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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University

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Twinkle:Tokyo Women`s Medical University
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モルモットの角膜における血管の新生と消褪に関する免
疫組織化学的研究
須藤, 史子
東京女子医科大学雑誌, 62(1):63-78, 1992
http://hdl.handle.net/10470/8010
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
63
〔東女医大誌 第62巻 第1号頁 63∼78 平成4年1月〕
原
著
モルモットg)角膜における血管の新生と消裾に
関する免疫組織化学的研究
東京女子医科大学 第三内科学教室(主任:大森安恵教授)
同 糖尿病センター糖尿病眼科(指導:堀 貞夫教授)
ス トウ
須 .藤
チカ コ
史 子
(受付平成3年9月21日)
Immunohistochemical Studies on Neovascularization and its.
Regression in the Comea of Guinea Pigs
Chikako SUTO
Department of Medicine(Director:Prof. Yasue OMORI), Department of Diabetic Ophthalmology
(Director:Prof. Sadao HORI), Diabetes Center, Tokyo Women’s Medical College
We studied on circumferential factors relating to neovascularization and its regression by means
of immunohistochemistry under light and electron microscopices。 The new vessels were formed in the
corneas of guinea p量gs by implantation of 250 ng of basic fibroblast growth factor(b一.FGF)which were
enveloped in ethylene vinyl acetate copolymer, and regressed after the b−FGF was removed.
New vessels invaded from the.1imbus toward the corneal center in 3−5 days, and magunitude of
neovascularization was maximum in 10−14 days. At 5−7 days after implantation when neovascu−
larization was recognized in the corneal stroma, the pellets of b−FGF were removed. In 7 days after
removal, the newly form.ed vessels regressed and slight corneal scar was.formed at the lesion of
micropocket,
Immunohistochemical detection for factor・VIII−related antigen showed positive stainings on the
interfaces of endothelial junctions and the subendothelial spaces,as endothelial cells became matured,
and it reduced its activity in the early stages of regression.
Immunoreactive products for laminin and type IV collagen surrounded both newly formed vessels
and the vessels on the process of neovascularization with immature endothelial cells. In the regression
process,they were detected on multiple layered basemεnt membrane−like structures with considerable
thickness, and remaingd even after endothelial ce11S disappered.
Fibronectin.immunoreactivity was expressed in most front・end lesions of neovascularization,.
before the formation of vessels, and was restricted surround the.vascular stracture after neovas−
cularization. In the regression process, fibronectin reduced.its activity eariler than the basement
membrane compornents.
緒 言
の基礎研究が進み,そのメカニズムが次第に解明
眼組織における血管新生は,これが原因で失明
されてきた.血管新生の際は内皮細胞の基.底膜の
にいたるものが多いことから,いかにその発生を
融解が起こり,断裂部より血管内皮細胞が遊走し
予防し,また生じてしまった新生血管をい.かに消
増殖する.伸びだした内皮細胞は基底膜を形成し
裾させるかが大きな課題である.近年,血管新生
っっ,管腔を形成し始める1)西3).これらの各々の過
一63一
64
程で血管新生の促進因子と抑制因子が存在し,複
針にて三層切開を加えmicropocketを作製した.
雑に絡み合って調節していることがわかってき
250ngのb・FGFを二二剤であるethylene vinyl
acetate copolymer(EVA)で包んで典レット状
た4)5).
このような研究の発展は,線維芽細胞成長因子
にし(以下b−FGFペレットと略),このmi−
をはじめとする血管新生因子が同定され,新生血
cropocketにb−FGFペレットを移植した. b・FGF
管を実験的に作製できるようになったことによ
ペレット移植後2日から14日までの」血管新生過程
を実体顕微鏡下にて観察した.また移植後5日目
る6).
角膜に血管新生を来すものには,古くからアロ
ら7日に,角膜に活動性のある新生i血管形成を確
キサンやプロスタグランディン等の化学物質7)∼9)
.記したのち,b−FGFペレットを除去し,新生血管
や腫瘍細胞10)∼13),およびアルカリ・熱外傷14)∼16)な
どが知られているが,157個のアミノ酸からなる塩
の消裾を除去後3日から7日まで観察した.b・
FGFを含まないペレットを移植したもの,および
基性線維芽細胞成長因子(basic飾roblast
角膜に半層切開を加えただけのものを対照とし
growth factor:b・FGF)をペレットにつめ移植す
た.予備実験としてb−FGFペレットの徐放力を知
る方法に,再現性の高い新生血管を作製すること
るために,移植後3ヵ月まで観察したところ,14
ができるため,実験系として薬剤の定性・定量に
日目以降は新生血管の成長はなく,20日を過ぎる
用いられているものである17).
頃よりかなり細小化した血管のみが残存してい
血管新生の過程で血管内皮細胞の遊走や管腔形
た.従って,本実験ではb−FGFペレットの上諭力
成と細胞外マトリックス(extracellular matrix:
が有効であると思われる14日間に限って実験を
ECM)の変化が密接に結びついていることが知ら
行った.
れてきた18)∼21).ECMは,生体の細胞間隙を満たす
様々な巨大分子の総称で,組織の物理化学的特性
2.試料の作製
眼球を摘出した時期は,b−FGFペレット移植後
を決定づけると共に,細胞の生存環境を提供し細
3,5,7,10,14日目およびb・FGFペレット除去
胞の分化・増殖に影響を与えるものとされてい
後3,5,7日であった.摘出した眼球は,パラフィ
る22).しかし,眼組織の血管新生におけるこれらの
ン切片用にはカルノア液で,また凍結切片用・には
ECMの分布や存在様式については全く解明され
0.1M燐酸緩衝液加4%パラホルムアルデヒドに
ていない.
て24時間固定した.カルノア固定した材料は常法
そこでモルモットの角膜にb・FGFを移植し,血
通りエタノール系列により脱水しパラフィンに包
管内皮に特異的な物質で内皮細胞の同定に広く用
埋し,厚さ5μmの連続切片を作製した.パラホル
いられている第Viii因子関連抗原(von Willebrand
ムアルデヒド固定材料は,30%薦糖液に一晩つけ
因子)23)24)とECMの分布と動態を血管新生過程
たのち,液体窒素にて急速凍結させ,厚さ20μmの
と訟訴過程において調べた.ECMの中から基底
切片を作製した.切片はあらかじめ0.1%poly−L−
膜成分のマーカーとしてラミニンとIV型コラーゲ
lysine(Sigmζ社)を塗布したスライドガラスに張
ン25)26),細胞の接着分子としてフィブロネクチ
り付けた.
ン27)を選び,それらの局在について,免疫組織化学
3.光顕での免疫組織化学
的手法を用いて光顕および電顕で検討した.
パラフィン切片は脱パラフィンを行い,凍結切
実験方法
片は0.3%Triton X−100溶液で30分間処理したの
1.実験動物
ち免疫組織化学反応を行った.内因性ペルオキシ
実験動物として,体重400∼700gのモルモット
ダーゼ活性の阻止のために0.3%過酸化水素水を
(Hartley系,雌)を用いた.ネンブタール35mg/
含むメタノールに15分間浸し,次いで非特異的結
kgの腹腔内注射により麻酔し,角膜および結膜嚢
合の阻止のために正常ヤギ血清にて30分間処理し
を0.02%のヒビテンにて洗眼後,角膜に23G注射
た.
一64一
65
.織
野禦
.、喫
一『
.懸
・∴㌔・轡.
轄、
舟
轡1玄/燃餐
汐
が麹1臨 ”
嘱.
ギ識
.醍.
融調
写真1A b・FGFペレット移植後5日
角膜中央にペレットがmicropocket内に移植され,角膜浮腫を伴って輪部から中央に向かって花輪
状の新生血管を認める.
写真1B b−FGFペレット移植後10日
中央部のペレットに接近して新生血管の成長を認める.
写真1C b・FGFを含まないEVAのみのペレット移植後5日
角膜表面のスリット光の中に角膜輪部血管の拡張と弱い新生血管を認める(矢印).耳側の拡張血管
は虹彩面上の血管であり新生血管ではない(*).
写真1D b−FGFペレットを移植して7日目に除去して7日後
角膜中央にペレットを除去した跡の薄い混濁が残り,わずかな新生血管の残存が認められる(矢印),
下方に見られるのは虹彩面上の血管である(*).
一次抗体としては,rabbit・anti(human)von
間反応させた.negative contro1としては,非標識
Willebrand factor(DAKO社,以下第皿因子関連
normal rabbit serumを用いた.
抗原と略),rabbit・anti(mouse)laminin(Advance
一次抗体反応後,フィブロネクチンに関しては
社,以下ラミニンと略),rabbit・anti(human)
酵素抗体間接法,その他はABC法(avidin・biotin
collagen type IV(Chemicon社,以下IV型コラー
peroxidase complex method, H isto血e SAB−PO
ゲンと略),rabbit・anti(human)飾ronectin
キット⑪,ニチレイ)によって処理した.0.05M
(Cappe1社,以下フィブロネクチンと略)を使用し
Tris buffer, pH 7.6に溶解した0.02%DAB
た.それぞれの抗体の希釈率は,第V皿因子関連抗
(diaminobenzidine)と0.01%H202で発色させ,一
原は1:500,ラミニンは1:6,000,IV型コラー
部の切片では,ヘマトキシリンやメチルグリーγ
ゲンは1:4,000,フィブロネクチンは1:200と
による後染色を行った.切片は,合成封入剤Eu・
した.以上の4種類の抗体をいずれも室温で12時
kitt⑪(0. Kindler社)にて封入した後,光学顕微
一65一
66
曳裂瓢1?覧!1射1δ一・
晒緊緊グソ㌦難孫
義㌶=llつ総轄義議1
ウ1餅ご逼㍗1墜二◎・・二『町1
,・
霧藁嬢㌶醸1演嚢二三雛
∫・..。謂.!llボ・.・諦’1ヤ掃討ヅぐ∵:訴
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潅、1轍ミil嬉1:齢贈繋鰯
3
囁_
訟プそ弾ぞ垂垂写診ヂ罵慧&丁量r・
ナアしヘ コリ ト みら ひまヒ もヒロ
痴;∴ 認・、醜
ドリ
@ ノ どみばメ
ちジビら ピ
み ド ㌻婁:諭野薄瓢こ、
一∴ノ鍵「昌’
騰・・額
皿’売噛
m’
ζ 』→‘II
ル・慧
も
}噂、
il瞬遍
・:駕;1
磁∴.温盤灘繍ぐ蕩ご鷲尋・ご∼燈
67
鏡で観察した.
弱い新生血管をみたが(写真1C),その後は血管の
4.電顕での免疫組織化学
伸展はなく14日目までほぼ同じ程度であった.
パラホルムアルデヒド固定した試料から20μm
角膜に半層切開を旋しただけのものでは,わず
の凍結切片を作製し,Triton X−100処理と内因性
かにmicropocketの位置に一致して混濁を残し
ペルオキシダーゼ活性の阻止を行わないほかは,
たが,血管新生は全く認めなかった.
光顕用と同様に処理した.最後に1%オスミウム
b・FGFペレットを移植して5日から7日後に
にて後固定し,エタノール系列で脱水しアラルダ
角膜に新生血管が形成されたのを確認して,b−
イト樹脂に包埋した.1μmの厚切り切片にトルイ
FGFペレットを除去すると,角膜の浮腫が軽減
ジン青染色を施し,光学顕微鏡で観察した後,超
し,新生血管は消裾していった.除去後3日目ぐ
薄切片を作製し,ウランによる単染色後,電子顕
らいまでは,新生血管の密度が疎になる程度で
微鏡(Hitachi H・7000)にて観察した.
あったが,次第に新生血管の径が細くなった.除
結 果
去して7日目になると,角膜のmicropocketの部
1.肉眼所見
分に,軽度の混濁とわずかな新生血管の残存を認
モルモットの角膜に作ったmicropocketにb−
めるのみとなった(写真1D).
FGFペレットを移植すると,2日目には角膜の中
央が浮腫で白濁し,3日から4日目になると角膜
2.光顕での免疫組織化学
輪部から角膜中央に向かって細い血管が枝分かれ
第鵬因子関連抗原の陽性反応は,新生血管の内
しな:がら進入して行き,5日目になると密に新生
皮細胞に選択的に認められた.線維芽細胞が線状
した血管が花輪様に観察された(写真1A).新生
や管状に配列することがあるがこれらの細胞では
血管は9日から10日目には角膜中央部のb−FGF
陰性であった.陽性反応は内皮細胞の細胞質に部
ペレットの近傍まで達した(写真1B).14日目に
分的に点状に存在していた.角膜輪部から角膜中
は,浮腫は軽減し血管は比較的太いものが少数残
央部へ向かって伸びる新生血管群の中でペレット
り,細い血管は目だたなくなった.
に近い血管ほど反応が弱く,輪部に近い成熟しつ
b・FGFを含まないEVAのみのペレットを同
つある血管は陽性反応が強く認められた(写真
1)新生過程
様に移植した場合は,角膜輪部の血管が拡張し,
2).
ペレットを移植した時の刺激によると考えられる
ラミニンおよびIV型コラーゲンの陽性反応は新
写真2 b・FGF移植後7日の第Vm因子関連抗原
新生血管群のなかでも,角膜中央よりの新生したばかりの血管(矢印)に比較して,輪部付近の新
生血管ほど内皮細胞の陽性反応が強い.角膜上皮(Ep)
写真3 b・FGF移植後7日のIV型コラーゲン
新生血管の管腔を取り囲むように基底膜と一致して強い陽性反応が見られる.角膜上皮(Ep)
写真4 b・FGF移植後5日のフィブロネクチン
新生血管の管腔を取り囲み陽性反応が見られる.
写真5 b−FGF移植後5日のフィブロネクチン
写真4と同じ標本の角膜中央部では,まだ血管が新生していないが,細胞に沿って紐状に陽性反応
が見られる.
写真6 b−FGF移植後7日に除去して3日後の第田1因子関連抗原(A)とうミニン(B)
連続切片で二つの反応を比較するとうミニン(B)が強い.明らかにラミニンが陽性で,第VIIi因子関
連抗原が陰性の血管(矢印)が散在する.
写真7 b・FGF移植後7日に除去して7日後のラミニン
血管が消多したと思われる部位に紐状のラミニン陽性反応が認められる.
写真8 b−FGF移植後5日に除去して3日後のフィブロネクチン
除去して3日後ですでに管状から紐状に変化した陽性反応が認められる.
一67一
68
生血管を取り囲んで管状に認められた.管状構造
抗体に反応した.両者に陽性反応の差は認められ
物は,角膜中央に向かって発育する新生血管の最
ず,新生血管の成熟度に関係なく基底膜に一致し
先端部では種々の方向に枝分かれして,太さも
て陽性物質が検出された.このような血管の内皮
様々であった.ラミニンおよびIV型コラーゲンの
細胞は細胞内小器官に富んだ広い細胞質を持ち,
陽性反応の強弱は,どの部位でも,一つ一つの管
多くの細胞質突起を周囲の結合組織中に出してい
腔自体でも同じ程度であった(写真3).
た.これらの細胞質突起には,基底膜に覆われて
フィブロネクチンの陽性反応は,形成された新
いるものと基底膜が途切れて突起を出しているも
生血管に一致して検出された(写真4).基底膜成
のとの両方が観察された(写真11).
分の染色に比較して,管腔自体に厚みを持って染
フィブロネクチンの陽性反応は,内皮細胞に接
色されていた.また,角膜中央よりの未だ血管が
して厚みを持った層として認められた(写真12
新生してきていないところにも紐状に染色された
A).層の厚さは厚いところでは約1μmであった
(写真5).
(写真12B).この層の中でもさらに強い陽性反応
2)消壷過程
は,基底膜に相当するところと基底膜から離れて
消裾過程の血管では第vl腿因子関連抗原は虫喰い
膠原線維に面するところに存在した.
状にまだらに陽性反応を認め,所々に第Vlll因子関
2)消槌過程
連抗原反応が陰性の血管も観察された(写真6
b−FGFペレット移植後5日目に除去して3日
A).第V皿因子関連抗原とラミニンの局在を連続切
後と7日後の血管が消槌過程にある角膜を,第yl層
片で観察すると,ラミニンは陽性であるが第Vm因
因子関連抗原で染色した.新生過程のものより陽
子関連抗原の染色性が低下している血管が多数認
性反応が減弱はしているが,3日後のものでは内
められた.基底膜成分であるラミニンは,消白し
皮細胞の細胞質および内皮細胞下の結合組織に陽
つつある血管でも依然として管腔の全周を囲んで
性反応が部分的に残存していた(写真13A, B).
7日後のものでは陽性反応が認められなかった.
いた(写真6B).さらに消裾が進み除去後7日目
になると,血管が消高したと思われる部位にラミ
IV型コラーゲンおよびラミニンの強い陽性反応
ニン反応産物が太い紐状に認められた(写真7).
は,管腔を取り囲む基底膜に一致して検出された
フィブロネクチンは,b−FGFペレット除去後3
(写真14A).晶出初期では,内皮細胞に細胞内小
日目にすでに管状ではなく紐状となっていた(写
器官の減少,内皮細胞間の断裂,細胞膜の不規則
真8).除去後7日目では,フィブロネクチンはほ
な突出などの幾つかの変化が観察された.さらに
とんど検出されなかった.
誌面が進んで萎縮した内皮細胞においても,近接
3.電顕での免疫組織化学
する基底膜様物質に陽性物質の沈着が認められ
1)新生過程
た。基底膜様物質は血管を取り囲み地層の層状構
第VIH因子関連抗原の陽性反応物質は,管腔がな
造を呈していた(写真15).b−FGFペレットを除去
く形態学的に未熟と思われる1血管では,内皮細胞
してさらに時間が経過すると,内皮細胞や管腔は
間隙の一部に捉えられた(写真9A).また,内皮
完全に消失し,ラミニン陽性の基底膜様物質のみ
細胞の細胞質中の小胞体にも,陽性反応が観察さ
が管腔の周囲に検出された.このとき残存した基
れた(写真9B).一方,広い管腔が形成された成
底膜は部分的に著しく肥厚し約2μm程度のもの
熟した血管では,内皮細胞間隙ぽかりでなく内皮
も観察された(写真16).
細胞下の結合組織にも陽性反応が認められた(写
フィブロネクチンの高話過程での反応は,b−
真10).
FGFペレットを除去して3日後の比較的早期に
新生血管の基底膜は,管腔が形成されていない
限って観察可能であった.フィブロネクチン反応
未熟な血管においても内皮細胞を取り囲んで連続
産物は内皮細胞を包む一層の基底膜とその周囲に
的に存在しており,IV型コラーゲンやラミニンの
広がって網目状に検出された.消渇途中で血管の
一68一
69
糞
鞭熱
麟
黙,.
勲、壽1
騰
璽
騰・
灘
囎懸屋
撫
響:華
嘱
職難1嚇、
沸輝
1切鐸1管
縫騰
縛
鹸㌦
灘臨
鳩灘
…誕・…/… /軸!l 臨鷹
轡 議轟
譲
鞘
磁
霧
写真9A b−FGFを移植後3日の第Vlil因子関連抗原
管腔が形成されていない未熟な血管ては,内皮細胞と内皮細胞の間に(矢印)陽性反応が認められ
る.内皮細胞の核(Nu)
写真9B b−FGFを移植後7日の第vm因子関連抗原
未熟な内皮細胞の細胞質中の小胞体(矢印)にも陽性反応が認められる.管腔には赤血球(RBC)
を含む.
写真10 bFGFを移植後7日の第田i因子関連抗原
成熟した新生血管になると第Vlll因子関連抗原の陽性反応は主に細胞間隙(矢印)と内皮細胞下の結
合組織(大矢印)に認められる.
一69一
70
ジ轡獅
許・ 趣 驚も
ヂ のな ノき
け リ レ
・ 誼轟 隅 黛系,
議 蝋
密 ’
謡驚轟
華 .昂.号}
き ホ ま や
都議灘轟
き ま
1 影 爵
と や
・ 馨
齢 乾
ピゆ
臨・ テ毒 声
・ ・ 気、 \
集や
鱈ヂ ・
呈
ポ
燃
轍鍵}記
搬
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蓑導 鐵
跨
幾 蘂 欝
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細紙『講 炉
聾唖嵐
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黙 総
綴 ・
/
講難 醐
ワ い キド
鱒
霞鏡
麟1 盟
門虹
∴
曇る
遍欝毫
雌
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夢
鞍
寧1繍
鰹醗
奪.
糠灘欝銀鱗
至難
蒙 一
》
; β P㌔蒲議繍
蔦.
写真11bFGFを移植後7日のラミニノ
管腔か形成されていない未完成な血管をラミニン陽性の一層の基底膜か覆っている.内皮細胞から
細い細胞質突起が結合組織中に伸ひている.
(挿図)黒枠内の強拡大.突起部分(矢印)の基底膜はないか,あっても貧弱てある.
内腔がまだ閉塞されていないときは,新生過程の
物質7)∼9)や腫瘍細胞10)∼13)およびアルカリ・熱外
ときに比較して,血管周囲に幅広く観察された(写
傷14)∼16)などがある.血管新生の過程において角膜
真17).さらに消槌が進み血管内灘が閉塞される
浮腫や白血球の侵潤が,一方,消槌過程において
と,内皮細胞が退縮や消失した領域にまでフィブ
は,組織学的に内皮細胞の変性や細小血管の血小
ロネクチン陽性の網目状部分が及び,より広く検
板による閉塞が観察されているn}14}15).b−FGFに
出された(写真18).
よって角膜に血管新生を起こす実験系は,眼組織
考 案
における血管新生モデルとして優れており,血管
1.実験モデル
新生を抑制する薬剤の定性・定量実験ですでに応
角膜は血管の無い透明な組織で,そこに実験的
用されている17).本研究ではb・FGFを用いてin
に新生血管を作製すると観察も容易なことから,
vivOでの血管の新生のみならずその離離につい
すでに40年以上前から新生血管の実験モテルとし
ても実験モテルを作製した.
て用いられている.新生血管を惹起するものとし
2.内皮細胞とECM
ECMについての研究は培養血管内皮細胞を用
て,アロキサンやプロスタグランディン等の化学
一70一
71
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写真12A, B bFGF移植後5日のフィプロ不クチン
基底膜から膠原線維に接する面まての約1μmに厚みを持った層(矢印から矢印)として認められる.
B)は内皮細胞(En)と表示した箇所の強拡大.
一71一
72
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写真13A, B b FGF移植後5日に除去して3日後の第V田因子関連抗原
内皮細胞下の結合組織に部分的に陽性反応か(矢印)見られる 内皮細胞の核(Nu)
B)はA)の一部強拡大
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写真14A, B bFGF移植後5日に除去して3日後のIV型コラーゲン
基底膜(Bm)と一致して陽性反応がみられる,内皮細胞の断裂(*)や細胞膜の不規則な突出があ
り,内皮細胞(En)の細胞残値(矢印)がみられる. B)はA)の一部強拡大,
一73一
74
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写真15
bFGFを移植後5日目に除去して5日後のラミニン
核(Nu)をもつ血管を構成している細胞が変性過程にあり,
この周りを取り囲む基底膜は藤織にみ
える.
写真16bFGFを移植後7日目に除去して7日後のラミニノ
更に消裾か進むと内皮細胞は変性消失し基底膜成分のみとなり,層状の基底膜成分は一部分のみが
2μm程に著しく肥厚している,
一74一
75
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写真17bFGFを移植後5日目に除去して3日後のフィプロ不クチン
管腔を形成している内皮細胞(En)の基底膜(Bm)とその周囲に陽性反応か網目状にみられる.
写真18bFGFを移植後5日目に除去して3日後のフィフロ不クチン
血栓て閉じかけた管腔をもつ新生血管のまわりに基底膜(Bm)とその周囲にフィフロ不クチン陽性
反応かみられる.内皮細胞か退縮や消失した領域にまて,陽性反応か及ふ.
75一
76
いて数多く行われている18)心20)25)26).in vivoでの血
の実験ではin vivOのためか,ともに基底膜に一
管構成要素である内皮細胞やECMの局在や動態
致して検出され,両者の免疫活性に有意な違いは
について解明するために,内皮細胞に特異的な物
確認できなかった.両者とも,新生血管を取り囲
質で同定に一般的に用いられている第Vlll因子関連
んで管状に染め出され,謡言付近と角膜中央寄り
抗原と,ECMの中から基底膜成分としてラミニ
の部位で比較しても陽性反応の強さに差異はな
ソとIV型コラーゲン,細胞接着分子としてフィブ
かった.ラミニンとIV型コラーゲンは,新生血管
ロネクチンを選んだ.4個のマーカーについて免
の分布をみたり,他の管腔構造と区別するには有
疫組織化学的手法を用いて光顕のみならず電顕に
用なマーカーであると考えられた.
おいても検索した.
電顕での観察から,新生過程において血管とし
1)第二因子関連抗原は,血管内皮細胞や骨髄密
て完成されたものだけでなく,完成しつつある内
粒球で産生され,内皮細胞の細胞質および内皮下
皮細胞に付随して,早期からラミニンやIV型コ
組織,骨髄穎粒球や血小板に存在する23)24).血液凝
ラーゲン陽性の基底膜が形成されていることが確
固および止血機構に関与している血液凝固第Vl咽
認された.また消槌過程においては,光顕では内
子と第Vlll因子関連抗原は血漿中では複合体を形成
皮細胞消失後も基底膜が残存しているようにみえ
しているが,別個のものである.第VI腰因子関連抗
たが,電顕での観察では,基底膜の断裂や数層の
原は分化した血管内皮細胞を標識するのに広く用
層状化,肥厚した形態での残存など,畑鼠時期に
いられている蛋白で,本研究でも第VIII因子関連抗
よって基底膜成分の構築に差異があった.糖尿病
原の陽性反応は新生したばかりの血管では弱く,
において,血管内皮細胞の壊死と再生が盛んに行
血管の成熟に従い強くなることが明らかになっ
われ,基底膜が数詞の層状構造を形成し肥厚する
た.一方,消裾前には,ラミニンなどの基底膜成
という報告28)があるが,今回見られた消裾しつつ
分は残っているにもかかわらず,第Vlil因子関連抗
ある血管周囲の層状構造はその形態と酷似してい
原の活性は比較的早期から消失し,虫喰い状にま
た.ラミニンとIV型コラーゲンは,血管を構成す
だらに活性が残存したり,すでに陰性化したもの
るのに重要な成分で,新生過程ではごく初期から
もあった.従って,第Vill因子関連抗原は内皮細胞
出現し,一品過程ではかなり後期まで残存してい
の局在のみならず内皮細胞の成熟度や活性の指標
ることがわかった,
にもなると考えられた.
3)フィブロネクチンは,線維芽細胞系の細胞の
また電顕における第Vlll因子関連抗原の局在は,
接着・伸展に関与し,血管新生に重要な働きをし
内皮細胞の細胞質と内皮下の結合組織内に存在す
ていると考えられている27).また創傷治癒におい
るといわれている24).それらの部位ばかりでなく,
ても関与していることがわかっており,既に臨床
本研究ではこの因子がまだ管腔形成をしていない
において角膜上皮障害を来し難治な症例でフィブ
未完成な新生血管においては,内皮細胞と内皮細
ロネクチンの点眼療法が応用されている29).本研
胞の間にも存在していることを示した.消裾期で
究では,新生血管の血管壁に一致して,基底膜成
は,内皮細胞下の結合組織に部分的に残存してい
分より厚く染色されていた.新生過程では血管壁
たことより,これが光顕での虫喰い状の染色形態
のみならず,未だ管腔の形成されていない部位に
と一致するものと思われた.
も検出された.フィブロネクチンの作用から考え
2)ラミニンとIV型コラーゲンは,ともに基底膜
ると,遊走している内皮細胞を伸展させながら周
成分で,上皮や内皮細胞系の接着に作用すると考
囲の結合組織に接着させているものと想像され
えられている25)26).培養血管内皮細胞の実験系で
た.また,この実験で検出されたフィブロネクチ
は,内皮細胞の分裂・増殖に最も関与しているの
ンは一血管構成細胞との関連だけでなく,角膜に作
はうミニンであるという報告25)と,反対にIV型コ
製したmicropocketの創傷治癒過程にも関与し
ラーゲンであるという報告26)がある.しかし今回
ている可能性があるものと考えられた.消槌過程
一76一
77
では,比較的早期から変化が現れ,管状ではなく
本稿を終えるにあたり,組織学的手法について直接
太い紐状に検出された.このような時期のフ≧プ
御指導頂きました新潟大学第三解剖学教室岩永敏彦
ロネクチンの陽性反応は,同条件で染色した新生
助教授に感謝します.また,実験材料を提供して頂き
過程のものより強かった.
ました武田薬品に感謝の意を表します.終始,御助言
電顕におけるフィブロネクチンの局在は,新生
を頂きました平田幸正名誉教授,大森安恵教授に厚く
および消槌過程においても,基底膜およびその周
御礼申し上げます,最後に御指導・御校閲頂きました
堀 貞夫教授に深謝致します.
囲に付随する網目状ないしは層状の不規則な陽性
文 献
反応として認められた.また消槌過程での局在は,
新生過程より幅広く観察された.この現象は内皮
1)Glaser BM:Cell biology and the phenomenon
of intraocular neovascularization,1勿The Ret−
細胞が変性し退縮した領域に,フィブロネクチン
ina Part II. pp215−243, Academic Press, Orlan−
陽性の細胞外基質が置き換わったためと解釈され
do(1986)
2)菅 幹雄:血管内皮細胞と新生血管.代謝 25:
たが,本研究では,これらの由来や役割について
895−901, 1988
は明らかにはならなかった.
3)Forrester JV:Mechanisms of new vessel
結 語
formation in the retina. Diabetic Med 4:
眼組織の血管新生過程および新生血管の出面過
423−430, 1987
4)Glaser BM:Extracellular modulating factors
程での組織学的因子の動態を明らかにするため
and the control of intra ocular neovasculariza−
に,モルモットの角膜に塩基性線維芽細胞成長因
tion。 Arch Ophthalmol 106:603−607,1988
子を移植または移植後に除去して,新生血管の成
5)Folkman J, Klagsbrun M:Angiogenic fac・
tors. Science 235:442−447, 1987
長過程と消渇過程を作製し,免疫組織化学的手法
6)Sommer A, Brewer MT, Thompson RC et a垂:
を用いて,内皮細胞および細胞外マトリックスに
Afo㎜of basic丘broblast growth factor with
an extended aminoterminus. Biochem Biophys
ついての局在を検討し,以下の結論を得た.
Res Comm 144:543−550,1987
7)正angbam M:Observations on the growth of
1.血管内皮に特異的な第Vi咽子関連抗原は未
熟な血管では陽性反応が弱く,.成熟した血管ほど
blood vessels into the cornea. Application of a
反応が強くなり,また消槌の際には比較的早期か
new experimental technique. Br J Ophthalmo1
ら消失することから,内皮細胞の成熟度や活性の
37 :210−222, 1953
指標となる.
8) BenEzra】D: Neovasculogenic ability of pros・
taglandins, growth factors, and synthetic
2.ラミニンとIV型コラーゲンの反応は基底膜
chemoattractants. Am J Ophthalmo186:
に一致して陽性で,新生過程では成熟過程にある
455−461, 1978
9)Berman M, Winthrop S, Ausprunk D et al:
内皮細胞から成る未熟な血管にも早期から検出さ
れた.一方,消毒の際には基底膜成分は層状にな
り,内皮細胞が消失した後にも残存していたこと
から,内皮細胞の増殖や変性に伴い,血管の新生
から消点までの長期間にわたって,基底膜成分が
Plasminogen activator(urokinase)causes vas・
cularization of the cornea. Invest Ophthalmo正
Vis Sci 22:19レ199,1982
10)Gimbmne MA, Cotran RS, Leapman SB et
ah Tumor growth and neovascularization:
An experimental model us1ng the rabbit cor・
血管構築を支持する上で重要な働きをしているこ
nea. J Natl Cancer Inst 52:413−427,1974
とがわかった.
11)AuSprunk DH, Falterman K, Folkman J:
3.細胞の接着分子であるフィブロネクチンは,
The sequence of events in the regression of
血管新生に先だって結合組織中に出現し,血管系
生後には血管周囲に網目状に存在し,消裾の際に
corneal capillaries. Lab Invest 38:284−294,
1978
12)Muthukkaruppan V, Auerbach R:An・
は,その活性は基底膜成分よりも早期から消失し
giogenesis in the Inouse comea. Science 205:
た.
1416−1418, 1979
13)Polverini PJ,1、eibovich SJ:.Induction of
一77一
78
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