続した時系列データの取得)。 (3)研究成果(速報) (3-1)海洋循環 最大の成果は、今まで「まぼろしの海流」とも言われ、その実態が不明であった「東樺太海 流」の存在を初めて確認し、その季節変動を明らかにしたことである。 図A-1は、1999年9月に回収されたオホーツク海西岸域の長期流速計係留観測データ (1998年9月~1999年9月;約13カ月)の一部で、サハリン東岸沖(北緯53度、 東経144度25分)の水深217mと447mにおける流速と水温の時系列を示している。図 から、ごく一部の期間(1998年9月)を除きどちらの深度でも「南西ないし南向きの流れ」 が卓越しており、流速には顕著な季節変動がみられ「1月から2月に最大」に達することが分 かる。サハリン東岸沖の各観測点での、2月の月平均流速を図A-2に示す(矢印)。深度は 約500mないし海底直上である。全ての観測点でほぼ等深線に沿った南下流がみられ、絶対 値は岸近くで大きくなっている。 上記の係留による「オイラー的」海洋循環の観測と平行して、アルゴス海洋漂流ブイ(計2 0基)によるラグランジェ的観測も、第2回目クロモフ航海で実施した。この観測では、オホ ーツク海が高緯度のため、1日20~30回の位置データを取得できるという利点がある。そ のため、潮流が大きいところでは、その潮流特性をも知ることが出来る。図A-3から、サハ リン東岸沖の陸棚には、ほぼ定常的な0.2~0.3m/s程度の強い南下流が等深線に沿っ て存在するのが分かる。また、樺太東岸北部の陸棚域には、日周潮の潮流(最大振幅0.7m/ s)が顕著に存在する。 一方、カシェバロババンクでは、潮流(日周潮)が非常に大きく、最大振巾が1.3m/s に及び、特に、バンクの西側で潮流の振巾が大きいこと、バンクを中心に時計回りの平均流(0. 1-0.2m/s程度)が存在すること、などが分かった。さらに、ブッソール海峡中央付近で は、0.4m/s程度の振巾を持つ潮流(日周潮・半日周潮とも顕著)の存在も認められた。 定常流成分として、海峡の中心部(最深部)に反時計回りの弱い渦が存在していた(2つのブ イがこの渦に長期捕捉されていたため、長期の観測が可能となった)。もう一つ、興味深い現 象として、ブッソール海峡の北西方向約100kmの地点を中心として、時計回りの顕著な定 常渦流(直径約100km、速度0.2-0.3m/s程度)が存在していたことである。こ の渦の存在も、地衡流パターンとしては以前から知られていたが、実測データとして今回初め て認められた。 ― 3 ― (3-2)水塊形成 北西部大陸棚域の海氷形成前の海洋構造を初めて観測した。前年の海氷形成にともなって生 成した高密度水が、この時期でさえ、海底近くにかなりの規模で存在しているのを確認するこ とができた(図A-4)。また、水深約40mのところに強い密度躍層が存在し、従来から低 緯度海氷の成因の一つと言われていた、秋口の発達した密度成層構造を初めて確認することが 出来た。 一方、北サハリン東岸沖の北緯54度線に沿ったCTD観測(1998年8月)によると、 陸棚斜面域の水深200-400m、密度26.7-26.9付近に低温(0.5度C以下)、高 酸素(4.4ml/l)で低渦位の北太平洋中層水起源水と見られる水が存在していた。図1の 係留系水温データを見ると、どちらの深さでも12月ころから低温化が見られるが、217m 深では翌5月頃には昇温するのに対し、447m深では7月になっても0度C以下の低温水が 見られる。 第2、3回目の航海で得られた塩分、密度データについては、CTDキャリブレーション(ス クリプス海洋研)がまだ終了しておらず、現在一次データを解析中である。 (3-3)物質循環 物質循環に関する観測研究は、CTD採水器による採水観測とセジメントトラップ係留による 沈降粒子の観測から成る。3回の航海で、各約100ケ所の測点から採取された海水は、船上 で塩分・溶存酸素・栄養塩・炭酸系(全炭酸・pH・アルカリ度)・フロン・DMS等の分析に供 し、また一部は研究室に持ち帰って、メタン・メタンの炭素同位体比・全炭酸の安定/放射性 炭素同位体比・海水の酸素同位体比・溶存/懸濁有機炭素量等の測定に用いた。これらのデー タは、オホーツク海における水塊形成のトレーサーとして、また人為起源温室効果ガスの海洋 内部への吸収量の見積り等に使用される予定で、現在解析が進められている。 栄養塩データ解析から、オホーツク海の大陸棚が大きな窒素のシンクであることが明らかと なった。CTD採水器に装着した濁度計のデータから、オホーツク海の懸濁粒子量の空間分布が 明らかになり、大陸棚からの中層水の流出が大量の物質輸送を伴うものであることを初めて明 らかにした。一方、時系列式のセジメントトラップは、サハリン沖の南北2地点の上下2層に 約2年間に亘って設置され、各々計42期間分の沈降粒子試料が連続的に採取された。試料は、 各種の有機・無機化学分析、粒度・鉱物分析、プランクトン種組成の分析などに供し、オホー ツク海の生物生産の時空間変動や陸域からの物質輸送のメカニズムなどの解析が行われてい る。その結果、オホーツク海西部では植物プランクトンのブルームは、海氷の後退によってで はなく、アムール河からの淡水流入に刺激されて起こること、大陸棚からの陸起源物質の流出 は東サハリン海流の流速の大きな冬ではなく、秋に起こること等々が明らかとなってきている。 (3-4)海氷の成長履歴 ・「そうや」による南西部海氷域での現場観測結果 海氷のアルベドは、年や氷況による違いは少なく0.6-0.65程度であった。大気への 乱流フラックス(顕熱+潜熱)は、開水面及び薄氷域の多い効果が効いてきて、海氷域全体と しては大気に対して熱源(20-40W/m2程度)になっている。この海域で見られる海氷 の平均氷厚は、年によって大きく異なり、例えば、1996年が19cm、1997年が55 cmであった。熱収支の日変化によると、この海域の海氷は、夜間に成長し、昼間は融解して おり、そのため現場での成長速度は非常に小さい(0.5cm/日以下)。従って、この海域 の海氷の多くは北から移流してきたものと推定される。 一方、海氷域の下の海洋観測によって、従来から言われていた(約50m)よりもかなり厚 い、低温の温度一様層(混合層)の存在が初めて認められた。この混合層の厚みは年によって 異なり、1997年の場合は300mにも達した。 ― 4 ― 北部での強い大気冷却・海氷生成によって形成した混合層水は、北西季節風によるエクマン収 束によってその厚みを増しながら、陸棚斜面に沿って南へ運ばれる。これはまた、東樺太海流 の冬季の存在を示唆している。海氷は、風だけでなく、この東樺太海流によっても南へ運ばれ ることが分かった。また、海氷の構造解析から、海氷は何枚もの薄い氷盤が重なり合ったもの から構成されているものが多いことが分かった。これらは、オホーツク海北部の寒冷な海域で 形成され、激しく折り重なりながらこの南西部海域に運ばれてきたものである。 ・湧別沖の係留観測 1998年12月~1999年3月の期間の係留系データによると、2月中旬に約0.4m であった海氷の平均の厚さが、3月下旬には、約1.3mとなっており、大きな変動が明らか になった。また、厚さが10mを超えるような海氷も度々観測され、期間中で最大のものは、 約17mであった。 ・リモートセンシング SSM/Iマイクロ波データを用いた海氷の分類(生まれたばかりの新生氷、少し時間の経 った若い氷、かなり時間の経った一年氷)から、オホーツク海の海氷域の拡大過程を明らかに した。また、同じマイクロ波データを用いて、北半球全体の海氷域の漂流ベクトルをかなりの 精度で求めることに成功した。 同時に、海氷の下の海洋の循環も導き出すことが出来た。こ れらは、漂流ブイや係留系の観測データともよく一致していることが確認された。本研究によ って、北半球の海氷域全体の変動機構が明らかになった。 (3-5)オホーツク高気圧の構造 7月9日から25日までに計51回のゾンデによる大気観測(気温、気圧、湿度、風向、風 速)を行なった。特に、北緯51度、東経152度付近では、約4日間の定点観測を実施した。 ほとんどすべての観測で、海上から成層圏にいたる気象要素分布を得ることが出来た。オホー ツク海は、この期間中ほとんど高気圧に覆われ、定点ではこの高気圧のほぼ中心を観測するこ とが出来た。7月にもかかわらず、海面水温はほとんどの測点で10度C以下で、特にブッソ ール海峡付近では3度Cの低温であった。また、海面はほとんどの時間、霧で覆われていた。 海面付近では逆転層が形成され、低い海面水温による大気の冷却を示している。この冷却が、 大気全体にどれだけ影響を与え、オホーツク高気圧の形成にどう関わっているのか、現在研究 を進めている。 (3-6)海氷上の大気境界層 観測は2000年2月9、14、18 日の3回、それぞれ樺太の南部、中部、北部の3箇 所で、いづれも三層(100m、500m、800m)の高度で行なわれた。短時間 の欠損 を除けば、測定はほぼ完璧に行なうことが出来た。このような総合的な航空機観測がオホーツ ク海上で行われたのは今回が初めてであり、季節海氷域上での気団変質過程について理解する 上で非常に重要なデータを取得することができた。現在、これらのデータは解析中であるが、 海氷上でも顕熱・潜熱フラックスが50W/m2を越える場合があり、これにより気団変質が起る ことなどが明らかになっている。 このような航空機観測とは別に、海氷域の南下時期(2月)に北海道斜里町、「そうや」船 上、サハリン(ユジノサハリンスク、ホロナイスク)におけるゾンデ同時観測を行ない、北海 道沖の海氷上での気団変質過程を調べる観測も実施してきた。その結果、海氷が無いか少ない 場合、季節風上流のサハリンと比較し下流の斜里では下層に混合層が発達し、気温・湿度の増 加が顕著であるが、海氷が発達すると、それら増加量は半分程度に減少することが分かった。 今後、両現場観測で得られたデータを詳細に解析していくことによって、オホーツク海氷域 における大気ー海洋相互作用のメカニズムが明らかになっていくことが期待される。 ― 5 ― (3-7)古海洋 古海洋研究のための海底堆積物コアは、計8本のピストンコア及び、数10ケ所からのマル チプルコアが得られ、現在までの間に、試料の状態の良い4本のピストンコア試料を用いて、 過去約12万年間のオホーツク海の環境変動を解析してきた。マルチプルコア試料は、現在の 表層環境が、どのように堆積物データに記録されるかを理解するために用いられている。コア の解析では、有孔虫殻の酸素同位体比層序や放射性炭素年代の測定を始め、コアの物性測定、 各種有機・無機化学分析、同位体比分析、珪藻・有孔虫・石灰質ナノプランクトン・放散虫等 の微化石群集解析、鉱物分析、砕屑粒子の粒度分析等を行い、過去のオホーツク海の海氷分布 や生物生産力の変化、水塊形成の変化に関する解析を行っている。粒度分析に基づくIce Raft ed Debrisの解析では、サハリン沖海域で海氷生産量が氷期に拡大し間氷期に縮小したことが 明らかになった一方で、オホーツク海東部海域では、 海氷の変動が必ずしもグローバルな氷期 ・間氷期変動に一致しないことが示された。オホーツク海の生物生産力、特に珪藻の生産は、 氷期に低く間氷期に高い、極めて規則的な変化を示したが、これは氷期における海氷の拡大や アムール河からの栄養塩の流入の減少によって生じたものであると考えられる。 謝辞 本研究は、文部省「COE研究」、科学技術振興事業団「戦略的基礎研究」から援助を受け、 ロシア極東水文気象研究所・大気物理研究機関、米国ワシントン大学海洋学部・スクリプス海 洋研究所、海洋科学技術センター・海上保安庁水路部などとの国際共同研究で実施されたもの である。 II.カムチャッカ研究 (B)陸域雪氷圏の維持機構の解明および氷コア解析による古環境復元 (1)はじめに オホーツク海を取り巻く周辺陸域は、北半球雪氷圏の南限に位置し、氷河・季節積雪・永久 凍土などから構成される。氷河や永久凍土は、分布限界においては微妙なバランスの上に存在 が可能となっているため、外的な環境変化によって大きく変動することが予想される。また、 雪氷圏の変動はフィードバックシステムによって増幅される可能性がある。この意味で、オホ ーツク海周辺陸域は将来起こりうる、あるいは過去に起こった雪氷圏変動の実態に関し、重要 な素材を提供できる地域である。 本研究プロジェクトの第1の目的は、カムチャツカ半島の氷河を対象に、水循環の立場からそ の維持機構を解明することである。特に氷河の涵養に寄与する降雪量とその変動、ならびに融 解に寄与する夏期気象条件とその変動を現地観測を通じて明らかにすること、氷河の気象学的 ・動力学研究により氷河の流動と末端からの河川流出を定量化すること、そしてこれらを統合 し、降雪から河川流出に至る氷河システム内の水循環を解明することを試みた。 一方、氷河を含む雪氷圏の変動は、数年程度の現地観測では把握できない長い時間スケール で生じることも事実である。このため、第2の目的として、過去の雪氷圏変動を示す連続的な 記録として雪氷コアを、不連続ではあるがより長期間にわたる変動記録を示すものとして氷河 地形を、それぞれ過去の雪氷圏変動の指標として研究した。雪氷コアには、氷河表面と大気の 相互作用により、安定同位体、主要イオン、火山灰などの情報が年代順に記録されている。こ れらを分析することにより、過去に生じた環境変動を時系列情報として抽出することが可能で ある。また、氷河地形、特にモレーンの分布から、過去の氷河の拡大範囲を復元することが可 能であり、氷河の動力学・質量収支を取り入れた数値モデルと組み合わせることで、過去の雪 氷圏変動を推測することができる。 ― 6 ― 現地調査は、1996年~2000年の5年間に合計11回の調査旅行、のべ約50人のメンバーによって 実施された。また、現地調査の結果を統合し、研究の進展をはかるため、低温科学研究所にお いて3回、国際ワークショップを開催した。これらのワークショップの成果は、プロシーディ ングスとして"Cryospheric Studies in Kamchatka I (1997)", "Cryospheric Studies in Kamchatka II (1999)"と題した英文報告書として出版した。 (2)研究成果の概要 現地調査で得られた知見に加え、現在も引き続き解析、分析による研究が継続中である。こ こでは主として既に出版された論文・レポートにもとづき、冒頭に掲げた2つの目的、すなわ ち(1)陸域雪氷圏の維持機構の解明と、(2)氷コア解析による古環境復元について、これまでに 明らかになったことを概説する。 1) 陸域雪氷圏の維持機構の解明 カムチャツカ半島の雪氷圏の維持機構、特に氷河の維持・変動機構、ならびに氷河を含む流 域の水循環に関しては、少なくともロシア以外の研究者は極めて限られた情報しか入手するこ とができなかった。そこで我々はロシア側の保有する既存データにあたり、かつロシア側共同 研究者と綿密な打ち合わせを実施して、新たに観測を実施すべき地域と項目の検討を行った。 その結果、カムチャツカ半島中央部、北緯54~56度の緯度帯を東西に横断する3つの基本観測 点を設けた。 これら3地点は、東より1)クロノツキー半島カレイタ氷河(54°50' N, 161°50' E; 1160 m a.s.l.), 2)ウシュコフスキー火山山頂部氷冠 (56° 04' N, 160°28' E; 3900 m a.s.l.)、 3)コズィレフカ山(55° 36' N, 158° 18' E; 1000 m a.s.l.)である(Kobayashi et al., 19 97)。東西にわたって観測点を展開した理由は、東西に気候のコントラストが著しいカムチャ ツカ半島で、異なる気候環境下における氷河の維持機構と水循環の比較が重要と考えたからで ある(図B-1)。 1996年はこれらの3地点に無人気象観測機(AWS)を設置し、気温、湿度、風向・風速、全天 日射量、表面温度、気圧の観測を開始した(Kodama et al., 1996)。 これらは翌1997年に回収され、いくつかの予期せぬアクシデントにより回収不能のデータが あったものの、概ねデータの取得に成功した(Matsumoto et al., 1997)。その結果、標高の著 しく高いウシュコフスキー火山山頂部氷冠を除き、東西両端に位置するカレイタ氷河とコズィ レフカ山では、気温に関してはあまり差異がないことが分かった。ただし、観測データはない ものの、降水量は現地での経験から圧倒的にカレイタ氷河のほうがコズィレフカ山より多く、 著しい東西差が存在することが判明した。 氷河の観測に関しては、コズィレフカ山に氷河を発見できなかったため、カレイタ氷河とウ シュコフスキー山頂部氷冠のみを対象とした。ただし、ウシュコフスキー山頂部氷冠は、カレ イタ氷河とは規模も標高も異なり、比較の対象としてはとらえず、専ら次節に述べる過去の雪 氷圏変動の復元のための研究を実施した。以下に、カレイタ氷河で得られた成果を述べる。カ レイタ氷河の観測は、1996年6-7月、1997年8-9月、2000年7-9月の3回実施した。内容は、 氷河質量収支、熱収支、流動、水文、地形に関する観測・調査である。質量収支は浅層ボーリ ングと雪尺による融解量測定によって一時的な質量収支を求め、これらの情報と気象データか ら推測される観測期間以外の質量収支を足し合わすことで年間の質量収支を求めた(Shiraiwa et al., 1997; Muravyev et al., 1999)。その結果、我々が観測を行った最初の2年間は、正 の質量収支であり、カレイタ氷河は世界の中でも最も交換量の多い氷河のひとつであることが 判明した。この氷河は現在縮小傾向にあり、気象データから復元した氷河の質量収支に基づく 計算によれば、1939年から1997年にかけて、氷河全体で平均35m氷河表面が低下した(図B- 2)。 氷河の融解に関与する熱収支の構成要素は、正味放射(45%)、顕熱(30%)、潜熱(25%)であ、 これは北海道の大雪山における雪渓で得られた構成比に類似している (Kodama et al., 1997)。融雪に関わるDegree day factorは表面の汚れた消耗域で7.2、比較 ― 7 ― 的きれいな涵養域で5.5 mm°C-1day-1となり(Shiraiwa et al., 1997)、これも日本国内の雪 渓で観測された値に近い。従って、カレイタ氷河の融雪過程に関しては日本国内の雪渓と類似 していると結論できよう。 氷河表面で発生した融解水は、氷河末端から2本の河川となって排水される。 1996年6-7月は融雪初期に相当したが、2本の河川から約5.5-7.5 m3s-1の流量が観測された (Kodama et al., 1997)。1997年8-9月は融雪後期に相当し、流量は約6m3s-1であった (Matsumoto et al., in prep.)。現在、これらの流量に占める表面流出と氷河底面からの流出 を分離する試みを行っており、氷河底面からの流量を見積もることにより、氷河の底面すべり のメカニズムの解明につながることが期待される。 氷河流動は、氷河を有する流域における水循環の一過程であるが、氷河の動力学過程が独自 の機構を持っているため、流域水循環の解明にあたり重要な要素である。本研究プロジェクト では、カレイタ氷河の流動を数週間間隔の測量と、数時間間隔の測量の二つの方法により求め た(Yamaguchi et al., 1997; 1998)。 前者の観測は氷河の上流から下流に至る中心部付近の流線に沿って実施し、縦断方向の流速 分布を得た。その結果、平衡線付近の年間流動速度は60 m a-1と推定され、これは同地点で19 60年9月に得られた90 m a-1という値に比べ30 m a-1だけ減少している。これは前述したカレ イタ氷河の氷厚の減少によって流速が減少したものと解釈した。一方、氷河末端で実施した数 時間間隔の流動速度の観測結果からは、氷河の流動が気温および末端からの河川流量と良い相 関にあることが判明した。これは気温上昇→融解量増加→氷河基底部の流量増加→底面すべり の増大を示唆し、カレイタ氷河の流動における底面すべりの寄与が重大であることを示す。 カレイタ氷河の末端から下流にかけては、多数のモレーンが分布する。モレーンは、かつて の氷河末端を示す氷河地形のひとつであり、氷河末端がある程度停滞することによって形成さ れる地形である。本研究プロジェクトでは、このモレーンの分布、年代を調べることにより、 カレイタ氷河が過去どのように変動してきたか明らかにすることを試みた。カレイタ氷河末端 には12列のラテラルモレーン(側堆石)と8列のターミナルモレーン(端堆石)が確認された (Sawaguchi et al., 1999)。これらのモレーンを覆う土壌と火山灰層に基づき、年代を推定 したところ、数千年前と数百年前の2群のモレーンに区分できた。数千年前のモレーンより下 流にもモレーンが存在するが、このモレーンの年代は不詳である(Yamagat a et al., 1999)。 一方、モレーンを構成するレキに付着した地衣類の大きさを測定してモレーンの年代を推定す るライケノメトリーの手法も年代決定に利用した。その結果、現在のカレイタ氷河末端に近い 3群のモレーンは、新しい方から順に、1950-1960年代、1900年代初頭、1800年代初頭から中 頃にそれぞれ形成されたことが判明した(Solomina et al., 1999)。 以上のカレイタ氷河に関わる現地調査に基づき、現在、同氷河の変動と気候環境の変遷を関 係づける数値モデルの開発を進めている。2000年夏期には、モデル構築の基礎データとなる、 カレイタ氷河の氷厚分布を電波氷厚探査によって測定した。このモデルを用い、過去のモレー ン群を形成した当時のカレイタ氷河を復元し、この形態を保つための気候条件(気温・降水量) を求める。この復元された気温や降水量が、後述する雪氷コアによる復元結果と概ね一致すれ ば、モデルの妥当性が検証される。次いで、このモデルを利用し、気候が変化した場合のカレ イタ氷河の質量収支、動力学過程、水文過程をシミュレートすることによって、氷河を有する 流域の水循環に果たす気候変化の影響を定量化する予定である。また、サージ型氷河で知られ るビルチェノク氷河においても、1998年7-8月に、氷河形態、流動、気象、水文の観測を行っ た(Yamaguchi et al., 2000)。同氷河は、ウシュコフスキー氷冠から溢流する細長い谷氷河で あり、1982年にサージを起こし、現在は静穏期にある。調査の結果、氷河表面に見られる横断 方向の凹凸起伏の繰り返しは、サージ期-静穏期の流動速度の差により生じた可能性が示唆さ れた(Sawagaki et al., in prep.)。 2)氷コア解析による古環境復元 過去の雪氷圏変動の解明にあたっては、数百年程度の比較的近い過去について雪氷コア解析 と樹木年輪気候学によるアプローチを、数万年から数千年の時間スケールについては地形調査 ― 8 ― によるアプローチを採用した。以下、雪氷コア解析に加えて、樹木年輪解析、氷河地形解析の 概要を述べる。 a) 雪氷コア解析 ウシュコフスキー氷冠において1996年~1999年にかけて、合計4回の現地調査を実施した。 1996年は、氷冠の予察調査として表面積雪と浅層(27m)掘削を実施し、氷冠の掘削によって得 られる環境情報の解明に取り組んだ。その結果、氷冠は中緯度に位置するわりには低温な環境 にあり(10m深雪温:-16.5°C)、年間質量収支は約0.57m(水当量)であることがわかった (Shiraiwa et al., 1997)。また、浅層コアのMelt feature(再凍結氷層)の分布と700hPaに おける夏期平均気温が過去27年間にわたって一致することを見いだした。これはMelt feature の分布が、過去の夏の気温の指標となることを示す(図B-3)。1997年は、アイスレーダー による氷冠の氷厚探査(松岡ほか、1997; Matsuoka et al., 1999)および表面地形の測量を実 施した。また、いくつかの地点で10mの表層掘削およびコアの酸素・水素同位体解析を行い、 最適な掘削地点の検討を行った(Shiraiwa et al.,1999)。その結果、掘削地点の候補として氷 厚240mのK2地点が挙げられた。また、予察調査で得られた種々のデータをもとに、氷冠の熱・ 力学結合モデルを構築し、K2地点の深度・年代曲線を求めた。その結果、最深部の氷の年代は 約600年であることを予測した(Salamatin et al., in press)。 1998年は過去2年間の調査に基づき、K2地点において深度212mの雪氷コア掘削を実施した(白 岩ほか, 1999)。掘削されたコアは、現地でバルク密度測定・層序記載・ECM測定・ビデオモザ イク撮影などが行われた。また、接触型温度測定装置を用い、掘削孔壁の温度測定を実施した。 この掘削孔は保存され、掘削による温度擾乱がなくなったと考えられる1年後の1999年8月に再 度温度測定を実施した。その結果、1998年の温度プロファイルとほぼ同一の結果が得られた。 掘削した212mの氷コアは密度・層構造・固体直流電気伝導度・デジタルビデオ撮影を行った 後、冷凍状態のまま全て北海道大学低温科学研究所分析棟低温室に搬入・保存された。サイエ ンストレンチにおいて作成されたサンプル、および現地調査で取得したデータ等は、以下の機 関においてそれぞれ担当の分析・解析を実施した。 北海道大学低温科学研究所:pH・電気伝導度測定、主要イオン分析、氷結晶ファブリック 解析、帯磁率測定、コアの層構造、Melt featureの結晶構造、 氷冠の衛星データ解析 北海道大学地球環境科学研究科:酸素・水素安定同位体比分析 北海道教育大学釧路校:固体直流電気伝導度測定、ビデオモザイク画像解析 上越教育大学:火山灰分析 Inst. Volcanology:火山灰分析 Kazan State University:氷冠の数値モデル構築および雪温プロファイル解析 以下、主要イオン分析と酸素・水素安定同位体分析の結果を述べる。分析した陽イオンは + + 2+ 2+ - + + 2+ 2+ - - 2- 2- Na ,K ,Mg ,Ca , 陰イオンはCl ,NO3 ,SO4 である。Na ,K ,Mg ,Ca ,Cl ,SO4 は、火山 灰の層準で著しいピークを示し、これらのイオン種が火山噴火の影響を受けることが示唆され る。一方、NO3-は35.49mのベズィミヤニィ火山起源の火山灰層と、51mの給源未知の火山灰層 - の層準を除き、火山灰とは明瞭な対応が見られない。NO3 の起源は、光化学反応と工業活動・ 山火事などに求められるが、少なくとも35.49mの大きなピークは、ベズィミヤニィ火山噴火に - 伴う周辺森林の焼失によってもたらされた可能性がある。NO3 には、火山灰層と無関係の周期 的な変動が認められる。その変動は、Shiraiwaetal.(1999)によって季節変動が確認されてい - る酸素同位体比と良く一致する。従ってNO3 も季節変動するものと思われ、その原因は、工業 活動の乏しいカムチャツカ半島では、季節的な裸地の拡大と森林火災などに求められる可能性 がある。 - 酸素同位体比とNO3 の変動が、季節変動を示すことが判ったので、それぞれのひとつひとつ の季節変動幅を読みとり、これに各々の深度における密度を乗じることによって、過去40年間 の年々の水当量の値を見積もった。最後の補正として、モデルによって流動による歪みの影響 を除去し、ウシュコフスキー氷冠の年々の質量収支(水当量)変動を求めた。コア掘削地点で ― 9 ― は、年間を通じて気温が氷点下であり、消耗量は限られている。また、たとえ融解しても融解 水は積雪内ですぐに凍結するので、コアから復元される質量収支は総降水量と同義と見なせる。 この結果と、ウシュコフスキー氷冠の山麓の町、クリュチの年間降水量と比較したところ、5 年間の移動平均で見る限り、両者には良い関係が見られた。これより、氷コアからウシュコフ スキー周辺地域の過去の降水量の復元が可能であることがわかった。また、1970年代中頃から 生じたアリューシャン低気圧の強化に応じるように1980年代中頃までウシュコフスキー氷冠で の総降水量が増加している。これは、近年注目されている、DICE (Decadal Interdecadal Climatic Event)の記録が本コアに記録されている可能性があることを強く示唆する。 b) 樹木年輪気候学による気温復元 カムチャツカ半島中央部のエッソ、およびウシュコフスキー氷冠南麓のトルバチック火山に おいてカラマツの年輪を利用して気温復元を試みた(Solomina et al.,1999)。インデックス化 された年輪幅は、同地域の6月の平均気温と最も良い相関が認められた。また、エッソにおい て採取された年輪データと、ウシュコフスキー氷冠コアのMelt Featureから復元された夏の気 温変動とを比較したところ、両者に良い関係が認められた(Solomina et al., 2000)。 c) 氷河地形解析 半島中央部エッソ村周辺、ウシュコフスキー火山山麓ビルチェノック氷河、およびカレイタ 氷河の3地点で氷河地形の調査を実施した。 エッソ村周辺の山岳地域には現在氷河が存在しないが、エッソ村には巨大なモレーンが存在 し、テフロクロノロジーにより最終氷期に形成されたモレーンであることを解明した(Sone et al.,1997)。一方、ビルチェノク氷河とカレイタ氷河では最終氷期に形成されたモレーンは、 現在の氷河よりも遙かに下流に存在する。氷河近傍のモレーンは全て数千年前から数百年前に かけて形成されたネオグラシエーションのモレーンであることがわかった(Sawaguchi et al., 1999; Yamagata et al., 1999; Solomina et al., 1999)。 (3)今後の課題 冒頭に掲げた2つの目的について、今後進めるべき課題を以下に述べる。 1)陸域雪氷圏の維持機構の解明 本研究では、カムチャツカ半島を東西3つの領域に分けて、それぞれの地域における氷河を 含む流域の水循環過程の解明を目指した。しかし、5年間で現地調査を完結できたのは、太平 洋に近い最も湿潤なカレイタ氷河と中央部のウシュコフスキー氷冠のみであった。現在、現地 調査で解明できたカレイタ氷河の質量収支特性、流動特性、気象・水文特性を組み合わせた氷 河モデルを構築中である。このモデルによって、気候変化が生じた場合の氷河変動、流出変動 が推測可能となり、流域における水循環の変化を予測できる予定である。 一方、最も内陸に位置する中央山脈では、太平洋岸のカレイタ氷河に比較してより乾燥した 気候条件下にある。このような地域の氷河は、高高度に発達するため、より低温環境にあるこ とが予測される。従って、氷河の質量収支特性、流動特性、気象・水文特性はカレイタ氷河と は異なることが予想され、カムチャツカ半島の水循環過程を解明する上で、カレイタ氷河と対 極をなす中央山脈の調査は将来行われるべきである。中央山脈北部に位置するGlichevkina氷 河は、ロシア側共同研究者によって何度か総合調査が試みられた氷河であり、既存データが利 用できる点から、将来の研究候補地として最有力な地点である。 2)氷コア解析による古環境復元 今後の課題の第一は、深度100mまで終了している分析を、コアの最深部である212mまで完了 させることである。このためには、現在と同様の分析・解析速度を保ったと仮定しても、あと 2年ほど時間が必要である。 一方、現段階までは各種イオンや酸素・水素安定同位体比の季節振幅を利用した降水量の復 ― 10 ― 元に重きを置いてきた。しかし、これらのシグナルの強度が、どのような気象・気候条件でも たらされるかについての検討はまだ不十分である。これらのシグナル強度を既存の気象・気候 データと比較することにより、シグナルのもつ気候学的な背景がわかれば、コアから更に詳細 な古気候情報が得られるものと期待される。このためには、特に時間情報の詳しい最近数年間 分に着目し、豊富な気象データとの比較から事例研究を行う必要があろう。 氷コアから古気候情報を得るためには常にコアの年代を決定する必要がある。年代が不正確 では、どんなに重要なシグナルを発見できたとしても、古気候データとしては重要性に乏しい。 幸い、今回得られたコアには、多数の火山灰層が挟在し、現在、主要な火山灰について鉱物学 およびX線解析から同定を急いでいる。この作業が進めば、コアの年代を数カ所で決定できる であろう。 しかし、例えばシグナルの季節変動幅を利用して過去の質量収支変動を推定するなどの、物 理量の連続的な復元においては、氷河流動による歪みの影響を考慮せねばならない。また、シ グナルの大小を問題にする解析では、コア中における化学物質の拡散過程を解明する必要があ る。このため、本研究地域に特化した数値モデルの開発が必要不可欠である。既に基本的なモ デルはできあがり、暫定的な深度年代曲線が得られているため、歪みの影響は算出できる (Salamatin et al., in press)。しかし、このモデルは定常状態を仮定して初めて適用できる モデルなので、過去の気候変動を復元する作業に本モデルを用いることは本質的に矛盾してい る。このため、過去の気候変動による種々の境界条件の変化を考慮しうる非定常モデルが是非 とも必要である。これは易しい課題ではないが、応用数学の分野との共同研究により是非とも 実現したいと考えている。 一方、樹木年輪解析による古気温の復元に関しては、更なるデータの集積が期待される。カ ムチャツカ半島は、雪氷コアと年輪データによる共同の古環境復元が可能な数少ない地域であ り、この利点を生かしてより詳細な古環境の変遷と分布(たとえば標高による気温変動の違い など)を試みる必要があろう。そのためには、樹木年輪解析においても年輪の幅や密度に頼る のみでなく、樹木そのものの酸素同位体の解析が必要になるものと思われる。 一方、氷河地形によるより時間スケールの長い古環境変動の復元は、まだまだデータの集積 が必要である。氷河は、過去の水文環境を探る上で、直接的な水の変動を示す数少ない媒体の ひとつであり、この種のデータが不足するカムチャツカ半島で氷河地形研究を継続する意義は 大きい。絶対年代に裏付けられた氷河地形による氷河変動の解明は、カムチャツカの水文環境 の変遷だけでなく、日本の氷期の理解にとっても有益な情報を与えるであろう。 (C)カムチャツカ半島における植生動態と環境変動の相互作用過程の解明 (1) 研究目的 地球規模の環境変動に伴って最も大きな影響を受けるのは寒冷域の生態系であろうと言われ ているが、その地球環境科学的研究には未解決な問題が多い。カムチャツカ半島は、日本に一 番近い現成の氷河の分布する地域でありまた北半球で最も低緯度に位置する季節海氷域である オホーツク海に面する陸域であることなどから、地球環境科学的には重要な地域である。しか しながら、カムチャツカ半島の氷河変動、水循環、土壌形成、植生動態などの陸域過程に関す る詳しい研究はこれまで行われていなかった。環境変動に敏感である北方寒冷域、特にカムチ ャツカ半島においてこれらを解明することが本研究の目的であり、さらには地球規模の環境・ 気候変動と陸域過程の相互作用の解明を目指したい。 (2)研究内容 1997年度よりロシアのカムチャツカにおいて以下の調査を行っている(1997年は予 備調査で、1998年から本格的な調査を行っている): (A)土壌と気候が北方林植生の垂直 分布に与える影響(Bilchenok氷河西岸の尾根);(B)北方針広混交林の動態とその群集維持機 構(KozyrevskのPicea-Betula-Populus天然林およびLarix天然林);(C)北方林の個体群維持 にたいする萌芽形成の寄与(KozyrevskのPicea-Betula-Populus天然林);(D)Larix cajanderi ― 11 ― の年輪を用いた年輪気候学による環境変動解析。 (3)研究成果 現在までに、以下のことが判明した:(A)標高の上昇とともにBetula ermaniiの根系の深度 が浅くなり、同時に樹高の減少、萌芽率の増大が生じ、標高700mの場所で生育限界(高木限界) が生じていた;(B)Piceaの実生は、林冠ギャップよりもむしろ母樹の林冠下に集中して定着し ており、ギャップを有効に利用して更新しているとは言い難く、これにはギャップ内環境の特 殊性(今のところ、光合成系の「光障害」を仮説として考えている)が関与している可能性が 高い。熱帯や温帯の森林がギャップを利用して更新していることは良く知られた生態学の定説 であるが(ギャップ更新と呼ばれている)、カムチャツカの森林の更新様式である「林冠下更 新」は、生態学的に新しい発見である;(C)萌芽部位の形態、萌芽幹の成長と回転速度の解析、 異形葉の光合成特性の解析、DNAを用いた個体識別(Populusに関して)、萌芽による場所取り 効果の解析、実生の分布と生残率の解析を現在行っている; (D)年輪幅成長曲線の作成とその 標準化作業を行い、標準曲線と周辺の気候パラメータ値とを比較した結果、年輪幅と前年の8 月の降水量,および前年夏季降水量(6月~8月)との間に正の相関を見出した。 この研究課題は、ロシア科学アカデミー・カムチャツカ生態学研究所との共同研究である。 ― 12 ― ― 13 ― ― 14 ― ― 15 ― ― 16 ― 研究課題と成果・研究業績 (1995~1999) (寒冷海洋圏科学部門) 大気海洋相互作用 教授 竹内謙介、助教授 遠藤辰雄、助手 豊田威信 1.海氷域における大気海洋相互作用 (竹内、豊田) Air-Sea interaction in sea-ice area : K. Takeuchi and T. Toyota 斜里町と巡視船宗谷でゾンデ観測を行い、またサハリンでのゾンデ観測を依頼し、そのデー タを解析した。ユジノサハリンスクのゾンデデータを用い、宗谷、斜里が季節風吹き出しの上 流、中流、下流になるようなケースを何例か選び、大気中の熱や水蒸気を変化をしらべた。そ の結果、海氷の多い時には少ないときに比べ、大気が海洋から受ける熱や水蒸気量が少ない傾 向にあることが分かった。また、海氷がある場合は、無い場合に比べ、これらのフラックスが 約半分に制限される事が分かった。 2.オホーツク高気圧の観測 (竹内) Observation of Okhotsk High : K. Takeuchi 6、7月にオホーツク海にあらわれるオホーツク高気圧は梅雨との関連が議論されたり、北 部日本の冷害の原因にも考えられる等、日本の気候に大きな影響を及ぼす。しかし、その成因 に関しては、海氷の融解による低海面水温の影響等が挙げられているが、これまで観測が乏し く決め手に欠けていた。そのため、1998年7-8月に当研究所が中心となって行ったロシア船に よるオホーツク海航海においてゾンデ観測等を行った。 この年はオホーツク高気圧が優勢で、その構造に関するデータが収集できた。現在そのデー タを解析中。 3.10年スケールの気候変動における北太平洋の変動と役割 (竹内) Variation and Rolls of North Pacific Ocean associated with Decadal Climate Variation : K. Takeuchi 十年スケールの気候変動は、その時間スケールから、海洋の役割が重要であることは当然予 想される。事実、海面水温にはそのシグナルが顕著に現れているが、海洋内部に関してはデー タが不足により解明が遅れている。われわれのグループは地球環境の研究者とともに数値モデ ルを中心として、まず、観測されているような大気の変動に対して海洋がどの様に反応するか の研究に取組でいる。 その結果、亜熱帯循環北辺で沈み込む海水が循環することにより海洋内部に広がることや、 その循環の経路などがわかってきた。特に、偏西風の変動による海面の冷却や、亜熱帯循環の 強化による熱輸送の増大、北からのエクマン輸送の増加等の影響により混合層の深さが変化す ることが重要な意味を持つことがわかってきた。 この中で、混合層フロントと各等密度面が 海面に出る線との交点が重要な役割を果たすこと、亜表層では等密度面が浅くなるなどの従来 の理論では予想できなかった変化が生じること、等北太平洋内部の変動の全貌が見えてきつつ ある。 4.熱帯太平洋における短期変動と大気海洋相互作用 (竹内) Short term variability and Air-Sea interaction in the Tropical Pacific : K. Takeuchi 熱帯太平洋の変動としてはENSOが重要で良く知られているが、それより短い時間スケールで も大気海洋相互作用があり、その結果はENSOにも影響を及ぼしている。その一例として東太平 洋における赤道不安定波による波状の海面水温分布が海上の風に影響を与えていることが、衛 星の散乱計による海上風データの解析から明らかになった。このメカニズムとして海面水温に よって海上大気の安定性が変わり、乱流の強さに影響するためであること、これによる海上風 の収束、発散で上昇流が生じ、上空にも影響があることが示唆された。1999年秋にはこの 仮説を確かめるべく、水産庁等と共同で観測船による観測が企画されている。 また、季節内振動が海洋に与える影響について調べられた。数値モデルや理論的な研究の結 ― 17 ― 果、季節内変動は、その周期の変動を海洋にもたらすだけでなく、非線型効果により、より長 い時間スケールの影響を与えることが示された。これによると、季節内変動により赤道におい て平均流として東向の流れが駆動され、暖水プールを東に延ばす働きがあることが示され、 ENSOにも影響を及ぼし得る事が示唆された。 5.酸性雪の形成機構とその起源に関する研究 (遠藤) Formation mechanism and origin of acid snow precipitation : T. Endoh 降って間も無い降雪粒子を採集して冷凍保存し、これを一期に科学分析する手法により2次 汚染の少ない観測解析を進めることが出来ている。それらによって得られた主な結果は、雲粒 の付かない降雪粒子が連続して降るとき、それらに硝酸塩が通常の降雪の平均値より高い濃度 で含まれていることが発見された。このことは雲粒付きの雪結晶は硫酸塩を卓越して多く含む という既知の報告と対比され、また別の室内実験結果とも符合することから注目され、現在 Atmospheric Environmentに掲載されているものである。この時の可能な一つの考察として雲 底下の都市汚染大気中を落下する過程でガスおよびエアロゾルの形で雪結晶表面に取りこまれ たものとした。このことを確めるために、下層の境界層内の大気が清浄である遠隔地での観測 を試み、これと合わせて、流線解析も付加した結果によると、2~3日前の通過点の地域の影 響が及んで来ると考えられる結果が得られ、硝酸塩の長距離輸送の可能性を検討しているとこ ろである。 6.オホーツク海南部の海氷の特性に関する研究 (豊田) The characteristics of sea ice in the southern region of the Okhotsk Sea : T.Toyota オホーツク海南部は冬期海氷に覆われる南限の海域として知られ、その海氷の特性は興味あ る問題である。そこで、1996年頃から毎年厳冬期にこの海域において砕氷船「そうや」を用い て現場観測を行い、主としてこの海域における海氷の成長過程に焦点を当てて調べている。ま ず、海氷域の熱収支の計算に必要となる海氷アルベドを観測から評価し、この値と現場の気象 観測値とを用いて熱収支の計算を行った。解析の結果、海氷アルベドは0.64±0.03と、従来知 られていた極域の沿岸域での値に比べて幾分低い値が得られた。熱収支の解析からは、一日当 りの平均海氷成長量は少ないこと、海氷域全体では大気にとって熱源として働くことなど、極 域とは異なるこの海域の特性が得られた。現場の海氷サンプルの解析結果からは、粒状構造が 柱状構造よりも卓越していること、比較的厚い海氷も何枚もの氷盤が積み重なってできている ことなどが分かり、海氷成長過程において力学的成長が熱力学的成長よりも重要であることが 明らかになった。また、氷厚約1cmの全層でC軸がほぼ鉛直という特徴的なニラスも発見され、 オホーツク海南部の海氷域の、極域とは異なる特性が幾つか明らかになった。 ― 18 ― 竹 内 謙 介(TAKEUCHI,Kensuke) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) S.Minobe and K.Takeuchi: "Annual Period Equatorial Waves In the Pacific Ocean", Journal of Geophysical Research,100 (C9):18379-18392(1995)* 2) H.Uyeda K.Takeuchi, et.al: "Doppler Rader Observations on the Structure and Characteristics of Tropical Clouds during the TOGA-COARE IOP in Manus, Papua New Guinea-Outline of the Observation-", Journal of Meteorological Society of Japan, 73(2B): 149-160(1995)* 3) T.Ushiyama, S.Satoh and K.Takeuchi: "Time and Spatial Variations of Mesoscale Rainfalls and Their Relation to the Large-Scale Atmospheric Field in the Western Tropical Pacific", Journal of Meteorological Society of Japan, 73(2B): 113-126(1995)* 4) T.Suzuki and K.Takeuchi: "Variability of Upper Ocean at the Equator, 156E, Observed by R/V Hakuho-Maru during TOGA-COAREIOP", Journal of Meteorological Society of Japan, 73(2B): 379-386(1995)* 5) K.Ando, Y.Kuroda, K.Yonayama, K.Munayama and K.Takeuchi: "Variations of Hydrographic Properties and Heat Budget Observed at 0,156E during the TOGA COARE R/V Natsushima Cruise",Journal of Meteorological Society of Japan, 73(2B) : 387-397(1995)* 6) M.Honda,K.Yamazaki,Y.Tachibana and K.Takeuchi: "Infuluence of Okhotsk sea-ice extent on atmospheric circulation", Geophys. Res.Lett.,23(24):3595-3598(1996)* 7) Takeuchi,K.他20名:"The Tropical Ocean-Global Atmosphere system: A decade of progress", J, Geophys. Res., 103. C7:14169-14240(1998)* 8) Xie,S.,Ishiwatari,M.,Hashizume,H.,Takeuchi,K.:"Coupled Ocean-Atmospherirc Waves on the Equatorial Front", Geophys. Res. Lett., 25, 20, 3863-3866(1998)* (その他の論文) 1) 竹内謙介:「海洋の観測」,『エネルギー・資源』, 19, 2 :151-156 (1998) 2) Nonaka,M.,S.Xie and K.Takeuchi,:"Equatorward Spreading of a Passive Tracer with Application to North Pacific Interdecadal Temperature Variation", Jounal of Oceanography, 56, 173-183 (1999) 2 総説、解説、評論等 1)「海洋・大気・雪氷の相互作用ー地球規模気候システムにおける高緯度海洋の役割」(総 説),『雪氷』 58(5): 389-392(1996) 2) 竹内謙介:「TOGA-COARE:気象学と海洋学の出会い-1995年度堀内記念奨励賞記念 講演-」(解説),『天気』, 44(5):302-305(1997) 3 著書 (2)共著 1) 上田博,竹内謙介,住明正:「気象海洋観測」,224-247(平朝彦他:『地球の観測』,岩波 書店,東京)(1996) ― 19 ― 遠 藤 辰 雄(ENDOH,Tatsuo) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) K.Muramoto, T.Fujiki, M.Kaneda and T.Endoh: "Tentative Utilization of a Raindrop Size Distribution Meter Specially Designed for the Observation of Tropical Precipitation in the TOGA/COARE Project", Jour.Meteor. Soc. Japan, 73 (2B): 549-556(1995)* 2) H.Uyeda, Y.Asuma, T.Endoh and 15 others: "Doppler Radar Observations on the Structure and Characterisitics of Tropical Clouds during the TOGA/COAREIOP in Manus,Papua New Guinea-Outline of the Observation", Jour. Meteor. Soc. Japan, 73(2B): 415-426(1995)* 3) S.Nakai and T.Endoh: "Observation of Snowfall and Airflow over a Low Mountain Barrier", Jour. Meteor. Soc. Japan, 73(2): 183-199(1995)* 4) T.Takahashi,T.Endoh,K.Muramoto,C.Nakagawa and I.Noguchi:"Influence of the growth mechanisum of snow particles on their chemical composition",Atmospheric Environment,30(10/11) :1683-1692(1996)* 5) 小西啓之,遠藤辰雄:「昭和基地の降水の特徴とその季節変化」,『南極資料』,41(1):103129(1997)* 6) 下田春人,遠藤辰雄,村本健一郎,小野延雄,滝沢隆俊,牛尾収輝,河村俊行,大島慶一郎:「船 上ビデオ撮影による南極沿岸域の海氷状況」,『南極資料』,41(1):355-365(1997)* 7) 遠藤辰雄,山内 恭,石川貴之,掛川英男,川口貞男:「カタバ風帯に見られるダークストリ ーム」,『南極資料』,41(1):447-457(1997)* 8) Oshima, K. I, Yoshida, K., Shimada, H., Wakatsuchi, M., Endo, T. and Fukuchi, M.: Relationship between the upper ocean and sea ice during the Antarctic melting season, Jour.Geophys.Res., 103, C4, 7601-7615 (1998)* 9) Konishi, H., Wada, M. and Endoh, T, :Seasonal variations of clouds and precipitation at Syowa Station,Antarctica, Annals of Glaciology, 27, 597-602 (1998)* 10) Nakajima, T., A. Higurashi, K. Aoki, T. Endoh, H. Fukushima, M. Toratani,Y. Mitomi, B. G. Mitchell and R. Frouin: Early phase analysis of OCTS radiance data for aerosol remote sensing. IEEE TRANSACTIONS ON GEOSCIENCE AND REMOTE SENSING, 1999, 37, 1575-1585.* (その他の論文) 1) K.Muramoto,K.Matsuura,M.Furukawa,T.Endoh and T.Harimaya:"Relationship between raindrop size distribution and rainfall rate",Proceedings of 12th ICCP(Zurich) ,101-104(1996) 2) T.Endoh and T.Takahashi:"Importance of a -15deg.C temperature level on precipitation processes in cloud",Proceedings of 12th ICCP(Zurich),240-243 (1996) 3) T.Takahashi and T.Endoh:"Supercooled cloud tunnel studies on the riming growth of snow crystals", Proceedings of 12th ICCP(Zurich),297-300(1996) 4) H.Konishi,M.Wada and T.Endoh:"Studies on the characteristics of precipitation phenomena obtained by radar observations at syowa station,Antarctica", Proceedings of 12th ICCP(Zurich) ,664-667(1996) 4 著書 ― 20 ― (2) 共著 1) 水文・水資源学会編集出版委員会(代表 橘 治国):「積雪寒冷地の水文・水資源」(共 著)信山社サイテック(1998) 2) 雪氷関連用語集 編著 社団法人雪センター pp. 218 (1999) ― 21 ― 豊 田 威 信(TOYOTA, Takenobu) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Toyota,T.,Ukita,J.,Ohshima.,K.,Wakatsuchi,M. and Muramoto.,K. "A measurement of Sea Ice Albedo over the Southwestern Okhotsk Sea." J.Meteor.Soc.Japan,77(1): 117-133(1999)* ― 22 ― 海洋動態 教授 若土正曉、助教授 大島慶一郎、助手 河村俊行、助手 深町康 1.オホーツク海研究 (1)「そうや」による冬季海洋物理観測 (大島) Oceanographic observations aboard the icebreaker "Soya" : K. Ohshima オホーツク海冬季の海氷下での海洋データは限られたものしかなかった。そこで、1996 年から1999年まで毎2月に計4回、海上保安庁水路部と共同で砕氷船「そうや」を用いた 海洋観測を実施し、海氷下の海洋構造を調べた。いづれ年の観測からも、オホーツク海南西部 には冬季、結氷温度に近い、鉛直方向に水温一様な海洋混合層が200-300mもの厚みを もって存在していることが認められた。この等温層水は海氷形成の盛んな北西部大陸棚域で生 成され、海底地形にトラップされた流れ(東樺太海流)によって南西域に運ばれてきたと考え られる。等温層の厚みは年によって異なるが、冬季に強まる北西風にともなって起こるエクマ ン輸送による西岸収束が、その層を厚くする主な要因と考えられる。一方、「そうや」から得 られた海氷サンプルの構造解析に海氷サンプルの解析結果によると、東樺太海流によって北か ら北海道沿岸沖まで運ばれてくる海氷のほとんどは、いくつかの氷盤が重なり合って(rafting) 構成されている。厚い等温層が観測された1997年には、海氷サンプルも他の年に比べて著 しく厚いのが多かった。これは、北から運ばれてきた海氷が、この年の発達した北風による西 岸収束によって、沖側に流されることなく活発なraftingによって厚くなったことで説明され る。 (2)北海道沖における海氷・海洋の係留観測 (深町) Mooring measurement of sea-ice and oceanic properties off Hokkaido : Y.Fukamachi オホーツク海北海道沖の海域では、漁業活動などの理由により、長期の係留観測データは ほとんど無い。そこで、1997年の秋から約2年間に渡って、知床半島沖の大陸斜面域に流 速計、塩分・水温計、水温計を設置して係留観測を行なった。この係留観測データからも、「そ うや」で観測された厚い混合層が、1998年の早春期に確認された。また、高温の宗谷暖流 水や低温の東カラフト海流水のイベント的な流入による数日程度の変動が、季節変動に比べて 大きいことも明らかになった。一方、海氷の厚さを連続的に測定できるIce Profiling Sonar を用いた初めての係留観測を、1999年と2000年の冬季に北海道沿岸(湧別町沖)で実 施した。1999年の観測結果によると、海氷が到来し始めた2月中旬から3月下旬にかけて は、平均の厚さが0.4mから1.3mまで増加していること、また最大で10mを超えるよ うな厚い海氷が存在すること、などが明らかになった(2000年のデータは現在解析中)。 (3)北太平洋中層水の起源水の生成機構 (若土) A mechanism for the production of a source water of North Pacific Intermediate Water : M. Wakatsuchi 北太平洋中層水は、塩分極小を特徴とする水で、水深300-800mを中心に北太平洋ほぼ全域 に広く分布している。最近のいくつかの研究は、この水の起源がオホーツク海である可能性を 指摘している。しかし、その起源水の生成機構についてはほとんど分かっていない。本研究で は、今までに得られたすべての観測データを基にデータセットを作成し、その解析によって起 源水の生成機構を新たに提案した。それによると、ポテンシャル密度が26.8-27.0で 低温・低塩・高酸素の北太平洋中層水と同じ特性をもつ海水は、従来から言われている北部大 陸棚域での冬季海氷形成にともなって生成する高密度水だけではなく、それと春季高密度化し た宗谷暖流水とが北海道沖で混合することによって生成する。それが北太平洋中層水の起源の 少なくとも一つであることを明らかにした。 ― 23 ― (4) 海氷の性質と成長過程の研究 (河村俊) Study on sea ice characteristics and growth processes :T. Kawamura 1995年より1999年までの5年間、海上保安庁水路部と共同で、砕氷船「そうや」を 用いた海氷観測を実施してきた。その中の重要な項目の一つに、採取した海氷を解析し、その 諸性質や成長過程を解明することがある。測定項目は密度・塩分・酸素同位体比等である。1 995年と1996年に採取した海氷を解析した結果、以下の知見が得られた。両年とも海氷 は粒状の氷が卓越していた。いくつかのサンプルに楔状の構造も見られた。これらの事実は、 氷盤どうしの積み重なり(rafting)による海氷成長の強力な証拠である。オホーツク海で採 取された海氷は、南極ウェッデル海の海氷成長で提案された”pancake cycle”で氷厚が増大 していることが明らかになった。これは南極海氷やオホーツク海氷のように、低緯度に輸送さ れる海氷域の前面(氷縁域)における海氷成長に特有なものであり、今後より詳細な解析結果 が期待される。その他の構造上の特徴として以下の点が明らかになった。海氷の表面には気泡 が多く、透明度の低い層が存在し、その層は低密度・低塩分で、しかも低い酸素同位体比を持 っていた。その層は積雪に海水が浸み込んで出来た雪氷と推測され、海氷成長に寄与する積雪 の割合は約8%と見積もられた。 (5)海氷域(北半球)の変動機構の研究 (若土) A mechanism for the variations of sea-ice extent in the Northern Hemisphere : M. Wakatsuchi 近年、地球温暖化などによる気候の変化が懸念されているが、全球気候モデルによる将来 予測には、高緯度海域に分布する海氷の役割の理解が不可欠だと言われている。しかし、現場 観測が極めて困難なこともあり、海氷のデータは非常に少なく、人工衛星から送られてくるデ ータを解析することが、現在のところ、海氷研究で最も有効な手段である。本研究では、人工 衛星からの主にSSM/Iマイクロ波データの解析によって、北半球における海氷域の実態把 握とその変動機構を明らかにした。今までほとんど不可能と言われていた、マイクロ波データ を用いた「高精度の海氷漂流速度」を導き出すことに成功し、北半球の海氷域の変動機構を定 量的に議論し、海域による違いを明確に示した。本研究によって、以下の知見が得られた。1) 海氷域の変動と風速場の関係を示した。2)ほとんどの海域で、海氷の動きの変化は風速の変 化によって説明できることを指摘した。 3)オホーツク海、ベーリング海、バレンツ海では、 海氷域は海氷の移流によって拡大すること、また、海氷域の変動は風速の変動に伴う海氷の動 きの変動によって、そのほとんどが説明できることを指摘した。4)グリーンランド海、ラブ ラドル海では、海氷域の変動は海氷の動きに依存せず、特定の場所での海氷融解によって、氷 縁の位置が決定されていることを指摘した。今後、世界の気候における海氷域の役割を解明し ていく上で、本研究の成果は大きく貢献することが期待される。 (6)「クロモフ」を用いた海洋物理観測 (若土、大島、深町) Oceanographical observations using "R/V Khromov": M. Wakatsuchi, K. Ohshima and Y. Fukamachi この研究内容については「COEプロジェクト」の章を参照されたい。 2.南極海研究 (1)南極沿岸流の変動に関する研究 (大島) Study on the vaiations of Antarctic coastal current: K. Ohshima 昭和基地周辺で得られたデータから、南極沿岸の流れ及び水塊の変動に関する研究を行っ た。まず、南極沿岸では低温・低塩の南極冬季水が秋季に厚く夏季に薄くなるという季節変動 することが明らかになった。また、これに伴って西向きの沿岸流も秋季に最大、夏季に最小に なる。これらは、卓越風である東風の季節変動に伴い沿岸のエクマン収束が変動することによ ― 24 ― ることが示唆された。また、定着氷下の流れは、風の変動の他に定着氷の張り出しに強く依存 することがわかった。特に1週間程度の変動は陸棚波の応答として理解され、定着氷の張り出 しが大きい場合には励起されない。以上の特性を説明し得る理論モデルの提出も行なった。 (2)アデリーランド沖の底層水特性の季節変動 (深町) Seasonal variability of bottom-water properties off Adelie Land,Antarctica: Y. Fukamachi 南極海アデリーランド沖は、南極底層水の起源域の一つと考えられている。この海域の東経 140度付近において、1994-95年の夏季2回にわたって、CTD/採水観測を行なっ た。この観測では、以前の観測例と同様に低温・低塩の底層水の存在が認められた。この海域 において、1995年1月から1996年3月までの約14カ月間にわたる流速計の係留観測 も同時に行なった。この流速計のデータによると、海底上約30mの底層での流速が、それよ り浅い層の流速よりも大きくなっていた。また、流速と水温の季節変動が顕著に見られたのも この底層の流速計のみであった。さらに、その底層の流速計のみが、南半球の冬明けから初夏 に相当する8月から12月にかけての期間だけ、その他の時期より流速が大きく、水温が低下 していた。この水温の低下は、係留観測点の南東側に位置し、この海域では最大のメリッツポ リニアにおいて生成された底層水のシグナルであると考えられる。 (3)融解期における海氷・海洋結合システム (大島) Coupled sea ice -ocean system in a melting season : K. Ohshima 夏季の南極海氷域では、大気からの熱のinput(主に短波放射による)は、海氷表面ではな く、アルベドの小さい開水面を通してほとんど行われる。従って、短波放射が開水面に吸収さ れその熱が海氷を側面と底面から融かす、という熱の流れが、南極の海氷融解の主たる過程と 考えられる。そのコンセプトで1次元の海氷・海洋結合モデルを作ると、日本南極観測隊で発 見された海氷密接度と混合層の水温との関係が、うまく説明できる。また、モデルを2次元に 拡張し風による移流の効果を組み入れると、南極海の子午面方向の海氷後退がよく再現される。 この2次元モデルはまた、「一旦風の場が海氷を発散させて海氷密接度を減じるセンスに働く と、海洋混合層への熱のinputが増大し、さらに密接度が減少する」という、正のフィードバ ック効果も表現できる。年による海氷後退の違いは、この正のフィードバック効果が効いてい ることが示唆される。現在、気候モデルからの要請もあって、種々の海氷過程を組み込んだ、 様々な海氷・海洋モデルが開発されつつあるが、融解期に限ると、南極海では非常に簡単な結 合モデルで海氷・海洋システムの基本的特徴が表現できることが、本研究から示唆された。 (4)海氷の成長に及ぼす積雪の寄与に関する研究 (河村俊) Contribution of snow cover to sea ice growth: T. Kawamura 南極気候研究(ACR)に関連して、昭和基地近辺のリュツォ・ホルム湾の定着氷域で1990、 91年に採取された海氷を解析した。この海域の海氷は冬期間は殆ど成長していないにもかか わらず、夏を挟む期間に平均0.5mという極めて大きな氷厚の増大が認められた。海氷コア の上部には透明な層(1990、91年のコアでそれぞれ1、2層)が存在した。この層の塩 分は0パーミルに近く、酸素同位体比は-20パーミルと雪のそれに近い値を持っていた。ま た、結晶粒径は2~10mmと大きく、平滑な粒界を持つ構造をしていた。これらの結果は、 この透明氷は積雪の融解水の再凍結によってもたらされた superimposed iceであることを示 した。透明氷の直下にある氷は、その塩分・同位体比から、積雪に浸み込んだ海水が凍結した snow ice であることが分かった。この期間の氷厚増大はこれらの成長機構によっており、海 氷の成長に積雪が多大な寄与をしていることが明らかになった。その普遍性を検証するため、 サロマ湖・オホーツク海・バレンツ海・North Water Polynya出現海域・ロス海・バルト海で 採取された海氷を解析した。特にバルト海においては1999年の結氷期に海氷の構造等の密 な時系列データを得て、積雪の寄与を追認した。 ― 25 ― 若 土 正 曉(WAKATSUCHI,Masaaki) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Martin, S., M. Wakatsuchi and N. Ono, Ice and ocean processes in Tatarskiy Strait, Japan Sea, as revealed by ERS-1 SAR, Int. J. Remote Sens., 16, 32273243, (1995)*. 2) Ishikawa, T., J. Ukita, K. I. Ohshima, M. Wakatsuchi, T. Yamanouchi and N. Ono, Coastal polynyas off East Queen Maud Land observed from NOAA AVHRR data, J. Oceanogr., 52, 389-398, (1996)*. 3) Nowlin, W. D. Jr., N. Smith, G. Needler, P. K. Taylor, R. Weller, R. Schmitt, L. Merlivat, A. Vezina, A. Alexiou, M. McPhaden and M. Wakatsuchi, An ocean observing system for climate, Bull. Amer. Meteorol. Soc., 77,2243-2273,(1996)*. 4) Wakatsuchi, M., A possible location of sinking of the Japan Sea bottom water formation, Proc. CREAMS workshop, 4, 57-61, (1996)*. 5) Watanabe, T. and M. Wakatsuchi, Formation of 26.8-26.9 potential density water in the Kuril Basin of the Sea of Okhotsk as a possible origin of North Pacific Intermediate Water, J. Geophys. Res., 103(C2), 2849-2865, (1998)*. 6) Ohshima, K. I., K. Yoshida, H. Shimoda, M. Wakatsuchi, T. Endoh and M. Fukuchi, Relationship between the upper ocean and sea ice during the Antarctic melting season, J. Geophys. Res., 103(C4),7601-7615, (1998)*. 7) Kikuchi, T., M. Wakatsuchi and M. Ikeda, A numerical investigation of the transport process of dense shelf water from a continental shelf to a slope, J. Geophys. Res., 104(C1), 1197-1210, (1999)*. 8) Toyota, T., J. Ukita, K. I. Ohshima, M. Wakatsuchi and K. Muramoto, A measurement of sea ice albedo over the southwestern Okhotsk Sea, J. Meteorol. Soc. Jpn., 77, 117-133, (1999)*. 9) Kimura N. and M. Wakatsuchi, Processes controlling the advance and retreat of sea ice in the Sea of Okhotsk, J. Geophys. Res., 104(C5), 11137-11150, (1999)*. 10) Fukamachi, Y., G. Mizuta, K. I. Ohshima, M. Itoh, M. Wakatsuchi and M. Aota, Mooring measurement off Shiretoko Peninsula, Hokkaido in 1997-1998, Proc. 2nd PICES Workshop on the Okhotsk Sea and Adjacent Areas, Nemuro, Japan, 153-158, (1999)*. (その他の論文) 1) M. McPhaden, L. Merlivat, G. Needler, W. D. Nowlin Jr., R. W. Schmitt, N. Smith, P. K. Tayler, A. F. Vezina, M. Wakatsuchi, R. Weller and A. Alexiou, Scientific design for the common module of the global ocean observing system and global climate observing system: An ocean observing system for climate, Final Report of the Ocean Observing System Development Panel (OODSP), Dept. Oceanogr., Texas A&M University, College Station, Texas, 265pp., 1995. 2) 若土正曉、オホーツク海研究の展望、月刊海洋(海洋出版)、28、523-526、1996. 3) 渡邊達郎・若土正曉、北太平洋中層水の起源、月刊海洋(海洋出版)、28、559-562、 1996. 4) 若土正曉・大島慶一郎・竹内謙介、オホーツク海研究プロジェクトの提案、月刊海洋(海 洋出版)、28、579-582、1996. 5) 若土正曉、オホーツク海研究の今後、細氷(日本気象学会北海道支部機関紙)、42、2-8、 1996. ― 26 ― 3 著書 1)若土正曉、凍る海ー世界気候における海氷の役割ー、「極地の科学」(福田・高橋・香内 編、179pp)、北海道大学図書刊行会、15-26、1997. ― 27 ― 大 島 慶一郎(OHSHIMA,Keiichiro) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Ishikawa, T., J. Ukita, K. I. Ohshima, M. Wakatsuchi, T. Yamanouchi, and N.Ono, Coastal polynyas off East Queen Maud Land observed from NOAA AVHRR data. Journal of Oceanography, 52,389-398, (1996)*. 2) Ohshima, K.I., T. Takizawa, S. Ushio, and T. Kawamura, Seasonal variations of the Antarctic coastal ocean in the vicinity of Lutzow-Holm Bay, J. Geophys. Res., 101, 20617-20628, (1996)*. 3) Kawamura, T., K. I. Ohshima, T. Takizawa, and S. Ushio, Physical, structural, and isotopic characteristics and growth processes of fast sea ice in LutzowHolm Bay, Antarctica, J. Geophys.Res., 102, 3345-3355.(1997)* 4) Fukamachi, Y., K. I. Ohshima, and T. Ishikawa, Mesoscale ice features in the summer Marginal Ice Zone off East Queen Maud Land observed from NOAA AVHRR imagery, Antarct. Res. Ser. 74, Antarctic Physical Processes, Interactions and Variability, edited by M.O. Jeffries, AGU, Washington, D.C., 317-324, (1998)*. 5) Ohshima, K. I., K. Yoshida, H. Shimoda, M. Wakatsuchi, T. Endoh, and M.Fukuchi, Relationship between the upper ocean and sea ice during the Antarctic melting season, J. Geophys. Res., 103, 7601-7616, (1998)*. 6) Ushio, S., T. Takizawa, K.I. Ohshima, T. Kawamura, Ice production and deepwater entrainment in shelf break polynya off Enderby Land, Antarctica, J. Geophys. Res., 104, 29,771-29,780, (1999)*. 7) Toyota, T., J. Ukita, K. I. Ohshima, M. Wakatsuchi, K. Muramoto, A measurement of sea ice albedo over the southwestern Okhotsk Sea. J. Meteor. Soc. Japan, 77, 117-133, (1999)*. 8) Ishida, K., K. I. Ohshima, T. Yamanouchi, and H. Kanzawa, MOS-1/1b MESSR observations of the Antarctic sea ice: ice bands and ice streamers, J.Oceanogr., 55, 417-426, (1999)*. (その他の論文) 1) 大島慶一郎・豊田威信・二橋創平, 1999, オホーツク海の海氷変動と熱塩収支過程.月刊 海洋. Vol.31-9, 595-600. 2) Fukamachi, Y., G. Mizuta, K.I. Ohshima, M. Itoh, M. Wakatsuchi, and M. Aota, 1999, Mooring measurements off Shiretoko Peninsula, Hokkaido in 1997-1998. PICES Scientific Report No. 12, 153-158. 3) Ohshima, K. I.,1998, The effects of landfast sea ice on coastal currents driven by the wind, Proceedings of International Workshop on Exchange Processes between the Arctic Shelves and Basins, Yokohama Japan, 44-46. 4) 大島慶一郎, 1997, 極域・亜極域の沿岸流の変動の研究、1996年度日本海洋学会岡田賞 受賞記念講演.海の研究, Vol.6-2, 111-120. 5) 河村俊行・滝沢隆俊・大島慶一郎・牛尾収輝, 1997, 海洋・海氷観測.南極資料, Vol. 41-1, 395-414. 6) 河村俊行・滝沢隆俊・大島慶一郎・牛尾収輝, 1997, リュツォ・ホルム湾の海氷の特性 と成長過程. 南極資料, Vol.41-1, 367-384. 7) 下田春人・遠藤辰雄・村本健一郎・小野延男・滝沢隆俊・牛尾収輝・河村俊行・大島慶 一郎, 1997, 船上ビデオ撮影による南極沿岸域の海氷状況. 南極資料, Vol.41-1, 355366. ― 28 ― 8) 宮川卓也・大島慶一郎, 1997, 南極クイーンモードランド沖の海氷の漂流特性. 南極資 料, Vol.41-1, 347-354. 9) 滝沢隆俊・大島慶一郎・牛尾収輝・河村俊行・榎本浩之, 1997, コスモノート・ポリニ ヤ水域の水温構造とSSM/I画像から見たポリニヤの特徴. 南極資料,Vol.41-1, 335-346. 10) 牛尾収輝・滝沢隆俊・大島慶一郎・河村俊行, 1997, リュツォ・ホルム湾沿岸ポリニヤ 域における海氷生産と対流混合. 南極資料. Vol.41-1, 329-334. 11) 大島慶一郎・滝沢隆俊・牛尾収輝・河村俊行, 1997, 南極沿岸海洋場の季節サイクル. 南極資料, Vol.41-1, 311-328. 12) 若土正曉・大島慶一郎・竹内謙介, 1996, オホーツク海研究プロジェクトの提案. 月刊 海洋. Vol.28-9, 579-582. 13) Ohshima, K. I., 1996, Inflow-outflow system of the Japan Sea.Proceedings of the CREAMS Workshop. Vol.4, 133-136. 14) Kawamura, T., T. Takizawa, K. I. Ohshima, and S. Ushio, 1995,Upward growth of Antarctic sea ice during summer and autumn.Pre. Wadati Conference on Global Change and the Polar Climate,150-153. 15) Ohshima, K. I., T. Takizawa, T. Kawamura, and S. Ushio, 1995,Seasonal cycle of the Antarctic coastal ocean - observations and a numerical experiment -. Pre. Wadati Conference on Global Change and the Polar Climate, 158-161. 16) Kawamura, T., T. Takizawa, K. I. Ohshima and S. Ushio, 1995, Data of sea-ice cores obtained in Lutzow Holm Bay from 1990 to 1992 (JARE-31,-32) in the period of Japanese Antarctic Climate Research. JARE Data Rep., 204 (glaciology 24), 42p. 2 総説、解説、論評等 1) 大島慶一郎:「極域・亜極域の沿岸流の変動研究」(解説),『海の研究』, 6(2):111-120 (1997) 2) 大島慶一郎・豊田威信・二橋創平:「オホーツク海の海氷変動と熱塩収支過程」(総説), 「月刊海洋」 31(9): 595-600 (1999) ― 29 ― 河 村 俊 行(KAWAMURA,Toshiyuki) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) K.I.Ohshima, T.Takizawa, S.Ushio and T.Kawamura, Seasonal variations of the Antarctic coastal ocean in the vicinity of L・zow-Holm Bay. J. Geophys. Res., 101(C9), 20,617-20,628, (1996)*. 2) T.Kawamura, K.I.Ohshima, T.Takizawa, and S.Ushio, Physical, structural and isotopic characteristics and growth processes of fast sea ice in L・zow-Holm Bay, Antarctica, J. Geophys. Res., 102(C2), 3345-3355, (1997)*. 3) O.Watanabe, W.Shimada, H.Narita, A.Miyamoto. K.Tayuki, T.Hondo, T.Kawamura, S.Fujita, H.Shoji, H.Enomoto, T.Kameda, K.Kawada and K.Yokoyama, Preliminary discussion of physical properties of the Dome Fuji shallow ice core in 1993, Antarctica. Proc. NIPR. Symp. Polar Meteorol Glaciol.,11, 1-8, (1997)*. 4) Ushio, S., Takizawa, T., Ohshima, K.I. and Kawamura, T., Ice production and deep-water entrainment in shelf break polynya off Enderby Land, Antarctica, J. Geophys. Res., 104(C12), 29,771-29,780, (1999)*. (その他の論文) 1) T.Kawamura, T.Takizawa, K.I.Ohshima and S.Ushio, Data of sea-ice cores obtained in Luzow-Holm Bay from 1990 to 1992 (JARE-31, -32) in the period of Japanese Antarctic Climate Research. JARE Data Reports, No.204, pp.42., (1995). 2) T.Kawamura, T.Takizawa, K.I.Ohshima and S.Ushio, Upward growth of Antarctic sea ice during sumer and autumn. Proceedings of Wadati Conference on Global Change and the Polar Climate. 150-153, (1995). 3) K.I.Ohshima, T.Takizawa, S.Ushio and T.Kawamura, Seasonal cycle of the Antarctic coastal ocean -Obseavations and a numerical experiment-. Proceedings of Wadati Conference on Global Change and the Polar Climate, 158-161, (1995). 4) H.Fushimi, T.Kawamura and H.Iida, Microscopic structures of acid materials in snow crystals under warm metamorphism. International Congress of Acid Snow and Rain, 56-61, (1997). 5) 大島慶一郎・滝沢隆俊・牛尾収輝・河村俊行 南極沿岸海洋場の季節サイクル.南極資料. Vol.41-1, 311-328, 1997. 6) 牛尾収輝・滝沢隆俊・大島慶一郎・河村俊行 リュツォ・ホルム湾沿岸ポリニヤ域におけ る海氷生産と対流混合.南極資料.Vol.41-1, 329-334, 1997. 7) 滝沢隆俊・大島慶一郎・牛尾収輝・河村俊行・榎本浩之 コスモノート・ポリニヤ水域の 水温構造とSSM/I画像から見たポリニヤの特徴. 南極資料, Vol.41-1, 335-346, 1997. 8) 下田春人・遠藤辰雄・村本健一郎・小野延雄・滝沢隆俊・牛尾収輝・河村俊行・大島慶 一郎 船上ビデオ撮影による南極沿岸域の海氷状況.南極資料,Vol.41-1, 355-365, 1997. 9) 河村俊行・滝沢隆俊・大島慶一郎・牛尾収輝 リュツォ・ホルム湾の海氷の特性と成長過 程.南極資料, Vol.41-1, 367-383, 1997. 10) 河村俊行・滝沢隆俊・大島慶一郎・牛尾収輝 (1997) 海洋・海氷観測.南極資料, Vol. 41-1, 395-414, 1997. ― 30 ― 深 町 康(FUKAMACHI, Yasushi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Y. Fukamachi, J.P. McCreary Jr. and J.A. Proehl, Instability of density front in layer and continuously stratified models, J. Geophys. Res., 100: 2559-2577, (1995)*. 2) Y. Fukamachi, K.I. Ohshima and T. Ishikawa, Mesoscale ice features in the summer marginal ice zone off East Queen Maud Land observed in NOAA AVHRR imagery, Antarct. Res. Ser. 74, Antarctic Sea Ice: Physical Process, Interactions and Variability, edited by M.O. Jeffries, AGU, Washington D.C., 317-323, (1998)*. (その他の論文) 1) Y. Fukamachi, A numerical investigation of the marginal ice zone using a simole ice-ocean coupled model, Proceedings of International Workshop on the Okhotsk Sea and Arctic; the Physics and Biogeochmistry implied to the Global Cycles, Tokyo, Japan, 164-167, (1996). 2) Y. Fukamachi, A numerical investigation of mesocale phenomena in the summer marginal ice zone using a simole ice-ocean coupled model, Proceedings of International Workshop on Exchange Processes between the Arctic Shelves and Basins, Yokohama, Japan, 84-85, (1998). 3) Y. Fukamachi, G. Mizuta, K.I. Ohshima, M. Itoh, M. Wakatsuchi and M. Aota, Mooring measurements off Shiretoko Peninsula, Hokkaido in 1997-1998, PICES Scientific Report No. 12, 153-158, (1999). 4 学術講演(招請講演) (2) 国際的,全国的規模のシンポジウム 1)"A Numerical Investigation of the Marginal Ice Zone Using a Simple Ice-Ocean Coupled Model",International Workshop on The Okhotsk Sea and Arctic; the Physics and Biogeochemistry implied to the Global Cycles, Tokyo(1996) 2) Y. Fukamachi, M. Wakatuchi, K. Taira, S, Kitagawa, A. Takahashi, K.Oikawa, H. Yoritaka, S. Ushio, A. Furukawa, M. Fukuchi and T. Yamanouchi:"Mooring measurement off Wilkes Land", XIX Symposium on Polar Biology, Tokyo(1996) ― 31 ― 海洋環境 教授 河村公隆、助教授 中塚武 1.大気・降水 (1)北極エアロゾル中の水溶性有機物に関する研究 (河村公) Studies on water soluble organic compounds in the arctic aerosols : K. Kawamura 北極圏の冬季には汚染性の有機物が大量に大気輸送されるが、3月のポーラーサンライズの 時期に光化学的酸化により大きな化学的変質を受ける。今回、我々は、光化学生成物である低 分子ジカルボン酸を、北極エアロゾル中に検索した結果、飽和(C2-C11)及び不飽和(マレイ ン酸、フマル酸、メチルマレイン酸、フタル酸)ジカルボン酸を検出し、シュウ酸(C2)が最 も優位な成分であることを見いだした。更に、ジカルボン酸の濃度は、微細なエアロゾル粒子 (2ミクロン以下)でより高く、大型粒子(2ミクロン以上)中のジカルボン酸濃度に比べ7 倍以上であることがわかった。また、ジカルボン酸濃度は太陽光が入射する3月以降、急激に 増加することが明らかとなったが、その傾向は微細粒子でより顕著であった。これは、ガス状 有機物の光化学的酸化により粒子状ジカルボン酸が生成されたいることを意味している。 (2)海洋大気エアロゾル中の含ハロゲンカルボン酸およびアルデヒドの同定と大気化学的意 味 (河村公) Identification of halogenated carboxylic acids and aldehydes in the marine aerosols and its implication for atmospheric chemistry:K. Kawamura 塩素などハロゲン原子は成層圏オゾンの分解において重要な役割を果たすが、対流圏化学に おいても重要な化学種であり炭化水素の酸化と有機エアロゾルの生成に関与していると考えら れる。近年、大気中のガス状有機ハロゲンの研究が活発に行われているが、エアロゾル中の有 機ハロゲンに関する報告例は皆無である。海洋は地球上におけるハロゲンの巨大なリザーバー であり、海洋大気中ではハロゲンが関与する有機物の反応が進行していると考えられる。海洋 を含むエアロゾル試料中の水溶性画分(低分子ジカルボン酸を主成分に含む)をGC/ECDにて分 析したところ、クロマトグラム上にハロゲンに由来すると思われるピークを数多く検出した。 質量分析計による解析の結果、塩素または臭素を持つコハク酸(炭素数4のジカルボン酸)お よびアルデヒドを同定する事に成功した。さらに、含ハロゲンコハク酸やアルデヒドは海洋大 気中に広く存在することを見いだした。含ハロゲンカルボン酸やアルデヒドはこれまで、大気 中での報告はなく、エアロゾル中にこれらが検出されたことは、光化学反応の過程で有機物の ハロゲン化が起こっていることと、このハロゲン化を通して水溶性有機物の生成の過程が存在 することを示唆する。海洋大気中には、海塩やハロカーボンなどハロゲンのソースがあること から、ハロゲンが関与した有機物の酸化は重要であると考えられる。 (3)北部北太平洋エアロゾル中の水溶性有機物の分布 (河村公) Water soluble organic matter in the northern North Pacific aerosols : K. Kawamura 大気中に存在する水溶性有機エアロゾルは、硫酸エアロゾルと同様に高い吸湿性を持つこと から、雲凝結核として雲の形成に関与しアルベドを増大させる重要な因子である。本研究では、 ― 32 ― アジア地域の活発な人間活動の影響下にある日本海及び北部北太平洋の洋上でエアロゾルを採 取し、そこに含まれる水溶性有機態炭素(WSOC)をその主成分である低分子ジカルボン酸類を測 定し分布の特徴を明らかにした。試料中にシュウ酸(C2)からセバシン酸(C10)までのジカルボン 酸、C 2-C 4のwオキソ酸、C 2-C 3のジカルボニルを検出した。すべての試料でシュウ酸がもっと 3 3 も高い濃度を示し(2-260 ng/m , av. 34 ng/m )、マロン酸(C3)、コハク酸(C4)がこれに続い た。一般に、ジカルボン酸の濃度は日本海で高く、西部北太平洋から中部・東部北太平洋にか 3 けて低くなる傾向を示した。ジカルボン酸の日本海における平均濃度(290 ng/m )は北部北太 3 平洋における値 (50 ng/m )の約5倍であり、日本海の洋上大気エアロゾルはアジア大陸から の有機物の排出とその大気輸送の影響を強く受けていることが示唆された。一方、ジカルボン 酸の分布は季節的特徴を示すこともわかった。全ジカルボン酸の平均濃度は大陸からの大気輸 3 送の影響が強いと考えられる春(67 ng/m )よりも、生物生産が高く海洋性の気団が卓越し出す 3 初夏(84 ng/m )においてやや高い値を示した。同時期にWSOCおよびアゼライン酸(C9)の濃度 は北部北西太平洋域及びベーリング海で顕著に高くなることが明らかとなった。アゼライン酸 は海洋生物に由来する不飽和脂肪酸が大気中で光化学酸化されて生成することから、有機エア ロゾルは生物生産の高い海域では海洋生物の影響を強く受けることが示唆された。 (4)海洋エアロゾル中の脂質化合物の分布と挙動:父島における4年間の観測 (河村公) Distribution and behavior of lipid class compounds in the marineaerosols collected over Chichi-Jima Island : K. Kawamura 西部北太平洋はアジア大陸から大量の陸起源物質が大気輸送される海域であり、海洋エアロ ゾルの化学組成にそれが反映される。小笠原諸島父島は偏西風帯と貿易風帯の境界に位置し、 風系の季節変化によって陸起源物質の大気輸送が大きく変動する場所である。特に偏西風の強 い冬から春先にかけて陸起源物質が大量に輸送されていることが知られている。本研究では、 エアロゾル中の有機物のうち、植物の葉のワックスに由来するアルカン、アルコールなどの脂 質化合物に着目し、1990年から4年間にわたって父島で採取した海洋エアロゾル中の有機 物成分を分子レベルで解析し、その分布から陸源物質の西部北太平洋への大気輸送を議論した。 その結果、陸上高等植物のワックスに由来する高分子量n-アルカン(C27-C35)、n-アルコール(C2 0-C32)、モノカルボン酸(C21-C32)の濃度は冬、春に高く、夏、秋に低い傾向を示した。これはア ジア大陸に由来する陸起源物質の輸送量が冬から春に増加することを示している。また、植物 ワックスに由来する3成分の割合を比べてみると、偏西風が卓越する時期(12月-6月)と貿易 風が卓越する時期(7月-11月)で組成に変化が見られた。偏西風の時期はモノカルボン酸の割合 が低く、n-アルカン、n-アルコールの割合が高いのに対し、貿易風の時期はその逆を示してい た。さらに、高分子量n-アルカン、n-アルコールの分子組成は貿易風の時期に炭素鎖が長くな る傾向が認められた。このことは偏西風の時期と貿易風の時期に輸送される植物ワックスは組 成が異なる地域から輸送されていることを示している。 (5)西部北太平洋父島で採集した海洋エアロゾル中の脂肪酸の炭素同位体比:起源と大気輸 送に関する情報 (河村公、客員助教授・Jiasong Fang) Carbon isotope ratios of fatty acids in marine aerosols from Chichi-Jima Island, western North Pacific: Implications for source and atmospheric transport : ― 33 ― K. Kawamura and J. Fang 脂質はエアロゾルの起源を知るためのバイオマーカーとして広く使われているが、化学的特 徴からは、エアロゾル中の有機化合物の起源が明確に決定できるとは限らない。個別有機化合 物の同位体分析(CSIA)では、エアロゾル中の個々の化合物の同位体の特徴を特定できる。本 研究の目的は、脂肪酸にCSIAを用いて西部北太平洋で採集された海洋エアロゾルの起源と長距 離輸送を明らかにすることである。1990年から1993年にかけて父島(北緯27.4度、東経142.1 度)で採集されたエアロゾル試料について、抽出した脂肪酸の炭素同位体比をガスクロマトグ ラフと同位体質量分析計を用いて測定した。炭素数20未満の脂肪酸の同位体比は長鎖の脂肪酸 に比べて重く、その起源が海洋・陸上と異なることを反映している。季節による同位体比の偏 13 差は6.5‰に達し、d C値は冬に低く、夏に高くなる。このパターンは起源と大気輸送の大きな 変化を示唆しており、冬から初春には偏西風によりアジアから、夏には貿易風により南アメリ カから気塊が運ばれると考えられる。 (6)低分子ジカルボン酸の粒径別分布と森林火災 (河村公) Molecular composition of dicarboxylic acids in size-segregated aerosols collected during forest fire in Southeast Asia : K. Kawamura 東南アジア(インドネシア、シンガポール)で採取されたエアロゾルを解析し、ジカルボン 酸の粒径別分布を明らかにした。その結果、森林火災の時期に採取された試料では、シュウ酸、 マロン酸、コハク酸など低分子ジカルボン酸の大部分が直径2ミクロン以下の粒子として存在 することがわかった。このことから、燃焼の過程で生成するジカルボン酸は、いったんガスと して大気に放出されるが、上昇する空気が冷却される過程で、同時に生成する微細なススなど に吸着される結果、粒径の小さい画分に存在するものと思われる。一方、森林火災がおさまっ たあとに採取された試料では、低分子ジカルボン酸は2-11ミクロン、 11ミクロン以上の大型 の粒子にも分布することがわかった。これの結果は、ガスから粒子への酸化反応で生成される ジカルボン酸が大気中で粗大な粒子の取り込まれていく可能性や、エアロゾル表面での酸化過 程でジカルボン酸が生成している可能性を示している。 (7)1997年インドネシア森林火災時に放出された水溶性有機エアロゾルの組成と炭素安定同 位体比 (河村公) Distribution of dicarboxylic acids and carbon isotopic compositions in aerosols from 1997 Indonesian forest fires : K. Kawamura 水溶性有機物(WSOC)を含むバイオマス燃焼由来のエアロゾルは、雲凝結核として十分機能 することが報告されている。低分子ジカルボン酸はエアロゾル中に高濃度で検出されている水 溶性有機物群の一つである。我々は1997年インドネシア森林火災時に、東南アジアにおいてエ アロゾルを採取し、低分子ジカルボン酸組成を調べた。エアロゾル中に炭素数2~12のジカル ボン酸が検出された。ジカルボン酸全体のWSOCに占める割合は2~8%であった。また、バルク 13 のエアロゾルの安定炭素同位体比(δ C)を測定した。安定炭素同位体比はソース毎に異なっ た同位体比を持ち、エアロゾルのソースを同定するための有効なアプローチである。エアロゾ 13 13 ル中の炭素の増加に伴ってδ Cは約2‰減少した。エアロゾルのδ Cの減少は森林火災によっ 13 てC3植物由来の低いδ Cを伴う有機物が大気へ放出された結果であることが示された。 ― 34 ― (8)北極大気中で採取された微小および粗大エアロゾル中の低分子ジカルボン酸(河村公) Measurements of dicarboxylic acids in fine and coarse aerosols collected from the Arctic during the Polar Sunrise Experiment 1997 : K. Kawamura 冬期の北極圏には汚染性の有機物が大量に大気輸送され、ポーラーサンライズの時期(3~4 月)に光化学的酸化を受ける。我々は、Polar Sunrise Experiment (PSE) 1997の一環として、 北極圏カナダのアラートにて採取した微小粒子(<1μm)と粗大粒子(>1μm)のエアロゾル 試料中の水溶性ジカルボン酸を測定し、その粒径分布および濃度変動を調査した。短鎖のジカ ルボン酸(C2-C5)が97-98日に濃度の極大を示したのに対し、比較的炭素鎖の長いジカルボン 酸(≧C5)はその期間に明らかな濃度増加は示さなかった。また、全てのジカルボン酸の粒径分 布において、微小粒子が全体の80%以上の濃度を占めた。これらの結果から長鎖のジカルボン 酸は北半球中緯度から北極へ長距離輸送されてきたと考えられた。オゾン減少が観測された期 間、短鎖のジカルボン酸(C2-C5)の濃度が微小粒子、粗大粒子共に極大となった。これらのジカ ルボン酸は北極の海洋上の境界層において非メタン炭化水素が酸化されて生成したものである 可能性が示唆された。 (9)東京、福島県田島、札幌における降雪試料中の低分子ジカルボン酸類の分布と全有機態 炭素 (河村公) Low molecular weight dicarboxylic acids, related compounds and total organic carbon in the snow samples from Tokyo, Tajima and Sapporo, Japan : K. Kawamura 東京、田島、札幌で採取した降雪試料中に低分子ジカルボン酸などをキャピラリーガスクロ マトグラフにて測定した。また、一部の試料について全有機態炭素(TOC)、溶存有機態炭素 (DOC)、および、主要な陽イオン・陰イオンについても測定した。雪試料中に炭素数が2か ら11の低分子ジカルボン酸(27-222 mg/kg)、ケトカルボン酸(C2-C6, 9.4-103 mg/kg)、ジ カルボニル(C 2-C 3, 5-68 mg/kg)を検出した。すべての試料において炭素数の最も少ないジ カルボン酸であるシュウ酸が最も高い濃度を示すことがわかった。更に、分子の末端にアルデ ヒド基を持つオメガオキソカルボン酸の場合も炭素数の最も少ないグリオギザール酸が優位を 示すことが明らかとなった。これら低分子化合物は非海塩性硫酸と強い正の相関を示すが、カ ルシウムとは負の相関を示すことが示された。一方、TOCは 1.1-12.1 mgC/kg、DOCは 1.0-10. 7 mgC/kgの濃度範囲で検出された。DOCはTOCの52-94%を占め、降雪中の有機物の大部分 が水溶性であることが明らかとなった。 (10)都市域におけ降水およびエアロゾル中の低分子ジカルボン酸・ケトカルボン酸・ジカル ボニルの分布と経時変化 (河村公) Changes in the distribution of dicarboxylic acids, kotocarboxylic acids and dicarbonyls in the rain and aerosol samples simultaneously collected during wet precipitation events : K. Kawamura 都市域で同時採取した降水及びエアロゾル試料中の低分子ジカルボン酸、ケトカルボン酸、 ジカルボニルをキャピラリーGC、GC/MSを用いて測定した。また、降水中の全有機態炭素(TOC) とエアロゾル中の水溶性有機炭素(WSOC)も測定された。全ジカルボン酸濃度は降水試料で -1 -3 25.8 - 572 μgL 、エアロゾル試料で 300 - 1720 ngm であった。降水試料中のジカルボン酸 及び関連有機物の濃度およびフラックスは時間の経過と共に著しい濃度減少を示した。これに ― 35 ― 対して、エアロゾル試料のジカルボン酸類の濃度は時間とともに単調に減少せず、むしろ降水 の中期で増加した。これらの結果は、ジカルボン酸など水溶性の有機物は主に雲の中で雲粒や 雨粒に移行しているのに対して、雲より下層の大気カラムの降水による除去は相対的に小さい ことを示唆している。降水中であるにもかかわらずエアロゾル中のジカルボン酸の濃度が増加 したことは、ジカルボン酸を豊富に含む気団が、上層または周辺の大気からサンプリング地点 まで輸送された可能性を示している。 (11)南極雪試料中の有機物の組成分布の研究 (河村公) Studies on organic compounds in the snow samples over the Antarctica : K. Kawamura 南極氷床での有機物トレーサーの分布を明らかにする目的で、南極沿岸(昭和基地)から内 陸のドームF基地の間で採取された降雪試料を分析した。試料中に、低分子ジカルボン酸など の水溶性成分と共にアルカンなど脂質成分を検索したところ、炭素数2から12の飽和ジカル ボン酸(C2-C11)、不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、メチルマレイン酸、フタル酸)、ωオ キソ酸(C2-C6)、ピルビン酸、ジカルボニル(グリオギザール、メチルグリオギザール)を 検出した。また、n-アルカン(C20-C34)、n-アルコール(C14-C30)、脂肪酸(C8-C32)も検 出した。これらの分布の特徴より、陸起源物質が南極大陸へと大気輸送されていることを明ら かになった。また、大気輸送の過程で、有機物の一部が光化学的に酸化を受け、シュウ酸、コ ハク酸などの低分子ジカルボン酸を生成することが明らかとなった。 (12)南極アイスコア(H15)中の脂質化合物の分布と歴史的記録 (河村公) Distribution and historical records of lipid class compounds in the H15 ice core from Antarctica : K. Kawamura 南極アイスコア(H15)中に有機溶媒で抽出可能なモノカルボン酸、ジカルボン酸などの 脂質を検索し、過去400年間にわたるこれら有機物の分布の特徴を明らかにした。脂肪酸は C16、 C18に最大を持つ偶数優位の分布を示したが、これらは主として海洋生物起源に由来し海 洋表層のマイクロレイヤーを通して大気に移行し輸送されたものである。脂肪酸の濃度には、 1630年から1840年にかけて低く、1850年以降増加傾向を示すことがわかった。前 者の低い濃度は小氷期において南極海の海氷が張り出したために海洋由来の物質の南極への輸 送が減少したためであると考察された。一方、後者の増加は近年の温暖化に対応している可能 性がある。また、不飽和脂肪酸とその光化学分解生成物であるアゼライン酸の比は、1970 年以降増加することが見いだされた。この結果は、大気の酸化能力(光化学反応による酸化能 力)が増大したことを意味しており、この20年間に明らかになった成層圏オゾンの分解に伴 う大気中の酸化剤(OHラジカル、過酸化水素など)の増加が関与している可能性が指摘された。 14 (13)大容量分取キャピラリーガスクロマトグラフィー(PCGC)の開発と分子レベル C年代測 定:地球化学的試料への応用 (河村公) 14 C analysis using preparative capillary gas chromatography (PCGC) Compound specific and application for geochemical samples :K. Kawamura 有機分子(バイオマーカー)は大気や海洋における物質循環を議論する上で有用なマーカー である。また、その分子レベルの安定炭素同位体比は生物の基礎生産に関する情報や、有機物 の起源を議論するために用いられてきた。本研究では、有機物分子が持つもう一つの炭素同位 ― 36 ― 14 体、すなわち、放射炭素の着目し、有機分子の Cを測定することにより、有機物の生成年代を 明らかにすることを目標に、そのための技術を開発を行った。装置は、キャピラリーガスクロ マトグラフィーで分離した化合物を分け取る方法によったが、この装置の特徴は、試料のGC への繰り返し注入により、分取した成分を濃縮することにある。次に、本研究で開発した方法 14 を、大気エアロゾル試料に応用し、脂肪酸の C濃度を加速器質量分析計によって測定した。そ の結果、主成分脂肪酸であるパルミチン酸(炭素数16)では、現代(modern carbon)の値を 示し植生から直接大気中に放出されていることを示した。これに対し、炭素数24-32の長鎖脂 肪酸は約500年前から6000年前と古い年代を示すことが明らかとなった。このことは、陸上高 等植物起源である炭素数24-32の脂肪酸は直接高等植物から寄与したのではなく、土壌などに 移行した有機物が長い期間を経た後に大気中に放出された可能性を示唆する。本研究で開発し た方法を地球化学試料に応用することによって、地球化学諸過程の詳細を明らかにできる展望 が出てきた。 (14)多官能基カルボニル化合物分析法の開発 (河村公) A New Method for Determination of Multi Functional Carbonyl Compounds in Snow and Rain Samples by GC/FID and GC/MS : K. Kawamura 大気中に存在する有機化合物は、酸化剤によって変質をうけ分解し、酸素原子を含む官能基 を持った化合物を生成する。この生成物の中には分子内に複数種類の官能基を持ったものも多 く含まれることが予想され、これらは有機化合物の変質過程における中間生成物であるものと 考えられる。本研究では、このような中間生成物として代表的な化合物群であるカルボニル化 合物に注目し、分子内にカルボニル基(>C=O)以外に水酸基(-OH)を持つ化合物を分析可能とす る方法を開発した。この方法を用いて実際の雪や雨試料を分析したところ、glycolaldehyde、 hydroxyacetoneおよび4-hydroxy-2-butanoneなどのヒドロキシカルボニル化合物を降水試料中 に初めて検出した。これらの濃度は同試料中の低分子ジカルボン酸のそれに匹敵した。 glycolaldehydeとhydroxyacetoneはいずれも、植物起源の有機化合物のうち最も大きな放出フ ラックスを持つイソプレンの分解生成物として知られている。これらの化合物は水に溶けやす いため、雨滴やエアロゾル表面などでさらに分解している可能性が高い。本研究では、水相に おけるこれらの化合物濃度を測定可能にすることができた。 (15)南極ドームふじ基地の雪試料中に含まれる低分子ジカルボン酸の季節変化 (河村公) Seasonal Changes in Low Molecular Weight Dicarboxylic Acids in Snow Samples from Dome Fuji, Antarctica : K. Kawamura 南極大陸の沿岸部から約1000km内陸にあるドームふじ基地において、1995年10月から翌96年 11月までの間に、約1ヶ月に1回ずつ採取された降雪試料9試料中に含まれる低分子ジカルボ ン酸濃度を測定した。比較のためにドームふじ基地にいたるまでのルート上で採取された雪試 料も同様の分析を行ったところ、ドームふじ基地で採取された雪試料に含まれる低分子ジカル ボン酸のほとんどは、基地で使用された化石燃料を起源としていることがわかった。しかし、 低分子ジカルボン酸濃度の季節変化は、基地での燃料使用量とは逆の傾向にあり、夏に増加し て冬に減少するというものであった。それらの結果から、低分子ジカルボン酸は化石燃料起源 の有機化合物から、光化学的反応によって生成するということが分かった。 ― 37 ― (16)オゾン・OHラジカル共存系での不均質反応によるオレイン酸の酸化分解実験(河村公) Studies on Photochemical Formation of Low Molecular Weight Dicarboxylic Acids from Oleic Acid: K. Kawamura 環境中に存在する生物起源の有機化合物の中でも、不飽和脂肪酸はオゾンにより速やかに分 解され、アルデヒドやカルボン酸を生成する。これらがOHラジカルのような酸化剤によってさ らに酸化を受けることによって、より極性の大きな化合物になっていく過程を確認するための 実験を行った。反応容器の内壁にオレイン酸を塗布し、ここにオゾンと水蒸気を含有した純空 気を導入した上でUV-C(280 < λ <320nm)を照射し、反応容器内に生成した化合物のうち低分 子ジカルボン酸について分析を行った。その結果、先に述べたような反応系において、オレイ ン酸から炭素数2~9の低分子ジカルボン酸が生成することが確認された。 (17)西部北太平洋および東部インド洋上空における炭素数2-6の炭化水素の分布(河村公) Distributions of C2-C6 hydrocarbons over the western North Pacific and eastern Indian Ocean : K.Kawamura 1996年12月から1997年2月の研究航海中に、北緯25度から南緯40度の西部北太平洋および東 部インド洋で大気中のC2-C6非メタン炭化水素の測定を行った。それぞれの非メタン炭化水素の 体積混合比は、エタン0.61ppbv、エチレン0.42ppbv、アセチレン0.17ppbv、プロパン0.24ppbv、 プロピレン0.60ppbv、i-ブタン0.07ppbv、n-ブタン0.13ppbv、i-ペンタン0.04ppbv、n-ペンタ ン0.06ppbv、n-ヘキサン0.06ppbvであった。寿命が一週間以上の非メタン炭化水素(C2-C4アル カンおよびアセチレン)では北半球の北から南に向けて緯度による濃度の減少が見られた。一 方、寿命が一週間未満の非メタン炭化水素(アルケンおよびC5-C6アルカン)では有意な緯度に よる濃度の傾向は認められなかった。2日間の逆方向への流跡線解析の結果との比較から、軽 いアルケンは海水に由来していることが示唆された。 2.海洋 (1)北部北太平洋・ベーリング海における懸濁粒子の脂質成分・炭素安定同位体比の鉛直分 布 (河村公、中塚、大河内) Vertical profiles of lipids, total organic carbon, total nitrogen and stable carbon isotopic ratios in the suspended particles in the northern North Pacific and Bering Sea : K. Kawamura, T. Nakatsuka and N. Ohkouchi 北部北太平洋およびベーリング海にて懸濁粒子を採取し、全有機態炭素(TOC)、全窒素(TN)、 および、脂肪酸などの脂質成分を測定した。TOC、 TNおよび脂質の濃度は、表層から100m の深さにかけて減少することがわっかた。これに対し、中層(200-400m)において、 TOCと脂肪酸の濃度が増加する現象を見いだした。この中層での増加は、C/N比の減少と対応し ていることがわかった。一般に、細菌のC/N比は4以下であることから、中層における懸濁物 は細菌に富んでいることが示唆された。実際に、バクテリアに特有なバイオマーカーであるヒ ドロキシ酸を測定したところ、その濃度は中層で増加することが確認された。また、中層にお いては、ポリ不飽和脂肪酸も高濃度で存在することがわかり、中層での動物プランクトンから の寄与も示唆された。 ― 38 ― (2)オホーツク海における窒素循環に関する研究 (中塚) Study on nitrogen cycle in the Sea of Okhotsk : T. Nakatsuka 海洋において生物生産を律速している栄養塩である窒素の循環を理解することは、単に海洋 生態系にとって重要で有るばかりではなく、炭素循環を介して栄養塩が大気二酸化炭素濃度等 を支配するメカニズムを理解する上でも、不可欠な課題である。しかし、海洋の窒素収支には 通常の有機物の生産・分解以外に、脱窒と窒素固定という未確定な大きな因子が残されている。 本研究ではオホーツク海の広範囲の海域からのCTD採水試料の栄養塩を分析し、その窒素-リン 関係の解析から、オホーツク海の大陸棚上で大きな脱窒作用が生じていることを明らかにした。 それにより窒素が減少した水塊は、大陸棚からオホーツク海中層に流出し、更に北太平洋中層 水に編入されることで、北太平洋の中層水塊全体の窒素不足の一因となっていることも分かっ た。一方、アムール川からの淡水が流入し、大陸起源のエアロゾルの落下を受けるオホーツク 海表層には、窒素が過剰に供給され、逆に窒素過多水塊が形成されていることも明らかとなっ た。 (3)オホーツク海中層水の形成に伴う物質輸送メカニズム (中塚) Material transport mechanism accompanied with formation of the Okhotsk Intermediate Water : T. Nakatsuka オホーツク海には北太平洋中層水の起源水とされる中層水が発達しているが、これは主に、 北西部大陸棚上での海氷形成に伴うブライン水の沈み込みが原因で生じる水塊である。大陸棚 からの水塊流出は必然的に大陸棚から外洋への物質流出を生んでいる可能性があるが、今回初 めてオホーツク海西部海域でのCTD観測に濁度計を併用して、中層水形成に伴う懸濁物質の輸 送の実態を明らかにした。まずオホーツク海の大陸棚上では、海底付近に、激しい潮汐混合に より堆積物を多量に巻き込んだ高懸濁層が発達していたが、この高懸濁層は同時に極低温のブ ライン水の性格を有しており、大陸棚から外洋中層へのこのブライン水の沈み込み流出に伴っ て、多量の懸濁物が中層に注入されていく様子が、濁度の3次元分布から明らかとなった。大 陸棚海底上から外洋中層への「潮汐&ブラインポンプ」とも言えるこの特異な物質輸送メカニ ズムは、オホーツク海中層へ懸濁・溶存有機物を含む様々な物質を供給していると考えられ、 オホーツク海中層の生態系を世界の海の中でも極めて特異なものにしていることが予想され る。 (4)セジメントトラップを用いたオホーツク海の生物生産に関する研究 (中塚、河村公) Study on biological productivities of the Sea of Okhotsk using sediment traps : T. Nakatsuka and K. Kawamura オホーツク海は世界で最も低緯度の季節海氷域であり、その生物生産、特に春季植物プラン クトンブルームの発生には、アイスアルジーなど海氷に関わる因子が大きく作用していること が予想される。本研究では、1998年8月から2000年6月まで、オホーツク海西部サハリン沖の南 北2カ所の上下2層に時系列式のセジメントトラップを設置し、各計42期間の連続的な時系列 沈降粒子試料を得た。生物生産量を反映する有機炭素は、両地点とも春と秋に大きなフラック スを示したが、通常の高緯度海域とは異なり、秋のフラックスの方が大きかった。また、春季 ブルームを反映する春のフラックスの増大は、海氷が早く後退する南の地点よりも、北の地点 ― 39 ― でむしろ早く始まっていた。これらのことから、オホーツク海で最も生産力の高いサハリン沖 海域では、生物生産を支配しているのは、海氷ではなく、サハリン北部に放出され秋にその流 量が増大するアムール川起源の淡水であるということが、示唆された。アムール川の淡水は東 サハリン海流に乗って南に運ばれ、北から南へと春のブルームを伝搬させて行くらしい。 (5)海洋深・底層における懸濁・沈降粒子有機物の相互作用ダイナミクス (中塚) Dynamics of interaction between suspended and sinking particulate organic matter in ocean deep and bottom waters : T. Nakatsuka 海洋深層において、鉛直的に急速落下する沈降粒子と、長い滞留時間を持った懸濁粒子は、 まったく別のものと考えられてきた。本研究では、水深1500mの相模湾深海盆において、時系 列セジメントトラップを用いた沈降粒子の観測と、濁度計付CTD採水器による懸濁粒子の夏・ 冬観測を実施し、両者の関係について考察した。春季ブルーム期の沈降粒子はクロロフィルa を多量に含み、表層から急速沈降してきた粒子であることを示していたが、夏から冬に掛けて は分解の進んだ有機物が「沈降」し、それらが実は沈降粒子の海底におけるリバウンドによっ て生じた懸濁粒子であることが推察された。夏の懸濁粒子プロファイルには、実際、海底付近 に顕著な植物プランクトン遺骸の濃集層がある一方で、深層水上部では粒子濃度が非常に低く、 沈降粒子自身によって懸濁粒子がスキャベンジされる機構の存在も示唆された。冬季には分解 の更に進んだ粒子が深層水全体に広がっており、深層水中では、植物プランクトンブルームを 介した沈降粒子と懸濁粒子の相互作用(リバウンド&スキャベンジ)が、活発に働いているこ とが明らかとなった。 3.堆積物 (1)深海底堆積物中の多環芳香族炭化水素の分布 (河村公、大河内) Distribution of polynuclear aromatic hydrocarbons in the deep sea sediments : K. Kawamura and N. Ohkouchi 多環芳香族炭化水素(PAHs)は、化石燃料の燃焼といった人間活動および森林火災などの天 然の燃焼過程によって生成され環境中に放出される。これらの汚染物質は発生源の近傍だけで なく、地球全域に大気を経由して輸送され極域に濃集・沈降し、深刻な環境問題を引き起こし ている。われわれは中部太平洋(東経175度)で採取された深海底表層堆積物を分析し、PAHs のグローバルスケールの分布とそれを支配する要因に関して考察した。各PAHsの緯度分布は、 北緯30度から南緯15度までは相対的に低濃度かつほとんど一定であるが、北緯30度以北で顕著 な増加傾向に転じ、最も北のサイト(北緯48度)で最も高い濃度を示すという共通した傾向を 示している。この結果は、PAHsの緯度分布パターンが化合物の物理化学的な因子に依存しない ことを示し、「すす」に吸着あるいは結合した形で、PAHsが大気中を集団で運ばれていること を示唆しているものと解釈した。 (2)過去23,300年間の西部熱帯太平洋における陸上および海洋バイオマーカーの変動(大河 内、河村公) Fluctuations of terrestrial and marine biomarkers in the westerntropical Pacific during the last 23,300 years : N. Ohkouchi and K. Kawamura ― 40 ― 過去23000年間の古環境の変化を復元するために、西部熱帯太平洋のカロリン海盆で採取し た堆積物コアの脂質化合物(脂肪族炭化水素、長鎖アルケノン、脂肪族アルコール、ステロー ル、脂肪酸)について分析を行った。陸上バイオマーカーであるC25-C35 n-アルカン、C24-C28脂 肪族アルコール、C23-C34脂肪酸の沈積速度が氷期と間氷期の境界(19000年前)付近で減少し、 融氷期には低いレベルにとどまったことが認められた。これは、この期間に大陸物質の大気輸 送が低下したことを示唆する。同時期に、主に海洋生物起源と考えられるC17-C20 n-アルカン、 プリスタン、コレステロール、ダイノステロールの沈積速度も減少しており、海洋の生物生産 が顕著に低下したことを示唆する。西部熱帯太平洋における生物生産の低下は、風速の低下に 関係して湧昇からの栄養塩の供給が減少したため、またあるいは湧昇域が変化したためと考え られる。 (3)中部太平洋堆積物中の陸起源バイオマーカーの緯度分布 (大河内、河村公) Latitudinal distributions of terrestrial biomarkers in the sediments from the Central Pacific : N. Ohkouchi and K. Kawamura 東経175度に沿って、北緯48度から南緯15度にわたって23の深海表層堆積物を採取し、C25-C36 n-アルカン、C24-C28脂肪族アルコール、C23-C34脂肪酸を含む脂質化合物について研究した。こ れらの化合物は陸上の高等植物を起源としている。これらの陸上バイオマーカーは主に長距離 大気輸送により中部太平洋上を運ばれるが、緯度に沿った分布は化合物グループごとに異なる。 n-アルカンは最も高緯度の北緯48度で多く、低緯度に向かって徐々に減少する。脂肪族アルコ ールは北緯48度から30度の間で急激に減少し、低緯度では比較的少ない。それと対照的に、脂 肪酸は低緯度で多く、また北半球の中緯度から高緯度にかけても増加する。また、北緯48度か ら北緯19度のn-アルカンの分布はCPI(carbon preference index)が4.9-8.2(平均6.6)とい う特徴を示し、低緯度(北緯15度から南緯15度)のCPI(1.9-4.9:平均2.8)に比べて有意に 高い。陸上バイオマーカーのこのような緯度に沿ったパターンは、高緯度と低緯度では風の種 類が異なることで説明される。すなわち、偏西風によりアジアから北太平洋に運ばれる有機物 分子の分布は、貿易風により中央・南アメリカから熱帯太平洋に運ばれるものとは異なる。 (4)白亜紀の黒色頁岩中のホパノールおよびホパン酸の高い存在度 (大河内、河村公) High abundances of hopanols and hopanoic acids in Cretaceous black shales : N. Ohkouchi and K. Kawamura イタリア中部の白亜紀の地層から得られた、有機物に富んだ黒色頁岩とそれに隣接したチャ ート試料について、アルコールおよびカルボン酸を含む極性脂質化合物の研究を行った。黒色 頁岩はC32-C34ホパノールとC31およびC32ホパン酸の存在度が高いという特徴を示す。これはメタ ン酸化細菌やシアノバクテリアのような原核生物がこれらの極性脂質化合物の主なソースであ り、黒色頁岩中の有機物に寄与していることを示唆する。 窒素同位体の測定では-2‰から0.6 ‰の比較的低い値が得られたが、これは窒素が大気のN2 から窒素固定経路を通じて直接固定さ れたことを示唆する。したがって、黒色頁岩中の有機物の主な起源はシアノバクテリアである と結論された。 (5)中部太平洋におけるアルケノン生産の深度範囲 (大河内、河村公) Depth ranges of alkenone production in the central Pacific Ocean: N. Ohkouchi and ― 41 ― K. Kawamura 東経175度に沿って、北緯48度から南緯15度にわたって表層堆積物を採取し、長鎖(C37-C39) K 37 アルケノンの分析を行った。アルケノン温度を示すC37アルケノンの不飽和度(U ’)は熱帯太 平洋で最も高く(約28.3℃)、北緯48度(約10.1℃)に向かって減少する。アルケノン温度の 緯度方向の傾向は全体として表面混合層で観測される表面海水温の傾向に似ているが、アルケ ノン温度の方が中緯度(北緯35度から19度)で顕著に低い値を示す。ウォーターカラムの水温 と表層堆積物のアルケノン水温の比較に基づいて、アルケノンは中緯度では温度躍層付近で生 産されるのに対し、高緯度(北緯48度から40度)および低緯度(北緯10度から南緯2度)では 表面混合層で生産されると推定された。この結果はEmiliania huxleyiおよびGephyrocapsa oceanicaの中部太平洋の西経155度に沿った深度分布からも支持される。UK37’から推定される アルケノン生産層の緯度方向の分布は、硝酸塩の分布と合致することが見出され、アルケノン 生産層の深度は主に深層水からの栄養塩の供給によって決まっていることを示唆する。堆積物 中のアルケノンの存在度は北緯43度から27度で高く、北緯30度で最高であるが、これは黒潮に おけるハプト藻の高い生産性によって説明できる。 (6)南氷洋の表層堆積物中の有機物の起源に対するC27-C33アルカンおよびC37アルケンの炭素 同位体の意味 (大河内、河村公、) Implications of carbon isotope ratios of C27-C33 alkanes and C37 alkenes for the sources of organic matter in the Southern Ocean surface sediments : N. Okhouchi and K. Kawamura 南氷洋のオーストラリア海域(南緯47.6度から65.5度)で採取した表層堆積物中のC27-C33ア ルカンおよびC37アルケンを分離し、その炭素同位体比(d ックスを起源とするC31 n-アルカンのd 13 13 C)の測定を行った。高等植物のワ C値は緯度による変化をほとんど示さないが(-28.7± 13 0.6‰)、ハプト藻を起源とするC37のd C値は南緯47.6度の-24.6±0.7‰から南緯63.9度の -32.1±1.2‰まで減少した。C31 n-アルカンの比較的重い同位体比は、C3植物に比べて重いC4 13 植物に由来するワックスや針葉樹の樹脂からの寄与を示唆する。全有機態炭素のd C値の緯度 方向のパターンはC37アルケンに似たパターンを示すが、これは堆積物中の有機態炭素が主に海 洋起源であることを示唆している。 (7)オホーツク海堆積物の有機地球化学的研究:過去の海洋環境の復元 (河村公、中塚、 大河内、外国人研究員・ヤン・テルノワ) Organic geochemistry of the Okhotsk Sea sediments : K. Kawamura, T. Nakatsuka, N. Ohkouchi and Y. Ternois オホーツク海で採取された柱状堆積物(約3.2m、2万7千年)中にアルカン、脂肪酸、ケト ンなどの有機物トレーサー(バイオマーカー)を検索し過去の海洋環境を復元する研究を行っ た。その結果、アルケノンの測定から過去の表面海水温(SST)は、現在に比べ氷期(約2万年 前)では約6度C低かったことが明らかにされた。氷期のオホーツク海は現在に比べはるかに 広い地域でしかも長期にわたって海氷が覆っていたものと考えられる。また、その時の生物生 産は、現在よりも数倍高いことが示唆された。さらに、氷期には陸上由来の物質の寄与が大き いこともわかった。一方、融氷期の始まり(約1万5千年前)に陸起源物質の流入は大きく増加 ― 42 ― し、同時に海洋の生物生産も急激に増加することが明らかとなった。おそらく、融氷にともな ってアムール川から陸起源物質のオホーツク海への流入が増加したためと解釈される。オホー ツク海では融氷期に陸から栄養塩が豊富に供給された結果、植物プランクトンなどオホーツク 海での生物生産が大きく増加したと思われる。 (8)有機炭素・窒素、安定同位体解析によるオホーツク海の古生産力の復元 (中塚、河村 公) Reconstruction of paleo-productivity of the Sea of Okhotsk basedon organic carbon, nitrogen and their stable isotopic ratios : T. Nakatsuka and K. Kawamura オホーツク海の過去約12万年間の生物生産力の変化を復元し、その規定要因を理解するため に、オホーツク海中部の東西3カ所で得られた堆積年代が約10~12万年のピストンコア試料の 有機炭素・全窒素・各安定同位体比・炭酸カルシウム等を分析した。過去の生物生産力を反映 すると考えられる有機炭素濃度は、氷期に低く、間氷期に高い極めて規則的な変化を示し、オ ホーツク海の生産力が氷期に減少したことが明らかとなった。氷期における生産力の低下の原 因としては、海氷の拡大が大きな要因であると考えられるが、窒素同位体比の解析から氷期に アムール川の流量の低下による栄養塩供給量の減少があったことも推察された。また、炭酸カ ルシウムとオパール含有量の比較から、約15,000~10,000年前の融氷期には、現在優先してい る珪藻には依らない、生産力の増大イベントがあったことも明らかとなった。同時に測定され た低い炭素同位体比と高い窒素同位体比は、このイベントが、陸起源物質の流入、特に海水準 の上昇に伴って水没した直後の大陸棚からの物質流入によって、生じたものであることが、明 らかとなった。 (9)深海表層堆積物における易分解性有機炭素の現存量の季節変化 (中塚) Seasonal variation in the stock of labile organic carbon in deepsea surfacesediment : T. Nakatsuka 深海の堆積物表層には、バクテリアから大型動物に至る様々な生物が生息しているが、彼ら が得ている栄養は、主に表層水の植物プランクトンが生産した有機物、特に春季ブルーム時の 沈降物に由来している。底生生物に利用できるそれら有機物が海底にどのくらい存在し、どの ように季節変動しているかは、生態学的に極めて重要であるが、これまでは観測の困難さから ほとんど情報がなかった。本研究では、相模湾中央部水深1420mの定点で1996年から約2年間に 亘り、表層堆積物をほぼ毎月採取して、有機炭素濃度がブルーム直後の5、 6月に増大し、翌2 月頃まで、漸減していく姿を初めて捉えた。しかし、有機炭素濃度は、砂粒子の含有量等の変 化によってもランダムに変わり、またその中には生物に利用できない難分解性有機物が含まれ る。本研究では、有機炭素の中でも易分解性の糖やアミノ酸が顕著に高い安定同位体比を持つ ことを用いて、同位体マスバランスモデルから易分解性有機炭素の存在量を精度よく計算し、 2 相模湾深海底では、5~10gC/m の存在量の季節変化があることを明らかにした。 (10)最近2回の退氷期前後におけるアルケノン古水温計を利用した南大洋の水温変動の復元 (河村公、大河内) Alkenone sea surface temperature in the Southern Ocean for the last two deglaciations : K. Kawamura and N. Ohkouchi ― 43 ― 南大洋タスマン海台(南緯48度)から採取したピストンコア試料を用いて、後期更新世の海 洋環境を復元するために有機地球化学的研究を行った.深海堆積物に保存されている有機化合 K 物であるアルケノンの不飽和度(U 37’)を利用して、最近2回の退氷期前後における南大洋の 表層水温変動を復元した.その結果、およそ2万年前の最終氷期最寒期(LGM)の表層水温が、 現在の水温に比べて少なくとも4℃低下していたこと、および、1つ前の氷期である酸素同位 体ステージ6と最終間氷期の間の水温変動がおよそ5.2℃であったことが明らかとなった.ま た、アルケノン古水温の変化とグローバルな氷床量変動の指標となる有孔虫化石の酸素同位体 比の変化を比較すると、最終間氷期(酸素同位体ステージ5e)から亜氷期(ステージ5d)への 移行期(寒冷化期)には、南大洋の表層水温が数千年間先行して寒冷化している可能性が示唆 された.このことは、グローバルな気候変動に対して南大洋における諸変化が先行して起こっ ているという仮説に新たなデータを提供することを意味しており、本研究は氷期-間氷期スケ ールの気候システムの変化およびその地域性を考察する上での重要な古海洋情報を提供してい る. (11)最近2回の退氷期前後における南大洋での陸起源物質の大気輸送量および生物生産量の 変動 (河村公、大河内) Variations of terrestrial input and marine productivity in the Southern Ocean (48°S) during the last two deglaciations : K. Kawamura and N. Ohukouchi 深海堆積物コアに保存されている様々なバイオマーカー(n-アルカン、n-アルコール、ステ ロール)のフラックスを明らかにすることによって、最近2回の退氷期前後における南大洋の 海洋環境変動を復元した.その結果、陸上高等植物起源および海洋生物起源のバイオマーカー のフラックスは、最近2回の氷期では顕著に増加しているにもかかわらず、間氷期(完新世お よび最終間氷期)では低い状態が保たれていた.これらのデータは、氷期の南大洋では、陸源 物質の大気輸送量および海洋表層の生物生産量が同調して増大していたことを示唆している. 氷期の南大洋では、陸源物質供給量が増大することによって海洋表層における栄養塩の枯渇状 態が解消され、植物プランクトンによる大気CO 2の海洋への取り込み(生物ポンプ)能力が強 化されていた可能性が示された. (12)南大洋の表層堆積物における多環芳香族炭化水素の緯度分布 (大河内、河村公) Latitudinal distributions of polycyclic aromatic hydrocarbons inthe Southern Ocean surface sediments : N. Ohkouchi and K. Kawamura 南大洋オーストラリアセクターの緯度トランセクトにおける9地点(47°S-66°S)から採 取された表層堆積物について、多環芳香族炭化水素(PAHs)を定量した.ペリレンを除く3環 ~7環の全PAHs濃度は、中緯度(南緯48度付近)で低く、高緯度(南緯65度)へ向けて増加す る傾向を示した.南緯65度におけるPAHs濃度は中緯度のそれのおよそ10倍に相当する.しかし、 南大洋におけるPAHs濃度は北部北太平洋のPAHsに比べて著しく低い.このことは、PAHsが南北 両半球で非対称に分布していることを示しており、 PAHsの主たる放出源が北半球の中緯度域 に集中していることを反映している.温帯域のバイオマス燃焼が起源であるレテンの濃度は、 南緯60度から65度にかけて急激に増加する.これらの結果は、起源域から大気中へ放出された PAHsが長距離大気輸送を経て、南半球高緯度域へ輸送されていたことを示している. ― 44 ― (13)北大西洋(ノルウェー海盆)の掘削試料(ODP Hole 985A)を用いた中期中新世以降の 緑色粘土および有機物濃集堆積物の有機地球化学的研究 (河村公、大河内) Organic geochemistry of greenish clay and organic rich sedimentssince early Miocene from Hole 985A, Norway Basin : K. Kawamura and N. Ohkouchi 国際深海掘削計画(ODP)の第162次航海において、北大西洋のノルウェー海盆から掘削され た深海堆積物(Hole 985A)の中期中新世(約16Ma)セクションから複数の有機炭素濃集(暗 色)層が回収された.その暗色層の有機炭素量は最大5.6%に及び、全硫黄量は26.1%に達した. 高い濃度の硫黄が存在していることから、これらの暗色層は還元的な底層水のもとで堆積した ことが推測される.そこでさらに詳細な堆積環境を復元するために、暗色層および緑色粘土に 含まれるバイオマーカーの分析を行った.その結果、暗色層には緑色粘土に比べて、ホパン系 炭化水素が著しく濃集していることが明らかとなった.このことは、当時のノルウェー海盆で はメタン酸化バクテリアやシアノバクテリアなどの原核生物が繁殖しており、これらバクテリ アが有機物濃集層の形成に大きく寄与していたと考えられる.したがって、中期中新世の一時 期、北部北大西洋の表層水がバクテリアを主体とした生産量増大イベントに覆われるとともに 底層水が還元的になっていたと考えられる. (14)南大洋表層堆積物における有機物の起源を推定するためのC27-C33アルカンとC37アルケン の炭素同位体比の研究 (大河内、河村公、中塚) Implications of carbon isotope ratios of C27-C33 alkanes and C37 alkenes for the sources of organic matter in the Southern Ocean surface sediments : N. Ohkouchi, K. Kawamura and T. Nakatsuka 南大洋オーストラリアセクターの緯度トランセクト(47.6°S-65.5°S)から採取された表 層堆積物における有機物の起源を推定するために、C27-C33アルカンおよびC37アルケンの炭素同 13 13 位体比(d C)の測定を行った.陸上高等植物のワックスに起源をもつC31アルカンのd Cは、緯 度方向にわずかな変化を示した.一方、植物プランクトンのハプト藻によって生成されるC37ア 13 ルケンのd Cは、南緯48度の-24.6±0.7‰から、南緯64度の-32.1±1.2‰へと高緯度へ行くに 13 したがい軽くなる傾向を示した.C31アルカンの相対的に重いd C値は、C4植物のワックスの寄 13 与、あるいは、C3植物よりも顕著に重いd C値をもつ針葉樹の樹脂の寄与を示唆している.有 13 機炭素のd CはC 37アルケンのそれと同様の緯度分布をもつことから、南大洋表層堆積物中の 有機炭素は主に海洋植物プランクトン起源のものであると推測される. ― 45 ― 河 村 公 隆(KAWAMURA,Kimitaka) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) 河村公隆, 小坂真由美, R.Sempere :「都市エアロゾル, 降水中の炭化水素の組成と季節 変化」, 『地球化学』,29: 1-15(1995)* 2) K.Kawamura,H.Kasukabe,O.Yasui and L.A.Barrie: "Production of Dicarboxylic Acids in the Arctic Atmosphere at Polar Sunrise", Geophys. Res. Lett., 22: 1253-1256 (1995)* 3) 柳瀬彩子, 河村公隆, L.A Barrie:「北極エアロゾルの有機地球化学: 多環芳香族炭化水 素の分布とアークテイクサンライズにおける分解」, Res. Organic Geochemistry, 10: 7-10(1995)* 4) K. Kawamura: "Land-derived Lipid Class Compounds in the Deep-sea Sediments and Marine Aerosols from North Pacific". Biogeochemical Processes of Ocean Flux in the Western Pacific,:31-51(1995)* 5) M.Uematsu, K.Kawamura,T .Ibusuki and T.Kimoto: "Chemical Composition of Marine Aerosols over the Central North Pacific", Biogeochemical Processes of Ocean Flux in the Western Pacific: 3-14(1995)* 6) K.Kawamura, I.Suzuki, Y.Fujii and O.Watanabe : "Historical Trends of Fatty Acids in an ice Core From Site-J, Greenland", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 9: 1-11(1995)* 7) K.Suzuki, K.Kawamura, H.Kasukabe, A.Yanase and L.A.Barrie: "Concentration Changes of MSA and Major Ions in Arctic Aerosols during Polar Sunrise",Proc. NIPR Symp.Polar Meteorol.Glaciol.,9:163-171(1995)* 9) K. Kawamura, S. Steinberg and I. R. Kaplan:“Concentrations of mono-and dicarboxylic acids and aldehydes in southern California wet precipitations: comparison of urban and non-urban samples and compositional changes during scavenging”, Atmos. Environ.,30:1035-1052 (1996)* 10) R. Sempere and K. Kawamura:“ Low molecular weight dicarboxylic acids and related polar compounds in the remote marine rain samples collected from western Pacific”, Atmos. Environ., 30: 1609-1619 (1996)* 11) K. Kawamura, H. Kasukabe and L. A. Barrie:“ Source and reaction pathways of dicarboxylic acids, ketoacids and dicarbonyls in arctic aerosols: one year of observations”,Atmos. Environ.,30:1709-1722 (1996)* 12) K. Kawamura, I. Suzuki, Y. Fujii and O. Watanabe:“ Ice core record of fatty acids over the past 450 years in Greenland”, Geophysical Res. Lett.,23:2665-26 68 (1996)* 13) K. Kawamura, R. Sempere, Y. Imai, M. Hayashi and Y. Fujii:“ Water soluble dicarboxylic acids and related compounds in the Antarctic aerosols”,J. Geophys. Res., 101(D13):18721-18728 (1996)* 14) K. Kawamura, A. Yanase, T. Eguchi, T. Mikami and L. A. Barrie:“ Enhanced atmospheric transport of soil derived organic matter in spring over the high Arctic”,Geophys Res. Lett.,23:3735-3737,(1996)* 15) K. Kawamura, K. Yokoyama, Y. Fujii and O. Watanabe:“ Vertical distirbutions of low molecular weight dicarboxylic acids in the Greenland ice core”,Mem. Natl. Inst. Polar Res.,51(Spec.Isssue) :373-383, (1996)* 16) 今井美江,河村公隆:「東京における雨・雪及びエアロゾル中のジカルボン酸、ケトカル ボン酸、ジカルボニルの分布と季節変化」,『Res.Organic Geochemistry』,11: 61-66 (1 ― 46 ― 17) 18) 19) 20) 21) 22) 23) 24) 25) 996)* 錦織睦美,河村公隆,林政彦,藤井理行:「南極エアロゾル中のモノおよびジカルボン酸と オキソ酸」,『地球化学』, 30: 27-34 (1996)* 大河内直彦,和田英太郎,河村公隆,平朝彦:「アルケノン生産量と窒素同位体比の関係」, 『月刊海洋』,28:493-497 (1996) Ohkouchi, N., Kawamura,K and Taira, A.: "Fluctuations of terrestrial and marine biomarkers in the western tropical Pacific during the last 20,000 years", Paleoceanography, 12: 623-630(1997)* Ohkouchi, N., Kawamura,K., Kawahata,H. and Taira,A.:"Latitudinal distributions of terrestrial biomarkers in the sediments from the Central Pacific", Geochim. Cosmochim. Acta., 61: 1911-1918(1997)* Ikehara,M., Kawamura,K., Ohkouchi,N., Kimoto,K., Murayama,M., Nakamura,T., Oba, T. and Taira,A.:"Alkenone sea surface temperature in the Southern Ocean for the last two deglaciations", Geophys. Res. Lett., 24: 679-682(1997)* Nishikiori, M., Kawamura,K. and Fujii,Y. :"Distributions and historical records of aliphatic carboxylic acids in the H15 ice core from Antarctica", Proc. NIPR Symp. on Polar Meteorology and Glaciology, 11:76-86(1997)* Ohkouchi, N., Kawamura,K. and Taira,A.:"Molecular paleoclimatology: reconstruction of climate variabilities in the late Quaternary", Org. Geochem., 27:173-183(1997)* Ohkouchi, N., Kawamura,K. Wada,E. and Taira,A. :"High abundances of hopanols and hopanoic acids in Cretaceous black shale", Ancient Biomolecules, 1:183-192 (1997)* 大河内直彦、河村公隆:「古環境の復元する指標としてのバイオマーカー」,『地学雑誌』, 107:189-202 (1998)* 26) K. Kawamura and F. Sakaguchi: “Molecular distributions of water soluble dicarboxylic acids in marine aerosols over the Pacific Ocean including tropics”, Journal of Geophysical Research 104: 3501-3509 (1999)* 27) K. Kawamura, K. Yokoyama, Y. Fujii and O. Watanabe: “Implication of azelaic acid in a Greenland ice core for oceanic and atmospheric change in high latitudes”, Geophysical Research Letter, 26: 871-874 (1999)* 28) N. Ohkouchi, K. Kawamura, H. Kawahata and H. Okada: “Depth ranges of alkenone production in the Central Pacific Ocean”, Global Biogeochemical Cycles, 13: 695-704 (1999)* 29) 成川正広,河村公隆,竹内延夫,中嶋映至:「東南アジアで採取された粒径別エアロゾ ル試料中の低分子ジカルボン酸の組成」,『Researches in Organic Geochemistry』,14 :11-18 (1999)* 30) 松永壮,河村公隆,中塚武,大河内直彦:「室内実験による不飽和脂肪酸からの低分子 ジカルボン酸の光化学的生成(予報)」,『Researches in Organic Geochemistry』,14: 19-26 (1999)* 31) M. Narukawa, K. Kawamura, N. Takeuchi and T. Nakajima: “Distribution of dicarboxylic acids and carbon isotopic compositions in aerosols from 1997 Indonesian forest fires”, Geophysical Research Letter, 26: 3101-3104 (1999)* 32) S. Matsunaga, K. Kawamura, Y. Yamamoto, N. Azuma, Y. Fujii and H. Motoyama: “Seasonal changes of low molecular weight dicarboxylic acids in snow samples ― 47 ― from Dome-Fuji, Antarctica”, Polar Meteorology and Glaciology, 13: 53-63 (1999)* 33) O. Watanabe, Y. Fujii, K. Kamiyama, H. Motoyama, T. Furukawa, M. Igarashi, M. Kohno, S. Kanamori, N. Kanamori, Y. Ageta, M. Nakawo, H. Tanaka, K. Satow, H. Shoji, K. Kawamura, S. Motoba and W. Shimada: “Basic analyses of Dome Fuji deep ice core. Part 1: Stable oxygen and hydrogen isotope ratios, major chemical compositions and dust concentration”, Polar Meteorology and Glaciology, 13: 83-89 (1999)* 34) M. Ikehara, K. Kawamura, N. Ohkouchi and A. Taira: “Organic geochemistry of greenish clay and organic-rich sediments since the early Miocene from Hole 985 A, Norway Basin”, Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results, 162: 209-216 (1999)* 35) N. Ohkouchi, K. Kawamura and H. Kawahata: “Distributions of three- to sevenring polynuclear aromatic hydrocarbons on the deep sea floor in the Central Pacific”, Environmental Science & Technology, 33: 3086-3090 (1999)* 36) N. Ohkouchi, K. Kawamura, Y. Kajiwara, E. Wada, M. Okada, T. Kanamatsu, A. Taira: “Sulfur isotope records around Livello Bonarelli (Northern Apennines, Italy) black shale at the Cenomanian-Turonian boundary”, Geology, 27: 535-538 (1999)* (その他の論文) 1) N.Ohkouchi,K.Kawamura,H.Kawahata and A.Taira: "Organic Geochemistry of Deep Sea Sediments: How it Contributes to Paleoceanography",Global Fluxes of Carbon and Its Related Substances in the Coastal Sea-Ocean-Atmosphere System,:533-538 (1995) 2) 河村公隆:「北極大気中の多環芳香族炭化水素:ポーラーサンライズにおける光化学的 分解」,『アサヒビール学術振興財団研究紀要』,第12巻(平成8年度),135-142 (1999) 2 総説、解説、評論等 1) 河村公隆(解説):「海洋エアロゾル中の炭素濃度および水溶性有機物の分布」,『月刊 海洋』,号外8:108-113(1995) 2) 河村公隆(解説) :「陸起源有機物の海洋への大気輸送とその歴史的変遷:深海堆積物 からの復元」,『月刊海洋』, 27:533-539 (1995) 3) 河村公隆:「極域エアロゾルの有機地球化学:有機物の長距離大気輸送と光化学的変質」 (総説),『地球環境』,2(1): 57-67(1997) 4) 池原実,大河内直彦,河村公隆:「植物プランクトンと海水温度計」(解説),『月刊海洋/ 号外』12:162-165(1997) 5) Kawamura, K., Legrand, M. and Cachier, H.: "Organic matter in polar aerosol, snow and ice"(解説), IGACtivities News Letter, Issue No. 14, September 1998, 12-15 (1998) 6) Kawamura, K.: "Composition and photochemical transformation of organic aerosol from the Arctic"(総説), Global Environ. Res., 2: 57-67 (1998) 7) 河村公隆:「対流圏におけるハロゲンの化学と循環の目指すもの」(解説)『ニュースレ ター特定領域研究「対流圏化学グローバルダイナミクス」』, No. 1: 22-26 (1998) ― 48 ― 8) K. Kawamura: “Organic composition of the aerosols in the arctic troposphere2, In (ed. M. Fukuda): Special Reports on the Regional Studies of North-East Eurasia and North Pacific in Hokkaido University: 39-47 (1999). 9) 河村公隆:「対流圏におけるハロゲンの化学と循環:進捗状況と平成11年度の課題」 (解説)『ニュースレター特定領域研究「対流圏化学グローバルダイナミクス」』,No.3 :47-52(1999) 4 学術講演(招請講演) (1)学会特別講演 1) K.Kawamura, A.Yanase,L.A.Barrie: "Long Chain Dicarboxylic Acids in the Arctic Aerosols; Atmospheric Transport of Soil Dusts over the Arctic", American Geophysical Union Fall Meeting, San Francisco(1995) 2) Kawamura, K.: "Water soluble organic aerosols over the Pacific Ocean and potential impact on climate" , International Symposium on Atmospheric Chemistry and Future Global Environment, Nagoya(1997) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) K.Kawamura,K,Yokoyama,Y.Fujii and O.Watanabe: "Vertical Profile of Low Molecuar Weight Dicarboxylic Acids in the Greenland Ice Core:A Response to Climate Cange over the Last 450 Years?",Nato Advanced Research Workshop: Processes of Chemical Exchange between the Atmosphere and Polar Snow, IL Ciocco,Italy(1995) 2) K.Kawamura,K.Yokoyama,Y.Fujii and O.Watanabe:"Vertical Distribution of Dicarboxylic Acids in the Greenland Ice Core",International Symposium on Environmental Research in the Arctic,Tokyo(1995)" 3) K.Kawamura,H.Kasukabe and L.A.Barrie:"Concentration Changes of Dicarboxylic Acids, Water Soluble Organic Carbon and Total Organic Carbon in Arctic Aerosols :Polar Sunrise 1991, WMD-IGAC Conference on the Measurement and Assesment of Atomospheric Composition Cange, Beijing, China(1995) 4) N.Ohkouchi,K.Kawamura and A.Taira:"Distribution of Lipid-class Compounds in the Surface and Down-core Sediments from the Pacific Ocean," V.M.Goldschmidt Conference, Penn State Univ.,USA(1995) 5) Ohkouchi,K.Kawamura,H.Kawabata and A.Taira:Molecular Paleoclimatology:A New Tool for Reconstruction of Paleo-terrestrial lnput to the Ocean and Paleoproductivity",5th International Conference on Paleoceano-graphy, Halifax, Canada (1995) 6) 河村公隆:「大気・氷床コア・深海堆積物中の有機物の解析と地球環境の変化」,L.V.I. (Large Volume Ingection)セミナー特別講演,東京(1997) (3)シンポジウムのオーガナイザー 1) Kawamura,K. and B.Huebert.:ACE-Asia (Asian Pacific Regional aerosol characterization Experiment) Science Planning Meeting, Nagoya(1997) ― 49 ― 中 塚 武(NAKATSUKA,Takeshi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Nakatsuka,T., N.Harada, E.Matsumoto, N.Handa, T.Oba, M.Ikehara, H.Matsuoka, and K.Kimoto: "Glacial-interglacial migration of an upwelling field in the western 15 14 equatorial Pacific recorded by sediment N/ N", Geophysical Research Letter, 22 : 2525-2528 (1995)* 15 2 )Nakatsuka,T., N.Handa, and S.Imaizumi: "Spatial and temporal variation of δ N in sinking particles in deep waters: its implication for the origin and transport of particulate organic matter", Biogeochemical Processes and Ocean Flux in the Western Pacific (edited by H.Sakai and Y.Nozaki), TERRAPUB, Tokyo, pp.355-374 (1995)* 3) Masuzawa,T., T.Nakatsuka, and N.Handa: "Geochemistry of pore waters from a bathyal Calyptogena community off Hatsushima Island, Sagami Bay, Japan", Biogeochemical Processes and Ocean Flux in the Western Pacific (edited by H.Sakai and Y.Nozaki), TERRAPUB, Tokyo, pp.407-421. (1995)* 4) Nakatsuka,T., K.Watanabe, N.Handa, E.Matsumoto, and E.Wada: "Glacial to interglacial surface nutrient variations of Bering deep basins recorded by 13 15 δ C and δ N of sedimentary organic matter", Paleoceanography, 10: 10471061 (1995)* 14 5) Masuzawa,T., H.Kitagawa, T.Nakatsuka, N.Handa, and T.Nakamura: "AMS C measurements of dissolved inorganic carbon in pore waters from a deep-sea "cold seep" giant clam community off Hatsushima Island, Sagami Bay, Japan", Radiocarbon, 37: 617-627 (1995)* 6) U.Tsunogai, J.Ishibashi, H.Wakita, T.Gamo, T.Masuzawa, T.Nakatsuka, Y.Nojiri and T.Nakamura : "Fresh water seepage and pore water recycling on the seafloor: Sagami Trough subduction zone, Japan", Earth and Planetary Science Letter,138: 157-168(1996)* 7) Nakatsuka, T. and Handa, N.: "Reconstruction of seasonal variation in nutrient 15 budget of surface mixed layer using δ N of sinking particle colle cted by time -series sediment trap system", Journal of Oceanography, 53 :105-116 (1997) 8) Nakatsuka, T., Handa, N., Harada, N., Sugimoto, T. and Imaizumi, S.:"Origin and decomposition of sinking particulate organic matter in the deep water column 15 13 14 inferred from the vertical distributions ofδ N, δ C and δ C". Deep-Sea Research I, 44 : 1957-1979 (1997)* 9) Sawada, K., Handa, N. and Nakatsuka, T.: “Production and transport of longchain alkenones and alkyl alkenoates in a sea water column in the northwestern Pacific off central Japan”, Marine Chemistry, 59: 219-234 (1998)* 2 総説、解説、評論など 14 12 1) 中塚 武:「海洋深層における粒子状有機炭素の起源と輸送?炭素同位体組成( C/ C, 13 12 C/ C)からの評価?」,『月刊海洋』,号外8:121-126 (1995) 2) 中塚 武・原田尚美・松本英二:「堆積物窒素同位体比による西赤道太平洋における 湧昇・海流系変動の復元」,『月刊海洋』,27:483-487 (1995) 3) 「有機物の炭素・窒素安定同位体比-その外洋表層環境の復元の論理」,『 月刊 海洋 号外』,11 :148-154(1996) ― 50 ― 4) 中塚 武 :「海洋堆積物の窒素同位体比に関する研究 -窒素同位体比による海洋表層環 境の復元-」(総説),『海の研究』, 6:383-397(1997) 5) 中塚 武:「堆積有機物の炭素・窒素安定同位体比による古海洋解析」(総説), 『地学 雑誌』, 107:54-68 (1998) 4.学術講演(招請講演) 日本海洋学会岡田賞受賞記念講演 中塚 武 :「海洋堆積物の窒素同位体比に関する研究 -窒素同位体比による海洋表層環境の 復元-」,日本海洋学会1997年度春季大会,つくば(1997) ― 51 ― 大河内 直 彦(OHKOUCHI,Naohiko) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) N.Ohkouchi, H.Kawahata, M.Okada, M.Murayama, T.Nakamura and A.Taira: "Benthic Foraminifera Cadmium Record from the Western Equatorial Pacific", Marine Geology, 127: 167-180(1995) * 2) Ohkouchi, N., Kawamura, K., Kawahata, H. and Taira, A.:"Latitudinal distrubutions of terrestrial biomarkers in the Central Pacific", Geochimica et Cosmochimica Acta, 61: 1911-1918(1997)* 3) Ohkouchi, N., Kawamura, K. and Taira, A. :"Fluctuations of marine and terrestrial biomarkers in the western tropical Pacific during the last 23,300 years", Paleoceanography, 12: 623-630(1997)* 13 4) Ohkouchi, N. and Wada, E.:"Secular variations of sedimentary organic δ C during the last 35 Ma in the tropical Atlantic, Site 925", Proceedings of Ocean Drilling Program Scientific Results, 154: 501-505(1997)* 5) Ohkouchi, N., Kawamura, K. and Taira, A.:"Molecular paleoclimatology: Reconstruction of climate change in the late Quaternary", Organic Geochemistry, 27: 173-183(1997)* 6) Ohkouchi, N., Kawamura,K. and Taira, A.:"High abundances of hopanols and hopanoic acids in Cretaceous black shales", Ancient Biomolecules, 1:183-192 (1997)* 7) Kajiwara, Y., Kaiho, K. and Ohkouchi, N.:"An invitation to the sulfur isotope study of marine sediments: implications and constraints for the exogenic sulfur cycle", Ann. Rep. Inst.Geosci. Univ. Tsukuba, 23: 69-74(1997)* 8) Ikehara, M., Kawamura, K., Ohkouchi, N., Kimoto, K., Oba, T. and Taira,A.:" Alkenone sea surface temperature in the Southern Ocean for the last two deglaciations", Geophysical Research Letters, 24: 679-682(1997)* 9) N. Ohkouchi, K. Kawamura, H. Kawahata and H. Okada: “Depth ranges of alkenone production in the Central Pacific Ocean”, Global Biogeochemical Cycles, 13: 695-704 (1999)* 10) 松永壮,河村公隆,中塚武,大河内直彦:「室内実験による不飽和脂肪酸からの低分子 ジカルボン酸の光化学的生成(予報)」,『Researches in Organic Geochemistry』,14: 19-26 (1999)* 11) M. Ikehara, K. Kawamura, N. Ohkouchi and A. Taira: “Organic geochemistry of greenish clay and organic-rich sediments since the early Miocene from Hole 985 A, Norway Basin”, Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results, 162: 209-216 (1999)* 12) N. Ohkouchi, K. Kawamura and H. Kawahata: “Distributions of three- to sevenring polynuclear aromatic hydrocarbons on the deep sea floor in the Central Pacific”, Environmental Science & Technology, 33: 3086-3090 (1999)* 13) N. Ohkouchi, K. Kawamura, Y. Kajiwara, E. Wada, M. Okada, T. Kanamatsu, A. Taira: “Sulfur isotope records around Livello Bonarelli (Northern Apennines, Italy) black shale at the Cenomanian-Turonian boundary”, Geology, 27: 535-538 (1999)* ― 52 ― 2 総説、解説、評論等 1) 大河内直彦, 阿波根直一, 池原実, 平朝彦(解説):「南極海の堆積物の研究とその問題 点」,『月刊海洋』,27: 374-377 (1995) 2) 高橋孝三, 大場忠道, 山崎英樹, 大河内直彦(解説):「レディオラリア化石による過去 8万年間の西赤道太平洋の海洋環境変遷」,『月刊海洋』,27:466-473(1995) 3) 和田英太郎,大河内直彦:「第5章 生態システム」(総説),『岩波講座 地球惑星科学 第2巻 地球システム科学』, 145-184,岩波書店,東京,1996) 4) 大河内直彦,和田英太郎,河村公隆,平朝彦:「アルケノン生産量と窒素同位体 比の関係」 (解説),『月刊海洋』、28:493-496(1996) 5) 大河内直彦,平朝彦:「深海底堆積物に保存される古環境情報」(解説),『月刊海洋』,11 :143-147(1996) 6) 池原実,大河内直彦,河村公隆:「植物プランクトンが作る水温計」(解説),『月刊海洋/ 号外』,12: 162-165 (1997) ― 53 ― 環境数理 教授 藤吉康志、助手 川島正行 1.地球温暖化に果たす雲の役割に関する研究 (藤吉、川島) Role of clouds on the global warming: Y. Fujiyoshi and M. Kawashima (1)上層氷雲の微細構造と形成メカニズム 地球温暖化に果たす雲の役割は極めて大きい。なかでも、上層氷雲は、厚さが薄いにもかか わらず広域を覆うこと、出現高度によって温暖化にも寒冷化にも作用することなどから、近年、 研究が盛んに行われている。しかし、上層氷雲を従来の気象レーダーで探知することは不可能 であるため、ミリ波雲レーダーと呼ばれる特殊なレーダーが開発され研究に使用されている。 ドイツのGKSS研究所との共同研究で行った、ミリ波雲レーダーを用いた上層氷雲の観測デー タを解析した結果、波長数kmの重力波が対流不安定層を持ち上げることによって、水平スケ ールが数100mの対流が発生し、それに加えて雲頂部でのシアー不安定によって数10mの降水 生成セル内で活発に氷晶が形成されるという、マルチスケールの構造が明らかとなった。この 研究は、ケーススタディであったので、より統計的に上層氷雲の成因と構造を調査するために、 京都大学宙空電波科学研究センター(旧、超高層電波研究センター)との共同研究で、巻雲出 現時の圏界面付近の風(水平風、鉛直風)の特性について、約13年間のMUレーダーデータ の解析を行っている(地球環境科学研究科、西川寛子)。同時に、国立環境研との共同研究に よって、レーザーレーダーを用いた巻雲の観測も開始した(地球環境科学研究科、青木一真)。 また、衛星にミリ波レーダーを搭載するべく、地球科学技術推進機構(ESTO)の地球科学 技術フォーラムのワーキンググループで検討を進めている一方、地球フロンティアの雲・降水 グループと共に、巻雲の数値モデル の開発も行っている。 (2)雲とエアロゾル エアロゾルは、雲を形成することによる地球温暖化への効果(間接効果)と、それ自身が放 射収支に及ぼす効果(直接効果)の両方を持っている。何れも、インパクトが大きい割には、 定量的評価がいまだになされていない。 そこで、1996年からスカイラジオメーターという装置を用いて、測定点が少ない比較的高緯 度地域における上空のエアロゾルの濃度と粒径分布の連続観測を行い、季節変化、黄砂による 変動、雲による短時間変動、大気ガス成分の変動との対応を調べている(地球環境科学研究科、 青木一真)。さらに、エアロゾルの間接効果を実験的、理論的に検証するため、釜石市の釜石 鉱山所有の鉛直立坑を用いた人工雲実験を他大学・国立環境研と共同で行う一方、地球フロン ティアの雲・降水グループと共に、雲粒の成長を厳密に計算するモデルの開発も行っている。 2.様々な雲システムの観測および数値モデリング (藤吉、川島) Observation and numerical modeling of various types of cloud systems: and M. Kawashima Y. Fujiyoshi (1)熱帯から北極域にかけての雲・降水観測 海面水温が高い西部熱帯太平洋域では、活発な積雲活動を通して海洋から大気へ大量の熱と 水が供給されている。従って、この領域における熱・水輸送の主要な担い手である積雲活動に ついて理解することは、全球規模の気候変動や大気の循環を理解する上で重要である。我々は TOGA-COARE(Tropical Ocean and Global Atmosphere-Coupled Ocean Atmosphere Response Experiment)の一環として、パプアニューギニアのマヌス島で、2カ月以上にわたって2台のド ップラーレーダーによる様々な雲システムの観測を行った。この観測では、30日から60日周期 の季節内振動1周期分に対応する降水系の変化が捉えられており、デュアルドップラー解析と ― 54 ― 熱力学的リトリーバル法を用いて、降水系の構造と降水系内部の加熱分布を求めた(地球環境 科学研究科、牛山朋来)。 中緯度帯で最も重要な気象現象であるアジアモンスーンは、我が国を含むアジア地域ばかり ではなく、全球規模の水・エネルギー循環に大きな役割を果たしているが、未だに、梅雨前線 そのもの予測、梅雨前線内に発生する降雨システムの予測が困難である。特に、梅雨前線の生 成と維持には、中国大陸の陸面と大気との相互作用が重要であると言われてきたが、その実態 は明らかではない。そこで、我々は、GAME/HUBEX (GEWEX Asia Monsoon Experiment/ Huiahe River Basin Experiment)に参加し、梅雨前線内に発生するメソ降水システムの観測を行った。 その結果、梅雨前線にも寒冷前線タイプと温暖前線タイプがあること、中層に発生するメソ渦 が降水の強化に重要であることなどを明らかにした(地球環境科学研究科、栗原佳代子、田中 克佳)。さらに、この観測に参加した日本・中国・韓国の研究者を集めて、国際ワークショッ プを本研究所で行った。 熱帯や温帯での降水システムとは全く異るが、極域に発生する下層雲は、極域の放射収支に 大きな影響をもたらしている。特に北極層雲は北極海の氷を溶かしている可能性が指摘されて 以来、世界の気象・海洋研究者の注目を浴びている。そこで我々は、海洋科学技術センターと の共同研究で、海洋観測船「みらい」の北極航海に参加し、主にドップラーレーダーとゾンデ 観測、そしてこれらのデータを基にした境界層モデルによって、北極層雲の生成・維持・降水 機構の解明に取り組んでいる(地球環境科学研究科、尾関竜彦)。 また、1999年度の冬には、COEの一環としてロシアと共同でオホーツク海において初めて本 格的な航空機観測を行い、 海氷域における顕熱・潜熱フラックス、 短波・長波放射、海氷密 接度と海氷面温度、雲・降水粒子などのデータを広範囲にわたって取得することができた。こ れらのデータは季節海氷域における気団変質過程についての理解を深める上で非常に貴重なデ ータであり、現在解析中である(地球環境科学研究科、猪上 淳)。更に、2000年度の冬には、 気象研究所や他研究機関と共同で、日本海沿岸での大規模な降雪観測に参加する予定である。 地上では、本研究所のドップラーレーダーを用いた観測を行い、日本海上では、ロシア航空機 を用いて、ウラジオストック-新潟間の気団変質過程、雪雲の発生過程の観測を行う。 (2)激しい気象擾乱の観測と予測 ダウンバースト、突風、竜巻、落雷など、水平スケールこそ小さいが、極めて激しい気象擾 乱は、航空機の離発着に甚大な被害を及ぼすことから、気象庁では飛行場に航空気象ドップラ ーレーダーを設置してこのような現象の監視を行っている。ただ、このレーダーは1台である ため、時には検出に失敗することがあり、また、強さを弱めに推定する可能性が指摘されてい る。そこで、本研究所のドップラーレーダーを大阪平野に持ち込み、関西空港の航空気象ドッ プラーレーダーとの同時観測を、気象庁との共同研究として行っている(地球環境科学研究科、 新井健一郎)。また、この地域には度々地形性の豪雨が発生することから、大阪教育大学と共 同して、雨量計や気圧計などを独自に設置した稠密な観測網を展開している。この場所は熱帯 降雨観測衛星(TRMM)の軌道の北限に近く、これらのデータは、衛星搭載レーダーTRMMの地上 検証も兼ねている。加えて大阪大学の3次元雷放電路可視化装置と組み合わせることによって、 雷の発雷予測も行っている。さらに、TRMM地上検証で参加した、沖縄県宮古島での観測期間中、 寒冷前線上に発生した竜巻をレ ーダーで捉えることに成功し、その成因を解析中である(地球環境科学研究科、五十嵐崇士)。 梅雨期には九州西岸域を中心にバンド状の降水系が出現する。これらの降水帯は長時間同じ 場所に停滞し、しばしば土砂崩れや洪水などの豪雨災害をもたらす。我々は長崎半島に頻繁に 出現する、通称諌早バンドと呼ばれる降雨帯の形成メカニズムをドップラーレーダーデータの 解析により調べた。その結果、降水の強化は単なる地形による収束の効果だけでなく、バンド の走向とほぼ直交する方向から侵入する背の低い降水雲とバンドとの併合によって起こってい たことを明らかにした(地球環境科学研究科、間辺一雄)。また、激しい降雪をもたらす擾乱 として、石狩湾上に出現した強い降雪を伴う直径10~15kmの小規模渦に着目し、その構造およ び発生・発達過程についてドップラーレーダーデータの解析を行った。その結果、小スケール ― 55 ― の渦が併合することで渦が発達していたこと、最盛期の渦の中心部は下降流が卓越していたこ となどが示された(地球環境科学研究科、椿 哲弥)。 このような短時間に急激に発生する現象は、これまでのようにオフラインで風を求めるやり 方では的確に予報をすることができない。そこで、地球観測フロンティアと共同で、本研究所 のドップラーレーダーを、我が国では初めてのバイスタティックドップラーレーダーへと改造 した。この観測方式では、リアルタイムで水平風が計算できるため、短時間の予測には最適な データセットをモデル側に提供する。 (3)雲・降水システムのモデリング メソスケール降水システムは、雲微物理過程、力学・熱力学過程などの様々な要素が関与し た複雑な現象である。このような複雑な現象の本質を理解する上で、数値実験は非常に有効な 手段である。我々は個々の雲を解像できる非静力学モデルを用いて、様々な形態の降水系を対 象とした数値実験を行っている。 積乱雲が組織化されて生じたメソ対流系はしばしば数時間周期の脈動を示すことが古くから 報告されている。そこで、スコールライン型の降水系を対象とし、2次元の非静力学雲モデル による数値実験の結果から、そのメカニズムについて調べた。その結果、周期的変動は組織化 された雲による強い加熱によって励起された内部重力波と雲との相互作用として説明できるこ と、その周期は加熱域の鉛直軸からの傾きに比例して長くなることを明らかにした。 山岳などの地形はしばしば雲・降水システムの発生・発達のトリガーとなる。また、地形効 果によって降水系が停滞することで、集中豪雨などが起る場合も多い。噴火湾では冬期季節風 卓越時に規模の大きな持続性のある筋雲が発達する。そこで噴火湾周辺の地形によって変形さ れた風速場が、湾内の筋雲と大気混合層の発達、さらに湾内の循環流に及ぼす影響を、3次元 非静力学大気モデルと順圧海洋モデルを用いて調べた。これにより筋雲の発達には湾周辺の地 形による一般風の収束が不可欠であること、地形効果により作られるローカルな風速場が循環 流の決定に極めて重要であることを示した(地球環境科学研究科、猪上 淳)。 他に、GCSS (GEWEX Cloud System Study)の一環として行なわれた雲解像モデルの相互比較 実験に参加した。これは大循環モデルなどでは陽に表現できない積雲対流などのプロセスを雲 解像モデルの結果に基づいて理解し、そのプロセスのパラメタリゼーションの改良を目指すも のである。実験ではTOGA-COARE期間中に観測された熱帯性のスコールラインを対象とし、 再 現される降水系にモデル領域の広さ、境界条件、雲微物理過程などがどのような影響を与える かについて議論を行った。 ― 56 ― 藤 吉 康 志(FUJIYOSHI,Yasushi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) 藤吉康志、武田喬男、藤田岳人、小尻利治、池田繁樹、寶 馨、:複雑山岳地形が風下 の降雪分布に及ぼす効果.濃尾平野を例として. 天気、43、391-408(1996).* 2) Fujiyoshi,Y., Y.Kodama, K.Tsuboki, K.Nishimura, and N.Ono, : Structures of c cold air during the development of a broad band cloud and a meso-β-scale vortex: Simultaneous two-point radiosonde observations. J.Meteor.Soc.Japan,74, 281-297(1996).* 3) Fujiyoshi,Y. and K.Muramoto, : The effect of breakup of melting snowflakes on the resulting size distribution of raindrops. J.Meteor.Soc.Japan,74, 343-353(1996).* 4) 荒生公雄・中根重勝・岩崎博之・藤吉康志・武田喬男:雲仙岳に大規模な土石流を発生 させた豪雨の特徴、自然災害科学、16号、27-40(1997)* 5) Geng,B., Y.Fujiyoshi, and T.Takeda, : Evolution of a multicell thunderstorm in association with midlevel rear inflow enhanced by a midlevel vortex in an adjacent thunderstorm. J.Meteor.Soc.Japan,75,619-637(1997).* 6) Fujiyoshi,Y., N.Yoshimoto, and T.Takeda,: A dual-Doppler radar study of longitudinal-mode snowbands. Part I: A three dimensional kinematic structure of meso-γ-scale convective cloud systems comprising a longitudinal-mode snowband. Mon.Wea.Rev.,126, 72-91(1998).* 7) Yamagata,S, S.Baba, N.Murao, S.Ohta, T.Fukuyama, M.Utiyama, T.Yamada, Y.Fujiyoshi, T.Harimaya, M.Inage,: Real scale experiment of sulfur dioxide dissolution into cloud droplets generated in artificial cloud experimental system (ACE), J.Global Environmental Engineering, 4, 53-63(1998).* 8) Fujiyoshi,Y., M. Quante, O. Dann, and E. Raschke,: Properties of deep stratiform ice cloud revealed by 95 GHz GKSS cloud radar - A case study. Contr. Atmos. Physics,72(1),113-125(1999).* 9) Kanada, S., B. Geng, N. Yoshimoto, Y. Fujiyoshi, and T. Takeda,: Doppler radar observation on the orographic modification of a precipitating convective cloud in its landing. J. Meteor. Soc. Japan, 77(1),135-154(1999).* (その他の論文) 1) 荒生公雄・中根重勝・藤吉康志・武田喬男:長崎県高来町周辺に豪雨をもたらした1995 年7月11日の雷雲、長崎大学教育学部自然科学研究報告、56号、13-24(1997) . 2) 荒生公雄・太田綾子・木下美紀・武田喬男・藤吉康志:雲仙岳周辺に火山性土石流を発 生させた1995年の豪雨、長崎大学教育学部自然科学研究報告、57号、13-26(1997) . 3) 播磨屋敏生、佐々木聰、山田 正、藤吉康志、稲毛正昭、:立坑を用いた雲物理実験設備 の構成と雲物理特性, 北海道大学地球物理学研究報告、61、23ー34(1998). 4) 荒生公雄、藤吉康志、武田喬男、:長崎半島付近で発生した1996年6月の持続型ライン状 降雨, 長崎大学環境科学部総合環境研究、1(1), 149-166(1998). 5) 藤吉康志,: 乾燥貫入とそれが温帯低気圧の前線、雲、降水の構造に及ぼす効果,天気, 46(2), 97-103(1999). 6) Fujiyoshi, Y., K. Kurihara, T. Takeda and H. Uyeda : Comparison of dynamic structure of cloud systems observed on 28-30 June and 1-3 July (GAME/HUBEX), Proceedings of 3rd International Scientific Conference of the Global Energy and Water Cycle, 440-441. 16-19 June, 1999, Beijing, China(1999). ― 57 ― 2 総説、解説、評論等 1) 藤吉康志:「メソ降水観測-メソ降水雲系の研究発展と航空機」(解説),『天気』,44(10) :694-699 (1997) 4 学術講演(招請講演) (1)学会特別講演 1) Fujiyoshi,Y.:”Effect of an adjacent convective cloud on the behavior of the midlevel rear inflow and the explosive development of a cloud in a meso-γscale convective system”,日本気象学会春季大会シンポジウム,つくば (1997) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1)「メソ降水雲系の研究発展と航空機」,日本気象学会秋季大会シンポジウム,名古屋(1996) 2) Fujiyoshi,Y.:”The role of midlevel vortices in the development of various types of mesoscale convective systems”,International Seminor on Mesoscale Meteorology and Radar Meteorology,Kyungpook National Univeristy ,Korea(1997) ― 58 ― 川 島 正 行(KAWASHIMA,Masayuki) 1 学術論文 (その他の論文) 1) Inoue, J., L.Levkov, M.Kawashima and Y.Fujiyoshi: 3-D Model "Simulation of orographic clouds and snow fall over Funka bay: Part Ι: Formation of cloud street by topography and air mass transformation", GKSS Research Center Report, 99/E/13, 22pp (1999). ― 59 ― 研究課題と成果・研究業績 (1995~1999) (寒冷陸域科学部門) 雪氷変動 教授 本堂武夫、助教授 成田英器、助手 堀彰 1.氷床コアの物性と古気候・古環境の復元 Physical properties of ice cores and paleoclimate/paleoenvironmnt reconstructions : T.Hondoh, H.Narita and A.Hori 氷床コアから信頼度の高い古気候・古環境データを抽出するためには、そこに記録されたデ ータがどのように形成され、どのような変性を受けたか、という点を明らかにしなければなら ない。本研究では、種々の物理過程を詳細に調べることによって、そのメカニズムを解明する と共に新たな解析手法を確立することを目指して研究を進めている。個別課題と最近の成果概 要は以下の通り: (1)南極ドームふじコアの層位解析と年雪堆積量の新たな推定法 (成田、本堂) New methods to deduce accumulation rate from stratigraphical analysis of Dome Fuji core, Antarctica : H. Narita and T.Hondoh 氷床コアから過去の年雪堆積量を見積もることは古気候・古環境変動を解析する上で重要で ある。特に、堆積量が少ない南極内陸部から得られる氷コアでは、酸素同位体組成比や化学成 分の季節変動情報を得ることは困難であるために他の何らかの情報から年雪堆積量を探らなけ ればならない。本研究では、まずドームふじコアにおいて氷床表面から深さ180 mまでの層位 観測を行い、その一層毎の厚さを求めた。これらの平均値は、火山シグナル、トリチュム等か ら推定される年雪堆積量の平均値とよく一致しており、層厚データは堆積量の変動を表す有効 な指標と考えられる。深部では、層位構造そのものを見ることはできないが、気泡の数密度が、 表面の雪質(層位)を反映して変動し、表層部の層厚に相当するデータとなることが明らかに なった。さらに、気泡が消滅してクラスレート・ハイドレートに変化する深部においても、こ の層厚がクラスレート・ハイドレートの数密度の変化として残っていることを見出した(地球 環境科学研究科平成11年度修士論文 平松賢泰)。これらの新たな手法によって、全層にわた る年堆積量の変化を知ることと、過去35万年にわたる気温変化に伴う降雪量変化の南北両極比 較研究が可能となる。 (2)X線によるドームふじ浅層コアの密度プロファイル (堀、本堂、成田) Detailed density profile of the dome Fuji shallow ice core by x-ray transmission method : A. Hori, T.Hondoh and H. Narita フィルンにおける圧密過程を明らかにするために、ドームふじ浅層コアの密度プロファイル を、X線透過法により1mm間隔の高分解能で測定した。その結果、密度の変動に起因する明瞭 な層構造が観測された。離散フーリエ変換による解析から、この変動は掘削地点における季節 変動を示していると考えられる(地球環境科学研究科平成8年度修士論文 田行一成)。また、 -3 圧密にともなって、密度が約0.81 Mg・m を越える薄い層が現れはじめ、徐々にクローズ・オフ に至る過程が明らかになった。この結果は、stratigraphyの解釈および大気の補足過程を知る 上で重要な意味をもっている。 (3)極地氷床におけるクラスレート・ハイドレートの生成過程 (本堂、成田、学振特別 研究員 深沢(池田)倫子) Formation processes of clathrate hydrates in polar ice sheets : T.Hondoh, H.Narita and T.Ikeda-Fukazawa 氷床深部では、高い圧力のために、気泡が消えてクラスレート・ハイドレートに変わる。ド ームFujiコア中の気泡とクラスレート・ハイドレートの数密度を測定し、この遷移が深さ55 0mから1100mの間で起こることを明らかにした(地球環境科学研究科平9年度修士論文 藤井道子)。氷がこの遷移領域を通過するのに数万年の時間を要するが、生成実験から、気 ― 61 ― 泡表面にハイドレートが一旦核生成すると、100年の時間オーダーでハイドレートへの遷移 が完了すると推定されている。したがって、この長い遷移領域は、ハイドレートの核生成が極 めて起こり難いことに原因がある。この遷移過程全体を記述するモデルをA.N.Slamatin(ロシ ア・カザン州立大学)、V.Ya.Lipenkov(ロシア北極南極研究所)と共同で開発した。このモ デルは、圧縮されて小さくなった気泡から順にハイドレートの核生成が生ずることおよび核生 成後の成長が水分子と気体分子の固相内分子拡散によって生ずることを仮定したモデルであ る。結果として、気泡の収縮変形速度がハイドレートの成長を律速することが明らかになり、 遷移過程の定量的な記述が可能になった。さらに、実際のコア氷に含まれるハイドレート結晶 の様々な形態や空間的に不均一な分布を説明するために、詳細な測定を継続している。 (4)極地氷床における大気の分別過程 (学振特別研究員 深沢(池田)倫子、本堂) Fractionation processes of air molecules in polar ice sheets : T.Ikeda-Fukazawa and T.Hondoh 気泡として氷に取りこまれた大気は、深部ではクラスレート・ハイドレートのゲスト分子と して存在する。これまでの研究で、ハイドレート中の気体組成が元の大気組成から大幅にずれ ていることを明らかにしてきた。さらに、南極ボストーク・コアおよびドームふじコアをレー ザーラマン散乱法で詳細に調べた結果、気泡からクラスレート・ハイドレートに遷移する数万 年の過程で、気泡に窒素分子が濃縮され、クラスレート・ハイドレートに酸素分子が濃縮され る、という系統的な変化を明らかにした。この過程を記述する気体拡散モデルもほぼ完成し、 上記モデルと結合して、氷床における大気の挙動全体を分子レベルで記述することができるよ うになった。このモデルを使うと、グリーンランドでは南極ほど顕著な気体分別が生じないこ と、および南極でもドームふじとボストークでは分別速度がわずかに違うことが示され、実測 を再現することができる(工学研究科平成11年度修士論文 福村拓)。 (5)氷床コアの結晶組織と力学的特性 (成田、本堂) Crystal textures and mechanical properties of ice cores : H. Narita and T. Hondoh 氷床コアの結晶組織は、氷床流動に関する基本データの1つであるが、最近の研究で気候変 動との関係が明らかになってきた。カナダ・バフィン島ペニー氷冠はローレンタド氷床の東端 の一部が残存したもので、氷床底部に最終氷期の氷が存在していることが分かっている。この アイスコア研究はカナダとの共同研究として行っており、カナダ側が酸素同位体組成比、化学 分析など化学測定と解析を行い、日本側が結晶粒径、結晶C軸方位分布、気泡数密度、融解が 関与した氷層など物理構造測定と解析を行っている。その結果、結晶粒径の深度分布が南極や グリーンランドコアと同様にホロシン-ウイスコンシン遷移で急激に変化することが分かった (地球環境科学研究科平成11年度修士論文 奥山純一)。これに伴って気泡数密度の変化もま た同様に変化している。この物理測定は表面から底まで(175 m)の連続測定を行っており、 化学系情報との対比研究によって詳細な古環境復元を目指している。 また、グリーンランド・サミット(GRIP)コアの力学試験では、著しく発達した単極大型フ ァブリクスをもつコア氷のenhancement factorが異常に大きくなること見出し、単極大の発達 過程と合わせて、氷床流動計算に氷の結晶異方性を取り込むための基本的な定式化が可能とな った(地球環境科学研究科平成11年度博士論文 宮本淳)。 (6)氷床コアのX線結晶解析 (堀、本堂) X-ray crystallographic analyses of ice cores : A.Hori and T.Hondoh 氷床深部の氷結晶は、長期間にわたって静水圧と変形応力を受けた特殊な結晶である。これ まで、主として偏光観察で氷結晶の方位解析や粒度解析が行われてきたが、その一方でX線ト ポグラフ法によって光学的な手法では見ることのできない複雑な微細構造があることも明らか になっている。本研究は、最新のX線回折技術を駆使して、氷結晶の微細構造を明らかにする ことを目的としている。複結晶法による精密解析の結果、氷の格子定数は0.02%の精度で均一 であるが、回折曲線(ロッキングカーブ)の幅と形状は、同じ深度でも場所によって大幅に違 ― 62 ― うことが明らかになっている。特に、ボストーク・コアの最深部では、上部の氷とは違って完 全性の高い結晶が存在しており、同地点底部に存在すると言われている湖(Subglacial lake) の水が再凍結してできた氷である可能性が高い。さらに、種々の氷床コアについて、微細構造 と塑性変形過程、生成過程等との関係を明らかにするために測定を継続している。 氷床コアに含まれているクラスレート・ハイドレートの結晶構造解析を行い、格子定数の温 度依存性から線膨張係数を決定した(地球環境科学研究科平成11年度博士論文 竹谷 敏)。 また、結晶構造としてはⅡ型であることを確認したが、構造因子や格子定数などのパラメータは試 料に依存することを見い出した(地球環境科学研究科平成7年度修士論文 永谷英樹)。 2.氷およびクラスレート・ハイドレートの構造と物性 Structures and physical properties of ice and clathrate hydrates クラスレート・ハイドレートは、氷床コア解析における新たな気候変動の指標として、また、 新しいエネルギー資源や温暖化ガスの貯蔵物質として、強い関心が寄せられている。しかし、 その生成過程や物性については未解明の課題が多い。一方、氷は古くから研究されており、膨 大なデータが蓄積されているが、その構造的特徴であるプロトン配置の問題は古くてなお新し い課題である。本研究では、X線回折、ラマン散乱等の実験的手法と分子動力学(MD)法等 の計算機実験ならびに分子軌道法等の理論的手法を用いて、以下のような個別課題に取組んで いる。 (1)高圧力下におけるCO2ハイドレート生成実験 (本堂、堀) Experimental studies on formation of CO2-hydrate under pressure : T.Hondoh and A.Hori 高圧力下におけるハイドレートの生成過程をX線回折でその場観察する実験装置と手法を開 発し、金属容器内で生成するCO 2 ハイドレートの量的な変化を観察した。水と気体の混合状 態からの生成では、核生成におけるfreezing-memory effect(一度凍結させた水で核生成頻度 が大きくなる現象)を見出し、水に微量溶けているO 2 分子がこれを促進することを明らかに した。この結果は、氷に固溶する気体分子が何らかの準安定構造をもっている可能性を示唆し ている。また、氷粒子に気体で加圧する実験では、ハイドレート層を拡散透過するCO 2 分子 の拡散係数を定量的に明らかにした(地球環境科学研究科平成11年度博士論文 竹谷敏)。こ の結果は、自然界におけるガス・ハイドレートの生成速度を見積もる上で貴重なデータを与え るものである。 (2)気体分子と水分子クラスターの相互作用 (堀、本堂) Interaction energies of gas molecules encaged in water molecular clusters : A.Hori and T.Hondoh クラスレート構造を構成する大・小2種類のケージのエネルギー的安定性を、分子軌道法で 計算し、解離圧等の実験データとの比較を行った。その結果、ガス・ハイドレートの解離圧の 大きさが、構成クラスターのエネルギー的安定性から説明できることを示した。また、非常に 高い圧力下では、1つのケージ(大ケ-ジ)内に2つの窒素分子が取り込まれることが実験的 に明らかにされているが、分子軌道計算から、その場合のクラスターのエネルギー的安定性は、 小ケージの場合と同程度であると見積もられた。さらに、酸素分子でも同じ現象が起こる可能 性が示唆された。 (3)氷における気体分子の拡散に関する理論的研究 (堀、本堂) Theoretical studies on diffusion of gas molecules in ice : A.Hori and T.Hondoh 氷床における窒素と酸素の分別は、酸素分子の方が窒素分子より氷結晶中を拡散しやすいこ とに起因すると考えられている。しかし、拡散係数の実測値がないので、何らかの方法で推定 する必要がある。そこで、分子軌道法により、これらの分子に対する拡散の障壁エネルギーを ― 63 ― 計算し、酸素分子の方がエネルギーが低いことを見出した。これは、単に両者の大きさの違い によるのではなく、酸素分子の場合には、ボトルネック位置で氷の格子との間で結合を形成す ることにより安定化し、障壁エネルギーを下げることが原因であることが明らかになった。現 在、氷床に含まれる二酸化炭素やメタンについて拡散係数の推定を行い、その挙動を明らかに すべく、研究を継続している。 (4)氷およびクラスレート・ハイドレートの構造に関する計算機実験 (本堂、堀) Computer experiments on structures of ice and clathrate hydrates : T.Hondoh and A.Hori 全原子の自由度を許すKKYポテンシャル・モデルを使って、クラスレート・ハイドレート 中の気体分子の運動状態をMDシミュレーションで調べた。その結果、12面体中のN 2 、O 2 分子はケージの短軸に垂直な面内で回転していることが明らかになり、ラマンスペクトルの結 晶異方性の原因を明らかにした。また、N 2 、O 2 分子の伸縮振動数が、気体状態よりも低振動 数側にシフトすることも再現された。さらに、氷構造におけるプロトン配置の相違と振動スペ クトルの関係を調べ、librational modeが隣接水分子の配向の組み合わせに対して敏感に変化 することを明らかにした。(地球環境科学研究科平成11年度博士論文 堀川信一郎)。これら の成果は、氷床中氷の振動スペクトルの解釈に反映される。 (5)圧力下における氷結晶中の点欠陥の挙動(本堂、堀) Behavior of point defects in ice under pressure: T. Hondoh and A. Hori 氷単結晶に2000気圧までの静水圧を加えて、シンクロトロン放射光トポグラフィで転位の上 昇運動を観察し、点欠陥の挙動を調べた。その結果、圧力変化に伴う自己格子間分子と空孔の 挙動が明かになった(地球環境科学研究科平成9年度修士論文 森川公彦)。 3.積雪の融雪水浸透による物理構造変化と化学不純物の挙動に関する研究 (成田、石川、 非常勤研究員 的場澄人) Snow metamorphism and behavior of chemical ions by snow melt : H. Narita, N. Ishikawa and S. Matoba 南極、及びグリーンランド中央部を除いた北極圏・中緯度帯に広く分布する氷床・氷河涵養 区から採取される氷コアには、融解水浸透によって形成した氷層が多く含まれている。この融 解水浸透は雪堆積初期の秩序ある物理層位と化学層位を乱すために、コアから古気候・古環境 情報抽出する解析を困難にしている。 本研究では、母子里融雪観測室において融雪初期から末期まで融雪浸透による積雪変態、氷 層形成過程と化学不純物の挙動を時間を追って面的に観測している。その結果、その物理変態 と化学物質の挙動は複雑であるが、特徴として融雪水の積雪内流下は積雪内の化学的洗浄効果 をもち、氷層部には化学不純物が濃縮されて存在する傾向がある。上記のような氷層を含む氷 コア解析に応用するためには微視的観測も必要であり、氷層を含んだ融解水浸透積雪部分の構 造特徴の観測と微細化学サンプリングを行い、研究を続行している。 ― 64 ― 本 堂 武 夫(HONDOH,Takeo) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) T.Uchida, W.Shimada, T.Hondoh, S.Mae and N.I.Barkov: "Refractive Index Measurements of Natural Air-hydrate Crystals in Antarctic Ice Sheet", Applied Optics, 34(25): 5746-5749 (1995)* 2) T.Uchida, A.Takagi, J.Kawabata, S.Mae and T.Hondoh: "Raman Spectroscopic Analyses on the Growth Process of CO2 Hydrates", Energy Conversion and Management, 36(6-9): 547-550(1995)* 3) H.Itoh, K.Kawamura, T.Hondoh and S.Mae: "Molecular dynamics studies of proton ordering effects on lattice vibrations in ice Ih", Physica B, 219&220:469-472 (1996)* 4) H.Fukazawa, T.Ikeda, T.Hondoh, V.Ya.Lipenkov and S.Mae: "Aging effects on translational lattice vibrations in ice Ih", Physica B, 219&220:466-468(1996)* 5) H.Itoh, K.Kawamura, T.Hondoh and S.Mae: "Molecular dynamics studies of selfinterstitials in ice Ih", J.Chem.Phys.,105:2408-2413(1996)* 6) Ikeda, T., Fukazawa, H., Mae, S., Hondoh T. and Langway,Jr. C.C.: "CrystalOrientation Dependence of Raman Spectra of Natural Air Hydrate Single Crystal", J. Phys. Chem. B,101:6180-6183(1997)* 7) Fukazawa, H., Suzuki, D., Ikeda, T., Mae S. and Hondoh T.:"Raman Spectra of Translational Lattice Vibrations in Polar Ice", J.Phys. Chem. B,101:6184-6187 (1997)* 8) Horikawa, S., Itoh, H., Tabata, J. Kawamura K. and Hondoh T.: "Dynamic Behavior of Diatomic Guest Molecules in Clathrate Hydrate Structure II", J.Phys. Chem. B, 101:6290-6292(1997)* 9) Watanabe, O., Shimada, W., Narita, H., Miyamoto, A., Tayuki, K., Hondoh, T., Kawamura, T., Fujita, S., Shoji, H., Enomoto, H., Kameda, T., Kawada, K. and Yokoyam, K.:"Preliminary discussion of physical properties of the Dome Fuji shallow ice core in 1993, Antarctica", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 11:1-8(1997)* 10) Watanabe, O., Fujii, Y., Motoyama, H., Furukawa, T., Shoji, H., Enomoto, H., Kameda, T., Narita, H., Naruse R., Hondoh, T., Fujita,S., Mae, S., Azuma, N., Kobayashi, S., Nakawo, M. and Ageta, Y.: "A preliminary study of ice core chronology at Dome Fuji Station, Antarctica", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 11: 9-13(1997)* 11) Miyamoto, A., Shoji, H., Narita, H., Watanabe, O., Clausen, H.B. and Hondoh, T. : "An attempt at deformation tests of deep ice core samples containing cloudy bands", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol.,11: 87-93(1997)* 12) Fukazawa, H., Sugiyama, K., Mae, S., Narita, H. and Hondoh, T. : “Acid oins at triple junction of Antarctic ice observed by Raman scattering”, Geophysical Research Letters, 25 (15) 2845-2848 (1998)* 13) Itoh, H., Kawamura, K., Hondoh, T. and Mae, S. : “Polarized librational spectra of proton-ordered ice XI by molecular dynamics simulations”, J.Chem. phys., 109 (12) 4894-4899 (1998)* 14) Salamatin, A. N., Hondoh, T., Uchida, T. and Lipenkov, V. Ya . :“ Postnucleation conversion of an air bubble to clathrate air-hydrate crystal in ice ”, J. Crystal Gowth, 193, 197-218(1998)* ― 65 ― 15) Fisher, D.A., Koerner, R.M., Bourgeois, J.C., Zielinski, G., Wake, C. Hammer, C.U., Clausen, H.B., Gundestrup, N., Johnsen, S., Goto-Azuma, K.,Hondoh, T., Blake, E. and Gerasimoff, M.: “Penny ice cap cores, Baffin Island, Canada, and the Wisconsinan Foxe dome connection: two states of Hudson Bay ice cover. ”, Science 279, 692-695 (1998)* 16) Ikeda,T., Fukazawa, H., Mae, S., Pepin, L., Duval, P., Champagnon, B., Lipenkov, V.Ya. and Hondoh, T.: "Extreme fractionation of gases caused by formation of clathrate hydrates in Vostok Antarctic ice", Geophysical Research Letters, 26(1): 91-94(1999)* 17) Okada, Y., Hondoh, T. and Mae, S.: "Basal glide of dislocations in ice observed by synchrotron radiation topography", Philos. Mag. A, 79 (11), 2853-2868(1999)* 18) Narita, H., Azuma, N., Hondoh, T., Fujii, M., Kawaguchi, M., Mae, S., Shoji, H., Kameda, T. and Watanabe, O.: "Characterestics of air bubbles and hydrates in the Dome Fuji ice core, Antarctica", Annals of Glaciology, 29, 207-210(1999)* 19) Salamatin, A.N., Lipenkov, V.Ya., Hondoh,T. and Ikeda,T.: "Simulated features of the air-hydrate formation process in the Antarctic ice sheet at Vostok", Annals of Glaciology, 29, 191-201(1999)* 20) Azuma N., Wang Y., Narita H., Hondoh T., Shoji H. and Watanabe O.: "Textures and fabrics in the Dome F (Antarctica) ice core", Annals of Glaciology, 29, 163-168 (1999)* 21) Miyamoto A., Narita H., Hondoh T., Shoji H., Kawada K., Watanabe O., D. Dahl-Jensen, N.S. Niels, H.B. Clausen and P. Duval: "Ice-sheet flow conditions deduced from mechanical tests of ice core", Annals of Glaciology, 29, 179-183 (1999)* 22) Hori A., Tayuki K., Narita H., Hondoh T., Fujita S., Kameda T., Shoji H., Azuma N., Kamiyama K., Fujii Y., Motoyama H. and Watanabe O.: " A detailed density profile of the Dome Fuji (Antarctica) shallow ice core by X-ray transmission method", Annals of Glaciology, 29, 211-214 (1999)* 23) Hondoh,T., Narita, H., Hori,A., Fujii, M., Shoji, H., Kameda, T., Mae, S., Fujita,S., Ikeda,T., Fukazawa, H., Fukumura, T., Azuma, N., Wong, Y., Kawada, K., Watanabe, O. and Motoyama, H.: "Basic Analyses of Dome Fuji Deep Ice Core Part 2: Physical Properties", Polar Meteorology and Glaciology, No. 13, 90-98(1999)* (その他の論文) 1) T.Ikeda, A.Kouchi, T.Yamamoto, T.Hondoh and S.Mae: "The Infrared Absorption Spectra of CO and CO2 in Amorphous H2O Ices", Proc. 28th ISAS Lunar and Planetary Symp., 186-189(1995) 2) T.Ikeda, H.Fukazawa, T.Hondoh, V.Ya.Lipenkov, P.Duval and S.Mae:"Polarized Raman spectra of clathrate hydrate crystals in deep ice cores of Antarctica", Proc. 2nd Int. Conf. Natural Gas Hydrates,117-122 (1996) 3) "Clathrate hydrates in polar ice sheets", Proc.2nd Int. Conf. Natural Gas Hydrates, 131-138 (1996) 4) T.Ikeda, T.Uchida, T.Hondoh, P.Duval, V.Ya.Lipenkov and S.Mae:"Air-hydrate crystals in cloudy bands of Vostok ice cores, Antarctica", Proc. 2nd Int.Conf. Natural Gas Hydrates, 215-219(1996) ― 66 ― 5) H.Fukazawa, T.Ikeda, T.Hondoh, P.Duval, V.Ya.Lipenkov and S.Mae: "Molecular fractionation of air constituent gases during crystal growth of clathrate hydrate in polar ice sheets", Proc. 2nd Int.Conf. Natural Gas Hydrates,237-242 (1996) 6) T.Uchida, A.Takagi, T.Hirano, H.Narita, J.Kawabata, T.Hondoh and S.Mae: "Measurements on guest-host molecular density ratio of CO2 and CH4 hydrates by Raman spectroscopy", Proc. 2nd Int. Conf. Natural Gas Hydrates,335-339(1996) 7) H.Itoh,S.Horikawa,K.Kawamura,T.Uchida, T.Hondoh and S.Mae: "Molecular dynamics studies of structure I clathrate hydrate of carbon dioxide", Proc.2nd Int. Conf. Natural Gas Hydrates, 341-346(1996) 8) K.Satoh, T.Uchida, T.Hondoh and S.Mae: "Diffusion coefficient and solubility measurements of noble gases in ice crystals", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 10:73-81(1996) 2 総説,解説,評論等 1) 内田努,本堂武夫:「ハイドレート中のガス含有量測定の現状」、『月刊地球』18:679-684 (1996) 2) 本堂武夫:「地球環境の歴史を南極の氷に探る-X線で何が見えるか-」、日本放射線技 術学会雑誌、55(4)、329-334(1999) 3) 本堂武夫:「南極の氷が語る地球環境の歴史」、アロマティックス、51(5,6)、 155-160(1999) 4) 藤井理行、東 信彦、田中洋一、高橋昭好、新堀邦夫、中山芳樹、本山秀明、片桐一夫、 藤田秀二、宮原盛厚、亀田貴雄、斉藤隆志、斉藤 健、庄子 仁、白岩孝行、成田英器、 神山孝吉、古川晶雄、前野英生、榎本浩之、成瀬廉二、横山宏太郎、本堂武夫、上田豊、 川田邦夫、渡邊興亜:「南極ドームふじ観測拠点における氷床深層コア掘削」、南極資料、 43(1)、162-210(1999) 3 著書 (2)共著 1) 本堂武夫,内田努,加藤康明:「低温高圧下におけるクラスレート水和物の結晶成長」, 1076-1078 (日本結晶成長学会結晶成長ハンドブック編集委員会:『結晶成長ハンドブッ ク』,共立出版,東京)(1995) 2) T.Uchida, T.Hondoh, S.Mae and J.Kawabata: "Physical Data of CO2 Hydrate", 45-6 1 (eds. N.Handa and T.Ohsumi: Direct Ocean Disposal of Carbon Diode, Terra Scie ntific Publishing Company, Tokyo)(1995) ― 67 ― 成 田 英 器(NARITA,Hideki) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) S.Ishii, H.Narita and N.Maeno: "Bubble Formation Experiments in Snow Densification", Proc.NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 9: 23-32 (1995)* 2) K.Nisida and H.Narita :"Three-dimensinonal observation of ice crystal characterisitics in polar ice sheets",J.Geophys.Res.,101(D16):21311-21317, (1996)* 3) T.Machida,T.Nakazawa,Y.Fujii,S.Aoki,H.Narita and O.Watanabe:"Vairations of CO2, 13 CH4 and N2O concentrations and δ C of CO2 in the glacial period deduced from an Antarctic ice core,South Yamato" Proc.NIPR Symp.Polar Meteorol.Glacial,10: 55-65(1996)* 4) Okitsugu,W.,Shimada,W.,Narita,H.,Miyamoto,A.,Tayuki,K.,Hondoh,T.,Kawamura,T., Fujita,S.,Shoji,H.,Enomoto,H.,Kameda,T. and Yokoyama,K.:"Preliminary discussion of physical properties of the Dome Fuji shallow ice core in 1993, Antarctica", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol.,11:1-8(1997)* 5) Okitsugu,W.,Fujii,Y.,Motoyama,H.,Furukawa,T.,Shoji,H.,Enomoto,H.,Kameda,T., Narita,H.,Naruse,R.,Hondoh,T.,Fujita,S.,Mae,S., Azuma,N.,Kobayashi,S.,Nakawo,M. and Ageta,Y.:"A preliminary study of ice core chronology at Dome Fuji Station, Antarctica", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol.,11:9-13(1997)* 6) Fukazawa, H., Sugiyama, K., Mae, S., Narita, H. and Hondoh, T. :"Acid ions at triple junction of Antarctic ice observed by Raman scattering", Geophy. Res. Letters, 25, 15, 2845-2848 (1998)* 7) Narita N., Azuma N., Hondoh T., Fujii M., Kawaguchi M., Mae S., Shoji H., Kameda T. and Watanabe O.: "Characteristics of air bubbles and hydrates in the Dome Fuji ice core, Antarctica", Annals of Glaciology, 29, 207-210 (1999)* 8) Azuma N., Wang Y., Narita H., Hondoh T., Shoji H. and Watanabe O.: "Textures and fabrics in the Dome F (Antarctica) ice core",Annals of Glaciology 29, 163-168 (1999)* 9) Miyamoto A., Narita H., Hondoh T., Shoji H., Kawada K., Watanabe O., D. Dahl-Jensen, N.S. Niels, H.B. Clausen and P. Duval: "Ice-sheet flow conditions deduced from mechanical tests of ice core",Annals of Glaciology 29, 179-183 (1999)* 10) Hori A., Tayuki K., Narita H., Hondoh T., Fujita S., Kameda T., Shoji H., Azuma N., Kamiyama K., Fujii Y., Motoyama H. and Watanabe O.: " A detailed density profile of the Dome Fuji (Antarctica) shallow ice core by X-ray transmission method",Annals of Glaciology 29, 211-214 (1999)* 11) Ishikawa N., Narita H. and Kajiya Y.: " Contributions of heat from traffic vehicles to snow melting on roads", In Transportation Research Record 1672, TBR, National Research Council, Washinton, D. C., 28-33 (1999)* 12) Hondoh T., Narita H., Hori A., Fujii M., Shoji H., Kameda T., Mae S., Fujita S., Ikeda T., Fukazawa H., Fukumura T., Azuma N., Wong Y., Kawada K., Watanabe O. and Motoyama H.: "Basic analyses of Dome Fuji ice core, Part 2: Physical properties", Proc.NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 13 9098 (1999)* ― 68 ― (その他の論文) 1) 秋田谷英次, 石井吉之, 成田英器, 石川信敬, 小林俊一, 鈴木哲, 早川典生, 対馬勝年, 石坂雅昭, 楽鵬飛,張森:「中国東北部の道路雪害調査-1994年3月-」,『低温科学, 物 理篇』, 53:35-50 (1995) 2 総説,解説,評論等 1) 藤井理行、東 信彦、田中洋一、高橋昭好、新堀邦夫、中山芳樹、本山秀明、片桐一夫、 藤田秀二、宮原盛厚、亀田貴雄、斉藤隆志、斉藤 健、庄子 仁、白岩孝行、成田英器、 神山孝吉、古川晶雄、前野英生、榎本浩之、成瀬廉二、横山宏太郎、本堂武夫、上田豊、 川田邦夫、渡邊興亜:「南極ドームふじ観測拠点における氷床深層コア掘削」、南極資料、 43(1)、162-210(1999) 4 学術講演(招請講演) (1)学会特別講演 1) Shoji,H. and Narita,H.:"Flow behaviors of deep ice core samples from Greenland ice sheet under an uniaxial compression stress condition", European Science Foundation-European Ice Sheet Modelling Initiative(EISMINT)-,Grindelwalt, Switzerland(1997) ― 69 ― 堀 彰(HORI,Akira) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) A.Hori, M.Takeda, H.Yamashita and K.Kimura: "Absorption Edge Spectra of Boron-Rich Amorphous Films Constructed with Icosahedral Cluster", Phys. Soc. Japan, 64: 3496-3505(1995)* 2) M.Takeda, M.Fujimori, A.Hori and K.Kimura: "Search for Semiconducting Quasicrystal in Boron-Carbon-based Ternary Systems",Proceedings of the 5th International Conference on Quasicrystals, Avignon: 739-742(1995)* 3)Hori,A.,Tada, T., and Kimura, K.: "Photoluminescence Spectra of β-Rhombohedral Boron", Phy. Soc. Japan, 67 : 4279-4284 (1998)* 4) Hori,A.,Tayuki,K.,Narita,H.,Hondoh,H.,Fujita,S.,Kameda,T.,Shoji,H.,Azuma,N., Kamiyama,K.,Fujii,Y.,Motoyama,H.,and Watanabe,O.:"A detailed density profile of the Dome Fuji (Antarctica) shallow ice core by X-ray transmission method": Annals of Glaciology,29:211-214(1999)* 5) Hondoh,T.,Narita,H.,Hori,A.,Fujii,M.,Shoji,H.,Kameda,T.,Mae,S.,Fujita,,S., Ikeda,T.,Fukazawa,F.,Fukumura,T.,Azuma,N.,Wong,Y.,Kawada,K.,Watanabe,O.,and Motoyama,H.:"Basic Analyses of Dome Fuji deep ice core Part 2: Physical Properties":Polar Meteorology and Glaciology,13:90-98(1999)* (その他の論文) 1) Morikawa,K., Hori, A., Okada,Y. and Hondoh,T. :“Climb Motion of Dislocations Driven by a Pressure Change in Ice ”Photon Factory Activity Report, 14:359 (1997) ― 70 ― 雪氷循環 教授 小林大二、助手 石井吉之 1.寒冷多雪地域における流域水循環 (小林、石井) Hydrologic cycle in a snowy drainage basin: D.Kobayashi and Y.Ishii 寒冷多雪地域に特有な水循環プロセスを明らかにするため、北海道母子里の流出試験地にお いて、1)融雪及び降雨出水時の川水温と表層地温の関係、2)谷頭湧水の流出量・水質の通年変 化、3)融雪出水時における融雪水及び川水の一時的酸性化のメカニズム、4)流域水収支の経年 変動と積雪貯留量の関係、を調べた。1)では、洪水流出の8~9割が1.8m深地温に相当する水 温をもつ地中流出成分であることを明らかにした。2)では、谷頭湧水の流出量は降雨や融雪時 に増大するが水質は年間に渡ってほぼ一定に保たれることを明らかにし、また、水質タンクモ デルによる解析から、湧水はNew waterによって地中のOld waterが地表に押し出されて流出す ることを示した。3)では、融雪出水時の川水のpH低下には先行型・同時型・遅れ型があり、融 雪最盛期には遅れ型が一般的であることを示した。また、融雪水や川水の一時的pH低下は溶存 する炭酸物質の挙動と密接に関係することを明らかにした。4)では、過去十数年にわたる継続 観測データをもとに、気温を変数とした積雪・融雪ルーチンとタンクモデルを用いた流出・貯 留ルーチンからなる流域水収支モデルを構築した。このモデルによって、積雪貯留量の大きな 年々変動は単に冬期降水量ばかりに依存するのではなく、積雪期や融雪期の気温にも大きく依 存することが示された。 上記2)、3)、4)の研究には、地球環境科学研究科大学院生として当研究グループに在籍した 山本涼子、中村亮、山崎学が修士課程研究として参画した。 2.比較雪氷水文学の研究 (石井、兒玉、石川、小林) Studies on comparative snow/ice hydrology: Y.Ishii, Y.Kodama, N.Ishikawa and D.Kobayashi 北極圏西スバルバールにおいて氷河上季節積雪の融雪・流出過程を調べた。最も活発な融雪 は氷河上流からの高温多湿な強い南風の吹き出しによって生じたこと、融雪量と流出量は1:1 に対応し流域外への分水界流出や上積氷生成による貯留の効果は小さいこと、化学成分の流出 応答は融雪初期~中期と後期とでドラスティックに変化することを示した。 アラスカ・ユーコン水循環観測研究計画の一環として、森林及びツンドラからなる実験小流 域(カリブー・ポーカー・クリーク)において、河川の流量・水質変動及び流出機構を調べた。 また、ネパール・ヒマラヤの高山流域において、プレモンスーン期に、氷河の融け水で涵養さ れる白濁した河川の流量・水質の変動特性を調べた。 3.シベリア・ツンドラ地帯における流域水循環 (石井、兒玉、大畑) Hydrologic cycle in a Siberian tundra basin: Y.Ishii, Y.Kodama and T.Ohata GAME-Siberia研究計画の一環として、1997年よりレナ川河口部ティクシ近郊のツンドラ小流 域において、流域水循環に関する研究を続けている。これまでの成果は次のとおりである。1) 夏期の流域水収支:入力項では融雪量の寄与が降雨量以上に大きくその影響は少雨年に顕著に 表れること、出力項では流出量が最も大きく、蒸発散量は多雨年少雨年にかかわらず50mm程 度であることが明らかになった。2)夏期の降雨流出応答:流出遅れ時間や流出率は、流域の湿 潤状態や降雨パターンによって出水毎に様々に異なり、活動層の発達に伴う流出特性の変化は 見出せなかった。 上記の研究には、地球環境科学研究科大学院生として当研究グループに在籍する佐藤軌文が 博士課程研究として参画している。 ― 71 ― 小 林 大 二(KOBAYASHI, Daiji) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) D.Kobayashi, Y.Kodama, Y.Ishii, Y.Tanaka and K.Suzuki: "Diurnal variation in streamflow and water quality during the summer dry season", Hydrol. Processes, 9: 833-841 (1995)* 2)Kobayashi,D. and Tanaka,Y.:"Drifting snow and snow-drifts.", Proceedings of Snow Symp., 94: 365-370(1997)* 3) Kobayashi, D., Ishii, Y. and Kodama, Y. :Stream temperature, specific conductance and runoff process in mountain watersheds. Hydrol. Processes, 13. 865-876(1999)* 4 著 書 (2)共 著 2) 小林大二,石井吉之,野村睦:「融雪及び降雨出水時における川水温の対比と流出成分 の分離」,109-121(橘治国:『積雪寒冷地の水文・水資源』,信山社サイテック,東京) (1998) ― 72 ― 石 井 吉 之(ISHII,Yoshiyuki) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) D.Kobayashi, Y.Kodama, Y.Ishii, Y.Tanaka and K.Suzuki: "Diurnal variation in streamflow and water quality during the summer dry season", Hydrol. Processes, 9: 833-841 (1995)* 2) 石井吉之,小林大二:「融雪にともなう河川水の一時的なpH低下」,『北大地球物理学研究 報告』,59:15-24(1996)* 3) 石川信敬,成田英器,石井吉之:「融雪現象にともなう酸性雪変質機構の研究」,『北海道 の農業気象』,48:10-20 (1996)* 4) Ishikawa,N.,Narita,H.,Ishii,Y. and Kodama,Y.:"Acidity variations along hydrological processes of snow deposit, snowmelt and runoff", Journal of Agricultural Meteorology, 52:521-524(1997)* 5) Ishikawa, N., Nakabayashi, H., Ishii, Y. and Kodama, Y.: "Contributions of snow to the annual water balance in Moshiri Watershed, northern Hokkaido, Japan", Nordic Hydrology, 29: 347-360 (1998)* 6) Kobayashi, D., Ishii, Y. and Kodama, Y.: “Stream temperature, specific conductance and runoff process in mountain watersheds”, Hydrol. Processes, 13: 865-876(1999)* (その他の論文) 1) 秋田谷英次, 石井吉之, 成田英器, 石川信敬, 小林俊一, 鈴木哲, 早川典生, 対馬勝年, 石坂雅昭, 楽鵬飛,張森:「中国東北部の道路雪害調査-1994年3月-」,『低温科学, 物 理篇』, 53:35-50 (1995) 2) K.Nakao,Y.Ishii and H.Nishida:"Characteristics of subsurface stormflow from forested hillslopes in Hokkaido,Japan -overbedrock subsurface flow-",Journal of Faculty of Science,Hokkaido University, Series Ⅶ(Geophysics),10:89-105(1996) 3) Ishii, Y., Kodama, Y. and Sato, N.: "Streamflow regime in tundra region and an observation plan of 1998 summer", Activity Report of GAME-Siberia,1996-1997. Japan sub-Committee for GAME-Siberia. GAME Publication No.10: 65-66 (1998) 4) Sato, N., Kodama, Y. and Ishii, Y.: "Seasonal variation of water balance in Siberian Tundra", Activity Report of GAME-Siberia,1996-1997.Japan sub-Committee for GAME-Siberia. GAME Publication No.10: 63-64 (1998) 5) Ishii, Y., Kodama, Y. and Sato, N.: “Summertime water balance in a Siberian tundra basin”, Activity Report of GAME-Siberia,1998. Japan sub-Committee for GAME-Siberia. GAME Publication No.14: 13-16(1999) 3 著書 (2)共著 1) 石井吉之:「北海道における降雪および積雪中の化学成分」,39-44(橘治国:『積雪寒冷 地の水文・水資源』,信山社サイテック,東京)(1998) 2) 小林大二,石井吉之,野村睦:「融雪及び降雨出水時における川水温の対比と流出成分 の分離」,109-121(橘治国:『積雪寒冷地の水文・水資源』,信山社サイテック,東京) (1998) 4 学術講演(招請講演) (1) 学会特別講演 ― 73 ― 1) 石井吉之:「融雪流出のメカニズム-雪の中の水の動き-」,農業低温科学研究会・生産 環境整備部会セミナー,札幌(1997) 2) 石井吉之:「道東の雪,世界の雪」, (社)日本雪氷学会北海道支部地域講演会, 紋別 (1999) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) N.Ishikawa,Y.Ishii and Y.Kodama:"Characteristics of the Hydrologic Cycle of an Experimental Watershed",Internationl Symposium on Representation of the Cryosphere in Climate and Hydrolgical Models,Victoria,Canada(1996) 2) Ishii,Y. and Kobayashi,D.:"Effect of snowpack properties on meltwater infiltration through snow", Scientific meeting of the Canadian Geophysical Union and Joint meeting of the CGU-HS and Eastern/Western Snow Conference, ] Banff, Canada(1997) 3) Ishii, Y. and Kodama, Y.: "Snowmelt and meltwater runoff in a small glaciated basin in western Svalbard", Twelfth Internationl Symposium and Workshop on Northern Research Basins, Reykjavik, Iceland (1999) 4) Ishii, Y., Nomura, M., Kodama, Y. and Sato, N. : "Water balance and streamflow regime in the arctic tundra basin", GAME-MAGS International Workshop, Edmonton, Canada (1999) ― 74 ― 雪氷環境 教授 大畑哲夫、助教授 山田知充、助手 西村浩一、曽根敏雄 1.シベリア永久凍土帯の水・エネルギー循環の研究 (大畑、石井、兒玉、張) Study on the water/energy cycle in Siberia: T.Ohata, Y.Ishii, Y.Kodama and Y.Zhang 本研究は、WCRPの計画の一環である国際共同研究計画GAME(1996-2001年)の一部 として実施して、日本においては大学・国公立研の共同研究として実施している。シベリア地 域はこのGAME計画の一重点地域となっており、最終的にはレナ川流域のタイガ域および山岳タ イガなどの陸面過程を含め凍土・積雪地帯での水・エネルギー循環、大気陸面相互作用の実態 の解明と大気陸域系のモデル化を目指している。ツンドラ地域としてはレナ川河口域のティク 2 シを選択し、1997年から4年間、5km の小流域の水循環項を継続的に測定し関与して いる諸過程の解明しつつある。凍結河川の流量導出、不均一な積雪の堆積の把握、自動測定シ ステムの運用、正確な降水量導出など、この地域特有の問題に直面しており、その測定法の改 善、それに基づく知見を得てきた。新たなる発見としては、凍土面の不均質性の水循環への影 響や不均一積雪がその後の蒸発・流出に与える影響などがある。また、全体的に降水量の少な いタイガ地域などでは、蒸発に植生状態(開葉時期)の影響が強く表れ、土壌水分の経年的蓄 積・大気へのフィードバック効果が得られている。 2.大陸域寒冷圏の広域水循環の実態と変動の研究 (大畑) Study on large-scale water cycle of the continental cryosphere: T.Ohata 大陸域寒冷圏は予測されている地球温暖化で最も大きい影響を受ける一地域であると言われ ている。しかしながら、その地域での水・エネルギー循環の実態は未だよく分かっていない。 本研究では現在、重要な水循環項である積雪量の分布の把握について衛星による受動マイクロ 波信号を用い、シベリア地域の積雪水量を導出する研究を行っている。今までの研究で地球寒 冷圏の数地域について得られているマイクロ波積雪水量導出のアルゴリズムのシベリ地域への 適用は、植生状況の差異、極寒冷のため発達の著しいしもざらめ雪のため難しく、新たなる方 式を確立する必要があることが明らかになっている。また、地域により冬期間の信号の変化パ ターンが異なり、地域によっては植生の影響等を除去してもマイクロ波では把握できない地域 があることも分かっている。 3.氷河域水循環モデルの構築 (大畑、張) Development of water/energy circulation model of glaciated regions: T.Ohara and Y.Zhang 氷河域は寒冷圏の中でも特異な水循環の様式が存在する地域である。水貯留槽としての氷河 は、気候変化に伴いその質量を増加させたり減少させたりし、その結果、海洋への淡水流入の 変化や海水面変化、水資源の枯渇などという形で自然系・人間活動系へ影響が及ぶが、現在構 築されているモデルは、過去の氷河規模、ひいては流出量なども再現できず、もちろん将来予 測にはまだ役立たない状況であり、改良が求められている。本研究では第一段階として、既存 のモデルの問題点の検討と改良、アルベードをパラメター化するためのレビューを行った。現 在、様々なレベルの氷河域水循環モデルを構築中であり、幾つかの地域で得られている過去の データによって検証している。 4.モレーンで堰き止められた氷河湖の研究 (山田) Study of a debris-covered glacier lake: T.Yamada アジア高山地域では、近年の地球温暖化のため氷河末端の融解が急激に進み、モレーンによ って堰き止められてできた氷河湖が多数形成されている。不安定なモレーンは容易に決壊し、 一気に溢れ出した湖水が下流を襲い、地域の社会経済開発にとって看過し得ない脅威となって いる。この氷河湖決壊洪水被害を防止軽減するため、ネパールヒマラヤの氷河湖を対象に航空 ― 75 ― 機観測と人工衛星画像解析、現地調査によって、①過去に決壊した氷河湖を含む氷河湖の形態 と分布、②氷河湖の危険度評価、③危険氷河湖の湖盆形態、規模、拡大の過程と速度を明らか にした。その結果、氷河湖は高々30年から50年前に誕生し、短期間に長さ1~3km、深さ100m に及ぶ大きな湖へと成長を遂げたことが分かった。次いで、典型的なモレーン堰止め湖である ツォー・ロルパ氷河湖を対象に、④電気探査によるモレーン内部の氷体の分布とモレーンの固 結度などモレーンの構造、④3年間の気象水文観測による、氷河湖が置かれている気象・水文 環境、⑤氷河湖の水温・濁度・密度構造、湖水ダイナミックスなどの湖沼学的特徴を把握し、 これらの資料をもとに⑥氷河湖の質量収支と熱収支を明らかにした。これらの研究結果から氷 河湖決壊洪水の防止・軽減対策をネパール政府に献策した結果、最も危険なツォー・ロルパ氷 河湖について1998年に早期警報システムの構築がなされ、1999年には氷河湖の水位を低下させ る工事が開始された。工事の様子はNHKスペッシャルで2000年2月に放映され、国会で日本の貢 献について質問が出るなど話題になったところである。 5.シベリアにおける積雪の研究 (山田) Study of snow cover in the Siberia: T.Yamada 冬期に世界最大規模の高気圧を育むシベリアの広大な大地を覆う積雪は、地表面アルベドを 劇的に変化させ、地表面からの熱放射のみならず大気側にも大きなインパクトを与え、融雪期 には土壌水分の重要な決定因子となるなど、シベリアの地表面と大気との相互作用、特に熱と 水の流れに大きな役割を演じているが、シベリアの積雪情報は希薄である。そこで1997年以来、 シベリアの広域に亘る積雪調査をロシア科学アカデミーヤクーツク凍土研究所との共同研究の もとに実施している。 毎年積雪が最大に達していると考えられる3月にヤクーツクを起点として、1997年はミール ヌイまで、1998年はベルフォヤンスクまで、2000年はイルクーツクまでとグラゴベシシェンス クまでの道路沿い100km毎(一部50km毎)に積雪調査を実施した。その結果、積雪深の範囲は25 2 3 - 120 cm、積雪水量の範囲は3 - 30 g/cm にあった。全層密度は平均0.22 g/cm 程度、最大で 3 も0.30 g/cm を越えることはなく、積雪は非常に軽いことが分かった。ヤクーツク北方ベルフ ォヤンスクまでと西方ミールヌイまでは積雪量が比較的少なく場所による違いも顕著ではな い。ヤクーツク南西方のレナ川流域からイルクーツクにかけては比較的多雪地帯となっており、 また場所による積雪量の違いが大きい。高度と積雪深の関係を見ると標高の増加に連れて積雪 深は直線的に増加している。シベリアは寒冷な上に積雪が浅いため、積雪上面雪温と地表面温 度との温度差が10-40℃にも達し、積雪は断熱材として凍土の熱環境に大きな影響を与えてい ることが明らかとなった。積雪内部には最大1.7℃/cmにも及ぶ大きな温度勾配がかかっていた。 そのためしもざらめ化が著しく、観測した全域で雪質は新雪を除いてはほとんどしもざらめ雪 とこしもざらめ雪からなり、特に堆積してから時間の経過した積雪下部は骸晶からなるしもざ らめ雪が占め、1cmを超える巨大な骸晶結晶が観察された。積雪水量と積雪深、平均密度との 間に相関が認められるが、特に積雪深と積雪水量はシベリア全域に亘って一次の直線関係を示 し、積雪深から精度良く積雪水量を見積もることができることが分かった。 6.雪崩派生予知システムの開発(西村) Development of snow avalanche prediction system: K.Nishimura 問寒別やニセコなどの山岳地域と道内の峠6地点で気象観測を実施し、気象要素と1次元数 値モデルから積雪構造の変化を再現する試みを行なっている。現在モデルに組み込まれている 雪質の変化を予測するサブプロセスについて検討し、予測精度の向上を計っている。 問寒別雪崩観測施設では、地震計とマイクロフォンを設置して地震波と音波の自動連続観測 にビデオのコマ撮り撮影も加えて、雪崩の前駆現象を検出して雪崩を予知する可能性を検討す ると共に、雪崩の規模・継続時間と地震波・音波との関係を調べている。また、多点に配置し た地震計によって一冬に亘って地震波を自動連続観測し、広域に発生する雪崩の位置と発生日 時を検出し、個々の雪崩について付近の気象観測点で一冬に亘って観測している気象と積雪資 ― 76 ― 料から雪崩発生条件を明らかにする研究を続けている。その結果、雪崩には特徴的な波形があ り地震とは明らかに区別されること、50km範囲の雪崩については小規模な雪崩まで検知可能な ことまでは明らかになった。 それと同時に、雪崩発生予知の基本となる積雪3次元ネットワーク構造の可視化と定量化に 向け、文部省科学研究費を得て核磁気共鳴映像法(MMRI)を適用した研究も開始している。氷そ のものからの信号強度は微弱であるため、積雪の空隙に有効な信号強度が得られる物質を充填 することによって積雪の映像を得る手法を開発しつつある。現在、空隙に「ドカデン」を充填 することによって、積雪を映像として捕らえることに成功したが、より鮮明な映像の取得を目 指してさらなる研究を進めつつある。 <関連施設装置等> 問寒別雪崩観測所、低温実験室 7.吹雪と雪崩のダイナミックスの研究 (西村) Dynamics of drifting snow and snow avalanches: K.Nishimura 吹雪に関しては、跳躍運動の素過程に着目した研究を進めている。これと併行して、低温風 洞を用いて模型林前後の風速構造と吹き溜まり形成過程を詳細に測定したほか、冬期には道北 試験地において、アカエゾマツ植栽林帯の防風・防雪効果および吹雪の構造変化にかかわる野 外観測を実施している。 雪崩に関しては、黒部渓谷における観測、スキージャンプ台でのピンポン玉を使った模擬雪 崩実験、そして数値モデルの開発と多角的側面から研究を実施している。速度が60m/s以上に 達する大規模な雪崩について、底面近傍の流れ層内部の速度分布や雪煙部の乱流構造および両 者の相互作用についての知見が世界で初めて得られた他、それらが周期的波動、つまりある秩 序構造を持つことが明らかとなった。3次元粒状体流れの数値モデルは、10000個程度の流れ については3次元の速度、粒子密度分布等については良い精度で記述することが可能となった。 粒子数を100万個程度まで増加させた計算では、流体の相互作用を厳密な形でモデルに組み込 むことでより現実に近いシミュレーションが可能となったが、その結果の検証が今後に残され ている。 <関連施設装置等> 低温風洞実験室 8.大雪山における永久凍土の発達と周氷河環境 (曽根) Permafrost development and periglacial environment of the Daisetsu Mountains :T.Sone 大雪山北海平(標高約2060m地点)における冬期の風向風速の観測から、大雪山の風衝砂礫 地においては、卓越風が西寄りの強風であるため、ほとんど積雪がなく寒気が直接地面に伝わ り、凍土が形成されやすい条件にあることが示された。また北海平における地温観測から、こ の地点の活動層は約1mで、少なくとも地下15m程度までは永久凍土が発達していることが判明 した。また高根ケ原の風衝砂礫地(標高1850m地点)における地温の変化から、永久凍土の存 在が明らかになった。風衝砂礫地における永久凍土の下限高度は少なくとも1850m以下である ことが確認された。 ソリフラクションロウブの表面礫の移動速度を測定した。移動速度は、ロウブ中心部で速く、 また先端に近づく程遅くなることが判明した。この速度分布は、ロウブ状の形態が形成される 理由を説明するものであった。 9.南極半島James Ross島およびSeymour島における永久凍土と寒冷地形(曽根) Glacial and periglacial landforms and permafrost in James Ross Island and Seymour Island, Antarctic Peninsula : T.Sone James Ross島およびSeymour島は南極半島の東側、南緯64度にある。Seymour島の標高約200 m地点におけるほぼ通年の地温観測から、表層付近の年平均地温は約-7℃であり、この島では 永久凍土は連続的に分布すると考えられた。いっぽうJames Ross島の標高7m地点における地温 観測では、年平均地温は約-3℃であった。James Ross島では連続から不連続的な永久凍土が分 ― 77 ― 布すると考えられた。James Ross島Lachman海岸付近における岩石氷河の表面の流動速度が測 量データの比較から明らかになった。またRink地域において特異なStone banked terracesを 発見し、これらの発達過程を推定した。 10.カムチャツカ半島における氷河地形と永久凍土 (曽根) Glacial landforms and permafrost in Kamchatka : T.Sone ロシア、カムチャツカ半島中央部のUshukovsky火山にあるBilchenok氷河において、 テフロクロノロジーによる地形編年を行なった。最終氷期にカムチャツカ低地まで前進した氷 河は、いったん後退した後約8ka、3ka、1kaの時期に再び前進した。サージ氷河であるBilchen ok氷河では、小氷期よりもサージによる1960年代の方が氷河はより前進していたことが判明し た。また地温観測から、Ushukovsky火山北西麓および Esso周辺では、不連続的永久凍土の下限高度は約1000m付近にあることが明らかになった。さ らにカムチャツカ中央部に分布する黒色火山灰土の起源は、風成粒子が除々に堆積して形成さ れた堆積性土壌であることが判った。 11.中国天山山脈における永久凍土の地温状況 (曽根) Temperature regime of permafrost in the Tianshan Mountains, China : T.Sone 1994年9月に中国、天山山脈、ウルムチ川上流の標高3900m地点において,地温観測用温度記 録計を設置した。通年の地温観測から、各深さにおける地温の変化過程が解明された。深部で の年平均地温は、-5.1℃であった。また活動層の深さは2m以内であった。熱解析から熱伝達率 が算出され、地温が年変動しなくなる深さは、約 23mと計算された。1991年9月から92年の中 国側データとの比較では、94-95年の方が年平均地温や活動層深からみて、91-92年よりも寒冷 になっていることが判った。 ― 78 ― 秋田谷 英 次(AKITAYA,Eiji) 1 学術論文 (その他の論文) 1) 尾関俊浩,秋田谷英次:「サン・クラストの研究」,『低温科学、物理編』,53 :1-10 (1995) 2) 秋田谷英次,石井吉之,成田英器,石川信敬,小林俊一,鈴木哲,早川典生,対 馬勝年, 石坂雅昭、楽鵬飛,張森:「中国東北部の道路雪害調査-1994年3月-」、『低温科学、物 理編』,53:35-50(1995) 3) 秋田谷英次:「札幌市内の雪氷路面調査-平成7年冬期-」、『1995寒地技術シンポジウ ム’95・論文・報告集』,356-361(1995) 4) 原文宏,秋田谷英次,須田力:「雪氷の教育への利用の現状について」,『1995寒地技術 シンポジウム’95・論文・報告集』,537-540(1995) 5) 原文宏,秋田谷英次,須田力,山本順子:「女性を対象とした冬期歩行に関する意識調 査」,『1995寒地技術シンポジウム’95・論文・報告集』,737-742 (1995) 2 総説、解説、評論等 1) 秋田谷英次(解説):「雪崩の対策」、(石井清一,菅原誠,武藤芳照編:『スキーの医学』, 255-260,南江堂,東京,1995) 2) 秋田谷英次(総説):「雪と寒さのサイエンス」,(雪を考える会編著『遊雪事典110p』,88 -95,国土庁,1995) 3) 秋田谷英次「雪形に期待する」(総説),『砂防と治水』,113:4-6(1996) 4) 秋田谷英次,福沢卓也(総説):「雪を科学する」16-23,「雪崩発生のメカニズム」2435,(北海道雪崩事故防止研究会編『最新雪崩学入門』,236p,山と渓谷・東京,1996) 5) 秋田谷英次(総説):「雪国の自然との共生」,『日本エネルギー学会誌』,76-2 p76-p81 (1997) ― 79 ― 大 畑 哲 夫(OHHATA,Tetsuo) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) 矢吹裕伯、大畑哲夫、上田豊:チベット高原凍土地帯の地表層過程の季節変化。1-地 表層の水分・熱的状態、水文・水資源学会誌、11(4), 324-335, (1998)*. 2) 矢吹裕伯、大畑哲夫、上田豊:チベット高原凍土地帯の地表層過程の季節変化。2-蒸 発量と地表層の水収支、水文・水資源学会誌、11(4), 336-345, (1998)*. 3) Kayastha, R., Ohata, T. and Ageta, Y.: Application of mass-balance model to a Himalayan glacier. J. Glaciology, 45(151), 559-567.(1999)* 2 総説・解説・評論等 1) Ohata, T. and Fukushima, Y. (1999): Progress of GAME-Siberia 1997-1998. Activity Report of GAME-Siberia. Japan Sub-committee for GAME-Siberia, 1-6, (1999). 2) Ohno, H., Ohata, T. and Yabuki, H. (1999): Snow amount measurement over north Eurasia with SSM/I signal. Activity Report of GAME-Siberia, Japan Sub-Committee for GAME-Siberia, 113-114, (1999). 4 学術講演 (3) シンポジウムのオーガナイザー 1) 大畑哲夫:GAME-MAGS International Workshop, Edmonton, Canada (1999) ― 80 ― 山 田 知 充(YAMADA,Tomomi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Kawashima,K. and Yamada,T.:"Experimental studies on the transformation from firn to ice in the wet snow zone of temperate glaciers",Annals of Glaciology, 24:181-185(1997)* (その他の論文) 1) 山田知充,伏見碩二, R.Aryal, 門田勤,藤田耕史,瀬古勝基,安成哲三:「ネパール・クン ブー地方「1995年パンガ雪崩」報告」,『雪氷』,58(2):145-155(1996) 2) “ Report on the investigations of Tsho Rolpa Glacier Lake, Rolwaling Valley”, WECS /JICA ,:35(1996) 3) Chikita,K.,Yamada,T.,Sakai,A. and Ghimire,R.P.:"Hydrodynamic effects on the basin expansion of Tsho Rolpa glacier lake in the Nepal Himalaya",Bulletin of Glacier Research,15:59-69(1997) 4) Watanabe, O., K. Kamiyama, H. Motoyama, M. Igarashi, S. Matoba, T. Shiraiwa, T. Yamada, H. shoji, S. Kanamori, N. Kanamori, M. Nakawo, Y. Ageta, s, Koga and K.Satow:"Preliminary reports on analyses of melted Dome Fuji Core obtained in 1993", Proceedings of the NIPR symposium on Polar Meteorology and glaciology, No. 11, 14-23(1997). 5) Yamada, T. : “Glacier lake and its outburst flood in the Nepal Himalaya.” Bulletin of Glacier Research, Monograph , 1 : 96 (1998) 6) Chikita, K., J. Jha and Yamada, T.:“ The Basin Expansion Mechanism of a Supraglacial Lake in the Nepal Himalaya. ”Journal of the Faculty of Science, Hokkaido university, Series II, 11(2), 501-521 (1998) 7) Chikita, K., J. Jha and T. Yamada (1999) Hydrodynamics of a supraglacial Lake and its Effect on the Basin Expansion: Tsho Rolpa, Rolwaling Valley, Nepal Himalaya. Arctic, Antarctic and Alpine Research, 31(1), 58-70. 2 総説、解説、評論等 1) 山田知充, 白岩孝行(解説):「ヒマラヤ・カラコルム地域における近年の氷河変動」, 『雪氷』, 57(3): 257-267(1995) 2)「ネパールの雪氷災害、クンブー地方パンガの雪崩遭難」,『ゆき』,24:58-64(1996) 3)「ネパール滞在記」,『雪氷』,58(3):258-259(1996) 4) 山田知充:「天測との出合い」(解説),『月刊「測量」』,47(7)(1997) 5) 山田知充:「ヒマラヤの氷河湖」(解説),(北大山の会編:『ロールワリン紀行』,4-7,北大 山の会ロルワリン編集委員会,札幌,1997) 6) 山田知充:「私の任国体験」(解説),『EXPERT』, 110:10-13 (1997) 3 著書 (2)共著 1) 山田知充:「ヒマラヤの氷河湖決壊洪水」,73-76(酒井治孝:『ヒマラヤの自然誌』,東京 大学出版会,東京,1997) 2) 山田知充:「ヒマラヤの雪崩」,210-215(酒井治孝:『ヒマラヤの自然誌』,東京大学出版 会,東京,1997) 4 学術講演(招待講演のみ) ― 81 ― (2)国際的,全国的規模のシンポジウム 1) “Monitoring of Himalayan cryosphere using satellite imagery”,The 2nd Space Informatics Seminar for Sustainable Development:Mountain Resources management, Kathmandu,Nepal(1996) 2) “Glacier lake and its outburst flood in the Nepal Himalaya.”,The seminar on the water induced disasters in the Nepal Himalaya held by The Water Induced Disaster Prevention Technical Center,Ministry of Water Resources, His Majesty's Government of Nepal,Kathmandu,Nepal(1996) ― 82 ― 西 村 浩 一(NISHIMURA,Kouichi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) K.Nishimura, F.Sundersen, K.Kristensen and K.Lied: "Measurements of Powder Snow Avalance -Nature-", Survey in Geophysics, 16: 58-67(1995)* 2) K.Kosugi, K.Nishimura and N.Maeno: "Studies on the Dynamics of Saltation in Drifting Snow", Rept. Natl. Res. Inst. for Earth Sci. and Prevention, 54: 111-1 54 (1995)* 3) K. Nishimura, Y. Nohguchi, Y. ito, K. Kosugi and K. Izumi:"Snow avalanche experiments at ski jump", Proc. International Conference of Avalanches and Related Subjects, Kirovsk, Russia,1996",49-59(1996)* 4) K. Nishimura and K. Izumi:"Seismic signals induced by snow avalanche flow", Proc. International Conference of Avalanches and Related Subjects, Kirovsk, Russia,1996",66-71(1996)* 5) Y. Nohguchi and K. Nishimura:"A head-tail structure of granular avalanches", Proc. International Conference of Avalanches and Related Subjects, Kirovsk, Russia,1996",39-44(1996)* 6) "Viscosity of fluidized snow",Cold Regions Sci. Tech., 24:117-127(1996)* 7) Y. Nohguchi, K. Nishimura, T. Kobayashi, K. Iwanami, K. Kawashima, Y.Yamada, H. Nakamura, K. Kosugi, O. Abe, A. Sato, Y. Endo, Y. Kominami and K. Izumi,: "Similarity of avalanche experiments by light particles", Proc. International Symposium INTERPRAEVENT,2:147-156(1996)* 8) Y. Fujiyoshi, Y. Kodama, K. Tsuboki, K. Nishimura and N. Ono: "Structures of cold air during the development of a broad band cloud and a meso-b-scale vortex", J. of Metor. Soc. Japan,74(3):281-297(1996)* 9) 小林俊市,納口恭明,河島克久,西村浩一,石井吉之,伊藤陽一:「混合機を用いた雪の造粒」, 『寒地技術論文・報告集』,208-211(1996)* 10) Nishimura,K. and Ito,Y.:"Velocity distribution in Snow Avalanches",Journal of Geophysical Research,102(B12):27297-27303(1997)* 11) Nishimura,K. and Izumi,K.:"Seismic Signals Induced by Snow Avalanche Flow", Natural Hazards, 15(1):89-100(1997)* 12) Sugiura,K.,Nishimura,K. and Maeno,N.:"Velocity and angle distributions of drifting snow particles near the loose snow surface", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 11:108-116(1997)* 13) Nishimura,K.,Nohguchi,Y.,Ito,Y.,Kosugi,K. and Izumi,K.:"Snow avalanche experiments at ski jump",Proc.International Conference of "Avalanche and Related Subjects, Kirovsk, Russia, 1996",49-59(1997)* 14) Nohguchi,Y. and Nishimura,K.:"A head-tail structure of granular avalanches", Proc.International Conference of "Avalanche and Related Subjects, Kirovsk, Russia, 1996",39-44(1997)* 15) Nishimura K.: "Snow avalanche dynamics: observations and experiments", Norwegian Geotechnical Institute Publication 203, Proceedings of 25 years of Snow Avalanche Research, Voss 12-16 May :192-197(1998)* 16) Nishimura, K., Keller, S., McElwaine, J. and Nohguchi, Y: "Ping-pong ball avalanche at a ski jump", Granular Matter, Vol. 1, No.2: 51-56(1998)* 17) Keller, S., Ito, Y., and Nishimura, K.: "Measurements of the velocity distribution in ping-pong ball avalanches", Annals of Glaciology, 26: 259-264 ― 83 ― (1998)* 18) Nishimura, K., Sugiura, K., Nemoto, M. and Maeno, N.: "Measurements and numerical simulations of snow-particle saltation", Annals of Glaciology, 26:184 -190(1998)* 19) Sugiura, K., Nishimura, K. and Maeno, N.: "Measurements of snow mass flux and transport rate at different particle diameters in drifting snow", Cold Regions science and Technology, 27: 83-89(1998)* 20) Yamaguchi, S., Shiraiwa, T., Nishimura, K., Matsumoto T., Kohshima, S., Muravyev, Y. and Naruse, R.: "Distribution and short-term variations of flow velocities at Koryto Glacier in the Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia, in 1997", Bulletin of Glacier Research, 16: 51-56(1998)* (その他の論文) 1) K. Nishimura, Y. Nohguchi, Y. Ito, K. Kosugi and K. Izumi,:"Snow Avalanche Experiments at Ski Jump", Proc.International Snow Science Workshop, ISSW '96 244-251 (1996) 2) Y. Nohguchi and K. Nishimura:"Head Formation in Light Granular Avalanches", Proc.International Snow Science Workshop, ISSW '96,:252-256(1996) 3) Y. Nohguchi, K. Nishimura, T. Kobayashi, K. Iwanami, K. Kawashima, Y. Yamada, H. Nakamura, K. Kosugi, O. Abe, A. sato, Y. Endo, K. Kominami and K.Izumi,: "Similarity on Head-tail Formation at the Edge of the Granular avalanches", Proc. of XIX International congress of theoretical and applied mechanics,57 (1996) 4) 西村浩一,秋田谷英次:「知床横断道路で発生した表層雪崩」,『北海道地区自然災害資料 センター報告』,10:35-39(1996) 5) 西村浩一,中川昌美:「Axial segregation」,『形の科学会報』,11(3): 60-62(1996) 6) 西村浩一,尾関俊浩,伊藤陽一,秋田谷英次:「中札内で発生した雪崩(1996年2月6日)の 調査報告」,『北海道地区自然災害資料センター報告』,12:19-26(1997) 7) 西村浩一,八久保晶弘,秋田谷英次:「定山渓で発生した雪崩(1996年3月23日)の調査報 告」,『北海道地区自然災害資料センター報告』,12:3-6(1997) 8) Nishimura,K.,Nohguchi,Y.,Ito,Y., Kosugi,K. and Izumi,K.:"Snow Avalanche Experiments at Ski Jump", International Snow Science Workshop, ISSW '96, 244251(1997) 9) Nohguchi,Y. and Nishimura,K.:"Head Formation in Light Granular Avalanches", International Snow Science Workshop, ISSW '96, 252-256(1997) 10) Hachikubo, A., McElwaine, J., Nemoto M., Kaihara, T., Yamada, T. and Nishimura, K.: "A study of an avalanche at the ski resort Niseko, Japan", Proceedings of the International Snow Science Workshop 1998, Sunriver, Oregon: 291-293(1998) 11) Ito, Y., Nishimura, K., Keller, S., McElwaine, J., Nohguchi, Y., and Izumi, K.: "Experiments and numerical simulation of ping-pong ball avalanches", Proceedings of the International Snow Science Workshop 1998, Sunriver, Oregon: 537-543(1998) 12) Kosugi, K., Abe, O., Sato, A., Nohguchi, Y., Nishimura, K., Ito, Y., Nemoto, M., and Izumi, K.: "Basal stress measurements of artificial avalanches", Proceedings of the International Snow Science Workshop 1998, Sunriver, Oregon: 260-264(1998) 13) 西村浩一、雪崩についてわかってきたこと、登山研修、Vol. 14, 123-127,1999 14) 西村浩一、ヨーロッパにおける雪崩災害(1998‐1999年)、ゆき、第37号, 35-39, 1999 ― 84 ― 2 総説, 解説, 評論等 1) 西村浩一:「雪崩の内部構造」(解説),『西村浩一編:気象研究ノート』,190: 21-36,日 本気象学会(1998) 2)西村浩一,納口恭明:「流れ型雪崩の数値モデル」(解説)『西村浩一編:気象研究ノート』 190:91-102,日本気象学会(1998) 3)納口恭明,西村浩一:「模擬雪崩の相似について」(解説)『西村浩一編:気象研究ノー ト』190:103-112,日本気象学会(1998) 4 学術講演(招請講演) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) Y. Nohguchi, T. Kobayashi, K. Iwanami, K. Nishimura and A. Sato: "Granulation of snow",International Conference of Snow Engineering, Sendai,(1996) 2) K. Nishimura, Y. Nohguchi, Y. Ito, K. Kosugi and K. Izumi: "Snow avalanche experiments at ski jump", International Conference of Avalanches and Related Subjects, Kirovsk, Russia (1996) 3) K. Nishimura and K. Izumi: "Seismic signals induced by snow avalanche flow", International Conference of Avalanches and Related Subjects, Kirovsk,Russia (1996) 4) Y. Nohguchi and K. Nishimura:"A head-tail structure of granular avalanches", International Conference of Avalanches and Related Subjects, Kirovsk, Russia (1996) 5) K. Nishimura, Y. Nohguchi, Y. ito, K. Kosugi and K. Izumi: "Snow Avalanche Experiments at Ski Jump", International Snow Science Workshop, ISSW '96,Banff, Canada (1996) 6) Y. Nohguchi and K. Nishimura:"Head Formation in Light Granular Avalanches", International Snow Science Workshop, ISSW '96, Banff, Canada(1996) 7) Y. Nohguchi, K. Nishimura, T. Kobayashi, K. Iwanami, K. Kawashima, Y.Yamada, H. Nakamura, K. Kosugi, O. Abe, A. Sato, Y. Endo, Y. Kominami and K. Izumi: "Similarity of avalanche experiments by light particles", International Symposium INTERPRAEVENT, Garmisch-Partenkirchen, Germany (1996) 8) Y. Nohguchi, K. Nishimura, T. Kobayashi, K. Iwanami, K. Kawashima, Y. Yamada, H. Nakamura, K. Kosugi, O. Abe, A. Sato, Y. Endo, K. Kominami and K.Izumi: "Similarity on Head-tail Formation at the Edge of the Granular avalanches", XIX International congress of Theoretical and Applied Mechanics, Kyoto, Japan (1996) 9) “Measurement and modeling of the transport of snow, sand, ice and dust particles over complex terrain”第22回 国際測地学地球物理学連合総会(IUGG 99) (バーミンガム、July,1999) Symposium J17-IUGG99 -Dynamics of Rotating and Stratified Fluids(3)シンポジウムのオーガナイザー 1) Nishimura,K.:"International Symposium on snow and avalanches", International Glaciological Society, Chamonix, France(1997) ― 85 ― 曽 根 敏 雄(SONE,Toshio) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1)「北海道置戸町鹿ノ子ダム,鹿ノ子大橋左岸の永久凍土の衰退」,『季刊地理学』,48:293 -302(1996)* 2) 山縣耕太郎,曽根敏雄:「カムチャッカ半島に分布する黒色火山灰土の層序と分布」,『第 四紀』,29:37-44(1997)* 3) 曽根敏雄,白岩孝行,北原智之:「大雪山白雲岳における礫質ソリフラクションロウブ の表面礫の移動」,『季刊地理学』,50:201-207(1998)* 4) Strelin, J. and Sone. T.:"Rock glaciers on James Ross Island, Antarctica", Proceedings of the 7th International Permafrost Conference,1027-1033(1998)* 5)曽根敏雄,原田鉱一郎,田中静幸:「別海町ケネヤウシュベツ川沿いのアースハンモッ ク」,『北海道地理』,73:1-9(1999)* 6)IGARASHI,Y., SONE,T., YAMAGATA, K., and MURAVYEV,Y.D.:”Late Holocene vegetation and climate history in the central Kamchatka from fossil pollen record”, Cryospheric Studies in Kamchatka, II: 125-130(1999)* (その他の論文) 1) Sone,T.,Yamagata,K. and Muravyev,Y.,D.:"Glacial and periglacial landforms along the Bystraja river of Esso, central Kamchatka", (Cryospheric Studies in Kamchatka I, 1-9, Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University, Sapporo,1997) 2) Yamagata,K., Sone,T. and Muravyev,Y.,D.:"Quaternary eolian deposits of Kamchatka", (Cryospheric Studies in Kamchatka I, 10-15, Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University, Sapporo, 1997) 2 総説、解説、評論など 1) 白岩孝行,曽根敏雄:「氷河と火山の大地:カムチャッカ,口絵」(解説),『地学雑誌』, 105:1-3(1996) 2) 白岩孝行,曽根敏雄:「カムチャッカ氷河紀行」(解説),『地理』,41:6-7(1996) 3) 「カムチャッカ氷河紀行(後編)―カムチャッカの山をあるく」(解説),『地理』,41: 36-39(1996) 4) 山縣耕太郎,曽根敏雄:「特集カムチャッカ,3.火山と寒冷地形」(解説)『地理』, 44:44-47(1999) 4 学術講演(招請講演) (2) 国際的、全国的規模のシンポジウム 1) Sone, T. and Strelin, J.: "Stone-banked terraces in Riscos Rink, James Ross Island, Antarctic Peninsula Region", 7th International Permafrost Conference, Yellow Knife, Canada (1998) ― 86 ― 寒冷生物圏変動 教授 原 登志彦、助教授 隅田明洋、助手 鈴木純一郎、 1.カムチャツカ半島における植生動態と環境変動の相互作用過程の解明 (原、隅田、 鈴木) Interactions between environmental variations and vegetation dynamics in Kamchatka: T.Hara, A. Sumida and J.Suzuki 1997年度よりロシアのカムチャツカにおいて以下の調査を行っている: (A) 土壌と気 候が北方林植生の垂直分布に与える影響(Bilchenok氷河西岸の尾根);(B)北方針広混交林の 動態とその群集維持機構(KozyrevskのPicea-Betula-Populus天然林およびLarix天然林);(C) 北方林の個体群維持にたいする萌芽形成の寄与(KozyrevskのPicea-Betula-Populus天然林) ;(D) Larix cajanderiの年輪を用いた年輪気候学による環境変動解析。現在までに、以下の ことが判明した:(A) 標高の上昇とともにBetula ermaniiの根系の深度が浅くなり、同時に樹 高の減少、萌芽率の増大が生じ、標高700mの場所で生育限界(高木限界)が生じていた;(B) Piceaの実生は、林冠ギャップよりもむしろ母樹の林冠下に集中して定着しており、ギャップ を有効に利用して更新しているとは言い難く、これにはギャップ内環境の特殊性(今のところ、 光合成系の「光障害」を仮説として考えている)が関与している可能性が高い。熱帯や温帯の 森林がギャップを利用して更新していることは良く知られた生態学の定説であるが(ギャップ 更新と呼ばれている)、カムチャツカの森林の更新様式である「林冠下更新」は、生態学的に 新しい発見である;(C) 萌芽部位の形態、萌芽幹の成長と回転速度の解析、異形葉の光合成特 性の解析、DNAを用いた個体識別(Populusに関して)、萌芽による場所取り効果の解析、実生 の分布と生残率の解析を現在行っている; (D) 年輪幅成長曲線の作成とその標準化作業を行 い、標準曲線と周辺の気候パラメータ値とを比較した結果、年輪幅と前年の8月の降水量、お よび前年夏季降水量(6月~8月)との間に正の相関を見出した。 この研究課題は、ロシア科学アカデミー・カムチャツカ生態学研究所との共同研究である。 2.寒冷陸域における植生、水、土壌の相互作用 (原、隅田、鈴木) Interactions between vegetation, water and soils in the cryosphere: T.Hara, A.Sumida and J.Suzuki 1998年度より、降雨の森林土壌への流入量、土壌水分、そして森林構造(個体サイズ頻 度分布、個体数密度、葉量など)の関係を北海道・母子里のダケカンバ林で調べ、森林土壌水 分の変動を記述する「森林構造ベースによる解析」を提唱した。ダケカンバ林の樹幹流と樹冠 通過雨量は降水量とダケカンバの個体サイズ、個体数密度、葉面積指数の関数として記述でき ることが重回帰分析によって明らかになった。そして、土壌pF値は、可能蒸発散量と正の相関 が、土壌への降雨の流入量とは負の相関があった。このように、降雨の森林土壌への流入量、 可能蒸発散量、土壌水分は降水量と森林構造の関数として記述できることが明らかとなった。 現在、土壌水分が植物の光合成を通じて森林の生長と構造に及ぼす影響を解析しており、植生 変動とエネルギー・水循環の相互作用に関するモデルを構築中である。 この研究課題は、北大農学部・雨龍地方演習林との共同研究である。 3.光合成の環境応答に関する生理生態学的研究 (原、隅田、鈴木) Ecophysiological study on the responses of photosynthesis to environments: T.Hara, A.Sumida and J.Suzuki 1998年度より、実験植物シロイヌナズナをさまざまな温度と光条件下で生育させ、その 生長と開花様式を光合成系の機能の面から研究している。光合成の「光障害」は、過剰なエネ ルギーによる活性酸素の発生によってもたらされることが知られている。活性酸素を除去する 酵素であるアスコルベートパーオキシダーゼ(APX)の活性と開花時期の関係を調べた結果、負 の相関があることが判明した。このことは、光合成の「光障害」による活性酸素の発生がスイ ― 87 ― ッチとなり開花などの植物の生活環の転換が起こっていることを示唆している。この仮説に基 づき、常緑樹はなぜ冬でも葉を落とさないのか、落葉樹はなぜ冬に葉を落とすのか、そのメカ ニズムを解明しようとしている。以上の生理生態学的な成果は、上記(1)の「林冠下更新」 のメカニズムの解明や、(2)の相互作用モデルに組み込む予定である。 この研究課題は、当グループの大学院生Shubhangi Lokhandeを中心に、小川健一(岡山県生 物科学総合研究所・細胞機能解析研究室長)、田中歩(低温研・低温基礎科学部門教授)との 共同研究である。 ― 88 ― 原 登志彦(HARA,Toshihiko) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) T.Hara and M.Srutek: "Shoot Growth and Mortality Patterns of Urtica Dioica, A Clonal Forb",Annals of Botany, 76: 235-243(1995)* 2) M.Yokozawa and T.Hara: "Foliage Profile, Size Structure and Stem Diameter-plant Height Relationship in Crowded Plant Populations", Annals of Botany, 76: 271-28 5(1995)* 3) T.Hara, N.Nishimura and S.Yamamoto : "Tree Competition and Species Coexistence in a Cool-temperate Old-growth Forest in Southwestern Japan", Journal of Vegetation Science, 6: 565-574(1995)* 4) Y.Kubota and T.Hara: "Tree Competition and Species Coexistence in a Sub-boreal Forest, Northern Japan", Annals of Botany, 76: 503-512(1995)* 5) T.Hara: "Dynamic Process, Spatial Pattern and Species Coexistence in Plants", Folia Geobotanica et Phytotaxonomica, 30: 529-533(1995)* 6) S.Kawano and T.Hara : "Optimal Balance between Propagule Output,Propagule Size and Cost of Propagule Production in Plants, and Its Evolutionary-ecological Implications", Plant Species Biology, 10: 119-125(1995)* 7) Y.Kubota and T.Hara:“ Allometry and competition between saplings of Picea jezoensis and Abies sachalinensis in a sub-boreal coniferous forest, northern Japan”,Annals of Botany,77: 529-537(1996)* 8) B.Li,A.R.Watkinson and T.Hara:“Dynamics of competition in populations of carrot (Daucus carota L.) ”, Annals of Botany,78: 203-214(1996)* 9) M.Yokozawa,Y.Kubota and T.Hara:“ Crown architecture and species coexistence in plant communities.”, Annals of Botany, 78: 437-447(1996)* 10) Y.Kubota and T.Hara:“ Recruitment processes and species coexistence in a subboreal forest in northern Japan”,Annals of Botany,78:741-748(1996)* 11) Skalova, H., Pechackova, S., Suzuki, J., Herben, T., Hara, T., Hadincova, V. and Krahulec, F.:"Within population genetic differentiation in traits affecting clonal growth: Festuca rubra in a montain grassland", Journal of Evolutionary Biology,10:383-406(1997)* 12) Hara, T. and Herben, T.:"Shoot growth dynamics and size-dependent shoot fate of a clonal plant, Festuca rubra, in a mountain grassland", _Researches on Population Ecology, 39:83-93(1997)* 13) Yokozawa, M., Kubota, Y. & Hara, T.:“ Effects of competition mode on spatial pattern dynamics in plant communities”, Ecological Modelling 106: 1-16(1998)* 14) Li, B., Suzuki, J. & Hara, T.:“ 1998. Latitudinal variation in plant size and relative growth rate in Arabidopsis thaliana”, Oecologia 115: 293-301(1998)* 15) Yokozawa, M., Kubota, Y. and Hara, T. :“Relationships between competitive asymmetry of individuals and local size distributions in plant communities”, Ecosystems and Sustainable Development 1: 467-476(1998)* 16) Li, B. & Hara, T. 1999. On the relative yield of plants in two-species mixture: a theoretical consideration. Oikos 85: 170-176*. 17) Yokozawa, M. & Hara, T. 1999. Global vs. local coupling models and theoretical stability analysis of size-structure dynamics in plant populations. Ecological Modelling 118: 61-72*. 18) Yokozawa, M., Kubota, Y. & Hara, T. 1999. Effects of competition mode on the ― 89 ― spatial pattern dynamics of wave regeneration in subalpine tree stands. Ecological Modelling 118: 73-86*. 19) Suzuki, J., Herben, T. Krahulec, F. & Hara, T. 1999. Size and spatial pattern of Festuca rubra genets in a mountain grassland: its relevance to genet establishment and dynamics. Journal of Ecology 87: 942-954*. 20) Li, B., Suzuki, J. & Hara, T. 1999. Competitive ability of two Brassica varieties in relation to biomass allocation and morphological plasticity under varying nutrient availability. Ecological Research 14: 255-266*. 2 総説、解説、評論等 1) 原 登志彦(総説):「植物集団における競争と多種の共存」,『日本生態学会誌』,45:16 7-172(1995) 3 著書 (2)共著 1) M.Srutek and T.Hara :"Urtica dioica L. - a dominant plant of abandoned floodplains",147-153(K.Prach,J.Jenik and A.R.G.Large:Floodplain Ecology and Management,SPB Academic Publishing,The Hague,The Netherlands)(1996) 2) Herben, T. and Hara, T. "Competition and spatial dynamics of clonal plants", 331-357 (de Kroon, H. and van Groenendael, J:The Ecology and Evolution of Clonal Plants, Backhuys Publishers, Leiden, The Netherlands)(1997) ― 90 ― 佐 藤 利 幸(SATO,Toshiyuki) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) S.Kano and T.Sato :"Differential Fractals of Pinnation Pattern on Fern Leafblade",Forma,10:17-21(1995)* (その他の論文) 1) T.Sato and M.Fukuda :"Biodiversity and Vegetation Patterns of Arctic Plants with Scaling; A Consideration from Permafrost Contribution in Siberia", (eds. K.Takahashi, A.Osawa and S.Kanazawa: Proc.3rd Symposium on the Joint Siberian Permafrost Studies between Japan and Russia in 1994,177-182, FFPRI, Sapporo, 19 95) 2) T.Sato: "Flora and Life form Similarities Among Localities in Northeast Siberia, with Respect to Adaptive Radiation and Convergence for Coexistence" (eds. K.Takahashi, A.Osawa and S.Kanazawa: Proceedings of the Third Symposium on the Joint Siberian Permafrost Studies between Japan and Russia in 1994, 183-186, FFPRI, Sapporo, 1995) 3) K.C.Volotovsky, H.Takahashi and T.Sato, "The Brief Taxonomic Analysis of Some Arctic-alpine Floras from Yakutia to Japan", (eds. N.G.Solomonov, B.I.Ivanov and M.Toda: Proceedings of the Symposium of Joint Siberian Permafrost Studies between Japan and Russia in 1992-1994, 49-52, Yakutsk Institute of Biology, Yakutsk, Russia, 1995) 4) T.Sato, G.Kudo, H.Takahashi, K.C.Volotovsky and B.I.Ivanov : "Biodiversity in Eastern Siberia and Northern Most Japan in Small Scales", (eds. N.G.Solomonov, B.I.Ivanov and M.Toda: Proceedings of the Symposium of Joint Siberian Permafrost Studies between Japan and Russia in 1992-1994, 53-59, Yakutsk Institute of Biology, Yakutsk, Russia, 1995) 5) 福田正己, 佐藤利幸 :「気候変動がシベリア永久凍土に与える影響」,『学術月報』,48: 17-24(1995) 3 著書 (2)共著 1) 佐藤利幸 :「草花と樹の冬」,170-176 (菊池勝広:『札幌の冬』,北海道新聞社,札幌) (1995) ― 91 ― 鈴 木 準一郎(SUZUKI, Jun-ichirou) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Skalova, H., Pechackova, S., Suzuki, J., Herben, T., Hara, T., Hadincova,V. and Krahulec, F.: "Within population genetic differentiation in traits affecting clonal growth: Festuca rubra in a mountain grassland" Journal of Evolutionary Biology, 10:383-406 (1997)* 2) Li, B., Suzuki, J.I., Hara, T. Latitudinal variation in plant size and relative growth rate in Arabidopsis thaliana Oecologia 115: 293-301(1998)* 3) Suzuki, J., Stuefer, J.F. On the ecological and evolutionary significance of storage in clonal plants. Plant Species Biology 14, 11-17(1999)* 4) Li, B., Suzuki, J.,Hara,T. Competitive ability of two Brassica varieties in relation to biomass allocation and morphological plasticity under varying nutrient availability. Ecological Research 14, 255-266 (1999)* 5) Suzuki, J., Herben,T., Krahulec, K., Hara, T. Size and spatial pattern of Festuca rubra genets in a mountain grassland: its relevance to genet establishment and dynamics. Journal of Ecology 87, 942-954. (1999)* 3 著書 (2) 共著 1) Suzuki, J. and Hutchings, M.J. :"Interactions between shoots in clonal plants and the effects of stored resources on the structure of shoot populations", 311 -329 (de Kroon, H. and van Groenendael, J.:The ecology and evolution of clonal plants, Backhuys Publishers, Leiden) (1997) 4 学術講演(招請講演) (2) 国際的,全国的規模のシンポジウム 1) "Shoot competition and allocation of stored resources between shoots in perennial plants", Silwood Park Ecology and Evolution Seminar Series. NERC Centre for Population Biology, Imperial College at Silwood Park, Ascot, UK (1996) 2) Suzuki, J.I., Kubo, T. A simulation analysis of effects of plastic allocation of resources to storage on a size hierarchy in a population of a perennial plant under variable environmental heterogeneity International Workshop on 'Phenotypic plasticity in plants: Consequences of non-cognitive behavior' BenGurion University of the Negev, Sede-Boker, Israel(1998) ― 92 ― 氷河氷床 助教授 成瀬廉二、助手 白岩孝行 1.カービング型氷河の変動機構-パタゴニア・ウプサラ氷河、ペリートモレノ氷河-(成瀬) Mechanism of variations of calving glaciers - Upsala and Perito Moreno Glaciers, Patagonia - : R. Naruse 海洋や湖に末端が流出しているカービング型氷河の変動は、同時代の気候変動傾向とは一致 しないことが多い。パタゴニア南氷原から東側の湖へ流出するウプサラ氷河において、現地調 査および衛星データをもとに過去30年間の氷河変動を明らかにし、その変動機構を考察した。 その結果、氷河底の凸部からの応力(backstress)および氷河流動方向の伸張が氷河変動に重要 な影響を与えていることが分かった。 同じく同氷原から湖へ流出するペリートモレノ氷河において、1999年12月、氷河消耗域の表 面プロファイルの測量、および氷河末端部の流動速度とカービングの観測を行った。同氷河の 消耗域は、過去10年間ほぼ平衡状態にあったことが明らかとなった。後退傾向の氷河が多いパ タゴニアにて特異な存在である。氷河末端付近の流動速度は1.5-2.5 m/dであった。今後、カ ービング速度を支配する要因を考察し、氷河モデルに組み込む。 2.温暖氷河の動力学的特性―パタゴニア・ソレール氷河― (成瀬) Dynamic features of temperate glaciers - Soler Glacier, Patagonia - : R. Naruse パタゴニア北氷原から東側の谷へ流出するソレール氷河において、1998年11-12月、氷厚変 動、流動、歪、融解量、熱収支、水文学等に関する現地調査を行った。その結果、過去13年間 で平均40 m(3 m/yr)という大きな氷厚減少値を得た。また氷河流動速度の日々変動の測定の 結果、底面すべりが卓越していることが分かった。氷河のモデル計算の結果、同氷河の応答時 間は100年程度であることが明らかとなった。なお本研究は、地球環境科学研究科の大学院生、 山口悟、松元高峰、大野浩と共同で行った。 3.パタゴニア北氷原の雪掘削-ネッフ氷河- (成瀬) Firn coring at the Northern Patagonia Icefield - Nef Glacier - : R. Naruse パタゴニア氷床上の質量収支を見積もる目的で、1996年12月、ネッフ氷河の涵養域(標高15 00m)にて深さ15mの掘削を行った。雪コアの層構造と酸素安定同位体比、および周辺の気象デ ータの解析の結果、同地点の1996年冬期の涵養量は3.5m(水当量)、1996年の正味収支は約 +2mと見積もられた。なお本研究は、地球環境科学研究科の大学院生、松岡健一が中心となっ て行った。 4.パタゴニア南氷原の雪氷掘削-チンダル氷河- (白岩) Firn coring at the Southern Patagonia Icefield - Tyndall Glacier - : T. Shiraiwa パタゴニア南氷原のチンダル氷河涵養域(標高1800m)にて、1999年11-12月、浅層掘削を実 施した。掘削には、低温研技術部と共同で開発した新型浅層メカニカルドリルを使用した。悪 天に悩まされたが、全長46mの雪氷コアを採取した。現在、コアの酸素・水素同位体比(東工 大)、バクテリア(東工大)および無機イオン(低温研)の分析を実施中である。 5.カムチャツカ・ウシュコフスキー氷冠の雪氷コア解析による環境変動 (白岩) Reconstruction of paleo-environment from firn core of Ushkovsky ice cap, Kamchatka : T. Shiraiwa カムチャツカ半島中央部のウシュコフスキー氷冠において、表層コア(1996、1997年)および 中層コア(1998年)を掘削した。これらのコアにつき、酸素・水素同位体(北大・地球環境研と 共同)および無機イオンの測定を行った。その結果、1)酸素・水素同位体比およびD excessに 季節変化と思われる周期的な変動が、2)硝酸イオンにも季節変化が、3)硝酸以外の無機イオン ― 93 ― には火山ガスの影響と思われるイベントピークが、認められた。現在、様々なシグナルを用い て、同氷冠における過去の質量収支変動の復元を試みている。 6.カムチャツカ・ウシュコフスキー氷冠の動力学特性 (白岩) Dynamic characteristics of Ushkovsky ice cap, Kamchatka : T. Shiraiwa ロシアのA. Salamatin教授(Kazan大学)と共同で、クレーター氷河の熱・力学結合モデルを 開発した。このモデルに基づき、2次元の流線に沿った流動の軌跡および氷の年代値を解析的 に求めた。また、全長212mのコアの結晶ファブリックによると、深度180m付近より上方では水 平成分として収束流が、下方では剪断が卓越することが判明した。 7.カムチャツカ・ウシュコフスキー氷冠の雪氷の結晶構造 (白岩、成瀬) Textures of snow and ice of Ushkovsky ice cap, Kamchatka : T. Shiraiwa and R. Naruse ウシュコフスキー氷冠コアに見られる融解再凍結層の成因を調べるため、積雪内の水の再凍 結過程に関する実験を行った。その結果、急激な温度勾配下では結晶粒径が小さくなり、緩や かな温度勾配下では結晶粒径が大きくなる傾向が認められた。この関係を用いれば、コア中の 再凍結氷の結晶構造から再凍結氷形成時の温度条件を推定できる可能性があることが判った。 なお本研究は、大野浩(大学院地球環境科学研究科)の修士研究として実施された。 8.カムチャツカ・カレイタ氷河の質量収支およびダイナミックス特性 (白岩、 成瀬) Characteristics of mass-balance and dynamics of Koryto Glacier, Kamchatka : T. Shiraiwa and R. Naruse カムチャツカ半島の氷河の中では最も低高度に位置するカレイタ氷河において、1996年と19 97年の2回にわたり、質量収支、流動、水文、気象、地形等の観測を行った。得られた気温と 融解量の関係、ならびに浅層掘削による冬期涵養量の値から、両年の涵養量、消耗量、質量収 支を見積もった。その結果、この氷河は、世界的にみても極めて多涵養・多消耗な条件下で発 達していることが判明した。また、氷河上流の年間流動速度は、1960年代のロシア側研究者の 測定値と比較すると30m/a程度遅くなっていた。氷河末端付近における流動速度は、昼間に最 大(2.4cm/d)、明け方に最小(1.2cm/d)となる傾向が見られ、同氷河が底面滑りを起こしてい ることが判明した。さらに、氷河から流出する小川の化学成分分析から、河川水の流下経路を 氷体内と氷河底面とにおおよそ分離することができた。なお本研究は、地球環境科学研究科の 大学院生、山口悟、松元高峰と共同で行った。 9.カムチャツカ・ビルチェノク氷河のダイナミックス特性 (成瀬、白岩) Dynamic features of Bilchenok Glacier, Kamchatka : R. Naruse and T. Shiraiwa カムチャツカ・ウシュコフスキー氷冠から溢流するビルチェノク氷河において、1998年7-8 月に、氷河形態、流動、気象、水文の観測を行った。同氷河は、1982年にサージを起こし、現 在は静穏期にある。氷河表面に見られる横断方向の凹凸起伏の繰り返しは、サージ期-静穏期 の流動速度の差により生じた可能性を示唆した。なお本研究は、低温研COE非常勤研究員澤柿 教伸、および地球環境科学研究科の大学院生、山口悟・松元高峰が中心となって行った。 10.南極氷床内陸域における昇華凝結過程と積雪の誘電率特性 (白岩) Processes of sublimation-condensation and dielectric property of snow in the Antarctic ice sheet : T. Shiraiwa 南極氷床ドームふじにおいて夏期の昇華凝結量と積雪表面の熱収支を観測した。日中の昇華 量は最大10-1 kg m-2に、夜間の凝結量は2x10-2 kg m-2に達することが判明した。結果的に、1994/ 95の夏の2ヶ月間のドームふじでは昇華蒸発が昇華凝結を上回った。この期間の平均熱収支は、 正味放射、積雪中への熱伝導、潜熱、顕熱の各フラックスはそれぞれ12, -4, -1, -7 Wm-2であ った。また同期間、昇華蒸発の進行とともに、表面積雪の酸素同位体比が重くなる傾向が見ら れた。 ― 94 ― 一方、東南極氷床の沿岸からドームふじに至る横断線に沿って、表面積雪の誘電率を測定し、 層構造の空間分布を明らかにした。その結果、標高1000-2000/2300mは、「圧密雪・こしもざ らめ帯」、標高2000/2300-3500mは「風成圧密雪・しもざらめ帯」、標高3500m以高は「しもざ らめ・こしもざらめ互層帯」として区分され、空間的に異なる誘電率をもっていることがわか った。特に、最高所の「しもざらめ・こしもざらめ互層帯」は、誘電率が層毎に大きく変わる ことから、マイクロ波衛星データなどを用いてこの領域を空間的に把握することが可能である ことを指摘した。 11.南極氷床底面氷の形成過程 (成瀬、白岩) Formation processes of basal ice in Antarctica : R. Naruse and T. Shiraiwa 南極氷床末端ハムナ氷瀑において採取された底面氷の物理・化学解析を行い、その形成過程 を考察した。底面氷の酸素・水素安定同位体比の値から、ハムナ底面氷は氷床内陸における氷 期の降雪を起源としていることが分った。厚さ7 mの同底面氷は上部層(5.5m)と下部層(1.3m) に分けられる。上部は数cm以下の透明氷と気泡氷の互層であり、固体粒子が散在し、総陽イオ ン濃度は低い。一方下部は50cm以上の透明氷層によって形成され、固体粒子が層構造を成し、 総陽イオン濃度は高い。以上の解析から、底面氷上部は基盤の凹凸で生じた復氷とその後の褶 曲、底面氷下部は上流から流入した融解水の再凍結によって形成されたと考えられる。なお本 研究は、飯塚芳徳(大学院地球環境科学研究科)の修士研究として実施された。 12.大雪山系の雪渓の質量収支変動 (白岩、成瀬) Fluctuations in mass-balance of a snowpatch in the Daisetsu Mountains, Hokkaido : T. Shiraiwa and R. Naruse 北海道大雪山系の多年性雪渓の一つ、ヒサゴ雪渓における1985~1997年の13年間の雪渓体積 の測量結果をとりまとめた。その結果、(a)ヒサゴ雪渓の越年規模は2~3年周期で増減を繰り 返している、(b)ヒサゴ雪渓の質量収支は旭川の夏期気温と冬期降水量とよい相関関係がある、 (c)その関係を用いると、1890~1914年は毎年の質量収支が常に正であるのに対し、1914年以 降は2~3年周期で増減を繰り返すという異なる傾向を示した。なお本研究は、地球環境科学研 究科の大学院生、山口悟と共同で行った。 13.積雪の不飽和透水係数 (成瀬) Unsaturated hydraulic conductivity of snow : R. Naruse 氷河上層のフィルン層や積雪中への融解水の浸透や滞水過程を支配する雪の不飽和透水係数 を、実験により測定した。その結果、不飽和透水係数は同一の雪でも含水率の減少にともない、 べき乗の関係で減少することが分かった。また同係数は雪質によって大きく異なるので、しま り雪とざらめ雪が互層構造をもつとき、含水率によっては浸透を阻害し、層境界に滞水層を形 成することが示された。なお本研究は、杉江伸祐(大学院地球環境科学研究科)の修士研究と して実施された。 14.マイクロ波レーダによる氷河形態特性 (白岩、成瀬) Morphological features of glaciers revealed by micro-wave radar : T. Shiraiwa and R. Naruse JERS-1のSARデータを利用して、ウシュコフスキー氷冠を対象に氷体内の構造探査の予備的 分析を実施した。その結果、SARデータは表面の融解を極めて敏感に検出することが判った。 ただし、乾雪が対象の場合、表面散乱と体積散乱の両方を検出するため、大きな後方散乱係数 が得られることが判明した。また、氷冠の一部では、基盤からの散乱も検出している可能性が 示された。なお本研究は、COE非常勤研究員松岡建志と共同で実施した。 15.インパルス式アイスレーダによる氷河内部構造 (成瀬、白岩) Internal structures of glaciers with the use of impulse ice radar : R. Naruse and ― 95 ― T. Shiraiwa 山岳氷河の氷厚や内部情報を得るためのインパルス式アイスレーダ開発のための予備的調査 を行った。ウシュコフスキー氷冠において、1996年は中心周波数4MHzのレーダ、1997年は4MHz、 5MHz、100MHzを組み合わせた多周波レーダシステムを用いて観測を行った。その結果、クレー ターの最深氷厚240mを得た。これらの経験をふまえ、現在、軽量、可搬、省電力のインパルス 式アイスレーダの開発を行っている。なお本研究は、地球環境科学研究科の大学院生、松岡健 一と共同で行っている。 ― 96 ― 成 瀬 廉 二(NARUSE,Renji) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) R.Naruse, M.Aniya, P.Skvarca and G.Casassa : "Recent variations of calving glaciers in Patagonia,South America,revealed by ground surveys, satellite-data analyses and numerical experiments", Annals of Glaciology, 21: 297-303 (1995)* 2) R.Naruse and M.Aniya: "Synopsis of Glacier Researches in Patagonia, 1993", Bulletin of Glacier Research, 13: 1-10(1995)* 3) R.Naruse, P.Skvarca, K.Satow, Y.Takeuchi and K.Nishida : "Thickness change and short-term flow variation of Moreno Glacier, Patagonia", Bulletin of Glacier Research, 13: 21-28(1995)* 4) P.Skvarca, K.Satow, R. Naruse and J.C.Leiva : "Recent thinning, retreat and flow of Upsala Glacier, Patagonia", Bulletin of Glacier Research,13: 11-20 (1995) 5) Y.Takeuchi, K.Satow, R.Naruse, T.Ibarzabal, K.Nishida and K.Matsuoka: "Meteorological features at Moreno and Tyndall Glaciers, Patagonia,in the summer 1993/94", Bulletin of Glacier Research, 13: 35-44(1995)* 6) Y.Takeuchi, R.Naruse and K.Satow : "Characteristics of heat balance and ablation on Moreno and Tyndall Glaciers, Patagonia, in the Summer 1993/94", Bulletin of Glacier Research, 13: 45-56(1995)* 7) T.Ibarzabal y Donangelo, J.A.J.Hoffmann and R.Naruse:“Recent climate changes in southern Patagonia”,Bulletin of Glacier Research,14: 29-36(1996)* 8) Y.Takeuchi, R.Naruse and P.Skvarca :“Annual air-temperature measurement and ablation estimate at Moreno Glacier, Patagonia”,Bulletin of Glacier Research, 14: 23-28(1996)* 9) M.Aniya, H.Sato, R.Naruse, P.Skvarca and G.Casassa :“The use of satellite and airborne imagery to inventory outlet glaciers of the Southern Patagonia Icefield, South America”,Photogrammetric Engineering & Remote Sensing,62(12):1361 -1369(1996)* 10) Naruse, R., Skvarca, P. and Takeuchi, Y. : "Thinning and retreating of Glaciar Upsala, and an estimate of annual ablation changes in southern Patagonia", Annals of Glaciology, 24: 38-42(1997)* 11) Skvarca, P. and Naruse, R.: "Dynamic behaviour of Glaciar Perito Moreno, southern Patagonia", Annals of Glaciology , 24: 268-271 (1997)* 12) Aniya, M., Sato, H., Naruse, R., Skvarca, P. and Casassa, G.: "Recent glacier variations in the Southern Patagonia Ice field, South America", Arctic and Alpine Research, 29(1): 1-12(1997)* 13) Yamaguchi, S., Shiraiwa, T., Muravyev, Y. D., Glazirin, G. E. and Naruse, R.: " Flow of Koryto Glacier in the Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia",Bulletin of Glacier Research, 15: 47-52(1997)* 14) Naruse, R. and Leiva, J. C.: "Preliminary study on the shape of snow penitents at Piloto Glacier, the central Andes", Bulletin of Glacier Research,15: 99-104 (1997)* 15) 劉大力,小野有五,成瀬廉二:「最終氷期における日高山脈の氷河の質量収支特性」,『地 形』,19,2:91-106 (1998)* 16) Yamaguchi, S., Shiraiwa, T., Nishimura, K., Matsumoto, T., Kohshima, S.,Muravyev, Y. and Naruse, R. : Distribution and short-term variations of flow ― 97 ― velocities at Koryto Glacier in the Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia, in 1997. Bulletin of Glacier Research, 16: 51-56 (1998)*. 17) Aniya, M. and Naruse, R. : Late-Holocene glacial advance at Glaciar Soler, Hielo Patagonico Norte, South America. 地形(Transactions, Japanese Geomorphological Union)、20巻、2号、69-83. (1999)* 18) Takeuchi, Y., Naruse, R., Satow, K. and Ishikawa, N.: Comparison of heat balance characteristics at five glaciers in the Southern Hemisphere. Global and Planetary Change, 22, 201-208. (1999)* 19) Matsuoka, K. and Naruse, R. : Mass balance features derived from a firn core at Hielo Patagonico Norte, South America. Arctic, Antarctic and Alpine Research, Vol. 31, No.4, 333-340. (1999)* (その他の論文) 1) Watanabe, O., Fujii, Y., Motoyama, H., Furukawa, T., Shoji, H., Enomoto, H., Kameda, T., Narita, H., Naruse, R., Hondoh, T., Fujita, S., Mae, S., Azuma, N., Kobayashi, S., Nakawo, M. and Ageta, Y. : "A preliminary study of ice core chronology at Dome Fuji Station, Antarctica", Proceedings of the NIPR Symposium on Polar Meteorology and Glaciology, 11: 9-13(1997) 2) 松岡健一,白岩孝行,浦塚清峰,大井正行,前野英生,山口悟,Muravyev, Y.D.,成瀬廉二,前 晋爾:「ロシア連邦カムチャツカ半島のウシュコフスキー氷冠におけるアイスレーダ観 測」,『雪氷』,59(4): 257-262(1997) 3) 劉大力,小野有五,成瀬廉二:「最終氷期における日高山脈の氷河の流動の復元」,『雪 氷(報文)』,60,1:47-54 (1998) 4) 山口悟,白岩孝行,成瀬廉二:「大雪山系ヒサゴ雪渓の最近の質量収支の変動」,『雪氷 (報文)』,60,4 :279-287 (1998) 5) 杉浦幸之助・成瀬廉二:落下による雪氷塊の飛散に関する研究.寒地技術シンポジウム' 99、寒地技術論文・報告集、Vol.15、13-20. (1999) 2 総説、解説、評論等 1) 成瀬廉二(解説):「パタゴニア氷河の動力学および消耗特性」,『雪氷』,57(3),245-25 6(1995) 2) M.Aniya and R.Naruse(総説):"A Study of Glacier Variations in Patagonia, South America, Utilizing SAR images", Final Report of JERS-1/ERS-1 System Verification Program, NASDA,Vol. II: 555-562(1995) 3 著書 (2) 共著 1) 成瀬廉二,西尾文彦:「南極-白い大陸-」,27-37(福田正己,香内晃,高橋修平:「極地 の科学」,北大図書刊行会, 札幌)(1997) 2) 成瀬廉二:「氷河の流動」,33-81(藤井理行,小野有五:「基礎雪氷学講座IV-氷河-」, 古今書院,東京)(1997) ― 98 ― 白 岩 孝 行(SHIRAIWA,Takayuki) 1 学術論文] (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) H.Motoyama, H.Enomoto, T.Furukawa, K.Kamiyama, H.Shoji, T.Shiraiwa, O.Watanabe, K.Namasu and H.Ikeda: "Preliminary study of ice flow observations along traverse routes from coast to Dome Fuji,East Antarctica by differential GPS method", The Antarctic Record, 39: 94-98(1995)* 2) T.Shiraiwa,H.Shoji,T.Saito,K.Yokoyama and O.Watanabe:"Structure and dielectric properties of surface snow along the traverse route from coast to Dome Fuji Station, Queen Maud Land, Antarctica", Proc.NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol.,10:1-12(1996)* 3) H.Enomoto, H.Warashina, T.Saito and T.Shiraiwa:"Interannual variability of sea ice concentrations in Syowa Station sector deduced from DMSP SSM/I data", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol.,10 119-126(1996)* 4) Watanabe,O.,Kamiyama,K.,Motoyama,H.,Igarashi,M.,Matoba,S.,Shiraiwa,T.,Yamada, T.,Shoji,H.,Kanamori,S.,Kanamori,N.,Nakawo, M., Ageta,Y.,Koga,S. and Satow,K.: “Preliminary report on analyses of melted Dome Fuji ice core obtained in 1993”, Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol.,11:14-23(1997)* 5) Kameda,T.,Takahashi,S.,Enomoto,H.,Azuma,N.,Shiraiwa,T.,Kodama,Y.,Furukawa,T., Watanabe,O.,Weidner,G.A. and Stearns,C.R.:“Meteorological observations along a traverse route from coast to Dome Fuji Station, Antarctica, recorded by automatic weather stations in 1995”,Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 11:35-50(1997)* 6) Shiraiwa,T.,Muravyev,Y.and Yamaguchi,S.:“Stratigraphic features of firn as proxy climate signals at the summit ice cap of Ushkovsky Volcano, Kamchatka, Russia”,Arctic and Alpine Research,29(4):414-421(1997)* 7) 松岡健一,白岩孝行,浦塚清峰,大井正行,前野英生,山口悟,Y.D.Muravyev,成瀬廉二,前晋 爾:「ロシア連邦カムチャツカ半島のウシュコフスキー氷冠におけるアイスレーダー観 測」,『雪氷』,59(4):257-262(1997)* 8) Takahashi, S., Kameda, T., Enomoto, H., Shiraiwa, T., Kodama, Y., Fujita,S., Motoyama, H., Watanabe, O., Weidner, G.A. and Sterns, C.R. : "Automatic weather station program during Dome Fuji Project by JARE in east Droning Maud Land, Antarctica", Annals of Glaciology, 27: 528-534 (1998)* 9) Watanabe, T., Liu, Dali and Shiraiwa,T. : "Slope denudation and the supply of debris to cones in Langtang Himal, Central Nepal Himalaya", Geomorphology, 26:185-197 (1998)* 10) Enomoto, H., Motoyama, H., Shiraiwa, T., Saito, T., Kameda, T., Furukawa,T., Takahashi, S., Kodama, Y. and Watanabe, O. : "Winter warming over Dome Fuji, east Antarctica and semiannual oscillation in the atmospheric circulation", Journal of Geophysical Research, 103, D18, 23103-23111 (1998) * (その他の論文) 1) Shiraiwa,T.,Muravyev,Y.,Yamaguchi,S.,Glazirin,G.,Kodama,Y. and Matsumoto,T.: “Glaciological features of Koryto Glacier in the Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia”,Bulletin of Glacier Research,15:27-36(1997) 2) Kobayashi,D.,Muravyev,Y.D.,Kodama,Y. and Shiraiwa,T.:“An outline of RussoJapanese joint glacier research project in Kamchatka, 1996”,Bulletin of Glacier ― 99 ― 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) 11) 12) 13) 14) 15) 16) 17) 18) Research,15:19-26(1997) Kodama,Y.,Matsumoto,T.,Glazirin,G.,Muravyev,Y.,Shiraiwa,T. and Yamaguchi,S.: "Hydrometeorological features of Koryto Glacier in the Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia",Bulletin of Glacier Research,15:37-45(1997) Yamaguchi,S.,Shiraiwa,T.,Muravyev,Y.,Glazirin,G. and Naruse,R.:“Flow of Koryto Glacier in the Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia”,Bulletin of Glacier Research,15:47-52(1997) 山口悟,白岩孝行,成瀬廉二: 「大雪山ヒサゴ雪渓の最近の質量収支変動」, 『雪氷』, 60, 4: 279-287 (1998) 曽根敏雄,白岩孝行,北原智之: 「大雪山白雲岳におけるレキ質ソリフラクションロー ブの表面レキの移動」, 『季刊地理学』, 50, 3: 201-207 (1998) Glazirin, G.E., Shiraiwa, T. and Yamaguchi, S. : "The reason of Hisago snow patch stability", Proceedings of SANIGMI, 157 (238): 5-8 (1998) Yamaguchi, S., Shiraiwa, T., Nishimura, K., Matsumoto, T., Kohshima, S., Muravyev, Y. and Naruse, R. : "Distribution and short-term variations of flow velocities at Koryto Glacier in the Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia, in 1997", Bulletin of Glacier Research, 16: 51-56 (1998). Naito, N., Nakawo, M., Aoki,T., Asahi,K., Fujita,K., Sakai,A., Kadota,T., Shiraiwa,T. and Seko,K.: "Surface flow on the ablation area of the Lirung Glacier in Langtang Valley, Nepal Himalayas", Bulletin of Glacier Research, 16: 67-73 (1998). 白岩孝行・西尾文彦・亀田貴雄・高橋昭好・戸山陽子・Muravyev, Y., Ovsyannikov, A. :「カムチャツカ半島ウシュコフスキー氷冠における雪氷コア掘削」, 雪氷, 61(1): 25-40 (1999) Shiraiwa, T., Muravyev, Y.D., Matsuoka, K., Salamatin, A.N., Horikawa, S., Ovsyannikov, A.A., Fujikawa, T. and Tanaka, N.:"Geophysical and Paleoclimatic Implications of the Ushkovsky Ice Cap in Kamchatka", Cryospheric Studies in Kamchatka II, 8-19 (1999) 藤井理行・ほか25名・白岩孝行:「南極ドームふじ観測拠点における氷床深層コア掘削」、 43、162-210 (1999) Matsuoka, K., Horikawa, S., Shiraiwa, T., Muravyev, Y.D., Salamatin, A.N., Ovsyannikov, A.A., Maeno, H. and Ohi, M.: "Radio Echo Sounding at the Summit Ice Cap of the Ushkovsky Volcano, Kamchatka", Cryospheric Studies in Kamchatka II,20-24 (1999). Salamatin, A.N., Muravyev, Y.D., Shiraiwa, T. and Matsuoka, K.: "Modeling Dynamics of Glaciers in Volcanic Craters", Cryospheric Studies in Kamchatka II, 25-42 (1999) Matsuoka, T. and Shiraiwa, T. : "An analysis of L-band SAR images from Ushkovsky Ice Cap, Kamchatka, Russia", Cryospheric Studies in Kamchatka II,4350 (1999) Muravyev, Y.D., Shiraiwa, T., Yamaguchi, S., Matsumoto, T, Nishimura, K., Kohshima, S. and Ovsyannikov, A.A.: "Mass Balance of Glacier in Condition of Maritime Climate-Koryto Glacier in Kamchatka, Russia-", Cryospheric Studies in Kamchatka II,51-61 (1999) Nishimura, K., Shiraiwa, T., Matsumoto, T. and Muravyev, Y.D.: "Meteorological Observations in the Koryto Glacier, Kamchatka, 1997", Cryospheric Studies in Kamchatka II,62-69 (1999) Kohshima, S., Shiraiwa, T., Muravyev, Y.D. and Yamaguchi, S.: "Snow Algae of Koryto Glacier in the Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia", Cryospheric ― 100 ― Studies in Kamchatka II,70-75 (1999) 19) Solomina, O.N., Muravyev, Y.D., Shiraiwa, T, Yamagata, K. and Sawaguchi, S.: "Lichenometric Studies of Moraines in Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia", Cryospheric Studies in Kamchatka II,76-78 (1999) 2 総説、解説、評論等 1) 山田知充, 白岩孝行(解説):「ヒマラヤ・カラコルム地域における近年の氷河変動」, 『雪氷』,57(3):257-267(1995) 2) T.Shiraiwa, T.Saito, T.Saito, H.Shoji, Y.Taguchi, T.Abo, Y.Yamamoto, Y.Inagawa, K.Yokoyama and O.Watanabe:"Glaciological data collected by the 35th Japanese Antarctic Research Expedition during 1994-1995"(資料集),JARE DATA REPORTS,211:1 -69(1996) 3) Y.Kodama, T.Shiraiwa, D.Kobayashi, T.Matsumoto, S.Yamaguchi, Y.D.Muravyev and G.E.Glazirin:" Hydro meteorological and Glaciological Observations in the Koryto and Ushkovsky Glaciers, Kamchatka,1996" (資料集),Low Temperature Science,Ser.A.,55(Data Report):107-136(1996) 4) 秋田谷英次,西村浩一,白岩孝行,尾関俊浩,伊藤陽一,山口悟,須沢啓一:「札幌の平地積雪 断面測定資料-平成7年~ 8年冬期」(資料集),『低温科学、資料集』,55:1-11(1996) 5) 成瀬廉二,秋田谷英次,西村浩一,白岩孝行,山口悟,須沢啓一,天見正和,伊藤陽一,根本征 樹:「北海道内の広域積雪 調査-1996年2月-」(資料集),『低温科学、資料集』,55:1 3-26(1996) 6)「カムチャツカ氷河紀行(前編)-空からみたカムチャツカの自然-」(解説),『地理』, 41(3):32-35(1996) 7) 白岩孝行:「氷河に関する用語解説」,『歴史と地理』,500: 25-29 (1997) 8) 白岩孝行ほか:「特集カムチャツカ」、地理, 44(7): 19-65 (1999) 9) 白岩孝行:「北極の自然と人々」、地理月報, 448: 8-11 (1999) 3 著書 (2)共著 1) 白岩孝行 :「キナバル」,31-32(岩田修二, 小疇尚, 小野有五:『世界の山やま-アジア ・アフリカ・オセアニア編』, 古今書院,東京)(1995) 2) 白岩孝行 :「中央チベット」,63-64 (岩田修二, 小疇尚, 小野有五 :『世界の山やま- アジア・アフリカ・オセアニア編』,古今書院,東京)(1995) 3) 白岩孝行:「アフリカ・オセアニアの氷河」,263-275(藤井理行,小野有五:『基礎雪氷学 講座Ⅳ-氷河-』,古今書院,東京)(1997) 4) 白岩孝行:「第10章 アルプス」,331-384(大矢雅彦,坂幸恭:『ヨーロッパの地形(上・下)』, 大明堂,東京)(1997) 5) 白岩孝行:「第14章 アペニン山脈とシシリー島」,492-513(大矢雅彦,坂幸恭:『ヨーロッ パの地形(上・下)』,大明堂,東京)(1997) ― 101 ― 松 岡 健 一(MATSUOKA, Kenichi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Matsuoka, K. and Naruse, R.: Mass Balance Features Derived from a Firn Core at Hielo Patagonico Norte, South America, Arctic, Antarctic, and Alpine Research, 31, 333-340, (1999)* (その他の論文) 1) Matsuoka, K., Horikawa, S., Shiraiwa, T., Muravyev, Y., Salamatin, A., Ovsyannikov, A., Maeno, H., and Ohi, T.: Radio Echo Sounding at the Summit Ice Cap of the Ushkovsky Volcano, Kamchatka, Cryospheric Studies in Kamchatka II, 20-24, (1999) 2) Shiraiwa, T., Muravyev, Y., Matsuoka, K., Salamatin, A., Horikawa, S., Ovsyannikov, A., Fujikawa, T., and Tanaka, N.: Geophysical and Paleoclimatic Implications of the Ushkovsky Ice Cap in Kamchatka, Cryospheric Studies in Kamchatka II, 8-19, (1999) ― 102 ― 融点附近の雪氷現象 助教授 堀口薫、助教授 水野悠紀子 1.難着雪氷材料の開発とその評価方法に関する研究 (堀口) Studies on anti-ice adhesive materials: K. Horiguchi 半世紀以上も前から、水との接触角が大きい材料には氷は付着し難く、仮に付着したとして もその氷を剥離させるためのセン断着氷力は小さいという一般的な常識が存在していた。我々 はこの常識に基づいて官民(道立工業試験所、気象協会、大日本色材(株)、シオン(株)等) と共同して難着雪氷材料の開発を行い、超撥水・親水性複合材“スノーグライド”を製品化し た。しかし、屋根材や道路標識に関する屋外での共同研究の結果から、融点付近では上記の一 般常識が適用できないことが判明した。すなわち、気温が約-3℃よりも高くなると、ガラス に付着した雪や氷はテフロンに付着した雪や氷よりも速く滑落した。この事実は室内実験での セン断着氷力の大きさからも確認された(鎌田慈、地球環境科学研究科)。それと同時に、セ ン断着氷力が同じ値であっても氷-材料界面での破壊型式(力-時間曲線)が異なる場合があ ることが分かった。この事実は、付着氷のセン断破壊を理解し、それを評価するためには、従 来の様に“力”(セン断着氷力)の大小ではなく、“エネルギー”(氷の付着仕事)で考察する 必要があることを示している。最近、付着した氷のセン断破壊に必要なエネルギーを測定し、 このエネルギーを材料、破壊温度及び表面粗度で表す実験式を求めた。 2.氷の力学的性質に対する側圧の効果 (水野) Effect of confining pressure on mechanical properties of ice: Y. Mizuno 自然界の氷の多くは側圧を受けた状態で存在する。従って、氷河、氷床流動のみならず、構 造物への影響など、雪氷工学の立場から氷の力学的特性に対する側圧の効果についての実験的 研究を行っている。従来から塑性領域の側圧加圧下における氷の力学とその微視過程について の研究を行ってきたが、最近の数年は特に氷の破壊と側圧の関係に重点をおき、破壊強度と側 圧、側圧効果の結晶組織依存性についての研究を行っている。側圧による破壊強度の増大の要 因を、破壊モードとそれに伴う結晶組織の変化によって明らかにした。氷の破壊強度は歪速度 に対応した臨界側圧で最大になるが、同一の歪速度における臨界側圧は結晶粒が大きくなるほ ど増大するなど、側圧の効果が氷の結晶組織に依存することを明かにした。 3.氷の破壊にともなう光(photon)放出に関する研究 (水野) Photon emission associated with ice fracture: Y. Mizuno 種々の物質で破壊時に音波や電磁波を放出する。雪氷の分野でも雪崩の発生時に電気的信号 を観測したという報告がある。物質によって電磁波の発生機構が異なる他、観測された電磁気 現象が破壊によるものか、2次的現象かなど課題は多い。氷の破壊時のphoton, 電子、イオ ンなどの放出粒子を調べることは破壊に伴う電磁波発生のメカニズムを解明する有効な手段と なるばかりでなく、氷の破壊を伴う雪氷諸現象と周囲の相互作用の新たな知見を得る可能性が ある。 本研究の第一段階として、氷の破壊時のphoton 放出について調べた。その結果、氷の破壊 において可視光領域のエネルギーのphotonを放出することを始めて見出した。破壊イベントと photon放出の同時性、光の強度と破壊時の歪エネルギーの相関を明らかにした。更に最近の実 験で紫外部の光も放出することが分かった。 ― 103 ― 堀 口 薫(HORIGUCHI,Kaoru) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Y. Kamata, Y. Mizuno, K.Horiguchi, M.Yoshida:"Ice adhesion near the melting point," Proc. 5th Intl. Symp.on Thermal Engineering and Sciences for Cold Regions,1, 453-458(1996)* 2) T.Kobayashi, Y.Nohguci, K.Kawashima, T.Nakamura, K.Horiguchi, Y.Mizuno,"Slip tests between the surfaces of snow or ice and some kinds of shoes",Summary papers of 3rd International Conference on Snow Engineering,108-109(1996)* 3) 松田 真一 ,水野 悠紀子,堀口 薫:「つらら表面の波模様に関する実験的研究-波長と表 面流速との関係-」,『寒地技術論文・報告集』,12(1):1-5(1996)* 4) 鎌田 慈,,水野 悠紀子,堀口 薫:「氷の剪断付着力の推定方法について」,『寒地技術論 文・報告集』,12(1):422-425(1996)* (その他の論文) 1) 吉田光則,浅井則夫,堀口 薫:「着雪氷防止に関する一考察」,『寒地技術論文・報告 集』, 14: 514-517 (1998) 2) Horiguchi,K.:"Adhesion work of ice to glass and teflon", Proc. of 6th Annals Intl. Conf. on Composites Engineerings, 319-320(1999) 4 学術講演(招請講演) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) K.Horiguchi: "Driving Force of Mass Flux during the Growth of an Ice Lens", Euromech colloquium 333, Montecatini, Italy (1995) ― 104 ― 水 野 悠紀子(MIZUNO,Yukiko) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Y.Kamata,Y.Mizuno,K.Horiguchi and M.Yoshida:"Ice Adhesion near the Melting Point",Proc.of the 5th Int. Symp.on the Thermal Engineering Science for Cold Regions,453-458(1996)* 2) T.Kobayashi,M.Kumagai and Y.Mizuno:"Removal of newly deposited snow on gable roof",(M.Izumi,T.Nakamura and R.Sack:Snow Engineering:Recent Advances ,337-340, BALKEMA,Rotterdam,1996)* 3) T.Kobayashi,Y.Nohguchi,K.Kawashima,T.Ikarashi,T.Nakamura,K.Horiguchi and Y.Mizuno,"Slip tests between the surface of snow or ice and some kinds of shoes ",( M.Izumi,T.Nakamura and R.Sack:Snow Engineering:Recent Advances,77-80, BALKEMA,Rotterdam,1996)* 4) 鎌田慈,水野悠紀子,堀口薫:「氷のせん断付着力の推定方法について」,『寒地技術論文 ・報告集』:422-425(1996)* 5) 松田真一,水野悠紀子,堀口薫:「つらら表面の波模様に関する実験的研究-波長と表面流 速の関係-」,『寒地技術論文・報告集』:1-5(1996)* 6) Kobayashi,T., Kumagai,M.. and Mizuno,Y.:"Removal of newly deposited snow on gable roof ",(Izumi,M., Nakamura,T. and Sack,R.: Snow Engineering:Recent Advances,337-340,A.A.BALKEMA,Rotterdam,Brookfield,1997)* 7) Kobayashi,T.,Nouguchi,Y., Kawashima,K.,Ikarashi,T.,Nakamura,T.,Horiguchi,K. and Mizuno,Y. :"Slip tests between the surface of snow or ice and some kinds of shoes"(Izumi,M.,Nakamura,T.and Sack,R.:Snow Engineering: Recent Advances, 7780,A.A.BALKEMA, Rotterdam, Brookfield,1997)* 8) 小林俊市,水野悠紀子,鎌田 慈,河島克久,納口恭明:「融雪氷剤の散布による雪氷表面の 硬化」『寒地技術論文・報告集』,13: 41-45(1997)* 9) Mizuno, Y, :“Effect of Hydrostatic Confining Pressure on the Failure Mode and Compressive Strength of Polycrystalline Ice”, J.Physical Chemistry B,102 376-381 (1998)* ― 105 ― 雪氷気象 助教授 石川信敬、助手 兒玉裕二 1.永久凍土地域における熱及び水循環の研究 (石川、兒玉) Energy and water balance experiments in permafrost regions:N. Ishikawa and Y. Kodama 全地球水循環研究(GEWEX)の一環として、シベリアレナ河流域(兒玉)及びアラスカユー コン河流域(石川)において、永久凍土地帯の熱・水循環プロセスの解明を目的に研究を進め ている。これまでに植生地表面における熱収支、蒸発散量の季節変動、地下水位の挙動、土壌 水分の地形依存性についての知見を得た。本研究は国内共同研究(他大学、科学技術庁防災研)、 国際共同研究(ロシア、アメリカ)として行なっているが、本年度より地球観測フロンテイア の1プロジェクトともなった。 2.北方森林における熱・水・ガス収支の研究 (石川、兒玉) Heat, water and gas exchanges of boreal forest:N. Ishikawa and Y. Kodama 森林における熱、水循環過程を明らかにするために、道内の寒冷多雪地域と寒冷少雪地域の 落葉広葉樹林において森林気象観測を実施している。これまでに林内の放射特性及び、顕熱輸 送量の樹冠面と林床面の相違や着葉依存性、また蒸発散量の季節変動や熱収支に占める割合が 得られた。さらに森林における炭酸ガス交換量の季節特性(林床面では放出、樹冠部では吸収) の研究も進めている。本研究は北大演習林との共同研究、科学研究費の課題、及び大学院生の 研究テーマとして進められている。 3.海氷の放射特性の研究 (石川、兒玉、河村俊) Radiation properties of sea ice:N. Ishikawa, Y. Kodama and T. Kawamura 海氷の放射特性(反射率、透過率、吸収率)を野外観測と室内実験で行ない、氷厚の変化と 海氷構造に依存し、入射光のスペクトルに大きく依存することを見出した。本研究は国内共同 (科学技術庁防災研)、及び国際共同(フィンランド)で進めており大学院生のテーマでもあ る。 4.滑りやすい凍結路面の発生機構 (石川、成田) Contributions of the heat from traffic vehicles to snowmelt on roads:N.Ishikawa and H. Narita 社会問題となる滑り易い凍結路面発生のメカニズムを研究している。特に車両からの熱や制 動摩擦による熱、さらには交通量を考慮した道路雪氷面の熱収支モデルの構築を図っている。 本研究課題は科学研究費、及び北海道開発局と北海道工業試験場の委託研究課題でもある。 5.酸性雪の変質プロセスの研究 (石川、成田、石井、兒玉) Acidity variations along hydrological processes of snow deposit snowmelt and runoff : N. Ishikawa, H. Narita, Y. Ishii, and Y. Kodama 酸性雨と同様に降雪の酸性化が指摘されている。そこで雪が介在する水循環の各過程(降雪、 積雪、蒸発、融雪、浸透、流出)の中で、積雪の酸性度、含有化学成分がどのように変化する かを調査している。これまでに融雪水浸透で積雪内の化学成分分布が劇的に変化すること、融 雪初期にpHの低い水が出ること、数cmの土壌で急激に酸性度が緩和されることなどが明ら かになった。本研究は文部省科学研究費や日生財団、住友財団の研究助成を得て行われてきた。 ― 106 ― 石 川 信 敬(ISHIKAWA,Nobuyoshi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) 中林宏典,石川信敬,兒玉裕二:「融雪期における林内放射収支量の開空率依存性」,『雪 氷』,58(3):229ー237(1996)* 2) H.Nakabayashi,Y.Kodama,Y.Takeuchi,T.Ozeki and N.Ishikawa:"Characteristics of heat balance during the snowmelt season in Ny-Alesund, Spitzbergen Island",Mem. Natl.Inst.Polar Res.,51(Spec.Issue):255-266 (1996)* 3) Ishikawa,N., Narita,H., Ishii,Y. and Kodama,Y.:"Acidity variations along hydrological processes of snow deposit, snowmelt and runoff", Journal of Agricultural Meteorology, 52:521-524(1997)* 4) Ishikawa,N., Takeuchi,Y., Ishii,Y. and Kodama,Y.:"Characteristics of the water balance of the Moshiri experimental watershed", Annals of Glaciology, 25:220225(1997)* 5) Ishikawa,N., Nakabayashi,H., Ishii,Y. and Kodama,Y.:"Contributions of snow to the annual water balance in Moshiri Watershed, northern Hokkaido,Japan", Proceedings of the International Symposium of 11th NRB,:108-123(1997)* 6) 中林宏典、石川信敬、兒玉裕二:全天写真モデルを用いた森林開空度率の変化要因に関 する考察.水文・水資源学会誌, 11,3, 221-228(1998)* 7) Ishikawa,N.,Nakabayashi,H.Ishii,Y.and Kodama,Y."Contributions of snow to the annual water balance in Moshiri Watershed, Northern Hokkaido,Japan". Nordic Hydrology, 29 (4/5), 347-360(1998)* 8)Ishikawa N., Sato N., Kawauchi K., Yoshikawa K. and Hinzman L.D.: Characteristics of the water and heat cycles of a discontinuous permafrost region in Interior Alaska. Proceedings of the International Symposium of 12th NRB, 157-168, 1999.* 9) Nakabayashi H., Ishikawa N. and Kodama Y:Radiative characteristics in a Japanese forested drainage basin during snowmelt. Hydrological Process, 13, 157-167, 1999 * 10) Ishikawa N., Narita H. and Kajiya Y.:Contributions of heat from traffic vehicles to snow melting on roads. Transportation Research Record No.1672, TRB, National research Council, Washington, D.C., 28-33, 1999* 11) Takeuchi Y., Naruse R., Satow K. and Ishikawa N.: Comparison of heat balance characteristics at five glaciers in the Southern Hemisphere. Global and Planetary Change, 22, 201-208, 1999* (その他の論文) 1) 竹内由香里, 兒玉裕二, 石川信敬 :「草地と水面の蒸発散量の比較」,『北海道の農業気 象』, 47: 18-24(1995) 2) 秋田谷英次, 石井吉之, 成田英器, 石川信敬, 小林俊一, 鈴木哲, 早川典生, 対馬勝年, 石坂雅昭, 楽鵬飛,張森:「中国東北部の道路雪害調査-1994年3月-」,『低温科学, 物 理篇』, 53:35-50 (1995) 3) 石川信敬,成田英器,石井吉之:「融雪現象にともなう酸性雪変質機構の研究」,『北海道 の農業気象』, 48:10ー20(1996) 4) Ishikawa,N.,Kodama,Y.,Ikeda,M.,Takatsuka,T.and Ishikawa,M.:"Changes of the heat and radiation properties with sea ice growth",Proceedings of the 13th International Symosium on Okhotsk sea and sea ice,106-111(1998) ― 107 ― 5) Kodama,Y.,Takizawa,A.,Ishikawa,N.,Shirasawa,K.,Ishikawa,M.,Ikeda,M.,Takatsuka, T.,Daibou,T.,Aota,M.and Fujiyoshi,Y."Comparison of the meteorological conditions between the two sites around Samroma-ko Lagoon".Low Temperature Science, Ser.A.,57, 81-98(1998) 3 著書 (2)共著 1) 石川信敬:雪氷関連用語集. 社団法人雪センター、218pp, 1999(執筆分担) 4 学術講演(招請講演) (2)国際的、全国規模のシンポジウム 1) N.Ishikawa,H.Narita,Y.Ishii and Y.Kodama:"Acidity variations along hydrological processes of snow deposit,snowmelt and runoff",International Symposium on Food Production and Environmental Improvement under Global Climate Change,Ube(199 6) 2) N.Ishikawa,Y.Takeuchi,Y.Ishii and Y.Kodama:"Characteristics of the water balance of the Moshiri Experimental Watershed", International Symposium on Representation of the Cryoshere in Climate and Hydrological Models",Victoria, Canada(1996) 3) Ishikawa, N., Narita, H. and Kajiya, Y." Contributions of heat from traffic vehicles to snow melting on roads." Transportation Research Board 78th Annual Meeting, Washington DC (1999) 4) Ishikawa, N., Kawauchi, K., Yoshikawa, K. and Hinzman, L.D. "Characteristics of the water and heat cycles of a permafrost region in Interior Alaska", International Symposium of 12th NRB, Iceland (1999) ― 108 ― 兒 玉 裕 二(KODAMA,Yuji) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Y.Kodama, Y.Takeuchi, H.Nakabayashi and O.Watanabe: "Hydrological Observations in Bregger Glacier, Spitsbergen-Discharge, Temperature and Electric Conductivity", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol.,: 45-53(1995)* 2) Y.Takeuchi, Y.Kodama and H.Nakabayashi: "Characteristics of Evaporation from Snow and Tundra Surface in Spitsbergen in the Snowmelt Season 1993",Proc.NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol.,: 54-65(1995)* 3) D.Kobayshi, Y.Kodama, Y.Ishii, Y.Tanaka and K.Suzuki: "Diurnal Variation in Streamflow and Water Quality during the Summer Dry Season", Hydrol. Processes, 9: 833-841 (1995)* 4) Y.Fujiyoshi, Y.Kodama,K.Tsuboki, K.Nishimura and N.Ono:“Structures of Cold Air During the Development of a Broad Band Cloud and a Meso-β-scale Vortex: Simultaneous Two-Point Radiosonde Observation”, Journal of the Meteorological Society of Japan, 74(3):281-297(1996)* 5) Kameda,T., Takahashi, S., Enoomoto H., Azuma,N., Shiraiwa,T., Kodama,Y., Furukawa,T., Watanabe,O., Weidner,G.A. and Stearns,C.R.:"Meteorological observations along a transverse route from coast to Dome Fuji station, Antarctica, recorded by Automatic Weather Stations in 1995", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol, 11: 35-50(1997)* 6) Ishikawa,N., Takeuchi,Y., Ishii,Y., Kodama,Y.: "Characteristics of the water balance of the Moshiri experimental watershed, Japan" , Annals of Glaciology, 25: 220-225(1997)* 7) Kobayashi,D., Muravyev,Y.D., Kodama,Y. and Shiraiwa, S.: "An outline of RussoJapanese joint glacier research in Kamchatka, 1996", Bull. Glaciol.Res., 15: 19 -26(1997)* 8) Shiraiwa,T., Muravyev,Y.D., Yamaguchi,S., Glazirin,G.E., Kodama,Y. and Matsumoto,T.:"Glaciological features of Loryto GLacier in the Kronotsky Peninsula",Bull. Glaciol. Res., 15: 27-36(1997)* 9) Kodama,Y., Matsumoto,T., Glazirin,G.E., Muravyev,Y.D., Shiraiwa,T. and Yamaguchi,S.:"Hydromete orological features of Koryto Glacier in the Kronotsky Peninsula, Kamchatka, Russia", Bull. Glaciol.Res., 15: 37-46(1997)* 10) 中林宏典、石川信敬、兒玉裕二: 「全天写真モデルを用いた森林開空率の変化要因に関 する考察」、『水文・水資源学会誌』、11(3):221-228 (1998)* 11) Ishikawa, N., Nakabayashi, H., Ishii,Y.and Kodama, Y.: "Contributions of Snow to the Annual Water Balance in Moshiri Watershed, Northern Hokkaido, Japan", Nordic Hydrology, 29 (4 / 5): 347-360 (1998)* 12) D.Kobayashi, Y.Ishii and Y.Kodama,1999:Stream temperature, specific conductance and runoff processes in mountain watersheds. Hydrological Processes 13(6), 865-876* 13) H.Nakabayashi, N.Ishikawa, Y.Kodama,1999: Radiative characteristics in a Japanese forested drainage basin during snowmelt. Hydrological Processes, 13(2),157-168* (その他の論文) 1) 竹内由香里, 兒玉裕二, 石川信敬 :「草地と水面の蒸発散量の比較」,『北海道の農業気 ― 109 ― 象』, 47: 18-24(1995) 2) Kodama,Y.,Shiraiwa,T.,Kobayashi,D.,Matsumoto,T.,Yamaguchi,S.,Muravyev,Y.D.and Glazirin,G.E.:"Hydrometeorlogical andglaciorological observations in the Koryto and Ushkovsky glaciers, Kamchatka, 1996",Low Temperature Science, Ser. A., 55, Data Report, 107-136(1997) 3) Kodama,Y., Nakabayashi,H.,Takeuchi,T. and Ishikawa,N.:"Radiative regime for snowmelt heat balance in Ny-Alesund, Spitsbergen" Proceedings of International Workshop on Energy and Water Cycle in GAME-Siberia,1995, 3:51-59(1997) 4) 兒玉裕二:「SAR画像を用いたツンドラ活動層の土壌水分の推定」,『多様な陸面における 水・熱収支の動態の研究 1996年報告集』,22-26(1997) 5) Takahashi, S., Kameda, T., Enomoto, H., Shiraiwa, T., Kodama, Y., Fujita, S., Motoyama, H., Watanabe, O., Weidner, G.A., Stearns,C.R.:"Automatic weather station program during Dome Fuji Project by JARE in east Dronning Maud Land, Antarctica", Annals of Glaciology ,27: 528-534 (1998). 6) 高橋修平、榎本浩之、亀田貴雄、本山秀明、古川晶雄、兒玉裕二、遠藤辰雄、大畑哲夫、 菊地時夫、牧野章汎、牧野勤倹: 「南極における日本の無人気象観測」 『雪氷』 60 (6) :463-472 (1998) 7) Enomoto, H., Motoyama, H., Shiraiwa, T., Saito, T., Kameda, T., Furukawa, T., Takahashi, S., Kodama, Y.and Watanabe,O.: "Winter warming over Dome Fuji, East Antarctica and semiannual oscillation in the atmospheric circulation", Journal of Geophysical Research, 103(D18): 23, 103-23, 111 (1998). 8) B.C.Johnson, L.D.Hinzman, and Y.Kodama,1999: Application of a spatially distributed hydrologic model to a watershed in Siberia. Proceeding of the 50th Arctic Science Conference, Alaska. 9) Y.Kodama,Y.Ishii, M.Nomura, N.Sato, H.Yabuki and T.Ohata,1999: Water/Energy Exchange in Tundra Region near Tiksi, Eastern Siberia. Proceeding of the MAGS-GAME International Workshop, Edmonton, Alberta, Canada. 10) Y.Kodama, N.Sato, Y.Ishii and H.Yabuki,1999:Seasonal change in the heat fluxes over Siberian tundra, Proceeding of the Northern Research Basin 12th international symposium and workshop, Iceland. 4 学術講演(招請講演) (2) 国際的,全国的規模のシンポジウム 1) Y.Kodama,T.Matsumoto,Y.D.Muravyev and G. Glazirin:“Glacio-Hydrological Study at Koryto Gkacier", International Symposium on Climate System and Eco-System in and around the Sea of Okhotsk,Sapporo(1996) ― 110 ― 研究課題と成果・研究業績 (1995~1999) (低温基礎科学部門) 雪氷物性・惑星科学 教授 前野紀一、教授 香内晃、助手 荒川政彦、助手 渡部直樹 1.氷・氷摩擦の物理機構 (前野、荒川) Physical mechanism of ice-ice friction: N. Maeno and M. Arakawa これまでの多くの氷摩擦研究は氷と異物質(例えばスキー、スケート等)の間で行われてき た。本研究では氷・氷間の真性摩擦機構を明かにするために広い速度、温度、および垂直応力 のもとで摩擦実験を実施し、氷摩擦層の塑性変形、ステイック・スリップ、および水潤滑の3 機構が卓越する物理条件を明かにした。研究には地球環境科学研究科の大学院生(安留 哲、 水上直巳)が積極的に参加した。 2.電場における氷の付着と摩擦 (前野、荒川) Ice adhesion and friction in an electric field: N. Maeno and M. Arakawa 氷の付着メカニズムとしてファン・デル・ワールス力と静電引力だけでなく、氷の格子欠陥 が電荷を持つことによる影響を加味するために、氷付着力に対する電場の影響が調べられ、電 場を印加することによって氷の付着力と摩擦係数が増加するという結果が得られた。平成10年 度低温研究所客員教授として本研究に参加したV.F.Petrenko教授(米Dartmouth College)は 帰国後も本協同研究を続け、より詳細な電場依存性、電流依存性、氷純度の影響等を明かにし た。 3.雪の水蒸気拡散係数 (前野) Water vapor diffusion in snow: N. Maeno これまでの測定によれば雪の中の水蒸気拡散係数は空気中の値より数倍大きく、その物理メ カニズムに関して論争が行われてきた。本研究では種々の空隙率の雪に関して熱伝導測定、炭 酸ガス拡散測定、および雪の内部構造変化の測定により、この問題に対する統一的な物理解釈 を得た。この結果によると、定常状態の雪内部には微細な空隙部に大きな温度勾配が発生し、 熱および水蒸気輸送が行われる。その結果、雪の水蒸気拡散係数は見かけ上空気中より大きな 値として測定される。この研究は地球環境科学研究科大学院生(S. Sokratov)の学位論文と して進められた。 4.雪粒子の衝突過程とスプラッシュ関数の決定 (前野) Impact process of snow particles and determination of splash functions: N.Maeno 複雑な形の雪粒子が雪面に衝突する時の物理過程は、単なる氷球の衝突現象として解析する ことは出来ないが、雪粒子衝突時の反発係数、破壊による破片や他粒子の飛び出しは、吹雪の 発達に決定的な役割を演じる。本研究では実際の雪粒子の衝突、反発過程を低温風洞で高速度 撮影し、解析結果は、任意の雪粒子が任意の角度で雪面に衝突した時の鉛直反発係数、水平反 発係数、および飛び出し粒子数の確率分布関数(スプラッシュ関数)としてまとめられた。本 研究には地球環境科学研究科大学院生(杉浦幸之助)が積極的に参加し学位論文としてまとめ られた。 5.雪粒子跳躍距離の粒径依存性 (前野) Grain size dependence of saltation lengths of aeolian snow particles: N. Maeno 吹雪における雪粒子の跳躍距離は、風速、気温、雪粒子の粒径、力学物性等の運動力学だけ では決まらない。跳躍距離のこのような確率的挙動に関して粒径依存性の解析を行った。その 結果、各粒径の雪粒子に関して、跳躍距離の確率分布は単調減少関数で表現されることが結論 された。すなわち、任意の粒径および摩擦速度において、より短い跳躍距離ほど出現確率は高 くなる。したがって、よく使われる「平均」跳躍距離は、その長さの跳躍が卓越していること を意味しているのではない。 ― 111 ― 6.不純物を含むアモルファス氷の熱物性 (香内) Thermal properties of impurity-doped amorphous ices: A. Kouchi 不純物としてCO, CO2, CH4 等を含むアモルファス氷の熱的性質を、新たに開発した極低温、 超高感度DTAを用いて測定した。純粋なアモルファス氷の結晶化は発熱反応であることは広く知 られているが、不純物を含むアモルファス氷の結晶化は吸熱反応であることが明らかになった。 この結果は、これまでの彗星の熱史研究の全面的な見直しを迫るものである。 7.アモルファス氷微粒子作製法の開発 (香内、荒川、渡部) New method for making amorphous icy grains: A. Kouchi, M. Arakawa and N.Watanabe アモルファス氷微粒子の大量・連続作製法を開発した。 H2 O とCO2 の混合ガスを真空中の10K の金属板に高速で蒸着すると、蒸着中に氷薄膜の破壊が連続的におこり、CO 2 を含むアモルフ ァス氷微粒子が連続的に生成されることを見いだした。生成されたアモルファス氷微粒子を大 量に集めると、模擬彗星核と見なすことができる。この方法によって初めて、彗星核で起こり うる現象を実験室内で再現することが可能になった。この研究には地球環境科学研究科の大学 院生(高橋哲也)が参加した。 8.有機質星間塵と小惑星の起源 (香内、前野、荒川、渡部) Interstellar organic grains and the origin of asteroids: A. Kouchi, N.Maeno, M. Arakawa and N. Watanabe (1)原始太陽系星雲での蒸発過程 星間分子雲で生成された有機質星間塵が、原始太陽系星雲での加熱でどの様に変化するかを 実験的に調べた。その結果、有機質星間塵は小惑星領域に存在しうることがわかった。この研 究には地球環境科学研究科の大学院生(中野英之)が参加している。 (2)付着成長過程 有機質星間塵の衝突・付着特性を実験的に調べた。その結果、有機物は鉱物や氷に比べて付 着成長が非常に効果的に起こることが明らかになった。この研究には地球環境科学研究科の大 学院生(工藤達行)が参加している。 (3)小惑星の起源 以上の実験結果をもとに、小惑星の起源についての新しいシナリオを作った。小惑星領域で は有機質星間塵が存在し、それは非常に付着成長しやすいので、他の領域に比べて早い段階に 天体の成長が起こった。同時に、ガス抵抗によって大部分の天体の卵(原料物質)は地球領域 に落下してしまった。小惑星領域に大きな天体が存在しないのは、これまで考えられていたよ うな、大きな天体の破壊が原因ではなく、原料物質の不足により成長できなかったからである。 9.低・中速度における氷天体の衝突過程 (荒川、前野) Collisional process of icy planets in low to middle velocity impacts: M. Arakawa and N. Maeno 氷惑星の集積成長や惑星リングの進化の研究には非常に広い範囲での氷球の衝突物性が必要 とされる。そのため我々のグループでは1989年から一段式縦型軽ガス加速装置を低温室に設置 し衝突過程の研究に用いている。この装置では直径15mmの氷球を30m/s~700m/sまで加速する ことができる。この5年間は氷球同志の衝突破壊を様々な衝突パラメター(速度、角度)で行 い、超高速度カメラによるその場観察を行ってきた。 その結果、衝突破壊時の破片の速度分 布とそれを元にした氷天体の再集積条件が明らかになった。また、この加速装置に加えて低温 (< 100K)・低速度(0.1m/s~10m/s)での氷球の衝突を再現するためクイライオスタット付 き低速度衝突装置を開発した。この装置を用いて土星リング粒子の衝突進化に重要なファクタ ― 112 ― ーである氷球の反発係数を実験的に求めた。 10.氷天体の衝突素過程に関する実験的研究 (荒川) Experimental study on elementary process of impact on icy planets: M. Arakawa 氷の衝撃変成及び衝突破壊の素過程を研究するためには1km/sを越える高速度衝突で発生す る衝撃波の観察が必要である。そのため平成8年度に新しく超小型二段式軽ガス加速装置を低 温室に設置し、低温下でも動作するように改良を加えた。その結果、この装置は質量10mgの弾 丸を5km/sまで加速できるようになった。この加速器を用いた高速度衝突により衝突点に強い 衝撃波を発生させ、その伝播・減衰過程を観察した。 また、衝撃波の伝播と共に起こる破壊 過程の観察も行った。衝撃圧力の時間履歴は圧力によるピエゾ抵抗変化を利用した内部ゲージ を用いて測定し、衝撃波の伝播の様子はシュリーレン法による内部可視化超高速度撮影により 観察した。その結果、氷内部での衝撃波の伝播過程と圧力減衰過程が明らかになった。 11.低温度における氷の衝突蒸発 (荒川、香内、前野) Impact vaporization of water ice at low temperatures: M. Arakawa, A. Kouchi and N. Maeno 氷の高速度衝突における衝突蒸発過程を明らかにするため衝突ガス分析装置を開発し実験を 行った。蒸発する水蒸気を四重極質量分析計により分析するため、衝突実験は高真空下で行う 必要があった。そのため従来のガス銃を用いることはできなかったので、強力な希土類磁石を 用いた電磁加速器を開発した。この加速器により高真空下で300m/sまでの衝突実験が可能にな った。氷は液体窒素式のクライオスタットにより130Kまで冷却可能である。この実験の結果、 氷からの衝突蒸発は従来考えられてきたよりも、遙かに低速度(200m/s)で起き始めることが 明らかになった。この結果は氷衛星の密度の多様性が衝突蒸発により説明できることを示唆し ている。なお、本研究は大学院生の杉紀夫(地球環境科学研究科)が中心になって行ったプロ ジェクトである。 12.星雲ガスの集積による氷ダストの衝撃変成 (荒川) Shock metamorphism of icy dusts by accretion of nebula gas: M. Arakawa 星雲ガスの集積加熱による氷ダストの変成を調べるため実験的研究を行った。星雲ガスの高 速気流を再現するためには専用の衝撃波管を開発した。この衝撃波菅に液体窒素によるクライ オスタットを設置し、基盤上に揮発性物質の氷の薄膜を作成し、ガスと氷の相互作用を観察し た。理論的には高速気流の摩擦加熱により薄膜表面から揮発性物質の蒸発が起こると考えられ る。そこで本研究ではドライアイスの加熱蒸発を蒸発した二酸化炭素分子の赤外発光現象を観 察することにより行った。その結果、気圧300Pa、流速1000m/s程度の条件では加熱温度は8K以 下であることがわかった。 13.暗黒星雲での物質の生成と進化 (渡部、香内) Formation and evolution of materials in dark cloud: A. Kouchi and N. Watanabe (1)氷星間塵の紫外線による変成 アモルファスH2O氷への紫外線照射による水素分子の生成反応、およびアモルファスH2O-CO氷 への紫外線照射によるCO 2 分子の生成反応に関して、定量的なデータの取得(生成反応経路の 決定、反応速度、反応断面積の測定)に初めて成功した。この研究には地球環境科学研究科の 大学院生(堀井俊和)が参加した。 (2)氷星間塵上での星間分子生成 アモルファス氷上でのH、O、C、Nなどの原子結合反応による星間分子、氷、有機物生成 実験を行うための新しい実験装置を開発した。 不純物分子を全く含まない表面脱離型原子源の開発に成功した。また、氷表面で生成した水素 ― 113 ― 分子、アモルファス氷、有機物などを超高感度表面赤外線分光法で検出できるようになった。 たとえば、氷表面上に吸着した1/10~1/100層の水素分子の赤外線吸収スペクトルが測定可能 である。現在、この装置を用いて表面原子反応実験を行っている。 ― 114 ― 前 野 紀 一(MAENO,Norikazu) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) K.Kosugi, K.Nishimura and N.Maeno: "Studies on the Dynamics of Saltation in Drifting Snow", Rept. Natl. Res. Inst. for Earth Sci. and Prevention, 54: 111154 (1995)* 2) N.Maeno, K.Nishimura, K.Sugiura and K.Kosugi : "Grain Size Dependence of Eolian Saltation Lengths during Snow Drifting", Geophys. Res. Letters, 22: 2009 -2012 (1995)* 3) 松沢勝, 石本敬志, 前野紀一:「圧雪路面における氷膜の形成過程」,『雪氷』, 581:1928 (1995)* 4) M.Higa, M.Arakawa and N.Maeno:"Measurements of restitution coefficients of ice at low temperatures", Planet. Space Sci.,449:917-925(1996)* 5) 松沢 勝、石本敬志、前野紀一:「圧雪路面における氷膜の形成過程」,『雪氷』,58 (1) :19-28(1996)* 6) Sokratov, S.A. and Maeno, N.,"Heat and mass transport in snow under a temperature gradient", (Izumi,M.,Nakamura,T. and Sack,R.:Snow Engineering: Recent Advances, 49-54,A.A.BALKEMA,Rotterdam,Brookfield,1997)* 7) Sokratov, S.A. and Maeno, N.,"Wavy temperature distribution in snow",Proc. NIPR Symp. Polar Met. and Glaciology,11:243(1997)* 8) Sugiura, K., Nishimura, K. and Maeno, N.,"Velocity and angle distributions of drifting snow particles near the loose snow surface",Proc. NIPR Symp.Polar Met. and Glaciology, 11:108-116(1997)* 9) Takei,I. and Maeno,N.:"Dielectric low-frequency dispersion and crossover phenomenon of HCl-doped ice",J. Phys. Chem.,101:6234-6236(1997)* 10) Arakawa, M. and N. Maeno,"Mechanical strength of ice under uniaxial compression",Cold Regions Sci. Tech.,26: 215-229(1997)* 11) 安留哲、荒川正彦、前野紀一:「氷・氷摩擦係数の測定」、『雪氷』、61(6) :437-443(1999)* (その他の論文) 1) M.Higa, M.Arakawa and N.Maeno: "Measurements of Particle Velocities in the Shock Compressed Snow Plates: Second Report", Proc. 28th ISAS Lunar and Planetary Symp.,: 29-32(1995) 2) N.Sugi, M.Arakawa, A.Kouchi and N.Maeno : "In Situ Observation on Impact Vaporization of Water Ice", Proc. 28th ISAS Lunar and Planetary Symp.,: 33-36 (1995) 3) 竹井 巌、西村 寛、前野紀一:「金沢における積雪の誘電的性質からみた地域特性」, 『北陸大学紀要』,20:1-11 (1996) 4) 前野紀一:「氷の構造と生成機構」,『冷凍』,73(844):107-112(1998) 5) Sugi, N., Arakawa. M., Kouchi, A. and Maeno, N.:"In-situ mass spectroscopic observation of impact vaporization of water-ice at lowtemperatures", Geophys. Res.Letters, 256 :837-840 (1998) 6) 竹井 巌, 前野紀一:「平行線電極を用いた表面付近の積雪の誘電観測」,『北陸大紀要』, 22 : 31-41 (1998) 7) Higa, M., Arakawa, M. and Maeno, N.:"Size dependence of restitution coefficients of ice in relation to collision strength," Icarus,133:310-320 ― 115 ― (1998) 8) 竹井 巌、前野紀一:「融点近傍における雪および霜の誘電的性質」、『北陸大学紀要』、 23:13-24(1999) 2 総説、解説、評論等 1) 前野紀一、平松和彦:「一瞬で氷をつくる?」、『化学』、54(11):39-40(1999) ― 116 ― 香 内 晃(KOUCHI,Akira) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) A.Kouchi and T.Yamamoto: "Cosmoglaciology:Evolution of Ice in Interstellar Space and the Early Solars System", Prog. Cryst. Growth Charact. Mater., 30: 83 -108 (1995)* 2) N.Sugi, M.Arakawa, and A.Kouchi :“In-situ mass spectrometric observation of impact vaporization of water ice”,Proc. 29th ISAS Lunar and Planetary Symp., 166-169 (1996)* 3) Sugi N., Arakawa M., and Kouchi, A.:"Experimental study on impact vaporization of water-ice: Impact velocity dependence of energy partition.",Proc. 30th ISAS Lunar and Planetary Symp., 71-74 (1997)* 4) Sugi, N., Arakawa, M., Kouchi, A. and Maeno, N. : "In-situ mass spectrometric observation of impact vaporization of water-ice at low temperatures"Geophysical Research Letters, 25 : 837-840 (1998)* 5) Jenniskens, P., Blake, D.F. and Kouchi, A.: "Amorphous water ice-a solar system material"in "Solar System Ices" eds. Schmitt, B. et al. Kluwer, p139-155 (1998)* 6) Hashimoto, H., Greenberg, J.M., Grack, A., Colangeli, L., Horneck, G. Navarro-Gonzalez, R., Raulin, F., Kouchi, A., Saito, T., Yamashita, M. and Kobayashi,K.:A conceptional design for cosmo-biology experiments in earth's orbit" Biological Sciences in Space, 12:106-111(1998)* 7) Kouchi,A., Takahashi,T., Watanabe,N. and Arakawa,M.: "New methods for making amorphous icy grains for comet nucleus simulation experiments", Proceedingsof the 32nd ISAS Lunar and Planetary Symposium, 121-124 (1999)* 8) Kobayashi,K., Kaneko,T., Kouchi,A., Hashimoto,H., Saito,T. and Yamashita,M.: "Synthesis of amino acids in Earth orbit: Proposal", Advances of Space Research, 23: 401-404 (1999)* (その他の論文) 2) T.Ikeda, A.Kouchi, T.Yamamoto, T.Hondoh and S.Mae: "The Infrared Absorption Spectra of CO and CO2 in Amorphous H2O Ices", Proc. 28th ISAS Lunar and Planetary Symp., 186-189(1995) 5) 小林憲正,笠松隆志,金子竹男,香内晃,斉藤威:「放射線による模擬星間塵上での有 機物の生成」,『Space Util. Res.』,14:51-54(1997) 2 総説、解説、評論等 1) 山本哲生, 香内晃(解説):「アモルファス氷の熱伝導率」, 『原子衝突研究協会会報』, 158: 8-11(1995) 2) 香内晃,渡部直樹:「暗黒星雲における物質進化」(解説),『宇宙空間原子分子過程研究 会』,47-50(1997) 3) 香内 晃:宇宙のアモルファス物質,応用物理,68:1179-1180 (1999) ― 117 ― 荒 川 政 彦 (ARAKAWA,Masahiko) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) M.Arakawa, N.Maeno, M.Higa, Y.Iijima and M.Kato : "Ejection Velocity of Ice Impact Fragments", Icarus, 118: 341-354(1995)* 2) M.Arakawa, N.Maeno and M.Higa : "Direct Observations of Growing Cracks in Ice", J. Geophys. Res., 100: 7539-7547 (1995)* 3) Y.Iijima, M.Kato, M.Arakawa, N.Maeno, A.Fujimura and H.Mizutani : "Cratering Experiments on Ice:Dependence of Crater Formation on Projectile Materials and Scaling Parameter", Geophysical Research Letters, 22: 2005-2008 (1995)* 4) M.Kato, Y.Iijima, M.Arakawa, Y.Okimura, A.Fujiwara, N.Maeno and H.Mizutani : "Ice-on-Ice Impact Experiments", Icarus, 113: 423-441(1995)* 5) M.Arakawa and M.Higa:"Measurements of ejection velocities in collisional disruption of ice spheres",Planetary and Space Science, 44:901-908 (1996)* 6) M.Higa, M.Arakawa and N.Maeno:"Measurements of restitution coefficients of ice at low temperatures", Planetary and Space Science, 44:917-925 (1996)* 7) Arakawa, M. and Maeno, N. :“Mechanical strength of polycrystalline ice under uniaxial compression”, Cold Region Sciences and Technology,26:215-229 (1997) * 8) Arakawa, M. :“Drag coefficients of a porous material in supersonic air flow”, Proc.30th ISAS Lunar Planetary Symp.,55-58(1997)* 9) Sugi,N., Arakawa,M. and Kouchi, A.:“Experimental study on impact vaporization of water-ice: impact velocity dependence and energy partition”,Proc.30th ISAS Lunar Planetary Symp.,71-74(1997)* 10) Arakawa,M.:"Collisional disruption of ice by high velocity impact",Proc.31th ISAS Lunar and Planetary Symp.,13-16(1998)* 11) Higa,M.,.Kato,M.,.Kiyono,T.,Shirai,K.,Arakawa,M.,Nakazawa,S.and Iijima,Y. Shock-wave attenuation below 1 Gpa in ice at 255K,Proc.31th ISAS Lunar and Planetary Symp.,9-12.(1998)* 12) Onose,N.,Higa,M.,Arakawa,M.,Nakamura,A.,and Fujiwara,A.:"Velocity Distribution of Fragments from Impact Cratering",Proc.31th ISAS Lunar and Planetary Symp.,5 -8(1998)* 13) Sugi,N.,Arakawa,M.,Kouchi,A.and Maeno,N.:"In-situ mass spectrometric observation of impact vaporization of water-ice at low temperatures",Geophys. Res.Lett., 25,837-840(1998)* 14) Higa,M.,Arakawa,M. and Maeno, N.:"Size dependence of restitution coefficients of ice in relation to collision strength",Icarus,133,310-320 (1998)* 15) Arakawa, M.: "Collisional disruption of ice by high velocity impact", Icarus 142: 34-45 (1999)* 17) Arakawa, M: "Ejection velocities of ice fragments in oblique impacts of ice spheres", Advances in Space Research, 23: 1217-1224 (1999)* 18) 安留哲,荒川政彦,前野紀一:「氷・氷摩擦係数の測定」,『雪氷』,61:437-443(1999)* (その他の論文) 1) M.Arakawa and M.Higa: "Measurements of Ejection Velocities in Collisional Disruption of Ice Spheres", Proc. 28th ISAS Lunar and Planetary Symp.,: 3740 (1995) 2) M.Higa, M.Arakawa and N.Maeno: "Measurements of Particle Velocities in the ― 118 ― Shock Compressed Snow Plates: Second Report", Proc. 28th ISAS Lunar and Planetary Symp.,: 29-32(1995) 3) N.Sugi, M.Arakawa, A.Kouchi and N.Maeno : "In Situ Observation on Impact Vaporization of Water Ice", Proc. 28th ISAS Lunar and Planetary Symp.,: 33-36 (1995) 2.総説、解説、評論等 1) 荒川政彦(解説):「氷の衝突過程」,『日本惑星科学会誌』, 4: 26-32(1995) 2) 荒川政彦:「宇宙・惑星環境における雪氷物性」,『雪氷』,61:215-220(1999)* ― 119 ― 渡 部 直 樹(WATANANABE,Naoki) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) T. Koizumi, Y. Awaya, M. Gonno, Y. Itoh, M. Sano, M. Kimura, T.M.Kojima, S. Kravis, M. Oura, M. Sano, T. Sekioka, N. Watanabe, H. Yamaoka and F. Koike :"4d Photoionization of singly-charged Xe, Ba, and Euions",J. Electron Spectrosc.Relat. Phenom,,79: 289-292 (1996) * 2) M. Sano, Y. Itoh, T. Koizumi T. M. Kojima, S. D. Kravis, M. Oura, T. Sekioka, N. Watanabe, Y. Awaya and F. Koike : "Photoionisation of 4d-electrons in singly -charged Xe ions",J.Phys. B: At. Mol. Opt. Phys,,29: 5305-5313 (1996) * 3) N. Watanabe, S. Kravis, Y. Awaya, T. Kojima, K. Okuno, and M .Oura:"Operation and status of the RIKEN EBIS(REBIS)",RIKEN Accel. Prog. Rep.,29:178 (1996) * 4) Watanabe,N.,Adachi,J.,Soejima,K.,Shigemasa,E.,Yagishita,A.,Fominykh,N.G. and Pavlychev,A.A.:"Fixed-molecule 1sσg,u photoelectron angular distributions as a * * probe ofσg andσu shape resonances of CO2", Physical Review Letters,78:49104914 (1997)* 5) Kravis,S.D.,Watanabe,N.,Awaya,A.,Kimura,M.,Kojima,T.,Okuno,K.,and Oura,M.:" Feasibility of the photoionization of multi-charged ions and first test of a PHOton Beam Ion Source (PHOBIS) with RIKEN EBIS(REBIS)",Physica Scripta,T71:121 -126(1997)* 6) Kambara,T.,Igarashi,A.,Watanabe,N.,Nakai,Y.,Kojima,T.M. and Awaya,Y.:"Recoilion momentum distribution of single-electron capture to the ground and excited 4+,5+ states in 0.5-1MeV/u B He collisions", Journal of Physics B,30:1251-1260 (1997)* 7) Koizumi,T.,Awaya,Y.,Fujino,A.,Itoh,Y.,Kitajima,M.,Kojima,T.M.,Oura,M.,Sano,M., q+ Sekioka,T.,Watanabe,N. and Koike,F.:"4d Photoionization of Multiply Charged Xe (q=1-3) Ions",Physica Scripta,T73:131-132(1997)* 8) Watanabe, N., Awaya, Y., Fujino, A., Itoh, Y, Kitajima, M., Kojima, T. M., Oura, M., Okuma, R., Sano, M., Sekioka, T.and Koizumi, T. :"Photoion-yield spectra of in the 4d-threshold energy region", J. Phys. B 31, 4137-4141(1998)* 9) Shigemasa,E., Adachi, J., Soejima, K., Watanabe, N., Yagishita, A. and Cherepkov, N.A. :"Diret Ditermination of Partial Wave Contributions in sigma^* Shape Resonance of CO Molecules", Physical Review Letters 80, 1622-1625(1998)* 10) Pavlychev, A. A., Forminykh,N.G., Watanabe, N., Soejima, K., Shigemasa, E.and Yagishita, A., "Dynamic Properties of N and 1s^-1 sigma_u* shape resonances in N2 and CO2 Mmolecules", Phys. Rev. Lett. 81, 3623-3626 (1998)* 11) Kojima, T. M., Oura, M., Itoh, Y., Koizumi, T., Sano, M., Sekioka, T., Watanabe, N., Yamaoka, H. and Awaya, Y. :"Photoion yield spectroscopy in the 4d photoionization of Eu^+",J.Phys.B:At. Mol. Opt. Phys. 31,1463-1468 (1998)* 12) M. Kojima, T., Oura, M., Watanabe, N., Awaya, Y., Itoh, Y., Koizumi, T.,Sano, M.and Koike, F.:"4d Photionization of singly-charged ions", Journal of the Korean Physical Society 32, 273-279 (1998)* 13) Kouchi,A., Takahashi,T., Watanabe,N. and Arakawa,M.: "New methods for making amorphous icy grains for comet nucleus simulation experiments", Proceedingsof the 32nd ISAS Lunar and Planetary Symposium, 121-124 (1999)* (その他の論文) ― 120 ― 1) R. Ohkuma, T. Koizumi, A. Fujino, Y. Awaya, M. Oura, M. Kitajima, N. Watanabe, + 2+ Y. Itoh, F. Koike, M. Sano, T. Sekioka :"4d PHOTOIONIZATION OF Xe , Xe ,AND 3+ Xe IONS",Atomic Collision Research in Japan, 22:85-86 (1996) 2) Y.Negishi,N.Watanabe,H.Shiromaru,Y.Achiba and N.Kobayashi:"Reaction of carbonsilicon binary cluster" Surface Review and Letter,3:661-665(1996) 3) S.D.Kravis,M.Abdallah,C.L.Cocke,C.D.Lin,M.Stockli,B.Walch,Y.D.Wang,R.E.Olson,V. D.Rodriguez,W.Wu, M.Pieksma and N.Watanabe:"Single ionization of He by low 6+ velocity protons and C (ejected electron momentum distributions)",Phys.Rev.A, 54:1394(1996) 4) N. Watanabe, T. Horii and A. Kouchi: UV-Photostimulated Production of Deuterium Molecules from Atmorphous D_20 Ice at 12 K, Proc. 21st ICPEAC in Sendai p.719 (1999) 3 著書 (2)共著 1) E.Shigemasa,J.Adachi,N.Watanabe,K.Soejima and A.Yagishita :"Molecular shape resonances studied by Angle-resolvedPEPICO",69-78(A.Yagishita and T.Sasaki: Atomic and Molecular Photoionization,Universal Academy Press, INC.Tokyo)(1996) ― 121 ― 生物適応科学(~H10年)・環境低温生物(H10年~) 助手 荒川圭太、助手 竹澤大輔 1.植物における低温馴化ならびにアブシジン酸誘導性遺伝子の生理機能の解明 (吉田、藤川、荒川、竹澤、研究支援推進員 長尾) Studies on physiological functions of cold- or abscisic acid-induced genes in plant cells: S. Yoshida, S. Fujikawa, K. Arakawa, D. Takezawa and M. Nagao 植物は低温馴化過程において様々な生理的変化を伴って凍結耐性を獲得する。本研究では、 これらの生理的変化に関連する蛋白質や遺伝子の性質を生理・生化学的、分子生物学的手法に よって解析し、各因子の凍結耐性獲得に果たす役割を明らかにしようと試みている。これまで に、低温馴化や植物ホルモン(アブシジン酸)処理による凍結耐性獲得と並行して誘導される 複数の遺伝子を単離し、環境変化に対する遺伝子の発現応答性について明らかにした。また、 これらの遺伝子をそれぞれシロイヌナズナに導入して形質転換植物を作出し、導入した遺伝子 による環境ストレス抵抗性(凍結耐性、乾燥耐性、越冬ストレス耐性など)賦与への効果につ いて分析している。なかでも、冬小麦培養細胞由来のタウマチン様蛋白質の遺伝子を導入した 形質転換植物では病原菌抵抗性が高まることが明らかになった。 2.季節的低温馴化による樹木細胞壁の変化 (藤川、荒川、竹澤) Changes in cell wall properties of woody plant cells during seasonal cold acclimation: S. Fujikawa, K. Arakawa and D. Takezawa 細胞壁の構造特性は植物細胞の凍結抵抗性に大きな影響を与えることが知られている。 寒 冷地に生育する樹種の木部放射柔細胞では、秋から冬にかけての季節的低温馴化に伴い、特徴 的な細胞壁結合性蛋白質が蓄積することを見いだした。そこで、これらの細胞壁結合性蛋白質 が木部組織の凍結挙動ならびに凍結抵抗性に与える影響について明らかにするために、蛋白質 ならびにその遺伝子の単離を試みている。現在、これらの細胞壁結合性蛋白質の一部を同定し、 越冬下での生理機能を予想している。 3.植物の低温馴化過程で誘導される細胞膜蛋白質の同定 (荒川) Identification of plasma membrane proteins induced during cold acclimation in plants : K. Arakawa 植物細胞の凍結耐性機構では、細胞外凍結に対する細胞膜の安定化が重要な因子のひとつと 考えられている。そこで本研究では、低温馴化過程で生じる細胞膜組成の変化が凍結ストレス 下での細胞膜の安定化や植物細胞の凍結耐性にどのような影響を及ぼしているのかを解明する ことを目的とした。越冬性イネ科植物では、低温馴化過程やアブシジン酸処理による凍結耐性 獲得に伴って細胞膜に特徴的な蛋白質が蓄積することが判明したので、これらの細胞膜蛋白質 ならびに遺伝子の解析をおこなっている。 現在、これまでに単離した細胞膜蛋白質の遺伝子 の解析を通じて、凍結耐性機構における細胞膜蛋白質の生理機能を明らかにしようと試みてい る。 4.小麦雪腐病菌エリシターにより誘導されるカルシウム結合タンパク質の研究 (竹澤) Snow mold elicitor-induced expression of a calcium-binding protein in wheat: D. Takezawa 植物は病原菌の感染に応答して、ファイトアレキシンや抗菌活性を有する蛋白質を産出する。 小麦では、雪腐病の原因である 黒色小粒菌核病菌(Typhula ishikariensis)由来のエリシタ ーで細胞を処理すると、複数の病気抵抗性関連遺伝子が新たに誘導される。このような遺伝子 発現のシグナル伝達には、エリシター処理により増加する細胞内カルシウムの役割が示唆され ている。小麦から単離されたCCD-1遺伝子は、エリシター処理後10分で発現誘導がおこるカ ルシウム結合タンパク質である。CCD-1は、EFハンドモチーフを持ち、カルシウムの結合によ ― 122 ― って構造変化して疎水性が高まることが生化学的解析により明らかになった。 5.植物液胞膜H+-ATPaseの機能解析による低温失活機構の究明 (吉田、荒川) + Studies on structural properties of plant vacuolar H -ATPase and its cold inactivation mechanism: S. Yoshida and K. Arakawa + 低温感受性のマメ科植物では、低温処理の初期段階で生じる液胞膜H -ATPaseの失活が低温 障害の発生に密接に関与していることを明らかにした。そこで、低温感受性の異なる2種類の マメ科植物から液胞膜H+-ATPaseを単離して両者を比較したところ、サブユニット構造や機能 + に違いが見いだされた。さらに、低温感受性のマメ科植物から単離した液胞膜H -ATPaseは、 低温耐性植物由来のものに比べて低温失活しやすいことが判明した。そのため、両者のサブユ + ニット構造の違いに着目し、液胞膜H ATPaseの構造特性の違いが酵素の低温失活機構に及ぼす影響について解析している。 ― 123 ― 吉 田 静 夫(YOSHIDA,Shizuo) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) S.Yoshida: "Low Temperature-induced Alkalization of Vacuoles in Suspension Cultured Cells of Mung Bean (Vigna Radiata [L.] Wilczek)", Plant Cell Physiol, 36: 1075-1079(1995)* 2 総説、解説、評論等 1) 吉田静夫(総説):「植物の寒冷適応機構」,『農業および園芸』, 70: 565-571(1995) 4 学術講演(招請講演) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) S.Yoshida: "Characterization of Vacuolar H+-ATPase from Plants Sensitive and Tolerant to Cold with Respect to the Stability against MgATP-dependent Cold Inactivation in Vitro", The Third Symposium of Plant Biomembrane Investigators, Functional Organizations on Biomembranes, Osaka (1995) ― 124 ― 藤 川 清 三(FUJIKAWA,Seizo) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Fujikawa, S.: "A Freeze-fracture study designed to clarify the mechanisms of freezing injury due to the freezing-induced close apposition of membranes in cortical parenchyma cells of mulberry",Cryobiology, 32: 444-454(1995)* 2) Sano, S., Fujikawa, S. and Fukazawa, K.:"Detection and features of wetwood in Quercus Mongolia Var.Grosseserrata", Trees, 9: 261-268(1995)* 3) 実山豊, 鈴木卓, 原田隆, 藤川清三 :「アスパラガス野外茎頂の凍結保存における前処 理の影響」,『低温生物工学会誌』,41:50-57(1995)* 4) Fujikawa, S. and Takabe, K.:"Formation of multiplex lamellae by equilibrium slow freezing of cortical parenchyma cells of mulberry and its possible relationship to freezing tolerance", Protoplasma, 190:189-203 (1996)* 5) I.Moon, S.Fujikawa and K.Shimada:"Cryopreservation of Chymomyza larvae (Diptera :Drosophilidae) at-196C with extracellular freezing", Cryo-Letters, 77:105-110 (1996)* 6) Maekawa, T.L., Takahashi, T.A., Fujihara, M., Fujikawa, S., Minami, M. and Sekiguchi, S.: "Effects of ultraviolet B irradiation on cell-cell interaction; implication of morphological changes and actin filaments in irradiated cells", Clinical Experiental Immunology, 105:389-396 (1996)* 7) Utsumi, Y., Sano, Y., Ohtani, J. and Fujikawa, S.: "Seasonal changes in the distribution of water in the outer growth rings of Fraxinus mandshurica var. japonica: A study by cryo-scanning electron microscopy",IAWA Journal, 17:113124 (1996)* 8) Fujikawa, S., Kuroda, K. and Ohtani, J.:"Seasonal changes in the lowtemperature behaviour of xylem ray parenchyma cells in red osier dogwood (Cornus sericea L.) with respect to extracellular freezing and supercooling", Micron, 27:181-191 (1996)* 9) Jitsuyama,Y.,Suzuki,T.,Harada,T. and Fujikawa,S.:"Ultrastructural study on mechanism of increased freezing tolerance due to extracellular glucose in cabbage leaf cells",Cryo-Letters,18:33-44(1997)* 10) 黒田克史,大谷諄,藤川清三:「樹木木部放射柔細胞の凍結適応機構の変遷」,『低温生物 工学会誌』,43:99-111(1997)* 11) Kuroda,K.,Ohtani,J. and Fujikawa,S.:"Supercooling of xylem ray pare nchyma cells in tropical and subtropical hardwood species", Trees, 12:97-106(1997)* 12) Fujikawa,S.,Kuroda,K. and Ohtani,J.:"Seasonal changes in dehydration tolerance of xylem ray parenchyma cells of Stylax obassia twigs that survive freezing temperatures by deep supercooling",Protoplasma,197:34-44(1997)* 13) Utsumi, Y., Sano, Y., Fujikawa, S., Funada, R. and Ohtani, J.:”Visualization of cavitated vessels in winter and refilled vessels in spring in diffuse-porous trees by cryo-scanning electron microscopy”Plant Physiology , 117:1463-1471 (1998)* 14) Kuroda, K., Ohtani, J., Kubota, M. and Fujikawa, S.: "Seasonal changes in the freezing behavior of xylem ray parenchyma cells in four boreal hardwood species", Cryobiology, 38:81-88(1999)* 15) Fujikawa, S., Kuroda, K., Jitsuyama, Y., Sano, Y. and Ohtani, J.:" Freezing behavior of xylem ray parenchyma cells in softwood species with differences in ― 125 ― 16) 17) 18) 19) 20) 21) 22) the organization of cell walls", Protoplasma, 206:31-40 (1999)* Suyama, T. , Shigematsu, T. , Takaichi, S. , Nodasaka, Y. , Fujikawa, S. , Hosoya, H., Tokiwa, Y., Kanagawa, T. and Hanada,S., Roseateles depolymerans gen. nov., sp. nov., a new bacteriochlorophyll a-containg obligate aerobe belonging to the β-subclass of the Proteobacteria, International Journal of Systematic Bacteriology, 49:449-457 (1999)* Ukaji, N., Kuwabara, C., Takezawa, D., Arakawa, K., Yoshida, S. and Fujikawa, S., Accumulation of small-heat shock protein homologs in the endoplasmic reticulum of cortical parenchyma cells in mulberry in association with seasonal cold acclimation, Plant Physiol., 120:481-489. (1999)* Nagao, M., Arakawa, K., Takezawa, D., Yoshida, S. and Fujikawa, S. Akinete formation in Tribonema bombycinum Derbes et solier (Xanthophyceae) in relation to freezing tolerance. J. Plant Res., 112:163-174. (1999)* Fujikawa, S., Kuroda, K. and Jitsuyama, Y. Determination of the role of cold acclimation-induced diverse changes in plant cells from the viewpoint of avoidance of freezing injury, J.Plant Res., 112:237-244. (1999)* 山田朋義、黒田克史、実山豊、藤川清三:「低温感受性植物細胞の凍結挙動」、低温生 物工学会誌』、45:7-13(1999)* 久保田勝利、荒川圭太、黒田克史、藤川清三:「低温馴化によるシラカンバ木部放射柔 細胞の細胞壁の変化」、『低温生物工学会誌』、45:39-42(1999)* 長尾学、藤川清三:「黄緑色藻類Tribonema bombycinumのアキネート形成による耐凍性 の上昇」、『低温生物工学会誌』、45:47-50(1999)* (その他の論文) 1) 黒田克史, 藤川清三, 大谷諄 :「ヤマグワ木部放射柔細胞の低温挙動」,『低温生物工学 会誌』, 41: 118-121(1995) 2) 村井麻理, 藤川清三, 吉田静夫 :「凍結脱水による液胞膜の損傷と細胞障害」,『低温生 物工学会誌』, 41: 122-127(1995) 3) Fujikawa,S.:"Similarity and diversity of freezing injury mechanisms in cryopreserved biological materials",Proceedings of International Workshop on Ultra-Long-Term Cryogenic Preservation Network of Biological and Environmental Specimens, Osaka,232-236(1997) 4) 藤川清三,黒田克史,佐野雄三,大谷諄:「細胞壁構造と植物細胞の凍結挙動の関係」, 『低温生物工学会誌』,44:25ー28 (1998) 2 総説、解説、評論等 1) 藤川清三, 黒田克史, 大谷諄(解説):「植物組織のCryo-SEM観察, 氷点下の温度への植 物細胞の適応機構の研究」,『細胞』,27(14):488-493 (1995) 2)「低温走査電子顕微鏡による樹木柔細胞の低温挙動の研究」(解説),『電子顕微鏡』,3 0:270-273 (1996) 3)「植物の凍結温度への適応機構」(総説),『低温生物工学会誌』,42:26-30 (1996) 4)「凍結に植物細胞はどのように適応するか」(解説),『化学と生物』, 34:656-666 (1996) 5) 藤川清三:「ガラス化保存。ガラス化保存過程における生物細胞の挙動」(解説),『低温 生物工学会誌』,43:10-16(1997) 6) 藤川清三:「赤血球の凍結障害の機序」(総説),『低温医学』,23:139-145(1997) 7) 藤川清三:「細胞の凍結傷害」(総説),『電熱研究』,37、29- 36(1998) 8) 藤川清三:「生物試料の凍結保存・植物・超長期凍結保存の機構」(解説), 『環境技術』,27:481-482(1998) ― 126 ― 4 学術講演(招請講演) (1)学会特別講演 1) 藤川清三:「植物の低温(凍結)適応機構」,低温生物工学会セミナー,札幌(1995) 2) ガラス化凍結保存,低温生物工学会セミナー:ビトリフィケーション,東京,(1996) ― 127 ― 荒 川 圭 太(ARAKAWA,Keita) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Odaira, M., Arakawa, K. Yoshida, S. and Maeshima, M. :"Properties of Two N-linked Glycoproteins associated with the nuclear envelope in mung bean hypocotyls", Plant Cell Physiol., 36: 945-953(1995)* 2) Koike, M., Takezawa, D., Arakawa, K. and Yoshida, S.:"Accumulation of 19-kDa plasma membrane polypeptide during induction of freezing tolerance in wheat suspension-cultured cells by abscisic acid", Plant Cell Physiol.,38(6): 707-716(1997)* 3) Kuwabara,C., Arakawa,K. and Yoshida,S.: "Abscisic acid-induced secretory proteins in suspension-cultured cells of winter wheat", Plant Cell Physiol., 40:184-191(1999)* 4) Nagao,M., Arakawa,K., Takezawa,D., Yoshida,S. and Fujikawa,S.: "Akinete formation in Tribonema bombycinum Derbes et Solier (Xanthophyceae) in relation to freezing tolerance", J. Plant Res.,112:163-174(1999)* 5) Ukaji,N., Kuwabara,C., Takezawa,D., Arakawa,K., Yoshida,S. and Fujikawa,S.: "Accumulation of small heat-shock protein homologs in the endoplasmic reticulum of coetical parenchyma cells in Mulberry in asociation with seasonal cold acclimation", Plant Physiol.,120:481-489(1999)* (その他の論文) 1) 久保田勝利、荒川圭太、黒田克史、藤川清三:「低温馴化によるシラカンバ木部放射柔 細胞の細胞壁の変化」、『低温生物工学会誌』、45:39-42(1999) 2 総説 1) Yoshida,S., Hotsubo,K., Kawamura,Y., Murai,M., Arakawa,K. and Takezawa,D.: "Alterations of intracellular pH in response to low temperature stresses", J. Plant Res.,112: 225-236(1999) 3 著書 (2)共著 1) Hotsubo, K., Kawamura, Y. , Takezawa, D., Arakawa, K. and Yoshida, S.: "Characterization of vacuolar H+-ATPases that are sensitive and tolerant to cold",237-244 (Li,P.H. and Chen,T.H.H.: Plant Cold Hardiness, Plenum Press, New York) (1998) 4 学術講演(招請講演) (2)国際的,全国的規模のシンポジウム 2) 荒川圭太,竹澤大輔,小池倫也,吉田静夫:「植物の耐凍性の増大と蛋白質組成の変動」, 低温生物学の最近の進歩 根井外喜男先生記念シンポジウム,第25回日本低温医学会総 会,旭川(1998) (3)シンポジウムのオーガナイザー 1) 大隅良典,島崎研一郎,飯野盛利,岡崎芳次,荒川圭太,三村徹郎,前島正義:「環境 応答の植物分子細胞生物学」植物生体膜談話会,第4回植物生体膜シンポジウム,札幌 (1998) ― 128 ― 竹 澤 大 輔(TAKEZAWA,Daisuke) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Takezawa, D., Liu, Z.-H., An, G. and Poovaiah, B.W. :"Calmodulin gene family in potato: Developmental and touch-induced expression of mRNA encoding a novel isoform", Plant Mol. Biol., 27: 693-703(1995)* 2) Patil, S., Takezawa, D. and Poovaiah, B.W.: "Chimeric plant Ca2+/calmodulindependent protein kinase gene with a neutral visinin-like calcium-binding domain", Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 92: 4797-4801(1995)* 3) Takezawa, D., Patil, S., Bhatia, A. and Poovaiah, B.W. :"Calcium-dependent protein kinase genes in corn roots",J. Plant Physiol.,149:329-335 (1996)* 4) Takezawa, D., Ramachandiran, S., Paranjape, V. and Poovaiah, B.W. :"Dual regulation of a chimeric plant serine/threonine kinase by calcium and calcium/ calmodulin",J. Biol. Chem.,271: 8126-8132 (1996)* 5) Wang, W., Takezawa, D. and Poovaiah, B.W. : "A potato cDNA encoding a homologue of mammalian multidrug resistant P-glycoprotein",Plant Mol. Biol.,31: 683-687 (1996)* 6) Wang, W., Takezawa, D., Narasimhulu, S.B., Reddy, A.S.N. and Poovaiah, B.W. : "A novel kinesin-like protein with a calmodulin-binding domain", Plant Mol. Biol.,31: 87-100 (1996)* 7) Poovaiah, B.W., Takezawa, D., An, G., and Han, T.J. : "Regulated expression of a calmodulin isoform alters growth and development in potato", J. Plant Physiol.,1 49: 329-335 (1996)* 8) Koike, M., Takezawa, D., Arakawa, K. and Yoshida, S. : "Accumulation of 19-kDa plasma membrane polypeptide during induction of freezing tolerance in wheat suspension cultured cells by Abscisic acid,"Plant Cell Physiol, 38: 707-716 (1997)* 9) Ramachandiran S., Takezawa D., Wang W.and Poovaiah B.W.:"Functional domains of plant chimeric calcium/calmodulin-dependent protein kinase. -Regulation by autoinhibitory and visinin-like domains", J. Biochem, 121: 984-990 (1997)* 10) Poovaiah, B.W., Wang, W., Takezawa, D., Sathyanarayanan, P.V. and An, G.: 2+ "Calcium-mediated signaling in plants: Calmodulin and Ca- /calmodulin-dependent protein kinase." J. Plant Biol. 40: 190-197 (1997)* 11) Takezawa, D. : "Elicitor- and A23187-induced expression of WCK-1, a gene encoding mitogen-activated protein kinase in wheat." Plant Mol. Biol. 40: 921933 (1999)* 12) Yoshida, S., Hotsubo, K., Kawamura, Y., Murai, M., Arakawa, K., and Takezawa, D. : "Alterations of intracellular pH in response to low temperature stresses." J. Plant Res. 112: 225-236 (1999)* 13) Ukaji, N., Kuwabara, C., Takezawa, D., Arakawa, K., Yoshida, S. and Fujikawa S. : "Accumulation of small heat-shock protein homologs in the endoplasmic reticulum of Cortical parenchyma cells in mulberry in association with seasonal cold acclimation." Plant Physiol. 120: 481-490 (1999)* 14) Nagao, M., Arakawa, K., Takezawa, D., Yoshida, S. and Fujikawa,S.: "Akinete formation in Tribonema bombycinum Derbes et Solier (Xanthophyceae) in relation to freezing tolerance" J. Plant Res. 112: 163-174 (1999)* ― 129 ― 3 総説,解説,評論等等 1) Hotsubo, K., Kawamura, Y., Takezawa, D., Arakawa, K., and Yoshida, S.: "Characterization of vacuolar H+-ATPases that are sensitive and tolerant to cold." Plant Cold Hardiness, Li, P. and Chen.T. Eds. Plenum Press, New York (1998) 5 特許 1) "Control of growth and development of potato plants" (United States Patent (#5, 498, 533) Poovaiah, B.W., Takezawa, D., Han, T.-J. and An, G.(1996) ― 130 ― 生物適応(H10年~) 教授 田中歩、助手 田中亮一 1.クロロフィルb合成遺伝子の単離 (田中歩、田中亮) Isolation of a gene for chlorophyll b synthesis by insertional mutagenesis of Chlamydomonas reinhardtii : A. Tanaka and R. Tanaka クロロフィルbは代表的な光合成色素で、光エネルギーを集め、それを光合成反応中心に伝 達する役割を担っている。クロロフィルbの合成経路と合成遺伝子に関しては不明であったが、 それらの研究は、植物の環境適応や、光合成生物の誕生、進化を解き明かす鍵と考えられてき た。我々は、クラミドモナスの分子遺伝学的手法を用いて、クロロフィルb合成遺伝子を初め て単離した。その構造解析の結果から、その遺伝子産物はRieskeと単原子鉄をもったオキシゲ ナーゼであることが明らかにし、この遺伝子をクロロフィルaオキシゲナーゼ(CAO)と名づ けた。 2.シロイヌナズナのクロロフィルb欠損株の解析 (田中歩、田中亮) Analysis of Arabidopsis thaliana chlorophyll b less mutants: A. Tanaka and R. Tanaka クロロフィルb欠損株は多くの高等植物から単離され、光合成の研究材料として用いられて きた。しかし、それらの原因遺伝子に関しては不明であった。我々は、シロイヌナズナの遺伝 子を解析したところ、クロロフィルaオキシゲナーゼに変異があることを見出した。また、野 生株のCAOを変異株に導入したところ、クロロフィルbの蓄積がみられた。こららのことから、 クロロフィルb欠損株の原因遺伝子はクロロフィルaオキシゲナーゼであることが明らかにな った。 3.光合成生物の進化 (田中歩、田中亮) Evolution of photosynthetic organisms: A. Tanaka and R. Tanaka 光合成色素系の遺伝子を解析することで、光合成生物の進化を明らかにすることに取り組ん だ。その結果、葉緑体の起源は、従来考えられてきたようにラン藻ではなく、多様な色素系を もった原核光合成生物であったことがわかった。また、光合成生物の進化において遺伝子の喪 失が重要な役割を担っていることを明らかにした。 ― 131 ― 田 中 歩(TANAKA, Ayumi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Ohtsuka, T., Ito, H., Tanaka, A. "Conversion of Chlorophyll b to Chlorophyll a and the Assembly of Chlorophyll with Apoproteins by Isolated Chloroplasts" Plant Physiol. 113:137-147 (1997) 2) Tanaka, A., Melis, A. "Irradiance-dependent changes in the size and composition of the chlorophyll a-b_light-harvesting complex in the green alga Dunaliella salina" Plant Cell Physiol. 38: 17-24 (1997) 3) Tanaka, R., Yoshida, K., Tsuji, H., Inokuchi, H., Okada, K., A. Tanaka "The third member of the hemA gene family encoding glutamyl-tRAN reductase is primarily expressed in roots in Hordeum vulgae" Photosynth. Res. 53: 161-171 (1997) 4) N. Satoh, Wada, A., Tanaka, A. "Temperature-dependent regulation of the ribosomal small subunit protein 21 in the cyanobacterium varidbilis M3" J. Bacteriol. 179: 7063-7071 (1997) 5) Tanaka, A., Ito, H., Tanaka, R., Tanaka, K.N, Yoshida, K., Okada, K. Isolation of chlorophyll a oxygenase which is invelved in chlorophyll aformation from chlorophyll a. Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 95: 12719-12723 (1998) * 6) Sato, N., Wada, A. Tanaka, A. Ribosomal proteins in the Cyanobacterium Anabena variabilis strain M3: Presence of L25 protein. Plant Cell Physiol.39: 1367-1371 (1998) * 7) Ruediger, W., Klement, H., Helfrich, M., Tanaka, A., Schoch. S., Oster,U. Redox reactions in the last steps of chlorophyll biosynthesis in The Chloroplst: From Molecular biology to Biotechnology, J.H.Akoyunoglou and H.Senger (eds), 185-190 (1998) 8) Rudiger, W., Klement, H., Helfrich, M., Tanaka, A., Schoch. S., Oster,U.: Redox reactions in the last steps of chlorophyll biosynthesis in The Chloroplst: From Molecular biology to Biotechnology, J.H.Akoyunoglou and H. Senger (eds), 185-190 . (1999) 9) Tomitani A., Okada K., Miyashita H., Matthijs H.C.P., Ohno T. Tanaka A.: Chlorophyll b and phycobilins in the common ancestor of cyanobacteria and chloroplasts. Nature 400, 159-162, (1999) 10) Toyama T., Teramoto H., Ishiguro S., Tanaka. A, Okada K., Takeba, G.: A cytokinin-repressed gene in cucumber for a bHLH protein homologue is regulated by light. Plant Cell Physiol. 40: 1087-1092 . (1999) 4 学術講演(招請講演) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) Tanaka, A.:" Interconversion of chlorophyll a and chlorophyll b" US/Japan Joint Seminar, Kailua-Kona (1997) 2) Ayumi Tanaka “Evolution and origin of chloroplast”, US/Japan Joint Seminar, Alaska (1999) ― 132 ― 田 中 亮 一 (TANAKA, Ryouichi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Tanaka R., Oster U., Kruse E., Ruediger W. and Grimm B. :"Reduced activity of geranylgeranyl reductase leads to loss of chlorophyll and tocopherol and to partially geranylgeranylated chlorophyll in transgenic tobacco plants expressing antisense RNA for geranylgeranyl reductase." Plant Physiol.120: 695 -704 (1999) * (その他の論) 1) Tanaka, R., Yoshida, K., Nakayashiki, T., Tsuji, H., Inokuchi, H., Kiyotaka, O. and Tanaka, A.:“The third member of the hemA gene family encoding glutamyltRNA reductase is primarily expressed in roots in Hordeum vulgare”, Photosynth. Res., 53: 161-171 (1997) ― 133 ― 生命科学 教授 芦田正明、助教授 早川洋一、助手 島田公夫、助手 片桐千仭、助手 落合正則 1.昆虫の生体防御機構に関する研究 (芦田) Studies on the defense mechanisms of insects: M. Ashida 昆虫には生まれつき備わっている生体防御機構、いわゆる自然免疫系が働いているが、哺乳 類に観られるような獲得免疫系は存在しない。自然免疫系として昆虫重要なものは、血球細胞 による異物の貧食(捕食)、異物周囲における被嚢形成、抗菌ペプチド合成、フェノール酸化 酵素前駆体活性化系の4つだと考えられている。1990年代の後半における我々の研究で、 フェノール酸化酵素前駆体活性化系が、昆虫における異物認識や、主要な4つの生体防御反応 を有機的に関連ずける為に必須のものあるとが明らかにれた。フェノール酸化酵素前駆体活性 化系は昆虫類や甲殻類の節足動物以外にも、環形動物に存在することが明らかにされている。 このことはフェノール酸化酵素前駆体活性化系が無脊椎動物の広く分布する生体防御機構であ る可能性を示している。 2.昆虫の外骨格形成と機能に関する研究 (芦田) The formation and the functions of the exoskeleton of insects: M.Ashida 昆虫の外骨格がカビやバクテリアなどの微生物に対する化学的生体防御反応に能動的に関与 していることを始めて示すことが出来た。この発見は、昆虫における生体防御研究にあらたな 方向性を示している。クチクラを構成するタンパクの研究から、昆虫において表皮細胞層を横 切ってンパクがばれる仕組み(transepithelial protein transport)についての研究の糸口を 得ることが出来た。多層構造を取るすべての動物群でtransepithelial protein transportの 仕組みは働いていると考えられる。しかし、ほ乳動物以外では、この仕組みが解析された例は ない。 3.寄生性昆虫と宿主昆虫の生理的相互作用の研究 (早川) Studies on the physiological interaction between parasitic insects and host insects: Y. Hayakawa 寄生バチ、カリヤコマユバチによって寄生された宿主昆虫、アワヨトウ幼虫は、その発育が 遅れ蛹への変態も阻害される。この発育阻害の原因が、宿主体内のホルモン様ペプチドである 発育阻害ペプチド(GBP)の濃度上昇によるところであることは10年程前に証明した。最近、 このGBPが、ヒトを含む種々の動物培養細胞に対して強力な細胞増殖活性を示すことを明らか にし、さらに、その細胞膜レセプターの存在についても証明した。 因に、GBPは、昆虫から 見つかったぺプチド性細胞増殖因子第1号となった。 4.昆虫休眠誘導の分子機構 (早川) Molecular mechanisms of the induction of insect diapause: Y.Hayakawa ヨトウガは、幼虫期に経験した短日飼育条件によって蛹の時期に休眠に入る。幼虫期に形成 される短日経験記憶が、脳内にどのような形で留まって、蛹期の休眠誘導に結び付くかを明ら かにすることが本研究の究極の目標である。短日飼育幼虫脳内ドーパミン濃度が長日飼育個体 のそれよりも高いこと、また、ドーパ経口投与によって長日飼育下でも蛹休眠誘導が可能であ ることが明らかになった。したがって、脳内の特定部位におけるドーパミン濃度上昇が、短日 経験記憶形成に何らかの寄与をしていることが予想される。さらに、卵休眠性をもつカイコに おいてもヨトウガ同様の結果が得られ、ドーパミンの昆虫休眠誘導への関与の一般性を証明す ることができた。 5.昆虫の休眠誘導の分子機構に関する研究 (島田) Molecular mechanism of diapuse induction in insects: K. Shimada ― 134 ― 昆虫の休眠を誘導する光周反応を遺伝学的、生化学的に解析して、休眠の誘導に効果的な短 日条件下では、暗期(夜間)に脳内のドーパミン濃度が上昇するとともに、脳細胞の増殖が抑 制されることを明らかにした。また、光周反応の測時機構に、生物時計遺伝子のperiodは関与 していないことを明らかにした。 6.ショウジョウバエの低温耐性と生体膜リン脂質 (片桐) How Drosophila species acquire cold tolerance: Qualitative changes of membrane phospholipids: C.Katagiri 熱帯起源の昆虫がどのようにして寒冷地にまでその分布を広げていったのか。ショウジョウ バエを実験動物として、生体膜のリン脂質の諸性質からその戦略を調べた。その結果、脂質の 構成脂肪酸の不飽和度を上昇させて寒冷に適応するというこれまで一般的に受け入れられてき たものとは全く異なる適応様式を明らかにした。 7.昆虫リポホリンの構造と機能 (片桐) Structure and functions of Insect lipophorin: C.Katagiri リポホリンの一部を重水素化し、中性子小角散乱法を用いてその構造を明らかにした。 8.昆虫のフェノール酸化酵素前駆体カスケードに関する研究 (落合) The prophenoloxidase cascade of insects: M. Ochiai カイコ血漿成分を分画し、フェノール酸化酵素前駆体カスケードの再構成実験に成功した。 これにより新たな5種類の構成因子活性を発見し、カスケードの概要モデルを提案した。その うち2種の蛋白質については精製法を確立し性状を調べた。また、カスケード関連因子として ドーパクロム変換酵素を生化学的に精製し、cDNAのクローン化により一次構造を決定するとと もに遺伝子の発現様式を明らかにした。 9.液性生体防御における異物認識の分子機構 (落合) Molecular mechanism of non-self recognition in humoral defense: M. Ochiai 昆虫の生体防御機構において重要な役割を担うβー1,3ーグルカン認識蛋白質、ペプチドグ リカン認識蛋白質のcDNAクローニングより一次構造を決定し、その相同蛋白質が哺乳類にも存 在することを示唆した。これらの蛋白質が細菌感染により昆虫脂肪体において誘導的に合成さ れることを証明した。また、ゲノム上のペプチドグリカン認識蛋白質の遺伝子構造を解析し、 哺乳類サイトカインの誘導合成に関与する転写因子が結合するエレメントをプロモーター領域 に複数発見した。以上より昆虫の異物認識機構と哺乳類の先天性免疫の類似性を指摘し、生物 の生体防御機構の分子進化について考察した。 ― 135 ― 芦 田 正 明(ASHIDA,Masaaki) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Brey, P.T., Ahmed, A., Lee, W-J., Ashida, M. and Lehane, M.J., Tyrosinasetype prophenoloxidase distribution in the alimentary canal of strains of Anopheles gambiae refractory and susceptible to Plasmodium infection, Experimental Parasitol., 80: 654-664(1995)* 2) Katsumi, Y., Kihara, H., Ochiai, M. and Ashida, M. ,A serine protease zymogen in insect plasma:Purification and activation by microbial cell wall components, Eur.J. Biochem., 228: 870-877(1995)* 3) Yasuhara, Y., Koizumi, Y., Katagiri, C. and Ashida, M.,Re-examination of properties of prophenoloxidase isolated from larval hemolymph of the silkworm, Bombyx mori. Arch. Biochem. Biophys. 320, 14-23(1995)* 4) Kawabata, T., Yasuhara, Y., Ochiai, M., Matsuura, S. and Ashida, M.:Molecular cloning of insect prophenoloxidase: A copper containing protein homologous to arthropod hemocyanin. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92, 7774-7778(1995)* 5) Ashida, M. and Brey, P.T., Role of the integument in insect defense: Prophenoloxidase cascade in the cuticular matrix. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92, 10698-10702(1995)* 6) Yoshida, H., Kinoshita, K. and Ashida, M., Purification of a peptidolycan recognition protein from hemolymph of the silkworm, Bombyx mori. J. Biol. Chem. 271, 13854-13860(1996)* 7) Tsuchiya, M., Asahi, N., Suzuoki, F., Ashida, M. and Matsuura, S., Detection of peptidoglycan and β-blucan with silkworm larvae plasma test. FEMS Immunoloty and Medical Microbiology. 15 129-134(1996) 8) Ashida, M., Studies on the phenol oxidase system of insect. Zool. Sci. 13, 3-4 9) Liu, C. T., HHou, R. F., Ashida, M. and Chen, C.C., Effects of inhibitors of serine protease, phenoloxidase and dopa decarboxylase on the melanization of Dirofilaria immitis microfilariae with Armigeres Subalbatus hemolymph in vitro. Parasitology 115, 57-68(1997)* 10) 芦田正明:「昆虫血液を利用したグラム陽性菌とカビの検出試薬」、『アニテックス』、 9:9-13* 11) Lee, W.-J., Ahmed, A., Torre, D., Kobayashi, A., Ashida, M. and Brey, P.T., Molecular cloning and chromosomal localization of prophenoloxidase cDNA from the malaria vector Anopheles gambiae. Insect Molec. Biol. 7, 41-50* 12) Satoh, D., HOrii, A., Ochiai, M. and Ashida, M., Prophenoloxidase-activating enzyme of the silkworm Bombyx mori: purification, characterization, and cDNA cloning. J. Biol. Chem. 274, 7441-7453.* 13) Ochiai, M. and Ashida, M., A pattern recognition protein for peptidoglycan: cloning the cDNA and the gene of the silkworm Bombyx mori. J. Biol. Chem. 274, 11854-11858* 3 著書 (2)共著 1) Ashida, M. and Brey, P.T.:“ Recent advances on the research of the insect prophenoloxidase cascade”,135-172(Brey, P.T. and Hultmark, D.:Molecular mechanisms of immune responses in insects, Chapman and Hall, London)(1997) ― 136 ― 4 学術講演(招請講演) (1)学会特別講演 1) 芦田正明:「昆虫のフェノール酸化酵素前駆体活性化系」,日本色素細胞学会,幕張(1997) (2) 国際的,全国的規模のシンポジウム 1) Ashida, M. and Ochiai, M. "Prophenoloxidase cascade in insect hemolymph and cuticle" The third international symposium on molecular insect science. Snowbird, Utah (1998) 2) Ashida, M. and Tsuchiya, M. "Peptidoglycan recognition protein and prophenoloxidase cascade of insect" International Conference on the Septic Shock Caused by Gram-positive Bacteria. Vibo Balencia, Italy (1998) 3) Ashida, M. "Prophenoloxidase cascade as an insect defense mechanism" FASEB (Federation of American Societies for Experimental Biology) Conference for Comparative and Experimental Innunology. Copper Mountain, Colorada (1999) 5 特許 1) 昆虫のフェノール酸化酵素系に関する研究 (1996) ― 137 ― 早 川 洋 一(HAYAKAWA,Youichi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Y.Hayakawa, A.Ohnishi, A.Yamanaka, S.Izumi and S.Tomino : "Molecular Cloning and Characterization of cDNA for Insect Biogenic Peptide, Growth-blocking Peptide", FEBS Letters, 376: 185-189(1995)* 2) A.Ohnishi, Y.Hayakawa, Y.Matsuda, K.M.Kwon, T.A.Takahashi and S.Sekiguchi: "Growth-blocking Peptide Titer during Larval Development of Parasitized and Cold-stressed Armyworm", Insect Biochem. Molec. Biol., 25: 1121-1127(1995)* 3) H.Noguchi, Y.Hayakawa and R.G.H.Downer: "Elevation of Dopamine Levels in Parasitized Insect Larvae", Insect Biochem.Molec.Biol.,25:197-201(1995)* 4) T.Hiraoka, Y.Hayakawa and R.G.H.Downer : "Immunocytochemical Localization of Trehalase Inhibitor in Some Insect Species", Cell Tissue Res., 279: 465-468 (1995)* 5) M.Ichikawa, N.Takahashi, H.Sahara, T.Akino, E.Suzuki, D.Ejima, M.Sawada and Y.Hayakawa: "One Molecule among the Gonadal Smooth Muscle Contraction Factors in the Sea Urchin is Trigonelline", J. Mar. Biotechnol., 2: 230-233(1995)* 6) A. Yamanaka, Y. Hayakawa, H. Noda, N. Nakashima and H. Watanabe: "Characterization of polidnavirus-encoded mRNA in parasitized armyworm larvae", Insect Biochem. Mol. Biol., 26:529-536(1996)* 7) H. Noguchi and Y. Hayakawa:"Mechanism of parasitism-induced elevation of dopamine levels in host insect larvae",Insect Biochem. Mol.Biol., 26:659-665(19 96)* 8) Noguchi, H. and Hayakawa, H. :"Role of dopamine at the onset of pupal diapause in the cabbage armyworm Mamestra brassicae", FEBS Letters, 413:157-161(1997)* 9) Hayakawa,Y and Yazaki,K.: "Envelope protein of parasitic wasp's symbiont virus, polydnavirus, protects the wasp eggs from cellular immune reactions by the host insect", Eur. J. Biochem., 246: 820-826(1997)* 10) Hyakawa,Y.:"The endocrinology of host-parasite interaction: novel insights into the the control of insect development",(Kawashima, S. and Kikuyama, S.: Advance in Comparative Endocrinology , 163-167, Monduzzi Editore, Bologna , 1997) 11) Hayakawa, Y. and Ohnishi, A.: Cell growth activity of growth-blocking peptide, Biochem. Biophys. Res. Commun., 250: 194-199 (1998)* 12) Hayakawa, Y.,Ohnishi,A. and Endo, Y.: Mechanism of parasitism induced elevation of haemolymph growth-blocking peptide levels in host insect larvae, J. Insect Physiol., 44 : 859-866 (1998)* 13) Matsumoto, H.,Noguchi, H. and Hayakawa, Y.: Primary cause of motality in the armyworm larvae simultaneously parasitized by parasitic wasp and infected with acteria, Eur. J. Biocem., 252 : 299-304 (1998)* 14) Kostal,V.,Noguchi,H., Shimada, K. and Hayakawa, Y.: Developmental changes in dopamine level in larvae of the fly Chymomyza costata:comparison between wild and mutant-nondiapause strains, J. Insect Physiol.,44: 605-614 (1998)* 15) Hayakawa, Y. and Noguchi,H.: Growth-blocking peptide expressed in the insect nervous system: cloning and functional characterization, Eur. J.Biochem., 253: 810-816 (1998)* 16) T. Aizawa, N. Fujitani, Y. Hayakawa, A. Ohnishi, T. Ohkubo, Y. Kumaki, K. Kawano, K.Hikiti and K. Nitta, Solution structure of an insect growth ― 138 ― factor, growth-blocking peptide. J. Biol. Chem.. 274. 1887ー1890, (1999) 18) B. F. Volkman, M. E. Anderson, K. D. Kevin, Y. Hayakawa, M. R. Strand and J. L. Markley, Structure of the insect cytokine peptide plasmatocyte-spreading peptide 1 from Pseudoplusia includens. J. Biol. Chem.. 274. 4493-4496, (1999) 19) V. Kostal, H. Noguchi, K. Shimada and Y. Hayakawa, Dopamine and serotonin in the larval CNS of a drosophilia fly, Chymomyza costata : are they involved in the regulatior of diapause ? Arch. Insect Biochem. Physiol. 42. 147-162, (1999)* (その他の論文) 1) N. Takahashi,H. Sahara, M. Mori, M. Ishikawa, M. Sawada and Y.Hayakawa :"Simple method of artifitial fertilization in he sea cucumber, Stichopus japonicus", Bull. Marine Biomed. Inst., Sapporo Med. Univ., 3:69-70(1996) 2 総説、解説、評論等 1) 早川洋一(総説): 「寄生バチのDNAを運ぶウィルス」,『科学』,65:69-78(1995) 2) Y. Hayakawa(総説): "Growth-Blocking Peptide:An Insect Biogenic Peptide that Prevents the Onset of etamorphosis", J. Insect Physiol., 41: 1-6(1995)* 3) 早川洋一:「寄生バチとポリドナウイルスの関係」、『ウイルス』、48:67-72 (1998) 3 著書 (2)共著 1) 山村則男, 早川洋一, 藤島政博 :『寄生から共生へ』,230(平凡社,東京)(1995) 2) Y. Hayakawa and A. Ohnishi :"Analysis of cDNA Clones Coding for Growth-blocking Peptide:An Insect Biogenic Peptide", 55-63 (eds. A.Suzuki, H.Kataoka and S.Matsumoto: Molecular Mechanisms of Insect Metamorphosis and Diapause, Industrial Publishing & Consulting Inc., Tokyo) (1995) 3) 早川洋一:「昆虫の寄生戦略とホルモン」,177ー198、(日本比較内分泌学会編 『無脊椎動物のホルモン』、 学会出版センター)(1998) 4 学術講演(招請講演) (2)国際的,全国的規模のシンポジウム 1) "Mechanism of parasitism-induced elevation of haemolymph growth-blocking peptide levels in host larvae" ,International Congress of Entomology ,Firenze, Italy(1996) 2) 早川洋一:" The endocrinology of host-parasite interaction: novel insights into the control of insect development" , 国際比較内分泌学会, 横浜(1997) ― 139 ― 島 田 公 夫 (SHIMADA,Kimio) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Moon, I., Fujikawa, S. and Shimada, K.:“Cryopreservation of Chymomyza larvae (Diptera: Drosophilidae) at -196℃ with extracellular freezing”, Cryo-Letters, 17:105-110(1996)* 2) Ohyama, Y. and Shimada, K.: "Ecological survey of collembolans in King George Island, maritime Antarctic", Edaphologia, 60: 23-35 (1998)* 3) Kostal, V., Noguchi, H., Shimada, K. and Hayakawa, Y.: "Developmental changes in dopamine levels in larvae of the fly Chymomyza costata: comparison between wild-type and mutant-nondiapause strains", Journal of Insect Physiology, 44: 605-614 (1998)* 4) Kostal, V. Noguchi, H., Shimada, K. and Hayakawa, Y.: "Dopamine and serotonin in the larval CNS of a drosophilid fly, Chymomyza costata: Are they involved in the regulation of diapause", Archives of Insect Biochemistry and Physiology, 42 : 147-162 (1999)* 5) Shimada, K. "Genetic linkage analysis of photoperiodic clock genes in Chymomyza costata (Diptera: Drosophilidae)", Entomological Science, 2: 575-578 (1999)* (その他の論文) 1) Shimada, K., Watabe, H. and Vinocurov, N.N.: "Wing morphology mutants isolated from an east Siverian population of chymomyza costata", Drosophila Information Service, 76: 81(1995) 4 学術講演 (2)国際的,全国的規模のシンポジウム 1) 島田公夫:「昆虫の休眠と光周時計」,第25回日本低温医学会総会,旭川(1998) 2) 島田公夫:「ハシリショウジョウバエにおける光周時計遺伝子の連鎖解析」、昆虫学国際 ニューイヤーセミナー、高知(1999) ― 140 ― 片 桐 千 仭(KATAGIRI,Chihiro) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Y.Yasuhara, Y.Koizumi, C.Katagiri and M.Ashida: "Reexamination of Properties of Prophenoloxidase Isolated from Larval Hemolymph of the Silkworm Bombyx mori", Arch. Biochem. Biophys., 320: 14-23 (1995)* 2) Ohtsu, T., Kimura, M.T. and Katagiri, C.: "How Drosophila Species Acquire Cold Tolerance :Qualitative Changes of Phospholipids" Eur.J. Biochem.252:608-611 (1998)* 3) Ohtsu,T.,Katagiri,C. and Kimura,M.,T.: "Biochemical Aspects of Climatic Adaptations in Drosophila curviceps, D. immigrans, and D. albomicans", Environmental Entomology,28:968-972 (1999)* 4) Tanaka,S.,Tanaka,K.,Yasuhara,Y.,Nakahara,Y. and Katagiri,C.: "Flight Activity, Flight Fuels and Lipophorins in a Cricket, Gryllus bimaculatus", Entomological Science,2:457-465 (1999)* 5) Katagiri,Y.U.,Mori,T.,Nakajima,H.,Katagiri,C.,Taguchi,T.,Takeda,T., Kiyokawa,N. and Fujimoto,J.: "Activation of Src Family Kinase Yes Induced by Shiga Toxin Binding to Globotriaosyl Ceramide (Gb3/CD77) in Low Density, Detergent-insoluble Microdomains", J. Biol. Chem.,274:35278-35282 (1999)* 2 総説、解説、評論等 1) 「低温と生物」(解説),『日本機械学会誌』,99:94-97(1996) ― 141 ― 落 合 正 則(OCHIAI,Masanori) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) T.Kawabata,Y.Yasuhara,M.Ochiai,S.Matsuura and M.Ashida :"Molecular Cloning of Insect Pro-phenol Oxidase-A Copper-containing Protein Homologous to Arthropod Hemocyanin", Proc. Natl. Acad. Sci.,U.S.A. 92: 7774-7778(1995)* 2) Katsumi, Y., Kihara, H., Ochiai, M., and Ashida, M.:"A serine protease zymogen in insect plasma - purification and activation by microbial cell wall components", Eur. J. Biochem. 228: 870-877(1995)* 3) Hiraki, Y., Inoue, H., Iyama, K., Kamizono, A., Ochiai, M., Shukunami, C., Iijima, S., Suzuki, F., and Kondo, J.:"Identification of chondromodulin I as a novel endothelial cell growth inhibitor - Purification and its localization in the avascular zone of epiphysical chrtilage", J. Biol. Chem. 272: 32419-32426 (1997)* 4) Satoh, D., Horii, A., Ochiai, M., and Ashida, M. :"Prophenoloxidase-activating enzyme of the silkworm, Bombyx mori - Purification, characterization, and cDNA cloning", J. Biol. Chem. 274: 7441-7453 (1999)* 5) Ochiai, M., and Ashida, A.: "A pattern-recognition protein for peptidoglycan Cloning the cDNA and the gene of the silkworm, Bombyx mori" J. Biol. Chem. 274: 11854-11858 (1999)* 4 学術講演(招請講演) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) Ashida, M. and Ochiai, M.:"Pro-phenoloxidase cascade in insect hemolymph and cuticle", Third International Symposium om Molecular Insect Science, Snowbird, Utah, USA (1998) 5 特許 1) ペプチドグリカン認識蛋白質およびその製造法 ― 142 ― 雪氷相転移ダイナミクス 助教授 古川義純 1.氷結晶表面・界面の構造相転移の分子動力学法による研究 (古川) Study of structural transitions at thesurface and interface of ice crystals: Y. Furukawa 氷結晶表面、および氷/水界面の分子レベルでの構造を解明するために、分子動力学法によ る計算機シミュレーション(地球環境科学研究科大学院生灘浩樹との共同研究)及び光学的手 法による実験的研究を実施している。氷結晶の表面構造は、低温では完全に平らであるが、温 度の上昇とともに幾何学的に荒れた表面に変化し、さらに融点に近くなると表面融解を起こす ことを分子レベルで初めて明らかにした。これにより、氷結晶表面の構造相転移の特性につい て動的な議論が可能になっている。また、氷/水界面の分子動力学シミュレーションでは、界 面構造の異方性を明らかにするとともに、氷結晶成長過程の観察を初めて可能にした。これに より、氷/水界面の構造のみならずその成長機構が面方位により大きく異なることが明らかに なった。本研究は、学術振興会日米共同研究としてワシントン大学J.Wettlauferらと共同で実施 されている。 2.過冷却水中での氷結晶のパターン形成の研究 (古川) Pattern formation of ice crystal grown in supercooled water: Y. Furukawa 過冷却水中で自由成長する氷結晶は、成長初期は円盤状あるがやがて円盤の縁で凹凸が発達 し、最終的に六方対称の発達した樹枝状になる。光干渉法を駆使して氷結晶をその場観察する ことで、このようなパターン形成過程を3次元的に解析することが可能になった。その結果、 円盤状成長には2つのタイプが存在することや、円盤の縁での界面不安定発達は円盤の厚みの みで制御されるなど全く新しいパターン形成の特徴が明らかになった(大学院理学研究科島田 亙との協同研究)。このような特徴を説明するために、新しいパターン形成モデルがカーネギ メロン大学R.F. Sekerka、山口大学 横山悦郎、マギル大学J-J.Xuらとの共同研究により開発 されている。これまでに、円盤成長の特徴については氷の底面の成長機構に依存するモデルに より説明できることが示された。また、円盤の縁での形態不安定発達についても従来から知ら れるMullins-Sekerka不安定や平らな界面の不安定化モデルなどでは説明が困難で、全く新し い形態不安定機構を提案する必要があると考えられる。 また、温度勾配中を薄い結晶成長セル(厚み20~100mm)を一定速度で平行移動させること で結晶を強制成長させる一方向成長実験装置を用いて、氷/水界面のその場観察を行った(地 球環境研究科大学院生 長島和茂との共同研究)。その結果、界面近傍での組成的過冷却と界 面不安定発達の関連を初めて直接的に証明した。また、このような薄い結晶成長セルでのパタ ーン形成においても、3次元性を考慮したモデルの発展が極めて重要であると考えられる。 3.微小重力環境を利用した氷結晶成長に対する重力効果の研究 (古川) Gravity effects for the ice crystal growth under microgravity condition : Y. Furukawa 結晶成長が起こると環境相には物質拡散場、あるいは熱拡散場が発達して、密度分布ができ るため、これに起因する自然対流が発生する。このような対流は、結晶成長にさまざまな効果 を及ぼす極めて重要な問題であるが、これまでその効果はほとんど解明されていない。地上で 実験を行う限り、重力の効果を排除することは極めて困難であるため、微小重力環境を利用し た実験の実施が重要である。本研究では、航空機によるパラボリック飛行、落下塔、さらにTR 1Aロケット(宇宙開発事業団)を利用して作られる4~300秒程度の短時間微小重力環境に おいて、氷結晶成長実験を実施した。その結果、氷結晶の自由成長において見られるパターン の非対称構造は、対流により誘起されるものではなく、界面の形態不安定機構に本質的に関連 する現象であることが明らかになった。さらに、氷結晶の成長に伴う熱拡散場が可視化が、微 ― 143 ― 小重力環境で初めて可能になった。本研究のこれまでの成果をもとに、2002年にはスペースシ ャトルによる長時間微小重力環境での氷結晶成長実験の実施される。現在、このための実験装 置を開発中である(短時間微小重力実験用装置の開発は、低温科学研究所技術部・中坪俊一、 瀬川鉄逸との協同研究)。 4.不凍糖タンパク質による氷結晶成長抑制の動力学的研究 (古川) Dynamic study of ice growth prohibition by anti-freeze glicoproteins: Y. Furukawa 極地の海に住む魚は、過冷却状態に置かれても凍結せず生き延びることができる。これは、 体液中にごく微量含まれる不凍タンパク質(AFP)が氷結晶と水の界面に吸着して、結晶成長 を阻害するためと考えられている。本研究は、このような結晶成長抑制の動力学的メカニズム を解明することを目指している。一方向成長法を利用すると、結晶成長の駆動力に当たる氷/ 水界面での冷却度(界面過冷却)の直接測定が可能で、成長速度に対する非線形性が極めて強 いことが明らかにされた。これは、AFP分子の単純な界面吸着モデルだけでは、結晶成長抑制 効果を説明することが困難であることを示唆している(大学院地球環境科学研究科猪原直美と の協同研究)。 5.氷晶雲の放射特性の実験的研究 (古川) Experimental study of optical properties of ice clouds : Y. Furukawa 氷晶で構成された氷晶雲の光散乱・放射特性は、地球全体の気候や気象との関連が深いにも 関わらず、十分解明されていない。これは、複雑な形状の氷晶で構成された雲の放射特性を理 論や計算機シミュレーションで推定するのが困難であるためである。本研究は、低温実験室に 設置した大型垂直風洞の中で氷晶雲を人工的に生成し、この人工雲の雲物理特性と光散乱・反 射・透過特性を同時観測することで、氷晶雲の放射特性を明らかにすることを目的としている。 これまでに、光散乱強度の散乱角分布と氷晶雲の微物理特性との関連が明らかにされている(大 学院理学研究科佐々木佳明、福田陽子らとの共同研究)。 ― 144 ― 古 川 義 純(FURUKAWA,Yoshinori) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Nada, H. and Furukawa, Y.: “Anisotropic Properties of Ice/water Interface: A Molecular Dynamics Simulation Study”, Jpn. J. Appl. Phys., 34: 583-584(1995)* 2) Furukawa, Y.:“Formation of patterns in growth of natural snow crystals”, Symmetry: Culture and Science, 6: 226-229(1995)* 3) Ishizaki, T., Maruyama, M., Furukawa, Y. and Dash, J.G.:“ Premelting of ice in porus silica glass”,J. Crystal Growth , 163:455-460(1996)* 4) Mori, A., Maruyama, M. and Furukawa, Y.:“Second-order expansion of GibbsThomson equation and melting point depression of ice crystallite,J. Phys. Soc. Jpn., 65 : 2742-2744 (1996)* 5) Nada, H. and Furukawa, Y.:“Anisotropic growth kinetics of ice crystals from water studied by molecular ynamics simulation”,J.Crystal Growth,169 : 587-597 (1996)* 6) Furukawa,Y.:"Faszination der Schneekristalle Times wie ihre bezaubernden Formen entsthen", Chemie in unserer Zeit, 31: 58-65(1997)* 7) Furukawa,Y. and Nada,H.:"Anisotropy in microscopic structures of ice-water and ice-vapor interfaces and its relation to growthkinetics" (T. Nishinaga.: Advances in the Understanding of Crystal Growth Mechanism, 559-573 ,Elsevior, Netherlands, 1997)* 8) Nagashima,K.and Furukawa,Y.:"Nonequilibrium effect of anisotropic interface kinetics on the directional growth of ice crystal,Journal of Crystal Growth, 171: 577-585 (1997)* 9) Furukawa, Y. and Nada, H.: "Anisotropic surface melting on ice crystal and its relation to growth forms", Journal of Physical Chemistry, 101: 6167-6170(1997)* 10) Nada, H. and Furukawa, Y.: "Anisotropy in molecular-scaled growth kinetics at ice-water interfaces", Journal of Physical Chemistry, 101: 6163-6166(1997)* 11) Shimada, W. and Furukawa, Y.: "Pattern formation of ice crystal during the free growth in supercooled water"Journal of Physical Chemistry, 101: 6171-6173 (1997)* 12) Nagashima, K. and Furukawa, Y.: "Solute distribution in front of ice-water interface during directional growth of ice crystal and its relation to interfacial patterns", Journal of Physical Chemistry, 101: 6174-6176(1997)* 13) Nada, H.and Furukawa, Y.: "Anisotropy in structural phase transition at ice surfaces: A molecular dynamics study" Applied Surface Science, 121/122: 445447(1997)* 14) 古川義純、長島和茂:「氷結晶のパターン形成実験とその数理解析」,『応用数理』,7:196211(1997)* 15) 長島和茂、古川義純「一方向凝固する氷の界面前方における拡散場のその場観察」, Space Util. Research, 14: 141-144(1997) 16) Sasaki, Y., Nishiyama, N., and Furukawa, Y.: "Experimental study on light scattering from an artificial ice cloud", Polar Meteorol. Glaciol.,12:130-139 (1998)* 17) 古川義純 :「過冷却水中での氷の樹枝状結晶成長と微小重力実験」, 『材料科学』, 35: 74-81 (1998)* 18) 古川義純,猪原直美,長島和茂:「氷結晶の一方向成長における界面カイネティクスの効 ― 145 ― 果の実験的研究」,Space Util. Research,15:40-43(1999) 2 総説、解説、評論等 1) 古川義純(解説):「雪の結晶成長と表面構造」,『表面』, 16: 651-654 (1995) 2) 古川義純(解説):「雪と氷」,『 結晶成長のしくみを探る-原子レベルでの成長メカニ ズム』,162-174(1995) 3) 灘浩樹,古川義純:「氷に関する最近の分子動力学シミュレーション-分子レベルでの氷 結晶の融液成長機構-」(解説),『雪氷』, 58(2) : 179-180 (1996) 4) 古川義純:「結晶多形はどのようなときに出来るのでしょうか。同一溶液内になぜ結晶多 形が出きるのでしょうか」(解説),『化学工学』,61:902 (1997) 5) 長島和茂,山本佳孝,古川義純:「一方向凝固中のTHFハイドレート近傍における液相塩分 濃度分布の光干渉測定」(解説),雪氷,61,149-154(1999) 6) 古川義純:「氷の結晶成長における最近の発展」(解説),冷凍,74,975-981(1999) 3 著書 (2)共著 1) 古川義純 :「9.5 雪と氷のモルフォロジー」,226-228 (日本結晶成長学会結晶成長ハン ドブック編集委員会:『結晶成長ハンドブック』,共立出版,東京)(1995) 2) 高橋喜平,古川義純,高橋雪人,稲雄次,三品隆司 :『講談社カルチャーブックス103 雪 花譜』128(講談社,東京)(1995) 4 学術講演(招請講演) (1)学会特別講演 1) 古川義純 :「氷結晶のパターン形成と界面構造」,形の科学会,和光(1995) 2) 古川義純 :「雪と氷の世界-結晶は語る-」,応用物理学会,金沢(1995) 3) Furukawa, Y.“Molecular Dynamics and Optical Experiment at Ice Interfaces ”, American Physical Society 1996 March Meeting, St. Louis, USA (1996) 4) 「雪の結晶の形を探る」,日本医学写真学会1996年度年次大会,札幌(1996) 5) 古川義純:「氷結晶のネガティブクリスタル」,第28回結晶成長国内会議,札幌(1997) 6)Furukawa, Y.: "Pattern formation of an Ice disk", 12th International Conference on Crystal Growth, Jerusalem (1998) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) Furukawa, Y. :"Pattern Formation in Growth of Snow and Ice Crystals",JRDC Forum for Multi-Disciplinary Researches-The Science of Form and Texture Formation-, Nasu(1995) 2) Furukawa, Y.:"Role of Ice surface properties In the growth shapes of crystals grown from the vapor",NATO Advanced Study Institute for Ice Physics In the Natural and Endangered Environment, Maratia, Italy(1997) 3)古川義純:「氷結晶のパターン形成」第23回結晶成長討論会,北湯沢(1997) 4) 古川義純:「氷結晶の成長におけるパターン形成機構」,日本学術振興会製鋼第19委員会 凝固プロセス研究会,札幌(1997) 5) Furukawa, Y. :"One-directional growth of ice crystals-Interface kinetics and pattern", Japan-Netherlands Seminar on Crystal Growth: Theory and In-situ Measurements, Zeist(1999) 6) Furukawa, Y. :"Pattern formation of an ice crystal(Opening lecture)", Sapporo Symposium on Anisotropic Effects in a Crystal Growth Problem and its Mathematical Analysis (SAM), Sapporo(1999) ― 146 ― (3)シンポジウムのオーガナイザー 1) 古川義純:形の科学会・第37回シンポジウム「時間発展と形の科学」、札幌(1996) 2) 古川義純:第28回結晶成長国内会議実行委員長,札幌(1997) 3) 古川義純:第25回結晶成長討論会実行委員長,北湯沢(1997) ― 147 ― 石 崎 武 志(ISHIZAKI,Takeshi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Ishizaki, T. “Experimental study on unfrozen water migration in porous materials during freezing",J.Natural Disaster Science,17(2):65-74(1996)* 2) Ishizaki, T., Fukuda, M., Mishima, N., Yokota, S., and Toya, K.:“Field observation of microclimatic and ground thermal regimes beneath highway", (M.Izumi,T.Nakamura and R.Sack:Snow Engineering,371-374,Balkema,Rotterdam, 1996)* 3) Ishizaki, T., Maruyama, M., Furukawa, Y. and Dash, J.G.: “Premelting of ice in porus silica glass”, J. Crystal. Growth, 163, 455-460(1996)* ― 148 ― 研究課題と成果・研究業績 (1995~1999) (寒冷圏総合科学部門) 気候変動 教授 福田正己 助手 串田圭司 過去5カ年での主な研究課題は、北極圏地域での気候変動の調査研究であった。すなわち、 シベリア及びアラスカの永久凍土地域で、地球規模の気候変動がどのように永久凍土に影響を 与えるかに関する調査研究である。 ここでいう気候変動とは、氷期-間氷期サイクルのよう な数万年スケールと、ここ100年間に顕在化しつつある温暖化という短周期を想定している。 長周期の変動では、最終氷期における東シベリアの古環境の復元を主な研究課題とした。 それは永久凍土中に保存された様々な情報(有機物、炭素年代、酸素同位体、花粉)を解析す ることによって、約4万年前から1.3万年前までの東シベリア永久凍土の消長を明らかにす ることであった。 この課題は文部省科学研究費国際学術の一環として、現地調査を実施した。 日本側から延べ22名が参加し、北極海沿岸地域で広域的にロシア側と協力しつつ調査を実施 した。 それらの成果は、個別的な学術誌への発表のほかに、ロシア側を招聘して札幌におい て3回の国際シンポジウムを主催し、3冊のProceedingsを刊行した。 主な成果としては、 東シベリア永久凍土地域に分布する地下氷-エドマ-の成因と形成年代を明らかにしたことで ある。 この地下氷-エドマ-は、最終氷期のなかの亜間氷期-カルギンスキー亜間氷期の不 安定な気候変動サイクルーダンスガード・オシュガ-サイクルーのもとで形成されたことが示 唆された。 最近の地球温暖化のもとでは、永久凍土は不安定化しつつあり、各地で大規模な融解が進行 しつつある。 しかも、永久凍土上層部には、過去に生成され貯留された高濃度のメタンガス が存在している。 これが温暖化のもとで大規模融解するために、大気中のメタンガス濃度の 増加に寄与している。 すなわち永久凍土は、地球温暖化のために受動的に応答して融解する のではなく、 融解に伴うメタンガスの大気への放出でより能動的に応答している。 このよ うな正のフィードバック過程で、地球温暖化促進効果が、シベリア永久凍土地域で出現しつつ あることを、世界で初めて定量的に明らかにした。 これらの成果はAGU等の国際学会で公表 した。 (1)永久凍土擾乱による温暖化効果ガスの放出 (福田、串田) Permafrost Disturbance and Greenhouse Gases Emision: M.Fukuda and K.Kushida 1998年度からは、シベリアでの現地調査の実績を拡大・発展させ、永久凍土の攪乱が温 暖化効果ガスに与える影響について、大規模な野外観測と実験を、科学技術振興事業団戦略的 基礎研究プロジェクトとして開始した。シベリア及びアラスカに大型の実験施設を設置し、年 間延べ40名の共同研究分担者を派遣して、継続した観測及び実験を展開しつつある。 串田 助手は、いずれの地域においてもリモ-トセンシング手法を適用しつつ、現地調査を実施して いる。 (2)地球の温暖化に与える森林火災の影響 (福田、串田) Inpact of Boreal Forest Fire to Global Warming: M.Fukuda and K.Kushida 特に福田は1998-2000年、NEDOの地球環境プロジェクトの一環として、アラスカ大 学との共同研究を展開した。1999年には、大規模な森林燃焼実験をアラスカで実施し、永 久凍土地域での森林火災が直接的に地球温暖化に与える影響、特に二酸化炭素収支への影響に 関して、定量的なデータを取得することに成功した。 この成果は2000年12月に開催の AGUで特別セッションとして公表される予定である。 (3)廃タイヤを用いた凍上抑制の研究 (福田、串田) Reduction of Frost Heave Damage using Granuated Used Tire: M.Fukuda and K.Kushida こうした永久凍土の調査・研究と併行しながら、凍土の物理的性質、特に超音波速度の温度 依存性と不凍水の定量的関係を明らかにし、1998年パリでの国際シンポジウムで発表した。 - 149 - また、タイヤ粉末混合による凍上抑制効果についての、野外実験及び室内実験を3カ年行い、 将来の地盤工学的応用の可能性を示すことが出来た。 - 150 - 福 田 正 己(FUKUDA,Masami) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) 西城潔, 長岡大輔, 福田正己,A.Arkhangeruv, V.Kinitsky:「シベリア北極圏, ボリショイ リャホフスキー島にて発見されたマンモスの皮膚の14C年代測定」,『第四紀研究』, 34: 315-317 (1 995)* 2) M.Fukuda and J.Moriizumi : "Radio Carbon Dating of Methane Obtained from Air in the Ground Ice in Siberian Permafrost", EOS Suppliment, AGU: 237(1995)* 3) T.Nakayama and M.Fukda : "Estimation of Methane Flux from Siberian Tundra Wetland", EOS Suppliment, AGU: 244(1995)* 4) D.Nagaoka,K.Saijyo and M.Fukuda : "Sedimental Environments of the Permafrost "Edoma" in Eastern Siberia", EOS Suppliment, AGU: 243(1995)* 5)「石造文化財の保護のための環境制御」,『土と基礎』,44:57-62(1996)* 6) 長岡大輔,西城潔,福田正己:「東シベリア・北極海周辺に分布する永久凍土"エドマ"の形 成環境と形成期」, 『地学雑誌』,105:15-30(1996)* 7) Fukuda,M.:"The role of frost shattering in 1996 rock fall at Toyohama,northern Japan,EOS Supplement AGU, F271:78(1997)* 8) Fukuda,M.,H.-S.Kim and Y-C,Kim:"Preliminary results of frost heave experiments using standard test sapmle provided by TC8",Ground Freezing 97:25-30(1997)* 9) Sugita,A. Ishizaki,T. and Fukuda,M.:"Characteristics of the soil-strucure of frozen soil, Ground Freezing 97,165-170(1997)* 10) Xu,X. Wu Ziwang,Ishizaki,T., Fukuda,M., Chuvilin,E. and Ershov,E.:"Essential characteristics of frozen fringe and determination of its parameters,Ground Freezing 97:203-208(1997)* 11) Harada, K.,Wada, K. and Fukuda, M.: "Permafrost Mapping by Transient Electromagnetic Method", EOS Supplement AGU, F273,: (1998)* (その他の論文) 1) K.Saijyo, D.Nagaoka and M.Fukuda : "Geomorphic Change in Relation to Thawing of "Edoma" on The Southern Coast of the Bolishoi Lykhavosky Island,East Siberia", Proceedings of the Third Symposium on the Joint Siberian Permafrost Study between Japan and Russia,: 1-4(1995) 2) D.Nagaoka, K.Saijyo and M.Fukuda: "Sedimental Environment of the Edoma in High Arctic Eastern Siberia", Proceedings of the Third Symposium on the Joint Siberian Permafrost Study between Japan and Russia,: 5-7(1995) 3) J.Moriizumi, T.Iida and M.Fukuda: "Radio Carbon Dating of Methane Obtained from Edoma in Arctic Coast Area of Siberia", Proceedings of the Third Symposium on the Joint Siberian Permafrost Study between Japan and Russia,: 9-14(1995) 4) Y.Igarashi, M.Fukuda, D.Nagaoka and K.Saijyo: "Vegetation and Climate during Accumulation Periods of Edoma, Infered from Pollen Records", Proceedings of the Third Symposium on the Joint Siberian Permafrost Study between Japan and Russia,: 135-138(1995) 5) T.Sato and M.Fukuda : "Biodiversity and Vegetation Patterns of Arctic Plants with Scalling:A Conside-ration from Permafrost Contribution", Proceedings of the Third Symposium on the Joint Siberian Permafrost Study between Japan and Russia,: 1173-1176(1995) 6) 福田正己,播磨屋敏生,原田鉱一郎:「岩石の凍結-融解による風化が基盤崩落に与える影 - 151 - 7) 8) 9) 10) 11) 12) 13) 14) 響について」,『月刊地球 』 18(9): 574-578(1996) M.Fukuda,N.Sento,D.Nagumo,T.Ohba and T.Nakamura:"Formation of Edoma(Ice Complex) in low land Kolyma East Siberia". Proceedings of 4th International Symposium on Joint Siberian Permafrost Study between Japan and Russia,12-18 (1996) 福田正己・高橋邦秀(1999):シベリアタイガの破壊が何をもたらすか、科学、69、 568-571. 福田正己(1999):シベリアと地球環境問題、岩波地球環境講座 第8巻、175-205. 福田正己(1999):シベリア永久凍土地域の森林破壊と温暖化ガス、北海道の林木育種、 42,4-9. 福田正己(1999):タイガの森林火災が地球温暖化へ与える影響の研究、食文化・科学及 び地球環境科学に関する研究助成、研究紀要、12173-178,アサヒビール学術振興財団 M.Fukuda,V.Rusakov and A.Fedorov(1999):Temperature and Methane profiles in Permafrost in Taiga region near Yakutsk. Proceedings of 7th Joint Siberian Permafrost Stuy bewteen Japan and Russia,125-131 MFukuda(1999):Influence of Boreal Forst Fire in Siberian Permafrost Region to Future Global Warming. in Special Reports on the Regional Studies of North-East Eurasia and North Pacific in Hokkaido University, 85-93. Jun TAKADA,VarelyE.STEPANOV,D.P.EFREMOV,T.SHINTANI,A.AKIYAMA,M.FUKUDA and M.HOSHI(1999):Radiological States around the Kraton-4 Underground Nuclear Explosion Site in Sakha, Journal of Radiat. Res, 40,223-228. 2 総説、解説、評論等 1) 福田正己、佐藤利幸(解説):「気候変動がシベリア永久凍土に与える影響」,『学術月 報』, 48: 471-478(1995) 2) M.Fukuda(解説): "Permafrost Responses to Global Climatic Changes in Long and Short Terms in High Arctic regions", Preprint of Wadachi Conference on Global Change and the Polar Climate:85-88(1995) 3) 福田正己:「アラスカの永久凍土と地下氷」(総説),『地理』,48 :28-33(1997) 4) 福田正己:「凍土と人と文化-先史モンゴロイドの歩んだ道筋-」(総説),(『手宮洞窟 シンポジュウム、記録集』,6-18,小樽市教育委員会,小樽市,1997) 5) Fukuda,M.:"Environmental Changes in the Dunhuang Area in Past 2000yBP"(総説), (Record of International symposium on the Conservation and Restoration of Cultural Property,27-40,Tokyo National Research Institute of Cultural Properties Tokyo,1997) 6) Fukuda,M.:"Radioactive and Other Hazardous Contamination in Arctic Siberia"(総 説), (Proceedings of International Symposium on Quest for Models of Coexistence :National and Ethnic Dimensions of Changes in the Slavic Euasian World, 341352, Slavic Research Center Hokkaido University ,Sapporo,1997) 7) Fukuda, M : "Changes of Permafrost Dynamics"(総説) abstract of 49th Arctic Science Conference, Fairbanks, 88,: (1998) 3 著書 (1)単著 1)『極北シベリア』,194(岩波書店 東京)(1996) (2)共著 1) 福田正己:「第2章シベリアとアラスカの自然」,47-90(米倉伸之:『モンゴロイドの地 球』,東京大学出版会)(1995) - 152 - 2) 福田正己:「第5章 永久凍土」,55-68,(福田正己,香内晃,高橋修平:『極地の科学』, 北海道大学図書刊行会, 札幌)(1997) 4 学術講演(招請講演) (1)学会特別講演 1) 福田正己 :「シベリア永久凍土地域の自然環境-地球環境変動との関連-」,北海道工業試 験所研究発表会,(1995) 2) M. Fukuda :"Permafrost Responses to Global Climatic Changes in Long and Short Terms in High Arctic Regions", Preprint of Wadachi Conference on Global Change and the Polar Climate,筑波(1995) 3)「シベリア永久凍土と気候変動」平成8年度日本農業気象学会北海道支部会,札幌(1996) 4) 北海道育林協会平成11年度講演会 6月10日 札幌市カデル(1999) シベリア永久凍土地域の森林破壊と温暖化ガス 5) 芝浦工業大学ハイテクリサーチセンター アジアパイプラインシンポジウム 10月29日 芝浦工業大学大宮校舎 地球環境研究の新たな展開-シベリア永久凍土と地球温暖化(1999) 6) 環日本海環境保全国際フォーラム 1999年10月26-27日 地球温暖化がシベリア永久凍土に与える影響 (2)国際的,全国的規模のシンポジウム 1) Fukuda,M.:"Radioactive and Other Hazardous Contamination in Arctic Siberia", International Symposium on Quest for Models of Coexistence:National and Ethnic Dimensions of Changes in the Slavic Euasian World, Slavic Resaerch Center, Hokkaido University, Sapporo(1997) 2) Fukuda,M.:"Artificial Ground Freezing-Fundamental and Application in Japan-”NATO Advanced Study Institute on Ice Physics in the Natural and Enlarged Environment,Maratea, Italy (1997) 3) Fukuda,M.:"Eastern Siberian Permafrost, its occurrence and genesis", NATO Advanced Study Institute on Ice Physics in the Natural and Enlarged Environment,Maratea, Italy (1997) 3) Fukuda, M: "Changes of Permafrost Dynamics " 49th Arctic Science Conference, Fairbanks, Alaska (1998) 4) Fukuda, M and KIM Haku-sam" Frost heave controll by mixing granuated used tire", International conference of ground freezing, Paris (1998) 5) Fukuda, M, Yu Sheng and Imamura, T ."Ultrasonic propagation velocity of parially frozen soil ", International conference of ground freezing, Paris (1998) - 153 - 串 田 圭 司(KUSHIDA,Keiji) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) K.Kushida and K.Yoshino:“A Monte Carlo radiative transfer simulation of rice canopy based on digital stereo photogrammetry”,International Archives for Photogrammetry and Remote Sensing, 31(7): 389-393(1996)* 2) K.Yoshino and K.Kushida:“Estimation of prior probabilities of landcover categories for Bayes'classifier”,International Archives for Photogrammetry and Remote Sensing, 31(3): 994-998 (1996)* 3) 吉野邦彦, 石倉毅典, 串田圭司, 山路永司 :「推定事前確率の付与による土地被覆分類 精度の向上」, 『写真測量とリモートセンシング』, 36(1): 8-15 (1997)* 4) Kushida, K., K. Yoshino, H. Chikatsu, E. Yamaji, T. Nagano, T. Ishida, S. Suzuki : Automated DEM Extraction from Balloon Images of a Tropical Peat Swamp Forest in Narathiwat, Thailand. International Archives of Photogrammetry and Remote Sensing, 32(5), 97-104 (1998)* 5) Kushida, K., K. Yazawa, T. Tamaru, M. Fukuda, K. Yoshino, G. Takao, S. Kuniyoshi, Y. Okada, A. Tokairin : "Multiangular measurements with aerial video sequence imagery in Kushiro-shitsugen" International Archives of Photogrammetry and Remote Sensing, 32(5-3W12): 55-59 (1999)* 6) Kushida, K., K. Yazawa, T. Tamaru, M. Fukuda, K. Yoshino, G. Takao, S. Kuniyoshi, Y. Okada, A. Tokairin : "Multiangular measurements with aerial video sequence imagery in Kushiro-shitsugen" International Archives of Photogrammetry and Remote Sensing, 32(5-3W12): 55-59 (1999)* (その他の論文) 1) Kushida, K., M. Fukuda : Image Sequence Analysis of the Boreal Forest with a Side-Looking Color Infrared Video. Arctic Science Conference Abstract, 25-28 October 1998, Fairbanks, Alaska (1998) 2) 福田正己、串田圭司 : 「北方森林火災が地球温暖化に与える影響」 生研フォーラム「宇 宙からの地球環境モニタリング」第9回論文集: 48-51 (1999) - 154 - 生物多様性 教授 戸田正憲、講師 丹野皓三、助手 大館智志 1.ショウジョウバエ類の生物多様性に関する研究 (戸田) Studies of biodiversity in drosophilid flies: Masanori J. Toda 東南アジアから東アジアにかけては、他の多くの生物群と同様にショウジョウバエ類の種多様 性も非常に高く、系統樹の中心的骨格をなす分類群もよく保存されている。このようにヨーロッ パや北米の温帯地域と比べて極めて高い多様性を有している生物相が、どのような歴史的過程で 形成され、現在その共存がどのような機構で維持されているのかを明らかにするために次の研究 を行った。 ショウジョウバエ相の解明率が低かった東シベリア、沿海州、中国大陸、東南アジア各地で調 査を行い、前2地域についてはそのファウナをほぼ完全に解明し、その他の地域についても多大 な標本と系統進化および生物地理学上有用な情報を大量に集積した。この5年間に、地球環境科 学研究科の大学院生である胡耀光、陳宏偉、Farhat Sultanaおよび各国の共同研究者たちと発表 した新種は40種にのぼる。 同じような生活要求を持ち、競争的関係にある多くの種が同じ場所で永く共存できる機構を明 らかにすることは、群集生態学の中心的課題の1つである。近年、果物やキノコなど一時的にパ ッチ状に存在する資源を利用する群集では、競争強者がパッチ間で集中分布することにより弱者 にとってリフュージとなる空きパッチが機会的にでき、弱者の存続が可能になるという集中分布 モデルが提唱され、その普遍性が論議されてきた。しかし、自然界における多くの競争種の共存 には、種内の集中分布のみならず種間の資源分割(ニッチの分化)などいくつかの要因が複合的に 作用していると考えられ、重要なのはそれらの相対的評価であるということを指摘し、具体的に キノコで繁殖するショウジョウバエ群集のデータを用いて相対評価の方法を提案した。さらに、 生物群集の進化の過程で、集中分布モデルのような確率論的な機構よりも適応進化による資源分 割のような決定論的な機構が重要になると予測し、ヨーロッパ、北米に比べて種多様性が高く、 相互作用の歴史が長いと考えられる東アジアのキノコ食ショウジョウバエ群集で、資源分割が実 際に起こっていることを実証し、それに伴う生活史形質の進化を明らかにした。 2.無脊椎動物の耐寒性と耐凍性 (丹野) Cold resistance and frost resistance in invertebrata: K.Tanno 無脊椎動物の耐凍性の獲得は潮間帯における環境の浸透圧変化に対する適応と平行して起き るものと思われる。 3.北東アジア産トガリネズミ類の起源に関する研究 (大舘) Origins of soricine shrews in northeastern Asis: S. Ohdachi 北東アジア地域に分布するトガリネズミについて、その種間の相互作用及び種の分化過程を 現地調査によって実施した。北東アジア各地のトガリネズミ類群集の成立過程を、現生種の分 布、化石記録、地史、及びDNA配列解析などに基づき、その系統関係を総合的に推定すること が出来た。その結果、北東アジア各地では独自の種分化と度重なる侵入により特徴的な群集を 形成したことが判明した。 - 155 - 戸 田 正 憲(TODA,Masanori J.) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Zhang, W. Toda, M.J. and Watabe, H. : "Fourteen new species of the Drosophila (Drosophila) Immigrans species-group (Diptera) from the Oriental Region", Jpn. J. Ent., 63(1): 25-51(1995)* 2) Toda, M.J. Sidorenko, V.S. Watabe, H. Kholin, S.K. and Vinokurov, N.N.: "A revision of the Drosophilidae (Diptera) in East Siberia and Russian Far East : Taxonomy and biogeography",Zoological Science, 13: 455-477 (1996)* 3) Toda, M. J. and Kimura, M. T.: "Life-history traits related to host selection in mycophagous drosophilids", Journal of Animal Ecology, 66:154-166 (1997)* 4) Chen, H.-w. and Toda, M. J.: "Amiota (Phortica) magna species-complex,with descrip;tions of three new species from China (Diptera,Drosophilidae)", Japanese Journal of Entomology, 65: 784-792 (1997)* 5) Chen,H.-w. and Toda,M.J.: "Amiota (Amiota) apodemata species-group, with descriptions of two new species from Southeast Asia (Diptera, Drosophilidae)", Entomological Science,1:271-275 (1998)* 6) Chen,H.-w. and Toda,M.J.: "Amiota (Phortica) omega species-complex, with descriptions of two new species from southern China (Diptera, Drosophilidae)", Entomological Science,1:403-407 (1998)* 7) Chen,H.-w. and Toda,M.J.: "Amiota (Amiota) sinuata species-group, with descriptions of five new species from Southeast Asia (Diptera, Drosophilidae)", Entomological Science,1:409-416 (1998)* 8) Tadauchi,O., Ito,M., Kojima,J. and Toda,M.J.: "Species and subspecies described by the late Professor Dr. Sh. F. Sakagami (Insecta: Hymenoptera)", Natural History Bulletin of Ibaraki University,2:229-246 (1998)* 9) Hu, Y.-g., Toda, M. J. and Watabe, H.: "A revision of the Lordiphosa tenuicauda species-group, with descriptions of eight new species from China (Diptera: Drosophilidae)", Entomological Science, 2: 105-119 (1999)* 10) Sultana, F., Kimura, M. T. and Toda, M. J.: "Anthophilic Drosophila of the elegans species-subgroup from Indonesia, with description of a new species (Diptera: Drosophilidae)", Entomological Science, 2: 121-126 (1999)* 11) Toda, M. J., Kimura, M. T. and Tuno, N.: "Coexistence mechanisms of mycophagous drosophilids on multispecies fungal hosts: aggregation and resource partitioning", Journal of Animal Ecology, 68: 794-803 (1999)* (その他の論文) 1) Toda, M.J. and Vinokurov, N.N.: "Biodiversity in drosophilid communities of cool-temperate and boreal birch forests:A special reference to the vertical distribution within forest", (eds. K. Takahashi, A.Osawa and Y.Kanazawa: Proceedings of the Third Symposium on the Joint Siberian Permafrost Studies between Japan and Russia in 1994, 187-195, 1995) 2) Watabe, H. Toda, M.J. Vinokurov, N.N. and Sidorenko, V.S. : "A comparative study on drosophilid faunas of east Siberia and neighboring regions", (eds. K.Takahashi, A.Osawa and Y.Kanazawa: Proceedings of the Third Symposium on the Joint Siberian Permafrost Studies between Japan and Russia in 1994, 196-200, 1995) - 156 - 3) Vinokurov, N.N. Nogovitzyna, S.N. Bagachanova, A.K. Averensky, A.I. Toda, M.J. and Watabe, H.: "Icings in the north-eastern Yakutia as natural "traps" for insects", (eds. N.Solomonov, B.Ivanov and M.J.Toda: Proceedings of the Symposium on Joint Permafrost Study between Japan and Russia in 1992-1994, 66-69, 1995) 4) Watabe, H., Sidorenko, V. S., Vinokurov, N. N. and Toda, M. J.:"Drosophilids from the Komsomlsky Nature Reserve, Far East of Russia and a revision of geographic distribution of the Drosophila virilis section flies(Diptera, Drosophilidae)", Proceedings of the Fifth Symposium on the Joint Siberian Permafrost Studies between Japan and Russia in 1996:59-66(1997) 5) Toda, M. J., Sidorenko, V. S., Watabe, H. and Vinokurov, N. N.: "The Drosophilidae (Diptera) of East Siberia", Proceedings of the Fourth Symposium on the Joint Siberian Permafrost Studies between Japan and Russia in 1995: 8799 (1999) 6) Vinokurova, A. V., Vinokurov, N. N. and Toda, M. J.: "A preliminary report of seasonal activity and vertical distribution of drosophilid flies in LenaValley, central Yakutia", Proceedings of the Fourth Symposium on the Joint Siberian Permafrost Studies between Japan and Russia in 1995: 101-108(1999) 2 総説,解説,評論等 1) 戸田正憲:「ショウジョウバエ類の環境選好性」(解説),(日高敏隆(監修),石井実, 大谷剛,常喜豊(編):『日本動物大百科 第9巻 昆虫II』,145-146,平凡社,東京, 1997) 4 学術講演(招請講演) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) Kitagawa, O., Tamura, K., Toda, M. J., Watabe, H., Toba, G., Park, J.,Katoh, T. and Aotsuka, T.: "Origin of Hawaiian drosophilids inferred from alcohol dehydrogenase gene sequences", International Symposium on Genetics 1997, Taipei (1997) 2) Iwakuma, T. and Toda, M. J.: "Long-term ecological research activities in Japan", 1997 International Long-term Ecological Research and Biodiversity Studies Conference, Taipei (1997) - 157 - 大 串 隆 之(OHGUSHI,Takayuki) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) 大串隆之:「植物を介する昆虫種間の相互作用」,『日本生態学会誌』,45: 33-42(1995)* 2) P.W.Price and T.Ohgushi : "Preference and performance linkage in a Phyllocolpa Sawfly on the willow, Salix miyabeana,in Hokkaido", Researches on Population Ecology, 37: 23-28(1995)* 3) T.Ohgushi and H.Sawada : "Demographic attributes of an introduced herbivorous lady beetle", Researches on Population Ecology, 37: 29-36(1995)* 4) "Consequences of adult size for survival and reproductive performance in a herbivorous ladybird beetle",Ecological Entomology,21: 47-55(1996)* 5) "A reproductive tradeoff in an herbivorous lady beetle: egg resorption and survival",Oecologia,106: 345-351(1996)*. 6) I.Washitani, Y.Okayama, k.Sato, H.Takahashi, T.Ohgushi:"Spatial variation in female fertility related to antagonistic biological interactions with flower consumers and pathogens in a forest metapopulation of Primula sieboldii", Researches on Population Ecology, 38: 249-256(1996)* 7) 丹羽真一 , 大串隆之: 「自家不和合性植物に対する訪花昆虫の送粉効果」, 『日本林学 会北海道支部論文集』,44:101-103 (1996)* 8) Ohgushi, T.and Sawada, H.: "A shift toward early reproduction in an introduced herbivorous lady beetle". Ecological Entomology, 22: 90-96 (1997)* 9) 大串隆之,斉藤隆 :「個体群生態学のフロンティア」,『日本生態学会誌』,47:163-165 (1997)* 10) Ohgushi, T.and Sawada,H.: "Population stability in relation to resource availability in an introduced population of an herbivorous lady beetle", Researches on Population Ecology, 39: 37-45(1997)* 11) Ohgushi, T. and Sawada, H. :“What changed the demography of an introduced of an herbivorous lady beetle ?” , Journal of Animal Ecology, 67: 679-688 (1998)* 2 総説、解説、評論等 1) 大串隆之: 「世界はなぜ緑に保たれているのか?」(解説),『化学と生物』,33: 419-421 (1995) 2) 大串隆之: 「個体数変動:パタンからメカニズムへ」(解説),『個体群生態学会会報』, 53:10-11 (1996) 3) 大串隆之: 「生態学のリストラ」(評論),『生物群集を考える ニュースレター』,4: 17-18 (1996) 4) 大串隆之: 「行動生態学と個体群生態学のインターフェイス」(評論),『日本動物行動 学会ニューズレター』,30: 13-15(1997) 3 著書 (2)共著 1) Ohgushi T. : "Adaptive behavior produces stability in herbivorous lady beetle populations",303-319 (eds. N.Cappuccino and P.W.Price: Population Dynamics, New Approaches and Synthesis, Academic Press, San Diego, USA) (1995)* 2) 大串隆之:「生物の複雑な相互作用を浮き彫りにする: 実験的アプローチ」,52-53(第9 回「大学と科学」公開シンポジウム組織委員会:『地球共生系:多様な生物の共存する仕 組み』,クバプロ,東京)(1995) - 158 - 3) 大串隆之:『岩波生物学辞典』第4版 岩波書店 東京(1996) 4) 大串隆之:「個体の適応形質と個体群の安定性:メカニスティック・アプローチ」, 30-52(久野英二:『昆虫個体群生態学の展開』,京都大学学術出版会,京都)(1996) 5) Ohgushi, T.:"Plant-mediated interactions between herbivorous insects",115-130 (Abe,T., Levin, S.A.and Higashi,M.:Biodiversity:An Ecological Perspective, Springer, New York, USA)(1997)* 6) Ohgushi, T.: “Bottom-up population regulation of an herbvious lady beetle: An evolutionary perspective”, 367-389 In Dempster, J.P. and Mclean, l. F. G.(eds.), Insect Populations: in Theory and in Practice, London (1998) 4 学術講演(招請講演) (1)学会特別講演 1) Ohgushi, T.: "Strong interconnection between adaptive traits and population stability in an herbivorous lady beetle" 第20回国際昆虫学会議 (International Congress of Entomology) シンポジウム "Evolutionary Aspects of Population Dynamics", Firenze, Italy (1996) 2) Ohgushi, T.: "Linking adaptive traits into population dynamics : A case study on an herbivorous lady beetle" 特別セミナー Swedish University of Agricultural Sciences, Uppsala, Sweden (1996) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) Ohgushi, T. : "The population ecology of an herbivorous lady beetle", Royal Entomological Society International Symposium "Insect Populations: in Theory and in Practice", Newcastle, England (1997) - 159 - 大 舘 智 志(OHDACHI, Satoshi) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) Ohdachi, S., Masuda, R., Abe, H., Adachi, J., Dokuchaev, N. E., Haukisalmi, V. and Yoshida, M. C.:" Phylogeny of eurasian soricine shrews (Insectivora, Mammalia) inferred from mitochondrial cytochrome b gene sequences", Zoological Science, 14: 527-532 (1997)* 2) Ohdachi, S.:"Laboratory experiments on spatial use and aggression in three sympatric species of shrew in Hokkaido", Mammal Study, 22:11-26(1997)* 3) Ohdachi, S., Masuda, R., Abe, H. and Dokuchaev, N. E.:"Biogeographical history of northeastern Asiatic soricine shrews (Insectivora, Mammalia)",Researches on Population Ecology, 39:157-162 (1997)* 4) Ohdachi, S. :“ Correction for the misidentification of a shrew in Sakhalin by Abe et al. (1996), by analysing full nucleotide sequences of the mitochondrial cytochrome b gene”, Biosphere Conservation 1 (2):161-163 (1998)* (その他の論文) 1) Dokuchaev, N.E., Ohdachi, S. and Abe, H.: "Morphometric status of shrews of the Sorex caecutiens/shinto group in Japan", Mammal Study, 24:67-78 (1999) 2) 増田隆一、アブリミット・アブダカディル、マハムト・ハリク、大舘智志、高橋学察:「中 国新彊シルクロードに分布するヤマネコ類:特にステップヤマネコ Felis silvestris ornataの生息状況について」、『哺乳類科学』、39: 307-321 (1999) 3 総説、解説、評論等 1) 大舘智志:「書評 “野外実験生態学入門. 生物の相互作用をどう調べるか. N.G.Hairston, Sr. 著、堀道雄ほか訳.蒼樹書房. 1996.”」(書評),『哺乳類科学』, 36: 258-260(1997) 2) 大舘智志:「書評 “Evolution of shrews. J. M. Wojcik and M. Wolsan 編著。Institute, Polish Academy of Sciences, 1998” 」(書評)『哺乳類科学』,38:201-202 (1999) 3) 大舘智志: 「食虫類をめぐるブラキストン線に関する問題-主にトガリネズミ類を中心と して」、『哺乳類科学』、39:329-336(1999) - 160 - 研究課題と成果・研究業績 (1995~1999) (附属流氷研究施設) 附属流氷研究施設 教授 青田昌秋、助教授 白澤邦男 1.流氷レーダーによる北海道・オホーツク海沿岸域の流氷観測 (青田、白澤) Sea-ice observations on the Okhotsk Sea coast of Hokkaido with the sea-ice Radar network: M.Aota and K.Shirasawa 流氷研究施設にはマイクロ波を使った流氷観測用レーダーが3基設置されており、北海道オ ホーツク海沿岸域約60kmの範囲の流氷分布や密接度の観測を行っている。 1969年から今年2000年まで32年間の日々、年々の沿岸域の流氷分布や流氷量、流 氷勢力等の観測資料が蓄積された。レーダー観測域に占める流氷密接度(又は流氷量)は、こ の32年間に顕著な周期性は認められないが、1987年以降、流氷期間、流氷密接度ともに 減少しつつあること等が調べられた。沿岸氷海域を伝播する波浪の変形特性とレーダー情報と の関連などが研究されている。流氷レーダーにより観測される毎日の流氷分布図は北大のホー ムページ(http://www.hokudai.ac.jp/lowtemp/sirl/shome.html)に掲載されている。 2.オホーツク海北海道沿岸の流氷勢力の長期変動 (青田、白澤) Long-term sea-ice variability on the Okhotsk Sea coast of Hokkaido: M.Aota and K.Shirasawa オホーツク海は一年の内数ヶ月のみ海氷に覆われる典型的な季節海氷域であり、海氷の生成、 成長、消滅は地域的気候や地球規模の温暖化に敏感に影響される。網走地方気象台では、目視 による海氷分布や密接度の観測を行っており、1892年から現在まで100余年の観測資料 が蓄積された。この100余年の海氷勢力と沿岸域年平均気温との関係を調べると、平均気温 は0.6度温暖化し、海氷勢力は40%減少している。これが地球規模の温暖化に対応したも のか、中規模、小規模の大気場との関連性、今後の予測などについて研究が続けられている。 3.アルゴス・ブイによるオホーツク海流氷の漂流観測 (青田、白澤) Sea-ice drift study in the Sea of Okhotsk with ARGOS buoys: M.Aota and K.Shirasawa アルゴス・ブイ観測により、サハリン北東部の流氷はサハリン東海岸沖を南下して北海道沿 岸域に接近し、更に、融解水は、千島列島を通過して太平洋に流出し、襟裳岬から白老に達し たことが調べられた。流氷の平均漂流速度は一日当たり35kmにも達した。 4.宗谷暖流域の海況・海洋生物環境の観測研究 (青田、白澤) Physical and biological environments in the Soya Warm Water area of Hokkaido : M.Aota and K.Shirasawa オホーツク海で唯一の明確な暖流である宗谷暖流の観測から、この 流れの駆動力が日本海とオホーツク海側の水位差であることが明らかにされた。このことから 検潮記録から流速を推定する方法が開発され、沿岸域の海況予測にも応用されている。また、 沿岸域での海洋観測、流氷タワー(結氷海域大気・海洋観測システム)や流氷レーダー網を定 点観測拠点として、水塊・水質構造、生物環境の季節変動、年々変動、流氷分布や動態との関 係などを研究している。沿岸域のクロロフィル量の変動から春と秋にピークが見られたが、春 のブルーミングは海氷の融解、氷縁域の後退と関係していることなどが調べられた。 5.オホーツク海とバルト海の海氷気候の比較研究 (青田、白澤) Sea-ice climatology in the Okhotsk and Baltic Seas: M.Aota and K.Shirasawa オホーツク海もバルト海も一年の内数ヶ月のみ海氷に覆われる典型的な季節海氷域であり、 海洋生産性が高く、地形的に閉塞されているという共通した特徴を有する。 (1)バルト海の約250年の海氷記録から、海氷域面積と年平均気温との相関が高かったが、 地形的に閉塞された特徴が顕著に現れたとみられる。オホーツク海の約100余年の海氷分布 から、海氷域の変動と年平均気温との関係は見られたものの、沿岸域の海氷変動は沿岸域の暖 ― 161 ― 流の影響や局所的気候に大きく影響されると思われる。 (2)北サハリンのチャイボをオホーツク海北部の厚い海氷域の、またオホーツク海の南の端 の氷縁域である北海道付近を薄い海氷域の観測拠点として、様々な気候条件での気象、海洋、 海氷、積雪等の現場実験観測を行い、海氷生成、成長、消滅の過程のモデル化、実測データに よる検証、氷厚成長予測の研究を行っている。比較的厚い氷、積雪の少ない時はモデルによる 再現性は非常によかったが、薄い氷や積雪が多いときは複雑であり、まだ改良の余地が多いこ となどが示された。気候値を用いて氷厚を推定するモデルの開発、検証を進めている。 6.北極圏ポリニア域における海氷、海洋の観測研究 (青田、白澤) Sea-ice and ocean processes in Arctic polynyas and ice edge regions of the seasonal sea ice zones: M.Aota and K.Shirasawa ポリニヤ(Polynya)と呼ばれる、氷野中の開水面はオアシスのように生物が集まる場所であ り、海洋生産性が高い海域である。また、季節海氷域の氷縁域も同様に生産性が高い海域であ る。東グリーンランド海のNorth East Water (NEW) Polynya Programや北バフィン湾の NOrth Water (NOW) Polynya Study等の国際共同研究計画に参加し て、ポリニア域や海氷域での海洋・海氷観測を行い、運動量や海洋熱フラックス等の乱流フラ ックスの観測や、海氷コアの解析による海氷の物理構造の変遷過程等を調べ、ポリニアの生成 ・維持機構解明のための研究を行っている。また、バレンツ海やバルト海の氷縁域において、 ICE.BAR、BALTEX/BASISやBALTEX/BASYS等の国際共同研究計画に参加して、運動量フラックス や海洋熱フラックスと氷縁域の変動機構との関係などを調べている。 ― 162 ― 青 田 昌 秋(AOTA,Masaaki) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) K.Shirasawa, T.Takatsuka and M.Aota: "Eddy Flux Measurements under the Firstyear Sea Ice in the Greenland Sea during the Northeast Water Polynya (NEW) Project, 1993", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 9: 199(1995)* (その他の論文) 1) K.Shirasawa, M.Ikeda, M.Ishikawa, T.Takatsuka, M.Aota, and Y.Fujiyoshi "Sea ice conditions and meteorological observations at Saroma-ko Lagoon,Hokkaido, December 1995 - November 1996", Low Temperature Science,Ser.A,55(Data Report): 47-77(1996) 2) M.Ishikawa, T.Takatsuka, M.Ikeda, K.Shirasawa, and M.Aota "Distributions of pack ice in the Okhotsk Sea off Hokkaido observed using a sea ice radar network,January-April,1996", Low Temperature Science,Ser.A,55(Data Report): 79-105(1996) 3) K.Shirasawa, M.Ikeda, M.Ishikawa, T.Takatsuka, Y.Kodama, M.Aota, S.Takahashi, T.Takizawa, A.Polomoshnov, P.Truskov and V.Astafiev "Meteorological data report for the sea ice studies at Val, Chaivo and Kleye Starit, northern Sakhalin", Low Temperature Science,Ser.A,55(Data Report):137-203(1996) 4) Aota, M., Ikeda, M., Takatsuka, T.,Ishikawa, M.. and Shirasawa, K.:"Variability of marine environment and chlorophyll a in the Sea of Okhotsk and the coastal regions of Hokkaido",Proc.12th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 217-220(1997) 5) Shirasawa, K., Ikeda, M., Ishikawa, M., Takatsuka, T., Aota, M. and Fujiyoshi, Y.: "Sea ice conditions and meteorological observations at Saroma-ko Lagoon, Hokkaido November 1996 - November 1997", Low Temperature Science, Ser. A, 56, Data Report, 9-34(1997) 6) Ishikawa, M., Takatsuka, T., Ikeda, M., Shirasawa, K. and Aota, M.: "Distributions of pack ice in the Okhotsk Sea off Hokkaido observed using a sea -ice radar network, January - March, 1997", Low Temperature Science,Ser. A, 56, Data Report, 35-52(1997) 7) Aota,M.,Nisio,F.,Nakayama,M. and Nakamuara,K.:"Size distribution of ice sheets deformed by wave",Proc.12th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice,65 -66(1997) 8) 青田昌秋,田中伊織,中多章文,八木宏樹:「 宗谷暖流の流速について(1)宗谷海峡 における流速と海面傾斜」Proc. 13th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 7-9 (1998) 9) 松山優治,小笠原勇,青田昌秋:「宗谷暖流の流速について(2)オホーツク海・北海 道沿岸の海流」Proc. 13th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 1112 (1998) 10) Enomoto, H., Aota, M., Shirasawa, K., Takahashi, S., Kodama, Y., Ishikawa, M., Ikeda, M., Takatsuka, T., Takizawa, T. and Ishikawa, N.:“ Recurring coastal polinya and sea ice extent in the northern part of Okhotsk Sea”, Proc. 13th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 136-141 (1998) 11) Shirasawa, K., Ishikawa, M., Takatsuka, T., Ikeda, M., Daibou, T., Kodama, Y., Aota, M., Enomoto, H., Takizawa, T., Polomoshnov, A., Truskov, P. and Astafiev, ― 163 ― V. :“Meteorological data report at Chaivo, northern Sakhalin, August 1995August 1998”, Low Temperature Science, Ser., 57. Data Report: 1-18 (1998) 12) Shirasawa, K., Ishikawa, M., Takatsuka, T., Ikeda, M., Daibou, T., Aota, M. and Hamaoka, S.: “Meteorological observations at marine towers in Mombetsu, Hokkaido, April 1997- November 1998 ”, Low Temperature Science, Ser., 57. Data Report : 19- 43 (1998) 13) Ishikawa, M., Takatsuka, T., Ikeda, M., Shirasawa, K. and Aota, M. : “Distributions of pack ice in the Okhotsk Sea off Hokkaido observed using a sea-ice radar network, Januart-March, 1998”, Low Temperature Science, Ser., 57. Data Report : 45- 61(1998) 14) Shirasawa, K., Ishikawa, M., Takatsuka, T., Ikeda, M., Daibou, T., Aota, M. and Fujiyoshi, Y.: “Sea Ice Conditions and meteorological observations at Saromako Lagoon, Hokkaido, December 1997- November 1998”, Low Temperature Science, Ser., 57. Data Report : 63-79 (1998) 15) Kodama, Y., Takizawa, A., Ishikawa, N., Shirasawa, K., Ishikawa, M., Ikeda, M., Takatsuka, T., Daibou, T., Aota, M., and Fujiyoshi, Y. “Comparison of the meteorological conditions between the two sites around Saroma-ko Lagoon”, Low Temperature Science, Ser., 57. Data Report: 81- 98 (1998) 16) Matsuyam,M., Aota,M., Ogasawara,I.and Matsuyama,S.(1999) Seasonal Variation of Soya Current. Oceanogr.,Soc. Japan., Umi no Kenkyu Vol. 8 No.5,333-33 4 学術講演(招請講演) (1) 学会特別講演 1) 「海氷の性質」,土質工学会, 北見(1996) 2) 青田昌秋:「オホーツク海の流氷について」,流体工学会特別招待講演 ,札幌(1998) 3) 青田昌秋:「アルゴス・ブイによるオホーツク海の流氷の漂流について」WPCM (Western Pacific Geophysics Meeting ),西太平洋地球物理会議,台北,(1998) 4) 青田昌秋:「オホーツク海の流氷勢力の長期変動について」,PICES(北太平洋に関 する国際会議),根室(1998年) (2)国際的,全国的規模のシンポジウム 1) K.Shirasawa, M.Ikeda, M.Ishikawa, S.Mochizuki, T.Takatsuka, M.Aota and Y.Fujiyoshi:"Atmospheric and Sea-ice characteristic at Saroma-ko lagoon, Hokkaido",11th International Symposium on Okhohtsk Sea & Sea Ice, Mombetsu (1996) (3)シンポジウムのオーガナイザー 1) Aota,M.:12th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice,Monbetsu,Hokkaido (1997)(大会副会長,氷海研究グループ事務局長) 2) 青田昌秋:第13回オホーツク海と流氷に関する国際シンポジウム事務局長,(1998) 3) 青田昌秋:オホーツク~ふるさとの海シンポジウム,コンビーナー,紋別(1998) 4) 青田昌秋:サハリン石油開発シンポジウム,コンビーナー,紋別(1998) ― 164 ― 白 澤 邦 男(SHIRASAWA,Kunio) 1 学術論文 (レフリー制ジャーナルに掲載された論文) 1) E.J.-J.Hudier, R.G.Ingram and K.Shirasawa: "Upward Flushing of Sea Water through First Year Ice", Atmosphere-Ocean, 33: 569-580(1995)* 2) K.Shirasawa,T.Takatsuka and M.Aota: "Eddy Flux Measurements under the Firstyear Sea Ice in the Greenland Sea during the Northeast Water Polynya (NEW) Project, 1993", Proc. NIPR Symp. Polar Meteorol. Glaciol., 9: 199(1995)* 3) 白澤邦男:「オホーツク海の流氷-地球温暖化による影響は?-」,『水文・水資源学会誌』, 8(3): 335-343(1995)* 4) K.Shirasawa and R.G.Ingram: "Comparative Study of Atmospheric and Oceanographic Characteristics Above/under First-year Ice at Low and High Latitudes in the Arctic", Proc. NIPR Symp. Polar Biology, 8: 20-28(1995)* 5) S.Taguchi, R.E.H.Smith and K.Shirasawa: "Effect of Salinity and Silicate on Ice Algal Growth in Saroma-ko Lagoon, Hokkaido, Japan", Proc. NIPR Symposium on Polar Biology, 8: 48-50(1995)* 6) K.Shirasawa,T.Takatsuka and M.Aota :"Under-ice Turbulent Flux Measurements in the Northeast Water Polynya: Preliminary Results from Summer 1993 Fieldwork", Proc.International Arctic Science Symposium, Tsukuba, Japan, Jan. 12-13, 1995, B108-B111 (1995)* 7) Shirasawa,K.,Ingram,R.G. and Hudier,E.:"Oceanic heat fluxes under thin sea ice in Saroma-ko lagoon, Hokkaido, Japan", J. Marine Systems,11:9-19 (1997)* 8) Shirasawa,K. and Ingram,R.G.:"Currents and turbulent fluxes under the firstyear sea ice in Resolute Passage, Northwest Territories, Canada",J.Marine Systems,11:21-32(1997)* 9) Taguchi,S.,Smith,R.E.H. and Shirasawa,K.:"Effect of silicate enrichment on ice algae at low salinity in Saroma-ko Lagoon, Hokkaido,Japan",J. Marine Systems,11 :45-52(1997)* 10) Taguchi,S.,Saito,H.,Hattori,H. and Shirasawa,K.:"Vertical flux of ice algal cells during the ice melting and breaking periods in Saroma-ko lagoon, Hokkaido, Japan", Proc. NIPR Symposium on Polar Biology, 10:56-65(1997)* 11) Hamasaki, K., Ikeda, M., Ishikawa, M., Shirasawa, K. and Taguchi, S.: “Seasonal variability of size-fractionated chlorophyll a in Monbetsu Harbor, Hokkaido, northern Japan.”Plankton Biol. Ecol 45 (2) 151-158 (1998)* 12) Shirasawa, K., Lepparanta, M. and Saloranta, T.: “Interannual variability in sea ice of Saroma-ko lagoon, Hokkaido, Japan”. Proc. 2nd Intl. Conference on Climate and Water, Espoo, Finland, 17-20 August 1998, 3: 1147-1156 (1998)* (その他の論文) 1) K.Shirasawa: "Summary of the Workshop on The Okhotsk Sea,Sea Ice and its Biological Role,and the Okhotsk Marginal Ice Zone Experiment (OMIZEX)", The Tenth International Symposium on Okhotsk Sea,Sea Ice & Peoples, Mombetsu, Japan (1995) 2) K.Shirasawa and M.Lepparanta : "Comparisons between the Okhotsk Sea and the Baltic Sea ice", Proc. 11th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 215-227 (1996) 3) S.Taguchi, H.Saito, H.Hattori and K.Shirasawa: "Vertical flux of ice algal ― 165 ― 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) 11) 12) : 13) 14) 15) 16) cells during the ice melting and breaking periods in Saroma-ko lagoon, Hokkaido, Japan", Proc. 11th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 261-262 (1996) S.Honjo, M.Kashiwai, K.Oshima, K.Shirasawa, M.Takahashi and T.Takizawa: "The Sea of Okhotsk; new global significance and an urgent need for international joint investigation", Proc. 11th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 287-290 (1996) Shirasawa, M.Ikeda, M.Ishikawa, S.Mochizuki, T.Takatsuka, M.Aota and Y.Fujiyoshi: "Atmospheric and sea-ice characteristics at Saroma-ko lagoon, Hokkaido", Proc. 11th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 332-338 (1996) K.Shirasawa, M.Ikeda, M.Ishikawa, T.Takatsuka, M.Aota, and Y.Fujiyoshi, "Sea ice conditions and meteorological observations at Saroma-ko Lagoon, Hokkaido, December 1995 - November 1996", Low Temperature Science, Ser. A, 55 (Data Report): 47-77(1996) M.Ishikawa, T.Takatsuka, M.Ikeda, K.Shirasawa, and M.Aota, "Distributions of pack ice in the Okhotsk Sea off Hokkaido observed using a sea-ice radar network,January-April,1996", Low Temperature Science, Ser. A, 55(Data Report): 79-105(1996) K.Shirasawa, M.Ikeda, M.Ishikawa, T.Takatsuka, Y.Kodama, M.Aota, S.Takahashi, T.Takizawa, A.Polomoshnov, P.Truskov, and V.Astafiev, "Meteorological data report for the sea ice studies at Val, Chaivo and Kleye Strait, northern Sakhalin", Low Temperature Science, Ser. A, 55(Data Report):137-203(1996) Hamasaki,K.,Ikeda,M.,Ishikawa,M.,Shirasawa,K. and Taguchi,S.:"Seasonal variation of the size fractionated chlorophyll a biomass in relation to ice algae and ice coverage in Mombetsu harbor, Hokkaido,Japan", Proc. 12th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice,:103-107(1997) Lepparanta,M.,Shirasawa,K. and Saloranta,T.:"On the oceanic heat flux and sea ice thickness", Proc. 12th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice,154 - 159(1997) Aota,M.,Ikeda,M.,Takatsuka,T.,Ishikawa,M. and Shirasawa,K.:"Variability of marine environment and chlorophyll a in the Sea of Okhotsk and the coastal regions of Hokkaido",Proc.12th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice,217-220(1997) Shirasawa,K.,Ikeda,M.,Ishikawa,M.,Takatsuka,T.,Aota,M. and Fujiyoshi,Y.:"Sea ice conditions and meteorological observations at Saroma-ko Lagoon, Hokkaido, November 1996 - November 1997", Low Temperature Science,Ser. A, 56, Data Report 9-34(1997) Ishikawa,M.,Takatsuka,T.,Ikeda,M.,Shirasawa,K. and Aota,M.:"Distributions of pack ice in the Okhotsk Sea off Hokkaido observed using a sea-ice radar network, January - March, 1997", Low Temperature Science, Report:35-52(1997) Taguchi, S., Saito, H., Hattori, H. and Shirasawa, K.: “ Vertical flux of ice algal in 1997 in Saroma Ko Lagoon”, Proc. 13th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 44 (1998) Shirasawa, K., Saloranta, T. and Lepparanta, M.: “On the Modeling of Okhotsk Sea Ice Thickness”, Proc. 13th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 87-98 (1998) Enomoto, H., Aota, M., Shirasawa, K., Takahashi, S., Kodama, Y., Ishikawa, M., Ikeda, M., Takatsuka, T., Takizawa, T. and Ishikawa, N.: “Recurring ― 166 ― coastal polynya and sea ice extent in the northern part of Okhotsk Sea”, Proc. 13th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, 136-141 (1998) 17) Shirasawa, K., Ishikawa, M., Takatsuka, T., Ikeda, M., Daibou, T., Kodama, Y., Aota, M., Enomoto, H., Takizawa, T., Polomoshnov, A., Truskov, P. and Astafiev, V. : “Meteorological data report at Chaivo, northern Sakhalin, August 1995August 1998”, Low Temperature Science, Ser., 57. Data Report, 1-18 (1998) 18) Shirasawa, K., Ishikawa, M., Takatsuka, T., Ikeda, M., Daibou, T., Aota, M. and Hamaoka, S.: “Meteorological observations at marine towers in Mombetsu, Hokkaido, April 1997-November 1998. ”Low Temperature Science, Ser., 57. Data Report, 19-43 (1998) 19) Ishikawa, M., Takatsuka, T., Ikeda, M., Shirasawa, K. and Aota, M.: “Distributions of pack ice in the Okhotsk Sea off Hokkaido observed using a sea-ice radar network, January-March, 1998”, Low Temperature Science, Ser., 57. Data Report, 45-61 (1998) 20) Shirasawa, K., Ishikawa, M., Takatsuka, T., Ikeda, M., Daibou, T., Aota, M. and Fujiyoshi, Y.: “Sea ice conditions and meteorological observations at Saromako Lagoon, Hokkaido, December 1997-November 1998”, Low Temperature Science, Ser., 57.Data Report, 63-79 (1998) 21) Kodama, Y., Takizawa, A., Ishikawa, N., Shirasawa, K., Ishikawa, M., Ikeda, M., Takatsuka, T., Daibou, T., Aota, M. and Fujiyoshi, Y.: “Comparison of the meteorological conditions between the two sites around Saroma-ko Lagoon”, Low Temperature Science, Ser., 57. Data Report, 81-98 (1998) 22) Shirasawa, K., Kobinata, K.,Takatsuka, T. and Kawamura, T.:"Measurements of under-ice currents and turbulent fluxes of momentum and heat in the NOrth Water (NOW) polynya region", Proc.14th Intl. Symp. Okhotsk Sea & Sea Ice, and Intl. Workshop on Rational Evaluation of Ice Forces on Structure, 31 January 4 February 1999, Mombetsu, Japan, 85-89, (1999). 23) Shirasawa, K., Kobinata, K.,Takatsuka, T. and Kawamura, T.:"Measurements of under-ice turbulent fluxes and oceanic boundary layer processes in the Baltic Sea-BALTEX/BASIS 1998 Experiment-", Proc. 14th Intl. Symp. Okhotsk Sea & Sea Ice, and Intl. Workshop on Rational Evaluation of Ice Forces on Structure, 31 January - 4 February 1999, Mombetsu, Japan, 90-94, (1999). 24) Ishikawa, M., Takatsuka, T.,Daibo, T., Shirasawa, K. and Aota, M.: "Distributions of pack ice in the Okhotsk Sea off Hokkaido observed using a sea -ice radar network, January - April, 1999", Low Temperature Science, Ser., 58. Data Report 15-44, (1999). 25) Shirasawa, K., Ishikawa, M.,Takatsuka, T., Daibo, T., Aota, M. and Fujiyoshi, Y.: "Sea ice conditions, and meteorological and oceanographic observations at Saroma-ko lagoon, Hokkaido, December 1998 - November 1999", Low Temperature Science, Ser., 58. Data Report 45-62 (1999). 26) Shirasawa, K., Ishikawa, M., Takatsuka, T., Daibo, T., Aota, M. and Hamaoka, S. :"Meteorological and oceanographic observations at marine towers on the Okhotsk Sea coast of Hokkaido, December 1998-December 1999", Low Temperature Science, Ser., 58. Data Report 1-13, (1999). 2 総説、解説、評論等 1)白澤邦男:「オホーツク海の流氷と気象・気候.細雪」44 :51-58(1998) 3 著書 ― 167 ― (2)共著 1) 白澤邦男:「4.2 オホーツク海の流氷ー地球温暖化による影響は?」,191-204,(水 文・水資源学会編集出版委員会編、編集代表橘治国:積雪寒冷地の水文・水資源,(株) 信山社サイテック、東京)(1998) 4 学術講演(招請講演) (2)国際的、全国的規模のシンポジウム 1) K.Shirasawa: "Interannual Variability in Atmospheric and Sea-ice Conditions of SaromaKo Lagoon, Hokkaido,Japan", Climate Change and Waters in the Boreal Zone, Kuhmo, Finland (1995) (3)シンポジウムのオーガナイザー 1) Shirasawa, K.:10th International Symposium on Okhotsk Sea, Sea Ice & Peoples, Mombetsu, Hokkaido (1995) (学術プログラム委員会委員長) 2) Shirasawa, K.:11th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, Mombetsu, Hokkaido (1996) (学術プログラム委員会委員長) 3) Shirasawa, K.:12th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice, Mombetsu, Hokkaido (1997)(学術プログラム委員会委員長) 4) Shirasawa, K.:13th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice and the Ice Scour and Arctic Marine Pipelines Workshop, Mombetsu, Hokkaido, (1998) (学術プログラム委員会委員長) 5) Shirasawa, K.:14th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice and International Workshop on Rational Evolution of Ice Forces on Structures, Mombetsu, Hokkaido (1999) (学術プログラム委員会委員長) ― 168 ― 資 料 編 1.組織・運営 ①理念および基本方針 1)目的・使命 雪氷で覆われる寒冷圏の存在は、地球の気候システムや地球環境の成り立ち において、極めて重要な意味をもっている。低温科学研究所は、寒冷圏及び低 温条件の下における様々な科学的現象の解明という学術上の要請に応えるため の基礎研究および応用研究の推進を目的としている。あわせて共同研究、共同 利用などを行う全国共同利用施設として、地球環境科学の発展に貢献し、学術 情報の中心的な役割を果たす使命を担っている。 2)組織改編の経緯 低温科学研究所は、昭和16年(1941年)の創立以来、既存の学問分野 の壁を越えた新たな科学の創造を目指して、異なる研究分野の融合的な組織と して運営されてきた。純正物理・気象・生物・医学・海洋・応用物理の6部門 体制でスタートし、その研究活動が、後に雪氷学や低温下の生物学という新た には、12部門1附属研究施設となり、雪氷学、海洋学、気象学、生化学、生 態学等を網羅する総合的な研究所になった。その後、平成7年(1995年) に、設置目的の冒頭に「寒冷圏」を付け加えて、地球環境科学の一翼を担う中 枢的な研究機関たるべく、全国共同利用研究所に組織を変えた。同時に、専門 化・細分化し過ぎたことの反省に立って、それまでの小部門編成を、寒冷海洋 圏科学、寒冷陸域科学、低温基礎科学、寒冷圏総合科学の4大部門に改めた。 また,平成8年度からCOE(Center of Excellence)として、寒冷圏研究の中 核的研究機関の役割を担っている。 以降今日まで、4部門・1附属施設の研究組織で運営されており、その概要 は、(1)気候システムにおける寒冷海洋圏の役割および寒冷海洋圏の自然環 境とその変動のメカニズムを解明することを目的とする寒冷海洋圏科学部門、 (2)寒冷陸域における雪氷圏と生態系の変動史、変動機構およびそれらの相 互作用を明らかにすることを目的とする寒冷陸域科学部門、(3)低温および 特殊環境下での自然現象および生命現象を実験的な立場から研究することを目 的とする低温基礎科学部門、(4)寒冷域の海洋圏、地圏、生物圏にまたがる 自然現象を総合的に研究することを目的とする寒冷圏総合科学部門、(5)オ ホーツク沿岸海域の自然環境と生物環境の長期観測および実験的研究を目的と する附属流氷研究施設、となっている。 3)研究および教育理念 低温科学研究所はこれまで、世界各地の寒冷地域で様々なフィールド研究を 展開すると共に、様々な実験研究を推進してきた。その研究活動は広範な学問 ― 169 ― 領域に及ぶが、寒冷圏で生ずる様々な自然現象を学際的総合的に解明すること を共通の理念として研究活動を進めている。 このような理念のもと、大小様々な研究プロジェクトや共同研究が内外の研 究者と連携して進められているが、COE研究機関として長期的に取り組むべ き研究課題として、オホーツク海とその周辺陸域に注目して、寒冷圏における 大気・海洋・雪氷・植生の相互作用を解明することを掲げている。この地域が 寒冷圏の南限であり、その自然環境が気候変動に鋭敏に変化すること、太平洋 への寒冷水塊の供給源であること、また季節海氷域独特の熱・水・物質循環が あること等々、地域的な問題と同時に地球の気候システムを理解する上でも重 要な地域と位置づけて、長期的視野で推進を図っている。すでに、オホーツク 海における海洋調査では、日本・ロシア・アメリカの共同研究として、ロシア 領海内で初めての本格的な海洋観測と試料採取を実現し、カムチャッカでは、 氷河や植生の調査をロシアと共同で進めている。 一方、このようなプロジェクト型の研究とは別に、多くの個別研究が行われ ている。多様な研究形態を擁する研究所の運営にあたって、学術的・社会的要 請に応えるプロジェクト研究の推進を図ると同時に、将来開花するかもしれな い研究を育む自由な研究環境を保持することを研究所運営の基本方針としてい る。プロジェクト研究がいわば時流に乗った研究であるとすれば、自由な発想 に基づく個別研究は、次の時流を作るために不可欠な研究活動と位置づけてい る。 以上のような研究活動と併せて、学術研究の発展に対応して独創的、先駆的 な研究をなし得る次代の研究者を養成することも、本研究所の使命である。低 温科学研究所は、大学院地球環境科学研究科の3つの専攻に4つの講座を担当 しており、修士課程および博士課程の教育指導を行っている。最新の手法や最 先端の機器を使った研究指導等、大学院学生の教育、研究指導のための環境充 実に力を注いでいる。 ― 170 ― ②組織と管理運営 1)組 織 寒冷海洋圏科学部門 寒冷陸域科学部門 研 究 部 門 低温基礎科学部門 共同利用委員会 運 営 協 議 会 寒冷圏総合科学部門 付 属 施 設 所 長 流 氷 研 究 施 設 機 器 開 発 技 術 部 特 機 開 発 将来計画委員会 教 授 会 観 測 解 析 第一研究協力室 各 種 委 員 会 第二研究協力室 第三研究協力室 事 務 部 庶 務 掛 会 計 掛 図 書 掛 ― 171 ― 低温機関室 2)運営 ○運営協議会 審議事項:所長の諮問に応じ,①研究所運営の基本方針に関する事項, ②共同利用及び共同研究に関する事項,③その他本研究所に 関する重要事項 組 織:①所長,②本研究所の専任の教授若干名,③本学の専任の教 官若干名,④学外の学識経験者若干名 開 催:年2~3回 ○共同利用委員会 審議事項:共同利用及び共同研究についての計画案の作成 組 織:①所長,②本研究所の専任の教官10名以内,③本学の専任 の教官及び学外の学識経験者10名以内 開 催:年2~3回 ○教授会 審議事項:①組織に関する事項,②所長候補者の選考に関する事項,③ 施設長候補者の選考に関する事項,④教員の人事に関する事 項,⑤予算に関する事項,⑥共同利用及び共同研究に関する 事項,⑦その他本研究所に関する重要事項 組 織:本研究所の専任の教授 開 催:月1回 ○運営委員会 審議事項:①組織に関する事項,②予算に関する事項,③その他本研究 所の運営に関する事項 組 織:①本研究所の専任の教授,②専任教授のいない研究グループ の代表者 開 催:月1回 ○将来計画委員会 審議事項:①研究所の将来計画についての基本方針に関する事項,②研 究組織の設置・改廃及び概算要求に関する事項 組 織:①所長,②選挙により選出された教授2名,③選挙により選 出された助教授又は講師2名,④選挙により選出された助手 2名,⑤所長が必要と認める教官2名以内 開 催:必要に応じ開催 ― 172 ― 3)定員と現員 平成7年度 教 授 助教授 講 助 師 手 教官計 事 務 系 合 計 平成8年度 各年度4月1日現在 平成9年度 平成10年度 平成11年度 定 員 15 (2) 15 (2) 15 (2) 15 (2) 15 (2) 現 員 11 (2) 13 (2) 14 (2) 15 (2) 15 (2) 定 員 15 15 15 15 15 現 員 8 10 13 14 13 定 員 0 0 0 0 0 現 員 4 3 2 1 1 定 員 23 23 23 22 22 現 員 18 18 21 20 23 定 員 53 (2) 53 (2) 53 (2) 52 (2) 52 (2) 現 員 41 (2) 44 (2) 50 (2) 50 (2) 52 (2) 定 員 29 28 28 28 25 現 員 28 28 28 27 26 定 員 82 (2) 81 (2) 81 (2) 80 (2) 77 (2) 現 員 69 (2) 73 (2) 78 (2) 77 (2) 78 (2) カッコ書きは、客員分で外数(現員欄は、各年度10月1日現在) ― 173 ― 4)各部門の教員の変遷 各年度 4 月1日現在 ○ 寒冷海洋圏科学部門 教 授 助教授 助 手 7 年度 竹 内 若 土 8 年度 9 年度 竹 内 竹 内 若 土 若 土 河 村(公) 河 村(公) 藤 吉 遠 藤 遠 藤 遠 藤 大 島 大 島 大 島 中 塚 河 村(俊) 河 村(俊) 河 村(俊) 深 町 深 町 深 町 大河内 大河内 川 島 川 島 10 年度 竹 内 若 土 河 村(公) 藤 吉 遠 藤 大 島 中 塚 河 村(俊) 深 町 大河内 川 島 11 年度 竹 内 若 土 河 村(公) 藤 吉 遠 藤 大 島 中 塚 河 村(俊) 深 町 大河内 川 島 豊 田 12 年度 竹 内 若 土 河 村(公) 藤 吉 遠 藤 大 島 中 塚 河 村(俊) 深 町 11 年度 大 畑 小 林 本 堂 原 12 年度 大 畑 小 林 本 堂 原 水 野 山 田 堀 口 石 川 成 瀬 隅 田 成 田 川 島 豊 田 ○寒冷陸域科学部門 7 年度 教 授 助教授 助 手 秋田谷 小 林 本 堂 (水 (山 堀 石 成 (丹 (成 児 佐 白 曽 西 野) 田) 口 川 瀬 野) 田) 玉 藤 岩 根 村 石 井 荒 木 8 年度 秋田谷 小 林 本 堂 原 (水 野) (山 田) 堀 口 石 川 成 瀬 (丹 野) (成 田) 児 玉 佐 藤 白 岩 曽 根 西 村 堀 石 井 荒 木 9 年度 小 林 本 堂 原 水 (山 堀 石 成 (丹 成 野 田) 口 川 瀬 野) 田 児 玉 鈴 木 白 岩 曽 根 西 村 堀 石 井 荒 木 ― 174 ― 10 年度 大 畑 小 林 本 堂 原 水 野 山 田 堀 口 石 川 成 瀬 (丹 野) 成 田 児 玉 鈴 木 白 岩 曽 根 西 村 堀 石 井 水 山 堀 石 成 野 田 口 川 瀬 成 田 児 玉 鈴 木 白 岩 曽 根 西 村 堀 石 井 松 岡 児 玉 鈴 木 白 岩 曽 根 西 村 堀 石 井 ○低温基礎科学部門 7 年度 芦 田 教 授 前 野 吉 田 早 川 助教授 (花 房) (講師) 古 川 助 手 8 年度 芦 田 香 内 前 野 吉 田 9 年度 芦 田 香 内 前 野 吉 田 早 川 藤 川 古 川 早 川 藤 川 古 川 10 年度 11 年度 12 年度 芦 田 芦 田 芦 田 香 内 香 内 香 内 前 野 前 野 前 野 田 中(歩) 田 中(歩) 田 中(歩) 早 川 藤 川 古 川 早 川 藤 川 古 川 早 川 古 川 荒 川(政) 荒 川(政) 荒 川(政) 荒 川(政) 荒 川(政) 荒 川(政) 荒 川(圭) 荒 川(圭) 荒 川(圭) 荒 川(圭) 荒 川(圭) 荒 川(圭) 香 内 渡 部 渡 部 渡 部 渡 部 石 崎 石 崎 田 中(亮) 田 中(亮) 落 合 落 合 落 合 落 合 落 合 落 合 片 桐 片 桐 片 桐 片 桐 片 桐 片 桐 島 田 島 田 島 田 島 田 島 田 島 田 竹 澤 竹 澤 藤 川 竹 澤 竹 澤 ○寒冷圏総合科学部門 7 年度 8 年度 9 年度 10 年度 11 年度 12 年度 教 授 戸 田 福 田 戸 田 福 田 戸 田 福 田 戸 田 福 田 戸 田 福 田 戸 田 福 田 助教授 (講師) 大 串 大 串 大 串 大 串 串 田 大 館 串 田 大 館 串 田 大 館 串 田 大 館 山 本 西 尾 大 串 小 林(俊) 助 手 客員教授 中 澤 庄 子 (丹 野) (丹 野) ○付属流氷研究施設 教 授 7 年度 8 年度 9 年度 10 年度 11 年度 12 年度 青 田 青 田 青 田 青 田 青 田 青 田 白 澤 白 澤 白 澤 白 澤 白 澤 助教授 助 手 白 澤 ― 175 ― 2.教員の人事 ①教員選考方法の基本方針 教員の選考にあたっては、以下のような内規・申し合わせによる手続きをとっ ている。すなわち、公募を原則とし、人事選考委員には所外から必ず複数名の委 員を加えることとしている。公募要領、人事選考委員および最終候補者の決定に あたっては、運営協議会の承認を条件として、教授会で決定している。ただし、 助手の最終候補者の決定には、運営協議会の承認を必要としない。 ○北 海 道 大 学 低 温 科 学 研 究 所 教 員 選 考 内 規 ( 平 成 7 年 7 月 1 9 日 制 定 ) (目的) 第1条 この内規は,北海道大学教員選考基準(平成6年海大達第11号)第7条に基づ き,北海道大学低温科学研究所(以下「本研究所」という。)における教授,助教授, 講師(常勤の者に限る。以下同じ)及び助手(以下「教員」という。)の候補者の選考 方法について定め,もって本研究所の教員人事の活性化に寄与することを目的とする。 (人事選考委員会) 第2条 所長は,次の各号の一に該当することが明らかになった場合は,本研究所に人事 選考委員会(以下「委員会」という。)を設置する。 (1) 教員に欠員が生じた場合又は生ずることが予定されている場合 (2) 新たに教員の補充の必要が生じた場合 2 委員会の構成は,次のとおりとする。 (1) 本研究所の教授 3名以上 (2) 本研究所に関連する本学大学院研究科の教授 1名以上 (3) 本研究所運営協議会が推薦する者 1名以上 3 前項各号に掲げるもののほか必要に応じて次の者若干名を加えることができる。 (1) 本研究所以外の学内の教授又は学外の学識経験者 (2) 助教授,講師及び助手を選考する場合には,本研究所の助教授又は講師 4 委員長は,委員の互選による。 5 委 員会は教 員候 補者を募 集し ,応募者 につい ての選考 を行 い, 教員 候補 者1名を 選考 し,所長に報告する。 6 教員候補者の募集は,公募を原則とする。 (教員候補者の審査) 第3条 教 授 , 助 教 授 及 び 講 師 候 補 者 の 審 査 に あ た っ て は , 大 学 院 設 置 基 準 第 9 条 に 規 定 す る 大 学 院 博 士 課 程 の 担 当資 格 を 有 し て いる か を 判 断 し , か つ 本 研 究所 の 研 究 上 の 理 念 及び目標に基づき,研究業績,適性及び人物の評価を行う。 2 助 手 候 補 者 の 資 格 は , 博 士 の 学 位 を 有 す る 者 又 は そ れ に 準 ず る 能 力 が あ る と 認 め ら れ る者とする。 (教員候補者の決定) 第4条 所長は,第2条第5項に基づき,委員会より教員候補者の報告を受けた際には, ― 176 ― 速やかに教授会に報告する。 2 教授会は,教授会構成員の3分の2以上の出席による教授会においてこれを審議し, 教員候補者を決定する。 (雑則) 第5条 この内規に定めるもののほか,教員選考に関して必要な事項は,教授会の議を経 て所長が別に定める。 附 則 この内規は,平成7年7月19日から施行する。 附 則 この内規は,平成11年3月17日から施行する。 ○教員選考内規の運用に関する確認事項(平成7年7月19日 教授会確認) (専門領域) 1 将 来 計 画委 員会 は、 内 規 第2条 に 基づ き 、教 員 の 欠員 等が 生じ た 場 合には 任 用す べ き 専門 領 域 を検 討の うえ 、 所 長に報 告 する 。 ただ し 、 停年 退官 の場 合 は 1年以 上 前を 原 則 とする。 2 所長は、前項の専門領域について教授会に報告し承認を得る。 (公募要領作成委員会) 3 所 長 は 、専 門領 域が 決 定 後、教 授 会に 公 募要 領 作 成委 員会 を設 置 す る。た だ し、 助 教 授、 講 師 及び 助手 を選 考 す る場合 に は、 本 研究 所 の 助教 授又 は講 師 を 委員に 加 える こ と ができる。 4 公募要領作成委員会は、速やかに公募要領(案)を作成し、所長に報告する。 (人事選考委員会) 5 所 長 は 、 前 項 の 公 募 要 領 ( 案 ) の 報 告 後 、 速 や か に 教 授 会 を 開 催 し 、 公 募 要 領 及 び 人 事選考委員会委員(内規第2条第2項第3号に掲げる者を除く。)の選出について諮り、 承認を得るものとする。 (運営協議会への専門領域等の諮問) 6 所長は、教授会の承認があった専門領域、人事選考委員会委員及び公募要領について 運営協議会に諮問し、その結果を教授会に報告する。 7 教授会は、運営協議会の意見を参考にして審議し、専門領域、人事選考委員会委員及 び公募要領を決定する。ただし、専門領域の変更が必要と判断された場合には、再度将 来計画委員会に検討を諮問する。 8 人事選考委員会は、教授会において公募要領の決定が確認した場合には教員候補者の 公募を開始する。 (教員候補者の審査) 9 教授、助教授及び講師候補者の審査にあたっては、内規第3条の資格等とともに北海 道大学における教員選考についての指針(平成6年3月16日評議会申合せ)第3項に 基づき、研究・教育業績の厳正かつ公正な判断が求められていることを特に考慮して、 研究・教育業績の評価基準を明確にする。 ― 177 ― 10 人 事 選 考 委 員 会 は 、 教 授 会 に 教 員 候 補 者 の 選考 方 法 、 研 究 ・ 教 育 業 績 の 評 価 基 準 等 に ついて選考経緯を報告する。 (候補者の承認) 11 所 長は 、 前項の 報 告が あ った場 合に は 、 教授 会 にお い て教 員 候 補者 の 承認 を 得る も の とする。 (運営協議会への教員候補者の諮問) 12 所 長 は、 教 授会 承 認 の教 員 候補 者 に つい て運 営協 議 会に諮 問 し、 そ の結果 を 教授 会 に 報告する。ただし、助手については除くことができる。 (候補者の決定) 13 教 授 会は 、 運営 協 議 会の 意 見を 参 考 にし て教 員候 補 者を決 定 する 。 ただし 、 教員 候 補 者の変更が必要と判断された場合には、新たに人事選考委員会を設置する。 ②教員の流動性 1)転出入状況(平成7年度以降) 年 月 日 ○平成7年度 転出等 7. 4 . 1 8. 3.31 転入等 7. 8 . 1 11. 1 12. 1 8. 1 . 1 3. 1 3. 1 3 .16 ○平成8年度 転出等 8. 7. 1 .10.16 9. 3. 31 転入等 8. 4. 1 .5. 1 .7.16 .7.16 .9. 1 .9. 1 .10. 1 .10. 1 .10. 1 .10. 4 事由 職 名 氏 名 派遣 停年 講 師 講 師 山田 知充 花房 尚史 JICA(ネパール国) 昇任 採用 昇任 昇任 採用 採用 昇任 助教授 助 手 教 授 助教授 教 授 助 手 教 授 藤川 清三 堀 彰 香内 晃 白澤 邦男 河村 公隆 大河内 直彦 原 登志彦 助手から 東京大学研究生から 助手から 助手から 東京都立大学助教授から 京都大学研修員から 東京大学助教授から 転出 転出 辞職 助 手 助 手 教 授 佐藤 利幸 石崎 武志 秋田谷 英次 信州大学教授昇任 東京国立文化財研究所室長 採用 採用 昇任 採用 昇任 昇任 昇任 採用 採用 復帰 助 手 助 手 助教授 助 手 助教授 助教授 教 授 助 手 助 手 講 師 川島 竹澤 中塚 渡部 水野 成田 藤吉 鈴木 串田 山田 東京大学大学院から ワシントン州立大学 ph.D から 名古屋大学助手から 理化学研究所特別研究員から 講師から 講師から 名古屋大学助教授から 日本学術振興会海外特別研究員から 日本学術振興会特別研究員から 派遣から 正行 大輔 武 直樹 悠紀子 英器 康志 準一郎 圭司 知充 備 ― 178 ― 考 ○平成 9 年度 転出等 10. 3.31 停年 教 授 吉田 静男 3.31 停年 助 手 荒木 忠 転入等 9. 4 . 1 採用 助 手 大館 智志 日本学術振興会特別研究員から 7. 1 昇任 助教授 山田 知充 講師から 10. 3 16 採用 教 授 大畑 哲夫 滋賀県立大学助教授から ○平成 10 年度 転出等 10.11. 1 転出 助教授 大串 隆之 京都大学教授昇任 転入等 10. 4. 1 昇任 教 授 田中 歩 京都大学講師から 7.16 採用 助 手 松岡 健一 北海道大学大学院生から ドイツ植物遺伝学栽培植物科学研究所PD 研究員から 9. 1 採用 助 手 田中 亮一 11. 1 .1 採用 助 手 豊田 威信 北海道大学大学院生から ○平成 11 年度 転出等 12. 3.31 辞職 助 手 松岡 健一 北海道大学大学院生 3.31 辞職 助 手 大河内直彦 日本学術振興会海外特別研究員 転入等 11.11.16 昇任 助教授 隅田 明洋 岐阜大学助手から ○総 括 表 (平成7年度~平成 11 年度) 教 授 助教授 講 師 助 手 計 6(1) 7(5) 11 24(6) 採用等 2(1) 1 1(1) 5(1) 9(3) 退職等 ※ 採用等のカッコ書きは、所内からの任用数で内数 退職等のカッコ書きは、停年退職者数で内数 2)在職年数状況 (平成 12 年 10 月 1 日現在在職者) 研究所在職年数 1 年未満 1 年~2 年未満 2 年~3 年未満 3 年~4 年未満 4 年~5 年未満 5 年~6 年未満 6 年~7 年未満 7 年~8 年未満 8 年~9 年未満 9 年~10 年未満 10 年~15 年未満 15 年~20 年未満 20 年~25 年未満 25 年~30 年未満 30 年~35 年未満 35 年以上 計 教 授 助教授 1 講 師 1 1 1 6 2 3 1 1 2 2 3 1 1 1 2 1 2 3 15 2 2 1 1 3 2 13 ― 179 ― 助 手 2 1 1 1 21 計 1 1 3 1 10 1 3 3 5 5 2 5 4 6 50 ③教員の構成分布 1) 年 齢 構 成 (平成 12 年 10 月1日現在) 教 授 助教授 助手 1 計 1 1 1 2 1 3 1 4 1 2 1 3 1 5 2 1 3 1 30歳 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 計 15 13 平均年齢 53.0 51.7 講 師 1 2 1 1 1 3 1 1 2 1 1 2 2 1 1 1 3 21 2 2 1 1 3 2 1 1 3 1 2 2 1 50 39.7 47.3 1 1 2 1 2 1 1 1 1 2 2 2 1 1 63.0 ― 180 ― 2)出身大学分布 (大学又は大学院) (平成12年10月1日現在) 最 終 学 歴 北海道大学 北海道学芸大学 弘前大学 東北大学 東京大学 東京都立大学 名古屋大学 福井大学 京都大学 (米)アラスカ州立大学 (米)ノバ大学 (米)ワシントン州立大学 (加)マギル大学 計 北海道大学出身者の割合(%) 教 授 6 助教授 7 1 1 1 2 2 2 講 師 助 手 9 1 4 2 2 2 1 2 1 1 1 1 1 13 53.9 15 40.0 1 0.0 21 42.9 計 22 1 1 2 6 4 6 1 3 1 1 1 1 50 44.0 ※ (米)は、アメリカ合衆国、 (加)は、カナダ国 3.予 算 ①校費等の予算額 (単位 年 度 校 費 科学研究費 奨学寄付金 受託研究費 7 355,405 計 9 371,660 10 千円) 11 256,506 309,877 265,802 211,711 (51) 61,454 (22) 77,567 (36) 181,194 (43) 220,046 (50) 20,833 (31) 14,147 (30) 16,739 (27) 11,932 (25) 7,205 (23) 5,041 ( 3) 7,501 ( 4) 22,416 ( 6) 30,683 ( 8) 150,384 (10) 826 ( 1) 民間等共同研究費 合 8 443,609 0 ( 0) 470,875 2,152 ( 1) 479,007 ※ ( )は、受入件数 ― 181 ― 3,888 ( 4) 576,426 7,530 ( 3) 642,632 ②文部省科学研究費取得状況 区分\年度 特別推進研究 重点領域研究 特定領域研究(A) 特定領域研究(B) 総合研究(A) 総合研究(B) 一般研究(A) 一般研究(B) 一般研究(C) 基礎研究(A) 基礎研究(B) 基礎研究(C) 萌芽的研究 奨励研究(A) 奨励研究(B) 特別研究員奨励費 試験研究(A) 試験研究(B) 国際学術研究 計 7 0 0 0 0 ①10,400 ⑨32,200 ⑥ 8,000 ④ 3,800 ① 210 0 0 ① 3,100 ① 3,800 23 件 61,510 8 0 ④ 8,700 ②12,100 ⑪22,300 ⑦ 7,600 ③ 5,200 ② 2,000 ① 200 ③ 2,806 ④15,200 37 件 76,106 9 0 ③ 5,900 ④88,200 ⑪49,800 ⑥ 6,500 ④ 4,400 ③ 4,400 ① 210 ⑥ 6,400 ③11,700 41 件 177,510 ※ 丸数字及び計欄の件数は、採択件数 ― 182 ― 10 0 ①61,300 ①23,000 ⑥51,400 ⑪47,900 ⑥ 6,500 ⑦ 6,400 ⑤ 4,300 0 ⑩10,800 ③10,100 50 件 221,700 11 0 ③39,200 ①34,000 ⑦43,900 ⑩36,400 ⑫21,900 ⑦ 5,500 ② 1,700 0 ⑨10,700 51 件 193,300 ③大型研究費の取得状況 ( 1,000 万円以上、科学研究費は除く) (単位:千円) 年 度 研 究 部 門 官 職・氏 名 寒冷海洋圏科学 教 授 若土 正暁 7 寒冷陸域科学 教 授 本堂 武夫 低温基礎科学 教 授 芦田 正明 種 目 内 容 寒冷海洋圏における物質循環に関 する研究 特別事業費 新技術開発シリーズ 重点研究推進経費 金 額 13,000 X 線回折法の氷床コア解析への応 用 (5,000) 昆虫の生体防御の分子機構と その応用に関する研究 (7,500) 12,500 8 寒冷総合科学 教 授 福田 正巳 教育改善推進費 北東ユーラシア・北太平洋の地域 総合研究 30,000 9 寒冷総合科学 教 授 福田 正巳 教育改善推進費 北東ユーラシア・北太平洋の地域 総合研究 30,000 10 寒冷総合科学 教 授 福田 正巳 教育改善推進費 北東ユーラシア・北太平洋の地域 総合研究 26,500 寒冷総合科学 教 授 福田 正巳 受託研究費 科学技術振興事業団 永久凍土の撹乱による温暖化ガス の発生と将来温暖化への影響 12,300 寒冷陸域科学 助教授 石川 信敬 受託研究費 永久凍土地帯の水循環特性解明の 海洋科学技術センター 研究 25,000 氷結晶の一方向成長におけるパタ ーン形成及び界面現象に対する微 小重力効果 29,694 低温誘導遺伝子の耐凍性に及ぼす 機能的役割の解析 27,826 昆虫成長因子 GBP の作用機構解 明と新規成長因子の探索 43,248 11 低温基礎科学 助教授 古川 義純 低温基礎科学 助教授 藤川 清三 低温基礎科学 助教授 早川 洋一 受託研究費 日本宇宙フォーラム 受託研究費 生物系特定産業技術 研究推進機構 ④特別設備の取得状況( 1,000 万円以上 ) (単位:千円) 装 置 名 共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡 天然有機物質分析システム 自動 X 線回析装置 海水動態観測システム装置 生物試料解析システム 金 額 導 入 年 度 25,000 平成7年度 〃 126,381 〃 68,400 15,061 〃 15,000 〃 ― 183 ― 4. 研究活動 ① 研究業績 区分 \ 年度 単 著 8 9 8 (5) 5 (2) 86 (64) 20 (12) 欧 文 5 (4) 3 (2) 87 (69) 13 (5) 2 6 (4) 2 (1) 100 (84) 26 (20) 2 和 文 11 12 17 欧 文 1 5 和 文 6 7 欧 文 和 文 共 著 学 術 論 文 7 欧 文 和 文 総説解説評論等 単 著 共 著 10 11 合 計 5 (2) 2 (2) 81 (47) 14 (5) 1 8 (7) 4 (1) 166 (131) 34 (24) 2 32 (22) 16 (8) 520 (395) 107 (66) 7 10 22 72 1 12 19 2 25 42 2 1 和 文 1 欧 文 4 2 4 7 和 文 9 3 9 9 5 35 国 際 2 3 1 1 2 9 国 内 4 4 5 9 22 シンポ ジ 国 際 2 12 8 16 24 62 国 内 9 11 5 2 11 38 オーガ ナ 著 書 欧 文 単 著 国 際 - - 1 1 3 5 国 内 - - 5 1 5 11 共 著 17 学 会 特 別 学 術 講 演 特許 国 際 1 1 国 内 1 1 1) 学術論文のカッコが書きは、レフリー制のあるジャーナルに掲載された論文で内数 2) 学術講演は、招請講演のみ。 「学会特別」は、 「学会特別講演」 、 「シンポジ」は、 「国際的、全国的規模のシンポジュウム」 、 「オーガナ」は、シンポジュームのオーガナイザー」の略。 ②国際交流 区分 \ 年度 教員の海外渡航数 外国人研究者等の受け入れ者数 内客員Ⅲ種及び COE 研究員 外国人来訪者数(表敬・視察等) 外国の研究機関との間で実施した共同研究 7 58 12 (1) 47 5 8 83 41 (3) 34 16 ― 184 ― 9 76 45 (5) 50 9 10 100 58 (7) 79 21 11 105 33 (6) 102 29 合 計 422 189 (22) 312 80 ③国際共同研究 主な共同研究機関 アメリカ・ワシントン大学海洋学研究所 アメリカ・オクラホマ大学 アメリカ・航空宇宙局 アメリカ・国際北極圏研究センター アメリカ・アラスカ大学 アメリカ・ハワイ大学 アメリカ・ウッズホール海洋研究所 カナダ・トロント大学 アルゼンチン・南極研究所 フランス・パスツール研究所 フランス・環境地球物理学研究所 ロシア・モスクワ大学地質学研究所 ロシア・科学アカデミー北極南極科学研究所 ロシア・科学アカデミー地理学研究所 ロシア・科学アカデミー生物土壌学研究所 ロシア・極東森林研究所 ロシア・極東海洋気象局 ロシア・科学アカデミー永久凍土研究所 ドイツ・アルフレッドウェーゲナー研究所 イギリス・南極研究所 スイス・連邦工科大学気候学研究所 ノルウェー・極地研究所 中国・科学院新彊生態及び地理研究所 中国・科学院寒冷地問題研究所 中国・科学院昆明動物研究所 韓国・ソウル大学 韓国・海洋研究所 韓国・建築技術院 モンゴル・科学アカデミー地理研究所 ④国際シンポジウム 研究所主催の国際シンポジウム オホーツクおよびその周辺域における気候系と生態系 平成8年11月25日~27日 氷床コア記録の物理 平成10年9月14日~17日 オホーツク海と流氷 平成12年2月6日~10日 ― 185 ― オホーツク海と周辺陸域における大気-海洋-雪氷圏相互作用 平成12年12月12日~15日 5.教育活動 ①大学院担当 大学院地球科学研究科 専 攻 講 座 地圏環境科学 地球雪氷学 雪氷物理学 生態環 境科学 生物適応機構学 大気海洋圏 環境科学 教 授 助教授 大畑 哲夫 福田 正巳 小林 大二 成瀬 廉二 石川 信敬 山田 知充 香内 晃 本堂 武夫 舞野 紀一 堀口 古川 水野 成田 田中 歩 戸田 正憲 芦田 正明 原 登志彦 若土 正暁 竹内 謙介 河村 公隆 藤吉 康志 早川 洋一 隅田 明洋 助 手 白岩 孝行・曽根 敏雄 児玉 祐二・石井 吉之 堀 彰 ・串田 圭司 薫 河村 俊行・西村 浩一 義純 荒川 政彦・渡部 直樹 悠紀子 英器 荒川 島田 落合 大館 大島 慶一郎 深町 遠藤 辰雄 川島 白澤 邦男 中塚 武 圭太・片桐 公夫・田中 正則・竹澤 智志・鈴木 康 ・豊田 正行 ②大学生・研究生 〇大学院学生数 各年5月1日現在 研究科名 専 攻 名 地圏環境学専攻 地球環境 科学研究 科 理学研究科 千仭 亮一 大輔 準一郎 威信 生態環境学専攻 大気海洋圏環境 科学専攻 地球物理学専攻 植物学専攻 計 区 分 博 修 博 修 博 修 博 修 博 修 士 士 士 士 士 士 士 士 士 士 7 8 16 26 10 11 0 7 4 2 32 44 ― 186 ― 9 17 24 13 11 3 14 3 1 37 49 10 16 21 18 13 10 17 1 45 51 15 23 23 15 15 26 1 54 64 11 13 20 21 9 15 23 49 52 〇研究生数 部門 \ 年度 寒冷海洋圏科学部門 寒冷陸域科学部門 低温基礎科学部門 寒冷圏総合科学部門 計 7 1 1 1 2 5 ①学位授与件数 (課程博士のみ) 年 度 7 8 9 授与数 2 2 3 8 0 2 1 1 4 9 3 2 0 0 5 10 9 11 8 10 10 11 10 9 3 10 1 5 1 1 5 2 2 10 10 0 1 0 2 3 11 0 0 2 2 4 6.研究支援体制 ①技術部職員数 年 度 職員数 7 10 8 10 9 10 ②研究支援推進員 (非常勤職員) 部門 \ 年度 8 寒冷海洋圏科学部門 寒冷陸域科学部門 低温基礎科学部門 寒冷圏総合科学部門 技術部・共通 1 計 1 11 1 3 1 1 4 10 ③技術部の主な設備・装置 機械工作関係 旋 盤 立てフライス盤 大型ボール盤 裁断機 卓上ボール盤 電気溶接機 アルゴン溶接機 コンターマシン 折曲機械 円筒製作機 台 数 3 2 1 1 2 1 3 1 1 1 平成 12 年 10 月1日現在 木工工作関係 台 数 電動丸鋸 4 自動カンナ盤 1 超仕上げカンナ盤 1 糸鋸盤 1 卓上ボール盤 1 電気ドリル 3 バンドソー 1 電気ルータ 1 トリママー 1 電気ジグソー 1 ― 187 ― ④図書・雑誌数 蔵書冊数 年 度 和 書 洋 書 計 所蔵雑誌種類数 年 度 種 類 7 8,217 18,910 27,127 8 8,563 19,524 28,087 9 8,739 20,039 28,778 10 8,821 20,617 29,438 11 8,855 21,030 29,855 7 1,244 8 1,280 9 1,280 10 1,342 11 1,271 8 9 10 11 購入外国雑誌受入種類数 年 度 7 種 類 100 126 121 124 77 7.将来構想 低温科学研究所は今後も、全国共同利用研究所として関連学問分野の発展に尽力 すると共に、大学附置研究所として北海道大学を特徴づける研究の推進に努力する ことに変わりはないが、大学附置研究所の存在意義について様々な議論がある中で、 存在価値を一層高めるために以下の点を特に重視している。 全国共同利用研究所としては、(1)当該研究コミュニティー全体の資産である 施設・装置の充実を図ること、(2)国際的な協力関係の継続性を保持し、国際共 同研究の中核として内外の信頼性・信用性を一層高めること、(3)当該分野の先 端的研究を推進すると共に情報発信の中核的役割を果たすこと。また、北海道大学 附置研究所としては、(4)北海道に位置する本学が担うべき寒冷圏研究の推進を 図ること、(5)本学の先端的研究施設として学内教官の研究に資すると共に本学 が有する広範な学問基盤を当研究所の研究に生かすこと、(6)先端的な研究に関 わる研究指導によって、独創的、先駆的な研究をなし得る次代の研究者を養成する こと。 以上の点を踏まえて、学内外の研究機関等との連携を深めると共に、施設等の一 層の充実を目指している。低温科学研究所として推進する研究プロジェクトについ ては、 将 来計画委員会の検討に基づいて、運営委員会で決定している。第1期( 平 成 8年 度 ―12年 度 ) は 「 オ ホ ー ツ ク 海 と 周 辺 陸 域 に お け る 大 気 - 海 洋 - 雪 氷 相 互 作 用 」 を 実 施 し 、 第 2 期 ( 平 成 13年 度 ―17年 度 ) は 「 寒 冷 圏 に お け る 大 気 - 雪 氷-植生相互作用の解明」を実施することになっている。このようなプロジェクト を進める上でも、内外の研究機関との連携が不可欠であり、連携のあり方および附 属施設等の今後について将来計画委員会で検討中である。 ― 188 ―