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LTE-Advancedの概要と標準化動向

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LTE-Advancedの概要と標準化動向
グローバルスタンダード最前線
LTE-Advancedの概要と標準化動向
あ
べ
た
さだゆき
あ
べ
て つ し なかむら たけひろ
安部田 貞行 /阿部 哲士 /中村 武宏
NTTドコモ
ここでは2010年10月にITU-R
導入できるよう,LTEのさらなる高機
の後継システムとしてIMT-Advanced
(International Telecommunication
能化をLTE Rel.9の標準化で推進して
の標 準 化 が進 められており, L T E -
Union-Radiocommunication Sector)
きました.2010年春に完成したLTE
AdvancedはIMT-Advancedの無線
におけるIMT(International Mobile
Rel.9では,Home eNodeB機能の拡
インタフェースとして,ITU-Rにて承
Telecommunications)-Advanced
張,ネットワーク自己最適化機能の拡
認されることが求められました.この
の1つとして承認されましたLTE-
張,位置情報サービスや同報配信サー
ため, L T E - A d v a n c e d は, I M T -
Advancedの標準化経緯および技術の
ビス(MBMS: Multimedia Broad-
A d v a n c e d の最 小 要 求 条 件 をI M T -
概要について解説します.
cast and Multicast Service)など
Advanced標準化のタイムプラン内に
(3)
の新規機能が提供されています .
LTE導入から
LTE-Advancedに向けて
実現することが要求されました.
そしてNTTドコモは,今後スマート
LTE-Advanced
標準化スケジュール
フォンのさらなる普及に伴うデータト
NTTドコモでは,無線ネットワーク
ラフィックの急増に加えて,ソーシャ
の高速化,高機能化,経済化を実現
ルメディア,ビデオストリーミングサー
I T U - R のI M T - A d v a n c e d および
するため, 3GPP( Third Genera-
ビスなどの普及により一層増すことが
3GPPのLTE-Advancedの標準化ス
tion Partnership Project)* 1 にお
予想されるトラフィックの需要にタイ
ケジュールを図1に示します.ITU-R
いて2 0 0 9 年 春 に標 準 化 が完 了 した
ムリにこたえるべく,無線アクセスネッ
では,2007年11月に開催されました
LTE Release8( LTE Rel.8) 仕 様
トワークのさらなるシステム性能の向
WRC-07( World Radiocommuni-
に基づく移動通信システムの商用サー
上 を目 指 して, L T E - A d v a n c e d
cation Conference 2007)において
ビスを“Xi(クロッシィ)”というブラ
(LTE Rel.10 and beyond)の標準
IMT用の新たな周波数帯が特定され,
( 1)
ンド名で2010年12月より開始してい
化 を推 進 しています. 3 G P P では,
2008年3月にはIMT-Advancedの要
ます.LTE Rel.8は,直交マルチアク
2008年3月にNTTドコモがラポータ
求条件および評価条件(5),(6) ととも
を務 めたL T E - A d v a n c e d のS I
に, I M T - A d v a n c e d の無 線 インタ
セス,周波数領域スケジューリング,
MIMO(Multiple-Input Multiple*2
Output)
などの高度な無線インタ
フェース技 術 を採 用 し, H S P A
(3)
(Study Item)
が承認され,その後
フェースの提案を募集するサーキュラ
の標準化作業を経てLTE Rel.10の詳
レター* 4 が発 出 されました( 7 ) , ( 8 ).
細仕様が策定されました.
3GPPでは,ITU-Rからのサーキュラ
(High Speed Packet Access)に比
LTE-Advancedは,LTE Rel.8に
レターの発出を契機として,2008年3
べてさらに高いシステム容量およびセ
対してさらに高いシステム性能を実現
月 にL T E - A d v a n c e d の無 線 インタ
ル端ユーザスループットを実現すると
することに加え,LTE Rel.8からのス
ともに,伝送遅延および接続遅延を大
ムーズなシステム展開を可能にするた
幅に低減するなど,システム性能を大
めに,LTE Rel.8とのバックワードコ
きく改善しています(2).NTTドコモは,
ンパチビリティ*3を保つことが重要な
その基本コンセプト提案から仕様完成
要 求 条 件 とされています( 4 ). 一 方 ,
に至るまで,3GPPにおいてLTE標準
ITU-R( International Telecommu-
化推進の中心的役割を担ってきまし
nication Union-Radiocommunication
た.また,将来LTEを用いてユーザの
Sector)では,IMT(International
需要に応じた多様なサービスを安価に
Mobile Telecommunications)-2000
*1
*2
*3
*4
3GPP:第3世代携帯電話(3G)システム
の仕様の検討・作成を行うプロジェクト.
MIMO:複数のアンテナを組み合わせて
データの送受信の帯域を広げる無線通信
技術.
バックワードコンパチビリティ:通信機器
やソフトウェアなどの製品のバージョンが
上がった際における,以前のバージョンと
の互換性.
サーキュラレター:加盟している国の主管
庁や企業,団体などのメンバに対する連絡
事項を記した文書.
NTT技術ジャーナル 2011.11
51
グローバルスタンダード最前線
2007年
2008年
ITU-R WP5D
No.1
No.2
2009年
No.3 No.4
No.5
2010年
No.6 No.7
No.8
2011年
No.9 No.10
無線インタフェース候補技術の開発
サーキュラ
提案募集
レター発出
ITU
WRC-07
評価
コンセンサス形成
IMT-Advanced
提案募集
IMT-Advanced提案
無線インタフェース勧告作成
LTE-Advaced
無線インタフェース仕様提出
3GPP RAN
3GPP
#38 #39 #40 #41 #42 #43 #44 #45 #46 #47 #48 #49 ワークショップ
第2回ワークショップ
LTE-Advanced
LTE
SI
WI
安定化
図1 IMT-Advanced(ITU)と LTE-Advanced(3GPP)の標準化スケジュール
フェースの基本検討(SI)が開始さ
(4)
れ
,LTE-Advancedの要求条件お
LTE-Advancedの無線インタフェー
スの詳細仕様の検討作業(WI: Work
よび 評 価 条 件 が規 定 されました( 9 ).
Item)が開始され,2011年6月まで
その後,L T E - A d v a n c e d の無線イン
に符号化レベルを含む詳細仕様が完成
タフェース技 術 の検 討 が進 められ,
しました.
(10)
た
LTE-Advancedでは上記要求条件
を満たすために,LTE Rel.8をベース
として以下に示すような無線インタ
2 0 0 9 年 1 0 月 にはI T U - R に対 して
LTE- Advancedの提案が行われまし
LTE-Advanced
システム概要
3GPPにおける
LTE-Advancedの要求条件
フェース技術のさらなる高度化が検討
されました.
.この際,3GPPの自己評価結
■Carrier Aggregation(CA)
果において,LTE-AdvancedはIMT-
LTE-Advancedは, LTE Rel.8か
Advancedのすべての要求条件を満足
らのスムーズなシステム展開を可能にす
LTE Rel.8では最大20 MHzまでの
することが示されています.その後,外
るために,LTE Rel.8とのバックワード
帯域幅をサポートすることにより下り
部団体の評価結果などを基に,LTE-
コンパチビリティを保つことが重要な要
リンクで最大300 Mbit/sを実現して
Advancedは2010年10月のITU-Rの
求条件とされました.なおかつLTE
いますが,LTE-Advancedでは,表
Working Party(WP)5D会合にお
Rel.8およびITU-R IMT-Advancedの
のピークデータレートの向上も要求条
いて,IMT-Advancedの無線インタ
最低要求条件より高いシステム性能を
件の1つであり,さらなる広帯域化が
フェースの1つとすることが決定され
(1)
ました
.
3 G P P では2 0 0 9 年 1 2 月 からは,
52
NTT技術ジャーナル 2011.11
(2)
実現することが要求されたのです .
必 要 とされました. 一 方 でL T E -
LTE Rel.8の 性 能 お よ び LTE-
Advancedは,LTE Rel.8とのバック
Advancedの要求条件を表に示します.
ワードコンパチビリティも確保する必
■マルチアンテナ技術の高度化
要があります.そこで,LTE Rel.8が
図2のように広帯域化によるさらなる
サポートする帯域幅のCC(Compo-
高速化を実現するとともに,Rel.8/9
LTE Rel.8では,下りリンクで最大
nent Carrier)と呼ばれる周波数ブ
端末とRel.10端末を同一周波数およ
4レイヤまでのシングルユーザMIMO
ロックを複数組み合わせることにより,
(3)
び時間内でサポートします .
多重がサポートされており,上りリン
クではMIMO多重はサポートされてい
ません.LTE-Advancedでは,表の
表 3GPPにおけるLTE-Advancedの要求条件
最大伝送レート(bit/s)
ピーク周波数利用効率(bit/s/Hz)
LTE-Advanced
下りリンク
300 M
1G
上りリンク
75 M
500 M
すため,下りリンクを最大8レイヤに
下りリンク
15
30
拡張し,上りリンクで最大4レイヤの
上りリンク
3.75
15
シングルユーザMIMO多重をサポート
2x2
1.69
2.4
します.また,システム容量を向上さ
4x2
1.87
2.6
せるため,マルチユーザMIMOが高度
4x4
2.67
3.7
化されています.Rel.11に向けては,
1x2
0.74
1.2
2x4
−
2.0
2x2
0.05
0.07
4x2
0.06
0.09
4x4
0.08
0.12
1x2
0.02
0.04
Point)送受信の仕様化に向けた検討
2x4
−
0.07
も行われています.
下りリンク
※
周波数利用効率
(bit/s/Hz/cell)
上りリンク
セル端ユーザスループット
(bit/s/Hz/cell/user)
※
ピーク周波数利用効率(Peak Spec-
LTE Rel.8
下りリンク
上りリンク
tral Efficiency)の要求条件を満た
特にセル端ユーザスループットを改善
するため,図3に示すような複数のセ
ル間で協調して送受信を行うセル間協
調(CoMP: Coordinated Multiple
※ 3GPP Case 1における性能
広帯域化
Rel.8/9
1.4 MHz
・・・
周波数
5 MHz
Rel.10
CC
20 MHz
・・・
周波数
周波数
周波数
Rel.8
Rel.10
Rel.8端末
Rel.10端末
図2 CA による広帯域化
NTT技術ジャーナル 2011.11
53
グローバルスタンダード最前線
マクロ
端末
ピコ
リレー
フェムト
セル
インターネット
コアネットワーク
図4 Heterogeneous Network
図3 CoMP
アクセスリンク
端末
時分割多重
セルID #y
上位ノード
基地局
バックホールリンク
アクセスリンク
端末
リレーノード
図5 Relay Network
■Heterogeneous Networkに お
間干渉コーディネーション技術が導入
けるセル間干渉コーディネーション
されました.
LTE-Advancedでは,無線アクセ
■Relay Network
スネットワークを低コストで性能改善
LTE-Advancedでは,特に有線伝
させることも重要な要求条件の1つで
送路が高価な環境において低コストに
す.そこで,図4に示すように従来の
カバレッジを拡 大 する方 法 として,
マクロセル中心の構成に加え,ピコ,
バックホールを無線で構成するリレー
フェムト基地局などの送信電力の異な
伝送方式が仕様として規定されていま
るさまざまな形態の基地局をオーバレ
す(図5).
イさせた,Heterogeneous Network
と呼ばれるネットワーク構成が注目さ
れており,これら基地局間で連携して
干渉制御することにより,高効率に無
線容量やセル端性能の改善を図るセル
54
NTT技術ジャーナル 2011.11
■参考文献
(1) 3GPP TS 36.300:“Evolved Universal Terrestrial
Radio Access (E-UTRA) and Evolved Universal
Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN);
Overall description;Stage 2,
”2009.
(2) 3GPP TR 25.912:“Feasibility study for
evolved Universal Terrestrial Radio Access
(UTRA) and Universal Terrestrial Radio
Access Network (UTRAN),
”2008.
(3) 3GPP TD RP-080137:“Proposed SID on
LTE-Advanced,”2008.
(4) 3GPP TR 36.913:“Requirements for further
advancements for Evolved Universal
Terrestrial Radio Access (E-UTRA) (LTEAdvanced),
”2009.
(5) ITU-R Report M.2134: “ Requirements
related to technical performance for IMTAdvanced radio interface(s),”2008.
(6) ITU-R Report M.2135: “ Guidelines for
evaluation of radio interface technologies for
IMT-Advanced,”2008.
(7) ITU-R Conference Publications:“Final Acts
WRC-07,
”Geneva,2007.
(8) ITU-R Document IMT-ADV/1:“Background
on IMT-Advanced,”2008.
(9) 3GPP TR 36.814:“Further Advancements
for E-UTRA Physical Layer Aspects,”2009.
(10)ITU-R Document 5D/564: “ Complete
submission of 3GPP LTE Release 10 and
beyond (LTE-Advanced) under Step 3 of the
IMT-Advanced process,”2009.
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