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高速道路の冬期路面における走行速度の検討 小島 崇幸*1
高速道路の冬期路面における走行速度の検討 小島 崇幸*1 7分類(乾燥・湿潤・黒シャーベット・白シャーベット・ 1.はじめに NEXCO東日本 新潟支社(以下 新潟支社という) 圧雪・凍結)に整理している。今回の分析については、 では、高速道路の冬期路面の管理水準を策定することを 平成22年度から25年度冬期(/12/15~3/16)のデー 目的に、雪氷路面の出現形態等(降雪・気温・雪氷作業) タを使用した。 の現状の把握を行い、雪に起因する事故・通行止め・走 行速度の発生状況と路面状態の発生状況を分析し、 「望ま ⑦ しい路面状態」や「忌避すべき路面状態」を定量的にし た路面管理指標の作成に向けた取り組みを行っている。 冬期路面の出現形態を分析するために、路面状態の変 ⑥ ⑤ ④ 化を把握するためのモニタリングを、新潟支社の管轄す る路線にて平成 25 年度現在10区間(箇所)実施してい る。モニタリングは、平成21年度から、冬期間(12 月 ~3 月)の観測を継続している。同区間では、時間降雪 ⑧ 量・累計降雪量などの気象状況や、交通量・平均走行速 ③ 度・通行止め時間、路面状態ごとの事故発生状況および ⑨ 除雪作業の車両配置・人員配置・除雪作業時間などの集 計も行い、分析を行っている。本報文では、この取り組 ② ⑩ みの中で、高速道路を利用する車の走行速度と路面状態 ① について分析した結果について報告を行う。 2.路面状態の観測 図-1 モニタリング位置 雪氷路面の出現について観測を行っている路面のモ ニタリング区間は、平成25年度現在で表-1及び図- 高速道路の交通量および走行速度については、モニタ 1に示す10区間(箇所)である。この区間は、気象特 リング区間内に設置されているトラフィックカウンター 性、交通特性、管内の事故発生状況などの特性を勘案し のデータ(1時間単位)を使用した。 決定している。区間内には、平成21年度から路面状態 3.路面状態と走行速度の関係 を観測するためのWEBカメラを高速道路上に設置し、 冬期間(12 月~3 月)の観測を継続している。 平成25年度冬期期間の新潟支社管内の10区間に おける路面のモニタリング結果に平均走行速度を集計し た結果を図-2に示す。 表―1 webカメラ設置位置 番号 事務所 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ 湯沢 道路名 関越道 IC区間 KP 土樽~湯沢 159.0 湯沢~塩沢石打 170.2 堀之内~越後川口 212.2 三条燕~巻潟東 447.56 巻潟東~新潟西 457.8 津川~三川 172.8 中条~荒川胎内 41.4 西山~長岡JCT 415.1 名立谷浜~上越 343.3 妙高高原~中郷 175.8 位 置 上下 観測局との距離 下 1.3 下 3.1 下 0.3 下 -0.54 下 0 上 -0.1 下 -5.2 上 1.7 下 0 上 1.7 観測局(降雪) 土樽PA 湯沢IC 越後川口IC 三条IC 新潟亀田IC 津川IC 中条IC 長岡IC 上越IC 妙高高原IC 最寄観測局 観測局(気温) 土樽橋 湯沢橋 堀之内PA 中之口川橋 巻潟東 谷花橋 荒川胎内 大積 丹原川橋 太田切川橋 表-2 路面状態別平均速度(平成 25 年度) KP 157.7 167.1 211.9 448.1 457.8 172.9 46.6 416.8 343.3 177.5 (H25) 管内平均 平均速度 速度低下率(対乾燥) km/h % 乾燥 89.6 - 湿潤 85.9 95.9 黒シャーベット 69.5 77.6 録画画像の目視による路面状態の判別を、NEXCO東 白シャーベット 62.3 69.5 日本 道路保全要領 雪氷対策編(参考資料)に基づき 圧雪 57.2 63.9 北陸道 新潟 長岡 上越 磐越道 日東道 北陸道 北陸道 上信越道 WEBカメラの画像は、冬期間中すべて録画を行い、 *1 東日本高速道路(株) 新潟支社 路面分類による集計は、10区間延べ 110,590 時間の うち 82,570 時間の計測値となっている。 計測値について は、WEBカメラの不具合等により観測できなかった時 間が抜けたものとなっている。積雪及び凍結路面につい ては、同様にサンプル時間数が少なかったため、グラフ から外している 表-3 路面状態別平均速度(平成 22-25 年度) (H22-25) 図-2 平均速度出現割合(H25) 路面分類による集計は、10区間延べ 29,040 時間の 管内平均 平均速度 速度低下率(対乾燥) km/h % 乾燥 89.9 - 湿潤 80.9 90.0 黒シャーベット 61.0 67.8 白シャーベット 57.4 63.8 圧雪 46.4 51.6 うち 21,940 時間の計測値となっているが、 積雪及び凍結 路面については、サンプル時間数が少なかったため、グ ラフから外している。 乾燥路面から圧雪まで変化するに従い、平均測が低下 していくグラフ傾向は、平成25年単年度と同様な傾向 乾燥路面から圧雪まで、平均走行速度の分布が下がっ となっている。平均速度の値については、相対的に低く てきており、各路面の平均走行速度差については、乾燥 なっている。これについては、降雪状況などの条件を加 から湿潤にて約4km/hr、湿潤から黒シャーベット 味するなど、さらなる分析を行う予定である。 になると約16km/hrさらに低下。黒シャーベット ここで、各区間の平均走行速度は、路線により変化し から白シャーベットで約7km/hr、白シャーベット ていることから、路線ごとの平均速度について図―4の から圧雪で約5km/hrほど低下している。 とおり集計した。 ここで、平成22年度から平成25年度まで路面のモ H25 新潟支社管内 路面状況別 平均速度低下 ニタリング結果にトラカンのデータによる平均走行速度 を集計した結果を図-3に示す。 平均速度 km/h 100.0 90.0 80.0 70.0 60.0 乾燥 50.0 湿潤 黒シャーベット 40.0 白シャーベット 圧雪 30.0 圧雪 白シャーベット 黒シャーベット 湿潤 乾燥 図-4 路線別 平均速度低下(H25) 図-3 平均速度出現割合(H22-25) グラフ中の圧雪、白シャーベットの値が抜けていると ころについては、その場所において、同路面状態が計測 されていないことを示す。 H23 新潟支社管内 路面状況別 平均速度低下率 乾燥路面を 100%として 各路線については、それぞれの交通特性から平均速度 が大きく違っており、乾燥路面の状態で最低77.2k m/hから最大96.3km/hとなっている。 100% しかしながら、各路線の乾燥路面から圧雪までの平均 速度の推移を見ると、値はそれぞれ違うものの、乾燥路 95% 90% 85% 面の状態からの低下につては、同じような傾向を示して いるように見える。 80% 75% 70% そこで、乾燥路面の平均速度を100%とし、各路面 乾燥 65% 湿潤 60% 状態の平均速度を対比してみることとした。 黒シャーベット 白シャーベット 55% 圧雪 50% 圧雪 白シャーベット 黒シャーベット 湿潤 乾燥 図-7 路線別 平均速度低下率(H23) H22 新潟支社管内 路面状況別 平均速度低下率 140% 130% 120% 110% 100% 図-5 路線別 平均速度低下率(H25) 90% 80% 湿潤路面・黒シャーベットについては、概ね同程度の 低下率となっていることが分かった。白シャーベット・ 乾燥 湿潤 70% 黒シャーベット 60% 白シャーベット 圧雪 50% 圧雪は、路線によるバラつきが大きかった。 H24 新潟支社管内 路面状況別 平均速度低下率 乾燥路面を 100%として 圧雪 白シャーベット 黒シャーベット 湿潤 乾燥 図-8 路線別 平均速度低下率(H22) 100% 平成22、23、24年度についても同様の分析を行 95% った。平均速度の低下率は、平成25年度同様、平成2 90% 85% 3、24年度についても湿潤・黒シャーベットについて 80% は路線に関わらず概ね一様な傾向となった。 75% 70% 65% 乾燥 60% 黒シャーベット 湿潤 白シャーベット 55% 圧雪 50% 白シャーベット・圧雪路面について、同じく一定の傾 向は見られなかった。 また、平成22年度の集計結果では、平成25年度の ような傾向は見られなかった。 圧雪 白シャーベット 黒シャーベット 湿潤 乾燥 図-6 路線別 平均速度低下率(H24) 乾燥 出現回数 冬期間中の観測において、湿潤路面の出現回数が多く、 土樽ー湯沢 冬期路面状況別 平均速度出現回数 H25 湿潤 黒シャーベット 白シャーベット 圧雪 次いで乾燥路面、黒シャーベットとなっており白シャー 凍結 800 700 600 500 400 300 200 100 0 は、1回しか無い。路面状況ごとの平均速度の出現回数 は、各年度で相違していることが分かった。今後、降雪 状況との比較を行い、年度ごとの差異について分析を進 める予定である。また、気象状況に伴い、高速道路では 10~20 20~30 30~40 40~50 50~60 60~70 70~80 80~90 90~100 平均速度の範囲 乾燥 湿潤 黒シャーベット 白シャーベット 圧雪 路面状態と走行速度については分析した結果、路面悪 凍結 600 出現回数 いている。 4.考察 土樽ー湯沢 冬期路面状況別 平均速度出現回数 H24 走行速度規制を行っているため、これによる影響を調べ るため、規制の状況ごとの分類も進めていくことを予定 図-9 平均速度の出現回数(H25 土樽~湯沢) 化に伴い走行速度は低下し、特に雪氷路面になると大き 500 く低下している。ただし、年度ごとの差異や、白シャー 400 ベット・圧雪の傾向をさらに調べる必要があり、降雪状 300 況や速度規制の状況などを加味し、分析を進めていくこ 200 100 ととする。この取組をすすめ、雪氷路面出現による速度 0 10~20 20~30 30~40 40~50 50~60 60~70 70~80 80~90 90~100 平均速度の範囲 乾燥 湿潤 黒シャーベット 白シャーベット 圧雪 ば、雪氷作業による便益が比較でき、交通量に応じた「望 ましい路面状態」の設定できるようになることを期待し 土樽ー湯沢 冬期路面状況別 平均速度出現回数 H23 低下の関係を把握することで、冬期に高速道路を走行し た際の雪の影響による損失時間を算出できるようになれ 図-10 平均速度の出現回数(H24 土樽~湯沢) ている。また、目視による路面分類では、個人差による 凍結 700 判別のバラつきや、同じ分類の中でも上限・下限の差(例 えば白シャーベットにおける黒シャーベットに近い状態 600 出現回数 ベット、圧雪路面の出現回数は少なく、凍結路面の出現 500 から、圧雪に近い状態までの差)などの問題もあること 400 300 から、定量的な判断ができる指標に置換えることも検討 200 する必要がある。 100 0 10~20 20~30 30~40 40~50 50~60 60~70 70~80 80~90 90~100 平均速度の範囲 高速道の走行車の便益を考慮した「望ましい路面状態」 と、 事故など交通障害と関係した 「忌避すべき路面状態」 図-11 平均速度の出現回数(H23 土樽~湯沢) を把握し、より効率的で効果的な道路管理が行えるよう 期待している。 土樽ー湯沢 冬期路面状況別 平均速度出現回数 H22 乾燥 湿潤 黒シャーベット 白シャーベット 圧雪 凍結 600 出現回数 500 400 300 200 100 0 10~20 20~30 30~40 40~50 50~60 60~70 70~80 80~90 90~100 平均速度の範囲 図-12 平均速度の出現回数(H22 土樽~湯沢) 管内土樽~湯沢間の平均速度の出現回数を、平成22 年度から平成25年度まで、図-9から11に示す。