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公私年金連携社会における老後準備
平成25年11月25日 日本生命保険相互会社 「公私年金連携社会における老後準備に関する研究会」報告書の発行について ~日本版リースター年金の提言~ 日本生命保険相互会社(社長:筒井 義信、以下「当社」)は、わが国の高齢者の現状 および年金制度の課題や、諸外国における試みに加え、公的年金を補完する新たな 私的年金案をとりまとめた「公私年金連携社会における老後準備に関する研究会」報告書 を発行しましたので、お知らせいたします。 1.報告書発行の背景 今日急速に進む少子高齢化は、労働力の不足や社会保障給付費の急増等、日本の社会に 様々な問題を投げかけており、先般公表された「社会保障制度改革国民会議報告書」に お い て も 、「 2 1 世 紀 ( 2 0 2 5 年 ) 日 本 モ デ ル 」 の 構 築 や 自 助 努 力 の 奨 励 に よ る 公的制度への依存抑制等、社会保障制度全般にわたる見直しを進めようとしております。 その中で、年金領域については、公的年金の給付水準の調整を補う私的年金での対応へ の支援も含めた検討の必要性が示されており、私的年金制度の運営を担う私どもと いたしましては、社会的使命として、よりよい社会保障制度の構築に少しでも貢献できる よう情報の提供および提言を行ってまいりたいと考えております。 当社では、ドイツのリースター年金制度を調査し、2012年2月に報告書として とりまとめ、公私年金連携の先行事例として紹介させていただきましたが、今後、日本に おいても、こうした先進諸外国の事例を踏まえながら、公的年金と私的年金が相互の 長所を活かしつつ相互に足りない部分を補完しながら国民の老後生活を支えていく 枠組みを構築する必要があるのではないかと考えます。 そのような問題意識のもと、ニッセイ基礎研究所と共同で、2011年7月より8回に わたり「公私年金連携社会における老後準備に関する研究会」を開催し、諸外国の 年金制度改革を俯瞰しつつ、公的年金を補完する私的年金の一方策として、日本の 公的年金制度や国民性等を考慮した新たな年金改革案を検討する際のポイントを中心に 議論してまいりました。 そして、このほど、研究会での議論を踏まえ、公的年金を補完する新たな私的年金案等 をとりまとめた報告書を発行させていただくことになりました。 1 2.報告書の概要 ○わが国において、急速に少子高齢化が進行し、総人口に占める老齢人口の 割合(高齢化率)が年々上昇する中、公的年金の持続可能性を高めることが喫緊の 課題となっています(図表1)。 図表1:日本の将来推計人口 老齢人口(65歳以上) (万人) 将来推計 (%) 生産年齢人口(15~64歳) 14,000 45 年少人口(15歳未満) 39.9 12,000 40 36.1 2,200 1,065 2,925 3,612 10,000 35 29.1 540 23.0 8,622 25 3,464 7,884 6,000 30 3,867 8,000 20 17.4 6,047 8,103 7,340 4,000 15 5,786 9.1 高齢化率(%) 5.7 2,000 10 4,418 5 2,843 2,751 1,847 1,680 1,456 1,073 791 1960 1980 2000 2010 2020 2040 2060 0 出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(H24 年 1 月)」より日本生命作成 ○また、公的年金の水準は現役世代の平均収入との対比(所得代替率)で、政府想定 では、現在の62.3%から2038年には50.1%まで低下します。経済前提等を 保守的に見れば、さらに43.1%まで低下することが見込まれています。 ○所得代替率の低下に対し、諸外国では、私的年金も含めた年金制度全体で、高齢期の 所得を確保する仕組みを構築(公私年金連携)し、持続可能性の維持と国民の 老後生活の安定化を図る動きがみられます。 ○特にドイツは、近年の少子高齢化の進展や保守的な国民性等、わが国との共通点が 多い中で、「リースター年金」は、①終身年金や元本保証等、公的年金を補完する ことに相応しい商品性を有していること、②制度発足以来順調に普及していること から参考にすべき制度となっています(図表2)。 図表2:諸外国の年金制度の比較 公的年金の構成 所得代替率 2006年⇒2046年 ドイツ オーストリア フランス イギリス 1階建 1階建 1階建(実質2階建) 2階建 43.0% ⇒ 34.0% 68.0% ⇒ 68.6% 66.2% ⇒ 50.2% 35.9% ⇒ 33.1% 年金制度イメージ 私的年金 :政府支援付 私的年金 :公的年金 準公的年金 政府の 取り組み 私的年金 + リースター年金 所得比例年金 + PZV 所得比例年金 追加補足制度 ( PERCO PERCO・ ・ PERP PERP) ) 私的年金 + + 補足制度 所得比例年金 国家 第二 年金 NEST ステーク ホルダー 年金 基礎年金 公的年金の給付引下げを リースター年金をモデルと 高齢期の所得確保に向け、高齢期の所得確保に向け、 PERCO・PERPを導入 NEST等を導入 補完する目的でリースター したPZVを導入 年金を導入 (自動加入制度も導入) ①補助金 補助金と所得控除あり 政府支援付 ②終身年金選択が必須 (一部一時金受給可) 私的年金の特徴 ③元本保証 ①補助金あり ①所得控除あり ①税額控除あり ②終身年金選択が必須 ②一時金受給可 ②一時金受給可 (一部一時金受給可) ③元本保証 (PERPは積立金の20%まで) (一部一時金受給可) ③元本保証なし 2 ③元本保証なし ○ そこ で、ド イツ 「リー スタ ー年金 」を 先行事 例と して参 照し つつ、 公的 年 金 を 補完する新たな政府支援(補助金)付私的年金である「日本版リースター年金」の 創設を提言いたします。 ○ 「日 本版リ ース ター年 金」 により 、わ が国に おい ても、 公私 年金連 携を 通 じ た 高齢期の所得確保を図ること、また、公的年金への依存を是正することで、年金 財政の維持・改善を図ることが可能になります。 「日本版リースター年金」の主な特徴としては、以下の4点があげられます。 「日本版リースター年金」の主な特徴 「日本版リースター年金」の主な特徴 ① 「入口段階(保険料拠出時)」で「定額の補助金」 ① 政府から 政府から「入口段階(保険料拠出時)」 「入口段階(保険料拠出時)」で「定額の補助金」 「定額の補助金」 ・・・ 入口段階でのわかりやすい加入メリットに より、低所得者を含めた国民全層の老後 準備を促進 ② ② 年金支給期間は 年金支給期間は「終身」 「終身」 ・・・ 終身年金とすることにより、公的年金を 補完 ③ 「元本保証」( 自己拠出金+補助金の合計) ③ 商品提供会社が 商品提供会社が「元本保証」 「元本保証」(自己拠出金+補助金の合計) ・・・ 元本保証とすることにより、安心で確実な 老後準備を促進 ④ 「被用者拠出型の企業年金の事務インフラ」を活用 ④ 契約事務は 契約事務は「被用者拠出型の企業年金の事務インフラ」 「被用者拠出型の企業年金の事務インフラ」 を活用 ・・・ 制度の安定運用に向け、既存インフラを 活用して、運営コストを圧縮 ○「日本版リースター年金」により、政府が目標とする所得代替率50.0%と経済 前提等を保守的に見た場合における43.1%の差(月々5.8万円)を補完します (図表3)。 図表3:「日本版リースター年金」による所得代替率の補完イメージ 【2009年】 年金加入 【2054年】 年金受給開始 保険料率 15.704% 保険料率 18.300% 【長期の経済前提】 物価上昇率 1.0% 1.0 % 35.8万 手取収入/月 所得代替率 62.3% 名目賃金上昇率 84.2万 2.1% 2.1 % 厚生年金 22.3万 所得代替率 43.1% 名目運用利回り 3.9% 3.9 % 年金額/月 目標所得代替率 50.0% 手取収入/月 日本版 リースター年金 補完すべき金額 5 .8万 厚生年金 36.3万 合計 42.1万 年金額/月 ※長期の経済前提等については、制度の安定性をより担保すべく、2009年財政検証時の保守的なケース (出生低位・死亡中位・経済低位)のデータを使用 出典:厚生労働省「第 15 回社会保障審議会年金部会資料」等より日本生命作成 ○国家財政への影響については、政府が目標所得代替率まで全額負担するよりも、 「日本版リースター年金」に補助金を支給し、自助努力を支援する方が、長期的には 政府負担の削減効果が期待されます。 以 上 WS2013-703 3