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科学技術史から読み解く 科学技術史から読み解く 世界史 なぜ歴史教育
2011/11/24
科学技術史から読み解く
世界史
中村
なぜ歴史教育で科学技術か?
征樹
「トランス・サイエンス」
• Weinberg, “Science and Trans-science,” in
Minerva (10), 1972.
変わる理科教育
• 英国の理科教育の新しい動向:
「21世紀の科学(Twenty First Century Science)」
• トランス・サイエンス=「科学によって問うことはで
、科
答
問題群
きるが、科学によって答えることのできない問題群か
らなる領域」の出現
• 科学リテラシーの習得に重点
• とくに理系に進まない人を対象に
• 運転中の原子力発電所の安全装置がすべて、同時に故
障した場合、深刻な事故が生じる
• すべての安全装置が同時に故障することがあるか?
それに備えて対応しておく必要があるか?
• その基本構成
- 科学をめぐる現代的な問題に触れる
• 科学的説明 Science Explanations
• 科学についての考え方 Ideas about Science
B1. YOU AND YOUR GENES
• 科学的説明(Science Explanations)
● 知らなければならないこと
• あなたの特徴の多くは、環境と遺伝子に左右されている
こと
• 遺伝子は細胞核内にあり、たんぱく質の製造を指示する
こと
• 染色体や遺伝子は2対で一組なこと
• なぜ親に似るのか
• 遺伝病の治療において、遺伝子治療がどのように行われ
るのか
• 動物のクローンは人工的に/自然にどう作られるか
B1. YOU AND YOUR GENES
• 科学についての考え方(Ideas about science)
• 科学は、私たちがなんらかの行為をすることを助けてくれますが、それ
は必ずしも、そのような行為が正しいとか、許されるということを意味
するわけではありません。
• 本章で扱った問題には
本章で扱った問題には、さまざまな考え方があります。
さまざまな考え方があります
• ある種の行為は、いかなる状況であれ許されないと考える人たちがい
ます。
• 関係することになるすべての人々の利益と不利益を考慮して決定をな
すべきだと考える人たちもいます。
• 信仰や個人的環境が違うと、異なった意見を持つことがあります。倫理
的問題について考えることには、以下の点に留意する必要があります。
• 問題がなにか、明瞭に言うこと
• 考えられるさまざまな意見を記述すること
• あなたがどう考えるのか、またそれはなぜかを語ること
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科学についての考え方
IDEAS ABOUT SCIENCE
• データとその限界
• 誤差と不確実性
• 相関関係と因果関係
• 説明を行う
• 科学者集団
• ピア・レビュー
科学技術の歴史:2つの局面
• リスク
• 意思決定
• 科学と社会
• 17世紀 「科学革命」:近代科学の誕生
• 自然像の転換
• 科学と宗教の関係
• 文化的営みとしての科学
• 20世紀 科学の体制化
17世紀「科学革命」
:自然像の転換
• 原爆開発と戦後の科学技術政策
地動説の登場人物
• ニコラス・コペルニクス(1473-1543)
• 地動説を提唱
• 「コメンタリオルス」(1510)、『天球回転論』(1543)
• ティコ・ブラーエ(1546-1601)
• 天文台での組織的・精密な天体観測により膨大な観測データ
• ヨハネス・ケプラー(1571-1630)
• 惑星の運動に関するケプラーの三法則を発見
• 『宇宙の神秘』(1596)、『新天文学』(1609)、『世界の和
声』(1609)
• ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)
• 望遠鏡を制作し、太陽黒点、木星の衛星、金星の満ち欠けなどを
発見
• 『星界の報告』(1610)、『新科学対話』(1632)
コペルニクス『天球回転論』(1543)より
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2011/11/24
コペルニクスはなぜ地動説を
採用したのか?
コペルニクスはなぜ地動説を
採用したのか?
• 新プラトン主義:太陽への礼賛
• 太陽中心主義の宇宙観
• 当時、アリストテレスにのっとったプトレマイ
オス天文学は、天動説を採りながら天体の運動
をうまく説明するために、非常に複雑化
• 周転円、離心円などの導入
• しかし、惑星の軌道について完全な円にこだ
わったため、周転円を導入
• 依然として複雑なモデルに
地動説の難問
• 重い物体は、なぜ、地球の中心に向かうのか?
• 地球が東から西に回転しているならば、つねに
激しい東風にさらされているはず
• 地上のものはすべて遠心力で飛ばされるはず
• 真上に投げた物体は、落ちてくるまでに地面が
動く以上、ずれて落下するはず
アリストテレスにおける運動観
• 「あらゆるものの真中に太陽が座している。と
いうのは、一体誰が、この最も美しい神殿の中
、 体を 度 照らす
きる場所 は
で、全体を一度に照らすことができる場所とは
別の、あるいはもっと良い場所に、この炬火を
置けようか。」
• 「いわば王座に座すごとく、本当に太陽は周り
をめぐる星々の一族を統べ治めているのである。
(…)地球は太陽によって受胎し、年毎の出産
のために身籠るのである。」
(『コペルニクス・天球回転論』みすず書房, 1993, 38-39頁)
アリストテレスにおける運動観
• 運動・・・2種類
• 自然運動
・・・自分の本性に従ってひとりでに行う運動
e.g. 物体の落下
• 強制運動
・・・外部の力によって、本性に逆らって行う運動
e.g. ものを持ち上げる
アリストテレス的宇宙
• 物質・・・4元素から構成
天上界…完全な世界
• 火、空気、水、土
• 「擬人的思考」
• 完全な運動としての円運
動
• 全体として位置変化をし
ない
火
空気
月下界…不完全な世界
• 変化が絶えない
• 自然運動/強制運動
水
4元素の自然運動
(自然な場所に至ろうという
自然な傾向に従う)
土
ペトルス・アピアヌス『宇宙誌』(1539)
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望遠鏡の性能に対する評価
• 「(ガリレオは)何も成し遂げてはいない。20人以上
の学者がそこにいたが、だれも新しいものをはっきりと
確認することはできなかった。・・・視力のとくに優れ
たごく少数の者だけが、少し納得したにすぎなかった」
• 地上の光景に対して…すばらしく、かつ、有用
• 天上界に対して…無用、あるいは、「詐欺」
1612年6月26日のガリレオによる太陽黒点の観察
「太陽は「斑点もあるし完全に純粋ではない」」
(『太陽黒点にかんする第二書簡』(1613))
ガリレオの運動論
ニュートンの「万有引力」
• 天上の物体、地上の物体に共通する運動、普遍的な知識
• 「慣性の法則」
アイザック・ニュートン(16421727)
• コペルニクス以降の近代的な運動論
を体系化
「万有引力」の発見
• すべての物体に普遍的に働く力
「我、仮説を作らず」
遠心力
「近代科学」の特徴①
遠心力
重力
重力
• 天上界/月下界という区分の無効化
• 天上界/月下界を貫く同一の自然法則
• 月の運動と地上の物体の運動をうまく説明
月もリンゴも
同じメカニズムで説明
→「万有」引力
自然の「斉一性」
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魔術的自然観
• 武器軟膏、あるいは「共感の粉」
•
•
•
•
ケネルム・ディグビー卿(1603-65)…ロンドン王立協会会員
傷を負った兵士の治療;銃口やナイフに軟膏を
傷口と武器が50キロ離れていてもOK
17世紀半ばまで広範に利用
• パラケルスス(1493-1541)の自然観
• 遠隔的に作用する共感作用と反感関係が満ち溢れた自然界
• アブラナとブドウの反感関係(デラ・ポルタ)
機械論的自然観
• 機械仕掛けの時計の普及
• 13世紀末∼
• 14世紀中頃
ヨーロッパに登場
振り子時計が大都市では日常的に
• 機械をメタファーとする自然観
機械をメタ
とする自然観
• 「人間によって作られたにすぎない時計その他こ
の種の機械が、それにもかかわらず自分自身でさ
まざまなしかたで動く力を持っている」(ルネ・
デカルト)
• 「職工が作った機械と、自然によって作られた複
雑な物体とのあいだに区別はない」(デカルト)
• 「1つの時計仕掛けのようなもの」としての自然
界(ロバート・ボイル)
「近代科学」の特徴②
• 魔術的自然観の排除
• 「目的」論的説明
• 機械論的自然観
• 精巧な機械としての自然
• ロバート・フック(1635-1703)
科学と宗教
• 「自然という微小な機械」を見る
ための道具としての顕微鏡
• 『ミクログラフィア』(1665)
フックにとっての昆虫観察
• 神による創造を称える行為としての科学研究
• 「クジラや象の眼と同様に、これらの真珠の一つ一つには、大変な意
匠と構造のすばらしさがあるということ、神の命令によってどちらも
たやすく生じせしめられること、1日も1000年も神にとっては変
わらないように、1つの眼も1万個の眼も変わりなかろうというこ
と」(『ミクログラフィア』)
• 観察を通して、創造主としての神の存在を確認すると同時
に、神の存在の知恵についても確信を得ること
• 神の製作物としての自然
• 神が被造物をどのような仕組みで作ったか?
神の御言葉としての自然
• ガリレオ・ガリレイ
• 1632年、『天文対話』における地動説の主張に対して、検邪聖省に
より告訴、断罪
• 「それでも地球はまわっている…」
• 「『聖書』と自然の二つは、ともに等しく神の御言葉に発したもの
でありまして 前者は聖霊の命ずるままに書かれたものであり 後
でありまして、前者は聖霊の命ずるままに書かれたものであり、後
者は神の命令の忠実なる執行者であるからです。」(1613年12月21
日、カスッテリ神父あて書簡)
• ロバート・ボイル(1627-91)
• 「人体の諸部分の構造、用途、調和を学べば、彼は、この比類のな
い機関が、それを目指して設計されたあらゆる動きや機能を実現す
るために、非常に見事に考案されていることを知ることができるだ
ろう。」
機械論的自然観と創造主
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ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)
• 1564年、音楽教師の息子として誕生
• 父親・・・毛織物の売買にも携わる
• 1581年、ピサ大学入学
• 医学部進学を目指して
• 中退後、家庭教師により収入
中退後 家庭教師により収入
文化的営みとしての科学
• 1589年、ピサ大学・数学教授に就任
• 年棒60スクード(哲学教授 500;医学教授 2000)
• かたわらで、下宿の経営、学生への個人教授
• 1610年、トスカナ大公付き数学者兼哲学者に
• 1609年、教え子コジモ2世がトスカナ大公に
• それ以前から、首相ヴィンタへも働きかけ
アントワーヌ・ラヴォワジェ(1743-94)
• 「酸素」の発見
• 近代化学の基礎を作る
• パリ王立科学アカデミー会員
• 徴税請負人として生計を立てる
• その傍らでの科学研究
•
「毎日ラヴォワジェは、かれが責任をとっている新しい仕事に数時
間を犠牲にした。しかし科学のために、(・・・)かれは朝の6時に
起き、8時まで科学の研究をし、夕方にはまた7時から10時まで研
究した。そして一週に一日は間然に実験に集中した。それはたのし
い日だと彼はよく言ったものである。」
自前の実験室
•
マイケル・ファラデー(1791-1867)
• 電磁気現象・電気分解の研究
• 1791年 鍛冶工の息子として生まれる
年( 歳) 製本屋
徒弟修業
• 1804年(13歳)
製本屋で徒弟修業
• 1813年(22歳) 王立研究所の実験助手
として採用される
• 1825年(34歳) 王立研究所の実験室室長に
• 1833年(42歳) 同化学教授に(∼1862年)
• 1775- 王立火薬硝石廠
王立研究所の仕事(1)
• 1799年、ロンドンに科学の普及機関として設立
• 90人の貴族、ジェントルマンが出資
•
(1803年には357人に)
• 貴族・紳士淑女を対象とした一般講演
貴族 紳士淑女を対象とした 般講演
•
•
火、木の午後2時から1時間
月・水・金の午後8時から・・・科学を学ぶ学生のため
王立研究所での仕事(2)
• 一般講演がメインの仕事
• 私事としての科学研究
•
•
「私は科学の世界の世捨て人です。(・・・)一日中実験室に
いるのですが オリジナル研究をしているのではなくて 残念
いるのですが、オリジナル研究をしているのではなくて、残念
ながらごく普通の仕事をしているのです」(ファラデーの手
紙)
電磁誘導の発見も理事会記録には記されず
• 演示実験の重要性
6
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19世紀までの「科学者」たち
• 裕福な家庭に育った人々
• ダーウィン・・・領地の邸宅で著述に専念
• パトロンを見つけた人々
• アルキメデス・・・シンリー島のヒエロン王に仕える
リ 島
仕
• ガリレオ・・・トスカナ大公付き数学者兼哲学者
• 他の職業で生計を立てていた人々
• ラヴォワジェ・・・徴税請負人
• コペルニクス・・・聖堂参事会員
• フランクリン・・・市長
科学愛好者たちのネットワーク
• 1662年、ロンドン王立協会
•
•
•
•
「自然についての知識を改良するためのロンドン王立協会」
英国国王チャールズ2世による勅許状
自然の観察・実験を通して得た知見を持ち寄る場
1665年、『フィロソフィカル・トランザンクションズ(哲学紀
1665年 『フィロソフィカル トランザンクションズ(哲学紀
要)』誌の発刊
• 毎週水曜(か木曜)の午後遅くに会合
• 会員の会費により維持
科学愛好者たちのネットワーク
• 科学活動と意見交流の場としての学会
• 1603年、アカデミア・デイ・リンチェイ
• チェージ公(植物学者)が創設
• 発足時会員4人、のちに32人に
発足時会員4人 のちに32人に
• 1630年に消滅
• 1616年、アカデミア・デル・チメント
• メディチ家がパトロン
• 1626年に消滅
→パトロンが私邸に学者を招いて主催
• 小規模、私的・社交的な集まり
ロンドン王立協会会員の身分(1665年)
身分
人数
医師
26(11)
(活発な会員)
貴族
33(5) 大学教授
13(6)
政治家
37(7) 文官
11(3)
大地主
25(5) 商人
4(2)
法曹家
聖職者
4(3) 外国人
15(4) 不明
8
3
古川(2000), 59頁より作成
科学愛好者たちのネットワーク
• ロンドン王立協会の前身
• コーヒーハウスや個人宅で会合
• 社交活動の場としての王立協会
• 会合後の晩餐パーティー
• 公式の会合への提出前にコーヒーハ
ウスで議論
パリ王立科学アカデミー
• パリ王立科学アカデミー(1666年)の設立
• 政府による財政援助
• 科学と技術の公的諮問機関として
• 会員には棒給も・・・ただし、それで生計を立てられるほどでは
ない
e.g. 徴税請負人の仕事をしていたラヴォワジェ
• 定員・・・創設時20名、18世紀には約50名
7
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アマチュアの営みとしての科学
• 趣味を共有する者たちの集まりとしての学会
• 発見を報告し意見を交わすための社交的集まり
• 交流誌としての学会誌
• 必要資金はパトロンが提供するか、参加者たちの持ち
寄り
• さまざまな職業を持つ人々
• 余技としての科学研究
• 高尚な趣味
工学教育と職業科学者の誕生
• 科学の習得を基礎にすえた技術者教育
• それ以前・・・実地で培われたノウハウの集大成がベース
科学知識も必要だが副次的役割
• 教員として職業科学者が誕生
• 19世紀を通して、同種の技術系教育機関がドイツをはじめと
して各国に設立される
• ただしそれらは、大学とは別組織
科学にもとづいた技術の出現
• 職業的科学者の制度化
• かれらが担う科学研究
• 合成染料
• 1856年、イギリス人化学者パーキンによるアニリン染料
の発見
• 「モーヴ」
• 科学の産業化
• 化学工業
• 電気
フランス:技術者教育への参入
• フランス革命と諸体制の転換
• 国家技術者教育の再編成
:工兵学校、土木学校、鉱山学校など
→エコ ル・ポリテクニクに(1794年)
→エコール・ポリテクニクに(1794年)
• その中心を担ったのが、科学アカデミーの会員たち
• 教育プログラムのデザイン
• カリキュラムの編成
ドイツ:大学教育への参入
• ドイツにおける大学教育改革
• 1810年、ベルリン大学の設立
• 「教える自由」と「学ぶ自由」の二大原則を保障
• 実利主義的教育に対する反発としての、人格形成としての純粋学
問の探求
• 哲学部の台頭
cf. 法学部、医学部、神学部
• やはり、教員として職業的科学者が誕生
専門学会の設立
リンネ学会
地質学会
天文学会
気象学会
動物学会
地理学会
昆虫学会
植物学会
化学会
創立年
1788
1807
1820
1823
1826
1830
1833
1836
1841
会員数(1867年)
482
1100
528
306
2923
7352
208
2422
192
イギリスの専門学会
8
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専門分化する「科学」
• ヒューエル「科学者(scientist)」(1833年)
「数学者」、「化学者」、「博物学者」、「物理学者」など、それぞれの
分野の専門家をカバーするような名称として
• それ以前
•
•
•
「哲学者(philosophe)」、「学者(savant)」(仏)
「自然研究者(Naturforscher)」(独)
「哲学者(philosopher)」、「自然哲学者(natural philosopher)」、
「実験哲学者(experimental philosopher)」、「科学する人(man of
science)」(英)
など
• ウィリアム・ヒューエル
• 力学、鉱物学、地質学、天文学、建築学、政治経済学、神学、科学
の哲学、科学史など多岐にわたる才能
• 英国科学振興協会(BAAS)の会長、王立協会特別会員、地質学
会会長などを歴任
• チャールズ・ダーウィンやマイケル・ファラデーなどにアドバイス
「科学者(SCIENTIST)」という言葉
• なぜ「科学者(scientist)」という言葉が必要か?
• Science … loses all traces of unity. A curious illustration of this
result may be observed in the want of any name by which we
can designate the students of the knowledge of the material
world collectively. We are informed that this difficulty was felt
y oppressively
pp
y by
y the members of the British Association for
very
the Advancement of Science, at their meetings … in the last
three summers...
• Philosophers was felt to be too wide and too lofty)a term,..;
savans was rather assuming,..; some ingenious gentleman
proposed that, by analogy with artist, they might form scientist,
and added that there could be no scruple in making free with
this termination when we have such words as sciolist,
economist, and atheist but this was not generally palatable.
(Quarterly Review, 1834)
2つの大戦と科学者たち
• 第一次大戦「化学者の戦争」
• 毒ガスを兵器とする化学戦
• 偵察機・戦闘機・爆撃機などの開発
• 潜水艦探知技術
科学の体制化
• 第二次大戦「物理学者の戦争」
• 原爆開発
原爆開発への道
• 1939年8月2日、アインシュタイン書簡
• 原子力爆弾の実現可能性を指摘
• ナチスが原爆を開発する前に体制をくむ必要
• 同年10月21日、ウラン諮問委員会の設置
同年 月
ウ
諮問委員会 設置
• 1940年、イギリスにモード委員会設置
• 原子力爆弾の開発を検討
• 高濃縮ウラン爆弾
• アメリカに使節団を派遣 →直接の引き金
マンハッタン計画の始動
1941年2月、シカゴ大学内に「冶金研究所」の設置
核分裂反応をめぐる研究
1942年8月13日、「マンハッタン計画」の始動
1942年8月13日、
マンハッタン計画」の始動
原子爆弾開発のための総動員体制
スタンダード石油開発会社、ケロッグ社、ユニ
オン・カーバイド社などの民間企業や大学など
1943年 ロスアラモス研究所の立ち上げ
原爆開発を集中的に実施する施設として
9
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マンハッタン計画の展開
• ロスアラモス研究所の拡大
• 終戦時、民間人4000人以上、軍人2000人以上のまちに
• 核爆発実験の成功
• 1945年7月16日、アラモゴードの砂漠で人類史上初の核爆発実験
1945年7月16日 アラモゴ ドの砂漠で人類史上初の核爆発実験
1945年8月6日、広島への「リトルボーイ」の投下
8月9日、長崎への「ファットマン」の投下
8月15日、日本、ポツダム宣言の受諾、終戦
戦後、アメリカの科学技術政策
• アメリカ科学史上最大のプロジェクト
• 20億ドルの費用(現在の日本円で約2兆円)
• 大学、国立研究所、民間企業の研究所などから物理学者、化学
者、技術者、数学者など、多数の科学者、研究者が参加
• 数千人にのぼる軍人・軍属・その他公務員
• 65000人の労働者
• 科学研究の新しい役割
• 1944年11月7日、ルーズヴェルト大統領から
ヴァネバー・ブッシュ(1890-1974)への諮問
• 戦時、平時に科学知識はどのような貢献ができるか?
• 政府は研究を支援するために何ができるか?
• 優秀な科学人材を発掘するには?
科学―終わりなきフロンティア
• 1945年7月25日 報告書「科学−終わりなきフロンティア」
• 「科学研究の進歩は、私たちの国家の安全にとって重要な要素であ
り、国民の健康、仕事の創出、生活条件の向上、文化の発展の鍵を
握っている。」
• 「疾病に対する戦いの前進を左右するのは、新しい科学的知識をど
れだけ利用できるかにかかっている。新製品、新産業、新たな雇用
の創出に必要となるのもまた、自然法則に関する知識と、所定の目
的のもとでその法則を活用するための知識が、絶え間なく生み出さ
れることである。また、侵略に対する防衛を支えるのも、新しい兵
器、改良された兵器を開発するための新しい知識である。これらの
きわめて重要な新しい知識は、基礎科学の研究によってのみ獲得す
ることができる。」
参考文献
• 国家の命運を握る科学研究/国策としての科学研究
• 中山茂『パラダイムでたどる科学の歴史』ベレ出版、
2011年
• S.シェイピン(川田勝訳)『「科学革命」とは何だった
のか―新しい歴史観の試み』白水社、1998年
• ジョン・ヘンリー(東慎一郎訳)『17世紀科学革命』岩
波書店、2005年
• 古川安『科学の社会史―ルネサンスから20世紀まで〔増
訂版〕』南窓社、2000年
• 中根美知代ほか『科学の真理は永遠に不変なのだろうか
―サプライズの科学史入門』ベレ出版、2009年
• マイケル・モーズリー、ジョン・リンチ(久芳清彦訳)
『科学は歴史をどう変えてきたか―その力・証拠・情
熱』東京書籍、2011年
• 伊藤俊太郎ほか編『【縮刷版】科学史技術史辞典』弘文
堂、1994年
10
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