...

第1 - JICA報告書PDF版

by user

on
Category: Documents
80

views

Report

Comments

Transcript

第1 - JICA報告書PDF版
アフガニスタン・イスラム共和国
ナンガルハール帰還民支援プロジェクト
協力準備調査(第1回)報告書
平成 21 年 12 月
( 2009 年 )
独立行政法人国際協力機構
南アジア部
南 ア
JR
09-016
アフガニスタン・イスラム共和国
ナンガルハール帰還民支援プロジェクト
協力準備調査(第1回)報告書
平成 21 年 12 月
( 2009 年 )
独立行政法人国際協力機構
南アジア部
目
地
次
図
略語集
第1章
調査の概要 ·································································· 1
1−1
調査の背景 ································································ 1
1−2
調査の目的 ································································ 1
1−3
調査の対象村落 ···························································· 1
1−4
調査の日程 ································································ 2
1−5
調査団の構成 ······························································ 2
第2章
調査結果 ···································································· 3
2−1
プロジェクト関係者の分析/ナンガルハール州の体制 ·························· 3
2−2
村落現地調査結果 ························································· 10
2−3
現地業者(建設業者・NGO) ·············································· 10
2−4
UNHCR連携 ······························································ 11
2−5
JICA既存プロジェクトとの連携············································· 11
第3章
今後の対応方針 ····························································· 13
3−1
プロジェクト実施体制 ····················································· 13
3−2
カウンターパート機関 ····················································· 15
3−3
インフラ整備要望リスト ··················································· 16
3−4
草の根・人間の安全保障支援無償案件との連携 ······························· 17
第2章
4−1
所感 ······································································· 18
団長所感 ································································· 18
付属資料
1.調査団日程 ··································································· 23
2.村落現地調査概要 ····························································· 25
3.村落現地調査結果表 ··························································· 33
4.ジャララバードの建設業者及びNGO調査報告 ···································· 37
5.UNHCR連携合意文書案 ························································ 41
6.草の根・人間の安全保障支援無償申請予定事業リスト ····························· 44
7.主要面談者リスト ····························································· 45
8.会議議事録 ··································································· 47
9.州開発計画 ··································································· 82
10.郡開発計画 ··································································· 84
11.村落開発計画 ································································· 88
12.州教育局学校建設計画(2008年度) ············································· 94
13.州公衆衛生局診療所建設計画(2009年度) ······································· 96
Surkhrod District: 5 villages
Balabagh
Fatehabad
Sultan Pur
Upper
Charbagh
Sultan Pur
Lower
Meran
Khoshgombat
Ada
Akhundzada
Behsud District: 6 villages
Saracha
Samarkhel
Girdi
Kas
プロジェクト対象村落の地図
略
略
語
正
式
名
語
表
称
和
訳
ANDS
Afghanistan National Development Strategy アフガニスタン国家開発戦略
ARTF
Afghanistan Reconstruction Trust Fund
アフガニスタン復興信託基金
BHC
Basic Health Center
基本保健センター
BPHS
Basic Package for Health Services
基礎的保健医療パッケージ
BRAC
Bangladesh Rural Advancement Committee
(バングラデシュ国際NGO)
CCDC
Clustering Community Development
Council
クラスターコミュニティ開発委員会
CDC
Community Development Council
村落開発委員会
CDP
Community Development Plan
村落開発計画
CHC
Comprehensive Health Center
包括医療センター
DAI
Development Alternatives, Inc.
(米国民間コンサルティング会社)
DACAAR
Danish Committee for Aid to Afghan
Refugees
(デンマーク国際NGO)
DDA
District Development Assembly
郡開発議会
DDP
District Development Plan
郡開発計画
DH
District Hospital
郡病院
DRRD*
Department of Rural Rehabilitation and
Development
農村復興開発局
FP
Facilitating Partner
ファシリテーティング・パートナー
GTZ-IS
Gesellschaft für Technische Zusammenarbeit ドイツ技術協力公社国際サービス
International Service
HP
Health Post
ヘルス・ポスト
IDLG
Independent Directorate for local
Governance
地方統治独立局
IP
Implementing Partner
実施パートナー
IRC
International Rescue Committee
(米国国際NGO)
IRDP
Inter-communal Rural Development Project
地方開発支援プロジェクト
ISAF
International Security Assistance Force
Air Command
国際治安支援部隊
JSDF
Japan Social Development Fund
日本社会開発基金
JSPR
JICA Support Program for Reintegration and
Community Development Project
Ministry of Agriculture, Irrigation and
Livestock
Ministry of Labor, Social Affairs, Martyrs
and Disabilities
カンダハール帰還民社会復帰・コミュニテ
ィ開発支援計画
農業・潅漑・畜産省
Ministry of Public Health
公衆衛生省
MAIL
MoLSAMD
MoPH
労働社会福祉・殉教者・障害者省
MoPW
Ministry of Public Works
公共事業省
MoRR
Ministry of Refugees and Repatriation
難民帰還省
MRRD
Ministry of Rural Rehabilitation and
Development
農村復興開発省
NABDP
National Area-Based Development Program
国家地域開発プログラム
NGO
Non Governmental Organization
非政府組織
NSP
National Solidarity Program
国家連帯プログラム
OSDR
Organization for Sustainable Development
and Research
(アフガン現地調査委託コンサルタント)
PAL
Project for Alternative Livelihoods
(芥子栽培)代替生計手段事業
PDC
Provincial Development Council
州開発委員会
PDP
Provincial Development Plan
州開発計画
PMU
Provincial Management Unit
(NSPの)州運営管理ユニット
PNA
Peace Needs Assessment
平和構築アセスメント
PRRD*
Provincial Directorate of Rural Rehabilitation
and Development
州農村復興開発局
PRT
Provincial Reconstruction Team
地方復興支援チーム
SNG
Sub National Governance
地方行政システム
TWG
Technical Working Group
テクニカル・ワーキング・グループ
UNAMA
United Nations Assistance Mission to
Afghanistan
United Nations Development Program
UNDP
国連アフガニスタン支援ミッション
国連開発計画
UN-HABITAT United Nations Human Settlements Program 国際連合人間居住計画
UNHCR
United Nations High Commissioner for
国連難民高等弁務官事務所
Refugees
USAID
United States Agency for International
米国国際開発庁
Development
*MRRDの州レベルでの出先機関。州担当官もPRRD、DRRDとさまざまな名称を使用しているが、同
じことを意味する。
第1章
1−1
調査の概要
調査の背景
本プロジェクトは、アフガニスタン・イスラム共和国(以下、
「アフガニスタン」と記す)にお
ける帰還民、国内避難民の深刻な状況を、国内における政情不安定の一要因と認識し、避難先か
ら帰還した難民の地域への再統合を促進するため、受入先の地域の開発支援を行うことを目的と
する。2007年12月、JICA緒方理事長がアフガニスタンを訪問した際に、国連難民高等弁務官事務
所(UNHCR)との協議を通じ、難民の帰還後のコミュニティ開発について、JICAが行っている
中長期的な視点での住民組織の能力向上、人材育成、生計向上といった支援を、人道支援援助機
関であるUNHCRが行っている難民の帰還促進と帰国後の限定的な生計維持支援という短期的な支
援と組み合わせることにより、一層効果的に行うことができるという結論に達した。
その後、現地の治安が悪化し、日本人の立ち入りが制限されていたため、本邦から調査団を派
遣することができなかったが、今般該当地域への立ち入りが可能になったため、協力準備調査団
を派遣するものである。
1−2
調査の目的
2008年5月∼7月に実施されたUNHCRによるニーズ調査、2009年1月∼3月にかけてJICAア
フガニスタン事務所委託により、現地ローカルコンサルタントによって実施された村落ニーズ調
査を通じて、現地の状況やニーズが徐々に明らかになっている。帰還後のコミュニティ開発には、
帰還者の定住と自立促進に係る生活基礎分野におけるインフラ整備から、帰還民をも含めたホス
ト地域の村民の生計向上、教育、職業訓練、保健医療上の課題への対応など多くの開発課題があ
る。今後のプロジェクト形成にはさまざまなシナリオが考えられるため、今般、どのような事業
展開をしていくことができるかを、幅広く検討するための情報収集を行うことを目的として、他
機関又は既存のJICAプロジェクトとの連携可能性についても情報収集を行った。一方でインフラ
整備についても、大統領選挙後に派遣予定のコミュニティ開発支援無償を想定した協力準備調査
に基本情報として提供できるように、JICAが協力可能なインフラ整備の絞り込みとその優先順位
づけを行い、契約可能性のある現地業者のリストアップ及びその能力に関する情報の収集を行っ
た。
1−3
調査の対象村落
今回の調査の対象となるのは、ナンガルハール州ジャララバード市郊外のベスード郡、スルホ
ッド郡にある11村落である。ナンガルハール州が位置するアフガニスタン東部は過去7年間から
の帰還民が特に集中し、さらに今後の帰還が集中するであろうと予測される地域である。当該11
村落は、2007年にUNHCRが行った対象地域のニーズアセスメント調査を基に、地域のなかでも特
に帰還民が多い村をUNHCRがJICAに推薦したもので、JICA安全対策上の活動地域を配慮して決
定された。帰還民の割合につき、各村平均して60∼80%が帰還民だとの調査結果がある。今回の
調査では、日程の関係上、以下の5村に対し、調査団が現地調査を行った。
・
Khoshgunbad村(べスード郡)(ジャララバード市内から車で約20分)
・
Ada Akhundzada村(べスード郡)(ジャララバード市内から車で約20分)
−1−
・
Girdi Kas村(べスード郡)(ジャララバード市内から車で約1時間強)
・
Balabagh村(スルホッド郡)(ジャララバード市内から車で約30分)
・
Sultan Pur Lower村(スルホッド郡)(ジャララバード市内から車で約20分)
1−4
調査の日程
付属資料1.のとおり。
1−5
調査団の構成
担当分野
氏
名
所
長
三井
祐子
JICA南アジア部
連携協力
織田
靖子
JICA企画部/公共政策部
業務調整
斉藤
真美子
JICA南アジア部
団
属
南アジア第三課企画役
援助協調シニア・アドバイザー
南アジア第三課
−2−
特別嘱託
第2章
2−1
調査結果
プロジェクト関係者の分析/ナンガルハール州の体制
(1)アフガニスタンにおける一般的な地方行政システム(SNG)の体系
1)地方政治独立局(IDLG)
アフガニスタン政府のなかでSNGを担当しているのは、2007年に発足した大統領直轄組
織(省庁と同格)のIDLG(Independent Directrate for Local Governance)である。IDLGは現
在6,000名(計画では7,000名まで増員予定)のスタッフが勤務しており、中央省庁であるIDLG
本省スタッフのほか、各地方の州政府職員、郡政府職員、市役所職員がIDLGの職員である。
2)各レベルの長
IDLGによれば、アフガニスタンのSNGの基本構造は国、州、郡、村の4つのレベルに分
けて考えられている。各レベルの長としては、大統領(President)、州知事(Provincial Governor)、
郡知事(District Governor)までが体系になっている。州知事は大統領によって任命され、
郡知事は州知事の推薦及び大統領の承認の下、州知事が任命する。その下のレベルでは各
村落に伝統的シューラの長(村長)や宗教指導者等がいるが、これらは郡知事から下に体
系的に位置づけられているわけではない。
3)各レベルの議会
議会としては、国レベルで上院(Meshrano Jirga)と下院(Wolesi Jirga)からなる国会(National
Assembly)、州レベルで州議会(Provincial Council)が現存する。州議会は2009年、国会は
2010年に選挙が予定されている。その下のレベルでは、アフガニスタン憲法によれば郡議
会(District Council)が存在することになっているが、2009年現在、郡議会は存在しない。
IDLGは郡議会及びその下の村議会(Village Council)をそれぞれ2010年と2011年に選挙を
行い、設立する意向である。IDLGのこうした新政策については既にドラフトが取りまとめ
られており、2009年7月中に閣議にかけられる予定となっている。
他方、郡レベル、村レベルには、国連開発計画(UNDP)/国家地域開発プログラム(National
Area-Based Development Program : NABDP ) に よ り 設 立 さ れ た 郡 開 発 議 会 ( District
Development Assembly : DDA)及び世界銀行(世銀)国家連帯プログラム(National Solidarity
Program : NSP)により設立された村落開発委員会(Community Development Council: CDC)
が既に存在し、開発政策を実施する際の実質的な最小単位のガバナンス機構として機能し
ている。DDA、CDCは選挙によって構成されるが、IDLGの計画している郡議会、村議会
とは全く別物であり、議会発足後はIDLGとしては並存させたい意向である。CDC-DDAと
村-郡議会の大きな違いは、CDC-DDAは対象地域の開発のみを対象としているが、村-郡議
会は、開発だけでなく、治安維持、紛争解決、ライセンス事業、その他行政サービスを行
い、地域に住む住民のあらゆる政策課題に対処する「ローカル・ガバメント」であるとい
う点である。IDLGの計画によれば、村-郡議会は独自のオフィスとスタッフをもち、村-郡
議会議員とスタッフは政府から給与も受け取ることになる。なお、2009年6月のNSP-III
の議論のなかで、IDLGと農村復興開発省(MRRD)との話し合いの結果、村議会が立ち上
−3−
がるまでの間は暫定的にCDCがSNGの最小単位となることについてIDLGとMRRDとの間で
合意に至ったとの由である。
4)各レベルの開発計画
開発計画・政策実施の面では、国レベルの計画で最も基本的なものはアフガニスタン国
家開発戦略(Afghanistan National Development Strategy : ANDS)である。ANDSは①ANDS
本体、②ANDSセクター戦略(ANDS-SP)+各省別ANDS(ANDS-LM)、③州別ANDS(州
開発計画
Provincial Development Plan : PDP)の3つに分かれる。このうち、①及び②の間
には明確な相関関係があり、②は①の詳細を表しているといえる。しかしながら、①と③
との間には明確な相関関係はなく、③は政府予算を反映しない裏づけのない計画となって
いる。言い換えれば、現在のアフガニスタンにおいては、各州における政策は各州にある
中央省庁の出先機関により、各省庁によるセクター別の予算計画、実施計画に基づき実施
されている。従って、ANDSの①及び②のうち、対象の州にとって関係のあるものを州ご
とに抜き出して足し合わせた総体が、実質的な州開発計画である。こうした状況に対し、
IDLGは今後、州別予算の設立を検討しており、早ければ来年度(2010年度)からの財務省
予算要求作業のなかに州別シーリングを導入しようと考えている。
しかしながら、PDPはANDSや財務省による予算計画との強いつながりはないものの、
州における開発計画実施における最も基礎的な計画書として尊重はされている。DDA、CDC
によって作成される郡レベルの計画書(郡開発計画 : District Development Plan : DDP)、村
レベルの計画書(村落開発計画 : CDP: Community Development Plan)もPDPと体系づけら
れるよう、州政府及びIDLGにより調整が行われている。他方、実態としては、DDP及び
CDPは単に当該郡、村落関係者の単なるウィッシュリストになっており、ANDSやPDPとの
関連性は薄いとする批判もある。
上記の議論を表にまとめると表1のとおりである。
−4−
表1:アフガニスタンのSNG一覧
レベル
代表
議会
開発計画・政策実施
ANDS
国レベル
Afghanistan
大統領
President
国会(上・下院)
National
Assembly
(Meshrano・
Wolesi Jirga)
州レベル
Provinces
州知事
Provincial
Governor
州議会
州開発計画
Provincial Council PDP: Provincial
Development
Plan
郡レベル
Districts
郡知事
District
Governor
郡議会
District Council
-
(DDA: District
Development
Assembly)
(DDP: District
Development
Plan)
村議会
Village Council
-
(CDC:
Community
Development
Council)
(CDP:
Community
Development
Plan)
村レベル
Villages
村長
Village
Leader
レベル別
省別
各省出先機関による
ANDS Sector Strategy
に基づく政策
また、上記のほかにアフガニスタンにおけるSNGの主要関係者として以下のような組織
が存在する。
5)市役所
カブール、ジャララバード等のアフガニスタンの都市には「市」という行政府が認めら
れており、州政府のほかに「市役所(Municipality)」が存在する。現在、全国に市役所は
153あり、それぞれに市長と職員(IDLGの職員)が勤務している。このうち、特に重要な
主要都市(44都市)は、都市開発省により所管されている。市役所は政府の一部ではある
が、財政的には独立採算制の公企業のような存在であり、基本的に中央政府からの補助金
等はない。職員給与等の管理費は中央省庁であるIDLGの予算から賄われるが、政策を実施
するためには自ら収入を得なければならない。なお、カブール市役所だけは別格扱いにな
っており、市長は中央省庁大臣と同格であるうえ、カブール市内の土地を政府に売却する
ことにより収入を得ているなど、さまざまな特例が認められている。
6)地方復興支援チーム(Provincial Reconstruction Team : PRT)
PRTは国際治安支援部隊(ISAF)参加国による州レベルの治安維持、復興開発チームで
あるが、上記のSNG体系とは全く異なる方針の下で活動を行っている。州政府及びIDLG
は国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の支援を受けつつ、PRTに対して州開発
委員会(PDC)を通してPDP及びその下部組織としてのDDA、PDCあるいは直接的な村落
からの陳情に基づき開発事業を実施するように働きかけている。
また、中央レベルではカルザイ大統領を筆頭に、アフガニスタン政府及びUNAMAから、
−5−
各州においてPRTを有する各国に対し、PRTと開発事業の整合を図るよう繰り返し要請が
行われている。最近のPRTにはANDSをはじめとするアフガニスタン政府の方針に自らを適
応させようとする努力はみられるが、実態としては大部分が依然として独自の政策に基づ
きプロジェクトを実施しているのが現状といえる。
7)クラスターコミュニティ開発委員会〔CCDC(Cluster CDC)〕
UNDP/NABDPはDDAを立ち上げるためにCDCをクラスタリング化し、CCDCというCDC
の集合体を形成した。CCDCはCDC、村議会より大きく、DDA、郡議会よりは小さく、村
レベルと郡レベルの中間に位置するような存在といえるが、CCDCは主にDDA設立のため
の選挙を行うために便宜的に立ち上げられた存在であり、SNGの政策実施主体とまではい
えないのが現状である。また、MRRD、ドイツ技術協力公社(GTZ)/(芥子栽培)代替生
計手段事業(PAL)、JICA等により開発に特化した視点でCCDCが形成される動きもあるが、
現状では対象地域のみの取り組みにとどまっており、SNGの構成要素として全国展開して
いるとはいえない。なお、開発を目的としたCCDCとUNDP/NABDPのCCDCとは全く異な
るものであり、対象地域が重複する場合(ナンガルハール州等)においては並存している。
(2)ナンガルハール州におけるサブ・ナショナル・ガバナンス
ナンガルハール州においても、SNGの概況は基本的に上述のとおりである。次に、ナンガ
ルハール州におけるSNGの核となる州政府の構造を示す。
−6−
Governor
Dep. Governor
slat
Tran
r
pute
Com ator
r
e
p
O
or
In te
rna
Aud l
it
etary
Se cr
etary
Se cr
rnal
Mem Audit
ber
Secretary
ID Card Issuance
Statistics
Technical and Sector
In te
Executive Director
Chief of Staff
Services Director
Admin/Finance
Manager
Legal &
Security Expert
Economic Dev.
Expert
Dev. & Rehabilitation Expert
Social & cultural
Expert
District Governance Expert
Admin.&Support
Service Expert
Private Sector
Expert
Environmental
Expert
Receptionist
Manager
Computer
Operator
Secretary
Receptionist
Staff
Secretary
Attendance
Manager
G. Manager of Recruitment
Documentation
Manager
Documentation
Staff
Archive GM.
Administration
Sub-Dep.
General
Doc. Staff
Archive
Staff
Staff of Admin.
Sub-Dep.
Confidential
Doc. Staff
Archive
Staff
Spokesperson &
Media Manager
IT Manager
Computer
Operator
Finance Manager
HR Manager
Computer
Operator
GM of Doc.
& Relations
Recruitment
Staff
GM. of
Logistics
GM. of
Service
Staff of GM Procuremof Logistics ent Staff
GM. of Pro- GM. of
curement Allocation Accountant
GM. of
Budget
Computer
Operator Procurem- Accounting
ent Staff
Staff
Budget
Annalist
(出所:ナンガルハール州政府からの情報提供を基に作成)
図1
ナンガルハール州政府組織図
IDLGによれば、図1のような州政府の構造はどこの州においてもほぼ同じとのことである。
州政府は州知事及びIDLGのスタッフによって構成される。州政府の機能を鑑みると、日本の
県庁などのように県知事を長とした地方行政府としての「州政府(Provincial Government)」
というよりは、州知事とその周りに世話人がいるだけの「州知事官邸(Governor’s House)」
といった方が適切である。州政府には州知事のほかには副知事とアドバイザーがおり、3つ
の部局(アドミ・スタッフ・技術)をもっている。このうち、実際の「政策」に携わってい
るのは技術部門であるが、それぞれ、治安、経済開発、環境等の各分野1名ずつが配置され
ており、分野に応じて州にある各省出先機関との連絡調整を行っているだけである。各省出
先機関(農業局、保健局、農村開発局等)は本省の支持の下に分野別に政策を行っているの
が実態である。他方で、ナンガルハール州の農業省出先機関によれば、州政府や州議会は中
央省庁の出先機関に人々からの陳情や政策的な案件の実施を依頼してくることが多く、こう
した州知事からの依頼は各省出先機関としても無視できない政治的な力があるとのことであ
る。
政策実施に関する州政府のイニシアチブは、PDC(Provincial Development Council)の開催
である。PDCは州知事が議長を務め、UNAMAの支援により月に1度の頻度で実施されてい
る。参加者はすべての各省出先機関、主要ドナー、PRT、州議会議員、郡知事等でほぼ州に
おける開発政策実施の主要関係者が一堂に会する唯一の定例会合となっている。また、これ
に加えて各分野のセクター別テクニカル・ワーキング・グループ(Technical Working Group :
−7−
TWG)も州政府のイニシアチブの下で1ヵ月に1度の頻度で定期的行われている。ナンガル
ハール州のPDCにおける主なトピックは、①各省出先機関による政策実施状況報告、②州政
府による各省出先機関への政策実施依頼・陳情とのことである。なお、州議会議員、郡知事
は実質的な政策実施能力はないが、住民のニーズを代弁する政治的な力を有している。IDLG
が計画している村-郡議会については、ナンガルハール州では今のところ設立の計画もなく、
中央のIDLGからも何も聞いていないとのことである。ナンガルハール州内のDDA、CDCは
UNDP/NABDP、世銀/NSP、MRRD等のプロジェクトを通して機能している。
(3)対象村落においてJICAがコミュニティ・インフラ供与を行う方法
JICAをはじめとするドナーとしては、あらゆるプロジェクトは上述のとおり州政府及び州
内関係者とPDCを通じた情報共有を行いつつ、ANDS及びPDPに沿って実施する必要がある。
また、コミュニティのニーズを調査する際には、DDP、CDPや、各省による政策方針を尊重
する必要がある。同前提を踏まえたうえで、帰還難民の多く住む村へのコミュニティ・イン
フラ供与は、主に次の3通りの方法により実施可能である。
第 一 は MRRD に よ る ナ ン ガ ル ハ ー ル 州 へ の 出 先 機 関 ( 州 農 村 復 興 開 発 局
Provincial
Directorate of Rural Rehabilitation and Development : PRRD)を通じた方法である。これはMRRD
の独自予算によるプロジェクトや国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)、GTZ等とMRRDに
よる協力プロジェクトにおいて取られている方法である。ドナーはPRRD内に事務所を設置
するか、PRRDと密に連携のとれる外部事務所を設立し、PRRDの有する人的・物的・知的資
源、CDC・業者とのつながり、プロジェクト実施経験等を生かし、CDC又は業者を通じてコ
ミュニティ・インフラ供与を行うことができる。現在のところ、他ドナーの取り組みでは、
インフラの規模が大きい場合は業者へ、小さい場合はCDCと直接契約を行っている。
第二はNSPの枠組みを活用する方法である。NSP事務局はMRRD内部にあるもののNSP実施
に特化した組織となっており、州レベルではPRRDとは直接の政策体系でつながってはいな
い。各州の(NSPの)州運営管理ユニット(Project Management Unit : PMU)が中央のNSP事
務局の出先機関として、ファシリテーティング・パートナー(Facilitating Partner : FP)であ
るNGOや国際機関及び各村落のCDCと協力しつつNSPコンポーネントのひとつ(CDCによる
サブ・プロジェクト実施)としてコミュニティ・インフラ供与を行っている。ドナーは、①
アフガニスタン復興信託基金(Afghanistan Reconstruction Trust Fund : ARTF)、②財務省コア
予算のNSP部分、③世界銀行(世銀)の管理する他基金〔日本社会開発基金(JSDF)〕等へ
資金拠出を行うことにより、そこからNSPのしくみを通じてコミュニティ・インフラ整備を
行うことができる。または、FPとなっているNGOやUN-HABITATへ資金拠出か契約締結を行
うことにより、CDCを通したコミュニティ・インフラ供与が可能である。この場合、通常、
インフラはCDCが建てるか、CDCから業者へ委託するという手順が取られており、ドナー、
FP、PMU等から直接業者へ委託する例はほとんどない。
第三は各省の政策の枠組みに沿ってプロジェクトを実施する方法である。各省はそれぞれ
のセクター・インフラ(学校、クリニック、井戸、灌漑等)について優先順位リストとプロ
ジェクト実施計画を有しており、予算がつき次第、順次案件化している状況である。例えば、
保健セクターであれば、基礎的保健医療パッケージ(Basic Package for Health Service : BPHS)
の全国展開という基本政策の下、ナンガルハール州内においても人口規模にしたがってヘル
ス・ポスト(Health Post:HP)、基礎保健センター(Basic Health Center : BHC)、包括医療セ
−8−
ンター(Comprehensive Health Center : CHC)、郡病院(District Hospital)の4つのレベルに分
け、それぞれのレベルで提供する基礎的なサービスやそのために必要となる人材及び医療設
備の拡充を進めている。こうした政策体系のなかで各レベルの医療施設設立の優先順位リス
トを州保健局は有しており、同優先順位に従ってドナーもコミュニティ・インフラの供与を
行うことができる。各セクター別のコミュニティ・インフラの優先順位リストは州教育局に
よる学校建設等、他省もそれぞれもっている。
上述の状況をまとめると図2のとおりである。
ANDS and ANDS Sector Strategy
大統領府
中央省庁
IDLG
MRRD
難民帰還省
NSP
その他各省
教育、保健、農業等
州
ナンガルハール
州政府
(州知事+IDLG )
州議会
PDC/PDP
郡
N -PRRD
(with PAL,
HABITAT,
Water
etc.)
N -PMU
ナンガルハール州
難民帰還局
ナンガルハール州
各省出先機関
FP
(BRAC)
ジャララ
市役所
ベスード・
スルホッド
郡知事
DDA/DDP
SNG 体系
NSP
村
各省政策
CDC/CDP
ローカル 業者
NSP 以外の
MRRD 政策
弱いつながり
コミュニティ・インフラ整備(学校、クリニック、灌漑、小水力発電、道路、コミュニティ・センター、防護壁等
図2
ナンガルハール州コミュニティ・インフラ整備の方法
−9−
2−2
村落現地調査結果
各村では、CDC(Community Development Council)及び女性CDCのメンバー及び村人に集まっ
てもらい、現地コンサルタントによるニーズ調査の結果で得た各村落からのリクエストの優先順
位づけを行った(男女別)。さらに時間の許す限りにおいて、村内の学校、灌漑施設等を視察した。
優先順位づけは、テン(10)ストーンと呼ばれる方法で行い、あらかじめ調査団が村人のリクエ
ストを絵に描いて持参し、1枚ごとにリクエストを村人に確認した後、各自に10個の石を持たせ、
優先順位が高いものから順に石を置いてもらう方式をとった。石は各自の優先順位に応じて1枚
の絵に何個も置いてよいとした。調査概要は付属資料2.のとおり。
調査結果は付属資料3.のとおりだが、水力を利用した発電(Micro Hydro Power)や農業用取水
口や水路、河岸の防護壁、女子学校の外塀が高い優先順位をつけた。調査の途中、Malik(マリッ
ク)と呼ばれる村の指導者が自分の意見に従うよう村人に石の置場を強要したり、いくつかのCDC
及び女性CDCは、調査団の訪問を事前に知らされていなかったため、当日にメンバーが出席でき
ず、近くにいた村人や親戚の者を呼んで参加させた場合も見受けられたため、当該優先順位がす
べての村人の要望を反映しているわけではないことは留意すべき点である。また、同一村落に複
数のCDCがある場合、民族や地理的状況から、CDC同士で利害が一致せず、口争いになることも
あったり、特に女性CDCがつける優先順位は、自宅の建設や修理が圧倒的に多い。自身が親戚を
頼って帰還したり、帰還した親戚に頼られて自宅の一部を貸しているため、生活するスペースが
不足している状況が背景に存在する。インタビューした女性の1人は、自宅の2部屋に16人が生
活していると回答している。また、女性の場合、伝統的、文化的に自宅から外出することは極端
に少なく、日常的に接触する人間も限られていることから、入手できる情報が限定されており、
村や他の村人の現状をあまり理解しておらず、さらに社会経験の不足により、連帯や自治という
概念を学ぶ場がなかったことから、彼女たちが村全体の発展のために長期的な視点で村に共通す
る問題を考えることは困難な現状であることが、優先順位づけを通して伺われた。ちなみに、5
村でテンストーンに参加した女性のうち、各村で2~3名を除き読み書きはできなかった。
UNHCRジャララバード事務所職員によると、対象2郡においては民族間、帰還民とそうでない
人々の間、その他のグループ間の対立や軋轢の構図は特に存在しないとのことであった。ただし、
場所によっては、家族間の問題、水等のリソースをめぐってのトラブルなど、ところどころで細
かな問題は発生しがちなので、州開発議会(PDA)を通じてあらかじめ問題の抽出ができれば、
プロジェクト実施に有効であると考える。
2−3
現地業者(建設業者・NGO)
詳細な現地建設業者及びNGO調査報告は付属資料4.のとおりであるが、結論としては、コミュ
ニティ開発支援無償を行う場合、ジャララバードにはJICAが求める質を満たす施設を建設できる
建設業者は存在しないことが判明した。一方、GTZ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、
DAI/LGCD〔DAIは米国の民間コンサルティング会社でアフガニスタンでは、主に米国国際開発
庁(USAID)からの委託契約事業を実施している。LGCDとはLocal Governance &
Community
Developmentの略で地方ガバナンス、住民参加及び小規模インフラ整備に重点を置く4年間のプロ
グラムである〕はジャララバードの現地建設業者を積極的に活用している。しかし、3機関とも
イン・ハウス・エンジニアを有しており、定期的に建設業者が建設を行っているサイトを巡回し
て施工進捗及び品質を確認しているとのことであった。カブールでの現地業者調査はまだ行って
−10−
いないが、ジャララバードはカブールから車で3時間弱の距離にあるため、カブールの業者が工
事を受注する可能性はある。
2−4
UNHCR連携
アフガン難民の帰還、定住、そして彼らの自立は、アフガニスタンの復興・開発全般にとって
不可欠であることから、JICAとUNHCRは両組織のトップを含め、現場と本部の両レベルにおい
て情報共有と意見交換を続けてきた。しかし近年、特に地方において、貧困、失業、基礎インフ
ラ及び公共サービス(教育、保健など)の欠如などが、帰還民の定住を含む地方開発の大きな妨
げとなっており、また同様の問題がアフガニスタンの不安定化の一要因として認識されている。
アフガン難民帰還のピークは2002年から2005年までの期間であったが、近年も年間20万人から
30万人のスケールで帰還が続いている。UNHCRの年次報告書によると、2008年の1年間で27万8,000
人が帰還し、そのうち27万4,000人がパキスタン・イスラム共和国(以下、
「パキスタン」と記す)
より帰還した(2008
Global Trends UNHCR
16June 09)。同報告書によると、2002年から2008年
の間に計500万人ものアフガン難民が帰還した一方、約300万人が現在も国外に在留し、そのうち
約178万人がパキスタンに在留中である。現在パキスタン情勢は非常に不透明であるため、将来の
予測を立てることは不可能に近いが、UNHCRアフガニスタンは例年並みのペースで帰還が続くと
いう想定で事業計画を立てている。
調査団の村落調査(6月18~20日、3日間、5村)にはUNHCRジャララバード事務所(国際職
員1名、現地職員2名、車両2台)が同行し、現場の状況、東部他州・郡・村とのバランス、過
去の類似案件の経験、成功例及び失敗例、技術面からの提言(エンジニアである職員より)など
について調査団と情報共有・意見交換を行った。ジャララバードでのUNHCRとの協議では、将来
UNHCR及びUNHCRの事業を請け負う技術者が対象村落を訪問する際には、JICAの事業現場も含
めてモニタリングが可能であることを確認した。さらに調査団がカブールに戻るときに、UNHCR
ジャララバード事務所から国際職員が同行し、UNHCRカブール事務所でのフォローアップ協議に
参加し、UNHCRカブール事務所、UNHCRジャララバード事務所(SOJ)そしてJICAとの3者で、
当該調査につき情報の共有及び今後の進捗について協議を行った。今回の調査では、国の政策レ
ベル、州政府レベル、そして現地の郡・村レベルそれぞれにおいて、JICAとUNHCRがお互いに
異なる得意分野の経験と知見をもち寄り共有することの意義を再確認するとともに、また、パキ
スタンと国境を接するアフガニスタン東部は、今後もUNHCRが重点地域として活動を継続する予
定であり、このような相互補完的な連携を続ける有用性が認められる、という結論に達した。
今後、調査団帰国後2ヵ月程度をめどにJICAカブール事務所が当該案件検討のJICA本部での進
捗具合等をUNHCRに連絡すること、そのうえで、背景、目的、JICA-UNHCR間協議、対象地域の
選定基準、本共同調査を含めた事前準備、活動の要旨を現地レベルの覚書として簡潔にまとめる
方向で合意した(付属資料5.)。過去数年間にわたりJICA-UNHCR連携に問題はなかったが、今
回あえてこのような覚書を作成する意義は、今後1~2年間でJICA-UNHCR双方に必ずやってくる
人事異動の流れのなかでの継続性の維持、また案件立ち上げ後の案件の見直し及び終了時の基礎
参考情報としての重要性であるとの理由からである。
2−5
JICA既存プロジェクトとの連携
JICAの既存プロジェクトの活動範囲に当該11村落を含むことができれば、当該プロジェクトの
−11−
開始を待たずとも、対象村落に対し、JICAとして何らかの支援ができると思われる。保健及び教
育分野のJICA専門家と意見交換したところ、以下のとおり前向きな回答を得た。
(1)保健分野
2009年10月から開始される結核対策プロジェクトフェーズ2では、
「帰還民の結核対策」が
主要な活動のひとつであり、ナンガルハール州にある、帰還民が登録を行うチェックポイン
ト及びNew Town Shipと呼ばれる土地なし帰還民のための新たな定住地の3ヵ所で結核罹患の
健康チェックを行うことを予定している。今回調査団との意見交換により、上述した場所の
帰還民だけでなく、対象11村落を含む更に広い地域で、移動式結核検診装置等を利用した住
民検診を行うことを検討するとのことであった。
(2)教育分野
新規案件として、現在行っている「教師強化プロジェクトフェーズ2」及び「特別支援教
育プロジェクト」の後継案件を、いくつかの学校をモデルスクールとして、州レベルで行っ
ていく予定があるとのことであった。候補としてはナンガルハール州もしくはバーミヤン州
である。本調査団との意見交換で、ナンガルハール州の対象村落に興味をもち、今後具体的
な新規案件の検討時期に現地調査も踏まえ、考慮するとのことであったので、引き続き関係
者で検討を行いたい。
−12−
第3章
3−1
今後の対応方針
プロジェクト実施体制
上記の調査結果より、プロジェクトの枠組みとしては、以下の3種類が考えられるが、それぞ
れにメリット及びデメリットがあるため、併せて記載する。
(1)コミュニティ開発支援無償【オプション1】
11村落の広範囲における多分野のインフラ整備をコミュニティ開発支援無償で行う。
1)メリット
・
「コミュニティ・インフラ供与」を目的とした場合、JICAのもつスキームのなかでは
最も中間コストが低い。
・
プロジェクトの目的に直結した実施方法であり、無理が少ない。
・
現地業者をJICAが直接活用することにより、村落開発委員会(CDC)による簡易イン
フラ供与を中心とした国家連帯プログラム(NSP)と比べて①品質、②規模、③スピ
ードの面で優れている。NSPとの差別化が容易である。
・
広範囲及び多様なインフラ整備が可能であるため、対象地域への面的・量的インパク
トが最も大きい。
2)デメリット
・
日本国内で多くの審査を受け、手続きを踏むため、時間がかかる。
・
建設するインフラは、学校、クリニックなど既に共通仕様書が存在し、他国や国際
機関により実際に供与されている施設は簡易なもので、受益者のニーズを満たしてい
るにもかかわらず、コミュニティ開発支援無償のスキームで行う場合、制度上、現地
の状況からは高すぎる品質が要求される。このため、施工監理業者は本邦業者の数社
が関心を示しているが、同じレベルを満たすローカル建設業者については、今回の調
査によりジャララバード市内で訪問した業者では能力不足の感があった。他方、カブ
ールの建設業者(200社)の調査は行っていないため、今後調査を継続するが、これに
は一定の時間を要する。
・
国家プログラムであるNSPのしくみの外でプロジェクトを実施するため、アフガニス
タン側関係者との調整が必要である。
(2)技術協力プロジェクト(業者利用型)【オプション2】
技術協力プロジェクトを通じ、建設業者にインフラを整備させる。想定される専門家のTOR
はインフラ整備の各プロセスにおける支援であり、具体的には、見積書収集、基本設計、入
札手続を経た業者選定、契約、事業進捗に係るモニタリング等である。
1)メリット
・
質の高い建設業者が限られるアフガニスタンでは、日本からの専門家が必要に応じて
−13−
インフラ整備までのプロセスを補完することで、事業全体のスピード及び質の維持が
期待できる。
・
技術プロジェクトの枠組みのなかで、専門家派遣、現地事業強化費の利用等の状況に
応じてフレキシブルな対応が可能である。例えば、共同で維持管理することが必要な
インフラ整備を行った場合、建設後に村人による管理状況をモニタリング、指導する
ための専門家の派遣も適宜可能である。
・
ローカル業者をJICAが直接活用することにより、CDCによる簡易インフラ供与を中心
としたNSPと比べて①品質、②規模、③スピードの面で優れている。NSPとの差別化
が容易である。
・
コミュニティ開発支援無償に比較して、事業の開始は早い。
・
本来、コミュニティ開発支援無償で実施すべき内容の案件が日本政府内のスキームの
制約により実施が困難な国において、技術協力プロジェクトで同様のことができるよ
うにしておくことにより、JICAのスキームに柔軟性をもたせることができる。特に、
平和構築をめざす他の復興国において有用なツールとなる。
2)デメリット
・
コミュニティ開発支援無償と比較して、日本人専門家の派遣、安全対策措置等が必要
になり中間コストが高くなる。
・
技術協力プロジェクトは一般的にカウンターパート機関である先方政府担当局を通じ
でJICAが事業実施を行うものであるが、当該プロジェクトのような無償資金協力のス
キームを想定した案件を技術協力プロジェクトによって代替する場合、プロジェクト・
デザイン・マトリックス(PDM)を基本とした技術協力プロジェクト形式によるプロ
ジェクト管理を行うには工夫が必要である。
・
治安の状況により、日本人専門家の立ち入りが限られることが予想される。日本人専
門家のリクルートには努力を要する。
・
国家プログラムであるNSPのしくみの外でプロジェクトを実施するため、アフガニス
タン側関係者との調整が必要である。
(3)技術協力プロジェクト(CDC+業者利用型)【オプション3】
国家プログラムであるNSP(National Solidarity Program)で形成したCDCと建設業者を、必
要に応じて使い分け、インフラ整備を行う技術協力プロジェクトである。灌漑用水路の清掃
や、学校の外塀建設など、小規模で簡易なインフラ整備は村落にあるCDCを通じて行い、ク
リニックや灌漑水路の建設など、中規模以上のインフラ整備は民間の建設業者が行う。
1)メリット
・
技術協力プロジェクト(業者利用型)と同様、日本人専門家が建設までの過程及び建
設後のモニタリングに協力することで、建設工期とインフラの質が確保される。
・ 技術協力プロジェクト(業者利用型)でデメリットとしてあげたPDM管理につき、CDC
やクラスターコミュニティ開発委員会(CCDC)を利用することで、プロジェクトを
通じ、NSP事業担当局をカウンターパートにし、当該部局のCDC及びCCDC管理運営
−14−
能力の向上を図ることができるため、JICAの従来型技術協力プロジェクトと同様な管
理が可能である。
2)デメリット
・
コミュニティ開発支援無償と比較して、日本人専門家の派遣、安全対策措置等が必要
になり中間コストが高くなる。
・
インフラ整備以外に、カウンターパート局の能力向上やCDC等に付加価値をつけてい
くといったコンポーネントがプロジェクトに追加されるため、他の2つの案と比較し、
予算的には最も規模が大きくなることが予想される。
・
治安の状況により、日本人専門家の立ち入りが限られることが予想される。日本人専
門家のリクルートには努力を要する。
・
日本人専門家に代って現地で事業を管理する質の高いファシリテーティング・パート
ナー(FP)をみつける必要がある。
3−2
カウンターパート機関
JICAが事業を行うために、メインとなるカウンターパート組織を選定しておく必要がある。調
査の結果、カウンターパートとして想定される相手方について3通りのオプションが考えられ、
メリット(Pros)
・デメリット(Cons)の分析とあわせて表2に示す。なお、すべての組織が本件
プロジェクト実施の際の重要な関係者となるため、どこをメイン・カウンターパートと定めたと
しても、その他はサブ・カウンターパートとして重要な協力相手となる。
−15−
表2
メイン・カウンターパート候補比較表
メインCP候補
メリット・デメリット
Pros◎
1.
州政府+IDLG
・
州政府が要請元であり、今後の合意文書締結が容易である。
・
州知事に話を通せば、州開発委員会(PDC)を通じて州内の全セ
クターの支援・協力を得られる。
・
州知事の政治的バックアップを得られる。これにより、郡、村レ
ベルで問題が生じた際に解決が容易になることや、プロジェクト
実施時の安全対策関係での支援が受けられる可能性がある。
・
政治的な動きに左右されず、ナンガルハール州という地域にフォ
ーカスした取り組みができる。
Cons×
・
州政府、地方統治独立局(IDLG)自体にプロジェクト実施能力は
ない。
Pros◎
2.
・
PRRD/MRRD
農村復興開発省(MRRD)の出先機関である州農村復興開発局
(PRRD)はプロジェクト実施の経験が豊富であり、Inhouseエンジ
ニアを抱えているため、インフラ整備に係る進捗モニタリングが
彼らによって可能である。
・ MRRD/NSP参加の(NSPの)州運営管理ユニット(PMU)、FP、CDC
とのコンタクトが容易。
Cons×
Pros◎
3.
・
MRRDの他のコミュニティ開発プロジェクトの教訓を得られる。
・
現在のところ本件について説明を行っておらず、感触は不明。
・
MRRDの枠組み(スキーム、優先政策等)の影響を受ける。
・
他の省庁への協力はJICA独自で実施する必要がある。
・
帰還難民支援に対するプロジェクトについてアフガン政府におい
難民帰還省
て最も好意的なのは帰還難民省であり、アフガン政府からの本件
+UNHCR
プロジェクトへの後押しが得られやすい。合意書の締結も容易。
・
難民帰還省は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の公式なカウ
ンターパートであり、難民帰還省、UNHCR、JICAが三者で協力を
行うことにより、UNHCR-JICA連携の側面が強まる。
Cons×
・
難民帰還省はプロジェクト実施能力も含め、人的、財政的キャパ
シティが極めて低く、大臣の政治的権力も弱い。
・
難民帰還省は、そのTORに帰還民を受け入れているホストコミュ
ニティの開発支援を含まない。
3−3
インフラ整備要望リスト
2−2でも述べたように、テンストーンを使って村人の要望の優先順位づけを行ったが、同時
に、CDCの開発プラン(村落開発計画 : CDP)や郡の開発プラン(郡開発計画 : DDP)、学校建
設、増築及び改修については、州教育省、クリニックの建設及び改修については州公衆衛生省が
作成する開発計画とのクロスチェックを行った。さらに、5村落の現地調査にすべて同行したUNHCR
の技術者のアドヴァイスを受けた。
−16−
今後、残りの6村落の現地調査を同様に行い、関係省庁の開発プランとの整合性を図りながら、
重複を避けるクロスチェックを行い、さらに優先順位が高いものについては、技術的な観点から
の更なるチェック、インフラ予定地やその所有権等を明らかにすることも必要である。
こうした過程を経た11村落ごとの優先順位のついたインフラ要望リストを作成した後、現地業
者の確保、全11村への平等な事業の実施、さらにはプロジェクトの実施体制を考慮しながら、JICA
事業として可能なものを実施していくことになる。また、JICAによる11村落への事業実施につい
ては、ナンガルハール州知事が毎月開催するPDC(Provincial Development Committee)で州政府機
関及び他のドナーにその内容が共有されるべきである。
3−4
草の根・人間の安全保障支援無償案件との連携
前述のとおり、当該プロジェクトは治安の問題から、当初の予定よりかなり開始が遅れている
こともあり、今回優先順位づけを行った要望のいくつかについては、その実施に関し、今年度(2009
年度)日本大使館の草の根・人間の安全保障支援無償のスキームを利用することを考えている。
当該スキームで申請予定の案件は付属資料6.のとおり。
今回調査団は、対象11村落のうち、ジャララバード市内から最も遠いべスード郡Girdi Kas村に
現地調査を行ったが、村は、市内からクナ―ル川沿いの未舗装の道を車で1時間以上走った先の、
土漠の丘とクナールの大河に囲まれた他の村から地理的に隔離された場所にあった。少なくとも
車の通行が可能な道路が村まで通っているためJICA事業の実施は不可能ではないが、他の10村と
比較し、アクセスが不便なことを勘案し、当該村のインフラ整備については、速やかに実施する
ことが適当だと判断した。
さらに、当該スキームは、申請から事業開始までの期間が短く、現地業者が活用できるため、
当該プロジェクトのように、対象地域が地理的に広範囲にわたり、複数セクターのインフラ整備
を行う場合には適していると判断されることから、来年度(2010年度)以降も引き続き当該スキ
ームを利用したい。
−17−
第4章
4−1
所感
団長所感
2001年のボン合意から8年がたち、アフガニスタンの状況は、紛争直後の人道援助から、よう
やく中長期的な開発援助へ移りはじめているといわれているが、しかし、ナンガルハール州のよ
うにいまだパキスタンから帰還民を受け入れている地域では、帰還民だけではなく、彼らを受け
入れるホスト地域において、人口増加による家や水、電気等の基礎インフラの不足、食料不足、
衛生状態の悪化、職なし若年層の増加など、状況はまだ改善されていない。村人のニーズも、電
気や水など生活に必要な基礎インフラや生計の手段である農業関連インフラである取水口や水路
の建設等の優先順位が高かった。こうした状況を鑑みるに、今回のプロジェクトでは、まずは彼
らが望むインフラ整備を行い、物理的な生活基盤を確保したうえで、次の段階として、生計向上
プロジェクト等を行うべきであると考える。
「インフラ整備」をメインとした事業をJICAが行う場合、実施できるスキームとしては、一般
プロジェクト無償のほか、
「コミュニティ開発支援無償」か「技術協力プロジェクト」が考えられ
る。まず「コミュニティ開発支援無償」であるが、コミュニティの複数のニーズに対応すること
ができること、現地リソースの活用という点からまさに当該プロジェクトには適当なスキームと
思われるが、
「現地施工業者の技術水準」につき、日本の求める水準は高く、一説には「一般無償
に準ずるレベル」ともいわれている。
アフガニスタンのような、復興支援の最中にあり、特にナンガルハール州のようにパキスタン
からの帰還民が現在も流入している地域では、民間セクターが未成熟であり、建設会社に従事す
る技術者の技術を「日本に準ずる」レベルで求めることは難しい。一方で、米国、ドイツ連邦共
和国(以下、
「ドイツ」と記す)、UN関係機関等は、同地域で現地業者を積極的に活用し、多くの
インフラ整備を行っており、地域の開発に貢献している。この点については、前述したように、
そもそもコミュニティ開発支援無償スキームができあがった経緯のひとつが、現地仕様・設計に
基づき現地業者の積極活用という点であることを勘案すれば、現在の制度の運用方法については
改善の余地があると思われる。
代替案として、調査団は「技術協力プロジェクト」を使ったインフラ整備の枠組みを提案して
いるが、デメリットにも既に記述したとおり、本邦コンサルタント、現地レベルのファシリーテ
ーティング・パートナー(FP)との契約により中間コストがかかるため、予算はコミュニティ支
援開発無償を選択するより大幅に増額することが予想され、地域的に広範囲にわたる、種類の異
なるインフラを同時期に建設することができるコミュニティ支援開発無償に比較し、その劣位は
否めない。さらに「技術協力プロジェクト」を利用するがゆえに、単純なインフラ整備をプロジ
ェクト・デザイン・マトリックス(PDM)のなかで整理する必要が生じ、理論的説明が難しくな
ることが懸念されるため、その整理のしかたには十分留意する必要がある。しかし、インフラ整
備を目的とする技術協力プロジェクトが当該プロジェクトで実施された場合、これは同様な状況
にある復興支援国にとってよい先例となるであろう。
次に、今回国家連帯プログラム(NSP)の州運営管理ユニット(PMU)を訪問したときに、国
際連合人間居住計画(UN-HABITAT)が日本大使館からの拠出金により、“Afghanistan Stability Peace
Program”をプロジェクトの対象村落のあるべスード郡、スルホッド郡、カマー郡で実施、小規模
−18−
インフラ整備を行っていることがわかった。今後JICAの事業を、こうした国際機関への拠出金に
よる日本の援助と有効に組み合わせることで、さらに地域へのインパクトを図ることができるよ
う、現地日本大使館とも一層の情報を共有していきたい。
2009年8月に大統領選挙を控え、治安の行方が気になるところであるが、状況をよく見極めな
がら、現場のニーズにきめ細かく、そして迅速に対応できるよう、関係者間で合意形成を図り、
案件形成を行っていきたいと考える。
−19−
付
属
資
料
1.調査団日程
2.村落現地調査概要
3.村落現地調査結果表
4.ジャララバードの建設業者及び NGO 調査報告
5.UNHCR 連携合意文書案
6.草の根・人間の安全保障支援無償申請予定事業リスト
7.主要面談者リスト
8.会議議事録
9.州開発計画
10.郡開発計画
11.村落開発計画
12.州教育局学校建設計画(2008 年度)
13.州公衆衛生局診療所建設計画(2009 年度)
1.調査団日程
No
日付
内容
宿泊地
1
6/13
土 19:55 羽田→21:10関空(JL185)
23:15 関空→
機内
2
6/14
日 →4:45ドバイ(EK317)
11:45 ドバイ→15:15カブール(Safi 4Q0204)
安全ブリーフ(JICA事務所)
18:00 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)アフガ
ニスタン代表表敬
カブール
3
6/15
月
ジャララ
バード
4
6/16
火 10:10 ナンガルハール州知事表敬
11:15 ドイツ技術協力公社国際サービス(GTZ-IS)
との協議
14:15 UNHCR-SOJとの協議
16:00 BRACとの協議
19:00 UNHCR、ナンガルハール州政府関係者との会
食
5
6/17
水
6
6/18
木 AM : ベスード郡Khoshgunbad村落調査
PM : ベスード郡Ada Akhundzada村落調査
現地業者、NGOと ジ ャ ラ ラ
の協議
バード
7
6/19
金 AM : ベスード郡Girdi Kas村落調査
PM : 調査団内打合せ
報告書作成、調査 ジ ャ ラ ラ
バード
団内打合せ
8
6/20
土 AM : スルホッド郡Balabagh村落調査
PM : スルホッド郡Sultan Pur Lower村落調査
現地業者、NGOと ジ ャ ラ ラ
バード
の協議
9
6/21
日
10 6/22
9:45 JICAアフガニスタン事務所所長表敬
12:30 カブール→ジャララバード(UN機)
PM : JICAナンガルハール事務所安全ブリーフ
調査団内打合せ
ジャララ
バード
9:00 州農村復興開発局(PRRD)/州運営管理ユニ
ジャララ
バード
ット(PMU)との協議
11:05 難民帰還局との協議
14:10 教育局との協議
現地業者、NGOと
15:15 公衆衛生局との協議
の協議
16:35 農業灌漑・畜産局との協議
18:00 調査団内打合せ
農村復興開発局(運営担当)との協議
10:30 DAI
農村復興開発局(局長)との協議
11:30
JICA稲作事業視察
国連アフガニスタン支援ミッション
(UNAMA) UN-HABITAT
との協議
15:30 IDLG
15:00 UNHCR-SOJとの協議
17:00 調査団内打合せ
9:20
10:35
11:30
14:00
月 15:30 ジャララバード→カブール(UN機)
(8:00予定が機体トラブルにより遅延)
16:40 UNHCRカブール事務所協議
−23−
ジャララ
バード
カブール
11 6/23
火 終日報告書取りまとめ
(予定されていた難民省、教育省との面談は先方理 14:00 IDLG
由により当日キャンセル)
15:00 JICA教育専門家との協議
16:00 JICA保健専門家との協議
カブール
12 6/24
水
9:45 JICA村落開発専門家との協議
14:30 JICA事務所所長報告
16:15 大使館報告
カブール
13 6/25
木
8:40 公衆衛生省 政策計画局表敬
資料整理
18:15 カブール→20:00ドバイ(4Q0201)
ドバイ
14 6/26
金
3:10 ドバイ→17:20関空(EK316)
19:15 関空→20:25羽田(JL188)
追記:JICSは調査団とは別に独自の出張を行った。
−24−
2.村落現地調査概要
訪問場所:Khoshgunbad(ベスード郡)
訪問日時:6月18日(木)10:00∼12:00頃
ジャララバード市内から車で20分ほどの市郊外に位置し、道路整備により都市へのアクセス
がよい。水と緑に恵まれ農業が盛んであるが、洪水の被害が深刻である。
【Male CDC】

参加者:9名〔すべて村落開発委員会(CDC)メンバー〕

CDC:数名がKhushgunbad Loy Qalai CDC、2∼3名がQalai Mirza CDCに所属。村全体では
10の男性CDCがある。

民族・言語:タジク8名とパシュトゥン1名

帰還民:参加者全員が帰還民

その他:①調査には国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員のほか、農村復興開発省
(MRRD)州事務所の国家連帯プログラム(NSP)職員、及びCDCを組織したNGOである
BRACの職員が同行
②調査作業の途中で、参加者の1人が、ニーズの優先順決定は(同
じ参加者の1人である)リーダー(malik)に一任すべきだという意見を述べたため、調査
側は、各個人が異なる意見をもっているのが普通であることを(農民と政府職員は異なる
ニーズをもっている可能性を例に出して)説明し、参加者を納得させた。リーダーも納得
してくれたように観察された。
③調査後、優先順の高かった女子高校(外壁・トイレの
設置)と川沿いの防護壁設置希望地を視察した。
【Female CDC】

参加者:9名(すべてCDCメンバー)

CDC:村に1つのFCDCであり、1年前(2008年)に選挙によって設立された2期目のCDC
である。40名が立候補し、現在のFCDCは15∼20名で構成される(うち、未亡人6名)。FCDC
によって選出されたリーダーは未亡人であり、娘7人、息子1人がいる。16歳の息子は農
業日雇い労働をし、1米ドル(12時間労働)を稼いでいる。一方、参加者のなかには息子
が日本を訪問したことがあるという老婆や、英語を話す若い女性教員も3名含まれていた。

民族・言語:タジク・パシュトゥン混在、主にタジク。

帰還民:多くが20年以上パキスタンに住んでいた帰還民であり、参加者の多くは4年前に
帰還した。

その他:村の土地は10人ほどの大地主に所有されているが、多くは村落外(カブール、ジ
ャララバード、パキスタンなど)に住んでいる。農業をする土地がないため、労働者とな
らざるを得ないとのこと。特に、未亡人の困窮が寄せられた。NSPに不満があり、村落内
の問題を質問しただけで事業を実施しないとのこと 1。MCDCの意見につき、FCDCの意見
を書面にて情報共有している。
1
BRACによる職業訓練は他の村で実施され、FCDCの居住地では行われていないとのこと。
−25−
訪問場所:Ada Akhundzada(ベスード郡)
訪問日時:6月18日(木)14:00∼17:00頃
16の集落(sub-village)からなる大きな村で、村の近くにはアスファルト舗装された大きな道
路(Chaparhar Road)が通っている。ジャララバード市内からほぼ南に12km、所要時間は約20
分。畑や川が乾燥しており、水関係のニーズが高い。
【Male CDC】

参加者:17名(全員CDCメンバー)

CDC:Ada Akhunzada CDC所属。村全体では3つの男性CDCがある。

民族・言語:パシュトゥン

帰還民:参加者全員が帰還民

その他:①英語を話す参加者が2名いた。
②近隣を走る舗装道路に、交通事故防止のた
めの立体交差(のようなもの)を設置するという希望リストが含まれていたため、車の所
有者を尋ねたところ、5人ほどが所有していると答えた。
③調査後、優先順が最も高か
った取水路設置希望地を視察した。
【Female CDC】

参加者:10名から開始。多くはFCDCメンバーであったが、不参加のメンバーの代わりに
女性家族による代理出席もみられた。参加者は徐々に増加し、最後は23名。

CDC: 村には1つのFCDCがある。リーダーの夫は商店を営んでおり、所有耕作地では親
戚が農業を行っている。

民族・言語:パシュトゥン(ほとんどの参加者はダリ語を理解しない)。

帰還民:N.A.

その他:多くの参加者が農地を所有しており、女性も自分の土地で農作業を行うとのこと。
なかには1日10時間も農作業をするという女性もいた。以前、洋裁職業訓練を受講した際
に供与されたミシンについて、質が悪いと不満があがった。同地域で女性は自分の服を縫
うため、洋裁は現金収入に直結しないとのこと。参加者は他の発言者の意見を聞かずに発
言することが多かったが、乳牛事業に対するニーズは一致した。所有地で牧草を育てるこ
とは可能だが、灌漑用水が整備されればより広い土地を活用できるとのこと。
−26−
訪問場所:Girdi Kas(ベスード郡)
訪問日時:6月19日(金)10:00∼11:30頃
ジャララバード市内から国道1号線(ジャララバード-ペシャワル道路)を東進し、16km辺
りで左折。サマルヘル村から北上するが、途中、砂利道から砂道となり、山道を抜けていくた
め、アクセスには改善の余地がある。市内からの距離は27km、所要時間1時間強。
【Male CDC】

参加者:23名(5∼6名を除き、全員がCDCメンバー)

CDC:Daag Qalai CDC所属の3、4名を除き、圧倒的多数がGirdi Kas CDCの所属。村にあ
るのはこの2つCDCのみである。

民族・言語:パシュトゥン

帰還民:すべて帰還民

その他:①NSPによる関係CDCへの事前連絡がなされていなかったため、現地到着後にCDC
メンバーに声をかけた結果、CDCメンバーや近くの住民、計30名が集まってくれた。調査
同行はUNHCR職員のみ。 ②1つのCDCに所属するメンバーが大多数を占めたため、調査
結果(優先順序)が村落全体の意向でない可能性は否めない。
③CDCメンバーは年配者
が圧倒的多数だったが、集まった村民のなかに数名の若者がみられたため、CDCメンバー
の許可を得て若者5名にも調査に参加してもらった。 ④ベスード郡全体のmalikが調査同
行してくれたが、調査側を喜ばせるような返答(例:JICAを知っていると言わせるような
こと)をするよう参加者に促していたようだが、調査内容(優先度決定)の過程・決定に
は無関係なので、影響はない。
⑤調査後、世界銀行(世銀)資金によるEQUIPの小学校
建設地を視察。malikによると資金が送られてこないため、何ヵ月も建築作業が止まったま
まである。
【Female CDC】

参加者:6名(うち4名は未亡人)から始まり、終了時には11名。

CDC:FCDCは1年前に選挙によって設立された。立候補者40名のうち、15名が選出され
た。

民族・言語:パシュトゥン(参加女性はダリ語を理解しない)。

帰還民:多くが7年ほど前に帰還。女性は結婚のために以前とは違う村に帰還することも
あるが、同じ郡内の地域へ帰還することが多い。今年(2009年)10∼15家族が帰還し、住
居確保が困難。

その他: 事前連絡ができていなかったため、FCDCリーダーは家が遠く不参加となった。
公共交通手段がなく、村民所有の車に頼っていることもあり、若い女性がジャララバード
へ行くことはほとんどない。外部情報が遮断され、夏に行われる大統領選挙や現在の州知
事の名前も把握していなかった。一方、カルザイ大統領の名前はすぐにあがった。
−27−
訪問場所:Balabagh(スルホッド郡)
訪問日時:6月20日(土)10:00∼12:00頃
ジャララバード市内から西に距離20km、所要時間約30分。村落の近くに川があり、4∼6月
は川の水量が増し対岸へ渡ることが困難なこともある。
【Male CDC】

参加者:25名(全員がCDCメンバー)

CDC:調査を実施した地区にあるBalabagh Markazi のCDCからの参加者が圧倒的多数で、
村のもう1つのMarwandina CDCからは1名のみ参加

民族・言語:タジク(村全体ではパシュトゥンとタジクが混在)

帰還民:すべて帰還民

その他:①NSPによる関係CDCへの事前連絡がなかったため、現地到着後にCDCメンバー
に集まってもらった。調査にはUNHCR職員のほか、NSPとBRACから職員が同行。 ②malik
はイスラム教指導者(mullah)で、調査実施中も発言が多かった。優先順でモスク建築が
小規模発電とともに最も高かったのは彼の存在の影響である可能性が大きい。なお、モス
ク建築は日本政府方針として援助できないことを伝えると多くの参加者が落胆した様子で
あった。③委託NGOによる村落調査や村落開発計画(CDP)で希望・ニーズのリストとし
てあげられていたのに、投票の結果がゼロ(=ニーズなし)であった項目がいくつかみら
れた。理由としては特定人物の影響や調査側の説明不足などが可能性として考えられるが、
調査時間不足のため、その確認はできなかった。④小規模発電の設置を希望する場所3ヵ
所のうち2ヵ所を視察した。また3番目に優先度の高い男子と女子の高校(新たな教室の
建築)も視察した。⑤委託実施した村落調査報告書によると村内を通る川の反対側の村民
から出ている橋の設置の希望については、川のこちら側と反対側の設置希望場所が異なり、
いまだ合意が取れないため、既にイラン政府から建設資金が下りているにもかかわらず、
工事は未実施である(以上、malik談)。村にはタジク人とパシュトゥン人がおり、人種間
の軋轢、過去の援助の偏りなど、別の事情があるかも知れないが、調査側としては、問題
解決のため話し合いを仲介するようmalikに促した。⑥以上により、調査結果は村全体の意
見を反映していない可能性が高い。
【Female CDC】

参加者: 19名から開始(うち、10名CDCメンバー。うち、帰還民3名)。最後は24名で終
了(うち、未亡人は2名。子どもが幼く自宅で洋裁をし、収入を得る)。

CDC:村落に1つのFCDCであり、設立後2年が経つ。25∼30名メンバー。

民族・言語:主にタジク。ダリ語が主言語であるが、タジクとパシュトゥンの混血など、
パシュトゥー語も理解する者も含まれていた。

帰還民: 難民として逃れた住民は少ないものの、人口増加により部屋が欠乏。1部屋10
人家族の例もあり。帰還民のなかには、UNHCRのVoluntary Repatriation Formを保有してい
なかったため、住居建設支援を受けられなかった者もいる。この数ヵ月間の帰還は1家族
のみ。

その他:現地調査を実施した5村落のなかで、最も参加女性たちがリラックスしている印
象を受けた。親族が固まって居住しているせいもあるためか、調査団が住居の屋上から他
住居を見ることや、写真を撮らせていただくことに対して非常に寛容であった。自宅出産
が通例であり、妊婦の状態が深刻でもジャララバードへ行くことは、ほぼないとのこと(高
−28−
い交通費の言及もされた)。
−29−
訪問場所:Sultan Pur Lower(スルホッド郡) 訪問日時:6月20日(土)14:00∼16:00頃
ジャララバード市内から西に距離13km、所要時間約20分。水路による灌漑農業が行われ緑が
ある一方、機能している飲料水用の井戸の割合が少ないようであった。
【Male CDC】

参加者:13名

CDC:多数が調査実施場所のSultan Pur PayeenのCDCメンバーで、若干数がAzim Khan Banda
CDCのメンバー(村全体では3つの男性CDC)

民族・言語:タジク(村全体ではパシュトゥンとタジクが混在)

帰還民:すべて帰還民

その他:①NSPによる関係CDCへの事前連絡がなかったため、現地到着後にCDCメンバー
に集まってもらった。調査にはUNHCR職員のほか、NSPとBRACから職員が同行。②委託
非政府組織(NGO)による村落調査やCDPで希望・ニーズのリストとしてあげられていた
のに、投票の結果がゼロ(=ニーズなし)であった項目がいくつかみられたが、調査時間
不足のため、その確認はできなかった。③多くの投票を集めた「取水路」は、参加者の勘
違いで(当初、投票ゼロだった)「防護壁」のことだと参加者の1人であるmalikから申し
立てがあり、他の参加者も同意したため、防護壁が優先順2番目の優先度とした(この結
果、取水路はニーズなしということになった)。しかし、実際は勘違いではなくmalikがそ
のように仕向けたという情報が複数の同行者からもたらされており、また、防護壁設置希
望場所を視察したところ、一部個人が受益する程度のものであったため、もたらされた情
報は正しいと思われた。
【Female CDC】

参加者:9名から開始し、最終的に15名出席。大半はFCDCメンバー。

CDC:村落に1つのFCDCがあり、設立後1年が経つ。15∼20名メンバー。リーダーは親
族に会いにカンダハール訪問中で不在。FCDC会計担当者は聡明活発な女性で、DAIの食品
保存コースを受講中であった。

民族・言語:タジク(パシュトゥー語を理解する者もおり、FCDC会計担当者はパシュト
ゥー語の教材で学んでいた)

帰還民:多くの村民は7年前に帰還した。

その他:他の村落にて対談した女性グループに比較し、白髪の年配女性の参加割合が高か
った。また、参加者内で意見を交わしながら、優先事業を考えるプロセスもみられた。他
のFCDCと同じ傾向であるが、自宅の家建設など、コミュニティ全体としての事業より個
人に直接かかわる事業に対するニーズが高かった。JICAが個人の住居建設を支援できない
との事情に対し、残念な様子が伺えた。
−30−
<村落調査付記>
(1)本調査では、委託NGOによる調査(2009年2月実施)で得られた希望リスト、及びCDCが
作成した(ことになっている)CDPにニーズとしてあげられているリストを基に、優先順位づ
けを行った。作業は「テンストーンズ(10 stones)」という参加型調査ツールを活用し、参加
者全員が各自10個の石ころを持って投票する形を取った。「テンストーンズ」は本来、エンパ
ワーメントを目的とする視覚ツールで、参加者は自由な議論や意見交換を通じ、自分の家族や
コミュニティにとって大事と考える活動(を描いた絵)に好きな数の石を置くこと(=投票)
によって参加者全体としての優先順を決める。通常は意識の内在化を図る時間をもたせるため
に2回の投票行為(=石を置く行為)が望ましいが、時間的制限のため、できなかった。その
代わりに投票行為の前の議論を促すよう努めた。
(2)木、金(午前中のみ)、土曜日の3日間の村落調査では、金曜と土曜の3村落(Gerdi Kas、
Balabagh、Sultan Pur Payeen)のCDCに対し、NSPが事前連絡を怠っていたため、調査団の現
地到着後、CDCメンバーに参加が呼びかけられた。この結果、①調査時間が更に短くなり、
②一部の(主に調査実施場所周辺の)CDCのメンバーのみの参加となったため、調査結果が
村としての活動優先順でない可能性を否めない。
NSP州事務所責任者からは2回(2回目は調査団との面談時)、金曜と土曜の職員派遣は問
題ないとの約束を口頭でもらっていたが、現実には金曜は誰も現れず、また、土曜も含めて、
村民(CDC)には事前連絡もされていなかった。
ただ、政府機関は木曜午後と金曜日は休みであり、特に金曜日はイスラム教徒にとっては大
事な日なので、NSP事務所を一方的に責められない。金曜日が大事なのは村民にとってもUNHCR
のアフガン職員にとっても同じである(UNHCR職員は週末のカブール行きを中止して本調査
に同行してくれた)。
したがって今後、同様の村落調査を行う際は、最低限、金曜日を避けるような日程調整が必
要である。
(3)調査時期は、学校が夏期休暇中で、教育環境の現実を視察できなかった。NGOに委託実施
した調査報告やそのときの写真にもあるように、教室の不足・不在のため、屋外で授業を受け
る児童は数多い。教育機会の貧しさは広く指摘されているところであり、学期中の実地検分が
できるよう、調査日程の調整が望まれる。
−31−
3.村落現地調査結果表
−33−
−34−
4.ジャララバードの建設業者及びNGO調査報告
ジャララバードの建設業者及びNGO調査報告
(財)日本国際協力システム
アフガニスタン事務所
2009年6月16日から6月21日の間、ナンガルハール県で活動中の国際援助機関、非政府組織
(NGO)団体及び建設業者を訪問し、当該地域におけるNGO団体・現地建設業者の情報収集を行
った。
(1)国際援助機関のプロジェクト監理について
ドイツ技術協力公社国際サービス(GTZ-IS)ジャララバード事務所、国連難民高等弁務官事
務所(UNHCR)ジャララバード事務所(SOJ)、DAI/LGCDジャララバード事務所において当地
での施工プロジェクトの執り進め方についてヒアリングを行った。
3機関はIn-Houseエンジニアを有しており、エンジニアが定期的にプロジェクトを巡回して
施工進捗及び品質を確認しているとのことであった。また、現地建設業者の作業スピードは遅
いので日常的なモニタリングをすることで工事進捗を監理することが肝要であるとのことであ
った。
(2)国際援助機関のプロジェクト実施における業者選定手法
国際援助機関の建設業者及びNGO団体の選定手法は下表のとおりである。
GTZ-IS
UNHCR
公示に使用す
テレビ・ラジオ・現地
テレビ・ラジオ・
るメディア
新聞
現地新聞
選定手法
国際競争入札手続き
簡易プロポーサル
DAI/LGCD
ラジオ・現地新聞
National Tender
に 準 拠 し た National
Tender
(3)国際援助機関の契約形態
1)上記選定手法にて選定された現地NGO団体及び建設業者の契約金額は最高で10万米ドル
程度であり、施設建設としては少額契約が多いことが分かった。
2)契約は少額であることからランプサム契約であり、支払回数は前払い(5〜10%)、中間
払い(工事進捗に応じた支払いで2〜3回払い)、最終支払という形態となっている。工事
規模により前払いを行っていない契約もあるらしいが、業者の財政事情を考慮すれば前払い
保証と引き替えに前払いを行う契約がほとんどとのことであった。
−37−
3)各施工作業のBill of Quantity (BoQ)単価に係る価格変動条項は入れない方がよいとのこ
とである。これは工事自体が小規模で通常価格変動条項を考慮する1年以上の工期とはなら
ぬこと、同条項を入れるとBoQ単価変更の交渉材料とされて、工事を故意に停滞させるなど
の問題回避のためと推される。
(4)NGO団体及び建設業者の訪問
UNHCR-SOJより入手したNGO・建設業者リスト及びJICAジャララバード連絡事務所が入手
した建設業者情報を元に、下表の団体・業者を訪問した。
訪問面談したNGO団体・建設業者・品質試験所
NGO
5団体
AGHCO(Afghan General Help Coordination Office)
REUAR(Reconstruction & Employment Unit for Afghan Refugees)
NARA(Naveed Association Rehabilitation for Afghanistan)
AMRAN(Afghan Mobile Reconstruction Association)
NCRA(National Consultancy & Relief Association)
建設業者
5社
NCPCM(Noor Construction & Produce of Construction Materials)
MCC ( Miskeenyar Construction & Producing Construction Materials
Corporation)
HCRC(Hafez Construction & Road Building Company)
WWCC(Waheed &Wahaj Construction Company)
MSCC(Muaqdas Saeed Construction Company)
建設資材品
1社
CTTC(Champion Technical Training Center)
質試験所
上表団体・業者の訪問並びに入手した書類精査の結果、以下のことが分かった。
1)現地建設業者のなかにはNGO団体で発足し、国際援助機関のプロジェクトを受託し事業
を進めるなかで建設業を主としていった企業もある。NGO団体には建設業者を有して、事
業をNGOで受託し、その建設業者を通じてプロジェクトを実施するケースが少なからずあ
る。
2)今回訪問したNGO団体でAGHCOとNARAが以前に日本政府の草の根無償を受託した経験
を有していることが確認できた。
3)ほとんどのNGO団体及び建設業者は、雑居ビルの1室や一軒家を事務所として使用して
いる。建設業者が常時雇用している技術者数は多くとも10名程度と少なく、当該技術者の業
務経験年数も10年以下が大半である。また、どの現地建設業者も施工図面作成をするCAD
オペレーターや測量技術者を有していない。NGO団体が有している技術者は建設業者のそ
の数より更に少なく、5〜6名程度である。NGO団体及び建設業者はプロジェクトごとに
必要な技術者を雇用している。
−38−
4)現地建設業者は数種類の建設機械を有しているが、プロジェクト実施にあたっては保有建
設機械の品質確認が必要である。
5)NGO団体・建設業者が国際援助機関から受託する事業は単一工事で、契約金額も最大で
10万米ドル程度である。NGO団体・建設業者の力量を考慮すると複数の現場で複数の建設
を管理する能力がないと考える。
6)すべてのNGO団体・建設業者の事業案内に財務諸表は添付されていなかった。現地業者
調達にあたっては財務諸表の提示以外にも銀行ステートメント等の財務面における精査が必
要であろう。
7)現地建設業者はプロジェクト実施機関が作成した施工図面に基づき施工を進めるだけで
あり、設計変更時の図面作成はプロジェクト実施機関が行うこととなる。
8)国際援助機関に提出した施工計画書を見る限り、全工期の大まかな計画書作成はできる
ものの、2週間、4週間といった詳細な工事工程を作成し、工程表に従った工事作業はでき
ないと考える。
9)工事作業に係る技術工及び一般労働者はチーム単位で市場から雇用する。
10)建設業者は各施工作業のBill of Quantity (BoQ)の単価は理解しているものの建設に関
する国際ルール(FIDIC等)の知識を有していないと考える。
11)ジャララバード市内には建設資材を試験する試験施設が6ヵ所あることが分かった。今
回訪問したCTTC社では各種工事の工法、試験方法、品質管理マネージメント等の研修も
行っている。
(5)現地コンサルタント企業の有無について
UNHCR-SOJ技術者や建設業者からのヒアリングによると技術者がグループを形成してコンサ
ルタント業務を請け負うことはあるようであるが、私企業としてコンサルタントを事業として
いるところはない。この技術者グループもプロジェクトで施工監理コンサルタントが必要な場
合に形成されるとのことであった。
(6)パキスタン技術者の登用について
ジャララバードは隣国パキスタンの北西辺境州とも近く、当地ではより技術経験を有するパ
キスタン人技術者の登用の余地もあることから国際援助機関にヒアリングしたところ、国際援
助機関実施プロジェクトの従事経験があり、技術力が認められた者であれば、当地で業務従事
することは問題ないであろうとの回答があった。ただし、ジャララバードはパシュトゥン語地
域であることから同言語を使用できることが条件となる。
−39−
(7)現地建設業者(ジャララバード)の工事品質について
今回のジャララバード滞在中にJICAジャララバード連絡場所に近いDirectorate of Public Health
が敷地内にある市立病院で建設中の病棟とBehsud郡Girdi Kas村にある建設中の小学校を視察し
た。施工図面を持ち合わせていないので厳密なチェックはできなかったが、所感のみ以下に記
す。
1)小学校(Girdi Kas村)
①
基礎の土の埋め戻し時に転圧が少ないように見受けられた。
②
コンクリートフロアスラブを打設する前に壁をつくってしまっており、フロアスラブ
の基礎とのジョイントがしっかりできるか不安を感じた。
③
Girdi Kas村で視察した小学校のトイレのコンクリート壁はコンクリートのセメント量
が少ないか、砂が多いために指でこするとコンクリートがはげ落ちた。
⑤
壁はレンガ積みであるが支えとなる鉄筋を入れているとは思えない。地震が起きた場
合に壁が崩れ落ちる可能性がある。
⑥
小学校の天井は木版を敷き詰めていたが隙間が多かった。屋根には泥を第1層、泥と
藁の配合物を第2層に敷いて断熱材としている。これはパキスタンでもみられるこの地
域の伝統的工法である。
⑦
基礎のコンクリート打設時にバイブレーションをしっかり施していないために表面に
デコボコが多く、ジャンカも多数みられた。
2)病棟(ジャララバード市内)
①
コンクリート支柱の鉄筋が短い。また、コンクリート支柱を作成する前に基礎回りの
石積みをしてしまっているためにコンクリート打設時に必要な型枠の設置ができるか不
安を感じた。
②
基礎の土の埋め戻し時に転圧が少ないように見受けられた。
③
基礎の土の埋め戻し前にシロアリ駆除液を散布したか作業者に聞いたが、そのような
駆除液があることも知らなかった。
ローカル工法では日本の援助プログラムの施設案件で求められる品質を確保することは難し
いと感じた。
3)ナンガルハール稲作農業改善プロジェクト
2007年9月よりジャララバード市内にてJICAが実施している当該プロジェクトに建設中の
研修棟を訪問した。同施設はカブール市内の建設業者が施工実施している。既に施設一部は
使用開始しており、内装作業が一部の部屋で残っていた。完成し使用している部屋を見る限
りでは品質はある程度確保できており、今後カブール市内の建設業者にも調査を拡大するの
も一考と考える。
−40−
5.UNHCR連携合意文書案
Reintegration Needs Assessment
UNHCR Sub-Office Jalalabad, Afghanistan
JICA Kabul, Jalalabad xxxxxx
Draft version 1,
20 June 09
1. Background
According to the government of Afghanistan and UNHCR, a total of 5.7m (2007, check new figure )
xxx Afghans returned home between 2002 and 2008, of which xxx% or xxxx returned to the eastern
province of Nangarhar.
It is estimated that some 2.7 million Afghan refugees remain in Pakistan as of
end 2008, large majority of whom originate from the eastern parts of Afghanistan. UNHCR plans to assist
voluntary repatriation of xxx in 2009, and xxx in 2010 with cash grant and initial reintegration support
mainly shelter and water. At the time of writing, the situation of bordering North West Frontier Province
of Pakistan remains unpredictable and requires special attention in terms of security and population
displacements.
JICA opened its office in Kabul in 2002, and in Jalalabad in 2007, has been engaged in the reconstruction
of Afghanistan through its infrastructure, health, education, agriculture and community development
projects in the country. It plans to strengthen its agriculture and urban planning projects, among others,
following the overall framework of Afghan National Development Strategy (ANDS) and respective
Provincial and District Development Plans.
While the mass return movement reached its peak by 2005, slow recovery from the destructions, poverty
and shortage of job opportunities are posing new challenges to the entire local population including the
returnees who returned in the past 6 years. For the sustainability of reintegration, UNHCR requested to
JICA to re-activate its mid- to long-term interventions focusing on the development of local community at
large.
2. Progress to date
UNHCR Sub-Office and JICA Liaison Office in Jalalabad continued information exchange and
coordination on a regular basis. In particular, they conducted the first joint needs assessment in mid-2008
and identified 11 villages in 2 districts in the suburb of Jalalabad as potential locations for JICA`s
community development projects.
The selection criteria of the villages were the number of returnees, the
percentage of returnees per village (xxx% – 100%), vulnerability of returnees known to UNHCR,
potential for longer term economic development and the accessibility by JICA staff members under its
own security and administrative rules.
−41−
During the course of 2008, JICA has strengthened its security measures. Currently, the authorized area of
movement by JICA staff includes Jalalabad town, xxx, and the 11 villages2.
11 returnee-impacted villages selected jointly by UNHCR and JICA as of mid 2008
km from
Jalalabad
source: JICA
Population as of mid
2009 (estimate)
source:JICA/OSDR report
OSDR report
Behsud District
1
Meran
2
Khoshgunbad
3
Ada Akhundzada
4
Saracha
5
Samarkhel
6
Girdi Kas
Surkhrod District
7
Charbagh
8
Sultan Pur Lower
9
Sultan Pur Upper
1
Balabagh
0
11 Fatehabad
Total 11 villages
Population
estimate
2013
source:
district total
Returnee
percentage??
source: JICA/OSDR
report
10
6
12
district total ?
3,600
38,850
15,000
?
64-67%
43%
69%
18
16
27
27,720
6,750
3,000
51%
44%
50%
8
13
16
20
24,150
7,700
11,600
11,150
58%
59-72%
75-88%
69%
24
20,000
28%
3. June 2009 Joint field assessment
In June 2009, UNHCR and JICA conducted the second field visits to the following 5 villages out of the 11.
Date: 18, 19, 20 June
Participants: JICA 3 – Mitusi, Saito, Oda, Aoyagi, Fukumura, Masood, Javed, Nagasaku and two
interpreters
UNHCR – Kashiwa, Timorshed, Wali
Places visited: # 2, 3, 6, 8, 10 of the chart above.
4. Summary of findings of the mission in June 2009
See attached Matrix as of 22June 2009 (attach the matrix?)
5. Next steps agreed
2
It should be noted that as of early 2008, the movement of JICA staff was restricted to Jalalabad town. For the purpose of the potential
reintegration projects, visits to the 11 villages were approved exceptionally, initially on condition that the visits were conduced jointly
with UNHCR.
3
One member from the Embassy of Japan in Kabul was part of the member but was absent.
−42−
Through discussions in Kabul, Jalalabad and the joint field mission, both agencies confirmed the
complementary role of each other and agreed as follows.
UNHCR will continue to focus on the return and initial reintegration of refugees and provide information
and suggestions to JICA concerning the following points but not limited to.
Security conditions and access
Return movements and trends
Returnee monitoring
Unmet needs and priorities
Technical support (shelter, water, community services, protection, etc.)
JICA will start new projects as follows.
1)Quick impact projects through grassroots assistance for grant aid (kusanone musho) from the embassy
of Japan
2)One additional staff specialized in community development to JICA Jalalabad office
3)3-5 year development project in the area of basic infrastructure rehabilitation
JICA will inform UNHCR of the progress of the above three schemes and details of future projects.
UNHCR and/or its IPs will provide technical support to the projects` formulation, design, and monitoring
whenever feasible.
JICA will participate in the UNHCR`s annual returnee assessment missions in the 11 villages concerned.
Next assessment is planned in xxx 2010?
UNHCR will participate in the JICA`s project evaluation mission during the course of xxxx.
UNHCR and JICA will jointly monitor evaluate the sustainability of reintegration in the 11 villages on an
xxx basis. (or final evaluation?)
(end of first draft)
−43−
6.草の根・人間の安全保障支援無償申請予定事業リスト
(1)ベスード郡
村落名
候補プロジェクト(和文)
候補プロジェクト(英文)
1
Girdi Kas
小水力発電プロジェクト
2
Girdi Kas
クナール側沿い取水口及び300m Construction of Intake and 300m Protection Wall
Establishment of Micro Hydro Power
防護壁建設プロジェクト
3
alongside Kunar River
Khoshgunbad 女子学校の外塀及びトイレ建設 Construction of Surrounding Wall and Toilets of
プロジェクト
4
5
the Female School
Ada
灌漑用貯水池及び取水口建設プ Construction of
Akhundzada
ロジェクト
Reservoir
and
Intake
for
Irrigation System
Khoshgunbad 診療所建設プロジェクト
Construction of Health Clinic
(2)スルホッド郡
村落名
1
Balabagh
候補プロジェクト(和文)
小水力発電プロジェクト
候補プロジェクト(英文)
Establishment of Micro Hydro Power
〈想定される現地NGO〉
■
NARA:草の根人間の安全保障無償にて、防護壁の建設経験あり。
■
NCRA:UNHCRからの委託を受け、対象村落であるGirdi Kashにて防護壁の建設実績あり。
■
AGHCO:草の根人間の安全保障無償経験あり。
−44−
7.主要面談者リスト
(1)ジャララバードにおける面談者リスト
組
織
名
役
職
名
氏
名
政府関係者
ナンガルハール州政府 Chief of Staff
Mr. Masood Ahmad Azizi
地方統治独立局
Administrator
Mr. Hanif Gartival
地方統治独立局
Spokesman & Media Officer
Mr. Ahmadzia Abdulzai
教育局
Deputy Director of Education
Mr. Iqbal Azizi
教育局
Education Quality Improvement Program
(EQUIP)
Mr. Ali Ahmad Baralaqet
公衆衛生局
Director
Dr. Baz Mohammad Shirzad
公衆衛生局
Health Management Information Officer
Dr. Kemin
農業・灌漑・牧畜局
Director
Eng. M. Hussin (Safi)
農村復興開発局
Director
Eng. Ahmad Wali Hakami
農村復興開発局
Head of Operational Department
Mr. Said Ahmad Saeedi
農村復興開発局
Head of Engineering Department
Eng. Batyalai
農村復興開発局
Operational Department
Mr. Mohammad Naeem Pajhwak
国家連帯プログラム
Provincial Manager
Eng. Haji Habiburahman Salarzai
国家連帯プログラム
Data Management Officer
Mr. Mohibullah
難民帰還局
Admin Officer
Mr. Jalat Khan
難民帰還局
Emergency Situation Officer
Mr. Qari Ashuqullah
UNHCR-SOJ
Head of Sub-Office Jalalabad
Mr. Jose Belleza
UNHCR-SOJ
Admin/Program Officer
Ms. Fumiko Kashiwa
UNHCR-SOJ
Assistant Program Officer
Eng. Timorshah
UNAMA
Program Officer, Program Section
Mr. Assadullah Musafar
UN/NGOs関係者
UNAMA
Program Officer, Rehabilitation,
Mr. Noor Ali Shah
Reconstruction and Recovery
UN-HABITAT
Provincial Manager
Eng. Padshah Mir Rahmatzai
UN-HABITAT, Kabul
Chief Technical Advisor (CEDPB)
Mr. Pushpa Chitrakar
GTZ-IS
PAL, Team Leader
Dr. Peter H. Foerster
BRAC
NSP Provincial Manager
Dr. Baz Mohammad
(2)カブールにおける面談者リスト
政府関係者
日本大使館
経済協力班
書記官
北野
書記官
日本大使館
経済協力班
書記官
井上
書記官
−45−
日本大使館
経済協力班
JICA
JICA
JICA
JICA
公衆衛生省
書記官
児玉
書記官
教育協力計画個別専門家
小出
拓己
企画調査員(教育)
田口
順子
磯野
光夫
塚原
治美
結核対策・リプロダクティブヘルス
事業チーフ
アフガニスタン農村開発研究所専
門家
Director General, Director of Policy
and Planning
Dr. Ahmad Jan
Acting Director of Construction
公衆衛生省
Directorate, Director of Policy and
Mr. Hanif Gartival
Planning
公衆衛生省
General Manager, Planning
Department
Mr. Shir Bachai
UN/ NGO関係者
UNHCR, BO-Kabul
Representative
Mr. Ewen Macleod
UNHCR, BO-Kabul
Senior Program Officer
Mr. Arman Harutyunyan
UNHCR, BO-Kabul
Senior Regional Durable Solutions
Coordinator
−46−
Mr. Sivanka Dhanapala
8.会議議事録
面会議事録1
訪問場所
日時
先方面談者
当方面談者
UNHCRカブール事務所
2009年6月14日(日)18:00∼19:00
Representative, Mr. Macleod, Sr. Programme Officer, Mr. Harutunyan
三井団長、織田団員、斉藤団員
アフガニスタン事務所 木邨所長、青柳職員
冒頭、会議出席者紹介の後、織田団員が今回の打合せにおける協議事項の要点を確認した。主
要議題は1)JICA活動の現状報告、2)本事業実施に係るロジスティック事項、3)国連難民高
等弁務官事務所(UNHCR)からの帰還現状と今後の見通しの説明、と合意した。主な論点は以下
のとおり。
<UNHCR代表からの現状説明>
 大量難民の帰還という時期を終了し、今後数年間の帰還は、年間20万人弱又はそれを下回
る程度の規模と予想される。パキスタンの情勢が帰還にどのような影響を与えるかはまだ
明確でないが、昨年(2008年)と比較すると帰還の進捗が遅くなっている。アフガニスタ
ン国家開発戦略(ANDS)の難民帰還IDPセクター・ストラテジーでは、3通りのシナリオ
を想定している。アフガニスタン内の状況が改善された場合、現状維持の場合、現状が更
に悪化した場合である。今の時点において、2009年の大統領選挙の結果などがどのように
影響するかは、予想することは容易ではない。
 UNHCRは帰還民に対する住居支援を実施しているが、水や住居の分野を超えて、いかに地
域における再統合を促進していくかが重要である。特に生計手段の確保は大切であり、他
ドナーと補完的支援方策を模索している。UNHCRは以下機関との連携を強化していく方針
であり、他機関との連携予算は増加傾向にある。
 主要4分野の関係省庁〔農業・灌漑・畜産省(MAIL)、農村復興開発省(MRRD)、公
衆衛生省(MoPH)、教育省(MoE)〕:教育と保健について既に関係が深い。
 ドナー機関〔JICA、ドイツ技術協力公社(GTZ)、米国国際開発庁(USAID)、英国国
際開発省(DIFID)等〕:UNHCRは住居や水などの緊急支援を行っているが、広範囲
なニーズに応えることはできない。それぞれの機関の得意分野において、地域的にも
相互の補完関係を構築する。
 UNHCRの実施パートナー(IP):UNHCRの伝統的分野(帰還、保護)において協力を
継続。
 今後3年間の帰還予測は難しいが、帰還民の再定住に資する国家プログラムと連携してい
くことも重要と考える。マイクロクレジット、国家連帯プログラム(NSP)、農業・地方開
発分野であり、世界銀行は重要なパートナーである。今まで農村にあてていたが、それを
継続するとともに、都市における支援が重要になってくる。多くの帰還民が都市部に流入
しており、UNHCRが何をできるのか見極めたい。
<木邨所長からのJICA活動の現況報告>
 JICA-UNHCR連携の話が持ち上がってから治安の制約などがあり、実施に時間を要してし
まったことにお詫び申し上げる。今回調査団が来たことにより、事業が前進すると期待し
ている。
 米オバマ新政権樹立後、JICA緒方理事長は総理特別代表としてホルブルック米国アフガニ
スタン・パキスタン担当特別代表とも面談している。この流れを受け、日本政府のアフガ
ニスタン支援は食糧確保の観点からみた農業支援、及び比較的治安の安定したアフガニス
タン北部を支援重点地域としている。ナンガルハールで実施中の稲作農業改善プロジェク
−47−

ト(RIP)の成果を、クンドゥズやタハール州にて拡大していく方針。
地方村落開発と都市開発の両分野を支援強化していく。カブール首都圏マスタープラン調
査では、計画実施に向けて他ドナーと協議を行っている。日本は道路や水資源開発を検討
している。アジア開発銀行(ADB)や他のドナーも関心を示しており、調整中。
<本事業実施に係るロジスティックの件>
 村落調査同行の件、UNHCR-ジャララバード事務所(SOJ)に余力があれば問題はないが、
詳細現場で打合せしていただきたい(マックレオド代表)。
 UNHCR-SOJと事業活動に関する詳細を詰めていただき、それを元にカブール事務所と概略
的なOperational Partnershipの協議を行えばよい(アルマン氏)。
 UNHCR-SOJにて協議する点を共有しておく。1)業者契約や調達に関する点、2)村落調
査情報である。前者に関しては、業者能力を見極めるため、UNHCR-SOJの知見を頂きたい
と考える。また、今後の大統領選挙もあり、JICAの行動がますます制限されていくなか、
UNHCRのIPが実施するモニタリングと効率的に調整することができれば幸いである(織田
SA)。
 行動に関してはUNHCRも制限下にあるといえる。JICAが地方展開を検討するのであれば、
車輌など必要資材の投入も考慮すべき。インフラ整備実施の際の選択枠として、民間の現
地建設業者、NGO、地元村落開発委員会(CDC)の活用などがある。また、地方復興支援
チーム(PRT)活用もあり、UNHCRもさまざまなIPと活動している(マックレオド代表)。
 民間建設業者をあたっているが、UNHCRの業者契約詳細を共有していただければ有益であ
る(青柳)。
 登録した建設業者やNGOは同じ組織であることがあるため、留意が必要(アルマン氏)。
 学校やクリニック建設に際しては、州政府の計画と照らし合わせ協議する必要がある。建
造物を建設しても、その後のソフト・コンポーネント(教員、医師配置)などの予算がな
い場合がある(マックレオド代表)。
 政府内部にさまざまな開発実施機関があるため、本調査ではどこが一番の担当部局となる
のか見極めたい(三井)。
 州政府内で政府内調整を実施しているが、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)
とも協議するのがよい。UNHCR-SOJには4名のExpatriate(うち、2名が日本人)、Technical
Expatriateが駐在している。カブールでのUNHCR帰国報告の際に、UNHCR-SOJ代表あるい
は担当官にも同席していただけると事業実施継続の観点からもよいであろう(マックレオ
ド代表)。
−48−
面会議事録2
訪問場所
ナンガルハール州政府
日時
2009年6月16日(火)10:10∼10:30
先方面談者
Mr. Gulagha Shirzai、ナンガルハール州知事、Mr. Masood Ahmad Azizi, Chief of Staff
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳職員、福村企画調査員他
<当方>

州政府のJICA活動への協力に感謝申し上げる。JICAはナンガルハール州でRIPを実施中で
あり、3名の日本人専門家がジャララバードに常駐している。シシャンバーグに試験場が
あり、米の収穫増加などよい成果がでている。

今回の面談の目的は、ナンガルハール州におけるJICAの新規事業をご説明申し上げるため
である。帰還民の多い2郡11村にて村落開発事業を行う予定であり、今年(2009年)初め
に基礎情報収集を実施済みである。今回の調査目的は、対象村落の視察も含めて既存情報
のアップデートをし、事業実施の具体的計画立案を進めるためである。早く事業開始とな
るよう、尽力している。

貴殿の継続した支援を望んでいる。
<先方>

JICAの支援には非常に感謝しており、個人的に緒方理事長をよく存じ上げている。緒方氏
をSisterと呼ばせていただいており、カンダハールには彼女の名前をつけた道路もある。

今回、調査団が直接村落を訪問し、長老やシューラと意見交換をすることは有意義と考え
る。ナンガルハール州のなかでも、対象2郡は治安や住民の協力姿勢の点で環境のよい地
域である。郡レベルでも政府がJICAに協力していくことが大切である。

邦人殺害の件では、個人的に深くお悔やみ申し上げる。同事件発生後、関係地域の長老達
を招集し、JICA活動への協力を依頼した。困難に対処する最善の方法は、互いの調整を強
化することである。

再度、JICAの支援に感謝するとともに、新規事業を歓迎する。今後、長期的に経済状況の
改善を目的とした事業を実施していただきたい。
−49−
面会議事録3
訪問場所
GTZ-IS
日時
2009年6月16日(火)11:15∼12:15
先方面談者
Dr. Peter H. Foerster, Team Leader, Eng. Khudaidad
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳職員、福村企画調査員、
JICS永作所長
GTZ-IS (International Service)はドイツ技術公社の1機関であり、アフガニスタンにおいては
EC、世界銀行、英国大使館などからの契約による事業を実施している。(芥子栽培)代替生計手
段事業(Project for Alternative Livelihoods in Eastern Afghanistan : PAL)は、本JICA事業実施に参考
となる類似案件であり、詳細情報を得るため面談を設定した。事業説明の後、質疑応答を行った。

調達の件:アフガニスタン内現地入札であるが、国際基準に則っている。PALはMRRDの
入札・調達能力の向上のため、ファシリテートをしながら共同で手続きを行っている。MRRD
が入札を認めると、調達情報が公共メディア(テレビ、ラジオ)によって少なくとも3日
間公示される。入札書類はMRRDで一般公開される。その後、提出された入札書類につい
て、技術者を含む政府関係者、PAL、クラスターコミュニティ開発委員会(CCDC)関係者
が業者について協議を行う。事前に基準入札価格が設定され、その前後10%の会社がショ
ート・リストをされる。少なくとも1週間、入札書類を吟味するとともに、業者の実施能
力、組織体制についても検討する。その後、落札業者が決定される〔ドイツ技術協力公社
国際サービス

ジャララバード事務所(GTZ-IS)〕。
現地業者委託と工期:アフガニスタンにおいては、すべてが遅延することが常である。対
策として、強固なモニタリング体制を構築しなければならない。常に現場を視察するフィ
ールド・チームが必要である(GTZ-IS)。

コンサルタント会社の雇用有無:PALは技術者6名を直接雇用しており、それぞれの専門
分野がある。技術者は事業の進捗にあった週間計画に従い、異なる現場を視察し、モニタ
リング報告書(Journal)を記録する。モニタリングはPAL技術者に限らず、MRRDや地元
住民の長老など、誰が実施してもよい。PALは関係者にモニタリングを実施するよう奨励
し、その管理を行っている(GTZ-IS)。

PALが入札を行い、業者能力を見極める。ある入札では、60社以上が応札をし、GTZ-ISは
地元業者に広く認識されている。業者といっても一側面であり、NGOと業者が一体のこと
が多い。重要な点は、いかに品質確保をするか。そのためには適切なモニタリングの継続、
そして技術者によるフォローが不可欠である(GTZ-IS)。

入札書類のスペックが必要であればMRRDから入手していただきたい。GTZ-ISの技術者か
らコンサルティングが必要であれば、業務契約をしていただくのが適切(GTZ-IS)。
必要であれば近郊PALの建設サイトを訪問可能との申し出を受けた。
−50−
面会議事録4
訪問場所
UNHCR-SOJ
日時
2009年6月16日(火)14:15∼15:30
先方面談者
Head of Sub-Office Jalalabad (SOJ) Mr. Belleza
Admin/Program Officer Ms. Kashiwa, Assistant Program Officer Eng. Timor
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳職員、福村企画調査員、
JICS永作所長
<ナンガルハール州の現状と活動状況>
 アフガニスタン東部における帰還民の課題は、教育、衛生、生計手段の確保など基本的ニ
ーズが満たされていないことにある。ベスード及びスルホッド郡は、ジャララバードへの
アクセスがよいため帰還民が多く、人々の生活状況はよい。しかし、都市部から遠い地域
は日々の生活のニーズを満たすことも困難な状況にある。UNHCRは食料確保の観点から農
業開発に資するよう、水路、壁、肥料などの支援を検討している(ベルザ所長)。

対象両郡において土地問題などは聞いたことがない。帰還民の多くは故郷に帰るため、既
に親族が故郷にいることが多い。しかし、ベスード郡のTangi にはアフガニスタンに帰還
したものの、クナール州に帰ることのできない人々が住んでいる(柏氏)。

2009年の帰還進捗は芳しくなく、パキスタンでの治安悪化、国内避難民(IDP)発生とそ
の影響(バスなどの交通機関の値上がり)も影響している模様。しかし、このようななか
でもナンガルハール州は過去数年間、アフガニスタン内において最大規模の帰還民受け入
れ地域となっている(柏氏)。
<モニタリングの件>
 JICA事業のモニタリングを行う国連ボランティア(UNV)派遣は、UNHCR-SOJのキャパ
シティ(防弾車保有数と他事業との兼ね合い)から考えても難しい。事務所内での作業な
ら問題はないが、モニタリング実施は追加費用を要する(ベルザ所長)。

IPによるモニタリング実施は可能であるが、JICAは「モニタリングのモニタリング」をす
る必要がある。IPのモニタリングの質は40%程度であるが、何か情報は得ることができる。
UNHCRの活動は1) シェルター、2)生計手段の確保、3)ニーズ・アセスメントがあ
る。ニーズ・アセスメントは毎年1回、帰還民の多い地域を対象に実施される。同アセス

メント時にUNHCRが対象村落をモニタリングするのであれば、問題はない(ベルザ所長)。
JICA-UNHCR連携についてどう考えるか?共同モニタリングは連携の要のひとつであると
思うが、いかに効率的にお互いの利益となるよう実施することができるか?(三井)。

UNHCRの貢献としては、UNHCRの事業モニタリングを実施する際、対象村落が含まれる
のであればJICA事業も視察することは問題ない。しかし、JICA事業のために限ってモニタ
リングをすることはできない。定期的な通常の情報共有、調整は既にうまく進んでいる(ベ
ルザ所長)。
<事業実施体制について>

CDCをIPとして活用する可能性:実質的にCDCは地元のシューラである。USAIDは井戸な
ど簡易プロジェクト実施にCDCを通して地元労働力の活用をしたが、実際の実施機関はIP
である。地元労働力を活用する場合、1∼1.5米ドル/日が相場である。住民は世界食糧計画
−51−
(WFP)のfood for workの支払い金額なども熟知している。一方、新しく設立されたCDC
のなかには、よく組織化されていないものもある。仮に直営方式でCDCを活用するのであ
れば、JICAは直接CDCとやり取りをするプロジェクト・マネジャーの配置が不可欠であろ
う(ベルザ所長)。

他の郡で実施することはできないか?Bati Kot郡には組織力の高いシューラがあり、UNHCR
は同郡で衛生教育、有機肥料、種子、食料加工などの事業拡大をしたいと考えている(ベ
ルザ所長)。

11村落に対して3つのスキームを想定しているのか?

大使館の草の根、専門家、インフラ整備を想定している。草の根でなら、他郡における実
施も可能性はあると思われるが、IPのアドミ・コストをいかにするかが問題である(織田)。

WFPのfood for work事業は、労働者への支払い協力に前向きである。実施体制につき、UNHCR
にはTechnical Officerがおり、IPも技術者を雇用している。JICSがナンガルハールに常駐し、
モニタリングを実施することを期待している(ベルザ所長)。

パキスタンからの技術者雇用:アフガン人は長期にわたるパキスタンでの難民としての経
験にもかかわらず、隣国同士にありがちな傾向により、快く思わない人々が多い。問題が
生じる可能性がある(ベルザ所長)。

留意しておくべきことは、アフガニスタンのNGOとコントラクターは一体であることが多
い。しかし、住民参加などを経験しているコントラクターも多く、その点ではUNHCRは活
用しやすいともいえる(柏氏)。
−52−
面会議事録5
訪問場所
BRACジャララバード事務所
日時
2009年6月16日(火)16:00∼17:20
先方面談者
BRAC TB Program: Dr. Mohamad Javed, Program Manager, Dr. Rahimi, Regional TB
Coordinator 他6名
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳職員、福村企画調査員、
JICS永作所長
<対象郡におけるCDCについて>

ナンガルハール州のなかでも、ベスード及びスルホッド郡はさまざまな面において(治安、
教育レベル、都市へのアクセス、道路状況、住民の高い意識)一番恵まれた地域である。
同地域におけるCDCのメンバーの多くは高い識字率をもち、さまざまな訓練も受け、組織
力が高い。両郡のCDCの能力は、他の郡に比べてはるかに高い(ワイズ氏)。

両郡の帰還民と受け入れコミュニティ住民の関係は良好。帰還民について詳細なデータを
持ち合わせていないが、どの地域でも帰還民がほとんどである(ワイズ氏)。

CDCが国家連帯プログラム(NSP)事業を行うように、CCDCによるプロジェクト実施例は
あるか?(青柳)。

すべてのNSP実施郡において、既にCCDC(通常5∼6のCDCより成る)が形成されている。
国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)はNSPと別資金にて、CCDCを通しての事業を実施
した(ワイズ氏)。

2郡には帰還民が多く、何か問題を聞いたことはあるか?(青柳)。

特にない。例えば、Chaparhar郡における153名のCDC構成員のうち、42名は帰還民である。
帰還民も地元住民も同じ地域出身者であり、帰還民だからといって疎外されることはない。
ただし、IDPや遊牧民は地域の定住者でないため、CDC構成員には含まれない。また、CDC
構成員の任期は3年間であり、その後選挙が実施される。ベスード郡は豊かな地域であり、
欧米に滞在している裕福な住民も多い。よって、他州から旱魃や治安の問題でベスード郡
に逃れてきたIDPがいる。遊牧民も多く、彼らは伝統的に季節によって移動する。(ワイズ
氏)。
<NSPの実施体制>

CDCの主目的は、住民参加でありアフガニスタン全体としてのキャパシティ・ビルディン
グである。CDCに技術的知見を有する人材が不在の場合、ファシリテーティング・パート
ナー(FP)が助言を行う。FPであるBRACの役割はCDCに対する技術的なファシリテーシ
ョンであり、実際の事業実施(資材購入、建設など)はCDCが行う。CDCはCDPを保有し、
BRACも控えを保管している。CDPはFPより(NSPの)州運営管理ユニット(Provincial
Management Unit : PMU)へ提出される。PMUはNSP事業及びFP活動をモニタリングする(ワ
イズ氏)。

CDCの資金管理能力の現状は?(福村)

資金はCDCの銀行口座へ振り込まれ、CDCが資金を管理している。2003年より実施してお
り、CDCは記録を管理し調達方法も理解している。CDC会計は透明性が保たれており、毎
月FPとCDCのメンバーにより会計打合せが開催される。
−53−

Female CDCの現状、かかわり方は?(三井)。

CDCは25∼300家族から構成される。コミュニティには1つのCDCがあり、2 Male-sub
community、2 Female-sub communityから成る。地域文化によりCDCとFCDCが直接対話を行
うことはないが、間接的に両者の合意形成ができるようになっている。例えばCDCの決定
に対し、FCDCからの公式レターが提出されるしくみであり、BRACの女性職員がファシリ
テートを行っている(ワイズ氏)。
<CDCの機能>

ある村落には複数のCDCが存在するが?(福村)。

例えば1,000家族から成る村落では、いくつかのCDCに分かれることになる。分割の基準は
4∼5ポイントあり、地形的、民族的、灌漑システムやモスクの共同利用などが規定され
ている(ワイズ氏)。

CDCと伝統的シューラの関係は?(三井)。

2003年のNSP実施以前、活発であったシューラは主にCDCへと統合された。当初、CDCに
反対するシューラもあったが、政府の支援により徐々に問題は解決した。現存の伝統的シ
ューラの数は多くない。
<CDCの能力>

CDCはコミュニティというよりも、一種の組織であるか?例えば、大使館の草の根スキー
ムにはアドミ経費が含まれていないため、NGOの反応はよくない。CDCの実施可能能力は
いかに?プロポーザルを作成し、帳簿をつけ、会計監査も可能な能力の高いCDCはあるか?
(青柳)。

CDCのなかには、日本かどこかのドナーからの資金を受け6万米ドルの学校建設事業を実
施したところがある。CDCが事業実施を行った。CDCはCommunity Participating Monitoring
(CPM)を行っており、だれでも資金の流れを視察することができる。透明性が保たれて
いる(ワイズ氏)。

具体的にそのようなCDCを知っているか?(福村)。

JICAが実施する場合、まず小規模なパイロット事業を行い、実際にCDCの実施可能能力を
見極めるのがよいであろう。そのようなCDCにつき、現時点で伝えることはできないが、
BRACのDistrict Manager, Provincial Managerとも協議し、リストを作成し、共有する(ワイ
ズ氏)。
−54−
面会議事録6
訪問場所
州農村復興開発局(PRRD)/
州運営管理ユニット(PMU)
日時
2009年6月17日(水)9:00∼10:40
先方面談者
Provincial Manager, Eng. Habiburahman, Data Manager of NSP Mr. Molebi
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳職員、福村企画調査員、
JICS永作所長
PMU はNSPの一部であり、MRRDのNSP事務局の管轄下にある。論点は以下のとおり。
<NSP事業実施ステークホルダーの役割分担>
 PRRDとPMUの事業実施上の分担は、前者が約5%とすると後者は95%程度を実施。州にPMU
が設立された背景は、世銀とMRRDがアフガニスタン政府のキャパシティが不足している
と判断したからである。PMUは事業プロポーザルの承認など幅広い事業管理能力が必要で
ある。将来的に(5∼8年後)、CDCを含めた組織体制の能力が向上すればPMUは不要と
なる見込み。

PMUは政府(Line Ministries)とNSPに関係するすべてのステークホルダーとCDCの調整を
行うが、州全体の開発計画はPRRDが責任を負う。PRRDとPMUは協力関係にあり、週間調
整会議にて情報共有を行う。PMUはCDC事業運営に関する独自の決定を下すことができる
が、問題があった際や重要事項などはPRRDと共同で意志決定をする。

NSPのOperation Manualガイドラインにはすべてのプロセス、関係組織の役割が規定されて
いる。同ガイドラインはMRRD、世銀、NSP事務局が共同で6ヵ月に1度改定版を作成。
組織
主な役割と責任
PRRD

Director

すべてのステークホルダー間の協力関係構築と調整
CDCとFPの契約書への署名

国家事業である村落開発の全体責任

資金が国家発展のために活用されていることに対する責任を負う

他省庁との情報共有

事業運営の全体管理

村落レベルでの事業実施とFP活動状況のモニタリング

プロポーザルの承認

資金や銀行口座の透明性を保つ

FPに対するキャパシティ・ビルディング

情報収集(地方開発関連、NSP対象村落)、将来計画策定

援助機関、政府との調整

CDCに対するキャパシティ・ビルディング

CDPとプロポーザル作成に関する助言

NSP事業実施

会計・銀行口座管理

必要資機材の調達
PMU
FP
CDC
−55−
<事業選定と実施手続きについて>

他事業との調整:NSPはSolarや Generatorを含まないため、PRRDによるProvincial Development
Planとも調整する必要がある。JICAはテクニカル・ワーキング・グループ(TWG)を利用
して他ドナーとも適宜協議する必要がある(ラフマン氏)。

CDPに基づいてNSP事業が実施されている。CDPのリストのうち、実施されなかった事業
についてはCDCがドナーを求めている。PMUはCDPに関し、何が実行され何が資金をもっ
ているのかという情報をもっている。優先順位のつけ方としては、CDPに基づき現状と最
終判断をCDCに確認するのが適切と思われる。CDCが事業選定の最終判断をした際に、CDC
メンバー全員による署名、及びDistrict Governor、PMUの署名をした書面を作成すること。
インフラ建設の場合には使用する土地の権利についても明記しておく。これはその後の土
地問題を防ぐためである。これらはすべて、ガイドラインに明記されている。なお、1)
学校、2)クリニック、3)ダムについては特に担当省庁の承認が必要。ダムはその使用
目的のいかんにかかわらず(電力発電、灌漑など)その規模によって担当省庁が決定され
る。4m以下のダムはMRRD、4m以上はMinistry of Water and Energyの管轄となる(ラフマ
ン氏)。

CDCとの協議から事業が終了するまでの期間はCDCや事業によって異なるが、おおよそ18
ヵ月。当初6ヵ月はCDCへのキャパシティ・ビルディングを実施し、7ヵ月目から事業開
始となるのが通常。また、CDCの銀行口座への資金振込みの遅れが事業の遅れにつながる
こともある(ラフマン氏)。
<CDC委託事業について>

UN-HABITAT は 日 本 大 使 館 か ら の 拠 出 に よ り 、 ”Afghanistan Stability Peace Program in
Nangarhar”を3郡(ベスード、スルホッド、カマー)にて実施し、本事業では15のCDCが
インフラ整備を行った。JICAが事業実施予定の11村落は含まれていない。

UN-HABITATはナンガルハール州で5つの事業を実施している。識字教育、青年事業、都
市改善、NSP、及びPeace Stability Program(日本からの拠出)である(ラフマン氏)。

優秀なCDCの事例としては、Chaparral郡のMandozai CDCが日本大使館からの拠出を受けて
学校建設を行った。CDCにはprocurement committee, implementation committee, supervision
committeeが存在する。同CDCは工期前に事業を終了し、高い評価を得た。PMUとCDCが技
術者を雇用することに合意をし、週に2日間技術的モニタリングを依頼した。同技術者は
他組織で働いているエンジニアであり、月給200ドルの対価を受け取った(ラフマン氏)。

PMUの直面している問題は、おそらく予算不足からくるドナーの支払い遅延である。これ
は事業の遅延につながる(ラフマン氏)。
−56−
面会議事録7
訪問場所
難民帰還局
日時
2009年6月17日(水)11:05∼11:30
先方面談者
Admin Officer Mr. Jalat Khan, Emergency Situation Officer Mr. Qari Ashuqullah
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、福村企画調査員
局長との面談予定であったが、式典出席とのことで不在であった。同席していた職員に対し、
三井団長がJICA概要と新規事業の説明を行い、質疑応答を行った。

対象11村落の帰還現状はどうか?(三井)。

パキスタンからの帰還民が多く、飲料水、住居、学校、診療所、生計手段確保とニーズは
多岐にわたる。多くの帰還民は仕事を求めてカブールやジャララバード、パキスタンへと
再流出する。家族は村落に残り、働き手の男性のみ職を求めて移動する。生計手段を確保
できないため、毎日1万2,000∼1万5,000人がパキスタンへ移動する模様。一方、帰還民は
日々増加している。治安悪化やパキスタン政府の圧力を受けて、仕事をパキスタンに残し
て帰還している(カーン氏)。

土地問題はあるか?(三井)。

ほとんどない。土地なし帰還民は、New Townshipと呼ばれる土地分配事業にてTownshipに
居住することができる。ナンガルハール州には2ヵ所のTownshipがある。スルホッド郡の
Sheikh Mesri(1,500∼2,000家族)及びスルホッド及びホギャニ郡間のChamtara( 4,000∼6,000
家族)である。Sheikh Mesriでは、住居(UNHCR、UN-HABITAT、NRC)、学校(DoE、Local
NGO、IRC)、移動クリニック(IMC)などさまざまな援助機関が支援をしている。難民省
の責任は土地を分配することのみで、Townshipの開発は関係するLine Ministryが責任をもつ
(カーン氏)。

上記に加え、ナンガルハール州には6ヵ所(Tangi、Balik、Samar Khail、Sarshahid、Lower Sheikh
Mesri、Farm Ada)のReturnee Settlementがある。ベスード内のキャンプにはクナール州に帰
還できない人々が約1万2,000家族居住している(カーン氏)。
−57−
面会議事録8
訪問場所
教育局
日時
2009年6月17日(水)14:10∼15:00
先方面談者
Director Mr. Iqbal Azizi, Eng. Mirwaiz
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳所員、福村企画調査員、
JICS永作所長
<ナンガルハール教育現状について>

アフガニスタン全体生徒数700万人のうち、ナンガルハール州は約60万人の生徒が学校へ通
っており、毎年5万人以上が新規入学をしている。30年前には教育システムがあったが、
現在はまだ危機的状況にある。ナンガルハール州にはおよそ500校が登録されているが、そ
の多くは必要な教室数が確保されていない。特に、150校は校舎がなく、約38万人の生徒が
教室の外で学習をしている。学校周囲の壁やトイレなどの施設が整っている学校は少ない。
帰還民も含め毎日生徒数が増加しているため、毎年開発計画を修正している(局長)。

学校校舎の建設をする際には、政府所有の土地あるいは住民からの寄付を受けた土地に建
設される(局長)。
<ニーズについて>

仮に資金があった場合、対象2郡にはどのような支援が必要と考えるか?(織田)。

ドナーの資金によって決めることであるが、もし十分な資金がある場合、机や椅子、実験
室などを整備することが望ましい。優先順位は以下のとおりである。
1.現在学校校舎がない学校に対する学校新設
2.現在校舎があるが教室数が不十分な学校への教室数増築
3.机や椅子その他の備品供与
<学校建設の手続きについて>

ドナー間調整:毎月Technical Coordination Meetingが教育局(DOE)にて開催されている。
関係援助機関が出席し、活動の重複を避けるようにしている。援助機関が支援を行う際は、
常にDOEと情報共有している。また、DOEとNSPはCabinet Meetingにて情報共有している
(局長)。

「School without land and site」とは学校は政府に登録され機能しているが、土地所有権が不
明確な場所である(局長)。

建設の基準仕様:校舎のデザインは8教室、12教室などさまざまなものがある。机や椅子
も必要であるが、黒板、カーペットさえない学校がある。詳細仕様書はすべて教育省のホ
ームページに掲載されているので参照していただきたい(局長)。

DOEの予算にて、昨年度は12校の建設をした。民間会社への競争入札を行い、MOEが契約
調印した。加え、School Management Committee (SMC)などが主体となり、コミュニティ
と政府の間で直接契約が結ばれた事業もある。2008年度は20校が住民によって建設され、
DOEの技術者がシューラへの技術的助言を行った。コミュニティによる建設の場合は主に
6教室など小規模なものが大半である(局長)。
−58−
<CDCやコミュニティとの関係>

CDCの多くのメンバーは学校のPTAや学校運営委員会(SMC)にも参加をしている。PRRD
がコーディネートをし、コミュニティからDOEに報告がされている(局長)。
−59−
面会議事録9
訪問場所
公衆衛生局
日時
2009年6月17日(水)15:15∼16:05
先方面談者
Deputy Director, Dr. Baz Mohammad Shirzad
Health Management Information Officer, Dr. Kemin
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳所員、福村企画調査員、
JICS永作所長
<保健現状について>

ナンガルハール州には112のHealth Facility(HF)があり、ベスード郡及びスルホッド郡に
はそれぞれ10のHFがある。すべてのHFの運営は登録NGOに委託契約されており、公衆衛
生局(DOPH)はモニタリングと統括管理を行う。例えばBRACは2011年まで、Church World
Service (CWS)は2015年、Health Netは2011年までの実施予算が確保されている。委託先
が活動を終了する場合、2ヵ月前までにDOPHに通達し、引き渡しを行う。HFは人口によ
って決められており、現在のところ新設増加予定は未定である。既存設備につき必要資機
材・建物の標準化をすることが必要である。

タウンシップの基本医療センター(BHC)は支援されているか?(福村)。

既にMoPHより承認を得ており、支援を開始する。

現地コンサルが実施した報告書によると、女性の健康問題として、女性医師不足があげら
れている(福村)。

ベスード及びスルホッド郡は都市に隣接しているため、問題ない。地方郡の状況はさらに
困難なものである(シルザド局長)。
<インフラ整備について>

ヘルスポスト(HP)の建設はどのような手続きを取るか?また、CDCや村落住民が建設実
施を行ったことはあるか?(三井)。

リストに基づき、実施可能なドナーが行う。CDCによる建設事例はなく、すべて民間業者
が実施している。(シルザド局長)。

List of medical equipmentのようなニーズはあるか?(永作)。

CDCは建設を行わず、民間建設会社が実施する。必要リストと50-bed-hospitalのbill of quantity
のソフト・コピーを提供する。なお、発電機が必要であり、BHC/CHCには7kw用、District
Hospitalには50kw用とされている。太陽光発電パネルはShewa郡にてパイロット事業が開始
されているが、人々は不満をもっている模様。パネルの質が高いことを希望する(シルザ
ド局長)。
−60−
面会議事録10
訪問場所
農業・灌漑・畜産局(DAIL)
日時
2009年6月17日(水)16:35∼17:45
先方面談者
Director, Eng. M. Hussin (Safi)
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳所員、福村企画調査員
<現状とニーズ>

ナンガルハール州は22郡に9万7,000haの農業地がある。うち、ベスード郡(1万7,000ha)、
スルホッド郡(1万5,000∼1万7,000ha)の農地がある。ほぼすべての土地が利用されてい
るが、Sheikh Mesriのように砂漠地帯もある。対象2郡は運河のリハビリが必要であるが、
他の乾燥地帯は灌漑整備が不可欠であり、支援を期待する。シリア・アラブ共和国(以下、
「シリア」と記す)の事例では、砂漠の灌漑により松の木が植樹された。日本は、そのよ
うな大きなインパクトのある灌漑農業支援をしていただきたい。また、灌漑には運河修復
が必要であり、灌漑専門家の投入、DAILのキャパシティ・ビルディング、財政支援が求め
られる(サフィ局長)。

ベスード及びスルホッド郡は、野菜や果物を生産することのできる州内では農業環境の恵
まれた地域である。しかし、電気不足による問題により、収穫した農産物を有効活用でき
ていない。適切な保存場所や倉庫、食品加工、市場開拓ができれば可能性が広がる。例え
ば、トマトを栽培し、ケチャップやジュースに加工する工場も建設されている。訪米した
際、風力にて発電を行っているのを見たことがある。また、太陽光を利用した発電も考え
られるのではないか。食品工場設立などの農業発展のために、電力問題の解決が求められ
る。対象2郡では家畜が多いため、ヨーグルトやチーズなどの生産をし、市場開拓するこ
とも検討できよう(サフィ局長)。

DAILは地方や農業用地の少ない地域においては、家畜などの生計向上事業を行っている。
魚養殖、養鶏、養蜂事業なども実施している。本日は畜産病院の開会式にも参加したとこ
ろである(サフィ局長)。

ナンガルハール州にはJICAを含め、約40の援助機関(NGO、ドナー)が活動している。ま
た、PRTの枠内においてAgricultural Development Team (ADT)が全郡にて活動している。
JICAの大田専門家はTechnical Working Coordination Meetingに出席しており、常に情報共有
をしている。RIPへの期待は高く、5州(バグラン、ラグマン、クゥンドゥズ、クナール、
タハール)及びナンガルハール州への事業拡大を期待する。RIPがBaseline Surveyを実施し
たように、農業支援事業の質の向上のためには、調査が重要である。ナンガルハール州は
農業に適した気候であり、果樹や高地農業に関する調査実施が期待される(サフィ局長)。
<組織体制について>

DAILはナンガルハール州政府あるいはMAILのどちらの管轄下にあるか?(青柳)。

DAILはナンガルハール州においてMAILを代表している。しかし州政府と情報共有を行っ
ている(サフィ局長)。

Comprehensive Agriculture and Rural Development (CARD)のほかに独自のインフラ整備事
業は実施しているか?(青柳)。

CARDの実際の事業はまだ開始されていない。十分な独自の開発予算がないため、すべて
−61−
の開発事業はドナー拠出によるものである。例えば友人であるDr.中村はクナール州にて運
河整備を行っているが、彼らの自己資金で実施している。Dr.中村のことは政府であろうと
非政府であろうと、尊敬している。

ナンガルハール大学には農業学部がある。また、政府は1980年代に稲作事業を実施しよう
としていた。RIPが開始したこともあり、農業技術学校を設立したいと考えている(サフィ
局長)。
−62−
面会議事録11
訪問場所
農村復興開発局(運営担当)
日時
2009年6月21日(日)9:20∼10:20
先方面談者
Operational Department Head, Mr. Said Ahmad Saeedi
Mr. Mohammad Naeem Pajhwak, Engineer Head, Eng. Batyalai
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳所員、福村企画調査員
<Operational Departmentの機能と役割について>

RRDには当部の他に3つの部(Engineering Dept.、Social Development Dept.、Coordination
Dept.)がある。これらの部局は、アドミや調達に関する要望を当部へ提出し、Operational Dept.
が取りまとめて対処している。その後、会計事項を含めてMRRDに報告している。当部は
37名の要員がおり、5つのグループに分かれている(調達部門、運輸部門など)。局長と当
部は常に連絡を密にしており、他部との間の調整を行っている。毎月開催されるRRD局長
との会合では、事業計画、会合アジェンダ、報告などについて報告を行う一方で、当部は
RRDの計画に従い、各部局が何を実施するかについての活動計画を作成している。

Operational Dept.は郡レベルの業務を担当し、予算を郡へ配分しているが、村落レベルの事
業実施にはかかわっていない。村落レベルの事業実施はSocial Development Dept.(SDD)
の管轄であり、NSPモニタリングを実施している。月末にSDDは活動状況をDRRDに報告す
る。
<DRRDの機能と役割について>

DRRDと州政府との関係:毎週州政府と調整会議を開催しており、MRRDとも情報共有し
ている。人々から寄せられた問題や要求(例:破壊された住居や取水口の建設など)は州
政府にあげられる。これらの要求はProvincial Council にて承認された後、DRRDへ情報共
有される。DRRDはこれらの問題を実施機関(ドナーやNGO)と情報共有し、事業形成の
調整を行う。事業の実施機関とは週間会合にて事業の調整をしており、別途、ドナーとの
間でTechnical Working Groupを毎月開催しており、活動報告を共有している。

予算はMRRDから直接配分され、1)給与、2)事務所経費、3)事業費に分かれている。
現在実施中事業は、NABDP(60事業)、WATSAN(10事業)、他の事業〔10事業:GTZ、NSP、
国連児童基金(UNICEF)、国際移住機関(IOM)〕であり、国家地域開発プログラム(NABDP)
とWATSANはMRRDからの予算(財務省からの政府コア予算)にて実施している。

帰還民支援の連携:DORRは帰還民に対する土地分配事業を担当し、帰還民村ではDACAAR
やUNICEFによる井戸プロジェクトなどの調整を行っている。DRRDとも情報共有し、強調
関係にある。

郡開発委員会(DDA)現状:ナンガルハール州22郡のうち、7郡(JICA対象2郡を含む)
にDDAがある。DDAの集会場建設などを行っている。将来、他の郡にもDDAを設立してい
く計画。DDAは5CDCをCCDCにクラスター化し、CCDCのなかからChairperson、Deputy、
Finance officerなどが選出される(バティヤライ技師)。

NABDPの活動資金は、DRRDを通して実施されているのか(青柳)。

DDAは5年計画の事業があり、優先順位がつけられている。これらの事業はCDCを通して
実施され、DDAがモニタリングを行う。ただし、CDCが形成されていない郡においてはDDA
−63−
が事業を実施する。DRRDも事業モニタリング、調査を実施する(バティヤライ技師)。

貴組織名の英語表記は統一されていないが、正式名称は何か?(福村)。

DRRD ( Directorate of Rural Rehabilitation and Development )、 PRRD ( Provincial Rural
Rehabilitation and Development)の両方正しい。また、人々はRRDとも呼ぶ(サエディ部長)。
<CDCと業者情報>

NSP実施において、小規模プロジェクトはCDCが自ら実施することもあるが、大規模プロ
ジェクト実施は通常民間建設会社が実施している。対象2郡における特別な業者リストは
ない。業者はGTZやBRACなどのNGOにプロポーザルを提出するので、彼らに尋ねるのが
よい。なお、Engineering SectionはNSPと関連なく、DRRDの予算内において次の業務を行
っている:1)現在実施中の18事業のモニタリングと技術的助言、2)事業の設計をし、
MRRDに承認を得る(バティヤライ技師)。
−64−
面会議事録12
訪問場所
農村復興開発局(DRRD)(局長)
日時
2009年6月21日(日)10:35∼11:00
先方面談者
Director of RRD Nangarhar, Eng. Ahmad Wali Hakami
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳所員、福村企画調査員
<DRRDについて>
 DRRDは地方開発を所轄し、都市開発(ジャララバード市内)は市役所が担当している。
DRRD は 毎 月 2 つ の ド ナ ー 調 整 会 議 を 開 催 し て い る : 1 ) Water coordination meeting
(UNICEF、UNHCR、DACAAR、IOM、PRTなど出席)、2)TWG meeting。なお、DRRD
はその予算も含めてMRRDの管轄下にある(ハカミ局長)。
<CDCについて>
 ベスード郡には100のCDC、スルホッド郡には127のCDCがある。FPはBRACが担当してい
る。JICAが事業を実施する際、CDCを通して行うのがよい。Chaparral郡のMandozai CDC
は日本大使館からの拠出を受けて学校建設を行った。CDCは自分の事業という責任感をも
つことになり、プロジェクトの持続性に資する。しかし、民間業者が事業を行えば、彼ら
は自らの利益を優先させる。大規模事業の場合は業者を使うことが一般的であるが、小規
模事業の場合にはCDCを活用するのがよい。UNICEFやWFPはCDCを通じて事業実施して
おり、DRRDがSupervisionをしている。例えばUNICEFは水分野の事業をしており学校や診
療所での井戸採掘をしている(局長)。
<JICA新規事業について>
 他援助機関との活動重複を避けるために、TWGに出席していただきたい。また、JICAが調
査設計で事業予定地視察の際には、DRRDの技術者も同行させることが可能である(ハカ
ミ局長)。

対象11村落はUNHCRと選定し、2009年2月に基本情報収集済みである。本件はNSP/PMU
に情報共有しており、NSPの担当者が今回調査団とともに村落を訪問している(福村)。

まだ事業立案の初期段階であり、CDCを訪問してニーズ確認と優先順位づけをしていると
ころである。JICAが技術的見地から調査を実施する際、DRRDの技術者の知見を伺いたい
(三井)。

DRRDはJICAが必要な支援を行う(ハカミ局長)。

ドナーに対して地方開発の重点課題として強調している分野は何か?(福村)。

事業の優先順位としてはCDP、DDPに明記された明確な分野がある。ナンガルハール州で
特に問題となっていることは井戸不足である。村落における小規模配水システム構築(pipe
scheme)、太陽光を利用した井戸などをJICA事業に考慮していただけると幸いである。井
戸水汲み上げの際に発電機を用いると燃料供給の問題があるので、太陽光がよい(ハカミ
局長)。
−65−
面会議事録13
訪問場所
国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)ジャララバード事務所
日時
2009年6月21日(日)11:30∼12:30
先方面談者
Eng. Padshah Mir Rahmatzai, Provincial Manager, Jalalabad
Mr. Pushpa Chitrakar, Chief Technical Advisor (CEDPB), Kabul
当方面談者
織田団員
JICA調査団の趣旨を説明し、Rahmatzai氏から東部での活動全般にいての説明を受けた後、
Chitrakar氏を含め日本のCEDPB(1,200万ドル)の実施状況について聞き取りを行い、今後も情報
交換と調整を行うことの重要性を確認した。
聞き取りの要旨は以下のとおり。
Rahmatzai 氏:UN-HABITATは1993年よりアフガニスタンで活動を続けている。現在Jalalabad事務
所の管轄下では1)世銀資金によるNSPの実施 (112communities)、2)USAID資金によるLearning
for Community Empowerment、3)EC6資金によるInformal Settlement(IDPs)のアップグレー
ド、4) 日本の資金によるコミュニティー開発の4つの案件を実施している。
Chitrakar氏:2002年以降は緒方Initiative2及び3を請け負った実績もある。また、JICAの地方開発
支援プロジェクト(IRDP、バーミヤン)の実績もある。今後のJICAの案件でも、IPRDのよう
にUN-HABITATに事業を任せてほしい。
〈日本の資金による案件について〉
Chitrakar氏:都市CDCのアップ・グレード、ジャララバード市内の水道整備、Kunar、Khost、
Paktya州でのCDCへの資金供与による案件形成・実施、とナンガルハール州4郡でのCDCへ
の資金供与による案件形成・実施の4つのコンポーネントがある。
ナンガルハール州CDCプロジェクト(計4郡)にはJICAの対象2郡(Surkhroad、Beshud)が
含まれる。各郡15CDC、計30CDCに対し、1件平均3万5,000ドルのブロック・ファンドの予
算がついている。2郡においては30件すべてのデザインを終了し、そのうち6件が実施開始、
平均約25%の実施率である。Surkhroadの学校建設1校の地域(全5村)にFatihabad村が含ま
れる以外、JICAの対象11村との重複はなかった。
UN-HABITATの方針として、CDCが主体になって計画を立てるため、時間を要する。2009年
12月までは延長希望を出しているが、現場では従来の計画どおり進める方向である。
Beshud郡にはUN-HABITATの事務所がありエンジニア10名、Social Organizers20名を配置して
いる。正規の国連のローカル職員契約ではなく現地のプロジェクト・ベースの契約を結び、
彼らにはプロジェクトで一般車で自由に移動してもらっている。われわれ正規職員がモニタ
リングに行く際には国連の基準で移動する。
Shurkhroad郡についてはジャララバードベースのエンジニアが5∼6名が担当している。
基本的に5つのCDCにつきプロジェクト・マネージャーを1名とコミュニティー・ワーカー
をつけている。
−66−
〈先方からの意見〉

JICAがCDCを通して新しい案件を実施する場合、われわれ同様に「NSP graduated CDC」と
呼ばれるCDCを活用するとよいだろう。

HABITATでは「Handling fee」呼んでいる諸経費(人件費、交通費、事務所管理費、安全管
理等)は、特にアフガニスタンでは団体が実施するかにかかわらず、事業実施にとって不
可欠である。

小型の建築物やインフラに関しても最低限の「Supervision」は不可欠である。
−67−
面会議事録14
訪問場所
国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)ジャララバード事務所
日時
2009年6月21日(日)14:00∼14:50
先方面談者
Development Section, Programme Officer, Dr. Noor Ali
Mr. Asadullah
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳所員、福村企画調査員
<UNAMAについて>

UNAMAには政府のカウンターパートがなく、開発事業の調整を行っている。主要分野は
4つある。1)政治、2)人権(戦闘による市民の被害、強制結婚など)、3)開発(芥子
対策、代替作物など)、4)ガバナンス(行政改革、透明性の確保など)。特定の担当省庁
はないが、農業分野のTWGをファシリテートしている。UNAMAはドナーでも事業実施機
関でもない(アリ氏)。

全体の調整は完全とはいえないが、他の地域に比べ東部地域は比較的調整が行われている。
日本の団体(PMS、SVA、JVC)とも良好な関係を構築している。Civil Military Working Group
では、NGOが参加し問題を話し合っている。その結果、PRTに対しNGOの活動対象地域と
重複しないよう提言し、ある程度の成果につながった。UNAMAはPRTとも調整を行う(ア
リ氏)。


PRTの活動計画は?(青柳)。
PRT要員の任期は6∼9ヵ月と短期間なものが多く、長期的視点に立って物事を計画する
ことが難しい様子。PRTはインフラ整備(学校、道路)に注力している。PRTは州知事から
の助言を得ている。以前、PRTは村落にて直接事業を開始していたが、UNAMAの調整によ
り、PRTはPDCに参加するようになった。ナンガルハール州のPDPには優先80事業が明記さ
れている。UNAMAはPRTに対しても、PDPに沿うよう助言している(アリ氏)。
<ローカル・ガバナンスについて>

DDAやNSP/CDCの関係はどうか?(青柳)。

NSPの目的は国をまとめ、相互扶助の関係を構築することにある。CDCは住民のニーズを
村落開発計画(CDP)に文書化した。CDCは自らのニーズを把握しているため、我々はCDC
をツールとしている。DDAはCDCのニーズに基づいており、アフガニスタンの重要な資産
である。5CDCから、2名がDDAに代表として選出されている。アフガニスタン支援の成
果が持続可能であるか否かは、コミュニティに負うところが大きい。JICAが住民の間で持
続可能な事業を実施することを期待する。成功例としてはペシャワール会医療サービス
(PMS)が実施した運河建設があげられる(アリ氏)。


州開発委員会(PDC)はいかに設立されたか?(青柳)。
Cabinet Governmentにより設立され、州知事が議事を行っている。タリバン時代には国連人
道問題調整事務所(OCHA)がUN/NGOの調整を行うvillage coordination bodyがあり、それ
が元になっている(アリ氏)。

地方統治独立局(IDLG)は州レベルの能力強化をめざしているが、UNAMAのカウンター
パートとはならないのか?(青柳)。

IDLGはカルザイ政権によって設立され、UNAMAやPRTの助言を聞いている。IDLGは開発
主体としてVillage council設立を構想しており、DDAについては治安システムの最小単位に
したいと考えている。しかし、治安の問題はお金で解決するものでなく、コミュニティへ
−68−
の直接支払いは望ましくない(アリ氏)。

州政府は開発事業を行っているか?(青柳)。

現在まで事業実施実績はない。開発予算の事業は、各省庁によって行われている。なお、
治安関係は内務省が担当している(アリ氏)。

選挙実施に向けた計画はどうか?(青柳)。

選挙委員会はUNAMA事務所内にあり、UNAMAはモニタリングを実施する。政府が弱いた
め、反政府勢力の活動が力を増してきている(アリ氏)。
<JICA事業立案への助言>

現状を改善するため、対象2郡においてどのような活動が望ましいか?(三井企画役)。

ベスード及びスルホッド郡はナンガルハール州のFood basketである。マイクロファイナン
ス、芥子代替作物の開発(イチゴ、サフラン、食用油のためのヒマワリ)などが成功を収
めている。稲作もよい。しかし、これらは複数州にて大規模に実施する必要がある。例え
ばヒマワリ栽培では、工場をつくり油生産まで実施する。採算性を考え、住民の経済状況
を改善する必要がある(アリ氏)。

住民参加事業はFPの能力によるものが大きいのではないか?(三井)。

CDCが事業実施主体であれば、資金は適切に使用されるであろう(アリ氏)。
−69−
面会議事録15
訪問場所
UNHCRジャララバード事務所
日時
2009年6月21日(日)15:00∼16:40
先方面談者
Admin/Program Officer Ms. Kashiwa, Assistant Program Officer Eng. Timorshah
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳所員、福村企画調査員、
JICS永作所長
ナンガルハール現地調査終了を前に、UNHCR-SOJ事業担当者への報告と村落ニーズに対する意
見交換を行った。UNHCRより以下のコメントを頂いた。
<Sultan Pur Lower村>

太陽光パネル:中国製のパネルは質が悪いとのこと、注意が必要。

防護壁:少数の者が裨益するのみで、必要性が低い。当初Intakeのニーズがあったが、長老
の圧力により変更した模様。

手押し井戸:UNHCRが建設した1つの井戸のみ機能している。更なる井戸が必要。DACAAR
に対して井戸建設を行うよう推薦することは可能だが、確約できない。

住居:本件にてUNHCRチームが同村を訪問した際、Malik不在でまだ話が進んでいないが、
考慮する。
<Balabagh村>

小水力発電:2ヵ所の現場を視察した。水量、高低差3∼4mあり、実施可能。UNHCRが
ラグマン、ダラエ・ヌールで建設した小水力発電は機能している。12kwで200家族が裨益
する。補修管理費は住民がAfs.50/familyを集金しており、問題はない。

教室増築:調査団が訪問した村では教室数が不足しているものの、校舎がある。他地域で
は校舎すらない学校が多く存在することを考慮する必要がある。

アスファルト道路:政府による事業である。村落道路はMRRD、それ以外の道路はMoPU
の責任である。通常、ドナーが拠出を行うが、担当省との調整が必要。

コミュニティ・センター:通常モスクが同機能を有している。女性はモスクには行かない
ので、村落によっては女性がコミュニティ・センターに行くこともありうる。ただし、土
地所有権を明確にする必要あり。通常、職業訓練コースなどは、Malikや長老の家で実施す
る。

防護壁:事業地を視察しておらず、コメントできない。

小水力発電:可能。同村には小麦の製粉システムがある。

橋:イランが資金拠出をするが、村落内で橋の設置場所に関する合意形成ができず、事業
が進んでいない。
<Ada Akhundzada村>

貯水池と取水口:夏期には洪水の季節があるが、通常は川底に水がない。

運河清掃:事業地を視察しておらず、コメントできない。

教室増築:全村と同じく、少なくとも校舎がある学校である。

ジェネレーター発電:不要。同様の事業は、通常燃料の問題で数ヵ月で使用不可。

コミュニティ・センター:全村同様、優先順位は低いと思われる。
−70−

産婦人科診療所:DoPHとの協議が必要。

立体交差:不要。参加者のなかに車輌保有者がいたからではないか。

動物病院:DAILとの協議が必要。通常、郡には巡回によるサービスを提供している。

砂利舗装:交通の便を向上させることよりも、より直接的に生計向上にインパクトのある
事業のほうが優先順位は高いのではないか。
<Girdi Kas村>

小水力発電:クナール川を利用し、建設可能であろう。ただし高低差は最低3m必要であ
り、現場視察をする必要がある。

砂利舗装:実施可能。特に、雨期には泥の道になる場所と思われる。

取入口:UNHCRが既に1ヵ所建設した。建設には多くの資金はかからないであろう。

防護壁300m:UNHCRは2事業を実施した。1件のコストは8万~10万米ドル。

学校の外塀:学校校舎建設事業が中断してしまっている。

運河清掃:実施可能。

Diversion of River:同地域の川は複数の川が合流し水量が多く、実施困難と思われる。

手押し井戸:UNHCRが建設したが、更に必要である。UNHCRからDACAAR、ICRC、IRC
に提案することは可能であるが、JICAが実施してもよい。
<Koshgunbat>

女子学校の外塀とトイレ:女子学生が通学するため、ニーズは高い。

防護壁2km:現地視察をしておらず、コメントできない。

取水口と防護壁500m:必要性が高い。

小水力発電:高低差があれば建設可能。
<その他協議事項>

対象地選定時から状況は刻々と変化しており、11村すべてにおいて実施する必要は必ずし
もないのでは。アクセスが困難なGirdi Kasは草の根スキームにて迅速な実施をするのも1
つのやり方。その後、他村に拡大していってもよい(織田)。

難しいことであるが、実施可能性の検討には現場視察を行う必要がある。FSを行っても、
実施の際には状況変化していることもある。より深い調査が必要。なお、井戸などはCDC
による建設が可能(柏氏)。


研修実施などもよい。早期にJICAのプレゼンスを誇示することが重要(柏氏)。
JICA-UNHCRの包括合意文書ドラフトにつき、UNHCRの役割として基本的な調整や情報共
有は歓迎する。しかし、”evaluation of the project”などは、荷が重い印象を受ける。表現の
書きぶりに留意する必要がある(柏氏)。
−71−
面会議事録16
訪問場所
地方統治独立局(IDLG)ジャララバード事務所
日時
2009年6月21日(日)15:30∼16:10
先方面談者
Mr. Hanif Gartival Administrator of IDLG in Nangarhar Provincial government
Mr. Ahmadzia Abdulzai Spokesman & Media Officer of Nangarhar Provincial
Governmen
当方面談者
青柳所員

ナンガルハール州におけるIDLGの役割とは何か(青柳)

どこの州でも同じであるが、IDLGは州政府とは一体であり、IDLGは州知事オフィスにお
いて、主に州知事オフィスの総務・経理・広報・人事、各省出先機関や州議会との連絡調
整等を担っている。州知事オフィス+IDLGで州政府というイメージである。

ナンガルハール州における州政府と各省出先機関とはどのようなものか。(青柳)

各省出先機関は中央省庁の管理下にあり、州政府と直接の関係はないが、州内の開発につ
いては州知事が主催する州開発委員会(Provincial Development Council : PDC)において州
政府、各省、ドナー、NGO、PRTとの連絡調整が行われている。

カブールのIDLG本省によれば、既存のCDCやDDAとは異なる村議会や郡議会の立ち上げを
IDLGが主導すると聞いているが、ナンガルハールでの状況はどのようなものか。(青柳)

そのような話は聞いていない。ナンガルハール州政府としては特段のアクションはとって
いない。

郡知事と州政府の関係とはどのようなものか(青柳)

郡知事は州政府によってカブールのIDLGに推薦され、中央政府によって承認される。
−72−
面会議事録17
訪問場所
UNHCRカブール事務所
日時
2009年6月22日(月)16:40∼17:50
先方面談者
Sr. Programme Officer, Mr. Arman Harutunyan
Sr. Regional Durable Solutions Coordinator, Mr. Sivanka Dhanapala
Admin/Program Officer Ms. Kashiwa (SOJ)
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳所員
当初14:00からの会議予定であったが、ジャララバードからのフライト遅延により、時間を変更し
ての開催となった。本案件につき、UNHCRの人事異動にかかわらず協議内容の継続性を保つため、
SOJより柏氏に同行いただいた。調査団報告の後、意見交換を行った。
<調査団報告>

対象村落11村のうち、5村につき現場視察を行った。同地域はまだ開発の段階に進んでい
るとはいえない。基本的インフラ整備が急務であり、Income generation activityなどは次の
段階である。CDCによる優先順位と州開発計画(PDP)、CDP、各省の優先リストなどをク
ロスチェックし、インフラ整備優先順位を決定していく。今年度(2009年度)大使館の草
の根スキームにて申請案件は以下のとおり。1)小水力発電事業、2)防護壁建設3)女
子校の外塀及びトイレ建設、4)診療所建設。残りのインフラは来年度の草の根申請、及
び専門家投入などにより、数年で実施してゆく。今後、残りの6村落につき、フォローア
ップ調査を現場で実施。一方、JICA本部内で主管部との協議を進め、選挙後にインフラ調
査団を派遣予定(三井)。

対象11村にはCDPがあるが、太陽光発電やアスファルト道路などを含む “wish list”のよう
なもの。DDA、教育局、保健局の優先事業リストを入手した。これらをすべて考慮し、優
先順位を決定することになる(青柳)。
<事業実施について>

ナンガルハールに関係者面談を行った結果、多くの機関がよく調整しながら実施している
という印象を受けた。質問であるが、UNHCRは他機関といかに調整を行っているのか?ま
た、帰還民が増加し人口が増えるなかで、ニーズは高まるばかりである。JICAがいかに効
率的に対象地域で支援を行っていくことができるであろうか?(織田)。

2008年11月の国際会議は、難民帰還省(MoRR)のキャパシティが低い現状において、主
要関係省に帰還民と再定住問題を考慮に入れた開発計画を作成してもらう狙いがあった。
このような国家レベルと現場レベルで多くの調整を行っている(ダナパラ氏)。

ニーズは限りないため、JICA事業実施の際は、ある地域にて限定した事業を確実に実施し
ていくことがよいのではないか。まずインフラ整備が完了すれば、その時点で次に何が必
要か中期的視点でみえてくるであろう(ハルトゥヤン氏)。
<農業支援について>

農業分野における問題は、1)食品保存の適切な貯蔵施設の欠如、2)食品加工技術の欠
如、である。貯蔵施設がないために、野菜や果実をパキスタンで貯蔵しておき、アフガニ
スタン内で冬期に高い値で購入しなければならないのが現状である。PRTが貯蔵施設を建
−73−
設したが、住民が維持管理できずに失敗した例がある。農業生産∼食品加工∼市場流通の
ための貯蔵のライン構築が望まれている(ハルトゥヤン氏、柏氏)。
<教育・保健支援について>

DOPHの要望案件は、現在賃貸中の医療施設(HF)につき、診療所建設を行うことであっ

た。DOEも明確に150校の校舎建設が必要とのことであった(織田)。
MoEはソフト及びハード支援を検討している。問題は人的資源の不足、特に女性教員の不
足である(ダナパラ氏)。

1分野に特化した支援よりも、複数セクターの事業が必要。学校を建設するだけでは、急
務である生計手段の確保には直結しない。土地分配事業の失敗にもみられるように、包括
的アプローチをしていかなければならない(ハルトゥヤン氏、ダナパラ氏)
<モニタリングについて>

モニタリングの件、SOJにて協議したことはUNHCRがReturnee monitoringで対象村落を訪問
する際、実施するということ。よいニュースは、現在JICAも対象村落を訪問することがで

きることである(柏氏)。
UNHCRのモニタリングとはどのようなものか?帰還民のうち、再度アフガニスタンを離れ
た者のデータなどはあるか?(青柳)。

そのような情報は入手するのが非常に難しい。UNHCRのモニタリングは国境における
Encashment centreによる登録であり、その後の人々の動向を把握するのは困難。なお、ク
ロス・ボーダー移動の調査が先週開始した。トルハムでは、1日3万人移動している(ハ
ルトゥヤン氏、ダナパラ氏)。

自発的帰還書類(VRF)登録に基づいて調査を行うと、帰還先として登録された村落でそ
のVRF登録者を確実にみつけ出すことはできない。帰還先の目的地は、登録時に確定して
いないこともある。帰還先地域に関するデータはおおよその傾向を示す指標にすぎないが、
ANDS Sector Strategy (Costing)作成においては、有益なデータであった(柏氏)。
<カウンターパート選定について>

カウンターパートについて4通りの選択可能性を考えた。JICA内部手続きにより、1つの
カウンターパートを設定する必要がある(織田、青柳)。

選定の最終決定は、選挙結果を待つのがよい。閣僚が決定してから体制が判明しよう。選
挙の結果を検討し、MORR以外のいずれかを選定するのが適当であろう。Line Ministriesは
資金・人材がそろっているが、残念ながらMoRRは推薦できない。(ハルトゥヤン氏、ダル
パナ氏)。

ほとんどの訪問先では、CDCの活用を助言された(三井)。
<今後の方針について>

今後、いかに進めていくのか?(ハルトゥヤン氏)。

JICAで解決しなければならないことは、どのようなスキームを選択するかということ。一
方、UNHCR側の課題としては両者の包括合意文書につき検討を行うこと(2007年からの経
緯もあり、対象村落の選定経緯などを文書にして残しておく必要がある)。1年ごとのモニ
タリングを含めた合意文書案を作成した(織田)。
−74−

了解覚書(MOU)締結の前に、今後のJICAの事業計画を作成していただきたい。事業のア
ウトラインを明確にし、それを基にMOUを交換することを提案する(ハルトゥヤン氏)。

現段階では、JICA内部で具体的な事業計画を作成することが難しい。本部の内部調整で2
ヵ月、その後外務省での協議となる。JICA本部では他の技術部との調整があり、最低2ヵ
月は必要(織田、三井、青柳)。
本会議の結果、以下が合意された。

JICAは今後の具体的な事業計画を作成後、UNHCRと情報共有する。その後、包括合意文
書の内容を検討していく。
−75−
面会議事録18
訪問場所
JICAアフガニスタン事務所(教育分野専門家)
日時
2009年6月23日(火)15:00∼16:00
先方面談者
田口企画調査員、小出教育協力計画個別専門家
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員
教育局のニーズが校舎建設に特化している現状のなか、JICAの教育案件と連携の可能性を検討
すべく、関係者と協議を行った。
<JICA教育事業について>

現在実施中のSTEP2及び特別支援教育強化プロジェクトは、2010年に終了する。現在、後
継案件の検討を始めたところである。2つの事業を一本化してプログラム化し、地方展開
をめざしたい。州のDOEとRDを締結できることをめざしたい。本省から距離を置き、州で
good practiceをめざす。それを中央にフィードバックし、全国展開を検討したい。候補対象
地は専門家派遣可能なバーミヤン州、ナンガルハール州、バルフ州である。日本からの拠
出によりUNICEFによって建設された学校の教師に対し、STEP2の教材を使用して訓練を実
施している。オールジャパンとしての相乗効果をめざしている。なお、特別支援教育は障
害者を対象とした支援教育であり、特に専門家確保が難しい(田口)。

MOEでは州、郡のキャパシティ・ビルディング(役人及び教師)を目標としており、ソフ
ト面での支援も重要となっている。教師研修では、STEP2の指導書を支援ツールとして使
用してもらっている(小出)。

MOE所轄のCommunity Based School (CBS)は機能的である。CBSはコミュニティが民家
などの場所を提供し、School Management Committeeを設立し、教師を探す。CDCのなかに
はEducation Committeeも設立されている。教師の給与はコミュニティが支払ったり、NGO
が資金提供することもある。CBSには国家基準があり、質が高まればMOEがCBS教師を正
式採用することもある。CBSにおいても、STEP2の指導書を使ってもらえればと考えてい
る(小出)。
<将来の事業について>

現実性を考えて、このような既存UNHCRの活動があれば、積極的に地方展開を検討したい。
できる限りgrass rootsにて、専門家もモニタリングやベース・ライン学力テスト実施などに
かかわりたい(田口)。

対象地域は帰還民が多く、他地域に比べて教育への理解がある様子(織田)。

事業キーワードは帰還民、パシュトゥンが考えられる。検討していただきたい(三井)。

識字事業に関しては、大統領選挙後に事前調査団派遣の予定。今までバルフ州を想定して
いたがナンガルハール州についても検討したい。ジャララバード出張の際、識字局長とは
面談している。識字事業では、インセンティブとして学ぶ喜びをどのように伝えていくの
かが重要である(田口)。

アフガニスタンではUN-HABITATとUNESCOが識字事業を推進している。パキスタンの現
状と比較し、アフガニスタンにおける識字事業はマイクロクレジットと平行して実施する
など、非常に進んでいる(小出)。

世界的な援助の傾向として、緊急時の教育が注目されている。自然災害などが発生した際、
−76−
非識字者や障害者が的確に自分の身を守ることができずに、より多くの被害を被る傾向が
ある。有事の際に教育が貢献できるようにというイニシアティブであるが、アフガニスタ
ンMoEのなかで認識が高まりつつある。このようなことも視野に入れることができれば、
先方の意向が入ることになる(田口)。
−77−
面会議事録19
訪問場所
JICAアフガニスタン事務所(保健医療分野専門家)
日時
2009年6月23日(火)16:00∼17:00
先方面談者
磯野チームリーダー、大宮所員
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員
ソフト・コンポーネント支援につき既存JICA将来案件との連携可能性を検討すべく、JICA専門
家と協議を行った。

既にジャララバード出張をしており、将来案件として帰還民の結核対策を検討している。
帰還民は比較的経済的弱者が多く、結核患者率が高い。カンダハールではWHOが結核対策
を検討しており、カナダ軍活動地域でもありカナダが拠出する予定である。しかし、東部
ナンガルハールではまだドナーがついていない。現在検討していることは以下のような実
施である(磯野)。
①
国境チェック・ポスト:帰還民は住民登録をするとともに、ヘルス・チェックを行って
いる。その際にTBスクリーニングと保健教育を実施する。
②
帰還民村:多くの帰還民は、その後の帰還先が決定するまでキャンプに留まる。また、
そのままキャンプに定住してしまう人たちもいる。人口が流動的であるが、3ヵ所のキ
ャンプがあり、米INGOのIMC(UNHCR資金)が循環診療を行っている。この活動に結
核対策のコンポーネントを入れてもらうことを検討している。ただし、UNHCR委託資金
が終了する可能性があり、JICAからNGO委託が可能であればその可能性も考える。
③
レントゲン診察:上記2ヵ所の方法よりもより積極的な結核診断を実施する可能性も考
えられる。巡回診療でレントゲン撮影を行うような新しいモデルを検討している。

対象地域において、パイロット事業として行っても問題はないか?(大宮)。

住民検診のパイロット事業について、11村を含む全地域とすれば問題ない。ただし、医療
体制が整っていない地域において、結核に限定した検診のみ行うのは適切でない。IMCの
移動診療車のように、母子保健、ワクチン接種などを含むパッケージの一部として結核検
診を行うのがよい。来月(2009年7月)、ナショナル・スタッフをジャララバードに派遣し、
現場視察を行いたい。なお、機材供与の予算として、移動車輌、レントゲン、レントゲン・
フィルムなどを含める必要がある(磯野)。
−78−
面会議事録20
訪問場所
農村復興開発省(JICA農村開発専門家執務室内)
日時
2009年6月24日(水)9:45∼10:40
先方面談者
塚原専門家
当方面談者
三井団長、斉藤団員
<事業立案に際して>

ナンガルハールで事業を実施する際、ソフト・コンポーネント専門家の投入も検討しては
どうか。また、計画立案に際してはCDPやDDPを参照することが必要である。州開発計画
(PDP)はコミュニティの “wish plan”のまとめのようなものであるが、ボトム・アップ・

アプローチを取っている。
IRDPの実施例では、CCDCが事業計画を行い、FPが設計、業者が建設を行った。業者への
依頼はFPから行われたが、FP/CCDCの双方が業者モニタリングを実施した。インフラ建設

中、未熟練労働者はCCDCが集めた村民が参加した。
GTZ-ISが実施しているPALは、CCDCレベルで事業計画を作成している。当初、PALは独自
にCCDCと類似したものを設立し、Village Development Councilと呼ばれていた。現在は名
称を変更し、CCDCとなっている。

カンダハール帰還民社会復帰・コミュニティ開発支援計画(JSPR)の事例では、現地NGO
であるFPの能力が低く、キャパシティ・ビルディングを目標としていたが、日本人のカン
ダハール駐在が困難な状況のなか、限界があった。MRRDはFPを活用するよりも直営で実
施したい意向をもっている。現地NGOのキャパシティ・ビルディングは事業の持続性に貢
献する。
<カウンターパートについて>

MRRDプログラム部門のCLDD (Community Lead Development Department)は、主要なコ
ミュニティ開発事業のカウンターパートとなっている。IRDP、JSPR、PAL、NABDPのカ
ウンターパートでもある。CLDDはNSP事業実施後のCDCをサポートする部局として設立さ
れたが、キャパシティが低いのが課題である(本来NSP事業スタッフがCLDDに来る予定で
あったが、給与面での折り合いがつかなかった。人数は揃ったものの、能力強化が必要)。

NABDPフェーズ3(2009年7月∼5年間実施)では、CLDDを活用してキャパシティ・ビ
ルディングを実施する計画がある。同計画には3段階のトレーニング計画があり、中央の
CLLD、州のPRRDにおけるSocial Organizer、郡のDRRDにおけるSocial organiser(SO)間の
ライン強化をめざしている。現在、郡に2名のSOが配置されている。SOの約80%の活動は
NSP事業に費やされているが、その他、PAL事業などのモニタリング、ドナー調整、ニー
ズアセスメント、DDA、CCDCに対するmobilisationなども行っている。

中央レベルではCLDDをWitnessとし、実施の手助けとなるようなFPのような役割を負うこ
とが考えられる。一方、実務的なことは州レベルのPRRDとし、Technical Departmentの技術
者からの助言を頂くのも一案。実際に専門的な話を詰めていくのはPRRDの中央技術部門
となるが、権限がないのが問題。
−79−
面会議事録21
訪問場所
日本大使館
日時
2009年6月24日(水)16:15∼17:20
先方面談者
北野書記官、井上書記官、児玉書記官
当方面談者
三井団長、織田団員、斉藤団員、青柳所員、JICS永作署長、柿澤所員
現地調査終了に際し、協力準備調査報告書を基に三井団長が結果報告を行った。ナンガルハー
ルでの現地調査報告、実施方法の選択枠、カウンターパート選定、草の根・人間の安全保障支援
無償申請予定案件に係る説明を行った。主な質疑応答は以下のとおり。
<コミュニテイ開発支援無償・草の根について>

草の根については、既に今年春にお話を伺っている。今年は他予算との絡みにおいて、ア
フガニスタンにおける草の根無償の予算を減らさざるをえない状況であるが、ナンガルハ
ール州においては日本としても前向きに検討していきたい旨、本省と話を進めている。全
体枠縮小のなかで6案件は難しいものの、病院、学校、農業が重点分野であり、直接的に
住民裨益をする事業は見込みがある。なお、学校建設の外塀建設は住民貢献分としてやっ
ていただくのが通常(児玉書記官)。
<本案件の今後について>

この調査団を受けて、今後の予定はどうなるか?(井上書記官)。

帰国後に課題部に報告し、選択枠を検討する。コミ開実施なら秋の大統領選挙後に協力準
備調査団の派遣。技術協力プロジェクトの場合は無技課と相談したうえ、再度調査団派遣
となる見込み(三井)。

本案件の今後は、JICAがどの程度この案件を打ち出していきたいのか否か、による。例え
ばJICAが技プロで5年間実施するのであれば、IRDPと同じレベルに留まるが、一方、補正
予算で巨額資金がつく可能性もある。その意向により、外務省も留意して進めていく。外
務省はコミュニテイ開発支援無償に反対はしていない。むしろ、広めようとしている。本
件はアフガニスタンコミ開第1号と思っていた。日本は一般無償でカブールとパルワンで
学校建設を行った。しかし教育省からは、アフガニスタンの現状に際し、質より量の支援
をしてほしいとの要望を受けた。以後、一般無償をやめ、草の根で学校建設をすることと
なった経緯がある(井上書記官)。
−80−
面会議事録22
訪問場所
公衆衛生省(MoPH)
日時
2009年6月25日(木)8:40∼9:00
先方面談者
Director of Policy and Planning, Director General, Dr. Ahmad Jan
Acting Director, Dr. Mohammad Akram
Planning Department, General Manger, Mr. Shir Padsha
当方面談者
三井団長、斉藤団員
ナンガルハールでDOPHと協議を行ったことを受け、カブールMoPHで表敬訪問を行った。予定
されていた面談が先方の都合でキャンセルとなった後、調査団帰国当日の朝に時間を頂くことが
できた。

JICAの保健医療分野のインフラ整備に感謝申し上げる。我々のニーズを確認後、内部調整
を行い、JICAに正式回答を行う。これは将来にわたってMoPHが持続的可能な医療サービ
スを提供できるか検討し、支援されたインフラを有効活用するためである(アハマド局長)。

ドナー間の調整をするため、JICAからMoPHに正式レターを提出いただきたい。その後、
DOPHとも調整し、正式回答をJICAへ連絡する。ナンガルハール州ではPRTも診療所建設
を実施しているので、調整が不可欠。また、建設用地の土地登記などについても確認する
ため、時間を頂きたい(アクラム局長代理)。
JICAはナンガルハール州DOPHから入手した支援優先順位リストの控えをMOPHに提出し、こ
れをもとに、MOPHは再度ニーズ確認を行う。
−81−
9.州開発計画
(1)ナンガルハール州概要:
1.人口・民族

州人口:134万人(平均8人/家族)21郡

JRR人口:約20万5,000人(州の15.3%):多くは農村人口

民族:Pashtoons、Tajiks、Gujaars (Tribes: Mohamad、Wenwari、Khogaini、
Sapi、Naisr、Irahimkhai、Hoodkhail、Kharoti、Jabarkhail、Nuristani、Pashayee、
Niazi、Taji)

遊牧民:冬期には約55万8,000人のクチが州内に滞在(これはアフガニ
スタンのクチ約23%を占める)するが、夏期には約85%が移動する。

州内全21郡のうち、ベスード郡はJRRに次いで2番目、スルホッド郡は
5番目に人口の多い郡。
2.生計

村落における主な生計手段は、農業、農業以外の労働、貿易とサービス、
牧畜、送金
3.ガバナンス

農産物:小麦、メイズ、牧草、クローバー、米、木の実、ブドウ

CDC州には605のCDCが存在する(うち、スルホッド郡77CDC、ベスー
ド郡47CDC)。
4.教育
(2006年)
5.保健

青年層識字率(15∼24歳):男性48%、女性15.5%

学生数(1∼12学年):32万8,000人(うち、女子33.7%)

学校数(Primary、Secondary):321校

教員:5,179人(うち、女性教員11%)

州内に病院7ヵ所、29のヘルスセンター(HC)があり、HCは3種類(District
(2005年)
Health Centre : DHC、Comprehensive Health Centre : CHC、Basic Health
Centre : BHC)。

州内の1,400村落のうち、73村落のみがHCを有し、5km以内にHCを有
する人口は、約1/3であった。

ベスード郡の施設:包括医療センター〔CHC(Beland Ghar、Najmuo
Qora)〕、基本保健センター〔BHC(Behsood、Dobela)〕

スルホッド郡の施設: CHC(Sultanpoor)、BHC(Shamspoor、Amarkhel、
Bala Bagh、Bakhtan、Kankarak)
6.治安

Anti Government Elements (AGEs):以下の郡に多発傾向(Khogyani、
Pachir Wa Agam、Chaparhar、Sherzad)

芥子栽培:Achin、Shinwar、Khogyani、Nazyan
−82−
(2)州の開発目標:
8分野の開発につき、10の優先事業 4を選定するとしている。
大分類
小分類(ニーズ)
1.インフラと天 インフラ整備、郵便
然資源
担当省
Ministry of Public Works
5
電気、通信IT 、輸送
Ministry of Energy and Water
Ministry of Urban Development
2.経済成長、民 民間セクター成長、資源の有効活用
間セクター開
Ministry of Commerce and
Industry
発
3.農業・農村開 改良肥料・種子の配布
発
Ministry of Agriculture, Irrigation
農産物の市場開拓と保存
and Livestock
畜産、養鶏事業改良
Ministry of Rural Development and
農業機械改善
Rehabilitation
天然資源保護、村落道路、洪水防護塀、小
規模発電、飲料水、マイクロクレジット
4.教育
大学の備品と壁、教育行政、大学教員の住 Ministry of Education
居と町、奨学金、宗教学校、教師研修
5.保健
Ministry of Higher Education
郡における産婦人科と医師・女性医療従事 Ministry of Public Health
者の住居、精神科、B型肝炎・癌治療、ワク
チン保存設備、病院の入院ベッド、救急車、
夜間診療
6.社会保護
生計手段・住居の確保(特に未亡人、ホー Ministry of Labour, Social Affairs,
ムレス、障害者、帰還民)、帰還民村整備、 Martyrs and the Disabled
各家庭への給水設備
Ministry of Refugees and Repatriation
7.ガバナンス、 DIAG, 汚職対策、適切な人材の雇用、司法・ Ministry of Justice
統治と人権
刑務所改善と関連施設修復、青年更生施設 General Independent Administration of
Anti-corruption
8.治安
警察強化、国境警備増強、有力者の他州へ Ministry of Interior Affairs
の人事異動、施設整備、警察病院、交通シ Ministry of Counter Narcotics
ステム
4
大分類2については、詳細記載なし(英語版暫定)。6.社会保護は9事業の明記がある。
5
ワークショップ参加者のバイアスを考慮する必要あり。ニーズとして、全郡における通信速度の高いインターネットを整備するとある。教
育は主に大学関係者からの発言とニーズを基にしている模様。
−83−
10.郡開発計画
(1)ベスード郡
1)インフラ、天然資源
Projects Name
1
2
Dam construction for
electricity
Micry Hydro power
construction
Matrix
Location
1
Kama bridge
(10MHZ)
1
Beneficiaries
Direct Indirect
200,000
250,000
15th wiyala
10,000
15,000
12,000
15,000
9,000
10,000
30,000
40,000
3
Asphalt road construction
7km
From Nahrimasi to Qalai khiali
4
Asphalt road construction
6km
From Qol-e- Ordo to end of 10th
wiyala
5
Asphalt road construction
18km
From bagh Zakhira to Gomrak
2)保健医療
Projects Name
Matrix
Location
Beneficiaries
Direct Indirect
1 Establishment of Sub-clinic
1
Saracha Ali khan
30,000
40,000
2 Establishment of Sub-clinic
1
10th wiyala
15,000
18,000
3 Establishment of Sub-clinic
1
Abdiyani
10,000
12,000
4 Establishment of Sub-clinic
1
Tangi topchi
8,000
10,000
5 Establishment of Sub-clinic
1
Nahre shahi khoshgonbad
25,000
30,000
6 Establishment of Sub-clinic
1
Nahre shahi
30,000
35,000
3)教育
Projects Name
Establishment of Middle
school for female
Establishment of Middle
2
school for male
Establishment of Middle
3
school for male
Establishment of Middle
4
school for female
1
5 Reconstruction of High school
Matrix
Location
Beneficiaries
Direct
Indirect
1
Bara Abad
1,200
10,000
1
14th wiyala
1,000
9,000
1
Gardi kas
600
8,000
1
Karez and Naghlo
2,000
10,000
1
Banaghar, Mohamadi Sahebzada
5,000
60,000
−84−
4)農業開発
Projects Name
1
2
3
4
5
Construction of protection wall
for agricultural land
Construction of protection wal
l for agricultural land
Construction of protection wall
for agricultural land
Construction of protection wall
for agricultural land
Reconstruction of intake and
canal
Matrix
9.5km
Location
from Saracha bridge to canal
(both sides)
Beneficiaries
Direct
Indirect
50,000
60,000
8km
From Bahar Abad to Miran
50,000
60,000
10km
from Tangi to Miran
40,000
50,000
60,000
70,000
70,000
80,000
20km
20km
from start of Zangoi to the end of
Gardi kas
from Abdulkhel to Qalai khiyali
5)社会的弱者保護
Projects Name
1
2
3
4
5
6
Establishment of carpet
weaving center
Establishment of carpet
weaving center
Establishment of carpet
weaving center
Establishment of carpet
weaving center
Establishment of carpet
weaving center
Establishment of carpet
weaving center
Matrix
Location
Beneficiaries
Direct
Indirect
1
Walayati
2,000
3,000
1
Qalai Pir Saheb
2,500
3,500
1
Miran
3,000
3,500
1
Hada Akhonzada
2,500
3,000
1
Nahre Shahi Awal
3,000
3,500
1
10th Wiyala
4,100
5,000
−85−
(2)スルホッド郡
1)インフラ、天然資源
Projects
1
Construction of dam for
electricity
Matrix
1
2 Protection wall for houses
70 km
3 Construction of sugar mill
1
Location (community/village)
Babi Kas
Afghan mina----Kakrak
Bahawali
Beneficiaries
Direct
Indirect
200,000
200,000
60,000
60,000
200,000
200,000
4 Construction of bridge
100 m
Karso river
40,000
400,000
5 Protection wall for houses
4 km
Canal----Afghan mina
40,000
50,000
6 Construction of flour mill
1
Charbagh
20,000
25,000
2)保健医療
Projects Name
Matrix
Location
Beneficiaries
Direct
Indirect
1
Establishment of Hospital
100 beds
Center of district
200,000
200,000
2
Re-construction of Clinic
1
Koti khel village
150/ day
50,000
3
Establishment of Clinic
1
Moi barak village
200/day
30,000
4
Establishment of Clinic
1
BiBi saied Banda
100/day
30,000
5
Establishment of Clinic
1
Shah Nasa Agha village
100/day
10,000
3)教育
Projects Name
1
2
3
4
5
Construction of building for
Adam khan madrasa
Establishment of education
center
Re-construction of high
school
Establishment of school
Re-construction of Amarkhel
girl's high school
Matrix
Location
Beneficiaries
Direct
Indirect
1
Center of district
1,000
100,000
1
Bahawali
2,000
200,000
1
Kakrak
1,000
15,000
1
Bakhtan, Miran
600
10,000
1
Nazar abad
965
30,000
−86−
4)農業開発
Projects Name
1
2
3
Matrix
Cold store for agriculture
product
Establishment of Veterinary
Clinic
Construction of reservoir for
irrigation
4
Construction of dairy farm
5
Construction of fish farm
Location
Beneficiaries
Direct
Indirect
1
Bahawali
180,000
200,000
1
Centre of district
200,000
250,000
1
Fatehabad
4,200
5,500
150,000
200,000
40
200,000
1(50 cow) Gala-Bemaran
1
Naghrak
5)社会的弱者保護
Projects Name
1
2
3
4
Construction of carpet
weaving center
Establishment vocational
center for widows
Establishment vocational
center for disabled
Establishment vocational
center for orphans
Matrix
Location
Beneficiaries
Direct
Indirect
1
Center of district
500
200,000
1
Charbagh village
100
15,000
1
Bar sultan pur
200
15,000
1
Bazid khel
500
50,000
注)住民負担分は事業費の10%。
−87−
11.村落開発計画
(1)ベスード郡の村落
PMU- NANGARHAR
PROVINCIAL MANAGEMENT UNIT
Description of community's priority projects that need outside help-on the technical front.
Ranked on terms of importance
Behsud District
No
CDC Name
ID Number
Projects done by NSP
CDP
1.Boring Wells
33
Miran
08 0821 0028/1a
Shallow Well Boring
2.Const. Intake
3.Cleaning Streams
08 0821 0028/1b
Vocational Course Training
4.Const.Grinding Mill of Flour
5.Const. of Roads
6. Electricity Power
34
08 0821 0028/1c
Tertiary Road Gravelling
7.Carpet Course
8.prepering of Tailoring
Course
1.Elictricity Power
Malang jan kali
08 0821 0043/1a
Shallow Well Boring
2.Const. Intake
3.Cleaning Streams
08 0821 0043/1b
35
Vocational Course Training
4.Const. of Roads
5.Boring Wells
6.Carpet Course
08 0821 0043/1c
Retaining Wall Construction
7.prepering of Tailoring
Course
1.const.of Retaining wall
Baland ghar
08 0821 0050/1a
Const .of Intake
2.Const. Intake
3.Const.School
36
4.Const. of Roads
Vocational Course Training
5.Carpet Course
6.prepering of Tailoring
Course
1.Electricity Power Solar
37
Gardi Kas
08 0821 0051/1a
Protection wall
−88−
Panels
2.Const.of Health Clinic
3.Const. of Roads
08 0821 0051/1b
Vocational Course Training
4.Const.of Community Hall
5.prepering of Tailoring
Course
1.Electricity Power Solar
38
Samarkhel
08 0821 0058/1a
Deep well Boring
Panels
2.Const.of Health Clinic
08 0821 0058/1b
Vocational Course Training
3.Const. of Roads
4.Boring Wells
5.Const.of Community Hall
08 0821 0058/1c
Community Center Const
6.prepering of Tailoring
Course
08 0821 0058/1d
Shallow Well Boring
08 0821 0068/1a
Tertiary Road Gravelling
1.Cleaning Streams
39
Sarach (araban)
2.Const.of Health Clinic
3.Const. of Roads
4.Boring Wells
08 0821 0068/1b
Vocational Course Training
5.Carpet Course
6.prepering of Tailoring
Course
40
Tangi Tochi
08 0821 0071/1a
Water Supply network
Extension
1.Electricity Power Solar
Panels
3.Cleaning Streams
4.Prepering of Computer
Course
5.Const. of Roads
08 0821 0071/1b
Vocational Course Training
6.Boring Wells
7.Carpet Course
8.prepering of Tailoring
Course
1.Const.of Boring wells
41
Ada Bar Kali
08 0821 0075/1a
Side Ditch Construction
2.prepering of Tailoring
Course
08 0821 0075/1b
Vocational Course Training
3.Const. of Health Clinic
4.Const.of Poultry Farm
5.Const. of Roads
08 0821 0075/1c
Power Line Supply
6.Electricity Power
Panels
−89−
Solar
41
Hada Hazrat
Osman Kali
1.Const.of Boring wells
08 0821 0077/1a
Side Ditch Construction
2.Const. of Roads
3.Electricity Power
4.Carpet Course
08 0821 0077/1b
Vocational Course Training
5.prepering of Tailoring
Course
1.Const.of Boring wells
41
Hada Koz Kali
08 0821 0078/1a
Side Ditch Construction
3.Cleaning Streams
4.Const. of Roads
5.Electricity Power
08 0821 0078/1b
Vocational Course Training
6.Carpet Course
7.prepering of Tailoring
Course
1.Const.of Boring wells
41
Farm Hada
08 0821 0085/1a
Deep well Boring
4.Const. Of Community Hall
6.Electricity Power MHP
7.Const.Honey production
08 0821 0085/1b
Vocational Course Training
farm
8.prepering of Tailoring
Course
41
Hada Hazrat
Ali Kali
1.Const.of Boring wells
08 0821 0086/1a
Shallow Well Boring
2.Const.Retaining wall
3.Const.of Culvert & Streams
08 0821 0086/1b
Vocational Course Training
4.Electricity Power
5.prepering of Tailoring
Course
08 0821 0086/1c
Tertiary Road Gravelling
−90−
(2)スルホッド郡の村落
PMU- NANGARHAR
PROVINCIAL MANAGEMENT UNIT
Description of community's priority projects that need outside help-on the technical front.
Ranked on terms of importance
Surkh Rod
No
CDC Name
ID Number
District
Projects done by NSP
CDP
1.Const.of streams
29
08 0802 0014/1a
Boring wells
2.Const.of Mosques
3.Boring wells
4.Const.of Culverts
Kuz Charbagh
30
5.Const.of Roads
08 0802 0014/1b Electricity Generator
6.Genrator projects
7.Micro Hydro Power
8.Tailoring Course
1.Const.of Mosques
49
08 0802 0026/1a
Const. Road
3.Retaining wall & Roads
Bar Chahar Bagh
50
2.Cleaning of streams
4.Const.of Health Clinic
08 0802 0026/1b Electricity Generator
5.Boring wells
6.Tailoring course
1.Cleaning of streams
59
08 0802 0031/1a
Boring wells
3.Boring wells
Markazi Chahar Bagh
60
2.Const.of Mosques
4.Micro Hydro power
08 0802 0031/1b Electricity Generator
5.Diesel Flour Mill
6.Const.of Pet farm
1.Const.of streams
64
08 0802 0034/1a
Boring wells
2.Const.of Mosques
3.Boring wells
Chahar Bagh Malikan
65
4.Const.of Culverts
08 0802 0034/1b Electricity Generator
5.Const.of Roads
6.Micro Hydro Power
7.Pet Farm
−91−
1.Const.of Pipe Scheme
08 0802 0043/1a Pipe Scheme
2.Const. Intake
3.Electricity Power
4.Prepering of Compute
Bar sultan Por Loy
Course
kali
5.Const. of Roads
08 0802 0043/1b Tailoring
6.Boring Wells
7.Carpet Course
8.prepering of Tailoring
Course
1.Boring Wells
08 0802 0051/1a Boring wells
2.Const. Mosque
3.Cleaning Streams
08 0802 0051/1b Tailoring
4.Prepering of Computer
Course
Bar Sultanpor Dand
5.Const. of Roads
6.
08 0802 0051/1c Boring wells
7.Carpet Course
8.prepering of Tailoring
Course
08 0802 0052/1a Pipe Scheme
Markazi Shamsha
Poor
08 0802 0052/1b Path Way
08 0802 0052/1c
08 0802 0052/1d
Vocational Course
Solar and
Generator3.Const.of
Road4.Vocational Training
Course Tailoring
Training
Community Center
Construction
08 0802 0071/1a Pipe Scheme
08 0802 0071/1b
1.Water Supply2.Electricity
1.Const.of Pipe Scheme
2.Const. Mosque
Vocational Course
3.Cleaning Streams
Training
4.Prepering of Compute
Course
Balabagh
5.Const. of Roads
6.Boring Wells
08 0802 0071/1c Side Ditch Construction
7.Carpet Course
8.prepering of Tailoring
Course
−92−
08 0802 0098/1a Solar Panels
Fatehabad
08 0802 0098/1b
Vocational Course
Training
−93−
1. Electricity Solar Panels
2. Vocational Training
Tailoring
3. Water Supply Boring well
4. Irrigation Intake.
12.州教育局学校建設計画(2008 年度)
−94−
−95−
13.州公衆衛生局診療所建設計画(2009年度)
−96−
−97−
Fly UP