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洞察 洞察問題とは 9点問題 チェッカーボード問題 洞察の謎 洞察問題
洞察問題とは 洞察 • 通常のやり方では解くことができない • 非典型的 洞察問題とは 洞察の不思議 制約と洞察 洞察の個人差 – 領域知識はあまり役に立たない • 発想の転換を必要とする • 気づけば簡単 – 解決へのステップが長いわけではない 9点問題 洞察の謎 • 簡単なのになぜ出来ない – 答えを聞けば「なぁんだ」 • 失敗を繰り返す – なぜ失敗から学べない? • よい情報を無視する – なぜ近づいたゴールから遠ざかる? • なぜひらめく チェッカーボード問題 洞察問題解決のイメージ 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 漸進型問題解決 飛躍型問題解決 洞察(本当の?) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1 洞察への諸アプローチI • 試行錯誤説(Weisberg & Alba) – 通常の問題解決と何ら変わりない(固着,洞察などの 概念は不要). – 類似経験がないから解けない. • 活性拡散説(Ohlsoon,Anderson) – 不適切な問題表象から,不適切なオペレータが活性 化される. – 洞察には,再符号化,精緻化,制約緩和が必要. 制約 • 様々な可能性の中から、見込みのあるも のを選び出す傾向性 • 語意獲得 • 知覚 • 類推 など様々な分野で用いられている認知科学 上の概念。 洞察への諸アプローチII • 問題空間移行説(Kaplan & Simon) – 問題空間のshift. – Shiftは,外部情報(問題表現,ヒント)と内部情報 (ヒューリスティクス,領域知識)による. – 特に不変項の抽出ヒューリスティクスが重要. • 機会論説(Seifert et al.) – 失敗により特別な記憶表象が生成される. – たまたま,得られた外部情報にこの表象が反応して, 洞察に至る. 制約論(Knoblich) • 制約とチャンク分解 – 数字制約(IV → VI) – 演算子制約(+ → −) – 等号制約(= → +) • ルーズチャンク( IV → VI ) • タイトチャンク( X → V ) • 問題: – VI = VII + I – III = III + III • 課題固有の制約,緩和過程がない. 洞察の動的制約緩和理論 (鈴木・開,1997) 予習:ろうそく問題 • 問題解決の基本要素である対象、関係、ゴール を制約として表現する。 • 初期のインパスはこれらの制約の協調によって 生み出される。 • 失敗によって、これらの制約が徐々に緩和され る。 – 緩和は現在の試行とゴールとの間の誤差に基づく. • 各制約において特定の形で逸脱が生じたときに、 確率的に洞察がもたらされる。 2 対象レベルの制約 • 対象がカテゴライズされる際の制約。 • ものは様々なレベルでカテゴリー化される。 • しかし、一般的にはbasic levelでのカテゴリー 化が起こる(ただし,単一ではない)。 • 洞察問題解決においても、問題中の対象はこの レベルでカテゴリー化されやすい。 • ろうそく問題でいえば、箱は「箱」と認識され、 「平面を持つもの」とか、「物体」などという形では 認識されない。 ゴールの制約 • 問題解決のゴールは、途中の過程で行わ れる様々な試行に対して、フィードバックを 与える。 • 洞察問題解決においても、ゴールは同様 の役割を果たし、プロセスをあるときには impasseに導き、ある時には解へと導く。 • ゴールの制約は次のような形で表現する。 – ゴールの状態に対するイメージ – ゴールと現在の状態の差を計算する関数 制約緩和 • 初期のimpasseは対象レベル、関係レベルの制 約の協調による。 • 繰り返しimpasseに陥ることにより、徐々に制約 が緩和される。 • 制約に違反したカテゴリー化、関係づけがなさ れる確率が相対的に増加する。 • ある時点で適切なカテゴリー化、関係づけがなさ れることにより、適切なオペレータが起動し、洞 察にいたる。 関係レベルの制約 • 複数の対象の関係の仕方 • ある対象と別の対象は様々な形で関係を 持ちうる。 • しかし、人間は一般に対象の持つ最も顕 著な機能を用いて、それを他の対象と関係 づける。 • たとえば、ろうそく問題の箱ならば、他の対 象を中に入れるという関係で、画鋲ならば、 それを何かにさすという関係で他の対象と 関係づく。 図形パズルにおける各制約 • 対象レベルの制約 – 図形のカテゴリー化におけるbasic levelは、 その図形の標準的な置き方に対応する。 • 関係レベルの制約 – Tパズルのような図形パズルにおいては、関 係の制約はよい形を作るという制約となる(接 続の結果、生じる図形の総角数を最小にする ように)。 • ゴールの制約 – ゴールの状態に対するイメージ 個人差の3つの源泉 • 制約の初期値 – 洞察をする人は,はじめから制約が緩和されている. → そもそも頭のいい人,柔らかい人 • 試行の評価(誤差の検知) – 洞察を行う人は,自らの試行の評価が適切である. → モニタリングが優れている人. • 学習率(制約強度の更新率) – 洞察をする人は,評価によって制約強度(学習率)を 大きく変更する. → 柔軟な人 3 Tパズル 評定課題 Rate the closeness of the stimulus to the goal (10 point scale) R-O- R-O+ R+O- R+O+ X 3 = 12 仮説 • 仮説1(制約強度の初期値) – 洞察をする人は,問題解決の初期から制約を逸脱し た試行をより多く行う. • 仮説2(評価の適切性) – 洞察をする人は,評価課題において,より適切な評 価を行う. • 仮説3(学習率) 自力解決者とヒント解決者の パフォーマンス 平均 Min Max Median 384.9 189 573 445 42.7 23 70 39 918.8 629 1206 952 80.7 50 108 76 上段 下段 • 2分条件 ヒント puzzle rating puzzle 2分 10分 • 7分条件 ヒント puzzle – 洞察をする人は,評価課題後の試行において制約を より逸脱する. 自力 N=7 ヒント N=19 手続き 時間(秒) セグメント数 rating puzzle 7分 10分 制約初期値の違い • パズル開始から10セ グメントまでの試行を 分析した. • 対象制約の逸脱頻度 に,自力ーヒント解決 の違いが現れた. • 関係制約の逸脱は両 者で差はなし. 40 35 30 25 自力解決者 ヒント解決者 20 15 10 5 0 対象制約 関係制約 4 評定の適切性の差 • 分散分析の結果,各制 約の主効果,および対象 制約と群の交互作用傾 向. • R+O+図形について,自 力解決者は高く評定を行 う. • 見込みのある図形に対し て高い評価を行う(見込 みのないものについては 同様). 自力 制約強度の更新率 その1 ヒント 5 4 • ヒント解決群: 3 – 対象制約の逸脱の頻 度の上昇が見られた. 2 1 0 • 自力解決群: – 対象,関係の制約の 逸脱頻度の上昇が見 られた. 6 R+O+ R+O- R-O+ R-O- 制約強度の更新率 その2 • 自力解決者と同等の評定課題パフォーマンスの もの5名は,評定課題後に逸脱頻度の上昇が見 られる. – 対象制約:18→30 – 関係制約:22→38 • なぜ,適切な評定を行うヒント解決者にヒントが 必要か? • これらのヒント解決者の評定後の逸脱頻度(対 象:30%,関係38%)は,自力解決者の初期値 (対象:28%,関係:36%)程度にとどまる. いくつかの問題 – 2分群と7分群では,評定前の試行に2.5倍程度の 差がある. – だとすれば,7分群はより制約が緩和されているはず であり,評定値に差がでなければおかしい. – なぜ2分と7分では評定値に差がでなかったか. – ゴールの利用のしやすさ • 被験者には実際に構成されるTを1/4に縮小した用紙が与 えられた. • 重ね合わせることができない. • これによって試行の評価が適切に行われなかった可能性が ある. • しかし,これは評価の 適切さの反映かもし れない. 自力 ヒント 70 60 50 40 30 20 10 0 前 後 対象制約 前 後 関係制約 洞察の個人差のストーリー • 自力解決者: – 初期から制約(特に対象)が緩和されており,逸脱を 繰り返す. – 偶然に行った適切な試行を適切に評価する. – 制約(特に関係)をさらに緩和する.→ Aha! • ヒント解決者: – そもそも固定した制約にとらわれる. – 適切な試行の評価がうまくない. – 失敗により徐々に制約を緩和するが,微々たるもの. → ヒントください. ゴール制約実験 • 構成されるTと同寸のTが印字されている型紙を 与え,かつピースのうちの一つをその上に固定 した. • 被験者には残りの3つのピースでこの型紙を埋 め尽くすようにと教示した. • 被験者40名を – 固定図形の種類(3) – 型紙の有無(2) – の6つの群に分けた。 • 15分経って解けない場合は、ヒントを与えた。 5 Proportion of the subjects ゴール制約実験の結果 解決時間 Template no-Template 100 80 60 40 20 0 5min 10min 15min hint Time more Figure 1. Proportion of the subjects solved within a given time. 6