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第1部 観光の状況
第Ⅰ部 観光の状況 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 第1章 平成24年度の観光の状況 第1節 世界の観光の状況 UNWTO(世界観光機関)によると、2012年の世界全体の国際観光客数は、厳しい世界経済に もかかわらず、前年比約4%の増加となり、史上初めて10億人を突破した(図Ⅰ-1-1-1) 。2013年に ついては、引き続き3~4%の堅調な増加となると予測されている。 図Ⅰ-1-1-1 国際観光客到着数の推移 (百万人) 1,100 910 900 855 800 764 678 700 600 530 563 589 605 678 698 929 950 1,035 24 年度の観光の状況 1,000 996 893 809 691 627 500 400 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (年) (注) UNWTO資料に基づき観光庁作成。 地域別に見ると、2012年の国際観光客受入数のシェアは、欧州が51.6%と世界全体の半分以上を 占めている。アジア太平洋地域は22.6%で、欧州に次ぐ規模となっている(図Ⅰ-1-1-2) 。2012年の 国際観光収入のシェアも、アジア太平洋地域は30.0%で、欧州の42.5%に次ぐ規模となっている(図 Ⅰ-1-1-3)。 図Ⅰ-1-1-2 国際観光客受入数の地域別シェア(2012年) 中東 5.0% アフリカ 5.1% 欧州 51.6% アジア太平洋地域 22.6% 米州 15.7% (注) UNWTO資料に基づき観光庁作成。 1 平成 図Ⅰ-1-1-3 国際観光収入の地域別シェア(2012年) 中東 4.3% 年度 観光の状況 24 アフリカ 3.1% 欧州 42.5% アジア太平洋地域 30.0% 米州 20.0% (注) UNWTO資料に基づき観光庁作成。 2012年にアジア太平洋地域を訪れた国際観光客数は、2011年より1,500万人以上の大幅な増加(前 年比7%増)となり、他地域と比べ最も伸び率が高かった。特に、東南アジアは前年比9%増と大 きな増加を示した。その主な理由としては、LCC(格安航空会社)の就航の拡大が挙げられ、こ の増加傾向は、今後も続くと見込まれる。 2012年に欧州を訪れた国際観光客数は、2011年より1,700万人以上の増加(前年比3%増)となっ た。これは、低迷する経済状況を踏まえると良好な結果と考えられる。2012年に米州を訪れた国際 観光客数は、2011年より600万人以上の増加(前年比4%増)となった。中東地域については、不 安定な政治情勢が続いていることから、国際観光客数は、2012年は2011年より300万人以上の減少 (前年比5%減)となった(図Ⅰ-1-1-4)。 図Ⅰ-1-1-4 地域別国際観光客数の前年比増減(2012年) (百万人) 20 17 15 15 10 6 5 0 -5 2 3 -3 欧州 アジア太平洋地域 米州 アフリカ 中東 (注) UNWTO資料に基づき観光庁作成。 なく、フランスが7,950万人と引き続き首位となり、米国が6,233万人で2位、中国が5,758万人で3 位であった。日本は、東日本大震災の影響を受けて2010年の861万人から622万人まで大きく減少し たことにより、世界で39位(アジアで10位)となった。アジアについて見ると、中国が2010年に引 き続き2位のマレーシアを大きく引き離して首位を維持し、3位以下は、香港、タイ、マカオが続 いた(図Ⅰ-1-1-5)。 図Ⅰ-1-1-5 外国人旅行者受入数ランキング(2011年) (万人) 0 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 6,233 8,000 9,000 7,950 5,758 5,669 3,080 2,934 2,835 2,471 2,340 2,301 2,269 2,232 2,142 1,923 1,734 1,643 1,558 1,335 1,293 1,130 1,039 1,025 993 980 950 934 878 (874) 853 834 813 765 746 743 (652) 632 629 日本は世界で39位 622 アジアで10位 609 4,612 24 年度の観光の状況 フランス 米国 中国 スペイン イタリア 英国 トルコ ドイツ マレーシア メキシコ オーストリア ロシア 香港 ウクライナ タイ サウジアラビア ギリシャ カナダ ポーランド マカオ オランダ シンガポール ハンガリー クロアチア 韓国 エジプト モロッコ チェコ デンマーク スイス 南アフリカ アラブ首長国連邦 インドネシア ベルギー ポルトガル アイルランド ブルガリア インド 日本 台湾 1,000 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 2011年の各国・地域の外国人旅行者受入数については、2010年と比べ上位10か国に順位の変動は (注) 1 UNWTO、各国政府観光局資料に基づき、日本政府観光局作成。 2 本表の数値は、2012年6月時点での暫定値である。 3 デンマークとアイルランドは、2011年の数値が不明であったため、2010年の数値を採用した。 4 本表で採用した数値は、韓国と日本を除き、原則として1泊以上した外国人旅行者数である。 5 外国人旅行者数は、数値が追って新たに発表されたり、さかのぼって更新されることがあるため、数値の採用 時期によって、その都度順位が変わり得る。 6 同一国において、外国人旅行者数が異なる統計基準に基づいて算出されているため、比較する際には注意を要 する。 3 平成 年度 観光の状況 24 2011年の各国・地域の国際観光収入については、米国が116,279百万米ドルで2010年に引き続き 首位、スペインが59,892百万米ドルで2位、フランスが53,845百万米ドルで3位であった。日本は 10,966百万米ドルで、世界で28位(アジアで10位)と外国人旅行者受入数と同様に2010年から順位 を下げている。アジアについて見ると、中国が2010年に引き続き首位であった(図Ⅰ-1-1-6) 。 図Ⅰ-1-1-6 国際観光収入ランキング(2011年) (百万米ドル) 0 米国 スペイン フランス 中国 イタリア ドイツ 英国 豪州 マカオ 香港 タイ トルコ オーストリア マレーシア シンガポール スイス インド カナダ ギリシャ オランダ スウェーデン 韓国 メキシコ ロシア ポルトガル ベルギー 台湾 日本 ポーランド 南アフリカ アラブ首長国連邦 クロアチア エジプト サウジアラビア レバノン インドネシア チェコ モロッコ ブラジル デンマーク 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 116,279 59,892 53,845 48,464 42,999 38,842 35,928 31,443 (27,790) 27,686 26,256 23,020 19,860 18,259 17,990 17,553 17,518 16,936 14,623 14,445 13,886 12,304 11,869 11,398 11,339 11,313 11,044 10,966 10,687 9,547 9,204 日本は世界で28位 アジアで10位 9,185 8,707 8,459 (8,012) 7,952 7,628 7,307 6,555 6,165 (注) 1 UNWTO、各国政府観光局資料に基づき日本政府観光局作成。 2 本表の数値は2012年6月時点の暫定値である。 3 マカオとレバノンは、2011年の数値が不明であるため、2010年の数値を採用した。 4 本表の国際観光収入には、国際旅客運賃が含まれていない。 5 国際観光収入は、数値が追って新たに発表されたり、さかのぼって更新されることがある。また、国際観光収 入を米ドルに換算する際、その時ごとに為替レートの影響を受け、数値が変動する。そのため、数値の採用時 期によって、その都度順位が変わり得る。 4 首位、米国が78,700百万米ドルで2位、中国が72,600百万米ドルで3位であった。日本は、27,200 百万米ドルで世界で9位(アジアで2位)であった(図Ⅰ-1-1-7) 。また、UNWTOによると、 2012年の国際観光支出については、中国が約102,000百万米ドルで、ドイツ(約83,800百万米ドル)、 米国(約83.700百万米ドル)を抜き、初めて首位になった。なお、日本は約27,900百万米ドルで第 8位であった。 図Ⅰ-1-1-7 国際観光支出ランキング(2011年) (百万米ドル) 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 ドイツ 78,700 中国 72,600 英国 51,000 フランス ロシア 32,500 28,700 イタリア 日本 27,200 26,600 豪州 ベルギー シンガポール 21,100 20,500 オランダ 韓国 19,500 19,100 香港 サウジアラビア 18,200 17,300 スペイン ノルウェー 16,300 15,800 スウェーデン イラン 14,200 13,700 13,200 インド アラブ首長国連邦 スイス 12,500 10,800 マレーシア オーストリア 10,500 10,100 台湾 アイルランド ナイジェリア インドネシア タイ アルゼンチン 南アフリカ トルコ 日本は世界で9位 アジアで2位 22,200 21,300 ブラジル メキシコ 年度の観光の状況 33,100 ポーランド 24 44,100 カナダ クウェート 100,000 85,900 米国 デンマーク 90,000 9,800 8,100 8,000 7,800 7,000 6,700 6,300 5,700 5,300 5,200 フィンランド 5,000 4,800 チェコ 4,600 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 2011年の各国・地域の国際観光支出については、ドイツが85,900百万米ドルで2010年に引き続き (注) 1 UNWTO、各国政府観光局資料に基づき日本政府観光局作成。 2 本表は国際観光支出には、国際旅客運賃は含まれていない。 3 本表の数値は2012年9月現在の暫定値である。 4 イランは2011年の数値が不明であるため、2010年の数値を利用した。 5 国際観光支出は、数値が追って新たに発表されたり、さかのぼって更新されることがある。また、国際観光収 入を米ドルに換算する際、その時ごとに為替レートの影響を受け、数値が変動する。そのため、数値の採用時 期によって、その都度順位が変わり得る。 5 平成 第2節 日本の観光の状況 年度 観光の状況 24 1 国内旅行の状況 平成24年の国民一人当たりの国内宿泊観光旅行回数は1.40回(前年比7.7%増・暫定値)であった。 また、国民一人当たりの国内宿泊観光旅行宿泊数は2.24泊(同7.7%増・暫定値)であった(図Ⅰ-12-1)。平成24年の日本人の国内観光旅行者数は、日帰り旅行については延べ2億430万人(前年比 3.8%増、前々年比0.6%減) 、宿泊旅行については延べ1億7,876万人(前年比5.2%増、前々年比4.3% 増)となった(図Ⅰ-1-2-2、図Ⅰ-1-2-3) 。いずれも、前年を上回り、東日本大震災前の水準と比べ てもほぼ同じ又は上回る結果となった。 図Ⅰ-1-2-1 日本人の国内宿泊観光旅行の回数及び宿泊数の推移 (泊、回) 3.0 2.74 2.8 1人当たり宿泊数 2.48 2.6 2.4 1人当たり回数 2.38 2.37 2.08 1.32 1.30 平成22年 平成23年 2.2 2.0 2.24 2.09 1.71 1.8 1.52 1.6 1.52 1.46 1.4 1.40 1.2 1.0 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成24年 (注) 1 観光庁「旅行・観光消費動向調査」による。 2 平成24年の数値は暫定値。 図Ⅰ-1-2-2 日本人の国内日帰り観光旅行延べ人数の月別推移(平成24年) (万人・回) 2,500 2,208 1,742 2,000 1,500 1,137 2,168 1,694 1,680 (%) 50 1,803 1,800 1,901 1,599 40 1,554 30 1,144 1,000 20 500 10 0 0 旅行者数 前年比 -10 前々年比 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 (注) 1 観光庁「旅行・観光消費動向調査」による。 2 平成24年10 ∼ 12月の値は速報値である。 3 「観光・レクリエーション目的での旅行」の推計値である。 6 8月 9月 10月 11月 12月 -20 (万人・回) 3,000 (%) 60 50 前年比 2,000 1,000 2,526 旅行者数 2,500 1,500 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 図Ⅰ-1-2-3 日本人の国内宿泊観光旅行延べ人数の月別推移(平成24年) 前々年比 1,102 1,680 1,319 1,203 1,007 40 1,645 1,536 1,396 1,529 1,530 1,405 30 20 10 500 0 0 -10 -20 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (注) 1 観光庁「旅行・観光消費動向調査」による。 2 平成24年10月∼ 12月の値は速報値である。 3 「観光・レクリエーション目的での旅行」の推計値である。 4 複数の月にまたがる旅行をした場合は、帰宅した月で集計している。 年度の観光の状況 24 平成24年は、日本にとって「LCC元年」とも言える年 であった。3月に初の日系LCCとなるピーチ・アビエー ションが大阪-札幌など2路線で運航を開始した。その後、 7月にはジェットスター・ジャパンが、8月にはエアアジ ア・ジャパンが就航し、平成25年3月末現在、日系LCC 3社が国内線11路線、国際線5路線を就航させている。 新しい観光名所も誕生した。国民の多くが空を見上げた 金環日食が観測された5月には、自立式電波塔としては世 ピーチ・アビエーション (写真提供:Peach Aviation株式会社) 界一の高さを誇る「東京スカイツリー」が開業した。開業か ら平成25年3月末までの間に約554万人が来場し、商業施設 「東京ソラマチ」等も併せると、来場者は約4,476万人に達す るなど、新たな観光の名所として注目を集めた。また、10月 には東京駅が大正3年の創建時の姿に復元され、周辺の商業 施設も含めておおいに賑わいを見せた。 大正3年の創建時の姿に復元された東京駅 8月に開催されたロンドンオリンピックでは、我が国は過 去最多のメダルを獲得するという快挙を成し遂げ、閉幕後に東京の銀座で開催された日本代表選手 団のパレードには、およそ50万人が集まり、熱狂に包まれた。 一方、明るい話題ばかりではなかった。平成24年は、観 光の安全確保の重要性が再認識された1年でもあった。4 月に発生した関越自動車道における高速ツアーバス事故を 受けて開催した検討会の検討結果を踏まえ、現行の高速ツ アーバスについて平成25年7月末までに新高速乗合バスへ の移行を完了させるなど、今後2年間(平成25・26年度) にわたり、安全性向上に向けた取組を集中的に実施する「高 速・貸切バス安全・安心回復プラン」を策定した(平成25 ロンドンオリンピック日本代表選手団パレード (写真提供:株式会社フォート・キシモト) 年4月) 。また、11月には中国の万里の長城付近で日本人登 山ツアー客が遭難し、当該ツアーを企画実施した旅行業者の旅行業登録の取消処分が行われた。 7 平成 年度 観光の状況 24 観光業界の動きとしては、10月に一般社団法人国際観光旅館連盟と一般社団法人日本観光旅館連 盟の2団体が統合し、会員約3,400軒からなる一般社団法人日本旅館協会が発足した。今後、同協 会が、旅館ホテル業の健全な発展や宿泊施設の接遇サービスの向上等に寄与していくことが期待さ れる。 2 海外旅行の状況 平成24年の日本人の海外旅行者数は、1,849万人(前年比8.8%増、前々年比11.1%増)となり、過 去最高を記録した(図Ⅰ-1-2-4)。 図Ⅰ-1-2-4 日本人の海外旅行者数の推移 (万人) 1,849 1,900 1,800 1,683 1,700 1,740 1,753 1,729 1,664 1,599 1,600 1,699 1,545 1,500 1,400 1,330 1,300 1,200 1,100 1,000 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 (注) 法務省資料に基づき観光庁作成。 月別に見ると、平成23年7月から平成24年8月までは、14ヶ月間連続して前年同月比プラスで あった。東日本大震災の影響の反動に加え、円高が影響したものと考えられる。しかしながら、政 府による尖閣諸島三島の取得・保有が行われた平成24年9月以降は、中国への旅行者が減少したこ とが影響し、前年同月比で減少に転じた(図Ⅰ-1-2-5) 。 図Ⅰ-1-2-5 日本人の海外旅行者数の月別推移(平成24年) (万人) 210 (%) 45 200 196 190 180 157 160 140 148 20 143 144 15 10 130 5 120 0 110 -5 100 1月 2月 3月 4月 5月 (注) 1 法務省資料に基づき観光庁作成。 2 出国者について集計したものである。 8 30 25 147 141 133 35 162 160 143 150 40 前年比 前々年比 174 170 海外旅行者数 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 -10 を上回り首位となった。9月以降の中国への旅行の減少が影響したものと考えられる。アジアにつ いては、タイが137.1万人で前年比21.6%増、マレーシアが47.0万人で同21.5%増、ベトナムが57.6万 人で同19.7%増となり、高い伸びを示した(図Ⅰ-1-2-6) 。 図Ⅰ-1-2-6 旅行先別日本人の海外旅行者数(平成24年) (万人) 400 300 300 ( )内は前年比 351.9 351.8 (7.0%増) (3.8%減) 200 200 137.1 100 (10.6%増) (21.6%増) 125.5 (2.3%減) 500 0 韓国 中国 台湾 24 年度の観光の状況 143.2 100 タイ 香港 57.6 47.0 (19.7%増) (21.5%増) ベトナム マレーシア (注)日本政府観光局資料に基づき観光庁作成。 3 訪日旅行の状況 平成24年の訪日外国人旅行者数は、837万人(前年比34.6%増、前々年比2.8%減・暫定値)となり、 過去最高である平成22年の861万人に次ぐ過去2番目の結果となった。東日本大震災の影響からは ほぼ回復したと言えるが、政府による尖閣諸島三島の取得・保有等の外的要因の影響もあり、観光 庁が目標としていた900万人には及ばなかった(図Ⅰ-1-2-7) 。 図Ⅰ-1-2-7 訪日外国人旅行者数の推移 (万人) 1,000 900 835 800 733 700 600 614 861 835 679 673 837 622 521 500 400 300 200 100 0 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 旅行先別に見ると、韓国が351.9万人(前年比7.0%増)となり、中国の351.8万人(前年比3.8%減) 平成22年 平成23年 平成24年 (注) 1 日本政府観光局資料に基づき観光庁作成。 2 平成24年の数値は暫定値。 9 平成 年度 観光の状況 24 月別に見ると、平成23年3月以降は、東日本大震災前の平成22年との比較で15ヶ月連続してマイ ナスが続いたが、平成24年6月に、震災後初めてプラスに転じ、その後年末にかけて回復傾向が鮮 明となった(図Ⅰ-1-2-8)。 図Ⅰ-1-2-8 訪日外国人旅行者数の伸び率の月別推移(平成24年2月以前は前年比、平成24年3月以降は前々年比) (%) 80 62.7 59.5 60 48.5 38.9 40 20 25.8 24.8 34 18.1 10.3 東日本大震災発生 1112.3 11.5 3.4 2.2 0.9 0 -4.1 2.2 6.4 -0.9 -3.6 -3.3 -2.9 -4.4 -7.2 -8 -13.1-11.7 -19.3 -15.3 -24.9 -20 -31.9 -36 -36.1 -40 -50.3 -60 -50.4 -62.5 -80 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 (月) 平成22年 平成23年 平成24年 (注) 1 日本政府観光局資料に基づき観光庁作成。 2 平成24年の数値は暫定値。 国・地域別に見ると、タイからの訪日旅行者数は26万人(前年比79.9%増)となり、単月でも3 月を除く11ヶ月で過去最高を更新し、国・地域別の訪日外国人旅行者数第6位に浮上した。また、 台湾、中国、マレーシア、インドネシア、インド、ベトナムからの訪日旅行者数も、それぞれ過去 最高となった(図Ⅰ-1-2-9)。 このうち、前年比でおしなべて高い伸び率を示した東南アジア各国については、好調な経済状況、 LCCを含む新規路線の就航や増便、チャーター便の就航による航空座席供給量の増加、訪日プロ モーションの効果等が高い伸びに寄与したものと考えられる。タイ、マレーシア、インドネシアに ついては、2012年に一般短期滞在数次ビザの運用が開始されたことも一因と考えられる。 10 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 図Ⅰ-1-2-9 国・地域別訪日外国人旅行者数(平成24年) (万人) 250 200 ( )内は前年比 (23.3%増) 204 (47.6%増) (37.1%増) 147 143 150 100 (26.8%増) 72 (32.0%増) 48 (79.9%増) (59.8%増) 26 (63.9%増) (16.4%増)(34.5%増) 13 10 7 6 50 ベトナム 24 (注) 1 日本政府観光局資料に基づき観光庁作成。 2 数値は暫定値。 韓国については、放射能に係る風評被害や円高の影響で訪日旅行者数の回復が遅れていたものの、 LCC参入による航空運賃の低下や風評被害対策事業の継続、円高・ウォン安の緩和等の効果もあ り、11月以降は急速に回復した。年間の訪日旅行者数は204万人(前年比23.3%増、前々年比16.2% 減・暫定値)となり、年間200万人台を確保して14年連続で国・地域別の訪日外国人旅行者数の首 位を維持した。 平成24年が日中国交正常化40周年に当たっていた中国については、多くの旅行者の訪日が期待さ れ、8月までは堅調な伸びを見せたが、9月の政府による尖閣諸島三島の取得・保有以降、団体客 を中心に訪日旅行者数は大きく減少した。しかしながら、訪日観光ビザの発給要件緩和やクルーズ 需要の増加などにより、年間の訪日旅行者数は、これまでの過去最高であった141万人(平成22年) を上回り、143万人(前年比37.1%増、前々年比1.2%増・暫定値)と過去最高を更新した。 台湾については、これまでの過去最高であった139万人(平成20年)を上回り、147万人(前年比 47.6%増、前々年比15.6%増・暫定値)と過去最高を更新し、中国を抜いて国・地域別の訪日外国 人旅行者数第2位に浮上した。これは、訪日プロモーション活動の効果と相俟って、オープンスカ イによる航空座席供給量の増加、LCC就航に伴う個人旅行の増加などが要因と考えられる。 米国については、円高の影響等を受けつつも、放射能への不安はほぼ解消され、訪日旅行者数は 72万人(前年比26.8%増、前々年比1.4%減・暫定値)と、東日本震災前とほぼ同じ水準に回復した。 香港については、放射能に係る風評被害や円高の影響が訪日旅行者数の回復を抑制したものの、 9月以降は前々年比で連続してプラスとなり、年間では48万人(前年比32.0%増、前々年比5.3% 減・暫定値)であった(図Ⅰ-1-2-10)。 11 年度の観光の状況 インド インドネシア マレーシア タイ 香港 米国 中国 台湾 韓国 0 平成 図Ⅰ-1-2-10 5大市場からの訪日外国人旅行者数の前々年同月比の推移(平成24年) (%) 60 年度 観光の状況 24 50 40 全国籍 韓国 中国 台湾 香港 米国 30 20 10 0 -10 -20 -30 -40 -50 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (注) 1 日本政府観光局資料に基づき観光庁作成。 2 数値は暫定値。 第3節 東日本大震災からの復興 平成24年の東北6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)の観光動向について 見ると、観光客中心の宿泊施設の延べ宿泊者数は、毎月、おおむね前々年比約20%減で推移してお り、全国に比べて回復が遅れている様子が見て取れる(図Ⅰ-1-3-1) 。訪日外国人延べ宿泊者数につ いても、毎月、前々年比約40~80%減で推移しており、全国に比べ回復が大きく遅れている(図Ⅰ -1-3-2)。 県ごとに見ると、その回復状況にはばらつきがあり、全国と同水準近くまで回復している県があ る一方、他県に比べて大きく回復が遅れている県が見られる。 図Ⅰ-1-3-1 観光客中心の宿泊施設の延べ宿泊者数の平成22年同月比の推移(全国・東北6県) (%) 0 -10 -20 -30 -40 全国 -50 -60 東北6県 1 2 3 平成23年 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12(月) 平成24年 (注) 1 観光庁「宿泊旅行統計調査」による。 2 前々年同月比の算出にあたり、1∼3月は従業者数10人以上の宿泊施設の実績、4∼ 12月は全施設の実績を使用。 3 平成22年、平成23年の数値は確定値、平成24年の数値は暫定値を使用。 12 (%) 20 0 -20 -40 -60 -80 全国 -100 -120 東北6県 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 平成23年 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12(月) 平成24年 年度の観光の状況 24 (注) 1 観光庁「宿泊旅行統計調査」による。 2 前々年同月比の算出にあたり、1∼3月は従業員10人以上の宿泊施設の実績、4∼ 12月は全施設の実績を使用。 3 平成22年、平成23年の数値は確定値、平成24年の数値は暫定値を使用。 このように大きく落ち込んだ東北地域への旅行需要を喚起するため、平成24年3月から平成25年 3月まで、東北地域全体を博覧会会場と見立てた「東北観光博」を実施したほか、東北・北関東へ の訪問を通じて同地域の復興を応援する「東北・北関東への訪問運動」を展開した。 「東北観光博」では、東北地域の30の観光地 域を核となる「ゾーン」とし、官民一体となっ て東北地域への誘客等を図った。観光博では、 地域が主体となって、その歴史、文化、暮らし などを観光資源として生かし、地域の日常生活 に観光客が回遊する仕組みの定着を図るととも に、地域と観光客の交流がより促進される新し い観光スタイルの実現を目指した。期間中には、 官民の関係者が協力し、東北全域のプロモー ションや送客の強化等東北観光復興への取組を 実施するとともに、来訪者の周遊を促す「東北 パスポート」 、各ゾーンで「おもてなし」を実 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 図Ⅰ-1-3-2 観光客中心の宿泊施設の外国人延べ宿泊者数の平成22年同月比の推移(全国・東北6県) 「みやこゾーン」(岩手県宮古市、岩泉町、山田町)の開設 践する「地域観光案内人」の育成、リアルタイムな情報発信の仕組みなど観光博終了後も地域が自 立的に観光地域づくりを行う仕組みを構築した。津波により大きな被害を受けた太平洋沿岸エリア においては、地域のニーズ及び実情に十分配慮しつつ、地域の基盤の復旧・復興状況に応じた支援 を行うとともに、地域交流に関する情報発信の強化を図った。また、旅行会社等の協力のもとボラ ンティアツアー等を実施し、交流の促進を図った。 「東北観光博」期間中の約13ヶ月における旅行者数及び経済効果は、①東北地域を訪れた延べ旅 行者数は約4,970万人回、このうち観光目的の旅行者数は約2,570万人回、②東北地域を訪れた観光 目的の旅行者数は前年同期と比べ約310万人回増加、③「東北観光博」が旅行のきっかけのひとつ となった旅行者による経済波及効果は約840億円と推計される。また、地域の関係者からは「東北 観光博を契機として連携が進んだ」 、 「地域づくりのきっかけとなった」との声が、来訪者からは「地 13 平成 年度 観光の状況 24 域観光案内人とのふれあいを通じて、来訪地域に対する愛着がわいた」等の声が寄せられた。 平成25年度については、東北観光推進機構をはじめ地域が主体となって、東北観光博の理念等を 継承した取組を実施する。 また、多くの人々が被災地を訪れることは、そのこと自体が復興支援につながるものであり、特 に子供たちなどの若い世代が、修学旅行やボランティアで被災地を訪れることは、将来世代に震災 の記憶を受け継いでいく観点からも重要である。このような観点も踏まえ、平成25年度は、太平洋 沿岸エリア及び福島県の旅行需要回復と、人的交流の拡大に対する支援を行うこととしており、震 災の記憶の伝承のための語り部ガイド等の人材の育成、学習プログラムの整備といった受入体制の 整備や、ボランティアツアー等地域のニーズに合致した旅行商品の造成等の取組を、地域の実情を 踏まえつつ、官民一体となって推進していく。 東北観光博のポータルサイト 「東北・北関東への訪問運動」は、官民が一体となって、東北・北関東を訪問することにより同 地域の復興を応援する運動であり、東日本大震災から1年が経過した平成24年3月から開始してい る。同運動は、平成25年3月末現在、各省庁の43事業、民間等61団体の賛同を受けており、賛同し ている各主体が、東北・北関東での会合・イベントの開催、同地域への旅行、同地域への訪問を促 すキャンペーン等を実施している。 また、東北地方への訪日外国人旅行者の旅行需要を喚起するべく、放射能不安を払拭するための 正確な情報発信を行うとともに、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会) 、IMF・世界銀行総会 等の大規模国際会議の機会を活用しての訪日プロモーションに取り組んだ。 14 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 年度の観光の状況 24 放射線のモニタリング調査結果の情報発信 ※NHK WorldやJNTO(日本政府観光局)のWebサイトにおいて、放射線量等の最新の数値を多言語で発信している。 世界の観光産業トップが集まる「第12回WTTCグローバルサミット」は、平成24年4月、異例 の一国二都市開催として東京及び仙台で開催され、世界53の国から仙台会合に約700名、東京会合 に約1,200名が参加した。セッションでの議論及び被災地等の現地視察を通じて、世界の観光産業 トップ及びマスコミに対し、被災地を中心とした我が国の復興状況や安全な現状を発信し、我が国 の安全に対する懸念等を払拭するとともに、訪日外国人旅行者の拡大への協力を働きかけた。 また、東北・北関東を訪れる外国人旅行者数の回復に向け、海外7市場8都市において海外現地 旅行会社との商談会や海外消費者向けの観光復興PRイベントを実施するとともに、これらの商談 会や観光復興PRイベントを受けて、東北・北関東を目的地に含む訪日旅行商品の造成に関心のあ る海外の旅行会社やこれらの地域の取材を検討している海外のメディアを招請するなど、観光庁、 JNTO(日本政府観光局)と東北・北関東9県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福 島県、茨城県、栃木県、群馬県)の地方公共団体や観光事業者が一体となった海外向けのプロモー ションを実施した。 さらに、昨今のソーシャルメディアでの情報発信の有効性を踏まえ、風評被害対策の一環として、 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用したグローバルキャンペーン「Share your WOW!-Japan Photo Contest-」を実施し、外国人旅行者から投稿された日本各地の写真をイ ンターネット上の「口コミ」として伝えることで、世界に日本の「安全・安心」や「魅力」の発信 を行った。キャンペーン参加者は世界100か国・地域より17,070人、投稿写真は38,817枚、キャン ペーンで活用したSNSの登録者数は25万人に達した。 このほかにも、海外の有力旅行ガイド出版社と連携して、東北・北関東に特化した旅行ガイド ブックや訪日外国人旅行者のニーズが高いと思われる放射線や放射能についての情報を簡潔にまと めた安全・安心小冊子を制作し、配布した。 15 平成 コラム 「住んでよし」の観光地域づくり~高柴デコ屋敷~ 福島県郡山市西田町にある高柴集落は、江戸時代からデコ(張子人形)作りの伝統が息づき、 年度 観光の状況 24 デコ屋敷(張子人形工房)がある職人の集落である。かつては賑わいがあったが、観光客は減 少傾向にあり、特に東日本大震災後は激減した。 この集落を活性化するため、デコの職人である橋本彰一氏 が中心となり、外部のアドバイザーを招聘した。集落の人々 が、アドバイザーとともに集落を歩き、高柴集落の魅力を検 証するワークショップを開催する中で、約300年間この集落 に受け継がれてきたデコを作る職人の日常の風景こそが、こ の地域のDNA・魅力であるという「気づき」が生まれた。コ ンセプトは、 “福を呼ぶデコ人形~その裏側には笑いと心磨 きがある~”となった。 また、これまでは4軒のデコ屋敷や茶屋が別々に誘客をし ていたが、ワークショップを通して、集落の熟年や若手の意 見が交わされる中で、思いをひとつにして集落で人を呼び込 人形職人の橋本彰一氏 もうという観光地域づくりの意識が生まれ、熱い議論が重ね られた。 そのような地域のDNAの掘り起こしと集落の人 たちの議論を経て、職人が集落を案内する「デコ 散歩」(職人の案内による里山歩き散策コース)と いうプログラムが造成された。モニターツアーを 実施すると、参加者からは、「集落のもつ自然、信 仰、暮らしの素晴らしさを案内人のトークと各屋 敷での説明で実感できました。」など満足度の高い デコ(張子人形) 声があがった。 「集落の先輩諸氏、そして同年代の若手が、一つ になって集落づくりに取り組むということの面白さ、大切さを実感し、特に若手がみんなで「な んとかしよう!」と積極的に話し合い、活動できたことで、さらに地域に対する、そして職人 としての誇りが生まれました。でも、ここからがはじまり、これからが勝負と、さらにアクティ ブに動き回ります。」と橋本氏は熱く語る。 旅行商品として商品化するためには、まだ改善点はある。しかし、高柴集落では、アドバイ ザーの声を聞きながら、集落の人々が集落を歩き、自分たちの集落の本当の魅力とは何か、そ れをどう観光客に提供できるかを真剣に話し合い、一体となって集落の魅力を高めてきた。そ して、観光客に評価されることにより、集落の人々 に誇りと自信が醸成されてきた。これが、「住んで よし」の観光地域づくりである。今後このような 観光地域づくりが全国に広がっていくことが期待 される。 デコ屋敷(張子人形工房) 16 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 第4節 地域における観光の状況 最後に、各地方運輸局等から見た各地域における観光の状況を述べる。 図Ⅰ-1-4-1 地域別延べ宿泊者数の推移(平成24年) (万人泊) 1,400 北海道 関東 中部 中国 九州 東北 北陸信越 近畿 四国 沖縄 1,200 1,000 年度の観光の状況 24 800 600 400 200 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (注) 1 観光庁「宿泊旅行統計調査」による。 2 平成22年、平成23年は確定値、平成24年は暫定値。1∼3月は従業者数10人以上の施設の実績。 図Ⅰ-1-4-2 地域別延べ宿泊者数の前年同月比の推移(平成24年) (%) 70 60 北海道 関東 中部 中国 九州 東北 北陸信越 近畿 四国 沖縄 50 40 30 20 10 0 -10 -20 -30 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (注) 1 観光庁「宿泊旅行統計調査」による。 2 平成22年、平成23年は確定値、平成24年は暫定値。1∼3月は従業者数10人以上の施設の実績。 17 平成 図Ⅰ-1-4-3 地域別延べ宿泊者数の伸び率(前年比、前々年比) (平成24年) (%) 10 年度 観光の状況 24 前々年比 8 前年比 6 4 2 0 -2 -4 -6 北海道 東北 関東 北陸信越 中部 近畿 中国 四国 九州 沖縄 (注) 1 観光庁「宿泊旅行統計調査」による。 2 平成22年、平成23年は確定値、平成24年は暫定値。1 ∼ 3月は従業者数10人以上の施設の実績。 図Ⅰ-1-4-4 地域別外国人延べ宿泊者数の伸び率(前年比、前々年比) (平成24年) (%) 60 40 20 0 -20 -40 前々年比 -60 -80 前年比 北海道 東北 関東 北陸信越 中部 近畿 中国 四国 九州 (注) 1 観光庁「宿泊旅行統計調査」による。 2 平成22年、平成23年は確定値、平成24年は暫定値。1∼3月は従業者数10人以上の施設の実績。 18 沖縄 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比4.0%増、前々年比1.9%増だった。そのうち、外国人延べ宿 泊者数については、前年比25.2%増であったが、前々年比は9.7%減で震災前の状況には戻っていな い。これは、国内観光については首都圏等での節電対策を避けた避暑目的の長期滞在需要などのプ ラス要因があったが、訪日観光については東日本大震災による風評被害、円高の影響などのマイナ ス要因があったためと推察される。 ○スポーツツーリズムの推進 北海道は国内有数の観光地であり、また、 ゴルフ、スキー等のスポーツツーリズムの適 地として注目が高まっている。最近では、特 にサイクリングを目的とした国内外からの来 年度の観光の状況 24 道者が増加している。そのため、平成24年度 に設立した「サイクル・ツーリズム北海道推 進連絡会」が中心となって、オール北海道で サイクリング観光の魅力を発信していく。 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 1 北海道の状況 左:羊蹄山の麓 右:サイクル・ツーリズム北海道推進連絡会にて作成した冊子 ○イスラム文化圏からの誘客促進の取組 近年、マレーシア、インドネシアといった東南アジア各国からの訪日旅行者数が増加傾向にある。 そのため、これらの国からの誘客を促進する上で必要となるイスラム文化に対する正確な知識を得 て理解を深めるため、北海道運輸局等が主体となって勉強会を実施し、食事面での配慮や祈祷場所 の確保など北海道内におけるムスリム(イスラム教徒) ・フレンドリーな対応の充実を進めている。 2 東北地方の状況 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比3.9%減、前々年比2.1%減だった。そのうち、外国人延べ宿 泊者数については、東日本大震災後の反動により前年比33.3%増であったが、前々年比は54.9%減 で震災前に比べ大幅に減少している。平成23年以降の延べ宿泊者数には、復興関連の需要が多く含 まれており、観光目的の宿泊需要は依然として厳しい状況にある。外国人延べ宿泊者数についても、 回復傾向にはあるものの、東日本大震災による風評被害が解消されていない。 ○“こころをむすび、出会いをつくる” 「東北観光博」開催 東日本大震災以降大きく落ち込んだ東北地域への旅行需要の喚起 を行うため、 「こころをむすび、出会いをつくる」をテーマに、東 北地域全体を博覧会会場と見立て、平成24年3月18日から「東北観 光博」を本格実施した。 「東北観光博」をきっかけに、おもてなしの向上や地域間の連携 などの取組が始まり、東北各地で「シャイだけど心優しい」と言わ れている地域の人々と来訪者の心温まる交流が生まれた。 「東北観光博」は平成25年3月31日をもって閉幕したが、東北地域 の観光はまだ復興途上にあることから、 「東北観光博」の「理念」は 「東北観光博」コンセプトイメージ 19 平成 継承し、この1年余りで培った“おもてなし”の心をさらに磨きあげ、来訪者との“こころをむすぶ” 交流が続くよう取り組んでいくとともに、引き続き東北各地の魅力あふれる情報を発信していく。 年度 観光の状況 24 3 関東地方の状況 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比8.2%増、前々年比3.0%減だった。そのうち、外国人延べ宿泊 者数については、前年比34.2%増であったが、前々年比は17.7%減で震災前の状況には戻っていない。 全体として、平成23年は東日本大震災による風評被害等により大きく落ち込んだものの、平成24年 については、東京スカイツリーの開業等による影響で、国内観光はほぼ前々年並みに回復した。 ○ 「関東観光まちづくりコンサルティング事業」及び「東日本エリア旅行商品販売会in東京」 関東運輸局では、地域と旅行会社との連携・協働に より地域の魅力を発掘し、新たな旅行商品を造成・販 売することを目的とした「関東観光まちづくりコンサ ルティング事業」を平成18年度から実施している。平 成24年度については、神奈川県小田原市と埼玉県長瀞 町において実施した。 両地域では、観光関係の有識者、地域の関係者及び 関東運輸局から構成するワーキンググループを設置 し、一年にわたり地域資源の発掘と旅行商品造成に向 けた具体的な検討を行い、企画された旅行商品は、平 成25年3月13日に開催した「東日本エリア旅行商品販 売会in東京」において販売されることとなった。 同販売会は、関東、東北、北陸信越、中部の4運輸 局が共同で開催したものであり、各地域の旅行商品の 企画を、旅行会社により具体的に商品化することを目 的に、プレゼンテーションと商談会の2部構成で実施 した。 プレゼンテーションには、①関東運輸局管内から小 「東日本エリア旅行商品販売会in東京」 (国立オリンピック記念青少年総合センター) 田原市及び長瀞町に川越市、栃木市、石岡市を加えた 計5地域、②東北運輸局管内から気仙沼市、会津若松 市の2地域、③北陸信越運輸局管内から小松市、野沢温泉村の2地域、④中部運輸局管内から伊勢 志摩地域観光圏、東紀州観光圏、蒲郡市の3地域の計12地域が参加した。各地域からの工夫を凝らし たプレゼンテーションに、販売会に参加した多くの旅行会社が興味をもった様子であった。 また、商談会では、各ブースにおいて、各地域の旅行商品に興味を持った旅行会社と各地域との 間で熱心な商談が時間ギリギリまで行われるなど、盛況であった。 4 北陸信越地方の状況 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比3.9%減、前々年比0.5%減だった。そのうち、外国人延べ宿 泊者数については、前年比25.1%増であったが、前々年比は23.2%減で震災前の状況には戻ってい ない。国内旅行者数が前年に比べ減少したのは、信州を舞台としたNHK朝の連続ドラマ「おひさ 20 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 ま」の効果により平成23年は宿泊者数が北陸信越運輸局管内で最も多い長野県への入込客数が好調 であったことの反動等によるものと考えられる。 ○金沢における食をテーマとした外国人旅行者の利便性向上の取組 平成27年春の北陸新幹線の金沢延伸開業に向け、北陸信越 地域では、広域の観光ルートづくりも見据えた二次交通対策 や外国人受入体制の整備が急務となっている。 二次交通対策としては、ミシュラン・グリーンガイド・ ジャポンにおいて評価の高い「金沢(兼六園) 」 、 「五箇山」 、 「白川郷」及び「高山」を「三ツ星街道」と称してつなぎ、 北陸新幹線が延伸開業される金沢や高岡からの周遊バスを実 証運行する取組等が、平成24年秋より行われている。高岡~ 高山間の実証運行バスについては、観光圏整備事業として北 年度の観光の状況 24 陸信越運輸局が支援して実施した。 また、外国人受入体制強化対策としては、金沢において外 国人モニターを活用して各言語(英・仏・韓・中国簡体・中 国繁体)別の食のガイドブックを作成し、 「金沢の食」の魅 力を外国人それぞれの関心に合わせてきめ細かく情報提供す る試みを、北陸信越運輸局の平成24年度の直轄事業として 行っている。 金沢食のガイドブック(フランス語版) 5 中部地方の状況 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比5.2%増、前々年比1.0%増だった。そのうち、外国人延べ宿 泊者数については、前年比40.0%増であったが、前々年比は17.2%減で震災前の状況には戻ってい ない。平成24年の中華圏(中国、香港、台湾)から昇龍道9県への延べ宿泊者数は、前年比で約1.5 倍増加している。東日本大震災前の状況には戻っていないものの、昇龍道プロジェクトが増加に寄 与していると推察される。 (注)昇龍道9県は、愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、福井県、 富山県、石川県、長野県、滋賀県を指す。 ○中部北陸地域の認知度・観光力向上~ 「昇龍道プロジェクト」 ~ 主に中華圏から中部北陸地域への訪日外国人旅行者の誘致推 進のため、中部、北陸信越両運輸局は、 「昇龍道プロジェクト」 を平成24年1月に開始した。「昇龍道」とは、能登半島を龍頭 に三重県を龍尾に見立て、龍の体が中部北陸地域の9県をくま なくカバーし天に昇るイメージから付けた同地域の呼称であ る。 推進母体として3月に協議会を設置し、会長、副会長に中部 経済連合会、北陸経済連合会の会長が各々就任した。両運輸局 が事務局を務め、官民400を超える会員が参加している。 「昇龍道プロジェクト」ポスター 21 平成 年度 観光の状況 24 市場毎に部会を設置し各部会で課題を整理した上で、その解決策を分科会で検討する体制の下、 「昇 龍道」として一貫した海外プロモーションを実施し、地域一体でおもてなし向上に取り組んでいる。 7月には、会長を団長として、上海、杭州へ「昇龍道ミッション」を派遣し、現地商談会等を開 催したほか、中部経済連合会及び中部運輸局と上海市旅游局との間で観光交流協定を締結した。 さらに、昇龍道周遊の起点となる中部国際空港には、 「昇龍道」の観光資源等をPRするため、 国際線到着コンコースに龍の壁面装飾を施すとともに、到着ロビーに龍のオブジェ及び昇龍道観光 情報館を設置し、また、出発ロビーに越前和紙により作成した「白龍」を展示している。 平成25年度は、東南アジアをプロジェクトの対象市場に追加し、5月には台湾へ「昇龍道台湾 ミッション」を派遣した。また、昇龍道春夏秋冬100選の策定、昇龍道ウェルカムカード等の作成 など魅力向上に努めることとしている。 6 近畿地方の状況 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比5.1%増、前々年比2.2%増だった。そのうち、外国人延べ宿 泊者数については、前年比44.1%増、前々年比1.1%減で震災前の状況に戻りつつある。東日本大震 災、紀伊半島大水害等のマイナス要因があったものの、滋賀県、兵庫県が平成23年、24年と連続し てNHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」 、 「平清盛」の舞台となった効果等により、延べ宿泊者 数は増加した。その他、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に人気キャラクターを題材 にしたエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」が開業したことなども増加に寄与した。 ○「関西メガセール」 「くいだおれ」「きだおれ」「はきだおれ」など食事やショッ ピングに古くから関わりのある関西の特色を生かして、外国人 旅行者に効果的なサービス向上と、消費の拡大等による経済活 性化を目指し、平成23年度より「関西メガセール」を実施して いる。これは、関西4政令市(京都市、大阪市、神戸市、堺市) と関西国際空港を中心とする商業施設、百貨店、観光施設、宿 泊施設などの協力により、パスポート提示による外国人旅行者 向け特典を募集して各施設での買物特典やスモールプレゼント 関西国際空港で実施した「関西メガメール」 PRイベント を提供し、外国人旅行者を歓迎するとともに、関西での食事や買物を楽しんでもらうものである。 平成24年度は、観光庁、関西4政令市、公益社団法人大阪観光コンベンション協会、大阪商工会 議所、新関西国際空港株式会社、大阪市商店会総連盟と連携し、12月から翌年2月にかけて、春節 期等における取組として、145施設、約6,000店舗の協力を得て実施した。また、同期間に、関西国 際空港や日本橋電気屋筋商店街等でのPRイベントを併せて実施した。 7 中国地方の状況 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比2.6%減、前々年比2.7%減だった。そのうち、外国人延べ宿 泊者数については、前年比49.2%増であったが、前々年比は19.2%減で震災前の状況には戻ってい ない。中国地方全体の宿泊者数は前年を下回ったが、広島県については、NHK大河ドラマ「平清 盛」の放送に伴う関連イベントの効果により宮島の観光客数が過去最高となり、広島県の上期の宿 泊者数は前年比6.5%増となった。 22 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 ○中国地方の神楽を国内外にPR 中国地方では、神楽を「魅力ある観光資源」の1つとして位置 づけ、地域が一体となり、一層の磨きをかけるとともに、国内外 にアピールしているところであるが、「神楽観光」の振興による 地域活性化及び都市部を含めた観光魅力の向上を図ることを目的 として、中国運輸局が事務局となり、中国地方の42地方公共団体 で構成する「中国地方神楽観光振興協議会」を設立した。平成24 年度は、首都圏に向けた情報発信を重点的に行ったが、特に「旅 フェア2012」において石見神楽を上演した際には、会場が大きな 拍手と歓声に沸いた。また、中国地方の神楽の魅力を盛り込んだ ホームページ等を通じた情報発信も併せて行った。 ~「神楽」中国地方の魅力、新発見~ 日英併記神楽リーフレット 外国人向けの情報発信としては、特に熱心に神楽観光振興に取 り組んでいる広島県及び島根県と協働し、神楽の見どころや主要 年度の観光の状況 24 な演目の説明、神楽定期公演施設と周辺の観光スポットを盛り込 んだ日英2か国語併記の神楽リーフレットを作成した。引き続き 国内外に神楽の魅力を発信し、中国地方への誘客促進につながる 取組を行っていく。 8 四国地方の状況 ~ようこそ「神楽」の世界へ~ 中国運輸局ホームページ 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比5.0%減、前々年比3.6%減 だった。そのうち、外国人延べ宿泊者数については、前年比 31.7%増であったが、前々年比は5.5%減で震災前の状況には戻っていない。 「うどん県」PR等に より香川県の延べ宿泊者数は増加したものの、人気の高かった平成22年のNHK大河ドラマ「龍馬 伝」の終了等が影響し、四国全体としては延べ宿泊者数が減少した。 ○瀬戸内国際芸術祭2013~アートと島を巡る瀬戸内海の四季~開幕 平成25年3月に、瀬戸内海の島々を舞台に繰り広げられる 現代アートの祭典 『瀬戸内国際芸術祭2013』が開幕した。 開幕式は、香川県高松市のサンポート高松において、参加 アーティスト、地域住民、サポーター等の関係者が一堂に会 して行われた。3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭であ るが、2013年は、季節の移り変わりを楽しみ、ゆったりした 気持ちで島々を巡ることができるよう、会期が春、夏、秋の 3シーズンに分けて設定され、香川県の中西部に位置する5 つの島を加えた12の島と高松、宇野において開催されている。 美しい自然と人間が共存してきた瀬戸内海の島々に活力を 取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の『希望の海』 となることを目指し、23の国と地域からのプロジェクト、イ ベント約210組が、瀬戸内の美しい景観の中で展開される。 「瀬戸内国際芸術祭2013春」ポスター 23 平成 9 九州地方の状況 図Ⅰ-1-4-5 九州の外国人入国者数の推移 年度 観光の状況 24 (万人) 120 100 93 87 79 80 44 73 63 56 60 106 100 60 46 40 20 0 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 (注) 1 法務省「出入国管理統計」による。 2 九州の各港より入国した外国人入国者数。 図Ⅰ-1-4-6 九州の外国人入国者数の月別推移(過去三年間) (万人) 14 12 10 8 6 平成22年 4 平成23年 2 平成24年 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (注) 1 法務省「出入国管理統計」による。 2 九州の各港より入国した外国人入国者数。 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比3.0%減、前々年比0.9%増だった。そのうち、外国人延べ宿 泊者数については、前年比17.2%増であったが、前々年比は4.9%減で震災前の状況には戻っていな い。また、出入国管理統計によると、平成24年の九州への外国人入国者数については、対馬を除い た地域への入国者数は前々年比3.8%減の約90万人となったが、対馬への入国者数は前々年比 150.0%増となる記録的な伸びを示して全体の1割を占める約15万人となり、全体としては、前々 年比5.6%増の約106万人と過去最高を記録した(図Ⅰ-1-4-5) 。 ○航空ネットワークの充実と九州新幹線の利便性向上 平成24年1月の佐賀~上海便、3月の福岡~仁川便の就航、福岡~台北便の増便や鹿児島~台北 便の就航と10月の週4便へ増便化など、アジア各地から九州各地への国際航空ネットワークの充実 が図られた。平成25年4月には、欧州直行便の福岡~アムステルダム便も就航する。 24 第Ⅰ部 観光の状況 第1章 平成 国内LCC空路として、平成24年3月の福岡~関西便 の就航をはじめ、九州各地に関西からの路線が拡大した ことから、九州新幹線とあわせて主に関西から九州地方 への利便性が向上した。 平成23年3月に全線開業した九州新幹線は2年目を迎 え、開業ブームは一段落したものの、観光需要のほか、 近距離切符の割引効果等もありビジネスや買物の足とし て定着した。 九州新幹線800系 平成24年7月の九州北部豪雨では、阿蘇地域を中心に 甚大な被害が発生したが、その後の復旧が進んだことに より、観光客も順調に回復してきている。 10 沖縄の状況 年度の観光の状況 24 平成24年の延べ宿泊者数は、前年比5.9%増、前々年比2.4%増だった。そのうち、外国人延べ宿 泊者数については、前年比35.0%増、前々年比54.2%増で震災の影響はあまり見られない。沖縄県 の平成24年観光入込客数が、LCCや外国航空会社の新規就航・増便等により前年比7.8%増、そ のうち外国人客については同34.5%増であったことから、延べ宿泊者数も増加した。 ○待望の新石垣空港が開港 平成25年3月に、八重山地域(石垣市、竹富町、与那 国町)の新たな玄関口として新石垣空港が開港した。こ れまでの滑走路より500m長い2,000m滑走路を備え、中 型ジェット機の就航が可能となった。また、国内線のみ ならず国際線ターミナルビルも整備された。今後、国内 外の各地を結ぶ新規路線・チャーター便の就航や増便が 見込まれ、八重山地域の振興発展の起爆剤としてのみな らず、沖縄県の産業や観光振興の推進拠点として、大き く貢献するものと期待されている。 開港した新石垣空港のターミナルビル (写真提供:石垣空港ターミナル㈱) 沖縄総合事務局においては、新石垣空港の開港に先立ち、八重山地域における訪日外国人の受入 環境の向上のため、平成24年度に、公共交通機関の乗継検索情報をはじめとする観光情報を多言語 で提供する八重山地域のポータルサイトの作成等を行う外客受入地方拠点整備事業を実施した。 (注)この節において、各地域とは、各地方運輸局等の管内を指す。 東北地方(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県) 関東地方(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県) 北陸信越地方(新潟県、富山県、石川県、長野県) 中部地方(福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県) 近畿地方(滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県) 中国地方(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県) 四国地方(徳島県、香川県、愛媛県、高知県) 九州地方(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県) 25