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海外の映像産業振興政策(1) 【米国】(第9章)
2013/10/5 特殊講義「コンテンツ政策」 第2回:米国 2013.10.4 宿南達志郎 本日の講義 目次 • 1.映画制作・ロケーションのCA離れ – Film ProductionのHollywood離れ – Hungaryのロケーション誘致 • 2.Part1:「ミネタ報告」の概要 • 3.Part2:第9章「アメリカのフィルム政策」 1 2013/10/5 Part1:CNN News Video • Hollywood is losing its production grip(2012.9) – http://edition.cnn.com/video/?/video/showbiz/20 12/09/22/wynter‐los‐angeles‐production‐ decline.cnn&iref=videosearch • How movies help boost tourism(2012.7) – http://edition.cnn.com/video/?/video/showbiz/20 12/07/13/durgahee‐hungary‐ hollywood.cnn&iref=videosearch LA違い • Battle:Los Angeles:2011 – http://www.youtube.com/watch?v=ORb3zC8z94w – 邦題: 世界侵略: ロサンゼルス決戦 – Louisianna州(略称LA)のBaton Rouge(州都)及びShreveport (北西部)でロケーション – Louisiannaの誘致インセンティブが大きかった • 日本での興行 – 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震を受け、ソ ニー・ピクチャーズ エンタテインメントと興行各社は4月1日に予 定されていた日本における公開を延期すると発表した。 – その後2011年9月17日から公開した。 – 興行収入は7.5億円(25位)と振るわず。 2 2013/10/5 モスクワのはずがハンガリー • A Good Day to Die Hard(2013) – 邦題:ダイ・ハード/ラスト・デイ – http://www.youtube.com/watch?v=Kjf4Sy2uzKw – 日本での興行収入は20億円(14位) – 世界興行収入は305億円(7位) – カーアクションに約10億円かかり、132台が廃車 (しかもベンツは無料提供) Part2:ミネタ報告 • Locationなど映画制作活動の海外流出の状 況 – 海外制作:14%、30本(90年)⇒27%、139本(98 年) – 流出額:$2Billion(90年)⇒$10Billion(98年) – 主な流出先はカナダ:122本(98年)⇒154本(99 年)・・・$3.5Billion – 流出するきっかけは、経費(economic)>創作 (creative) • インフレ率が低い、為替レートが安いなど 3 2013/10/5 • ロケなどの海外流出で米国(各州)にはどの ようなマイナスがあるか? – 雇用:(直接)撮影スタッフ、(間接)ホテル、レスト ランなど – 地域経済:(間接)撮影クルー関連、ロケ地観光 など – 税収: (直接)スタッフの所得税、(間接)ホテル、 レストランなどの所得税 • 海外の誘致政策(Tax Incentiveなど)はどのよ うになっているか – 国産限定とオープン – FederalとStates – インセンティブの例 • • • • 賃金の一部(11%等)をTax Credit 制作コストの一部(12%等)をTax Credit 格安のローン マーケティングファンド 4 2013/10/5 • 海外流出を止めるためには、何をすべきか? – 連邦もインセンティブを提供すべきか? – 州の政策で何が足りない? • インセンティブ積極派 – 海外との誘致合戦に勝てるレベルまで強化すべ き • インセンティブ懐疑派 – 効果も小さいし、財政も逼迫しているので、廃止 あるいは削減を • 海外(Hollywood外)流出に関するその後の 調査・研究状況は次回に詳しくやります。 – 研究者: Robert Tannenwald – 業界団体: MPAA – 地域組織: Economic Impact Study (LAEDC)、 Headway project – EUなど 5 2013/10/5 Part2:アメリカのフィルム政策 • 『映像コンテンツ産業とフィルム政策』 第9章 – 慶應義塾大学 菅谷実 (1)連邦政府と州政府、ツールとして の税制優遇 • 米国の文化政策の特徴 – 税制優遇、寄付金>>補助金 – 州、地方、個人の貢献>>連邦 • 連邦の政策 – 産業の国際競争力の維持・向上に主眼 – 外交交渉(貿易障壁を無くすなど)も強い競争力 の維持に有効 • 但し、ハリウッドの国外流出の懸念は消えない 6 2013/10/5 • 州や地方政府の政策 – 産業活性化や観光への波及効果に関心高い – 売上税率は各州で決定できる – 税制優遇などの政策で、米国内の各州や海外の国 との競争 • 米国の税制優遇 – 連邦:雇用促進法(2004)で、小規模映画とテレビ番 組の製作投資、人件費支出を所得控除の対象に – 州:40以上の州で優遇措置。 • ルイジアナ州の例:税制優遇(売上税、投資、人件費の所 得控除)が幅広く、譲渡も可能なのが評価されている • Louisiana Motion Picture Incentive Act(1990年、2005年改 正) • 世界的な制度競争 – カナダ、ドイツ(各州)、UK、EU、中東、アジアなど – アメリカ・フィルム・マーケット、カンヌ・マルシェ、 ベルリンEFMなどで誘致競争 7 2013/10/5 (2)American Film Institute • 全米芸術文化基金(NEAH)が推奨、MPAAと フォード財団が出資して設立(1967) – NEAHは連邦から運営費を得ている • President Johnson – AFIを設立するのは、映画を率いるアーティストと 卓越した教育者、そして映画という20世紀の芸術 形式を天職として全うしたいという若者たちを結 びつけるためである • 歴史的背景 – Before TV・・・国家の支援なしに発展 – 第二次大戦後(After TV)(‘50s) • テレビの登場で倒産企業が相次ぐ • 赤狩り(マッカーシー上院議員)・・・公聴会で黙秘した10人の映画 関係者が投獄された – 国際化の波(‘60s) • 海外でのロケーション撮影や製作 • →スタジオも斜陽に • トリュフォーやゴダールなどの新しい映画手法に脚光 – 政界、業界、映画人によるハリウッドの再生・発展へ • 初代理事長:グレゴリーペック • 副理事長:シドニー・ポアティエ、フランシス・コッポラ 8 2013/10/5 • 活動 – 事業収入(2005)・・・3260万ドル(連邦助成金は40 万ドル) – 連邦からの助成金は少ないが、財政赤字にも関 わらず維持されていることに注目 – 実務家向けの教育訓練、過去の名作の保存、映 像文化の啓発 • 教育訓練:1050万ドル、映画の保存:78万ドル、展示: 840万ドル、各種プログラム:840万ドル – AFI Conservatory(専門職大学院) • USC、NYU、Columbia Uに並ぶ評価 • 6つの課程(学年定員140名) – 撮影技術者、監督、プロデューサー、脚本、編集、美術デザ イン – 出願時には映像Videoの提出を義務付け – 業界関係者から直接トレーニングを受けられる • 卒業生 – デビッドリンチ「エレファント・マン」 – ポール・シュレーダー「タクシー・ドライバー」 – テレンス・マリック「シン・レッド・ライン」 9 2013/10/5 – AFIスクリーン・エデュケーション・プログラム • 高校生向けに映像技術を学ぶ教材を提供 • 制作プロセス、共同作業の重要性などを体得 • 教材は教師がオンラインで入手 – AFIが選ぶ映画100年(1998年‐) • 毎年10ジャンルから10作品を選定 – 生涯功労賞(Lifetime Achievement Award) – 保存活動 • 連邦議会図書館に27500タイトルの映画Archive • AFIカタログ・・・キーワード検索可能 – 監督、撮影クルー、俳優、原作、脚本の元ネタ、音楽、詳細な筋 書き、情報源など (3)各州におけるフィルム・コミッション 活動 ① California ② New York ③ Hawaii ④ まとめ 10 2013/10/5 ①California • 劇場映画とテレビ映画の8割を製作 • 情報産業に占める割合 – 収入の5分の1、雇用の11~15% • Motion Picture, Television, and Commercial Industries Act of 1984 – 州政府が率先して産業の保護・育成 – LAにCalifornia Film Commission(CFC)の設立 • 20名のスタッフ、トップ2名は知事が任命 – Film Liaisons in California, Statewide(FLICS)を設立 • 各地のコミッションへの情報提供(資料センター)や製作会 社からの問い合わせ窓口 • The State Theatrical Arts Resources Partnership(2000.9) – 政府所有の施設で現在使用されていない施設を 使用料なしで提供 • Film California First(2001.1) – 映画撮影の際に雇用する人件費への補助 • ハイウェイ・パトロール、州立公園の監視員、連邦政府 職員等 11 2013/10/5 • 市のコミッション(San Joseの例) – Film and Video Commission • 市のホテル税で運営される組織内に • 4名の専任者(2002年には2名に削減) • 撮影場所に関する相談、ニュースレター(25ドルの寄 付で会員に)、フィルム・フェスティバル、宿泊先の紹介 など • 警察官の雇用、道路占用、駐車許可、保険、公共施 設(公園、消防、空港等)の情報提供 – Convention & Visitors Bureauと協力 • しかし、2012年の現実は・・・ • ハリウッドの没落 – TVドラマ23本のうち、わずか2本がハリウッ ドで – 収入もかつての8割から29%に激減 – →問題は、市(州)が国内・国外との誘致イ ンセンティブ競争から脱落したこと。 • (CNN 2012.09.23 7:00am) 12 2013/10/5 ②New York • New York Cityの例 – 大ヒット作のロケ地 • ゴッド・ファーザー、タクシー・ドライバー、メン・イン・ブ ラックなど – The City of New York Mayor’s Office of Film, Theater and Broadcasting(MOFTB) • 市長直属の機関 • ロケーションの誘致 – 映画、CM、Music Video、ドラマ、テレビ番組など • ワンストップ・ショッピング機能 • MOFTB(1967) – 設立前は50以上の申請書を各組織に提出 • 産業局、商務局、市警、道路局、水道・電気・ガス局、公園 管理局など • 舞台がNYでも撮影はLAだったりした – John Linseyの選挙公約(1966)で、商務局に一本化 • 映画やテレビ番組製作が市に来れば来るほど、市民の雇 用が増え、財政的に健全な市になれる • →1966年にはロケが2倍に。2000万ドルの経済効果。 – NYCには映像製作関連の雇用が10万人、50億ドルの 経済効果 • 映像関連ビジネス、ホテルやレストランなど 13 2013/10/5 • NYCの取組 – ロケの24時間前までに許可申請 – NYPDともMOFTBが交渉、現地でも協力 – The Made in New York Incentive Program 番組製作の75%を実施した場合の優遇措置 NY州税の30%還元 NY市税の5%還元 広告費の支援(製作費の1%):公共交通機関、TV、ラ ジオ • Made in New York Discount Cardの発行:811の業者 • コンシェルジェサービス:ストーリー企画など • • • • – 様々な情報提供 • 市内のスタジオ、エンタメ業界などの連絡先 • ゴミのリサイクル方法、 • 18歳以下の出演者や身障者の雇用申請先 – 2001年の911事件以降大幅に低下した撮影日数 だったが、2003年以降急激に回復し、2007年に は34,718日を記録した。 14 2013/10/5 ③Hawaii • 最初のハリウッド映画撮影は1913年 – Hawaiian Love and The Shark God – 1945年まで:33本 – 1950年代:33本 – 1960年代:34本 – 1970年代:24本 – 1980年代:23本 – 1990年代:60本 • 「ジュラシック・パーク」(1992年、カウアイ島) • 「ジュラシック・パークIII」(2000年、カウアイ、 オアフ、モロカイ島) • テレビドラマ:「ハワイ50」(CBS)<1968‐80、オ アフ島> • 日本のドラマ:「ホテル」(TBS)<1998> – 2001年:日本から110件の撮影 • テレビ番組42件、CM29件など 15 2013/10/5 • Hawaii Film Office(州政府、ビジネス・経済開 発・産業局)(1968) – 各島にも、市や郡のフィルム・コミッションあり – 地方政府が支えている – 「ハワイ50」のロケ支援のために設立。スタッフは 1名から始まり、その後4‐6人体制に充実。 – 雇用の拡大:俳優組合(Screen Actors Guild)ハワ イ支部に700人が登録 • 州政府がスタジオ(Hawaii Film Studio)建設 – 1970年代に第1スタジオ、1994年に第2スタジオ、1999年 には撮影用の水槽も増設、更に追加? – 州が保有するのは稀 – 公共施設のみならず、私有施設についても情報提供 • Hawaii International Film Association(HIFA) (1989) – 海外と関連する、映画業界の24社(制作、広告、モデル 等) – 会員会社、政府機関、労働組合、一般市民の情報交換 – 海外からの撮影に必要なVisaや撮影許可に便宜 16 2013/10/5 • 税制優遇の対象 – 製作費への間接税(4%) – ホテル宿泊税(7.25%) • 控除率は、タイトルにハワイが使用されてい れば100%、その他は75%以下。 – 現地スタッフ雇用率、支出総額、シリーズ化など により控除率は異なる • 映画教育 • ハワイ大学: – 演劇学部(Department of Theater and Dance) – 「Academy for Creative Media」(2004) • Cinema and Digital Production • Computer Animation and Game Design • Critical Studies 17 2013/10/5 • 州政府、州議会が映画撮影関連投資に積極 的 – 強み:米国唯一の熱帯州、LAとの距離が近い – 弱み:コスト高(カナダに敗北の例) – →弱みを克服するために、税制優遇等を充実 ④まとめ • 誘致競争の国際化への対応 – カナダ、オーストラリアなどの国との対抗 – 「ライン下」関連が中心 – 経費節減のため「ライン下」経費の安い地域を選 択し、脚本の書き直しすら厭わない傾向 • 政府が介入した競争 – 米国経済(自由競争が基本)における「政府と企 業」の新たな関係作り 18