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辞書を編む
辞書を編む 飯間浩明著 光文社 2013(光文社新書) 文学部教授 野 口 武 悟 多くのみなさんにとって、 本 は「 読む」 ものとして こうした地 味な レファレンスツール の1つである 認識されていることだろう。 この冊子も 「教員がすすめる 国語辞書がどのように編纂されているのかを紹介して 読めば 読むほど 味のでる本 」 と副 題にあるように、 いるのが、飯 間 浩 明 著『 辞 書を編む』 (光文社新書 やはり、 「 読む」ための 本 を紹介している。 635) ( 光文社、2013年) ( 以下、本書)である。著者の しかし、本 のなかには、 「 調べる」ために作られた 飯間さんは、 『三省堂国語辞典』 の編纂者(編集委員) 本 も存在している。例えば、国語辞書や百科事典、 の1 人であり、本 書ではこの『 三 省 堂 国 語 辞 典 』を 図 鑑などである。 こうした 本 のことを図 書 館では、 例にして国語辞書の編纂プロセス (編集方針、用例 レファレンスツール と呼んでいる。レファレンスツール は 採 集 、取 捨 選 択 、語 釈 、手 入れ)が具 体 的に詳しく 地 味 過ぎて、ややもすると忘れられがちであるが 、 語られている。本 書を「 読む」ことで、 レファレンス みなさんの学習や日常生活には欠かすことのできない ツール の想像以上の奥深さに魅了されること間違い 存在である。 なしである。将 来 、出 版 界を目指したい 学 生には、 レファレンスツール が地 味な存 在であることは、 作り手である出 版 界のなかにおいても同じである。 12 特にお勧めしたい。 なお、 本書のタイトル 『辞書を編む』 は、 三浦しをん著 だが、地 味といっても、そこに否 定 的なニュアンスは 『舟を編む』 ( 光文社、2011年) を意識しているという 含まれない。 なぜならば、出版社にとって、レファレンス (本書、p.265)。 『舟を編む』は国語辞書の編集部を ツール は一 度出版されれば、安 定 的に売れ続ける 『 舟を 描いた小 説で、2 0 1 3 年には映 画 化もされた。 類いの商品だからである。 編む』 も、本書とあわせて読んでほしい1冊である。