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ケインズ 『一般理論』 私注 賃金基金説の系譜について (19)
Title Author(s) Citation Issue Date ケインズ『一般理論』私注 賃金基金説の系譜について (19) 白井, 孝昌 經濟學研究 = ECONOMIC STUDIES, 39(2): 182-213 1989-09 DOI Doc URL http://hdl.handle.net/2115/31830 Right Type bulletin Additional Information File Information 39(2)_P182-213.pdf Instructions for use Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 経 済 学 研 究 39 鮒 : 1 北 海 道 宮 大 学 殺 事9 .9 く研究ノート> ケインズ『…駿翠論3私注 金基金説の系譜についてな 9 ) 白井孝昌 アダム・スミスが『国富論2の第 l繍第 X主 「労犠とストックのさまざまな藤用における賓 と利潤について j の欝 I節「際用それ自体の われわれは,スミスにおける 涼理〉の議活の仕方私サイモンのく知足的行 動〉の説点から眺めようと企図しているの l)において描こうとし 性撲から生じる不均等 J るが,それに先立って,その概念のありょうを ている労働者とスト?グの諜有者の行動様 可能なかぎり豆篠に理解しておこうと試みてい を,われわれは,今役紀初誕のエドウイン・キ るのである。 ャ ナ γ に始まり今日,多くの経済学者たちによ さて,前稿 2) の第 LXXXII鮪において,わ って受け継がれていると患われる〈経済人間〉 I:;tグスブォ…ド英語辞典I Jl'こ拠って れわれは J (economic man) の荘重吉様式と比較してきた s a t i s f i c e " という語の議味を調べることから, “ のである。後者の〈経済人間〉の嫌念は,あま その試みを開始したのである O それには二つの りにも挙態かっ皮相に過ぎるので,それに照、ら 意味があって,その第 1の叢;味では,それは他 してスミスの陳述念解釈しようと試みるとき, t i s f y )と 動認として「満足さも去る j おa 人はスミスの真意をついに捉えることなく終b 9 5 0 年代になってサイモ あった。第 2の意味は 1 るであろうことは,すでに,われわれが検討し ンが初めて捜尽くあるいは,転用〉したことか てきた若干の事例からも現らかである。そうし じたもので,その語は幾重言語として, r ある て,このようなく経済人間〉の概念の失点に対 特定の詞標を達成するために必要とされる最低 する一つの反省として,われわれはハーパー 限度の難件を讃足させるであろうところの一連 a d m i n i s t ト・サイぞンのく組織管理人間:> ( の行為を決定し,まずら追求すること J (To r a t i v e man) の概念に興味を寄せてきたので、 decideon andpursue a course o fa c t i o n ある。サイモンは,彼の提唱するく組織管理人 I l s拭 i s f y the minimum r e q u i r e t h a t wi 間〉の行動様式私詫来のく経済人間〉の ments necessary t o achieve a p a r t i c u l a r ehavior)で、はなく 大化行動:>(maximizingb g o a l )3) とされている。この後者の場合合議者 て,く知足的行動 C s a t i s f i c i n gbehavior)に 結晶させようと意図してきたのであった。 1 ) AdamS m i t h,Anlnquiry i n t ot h e Nature andCauses01t h eWealth01N a t i o n s,e d i t e d byEdwinCannan,Vo . 11(Lo n d o n:M記t h u郡 . 1 9 0 4 ),B ook1 ,Ch昭 総rX. Of Wag悲喜 and P r o f i ti nt h記 d i f f邑r e n t Empoyments o f t1 . I n e q u a l i t i e s L a b o u r and S t o c k ; P主r a r i s i n gfromt h eNa t u r eo ft h eEmploym 母n t s ,p p .1 0 2 ω 1 1 9 . t h e m s e l v e s のそれから明確に区別して表示するために,わ a t i s f i c e " の訳詩と れわれは自動詞としての“s して,<知足的に行動ずる〉と L、う表現を用い るG 2) 撚務 f 資金基金税の系譜について ( 1 8 ) J;本総第3き i J ( 巻第 l予 1 9 8 9 年 6J . I ) , p p . 94(94)-120( 12 0 ) . 3)A S z t p t l e m e 匁 tt ot h e Oxford EnglishDic t i o n a r y,Vo l .I I I( O x f o r d :At t h eC l a r e n . .1 4 9 5 . d e nP r e sぁ 1982),p 剛 1 9 8 9 .9 ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について同 ところで,われわれの見るところでは, w オグ a t i s f i c e " の事項に スフォード英語辞典』の“ s 白井 1 8 3( 3 2 7 ) ディングがその著書『経済分析』の第 4版 8) で 紹介することとなったところの「知足的行動」 採択されている用例は,その語の生成過程の特 ( s a t i s f i c i n g behavior) とし、う語句は,もっと 徴を例示するという観点をとるかぎり,二つの 後になって, 意味のいずれの場合にも,きわめて不十分に思 ミック・レヴュー』誌の 1959年 6月号所載の展 すなわち, wアメリカン・エコノ われた。それゆえ,われわれは第 2の意味での 望論文「経済学および行動科学における意思決 その語の生成過程を独自に辿ってみることにし 定の理論」めの中で初めて使用されるにいたっ たのである。 たので、ある。 a t i s f i c e " を初 サイモンが第 2の意味での“ s そういうわけで,われわれは 1947 年から 1959 めて使用したのは, w サイコロジカノレ・レヴュ 年にいたる期間におけるサイモンのく知足的行 ー』誌の 1956年 3月号所載の論文「合理的選択 動〉の概念の生成発展のありょうを検討するこ と環境構造 J4) においてであると思われるが, とを当面の課題として設定したのである。ちな 年に 彼のく知足的行動〉の概念は,すでに 1947 みに, 公刊された著書『組織管理行動』めの中に,あ ク・レヴュー』誌の 1946年 3月号所載のリチヤ る程度まではっきりとした形をとって表わされ ード・レスターの論文「賃金・雇用問題に対す この時期は, wアメリカン・エコノミッ る限界分析の欠点 J 10) に触発されて,限界分析 ていたと言われている。その着想は,その後, 『エコノメトリカ』誌の 1951年 7月号所載の論 の側に加担する理論家たちが「実証経済学」 文「雇用関係の形式的理論」のや, wクオータリ (Positive Economics) の方法論を強力に打ち ー・ジャーナノレ・オヴ・エコノミッグス』誌の 出してきた時期で、もあった。そうして,その最も 1955年 2月号所載の論文「合理的選択の行動的 代表的な論者の 1人をわれわれはミルトン・フ モデル」りなどでの試みを通じて,やがて, 1956 リードマン 11)に見出すのであるが,われわれが 年の上記の論文に至り,そこで初めて, I 知足的 s a t i s f i c e ) という語と結びつく に行動する J ( これまでスミスの『国富論』の第 I編第 X章の 第 I節の議論に対する現代的な解釈の 1例とし ことになったので、ある。しかしながら,ボール 4) HerbertA . Simon,“ R a t i o n a l Choice and t h e S t r u c t u r e o f t h e Environments, . . P s y c h o l o g i c a lReview,Vo. l6 3 , N o .2(March p .1 2 9 1 3 8 . 1 9 5 6 ) p 5) H . A . Simon, A d m i n i s t r a t i v eB e h a v i o r , A S t u d y 01 Decision-Making P r o c e s s i n A d m i n i s t r a t i v eO r g a n i z a t i o n (NewYork: Macmi I IanCompany ,1 9 4 7 ) . 6) H .A . Simon, “ A Formal Theory o ft h e EmploymentR巴l a t i o n, "Econometrica,Vo. l 1 9 ,N o . 3( J u l y1 9 5 1 ), p p . 2 9 3 3 0 5, r e p r i n t e di nh i sModels 0 1Man ,S o c i a l and a t i o n a l R a t i o n a l,MathematicalEssaysonR HumanBehaviori naS o c i a lS e t t i n g(New n c,1 9 5 7 ),p p . York:JohnWiley& Sons,I 1 8 3 1 9 5 . 7 )H . A . Simon,“ A B ehavioral Mod巴1o f R a t i o n a l Choice, " Q u a r t e r l y Journal of Economics,Vo. l6 9,No 1(Feburary1 9 5 5 ), p p .9 9 1 1 8 ,reprintedi nh i sModels01Man , p p .2 4 1 2 6 0 . , 闘 て取り上げてきたロッテンバーグの論文 12)も , じつは,その流れの中に位置するものであった 8) Kenneth. E .Boulding,EconomicA n a l y s i s, 4 t he d ., V0. 1 l . Microeconomics (New York:Harper& Row ,I n c .,1 9 6 6 ),p .3 . 04 . 9) H . A . Simon,“ Theories o f D e c i s i o n Makingi nEconomicsand B e h a v i o r a lS c i ence, " American Economic Review, Vo. l XLIX,N o . 3( J une1 9 5 9 ),p p .2 5 3 2 8 3 . 1 0 ) Richard A . L ester,“ Shortcomings o f Marginal Analysis f o r Wage-Employment Problems, " American Economic Review, Vo. I 36,No. 1(March1 9 5 6 ),p p . 6 3 9 2 . 1 1 ) Mi . I ton Friedman,“ The Methodology of P o s i t i v e Economics, "i n h i s E ssays i n P o s i t i v eEconomics(Chicago:Universityo f ChicagoPress,1 9 5 3 ),pp 3 4 3 . 1 2 ) Simon Rottenberg, “ On Choice i n Labor Markets, "l n d u s t r i a landLabourR e l a t i o n s Review,Vo. l9 ,N o . 2( January1 9 5 6 ),p p . 1 8 3 1 9 9 . 1 8 4( 3 2 8 ) て,きわめて興味深い陳述を含必でいる。それ のである。 サイモンは, 39-2 経 済 学 研 究 レスターのような経験的研究 ゆえ, われわれは前稿の第 LXXXIV 節以下 ( e m p i r i c a lr e s e a r c h ) を行なう人々と立場を で,く知足的行動〉の概念に関連する彼の陳述 異にして,実証経済学の方法論に同調しながら, に焦点を合わせて,その「第 2版へのイントロ しかも,限界分析を支持する経済学者たちの措 ダクション」の内容をかなり詳細に紹介したの くく経済人間〉の画像には批判的立場をとり, である。 彼独自のく知足的行動〉の着想に拠ってく組織 まず,前稿の第 LXXXIV節において,われ 管理人間〉の画像を描き出そうと企図している われは「第 2版へのイントロダクション」の全 のであるから,彼の立場は,この時期の経済学 体的構成のありょうを内容目次の形で示し,そ の方法論争の流れの中に置いて眺めるとき,い うして,その「まえがき」に相当する部分の後 ささか徴妙なところがあるように思われる。 半部分に含まれる三つのパラグラフを引用する ところで,サイモンはその論文「合理的選択 と環境構造」の中で初めて“s a t i s f i c e " という したのである。 その内容目次の概略は次のようになってい 。 た 語を使用したと思われるのであったが,その翌 年,すなわち, 1 957 年に,彼は 2冊の書物の中 ことによって,サイモンの意図するところを示 で,その語を使用している。その一つは,彼の 論文集『人間の諸モデル,社会的および合理的, サイモン『組織管理行動』の 「第 2版へのイントロダグション」 一つの社会的背景の中での合理的な人間行動に かんする数学的諸論文 t わであり,その中の用 ,パラグラフ(1)から (5) 「まえがき J まで 例は『オクスフォード英語辞典への補遺』第直 巻の“ s a t i s f i c e " の事項に収録されているので あった。しかしながら, ¥,、ま一つの彼の著書『組 織管理行動』第 2版に 14)付加された「第 2版へ ~ p p .i x x . 1 . 本書の構造 ( S t r u c t u r eo ftheBook), p . パラグラフ (6) から (8) まで p X-XIV. のイントロダクション J15) における用例は,そ S2 . 組織のための教訓 ( Lessonsf o rurga の事項の執筆者の選に漏れているのである。そ n i z s t i o n ), ノ 4ラグラフ ( 1 9 ) から ( 4 6 )ま で , p p .x i v x x i. i れゆえ,われわれは本稿において,後者におけ る用例を紹介することにしよう。 他方,その「第 2版へのイントロググション」 は,サイモンが『組織管理行動』の初版刊行後, ほぽ 1 0年にわたって,<知足的行動〉の着想を 司 S3 . 組織管理行動と現代の行動科学 (Admin i s t r a t i v eBehaviorandContemporary Behavioral S c i e n c e ), ノミラグラフ ( 4 7 ) から ( 7 6 ) まで, p p .x x i i x x x i i . i S4 . そ の 他 の 注 釈 (SomeFurther Com 司 さまざまな数学的モデルとして具体的に表現す る試みの中で、得た経験に基づ、いて,彼自身の初 ments),パラグラフ ( 7 7 ) から ( 8 8 )ま で p p .XXXI11-XXXVll. 期の作品をどのように見直しているかを示し 1 3 )H . A. S imon,ModelsofMan,Social and R a t i o n a l,MathematicalEssaysonR a t i o n a l HumanBehaviori naS o c i a lS e t t i n g (N巴w York: J o h nW i l e y& S o n s,I n c .,1957). 1 4 )H . A S imon, Administrative Behavioγ (NewYork: Macmi 1 1a nCompany,2 n de d ., 1 9 5 7 ) . 1 5 )I b i d .,p p .i x x x x v i i スミスのいわゆる「労働とストックのさまざ まな雇用における賃金と利潤について」生じる ところの諸格差のー側面を説明するための理論 的枠組としてのく有利性均等の原理〉を,個人 の行動の視点から基礎づけるく極大化行動〉 (MaximizingBehavior) の概念と,それに対 1 9 8 9 .9 ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について帥 1 8 5( 3 2 9 ) i n g ),19) および 置されるく知足的行動> ( S a t i s f i c i n g Beha. v o i r ) の概念に関心を寄せているわれわれにと って,サイモンの「第 2版へのイントロダクシ 白井 s 付 論 「 組 織 管 理 科 学 と は 何 か J (What i an Administrative S c i e n c e ? )20) ョン」の中で最も興味ある部分が,その!l3i 組 における議論は, i 人間の合理的選択の構造」 織管理行動と現代の行動科学」であることは, ( t h e s t r u c t u r e o f human r a t i o n a l c h o i c e )21) を分析するための理論を構築するに 一見して明らかであろう。彼は,そのセクショ ンの議論の意図することろを, r まえがき」の中 で,次のように述べていたのである。 先立つて,そのための方法論的な基盤を設定す るために行なわれる。 il !3は , 一般的には組織理論 ( o r g a n i z a - そうして,次に, t i o nt h e o r y )が,そうして,特殊的には本書で R a 第 W章「組織管理行動における合理性J( 提示されうる理論が,社会諸科学におけるその t i o n a 1 i t yi nAdministrativeBehavi o r )22),および 他の議論の領界 ( o t h e rframeso fr e f e r e n c e s i nt h es o c i a ls c i e n c e s ) に対して, どのよう 第 V章 「 組 織 管 理 上 の 諸 決 定 の 心 理 学 」 (The Psychology o f Administrat i v eD e c i s i o n s )23) な関係を有するかを論じることによって,行動 科学の研究者たちのための方向づけを行なうも のである。 J16) の二つの章の中心的課題は「合理的選択の理論」 サイモンの!l3の議論を見るに先立ち,われ ( atheoryo fr a t i o n a lc h o i c e ) の構築である われは前稿の第 LXXXV 節において, 1957年 と述べられているのであった。これらの二つの I T '組織管理行動』という 章が取り扱う問題群と,その後にくる諸章が取 の時点から彼が改めて, 作品の全体的な構成を説明し直している!l2の I章「組織の均衡」 り扱う問題群との聞に,第 V 議論を眺めることにしたのである。その著者の (TheEqui 1ibriumo ft h eO r g a n i z a t i o n )24) 1個の諸章と一つ 初版および第 2版の本体は, 1 の議論が置かれていて,それは 1957年当時のサ の付論から成るが,サイモンは,彼の研究の発 イモンの自には次のように映っているのであっ 生の過程の中で順次に取り組むにいたった 4層 た 。 の問題群に照らして,それらの諸章をグループ 「第 M章は脇道の性質を有する一一必要な脇 道なのであるが, 分けして見せるのであった。 この著書の全体のためのイントロダクション と,各章の議論の要約とが述べられてある第 I 章「意思決定と管理組織J ( Decision-Making and A d m i n i s t r a t i v eO r g a n i z a t i o n )1り は 別 として, しかし,脇道であることに変 わりはない。本書の残余の諸章は,大体におい て,管理組織のく内部で>(“i n s i d e "a d m i n i - s t r a t i v eo r g a n i z a t i o n s ) 起こることにかかわ っているのであるが,第 W章はそれらの組織の a tt h e i rb o u n d a r i e s ) 起こるこ 境界領域で ( とーーすなわち,人聞が組織に加入するか,あ 第 E章「組織管理理論の若干の問題J(Some るいは,そこから離脱するかについて行なう諸 Problemso fAdministrativeThe- 決定の性質一ーを論じている。この章の中で提 o r y ), 示される理論は,大体において,チェスター・ ¥ 18) 第 E章 「 意 思 決 定 に お け る 事 実 と 価 値 」 ( F a c tandValuei nD e c i s i o nMak開 1 6 )I b i d .,p .x . 1 7 )I b i d .,p p .1 1 9 . 1 8 )I b i d .,pp. 2 0 4 4 . 1 9 )I b i d .,p p .4 5 6 0 . b i d .,pp. 2 4 8 2 5 4 . 2 0 )I 2 1 )I b i d .,p .x i i i . 2 2 )I b i d .,p p .6 1 7 8 . b i d .,p p .7 9 1 0 9 . 2 3 )I 2 4 )I b i d .,p p .1 1 0 1 2 2 . 1 8 6( 3 3 0 ) 39-2 経 済 学 研 究 バーナードの考えを祖述したものである。 J25) サイモンのこの陳述に照らして,われわれは, において扱われるのであるが,サイモンはこの 章について次のように述べている。 I章が『組織管理行動』としてまとめられた 第V 「第刃章では,複合的な決定の過程の中のこ 彼の研究の大枠から少しはみ出しているだけで れらの数個の諸要因が,一つの全体としてのそ なく,その中には彼独自の理論も含まれていな の過程の中で,再度,結合させられる。ここで くて,かなり軽く見られるようになっているも は,それに先立つ諸章において開発されてきた のと受け取ってよいであろう。 分析方法が,応用と例証を通じて,組織におけ 次に,いま一つの問題群を扱うものとして, る計画とコントロールの諸過程に,そうしてま 第 W章「権限の役割 J( TheRoleo fAuthor- た,集権化と分権化の問題に関係づけられるの i t y ),26) 第四章「意思の伝達J( Communication),27) 第 K章「効率性の基準J(TheC r i t e r i o no f E伍 c i e n c y ),28) および L o・ 第 X章 「 忠 誠 心 と 組 織 へ の 一 体 化J ( ya 1 ti e s and O r g a n i z a t i o n a lI d e n t i f i c a t i o n )29) である。」釦 こうして,サイモンの『組織管理行動』の全 体的構造は,その最下層に方法論的基盤を設定 するための第 E章,第 E章,および,その付論 が置かれ,その上に, r 合理的選択の理論」を扱 う第 W章と第 V章の層が重ねられ,さらにその 上に,組織の内部にあって意思決定過程に関与 の四つの章が一つのク。ループを形成するとされ する諸機制を分析するところの第 W章から第 X るのであった。そうして,サイモンはこのグル 章までの四つの諸章を含む層が積み重ねられ, ープの課題を次のように述べているのであっ そうして,最後に,それらの分析の結果を綜合 して一つの全体像を描き出す第 x l章を頂点とす た 。 「第四章から第 X章にいたる諸章は,本書の メイン・テーマーーすなわち,組織にとって内 るピラミッドとして提示されたので、ある。 このように, w 組織管理行動』を構成する諸章 t h ed e c i s i o n m a k 部に位置する意思決定過程 ( の配列の順序はピラミッドを構築するかのよう i n gp r o c e s s e st h a ta r ei n t e r n a lt oo r g a n i z a t i o n s ) の研究一一に立ち戻る。 これらの な形になっているのではあるけれども,サイモ 諸章の課題は,組織の構成員の諸決定に影響を 的過程はそれとは逆の順序を辿って行なわれた 与えるために,それらの諸決定の聞の整合性を のである。すなわち,彼は,言ってみれば,地 もたらすために,そうして,それらの諸決定が 中に埋没したピラミッドを発掘するような形で 組織の全体的な目標を両立しうるよう保証する 研究を進めたのである。彼が最初に発掘したの ために,組織の中に存在する諸機制を描き出す は,第 x l章で描かれているような一つの全体と ことである。y O ) ンの述懐するところによると,彼の研究の発生 しての管理組織(とりわけ,地方自治体の行政 その次の,そうして,最後の問題群は, 組織)をめぐる諸問題なのであった。それゆえ, l章「組織の解剖学J (TheAnatomyo f 第x l章に含まれる問題群を「第 1層」 サイモンは第 x O r g a n i z a t i o n )31) ( t h ef i r s ts t r a t u m )33) の問題群と呼ぶのであ る 。 2 5 )I b i d .,p .x i . 2 6 )I b i d .,p p .1 2 3 1 5 3 . 2 7 )I b i d .,p p .1 5 4 1 71 . 2 8 )I b i d,p p .1 7 2 1 9 7 . 2 9 )I b i d .,p p . 198-219. 3 0 )I b i d .,p p .x i x i i 3 1 )I b i d .,p p . 220-247. 彼の発掘の第 2段階は,複合的な意思決定過 程に関与する組織内部の諸機制を分析すること であった。それゆえ,彼は第 W章から第 X章ま 3 2 )I b i d .,p . xi i i . 3 3 )I b i d .,p .x x i i . 1 9 8 9 .9 ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について 帥 白井 1 8 7( 3 3 1 ) での四つの諸章が扱う問題群を「第 2層J( t h e な人間像のなかから二つの極端を示すものを提 secondstratum)34)の問題群と呼ぶのである。 示する。一方の極端は,経済学者たちが描き出 同様にして,管理組織における「合理的選択 しているく経済人間;::> ( economicman) であ 」 の理論」を提示する第 N章と第 V章は「第 3層 る。それについて,サイモンの述べるところを ( t h et h i r dstratum)35) の問題群を扱うのであ 見ょう。 ( 4 9 ) r ……経済人聞は, り,そうして最後に,第 H章と第 E章,および 彼に聞かれている その付論で扱われる方法論的問題群が彼の研究 諸選択肢を選択することを可能にさせるところ 過程の最深層,いわば「第 4層Jを形成するの acompleteand の,完全で整合的な選好体系 ( c o n s i s t e n tsystemo fp r e f e r e n c e s )を持つ。 である。 F 組織管理行動』の「第 そうして,彼はそれらの選択肢がどのようなも 2版へのイントロダクション」の S3 1"組織管 のかを,つねに完全に知っており,また,どの 理行動と現代の行動科学」には,彼の研究過程 選択肢が最善であるかを決定するために彼が行 の「第 3層」の問題群に対する 1 9 5 7 年現在の彼 なうことのできる計算の複雑さには限界はない の見解が述べられているのであった。われわれ ( t h e r ea r enol i m i t sont h ecomplexityo f t h ecomputationshecanperformi no r d e r I ternatives are t o determine which a b e s t )…。j3S) こうして,サイモンの は,前稿の第 LXXXVI 節において, S3の 3 0 1"まえがき」を構成するこつのパラグラフ ( 4 7 )と ( 4 8 ) を紹介した。その中で,サイモ ンは次のように述べている。 そうして, r ( 4 7 )1"……私は,いまや,もう少し深く掘り ( 5 0 ) 他方の極端には,その源をフロイトに 下げて,第 N主主と第 V章とから成る第 3層に進 まで辿ることのできる社会心理学の諸傾向があ むことにした L、。これらの章は合理的な人間の って,それらはあらゆる認識作用を感情の問題 r a t i o n a lhumand e c i s i o n m a k i n g ) 意思決定 ( Attheo t h e r に帰せしめようとするのである ( h o s et e n d e n c i e si n extreme, we have t s o c i a lpsychologyt r a c e a b l et oFreudt h a t 39 1c o g n i t i o nt oa f f e c t . )o J) t r yt oreduceal を扱うのである。彼らの組織を説明するため の,おそらく最も単純な方法は次の聞いに答え ることであろう。すなわち, 1 . これらの章の最大の関心が, もっぱら合 サイモンは,後者の人間像に名称を与えてい ( r a t i o n a lb e h a v i o r )に向けられる理 ないので,われわれはとりあえずーっの便宜と 理的行動 由は何か。 して,前稿の第 LXXXVIII節で,それにく情 2 . これらの章が合理性の限界 ( t h el i m i t s o fr a t i o n a l i t y ) を強調する理由は何か。 J36) s e n t i m e n t a lman) という名を付け 動人間;::> ( ここに提示された二つの聞いのうち第 1のも 極端な類型の聞に,サイモンがねらう人間像の 11"合理的行動と組織管理」 のに対する答は, 3 位置を,彼は次のように述べているのであっ ( R a t i o n a lBehavoirandA d m i n i s t r a t i o n )37) た 。 という見出しのもとにあるサブセクションの中 で与えられるのであった。そこで,サイモンは 社会科学の諸分野で描き出されているさまざま 3 4 )I b i d . 3 5 )I b i d . 3 6 )I b i d . 3 7 )I b i d .,p .x x i i i . た。く経済人間〉とく情動人間〉というこつの ( 51 ) 1"……管理組織を観察したことがある か,あるいは,その理論に自ら取り組んだこと のある人なら誰にでも,組織の中の人間行動 (humanbehaviori no r g a n i z a t i o n s ) が,全 面的には合理的でないにしても,すくなくとも, 3 8 )I b i d . 3 9 )I b i d . 1 8 8( 3 3 2 ) 39-2 経済学研究 かなりの部分において意図的にそうであること 遺』の第 E巻の事項の中に収録されている『人 は十分に明らかであると思われる。組織にお 間の諸モデル』の用例と比較するとき,後者さ けるたいていの行動は任務志向的 ( t a s ko r i - え採れば前者は必要ないという判断を下すに足 e n t e d ) である,あるいは, であるように思わ る十分な理由のありえないことが明らかになる れる。組織におけるたいていの人間行動の心理 であろう。後者は,サイモンがく知足的行動〉 学的説明を与えなくてはならないとするなら の数学的モデルを作成する試みであるところの ば,われわれが援用する心理学の理論は,合理 一連の諸論文との関連で述べられた用例で、ある 的行動を説明する余地をその中に持っているも のに対して,前者は, のでなくてはならない ( Hence,i fwea r et o g i v eap s y c h o l o g i c a le x p l a n a t i o no fhuman b e h a v i o ri no r g a n i z a t i o n s,t h ep s y c h o l o g i c a l theory we employ mustbeonet h a t 40 J) hasroomi ni tf o rr a t i o n a lb e h a v i o r . )o 表明と,そうして,最も初期の著作『組織管理 足的行動をする人間たちの行動の理論」であり, これが,パラグラフ ( 4 7 ) で提示された二つ そうして,それは「意図され,そして,制限さ より一般的なアイデアの 行動』との関連で述べられた用例であるところ に,独自の重要な意味があるからである。ここ で,サイモンは,彼の「組織管理の理論」が「知 の聞いの第 1のものに対するサイモンの答なの れた合理性の理論J ( t h etheoryo fi n t e n d e d であった。 1 i t y ) であると述べてい andboundedr a t i o n a 1,サプセクション 3-2 第 2の問いに対する答 f 「合理性の限界J( T h eL i m i t s0 1R a t i o n a l - るが,われわれは彼の「意図された・・…合理性」 という表現から,サイモンやロッテンパーグの i t y )42) において与えられるのであるが, われ 念頭にある「非合理性J (サイモンの場合には われはそれを前稿の第 LXXXVII 節で紹介し “ nonr a t i o n a 1 i t y ぺ そうして, た。その最初のパラグラフ ( 5 3 ) の中に,われ r r a t i o n a l i t y " という用語上の グの場合には“ i われはサイモンの『組織管理行動』の「第 2版 相違があるけれども)の概念に若干の疑問を抱 ロ γ テンバー へのイントロダクション」における,く知足的 いたのである。完全に合理的な選択を行なうと s a t i s f i c e ) という語の最初の用 に行動する> ( 想定されるく経済人間〉から離れて,何らかの 例を見出したのである。すなわち, 意味における「非合理性」を有する行動をとる r ( 5 3 ) 第 N章と第 V章の論題は,一つの文章 で表わすと次のようになる。すなわち,組織管 と想定されるく情動人間〉の方向に向けて一歩 を踏み出そうというサイモンの当初の意図に, 理の理論の中心的関心は,人間の社会的行動の 彼のく知足的行動〉の理論は,はたして十分に 合理的局面と非合理的局面の聞の境界領域にあ 沿うものとなっているかという聞いを心の片隅 る。組織管理の理論は, に残しながら,われわれは彼の思索の跡を辿る とりわけ,意図され, そして,制限された合理性のーーすなわち,極 大化行動をするほどの知恵を持っていないがゆ ことになるのである。 さて, われわれは前稿の第 LXXXVIII 節 えに,知足的に行動する人間たちの行動の ( o f 合理性の限 で,サイモンがサブセクション3-2r t h eb e h a v i o ro fhumanb e i n g swho s a t i s - 界」において提唱するく組織管理人間〉のモデ f i c e because they have n o tt h ew i t st o maximize)一一理論である。J42) この用例を『オグスフォード、英語辞典への補 4 0 )I b i d .,p p .x x i H x x i v . 4 1 )I b i d .,p .x x i v . 4 2 )I b i d . ル ( t h emodelo f“ a d m i n i s t r a t i v eman 勺43) の概念を紹介した。そうして,そこには,<知 足的行動をする> ( s a t i s f i c e ) という語の第 2 の用例が見出されたのである。すなわち,サイ モンは次のように述べているのであった。 4 3 )I b i d .,p .x x v . 1 9 8 9 .9 ケインズ『一議愛媛論』私設 重量金基金言語の系譜について 締 1 8 9( 3 3 3 ) 尚弁 f 経済人聞は援大化行動をする一一すなわ われわれ法務によって,その全体的構成を釘次 ち,彼の手のとどくあらゆる選択設のなかから 形式で治すことにしよう。なお,比較的小ぢな 最善のものを選別する一一仰のに対して,彼の従 パラグラブの内容は饗約をせず,全文言ど掲げる 弟,すなわち,われわれのいわゆる組織管理人 ことにする。 間は知足的に行設する一ーすなわち,議是のゆ サイモン く,あるいは,くほどよい〉有欝経路を追求す る一一ーのである (Wh i 1eeconomicmanmaxe l e c t st h eb e s ta l t e m a t i v e i m i z e s- - s 1 ia b l et o him; from amonga l lt h o s e ava ,whomweshal 1c a l la d m i n i s t h i sc o u s i n a t i s f i c e s - -l o o k sf o ra r a t i v e man, s 話f a c t o r yo r c o u r s eo fa c t i o r tt h a ti ss a t i “ good e n o u g h ." )oJH) この第 2の用例の特設的な点は,く知足拐に 行動ずる〉という議私 「満足のゆく, あるい は,くほどよい〉行動経絡を追求ナる J という ていうところである。そうし f 組織管理行欝J i意「意思決定と 内容 ~ g 次 O . まえがき,パラグラフ(1)と ( 2 ), p .1 . (1)この研究は組織における人鑓の「行 為につながる選択過程J ( t h ep r o c e s so f c h o i c ewhichl e a d st oa c t i o n ) するので、あるが, 本主主では, この題霊童をど提 示したうえで,以下の諸主主が援う諸問題合 る 。 て,われわれは,サイモンが日常態欝で「満足 (2) 組織管理の建論が「行為の議程」 のゆく J( s a t i s f a c t o r y ), あ る い は , ほ ど よ ( t h ep r o c e s so fa c t i o n ) のみならず, 「決恕の過程J ( t h ep r o c e s so fd e c i s i o I の い > J“(goodenough") ところを追求すると 述べているところの持動様式を,第 lの埠例に う「意顕さされ,そ Lて,限定された合理性の として熔式化することが,彼の当初の鶴 念の十全な表現形式になりえているかかにつ いて, 連安守二の疑問ヲヒ感じたのである。 最援に, で き われわれは前穣の第 LXXXIX 節 “ s a t i s f i c e " 3の用例を紹介した。し にも関与すべきで為るということが, されてきている。 S1 . 意思決定と諸決定の突行 (DECISIONMAKING AND THE EXECUTION OFDECISIONS),パラグラフ (3)から (7)まで。 p p.2 …& (3) 組織の諸目的をど現実に7 肢をどとる きを示すうえでの形式 かし,それは調査の完念 2 として遂告するのは「組織管理上の位勢制J 的な手続きであって,そこには何ら新しい要素 ( t h ea d m i n i s t r a t i v eh i e r a r c h y ) の最下 は晃られなかったのである。 患の人々である。 さて,本稿でわれわれはサイモンの 組行動Jの第 I章「意思決定と管理組織」の検 9 4 7年当特のサイモンがこ じて, 1 の全体的な構迭をどのように捉えていたかを明 (4) この最下 j 欝よりも上位にある人々も また,その組畿の諮問的の達成に不可欠の 役E 誌を穣じる。 (5) その佼階制の「最上位の監餐者たちj ( t h et o ps u p e r v i s o r s ) と「現場援業員た t h eo p e r a t i v ee m p l o y e e s ) との開 ちJ ( らカミにしよう O x c には数時層にわたる「中間監緩者た、~J ( in t e r m e d i a t es u p e r v i s o r s ) がし、て,彼 主主は合計 63~闘のパラグラブから成るが, 4 4 )I b i d . i n f i u e n c e )を ら誌上震部からの「影響J ( それを鱗欝化ないし修正して,下震 1 9 0( 3 3 4 ) ,r a t i o n a ls e l e c t i o n ) の含みを持 b e r a t e 部に伝達する。 (6) 監督者たちが部下を「指揮する」 っているけれども,本書では,それらの要 ( d i r e c t i n g ) のは, 部下が行なう諸決定 ( d e c i s i o n s )に「影響を及ぼすJ( i n f l u e n c i n g ) さまざまな方法の一つにすぎないと 素の有無にかかわらず,あらゆる種類の「選 p r o c e s so fs e l e c t i o n ) を指す 別の過程J( 司 いう認識に立って,本書では, より一般的 な「影響」と L、う語を多用する。このこと は,管理組織の設立には, r 職能J ( f u n c - a u t h o r i t y ) の配分にと t i o n s )や「権限J( どまらず,それ以上の微妙な問題が伴なう ことを意味する。 r (7)組織の構造と機能は, 現場従業員た ちの諸決定と行動が,その組織の内部で, また,その組織によって影響される仕方」 ( t h e manner i n which t h ed e c i s i o n s and b e h a v i o ro ft h eo p e r a t i v e emp l o y e e sa r ei n f l u e n c e dw i t h i n and by t h eo r g a n i z a t i o n ) を分析することによっ 開 て,最もよく洞察される。 ~ 39-2 経 済 学 研 究 2 . 選択と行動 (CHOICEANDBEHAVIOR),パラグラフ (8) から ( 1 0 ) まで o p p . 3 4 . (8) 本書では, r 選別 J( s e l e c t i o n ) とい う語が, r 一つの意識的な,あるいは,熟慮 ものとして, これらの語が使用される。 ~ 3 . 決 定 に お け る 価 値 と 事 実 (VALUE ANDFACTINDECISION),パラグラ フ ( 1 1 ) から ( 2 5 )ま で 、o p p . 4 8 . 1 1 ) から ( 1 4 ) 3 0 . まえがき,パラグラフ ( まで o p p . 4 5 . 管理組織の ( 1 1 ) 多くの行動,とりわけ, r 内部における諸個人の行動J ( t h ebehav i o ro fi n d i v i d u a l sw i t h i na d m i n i s t r a t i v eo r g a n i z a t i o n s ) は「意図的な」 ( p u r p o s i v e ) ーーすなわち, 目標あるい は目的に対して志向する J ( o r i e n t e dt o・ wardg o a l so ro b j e c t i v e s )一一ーものであ る。そうして, この「意図性J ( p u r p o s i a n v e n e s s ) は「行動様式に一つの統合J( i n t e g r a t i o ni nt h ep a t t e r no fb e h a v i o r ) をもたらす。そのような統合の可能 組織管理J ( a d m i n i s t r a 性がないとき, r t i o n ) は無意味である。 司 r ( 1 2 ) ある組織の特殊な諸行為を支配する ac o n c i o u so rd e l i b e r a t e を伴なう過程J( ところの「細目的な諸決定J( t h eminute p r o c e s s ) に限定されず, もっと広い意味 d e c i s i o n s ) は,それぞれに, に用いられる。すなわち r 目標志向的」 ( g o a l o r i e n t e d ) でさえあれば, r 意識な いし熟慮の要素 J( e l e m e n to fc o n s c i o u s - r 一つの目標 の,そうして,それに関連する一つの行動 t h es e l e c t i o no fa g o a l and の選別 J ( ab e h a v i o rr e l e v a n tt oi t ) を伴なう。そ nesso rd e l i b e r a t i o n ) の伴なわない個人 の目標は,組織全体にかんする「最終的目 の行為も一つの選別として捉えられる。 標 J( f i n a lg o a l sに対して, (9) 意識的な選別は r <計画的〉ないし r 中間的目標」 ( m e d i a t eg o a l s ) になっている。「諸決定 “ (p l a n n i n g "o r“ d e s i g n く設計的〉活動J i n g "a c t i v i t i e s ) と呼ばれる諸活動の複合 が最終的目標の選別に結びつくかぎりにお 的連鎖の所産である。 あろう。J ( I ns of a ra sd e c i s i o n sl e a d toward t h es e l e c t i o no ff i n a lg o a l s, they wi 1 1 be c a l l e d “v a l u e j u d g m e n t s .勺4めそうして, それらの諸決定 ( 10 ) このような過程を指す語として,本 書では, r 選択J( c h o i c e ) と「決定J( d e - c i s i o n ) とL、う語が交代的に用いられる。 これらの語は,通常, r 自意識的で、熟慮を伴 なう,合理的な選別 J ( s e l f c o n s c i o u s,d e l i - いて,それらはく価値判断〉と呼ばれるで r がこのような目標の実現を意味するかぎり 4 5 )I b i d .,p p .4 5 . 1 9 8 9 .9 ケインズ『ー般理論』私注賃金基金説の系譜について において,それらはく事実判断〉と呼ばれ 1 9 1( 3 3 5 ) 帥 向井 ( 1 6 ) Iこのような諸目標の位階制ないし るであろう。J ( s of a ra s they i n v o l v e ピ ラ ミ ッ ド J( t h i s h i e r a r c h yo rpyramid t h eimplementationo fsuchg o a l sthey f a c t u a ljudgments." )46) w i l lbec a l l e d“ o fg o a l s ) が現実の行動の中で完全に統合 ( 1 3 )I 価値要素J ( t h ev a l u ee l e m e n t s ) と「事実要素J ( t h ef a c t u a le l e m e n t s ) L 。 、 がきれいに分離できることはめったにな 的に,あるいは,熟慮の結果として,統合 されているであろうと推測してはいけな ( 1 7 ) これらの諸目標が決定の中で,意識 い。たとえば,政府の行政組織の最終的目 一つの されてはいないときにでさえも, I 標は非常に一般的かつ多義的な言葉で述べ 統合が事実上,一般に生じること J ( t h a t られているので,両要素が不可分な仕方で an i n t e g r a t i o ng e n e r a l l yt a k e sp l a c e i nf a c t ) が注目されるべきであろう。 含まれていることが多い。 ( 1 4 ) 一つの目的の中に価値要素と事実要 素が複合的に含まれる事例として,市警察 の例を挙げて説明する。 ( T h eH i e r a r c h y0 1 D e c i s i o n s ), パ ラ グ ラ フ ( 1 5 ) から ( 1 7 ) まで。 p p . 5 6 . 3 1 . 諸決定の位階制 3 2 . 決定における相対的要因 ( T h eR e l - a t i v e Element i nD e c i s i o n ), パ ラ グ ラフ ( 1 8 ) と ( 1 9 )0 p p . 6 7 . ( 18 )I ある重要な意味において,決定はす べて妥協の問題である。最終的に選別され るとこるの選択肢は, 目的の完全な達成を 意図性という概念は,諸決定の位階 ( 1 5 )I 可能にするものではけっしてなくて,それ 制と L、う概念を伴なっているーーーすなわ は,その周囲の事情のもとで手に入れるこ ち,その位階制の下位の方にある各階層は, とのできる最善の解にすぎない。環境の状 その直接に上位の階層において設定された 況が,手のとどく選択肢を不可避的に限定 諸目標の実現を行なうのである。行動は, し,そうして,それゆえに,可能な目的達 それが一般的目標あるいは目的によって指 成の水準に対して,一つの極大点を設定す るのである。J4B) 導されるかぎりにおいて,意図性を有す る。そうして,それは事前に選別された目 標の達成に貢献する選択肢を選別するかぎ ( 1 9 ) 目的の達成におけるこのような相対 的要素ーーすなわち,妥協の要素ーーは, 合理的なのである。J (The 行動が同時に数個の諸目的を追求するもの u r ρosiveness involves a c o n c e p to fρ n o t i o no fah i e r a r c h yo fd e c i s i o n s一一一 eachs t e pdownwardi nt h eh i e r a r c h y c o n s i s t i n gi n an implementation o f t h eg o a l ss e tf o r t hi nt h es t e pimmed i a t e l ya b o v e . Behavior i sp u r p o s i v e i ns of a r as i ti s guided by g e n e r a l g o a l so ro b j e c t i v e s ;i ti sr a t i o n a li n I ternativeswhich s of a ra si ts e l e c t sa a r econducivet ot h eachievement o f t h ep r e v i o u s l ys e l e c t e dg o a l s . )47) であるとき,一つの共通分母を見つけ出す りにおいて, 4 6 )I b i d .,p .5 . 4 7 )I b i d . 必要性を不可避にする。 3 3 . 決定過程の一例 ( An I l l u s t r a t i o n 01 t h eP r o c e s s01D e c i s i o n ), パ ラ グ ラ ブ ( 2 0 ) から ( 2 5 ) まで。 p p . 7 8 . 市行政の分野で,新しい街路の開設事業 の例をとって,実際の問題の中には価値判 断と事実判断の不可分な結合が見出される ことを説明する。 i !4 . 組織管理過程における意思決定 (DECISION-MAKING INTHEADMINIST2 6 ) RATlVEPROCESS), パ ラ グ ラ フ ( 4 8 )I bd .,p .6 . 1 9 2( 3 3 7 ) 39ω2 総済学喜寿究 から ( 3 6 ) まで。 p p . 8 1 1 . 4 0 . まえがき,パラグラフ ( 2 6 )からおお まで o p p .8~9. nate t h ea c t i v i t i e so fs e v e r a li n d i v ふ d u a l si nt h eo r g a n i z a t i o n )のである oJ49) ( 2 9 )i 管理組織は, 専門化 ( s p e c i a l i z a t i o n ) ーーすなわち,特定の課業 ( t a s k s ) 胸 ( 2 6 ) 仁組織管理活動J ( a d m i n i s t r a t i v e a c t i v i t y )は「集問活動J ( g r o u pa c t i v i t y ) がその組織の特定の部分に委譲されること である o r 集部の課業 J( t h egroupt 制 k ) 一ーによって特設づけられる。すでに控践 には努力を組職化して当たることが必擦と されてきているように,その尊子号化が労働 される。そのような努力の適用宏容易にす れらの諾要案を選部し,一決定し,そうして, 主的〉分割 ( " v 念r t i c a l "d i v i s i o no f のくま重E l a b o r ) の形態をとることもありうる。権 apyramid 限のピミラヅドないし位階制 ( o rh i e r a r c ho fa u t h o r i t y )は , より強 f o r 滋 a l く , あるいは, より弱く公式性 ( i t y ) を帯びて, 設ま起されることもあり, d e c i . そしてまた,意思決定上の藷機能 ( , この位階鰐 sion-makingf u n c t i o n s )は それらを関連する諸構成長に伝達するため の構成員たちの簡で、専門化ざれることもあ の,懇識上の正規の手綾ききど確立すること ろう a d m i . るための諮技法が「組織管理遇麓J( n i s t r a t i v ep r o c e s s e s ) である。 ( 2 7 ) 組織管理過程は f決定過程J ( d e c i . s i o n a lp r o c e s s 的〉であることに注箆しよ う。それらの過組は,決定の欝要素を組織 の語講成員の諸決定の中に分離'd-1tて,そ ざい,個人から援の決 ( h i sd e c i s i o n a lautonomy) その部分を組織の意患決 欄 oJ'O) ( 3 0 )r たいていの態畿の分析は,組織され た活動の謀本的特詮として,予告〉専 門 イ ヒ ( " h o r i z o n t a l "s p e c i a l i z a t i o n )一 ー すなおち,仕事の分説 ( t h ed i v i s i o no f でもって麓~換える。 work) ーを強類してきた O たとえば,ノレ ーサー・ガーリ、ゾグは彼の議文「組織の 3 思 が億人に代わって行なうところの諸 議告にかんする覚え繋J の中で歩「仕事の分割 き くano r g a n i z a t i o nd e c i s i o n m a k - i n g process) は,通常, (1)授の職能,すなわち,彼 の職務のー競的な範鴎と j 受賞, を指定し は組織の基盤であり, じつに,銀鱗の存在 i v i s i o ni st h e 理 由 で あ る J ("Work d ( s p e c i f yh i sf u n c t i o n, t h a ti s , the g e n e r a ls c o p e andnature o fh i sd u . Iり当て,すなわち,そ t i e s ),(2)権隈役懇I f o u n d a t i o no fo r g a n i z a t i o n ;i n d e e d , ther e a s o nf o ro r g a n i z a t i o n .")と の組織の中の誰が,その{国人に代わって, 渡的〉専門化(“v e r t i c a l "s p e c i a l i z a t i o n ) ぞれ以上の諾決定を行なう権力者ピ持つべき 一一吋すなわち,現場建議良と監督者との詩 a l l o c a t ea u t h o r i t y ,t h a ti s , かな決定し ( determine who i nt h eo r g a n i z a t i o n i st o have power t o make f u r t h e r d e c i s i o n sf o rt h ei n d i v i d u a l ),そうし て , (3) その組織の中の数人の個人たち t h ed i v i s i o n の意思決定上の議務の分割J ( o fdedsionmakingd u t i e sbetween 0p e r a t i v e and s u p e r v i s o r yp e r s o n n e l ) の諸活動を相支に謂整するため における自律性の一部分安奪われて,監督 とさ れるような,その弛の諸制識を援の選訳に 対して設定する ( s e tsuch o t h e rl i m i t s t oh i sc h o i c ea sa r eneededt oc o o r d i 舗 ている。本研究でわれわれは主として 酬 ゅー}に関心を向けるであろう。研究の一つ は,なぜ現場従業員たちが設ら 者たちの権限と 4 9 )I b i d .,p p .8 9 . 5 0 )I b i d .,p .9 . るのかという 1 9 8 9 .9 ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について帥 理由 ( t h ereasons whyt h eo p e r a t i v e employees a r ed e p r i v e do fap o r t i o n o ft h e i r autonomy i nt h e making o f d e c i s i o n sandsubjectedJot h ea u t h o r i t yandi n f l u e n c eo fs u p e r v i s o r s )を追 白井 193(336) ( 3 2 )と ( 3 3 )0 p p .9 1 0 . 集団行動は,正しい諸決定の採択の ( 3 2 )r みならず,その集団のすべての構成員に よる,同ーの諸決定の採択を必要とする ( 31 )r 組織における垂直的専門化につい ては,すくなくとも三つの理由があるよう (Groupb e h a v i o rr e q u i r e snotonlyt h e ,buta l s o a d o p t i o no fc o r r e c td e c i s i o n s 1 members o ft h e t h ea d o p t i o n by al 。 … J 5 3 ) group o ft h e same d e c i s i o n s . ) に思われる。第 1に,もしもそこに何らか ( 3 3 ) 権限,あるいは,その他の形態の影 の水平的専門化が存在するならば,現場従 t h ef u n 響の行使によって,決定の職能 ( 業員たちの聞の相互調整を達成するために ( t oa c h i e v ec o o r d i n a t i o n among t h e o p e r a t i v e employees),垂直的専門化が c t i o no fd e c i d i n g ) を集権化し, その結 果,諸作業の全般的計画 ( ag e n e r a lp l a n o fo p e r a t i o n s ) がその組織のすべての構 絶対に不可欠である。第 2に,水平的専門 成員たちの活動を支配できるようになる。 求することになるであろう。 J5!) r 化が,現場集団をして彼らの課業の遂行中 このような相互調整は,その性質上,手続 に,より高度の技能と専門的技術の開発 p r o c e d u a l ) であるか,実質的 ( s u b 的 ( ( g r e a t e rs k i l lande x p e r t i s et obed e v e l o p e dbyt h eo p e r a t i v egroupi nt h e performance o ft h e i rt a s k s ) を可能な 手続的相互調整 ( p r o c e d u a lc o o r d i n a - s t a n t i v e ) であるかの,いずれかである。 らしめるのとちょうど同じように,垂直的 t h es p e t i o n ) は,その組織自体の指定 ( c i f i c a t i o no ft h eo r g a n i z a t i o ni t s e l f ) 専門化は意思決定における専門的技術の向 ーーすなわち,その組織の構成員たちの行 上 ( g r e a t e re x p e r t i s ei nt h e making , o fd e c i s i o n s ) を可能ならしめる。第 3に ( t h eo p e r a t i v ep e r s o n n e lt o be h e l d a c c o u n t a b l ef o rt h e i rd e c i s i o n s )を可能 t h eg e 動と諸関係の一般化された記述 ( n e r a l i z e dd e s c r i p t i o no ft h eb e h a v i o r s andr e l a t i o n s h i p so ft h e members o f t h eo r g a n i z a t i o n ) ーーを意味する。手続 t h el i n e so fa u 的相互調整が権限系統 ( t h o r i t y ) を確立し,そうして,組織の各構 ならしめる。すなわち,それは,営利事業 成員の活動の領域の境界線を引くのに対し 組織 ( ab u s i n e s so r g a n i z a t i o n ) の場合 s u b s t a n t i v ec o て,実質的相互調整 ( には,取締役会に対する,そうして,公的 o r d i n a t i o n ) は彼の仕事の内容を指定す る。…… J54) 垂直的専門化は,現場職員に彼らの諸決定 について会計上の報告義務を負わせること ap u b l i cagency) の場合には,立 機関 ( 法部に対する責任である。J 52) 4 1 . 相互調整 (Coordination),パラグラフ 5 1 )I b i d . このパラグラフにあるガーリックの論文の u t h e rGu1 ic k, “N o t e s 所在は次の通りである。 L o nt h eT h e o r yo fO r g a n i z a t i o n, "i nL . Gu1 ic ka n dL . U r w i c k, e d s .,Pa ρe r so n ork: t h eS c i e n c eo fA d m i n i s t r a t i o n(NewY I n s t i t u t eo fP u b l i cA d m i n i s t r a t i o n,1937), p p . 1-46,e s p .,p .3 . 5 2 )H. A. S i m o n, Administrative Behavior, 2 n de d .,p .9 . 4 2 . 専門的技術 (Ex ρertise), パラグラフ ( 3 4 ) と ( 3 5 )0 p . 1 0 . ( 3 4 )r 現場レヴェルにおける専門化した 技能 ( s p e c i a l i z e d ski I Ia tt h eo p e r a - t i v el e v e l ) の有利性を利用するためには, ある特定の技能 ( ap a r t i c u l a rskil1)を必 要とする諸過程のすべてが,その技能を身 5 3 )I b i d . 5 4 )I b i d .,p .1 0 . 1 9 4( 3 3 8 ) 39-2 経 済 学 研 究 c o n t r o lovert h ea d m i n i s t r a t o r ) を保証 につけた人々によって遂行されるような形 で,一つの組織の全作業が細分化されなく したうえで,非専門家から構成される立法 てはならな L、。同様に,意思決定における 的集団 ( al e g i s l a t i v e body composed ( e x p e r t i s ei nd e c i s i o n - making) の有利性を利用するためには, o flaymen) が決定する能力のない専門的 t e c h n i c a lm a t t e r s ) を処理する 諸問題 ( ある特定の技能を必要とする諸決定のすべ のに適当な裁量の余地を行政職員に残して てが,その技能を有する人々によって行な おくことにある。 J57) 専門的技術 t h e われるように,諸決定についての責任 ( r e s p o n s i bi 1i t yf o rd e c i s i o n s ) が配分さ れなくてはならない。」町 ( 3 5 )r 諸決定を細分化すること ( t os u b - ~ 5 . 組 織 上 の 影 響 の 諸 様 式 (MODESOF ORGANIZATIONALINFLUENCE), パラグラフ ( 3 7 ) から ( 5 3 ) まで o p p . 1 1 1 6 . d i v i d ed e c i s i o n s ) は,作業を細分化する t os u b d i v i d eperformance) より こと ( 5 0 . まえがき,パラグラフ ( 3 7 )と ( 3 8 ), p . 1 11 . も,かなり複雑である。というのは,ある ( 3 7 )r 組織の位階制のより高い階級にお ap a r t i c u l a ro p e r a t i o n )に 特定の作業 ( いて下される諸決定は,それらが下方に向 おいて,ある従業員の鋭い目と,別の従業 けて伝達されないかぎり,現場従業員の活 員の正確な手とを結合して, 動に対して効果を発揮することはないであ より正確な作 業が行なわれるようにすることは,通常, ろう。その過程を考察するには,現場従業 不可能でーあるのに対して,ある弁護士の知 員の行動が影響を受けうるところの諸様式 識を,別の技師の知識に付加することによ の検討が必要とされる。これらの諸影響 って,一つの特定の決定の質を改善するこ は,大きく二つの範障に分けられる。すな 56) とは, しばしば可能であるからである。J わち, (1)その組織にとって有利な諸決 4 3 . 責任 ( R e s ρo n s i b i l i t y ), パ ラ グ ラ フ ( 3 6 ) p p .1 0 11 . ( 3 6 )r 権限の政治的および法律的諸局面 andas t a t eo fmind) を現場従業員自身 について書く人々は,組織の一つの主要な の中に確立すること,および, (2)その組 0 定が行なわれるようにするところの態度, a t t i t u d e s,h a b i t s, 習慣,および心的状態 ( 機能が,その集団によって,あるいは,そ 織の中の別の場所で下された諸決定を現場 の権限を行使する構成員たちによって設定 従業員に対して強制すること,である。第 norms) に個人を従わせるこ された規範 ( 1の型の影響は,その従業員の心に,組織 とにあるという点を強調してきた。部下の に対する忠誠心 ( o r g a n i z a t i o n a ll o y a l - 職員の裁量の余地 ( t h ed i s c r e t i o no f s u b o r d i n a t ep e r s o n n e l ) は,組織管理の , 効率性への関心 ( a concern t i e s ) と 五c i e n c y )を植え付けることによっ withe f 位階制 ( t h ea d m i n i s t r a t i v eh i e r a r c h y ) て,また,一般的には,彼を訓練すること の頂点の近くで決定される諸政策によって によって,作用する。第 2の型の影響は, t h emainte 限定される。責任の保持 ( 主として,権限に,そうしてまた,助言的 nance o fr e s p o n s i bi 1i t y ) に関心が集中 するときには,垂直的専門化の目的は,行 および情報提供的サーヴィス ( a d v i s o r y andi n f o r m a t i o n a ls e r v i c e s ) に依存する 政官に対する立法部の統制 ( l e g i s l a t i v e のである。……」町 司 5 5 )I b i d . 5 6 )I b i ・ d . 5 7 )I b i d .,p p . 10-11. 5 8 )I b i d .,p .1 1 1 9 8 9 .9 ケイ γ ズ『ー般理論』私注賃金基金説の系譜について帥白井 ( 3 8 )I 事実の問題としては,この議論は, 上のパラグラフが示唆するところよりも, 1 9 5( 3 3 9 ) ることが企てられるならば, 不服従 ( d i s - o b e d i e n c e ) が生じるであろう。受容の範 や L一般的な性質のものである。というの 囲の大きさは,権限が指令を実行させるた は,それは,たんに現場従業員に対するも めに援用することのできる制裁に依存す ののみならず,その組織の内部で意思決定 る。く制裁:>“ (s a n c t i o n s 勺 と L、う語は, を行なうすべての個人に対する組織上の影 この文脈の中では,広く解釈されなければ 響にもかかわるからである。J 59) ならない。というのは,一一目的,習慣, 5 1 . 権限 (Authority),パラグラフ ( 3 9 )か ら ( 4 1 )ま で 、o p p . 1 1 1 2 . および指導力の共通性 ( communityo f a b i t, andleadership) とL、 purpose,h ( 3 9 )I 権限という概念は,行政学の研究者 ったような一一積極的および中立的な刺戟 s t u d e n t so fa d m i n i s t r a t i o n ) によ たち ( が,すくなくとも肉体的あるいは経済的な って詳細に分析されてきた。われわれは, 刑罰の脅威に劣らず,権限の受容の確保に .C . バーナードによって提唱 本書では, 1 とって重要であるからである。J61) されたものと実質的に同等の定義を採用す ( 4 1 ) Iしたがって,ここで定義された意味 J部下 ( as u b o r d i n a t e ) が上 における権限は,その組織の中でく下方 司 ( as u p e r i o r ) の決定の長所を独自の立 に:>(“downward つのみならず,く上方 場から検討することをせず,その決定によ って自分の行動が指導されることを許容す に:>(“u pward")も,また,<横に:>(“s i d e wise勺 も 作 用 す る こ と が 可 能 な の で あ るときにはつねに,その部下は権限を受容 る。もしもある管理職が彼の秘書に対して している ( t oa c c e p ta u t h o r i t y ) と言われ ファイル・キャピネットにかんする決定を る。権限を行使するとき,その上司は部下 委任しそうして,彼女の勧告を,その長 を納得させようとはせず,ただたんに,部 所の再検討をせずに,受け容れるとするな h i sa c q u i e s c e n c e ) を得ょうと 下の黙認 ( らば,彼は彼女の権限を受容しているので るであろう するのである。もちろん,現実の場合には, ある。組織図 ( o r g a n i z a t i o nc h a r t ) に表 権限は普通,示唆と説得とをたっふ。りと混 現されるく権限系統:> ( t h e“ l i n e so f ぜ、合わされて行使されるのである。」附 a u t h o r i t y " ) は,しかしながら,ある特殊 ( 4 0 )I 合意に達することができないとき な意味を有するのである。というのは,そ でさえも,一つの決定が下され,そうして, のような権限の系統は,ある特定の決定に 実行されることを可能にするのが権限の重 かん Lて合意に達することが不可能である 要な機能の一つであるけれども,権限のこ と判明したときに,討論を終息させるため のように専横な局面は,おそらく,これま の最後の拠り所とされるのが普通であるか で強調されすぎてきたようである。いずれ らである。権限のこのような上訴的な使用 にせよ,部下のく受容の範囲:>( t h es u b - ( t h i sa p p e l l a t euseo fa u t h o r i t y )は,一 fa c c e p t a n c eり と も o r d i n a t e ' s “zoneo 般に制裁が有効であることを必要とするの 言うべき一定の範囲を越えて権限を行使す で,一つの組織の中の公式の権限の構造 ( t h es t r u c t u r eo f formal a u t h o r i t y ) 5 9 )I b i d . 6 0 )I b i d .,p p .1 1 1 2 . このパラグラフの中でサイモ ンが付している脚注 7には,次のような参照の指 示がある。 C h e s t e r1 .B a r n a r d,TheF u n c t i o n s C a m b r i d g e,M a s s .: H a r o [t h eE x e c u t i v e( p . 163f f . v a r dU n i v e r s i t yP r e s s,1938),p は,通例と Lて,職員の任命,懲戒,およ び免職 ( t h eappointment,d i s c i p l i n i n g, andd i s m i s s a l0 fp e r s o n n e l )に関係づけ 6 1 )S i m o n,i b i d .,p .1 2 . 1 9 6( 3 4 0 ) 39-2 経 済 学 研 究 権限関係 ( i n f o r m a la u t h o r i t yr e l a t i o n s ) d e s i r e dg o a l s )を意味するにすぎない。ど what のような目標が達成されるべきか ( g o a l sa r et obea t t a i n e d ) については, によって補完されると同時に,公式の位階 効率性の基準は完全に中立的である。く効 られている。これらの公式の権限系統は, その組織の日常的業務の中にある非公式の t h ef o r m a lh i e r a r c h y ) は,主として 制 ( 伍c i e n t !勺 と い う 命 率的であれ;>(“Bee 紛争の決着のための備えとなっているので 令は,いかなる行政機関の構成員たちの諸 ある。」町 決定をも支配する主要な組織上の影響の一 5 2 . 組織への忠誠心 ( Org a n iz a t i o n a lL o 4 2 ) から ( 4 7 )ま y a l t i e s ), パ ラ グ ラ フ ( で。 p p . 1 2 1 4 . 組織された集団の構成員が「その集団に 一 体 化 す るJ ( t oi d e n t i f y with t h a t g r o u p ) 傾向は人間行動の一般的特性の一 つであり,そうして,この命令が遵守され t h e review たか否かの判定は監査手続 ( p r o c e s s ) の主要な機能の一つである。」問 5 4 . 助言と情報 ( A d v i c eand ! n f o r m a t i o n ), ノミラグラフ ( 4 9 )と ( 5 0 ) p p . 1 4 1 5 . 0 つである。一体化,あるいは,組織への忠 組織がその構成員たちの上に及ぼす諸影 誠と L、う現象は,組織管理上きわめて重要 響のうち,意外に多くのものが上述の影響 な機能を持っている。この現象は組織にお よりも公式性の少ない性質のもの ( o fa ける意思決定の合理性を助長する面もある l e s sf o r m a ln a t u r e ) である。これらの影 が,同時に,かなり重大な困難の原因にな aform 響は「組織内広報活動の一形態J ( ることもある。 o fi n t e r n a lp u b l i cr e l a t i o n s ) と看倣すの 5 3 . 効率性の基準 ( T h eC r i t e r i o no fE f f i c i e n c y ),ノξ ラ グ ラ フ ( 4 8 ) p . 1 4 . 0 権限の行使 ( t h ee x e r c i s eo fa u ( 4 8 )I t h e t h o r i t y ) と組織への忠誠心の開発 ( development o fo r g a n i z a t i o n a ll o y a l t i e s )は,個人の価値前提 ( t h ei n d i v i d u al 's v a l u e p r e m i s e s ) に組織上の影響を及ぼ すための二つの主要な手段であることを, われわれは見てきた。彼の諸決定の基礎に が最も実態に近し、。助言や情報は組織の中 を一一上から下に向けてのみならず一一あ らゆる方向に流される。諸決定に関連する 多くの諸事実が急速に変化するので, この 種の影響は公式の影響を補完する意味にお いて,きわめて重要である。 5 5 . 訓練 ( T r a i n i n g ),パ ラ グ ラ フ ( 51)か ら ( 5 3 ) まで。 p p . 1 5 1 6 . ( 51 )I 組織への忠誠心や効率性の基準と t h ei s s u e so f 横たわる事実の諸問題 ( 同様に,そうして,われわれが論じてきて f a c t ) についてはどうであるか。これらの いる影響のその他の様式とは異なって,訓 問題は主として,あらゆる合理的行動の中 練は諸決定にくその内部から〉影響を及ぼ に含蓄されている一つの原則,すなわち, す( t r a i n i n gi n f l u e n c ed e c i s i o n s "from 効率性の基準,によって決定されるのであ t h ei n s i d eo u t .")。すなわち,訓練はその る。効率的であること ( t o be e 伍c i e n t ) は,その最も広い意味においては,たんに 所望の目標の達成に向かう最短路,すなわ 最も安価な手段を採ること ( t ot a k e t h e s h o r t e s t p a t h, t h e c h e a p e s t means,towardt h ea t t a i n m e n to ft h e ち , 6 2 )I b i d . 組織の構成員が,権限あるいは助言を常時 行使されなくとも,満足できる諸決定に自 ら達することができるようにするのであ る。この意味で,訓練制度は部下の諸決定 をコントロールする手段として,権限ある 6 3 )I b i d . 1 善幸事. 9 ケ イ ン ズ 『 ー 般 滋 総 3私主主 長愛会接金談の系緩について いは艶震の行使と並ぶ選択較になる。 j叫 ( 5 2 )I 都議札就業中に行なわれる ものと,就業以前に行なわれる もの ( o fan i n s e r v i c eo rap r es e r v i c en a t u r e ) がありうる o 一定の職務のために特 酬 にかんする資格の保布者た 人されるとき,その組議は授らの 骨 白 己弁 1 9 7( 3 4 1 ) 彼が諸決定を示すさいに準認すべき謹価鏑 ( t h ev a l u e s ぉ terms o f which h i s 詰i o n sa r et obemade)を披に植え付 d e c i けるかもしれない。J66) 96 . 組織の均衡 (THEEQUILIBRIUMOF THE ORGANIZATION) ,ノ~ ラ グ ラ フ ( 5 4 ) から ( 5 8 ) まで o p p . 1 6 1 8 . ( 5 4 )I 次に,なぜ、個人 ( t h ei n d i v i d u a l ) げる正しい議決定を確保する e と し て , こ の よ う な 事 前 誤 線 治r は,これらの組織上の議影響を受け容れる t r a i n i n g ) に依存しようとしているのであ るG 言語練と,そうして 1人の挺業員 のか ーーなぜ彼は,その総識が援に向けて 容される裁量の余地の大きさとの のかーーという開いが提起されてよいであ 認係は,管狸組織を設計ずるさい ω 出す要求に対して,設の行動を議させる ろう。鍛入の行動がし、かにして,組織の行 る。すなわち,部 動系の一部分になるのかを瑛解するために より少ない監督の は,その個人の個人的欝機づけ ( t h ep位 ・ s o n a lm o t i v a t i o n ) と,そうして,その組 ることができるようにすると ころの誤練を与えることによって,ある 織の活動が向けられる緒目的との期の関係 の監査手績を最小限度に抑えるか,あるい を研究することが必饗となる。J67) は蕗止することさえも,可能になること ( 5 5 )I 当面,営利組織 ( ab u s i n e s so r g a n i z a t i o n ) をど典型にとるとするならば, 3種類の参加者たち ( p a r t i c i p a n t s ) が区 しばしばあるかもしれないのである。 同様にして,特定の職務への応募寝・たちに 必要とされる資格た立案するさいに, ( s e m i s k i l l e de m p l o y e e s )を れうるであろう。すなわち, 選択し,そうして,彼らなその特定の職務 ち ( e n t r叩 r e n e u r s ), 話業員たち (em p l o y e e s ), および鱗客たち C c u s t o m e r s ) I 綴すれば,人件費を割減できる に向けて言[ がそれである。 10 余業家たちは,彼ら 可譲住もあることが完参議されるべきでるろ う 。J65l 決定が窮極的に従業員たちの活動なコント r ( 5 3 ) 多数の議決主主の中 じ要素が 剛 口…ルするとしみ事実によって区別され るO 詑業員たちは,愛金という半世餅!と引き まれているときにはいつで、も,その 代えに後らの(差別イヒきれない)時間と努 穏には言I!練が護用可能となる。言I!練は,そ れな受ける者に対して, これらの諸決定を 力 C t h e i r( u n d i f f e r e n t i a t e d ) timeand e f f o rtJを組識に熱与するという事実によ 処理するのに必要な議事実を提供ナるかも って主主民される。そうして,議長客たちは, しれないのそれは,彼が患考するさいに参 その組織に対して,生産物と引き伐えに貨 aframe 考にすることのできる一つの枠 ( 幣きと与えるとし、う事突によって区別される o fr e f e r e n c ef o rh i st h i n k i n g ) を設に のである。〈現実の人関存在比もちろん, るかもしれない O それはく承認され 一つの組織に対して, これらの諮関係を… る〉解(“a p p r o v e d "s o l u t i o n s )令設に教 つ以上持つことがありうる O たとえば, 事実, 堅実客と えるかもしれない。あるいはまた,それは 6 4 )I b i d .,p .1 5 . 6 5 )I b i d .,p p .1 5 1 6 . 6 6 )I b i d .,p .1 6 . 6 7 )I b i d . 39ω2 経 済 学 研 究 1 9 8( 3 4 2 ) 複合体 ( ac o m p o s i t e customer and employeeJである 0 )J 6 8 ) ( 5 6 )r これらの参加者たちのぞき々が,これ ( 5 7 )r 上述のような一つの組識の中には, t h e その参加者たちの髄人的な諸問的 ( p e r s o n a laimso ft h ep a r t i c i p a n t s )に らの翠銭的諸活動に参与するについては, 加えて,組織の目的ないし語目的 ( a n 該自身の佃入院欝壌を持っている o これら orgm 事i z a t i o no b j e c t i v e ,o ro b j e c t i v e s ) の諸動機を挙総化し,そうして, が姿を現わす。その組織を,たとえば, の銭点さととるならば,われわれは次のよう r を製 靴工場であるとするならば,ぞれは朝t に言うこどができるで、あろう O すなわち, 企業家は料調〈すなわち,収入が支出を上 凶る蓮通分〉セ追求し,従業員たちは賃金 そうして, るという目的を持っている。これは悲 の民的なのであろうか一一“その企業家のも のか,顧客たちのものか,めるいは,被業 員たちのものなのであろうか。それが, こ 格のもとで)生遺物と貨幣の交換を護主力あ れらの人々の誰かに譲ずることを否定する るものと晃るのである G roup の は , 的 ら か の 〈 集 団 精 神 ( “g ちと麗期契約を結ぶことによって,彼らの よって,賃金を支払うための基金を取得す 勺 , すなわち, その組織の人間構成 mind 分 散shuman component司 令 超 越 し て , その主に存在する有機的実体 ( o r g a・ n i s m i ce n t i t y ) てど前提することになるよ る ( h eo b t a i n sfundst opaywagesby うに患われる。そのほんとうの説明はもっ 詰 w itht h e e n t e r i n gi n t os a l e sc o n t r a c t customers ‘)。もしもこれらの 2種類の契 と単純である O すなわち,組織の設的広 時間を処分ずる権利てど取得する。そうし て,彼は襲客たちと販売契約を結ぶことに 約が十分に有利なものであるとするなら ば,その企業家は利潤を得て,そうして, おそらく,われわれの岳部にとってもっと 重要なことに,その経識は存続するの 間接的に,全参加者の個人的目的である ( t h eo r g a n i z a t i o no b j e c t i v ei s, i n d i t 1y,apersonalojbectiveo fa l lt h e r e c p a r t i c i p a nt s .)。それは,護ら詣身のさ i る個人的諮欝撲の充足を達成す る。もしもそれらの契約が十分に宥和なも るために,彼らの経識的、活動をまとめ合わ のでないとするならば,その企業家は他の t h e means whereby t h e i r せる手段 ( 人々を設とともに組議活動の中にとどまら o r g a n i z a t i o n a la c t i v i t yi s bound t o g e t h e r. t oa c h i e v eas a t i s f a c t i o no f t h e i r own d i v e r s ep e r s o n a lm o t i v e s ) そるための誘殴合議持することができすなく なり,そうして,組織にかかわる努力 読するための彼自身の誘毘さえもが失なわ 唾 る。較をど製造するために労機者たちを れるかもしれない。いずれにせよ,その組 し,そうして,較をと究りさばくことに 織は,ある活動水準において場衡に到達す よって,企業家は援の利潤なあげるのであ ることができないかぎり,消議するのであ る。較を製造するさいに企業家の指令官ピ受 るc もちろん,現実の組織においては,い け容れることによって, かなる場合にも,企業家は上述の純粋に経 さげ稼得する O そうして,顧客は,完或した 済的な誘盟以外の多くの謡誘国,すなわち, 皮の 靴た買うことによって,その組織から f 満足を取得するのである。企業家は利潤を 6 9 ) ろう。J 6 8 )I b i d . 6 9 )l o i d .,p p .1 6 1 7 . 望むので,そうして,授は従業員たちの行 動を〈披らの受容の範囲内で〉コント口 ルずるので,<::可能なかぎり効率的に轄とを 1 9 8 事. 9 ケインズ『一般車型議議』憲主主主 主重金基金畿の主義宮警について ( t h ec r i t e r i o no f “ making s h o e sa se 伍c i e n t l ya sp o s s i b l e " ) によって従業員たもの行動を指導 製造する〉という ることは殺にとってやり甲斐のあること なのである。そうして,彼がその組識の中 帥 白弁 1 9 9( 3 4 3 ) るところの考察の枠組は,いまや,設定さ "i れてし変っている。われわれは,さま d り上げられるであろうところの 順序の議轄を手鎧に述べることによって, 72) よいであろう。J の行動せどコント宮…ノレずることが可能なか ( 6 0 )r 第江主誌もまた,ある意味において, ぎりにおいて,彼はこれを行動の目的とし 70) て確立するのである。J p r e f a t o r y ) であ まえおきのようなもの ( る。木議の研究比一つには,組織菅潔狸 ( 5 8 )I 顧客合の昆的 ( t h eo b j e c t i v e so ft h e 論にかんする現今の文畿のゆに見出される , その鑑識の際的 ( t h e c u s t o m e r ) が o b j e c t i v e so ft h eo r g a n i z a t i o n ) に非常 ところの,いわゆる〈組織管理の議原則〉 に緊密に,そうして,かなり箆接的に機係 づけられること,企業家の爵的はその t h es u r v i v a lo ft h eo r g a n i の存続 ( z a t i o n ) に密議に欝係づけられるのに対し C t h es oc a l l e d“ p r i n c i p l e so fa d m i n i s t r a t i o n > >t h a ta r et o be found i nt h e c u r r e n t1 i t e r a t u r eo fa d m i n i s t r a t i v e t h e o r y ) に対して著者が不満を語いてき 耐 たことの結果として行なわれた。第五 て,詫議員の目的はこれらのいずれにも 比これらの諸原則の不適当さと,そうし 接的には関係づけられないで,むしろ,彼 て,それらをここで示唆する方向に向けて の受綴の範堕が存恋することによって,そ 発畏さぜる必要性を示すこと会問標にし ( w h i l e t h eo b j e c t i v e so ft h e employee a r e t 1 yr e l a t e dt on e i t h e ro ft h e s e, d i r e c b u ta r ebroughti n t ot h eo r g a n i z a t i o n schemebyt h ee x i s t e n c eo fh i sa r e a o fa c c e p t a n c e ) ことが故隠されるべきで て , これらの諸原則が主主詩的に分析される であろう。J73) の毅畿の機構の中に組み込支れる 議うろう。蹄幹のく企業家く顧容お ( 6 1 )I 本来的に言えば望組織管理上の決定 の において{制緩と事実の部揺が演じる投書1 分析の説携は第麗 それに統いて第 W る行動を含めた社会的行動の体系を よびく従業員〉が存在しないことな認めた し,分析するために,ヌド饗の全体を溜じ うえで,そうして, dらに, て使用されるであろうところの織金装量 宗教組織,および政野組織に漉合させるに ( t h ec o n c e p t u a la p p a r a t u s ) の説明が行 は,この図式は幾分か修正する必要のある なわれる。J74) ことを誌、めたうえで,なお, これらの三つ の類型的役割 ( t h e s et h r e et y p er o l e s ) ( 6 2 )r 第 V章は組織における煩入の心理 と,その組織が彼の行動を修正する るO 第 V I章では,組織はーーとれ の存在比諸管理組議における行動に対し て,われわれの認識する独特の性格を賦与 するのである。J71) 97. ヌド議の組成 (ORGANIZATION OF THISVOL じME), パ ヅ グ ラ フ ( 5 9 )から ( 6 3 ) まで op p . 1 8 1 9 . i までに示唆されてきた方針に諮って る種の均衡を維持する行動をとる諸傭人の と看倣されるであろう O 第 W主 幹 は組織における権限と,重複的専再生との 役割色そうして,このような専門化が兵 以下の藷章で持なわれることにな ( 5 9 )I 7 0 )I b i d,p p ‘ 1 7 1 8 . 7 1 )l b i d .,p 1 8 . 町 7 2 )I b i d . 7 3 )I b i d . 7 4 )I b i d . 2 0 0( 3 4 4 ) 39ω2 緩済学級究 一要されるところの組議釣言語議程を詳細に分 という事実である。たとえば, 1 9 5 7 年当時のサ 析するであろう。第 W章は総織ょの語影響 イモンはこの作品の第主主堂「組織管理理論の t h ep r o c e s s が伝達される;意思{伝記瀧過程 ( o fcommunication) にかかわる。第lX宝震 i e n c y ) の概念抗そう で は 効 率 性 作 館c 若干の問題」と第褒章?意思決定における事実 棋の最諜壌を成し,ぞれらはそのよにある第 3 して,第 X章では綴織への忠戴心為るいは 腐の課題,すなわち,人語の合潔的選択の;幾議 と師値Jが方法論上の諸問題合議う設の研究過 o r g a n i z a t i o n a ll o y a l t y ,o ri d e n 一体化 ( るという課題に取り組むため t i f i c a t i o n s )の 概 念 が 詳 細 に 吟 味 さ れ の諜磯をととのえるものであると述べているの る 。 j75) であった。それに対して,上掲の内容院次に晃 胸 r r て,組織管理班論の研究が醍面する き の S7 ヌド警の られるように, 第 i宝 (ORGANIZATIONOFTHISVOLUME)引8) にかんする議論とでもって,本蓄を毅ぶの である。 j76) C h a p t e rI Ii s, おきのようなものであるJ( ( 6 3 ) 第友重訟は管理組識の畏望と,そうし では, r 第主主主もまた,ある意味において,支え a l s o,i nas e n s e,p r e f a t o r y . )79) と述べられ XCI ているうえに,その記述は務態意にかんするそ れとは別個のパラグラフ ( 6 0 ) のやに謀立させ サイモンの著書『組織管理行動=~の第 I 霊堂「意 られているのである。そうして,第盃章は, N稜「組織管盟行動における合理性Jとともに, 思決定と管理組織j 氏 そ の 初 版 が 刊 行 さ れ た 1 9 4 7 年当時の被が,その作品の全体設をどのよ 61)のやに笈とめられて説明され パラグラフ ( うな形で意識的に捉えていたかを示す証拠とし ている。このようなパラグラブの立てガから見 て,われわれの興味の対象とされているのであ て. る。その後四年足らずの時聞の経過のやで, 課題を問ーの範曙に認するものと考えるととも 1 9 4 7 年通時のサイモンが第澄章と第 N 〈知足的行数〉の概念:が次第に務畿に意識怒れ らとは異なる結時のも るようになったとき,設がその作品の全体像、な のと肴散していたと受け取っても,あながち不 どのような形に播き蓋したかは,そ 当な解釈とすることはで、きないであろう。t1.上 2版へのイント間ダクシ君ン iですでに見たと を要するに,その ころであるが,上掲の第:宝容の内容目次比そ J 警とし,ま 意の扱う賄額群をまとめて第 4 Y章と第 V章のそれをと第 3震とする説点が欠 れらの異なるごつの時真意に描かれた全体像の間 いたのである。 に顕著な相違が脊在ずることを示している O まず第 1 日すベ 彼には,第五議と第 E 設の「第 2践へ さらに上識の内容目次に莞られるように, のイントログクシ翠ン j のき 1 第 1宝震のパラグラブ諸島では,第 V主幹から第 ( S t r u c t u r eo ft h eBook) の中で,とりわけ, X章までの六つの殺のすべてが,一つのグルー 1 6 ) と(18 ) の中で述べられ そのパラグラフ ( プを成すかのように述べられている。しかしな ている視点 77ヘすなわち, がら, この作品に結晶した 披の研究退識を発生史的に見ると,それは四つ ι r 第 2駿へのイ γ ト口ダグシ設ン」におけ るサイモンは,それらのうちの第 W意「権患の の壌の問題群を順次に扱うものであったという 役割 j,第湿「意思の伝達 j,第lX章!神効率性の 1 9 4 7 年当時の記述の中には欠けている 基準 j,および第 X輩「忠誠心と組織への…体 擾点が, 7 5 )I b i d . 7 6 )I b i d . 7 7 )I b i d .,p p .x x i v ,忠告p .p p .x i i x i v . 生 j の割つの章だけが譲う陪題群を第 2 7 8 )I b i d .,p p .1 8 1ゑ 7 9 )I b i d .,p .1 8 1 号 事 事 .9 ケインズ『一般主主総 3事 主 主 主 主重金総金説の 2 裏書警について ~9) 白井 2 0 1( 3 4 5 ) めながら,強方で,第 v l章「組識の;均衡」が扱 理組織における議患決定が組織管理ーとの位階制 う問題群は, I 本 饗 iJ)メイン・テ… γ ーーナた ( t h ea d m i n i s t r a t i v eh i e r a r c h y ) のあらゆる わち,経験にとって内部に投援する意思決定選 佼階に議する人々の上に分数されていて, ( t h ed e c i s i o n m a k i n gp r o c e s s e st h a t 80 a r ei n t e r n a lt oo r g a n i z a t i o n s ) の研究J )か も,その組織の患部の賞接的な遂行はその位階 程 しか 援の最下壌に属する人々の手によって行なわれ ら路道にそれるものとして,設の 研究過程を構 るから,最上層の管理者から最下層の 成する四つの擦のどれからも詳験しているので るまでの緊密かつ丹滑なる意思 あった。こうして,撲の作品の全体像を哉の研 の{伝達が必事警になると述べられていたの三であ 究の発生史に照らして撞くという視点は, 1 9 5 7 るO そのさい,組織管理上の泣階制は,たんに l 後にして初めてとりえたものと考えて 、のないところであろう。 権限にもとづくお捧系統の位階舗としてのみ捉 えられるのではなくて,それ以外のさまざまな i n 査や と も 非 公 式 な 「 影 響J ( 第 2版 へ の イ ン ト き点は, 1 口ダグシ翠ン j におけるサイモンが,被の第 3 e n c e ) の体系としても 層の問閥群,すなわち「合理的な人詞の に,サイモンがバーナードから受け継いだプブ られているところ 定J ( r a t i o n a lhumand e c i s i o n m a k i n g )に 口ーチの特設が見出されなくてはならなし、。そ かかわる問題群に注釈を加えるために, 931 組 の影響撃の藷様式が第 2層の間態群を援う問つの 織管理行動と現代の行動科学J(ADMINIST “ RA TIVEREHAVIORANDCONTEMPO RAl 三Y BEHA VIORALSCIENCE) て,それによって第 3 しているのに対して, 1 9 4 7 年当時の後の見解を i章では,第 3壌の持題群にかかわると 義 者 〉 喜 1は 章で分析されるのであるから,第 i主 剛 2壌の問錨若手の分析へのそ予備的考察になって いるものと受け取ってよいであろう G さらに,第 i章のき 4I 組織管理過程?にお け る 意 思 決 定J(DECISION-MAKING IN THE ADMINISTRATIVE PROCESS)85) 思われる諜述は,わずかに三つのパラグラブか 比サイモンの主たる関心が組織管壊のく垂直 I 選択と行動J (CHOICE AND BEHAVIOR)Sじのやと,そうして,全体とし ては第 4J 警の問鵠群にかかわるものと見られる き3 I 決 定 に お け る 鶴 舗 と 事 実J (VALUE AND FACT IN DECISION)83) のパラグラ 告さ〉専門化の局面に向けられていることを宣明 n a t i o n ), I 専門的投衡J( E x p e r t i s e ),および ' l護保J( R e s p o n s i b i l i t 討について住釈合加え 1 8 ) の中に例外的に見出されるにすぎない ブ ( ているのであるから,そのセクションもまた第 ら成る~ 2 のである O じっさい,第 1設の全体的構成に尽きどやると き , この章を執矯した当時のサイモンの力点が 2}警の問題訴の上に置かれていたことは明白 しそうして,そのような専門化を特徴づける 三つの要鼠 すなわち「相五調整J ( C o o r d i - 2壌の問題群への予錆的考察を行なうものと 倣されてよいであろう そうして, 第 i主 誌 の Q 95 ;様式J (MODES OF ORGANIZATIONAL る。その章の S1 I~意思決定と諜決定の INFLUENCE)66) は'iきに第 2}欝の問題群 行J (DECISION諮 AKING AND THE そのものを議う閉つの諸譲渡の要約的な説明に他 EXECUTIONOFDECISIONS)84) では, 8 0 )l b i d .,p .x i . 1 )I b i d .,p p .x x i i →c x x i i i . 8 8 2 )I b i d .,p p .3 4 . b i d .,pp 4 -8 . 8 3 )I 8 4 )I b i d .,p p .2 3 . ならない。 このように,第 1裁の!i 1,i !4,および S5 を構成ずる都合 33個のパラグラフが第 2腐の賭 8 5 )l b i d .,p p .告 や1 1 . b i d .,p p .1 1 1 6 . 8 6 )I 2 0 2( 3 4 6 ) 39-2 経 済 学 研 究 組成」を除外すると,その章の根幹を成す陳述 t h ea c t o randt ot h o s epersonsoverwhom he e x e r c i s e si n f i u e n c e and a u t h o r i t y . )。 〈選別:>“ (s e l e c t i o nつという用語は,ここで は,全部で5 6 個のパラグラフによって構成され は,意識的な,あるいは,熟慮を伴なう過程 ている。それらのパラグラフのほぼ 6割におよ ( ac o n s c i o u so rd e l i b e r a t e p r o c e s s ) とL、 う 題群にかかわっているのである。いま,その章 の~ 0 r イントロダンション」と~ 7 r 本書の ぶ紙幅が第 2層の問題群にかかわっているので ような含みを持たせることなしに使用される。 あるから, 1 9 4 7 年当時のサイモンの力点がどこ それは, にあったかは,おのずと明らかであろう。 v i d u a l )がある特定の行為の過程をとるならば, たんに, t h ei n d i もしもその個人 ( 彼はそのことによって放棄しなくてはならなく XCII なるその他の行為の諸過程が存在するという事 実を指すにすぎないのである。多くの場合にお 上に述べたように,サイモンの『組織管理行 t h es e l e c t i o np r o c e s s )は , いて,選別過程 ( 動』の第 I章「意思決定と管理組織」の中には, たんに一つの確立された反射的行為から成るの 彼のいわゆる第 3層 の 問 題 群 に か か わ る 陳 述 である一ーたとえば,タイピストがある特定の は , ~ 2r 選択と行動」を構成する三つのパラ キーを打つ理由は,印字される文字と,この特 グラフ (8), (9),および ( 1 0 ) に加えて,パ 定のキーとの聞に,一つの反射運動が確立され ラグラフ ( 1 8 ) に見出されるにすぎないのであ ているからであるというように。この場合,そ 6 個のパラグ った。その章の議論の根幹を成す5 t h ea c t i o n ) は,すくなくとも何らか の行為 ( ラフ数に対して,それらは,わずか 7パーセン の意味において,合理的(すなわち, トの比重しか持っていないのである。しかも, r a t i o n a l( i .e .g o a l o r i e n t e d )Jであり, 的) ( 目標志向 それらのパラグラフの陳述内容を見ると,第 N しかも,意識ないし熟慮の要素は何も含まれて 章「組織管理行動における合理性」と第 V章「組 いないのである。」町 織管理上の諸決定の心理学」を紹介する文章と (9) r 他の場合には,選別は,それ自体とし してはきわめて不十分なもののように思われる て,くプランニング〉活動あるいはくデザイ ので,その 7パーセントという数字でさえ,や ン〉活動と呼ばれる諸活動の複合的連鎖の所産 や過大評価の気味があることは否めなし、。それ である。たとえば,技師は広い範囲に及ぶ分析 にもかかわらず,それらの陳述はサイモンの理 を基礎にして,ある特定の橋梁が片側支持型の 論を構成する諸概念を理解しておくうえで重要 デザインのものでなくてはならないという決定 な点を含んでいるので,ここで改めて,それら を下すことがあるかもしれない。彼のデザイン の陳述に焦点を合わせてみることにしよう。ま は,その構造物の詳細な設計図としていっそう ず,パラグラフ (8) と (9) の全文を引用す 具体化されたうえで,その橋梁を建造する諸個 ると,次の通りである。 人の行動の全連鎖に結びつくことであろう。」問 (8) r 行動はすべて,その行為者にとって, パラグラフ (8)の第 1センテンスにある「行 また,彼が影響と権限を行使するところの人々 t h ea c t o r ) と,第 3センテンスにある 為者J( にとって,形に現われる可能性のあるあらゆる t h ei n d i v i d u a l ) が同ーの人物を指す 「個人J( 行為のなかから,特定の諸行為の意識的ないし ことは,その陳述のありょうから明らかであろ 無意識的な選別を伴なうのである ( A l lbehavi o ri n v o l v e sc o n s c i o u so runconsciouss e - う。そうして,サイモンはその「個人」の例と l e c t i o no fp a r t i c u l a ra c t i o n so u to fa l l t h o s e which a r ep h y s i c a l l yp o s s i b l et o してタイピストを挙げているのであるから,そ 8 7 )I b i d .,p .3 . 8 8 )I b i d .,p息 3 4 . 1 9 8 9 .9 ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について帥 2 0 3( 3 4 7 ) 白井 の「行為者」は,管理組織の権限の位階制の頂 いう語を用いているのは, きわめて周到な配慮 点に立つ人物だけにではなく,その組織の全構 であると言ってよいであろう。 成員の各々にも適用される用語でなくてはなら さて, このように考えたうえで,われわれは, ない。それゆえ,ある組織に見られる「組織管 サイモンが彼のいわゆる「無意識的な選別 J 理行動J ( a d m i n i s t r a t i v eb e h a v i o r ) は,こ ( u n c o n s c i o u ss e l e c t i o n )を「選別」のー形態と れらすべての「行為者」たちの行為の集成とし 看倣していることに注目しよう。彼の挙げるタ て現われるのであって,何らかの意味において イピストの例に照らして,それが習慣的行為の その組織を代表する特定の「個人」の意思にす 一部分を意味していることは明らかであろう。 べてを帰着させられる類の行動ではないことが われわれは, 強調されてよいであろう。伝統的な経済学の手 選択J( c h o i c e )あるいは「意思決定J( d e・ 来 , I 法は, c i s i o n-making) に対置される行動様式とされ さまざまな企業によって構成される一つ の産業の動向をく代表的企業〉の行動に帰着さ 習慣J ( h a b i t s ) が,従 ここで, I てきたことを想起せざるをえない。 せて理解しようとしたり,また,一つの企業の なるほど,過去における訓練と日常業務の積 行動を,あたかも一個人の行動と同じであるか み重ねの中で形成されてきたタイピストの習慣 のように看倣して論じてきた。それは,いわば, 的行動は,サイモンの言う通り「すくなくとも 組織を個人のたんなる集合ではなくて,管理組 何らかの意味において,合理的(すなわち, a d m i n i s t r a t i v eo r g a n i z a t i o n s ) たらし 織 ( J であると考えることもできるであ 標志向的) めるところの本質的な諸要素を完全に捨象して ろう。しかしながら,その習慣的行動は,その しまう方法であった。この点において,サイモ 「無意識的」とし、う性質によって目的に適合し ンの志向するところは,伝統的経済学の志向し ている,すなわち,合理的であるのではなくて, てきたところと,まったく異なるのである。 目 彼女がその習慣を形成しようと意図した当初に 次に,われわれは上掲の訳文の中で,原文の 抱いていた目標が,その後も妥当な目標として s e l e c t i o n " とL、う語をく選別〉と訳すことに “ 存続しているという事実に支えられて,その習 選択と行動」の題目に よって,たとえば S2 I 慣的行動は合理的で、あり続けることができるの ある“c h o i c e " という語から,それを訳文の中 である。管理組織のさまざまな構成員の「無意 で識別できるようにした点について説明を加え 識的な選別」のなかには,当初その選別の習慣 e l e c t i o n " という語は,たとえば ておこう。“ s を合理的なものにしていた目標がいつのまにか n a t u r a ls e l e c t i o n )や「競争を通 「自然淘汰J( 価値を失って,新しく現われた目標に照らすと じ て の 選 別J ( s e l e c t i o n through compe- き,し、かなる意味においても合理的でありえな t i t i o n ) のように, 選別を行なう主体として特 定の個人を認識することができない場合にも使 用されるのに対して, c h o i c e " という語の場 “ 合には,つねに,その「選択」を行なう主体が くなってしまっているものが,まムあることで あろう。現実の行政組織の中に, しばしば繁文 縛礼が見出される理由の一つは, この点にある のである。このような場合には,サイモンの言 う「無意識的な選別」は,合理性を具現する「意 容易に認定できるのである。特定の個人の選択 思決定」あるいは「選択」と同じ範障に属する 行動とは異なって,多数の個人の集団としての ものではありえず,むしろ,その対極に位置す 管理組織の行動には,特定の諸個人に過不足な 需のものでなくてはならないであろう。他 る範l く帰着させることのできない諸要素が含まれて 方,彼のいわゆる「意識的な選別」は,その選 いるから,サイモンがこのセクションの議論を 別を行なう主体の存在という点からも,また, 選択Jではなく, I 選別」と 始めるに当って, I その選別がつねに合理的でありうるという点か 2 0 4( 3 4 8 ) らも, r 合理的な人聞の意思決定」あるいは「選 r 無意識的な選別」をすべて,何 らかの意味において「合理的(すなわち, なる選別過程をも包含するものであることが強 調されなくてはならない。 jS9) 択」の名に値する概念たりうるのである。 このように, 39-2 経 済 学 研 究 目標 ここでサイモンが述べているように,く選 h o i s eづとく決定:>(“d e c i s i o nり と い 択:>(“ c r 自意識的で,熟慮を伴な j なものと看倣すことには,重大な疑問 志向的) う言葉が,普通には, の余地がありうるけれども,サイモンは,おそ う,合理的な選別」の意味で使用されていると r 管理組織行動」という複合的な行動の中 いうことは,著者の想定する状況の中にく選 から「無意識的な選別」の要素を排除すること 択〉ないしく決定〉を行なう主体としての「個 は「管理組織行動」と L、う概念をその実態から t h ei n d i v i d u a l ) の存在が確定的に見出せ 人j ( 致命的に遊離させることになると考えて,それ ることを意味するものと受け取ってよいであろ を彼の「管理組織行動」の構成要素として取り う。しかし,他方で,サイモンは,彼の著書『組 込もうと意図しているのであろうと思われる。 織管理行動』の中では,それらの言葉をもっと しかしながら,その意図は,諸個人の集団行動 広い意味に,すなわち,彼のいわゆる「無意識 のー形態としての管理組織行動が純粋に合理的 的な選別」をも包含するものとして,使用する な意思決定の所産とはけっしてなりえないとい と断わっているのである。このことは,彼が上 う宿命を負っているように思われるのである。 掲のパラグラフ (8) で,ある組織の組織管理 らく, さて,サイモシは~ 2r 選択と行動」の議論 行動を,特定の代表的個人ではなくて,その全 構成員の各々を行為者とする諸行為の集成とし を次のように結んでいる。 ( 1 0 )r 本書では,あらゆる種類の選別過程 て捉えようと意図するとともに,他方で,合理 ( al 1v a r i e t i e so fs e l e c t i o np r o c e s s ) につい 的な個人の意思決定に 1 帰着させることのできな て多数の例が挙げられるであろう。これらの諸 い要素を,実態に相応する「組織管理行動j の 例は,すべて以下の諸特性を共有する。すなわ 不可欠の構成部分として取り込もうと意図して ち,し、かなる時点においても選択肢として(形 いるように思われることと,みごとに対応して に現われる)可能性のある諸行為の集合体 (a いるのである。 multitudeo fa l t e r n a t i v e( p h y s i c a l 1 y )p o s s i b l ea c t i o n s J が存在し,そうして,所定の一 それゆえに,サイモンが彼の研究過程におい て遭遇した第 3層の問題群,すなわち, r 合理的 個人はそれらのうちのどの行為でも行なってよ な人間の意思決定」にかかわる問題群が論じら いのである。そうして, れるとき,彼の言う「合理的な個人」とは,あ これらの無数の選択肢 は,何らかの過程によって,事実上,行為とし らゆる組織から独立に存立しうる個人ではなく て現われるところの一つの選択肢にまで, しぼ て,管理組織について彼が書こうとしている理 このような過 論的なシナリオの中で演じられる一つの役割を り込まれる。木研究においては, 程を指すものとして,く選択:> “ (c h o i c e 勺と, 指すところの,きわめてメタフォリカルな性格 そしてく決定:> “ (d e c i s i o n勺という言葉が, の強い言葉であると受け取られるのである。 交互に置き換え可能な形で用いられるであろ う。これらの言葉は,普通には, 自意識的で, 次に,われわれはサイモンの第 I章のパラグ ラフ ( 1 8 ) を見ることにしよう。そのパラグラ 3r 決定における価値と事実」は, s e l f c o n s c i o u s, 熟慮を伴なう,合理的な選別 ( de 1 i berate, r a t i o n a ls e l e c t i o n ) という含み 一見して,第 E章「意思決定における事実と価 を持たせて用いられているので,本書で使用さ 値」にかんする,すなわち,彼の研究の最深層 れるさいには,それらは上述の要素がどの程度 に属する問題群の一部を扱う章にかんする説明 に存在するかにはいっさいかかわりなく,し、か フが属する~ 8 9 )I b i d .,p 4 . 1 9 8 9 .9 ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について帥 白井 2 0 5( 3 4 9 ) であることが明らかであろうけれども,そこに る。そうして,上掲の陳述の中の「環境の状況 は一つ上の第 3層の問題群の考察にとって,き が,手のとどく選択肢を不可避的に限定し」と わめて重要な予備的考察がいくつか見出される いう語句を,その極大化問題の中に組み込まれ のである。しかし, ている制約条件と解釈することを妨げる事情は ここではそれらに対する注 釈は割愛して,われわれは直ちにパラグラフ 何もないのである。かえって,その語句が,選 ( 1 8 ) に目を向けることにする。その全文は,上 択肢の集合を下方から制限する「抱負水準」 掲の内容目次の中に訳出されているけれども, ( a s p i l a t i o nl e v e l ) のようなものを意味すると それに原文を付して,以下に再掲してみよう。 したならば,パラグラフ ( 1 8 ) の陳述はく知足 ( 1 8 )r ある重要な意味において,決定はすべ 的行動〉を表現するものと受け取られるかもし て妥協の問題である。最終的に選別されるとこ れないけれども,心理学上の「抱負水準」の概 ろの選択肢は, t h eenvironmen念を直接的に「環境の状況 J( 目的の完全な達成を可能にする ものではけっしでなくて,それは,その周囲の t a ls i t u a t i o n ) と看倣すことには,大きな無理 事情のもとで手に入れることのできる最善の解 があるように思われる。われわれは,パラグラ にすぎな L、。環境の状況が,手のとどく選択肢 フ ( 1 8 ) に見られるような手短な形式的陳述に を不可避的に限定しそうして,それゆえに, 拠ってく知足的行動〉の意味するところを短絡 可能な目的達成の水準に対して,一つの極大点 的に捉えようとする安易な道は捨てて,もっと I n an i m p o r t a n t を 設 定 す る の で あ る 。J ( 広い文脈の中でサイモンが表現しようとしてい s e n s e ,a 1 1d e c i s i o ni s a matter o f com p r o m i s e . The a l t e r n a t i v et h a ti sf i n a 1 1 y s e l e c t e dneverp e r m i t sacompleteo rp e r f e c t achievement o fo b j e c t i v e s, b u ti s merelyt h eb e s ts o l u t i o nt h a ti sa v a i l a b l e under t h ec i r c u m s t a n c e s . The e n v i r o n mentals i t u a t i o ni n e v i t a b l yl i m i t st h ea l t e r n a t i v e st h a ta r e avai 1a b l e,and hence s e t s a maximum t ot h el e v e lo fa t t a i n ment o fpurposet h a ti sp o s s i b l e . )90) るところのものを探索しなくてはならないので 同 ある。 司 もしもサイモンに対して過度に寛大で,かっ XCIII サイモンの『組織管理行動』の第 I章「意思 組 決定と管理組織」の一つの節を構成する S6T 織の均衡J (THEEQUIRIBLIUMOFTHE ORGANIZATION) は,一見して,その書物 の第百章「組織の均衡」にかんする序説的言及 であることがわかる。そうして,われわれは, 好意的な態度をとることが許されるとしたなら この章についてサイモンが「第 2版へのイント ば,われわれはこの陳述を彼のく知足的行動〉 ロダグション」の中で次のように述べていたこ の概念にかかわる最初の表現とすることができ とを,直ちに想起することができるのである。 たかもしれなし、。しかしながら,冷静に考えて すなわち, みると,この陳述が結局のところく極大化行 動〉の理論的枠組の説明にとどまるものである 「第v[章は脇道の性質を有する一一必要な脇 an e c e s s a r yd i v e r s i o n ) なのであるが, 道 ( ことは明らかであろう。じっさい,<知足的行 しかし,脇道であることに変わりはなし、。本書 動〉にかぎらず,く極大化行動〉に結びつく決 の残余の諸章は,大体において,管理組織の 定過程は,それが制約条件付きの極大化問題と く内部で〉起こることにかかわっているのであ して定式化される基本的構造を有するかぎりに るが,第 M章はそれらの組織の境界領域で起こ おいて, r 決定はすべて妥協の問題」なのであ 9 0 )I b i d .,p 6 . ることーーすなわち,人聞が組織に加入するか, あるいは,そこから離脱するかについて行なう 2 0 6( 3 5 0 ) 39-2 経 済 学 研 究 決定の性質一一ーを論じている。この章の中で提 性が明らかに維持されていることが容易に読み 示される理論は,大体において,チェスター・ 取られるであろう。それゆえに,新しい境地に バーナードの考えを祖述したものである・・ J9!) 達した 1 9 5 7 年当時のサイモンでさえ,第 V I章が と , 1 9 5 7 年当時のサイモンは述べているのであ anecessaryd i v e r s i o n ) であ 「必要な脇道J ( った。彼のこのような述懐を念頭に置きなが るという言葉を添えなくてはならなかったので ら,われわれは彼の著書の第 I章 を 構 成 す る あろう。また,それゆえに, 1 9 4 7 年当時の彼が S6 1 組織の均衡」の諸パラグラフの陳述を以 本 書 の 組 成J (ORGANIZA第 I章の!l 7 1 下で吟味してみることにしよう。そのセクショ TION OF THIS VOLUME) のパラグラフ ンの最初のパラグラフで彼は次のように述べて ( 6 2 ) において,第 W章を,それに続く第四章か L、 る 。 ら第 X章までの諸章とともに同ーのグループに ( 5 4 )1 次に,なぜ個人は,これらの組織上の 属する議論であるかのように述べている気持 諸影響を受け容れるのかーーなぜ彼は,その組 織が彼に向けて出す要求に対して,彼の行動を が,われわれにもよくわかるのである。 それにもかかわらず, r 第 2版へのイントロ 適応させるのかーーという聞いが提起されてよ ダクション」におけるサイモンが, この章を彼 いであろう。個人の行動が,いかにして組織の の研究の主題からそれる脇道として,彼の遭遇 行動体系の一部分になるかを理解するために してきた問題群の四つの層のどれからも排除す は,その個人の個人的な動機づけと,そうして, るのは, その組織の活動が向けられるところの諸目的と もっとっきつめて言えば,第 W章「組織の均衡」 の聞の関係を研究することが必要となる。J が「諸組織の境界領域でJ ( a tt h e i r bounda- (The q u e s t i o n may next be r a i s e d why t h ei n d i v i d u a laccettst h e s eo r g a n i z a t i o n a l i s i n f i u e n c e s- -whyheaccommodatesh b e h a v i o rt ot h edemandst h eo r g a n i z a t i o n m a k e ' s upon h i m . To understand how t h eb e h a v i o ro ft h ei n d i v i d u a lbecomesa p a r to ft h e system o fb e h a v i o ro ft h e o r g a n i z a t i o n,i ti snecessaryt ostudyt h e r e l a t i o nbetweent h ep e r s o n a lm o t i v a t i o n o ft h ei n d i v i d u a l and t h eo b j e c t i v e st o ward which t h ea c t i v i t yo ft h eo r g a n i . z a t i o ni so r i e nt e d .)92) r i e s ) 起こることを扱っているというのは, ど 司 どのような理由によるのであろうか。 のようなことを意味するのであろうか。 この聞いを心の片隅に残したまま,われわれ はサイモンの述べるところを,もう少し先まで 見ておくことにしよう。彼は上掲のパラグラフ ( 5 4 ) に続けて, こう述べている。 ( 5 5 )1 当面,営利組織を典型にとるとするな らば 3種類の参加者たちが区分されうるであ ろう。すなわち,企業家たち,従業員たち,お よび、顧客たちがそれで、ある。企業家たちは,彼 らの諸決定が窮極的に従業員たちの活動をコン トロールするという事実によって区別される。 これは,サイモンのいわゆる第 2層の問題群 従業員たちは,賃金という報酬と引き代えに彼 を扱う第四章から第 X章までの諸章にかんする らの(差別化されな¥, ,)時間と努力を組織に供 序説的言及が行なわれる S5 1 組織上の影響の 与すると L、う事実によって区別される。そうし 諸様式J(MODESOFORGANIZATIONAL て,顧客たちは,その組織に対して,生産物と INFLUENCE) の直後に述べられているもの 引き代えに貨幣を与えるとし、う事実によって区 であることに留意すると,それらの諸章と,そ 別されるのである。(現実の人間存在は,もちろ れらに先立つ第 W章との聞には問題意識の連続 ん,一つの組織に対して, 9 1 )I b i d .,p .x i . 9 2 )I b i d .,p .1 6 . これらの諸関係を一 つ以上持つことがありうる。たとえば,赤十字 社の奉仕者は,事実,顧客と従業員の複合体であ 1 9 8 9 .9 ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について 帥 白井 2 0 7( 3 5 1 ) る。)J( I fab u s i n e s so r g a n i z a t i o nbetaken, f o rt h emoment ,a st h et y p e,t h r e ek i n d s o fp a r t i c i p a n t s can be d i s t i n g u i s h e d : ,e mployees, and customentrepreneurs e r s . Entrepreneursa r ed i s t i n g u i s h e dby ti m a t e l y t h ef a c tt h a tt h e i rd e c i s i o n s u1 c o n t r o lt h ea c t i v i t i e so f employees; em,byt h ef a c tt h a ttheyc o n t r i b u t e p l o y e e s t h e i r( u n d i 妊e r e n t i a t e d ) time and e f f o r t s t ot h eo r g a n i z a t i o ni nr e t u r nf o rwages; h ef a c tt h a t they c o n t r i customers,byt butemoneyt ot h eo r g a n i z a t i o ni nr e t u r n f o ri t sp r o d u c t s . (Anya c t u a lhumanb e i n g fc o u r s e,s t a n di n more than one can,o .g . o ft h e s er e l a t i o n st oano r g a n i z a t i o n,e a Red Cross v o l u n t e e r, who i sr e a l l ya C加1P o s i t ecustomer ande m p l o y e e .う ] 93) 他の用語と同ーのレヴェルで、文字通りに受け取 いま,サイモンは組織をその権限の位階制と られではならないであろう。じっさい,文字通 いう一つの公式的枠組にではなく,影響の授受 りに受け取るとしたならば,営利企業の顧客た とL、う非公式の要素を多分に含む, より広い枠 あろうか。それを,彼の主たる関心が営利企業 の経営にあったことの表われであると受け取る のが重大な誤解につながることは,ほとんど間 違いのないところであるだろう。それよりは, むしろ,営利企業における「企業家J ,I 従業員J , および「顧客」の範曙がサイモンの読者たちに 最も親しまれ 9ベ そ れ ゆ え に , そ れ ら の 諸 範 曙 を特徴づける役割のありょうを端的に示すのに 最も効果的な例になりうると,サイモン自身が 考えたのであろうと推測するほうが,はるかに 真実に近いであろう。このように受け取るなら ば , これらの三つの範鴎の名称は,比喰として の性格を強く帯びているということになるであ ろう。それらの名称は,比喰であるがゆえに, ちに求められる唯一の資格が彼らの支払い能力 にあるのに対して, 組に照らして,考えようとしているのである。 その場合, がその典型を公的な行政組織に求めずに,営利 組織に求めている理由はどのあたりにあるので その組織の「参加者たち J ( p a r t i - ソーシャノレ・ワーカーのグ e n t s ) は年齢やその他の事 ライエントたち(c1i c i p a n t s )は , 権限の位階制の上層に位置する a d m i n i s t r a t o r s, o r execu 「 管 理 者 た ち J( t i v e s ) と,そうして,その下層に位置する「従 e m p l o y e e s ) とだけから成るので 業員たち J ( 情が資格として要求されるのであって,支払い はなくて,その組織からサーヴィスを享受する して, I 企業家」と L、う名称にも問題が生じるで 司 c u s t o m e r s ) が第 3の範障の参加 「顧客たち J( 者として,われわれの視野の中に姿を現わすの である。サイモンの祖述するパーナードのこの ような構図は,たとえば,社会福祉機関といっ たような公的管理組織に適用するとき,その行 政官たちと,現場のソーシャル・ワーカーたち に加えて,彼らのクライエントたちをも,その 組織の枠の内側に取り入れて,社会福祉行政の 全体像を組織管理理論の視点から描き出すこと を可能ならしめるのである。 このような構図に必要とされる「参加者たち」 の三つの範障を設定するにあたって,サイモン 9 3 )I b i d . 能力は,む Lろ,欠けているほうが正常な条件 になるであろうから,両者を同じ範障とするこ とには重大な疑問が残ることであろう。同様に 9 4 ) サイモンの読者層の設定にかんするわれわれの推 誤u の傍証のーっとして, メルヴィン・コープラン ドの論文「一管理職の仕事」を挙げることができ る 。 M e l v i nT .C o p巴l a n d,“ The J o bo fa n , "HarvardBusinessReview,Vo . l E x e c u t i v e X V I I I,N o . 2( W i n t e r,1940),p p . 148-160. 彼はこの論文でパーナードの著書『管理職の職 能』を批判したのであるが.彼の批判の基礎は t h ef i e l do fb u s i n e s s 「企業経営の分野J( m a n a g e m e n t )における彼自身の観察と研究にあ 営利組織の って,彼の論文の題名は, 事実上, r t h ej o bo ft h eb u s i n e s se x 管理職の仕事J( c u t i vめであると受け取ってよいであろう。そう し て , Ii'管理職の職能』と同じ読者層を『組織管 理行動』のサイモンがねらっていたことは明らか である。 2 0 8( 3 5 2 ) 39-2 経 済 学 研 究 あろうことについて,もはや説明を重ねる必要 はないであろう。 こうして,われわれは次に掲げるパラグラフ ( 5 6 ) の陳述私文字通りにそれだけのものと してではなく,比喰としての含みを持たせて読 まなくてはならないのである。 ( 5 6 ) 1"これらの参加者たちの各々が,これら の組織的諸活動に参与するについては,彼自身 の個人的動機を持っている。これらの諸動機を 単純化 L,そうして,経済理論の観点をとるな らば,われわれは次のように言うことができる であろう。すなわち,企業家は利潤(すなわち, 収入が支出を上回る超過分)を追求し,従業員 たちは賃金を求め,そうして,顧客たちは(一 定の価格のもとで)生産物と貨幣の交換を魅力 あるものと見るのである。企業家は従業員たち と雇用契約を結ぶことによって,彼らの時聞を 処分する権利を取得する。そうして,彼は顧客 たちと販売契約を結ぶことによって,賃金を支 払うための基金を取得する。もしもこれらの 2 種類の契約が十分に有利なものであるとするな らば,その企業家は利潤を得て,そうして,お そらく,われわれの目的にとってもっと重要な ことに,その組織は存続するのである。もしも それらの契約が十分に有利なものでないとする ならば,その企業家は他の人々を彼とともに組 織活動の中にとどまらぜるための誘因を維持す ることができなくなり,そうして,組織にかか わる努力を持続するための彼自身の誘因さえも が失なわれるかもしれない。いずれにせよ,そ economic theory , we may s a yt h a tt h e i .e . ane x c e s s e n t r e p r e n e u rs e e k sp r o f i t( o frevenueso v e re x p e n d i t u r e s ),t h eemp l o y e e ss e e k wages, and t h e customers f i n d( a tc e r t a i np r i c e s )t h e exchange o f moneyf o rp r o d u c t sa t t r a c t i v e . The e n t r e p r e n e u rg a i n st h er i g h tt od i s p o s eo f t h ee m p l o y e e s 'timebye n t e r i n gi n t oemploymentc o n t r a c t swiththem;heo b t a i n s fundst opaywagesbye n t e r i n gi n t os a l e s c o n t r a c t s with t h ec u s t o m e r s . I f these twos e t so fcont r a c t sa r es u伍 c i e n t l ya d vantageous ,t h e entrepreneur makes a p r o f i t and, what i s perhaps more i m p o r t a n tf o rourpurposes ,t h eo r g a n i z a t i o n remains i ne x i s t e n c e . I f the c o n t r a c t s i e nt 1 yadvantageous,t h ee n a r enots u伍c t r e p re ' neur becomes unable t om a i n t a i n inducementst okeepo t h e r si no r g a n i z e d o s eh i s a c t i v i t ywithhim, andmayevenl own inducement t oc o n t i n u eh i so r g a n i z a t i o n a l e 任o r t s . I n e i t h e re v e n t ,t h e o r g a n i z a t i o nd i s a p p e a r su n l e s s an e q u i 1 i briumcanbereached a t somel e v e lo f a c t i v i t y . I n any a c t u a lo r g a n i z a t i o n, o f c o u r s e,t h eentrepreneurwi 1 1d ependupon manyinducementso t h e rthant h ep u r e l y economic ones mentioned above: p r e はi g e, “g oodwi 1 ," l o y a l t y ,ando t h e r s .)95) サイモンが, ここで彼の構図の説明のための の組織は,ある活動水準において均衡に到達す 最も簡明な方便として採用する「経済理論の観 ることができないかぎり,消滅するのである。 点J ( t h es t a n d p o i n to f economic t h e o r y ) もちろん,現実の組織においては¥, 、かなる場 は,その簡明さのゆえに,彼のく組織管理人間〉 合にも,企業家は上述の純粋に経済的な誘困以 ( a d m i n i s t r a t i v eman) の画像を描き出すさい 外の多くの諸誘因,すなわち,名声,<のれん>, には,修正を受げなくてはならないものであっ 忠誠心などによっても左右されるであろう。」 た。しかし,彼がこの研究で扱う管理組織一般 (Eacho ft h e s ep a r t i c i p a n t shash i sown を構成する参加者たちの三つの範障のありょう p e r s o n a l motives f o r engaging i nt h e s e は,営利企業の比喰によって活き活きと,そう o r g a n i z a t i o n a la c t i v i t i e s .S i m p l i f y i n gt h e して,豊かな示唆を伴なって,十分に示される motives and a d o p t i n gt h es t a n d p o i n to f 9 5 )S i m o n,ot. cit.,p p . 1 6 1 7 . 1 9 8 9 .9 ケインズ『一般理論』私注賃金基金説の系譜について帥 白井 加 9( 3 日 〉 指導することは彼にとってやり甲斐のあること ,t h e r ea p p e a r s ,i na d d i t i o n j u s td e s c r i b e d , t ot h ep e r s o n a laimso ft h ep a r t i c i p a n t s an o r g a n i z a t i o no b j e c t i v e ,o ro b j e c t i v e s . I ftheo r g a n i z a t i o ni sas h o ef a c t o r y ,f o r ,i tassumest h eo b j e c t i v eo fmal 心 example i n gs h o e s . Whose o b j e c t i v ei s this-,t h ec u s t o m e r s ', o r t h ee n t r e p r e n e u r ' s t h ee m p l o y e e s ' ? Todenyt h a ti tb e l o n g s t oanyo ft h e s ewouldseemt op o s i tωme “ group mind", some o r g a n i s m i ce n t i t y whichi so v e randabovei t shumancomp o n e n t s . Thet r u ee x p l a n a t i o ni ssimp 】 e r : n d i r e c t 1 y, t h eo r g a n i z a t i o no b j e c t i v ei s,i ap e r s o n a lo b j e c t i v eo fa l l the p a r t i c i ti st h e means whereby t h e i r p a n t s . I o r g a n i z a t i o n a la c t i v i t yi sboundt o g e t h e r t oa c h i e v eas a t i s f a c t i o no ft h e i r own ti s by emd i v e r s ep e r s o n a lm o t i v e s . I p l o y i n g workers t o make s h o e s and by s e l l i n gthemt h a tt h ee n t r e p r e n e u rmakes h i sp r o f i t ;i ti sbya c c e p t i n gt h ed i r e c t i o n o ft h ee n t r e p r e n e u ri nt h e making o f s h o e st h a tt h eemployeee a r n sh i swage; and i ti s by buying t h ef i n i s h e ds h o e s t h a tt h ecustomero b t a i n sh i s s a t i s f a c t i o n fromt h eo r g a n i z a t i o n . S i n c et h ee n t r e , and s i n c e he preneur wishes a p r o f i t c o n t r o l st h eb e h a v i o ro ft h e employees ( w i t h i nt h e i rr e s p e c t i v ea r e a so f a c c e p tbehooveshimt og u i d et h eb e t a n c e ),i h a v i o ro ft h eemployees byt h ec r i t e r i o n making s h o e sa se f f i c i e n t l ya sp o s o f“ h e n,a shec a nc o n t r o l s i b l e . " I ns of a r,t s t a b b e h a v i o ri nt h eo r g a n i z a t i o n, he e l i s h e st h i sa st h eo b j e c t i v eo ft h eb e h a v i o r .) 吋 なのである。そうして,彼がその組織の中の行 ここでサイモンは,ある組織の「参加者たち 動をコントロールすることが可能なかぎりにお の個人的な諸目的J ( t h ep e r s o n a l aims o f , その「組織の目的」 t h ep a r t i c i p a n t s )に であろうと,彼は考えているのである。 ところで,影響の体系として見た組織のこの ような構図は,一見したところ,きわめて単純 なもののように思われるかもしれないけれど も , じつは非常に複雑な問題を内蔵している。 そうして,サイモンはそのことをパラグラブ ( 5 7 ) において示唆するのである。 r ( 5 7 ) 上述のような一つの組織の中には,そ の参加者たちの個人的な諸目的に加えて,組織 の目的ないし諸目的が姿を現わず。その組織 を,たとえば,製靴工場であるとするならば, それは靴を製造するという目的を持っている。 これは誰の目的なのであろうかーーその企業家 のものか,顧客たちのものか,あるいは,従業 員たちのものなのであろうか。それが,これら の人々の誰かに属することを否定するのは,何 らかのく集団精神>,すなわち,その組織の人 間構成分を超越して,その上に存在する有機的 実体を前提することになるように思われる。そ のほんとうの説明はもっと単純である。すなわ ち,組織の目的は,間接的に,全参加者の個人 的目的である。それは,彼ら自身のさまざまに 異なる個人的諸動機の充足を達成するために, 彼らの組織的活動をまとめ合わせる手段であ る。靴を製造するために労働者たちを雇用し, そうして,靴を売りさばくことによって,企業 家は彼の利潤をあげるのである。靴を製造する さいに企業家の指令を受け容れることによっ て,従業員は彼の賃金を稼得する。そうして, 顧客は,完成した靴を買うことによって,その 組織から彼の満足を取得するのである。企業家 は利潤を望むので,そうして,彼は従業員たち の行動を(彼らの受容の範囲内で)コントロー ルずるので,く可能なかぎり効率的に靴を製造 する〉という基準によって従業員たちの行動を いて,彼はこれを行動の目的として確立するの である。J ( Inano r g a n i z a t i o nsucha st h a t 9 6 )I b i d .,p p 17-18. 2 1 0( 3 5 4 ) 39-2 経 済 学 研 究 われわれはこの間いを提起するサイモン自身の meanswherebyt h e i ro r g a n i z a t i o n a la c t i v i t yi s bound t o g e t h e r .t oa c h i e v eas a t i s f a c t i o no ft h e i r own d i v e r s ep e r s o n a l m o t i v e s .) ということがそれである。要する 視野が,おそらくは不当に,限定されてしまっ に,組織管理理論の視点からは,組織の目的を ているこ主を問題にしないわけにはいかないの 目的と見るのではなくて,組織的統合の手段と である。というのは,今日,われわれが考える 見るものであるという,一つの態度の表明が行 ことのできる社会の中に存在する管理組織の目 なわれているのである。このような態度を取ろ 的は,その組織の参加者たちのものというより うとする者が, ( o r g a n i z a t i o n a lo b j e c t i v e s ) を対置して,組 織の目的は,その参加者たちのうちの誰の目的 なのであるか, と問うている。しかしながら, r 組織の目的は誰の目的か」とい も,むしろもっと別の範障に属する人々の目的 う聞いを発するのは,いささか奇妙なことでは といったほうが真実に近いであろうと思われる ある。 場合が, しばしばあるからである。たとえば, しかしながら,サイモンは彼の取るべき態度 r 彼ら(参加者たち)自身のさま 老人福祉組織について言うと,その組織が公営 の表明の中で, であると私営であるとを問わず,その目的は, ざまに異なる個人的諸動機の充足を達成するた その組織の諸活動を監督・指導する行政部の拠 めに」と述べているのであるから,われわれは, り所となる法律を制定した立法部によって与え なお, られたものである。そうして,その立法部を間 p e r s o n a laimso fp a r t i c i p a n t s ) という語句 接的に支える民意の真の所在は,その組織の参 によって何を意味しようとしているのかを問わ 加者たち,すなわち, ち , r 企業者」である管理者た 彼が「参加者たちの個人的諸動機J ( t h e ないわけにはし、かないであろう。 r 従業員」であるソーシャル・ワーカーや介 護者たち,あるいは, r 顧客」である老人たちの うちの誰にあるのでもなくて, XCIV じつは,かつて それらの老人たちによって養育され,現在,彼 われわれは本稿の第 XCII節において,サイ らの介護を自らの手でなすべきはずの, より若 モンの第 I章のパラグラフ (8) で彼が,彼の い世代にあるように思えるのである。言ってみ t h ea c t o r ) を「個人」 いわゆる「行為者J ( れば,老人福祉組織の真の目的は,これらの若 ( t h ei n d i v i d u a l ) と呼んでいることを問題に い世代の良心の苛責を軽減することにあるかの してきた。彼の議論の脈絡の中では,その個人 ように思われる。これらの若い人々もまた,老 は特定の組織から独立に存在する,通常の意味 人福祉組織の参加者であると言うのは,すでに での個人ではなくて,その組織の権限の位階制 詑弁の域に達していて,問題にするに当たらな の中で特定の職能を演じようとしている個人を いであろう。 意味するもののように受け取られたのである。 サイモンの間いを文字通りに受け取ると, こ ところで,上掲のパラグラフ ( 5 4 ) から ( 5 7 ) のような疑問が生じるけれども,彼がその問い までの陳述の中で一貫して,サイモンが彼のい を提起した意図は,もっと別のことを述べると わゆる「参加者たち Jを「個人」と呼ぶとき, ころにあるのであろう。その問いを話の糸口と 彼らもまた,その組織から独立に存在しうる個 して,彼の次のことを言いたかったのであろ 人ではなくて,その組織の参加者として特定の r それ(組織の目的)は,彼ら 役割を演じようとしている個人を意味している う。すなわち, (参加者たち)自身のさまざまに異なる個人的 ことは,パラグラフ (8)の場合と同様である。 諸動機の充足を達成するために,彼らの組織的 ある組織における特定の役割の一つを人が演じ I ti st h e 活動をまとめ合わせる手段である J C ようとするとき,その演技を通じて,彼が充足 1 9 8 9 . .9 ケイ γ ズ『一般理論』私注 賃金基金説の系譜について しようとするところの「彼自身の個人的諸動機」 ( 1 9 ) 白井 2 1 1( 3 5 5 ) 的〉説明を与えるーーすなわち,船長が彼の船 ( h i sownp e r s o n a lm o t i v e s ) は,彼がその組 とともに沈むのは,彼が船長の役割を引き受け 織から独立な存在としての,本来的な個人とし てきたがゆえ ( b e c a u s ehehasa c c e p t e dt h e p e r s o n a l て有するところの「個人的目的J ( r o l eo fc a p t a i n ) であり,そう Lて,それがわ a i m s ) と過不足なく重なり合うものではない れわれの文化の中では船長のすることだからで であろう。たとえば,人がある組織のある特定 ある。この用語は, rr'組織管理行動』の中では多 の職能を遂行するうえで,彼の個人的な趣味が くは使用されていないけれども,しかし,もし どのようなものであるかは,ほとんど問題にす p o 1 i t i c a ls c i e n c e ) も私の言語習慣が政治学 ( るに当たらないであろう。結局のところ,サイ でなくて社会学の中で形成されていたとしたな モンの言う「行為者」や「参加者たち Jは,組 らば,それは容易に多用されていたかもしれな 織から独立に存在する個人ではなくて,その組 0 0 1 0 2ページを見よ)。 いのである(たとえば, 1 織の中で特定の役割を演じようとするところの 「演技者 J ( t h ea c t o r ) なのである。 この点にかんして, 1 9 5 7 年当時のサイモンの 態度を示唆する注釈が,彼の「第 2版へのイン トロダクション」の しかしながら,この用語の効用は限られたもの である, というのは,それには,いまだかつて, s 3 r組織管理行動と現代の 行動科学J (ADMINISTRATIVE BEHA V- IOR AND CONTEMPORARY BEHAVIORALSCIENCE)97) のサブセクション 3 4 「社会学における現今の発展との関係 J( R e l a t i o nt o Some C u r r e n tD e v e l o p m e n t si n S o c i o l o g y )附の前半に見られるので, それら 十分に明確な定義が与えられたためしがないか らである。 ( 6 8 )r 演劇の役 ( ad r a m a t i cp a r t ) という o l e " ) とい 本来の意味合いでは,<::役割;> “ (r う語は,あまりにも特定されすぎた行動の型 ( t o os p e c i f i cap a t t e r no fb e h a v i o r ) を意味 している。母親というものは語るべきせりふを 定められてしまってはいない。そうして,彼女 の役割行動 ( r o l eb e h a v i o r ) は自らの置かれて の陳述を以下に掲げ,サイモンの考えを吟味し いる状況に対して高度に適応的 ( h i g h l ya d a p - てみよう。そのサブセクションの「まえがき」 t i v e ) であり,そうして,その状況によって条 c o n t i n g e n tupon) いる。加え 件づけられて ( as o c i a lr o l e ) の演技 て,一つの社会的役割 ( に相当するパラグラフ ( 6 6 ) において,彼は次 のように述べている。 r ( 6 6 ) 経済学によって示された人間の選択 (human c h o i c e ) への関心の高まりは, 社会 の中には,あらゆる種類にわたる個性的な変化 心理学と社会学の中でも平行して進んできて る社会学者たちは, これらの留保条件のすべて いる。われわれの議論の焦点を,く役割〉 を指摘するにはしているけれども, しかし,そ の余地がある。今日,役割と L、う概念を使用す “ (r o l e 勺とく行為;>(“a c t i o nりというこつの れらの条件を,役割の定義の中にどのように組 用語に絞るのが便利であろう。J99j み入れるかについては何も語ってくれないし, われわれは,それらのうちのく役割〉にかん するサイモンの陳述を見るわけである。彼は続 けてこう述べている。 ( 6 7 )r 役割理論 ( R o l eT h e o r y ) 役割と いう概念は行動についての標準的なく社会学 9 7 )I b i d .,p p . xxii-xxxi i i . 9 8 )I b i d .,p p xxx-xxxiii. 9 9 )I b i d .,p .x x x . また,したがって,その理論が行動の予報 ( t h e p r e d i c t i o no fb e h a v i o r ) のために,どのよう に使用されるべきかを指示することもないので ある。J'OO) ( 6 θ )r 人聞の選択の理論において,決定の概 念は分析の単位としては,あまりにも粗大であ り,そうして,それはそれを構成する諸前提に 1 Q O )あ 以 2 1 2 ( 3 5 6 ) 経 済 学 研 究 分解されなくてはならないという ( t h a ti na theoryofhuman c h o i c e, t h ed e c i s i o ni s t o og r o s sau n i to fa n a l y s i sandmustbe d i s s e c t e di n t oi t scomponentp r e m i s e s )私 39-2 の先の注釈の意味は,この点にあるのである。 ないけれども,しかし,その役割の演技者.( t h e performer o f the r o l e ) は合理的な行為者 ( ar a t i o n a la c t o r ) ではありえない一一彼は, h es i m たんに彼の役を演じているにすぎない ( p l ya c t sh i sp a r t ) のである。他方, もしも 役割理論の難点は,もしもわれわれが社会的影 役割が一定の価値前提と事実前提の特定化から 響は決定の諸前提に対する影響であるという観 成る ( ar o l ec o n s i t si nt h es p e c i f i c a t i o no f t h ev i e w p o i n tt h a tsodali n f 1 uencei s 点 ( c e r t a i nv a l u eandf a c t u a lp r e m i s e s ) とする t h ee n a c t o ro f ならば, その役割の演技者 ( t h er o l e ) は,通常, これらの諸価値を達成す 1 uenceupond e c i s i o ntremises)を採択す i nf a るならば,解消するであろう。一つの役割 ( r o l e ) とは一人の個人の諸決定に入り込んで、い るために合理性を発揮しなくてはならないであ ろの,すべてではないにしても,若干の ろう。諸前提に照らして定義される役割は,行 ると ζ as p e c i f i c a t i o no fsome,but 前提の特定化 ( 動の中に合理的計算の余地を残すのである (A n o ta l l,o ft h epremises t h a te n t e ri n t o 'sd e c i s i o n s ) である ( 2 2 1 2 2 8 an i n d i v i d u al ページを参照せよ)。情報的な諸前提 ( i n f o r m a t i o n a lp r e m i s e s ), および,人となりを表 示するところの個性的諸前提 ( i d i o s y n c r a t i c premisest h a ta r ee x p r e s s i v eo fp e r s o n a l i t y ) をも含めた, その他の多くの諸前提も r o l ed e f i n e di ntermso fpremises l e a v e s room f o rr a t i o n a lc a l c u l a t i o ni nb e h a v 102 J )と 。 i o r .) また同じ諸決定の中に入り込んで、いる。そうし 彼の『管理組織行動』の第 2版と同じく て,決定の諸前提が十分に詳細に知られている に刊行された『社会構造の理論~1附の著者ジー サイモンの以上の陳述は,当時の彼が既存の 役割理論のありように重大な不満を感じていた ことを示している。そのような感じ方はサイモ ン一人のものではけっしてなくて,たとえば, 1 9 5 7 年 (あるいは,予報できる)ときに,はじめて行 グフリード・フレデリック・ナーデルも同様の 動を予報することができるのである。若干の諸 不満を抱き,そうして,文化人類学の研究者の 目的のためには(たとえば,停止信号を無視す 立場から社会構造の理論を構築しようという彼 るのを見ている警官の行動を予報するために の目的に適した役割理論の再構成を意図したの は ) , 役割にかんする諸前提 ( t h er o l ep r e - m i s e s ) を知るだけで十分で、あるかも L れ な い。そうして,その他の諸目的のためには,情 報的な諸前提,あるいは,その他の諸前提が決 である。その著書の中で,ナーデ、ルは次のよう に述べている。 「われわれは,いまや,社会構造の定義のた めに必要とされるすべての用語を持っている。 ( c r u c i a l ) であるかもしれない。」山〉 そうして,われわれはその定義を次のように述 ( 7 0 )I その前提が単位と看倣されないかぎ べることができるであろう。すなわち,その社 定的 り,役割理論は経済理論が犯している誤りと正 会の具体的な人口と,そして,その行動とから, 反対の誤りを犯すというーーすなわち,行動の く行為者たちが相互に関係している役割を演じ 中に合理性の取り入れられる余地をまったく残 るという彼らの資格において,彼らの聞に〉得 さないという一一危険にさらされているのであ られる諸関係の型,あるいは,ネットワーク(あ る。もしも役割が行動の型である ( ar o l ei s ap a t t e r no fb e h a v i o r ) とするならば,その るいはく体系;>)を抽象することを通じて,わ 役割は社会的観点からは機能的であるかもしれ 1 0 1 )I b i d .,p p .x x x x x x . i 1 0 2 )I b i d .,p . xxx . i 1 0 3 )S i e g f r i e dF r e d e r i c kN a d e !,The Theory of S o c i a lS t r u c t u r e( L o n d o n :C o h e n .& West , Ltd .,1 9 5 8 ) . 1 9 8 99 u ケインズ『一般主主総』事 主 主葉会基金説の 2 事務?とついて れわれは…つの社会の構造に す る (We a r r i v ea tt h es t r u c t u r e o fa s o c i e t y through a b s t r a c t i n g from t h ec o n c r e t e p o p u l a t i o nandi t sb e h a v i o rt h ep a t t e r n o rnetwork( o r“ system 勺o fr e l a t i o n s h i p s betweena c t o r si nt h e i rc a p a c i t y o b t a i n i n g‘ o fp l a y i n gr o l e sr e l a t i v et oonea n o t h e r ¥っ と 。J 帥 自弁 213(357) がタノレコット・バーソンズの『社会学環論論文 から引用したもの、である。これらの の中でナーデルが用いる「社会J ( as o c i e t y ) および「社会的J( s o c i a l ) とし、う語弘それぞ 組織J ( a no r g a n i z a t i o n ) および「組織 れ f o r g a n i z a t i o n a り という語で蹴き代える 的J ( ならば,それはサイモンが披自身の立場を表明 る顛述として読み f 支えることができるであろ 104 ) fこの定義,および,それと類棋の う。もっとも, r 社会j よりももっと限定的で, 「閥的恋向性J ( p u子 本的に正しい(そうして,もしもわれわれのこ その行畿にはるかに強く れまでの推識が正しいとするならば,そうでな ζ れらの定義は重 p o s i v e n e s s ) が見出されるところの f 管理組 織Jさと薪究の対象とするサイモンの場合に比 大な方法論上の難点なかくし持っているのであ 適切な投錨議論の基本的議密が経済学から借用 る。というのは,そのような基礎の上に立唱社 できる余地が残されているようで,設はその くてはならない)けれども, きる理論は,適当な設鰯理論 く経済人間〉に修正をほどとして彼のく組織管 の存在を前強しているので、あり,そうして,い 理人関〉に作り変えればよいようであるから, まだかつて,体系的な形をとった,いかなる ナ…デノレの場合よりもサイモンのほうが多少と 役割理論も提示されたことはないからである も潜まれた滋令歩めるように思われる O しかし ( f o ras a t i s f a c t o r yt h e o r yo fs o c i a l話t r u c ・ eon t h i sb a s i sp r e s u p p o s e s an ade t u r q u a t et h e o r yo fr o l e s,andnonehasy e t been advanced i n any s y s t e m a t i cf a s h i o n .)o J105) ながら,サイモンの誘う「個人j が,より 鑑 ちなみに,上掲の引用文の前半のパラグラフ のやで興住 l が付されている鱒句は,ナーデノレ 的な「社会Jに対翠される個人マはなく 「管理組織Jの中で特定の役割合演じる るものとするならば,設が摘~上 Hさる 〈組織管理人隙〉の画像は意外に単純で, 済人関〉のそれをほとんど一歩も出ないものに なるかもしれないことが生燥されるのである。 くこの裏続く) 1 0 4 )I b i d .,ゑ 1 2 . 1 0 5 )I b i d . 1 0 6 )T a l ∞t tP a r 器o n s, Essays 初 Sociological Theory ( G l邑n c o e,I l 1 . , •T he F r 告患 P r e s s ' , 1 9 4 9 ),p .3 4 .