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SMBC上海レポート

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SMBC上海レポート
SMBC上海レポート
2008 年 11 月 18 日号(第 18 号)
編集・発行: 三井住友銀行上海支店
アドバイザリー部
本レポートに関するご照会はこちらへ
電話:86-21-3860-9351(担当:加藤、ゴン)
発行時期:
毎月 10 日・30 日頃
【トピックス】中国のインターネット事情
2008 年 6 月末時点の統計によると、中国のインターネット利用者数は約 2 億 5 千万人
に達している。総人口に対比の利用率は、まだ世界の平均水準(21.1%)より低いが、
絶対値だけで見れば、莫大な数字となっている。また、携帯電話からのインターネット
の利用も全体の 28.9%を占めるようになった。年齢別で見ると、30 代以下が利用者全
体の三分の二を占めており、若者がインターネット利用の主体となっている。
パソコンの普及に伴い、利用場所に関する調査では、約 8 割の利用者が自宅でインタ
ーネットを利用していることが判明できたが、若い年齢層の利用者は約 6 割がインター
ネットカフェから利用している。用途については、なんと音楽鑑賞が 1 位となった、そ
の後は、ニュースの閲覧、チャット、動画視聴、情報検索、電子メール、オンラインゲ
ームという項番になっている。一方、インターネットバンキング、インターネットトレ
ーディング、インターネットショッピング等決済絡みの利用も同期比平均 2 割以上の増
加率を見せており、ネットへの信頼度の向上が見受けられる。
また、チャットソフトの流行によって、交友目的でのインターネットの利用も若者の
間では常識となり、
‘網(ネット)友’
(ネット上のチャットによって知り合った友達を
意味する)等の新しい言葉ができるぐらいに、人気を集めている。
中国もインターネットは日常生活から切り離せない‘E 時代’がやって来たのだ
【特集記事】
1.中国ビジネス再構築 Vol.3:資産譲渡・譲受、営業譲渡・譲受手続の実務と課税
上海マイツ諮詢有限公司
董事長
2.中国不動産ホットニュース
公認会計士
その②
シービー・リチャードエリス北京
池田
博義
金羅
惇夫
杉本
公敏
北京オフィスマーケット
シニアディレクター
3.コンサルティングテーマにみる中国でのモノづくりの課題
日本能率協会コンサルティング
コンサルティング事業部長
当レポートの掲載内容の無断掲載・複製を禁じます。当行及び情報提供元は当レポートの正確性及び完全性を保証す
るものではありません。掲載内容は作成時点のものであり変更されることがあります。当レポートは利用者の責任
と判断でご利用下さい。利用者が当レポートの利用に関して被った損害について、当行及び情報提供元はその原因
の如何を問わず賠償の責任を負いません。個別案件については、法律、会計、税務等の専門家にご相談下さい。
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上海マイツ諮詢有限公司
中国ビジネス再構築 Vol.3:
資産譲渡・譲受、営業譲渡・
譲受手続の実務と課税
董事長 公認会計士 池田 博義
e-mail:[email protected]
先月号では、持分譲渡・譲受の実務と課税について記載しました。持分譲渡の最大のデ
メリットは譲受企業が譲渡企業の製造物賠償責任や隠れたる債務を引き継ぐ可能性がある
という点です。前月号でもこのリスク回避の方策として、資産買収や営業譲渡の方法があ
ることを記載しましたが、今月号では資産譲渡・譲受(資産買収)、不採算事業部門の売却
(営業譲渡)
、強みの事業部門を更に強化する為に他社の同事業部門を譲受る営業譲受につ
いて記述します。
Ⅰ.資産買収の具体的手続き
(1)資産買収の手法
資産買収の手法には、二つの方法があります。第一の手法は、資産買収希望親会社が外
商投資企業を先に設立し、売却希望企業の資産を買い取り、事業を開始する方法です。
第二の手法は、資産買収希望親会社が売却希望企業から資産を購入、これを現物出資し
て外商投資企業を設立し、事業を開始する方法です。(現地法人が新会社を設立する事も
可能。)
(2)董事会特別決議と債権者への広告
資産譲渡企業は、一事業部門の資産を売却します。これは会社財産に重要な影響を与え
る経営行為になりますので、董事会の特別決議(3 分の 2 以上の董事が参加し、参加董事
全員の承認)を必要とします(会社法第 105 条、第 47 条、合弁企業法実施細則第 32 条、
第 33 条)。特別決議が行われた後、資産譲渡企業は、尐なくとも投資者が認可機関に申
請書類を提出する 15 日前に知れたる債権者へ通知書を送付し、且つ一般債権者に対して
は、全国的に発行されている省級以上の新聞に広告を掲載する必要があります(国内企
業買収規定第 13 条)。債権者から異議の申し立てがなければ資産売買契約を締結し、買
収企業は資産を譲受け、事業運営を開始します。
(3)資産買収価格の評価及び決定
資産買収価格は、国際的に通用する評価方法を採用して評価を行います(国内企業買収
規定第 14 条、再調達原価法や収益還元価値法などが採用されるケースが多い。)。但し、
買収対象資産に中国国有財産が含まれている場合は、国有資産管理規定に従い売却価格
を定める必要があります(国内企業買収規定第 14 条)。
(4)現物出資の払い込み証明
上述の第二の手法を採用する場合には、資産買収希望親会社が購入した資産を現物出
資して外商投資企業を設立する事になりますので、①資産買収希望親会社の資産売買契
約書、②資産買収親会社の購入代金払込証明書、③現物のチェック、④資産鑑定評価事
務所発行の評価証明を基に注冊会計師事務所が験資報告書を発行する事になります。
Ⅱ.資産買収の税務
資産譲渡企業には次のような税目の課税が生じます。
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(1)売買契約書には、譲渡対価×0.03%~0.05%の印紙税を貼付する必要があります。
(2)資産譲渡益は譲渡企業の所得となり他の企業所得と合算されて、企業所得×25%で
企業所得税が課されます。
(3)譲渡資産の中に土地使用権の譲渡益がある場合、譲渡原価(販売手数料などの譲渡
費用を含む)に対する譲渡益の割合が、0%~50%未満の場合は譲渡益に対して 30%、
50%~100%未満の場合は譲渡益に対して 40%、100%~200%未満の場合は譲渡益に
対して 50%、200%以上の場合は譲渡益に対して 60%の土地増値税が企業所得税と
は別枠で課税されます。
(この土地増値税の分離課税は、不動産開発業者などにのみ
課税されているのが現状です。)
資産譲受企業には次のような税目の課税が生じます。
(1)売買契約書には、譲受価格×0.03%~0.05%の印紙税が課税されます。
(2)土地使用権、家屋の移転に伴い、譲受企業は契税(日本の登録免許税に該当)が、
譲受価格×3%~5%で課税されます。
Ⅲ.資産買収のメリット・デメリット
資産買収のメリット及びデメリットは、次のようなものが上げられます。
(1)資産買収企業は不要不急の資産を買う必要が無いので、買収資金効率を高める事が
できます。
(2)資産買収企業は、隠れたる債務を引き継ぐという最大のリスクを回避する事ができ
ます。
(3)資産買収では、持分譲渡と違い資産のみが新会社に移転するだけですので、新会社
は許認可関係に関しては総て取り直す必要があり、許認可取得まで事業運営ができ
ない事になります。
(4)債権債務の譲渡について、知れたる債権者には通知、一般債権者には新聞広告が必
要となり、資産買収までに時間が掛かります。
Ⅳ.営業譲渡の具体的手続き
営業譲渡と資産買収の相違は、資産買収は事業部門の資産のみを売却しますが、営
業譲渡の場合は当該事業部門の負債、人材やノウハウなど有機的一体となった有形無
形資産一切の事業部門の買収になります。
(1)譲渡企業の董事会決議
営業譲渡も資産譲渡と同じく、企業の重要な財産の移転になりますので、董事会の
特別決議が必要になります(会社法第 105 条、第 47 条、合弁企業法実施細則第 32
条、第 33 条)。
(2)営業譲渡資産の評価
営業譲渡資産の評価のベースは、Ⅰ(3)と同じですが、更に人材など貸借対照表
に計上されない、オフバランスの資産をどのように評価するかという問題が生じま
す。通常譲渡事業部門の過去の収益力を基準に将来収益を導き、その収益価値を現
在価値に割り引いた収益現在価値法や当該事業部門の純資産を参考に評価額を決定
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します。
(3)債権者への広告と事業部門の継承
特別決議が行われた後、営業譲渡企業は、尐なくとも投資者が認可機関に申請書類
を提出する 15 日前に知れたる債権者へ通知書を送付し、一般債権者に対しては、全
国的に発行されている、省級以上の新聞に広告を掲載します(国内企業買収規定第
13 条)。債権者から異議の申し立てがなければ、営業譲渡契約を締結し、買収企業は
当該事業部門を譲受け、事業運営を開始します。
Ⅴ.営業譲渡の税務
営業譲渡の課税関係は、印紙税や企業所得税などは資産譲渡と同じ考えですが、事業部
門の有形無形資産一切の譲渡ですので、次のような特色を有します。
(1)流通税の非課税
営業財産権譲渡などの包括契約の場合は、個々の有形資産の移転ではないという考
えから、増値税の課税はありません(国税函[2002]420 号)
営業税も、増値税と同じ考えで無形資産の譲渡だけではないので、非課税となって
います(国税函[2002]165 号)。
(2)暖簾の課税
営業譲渡の場合、譲渡企業の有機的一体となった事業部門を購入する事になるので、
譲受企業は譲渡企業の営業権(暖簾)を取得します。この暖簾ですが、譲渡企業で
は譲渡益が他の企業所得と合算されて、企業所得税の課税対象となります。
買収企業側では、この営業権(暖簾)は企業所得税法上も企業会計準則上や国際会
計基準に合わせて償却する事はできません。
(暖簾を売却又は企業の清算時に償却す
る事になります。)
(3)欠損金の繰越
営業譲渡は有機的一体となった譲渡企業の事業部門の有形無形資産一切を譲渡する
ので、当該企業に繰り越し欠損金がある場合、事業部門の資産などを基準に欠損金
の引継ぎが認められています。
Ⅵ.営業譲渡・譲受のメリット・デメリット
営業譲渡・譲受のメリット、デメリットを簡単に纏めると次のようになります。
(1)持分譲渡と違い、買収企業は買いたい事業部門のみを購入する事ができ、買収資金
効率を高めます。
(2)譲渡企業は、弱みの事業部門のみを切り離すことができます。
(3)営業譲渡は、事業部門の有機的一体となった有形無形資産一切の譲渡になりますの
で、その部分に必要な許認可関係はそのまま継続する事ができます。
(4)事業部門に所属する人材も引き受けますので、労働契約関係もそのまま継続する事
となり、経済補償金の支払いが生じる事はありません。
(5)但し、当該事業に係る製造物賠償責任や債務保証などの隠れたる債務は継承するこ
とになります。
以
4/10
上
中国不動産
ホットニュースその③
北京オフィスマーケット
シービー・リチャードエリス 北京
シニアディレクター 金羅 惇夫
e-mail:[email protected]
先般、中国国家統計局の発表により 2008 年第 3 四半期における中国の GDP 成長率が一桁
台となったことが発表され、世界金融危機による影響が中国にも出始めているといわれて
おりますが、今回は同四半期における北京及び上海のオフィスマーケット状況、金融危機
によるマーケットへの影響について述べます。
1.2008 年第 3 四半期
北京オフィスマーケット
2008 年第 3 四半期は北京オリンピック及びパラリンピックが開催された時期で、オフィ
スマーケットへの影響は一時的なものでしたが当初の予想以上の影響がありました。特に、
建築中である新規オフィスビルの工事停止、消防申請許認可関係のストップ、建築工事従
事者(特に出稼ぎ労働者の帰省による工員不足)等により、オフィス移転を検討していた
多くの企業がプロジェクトの延期を余儀なくされました。その結果、2008 年第 3 四半期の
新規供給面積は前期比 38%減、新規契約面積は前期比 26%の減尐を示し、また空室率も
0.5%上昇し 18.5%となりました。市内平均賃料も 2008 年第二四半期の平均賃料は前期
2.3%の上昇でありましたが 2008 年第 3 四半期 0.4%の若干の上昇に止まり、RMB205.8/㎡/
月という数値になりました。
2.2008 年第 3 四半期
上海オフィスマーケット
2008 年第 3 四半期における上海のオフィスマーケットは浦西、浦東で異なる動向を示し
ました。浦西における主要オフィスの平均賃料は前期比 2.4%の上昇を示し平均賃料は
RMB255.4/㎡/月となったのに対し、浦東における主要オフィスの平均賃料は前期比 2.3%の
下降となり、RMB284.9/㎡/月となりました。浦東における主要オフィスの平均賃料が下降
した要因としては上海環球金融中心(森ビル第二期)に代表される大量の新規供給(約
376,000 ㎡の新規供給面積)があった為、以前は強気な態度を堅持していた浦東のオフィス
ビルオーナーが一転、柔軟な態度を示し、契約更新を迎える既存入居テナントに対しては
契約更新後の賃料上昇を抑えた引き止め策を講じ、また新規テナントに対しては設定募集
賃料を下げる現象が認められました。全体の空室率については前述の大量供給の影響で前
期比 2.8%の上昇の 9.9%となりました。
3.金融危機による不動産マーケットへの影響
まず、外資系企業による不動産投資マーケットへの影響について、ここ数年間、不動産投
資を積極的に行ってきた企業(特に既存物件を積極的に購入していた外資系金融機関、フ
5/10
ァンド)の多くが金融危機以降、新たな不動産投資活動を凍結しています。また、不動産
投資に伴う購入契約締結直前であった案件も金融危機の影響で直前にキャンセルになるな
どの現象が発生しました。また、既に投資を行った企業のからは所有物件の早期売却を希
望する企業も出始めています。今後は前述のような企業による不動産投資活動は当面消極
的になると予測される一方、一部には中国企業や比較的金融危機の影響を受けていない企
業による不動産投資活動が出てくる可能性もあります。
次に、金融危機によるオフィスマーケットへの影響ですが、北京、上海とも尐しずつです
が既に影響が出始めています。特に外資系金融関係の企業(ここで言う外資系とは欧米系
企業を意味します)は昨今、多くの企業が旺盛なオフィス面積の拡大傾向を示し、需要ニ
ーズの牽引役でありました。しかし、金融危機以降、オフィス拡大計画を延期もしくは中
止する企業が増加、また金融機関ではない場合においても米国系企業の一部には新たなオ
フィス拡張プロジェクトを当面見合わせる企業も出始めています。また、計画を中止する
状態までは行かないものの、予算を見直し、移転先を変更する企業も現れています。その
ような状況の中、本年末から来年にかけて新規供給を予定している新規開発物件のオーナ
ーは積極的な要素が認められない現状の中、新規募集賃料を見直し、優良テナントや大型
テナントに対して柔軟な姿勢を示し始めています。
今後のマーケットの動向ですが、現時点での予測としては今後急激な下降を示す可能性は
尐ないと思われます。しかし、これまでのような旺盛なオフィス需要ニーズは今後当面は
軽減する可能性が高く、各新規物件オーナーもマーケット状況を注視しつつ各テナントに
対応していくと思われます。現時点では明確な予測をすることは困難ですが、尐なくとも
言える事は、以前のような借り手市場ではなく、どちらかと言えば借り手市場に近い状況
に近づきつつあるという状態であると言えます。従い、実務上オフィス拡張及び移転を検
討しなければならない企業にとってはある意味で借り時であると言えます。
今後、どのような影響が更に発生するかについては引き続き 2008 年第 4 四半期及び 2009
年第 1 四半期の動向を注視していく必要があると言えます。
以
6/10
上
【中国】モノづくり実態調査報告
その結果と中日の
実態調査結果比較
日本能率協会コンサルティング中国
コンサルティング事業部長
杉本公敏
日本能率協会コンサルティングでは、1998 年から中国上海に拠点を設立し中国企業のコ
ンサルティングなどを行っている。弊社では中国の日系企業を中心とし、欧米系企業、中
国民営企業を対象に、モノづくりの実態、直面している課題を明らかにするため、2007 年
に第一回のモノづくりの実態要調査を行った。調査内容は、5 頄目で、回答企業は90%が
日系企業である。なお、ご回答を頂いた企業数は多くなくこの調査結果で中国全体のモノ
づくり企業の実態や傾向、課題などを語ることは出来ない。今回は中国における第一回目
の試みでありその点ご容赦をお願いしたい。
1.
会社の重点管理指標
2.
QCDの水準の変化
3.
モノづくり改革の範囲、位置付けとの変化
4.
モノづくり重点頄目に関する問題点と施策
5.
国内外の生産体制、生産技術について
特に、上記調査結果を踏まえ、日本にて同じ調査を実施した結果との違いについて紹介し
たい。紙面の都合で、上記頄目の一部を抜粋して紹介する。
1.
中国におけるモノづくり改革の重点頄目は?「現在」と「3 年後」(図表 1 参照)
モノづくり改革の重点頄目を質問したが、「現在」も「3 年後時点」でも上位 3 頄目は同
じであり、第一は「品質力向上」、その他は「人材力向上(意識改革、育成)」
、「コスト力
向上」である。中国の設備管理水準、退職率の高いワーカーでの作業、ばらつきの大きい
原材料などを前提として、高まる顧客、後工程が要求する品質水準をいかに満足するか、
これがモノづくり改革における品質力向上の課題であろう。次に、受注増、生産増に対応
して急激に社員数や設備数を増強してきているが、今まではモノをつくること自体に精力
を注いできている。その重点はマネジメントより、モノづくり技術中心の考え方であった
であろう。振り返ってみると、マネジメントができる人材が不足しているのが実情で、管
理の基本が何であるかも理解できていない名ばかりの管理職が多い。これらのことが、人
材力向上(意識改革や育成)が必要な理由であろう。
なお、コスト力向上の頄目につい
ては省略する。
前記を除いて、3年後時点で更に強化すべき頄目は、「フレキシビリティー(小ロット、
短納期、需要変動対応)
」、「新製品開発力」、「環境対応力向上」である。品質面、コスト面
の競争に加え、多品種小ロット、短納期対応、消費地での新製品開発などが求められてい
る。
7/10
≪
2.
図表1:
モノづくり改革の重点頄目
「現在」と「3 年後」≫
今後取り組みたい管理技術頄目は何か?「現在」と「3 年後時点」(図表 2 参照)
実態調査結果によると、現在取り組んでいる管理技術は、
「品質改善技術」「個別作業改善」
「製造技術標準化」である。今後のモノづくり改革活動の中でどんな管理技術を導入して
いくかである。回答によれば、3 年後は、一位は同じで「品質改善技術」であり、続いて「J
IT(ジャストインタイム)」
、「製造技術標準化」である。
違いは個別作業改善ということばがJITという管理技術頄目に変化したことである。
中国ではJITは、もうすこし広い意味でアメリカから導入された管理技術として【リー
ンプロダクションシステム】と呼ばれ、ここ数年重要な管理技術としてとらえられている。
コストダウンを行うため、7 つの無駄(在庫、不良、作りすぎ、加工、運搬、手待ち、動作)
を徹底的に無くそうというものである。
8/10
≪
3.
図表2:
今後取り組みたい管理技術頄目
モノづくり実態調査結果の日中比較
≫
(図表 3 参照)
このモノづくり実態調査は、2007 年に中国と日本で同じ頄目で実施している。その比
較を行ったので特徴的な頄目について述べる。
・回答企業の特徴は、中国にある企業の 89%が成長中であり、日本国内企業の 53%より大
幅に多い。
・現在、重点と考えている経営管理指標は、中国は世界の工場と言われていうように、第
一はコストダウン特に「調達費用のコストダウン」、第二は「労働生産性」である。日本で
は、規模を求めて第一は「全社売上高」
、第二は社会からの要求である「環境対応」である。
・次は、QCDのレベル水準目標の変化である。C(コストダウン)水準は、現在を 100%
すれば、過去 3 年間のコストダウンの実績は日本(△7%)に比べ中国(△18%)の方が大
きい。これから 3 年間は同程度の目標(△10%)である。Q(クレーム件数)は、現在を
100%とすれば過去 3 年間でクレーム削減実績は中国(+1%増加)に比べ日本(△18%)
の改善が進んでいる。中国ではこの 3 年、生産は増大しているが品質クレームの改善は思
うように進んでいない。
・モノづくり改革の重点頄目は、「品質力」「コスト力」が共通で最重要頄目である。中国
は特に「人材力」という管理者・監督者人材の育成が急務であり、日本では売れる儲かる
商品の「新製品開発能力の向上」が重点である。
・モノづくり改革重点頄目の「品質力向上」「人材力向上」「コスト力向上」の3つについ
て、各問題点は中国と日本でほぼ同じである。違うのは人材力向上の中で、日本ではベテ
ラン作業者の技術、技能が問題となっている。また、各問題に対する改善施策であるが、
その方法は中国と日本で同じである。日本のモノづくり改革の考え方、方法、手項を中国
でも適用しているといえよう。
・3 年後の生産技術への人員、予算配分動向、投資動向については、両国とも 60%以上の企
9/10
業が生産技術への人員増、予算配分の増を考えている。特に設備投資は、日本の 14%増に
比べ 33%と倍の伸びである。
・中国を含むアジア圏の生産拠点の機能については、中国と日本で当然であるが同一の見
方である。現在はコスト追求の生産拠点であるという機能から、今後は商品開発と一体化し
た消費地生産拠点への転換を志向している。
≪
回答企業
の特徴
重点
経営管理指標(現
在)
QCDレベル水準
(3年前⇒現在⇒3
年後)
モノづくり改革
重点項目
(現在)
問題点
(第1位)
改善施策
(第1位)
生産技術
(3年後)
今後、取り組む管
理技術
図表 3:モノづくり実態調査結果の中国と日本の比較表≫
日本
中国
規模
501人以上、42%
501人以上、60%
成長中
53%の企業
89%の企業
1位
全社売上高
調達コストダウン比率
2位
環境対応
労働生産性
3位
コンプライアンス
コンプライアンス
コスト
107%⇒100%⇒90%
118%⇒100%⇒90%
クレーム件数
118%⇒100%⇒79%
99%⇒100%⇒78%
生産計画単位
月次⇒月次⇒週次
月次⇒月次⇒週次
1位
コスト力の向上
品質力向上
2位
品質力の向上
人材力の向上
3位
新製品開発能力の向上
コスト力の向上
品質力向上
作り込みレベルが上がらない
作り込みレベルが上がらない
人材力向上
中間管理職の改善力不足
ベテラン作業員の技術技能伝承
中間管理職の改善力不足
コスト力向上
生産性が向上していない
生産性が向上していない
品質力向上
新製品立上管理など
新製品立上管理など
人材力向上
OJT教育の場づくり
OJT教育の場づくり
コスト力向上
IE、TPM活動
IE、TPM活動
人員・予算
増加、64%の企業
増加、60%の企業
設備投資
114%へ
133%へ
第1位
品質改善技術レベルの向上
品質改善技術レベルの向上
第2位
個別作業改善
JIT導入
第3位
現場の技能伝承
製造技術標準化
製造技術標準化
コスト追求⇒商品開発と一体化した消
費地生産へ
コスト追求⇒商品開発と一体化した消
費地生産へ
中国他 アジア圏の生産拠点
の目的(3年後)
最後に、中国におけるモノづくり企業の経営環境は、最近の経済環境の変化、労働市場の
変化、政府の方向性の変化、そして顧客からの要請の変化により、様変わりしている。モノ
づくり企業においては正に逆風の状態であり、対応力が問われている。もしそれらへの対応、
あるいはその変化の先を見据えたモノづくり改革が出来なければ中国市場で生き残ってい
けないのではないだろうか。
以
10/10
上
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