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こちら - ピアノ | ピティナ・ピアノホームページ

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こちら - ピアノ | ピティナ・ピアノホームページ
Member of
The Alink-Argerich
Foundation
第37 回ピティナ・ピアノコンペティション
特級セミファイナル
8 月 18 日(日)第一生命ホール
後援:文部科学省、東京都、中央区、読売新聞東京本社
褒賞協力:文部科学省、東京都、読売新聞東京本社、ヒノキ新薬、学校法人洗足学園、学校法人東京聖徳大学、
王子ホール、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、福田靖子賞基金
一般社団法人 全日本ピアノ指導者協会(略称ピティナ)
特級セミファイナルにご来場いただき、誠にありがとうございます。
本日は、
7名の出演者が各 50 分程度、
リサイタル形式で個々の時間を演出いたします。
舞台袖への一時退出をどこで挟むか、各曲間でお辞儀をするかどうか、
など、全ては演奏者に任されております。
コンサートを楽しむようなお気持ちで、若いセミファイナリスト7名の熱演に、
聴衆の皆様のあたたかい拍手をお願い申し上げます。
特級
(年齢制限なし) 第一生命ホール
8 月 18 日(日)10:30 ∼(セミファイナル)
8 月 21 日(水)18:00 ∼(ファイナル)
Member of
The Alink-Argerich
Foundation
※渡邊一正指揮 / 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
■審査員(五十音順・ABC 順・敬称略 ◎ = 審査員長)
阿部 裕之・岩崎 淑・神谷 郁代・播本 枝未子◎・藤井 一興・横山 幸雄・Ronan O'Hora ・Boris Petrushansky ・Jerome Rose
■課題曲
【セミファイナル】
(1)
下記の
(2(
)3)
を必ず含むこと。
( 2)
以外での第一次・第二次予選との重複は認めない。
45分以上55分以内のプログラム。
(2)
ハイドン、W.A.モーツァルト、ベートーヴェンのソナタから、
1つ以上の楽章
(繰り返しは任意・第一次予選との重複は可)
(3)邦人新曲課題:指定の 2 曲より1 曲
(この課題に限り視奏可)
。赤石直哉「Torso I Bianco」/芳賀 傑「Presto」
【ファイナル
(協奏曲)
】
下記 31曲のピアノ協奏曲より任意の1曲を、オーケストラ伴奏により審査する。
(渡邊一正指揮/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団)
◎ W.A.モーツァルト:第 20 番、第 21 番、第 23 番、第 24 番、第 25 番、第 26 番、第 27 番
◎ベートーヴェン:第 1 番、第 2 番、第 3 番、第 4 番、第 5 番
◎メンデルスゾーン:第 1 番 ◎シューマン:イ短調 Op.54 ◎ショパン:第 1 番、第 2 番 ◎リスト:第 1 番、第 2 番
◎サン=サーンス:第 2 番、第 4 番、第 5 番 ◎グリーグ:イ短調 Op.16 ◎チャイコフスキー:第 1 番
◎ラフマニノフ:第 1 番、第 2 番、パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43 ◎ラヴェル:ピアノ協奏曲 ◎バルトーク:第 2 番、第 3 番 ◎プロコフィエフ:第 2 番、第 3 番
■セミファイナリスト氏名(演奏順)
※一段目より氏名、学校名、プロフィール、演奏曲目の順に掲載しております。
※
( )の中に演奏順番をお書き下さい
(当日、演奏前に曲順をアナウンスいたします)
。
1. 菊池 広輔
東京音楽大学大学院 2 年
1990 年東京都生まれ。4歳よりピアノを始める。東京音楽大学器楽専攻(ピアノ演奏家コース)を卒業し、現在同大学大学院器
楽専攻鍵盤楽器研究領域(ピアノ)2 年に在籍中。2008 年、第 5 回北本ピアノコンクール G 部門第 1 位並びに実行委員長賞受賞。
2009 年、第 18 回やちよ音楽コンクールピアノ部門第 3 位受賞。第 11 回日本演奏家コンクールピアノ部門大学の部第 1 位受賞。
2010 年、カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」にてジョイントリサイタルを開催。2011 年、第 22 回彩の国・埼玉ピアノコンクー
ル F 部門金賞並びに審査委員長賞、彩の国・埼玉ピアノコンクール賞、ヤマハ賞受賞。2012 年、大学より奨学金を得てザルツブルク・
モーツァルテウム音楽大学夏期国際アカデミーに参加、ロバート・レヴィン氏に師事。第 11 回東京音楽大学コンクールピアノ部門
第 2 位受賞。これまでに藤原亜美、故神野明の両氏に、現在播本枝未子、倉沢仁子の両氏に師事。
【セミファイナル提出曲目】
( )ハイドン:ピアノソナタ ハ長調 Hob.XVI:48b
( )リスト:超絶技巧練習曲第 11 番 変ニ長調 S.139-11「夕べの調べ」
( )ラヴェル:夜のガスパール
(全曲)
「金属」
、第 10 番
「魔法使いの弟子」
( )リゲティ:ピアノ練習曲集第 2 巻 第 8 番
(邦人新曲課題)
( )赤石直哉:Torso I Bianco
【ファイナル提出曲目】
リスト:ピアノ協奏曲第 2 番 イ長調 S.125
■曲目解説
古典派を確立したフランツ・ヨゼフ・ハイドン(1732-1809)は、数多くの鍵盤楽器のためのソナタを作曲
しており、
「ピアノソナタ ハ長調 Hob.XVI:48b」は、1789 年に作曲され、2 つの楽章から成る。第 1 楽章
はアンダンテの緩やかな主題が、短調になったり音型を変えたりしながら展開される変奏曲風。第 2 楽章
はプレストの速い楽章で、軽快で華やかなロンド形式。溌剌とした雰囲気の中に、左右のメロディの会話や
ユニゾンなど、工夫を凝らした展開がみられる。
フランツ・リスト(1811-1886)の超絶技巧練習曲集は、1852 年に、既発表作や習作を新たにまとめて
出版された 12 曲から成るエチュード集で、現在でも多くのピアニストの試金石となる重要なレパートリー。
その名の通りダイナミックで技巧的な作品が多いなか、
「第 11 番変ニ長調<夕べの調べ>」は、極めて抒情
2
的なゆったりとした作品。鐘の音の模倣と美しい和音による序奏に続き、広い音域にわたるハープ風の伴
奏にのせて美しい旋律が現われる。晩年には僧籍に入ったリストの篤い信仰心を感じさせるような宗教的
な祈りをも感じさせる。
ドビュッシーと並ぶフランス近代の大作曲家モーリス・ラヴェル(1875-1937)の代表作が、
「オンディー
ヌ」
「絞首台」
「スカルボ」
の 3 曲から成る「夜のガスパール」
。フランスロマン主義の幻想的な作風で知られた
詩人アロイジュス・ベルトランの作品に基づく。1 曲目は、水底に棲む水の妖精の姿を描く。2 曲目は、絞首
刑台上に吊り下がる屍体にまつわる怪奇的な話を題材とし、全体は不気味な雰囲気に包まれ「全曲を通じ
て弱音ペダルを踏み続けるように」と指示されている。終曲は、地底に棲む悪魔的小人の名で、オンディーヌ
とは性格的に対照をなす。小悪魔スカルボを表現するスケルツォ。
ハンガリーの現代作曲家、ジョルジュ・リゲティ
(1923-2006)
は、ピアノの響きや技巧に対する実験的な
「練習曲」を18 曲作っている。第 2 巻第 8 番の「金属 Fem」は、1989 年に作られた 5 度の和音の練習曲。
「金属」というタイトルながら、ハンガリー語の「光 Feny」にも語呂が近いことを含んでいると作曲者自身が
示唆し、また「とてもリズミカルに、そして撥ねるように(スウィングを伴って)演奏し、ポリリズムの多様性
を前面に出すように」
と述べている。第 2 巻第 10 番の「魔法使いの弟子 Der Zauberlehrling」
(1994 年作
曲)は、極めて速い作品で「プレスティッシモ、スタッカーティッシモ、レッジェーリッシモ」
(できるだけ速く
・
スタッカートで・軽く)という難度の高い指示が書かれている。冒頭はトリルと同音連打が混合したような音
型で始まり、不規則なリズムとスケール、高音域を効果的に使った輝かしい効果など、リゲティの音響感覚
の粋を見るようなエチュード。
2. 橋本 明意
東京大学 3 年
1991 年生まれ。熊本県出身。3 歳よりピアノを始める。熊本県立熊本高等学校卒業。東京大学文学部思想文化学科美学藝術学専
修過程在籍。2005 年、第 59 回全日本学生音楽コンクール中学の部全国大会第 1 位ならびに井口愛子賞、都築音楽賞、毎日中学生
新聞賞、野村賞受賞。2006 年、九州交響楽団と共演。同年、熊本市・天草市にてリサイタル開催。現在、横山幸雄氏に師事。
【セミファイナル提出曲目】
( )W.A.モーツァルト:ピアノソナタ第 10 番 ハ長調 K.330
( )シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17
( )横山幸雄:喜びのエチュード
(邦人新曲課題)
( )赤石直哉:Torso I Bianco
【ファイナル提出曲目】
ショパン:ピアノ協奏曲第 1 番 ホ短調 Op.11
■曲目解説
W.A.モーツァルト(1756-91)は音楽史上稀に見る天才として広く知られ、鍵盤ソナタの分野では 18 曲
のソナタを作曲している。
「ピアノソナタ第 10 番 ハ長調 K. 330」は、1783 年頃にウィーンで作曲された 3
楽章から成るソナタ。モーツァルト研究家アルフレート・アインシュタインは「あらゆる音の<座りがよい>傑
作であり、モーツァルトが書いた最も愛らしいものの一つ」
と述べている。快活で清涼感のある第 1 楽章、ア
ンダンテ・カンタービレで澄み切った世界が広がる第 2 楽章、軽快な終楽章と続く。
ロベルト・シューマン(1810 -1856)のもっとも大きな規模のピアノ作品のひとつが、3 楽章からなる「幻
想曲 ハ長調 Op.17」である。当時シューマンは、のちの妻となるクララの父親で、師でもあるフリードリッ
ヒ・ヴィークの強い反対にあい、クララとの結婚が暗礁に乗り上げかかっていた。そのためこの曲には彼女
への個人的な恋慕の情がふんだんに盛り込まれ、第 1 楽章の終結部でベートーヴェンの歌曲「遥かなる恋
人に寄せて」が引用されるが、その歌詞は「この歌を受け入れよ。私が君に、愛する君のために歌った歌を」
というものである。シュレーゲルの四行詩「色とりどりの大地の夢の中で、あらゆる音を通して、ある静かな
音の調べがひそやかに、耳をそばだてる人のために響いている」が掲げられている。情熱的な第 1 楽章、ス
ケールの大きな行進曲の楽想を持つ第 2 楽章、静かでロマンティックな第 3 楽章からなる。リストに献呈さ
れ、
「あなたに献呈していただいた幻想曲は最高級の作品です。あなたからこのような壮大な曲の献呈をう
ける光栄に浴したことは、私は本当に誇りに感じております」
と賞賛されている。
横山幸雄(1971- )は、日本を代表する現役ピアニストの一人で、ショパン作品の全曲演奏などの偉業で
知られ、現在は上野学園大学で後進の指導にもあたる。
「喜びのエチュード」
(2000 年)は、
「2 つの即興的
小品」の第 2 曲で、4 分ほどの小品。拍子感の希薄な浮遊するような雰囲気の中に、右手・左手とも複雑な
動きが要求される。
3
3. 中西 彩加
東京音楽大学 3 年
1993 年生まれ。現在、東京音楽大学演奏家コース 3 年在学。2007 年、第 31 回ピティナ・ピアノコンペティション E 級全国決勝
大会ベスト 11 賞。同コンクール連弾上級全国決勝大会奨励賞。2008 年、第 32 回ピティナ・ピアノコンペティション F 級全国決勝
大会ベスト7 賞。かながわ音楽コンクールユースピアノ部門県議会議長賞受賞。神奈川県高文連ソロコンテスト専門部会長賞受賞。
2009 年、第 33 回ピティナ・ピアノコンペティション F 級全国決勝大会ベスト 12 賞。同コンクール2台ピアノ中級全国決勝大会奨
励賞。神奈川県高文連ソロコンテスト教育長賞受賞(第 1 位)
。2010 年、日本クラシック音楽コンクール全国大会入選。2013 年、
かながわ音楽コンクールシニアピアノ部門第 3 位。現在、菊地裕介、鈴木弘尚各氏に師事。
【セミファイナル提出曲目】
( )ハイドン:ピアノソナタ 変イ長調 Hob.XVI:46
( )シューマン=リスト:献呈
( )シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17
( )芳賀 傑:Presto
(邦人新曲課題)
【ファイナル提出曲目】
ラヴェル:ピアノ協奏曲
■曲目解説
ハイドンの鍵盤楽器用ソナタは 50 曲を数えるが、
「ピアノソナタ 変イ長調 Hob.XVI/46」
は、1770 年頃
に作曲されたと考えられ、明朗でリラックスした雰囲気を持つ優美な作品。清冽な主題をもつ第 1 楽章、サ
ラバンドのような落ち着いた気品漂う第 2 楽章、快活な第 3 楽章からなる。
「献呈(君に捧ぐ)」は、シューマンの歌曲集「ミルテの花」の第 1 曲を、リストがピアノ独奏用に編曲し
たもので、その美しい旋律により、今日ではピアニストの重要なアンコールピースとなっている。原曲の歌詞
は、リュッケルトによる無題の詩で「君こそはわが魂よ、わが心よ、君こそはわが楽しみ、わが苦しみよ」
と高
らかに愛をうたう。シューマンがクララとの結婚の年に書いた愛の告白ともいえる作品に、リストが煌びや
かなピアノの名技を与えている。
※シューマン「幻想曲」
は演奏番号 2 番の項を参照。
4. 浦山 瑠衣
ボストン音楽院 1年
1988 年生まれ。北海道出身。私立旭川藤女子高等学校を経て、2011 年、京都市立芸術大学音楽学部ピアノ専攻を京都音楽協会
賞を受賞して卒業。在学中、定期演奏会のソリストに抜擢され大学オーケストラと共演。大学卒業後、渡米。現在、ボストン音楽
院修士課程に授業料全額免除の奨学金と、演奏活動のための助成金を学校より授与され留学中。2004 年、第 58 回全日本学生音楽
コンクール北海道大会高校生の部第1位。2005 年、ピティナ・ピアノコンペティションG級ベスト4賞、2006 年同コンペティショ
ン特級ファイナリスト。2007 年、2012 年ペルージャ音楽祭(イタリア)参加。2012 年、ショパン国際コンクール(アメリカ・ハー
トフォード)第 2 位。これまでに東京ニューシティ管弦楽団、リスト音楽院オーケストラ、ペルージャ管弦楽団、京都市立芸術大学
管弦楽団と共演。室内楽では 2011 年 "JEMUR Piano Trio" を結成しピアノトリオとして多くのリサイタルをこなし、アメリカ国内
は元よりイタリア、リトアニア、アルバニア等ヨーロッパ各地でも積極的に演奏活動を行っている。これまでにピアノを、川口富貴子、
米澤緑夏、北島公彦、上野真、マイケル・ルーイン、室内楽をライラ・ブラウン、ロンダ・ライダー、マイケル・ルーイン各氏に師事。
【セミファイナル提出曲目】
( )D. スカルラッティ:ソナタ ト長調 K.427/L.286、ト長調 K.455/L.209
( )ベートーヴェン:ピアノソナタ第 13 番 変ホ長調 Op.27-1
( )アルベニス:イベリア第 1 巻 より 第 1 曲
「エヴォカシオン」第 2 曲
「港
(エル・プエルト)
」
「セビリヤの聖体祭」
第 3 曲
「エル・アルバイシン」同第 4 巻 より 第 12 曲
「エリターニャ」
同第 3 巻 より 第 7 曲
(邦人新曲課題)
( )赤石直哉:Torso I Bianco
【ファイナル提出曲目】
ショパン:ピアノ協奏曲第 1 番 ホ短調 Op.11
■曲目解説
ドメニコ・スカルラッティ(1685-1757)はバロック期に活躍したイタリアの作曲家で、後にスペインで活
躍し、スペイン王女マリア・バルバラにチェンバロを教えるために 555 曲の小品(ソナタ)を書き残したこと
で広く知られる。名ピアニスト・ホロヴィッツが好んで取り上げたこともあり、現在でもピアニストのレパート
リーとなっている。
「ソナタ ト長調 K.427」は、よく知られる作品の一つで、速いテンポの中で、途中に挿入
される跳躍が印象的である。
「ソナタ ト長調 K.455」は、スカルラッティらしい同音連打の軽快な雰囲気が
特徴的な作品で、古くはホロヴィッツが、最近では若手の人気ピアニスト、ユジャ・ワンがアンコールピースと
4
して演奏している。
L.v. ベートーヴェン(1770-1827)が生涯に残した 32 曲のピアノソナタは鍵盤音楽の「新約聖書」と
呼ばれる、ピアニストにとって最も重要なレパートリーのひとつである。
「ピアノソナタ第 13 番変ホ長調
(1800 年頃作曲)
は、ベートーヴェン自身により「幻想曲風ソナタ」
と題された Op. 27 の第 1 曲で、
Op. 27-1」
このソナタと対になるのが第 14 番<月光>である。第 13 番は、4 つの楽章(後半 2 つは合わせて 1 つの
楽章と数えられることもある)
から成り、各楽章間がアタッカで(連続して)
接続されている。この時期のベー
トーヴェンは、ソナタ形式から離れた自由で新しい形式を模索しており、即興的な楽想を持つ。
スペインの作曲家、イサーク・アルベニス(1860 -1909)は、自身が素晴らしいピアノの腕前を持ち、重要
なピアノ作品をいくつも残しているが、
「イベリア」は彼の最高傑作と評される曲集であり、各巻 3 曲ずつの
「エヴォカシオン」は「記憶、心象」の意味で、ファンタンゴの舞曲に、スペイン特有の
4 巻計 12 曲から成る。
コプラという民謡的な詩歌が挟まれる。
「港」は舞曲のリズムの躍動感溢れる中に、サンタ・マリーア港の活
気ある風景が織り込まれる。
「セビリヤの聖体祭」は大太鼓の伴奏とともに、聖体祭の行列が荘重に通り過
ぎていく。有名なスペイン民謡<ラ・タララ>の旋律や民衆によって即興的に歌われる宗教歌も聴かれる。
「エル・アルバイシン」は、古都グラナダにある地域名で、かのドビュッシーが「これに匹敵しうる楽曲は世の
中に数えうるほどしかない」と激賞した作品。ギター的な楽句が特徴で、哀愁を帯びた情熱的な旋律が印
象に残る。
「エリターニャ」は曲集の終曲で、これもドビュッシーが「あまりに豊かなイメージに、くらんだ目を
思わずとじてしまうほどだ」と賞賛したという。舞曲のリズムの変化、鮮やかな転調など、非常に高度な洗練
がみられる。スペイン情緒が結集した作品で幕を閉じる。
5. 桑原 志織
東京芸術大学付属音楽高校 3 年
第 3 回ベーテンピアノコンクール中学生部門全国大会第 1 位。
1995 年東京生まれの 17 歳。4歳よりピアノを習い始める。2009 年、
2010 年、第 20 回日本クラシック音楽コンクール中学生部門全国大会第 3 位。第 34 回ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝
大会 Jr.G 級ベスト賞。2011 年、第 35 回ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝大会 G 級ベスト賞。荻窪音楽祭フレッシュジュ
ニアコンサートにて日本フィルと室内楽で共演し、小林亜星審査委員長賞及び日フィル賞受賞。2012 年、第 10 回東京音楽コンクー
ルピアノ部門第 2 位。第 10 回ロシアン・ピアノスクール in 東京 受講。2013 年、
第 17 回浜松国際ピアノアカデミー受講。第 9 回クー
ルシュベール国際音楽アカデミー in かさま受講、かさま音楽賞受賞。日本財団ランチタイムコンサート、ヤマハ サロンコンサート
カワイ音楽振興会創立 50 周年記念コンサートVol.1 等に出演。現在、
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校 3 年在学中。
in 銀座、
伊藤恵氏に師事。
【セミファイナル提出曲目】
( )ベートーヴェン:ピアノソナタ第 27 番 ホ短調 Op.90
( )ショパン:ピアノソナタ第 3 番 ロ短調 Op.58
( )ラヴェル:夜のガスパール より スカルボ
(邦人新曲課題)
( )芳賀傑:Presto
【ファイナル提出曲目】
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第 1 番 変ロ短調 Op.23
■曲目解説
ベートーヴェンの「ピアノソナタ第 27 番 ホ短調 Op.90」
は、聴力を失った作曲家が、数々の生活苦により
スランプ状態にあった 1814 年に作曲されており、ピアノソナタとしては 4 年ぶりの作品となった。後期作品
やシューベルトに影響を与えたといわれる深い情感は、それまでのソナタに見られないものである。2 つの
楽章から成り、第 1 楽章には「Mit Lebhaftigkeit und durchaus mit Empfindung und ausdruck(速く、
そして終始感情と表情をともなって)」
、第 2楽章には「Nicht zu geschwind und sehr singbar vorgetragen
(速すぎないように、そして十分に歌うように奏すること)」
という具体的な標語が置かれている。
「ピアノの詩人」
フレデリック・ショパン(1810 -49)
の名作のなかでも、後期、作品番号 50 ∼ 60 番台には
ピアノ音楽史の頂点をなす傑作が並んでいる。彼は基本的に小品の人であったので、せいぜい10 分程度ま
での作品が大半であり、ピアノソナタは 3 曲しか残されていないが、特に第 2 番と第 3 番は傑作の位置を占
める。
「ピアノソナタ第 3 番ロ短調 Op.58」
は、1844 年夏に作曲された、ピアノソナタの分野の屈指の名作。
華やかで堂々とした第一主題と優美な第二主題からなる第 1 楽章、軽快な第 2 楽章、ノクターンのように美
しい第 3 楽章、情熱的で重厚なフィナーレをもつ第 4 楽章からなる。
※ラヴェル「スカルボ」
は、演奏番号 1 番の項を参照。
5
6. 鯛中 卓也
東京芸術大学大学院 2 年
1988 年兵庫に生まれ、3 歳よりヤマハ音楽教室に通い、ジュニア専門コース、同上級科を経て、ヤマハ演奏研究コース修了。
1995 年ヤマハジュニアピアノコンサート金賞。1998 ∼ 2005 年ピティナ・ピアノコンペティション B 級ベスト賞、C 級入選、E
級銀賞、Jr.G 級優秀賞、特級銅賞。1998 年ハンガリーにてジャパンウィークブダペスト演奏会に出演。2000 年兵庫県学生ピアノ
コンクール C 部門優秀賞。2002 年全日本学生音楽コンクール大阪大会中学の部第 1 位。2003・2004 年浜松国際ピアノアカデミー
受講。2004 年エトリンゲン青少年国際ピアノコンクール B 部門奨励賞。2005 年金昌国指揮大阪チェンバーオーケストラと共演。
2007 年ブラジルにてクラウディオ・クルス指揮リベイランプレート交響楽団と共演。2011 年東京音楽コンクールファイナリスト。
2012 年松方ホール音楽賞奨励賞。2009 ∼ 2011 年度ヤマハ音楽振興会音楽支援制度奨学生。これまでに、堀洋子、武田真理、
クラウディオ・ソアレスの各氏に師事。白陵高等学校、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻卒業。現在、同大学大学院修士課程に在籍し、
伊藤恵氏に師事。
【セミファイナル提出曲目】
( )ベートーヴェン:ピアノソナタ第 32 番 ハ短調 Op.111
( )ブラームス:幻想曲集 Op.116
( )赤石直哉:Torso I Bianco
(邦人新曲課題)
【ファイナル提出曲目】
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16
■曲目解説
ベートーヴェンの最後のピアノソナタ「第 32 番 ハ短調 Op.111」は、この作曲家の劇性をもっともよく表
現するといわれる「ハ短調」
で書かれている(運命交響曲と同じ調性)
。第 31 番 Op.110 と並行して 1821 ∼
22 年に作曲され、非常に凝縮して緊迫感の強い内容を持っている。曲は対照的な 2 つの楽章から成る。第
1 楽章は、減 7 度の劇的な跳躍から始まり、情熱的なアレグロ。フーガ的要素を含む序奏を伴ったソナタ形
式。第 2 楽章は、ハ長調の変奏曲で、16 小節の主題とそれに続く5 つの変奏から成っている。深い精神性
を帯びた主題が、様々に律動を変化させながら発展し、最後は、高音域のトリルを伴いながら、静寂に消え
ていく。ベートーヴェンの最も崇高な作品のひとつとされる。
ヨハネス・ブラームス(1833-97)は、ドイツ・ロマン派を代表する作曲家で、4つの交響曲や数多くの室
内楽作品で知られる。3 ∼ 4 分程度の小品7曲から成る「幻想曲集 Op.116」
は、第 1, 3,7 番が<奇想曲(カ
プリッチョ)>、それ以外が<間奏曲(インテルメッツォ)>と名づけられ、1892 年頃に作曲された。第 1 曲
は、プレスト・エネルジーコ(速く、情熱的に)
、曲の幕開けにふさわしい劇的な作品。第 2 曲は幻想的な雰
囲気を持つアンダンテ。第 3 曲は情熱的な第一部と荘厳な第二部とのコントラストが作曲家の後期の作風
の典型を示す。第 4 曲は、ノクターン(夜想曲)のようなロマンティックなアダージョ。第 5 曲は、強拍に音を置
かないことにより不規則で不可思議な雰囲気を醸し出す。第 6 曲は、優しく温かな雰囲気をもった無言歌風
の抒情詩。第 7 曲は、アジタート(激して・興奮して)と指示された終曲で、右手と左手が逆に進行するなど、
技法においても工夫が凝らされている。
7. 中川 真耶加
東京音楽大学 2 年
1993 年愛知県生まれ。ヤマハ音楽教室(日響楽器)にて学び、ジュニア専門コース、同専攻クラス、ヤマハマスタークラスピアノ演
奏研究コース修了。第 30 回ピティナ・ピアノコンペティションE級全国決勝大会銀賞併せて聖徳大学川並賞受賞。同、第 34 回G
級全国決勝大会ベスト 5 賞受賞。同、第 35 回特級セミファイナリスト。第 11 回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 高校生部門
アジア大会金賞受賞。第 5 回福田靖子賞選考会入選。第 1 回いしかわ国際ピアノコンクール高校生部門金賞受賞。第 11 回東京音楽
大学コンクールピアノ部門第 3 位受賞。 2012 年 12 月に全日本ピアノ指導者協会名古屋支部文化事業部の支援により“8th あしな
がおじさんピアノリサイタル”を行う。2013 年 4 月、日本財団ランチタイムコンサートに出演。その他チャリティーコンサート等に
も出演。2009 年よりロシアンピアノスクール、いしかわミュージックアカデミー、浜松国際ピアノアカデミー、Paris International
Piano Masterclass などを受講。これまでに遠藤誠津子、後藤康孝、長谷川淳、清水皇樹、鈴木弘尚、武田真理の各氏に師事。愛
知県立明和高校音楽科を経て、現在東京音楽大学ピアノ演奏家コース給費奨学生2年在学中。
【セミファイナル提出曲目】
( )ハイドン:ピアノソナタ ハ長調 Hob.XVI:48b
( )シューマン:ピアノソナタ第 3 番 ヘ短調 Op.14
( )プロコフィエフ:サルカズム Op.17
( )赤石直哉:Torso I Bianco
(邦人新曲課題)
【ファイナル提出曲目】
ショパン:ピアノ協奏曲第 1 番 ホ短調 Op.11
6
■曲目解説
シューマンの「ピアノソナタ第 3 番 ヘ短調 Op.14」
は、彼の 3 曲のピアノソナタの中でも特に大きな規模を
持つ 4 楽章から成る作品で、1835∼ 36 年に作曲された。出版時には出版社ハスリンガーの希望により「管
弦楽のない協奏曲」という副題が付されたほどである。もともと 2 つのスケルツォ楽章を持つ 5 楽章形式の
作品であったが、今日では、そのうちの 1 つが割愛された 4 楽章が演奏されることが多い。曲の中心的な存
在は、第 3 楽章の冒頭に現れる恋人(後の妻)クララが作曲したロマンスであり、第 3 楽章はこの主題をもと
にした変奏曲で、アンダンティーノの主題と4 つの変奏から成る。第 1 楽章は、色彩感豊かで、まさに<管弦
楽的>な楽章である。序奏の後の冒頭から、先の<クララの動機>に基づいて華麗な音楽が展開する。第 2
楽章もやはりクララの動機に基づく下降形のモティーフで始まる。終楽章は、シューマンらしいめまぐるしい
気分の変化を持つ急速なフィナーレで、
「プレスティッシモ・ポッシービレ(できる限り速く)」
の指示がある。
当時、クララの父親に交際を反対されていたシューマンの、音楽によるラブレターといえるだろう。
セルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)
は、20 世紀ロシアを代表するコンポーザー・ピアニストの一人で、
自身が強靭な技巧を持つ名ピアニストであり、5 曲のピアノ協奏曲と 10 曲のピアノソナタをはじめ、数多く
のピアノ作品を生み出した。鋭い性格描写や風刺的な作風、ピアノの打楽器的な扱いや和声などが特徴で
ある。
「サルカズム(風刺)Op.17」は、1912 ∼ 14 年頃に作曲された 1 分半∼ 3 分半程度の小品 5 曲から
成る小品集。第 1 曲「嵐のように」第 2 曲「間延びしたアレグロ」第 3 曲「せきたてるアレグロ」第 4 曲「狂気
したように」
第 5 曲「激しくせきたてるように」
。
※ハイドン「ソナタ Hob.XVI/48b」
については演奏番号 1 番の項を参照。
以上 7 名
邦人作品課題曲について
赤石直哉/ Torso I Bianco
芳賀 傑/ Presto for piano
プロフィール
プロフィール
国立音楽大学作曲学科卒業、同音楽院音楽研究科作曲専攻修了。作曲
を佐藤眞、山口博史、
トーマス・マイヤー= F、福士則夫の各氏に、
ピアノ
の武山悠紀子氏に師事。第 23 回現音作曲新人賞入選。第 14 回日本
歌曲コンクール作曲部門最優秀賞、及び(株)全音楽譜出版社賞受賞。
日本現代音楽協会(JSCM)正会員。
1989 年生まれ。神奈川県横浜市出身。愛知県立芸術大学音楽学部作
曲専攻 2 年生在学中。作曲を小松真理、徳備康純、山本裕之の各氏に
師事。
メッセージ
「在る
Torso(トルソ)とは手足や頭部のない胸像のことです。
べきものが失われている」状態を意識し、その存在しない全体
像を自由に想像することで、ある種の断片的な作品における、よ
り独自な解釈を生むことができるのではないかと考えました。
例えば、ミロやニケのヴィーナスがもつ「欠落」が、みるものに本
来の姿を超えた完全性を想起させることは有名です。
書法と技巧を限定したエチュード風の小品ですが、演奏者の
自由な想像力と独自の表現を織り交ぜることで初めて完成す
る作品ともいえます。また、その響きのイメージから副題として
「Bianco(白)」という言葉を付け加えました。A→B→(A+B)
→ coda という形式です。
メッセージ
この曲はウクライナの作曲家ニコライ・カプースチン(Nikolai
Kapustin)の様に、ジャズのリズムや和声感をクラシックの記
譜法によって再現するスタイルをとっています。
最大の特徴は目まぐるしく変わる細かく設定された拍子と、
曲名の通りPresto
(非常に速い速度で)
による疾走感でしょう。
基本的には a moll を主調とする典型的な 3 部形式ですが、
自然的短音階の第 6 音が半音上がるドリア旋法と瞬間的にな
る♭系の和音が単純な a moll を避けていて、ジャズの雰囲気
をかもし出しています。
演奏の留意点としては、しっかり細かく 16 分の単位で刻ん
でリズムに食いついていく事と、クラシカルな音色よりももっと
ジャズを意識して強く和音をつかむ事を意識してください。
7
好評により完売!
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