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安全報告書2015

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安全報告書2015
はじめに
安全に
人のために
社会のために
物が人から人へわたる時、
そこには笑顔が生まれ、心が通います。
鉄道輸送を通して、
私たち JR 貨物がお届けするのは、品物の価値。
安全で安定した鉄道輸送で生まれる、
新しい物の価値。
私たちは、日本中の暮らしと経済に、
新しい価値を創造し続けています。
21 世紀は、環境・エネルギー問題、
道路の渋滞、労働力の将来と、
人類の前には問題が山積し、
物流に求められるものも、
ますます多様で、複雑になっています。
私たちは、安全に、正確に、大量に、
効率よく運べる、
クリーンな輸送機関としての価値を踏まえ、
新しい世紀の新しい物流システム構築に向け、
チャレンジを続けます。
綱 領
1 安全の確保は、輸送の生命である
2 規程の遵守は、安全の基礎である
3 執務の厳正は、安全の要件である
当社は平成26年度にスタートした中期経営計画2016で、鉄道事業の黒字化を実現
することとしています。鉄道事業の最大の基盤は安全であり、安全なくして安定輸送
も収入確保も実現できないのは、言うまでもありません。このため、人命に関わる事
故を発生させないことを第一に、JR貨物グループ全社員が共通認識をもち、安全最
優先の職場風土を自ら築く取組みを進めております。
しかし、平成26年度には、6月の北海道の江差線における脱線事故をはじめ、本年
1月・2月にも貨車の入換作業中に車両や列車との衝突事故を相次いで発生させ、多
くの方々にご迷惑をおかけしました。平成26年5月に出された保安監査の結果による
改善指示では、安全管理体制の不備を厳しく指摘されました。
安全管理体制の強化には、管理部門の実態把握・改善指導力と、現場管理者が課題
を把握し改善を図る力とが合わさり、さらに社員1人ひとりが安全に対する感度を高
めることで、事故の未然防止・再発防止に取組むことが重要です。
このように、社長の私から現場第一線の担当者まで、全員が安全の主役であるとい
う意識を強くもつことが、何にも増して安全の足腰を鍛え、重い動輪が転がりだすよ
うに、安全性を一歩一歩向上させると考えております。
また、安全を支える基盤を強化するために、引き続き教育・訓練を充実させ、人材
育成を推進します。ハード面からも、保安装置の改良、輪重測定装置の開発、地上設
備更新を契機とした保安度の向上、異常時訓練用シミュレータの導入などにより、リ
スクの低減を図ります。
このほか、昨年は東海道線が土砂災害に見舞われましたが、このような輸送障害に
対し速やかに迂回・代替輸送を行う体制の整備を進めています。また初の新幹線・在
来線共用走行の開始も、目前に迫っております。輸送の安全性確保に向けた取組みに
万全を期するとともに、国をはじめとする行政のご支援もいただき、関係の皆様と連
携して、物流の基本インフラとしての鉄道貨物輸送の使命を果たしていく所存です。
この報告書は、平成26年度に発生した事故とその再発防止策など、当社の安全の
現状と取組み状況をまとめ、皆様にご報告するものです。本年度もより一層の安全性
向上に努めて参りますので、変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
代表取締役社長
田村 修二
目 次
c o n t e n t s
1.安全基本方針・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)JR貨物グループの安全の理念・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)安全目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2.平成26年度の安全施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
⃝ソフト対策
4
2
2
(1)運転士の養成と教育・訓練・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
(2)駅、検修、保全社員の教育・訓練・・・・・・・・・・・・・・ 6
(3)管理者の教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
(4)安全を支える人材の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
⃝ハード対策
(1)新製機関車・貨車の投入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)新型ATSの整備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3)線路・信号設備などの改善・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4)その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
3.安全管理体制・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
7
7
8
(1)安全管理規程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
(2)安全推進委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
(3)安全監査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
4.事故等の発生状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12
(1)鉄道運転事故・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
(2)インシデント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
(3)輸送障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
(4)保安監査の結果に基づく改善措置について・・・・・ 16
5.安全性向上の取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
17
(1)安全改革委員会の設置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
(2)ヒヤリ・ハット活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
(3)5Sコンサルティング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
(4)安全発表会の開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
(5)社員と幹部との意見交換・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
(6)安全通信『セーフティースクラム』・ ・・・・・・・・・・・ 20
(7)安全関連の設備投資・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
(8)危険品輸送の安全確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
6.旅客会社や協力会社との連携・ ・・・・・・・・・・・・・・・
21
●安全報告書へのご意見募集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
23
1
安全基本方針
1
安全基本方針
1
(1)
JR貨物グループの安全の理念
安全についての認識
安全』は、JR貨物グループがお客様の荷物を無事にお届けするこ
『
とを使命とする鉄道事業を継続・発展させ、社会に貢献していく上で
最大の基盤となるものである
安全についての認識に基づいた理念
【『安全』は、鉄道事業の最大の基盤である】
『安全』は、JR貨物グループがお客様の荷物を無事お届けすること
を使命とする鉄道事業を継続・発展させ、社会に貢献していく上で、
最大の基盤となるものです。
平成26年度は、この認識の社員への浸透をより深めていくため、
【『安全』は鉄道事業の最大の基盤である】という理念としてまとめま
した。
(2)
安全目標
社員1人ひとりが安全について自発的に考え行動し…
目標
『安全最優先の職場風土』の確立
具体的な目標
●列車事故などの重大な事故とそれに繋がる6つの特定事故
(居眠り運転、信号違反、手ブレーキ扱い不良、軸受発熱故障、
コンテナ開扉、危険品漏洩)の絶滅
●触車、感電、墜落、交通事故などの重大な労働災害の絶滅
安全の理念をJR貨物グループの全社員が共有し、1人ひとりが安
全について自発的に考え行動することで、『安全最優先の職場風土』
を確立していきます。
2
実施項目の概念図
常に、人命に関わる事故を発生させないことを第一に考え、
PDCA サイクルに基づき以下のことに取組む
●具体的な事故防止活動(3つの柱)
1. 安全最優先の
意識の向上
2. 安全を管理する
仕組みの強化
3. 事故・事象の
再発防止、未然防止
●安全を支える基盤の強化策(2つの柱)
5. ハード対策の
推進
4. 教育・訓練の
充実と人材育成
◆安全スローガン
安全スローガン
「私たちは、人命を第一に考え、常に正しい作業を実行します。」
人命を第一に考えることは、輸送の安全の確保にとって、もっとも重要なことです。また、
自らがまず正しい作業を実行することこそ、安全最優先の職場風土を確立する第一歩です。
社員が何を基準にどう行動すればよいかを、統一スローガンとして表し、1人ひとりの安
全意識の向上と正しい作業の確実な実践を図り、安全な輸送サービスの提供を行っていきま
す。
◆DVD教材『過去の重大事故に学ぶ』の製作
過去の事故を知ることは、事故の怖さを感得するだけでなく、
現在の車両や設備と取扱いルールの成り立ちを知り、目的や意
義を理解し、正しい作業を実践するための動機づけになります。
『過去の重大事故に学ぶ』は、昭和37年の三河島事故をはじめ
とした重大事故の発生状況をコンピューターグラフィックなど
で再現し、現在の設備や車両、ルールにどう結実したかがわか
るよう製作しました。平成26年度から全国の現業機関における DVD教材『過去の重大事故に学ぶ』
教育で用いて、安全意識の向上を図っています。
3
2
平成 2 6 年度の安全施策
4
平成26年度の安全施策
2
ソ
フ
ト
対
策
安全を確保するためには、安全に対する意識をもち、正しい知識と正確な技術を
身に付けることが重要です。当社ではこれらを維持・向上させるための様々な教育・
訓練を実施しています。
(1)
運転士の養成と教育・訓練
列車を運転する運転士は、運転のルールを厳正に守り、安全・正確な運転操縦を
行うことが求められます。そのため、訓練機材等を活用した教育・訓練を実施し、
知識・技能の向上に努めています。
◆運転士の養成
運転士の養成では、約
1年をかけて学科講習・
技能講習等を行い、運転
士として必要な知識や技
能を習得させています。
また、通常の運転操縦以
外に、列車防護訓練等を
行い、異常時に的確な対
処ができるよう教育して
います。
運転士が誕生するまで
入所試験
・20歳以上で現業機関勤務経験6ヵ月以上
・適性検査・身体検査・筆記試験・面接試験
入所前教育 ・駅の運転取扱業務や機関車構造の見学実習
(約2ヵ月)
・運転室への添乗等
入所式
学科講習 ・車両構造・運転法規と理論・シミュレータ等
(約4ヵ月)
による講習、学科試験合格で技能講習へ
列車防護訓練
技能講習
(約6ヵ月)
・機関区等で運転士見習として技能講習
・技能試験に合格後、免許証交付・発令
1ヵ月以上の習熟訓練を経て単独乗務へ
救命講習
◆シミュレータ及び CAI(Computer Aided Instruction)教材による定例訓練
中央研修センターにあるシミュレータのほか、異常時対応訓練用シミュレータを東海支社
に導入し、高い訓練効果が得られていることから、順次各支社にも設置していく予定です。
各現業機関には、機関車の応急処置や異常時の取扱いの訓練ができるよう、訓練用パソコン
を配備しているほか、養成に使用している運転法規のCAI教材の活用や、実際の車両を使
用した現車訓練を行っています。
シミュレータ訓練
運転法規 CAI 教材
5
現車訓練
(2)
駅、検修、保全社員の教育・訓練
駅作業は、車両の入換から信号扱い、営業フロ
ント業務など多岐に亘り、安全な輸送のためには
その1つひとつを確実に行うことが必要です。そ
のため、それぞれの業務に見合った多様な教育・
訓練を実施しています。中央研修センターの駅業
務教育グループでも、管理者である助役が幅広い
業務に熟知できるよう、運転取扱いから荷役、
IT-FRENS(電算システム)操作等までを
対象に研修を行っています。
機関車や貨車のメンテナンスを担う検修社員の
教育は、現場でのOJTが中心で、脱線事故のよ
うな異常時に対応する訓練も実施しています。ま
た、研修では実際の車両や機器を使用する作業実
習を行っており、特に若年者の指導、訓練に力を
入れているほか、車両形式・部品毎の専門技術研
修なども実施しています。
線路や架線等のメンテナンスを担う保全社員の
教育も、OJTのほか実地訓練などで、技術・技
能レベルの維持向上を図っているほか、協力会社
とも事故防止会議を定期的に開催するなど、安全
に対する意識の高揚を図っています。
転てつ器手動転換訓練
非破壊検査実習
電車線検査実習
(3)
管理者の教育
安全最優先の職場風土の確立と現場の安全マネ
ジメント強化には管理者の役割が重要なため、現
場管理者を対象に安全に特化した研修を開催し、
社外の専門家によるヒューマンエラー、動機づけ、
労働安全衛生等の講義をはじめ、幅広い内容を教
育しています。JR貨物グループ会社の管理者も
受講しており、グループ全体の安全教育の充実を
図っています。
現場長研修
(4)
安全を支える人材の確保
安全を担う人材を確保するため、新規・中
途採用を行うとともに、ベテラン社員の指導
者としての配置、階層・専門別の研修の実施、
教材の整備を進め、技術継承とともに安全教
育の充実を図っています。
採用者数の推移
200
118
100
0
6
100
81
66
69
H22年度 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度
ハ
ー
ド
対
策
(1)
新製機関車・貨車の投入
平成26年度は、機関車12両、貨車178両を新製し、老朽化した機関車及び貨車
の取替のほか、青函トンネル共用走行の準備を進めています。
EH800 形式交流電気機関車 8両(青函トンネル共用走行用) HD300 形式ハイブリッド式機関車 4両 ( 駅構内入換用 )
コキ 107 形式コンテナ貨車 178両
EH800形式交流電気機関車
HD300形式ハイブリッド式機関車 コキ107形式コンテナ貨車
EH800形式交流電気機関車は、平成27年度末開始予定の青函トンネル新幹線・
在来線共用走行用で、新幹線の25kVと在来線の20kVの両方の架線電圧に対応し
ます。保安装置としてデジタル式自動列車制御装置(DS-ATC)を搭載したほか、
新幹線電車と同じく、台車に地震発生時の車両逸脱防止用L型ガイドを装備しまし
た。
(2)
新型 ATS の整備
各旅客会社の地上設備の整備に合
わせ、連続速度照査機能を持つ新型
ATSの車上装置搭載工事を進める
など、保安度の向上を図っています。
東日本地区用のATS-Psに対
応するPF・Ps統合型は、平成26
年度中に47両に搭載工事を行いま
した。平成28年6月までに搭載を
完了させる予定です。
北海道・九州地区用には、開発中
のATS-DFを搭載する準備工事
をはじめており、平成26年度は10
両に施工しました。同じく、平成
28年6月までに搭載を進めます。
保安装置の整備
ATS‒DN 整備区間
(貨物列車は ATS‒DF)
ATC区間
ATS‒SF
ATS‒SW
(貨物列車は ATS‒SF)
ATS‒SF
ATS‒Ps
ATS‒DK 整備区間
(貨物列車は ATS‒DF)
ATS‒P
◆ATS-Psの主な機能
場内、出発信号機の現示や、曲線、分岐器等の制限(速度パターン)に対する列車速度をチェ
ックし、制限(速度パターン)を超えると自動的に非常ブレーキを動作させる装置です。閉そく信
号機の現示に対しては、従来のATS-SFによります。
7
速度
◆ATS-Psのその他の機能
●最高速度照査機能(列車の最高速度を超えたときに、非
常ブレーキを動作させる機能)
●後退検知機能(列車の進行方向と反対に列車が走行した
ときに、非常ブレーキを動作させる機能)
第1速度パターン発生
第2速度パターン発生
パターン速度を
超えると
非常ブレーキ動作
信号機
ATS-Ps地上子
ATS-Ps地上子
信号機手前に停車
距離
◆ATS-DFの機能
●車上のデータベースの情報により、線路条件に応じた速度照査パターン等を発生させるATS
です。後退検知機能なども併せもっています。
(3)
線路・信号設備などの改善
軌道強化のため、鉄まくらぎ化や鉄まくらぎ分岐器の導入を図っています。入
換信号機は、視認性向上のためのLED化を平成29年度までの長期計画で進めて
おり、平成26年度末で78%が完了しました。このほか連動装置の取替などを、計
画的に実施しています。
また、駅構内の留置車両が逸走して列車と衝突する事故を防ぐため、進路が構
内から本線(反位)に開通したまま放置されていると警報を発する『反位放置警報
装置』を、逸走リスクが高い駅に設置しました。
鉄まくらぎ分岐器
LED 化入換信号機
転てつ器反位放置警報装置
(4)
その他
平成6年の開所から20年を迎えた中央研修センターでは、シミュレータの更新
とともに、ブレーキシステム教材や『事故発生線路再現ソフトウェア』を開発・導
入しました。このような教育・訓練機材への投資も進めています。
新しいシミュレータ
ブレーキシステム教材
8
事故発生線路再現ソフトウェア
3
安全管理体制
9
安全管理体制
3
(1)
安全管理規程
平成18年3月の鉄道事業法改正に伴い、平成18年10月に輸送の安全性の維持向
上を目的として安全管理規程を制定しました。その中で、社長をトップとし安全統
括管理者、運転管理者、乗務員指導管理者を置いた安全管理体制を定め、各管理者
の責務を明確化して安全の確保に努めています。
安全管理体制図
社 長
安 全 統 括 管 理 者
(鉄道ロジスティクス本部長等)
安全推進本部長
運 転 管 理 者
(運
輸
部
長
等)
コンテナ品質管理部長
運
輸
部
長
車
両
部
長
保 全 工 事 部 長
支 社 長
総
務
部
乗務員指導管理者
(機 関 区 長 等 )
長
財 務 部 長
投 資 計 画 室 長
役 職
(鉄道ロジスティクス本部長等)
( 運
転
輸
管
部
理
長
者
等 )
乗務員指導管理者
( 機
関
区
長
点線は、法令に基づく指揮系統
役 割
安 全 統 括 管 理 者
運
太文字は、法令に基づく管理者
等 )
・輸送の安全の確保に関し、社長に対し必要な意見を述べ、輸送の安全の確
保に関する業務について各部門を統括管理
・事故・災害等その他必要な情報を収集・周知し必要により指示を行う
・運転に関する事項を統括し、運行計画の設定及び改定、運転士及び車両の
運用、運転士の教育・訓練及び資質の保持その他輸送の安全に関わる業務
を管理
・運転士の資質(適性・知識及び技能)の維持管理及びその充足状況に関す
る定期的な確認と運転管理者への報告
10
(2)
安全推進委員会
運転事故等や労働災害の防止に関する事項を審議し、有効な対策の策定・推進を
行うことを目的とし、本社に鉄道ロジスティクス本部長を委員長とする本社安全推
進委員会を設置し、毎月1回開催しています。委員会では対策の内容、実施状況を
確認し、必要な見直しを行うというPDCAサイクルに沿って有効な対策を進める
ことにより、着実に安全性の向上を図っていきます。
各支社においても支社長を委員長とする地方安全推進委員会を設置し、支社内の
安全活動を推進しています。
社 長
本社安全推進委員会
専門委員会
北海道支社
東北支社
関東支社
東海支社
関西支社
九州支社
地 方 安 全 推 進 委 員 会
各 現 業 機 関
(3)
安全監査
本社内の各部門、支社、現業機関、当社グループ会社に対し、本社の安全監査員
による安全監査を実施しています。安全の取組みが法令や社内規程に適合している
か、PDCAサイクルが働く有効な取組みを行っているかをチェックするとともに、
安全監査を改善の機会とすること、有益な取組みを他部門や現業機関等に水平展開
することも目的としています。
一定のサイクルで実施しており、平成26年度は本社5部門と3支社、現業機関
26箇所、グループ会社5社の安全監査を行いました。
安全監査での書類の確認
11
4
事故 等の発生状況
12
事故等の発生状況
4
(1)
鉄道運転事故
平成26年度は、列車事故が2件発生したほか、当社の作業に関わる鉄道人身障
害事故が1件発生しました。鉄道物損事故は、発生しませんでした。鉄道運転事故
全体では36件で、前年度より1件減少しました。
鉄道運転事故発生件数
80
70
60
50
列車事故
列車の衝突、
脱線、
火災事故
79
7
1
43
45
36
40
1
30
20
28
10
0
S62年度
1
31
2
12
1
9
21
21
18
26
52
2
41
3
24
2
8
26
28
42
1
2
39
37
鉄道物損事故
列車または車両の運転により、500
万円以上の物損を生じた事故
36
15
2
11
21
9
2
10
24
26
25
24
H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度
踏切障害事故
踏切において、列車または車両が、
歩行者または車両等と衝撃した事故
鉄道人身障害事故
列車または車両の運転により、人の
死傷を生じた事故
列車事故
発生日
場 所
概 要
6月22日
江 差 線
泉 沢 ~
札苅駅間
第7066列車(機関車1両、コンテナ貨車20両)の前から20両目のコンテナ貨
車の後部2軸が、左カーブで右側のレールに乗り上げて脱線、21両目のコンテナ
貨車と分離して停車(原因は運輸安全委員会にて調査中)
2 月17 日
函 館 線
札幌貨物
ターミナル
駅 構 内
操車担当が入換機関車を誘導中、考えごとをしていて本来の停止位置を過ぎ、気付
いて緊急停止合図を行ったが車両接触限界を越えていたため、進来してきた貨物
列車と衝撃
原因は運輸安全委員会にて調査中であるが、誘導中に列車進路と競合する箇所で
は入換標識等の位置で停車させる対策を実施しており、同様のリスクが考えられる
現場に展開して再発を防止
鉄道人身障害事故
発生日
1月22日
場 所
概 要
関 西 線
四日市駅
構
内
操車担当(協力会社)が手動の転てつ器の進路構成と確認を行わなかったため、
入換車両が異進路に進入して留置車両に激突、タンク貨車1両が脱線し、衝撃で
運転士が窓枠に顔面を強打
【対策】
・転てつ器の取扱い、進路の取扱いを指導
・協力会社が自社で受託業務を管理するとともに、当社の現業機関が
委託した業務を適切に管理できるよう、当社の本社及び支社が、定期
的に改善状況をフォロー
13
江差線における列車脱線事故について
江差線での列車脱線事故は平成24年にも2回発生しており、このうち4月の事故
についての運輸安全委員会の調査報告書では、原因はコンテナ内の積荷の偏積によ
り、貨車の静止輪重に大きなアンバランスが生じたためと推定されています。平成
24年9月と平成26年6月の事故については、運輸安全委員会による調査に最大限協
力するとともに、北海道旅客鉄道株式会社とも協力し、原因究明に取組んでいます。
また、原因の特定を待たず、事故の要因となる可能性がある事柄それぞれのリスク
の低減を図る観点から、できる限りの対策を進めています。
(1)北海道旅客鉄道株式会社の当面の対策に合せ、
脱線がはじまったとされる曲線区間について、
45km/h の徐行運転を実施しています。
(2)全国 12 駅にポータブル重量計を配備し、コ
ンテナの重量バランス測定(サンプルチェック)
を実施しています。
(3)大型コンテナ用のトップリフターも仕様を変
更し、偏心荷重測定装置を搭載します(平成 27
年度から順次配備)。
(4)走行中の貨物列車の輪重を確認できる『輪重
測定装置』を導入するため、実用化のための課題
の解決を図りながら、開発を進めています。
測定装置
制御装置
累積装置
12ftコンテナの脚部4箇所の重量を計測
トップリフターもスプレッダ部で4点の重量を測定
列車・対象貨車の
通知
LTE回線
JR貨物
情報システム部
サーバ
携帯
異常検知・警報通知
PC
駅
信号扱所
支社
貨物指令
必要な手配
本社
貨物指令
PC
電源
輪重測定装置のイメージ図
(5)利用運送事業者に、均衡の取れた積付けを定めた
貨物運送約款の遵守を要請し、当社からもガイドライ
ンを示すとともに、偏積の可能性のあるコンテナの調
査に基づき、積載状態のサンプリング調査を定期的に
実施しています。
利用運送事業者向けのリーフレット
14
(2)
インシデント
インシデント発生件数 4件
平成26年度は、4件が発生し
ました。それぞれの事態について、
再発防止に努めて参ります。
土木・電気・競合
1件
鉄道係員
1件
車両
2件
インシデント:鉄道運転事故が発生するおそ
れがあると認められる事態
主なインシデント
発生日
場 所
5月29日
根 室 線
帯広貨物駅
構
内
10月8日
東海道線
名古屋車両所
構
内
概 要
貨車入換作業中にレール破断により脱線
レール頭部以外の破断面の腐食から既存の亀裂の進行と推定されたが、泥の堆積
などにより定期検査で発見できなかった
【対策】
・泥の堆積があるなど、類似の箇所で一斉点検を実施
・
『線路検査の手引き』のレール一般検査の損傷、腐食判定方法を具体的なもの
に改め、打音検査での確認を追加
ホキ1000形式貨車の全般検査中に、台車枠に約150mmの亀裂を発見
同形式34両の緊急点検で他1両にも10㎜の亀裂を発見
【対策】
・探傷検査周期を全般検査(5年に1度)から交番検査(指定取替:2年半に1度)
に短縮し、早期発見ができる体制へ
(3)
輸送障害
平成26年度の輸送障害は435件で、係員原因、車両原因が減少しました。引き
続き、教育・訓練をはじめとした各種の取組みや、車両のハード対策を進めていま
す。鉄道外原因は137件で、全体としてはやや減少しましたが、鹿などの鳥獣に
よるものは増加傾向にあります。
平成26年10月には、東海道線が台風による土砂災害に見舞われましたが、この
ような大規模な輸送障害時の速やかな迂回・代替輸送や大型コンテナの途中取卸し
体制の整備、お客様への情報提供の改善等も進めています。
輸送障害発生件数
500
400
73
6
200
176
100
38
0
H17年度
430
399
365
72
300
526
522
152
132
自然災害
476
320
49
86
2
153
30
H18年度
74
354
70
108
5
105
9
177
35
H19年度
130
40
H20年度
140
330
101
9
109
39
H21年度
123
145
72
111
109
8
9
150
120
67
47
H22年度
H23年度
435
160
14
149
51
H24年度
147
9
148
137
9
鉄道外
土木・電気・競合
車両
鉄道係員
130
86
H25年度
36
H26年度
輸送障害:列車の運転を休止したもの、旅客列車が30分以上遅延したもの、旅客列車以外の列車が60分以上遅延したもの
15
(4)
保安監査の結果に基づく改善措置について
当社は平成25年度に全国で実施された保安監査の結果として、平成26年5月28
日に、国土交通省鉄道局長から以下の改善指示を受けました。
○本社が現場の状況を的確に把握する体制を整備した上で、現場の業務実施状
況を定期的に検証して課題を整理し、必要な改善を行うとともに、改善の実
行性が確保されるよう安全管理体制を強化すること(一部の現場・部門にと
どまらないものは、全社又は他部門も含めた課題として対応すること)
1. 運転管理者が行う運転士の教育訓練の管理が確実に実施できていないことが
認められたため、運転管理者が乗務員に必要な資質の保持及び向上に関する
業務を適確に実施するとともに、乗務員指導管理者がこれを適切に補助する
ことができるよう、乗務員の資質に関する管理体制を改善すること
2. 一部の軌道において、整備基準値を超える軌道変位等が確認されたにも関わ
らず、その一部の軌道で徐行運転が行われていること等から結果的に実施基
準で定める早急な整備がされていないことが認められたため、整備基準値の
考え方を整理し、必要な整備が適切に実施されるよう関係規程等を見直すな
ど、軌道の保守に関する業務実施体制を改善すること
3. 車両の保守に関する業務が確実に実施できていないことが認められたため、
ルールに則った適切な作業の徹底及び本社から現場までの間の連携を確実に
行うよう、車両の保守に関する管理体制を改善すること
この指示を真摯に受け止め、改善を全社で確実に実行するよう、次のように取組
んでいます。
(1)指導担当の運転士で乗務も行う者や新任者の一部に対し教育・訓練が一部未実
施であったこと、駅所属運転士の一部について乗務員指導管理者が資質確認報
告を受けていなかったこと、知悉度確認や添乗指導の未実施があったことに対
し、これらを乗務員指導管理者が把握し、管理部門が定期的にチェックして運
転管理者に報告するよう改めました。
(2)整備基準値に達した箇所に対する処置が不明確で継続監視となっていた箇所に
ついて、速やかに補修するとともに、補修時期や限度値を明確化するため、関
係規程の見直しを進めます。また組織を改め、従来の保全技術センターは保守
業務に特化させ、工事管理業務を行う新設事業所がチェックする体制とし、本
社がこれらの実施状況を確認していきます。
(3)車両の検査記録対比表に整備実施基準に照らして不適切なものがあったため、
対比表を見直したほか、車両の保守全般に関わる業務の管理状態を指標化し改
善目標を明確にすることで、本社、支社、現業機関の確実な連携を図ります。
指示・報告文書の取扱方も、再周知を図りました。機関車の仕業検査周期超過
については、失念防止のチェック体制を強化し、運用変更時に運用指令(旅客
会社)の照会に正確・迅速に回答できるようにするとともに、ハード対策の導
入を進めます。
(4)安全管理体制の強化のため、管理部門が実態を把握し、改善策を現業機関に理
解させ実行させる仕組みを強化するとともに、現業機関の管理者が問題点を把
握して改善する能力を向上させるよう、社内安全監査等の方法や、管理者に対
する教育内容を改善しています。
16
5
安全性向上の取組み
17
安全性向上の取組み
5
(1)
安全改革委員会の設置
平成21年に、安全管理体制の強化に向け、安全改革委員会を設置しました。こ
の委員会には社外有識者によるアドバイザリーグループを設置し、専門分野の視点
からのご意見を審議に反映させています。
委員会では、『安全最優先』の意識の浸透、業務管理体制の整備、社員の教育・
訓練の充実など、安全に関わる課題について幅広く審議を行います。策定した改善
策は、安全実行計画の中に、具体的に取組み事項として挙げ、輸送の安全の確保を
図っています。
安全改革委員会の体制図
社 長
経営会議
安全推進委員会
安全改革委員会
委員長
委 員
アドバイザリー
グループ
社長
関係役員、
部長
社外有識者
(2)
ヒヤリ・ハット活動
事故や労働災害には至っていない
『事故の芽』
を共有し、社員の気づきを掘り起こすとともに
未然防止を図るのが、ヒヤリ・ハット活動です。
平成20年度から、報告しやすい体制づくり
やデータベース化、好事例の紹介と有効な改善
に結びついた場合の表彰、改善用の特別予算枠
の確保など、取組み方法を改めた結果、年々参
加率が向上し、報告も4,000件を超えるように
なりました。
ヒヤリ・ハット報告件数と参加率
報告件数
(左目盛)
100.0%
4,193
4,000
80.0%
2,742
3,000
2,000
40.0%
35.1%
19.3%
H24年度
H25年度
措 置
検 査で 機 関 車に乗り降りする
際、昇降階段がぐらつき転倒しそ
うになった
手すりのある安定した
昇降階段に改良
段積にして回送することのでき
ない事業用コンテナが、誤って
3段 積 のまま回 送され そうに
なった
段積で回送できない
事業用コンテナには、
『段積回送禁止』のス
テッカーで表示をした
20.0%
23.7%
ヒヤリ・ハット報告例
18
60.0%
2,077
1,000
0
ヒヤリ・ハット
参加率
(右目盛)
5,000
H26年度
0.0%
(3)
5Sコンサルティング
5S(整理、整頓、清潔、清掃、躾)は、安全管理の基本のひとつです。自分た
ちでは気づきにくい課題の発見のため、
専門家にコンサルティングを依頼し、
整理・
整頓というモノの5Sにとどまらず、情報の5S、能率の向上する仕事の5Sにま
で発展させる考え方を、教わりました。
納得して取組む、先生の改善提案より良い案を自分たちで考えるなど、
『言われ
たからやる』を脱却し、主体的な取組みとなるよう進めました。
改善後
改善前
看板を使わないとき
はたてかけてあるだ
け
置く位置を明示し転
倒防止策も実施
(4)
安全発表会の開催
全国の現業機関とJR貨物グループ各社が参加する安全発表会を、毎年開催して
います。発表会では安全の取組みが優れている現業機関や個人、グループ会社を表
彰し、受賞箇所を中心に、事故・労働災害防止やヒヤリ・ハット活動の発表、安全
に関する課題についてのパネルディスカッションなどを行っており、安全改革委員
会のアドバイザーを依頼している社外有識者もお招きし、コメントや講演をいただ
いています。
これらを通じ、当社・グループ会社全体で安全の取組み方を共有するとともに、
安全意識を高揚させています。
表彰の受賞者
アドバイザーの専門家による講演
(5)
社員と幹部との意見交換
現場第一線の社員と本社幹部との意
見交換の場を定期的に設け、安全に関
する取組みや課題を議論して、認識の
統一を図っています。
意見交換会
社長の現場視察
意見交換の際の意見の反映
意 見
改 善
事故報告はリスクの大小、無事故表彰は影響度で判断する
ため、正しく取扱って報告しても影響があると減点という、
矛盾が生じる場合がある
19
リスクが小さければ、表彰制
度上も減点対象としないよう
改善
(6)
安全通信『セーフティースクラム』
本社では現業機関に向けて、安全通信『セーフ
ティースクラム』を毎月発行しています。
安全に関する様々な話題のほか、現業機関の取
組み事例やヒヤリ・ハット好事例、個人表彰受賞
者を紹介することなどで、安全の取組みを社員に
とってより身近なものにするとともに、現業機関
でのコミュニケーションの活性化に役立てていま
す。
セーフティースクラム
(7)
安全関連の設備投資
平成26年度は、車両・設備の老朽取替のほか、ATS-PF・Ps統合型車上装
置やATS-DF車上装置の導入、運転状況記録装置の整備を進めたほか、中央研
修センターの運転士養成用シミュレータを更新しました。平成26年度の安全関連
の投資額は、設備投資全体の約72%を占めています。
設備投資額の推移
(億円)
250
200
150
100
50
0
210
23
208
69
30
108
H22年度
118
2
32
83
H23年度
72
115
H24年度
193
12
31
191
1
53
150
137
H25年度
H26年度
関連事業
鉄道事業
(安全以外)
鉄道事業
(安全投資)
単位未満の端数は切り捨て表示
(8)
危険品輸送の安全確保
危険品輸送の安全確保は、利用運送事業者の皆様と連携し
て進めています。
平成19年に貨物運送約款を改訂し、危険品分類を国際基
準に準じたものに改めるとともに、危険品輸送時の荷主、利
用運送事業者、当社間の責任を明確化しました。更に平成
21年には危険品託送手続のシステム化を行い、危険品輸送
の安全確保を図っています。また、万一の漏洩事故に備え、
対処マニュアルや連絡体制の整備、定期的な訓練を実施して
います。
20
利用運送事業者への案内
6 旅客会社や協力会社との連携
21
6
旅客会社や協力会社との連携
当社はJRグループ各旅客会社の線路を使用して貨物列車を運行しており、各社との連
携が不可欠であるため、合同の脱線復旧訓練や異常時取扱い訓練を開催しています。
協力会社は、当社の本社で開催するJR貨物グループ安全会議へのトップの出席をはじ
め、各支社の地方安全推進委員会や研修、事故防止会議への参加、合同訓練会などにより、
一体となって事故防止に取組んでいます。また、平成 23 年度に開始した『コンテナ輸送
品質向上キャンペーン』を機に、フォークリフト荷役競技会も全国で開催するようになり、
安全で丁寧な作業を推進しています。
利用運送事業者の団体が主催する講習会にも参画し、危険品託送に際しての注意点や積
荷の偏積防止など、利用運送事業者の皆様への情報提供や遵守事項の理解促進に努めてい
ます。
このほか、消防署と連携した防災訓練等も実施しています。
旅客会社と合同の異常時取扱い訓練
JR 貨物グループ安全会議
フォークリフト荷役競技会
防災訓練
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安全報告書へのご感想、
当社に対するご意見につきましては、
【JR貨物ホームページ】で受付しております。
【JR貨物ホームページアドレス】
http://www.jrfreight.co.jp/
〔安全報告書〕2015
© 日本貨物鉄道株式会社
制 作:鈴将コーポレーション株式会社 ©
発 行 :
D T P:有限会社クリエイティブ・サノ・ジャパン
編 集 : 安全推進本部
発行日:2015 年 9 月 29 日
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