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ネタ消費から見る新たなクチコミ行動の解明

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ネタ消費から見る新たなクチコミ行動の解明
ネタ消費から見る新たなクチコミ行動の解明
〜商品の意味性が消費者意思決定プロセスに与える影響〜
はしがき
本年度、関東学生マーケティング大会のテーマは「学生視点のマーケティング」に決まった。
今後の日本の中心的存在となる我々学生に、現在の日本人の消費動向を踏まえ、学生視点の新た
なマーケティングの可能性を発見する機会を与えた場である、と解釈した。
そこで我々は、学生に焦点を当て、彼らの「仲間とつながりたい」という意識に着目した。近
年、ネットの普及やモバイル端末の発展により、仲間と遠く離れていても、常につながっている
ことは可能となった。そのつながりは、消費にも反映されており、つながりのための消費行動も
存在するほどである。そして我々はそのような現代の消費行動の中の「ネタ消費」を研究テーマ
として選んだ。
本研究は 6 月の中旬から始まり、我々4 人の班員で最優秀賞を目標として研究に励んできた。
日々のグループワークや夏の合宿を経て、本研究を一つの形にすることが出来た。しかし、自ら
の研究をより良くするために、幾多の壁にぶつかった。その度に 4 人で協力し、どんな時も笑顔
を絶やさず何とか乗り越えてきた。この 4 人だからこそ出来たことであろう。班員には感謝の気
持ちで一杯である。
そして最後に、本研究に協力して下さった多くの方々に感謝申し上げたい。我々の稚拙で冗長
なアンケート調査に苦言を呈しながらも最後まで答えてくれた友人、研究に賛同し快く POS デ
ータを提供して下さった当大学生協部、まるで自分の研究であるかのように親身になってアドバ
イスを下さった先輩方、そして研究が行き詰った際に何度もその進むべき方向に光を示して下さ
った我らの教授、全ての方々の存在がなければ本研究は成立し得なかった。改めて、本研究に携
わった全ての方々に感謝の辞を述べ、我々の半年間の研究の成果をここに示したい。
2013 年 11 月吉日
國友 俊輔 塩野入 澪 戸田 賢吾 山田 美幸
1
ネタ消費から見る新たなクチコミ行動の解明
〜商品の意味性が消費者意思決定プロセスに与える影響〜
目次
①——————はじめに
④——————結論
②——————序論
⑤——————今後の展望
1研究テーマ
2現状分析
⑥——————おわりに
(1) ネタ消費の概要と特徴
(2) 注目を集めるネタ消費
参考文献
(3) メディアとしてのクチコミ
補録——————アンケート調査票
(4) 購買を伴わないクチコミ
補録―――売上 POS データ
(5) クチコミの発信媒体
(6) 現状分析まとめ
3問題意識と問題設定
國友 俊輔
塩野入 澪
戸田 賢吾
山田 美幸
③——————本論
1既存研究レビュー
(1) 商品の「意味」に関する研究
(2) 意思決定プロセスに関する研究
(3) 従来の消費行動におけるクチコミ
(4) クチコミ伝播に寄与する先端層
(5) 既存研究まとめ
2仮説の提唱
(1) ネタ消費の意思決定プロセスの解明
(2) ネタ消費者の特性の解明
3仮説の検証
(1) 調査概要と調査内容
(2) 分析の手順と方法
(3) 分析結果
(4) 分析結果のまとめ
4新規提案
2
① ——————はじめに
② ——————序論
1.
「ネタ消費」という言葉をご存知だろうか。これは、
研究テーマ
SNS 上における話題を作るための消費を指しており、
他者とつながりたいという心理から生じる行動であ
話題を作るための行動をとる消費者は、商品を本来
る。その心理から、商品を「話題を作るモノ」と捉え、
それが持つ意味とは異なる「クチコミを作るモノ」と
消費していると考えられる。我々はこの新しい行動は、
いう意味で捉えている。本論では、この商品の捉え方
従来までの消費者行動研究において想定されてこな
の違いに焦点を当て、意思決定プロセスを探っていく。
かったと考え、ネタ消費に着目した。
また、ネタ消費を行う人の特性を明らかにし、的確な
インターネットの普及に伴い、消費者の情報源が多
アプローチを可能にすることを目指す。
様化した現代において、企業が的確な広告戦略を打つ
2.
ことは難しくなっている。そこで、情報発信する消費
現状分析
者を捉えることで、現状を打開できないだろうかと考
(1)
えた。もちろん企業にとっては、売上に直接関わる購
買こそが重要である。しかし、多くの消費者に認知さ
ネタ消費の概要と特徴
本節では、ネタ消費の概念と具体例、その特徴につ
せるという点で、広告の役割を担うクチコミもまた重
いて述べる。
要なのである。
野村総合研究所によると、ネタ消費とは、
「SNS 上
ネタ消費を行う消費者は、話題を作るために行動し
でコミュニケーションやアピールのために、面白いも
ていることから、単純に必要性のあるものを購買する
のやこだわりのあるものを消費すること」と定義され
消費者よりも、情報発信に積極的である。ここから、
ている。つまり、話題を作るための消費活動であると
情報発信を行うネタ消費をする人々は、企業が着目す
されており、商品を「クチコミを作るモノ」として捉
べき存在であると考えた。
えた消費者による行動であると言えるだろう。このと
しかしながら、先に述べたような広告という観点か
き消費者は、ネタ消費の対象とした商品を、それ自体
らネタ消費の有用性を見出すのであれば、現存の概念
が本来持つ意味とは異なる捉え方をしているのであ
では、その効果全てを捉えきれない。話題を作るため
る。
の行動は、もっと幅広く行われているのである。その
ネタ消費の対象となる商品として、同社はお菓子・
ため、我々はネタ消費と捉える範囲を拡大し、『商品
お土産などの限定品やコモディティの高い製品を挙
を「クチコミを作るモノ」と捉えた消費者の行動』と
げている。さらに財だけではなく、英会話教室やレジ
定義した。その上で、この拡大したネタ消費を今回の
ャー、コンテンツといったサービスもネタ消費の対象
研究対象とする。なお、その拡大に至った詳細な経緯
となる、としている(図表 1)
。このようにネタ消費さ
は、現状分析を通して述べていく。
れる商品のタイプは多岐に亘っているのである。
3
■図表——————1
紙面では、ヒット商品のキーワードとしても「ネタ消
体験教室におけるネタ消費例
費」が登場している。
また、企業側がネタ消費されることを意図した商品
も登場している。例えば、イトウ製菓より発売された
「スイカクッキー」である。この商品のプレスリリー
スでは、「ネタ消費市場が拡大している中で、お客様
からも意外な味が注目されています。 そこで、いつ
もの売場に新鮮さと驚きを起こさせ、購買意欲を喚起
することを狙い今回すいかを選びました。」と述べら
れていた。これは明らかにネタ消費を狙った商品であ
る。
このようにネタ消費は、企業からの注目を集め、ヒ
(出典:Twitter 検索機能
9 月 10 日アクセス)
ットを生む一つのキーワードとなっている。このこと
から、ネタ消費は注目に値する行動であることが示さ
次にネタ消費の特徴について、二点述べる。
れた。
一点目は、情報発信に積極的な人が行う傾向にある、
ということである。これは、2012 年 5 月 30 日の日本
(3)
経済新聞朝刊にて述べられていた。
メディアとしてのクチコミ
ここまで、ネタ消費の概要と市場の大きさについて
二点目は、他者とのコミュニケーションを意識して
述べてきた。本節では、ネタ消費に伴う行動でもある
いるという特徴である。これは、電通総合研究所より
「クチコミ」がどれほどの影響力を持つのか、
「広告」
見出された「若者の総交際費化」から示すことができ
という観点から見ていく。
『宣伝会議』2013 年 2 月号に掲載されている特集、
る。「若者の総交際費化」とは、若者が多くの消費を
他者とのコミュニケーションを意識して行うように
「ネット上のクチコミ量と売上の関係」1では、商品の
なっていることを指し、その一例としてネタ消費が取
売上は、さまざまな要素の複合効果であるため、クチ
り上げられている。ここから、ネタ消費の特徴として、
コミの力だけでお金をかけずに、売上が増えたといっ
他者とのコミュニケーションを意識した行動である、
たストーリーは幻想であり、また、認知効果や消費者
ということが導き出せる。
へのリーチを考えれば TVCM の影響は大きい、と述
以上、ネタ消費が、商品を「クチコミを作るモノ」
べられていた。しかし同誌は、クチコミが売上に与え
と捉えた消費者による行動であることを示した。また
る影響についても述べている。一点目に、プロモーシ
その特徴として、情報発信に積極的な消費者が行う傾
ョンをしていない商品でも、ランキング形式のクチコ
向にあること、他者を意識した行動であることを明ら
ミサイトにおいて上位に入ったことでヒットしたケ
かにした。
ースが多く存在する、という事例が挙げられている。
二点目に、家電のように流行の移り変わりが激しい商
(2)
注目を集めるネタ消費
品や、競争が激しい低価格商品は、売上とクチコミに
2012 年 12 月 3 日の日本経済流通新聞によると、ネ
相関が見られるという現状が挙げられている。また、
タ消費の経済効果は 4600 億円にのぼると推定されて
1 ホットリンク代表取締役社長内山幸樹、アイスタイル
@cosme 事業戦略本部本部長浜田健作、東京工業大学准教授
高安美佐子ら三者による有識者座談会を掲載。
いる。同紙では、ネタ消費によってヒットが生まれた
事例が度々取り上げられており、2010 年 4 月 14 日の
4
クチコミを行うユーザーは今後企業の資産になるた
■図表——————2
め、長い目で見たコミュニケーション施策を考えるべ
広告の信頼度
きである、とも述べていた。
また、ニールセン・カンパニー合同会社が 2013 年
9 月 19 日に発表した『広告の信頼度』調査結果によ
ると、テレビ広告の信頼度は 62%、新聞広告は 63%
である中、
「クチコミによる推奨」は 79%であった。
マスメディアへの信頼も依然として高いが、消費者主
導のクチコミがそれらの媒体を上回る信頼度を有す
ることが見て取れる(図表 2)
。
さらに、
『Advertising Age』2が、2006 年に一番活躍
(出典:ニールセン・カンパニー合同会社による調査)
した広告代理店として表彰したのは、どこの広告代理
(4)
店でもなく、
「消費者」であった。つまり、人と人と
の間に生まれる話題、すなわちクチコミの影響力が高
購買を伴わないクチコミ
前節では、クチコミの広告としての重要性を明ら
く評価されていることが示された。
かにした。本節では、そのクチコミが実際にどのよ
クチコミの重要性は、話題となってヒットが生まれ
うに発信されているのかを探った。すると、二つの
た商品からも示すことができる。例えば、わずか 3 日
タイプのクチコミが見受けられた。一方は、
「購買を
間で販売休止となった「ガリガリ君リッチ
コーンポ
した後に発信されるタイプ」であり、ネタ消費に伴
タージュ」が挙げられる。PR 方法について製造元で
うクチコミもこれに当てはまる。もう一方は、
「購買
ある赤城乳業に問い合わせたところ、マスメディアに
をせずに、発信だけが行われるタイプ」である。
よる広告は一切行わず、ニュースリリースの発表と、
後者の存在は、発売前の情報公開を受けたクチコ
Twitter 等の SNS を活用している、との回答が得られ
ミによって明確に示すことができる。「ガリガリ君
た。しかしながら、この商品の存在はクチコミによっ
クレアおばさんのシチュー味」についてのクチコミ
てインターネット上で急速に広まり、まとめサイトや
を見てみる。この商品は 2013 年 10 月 8 日に情報が
アレンジレシピ集などが登場するほどに話題となっ
公開され、発売は 10 月 29 日であった。Yahoo!リ
た。
アルタイム検索を行ったところ、10 月 8 日の時点で
以上、クチコミの影響力や信頼度の高さ、話題が生
「ガリガリ君
クレアおばさんのシチュー味」につ
んだヒットの事例を示した。これは、クチコミが広告
いて、8536 件ものクチコミがされていた(図表 3,4)
。
の役割を担うことを示めしている。そのため、クチコ
ここから、企業から直接情報を得る消費者とは別
ミに積極的であるネタ消費を行う人を特定し、ネタ消
に、これらのクチコミによって商品を知る消費者も
費を促進させるようなマーケティング活動を行うこ
多く存在すると考えた。ここに、購買を伴わないク
とは、企業にとって重要であると言える。
チコミにも広告としての重要性を見出すことができ
るだろう。
話題になると捉えたモノについて行われていると
いう観点で見れば、購買を伴わないクチコミには、
2 『Advertising Age』は、アメリカの有名な広告業界誌で
ある。毎年その年に一番活躍した広告代理店を「エージェン
シー・オブ・ザ・イヤー」として選出、表彰している。2007
年 1 月 8 日付けの紙面に掲載。
ネタ消費に類似した行動も含まれると考えられる。
しかしながら、購買を介していないため、野村総合
研究所の定義したネタ消費には当てはまらない。
5
我々は、クチコミが広告の役割を担うことを考慮
(5)
し、購買を伴わないクチコミをする消費者も研究対
象として捉えるべき存在であると考えた。
クチコミ発信媒体
ここまで、クチコミの持つ影響力や信頼性の高さ、
購買を伴わないクチコミの存在を示した。本節では、
■図表——————3
消費者がクチコミを発信する際に、どのような媒体が
「ガリガリ君 シチュー味」のクチコミ件数
利用されているのかについて言及する。
株式会社ジャストシステムが 2011 年に行った調査
によると、購入商品のクチコミ発信手段として最も多
いのは、口頭(電話・対面)で 47.4%であった。また、
メールや商品を購入したサイト内でクチコミを発信
する人も多く、SNS などのツール以外にもあらゆる媒
体で行われていることが示されている(図表 5)
。
ここから我々は、ネタ消費におけるクチコミも、
(Yahoo!リアルタイム検索 10 月 27 日)
SNS 上だけではなくあらゆる媒体を通じて行われて
■図表——————4
いると考えた。
「ガリガリ君 シチュー味」のクチコミ
(Yahoo!リアルタイム検索 10 月 27 日)
6
■図表——————5
クチコミ発信手段
(出典:株式会社ジャストシステム
(6)
現状分析まとめ
2012)
て行われていると考えられるため、それらの存在も考
以上、ネタ消費の概要、それに伴い発生するクチコ
慮すべきである。そこで我々は、ネタ消費とする範囲
を拡大し、購買を伴わないクチコミや SNS 上以外で
ミの影響力や発信媒体について述べてきた。
ネタ消費とは SNS 上でクチコミを行うための消費
のクチコミも研究対象として捉えることとした。
であり、それを行う消費者は、対象となる商品を、本
3.
来の商品自体が持つ意味とは異なる捉え方をしてい
問題意識と問題設定
ることがわかった。また、クチコミが、数ある情報源
の中で信頼性が高いとされていることや、大きな影響
現状分析で述べたように、ネタ消費は、話題を作る
力を持っていることも明らかとなった。ここから、ク
ための消費であり、それを行う消費者は、商品を「ク
チコミに積極的であるネタ消費を行う人が、企業にと
チコミを作るモノ」と捉えている。このように、本来
って重要な存在であることを示した。
持つ属性や機能とは異なる意味で商品を捉えている
しかし、クチコミが広告の役割を担うことを考慮す
消費者は、従来までの消費者行動研究において想定さ
れば、ネタ消費を現存の定義で探っていくだけでは不
れていなかったのではないかと考えた。
十分である。先に述べた購買を伴わずにクチコミをす
この問題意識とネタ消費の範囲を拡大したことか
る消費者もまた、企業が捉えるべき存在であろう。ま
ら、これ以降ネタ消費を『商品を「クチコミを作るモ
た、SNS 上以外でも、ネタ消費は様々な媒体を通じ
ノ」と捉えた消費者の行動』と再定義し、その解明を
7
研究目的とした。
によって商品を捉える、
後者の
「意味」
に当てはまる。
なお本研究において、ネタ消費を行う消費者、つま
このように、消費者は商品に対して多様な「意味」
り『商品を「クチコミを作るモノ」と捉えた消費者』
を抱いており、松下[1999]は、その「意味」を消費
を「ネタ消費者」とする。
者情報処理の理論構成に取り込む必要がある、として
いる。しかし杉本[1993]は、従来の消費者行動研究
における情報処理アプローチ3では、比較的明示的な
③ ——————本論
属性やベネフィットのみが商品の「意味」として捉え
られてきた、と指摘している。ここから、属性的な「意
1.
既存研究レビュー
味」ではなく、主観的な解釈による「意味」で商品を
捉えているネタ消費者への、情報処理アプローチによ
前章でも述べた通り、我々の研究目的は、ネタ消費
る研究の必要性が見出せるであろう。
の解明である。本章では、消費者が捉える商品の「意
では、この商品の「意味」は消費者の行動にどのよ
味」が従来までと異なるという点から、消費者行動研
うな影響を与えるのだろうか。長尾[2000]は、商品
究における商品の「意味」についてレビューする。次
の「意味」が消費者の意思決定過程を規定する一因と
に、ネタ消費者によるクチコミと従来のクチコミの違
なる、と述べている。さらに松下[1999]は、
「意味」
いを探るため、既存研究における「クチコミ」につい
は、購買環境の情報処理プロセスに対して影響を与え
て触れる。そして、そのクチコミを伝播するのに大き
るものとして位置づけられる、としている。これらの
な役割を担う存在である「オピニオン・リーダー」
、
ことから、商品の「意味」は意思決定プロセスに影響
「マーケットメイブン」についても概観する。
を与えることがわかる。
ここから、商品を「クチコミを作るモノ」という意
(1)
商品の「意味」に関する研究
味で捉えているネタ消費者と、従来の研究において想
ネタ消費とは先に述べたように、商品を「クチコ
定されていた消費者の意思決定プロセスが異なると
ミを作るモノ」と捉えた消費者の行動である。この
考えられる。我々はこの考えのもと、両者の意思決定
商品の捉え方、つまり消費者行動研究における商品
プロセスの違いを探ることとした。
の持つ「意味」と、その「意味」が消費者の行動に
(2)
及ぼす影響についてレビューした。
意思決定プロセスに関する研究
小林[1998]は、商品の「意味」には、属性や価格、
ネタ消費を行う消費者の意思決定プロセスを探る
機能などの商品に直接関わる「意味」と、消費者が主
にあたって、我々は秋山ら[2004]によって提唱され
観的な解釈基準で捉える「意味」が存在する、として
た、AISAS®に着目した。AISAS とは、インターネ
いる。前者は、本研究で述べてきた、商品本来の持つ
ット時代の「検索」
「共有」行動を反映したマーケテ
「意味」を指し、例えば自動車を「移動する手段」と
ィングモデルであり、消費者の購買行動にインターネ
捉えている場合がこれに当たる。それに対し後者は、
ット上の情報や消費者によるクチコミが大きな影響
消費者の主観的な解釈によって付加される「意味」で
3 南[2002]によると、情報処理アプローチの対象は、意思
決定プロセスの研究が中心とされていた。情報処理アプロー
チは情報心理学あるいは認知心理学を基礎とし、
「行動の説
明」をすることを目的としている。
あり、自動車を「社会的地位を示すモノ」と捉えてい
る場合である。ネタ消費における商品の意味は、
「ク
チコミを作るモノ」であった。これは、主観的な解釈
8
を及ぼすことを表している。その中身は、Attention
については、清水[2013]が実証研究を行い、その有
(認知)→Interest(興味)→Search(探索)→Action
用性を確かめている。その結果から、AISAS にはイ
(行動)→Share(共有)である。
ンターネットが多く利用される時代の包括的消費者
我々が AISAS に着目した理由は、ネタ消費とは、
意思決定モデルのベースとしての価値がある、と結論
商品を「クチコミをするモノ」と捉えた消費者による
付けている。
行動であるため、大前提として、情報共有のプロセス
以上より、AISAS は共有行動までのプロセスを含
を含む必要があると考えたためである。
み、消費者行動研究における有用性が確かめられてい
この点、過去の消費者行動研究における意思決定プ
るモデルであることがわかった。さらに、ネタ消費と
ロセスである刺激—反応型と情報処理型は、購買まで
従来の消費における意思決定プロセスを比較するこ
の意思決定のみをモデル化したものであり、情報共有
とを考慮すると、購買段階についても言及している
までを捉えていない。刺激—反応型とは、外部の刺激
AISAS モデルを用いることは妥当であるだろう。
に反応して購買に至る消費者を想定したモデルであ
り、情報処理型とは、さまざまな状況下における消費
(3)
者の購買に至るまでの意思決定の違いを、情報処理能
従来の消費行動におけるクチコミ
ネタ消費に伴い発生するクチコミは、購買を伴わな
力の違いによって説明したモデルである。清水[2013]
い場合もあるため、従来の研究において想定されてい
は、ネット系メディアが発達している現在、購入後の
るクチコミとは異なると考えられる。そこで本節では、
他人への影響について言及していないこれらのモデ
従来の消費者行動におけるクチコミの発生について
ルで、消費者の意思決定プロセスを捉えていくことは
レビューする。
不十分であると述べている。その上で、現在までの消
Arndt[1967]によると、クチコミとは「受け手と
費者行動研究において、この購買後の情報発信行動ま
話し手の間で行われる、人から人へのコミュニケーシ
でを言及した包括的モデルは存在しない、と指摘して
ョンのことで、ブランド、製品、サービスについて非
いる。
商業的と受け手に認識されるもの」と定義されている。
それに対し、情報共有を含むモデルとして、広告メ
中島[2011]によると、クチコミは、満足もしくは
ッセージの到達という観点から発展した AISAS や
不満足の評価を伝えることにより発生する、とされて
SIPS というモデルが存在する。AISAS は、購買まで
いる。また、清水[2013]より、情報共有が行われる
の過程を言及した情報処理型の包括的モデルに、情報
には商品満足が必要になる、とされている。佐藤[2001]
発信を付け加えた形になっている。一方 SIPS は、
は、満足とは、消費者の購買体験を基にして形成され
Sympathize(共感)→Identify(確認)→Participate
る態度もしくは感情である、としているため、購買後
(参加)→Share&Spread(共有・拡散)というプロ
のプロセスと言える。これらのことから、従来の研究
セスであり、情報共有までを考慮しているが、購買は
において、クチコミとは購買後の評価に付随する行動
規定していない。本研究では、ネタ消費との比較とし
とされていることがわかる。
て従来の消費についても探っていくため、購買を含ま
しかし、ネタ消費におけるクチコミは、購買後の評
ないこのモデルを用いることは適切でないと考えた。
価に付随する行動だけでは捉えきれない。購買前から
また、濱岡・里村[2009]は、情報共有を含んだこ
クチコミを行うことを意識している場合や、もはや購
れらのモデルを実証した例は極めて少なく、確立され
買を伴わずにクチコミを行う場合もある。このことか
たモデルとはいえないとしている。しかし、AISAS
ら、ネタ消費におけるクチコミは、従来想定されてい
9
たクチコミとは発生のプロセスが異なると考えられ
トメイブンの浸透率が高いと、新製品の生存率が高い
る。
という予測が成り立つことも発見されている。これら
のことから、マーケットメイブンは企業にとってもタ
(4)
クチコミ伝播に寄与する先端層
ーゲットとすべき重要な存在であると言えるだろう。
現状分析で述べたように、ネタ消費者は、情報発信
また、Clark and Goldsmith[2005]は、マーケット
に積極的な存在である。そこで本節では、積極的な情
メイブン度4に影響を及ぼす心理的要因について検証
報発信により、クチコミ伝播に貢献する存在である
している。その結果、自尊心の強さ、順応性の高さ、
「オピニオン・リーダー」と「マーケットメイブン」
ユニークネス欲求の高さ、対人関係からの影響の受け
についてレビューしていく。
やすさがマーケットメイブン度に影響を与えている
ことが明らかとなった。ここから、マーケットメイブ
i. オピニオン・リーダーの定義と特徴
ンにおいても、他者との関係を意識している傾向があ
オピニオン・リーダーの存在認識は、Katz and
ることが示めされた。
Lazarsfeld[1955]による「コミュニケーションの2
段階流れ仮説」に端を発した。富田[2005]によると、
ここまで、情報発信を積極的に行い、クチコミ伝播
オピニオン・リーダーとは、ある特定の分野において
に寄与する存在であるオピニオン・リーダー、マーケ
強い関心と豊富な知識を持ち、消費者の購買等に影響
ットメイブンのそれぞれの定義と特徴について見て
を与える意見を述べる人たちである、と定義されてい
きた。ここから、オピニオン・リーダーとマーケット
る。Antonides and Raaji[1998]は、オピニオン・
メイブンが他者を意識した行動をとることが明らか
リーダーは積極的に情報発信を行う人物であるとし、
となった。現状分析で示したように、ネタ消費の特徴
その動機として、関与、自己高揚、愛他心を挙げてい
として、他者とのコミュニケーションを意識した行動
る。このうち自己高揚とは、他者から注目を集め、自
が挙げられており、ここにオピニオン・リーダーやマ
己を肯定的に示したいという動機である。ここから、
ーケットメイブンとの関連性が見出せるだろう。
オピニオン・リーダーが他者を意識した情報発信を行
既述のように、オピニオン・リーダーとマーケット
うことがわかる。
メイブンは、他者の態度や意思決定に影響を及ぼし得
ることが明らかにされており、マーケティング上注目
ii. マーケットメイブンの定義と特徴
すべき存在であると考えられる。井上[2012]は、と
オピニオン・リーダーに対して、比較的新しい考え
りわけ、多様な情報に精通し、他者と共有する傾向に
方がマーケットメイブンである。Feick and Price
あるマーケットメイブンは、近年マーケティング上の
[1987]より、市場に深く関与し、他の消費者から
貢献に期待が高まっている、と述べている。
市場情報を提供してくれる重要な情報源であると認
このことから、ネタ消費者がこれらの特性を持ち合
識されている消費者である、と定義されている。彼ら
わせていることが明らかにされれば、彼らがマーケテ
は、情報や知識の幅が広く、製品カテゴリー横断的に
市場全体についての知識を持っている。井上[2012]
4 「マーケットメイブン度」とは、市場全体について知っ
ている程度と他の消費者にそれらを伝達する程度のことで
ある。また「自尊心の強さ」とは、自己に対してどの程度肯
定的な態度を有しているか、
「順応性の高さ」とは、協調性
や柔軟性、
「ユニークネス欲求の高さ」とは、他者と異なっ
ていたいという願望、
「対人関係からの影響の受けやすさ」
とは、他者の目や意見が気になる程度のことである。
は、他の消費者に対して潜在的な影響力を持ち、積極
的にクチコミをして情報を拡散する、という特徴があ
るとしている。さらに、寺本[2011]より、マーケッ
10
2.
ィング上有用な存在になる、と言えるであろう。
仮説の提唱
本章ではネタ消費の解明を目標とし、消費者の意思
(5)
既存研究まとめ
決定プロセスや特性に焦点を当て、仮説を提唱してい
最後に、ここまでの既存研究レビューより明らかと
く。
なったことを総括する。
(1)
(1)では、消費者行動研究における商品の「意味」
ネタ消費の意思決定プロセスの解明
についてレビューした。ここから、ネタ消費における
既存研究レビューより、消費者が商品に対して持つ
商品の「意味」が、これまでの意思決定プロセスの研
「意味」の差異によって、その意思決定プロセスも異
究では想定されていないものであることを明らかに
なることが判明した。そこから、ネタ消費における意
した。さらに、商品の「意味」は意思決定プロセスに
思決定プロセスは、商品の価値そのものを「意味」と
影響を与えるため、従来の消費とネタ消費に違いが見
捉えていた従来の意思決定プロセスとは異なると考
られる、と考えた。
えられる。本章では、この意識のもとにネタ消費の意
(2)では、これまでの消費者意思決定プロセスに
思決定プロセスを解明していく。分析を進めるにあた
関する研究を概観した。これより、情報共有のプロセ
って、先に示した有用性から、AISAS を用いること
スを含み、実証研究でその有用性も確かめられている
とする。
AISAS モデルを次章の検証で用いることとした。
仮説 1 ネタ消費における意思決定プロセスは、従来
(3)でのクチコミの発生に関するレビューから、
ネタ消費におけるクチコミが従来までのクチコミと
の意思決定プロセスとは異なる。
異なったプロセスから発生することを示した。
最後に(4)では、クチコミ伝播に大きな役割を果
(2)
ネタ消費者の特性の解明
たすオピニオン・リーダーとマーケットメイブンの定
ネタ消費の解明として、次にネタ消費者の特性を探
義と特徴についてのレビューから、これらの先端層と
る。前章までで述べてきたように、ネタ消費とは商品
ネタ消費者との関連性を見出した。
を「クチコミを作るモノ」と捉えた行動であり、それ
以上より、ネタ消費者は、どのような意思決定プロ
を行う消費者は情報発信に積極的であると言える。ま
セスを辿るのか、そして、従来の研究で示されている
た、他者とつながりたいという考えから登場したネタ
オピニオン・リーダーやマーケットメイブンという消
消費者は、既存研究レビューより、同様に他者を意識
費者特性と関連しているのか、という二つの命題と、
した行動をとるオピニオン・リーダーやマーケットメ
それを検証する意義を導き出した。
イブンの特性を有すると考えた。そこで本節において
は、このような考えに基づいて、探索的ではあるが、
ネタ消費者が先端層であるかを確かめることとする。
以下、仮説を提唱する。
仮説 2—1 ネタ消費者はオピニオン・リーダーである
仮説 2—2 ネタ消費者はマーケットメイブンである
11
3.
仮説の検証
本アンケート調査の概要
本章では、上述した仮説について、調査・分析を通
して検証していく。
(1)

調査概要と調査内容
調査概要
本研究では、プレアンケート調査を 2 回、さらに本
調査方法
アンケート用紙
調査対象
大学生、大学院生
サンプル数
606 人
有効回答数
589 人
調査期間
10 月 2 日~10 月 7 日
対象財
市販のアイスクリーム
アンケート調査を 1 回行った。プレアンケートの 1
回目では、ネタ消費されていそうな商品を自由記述形

式によって調査した。さらに 2 回目で、具体的な商品
Ⅰ.プレアンケート調査について
の種類を自由記述形式によって調査し、対象財を選択
調査内容
2 回実施したプレアンケートの内容を述べる。1 回
した。
本アンケート調査は、
アンケート用紙を作成し、
目では、本研究の対象である学生に対して、ネタ消費
回答を集めた。調査対象は大学生や大学院生であり、
の定義を説明した上で「実際にネタ消費されていそう
対象財に対する意思決定に至るまでのプロセスを尋
な商品」を投影法による自由記述にて調査した。この
ねる質問を中心にアンケートを行った。調査期間は、
調査の結果として、ネタ消費される商品の特徴の一つ
10 月 2 日~10 月 7 日の 6 日間である。また得られた
としてアイスカテゴリーに見られることが判明した
有効回答数は 589 人となった。なお、補録としてア
(図表 7)。そこから、対象財として、得票数の多か
ンケート内容を掲載する。以下、プレアンケート調査
った「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ」、ハー
と本アンケート調査の概要をまとめる(図表 6)
。
ゲンダッツの新作を選定することにする。しかし、ハ
ーゲンダッツの新作に関しては味が多種存在するた
■図表―――6
め、
「ハーゲンダッツの新作」と規定しても人によっ
1 回目のプレアンケート調査の概要
て、また時期によってその想像する対象が異なる。多
調査方法
Web アンケート
くの人が連想するハーゲンダッツの新作を抽出する
調査対象
大学生 41 人
ことによって対象財の具体性が増すと考えられる。そ
調査期間
9 月 16 日~9 月 17 日
こで、2 回目のプレアンケートでは「ハーゲンダッツ
調査目的
対象財の候補導出
の新作として連想する味」を調査した。学生 35 人に
質問内容
ネタ消費の概念を提示し、それに当
調査したところ、パンプキンが最も票数が多いという
てはまる商品を自由記述
結果となった(図表 8)
。以上 2 回のプレアンケート
2 回目のプレアンケート調査の概要
を踏まえて、本アンケートにおける対象財を、
「ガリ
調査方法
Web アンケート
ガリ君リッチ コーンポタージュ
(以下、
ガリガリ君)
」
調査対象
大学生 35 人
と「ハーゲンダッツ パンプキン(以下、ハーゲンダ
調査期間
9 月 30 日~10 月 1 日
ッツ)
」と設定することにする。
調査目的
対象財の設定
質問内容
ハーゲンダッツの新作として連想す
る味を自由記述
12
■図表―――7
尋ね、もしその商品を知らない場合は、プロセスを分
1 回目のプレアンケートの結果
析する対象とはしないことにした。併せて、S(共有)
商品
ガリガリ君リッチ コンポタージュ
をした場合に、その段階を尋ねる質問を作ることによ
票数
17
キャラクター肉まん
ハーゲンダッツの新作
ハリーポッター 百味ビーンズ
ジンギスカンキャラメル
うまい棒キャンディ
ペプシしそ
ファイナルファンタジーXII ポーション
オランジーナ、その他3商品
って、AISAS の順番の変更も確認できるようにして
13
11
いる。またこのパートでは同時に、回答者がその商品
9
に持つ「意味」をも探った。I(興味)を持った場合
6
に、その理由を尋ねることにより、商品に対する「意
味」が判明すると考えたためである。
4
3
1
第 3 部では、
回答者の新商品売上予測力を測る設問
を準備した。ネタ消費者とそれ以外の消費者において、
違いを見出す指標の一つとして売上予測力を用いる
■図表―――8
ことを目的とする。なお、実際の売上データとして、
2 回目のプレアンケートの結果
当大学生協部にて取り扱うお菓子の新商品 4 種類の
味
パンプキン
POS データを使用した。設問では、新商品の名前と
票数
13
抹茶トリュフ
チョコレートブラウニー
アップルパイ
紫いも
コーヒーミルク
ティラミス
クリーミーミント、その他4商品
モンブラン、その他7商品
ガトーショコラ、その他16商品
写真、値段を明記し、売れると思う順番に回答者が自
8
7
由に並び替える形式を採用した。
第 4 部では、
ネタ消費される商品の特性を明らかに
6
する目的で、
「クチコミしたくなる商品」を自由記述
4
形式で調査した。自由記述形式にすることで回答者の
3
2
1
バイアスを極力抑え、より一般的なネタ消費したい商
品のイメージを見つける。
(2)
Ⅱ.本アンケート調査について
本研究におけるアンケートは 4 部構成である。
分析の手順と方法
本節では、分析の大まかな手順と、分析方法を述べ
第 1 部では、回答者のデモグラフィック要因と、メ
る。
ディア利用や情報に対する意識、人付き合いの仕方な
Ⅰ.対象財の特徴
どのライフスタイル要因についての設問を作成した。
方法:度数分布
情報に対する意識としては、Feick & Price[1987]の
ここでは、
本研究における対象財の、
「美味しそう」
マーケットメイブン尺度、King & Summers[1970]
や「新しい」といった商品の特徴を探る。本アンケー
のオピニオン・リーダー尺度を用いた。このパートの
ト調査による回答から、各財がどのような特徴を持つ
役割は、回答者の特性を探ることである。
のかを示す。
第 2 部では、
プレアンケート調査で設定した対象財
Ⅱ.ネタ消費の意思決定プロセスの解明
を用いて、ガリガリ君及びハーゲンダッツの意思決定
方法:カイ二乗検定
プロセスを、AISAS のプロセスに従って設問を作成
次にネタ消費における意思決定プロセスを明らか
した。ここでは、A(認知)の存在が無ければ、その
にする。分析を進めるにあたって、ネタ消費者とそれ
後のプロセスへは進まないと捉え、まず認知の有無を
以外を分ける際の指標として、商品に対する「意味」
13
の違いに着目し、セグメント分けを行う。商品を認知
タ消費者へのアクセス性を高める。また、アクセス性
し、さらに興味を持った回答者にその興味を持った理
の一つとして、ネタ消費したいと思う商品の特性につ
由を尋ねることで、商品に対する「意味」が判明する
いてテキストマイニングを用いて抽出する。
と捉え、これを用いる(本アンケートの設問 20—(1)
、
テキストマイニングとは、自由回答の中からキーワ
設問 22—(1)参照)
。なお、商品の「意味」は食べる
ードを抽出する手法である。大量のテキストデータか
モノとクチコミを作るモノの 2 つに大別され、
後者を
ら、消費者の潜在的ニーズを発見することに有用だと
ネタ消費と指す。また、2.(2)にて立案した仮説を
考えられている。本研究では、アンケート調査で収集
検証するにあたって、分析の流れからいくつかの小仮
した、ネタ消費したい商品の自由記述を用いてテキス
説を立案していく。
トマイニングを行う。キーワードのカテゴリー化では、
Ⅲ.ネタ消費者の特性―先端層
商品の特徴を示す具体的なワードを中心に分類を行
方法:因子分析、信頼性分析、t 検定
った。
既存研究で述べたように、オピニオン・リーダーと
マーケットメイブンの特徴にはネタ消費者と関連す
なお、上記の手順では全て、株式会社 IBM の統計
る点が見られた。そこで、回答者がどの程度先端層に
パッケージ「IBM SPSS Statistics 20」を使用する。
当てはまるのかを測定する。分析にあたって、Feick
ただし、手順Ⅳについては、テキストマイニングを行
& Price[1987]のマーケットメイブン尺度 5 項目 と
うため、併せて、株式会社 IBM の統計パッケージ
King & Summers[1970]のオピニオン・リーダー尺
「IBM SPSS Text Analytics for Surveys Japanese
度 5 項目それぞれの因子を抽出し、
因子得点より独自
4」も使用した。
のマーケットメイブン度、オピニオン・リーダー度を
(3)
作成する。また、信頼性分析よりα係数を算出し、信
頼性の尺度として用いた。分類された回答者に対し、
分析結果
ここでは、前述した分析の検証結果を述べる。順番
「ネタ消費した」というダミー変数を用いて t 検定を
は先に示した通りに提示していく。
行い、
平均値に有意差を見出すことで仮説 2 の検証と
したい。
Ⅰ.対象財の特徴
Ⅳ.ネタ消費者の特性―アクセス性の確保
対象財として、先に述べた手順で、ガリガリ君、ハ
ーゲンダッツの 2 つを選定した。ここでは、その 2
方法:判別分析、二項ロジスティック回帰分析、テ
キストマイニング、カイ二乗検定
財の特徴を明らかにするため、消費者の興味を持った
マーケティングにおいて、消費者へのアクセス性を
きっかけを商品ごとに度数で見ることで、それぞれの
高めることは、具体的なインプリケーションへとつな
商品の捉えられ方を明らかにする。本アンケート調査
がるため、非常に大切である。そこで、ネタ消費者の
における質問で、商品を認知して興味がある場合に行
特性を明らかにしていく。消費者の解明にあたっては、
った設問から導き出した。質問では、「○○だから×
デモグラフィック要因や人付き合いに対する態度・利
×したい」という項目を作成し、ここから消費者が持
用メディア・SNS の利用状況といったライフスタイ
つ商品に対する「意味」(××の部分)と、さらに
ル要因を基に探索的に分析を行う。分析には判別分析、
その「意味」を持ったきっかけ(○○の部分)を明ら
二項ロジスティック回帰分析といった独立変数への
かにした。このきっかけの部分が、消費者が捉える商
影響要素を抽出する分析群を用いることによって、ネ
品の特徴だと考える。
具体的に 2 財の特徴を見てみる。
14
図表 9 で示す通り、
ガリガリ君には消費者が興味を持
ノ』
、
「教えたい」
「話のネタにしたい」という意識か
つきっかけとして、「おもしろい」、「話のネタにし
らなる『クチコミを作るモノ』の 2 つのセグメントに
たい」といった要素が存在するとわかる。一方、ハー
分けて分析を行う。図表 10,11 は財および「意味」
ゲンダッツは「おいしそう」、「新商品・限定品」と
の違いに認知興味、探索、購買、共有の各段階を考慮
いう傾向が見られた。これらのことから、対象財 2
し生成した 16 つのダミー変数の標準偏差を示す。標
財のそれぞれの特徴と、同じネタ消費をされる商品で
準偏差は分散の平方根であるため、データ数の異なる
あってもそのネタ消費されるきっかけが異なること
変数の比較に適当であると考えた。なお、清水[2013]
が示された。
の AISAS の実証研究において、
AISAS 理論では認知
と興味の具体的な線引きがなく、それらを同視化して
■図表―――9
いることから、同様に認知と興味を同視化し分析を進
対象財の特性
める。これによると、財と「意味」の違いが統計量に
大きな影響を与えていることが読み取れる。特にハー
ゲンダッツの探索及び、クチコミを作るモノの購買の
標準偏差は総じて低い値をとっている。これに加えて、
図表 12 の財ごとの発信のタイミングに着目すると、
ガリガリ君は購買せずにクチコミされる傾向にある
ことがわかる。よってガリガリ君に関しては、共有後
に購買があるかどうかを検証する必要がある。これに
基づき、以下の小仮説を立案する。
仮説 1—1 ガリガリ君・食べるモノは購買されずに共
有される
仮説 1—2 ガリガリ君・食べるモノは共有後に購買さ
れる
仮説 1—3 ガリガリ君・クチコミを作るモノは購買さ
れずに共有される
仮説 1—4 ガリガリ君・クチコミを作るモノは共有後
に購買される
仮説 1—5 ハーゲンダッツ・食べるモノは探索されな
い
仮説 1—6 ハーゲンダッツ・クチコミを作るモノは探
Ⅱ.ネタ消費の意思決定プロセスの解明
分析を行うにあたって、消費者の商品に対する「意
索されない
味」の違いによるセグメント分けを行った。先述の通
仮説 1—7 ハーゲンダッツ・クチコミを作るモノは購
り、質問項目より回答者が何をもって対象財に興味を
買されない
持ったかを抽出し、それを対象財に対する「意味」と
捉える。
「食べたい」という意識からなる『食べるモ
15
この仮説を検証するにあたって、カイ二乗検定を用
■図表―――12
い、その結果を作図した。手法としては、AISAS の
対象財による発信タイミングの違い
各段階の間に有意な差が認められた場合、そのプロセ
スが存在すると見なす。これを繰り返すことによって
財と「意味」の違いに応じた、多くの人に選択される
プロセスの違いを探索・解明していく。なお、清水
[2013]
のAISAS の実証に基づき、
基本的にはAISAS
の順に検証を行うが、先述の通りガリガリ君について
は共有後の購買の有無についても探っていく。以下、
財と「意味」の違いに応じた検証結果をそれぞれ図示
する。
■図表―――10
ダミー変数の記述統計量
記述統計量
度数
504
479
平均値
.40
.24
標準偏差
.490
.426
493
.16
.369
475
504
.25
.37
.435
.482
479
.22
.417
ガリガリ-共有
492
477
.08
.29
.267
.454
ハーゲン-認知興味
295
.69
.461
ハーゲン-探索
ハーゲン-購買
295
286
.15
.30
.360
.459
ハーゲン-共有
290
.28
.451
ハーゲン-認知興味
ハーゲン-探索
295
296
.21
.07
.411
.257
290
.07
.248
292
.14
.348
ガリガリ-認知興味
ガリガリ-探索
食べるモノ ガリガリ-購買
ガリガリ-共有
ガリガリ-認知興味
クチコミを ガリガリ-探索
作るモノ ガリガリ-購買
食べるモノ
クチコミを
作るモノ ハーゲン-購買
ハーゲン-共有
■図表―――11
ダミー変数の標準偏差
16


ガリガリ君・食べるモノの検証
ガリガリ君を「食べるモノ」と捉える場合のカイ二
ガリガリ君・クチコミを作るモノの検証
ガリガリ君を「クチコミを作るモノ」と捉える場合
乗検定の分析結果を以下に示す(図表 13)
。認知興味
のカイ二乗検定の分析結果を以下に示す(図表 15)
。
から探索に有意差が認められたものの、探索から購買
「食べるモノ」とは異なり、探索と購買、探索と共有
の p 値は 0.244 となり、Fisher[1925]が推奨する
に有意差が認められたものの、購買と共有に同様の有
0.05 を大きく超えることとなった。よって探索後に
意差は認められなかった。つまり、購買後の共有及び
購買されるとは言えないと解釈できる。ここで、共有
共有後の購買は考慮できないことが言える。ここで図
後に購買されることを考慮する。探索と共有のカイ二
表 16 より、50%以上の回答者が AISS、つまり認知
乗検定の結果によると、有意差が認められ、さらに探
興味・探索・共有という、購買が抜けているプロセス
索の有無に応じた共有と購買の分析結果も同様に
にて意思決定を行っていることがわかる。
5%水準で有意差が認められた。以上をまとめると図
以上より、ガリガリ君・クチコミを作るモノの回答
表 14 になる。これによるとこの母集団に最も選択さ
者は AISS を主要なプロセスとし、その他 5 通りの意
れているプロセスは AISSA、つまり意思決定の際に
思決定プロセスを辿る可能性が示された。
認知興味・探索・共有・購買という順序にて処理して
いることが読み取れる。
■図表―――15
以上より、ガリガリ君・食べるモノの回答者は
分析結果
AISSA を主要なプロセスとし、その他 7 通りの意思
(カイ二乗検定:ガリガリ君・クチコミを作るモノ)
決定プロセスを辿る可能性が示された。
ガリガリ君・クチコミ
p値
認知興味>探索
0.000
探索>購買
0.001
購買>共有(探索あり)
0.101
購買>共有(探索なし)
0.431
探索>共有
0.000
共有>購買(探索あり)
0.101
共有>購買(探索なし)
0.431
■図表―――13
分析結果(カイ二乗検定:ガリガリ君・食べるモノ)
ガリガリ君・食べる
p値
認知興味>探索
0.000
探索>購買
0.244
探索>共有
0.000
共有>購買(探索あり) 0.014
共有>購買(探索なし) 0.019
漸近有意水準
1%水準で有意
有意でない
1%水準で有意
5%水準で有意
5%水準で有意
漸近有意水準
1%水準で有意
1%水準で有意
有意でない
有意でない
1%水準で有意
有意でない
有意でない
■図表―――14
意思決定プロセス(ガリガリ君・食べるモノ)
共有あり
n=87(43.5%)
探索あり
n=114(57.0%)
共有なし
n=26(13.0%)
認知興味
n=200(100.0%)
共有あり
n=33(16.5%)
探索なし
n=86(43.0%)
共有なし
n=52(26.0%)
17
購買あり
n=44(22.0%)
購買なし
n=43(21.5%)
購買あり
n=6(3.0%)
購買なし
n=20(10.0%)
購買あり
n=17(8.5%)
購買なし
n=16(8.0%)
購買あり
n=13(6.5%)
購買なし
n=39(19.5%)
■図表―――16
意思決定プロセス
(ガリガリ君・クチコミを作るモノ)
購買あり
n=31(16.8%)
購買なし
n=75(41.3%)
購買あり
n=7(3.8%)
購買なし
n=70(38.0%)
探索あり
n=107(58.2%)
認知興味
n=184(100.0%)
探索なし
n=77(41.8%)
共有あり
n=99(53.8%)
共有なし
n=8(4.3%)
共有あり
n=39(21.2%)
共有なし
n=38(20.7%)
探索あり
n=107(58.2%)
認知興味
n=184(100.0%)
探索なし
n=77(41.8%)

ハーゲンダッツ・食べるモノの検証
ハーゲンダッツを「食べるモノ」と捉える場合のカ
■図表―――17
イ二乗検定の分析結果を以下に示す(図表 17)
。分析
分析結果
の結果、探索をした場合、購買と共有に有意差が見ら
(カイ二乗検定:ハーゲンダッツ・食べるモノ)
れなかったものの、その他においてはすべて 5%水準
ハーゲンダッツ・食べる p値
認知興味>探索
0.000
探索>購買
0.001
購買>共有(探索あり)
0.106
購買>共有(探索なし)
0.033
探索>共有
0.000
で有意となった。
これをまとめると図表 18 となるが、
探索・購買・共有というすべての段階をせずに意思決
定を行った AI というプロセスが最も選択される結果
漸近有意水準
1%水準で有意
1%水準で有意
有意でない
5%水準で有意
1%水準で有意
となった。
以上より、ハーゲンダッツ・食べるモノの回答者は
AI を主要なプロセスとし、その他 5 通りの意思決定
プロセスを辿る可能性が示された。
■図表―――18
意思決定プロセス(ハーゲンダッツ・食べるモノ)
購買あり
n=30(14.9%)
探索あり
n=45(22.3%)
購買なし
n=15(7.4%)
認知興味
n=202(100.0%)
購買あり
n=56(27.8%)
探索なし
n=157(77.7%)
購買なし
n=98(48.5%)
18
共有あり
n=25(12.4%)
共有なし
n=31(15.4%)
共有あり
n=26(12.9%)
共有なし
n=70(34.7%)

ハーゲンダッツ・クチコミを作るモノの検証
ここで小仮説それぞれについて、主要なプロセスを
ハーゲンダッツを「クチコミを作るモノ」と捉える
用いて検証する。
場合のカイ二乗検定の分析結果を以下に示す(図表
ガリガリ君・食べるモノは AISSA の順に意思決定
19)
。認知興味と探索・購買・共有においてはすべて
を行うが、これは共有後に購買されることを示す。よ
有意となるものの、以降の段階との有意差は認められ
って仮説 1—1 においては棄却されるが、仮説 1—2 は
なかった。
これをまとめると図表 20 のようになるが、
立証された。
AIS(探索)
、AIA、AIS(共有)
、AI という 4 つのプ
仮説 1—1 ガリガリ君・食べるモノは購買されずに共
ロセスのうち、AIS(共有)
、つまり認知興味・共有
有される【棄却】
というプロセスが最も選択されていることがわかる。
仮説 1—2 ガリガリ君・食べるモノは共有後に購買さ
以上より、ハーゲンダッツ・クチコミを作るモノの
れる【立証】
回答者は AIS を主要なプロセスとし、その他 3 通り
ガリガリ君・クチコミを作るモノの主要な意思決定
プロセスは AISS である。これは認知興味を持った際
の意思決定プロセスを辿る可能性が示された。
に探索を挟んで共有することを指す。よって仮説 1—
■図表―――19
3 は立証される一方で仮説 1—4 は棄却された。
分析結果(カイ二乗検定:ハーゲンダッツ・クチコミ
仮説 1—3 ガリガリ君・クチコミを作るモノは購買さ
を作るモノ)
れずに共有される【立証】
ハーゲンダッツ・クチコミp値
認知興味>探索
0.000
探索>購買
1.000
探索>共有
0.154
認知興味>購買
0.000
購買>探索
1.000
購買>共有
0.564
認知興味>共有
0.000
仮説 1—4 ガリガリ君・クチコミを作るモノは共有後
漸近有意水準
1%水準で有意
有意でない
有意でない
1%水準で有意
有意でない
有意でない
1%水準で有意
に購買される【棄却】
ハーゲンダッツ・食べるモノの主要なプロセスは認
知興味のみである、AI となる。つまり、認知興味の
みで意思決定が完了しているため、探索・購買・共有
はされないことを示す。よって仮説 1—5 は立証され
■図表―――20
る。
意思決定プロセス
仮説 1—5 ハーゲンダッツ・食べるモノは探索されな
(ハーゲンダッツ・クチコミを作るモノ)
い【立証】
認知興味
n=63(100.0%)
ハーゲンダッツ・クチコミを作るモノの主要なプロ
探索あり
n=23(36.5%)
探索なし
n=40(63.5%)
認知興味
n=63(100.0%)
購買あり
n=22(34.9%)
購買なし
n=41(65.1%)
認知興味
n=63(100.0%)
共有あり
n=42(66.7%)
共有なし
n=21(33.3%)
セスは AIS(共有)であり、間に存在する探索・購買
が抜け落ちていることがわかる。よって仮説 1—6 及
び仮説 1—7 は立証される。
仮説 1—6 ハーゲンダッツ・クチコミを作るモノは探
索されない【立証】
仮説 1—7 ハーゲンダッツ・クチコミを作るモノは購
買されない【立証】
19
Ⅲ.ネタ消費者の特性―先端層
■図表―――22
本節では、前節で仮説として提唱したネタ消費者と
分析結果(因子分析:マーケットメイブン尺度)
説明された分散の合計
初期の固有値
抽出後の負荷量平方和
分散の
分散の
因子
合計
%
累積 %
合計
%
累積 %
1
3.567 71.346 71.346 3.218 64.370 64.370
2
.639 12.773 84.119
3
.327 6.549 90.668
4
.273 5.460 96.129
5
.194 3.871 100.000
因子抽出法: 最尤法
オピニオン・リーダーやマーケットメイブンという先
端層の関係性を探っていく。

先端層の解明
分析において、先で述べた通り Feick & Price[1987]
のマーケットメイブン尺度 5 項目 と King &
Summers[1970]のオピニオン・リーダー尺度 5 項
目について、その特性があるかどうかを明確にするた
め 6 点尺度を用いた。なお、前田[2000]に基づき、
因子抽出には最尤法、回転はプロマックス(斜光)回
転を用いた因子分析を行った。以下に因子分析に用い
た設問を示す(図表 21)
。
マーケットメイブン尺度の分析結果を図表 22,23
にまとめる。加藤[2007]に基づき、初期の固有値が
1 以上・分散の%が 50%以上・スクリー法によるプ
ロットの傾きが適当である第一因子の説明力が妥当
であると言える。また、因子行列の係数がすべて 0.5
を超えている点、Cronbach のα係数が 0.899 と高い
数値を算出した点は小塩[2007]より、因子の内的整
合性が高いということが言える。これより、この分析
を通して算出した因子得点をマーケットメイブン度
として使用することは適切であると解釈できる。
■ 図表―――21
アンケート項目
20
■図表―――23
分析結果(信頼性分析:マーケットメイブン尺度)
続けて、オピニオン・リーダー尺度を用いた分析結
果を図表 24,25 にまとめる。先述の分析で示した初
期の固有値、分散の%、因子行列の係数、Cronbach
■図表―――25
のα係数はすべて優良な値を算出し、内部整合性の高
分析結果(信頼性分析:オピニオン・リーダー尺度)
い第一因子が生成された。これより、この因子を基に
算出した因子得点をオピニオン・リーダー度として使
用することは適切であると解釈できる。
■図表―――24
分析結果(因子分析:オピニオン・リーダー尺度)
説明された分散の合計
初期の固有値
抽出後の負荷量平方和
分散の
分散の
因子
合計
%
累積 %
合計
%
累積 %
1
3.723 74.461 74.461 3.413 68.261 68.261
2
.492 9.830 84.291
3
.393 7.859 92.151
4
.243 4.862 97.013
5
.149 2.987 100.000
因子抽出法: 最尤法
以上より抽出した因子について、因子得点を算出し、
マーケットメイブン度及びオピニオン・リーダー度を
生成した。この指標は、各因子への影響度を示してお
り、高ければ高いほどマーケットメイブン、オピニオ
ン・リーダーの特性を持つと言える。これらの指標に
ネタ消費の有無で有意な差を示すことを目的として t
検定を行った。
分析にあたって、
ネタ消費をした=1”
というダミー変数を用い、財に応じた平均値を算出し
た。分析結果は以下に示す。
まず、ガリガリ君について見てみる(図表 26)
。マ
ーケットメイブン度、オピニオン・リーダー度ともに
等分散性のための Levene の検定を見ると p > 0.05
となるため、小塩[2007]よりどちらにおいても等分
散を仮定した検定となる。しかしながら有意水準 p
値はそれぞれ 0.374 , 0.100 と Fisher[1925]が推奨
する 0.05 を大きく上回った。これより、ネタ消費者
のマーケットメイブン度、オピニオン・リーダー度の
平均値に有意な差がないことがわかる。
21
■図表―――26
分析結果(t 検定:ガリガリ君)
マーケットメイブン尺度 オピニオンリーダー尺度
グループ統計量
ガリガリくんコンポタ
N
平均値
ネタ消費した
180
0.0533779
していない
400
-0.0240201
ネタ消費した
184
0.0963258
していない
402
-0.0440894
独立サンプルの検定
当分散性のための
Leveneの検定
F値
マーケットメイブン尺度
オピニオンリーダー尺度
等分散を仮定する。
当分散を仮定しない。
等分散を仮定する。
当分散を仮定しない。
次にハーゲンダッツについて見てみる(図表 27)
。
1.355
有意確率
0.245
0.184
0.668
標準偏差
0.92699314
0.98774760
0.93578647
0.96755198
平均値の標準誤差
0.06909399
0.04938738
0.06898709
0.04825711
2つの母平均の差の検定
有意確率
(両側)
t値
自由度
0.890
578
0.374
0.911
365.797
0.363
1.647
584
0.100
1.668
365.921
0.096
意であるため、ハーゲンダッツのネタ消費者は統計的
オピニオン・リーダー度は先述の通り等分散を仮定す
にマーケットメイブン度及びオピニオン・リーダー度
るが、マーケットメイブン度については F 値=4.220 ,
が高い、と解釈できる。
p=0.040 < 0.05 となるため、分散が等しくないこと
が言える。マーケットメイブン度の等分散を仮定しな
い場合、t(578)=5.250 , p=0.000 < 0.05 となり、
有意水準 1%で有意差がある。また、オピニオン・リ
ーダー度の等分散を仮定した際、t(584)=5.202 ,
p=0.000 < 0.05 となり、同様に有意水準 1%で有意
差がある。ここで両指標の統計量を見ると、ネタ消費
者のマーケットメイブン度・オピニオン・リーダー度
の平均値はともにしていない人を上回り、この差が有
■図表―――27
分析結果(t 検定:ハーゲンダッツ)
22
ここで仮説を検討する。ガリガリ君については平均
持つとされているため、仮説検証の対象財として用い
値に有意差が見られなかったため、ネタ消費者がオピ
たアイスカテゴリーとは異なるお菓子カテゴリーを
ニオン・リーダー及びマーケットメイブンであるとは
対象財とした。
言えない。しかしハーゲンダッツに関して、マーケッ
POS データは、
当大学の生協にて 9 月 24 日から発
トメイブン度、オピニオン・リーダー度ともにネタ消
売された「カルビー じゃがりこ ホタテバターしょ
費者とそうではない人の平均値に 1%水準で有意差
うゆ味(以下じゃがりこ)
」
、
「有楽製菓 ソフトサン
が認められた。これよりハーゲンダッツのネタ消費者
ダーまんじゅう(以下ソフトサンダー)
」
、
「明治 大
がオピニオン・リーダー及びマーケットメイブンであ
人のきのこの山(以下きのこの山)
」
、
「明治 大人の
ると解釈できる。
たけのこの里
(以下たけのこの里)
」
の 4 財について、
よって仮説は、ガリガリ君に関しては棄却されるが、
ハーゲンダッツについて立証された。
定休日を含めた 2 週間分(実質 11 日分)のデータを
用いた。なお、POS データは補録に掲載する。
仮説 2—1 ネタ消費者はオピニオン・リーダーである
はじめに、
売上を比較するにあたって、
欠品日数
(ソ
【一部立証】
フトサンダー:5 日、きのこの山:1 日)を除く一日
仮説 2—2 ネタ消費者はマーケットメイブンである
当たりの売上数を算出した(図表 28)
。これによると、
【一部立証】
最も売れた商品はソフトサンダー、続けてじゃがりこ、
たけのこの里、
きのこの山という結果になった。
次に、

ハーゲンダッツのネタ消費者の売上予測力を見るに
頑健性の確認
仮説より、ハーゲンダッツのネタ消費者はオピニオ
あたって、各財の順位予測比率を算出した。なお、比
ン・リーダーやマーケットメイブンといった先端層で
較対象としては母集団全体とガリガリ君のネタ消費
あることがわかった。しかしながらこれは因子得点に
者を用いた。傾向としては、売上 1 位のソフトサンダ
基づく傾向であり、頑健性の確認が必要になってくる。
ーを 4 位と予測している人が過半数を超えており、
す
ここで、先の寺本[2011]によると、マーケットメイ
べての母集団において、大多数の人の予測と実際の売
ブンには売上予測力があるとされているため、これを
上は一致しなかった。ここで、順位予測正答率のみを
用いて、一部ではあるが頑健性の確認を行う。
比較すると図表 29 のようになる。これよりハーゲン
ダッツのネタ消費者の順位予測正答率が最も高く、
マーケットメイブンはカテゴリー横断的に情報を
■図表―――28
売上予測集計結果
23
売上予測力が高いと言える。これを分析より得られた、
ガリガリ君の分析結果では、ネタ消費を行う要因が
ハーゲンダッツのネタ消費者が先端層である、という
5 つ抽出された(図表 30)。判別式が有意かを示す
結果の裏付けとする。
Wilks のラムダの有意確率が 1%有意となっているた
め、ここでの結果を採用する。抽出された要因から、
■図表―――29
ガリガリ君のネタ消費者は、ネットを介した行動をよ
順位予測正解率
く取り、雑誌を読む頻度が高い、コンビニはあまり利
用しない消費者である、と判明した。
■図表―――30
分析結果(判別分析:ガリガリ君)
Ⅳ.ネタ消費者の特性―アクセス性の確保
分析Ⅲで、ネタ消費者の特性として、ハーゲンダッ
ツのネタ消費者はオピニオン・リーダーやマーケット
メイブンといった先端層であることが明らかになっ
た。しかし、先端層と一口に言っても、一目でこの消
次にハーゲンダッツについて、図表 31 を用いて結
費者が先端層であるとは判別できない。実務的なイン
果を示す。Wilks のラムダの有意確率は 1%有意とな
プリケーションに繋げるためには、ネタ消費者へのア
った。導出された要因から、ハーゲンダッツのネタ消
クセス性を高める必要がある。ここでは、分析の手順
費者の特性は、Twitter を情報収集の一つとして利用
と方法で示した通り、ガリガリ君、ハーゲンダッツ、
し、フォロー数が多いことがわかる。また、アイスに
各財のネタ消費者を対象に、デモグラフィック要因、
関して、友人によく聞かれるという特性が明らかにな
人付き合いに対する態度・利用メディア・SNS の利用
った。
状況といったライフスタイル要因を用いて分析を行
■図表―――31
う。さらに、ネタ消費される商品の特徴を明らかにす
分析結果(判別分析:ハーゲンダッツ)
るため、テキストマイニングを用いて商品に関するキ
ーワードを抽出し、それらのキーワードの有効的な組
み合わせをカイ二乗検定で探った。

判別分析
判別分析を用いて、消費者へのアクセス性を確保す
る。グループ化変数にネタ消費者を、独立変数には消
費者の特性要因を投入した。変数選択はステップワイ
ズ法を用い、選択方法は最小 F 比法を選択した。以下、
対象財 2 財の分析結果を示す。
24

二項ロジスティック回帰分析
有意であると示されたため、続いて各要素について方
続いて、回帰分析でネタ消費者の特性を明らかにす
程式中の変数を確認する。有意確率10%までを有意で
る。二項ロジスティック回帰分析を用い、従属変数、
あると捉えた。結果として要素は6つ抽出された。判
独立変数は先程の分析同様とする。変数選択の方法は、
別分析の結果同様にネットを介した行動をとる、とい
変数を減らしていく変数減少法:Waldを採用した。
う特性や、ハーゲンダッツについて人に話すという特
そのため、分析結果は最後に示されたステップで確認
性が示された。後者は、対象財の特徴からハーゲンダ
することとする。以下、ガリガリ君、ハーゲンダッツ
ッツは新商品であると捉えられるため、新商品につい
の分析結果を、それぞれの図表32,33を用いて示す。
て人に話すという特性であると考えられる。
なお、モデル適合の指標としてはHosmer と
続いて、ハーゲンダッツの分析結果をまとめる。導
Lemeshow の検定を用いたが、ガリガリ君・ハーゲ
出されたステップは41であり、そのモデルも有意であ
ンダッツともに帰無仮説を棄却したため、分析結果の
った。有意確率10%において、要素は9つ個抽出され
信頼性は高い傾向にあると言える。
た。特性としては、人付き合いは、友人知人を自宅に
ガリガリ君では、ステップは全51導かれた。モデル
招く、といった特性からリアルの場を重視し、新商品
自体の有意性を示す方程式中の変数においては、モデ
について人に話す特徴を有する人であると示された。
ルの有意確率が1%有意であった。こうしてモデルが
■図表―――32
分析結果(二項ロジスティック回帰分析:ガリガリ君)
■図表―――33
分析結果(二項ロジスティック回帰分析:ハーゲンダッツ)
25

特性のまとめ

以上、ネタ消費者の特性を2つの分析から確かめた。
それらを整理した図表34を用いて、消費者の特性をま
商品の特性
ここでは、ネタ消費される商品の特性を解明する。
とめる。
具体的には、実際のネタ消費者が、どのような商品特
ガリガリ君のネタ消費者は、ネットをよく利用し信
性であれば、ネタ消費したいと思うのかを明らかにす
頼することから、ネット依存度が高いことがわかる。
る。これによって、商品側からの有効なアプローチも
またネットについては、Twitterを含めたSNSをよく
可能となるであろう。以下、分析結果を示す。
使用し、主に情報収集のために利用していると考えら
まずはテキストマイニングによって、商品の特徴を
れる。一方、ハーゲンダッツのネタ消費者は、リアル
示した、計10要素の単語を抽出した(図表35)。なお
の場での人間関係を重視していることがわかる。また、
抽出にあたっては、プレアンケート調査で得られた、
Twitterから情報を収集し、周囲の人からは大切な情
対象財の特徴を表す語句を用い、加えて具体的な商品
報通として、信頼されていると考えられる。
が示されるよう考慮した。そして、これらの組み合わ
せをカイ二乗検定で確かめ、有意確率が5%水準であり、
■図表―――34
かつ度数が期待度数を上回ったものを有効な結果と
特性まとめ:ガリガリ君
採択した。以下ガリガリ君とハーゲンダッツ各財にお
ける結果について図表36を用いて示す。ガリガリ君の
ネタ消費者は、目新しい商品をネタ消費する傾向であ
ると判明した。特に目新しい形の肉まんがその商品の
一つだと考えられる。次にハーゲンダッツのネタ消費
者であるが、図表37からも読み取れるように、ほぼガ
リガリ君同様の結果となった。
以上を通して、ネタ消費者の特性が判明された。こ
れによって、ハーゲンダッツのネタ消費者が先端層で
あることに加えて、ライフスタイルなどのアクセス性
特性まとめ:ハーゲンダッツ
が確保できたと言える。また、ネタ消費されやすい商
品も解明されたため、消費者の特性や商品の特性から
のアプローチが可能となった。
26
(4)
■図表―――35
テキストマイニング抽出用語
分析結果のまとめ
本研究の目標はネタ消費という新しい概念の解明
であり、それを意思決定プロセス、消費者の特性とい
食べ物
おにぎり
パン
カップラーメン
ラー油
製品
肉まん
お菓子
肉まん
菓子
アイス
グミ
う 2 つのアプローチで検証を行った。ここでは、分析
飲み物
ジュース
ペプシ
ⅠからⅣを通して明らかになったことをまとめる。
分析Ⅰでは、具体的な分析の前段階として、本研究
で用いる対象財の特徴を明らかにした。ガリガリ君は
「面白い」
、
「話のネタにしたい」ハーゲンダッツは「美
味しそう」
、
「新商品」という特徴を有する商品だと捉
えられた。このように、対象財の特徴を見ることで、
商品の特徴
目新しい 美味しいネガティブ 限定
変わった 美味しい まずい
限定
新しい うまい がっかり 期間限定
珍しい
意外
斬新
悪い
ネタ
ネタ
話題
その特徴を生かした、財に収まらない応用が可能だと
コスパ
コスパ
割安
考える。
分析Ⅱでは、ネタ消費における意思決定プロセスを
季節もの 話題性
ご当地
解明した。検証の結果から、財及び「意味」の違いに
より意思決定プロセスは異なることがわかった。特徴
的なのは、ネタ消費者が、必ずしも購買を重要視しな
■図表―――36
いということである。購買を伴わずに共有を行う、
カイ二乗検定の結果 ガリガリ君
AISS(認知興味→探索→共有)や AIS(認知興味→共
お菓子
肉まん
限定
目新しい
美味しい
形
目新しい
目新しい
有)といった新たなプロセスの存在が明らかとなった。
コスパ
ネガティブ
つまり、以前の概念ではネタ消費を完全には捉えられ
ていなかったと言える。ここに、我々のネタ消費の定
形
飲み物
義拡大に有用性が見出せる。
分析Ⅲでは、ネタ消費者が、他者を意識した行動を
■図表―――37
とる、オピニオン・リーダーやマーケットメイブンで
カイ二乗検定の結果 ハーゲンダッツ
あるかを確かめた。分析の結果から、ハーゲンダッツ
お菓子
肉まん
限定
目新しい
美味しい
コスパ
飲み物
ネガティブ
のネタ消費者が、そのような先端層であることが示さ
れた。しかしガリガリ君に関しては、先端層の傾向が
見られなかった。先に示した図表 26 からもわかるよ
目新しい
うに、ネタ消費者はそうでない人よりもマーケットメ
イブン度及びオピニオン・リーダー度の平均値が高い
傾向にあった。ここから、ガリガリ君のネタ消費者の
母集団に先端層が含まれているものの、話題に乗じて
ネタ消費した人が多くいるため、先端層について有意
な差が見られなかったと考察される。またここでは、
マーケットメイブンの特徴の一つである売上予測力
を確かめた。その結果、新商品における順位予測正答
率が高いことが示され、ハーゲンダッツのネタ消費者
がマーケットメイブンであることを強く裏付ける結
27
果となった。
析Ⅰの結果から明らかになったことを踏まえ、本章で
最後に行った分析Ⅳでは、ネタ消費者へのアクセス
は、
「おもしろい」、
「話のネタにしたい」商品と、
「お
性を確保した。具体的には、ネタ消費者の特性やネタ
いしそう」
、
「新商品」の商品のネタ消費者に照準を当
消費したいと思う商品特性を探った。ガリガリ君のネ
てた適切なアプローチ方法を提案する。以降、前者を
タ消費者は、SNS をよく利用し、ネット依存度の高い
「おもしろいもの好き」、後者を「新しいもの好き」
消費者である。一方、ハーゲンダッツのネタ消費者は、
と名付け、それぞれに対して提案を行う。
他者とリアルの場で関係を築き、Twitter から情報収
(1)
集を行い、周りからは信頼できる情報通と捉えられて
おもしろいもの好き
いる。また、両者とも新商品について人に話す傾向が
おもしろいもの好きは、AISS(認知興味→探索→共
ある。さらに、ネタ消費したいと思う商品特性は、ガ
有)という意思決定プロセスで、SNS をよく利用し、
リガリ君、ハーゲンダッツのネタ消費者間で大きな差
ネット依存度が高い、新商品を人に話す、という特徴
はなく、どちらも目新しさを重視することが示された。
を持つ。ここから、SNS を活用したネットでのプロモ
以上の検証より、ネタ消費者の意思決定プロセスで
ーションが有効だと考える。さらに、AISS というプ
は必ずしも購買を伴わないことが明らかになり、新商
ロセスを辿ることから、興味を持って探索を行うと、
品について人に話す傾向があることが示された。また、
その情報を共有する傾向にあるとわかる。そこで、こ
商品によっては、それをネタ消費する消費者が先端層
の探索を一つの重要な段階だと考える。ネットの情報
の特性を兼ね備えていることもわかった。このような
を信頼することから、情報が多く出回るネット社会に
ネタ消費者は企業にとって、情報を広げるという意味
おいて、消費者により良い情報を探索させ、それを信
において、広告の役割を担う貴重な存在である。これ
頼させ、そして共有させることが大切である。いかに
までもネタ消費の存在は示されていたが、その具体的
良い情報、クチコミのあるフィールドに誘導するか、
な実態は明らかにされてこなかった。本研究ではこの
このようなことを念頭に置いて、おもしろいもの好き
現状を打開し、適切なターゲティング、アプローチに
への提案を行う。
よって、企業にとって有用なこの存在を、有効活用す

アプリの現状
る指針を見出すことができた。ここまでの分析結果を
2013 年 6 月にメディア環境研究所が行った『メデ
基に、次章では具体的な実務的インプリケーションを
ィア定点調査 2013』によると、スマートフォンの所
提案していく。
有率は全体の 45%となり、昨年から 10%増加し、おお
よそ 2 人に 1 人がスマートフォンを持っていることが
4
新規提案
わかる。さらに、若者の利用機能は通話より、アプリ
や SNS などの数値が高いと示された。また、矢野経
本研究では、対象財 2 財の商品の特徴を明らかにし
済研究所が 2012 年 3 月 27 日にまとめた『スマートフ
た後、それぞれの財に対するネタ消費者の解明を行っ
ォンアプリ市場に関する調査結果 2012』によれば、
た。これによって、企業が今後そのような特徴を持つ
国内スマートフォンアプリ市場は 139.9 億円(前年比
商品をリリースする際に応用できるような、汎用性を
170%)、さらに今後も成長が続くと予測されている
加味することができた。また実証結果で明らかにされ
(図表 38)
。このようなスマートフォン市場の拡大、
たように、我々の考えるネタ消費は必ずしも購買を伴
さらにそれを用いたアプリ市場が成長する現状、併せ
わないが、クチコミを作ることを意識して行動するこ
ておもしろいもの好きのネット依存度の高さという
とから、彼らを有効活用できれば、広告費を最小限に
特徴を踏まえ、我々のおもしろいもの好きへの新規提
抑えたプロモーションが可能になると考えられる。分
案のフィールドもアプリを利用することとする。
28
■図表―――38
ター数人と限定する。詳しくは後述するが、プレゼン
日本国内のスマートフォンアプリ市場規模予測
ター内でグランプリが決まるため、出場者はそれを目
指して他のプレゼンターとは異なるアレンジやネタ
などの情報を提供する。こうすることで、情報探索を
行う消費者を良い情報やクチコミのフィールドへ囲
い込むことが可能となる。そして、その少数精鋭の情
報を、ネット信頼度の高いおもしろいもの好きは獲得
することとなる(図表 39 の②)。
次に情報探索を行う際には、プレゼン内容から、よ
り有益な情報だと感じたプレゼンターに投票する。こ
の投票画面では、他アプリや SNS での共有も促す。
おもしろいもの好きの、ネット上に友人がいて、新商
(出典:矢野経済研究所)
品を人に話すといった特徴や、意思決定プロセスの流
れが探索から共有につながることを考慮すると、情報
発信の場を提供するこの促進も妥当だと考えられよ

「ネタなうアプリ」の提唱
う。また、この投票による得票数で、プレゼンターグ
ランプリを決める(図表 39 の③、図表 40)
。
我々が提案する新アプリ、「ネタなうアプリ」のコ
ンテンツについて紹介する。本アプリは、新商品の発
以上、意思決定プロセス AISS に従って説明を行っ
売情報を提供し、具体的な商品の内容については消費
てきた。続いて本アプリでの重要要素の一つでもある、
者主導の展開を目指したものとなっている。消費者が
ポイント制について言及する(図表 41)
。ユーザーは
ある新商品に興味を持ち、それを調べ、そしてその情
ポイントを獲得、保持し、交換することによって、商
報を他人に広める、このような流れを想定したアプリ
品の割引券を入手できる仕組みとなっている。獲得に
である。また、後述するポイント制を導入することで、
あたっては、プレゼンターの商品情報に投票すること
上の流れをもたらすインセンティブを与えることが
で 1 ポイント、さらに、その商品情報を他アプリで共
できる。このフローを、おもしろいもの好きの意思決
有した際には 2 ポイント獲得とする。また、自分の支
定プロセス AISS に従って、アプリユーザーの動向に
持したプレゼンターがグランプリとなった場合は、ポ
応じた図表 39、40 を用いて具体的に述べていく。
イントを入手できる。次に、プレゼンターのポイント
まずは認知興味の機会についてであるが、アプリの
の扱いに関して述べる。まず、少数に限られたプレゼ
ホーム画面である、新商品のラインナップページをそ
ンターになるために、ポイントが必要となる。競りの
の主たる場とする。ホーム画面には、商品の名前や写
形式で他の志願者と争うため、プレゼンターになりた
真が掲載されており、そこにはおもしろいもの好きが
いと思えば、より多くのポイントを支払わなければな
ネタ消費したいと思う特性を持った商品が並ぶ(図表
らない。このようにして決まったプレゼンター内で順
39 の①)
。
位が確定し、優勝者には優勝特典ポイントを贈呈する。
こうして、おもしろいもの好きの認知興味を得た後、
探索の場を提供する。気に入った商品をタップすると、
商品のレビューページへと移動する。このレビューペ
ージが本アプリの新規性を表した部分である。レビュ
ーを載せられるのは、全ユーザーではなく、プレゼン
29
優勝者以降に対しても、順位に応じたポイントを与え
る。
■図表―――39
アプリの概略図(情報探索ユーザーの流れ)
■図表―――40
アプリの概略図(プレゼンターの流れ)
30
■図表―――41
うプレゼンターの意向、さらにその情報を共有しよう
ポイント制
というユーザーの意向、それぞれにインセンティブを
与える。その結果、獲得したポイントを商品の割引券
と交換できることから、おもしろいもの好きで重要視
されていなかった、購買という行動も誘引する方向を
示した。ここに、広告の役割に収まらない、ネタ消費
者のさらなる可能性を含ませることができたと考え
られる。
(2)
新しいもの好き
新しいもの好きは、AIS(認知興味→共有)という
意思決定プロセスで、リアルの場での人付き合いを行
っており、Twitter で情報収集し、周囲からは情報源
として信頼されている人である。ただし、リアルでの
以上で示した、アプリの特徴 2 点をまとめる。
人間関係を重視していることや Twitter での発信はあ
まず挙げられることが、プレゼンター制度を導入す
まりしないという特性から、情報発信を行う場は、リ
ることである。誰もが自身の意見を投稿できるネット
アルの場であると考えられる。ここから、我々は、リ
社会においては、受信者も自分でその情報を取捨選択
アルの場での情報発信を喚起させるプロモーション
する必要がある。そこでプレゼンター制度によって、
が有効であると考える。
流布する情報数の制限を可能にする。さらに、その情
そこで提案するのが、「Let`s share@宅飲み」であ
報の質という観点からも、プレゼンターのグランプリ
る。以下、若者の行動傾向と飲みニュケーション、宅
で優勝するために、多くの情報を探索し精査すること
飲みに関する調査について触れた後、本提案の詳細を
で、投稿の内容もより洗練されたものになると考えら
述べる。
れる。こうした仕組みにより、情報探索者は効率的に

有益な情報を得ることができる。さらに、企業にとっ
つながりを求める若者
て好ましい情報がプレゼンターによって生成され、ネ
日本の消費傾向について分析した三浦[2012]によ
ット信頼度の高いおもしろいもの好きは、そのような
ると、2005 年以降の日本では、多くの人が「個人間
商品への良い情報を持って次の行動に移すこととな
のつながりが自然に生まれる社会」を求め、誰かと一
る。つまり、情報を回す存在であるおもしろいもの好
緒にシェアをすることで満たされる欲求が生まれて
きに、有用な情報を与え、さらにそれを他の友人に話
いる、と述べられている。つまり社会的なつながりや
してもらう流れに誘引できると考える。ここから、お
コミュニケーションへの欲求に価値が置かれるよう
もしろいもの好きを有効活用する具体的方針を示す
になっているのである。また、内閣府の平成 22 年度
ことができたと言えよう。
『国民生活選好度調査』では、若者が幸福を感じる点
として「仲間の存在」が多く挙げられている。ここか
次に、ポイント制の意義をまとめる。ポイント制は、
ら、特に若者がつながりを求めていると考えられる。
ユーザーの行動を推し進めるインセンティブの一要
素と捉える。商品の情報を探索し、共有するにあたっ
て、ポイントがそれを強く後押しする。ポイントを多
く獲得することは、支持される情報を提供しようとい
31


若者の飲みニュケーション
「Let`s share@宅飲み」
飲みニュケーションとは、お酒を一緒に飲むことで
今回我々が提案する「Let`s share@宅飲み」の概要
交流を深め、人間関係の円滑化を図ることを言う。マ
を説明する。まず、今回の施策を行っていることを
イナビスチューデントが 2010 年に行った『飲みニュ
Twitter 上でプロモーションする。宅飲みの場で購入
ケーションに関する調査』によると、学生の約 8 割が
されるおつまみとして、発売予定の商品を小分けし、
飲みニュケーションを必要と回答している。ここから、
それらを詰めたバラエティーパックをコンビニ及び
今回研究対象とした若者の多くが、飲み会という場を
スーパーで売り出す(図表 43)。この際に、アルコー
必要としていることがわかるだろう。
ル飲料とセットで購入することで安価になる、という
抱き合わせ販売を行う。そして、食レポや感想を企業

宅飲みに関する調査
に送ってもらう。それをすることの消費者へのインセ
株式会社アイシェアが 2009 年に行った『宅飲みに
ンティブとして、その試供品が実際に発売される時に
関する意識調査』では、20 代の 7 割以上が宅飲みを
安く購入できるようなクーポンを提供する。以上がこ
していることが明らかとされている(図表 42)
。その
の提案の概要である。このフローを辿る仕組みを、新
ため、若者の友人知人を自宅に招く機会に「宅飲み」
しいもの好きの特性と照らし合わせて述べていく。
を挙げるのは妥当であると考えた。
まず新しいもの好きは、Twitter から情報を収集し
同調査によって、20 代の宅飲みに関して以下のよう
ているため、これを用いたプロモーションによって認
な結果が得られている。一点目は、20 代の 7 割が宅
知させることが有効であると考える。企業アカウント
飲みの際にお酒とともにおつまみを購入する、という
よりつぶやきを発信し、「Let`s share@宅飲み」とい
ことである。二点目は、そのおつまみを購入するチャ
う施策を認知させる。
ネルとして、スーパー及びコンビニが最も利用されて
新しいもの好きは、友人知人を自宅に招く若者であ
いることが示されている。
ることと若者の宅飲みに関する調査から、宅飲みを行
このような若者における宅飲みの現状と本研究に
う傾向にあると捉えられる。彼らの辿る意思決定プロ
おける新しいもの好きの特性を踏まえ、これ以降具体
セスは購買が抜け落ちている。しかし、お酒との抱き
的な施策について述べる。
合わせ販売によって、宅飲みを行う際のおつまみとし
て商品を購買させることが容易となるだろう。また、
■図表———42
彼ら自身が購買せずとも、宅飲みにおいて友人知人が
おつまみを購入する際に利用する店舗
購買することでも情報共有ができる。宅飲みという場
を利用することで、その場にいる全員に商品を認知さ
せることが可能となるのである。さらに、おつまみを
購入する場としてコンビニ及びスーパーと回答した
人が 8 割を超えていることから、それらのチャネルを
利用し販売する。
最後の情報共有の段階については、「宅飲みの場に
おける“share”
」と「企業への発信」の二つの側面か
ら述べる。前者では、宅飲みという場を介すことで、
(出典:株式会社アイシェアによる調査)
その場にいる全員と商品に関する情報が共有される。
それによって若者が求めているとされる「つながり」
を実感できるのである。後者の「企業への発信」につ
32
④ ―――結論
いて述べる。分析結果より、新しいもの好きは、マー
ケットメイブンという特性が見られた。Moore[2003]
によって、マーケットメイブンにはクーポンを頻繁に
本研究では、ネタ消費という若者の新たな消費傾向
活用するという特性が明らかにされている。このこと
に焦点を当て、商品に対して抱く「意味」の相違とい
から、クーポンというインセンティブを新しいもの好
う観点から、その消費者を解明した。
きに与えることで、企業への情報発信を喚起すること
つながりを求める若者が多く存在する現代社会に
は有用であると言えるだろう。企業のメリットとして
おいて、クチコミを用いてつながりを確認する動きが
は、食レポや感想を、消費者参加型の商品開発に利用
消費に反映される形でネタ消費が登場した。ネタ消費
できることが挙げられる。
者は、広告の役割を担うクチコミを積極的に行う存在
以上のような流れを生むことにより、発売予定の商
である。広告効果を得るのが難しい現在、このような
品を多く消費者に認知させることができる。さらに、
ネタ消費者を捉えることは重要である。ここに我々が
その情報を共有させるまでにインセンティブを持た
ネタ消費に着目し、その解明をするに至った所以があ
せたことによって、より多く情報が広がることが期待
る。
される。
検証の結果、商品の捉え方の違いによって意思決定
プロセス及び消費者特性に大きな差が見られた。ここ
■図表―――43
から得られた意義について、学術面、実務面の双方を
バラエティーパックの例
示したい。
まず意思決定プロセスについて、財を「食べるモノ」
と捉えるか「クチコミを作るモノ」と捉えるか、とい
った「意味」の違いによって大きな差が存在した。従
来までの意思決定プロセスでは想定されてこなかっ
た主観的な「意味」において、意思決定の差が示され
たのである。また、「クチコミを作るモノ」と捉える
消費者の一部はマーケットメイブンやオピニオン・リ
ーダーの特性があることも解明された。マーケットメ
イブンやオピニオン・リーダーが注目される現代の消
費者行動研究において、ネタ消費者がこの特性を持つ
ことは意義深い。これら二点を本研究の学術的意義と
する。
さらに、ネタ消費者が「面白い」「話のネタにした
い」財と「おいしそう」「新商品・限定品」である財
によっても異なる意思決定を行う、ということが解明
された。そのため、企業は商品の違いによって意思決
定プロセスのどの段階で行うプロモーションが有益
であるか、を判断できる。また、先述した、ネタ消費
者が先端層の特性を兼ね備えているという点は、情報
を広げるという意味において、彼らが広告の役割を担
う貴重な存在であることを示している。そのネタ消費
33
者の消費者特性まで示せたことによって、彼らへのア
のであるのか、質的側面からもアプローチしていく必
クセス性を確保できた。これらは実務面における意義
要がある。
と言えよう。
一方、ネタ消費における意思決定では、購買を重視
我々は、ネタ消費について、クチコミが広告の役割
しない参加の形態が見られた。 本研究においては
を担うということを鑑みて、購買を伴わない場合や
AISS というプロセスが導き出されたが、それは SIPS
SNS 以外での発信までも研究対象として捉えた。その
に極めて近いプロセスである。ここから、実証例の少
結果、ネタ消費者の意思決定プロセスでは、必ずしも
ない SIPS がネタ消費において確認できたことを示し
購買を伴わないことが明らかになり、新商品について
ている。今後、SIPS モデルを用いた研究の余地及び
リアルの場で人に話すという特性があることも示め
ロイヤリティの形成が示唆されるのではないであろ
された。これは既存のネタ消費の定義では考慮できな
うか。
い消費者もまた、マーケティング活動において、有用
ネタ消費の経済効果が大きく、クチコミの重要性が
な存在であることを示し、定義の拡大における信頼性
増している現代において、ネタ消費の本質を解明した
を寄与した点で、一定の成果をあげたであろう。
本研究は非常に意義があるものであったと言えるだ
ろう。
⑤ ——————今後の展望
⑥ ―――おわりに
今回の研究において、ネタ消費という消費行動を
「意味」という側面から解明し、ネタ消費の実態が判
以上、本研究について述べてきた。検討すべき課題
明した。しかしながら、本研究に残された課題は多い。
が見つかったものの、ネタ消費を「意味」という観点
まず本研究では、面白い商品と新しい商品の代表的
から捉えた本研究は、今後のネタ消費研究のみならず、
な 2 財を用いて検証を行ったが、ネタ消費の対象とさ
クチコミが注目されている現代におけるマーケティ
れる商品は多岐に亘っており、他の特徴を持つ財にお
ング実務の発展に、一つの道筋を示すことができたで
ける検証を今回は行うことが出来なかった。ネタ消費
あろう。
を十分に捉えるにあたっては、二つの特徴のみではな
本研究は、今年度の関東学生マーケティング大会の
く多様な財を用いて検証することが必要であるだろ
テーマである「学生視点のマーケティング」を念頭に
う。
置き、学生である我々に身近な消費行動である「ネタ
また、本研究では、商品を「クチコミを作るモノ」
消費」を解明した。今後この消費行動が、学生のみな
と認識した消費者が、その先にどのような動機を持っ
らず世代を超えて行われることで、「つながり」を生
ているのか、についてまで探ることが出来なかった。
み出すことが出来れば、マーケティングの枠にとらわ
ラダリング手法などを用いてより高次の動機を明ら
れない価値創造が可能になることをひとつの意義と
かにし、その違いを見ることで、消費者の行動にも何
したい。
らかの違いが見出される可能性がある。
さらに、今回我々は、クチコミの量的側面に焦点を
当てて研究を進めたが、そこで発信されるクチコミの
内容については触れることが出来なかった。広く情報
を拡散してくれる消費者の存在は重要であると言え
るが、果たしてそのクチコミが企業にとって有効なも
34
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36
補録―本アンケート調査票
ネタ消費に関するアンケート
1.
あなたの性別を教えてください
(男・女)
2.
あなたの年齢を教えてください
(
3.
あなたの居住形態はどれですか
(ひとり暮し・実家暮し・寮・ルームシェア・その他:
4.
あなたの人付き合いに対する態度について当てはまるものはどれですか(複数回答可)
5.
才)
・
友人知人を自宅に招く事が多い
・
親密な付き合いをする友達がいる
・
人から相談を受けることが多い
・
人付き合いは面倒くさい
・
いろいろな人と知り合いたい
・
広く浅く大勢の人と付き合いたい
・
人数が少なくても深い付き合いをしたい
・
趣味やスポーツの仲間がいる
・
電話等で相手と顔を合わさないで話す方が何でも話せる
・
友人との連絡はメールやアプリで済ませる
・
声をかければ必ず付き合ってくれる友人がいる
・
一度も会った事のないネット上の知人がいる
・
ネットで知り合って会うようになった知人がいる
・
当てはまるものはない
)
ネット上のコミュニティで得た情報を信頼しますか
(信じる・まあまあ信じる・半信半疑・あまり信じない・信じない)
6.
テレビは1日にどのくらい見ますか
(5 時間以上・3-4 時間・2-3 時間・1-2 時間・1 時間-30 分・30 分未満・毎日は見ない→(週
7.
回)
)
雑誌はどのくらいの頻度で読みますか
(毎日・週 2-3 回・週 1 回・月 2-3 回・月 1 回・半年に 1 回・それ以下)
8.
新聞はどのくらいの頻度で読みますか
(毎日・週 2-3 回・週 1 回・月 2-3 回・月 1 回・半年に 1 回・それ以下)
9.
ラジオはどのくらいの頻度で聞きますか
(毎日・週 2-3 回・週 1 回・月 2-3 回・月 1 回・半年に 1 回・それ以下)
10.
SNS は1日にどのくらい使用しますか
(5 時間以上・3-4 時間・2-3 時間・1-2 時間・1 時間-30 分・30 分未満・毎日は使わない→(週
11.
ネット(SNS 以外)は1日にどのくらい使用しますか(トータルすると)
(5 時間以上・3-4 時間・2-3 時間・1-2 時間・1 時間-30 分・30 分未満・毎日は使わない→(週
12.
回)
)
Twitter を利用しますか
(はい・いいえ)
37
回)
)
13.
Twitter を利用している方にお聞きします
① フォロー・フォロワーの人数は何名くらいですか。だいたいの人数でかまいません。
(フォロー
人・フォロワー
人)
②どのようなアカウントをフォローしていますか(複数回答可)
(友人知人・ネット上の友人知人・有名人・bot・企業アカウント・ニュース情報系アカウント・面白い
と思ったアカウント・その他)
③あなたの Twitter の利用の仕方についてあてはまるものはどれですか(複数回答可)
・
自分で発信する
・
人に返信する
・
公式アカウントのツイートをリツイートする
・
おもしろいと思ったツイートをリツイートする
・
「お気に入り」をよくする
・
芸能人のツイートを見る
・
ただ見ているだけ
④発信頻度はどれくらいですか
(1 日 5 回以上・1 日 3-5 回・1 日 1-2 回・週 2-3 回・週 1 回・月 2-3 回・月 1 回・あまりつぶやかない)
14.
Facebook を利用していますか
(はい・いいえ)
15.
Facebook を利用している方にお聞きします
① 友達の数は何名くらいですか(だいたいの人数でかまいません)
(
人)
② あなたは Facebook で投稿をしますか
(毎日・週 2-3 回・週 1 回・月 2-3 回・月 1 回・半年に 1 回・それ以下・あまり投稿しない)
16.
あなたの情報に対する動きとして、当てはまると思うものはどれですか
(6=とてもあてはまる、5=ややあてはまる、4=どちらかというとあてはまる、3=どちらかというとあ
てはまらない、2=あまりあてはまらない、1=あてはまらない)
①
新しいブランドや製品について友人に話すのが好きだ
(6・5・4・3・2・1)
②
多くの種類の製品について人にアドバイスするのが好きだ
(6・5・4・3・2・1)
③
友人から製品・店・セールの情報についてよく聞かれる
(6・5・4・3・2・1)
④
友人に様々な商品についてどこで買うのがいいかおすすめできる
(6・5・4・3・2・1)
⑤
新しい製品やセール情報について、よく知っていると思われている
(6・5・4・3・2・1)
⑥
普段、アイスについて友達と話す
(6・5・4・3・2・1)
38
⑦
アイスに関してよく知っている
(6・5・4・3・2・1)
⑧
ここ半年で、だれかにアイスをおすすめした
(6・5・4・3・2・1)
⑨
おすすめのアイスを人から聞かれることが多い
(6・5・4・3・2・1)
⑩
友人とアイスを選んでいるとき、友人におすすめ商品などの情報を話す方だ。もしくはそういった情
報を友人から聞く方だ。
(6に近づくほど話す方、1に近づくほど聞く方としてお答えください。
)
(6・5・4・3・2・1)
17.
あなたはよくアイスクリームを食べますか
(よく食べる・食べる・たまに食べる・あんまり食べない・食べない)
18.
コンビニをどのくらい利用しますか
(毎日・週 2-3 回・週 1 回・月 2-3 回・月 1 回・それ以下)
*「ガリガリ君コーンポタージュ」についてお聞きします
19.
この商品を知っていますか
(はい・いいえ)
20.
設問 19 で「はい」と答えた方にお聞きします
①この商品について興味を持ちましたか
(はい・いいえ)
②この商品について購入・利用したいと思いましたか
(はい・いいえ)
③気になる商品だと感じましたか
(はい・いいえ)
(1)
①〜③の設問のうち1つでも(はい)とお答えした人にお聞きします。
「はい」と答えたのはなぜですか?最もあてはまるものをお答えくださいおいしそうだから食べてみたい
・
おいしそうだから誰かに教えたい
・
おもしろいから食べてみたい
・
おもしろいから教えたい
・
人気だから食べてみたい
・
人気だから誰かに教えたい
・
新商品・限定品だから食べてみたい
・
新商品・限定品だから誰かに教えたい
・
広告や CM がいいから食べてみたい
・
広告や CM がいいから誰かに教えたい
・
友人と分け合いたいから食べてみたい
・
話のネタにしたい(ネット上も含む)
39
・
まずそうだから食べてみたい
・
まずそうだから誰かに教えたい
・
その他(
)
④意識してこの商品についての情報に接するようになりましたか
(はい・いいえ)
⑤家族・友人・知人などに尋ねましたか
(はい・いいえ)
⑥インターネットで探索しましたか
(はい・いいえ)
⑦この商品を何回購買しましたか
(0回・1回・2回・3回以上)
⑧この商品について友人・知人に話しましたか
(はい・いいえ)
(1)Yes の人はどの段階に話しましたか(複数回答可)
(購入せずに話した・購入後に話した)
⑨SNS やブログ、掲示板に投稿しましたか
(はい・いいえ)
(1)Yes の人はどの段階に投稿しましたか(複数回答可)
(購入せずにした・購入後にした)
⑩この商品について人におすすめ、アドバイスをしましたか
(はい・いいえ)
(1)Yes の人はどの段階にしましたか(複数回答可)
(購入せずにした・購入後にした)
*「ハーゲンダッツの新商品
21.
パンプキン」についてお聞きします
この商品を知っていますか
(はい・いいえ)
22.
設問 21 で「はい」と答えた方にお聞きします。
①この商品について興味を持ちましたか
(はい・いいえ)
②この商品について購入・利用したいと思いましたか?
(はい・いいえ)
③気になる商品だと感じましたか
(はい・いいえ)
(1)①〜③の設問のうち1つでも(はい)とお答えした人にお聞きします
「はい」と答えたのはなぜですか?最もあてはまるものをお答えください
・
おいしそうだから食べてみたい
40
・
おいしそうだから誰かに教えたい
・
おもしろいから食べてみたい
・
おもしろいから教えたい
・
人気だから食べてみたい
・
人気だから誰かに教えたい
・
新商品・限定品だから食べてみたい
・
新商品・限定品だから誰かに教えたい
・
広告や CM がいいから食べてみたい
・
広告や CM がいいから誰かに教えたい
・
友人と分け合いたいから食べてみたい
・
話のネタにしたい(ネット上も含む)
・
まずそうだから食べてみたい
・
まずそうだから誰かに教えたい
・
その他(
)
④意識してこの商品についての情報に接するようになりましたか
(はい・いいえ)
⑤家族・友人・知人などに尋ねましたか
(はい・いいえ)
⑥インターネットで探索しましたか
(はい・いいえ)
⑦この商品を何回購買しましたか
(0回・1回・2回・3回以上)
⑧この商品について友人・知人に話しましたか
(はい・いいえ)
(1)Yes の人はどの段階に話しましたか(複数回答可)
(購入せずに話した・購入後に話した)
⑨SNS やブログ、掲示板に投稿しましたか
(はい・いいえ)
(1)Yes の人はどの段階に投稿しましたか(複数回答可)
(購入せずにした・購入後にした)
⑩この商品について人におすすめ、アドバイスをしましたか
(はい・いいえ)
(1)Yes の人はどの段階にしましたか(複数回答可)
(購入せずにした・購入後にした)
41
23.
これらの商品を売れると思う順番に、商品番号を並び替えてください
(
24.
)
これらの商品を話題になると思う順番に、商品番号を並び替えてください
(
25.
)
あなたが人に話したいと思う商品はどのような商品ですか?
(
)
以上でアンケートは終了となります。
ご協力ありがとうございました。
補録―売上 POS データ
ソフトサンダー
まんじゅう
大人のきのこ
の山
大人のたけの
この里
じゃがりこホタ
テバター醤油
9月24日
25日
26日
27日
28日
29日
30日
10月1日
2日
3日
4日
150
100
116
65
21
28
―
―
―
―
―
一日当たりの
売上数(個)
順位
80.0
1
6
16
13
12
1
9
4
13
4
6
―
7.6
4
10
17
21
12
2
21
15
15
12
8
2
12.3
3
26
12
22
30
4
16
16
16
10
18
1
15.5
2
(提供:当大学生協部)
42
Fly UP