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日機連 15 環境安全−7−1
平成 15 年度
循環型社会における鉄リサイクル
に関する調査研究報告書
平成 16 年 3 月
社団法人
日本機械工業連合会
社団法人
日本鉄リサイクル工業会
序
近年、技術の発展と社会との共存に対する課題がクローズアップされ、機械工業にお
いても環境問題、安全問題が注目を浴びるようになってきております。環境問題では、
京都議定書の発効が間近となり、排出権取引やCDMなどの柔軟性措置に関連した新ビ
ジネスの動きもあり、政府や産業界は温室効果ガスの削減目標の達成に向けた 取り組
みを強化しているところであります。また、安全問題も、EUにおけるCEマーキング
制度の実施や、平成12年には厚生労働省から「機械の包括的な安全基準に関する指針」
が通達として出されるなど、機械工業にとってきわめて重要な課題となっております。
海外では欧米諸国を中心に環境・安全に配慮した機械としての具体的な形が求められ
てきており、それに伴う基準、法整備が進められているところであります。グローバル
な事業展開を進めているわが国機械工業にとって、この動きに遅れることは死活問題で
あり早急な対処が必要であります。
こうした内外の情勢に対応するため、当会では早くから取り組んできた環境問題や機
械標準化に係わる事業を発展させて、環境・社会との共存を重視する機械工業の在り方
を追求して参りました。平成15年度には、海外環境動向に関する情報の収集と分析、
環境適合設計手法の標準化、それぞれの機械の環境・安全対策の策定など具体的課題を
掲げて活動を進めてきました。
こうした背景に鑑み、当会では機械工業の環境・安全対策のテーマの一つとして社団
法人日本鉄リサイクル工業会に「循環型社会における鉄リサイクルに関する調査研究」
を調査委託いたしました。本報告書は、この研究成果であり、関係各位のご参考に寄与
すれば幸甚であります。
平成16年3月
社団法人
会
長
日本機械工業連合会
相 川 賢 太 郎
はじめに
本報告書は、社団法人日本鉄リサイクル工業会が社団法人日本機械工業連合会から受
託した「循環型社会における鉄リサイクルに関する調査研究」の成果をまとめたもので
あります。
今世紀においては循環型資源回収のシステム構築が、社会全体の最重要課題となるこ
とは疑いありません。鉄リサイクル産業はあらゆる産業の生産活動と密接に関わってお
ります。また、歴史的に循環型社会を形成するうえで、重要な産業として参加してきま
した。
平成 13 年 4 月に家電リサイクル法が施行され、平成 17 年 1 月には自動車リサイク
ル法が施行されます。わが国の鉄スクラップは、国内の需要に応えるのみならず、急速
に成長するアジア近隣国への主要な供給源ともなりつつあります。家電、自動車に使用
される鉄鋼製品と鉄スクラップの環境に配慮した循環を実現して、国の内外への鉄鋼原
料の安定供給に貢献することが期待されています。
本調査が今後の鉄リサイクル産業、ひいては循環型社会の構築の一助となることを希
望します。本調査の実施にあたり、ご尽力いただきました委員各位ならびに関係の方々
に深くお礼申し上げます
平成 16 年 3 月
社団法人
日本鉄リサイクル工業会
会
長
鈴木
孝雄
平成 15 年度「循環型社会における鉄リサイクルに関する調査研究」
1.
委員名簿
氏名
委員長 中島賢一
委 員 上原勝治
〃
堀井光雄
〃
宮崎法峰
〃
荒川洋二
〃
土井 鼎
会社名
株式会社 リーテム
株式会社 関東エコリサイクル
社団法人 日本自動車工業会
株式会社 ミヤザキ・メタルサービス
荒川産業株式会社
社団法人 日本鉄リサイクル工業会
2. 調査機関
氏名
会社名
林 誠一
株式会社 日鉄技術情報センター
松尾 悟
〃
3. 執筆協力者
氏名
会社名
杉浦紳之
東京大学原子力研究総合センター
佐藤 泉
佐藤 泉法律事務所
進藤 眞
株式会社 バイオ・ジェネシス・テクノロジ
ー・ジャパン
小林陽三
〃
役職
代表取締役社長
代表取締役社長
環境統括部調査役
代表取締役
代表取締役
専務理事
役職
市場調査部長
主席研究員
役職
助手・医学博士
弁護士
技術顧問
営業部・部長
目
次
はじめに
第 1 章 鉄リサイクルの現状
1.鉄スクラップ需給の現状
(1)鉄鋼生産の 32%がリサイクル鉄 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
1)わが国における鉄鋼生産の特徴
2)鉄源需給の現状
(2)鉄スクラップの供給ソース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
1)老廃屑増、加工屑低迷の方向変わらず
2)国内流通の現状
(3)輸出の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
1)鉄スクラップ輸出の推移
2)輸出マーケットの特徴
(4)価格動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
1)鉄スクラップ価格の特徴
2)近年における価格推移
3)価格変動要因
2.鉄スクラップ供給業態の現状
(1)調査対象と回収状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
(2)調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
1)事業所内の設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
2)雇用者と作業環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
3)産業廃棄物業等の許可取得状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
4)許可証取得の難易度について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
5)自動車リサイクル法に対応して ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
6)家電リサイクル法に関して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
7)ISO取得に関して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
3.放射性物質混入対策の現状(巻末)参照
第2章 機械製品に係わる鉄リサイクルの現状と課題に関する調査研究
1.家電 4 品目とパソコンリサイクル
(1)特定家庭用機器再商品化法(以下家電リサイクル法)の概要とその進捗状況
1)家電リサイクル法成立の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
2)家電リサイクル法の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
3)家電リサイクル法の実績評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38
(2)家電 4 品目における鉄使用量およびスクラップ発生量推移
1)品目別使用素材構成推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44
2)鋼材別使用量推移と回収スクラップ量予測の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47
3)家電 4 品からの鉄スクラップ発生量の推定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48
4)鋼材品種別使用量推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49
(3)パソコンのリサイクルについて
1)パソコンリサイクルの推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51
2)パソコンの再資源化目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52
3)家庭系パソコン回収実績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52
(4)EUの家電リサイクルについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53
1)概要
2)WEEE指令の目的
3)WEEEの対象商品
4)再生(Recovery)率目標
5)WEEE指令の位置づけ
6)EUのWEEE指令と我が国家電リサイクル法との比較
2.自動車リサイクル
(1)使用済み自動車処理の現状とASR
1)使用済み自動車処理の経緯と問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
2)ダスト処分軽減努力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58
3)業態別使用済み自動車処理量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60
4)現状のシュレッダー稼働率(試算) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62
5)推定シュレッダー稼働率でみたASR発生量の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
6)自動車リサイクル法におけるASR処分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66
備考;最近のシュレッダー事業者に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69
(2)自動車リサイクル法
1)法律の趣旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71
2)自動車リサイクル法の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72
3)既存制度との関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73
4)対象車両 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73
5)施行までのスケジュール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75
6)3品目の取引窓口・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75
7)破砕業およびプレス・せん断処理業の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77
8)破砕業「標準作業書」モデル(各個表は巻末参照) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 78
9)排水処理の問題(鉄リサイクル業界における排水浄化と環境対応) ・・・・・・・・・・・ 81
(3)自動車リサイクルを巡るさまざまな動き
1)中古車部品流通業の発達・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90
2)新概念「全部利用」の出現(解体業のスクラップ業化) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92
3)ASR処理の高度化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96
4)RDFの現状と展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105
5)自動車メーカーの取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115
(4)自動二輪車のリサイクル
1)自動二輪車の市場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118
2)自動二輪車使用済自動車台数の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119
3)自動二輪車の材料構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119
4)自動二輪車のリサイクルシステム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120
3.鉄スクラップ多消費化の課題
(1)機械分野から発生する鉄スクラップの位置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121
(2)循環性不純元素(トランプエレメント)の問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121
1)鉄スクラップのトランプエレメント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121
2)鉄スクラップに含まれる不純成分の現状と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123
第3章 鉄スクラップ輸出の現状と課題
1.積み出し港の現状と課題
1)全国に展開する積み出し港と問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124
2)東京湾と東京港の果たす位置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125
3)東京都の需給展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 126
4)東京都港湾局港湾整備部への申請事項と進捗状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 129
5)リサイクルポートの推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 131
6)リサイクルポート推進協議会「中国・九州ブロック交流会」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133
7)三河港自動車港湾シンポジウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137
8)石狩湾新港説明会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139
9)同
現地調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141
10)室蘭港 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141
2.主要輸出マーケットの展望
(1)韓国
1)鉄鋼生産の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 143
2)鉄スクラップ需給・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144
3)鉄スクラップ輸出入動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 145
4)自給化の展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146
(2)中国
1)鉄鋼生産の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
2)鉄スクラップ需給・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 149
3)鉄スクラップ輸入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 150
4)鉄鋼需給と原料の中長期展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 151
5)鉄スクラップの展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154
(3)中国の再生金属産業政策
1)中国廃鋼鉄応用協会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156
2)中国有色金属工業会・再生金属分会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156
3)現地リサイクル施設の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 160
巻末資料
1. 破砕業・標準作業書(モデル)
2. 廃棄物処理法の現状と展望;佐藤
3. 放射性物質混入対策の現状
泉氏
講演記録
第1章 鉄リサイクルの現状
わが国の鉄リサイクルは、法制定にかかわらず自主的に実施されてきたが、21 世紀に入
り循環型経済社会に移行するに及んでいよいよ社会における役割が増そうとしている。
しかしながら発生品を扱うことによる価格リスクや、相次ぐ法体系の整備により、産業
の今後のあり方を含め検討が必要な時期にある。そこで鉄リサイクルを取り巻く環境の変
化や業態の現状について調査を行い、打つべき対策の基礎情報としてとりまとめた。
1.鉄スクラップ需給の現状
(1)鉄鋼生産の 32%がリサイクル鉄
1)わが国における鉄鋼生産の特徴
わが国における粗鋼生産は 2000 年度に1億トン台に回復したあと、1億トンをキー
プして推移しており、2003 年度もほぼ前年並みの1億 1,000 万 t となると見込まれて
いる。(社)日本鉄鋼連盟が昨年末に見通した 2004 年度も公共投資の不振などで内需
に活気は出ないものの1億 900 万トン程度となり、依然として1億トンがキープでき
るとみている。推定通り推移すれば、5年連続して1億トン台が続く。
しかしながら、好調な生産の要因は、鉄鋼輸出に支えられたものであり、内需が活気
を回復したものではない。2002 年度の粗鋼需給をみると、粗鋼生産の前年度比 7.6%増
加は、輸出 12.9%増が牽引し、内需(見掛消費)は 3.9%増加したに過ぎない。しかも
鉄鋼輸出を品種別にみると、熱延鋼板類、冷延鋼板類、亜鉛メッキ鋼板などの鋼板類が
中心となっており、これらは高炉メーカーの生産品である。従って粗鋼生産 7.6%増を
製鋼法別にみると、転炉鋼 8.4%増に対し、電炉鋼は 5.3%と格差がある。電炉鋼は建
図表1−1 粗鋼生産推移
120,000
1000t
35.0
%
100,000
30.0
80,000
25.0
60,000
電炉
転炉
電炉シェア ー
40,000
20,000
20.0
15.0
出所;日本鉄鋼連盟
1
0.3
0.4
0.1
0.2
99
0.0
98
97
96
95
94
93
92
91
10.0
19
90
0
設部門に特化した内需を主体としている。この結果、90 年代央まで 30%をキープして
いた電炉鋼シェアーは 99 年度に 30%を切り、その後も低下を続け 2002 年度は 26.6%
となっている。このような生産構造の特徴は 2003 年度も引継ぎ、かつ 2004 年度も同
様に推移すると見られるため、転炉鋼と電炉鋼の生産格差は拡がる可能性が高い。
図表1−2 粗 鋼 需 給
年度
2001
2002
粗鋼
輸出
102,064
34,309
109,789
38,728
前年度比
7.6
12.9
出所;日本鉄鋼連盟「統計月報」
単位1000t
、%
見掛消費
輸入
4,009
3,499
-12.7
71,764
74,560
3.9
図表1−3 普通鋼材品種別輸出量
鋼管
電気
鋼板
メッキ
亜鉛
冷延
鋼板
類
熱延
鋼板
類
厚中
板
線材
2001
2002
棒鋼
形鋼
千t
10,000
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
出所;日本鉄鋼連盟
2)鉄源需給の現状―所要鉄源の 32%が鉄スクラップ
2002 年度の粗鋼生産1億 979 万 t に要した鉄源は銑鉄 8,089 万 t(全体の 67.9%)
、
鉄スクラップ 3,827 万 t(同 32.1%)だった。約3割強のリサイクル鉄により、約1億
トンの鉄鋼生産が行われたことになる。
次にこれを製鋼法別にみると、転炉鋼と電炉鋼で前年度に比べ配合が異なり、転炉鋼
の鉄スクラップ使用配合比は前年度の 7.3%から 9.2%へ増加した。一方、電炉鋼は同
96.6%から 96.9%へ 0.3 ポイント増加したに留まった。
この結果、鉄スクラップの消費量(注;この消費量はリターン屑を含むトータルであ
る)は 2001 年度の 3,490 万 t から 2002 年度は 3,827 万 t に 337 万 t 増加したが、うち
転炉鋼が 220 万 t 増加している(電炉鋼は 120 万 t の増加である)
。転炉鋼の鉄スクラ
ップ消費増は、主要メーカーで高炉改修があったことや、好調な輸出増加に、高炉の稼
動が対応しきれなかったこと、あるいは 2002 年度前半では鉄スクラップ価格が低位だ
ったことなどが背景にある。
電炉鋼は鉄スクラップを主原料としていることから、その生産の伸び悩みは、鉄スク
ラップ消費の低迷に繋がっていたが、近年では転炉鋼も使用を増加させており、従って
電炉シェアーの低迷がスクラップ消費減とはならない状況に変わってきている。
2
なお、鉄スクラップは製鋼用の他、鋳物生産にも使われており、2002 年度の消費量
は 593 万 t(前年度比 3.8%増)だった。この結果、製鋼用 3,827 万 t を加えた総鉄ス
クラップ消費量は 4,420 万 t となり、前年度に比べ 360 万 t(8.8%)増加した。さら
に海外で消費された鉄スクラップ輸出 548 万tを加えると、実に約 5,000 万 t が日本国
内で回収され消費された量となる。
図表1−4 製鋼用炉別鉄源消費内訳
転炉鋼
2001
2002
75,745
79,939
電炉鋼
2001
2002
1,015
952
単位1000t
、%
計
鋳物生産
2001
2002
2001
76,760
80,891
685
2002
689
銑
鉄
92.7
90.8
3.4
3.1
68.7
67.9
10.7
10.4
鉄
屑
5,949
8,137
28,947
30,131
34,896
38,268
5,715
5,931
7.3
9.2
96.6
96.9
31.3
32.1
89.3
89.6
鉄 源 計
81,694
88,076
29,962
31,083 111,656
119,159
6,400
6,620
粗鋼生産
製鋼歩留
73,970
90.5
80,208
91.1
28,094
93.8
29,581 102,064
95.2
91.4
109,789
92.1
4,171
4,272
鋳物生産
出所;経産省「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計月報」
(2)鉄スクラップの供給ソース
1)
老廃屑増、加工屑低迷の方向性変わらず
2002 年度の鉄スクラップ消費量 4,420 万tに対する供給ソースは、自家発生スクラ
ップ 1,312 万 t(前年度比 84 万 t、6.8%増)
、国内市中屑 3,430 万 t(同 266 万 t、8.4%
増)
、輸入屑 2.3 万 t(同 1.2 万 t、109.1%増)だった。鉄鋼生産が増加した分、自家
発生スクラップが増加したが、国内市中屑の増加(約 270 万 t)が大きく、全体を牽引
している。このうち加工スクラップは 638 万 t となり、前年度に比べ 4.3 万 t(4.3%)
減少したが、老廃スクラップは 2,838 万 t から 2,996 万 t へ 158 万t(5.6%)増加し
た。過去の推移をみると、加工スクラップは 1990 年に 910 万 t の過去最高量となった
あと、バブル崩壊後も国内製造業の低迷の影響を受け、発生は伸び悩んでいる。しかし、
老廃スクラップは景気変動の影響を受けながらも趨勢としては増加の方向にあり、2002
年度もその傾向は変わっていない。
一方、輸入スクラップは、80 年代央まで 300 万 t を超える水準が続いていた。しか
しその後、老廃スクラップを中心とする市中スクラップ発生増により自給化が進み、90
年代央より輸入を輸出が上回る状況となっている。2002 年度の輸入量 2.3 万 t は一部
需給アンバランス地域における調整材と見られる。
3
図表1−5 鉄スクラップ供給量
2001
12,281
31,642
11
43,932
自家発生屑
国内市中屑
輸 入 屑
計
図表1−6 国内市中屑内訳
単位1000t、%
2002 前年度比
13,117
6.8
34,299
8.4
23
109.1
47,439
8.0
国内市中
過欠補正
修正国内
加工屑
老廃屑
出所;経産省「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計月報」
単位1000t
、%
2002 前年度増減
34,299
2,662
2,034
-1,130
36,333
1,532
6,376
-43
29,957
1,575
2001
31,637
3,164
34,801
6,419
28,382
出所;「鉄鋼統計月報」及び日本鉄源協会推計
図表1−7 市中購入スクラップ推移
百万㌧
35
30.0
30
28.4
27.6
27.5
26.3
26.2
25.8
24.6
25
24.2
23.6
23.3
25.2
24.7
24.5
22.7
21.4
21.9
21.0
19.9
19.5
20
17.5
16.7
16.4
老廃スクラップ
18.2
16.6
15.2
15
14.3
12.9
13.0
11.1
10
7.7
6.8
7.4
6.2
6.4
6.3
7.4
6.6
7.9
7.2
6.4
6.3
6.5
6.8
6.6
8.6
9.1
8.7
7.9
7.1
7.0
6.8
加工スクラッ
プ
7.0
7.4
7.2
6.3
6.4
6.7
6.4
6.4
5
0
73
74
75
76
77
78
79
80
81
82
83
出所;
日本鉄源協会
84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000
01
02
年度
2)国内流通の現状
鉄スクラップは回収後、製鋼時の溶解効率を上げるため、重量物については切断、切
り揃えなどのサイジング、鋼板製品についてはシュレッダーによる破砕、容器等は減容
の加工処理が行われたあと、製鋼原料として流通している。(社)日本鉄源協会は検収
統一規格を設定し、流通銘柄の共通化を図っているが、合わせて全国の流通実態につい
て調査を行っており、2002 年間の流通調査結果を利用して以下に分析した。
① 流通品目の現状とその変化
2002 年間の流通品目のうち最大はヘビースクラップであり、全体の 60%弱を占める。
次いで新断スクラップ(同 18%)、シュレッダースクラップ(7.2%)
、鋼ダライ(6.9%)
、
プレススクラップ(3.4%)などである。このうち、ヘビー屑、シュレッダー屑、プレ
ス屑などが老廃スクラップに類し、新断、鋼ダライ、銑スクラップが加工スクラップに
類する。ヘビースクラップは5種類の規格に分かれているが、H2がヘビー屑の3割弱
4
(全市中屑の 16.4%)を占めており最多である。
図表1−8 流通品目(2002年)
鋼ダライ粉(含D
プレス)
6.9%
銑スクラップ
4.1%
配 合 甲 山 (可
鍛コロ)
1.0%
その他
1.2%
プ レ ススクラッ
プ
3.4%
新断ス クラッフ ゚ (含
新断プレス )
17.6%
シュレッダースク
ラップ
7.2%
HS1,HS2
14.7%
H3、H4
12.2%
H1
15.3%
H2
16.4%
ヘビースクラップ
出所;日本鉄源協会「流通量調査」
流通調査が年間に行われた 1998 年と比較すると、トータルの流通量は4年前に比べ
あまり変わっていないが、流通品目の内容に何点か特徴が挙げられる。
・ヘビースクラップの構成比は 56.1%から 58.7%へ増加しているが、
内訳をみると H1、
H2、H3∼H4 のその他であり、HS クラスの上級屑は 15.5%から 14.7%へ約 30 万 t 減少
している。上級ヘビー屑が輸出され、従って下級ヘビー屑の国内流通が増加したという
見方が想定出来る。
・新断は、自動車生産や、部品生産が堅調に推移しており、流通量は微増した。
・シュレッダースクラップは 11.1%から 7.2%へ、流通量も 300 万 t から 200 万tへ約
100 万t減少している。ダスト処分が管理型へ移行したあと、処分費の高騰が続いてお
り、採算悪化から稼動を抑えている状況が現れていると見られる。
・プレス屑は空き缶などの C プレスを中心に、89 万tから 91 万tに、堅調に流通して
いる。
・鋼ダライ粉は、ねじ加工時の切り屑などが該当するが、製造業の生産活動低迷や海外
移転の進展などから 192 万tから 189 万tに微減した。
このように国内流通品目は、発生個所産業の影響や、リサイクルシステム及び輸出な
どの影響を受けて変動している。
5
図表1−9 鉄スクラップ品種別流通量
品 種 別
国
内
購
入
ス
ク
ラ
ッ
プ
炭
素
鋼
ス
ク
ラ
ッ
プ
H10
(1,000㌧)
配 合 甲 山 (可鍛コロ)
130
新断スクラップ (含新断プレス)
4,636
ヘス
HS1,HS2
4,267
ビク
H1
4,053
|ラ
H2
4,087
ッ そ の 他
3,016
プ 小
計
15,422
シュレッダースクラップ
3,057
プ レ ススクラップ
888
鋼ダライ粉(含Dプレス)
1,923
そ
の
356
他
計
26,412
銑 ス ク ラ ッ プ 他
1,083
合
計
27,495
加 工 ス ク ラ ッ プ
老 廃 ス ク ラ ッ プ
7,642
19,853
(%)
(単位:1,000㌧・%)
H14
H14-H10増減
(1,000㌧) (%) (1,000㌧) (%)
0.5
16.9
15.5
14.7
14.9
11.0
56.1
11.1
3.2
7.0
1.3
96.1
3.9
100.0
272
4,771
3,965
4,148
4,452
3,309
15,874
1,944
910
1,867
317
25,954
1,110
27,064
1.0
17.6
14.7
15.3
16.4
12.2
58.7
7.2
3.4
6.9
1.2
95.9
4.1
100.0
142
136
-302
95
365
294
451
-1,113
22
-56
-39
-458
27
-431
0.5
0.8
-0.9
0.6
1.6
1.3
2.6
-3.9
0.1
-0.1
-0.1
-0.2
0.2
0.0
27.8
72.2
7,747
19,316
28.6
71.4
106
-537
0.8
-0.8
(注)加工スクラップとは、新断、鋼ダライ粉及び銑スクラップをいい、老廃スクラップとはこれ以外をいう。
出所;日本鉄源協会:流通量調査
②地域特性
流通量を全国9地域別にみると、供給と需要にギャップが存在する地域と、均衡して
いる地域に分けられる。関東が全国の最大の供給地域であり、流通量の約 26%を供給
しているにも関わらず、需要最大地域は近畿であり、近畿は関東を始め東海や中四国か
ら供給を受けている。このような状況を「西送り」と呼んでいるが、2002 年の西送り
量は約 100 万t(月間9万t弱)であった。関東の供給力は日本最大の鉄鋼蓄積量を背
景としており、需要地の移動が無い限り長期にわたり西送り現象は続くことになる。
一方、北海道、東北など他の地域では需給は均衡し、むしろ供給量が上回っている。
図表1−10 地域別需給
10000
千t
購入
出荷
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
北海道
東北
関東
北陸
東海
出所;日本鉄源協会「流通量調査」
6
近畿
中四国
九州
(3)輸出の現状
1)
鉄スクラップ輸出の推移
老廃スクラップ発生増加にともない自給化がすすみ、かつ国内需要が低迷するなか、
販路を海外に求める輸出が 90 年代初めより顕著化し、
90 年代央には輸出国に転換した。
95 年当時の鉄スクラップ輸出量約 100 万tは、その後アジア周辺国に定着し 2001 年度
には 691 万tとわずか6年間で7倍近い伸びとなった。2003 年度は年初の 40 万t/月
から6月以降 50 万tを越える水準で推移しており、再び 600 万 t 近い輸出量となるこ
とが見込まれる。
千t 図表1-11 鉄スクラップ輸出入推移
8,000
図表1-12 鉄ス クラップ輸出向け先(年度)
単位1000t
7,000
2001
2,148
3,163
905
6,909
3,000
韓国
中国
台湾
計(含む他)
2,000
出所;財務省「通関統計」
6,000
輸入
輸出
5,000
4,000
2002
1,911
2,170
866
5,477
前年度差
-237
-993
-39
-1432
1,000
2 00 1
2 00 2
99
2 00 0
97
98
95
96
93
94
91
92
89
90
87
88
85
86
-
出所;日本鉄源協会
2)輸出マーケットの特徴
鉄スクラップ輸出の向け先は 2000 年度まで韓国、中国、台湾の順で韓国が最大のマー
ケットだったが、2001 年度以降は中国が第 1 位となり、中国、韓国、台湾の順である。
この 3 カ国で全体の 90%を占めており、アジア近隣国の依存度が高い。近隣3カ国に
偏っているのは、需要が強いことに加え、専用岸壁がないため、最大 5000 トンクラス
の積み出ししか出来ないという、ハード面の事情がある。
韓国が鉄鋼蓄積量の増加により、2005 年∼2010 年の間に自給化が進み現在の 700 万
t(うち日本 200 万 t)の輸入がなくなる可能性があることからも、今の段階で東南ア
ジアやインドなど遠海地域マーケットを開発する必要がある。そのためにも 1 万トンク
ラスが積み出せる専用岸壁が必要である(第3章で抄録)。また、中国は需要が拡大基
調にあるにも係わらず 2002 年度は 2001 年度比 100 万t減少した。日本からのゴミ込み
の輸出に対し輸入規制を実施したことが大きい。輸入規制は 2004 年に入ってもなお継
続中であり、現状では高炉リターン屑などの上級スクラップが主体となっている。しか
し鉄スクラップ需要は強く、日本に対してのニーズも高い。相手国の事情を考慮したル
ールある対応が求められており、(社)日本鉄リサイクル工業会は国際ネットワーク委
員会を設置し、サプライヤーの立場から直接ユーザーとの話し合いを展開している。
今や相手国にとって、主要な供給ソ−スの一つとしての役割を担うに至ってきており、国内
電炉主体から海外へマーケットを広げるグローバル化が進展しつつある。
7
(4)価格動向
1)鉄スクラップ価格の特徴
鉄スクラップは生産品でなく、発生品であるため計画的な供給が困難である。また、回収から
溶解するメーカーまでの流通が複雑で、一つ一つが小さな存在であり、価格をコントロールす
るほどの力を持っていない。加えて主たる購入者である電炉メーカーの主要製品が小形棒鋼
や形鋼などの市況製品のため、製品価格変動を原料である鉄スクラップ購入価格にはねかえ
さざるを得ない事情がある。
従って鉄スクラップ価格は買い手市場で決まっている。在庫置場が狭く、購入態度が短期
的になりがちな点もある。このような特徴から、鉄鉱石のように年間契約とはなり切れず、市況
品として変動してきた。
2)近年における価格推移
価格が安定しないことによる経営の不安定さは需給両者にとって大きな課題だった。ところ
がバブル崩壊後は需要側に価格を盛り上げるほどのパワーがないため、乱高下の幅は小さく
なり、かつ低迷したままで推移し、2001 年6月ついに戦後最安値の 6,000 円/t
台を記録する。
その後は上伸に向かい 2003 年3月に 17,000 円/t
まで回復するが、再び調整局面を向かえ6
月の 13,200 円/t
を底に再度上昇、年末には 20,000 円台に達した、年明け後の現在もなお上
伸が続いている。
2002 年度平均は 12,000 円/t
と2001 年度の 7,400 円/t
に比べ 4,600 円/t
上回ったが、2003
年度はさらに回復することが予想される。
一方、鉄スクラップを原料として出来る代表製品の小棒価格は、原料価格上昇を踏まえて
価格改定を実施し、2002 年4月の 28,000 円/t
(東京、19mm)から2003 年3月には 37,100 円
/t
まで回復、11 月には 40,000 円/t
台となった。40,000 円/t
台回復は 1993 年以来ほぼ 10 年
ぶりのことである。この結果、2002 年度の平均は 32,600 円/t
となり、2001 年度の 27,200 円/t
を約 5,400 円/t
上回った。さらに 2003 年度は 38,000 円/t
程度になると見られる。
図表1-12 鉄スクラップ価格推移
円/t
30,000
2000
2001
2002
2003
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
4
5
6
7
8
9
10
出所;日本鉄源協会・3地区平均H2炉前価格
8
11
12
1
2
3
3)価格変動要因
かつて鉄スクラップ価格は、これを原料として出来る代表製品の小形棒鋼価格に連動して
いた。ところがバブルが崩壊し大きな需要の落ち込みとともに輸出が増加していくに従い、変
化が起きている。日本の鉄スクラップ市場がアジア市場と一体化した形になってきている点で
ある。国内価格は国際水準にサヤ寄せされる割合が大きくなり、国内メーカーだけが安い鉄ス
クラップを手当て出来る状況ではなくなってきているのである。2001 年6月から2003 年3月まで
の上伸はまさに、安すぎる国内価格が国際市況に是正されていく過程だった。図表1−13 は、
国内主要電炉メーカーT社の宇都宮及び岡山の公示価格が関東の炉前価格と連動している
ことを良く表しているが、2002 年秋になってT社岡山が増産体制に入った時の価格ビヘイビア
は、米屑価格に近づけることだった。その後もT社価格は米屑の価格変動によく付随している。
そして 2003 年末から2004 年にかけて 20,000 円台となったきっかけは、関東地区からの輸出
成約価格が先行し、T社宇都宮がこれに追従した。
鉄スクラップは国際商品化してきており、韓国や中国における強い需要ニーズが背景にある
が、その価格決定の主導権はアジアにおいて最大の供給ソースであるアメリカにあり、アメリカ
屑の取引価格が鍵となっているのが実情である。日本が鉄スクラップ輸入国であった当時、主
要供給ソースはアメリカだったため、国内市況はアメリカ屑輸入価格に影響される場合があっ
た。しかし、日本がスクラップ輸出国に転じても、輸出先でアメリカ屑の影響を受け、その結果
が国内市況に返っている状況なのである。価格変動は T 社の動静のみならず、グロ−バル化
していることを認識する必要がある。
円/t
25000
図表1−13 米国コンポジット価格とT社鉄スクラップ購入価格及び
関東炉前価格
140
2003.3.1
20000
関東・
炉前
岡山海上
宇都宮陸上
コンホ ゚ジット
120
100
15000
80
60
10000
40
5000
2001.6
20
0
0
9
2. 鉄スクラップ供給業の現状
回収した鉄スクラップは、鉄鋼メーカーや鋳物メーカーで溶解され、新たな鋼材や鋳物
が再生されている。
特に循環型経済に移行し、家電リサイクルは法施行後2年が経過し、自動車リサイクル
では、2005 年1月より法の完全実施が予定されている時、鉄スクラップ加工処理業は廃家
電や使用済自動車の処理には欠かせない業態であることから、実態調査を実施した。この
調査は、業態の現状を明らかにすることと、関連する諸リサイクル法の円滑な実施にあた
って、業態としての課題を抽出することを目的とした。
(1)調査対象と回収状況
(社)日本鉄リサイクル工業会会員全国 790 事業所を対象とした。実施時期は 2003 年8
月 31 日、回収数は 618 事業所、回収率 78%である。全国を7地域に分けて集計したが、
5地域で回収率 80%を超えた。
回答状況
事業所数(a) 回答数(b) 回答率(b/a)
29
64
310
148
101
80
58
790
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
350
24
56
260
91
68
68
51
618
83%
88%
84%
61%
67%
85%
88%
78%
数
100%
90%
300
平 均 78%
80%
250
70%
200
事 業 所 数 (a)
60%
回 答 数 (b)
50%
回 答 率 (b/ a)
150
40%
30%
100
20%
50
10%
0
0%
北海道
東北
関東
中部
10
関西
中四国
九州
(2)調査結果
事業所内に保有する設備と作業環境について聞いた。
1)事業所内の設備
①シュレッダー
加工処理主要設備であり、かつ廃車破砕処理に必要なシュレッダー機は 130 基存在した。
その地域分布は関東が 41 基(31.5%)で一番多く、次いで中部 28 基(21.5%)、九州 16
基(12.3%)
、東北と中四国が 12 基(9.2%)、関西 11 基(9.2%)、北海道 10 基(7.7%)
である。4段階に分けた馬力規模では、約半数(54%)の 70 基が 1000HP 以上であり、
300HP 未満以下は 14 基(11%)であった。
シュレッダー基数
80
70
70
地域別分布(基数)
41
45
40
35
30
60
46
50
28
25
20
40
30
20
7
7
300-150
150未満
10
1000-300
12
10
11
12
関西
中四国
5
0
0
1000HPup
16
15
10
北海道
東北
関東
中部
九州
②ギロチンシャー
サイジングを行うギロチンシャーは調査対象事業所中 534 基存在し、その 41%の 221 基
が関東であった。他では、70 基以下であり、中部 70 基(13.1%)、関西 62 基(11.6%)、東
北 58 基(10.9%)、中四国 56 基(10.5%)、九州 42 基(7.9%)、北海道 25 基(4.7%)と
なっている。切断圧により3段階別規模を調査したが、回答数 478 事業所のうち 500∼
100HP が 276 基(約 58%)で最多だった。
ギロチンシャー基数
300
ギロチンシャー地域分布(基数)
250
276
250
221
200
200
150
150
107
100
95
100
70
58
50
50
0
62
56
25
42
0
500HPup
500-100
100
未満
北海道
11
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
なお、設備調査は、日刊市況通信社が毎年4月時点で行っているものがある。2003 年4
月時点のシュレッダー基数は 181 基、ギロチンシャーは 1,149 基となっており、この調査
と比較すると、シュレッダー基数のうち 71.8%、ギロチンシャーでは 46.5%をカバーして
いることとなる。
日刊市況通信社調査による過去 15 年間の推移をみると、両設備ともバブル期の 80 年代
後半から 90 年代央にかけて、増強が目立ち大型化が進んだ。このうちシュレッダー機はダ
スト処理費負担増などの収益面の圧迫を背景に 97 年∼99 年の 189 基をピークに漸減し
2003 年では 181 基となっている。一方、ギロチンシャーは、ダスト発生量が2∼3%と少
ないこともあり、緩やかながら基数を増加させている。92 年に 1,000 基台に乗ったあと、
97 年には 1,100 基となり、2003 年は 1,149 基となっている。
下図に対前年との増減分を示した。ギロチンシャーは、87 年∼97 年の 10 年間、年間 20
∼50 基増加を続け、98 年以降の増加は年 10 基程度で推移している。特に 80 年後半から
90 年代始めでは大型(注:同調査では 250 馬力以上)の増加が目立つ。一方、シュレッダ
ーは 92 年に年間 30 台近い増加があったが 94 年以降ほとんど増加していない。
140
基数
120
キ ゙ロチン
キ ゙ロ大
シュレッダー
シュレ大
100
80
60
40
20
03.
4
02
.4
01
.4
20
0.4
99
.4
98
.4
97.
4
96
.4
95
.4
94
.4
92
.11
89
.10
88
.7
87
.7
-20
85
.7
0
出所;
日刊市況通信社・
設備調査
③プレス機
調査の結果、全国に 496 基存在する。地域別にみると、関東 182 基(全体の 36.7%)、
中部 84 基(16.9%)、中四国 74 基(14.9%)、関西 57 基(11.5%)、東北 47 基(9.5%)、
九州 32 基(6.5%)、北海道 20 基(4.0%)である。中部と中四国に多いのは新断発生が多
く、新断プレスが必要なためと見られる。なお、このプレス機はほとんどが従来より保有
している缶プレス用の小型のものであり、最近出まわっている使用済自動車Aプレス用の
12
プレス機は少ないと見られる。
地域分布(496)
プレス基数
600
200
496
500
182
180
160
140
400
120
300
100
84
74
80
200
60
40
100
57
47
32
20
20
0
0
北海道
プレス
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
④ガス切断器具
その他のサイジング設備として、ガス切断器具がある。ギロチンシャーにかけにくい機
械類やプラント廃材など大型鋼構造物解体に使われる。この調査では全国に 2,071 基あり、
回答数 618 事業所に平均3基はあることになる。地域別では関東 713 基(全体の 34.4%)、
中部 321 基(15.5%)、中四国 276 基(13.3%)、九州 233 基(11.3%)、関西 223 基(10.8%)、
東北 205 基(9.9%)、北海道 100 基(4.8%)である。
基数
ガス切断
2500
ガス切断
800
713
700
2000
600
500
1500
400
1000
321
300
223
205
276
233
200
500
100
100
0
0
北海道
ガス切断
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
⑤加工設備まとめ
主要な加工設備についてとりまとめると、以上みてきたように関東地区が各設備とも最
多保有地域である。以下、中部、中四国、関西、東北、九州、北海道の順となる。ちなみ
に(社)日本鉄源協会が推計した地域別鉄鋼蓄積量(H11 年)と対比させると、概ね蓄積量の
地域分布に応じて設備が配置されていることが分かる。すなわちその地域の発生量に応じ
て業態が存在し、設備が設置されている地域立脚型(あるいは原料立地型)の産業である
と言えよう。
13
鉄スクラップ加工設備・
地域別基数(
まとめ)
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
シュレッダー
10
12
41
28
11
12
16
130
キ ゙ロチ ンシャー
7.7
9.2
31.6
21.5
8.5
9.2
12.3
100
25
58
221
70
62
56
42
534
4.7
10.9
41.3
13.1
11.6
10.5
7.9
100
プレス
20
47
182
84
57
74
32
496
ガス切断
4.0
9.5
36.7
16.9
11.5
14.9
6.5
100
100
205
713
321
223
276
233
2,071
N=618
1000t
単位;
基数、%
参考
鉄鋼蓄積量(H11年)
合計
4.8
155
4.8
57,540
4.8
9.9
322 10.0
93,820
7.8
34.4
1,157 35.8
390,660
32.6
15.5
503 15.6
205,550
17.1
10.8
353 10.9
205,430
17.1
13.3
418 12.9
123,480
10.3
11.3
323 10.0
122,460
10.2
100
3,231 100.0 1,198,940
100.0
北海道
50
鉄鋼蓄積量
シュレッダー
ギロチンシャー
プレス
40
30
20
10
0
中部
50
40
50
30
中四国
20
40
10
50
0
40
30
20
30
10
20
0
10
0
50
40
50
30
関西
20
40
50
九州
10
30
40
20
30
10
20
0
0
10
0
14
関東
東北
⑥その他保有設備
装置産業であるため、材料を動かすためのクレーンや重機類が装備されている。固定ク
レーンは 1,409 基(事業所平均 2.3 基)、移動式クレーン 675 基(事業所平均1基)
、重機
は 2,433 基(事業所平均 3.9 基)であった。地域別は下表の通りである。
固定
クレーン
(基数)
19
82
545
224
233
205
101
1,409
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
移動式
クレーン
(基数)
41
61
192
136
35
120
90
675
重機
(基数)
135
242
767
379
217
384
309
2,433
2)雇用者と作業環境
①雇用者数と敷地面積
回答を得た 618 事業所の、常用雇用者数計は 12,178 人、うち現場作業員は 8,133 人だっ
た。この他にパート 1,247 人(うち現場作業員 1,029 人)である。1事業所あたり常用雇
用者数は 19.7 人である。地域別にみると、九州が1事業所あたり 27.4 人と多く、関東が
15.9 人で少ないが、1事業所の規模が小さい業態であると言える。
人
人数
14000
1事業所当たり常用雇用者数
30.0
12,178
25.7
25.3
12000
25.0
10000
22.5
19.7
20.0
8,133
27.4
17.5
8000
15.9
15.8
15.0
6000
10.0
4000
2000
1,247
1,029
パート
ウ チ現場
5.0
0.0
0
常用雇用者
ウ チ 現場
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
平均
また、敷地面積は合計 373 万m2 、1事業所あたり 6,029m2 であり、地域別にみると
北海道が一番広く、関西が 3,514m2 で一番狭い。北海道は平均のほぼ倍の広さの 12,815
m2 となっている。
15
雇用者と作業環境
1)常用雇用者(人)
パート(人)
うち現場作業員
うち現場作業員
北海道
平均
東北
平均
関東
平均
中部
平均
関西
平均
中四国
541
22.5
369
72
15.4
981
727
17.5
13.0
4,131
2,621
15.9
10.1
2,302
1,489
25.3
16.4
1,075
10.6
1,749
1,207
2.7
64
54
1.1
1.0
410
339
1.6
1.3
354
299
3.9
718
15.8
65
3.0
3.3
97
66
1.4
1.0
119
106
18.1
12,207.3
781
400,876
14.0
7,158.5
2,960
1,311,987
11.4
5,065.6
1,788
19.7
784
11.6
1,313
19.4
579,863
6,515.3
214,489
3,249.8
370,064
17.8
1,399
1,002
27.4
19.6
2.6
2.0
21.6
8,462.2
合計
12,178
8,133
1,247
1,029
9,162
3,572,695
平均
19.7
13.2
2
1.7
14.8
6,029
平均
1.6
敷地面積
(㎡)
280,769
25.7
平均
九州
1.8
現場
作業員計
434
131
100
1,102
5,607.0
414,647
②作業所の屋根の有無と床の構造
作業所の屋根の有無については、618 事業所のうち 594 事業所から回答があり、80%以
上の 490 事業所が「有り」の回答となっている。「無し」の 104 事業所では、関東の 39 事
業所が多い。他の地域は6∼14 件の範囲である。無回答 24 件の中でも関東が 12 件あり、
関東地域の対策が重点課題と言える。また、作業所の床の構造については、複数回答があ
ったため、687 件の回答数となったが約 60%の 402 件が鉄筋、15%の 105 件が無筋+鉄板、
無筋 28 件(4%)、土 72 件 10.5%)、その他 80 件(11.6%)だった。その他は以上の複合
であり、鉄筋と無筋、鉄筋とアスファルト、鉄筋と土などが多い。使用済自動車処理を申
請する場合は、リサイクル法に基づき所定の作業環境を整える必要があるが、その必要性
ある事業所が存在することが分かった。
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
作業所の屋根(事業所数)
有
無
無回答
10
14
0
40
11
5
209
39
12
80
11
0
57
10
1
59
6
3
35
13
3
490
104
24
鉄筋
10
39
168
70
39
44
32
402
16
作業所の床(事業所数)
その他
無筋
土
1
3
5
11
7
1
11
7
47
13
24
23
17
5
8
8
15
1
6
9
10
4
8
14
8
1
10
8
105
28
72
80
無筋+鉄板
③作業所の排水溝と側壁の有無
排水溝については、無回答 34 件を除く 584 件の回答があり、489 件(83.7%)が「有り」
であり、「無し」は 95 件(16.3%)である。無しを地域別にみると、関東が 42 件(無しの
44%)であり、無回答 34 件中でも 22 件を占める。事業所の立地条件など特別な事情があ
るとみられるが、対策の急がれる点である。また、側壁については、無回答 34 件を除く 584
件の回答中、
「有り」は 547 件であり、94%近くが設置されている。「無し」の 37 件及び無
回答 34 件を地域別にみると、やはり関東地域が約半数を占める。
作業所の排水溝(事業所数)
作業所の側壁(事業所数)
計
有
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
無
14
46
196
81
53
56
43
489
計
有
無回答
9
7
42
9
13
11
4
95
1
3
22
1
2
1
4
34
24
56
2 60
91
68
68
51
618
20
44
226
90
60
65
42
547
無
無回答
3
7
15
1
5
2
4
37
1
5
19
3
1
5
34
24
56
2 60
91
68
68
51
618
④シュレッダーダスト置き場の状態
屋根の有無、排水設備の有無、側壁の有無、床の構造について調査した。
屋根について 208 件の回答があり、屋根「有り」は 118 件、「無し」は 90 件だった。排水
設備では 206 件の回答があり、「有り」は 106 件、
「無し」は 100 件である。また、側壁に
ついては 209 件の回答中、「有り」は 142 件、「無し」は 67 件だった。「有り」は破砕業者
数を表し、「無し」と「無回答」にも破砕業者が存在すると見られる。自動車リサイクル法
に基づき廃車破砕を行う場合は、ダスト置き場に屋根か排水溝があり、かつ側壁が設置さ
れていることが許可条件となっているため、上述した全体の調査結果の中から、破砕業の
み 119 事業所を抽出してこの設問を集計し直した。その結果、屋根について「有り」は 90
件、「無し」21 件、「無回答」8件である。排水設備は「有り」80 件、「無し」30 件、「無回
答」9件。側壁「有り」は 108
件、「無し」は4件、「無回答」7件である。特に屋根か排
水溝の設備不備が関東と中部で目立っており、もし、使用済自動車を扱う予定ならば、早
急な手立てが必要である。また、床の構造では、116 事業所のうち鉄筋 88 件、無筋+鉄板
2件、無筋2件、土0件、その他 16 件であり、その他では、鉄筋+鉄板 11 件、アスファ
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
屋根(事業所数)
有
無
無回答
8
6
10
8
8
40
45
35
180
17
18
56
18
3
47
12
8
48
10
12
29
118
90
410
シュレッダーダスト置場の状態・回答全数
8)排水設備
計
有
無
無回答
計
5
8
11
24
24
56
8
8
40
56
2 60
42
37
181
2 60
91
13
22
56
91
68
14
6
48
68
11
10
47
68
68
51
13
9
29
51
618
106
100
412
618
17
有
8
10
56
22
18
13
15
142
9)側壁
無
無回答
5
11
7
39
25
179
12
57
3
47
8
47
7
29
67
409
計
24
56
2 60
91
68
68
51
618
ルト2件、鉄板のみ1件等であった。床が土であると回答した事業所はなかった。
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
破砕業(
119事業所)
シュレッダーダスト置場の状態・
屋根(
事業所数)
8)
排水設備
9)
側壁
有
無 無回答 計
有
無 無回答 計
有
無 無回答
8
5
2
1
8
7
0
1
7
0
1
5
2
1
8
5
2
1
8
7
1
0
36
6
2
44
29
12
3
44
42
1
1
11
10
2
23
18
2
3
14
7
2
23
10
0
0
10
9
1
0
10
10
0
0
8
1
2
11
9
0
2
8
1
2
11
13
2
0
15
15
0
0
10
5
0
15
90
21
8
119
80
30
9
119
108
4
7
鉄筋
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
8
9
33
14
8
5
11
88
シュレッダーダスト置場
10) 床(事業所数) 無筋+鉄板
無筋のみ
土
0
0
0
0
0
1
1
0
1
0
0
0
0
1
2
2
計
8
8
44
23
10
11
15
119
計
その他
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2
3
4
1
3
2
16
無回答
0
0
2
3
0
3
0
8
9
11
39
22
10
11
14
116
3)産業廃棄物業等の許可取得状況
5種類の許可取得状況について調査し、全体とシュレッダー事業者に分けて分析した。
①廃棄物再生事業者登録
「廃棄物再生事業者登録」は市町村における分別回収や住民団体による集団回収など、市
町村と廃棄物再生事業者との連携・協力体制を確立するために設けられている都道府県知
事による登録制度である。登録事業者は、特別土地保有税の非課税措置及び事業所税の軽
減措置が受けられる。
今回調査では、618 事業所のうち、取得済み 326 事業所(全体の 52.8%)、未取得・無回
答 267 事業所(43.2%)
、申請中 16 事業所(2.6%)、その他9事業所(1.5%)である。取
得済みと申請中の計は 342 事業所(55.4%)となった。その他は資源リサイクルのため必
要ない有価物のみの扱いなどである。未取得 267 件を地域別にみると関東が 120 件あり一
番多く、他地域は8∼31 件である。
2000 年(H12)に(社)日本鉄リサイクル工業会が調
査した結果では、取得済みと申請中は 209 事業所(51.1%)であったので、この3年間に
133 事業所増加したことになり、廃棄物再生事業者としての登録意識の高まりが覗える。増
加率は関東で高い(約倍増)が、現時点の未取得も関東が多い。
このうちシュレッダー事業者をみると、取得済みは 61.3%、申請済み 3.4%であり、全
体平均よりも 10 ポイント近く高いことが分かる。
18
(
単位:事業所数)
地 区
平成12年
北海道 平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(
A)
全国
平成15年(
B)
増減(B−A)
取得済
9
16
17
26
67
129
48
60
28
40
21
36
10
19
200
326
%
申請
済
%
52.9%
66.7%
51.5%
1
46.4%
2
49.6%
6
49.6%
8
53.3% 65.9%
3
49.1%
58.8%
52.5%
52.9%
2
27.0%
2
37.3%
1
48.9%
9
52.8%
16
(3.9%)
取得
不可
3.0%
3.6%
4.4%
3.1%
3.3%
2.9%
5.4%
2.0%
2.2%
2.6%
無印回
答(含、
未取得
回答)
%
1
2
3.0%
3.6%
3
1
2
1.2%
1.1%
2.2%
1
1.5%
1
1
1.5%
2.7%
3
9
0.7%
1.5%
8
8
14
26
62
120
41
26
29
27
19
29
24
31
197
267
内シュレッダー事業者
地 区
平成12年
北海道 平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(
A)
全国
平成15年(
B)
増減(B−A)
%
47.1%
33.3%
42.4%
46.4%
45.9%
46.2%
45.6%
28.6%
50.9%
39.7%
47.5%
42.6%
64.9%
60.8%
48.2%
43.2%
合計
17
24
33
56
135
260
90
91
57
68
40
68
37
51
409
618
(単位:事業所数)
取得済
2
6
2
3
20
28
8
16
3
6
4
6
5
8
44
73
%
66.7%
75.0%
25.0%
37.5%
76.9%
63.6%
53.3%
69.6%
37.5%
60.0%
57.1%
54.5%
41.7%
53.3%
55.7%
61.3%
(5.6%)
申請
済
%
1
1
12.5%
12.5%
3
6.8%
2
16.7%
3
4
3.8%
3.4%
取得
不可
無印回
答(含、
未取得
回答)
%
1
2.3%
1
0.8%
1
2
5
4
6
12
7
7
5
4
3
5
5
7
73
41
%
33.3%
25.0%
62.5%
50.0%
23.1%
27.3%
46.7%
30.4%
62.5%
40.0%
42.9%
45.5%
41.7%
46.7%
92.4%
34.5%
合計
3
8
8
8
26
44
15
23
8
10
7
11
12
15
79
119
②収集運搬許可証
618 事業所のうち 532 事業所(86.1%)が取得済みである。取得率は 5 つの設問中一番高
く、かつ地域別にみても全国に浸透している。申請済み1事業所(0.2%)、未取得・無回
答は 85 事業所(13.8%)だった。前出の 2000 年(H12)調査との比較では、取得率は 85.8%
から 86.1%に増加した程度であり、必要な事業所は皆持っているとみて良いかも知れない。
シュレッダー事業者については、88.2%が取得済みであり、中四国と九州で増加が目立っ
ている。
19
(単位:事業所数
地 区
取得
済
平成12年
平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(
A)
全国
平成15年(
B)
増減(
B−A)
北海道
15
23
30
52
109
213
82
84
45
53
35
63
35
44
351
532
%
申請
済
88.2%
95.8%
90.9%
92.9%
80.7%
81.9%
91.1%
92.3%
78.9%
77.9%
87.5%
92.6%
94.6% 86.3%
85.8%
86.1%
(
0.3%)
%
取得
不可
1
3.0% 1
0.7%
1
1
1.1%
1.1%
1
2.5%
4
1
1.0% 0.2%
無印回答
% (
含、未取
得回答)
2
1
2
4
25
47
7
6
12
15
4
5
2
7
54
85
%
11.8%
4.2%
6.1%
7.1%
18.5%
18.1%
7.8%
6.6%
21.1%
22.1%
10.0%
7.4%
5.4%
13.7%
13.2%
13.8%
合計
17
24
33
56
135
260
90
91
57
68
40
68
37
51
409
618
内シュレッダー事業者
(単位:事業所数
地 区
取得
済
平成12年
平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(
A)
全国
平成15年(
B)
増減(
B−A)
北海道
3
7
6
7
24
37
13
19
8
10
4
10
11
15
69
105
%
申請
済
100.0%
87.5%
75.0%
87.5%
92.3%
84.1%
86.7%
82.6%
100.0%
100.0%
57.1%
90.9%
91.7% 100.0%
87.3%
88.2%
(
0.9%)
%
取得
不可
1
12.5% 1
14.3%
無印回答
% (
含、未取
得回答)
%
1
1
1
2
7
2
4
12.5%
12.5%
12.5%
7.7%
15.9%
13.3%
17.4%
2
1
1
28.6%
9.1%
8.3%
8
14
10.1%
11.8%
2
2.5% 合計
3
8
8
8
26
44
15
23
8
10
7
11
12
15
79
119
③収集運搬(積み替え保管)許可証
積み替え保管を含む収集運搬許可では、618 事業所のうち 214 事業所(34.6%)で取得済
みであり、申請中が 16 事業所(2.6%)ある。未取得・無回答が 363 事業所あり多いが、
事業を営むにあたって必要としていない場合があることを表している。2000 年(H12)調査と
20
比較すると、取得済みの比率は 33.5%と 2003 年(H15)とあまり変わっておらず、このこと
から類推して、事業構造がこの3年間ではあまり変化していないともとれる。
シュレッダー事業者の取得状況は、取得済み 40.3%、申請済み 3.4%であった。
(単位:
事業所数)
地 区
取得
済
平成12年
平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(A)
全国
平成15年(B)
増減(B−A)
北海道
15
20
8
22
38
66
27
32
14
13
19
44
16
17
137
214
%
申請済
88.2%
83.3%
24.2%
39.3%
28.1%
25.4%
30.0% 35.2%
24.6%
19.1%
47.5%
64.7%
43.2%
33.3%
33.5%
34.6%
(1.1%)
%
取得
不可
1
4
4
5
3.0% 7.1%
3.0%
1.9%
1
1.1%
1
2
4
3
1
10
16
1.5%
5.0%
5.9%
8.1%
2.0%
2.4%
2.6%
%
3
3
9
8
6
3
5
1
1
3
1
18
25
5.4%
2.2%
3.5%
8.9%
6.6%
5.3%
7.4%
2.5%
1.5%
8.1%
2.0%
4.4%
4.0%
無印回答
(
含、未取
得回答)
2
4
24
27
90
180
55
52
40
49
18
19
15
32
244
363
内シュレッダー事業者
地 区
11.8%
16.7%
72.7%
48.2%
66.7%
69.2%
61.1%
57.1%
70.2%
72.1%
45.0%
27.9%
40.5%
62.7%
59.7%
58.7%
合計
17
24
33
56
135
260
90
91
57
68
40
68
37
51
409
618
(単位:
事業所数)
取得
済
平成12年
平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(A)
全国
平成15年(B)
増減(B−A)
北海道
%
%
申請済
3 100.0%
5 62.5%
1 12.5%
4 50.0%
7 26.9%
14 31.8%
4 26.7% 7 30.4%
3 37.5%
5 50.0%
3 42.9%
8 72.7%
7 58.3%
5 33.3%
28 35.4%
48 40.3%
(4.9%)
%
取得
不可
%
2
1
7.7%
2.3%
1
4.3%
1
1
10.0%
14.3%
1
3
4
6.7%
3.8%
3.4%
21
2 4.5%
1 6.7%
1 4.3%
1 12.5%
2
3
2.5%
2.5%
無印回答
(
含、未取
得回答)
3
7
4
17
27
10
14
4
4
3
3
5
9
46
64
%
37.5%
87.5%
50.0%
65.4%
61.4%
66.7%
60.9%
50.0%
40.0%
42.9%
27.3%
41.7%
60.0%
58.2%
53.8%
合計
3
8
8
8
26
44
15
23
8
10
7
11
12
15
79
119
④中間処理許可証
回答を得た 618 事業所のうち 355 事業所(57.4%)が取得済みであり、29 事業所(4.7%)
が申請中である。無印回答(未取得・無回答)は 210 事業所あり、うち関東が 100 事業所
ついで関西 40 事業所だった。関西は 68 事業所のうち 40 事業所が無印回答であり、無印率
は 58.8%と全国で一番高い。この要因の一つに自治体における扱いの違いがある。すなわ
ち大阪府、大阪市、東大阪市、堺市は鉄スクラップを産業廃棄物でなく資源物として認識
しており、中間処理許可を必要としていない。しかし、自動車リサイクル法施行時点では、
(
単位:事業所数)
地 区
取得
済
平成12年
平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・
四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(
A)
全国
平成15年(
B)
増減(
B−A)
北海道
13
21
19
25
73
133
57
67
19
22
29
49
29
38
239
355
%
76.5%
87.5%
57.6%
44.6%
54.1%
51.2%
63.3%
73.6%
33.3%
32.4%
72.5%
72.1%
78.4%
74.5%
58.4%
57.4%
(
−0.8%)
申請済
1
4
5
6
17
3
3
1
1
3
1
21
29
%
取得
不可
%
5.9%
12.1% 8.9%
2
4.4%
8
6.5%
10
5
3.3%
4
5.3%
3
1.5%
5
2.5% 4.4%
2
2.7%
3
1
5.1%
19
4.7%
24
3.6%
5.9%
3.8%
5.6%
4.4%
5.3%
7.4%
2.9%
8.1%
2.0%
4.6%
3.9%
無印回答
(
含、未取
得回答)
3
3
10
24
48
100
23
17
32
40
10
14
4
12
130
210
%
17.6%
12.5%
30.3%
42.9%
35.6%
38.5%
25.6%
18.7%
56.1%
58.8%
25.0%
20.6%
10.8%
23.5%
31.8%
34.0%
合計
17
24
33
56
135
260
90
91
57
68
40
68
37
51
409
618
内シュレッダー事業者
(
単位:事業所数)
地 区
取得
済
平成12年
平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・
四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(
A)
全国
平成15年(
B)
増減(
B−A)
北海道
3
7
7
8
24
40
14
21
8
10
4
9
12
14
72
109
%
100.0%
87.5%
87.5%
100.0%
92.3%
90.9%
93.3%
91.3%
100.0%
100.0%
57.1%
81.8%
100.0%
93.3%
91.1%
91.6%
(
0.5%)
申請済
%
取得
不可
1
2
1
3.8%
4.5%
6.7%
2
2
22
2.5%
1.7%
%
無印回答
(
含、未取
得回答)
%
1
1
12.5%
12.5%
1
2
3.8%
4.5%
2
8.7%
3
2
42.9%
18.2%
1
5
8
6.7%
6.3%
6.7%
合計
3
8
8
8
26
44
15
23
8
10
7
11
12
15
79
119
法律上廃棄物扱いとなるため、現在是正の方向で検討されている。この結論が出れば、関
西地区の取得率は増加するものとみられる。
また、このうちシュレッダー事業者では 91.6%の高い取得率を示しており、許可の必要
ない新断専用事業所を除けば、取得率はさらに上昇し 100%に近いと言える。
⑤処理施設許可証
廃プラスチック類の破砕を行う施設で、1日の処理能力が5トンを超える場合に必要な
許可証である。618 事業所のうち、取得事業所は 95(15.4%)であり、申請中も3事業所
と少ない。2000 年(H12)時点との比較では逆に 11 ポイント取得率が減少している。しかし、
破砕業者のみを抽出して比較すると 65.8%から 71.4%に増加している。自動車リサイクル
法では、破砕業が使用済自動車処理を1日当たり5トン以上の規模で行う場合、この処理
施設許可証が取得条件となる。
(単位:事業所数)
地 区
取得済
平成12年
北海道 平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・
四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(A)
全国
平成15年(B)
増減(
B−A)
%
4
7
9
5
37
36
22
14
7
10
13
10
17
12
107
95
申請済
23.5%
29.2%
27.3%
8.9%
27.4%
13.8%
24.4%
15.4%
12.3%
14.7%
32.5% 14.7%
45.9%
23.5%
26.2%
15.4%
(
‐10.8%)
%
取得
不可
%
1
3.0%
4
3
3.0%
1.2%
2
3.5%
3
8.1%
1
2
1
8
6
5
8
4
5
3
2
2
10
3
2.4%
0.5%
24
23
23
4.2%
6.1%
1.8%
5.9%
2.3%
5.6%
8.8%
7.0%
7.4%
7.5%
2.9%
5.4%
5.9%
3.7%
無印回答
(含、未取得
回答)
13
16
21
50
86
214
63
69
44
53
24
56
15
39
266
497
%
76.5%
66.7%
63.6%
89.3%
63.7%
82.3%
70.0%
75.8%
77.2%
77.9%
60.0%
82.4%
40.5%
76.5%
65.0%
80.4%
合計
17
24
33
56
135
260
90
91
57
68
40
68
37
51
409
618
内シュレッダー事業者
(
単位:
事業所数)
地
区
取得済
平成12年
北海道 平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・
四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(A)
全国
平成15年(B)
増減(
B−A)
%
3
7
2
5
19
31
8
13
6
9
4
8
10
12
52
85
申請済
100.0%
87.5%
25.0%
62.5%
73.1%
70.5%
53.3%
56.5%
75.0%
90.0%
57.1% 72.7%
83.3%
80.0%
65.8%
71.4%
(
5.6%)
1
2
%
取得
不可
%
3.8%
4.5%
2
8.7%
2
1.7%
1 12.5%
1
8.3%
3
2
3.8%
1.7%
無印回答
(
含、未取得
回答)
1
6
3
6
11
7
8
1
1
3
3
1
3
24
30
%
合計
12.5%
75.0%
37.5%
23.1%
25.0%
46.7%
34.8%
12.5%
10.0%
42.9%
27.3%
8.3%
20.0%
30.4%
25.2%
3
8
8
8
26
44
15
23
8
10
7
11
12
15
79
119
4)許可証取得の難易度について
①許可申請を受けつけない理由(複数回答)
許可証を受けつけない理由について 133 件の回答があり、このうち「すべてのスクラッ
プを専ら物扱い」にしているためが 71 件で最多だった。この割合は 2000 年(H12)調査より
も増加している。次いで「建築基準法第 51 条の都計審審議」が必要が 14 件、その他 48 件
だった。その他 48 件は自治体が受けつけないためによるが、その内容を以下に示す。
東北地区:
第Ⅰ種住宅地のため(
秋田)
未整備を理由に(
山形)
地域住民の同意が不可能(
福島)
許可基準が厳しい(
福島)
関東地区:
場内整備を進めてから取得申請の予定(
埼玉)
近隣の同意が得られない(
埼玉、城南)
再生事業者登録済みのため、他の許可は必要に応じ申請(
埼玉、神奈川)
積替保管が取得できない(
埼玉、神奈川)
市街化調整区域を理由(
千葉2件)
役所の窓口が不明確(
城西)
24
関西地区:
近隣同意が受けられない(
大阪2件)
大阪府、大阪市、東大阪市、堺市は鉄スクラップを産業廃棄物でなく
資源物と認識しているため、積替保管付き収集運搬と中間処理業の許可申請
を受付けない。(大阪)
港湾地区のため取得できない(大阪)
中四国地区:
地域住民の同意書が取れない(
広島)
すべてのス
クラップを専
ら物扱い
地区
平成12年
北海道 平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・
四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(
A)
全国
平成15年(
B)
増減(B−A)
%
1 4.2%
1 2.9%
3 5.4%
9 6.7%
36 13.6%
5 5.6%
4 4.4%
16 27.1%
22 31.9%
2 5.0%
3 4.3%
2 3.9%
33 8.0%
71 11.4%
(
単位:
事業所数)
建築基準
法第51条
その他
無印回答
合計
の都計審
審議必要
%
%
%
1 5.9%
16
94.1%
17
1 4.2%
22
91.7%
24
1 2.9%
32
94.1%
34
1 1.8% 6 10.7%
46
82.1%
56
6 4.4% 14 10.4%
106
78.5%
135
9 3.4% 24 9.1%
196
74.0%
265
4 4.4% 4 4.4%
77
85.6%
90
1 1.1% 3 3.3%
83
91.2%
91
1 1.7% 5 8.5%
37
62.7%
59
2 2.9% 7 10.1%
38
55.1%
69
1 2.5%
37
92.5%
40
4 5.8%
62
89.9%
69
1 2.7% 2 5.4%
34
91.9%
37
4 7.8%
45
88.2%
51
12 2.9% 28 6.8%
339
82.3%
412
14 2.2% 48 7.7%
492
78.7%
625
②許可申請は受け付けるが、事実上交付しない理由(複数回答)
回答数は 33 件あり、「県条例・指導要綱により地域住民の同意を必要とする」が 16 件、
「建築基準法第 51 条の都計審審議を必要とする」が6件、その他 11 である。しかし、最
近になって自治体によっては受付を開始したところもある。その他の主なものを以下に示
す。
東北地区
申請内容について役所より照会中(
秋田)
関西地区
隣接に幼稚園、小学校あり(
関西・
大阪)
25
地区
平成12年
北海道 平成15年
平成12年
東北
平成15年
平成12年
関東
平成15年
平成12年
中部
平成15年
平成12年
関西
平成15年
平成12年
中・四国 平成15年
平成12年
九州
平成15年
平成12年(A)
全国
平成15年(B)
増減(B−A)
指
県条例・
導要綱によ
り地域住民
同意を必要
とする
%
1
5.6%
2
1
10
3
5
4
7
3
2
4
1
1
28
16
6.1%
1.8%
7.3%
1.2%
5.6%
4.3%
12.3%
4.3%
5.0%
5.9%
2.7%
2.0%
6.8%
2.6%
建築基準
法第51条
その他 無印回答
の都計審
合計
審議を必要
とする
b %
c %
%
1 5.6%
1 5.6%
15
83.2%
18
24
100.0%
24
1 3.0%
3 9.1%
27
81.8%
33
1 1.8%
54
96.4%
56
2 1.5%
8 5.8% 117
85.4%
137
2 0.8%
6 2.3% 249
95.8%
260
4 4.4%
3 3.3%
78
86.7%
90
2 2.2%
87
93.5%
93
2 3.5%
48
84.2%
57
2 2.9%
1 1.4%
63
91.3%
69
1 2.5%
37
92.5%
40
64
94.1%
68
36
97.3%
37
50
98.0%
51
8 1.9% 18 4.4% 358
86.9%
412
6 1.0% 11 1.8% 588
94.7%
621
5)自動車リサイクル法に対応して
2005 年1月より実施される自動車リサイクルに対応して、6項目の質問を設定し、その状
況を聞いた。この意識調査の結果、特に⑥の質問に対して「不可能」及び「無回答」と答
えた 261 事業所があり、対策が急がれる。
①引取り業者登録、②フロン類回収業者登録の取得について
618 事業所のうち、「取る」と答えた事業所は 278 事業所(約 45%)、「取らない」は 227
事業所、「無回答」113 事業所だった。
フロン回収については、既に法律が施行されているが、フロン類回収業者登録「有り」
は 268 事業所(約 43%)、「無し」は 270 事業所、「無回答」80 事業所だった。
この2つの設問は従来より、自動車解体業が行ってきているものであり、むしろ、スク
ラップ加工処理業者も 43∼45%程度取得しているという見方をすべきであろう。
26
(1)引取業者登録
(2)フロン類回収業者登録
計
取る
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
取らない
16
33
90
44
20
41
34
278
計
有
無回答
7
13
105
38
35
18
11
227
1
10
65
9
13
9
6
113
24
56
260
91
68
68
51
618
無
14
32
85
45
19
42
31
268
無回答
9
18
127
42
38
21
15
270
1
6
48
4
11
5
5
80
24
56
260
91
68
68
51
618
③解体業の許可取得について
618 事業所のうち、解体業の許可を「取る」と答えた事業所は 221 件(36%)あった。「取
らない」は 291 事業所、「無回答」は 106 事業所である。鉄スクラップ加工処理業を行いな
がら、今回の自動車リサイクル法施行に向けて、使用済自動車解体業の許可を申請したい
とするものが 40%弱あるということになる。
④破砕業の許可について
「取る」は 209 事業所、「取らない」は 296 事業所、「無回答」は 113 事業所だった。「取
る」の件数 209 は、シュレッダー設備のある事業所数(=破砕業者数 119 件)を 90 件超え
ている。90 件すべてに回答の是非を確認出来ずにいるが、自動車リサイクル法では、プレ
ス、せん断の破砕前処理を行う事業所も破砕業に分類されることから、当該設備を持つ事
業所が許可取得を表明したものと推測される。
⑤最終処分場許可について
「取る」は 76 事業所、「取らない」は 403 事業所、「無回答」は 139 事業所だった。ASR
は管理型処分なので、管理型最終処分場が必要とされるが、その許可取得は場所や地域住
民との対応など困難が伴うことが予想される。それにしても 76 事業所が取得意思を持って
いると言うことになる。
単位;事業所数
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
自動車リサイクル
③解体業許可
取る 取らない 無回答
13
9
2
26
20
10
61
139
60
34
49
8
18
38
12
38
22
8
31
14
6
221
291
106
自動車リサイクル
④破砕業許可
取る 取らない 無回答
11
11
2
17
24
15
78
130
52
31
48
12
23
34
11
25
32
11
24
17
10
209
296
113
27
⑤最終処分場許可
取る 取らない 無回答
4
16
4
6
37
13
25
167
68
17
63
11
6
47
15
8
45
15
10
28
13
76
403
139
計
24
56
260
91
68
68
51
618
⑥電子マニフェスト制度におけるパソコンの対応
今回の自動車リサイクル法では、電子マニフェスト制度により実施されるため、パソコン
での対応が求められる。このことについて「可能」は 357 事業所、「不可能」は 152 事業所
(うち自動車を扱わないと回答した事業所は 132 事業所)、
「無回答」は 109 事業所だった。
「不可能」と「無回答」は計 261 事業所あり、このすべてが、自リ法に関係するとは見ら
れないが、説明会を開くなど、趣旨の理解と対応にあたってのアドバイス、マニュアルづ
くりなどの対策が必要とされよう。
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
単位;
事業所数
電子マニフェスト制度への対応
可能
不可能
無回答
計
17
5
1
24
35
11
10
56
134
69
56
260
57
23
9
91
32
21
13
68
41
13
12
68
32
10
7
51
348
152
108
618
6)家電リサイクル法に関して
自動車リサイクル法に先駆け、AグループとBグループに分かれすでに法施行後2年以
上を経過している家電リサイクルについて、618 事業所の関わり具合や今後の対応について
聞いた。
①指定引取り場所について
家電リサイクル法に基づく廃家電の指定引取り場所であるか無いかは、618 事業所のう
ち「ある」が 90 事業所(14.6%)、
「無い」は 425 事業所、「無回答」は 103 事業所だった。
「ある」のうちAグループは 79 事業所、Bグループは 11 事業所であり、鉄リサイクル業
者もBグループに 11 事業所関係していることが分かった。
②リサイクル施設の指定
実際の家電リサイクル施設として行っていることを表す「ある」は 41 事業所(7%)、「無
い」は 436 事業所、「無回答」は 141 事業所である。「ある」ではAグループが 29 事業所、
Bグループが 12 事業所である。この他、618 事業所以外の鉄リサイクル業者及び家電メー
カーが運営するリサイクル施設(Bグループ)を加えたトータルの施設数は、全国 40 事業
所(Aグループ 25 箇所、Bグループ 16 箇所)あり、この調査の 31 事業所は 77.5%を占め
大きなウエイトを持っていることになる。
28
(6).家電リサイクル法に関して
①指定引取場所
ある
ない
計
無回答
Aグループ Bグループ
4
17
25
14
2
8
9
79
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
1
4
2
4
0
0
0
11
②リサイクル施設の指定
ある
ない 無回答
計
Aグループ Bグループ
14
25
180
69
54
49
34
425
5
10
53
4
12
11
8
103
24
56
260
91
68
68
51
618
3
3
11
5
2
1
4
29
1
5
2
4
0
0
0
12
15
33
179
70
51
52
36
436
5
15
68
12
15
15
11
141
24
56
260
91
68
68
51
618
③指定改定時の対応
家電リサイクル法では施行後、5年目に見直しを行うことになっており、現状は言わば
中間に差し掛かった状況である。5年後の改定時にどう対応するかを聞いた。
「継続する」は 89 事業所、「取り止める」は 12 事業所、「新規に加入」は 90 事業所、「無
回答」は 427 事業所だった。指定引取り場所かリサイクル施設の指定なのかを区分してい
ないが、前問の指定引取り場所「ある」とリサイクル施設の指定「ある」の計は 131 事業
所あり、このうち「継続」と答えた事業所が 89 事業所(131 事業所中、68%)、「取り止め
る」が 12 事業所(9.2%)、無回答が 30 事業所(22.9%)ということになる。
また、「取り止める」が 12 事業所ある傍ら、新規に加入したい事業所が 90 件ある点も注
目される。
単位;
事業所数
③指定改定時に
継続する 取り止める 新規に加入
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
5
17
27
20
3
8
9
89
1
1
6
3
1
0
0
12
29
5
8
28
13
10
14
12
90
無回答
13
30
199
55
54
46
30
427
計
24
56
260
91
68
68
51
618
7)I
SO取得に関して
環境ISOの取得が、社会性の確保と共に、競争力を維持していく上で課題となってい
る。調査した 618 事業所中、90 事業所(14.6%)が「取得済み」であり、「取り組み中」121
事業所を合計すると 211 事業所(約 34%)が取得することになる。これに対し、
「していな
い」は 346 事業所、「無回答」は 61 事業所であり、「していない」と「無回答」の計は 407
事業所(66%)である。取得計画の 70%近くが 2003 年、2004 年中となっている。
I
SO取得に関して
取得済み していない 取組み中
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
合計
7
4
33
16
10
15
5
90
13
30
161
48
42
33
19
346
2
8
41
24
9
15
22
121
無回答
2
14
25
3
7
5
5
61
計
24
56
260
91
68
68
51
618
単位;
事業所数
取得計画
有り
無し 無回答 計
2
13
9
24
14
28
14
56
61
102
97
260
24
26
41
91
13
30
25
68
15
24
29
68
18
12
21
51
147
235
236
618
単位;事業所数
計画有りの場合の予定年月
2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 未定
計
北海道
0
1
0
0
0
2
3
東北
1
6
2
0
0
3
12
関東
8
24
8
0
0
13
53
中部
10
8
5
1
0
6
30
関西
11
1
0
0
2
14
中四国
1
13
1
0
0
1
16
九州
6
10
4
0
0
0
20
合計
26
73
21
1
0
27
148
%
17.6
49.3
14.2
0.7
0.0
18.2 100.0
30
第2章 機械製品に係わる鉄リサイクルの現状と課題に関する調査研究
1.家電4品目とパソコンリサイクル
(1)特定家庭用機器再商品化法(以下家電リサイクル法)の概要とその進捗状況
1)家電リサイクル法成立の背景
2001 年(平成 13 年)4月「家電リサイクル法」が本格施行された。
家電リサイクル法の成立以前にも、1991 年(平成3年)制定の「再生資源利用促進法」
においてエアコン・テレビ・電気冷蔵庫・電気洗濯機の家電4品目が第一種指定製品に定
められ、使用後にリサイクルされやすいように製造、販売を行う事業者が製品構造や材質
などを工夫すべきものと定められていた。
その後、廃棄物の発生量の増加、資源のリサイクル率向上の要請、廃棄物最終処分場の
不足、不法投棄の増加などの課題が一層鮮明になった。
これらの課題解決のため、「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から脱却し、
生産から流通、消費、廃棄まで資源の効率的な利用やリサイクルを進め、資源の消費を抑
制し、環境への負荷が少ない「循環型社会」の形成を企図した新たな枠組みの創設が求め
られた。
この「循環型社会」の形成を推進する基本的な枠組みとなる法律として、「循環型社会形
成推進基本法」が 2000 年(平成 12 年)6月に公布され、2001 年(平成 13 年)1月施行さ
れた。この基本法は廃棄物の適正処理を目的とする「廃棄物処理法」及びリサイクルの推
進を目的とする「資源有効利用促進法」、「容器包装リサイクル法」などの個別関連法案を
統括する内容となっている。また、①廃棄物等の発生抑制(Reduce)を最優先とし、②発
生した廃棄物をそのままもう一度使う再使用(Reuse)、③原材料として使う再生利用
(Recycle)により循環資源の循環的な利用を促進し、それらが不可能なものについては④
適正な処分を行うという廃棄物処理の「優先順位」を初めて法定化した。
廃棄物処理法は 1970 年(昭和 45 年)制定以来、1976 年(昭和 51 年)、1991 年(平成3
年)、1997 年(平成9年)、2001 年(平成 13 年)4月と主な改正を重ねてきた。その間、
廃棄物の処理基準を厳格化すると同時に、廃棄物のリサイクルの推進もその目的とするよ
うになった。特に 1991 年(平成3年)の改正においては、市町村において適正な処理が困
難な一般廃棄物についての指定制度と事業者の協力義務が折り込まれた。また、1997 年(平
成9年)改正では、多量排出事業者の廃棄物の減量の推進とともに、再生利用認定制度が
創設されリサイクル促進のための規制緩和が実施された。
一方、「再生資源利用促進法」を拡充し、2001 年(平成 13 年)4月に施行された「資源
有効利用促進法」において家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)は既に指定
されていた指定再利用促進製品(リサイクル配慮設計)に加え、新たに指定省資源化製品
31
(製造事業者は、原材料の使用の合理化、長期間の使用の促進、使用済み物品等の発生の
抑制に取り組むことが求められる)としても指定された。
個別法としては、容器包装リサイクル法が 1997 年(平成9年)4月に PET ボトルとガラ
ス瓶を対象として一部施行され、2000 年(平成 12 年)4月には完全施行された。これが個
別物品を対象としたリサイクル法の端緒となったが、この法律において、消費者が分別排
出し、市町村が分別収集し、事業者が再商品化するという役割分担を明確にした。この法
律によって、国内家庭ごみの約 60%を占める容器包装廃棄物の減量、再商品化が図られて
いる。
第二番目の個別法として登場したのが、「家電リサイクル法」である。この法律は 1998
年(平成 10 年)6月に制定され、その後政令や施行令が整備され、2001 年(平成 13 年)
4月に施行された。
この法律によって我が国で初めて「拡大生産者責任(EPR)」が本格的に導入されたと考
えられる。生産者に製品の回収、再生を義務付けることにより、生産者はリサイクルを設
計の段階から考慮し、リサイクルしやすい材料の使用、分解しやすい構造、安全な素材の
使用が進むことが想定される。
その後、「食品リサイクル法」(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)が 2001
年(平成 13 年5月)に施行、「建設資材リサイクル法」(建設工事に係る資材の再資源化に
関する法律)が 2002 年(平成 14 年)5月施行された。
「自動車リサイクル法」
(使用済自動車の再資源化に関する法律)は 2002 年(平成 14 年)
7月に公布され、2004 年(平成 16 年)施行の予定である。
また、リサイクル法とは違った環境への負荷を軽減する目的で、「グリーン購入法」(国
等による環境物品等の調達の推進に関する法律)も 2001 年(平成 13 年)4月に施行され
ている。
32
図表2-1
循環型社会の形成の推進のための法体系
循環型社会形成推進基本法
2001 年1月施行
(廃棄物の適正処理)
(リサイクルの推進)
廃棄物処理法
資源有効利用促進法
(2001 年4月施行)
(2001 年4月施行)
(個別物品の特性に応じた規制)
完全施行
2001 年5月
2002 年5月
施行
グリーン購入法
2001 年4月施行
33
施行
自動車リサイクル法
完全施行
建設資材リサイクル法
家電リサイクル法
2001 年4月
食品リサイクル法
容器包装リサイクル法
2000 年4月
2005 年1月施行
予定
2)家電リサイクル法の概要
2001 年(平成 13 年)4月「家電リサイクル法」が本格施行された。
この法律は、一般家庭から排出された特定の家電製品(現時点では、エアコン(ウィン
ド型、壁掛け・床置きのセパレート型)・テレビ(ブラウン管式のもの)・電気冷蔵庫・電
気洗濯機の4品目)について、
① 一般廃棄物最終処分場の延命
② 有効資源の再利用
③ リサイクルコストの削減
を目的として 1998 年(平成 10 年)6月に制定されたものである。
この法律施行以前の一般家庭から排出される家電製品は、約8割が小売業者、残りが市
町村によって回収されていたと見られる。回収された廃家電は、約 50%が直接埋立され、
残りは、破砕処理して一部金属を回収していた。
図表2-2
施行以前の家電製品(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)の処理の流れ
約 20%
市町村
約 24 万 t
直接埋立
処理業者
破砕処理の後に廃棄
約 20%
消費者
約 60 万 t
販売店等
約 48 万 t
約 36 万 t
約 80%
約 60%
(出所:経済産業省、環境省)
34
金属分回収
①
指定対象機器
家電機器の中から、
a.
市町村等による再商品化が困難
b.
再商品化等をする必要性が特に高い
c.
設計・部品等の選択が再商品化等に重要な影響がある
d.
配送品であり小売業者による収集が合理的なもの
として、1998 年(平成 10 年)12 月に家電4品目を指定した。
これらの4品目の廃棄量は 1997 年度ベースで、家電廃棄物の約 80%,一般廃棄物
の約 1.3%程度と推定されていた。しかし、大型化するテレビ、フロン回収が必要な
冷蔵庫・エアコンなど自治体での処理が困難であり、かつ大部分が埋立のため、処分
場延命のために影響の大きい4品目を指定した。
また、再商品化等の実施の際に、エアコンと冷蔵庫に含まれる冷媒用フロン・代替
フロンを回収して、再利用又は破壊を行うこととした。
なお、2004 年1月7日公布、4月1日施行予定の家電リサイクル法施行令の一部
を改正する政令において、
a. 電気冷凍庫の特定家庭用機器への追加
b. 法第 18 条(再商品化等実施義務)第2項に基づき、「生活環境の保全に資する
事項であって、当該再商品化等の実施と一体的に行うことが特に必要かつ適切
であるものとして政令で定める事項」に、電気冷蔵庫及び電気冷凍庫の断熱材
に含まれるフロン類を回収して再利用又は破壊すること等を加える
の2点を追加することになっている。
②「再商品化等」の定義
a.
対象機器の廃棄物から部品及び材料を分離し、これを製品の原材料又は部品とし
て利用すること(「再商品化」)
b. 対象機器の廃棄物から部品及び材料を分離し、これを燃料として利用すること
(「熱回収」)
この法律において「再商品化等」とは、「再商品化」及び「熱回収」をいう。
③
関係者の役割
a.
製造業者及び輸入業者(製造業者等)
(a).引取義務…予め指定した引取場所において、自らが製造等を行った対象機器の
引取を行う。
(b).再商品化等実施義務…引き取った対象機器の廃棄物について、重量ベースで以
下の基準以上の再商品化等を行う。(現時点では「熱回収」は含まれていない)
35
図表2-3
再商品化等基準
対象製品
ブラウン管式テレビ
電気冷蔵庫
電気洗濯機
ユニット型エアコン
再商品化等
55%以上
50%以上
50%以上
60%以上
再商品化
55%以上
50%以上
50%以上
60%以上
(参考)H6 年
リサイクル
値
7.3%
24.5%
26.8%
31.8%
また、製造業者は、再商品化等の実施の際に、エアコンと冷蔵庫に含まれる冷媒用
フロン・代替フロンを回収して、再利用又は破壊を行う。
b. 小売業者
(a).引取義務…過去に販売した、又は同種の販売をした対象機器の廃棄物の引取を求
められたとき、引き取る。
(b).引き渡し義務…引取後は、中古品として再利用する場合を除き、製造業者等に引
き渡す。
c. 消費者
対象機器の再商品化が確実に実施されるよう小売業者等に適切に引渡し、収集・再
商品化等に関する料金を支払う。
収集、再商品化費用は、排出者すなわち消費者が排出時に負担する。その金額は下
記再商品化等料金(再商品化拠点でのリサイクル、指定引取場所の設置運営、指定引
取場所から再商品化拠点までの運搬などに要する費用)に加え、消費者排出場所から
指定引取場所までの収集運搬費用を合わせて負担する。
再商品化等料金(税別)
テレビ
2,700 円
d.
冷蔵庫
4,600 円
洗濯機
2,400 円
エアコン
3,500 円
指定引取場所及びリサイクル工場の設置
製造業者等は、家電リサイクル法に基づき、メーカーは、松下、東芝を中心とする
「Aグループ」とよばれる企業群と、三洋、ソニー、シャープ、日立、三菱を中心と
する「Bグループ」という企業群の2つのグループに集約され、それぞれ 190 箇所、
全国合計では 380 箇所の指定引取場所を設置した。
また、リサイクル工場は、A グループが 28 箇所、B グループが 16 箇所、全国では A・
B 両グループ共通が3箇所あるため 41 ヶ所となっている。
36
図表2-4
家電リサイクルプラント一覧
(財)家電製品協会資料
37
3)家電リサイクル法の実績評価
①
対象4品目回収実績
2001 年(平成 13 年)4月に家電リサイクル法が施行されて2年半が経過した。2002 年
度(平成 14 年度)の指定引取場所での引取台数は 2001 年度(平成 13 年度)に比較して、
対象4品目すべてにおいて増加した。
エアコンの指定引取場所での引取台数は、対 2001 年度(平成 13 年度)+302 千台(+22.6%)、
テレビ+437 千台(+14.2%)、冷蔵庫+374 千台(+17.1%)
、洗濯機+496 千台(+25.7%)、
合計では+1,609 千台(+18.8%)と順調に回収が進められていると考えられる。
図表2-5
特定家庭用機器廃棄物実施状況
(製造業者及び指定法人が再商品化を実施した総合計)
2002
年度
2001
年度
増減
再商品化率基準
指定引取場所での引取台
数
再商品化処理台数
再商品化等処理重量
再商品化重量
再商品化率
指定引取場所での引取台
数
再商品化処理台数
再商品化等処理重量
再商品化重量
再商品化率
指定引取場所での引取台
数
再商品化処理台数
再商品化等処理重量
再商品化重量
再商品化率
単位
%
千台
エアコン
60%以上
1,636
テレビ
55%以上
3,520
冷蔵庫
洗濯機
50%以上 50%以上
2,565
2,426
千台
トン
トン
%
千台
1,624
72,009
56,739
78%
1,334
3,515
95,134
72,110
75%
3,083
2,556
148,662
91,006
61%
2,191
2,409
71,053
42,967
60%
1,930
千台
トン
トン
%
千台
1,301
57,634
45,019
78%
302
2,981
79,978
58,814
73%
437
2,143
127,596
76,359
59%
374
1,882
54,041
30,783
56%
496
千台
トン
トン
%
323
14,375
11,720
0%
534
15,156
13,296
2%
413
21,066
14,647
2%
527
17,012
12,184
4%
出所:(財)家電製品協会
また、2002 年度(平成 14 年度)の予想排出台数に占める指定取引先での引取率は、エ
アコンで 43.2%(対 2001 年度(平成 13 年度)+3.7%)、テレビで 38.7%(+5.1%)
、冷蔵
庫で 59.2%(+7.2%)
、洗濯機で 50.4%(+9.5%)、合計では 46.0%(+6.3%)とすべての品
目で大幅に向上している。なお、この排出台数は平成 10 年時点での予測であり、平均耐用
年数が延びる傾向にあることから、引取率はさらに向上している可能性もある。
38
図表2-6
家電4品目の排出予想台数
年度
1997
平成9年
エアコン
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
合計
2,678
7,937
3,749
3,925
18,289
1998
平成 10
年
2,666
8,280
3,832
4,075
18,853
(単位:千台)
1999
平成 11
年
2,774
8,687
3,940
4,294
19,695
2000
平成 12
年
3,023
9,031
4,071
4,530
20,655
2001
平成 13
年
3,378
9,175
4,210
4,719
21,482
2002
(参考)
平成 14
1999
年
年
3,788
2,678
9,102
7,937
4,331
3,749
4,817
3,925
22,038 18,289
出所:(財)家電製品協会 環境総合ハンドブック平成 10 年3月 通商産業省推計値
:参考値は経済産業省推計(平成 13 年度産業構造審議会資料)
図表2-7
排出台数に占める指定引取先での引取台数
2002 年
(H14)
2001 年
(H13)
増減
引取量(千台)
排出量(千台)
引取率(%)
引取量(千台)
排出量(千台)
引取率(%)
引取量(千台)
排出量(千台)
引取率(%)
エアコ
ン
1,636
3,788
43.2%
1,334
3,378
39.5%
302
410
3.7%
テレビ
3,520
9,102
38.7%
3,083
9,175
33.6%
437
-73
5.1%
冷蔵庫
2,565
4,331
59.2%
2,191
4,210
52.0%
374
121
7.2%
洗濯機
2,426
4,817
50.4%
1,930
4,719
40.9%
496
98
9.5%
合計
10,147
22,038
46.0%
8,538
21,482
39.7%
1609
556
6.3%
ただし、排出台数については、通常時 18,000 千台/年規模とし、この規模をベース
に、経済の落ち込みの影響と、輸出及び国内のリユースなどにより現状の処理すべき
排出台数を 13,000 千台と見込む見方もある。
この数値を前提とすれば、2002 年の排出量に対する引取率は 78%程度になる。
図表2-8
家電4品目の平均耐用年数
品目
エアコン
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
1998∼2000 年 2001 年度(平成
度(平成 10∼12
13 年度)
年度)平均使用 平均使用年数
年数
11.87
12.55
9.78
10.18
11.71
11.73
9.15
9.13
平均使用
年数増減
+0.68
+0.40
+0.02
−0.02
出所:内閣府消費動向調査、平成 14 年 10 月産業構造審議会資料
39
②
再商品化実績
2002 年度(平成 14 年度)の再商品化台数は、引取台数の増加に伴い増加しており、また、
再商品化率(再商品化重量/再商品化等処理重量)もすべての品目において初年度から再
商品化基準値を超えていたが、さらにテレビ・冷蔵庫については2%、洗濯機は4%向上
している。
鉄の再商品化重量については、2001 年度(平成 13 年度)110 千トンの再商品化量が 2002
年度(平成 14 年度)に 127 千トンに増え、他の素材についても同様の傾向が見られる。
図表 2-9-1
エアコン 再商品化重量推移
60,000
重量(
トン)
50,000
その他の有価物
非鉄・鉄など混合物
アルミニュウム
銅
鉄
40,000
30,000
20,000
10,000
0
2001
2002
年度
図表 2-9-2
40
図表 2-9-3
テレビ 再商品化重量推移
80,000
重量(トン)
60,000
その他の有価物
ブラウン管ガラス
非鉄・鉄など混合物
アルミニュウム
銅
鉄
40,000
20,000
0
2001
2002
年度
図表 2-9-4
図表 2-9-5
冷蔵庫 再商品化重量推移
100,000
重量(トン)
80,000
その他の有価物
非鉄・鉄など混合物
アルミニュウム
銅
鉄
60,000
40,000
20,000
0
2001
2002
年度
図表 2-9-6
41
図表 2-9-7
洗濯機 再商品化重量推移
50,000
重量(トン)
40,000
その他の有価物
非鉄・鉄など混合物
アルミニュウム
銅
鉄
30,000
20,000
10,000
0
2001
2002
年度
図表 2-9-8
図表2-10
2002 年度
(H14)
2001 年度
(H13)
増減
再商品化重量
鉄
銅
アルミニュウム
非鉄・鉄など混合物
ブラウン管ガラス
その他の有価物
総重量
鉄
銅
アルミニュウム
非鉄・鉄など混合物
ブラウン管ガラス
その他の有価物
総重量
鉄
銅
アルミニュウム
非鉄・鉄など混合物
ブラウン管ガラス
その他の有価物
総重量
単位
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
トン
エアコン
23,112
3,058
1,111
27,969
1,487
56,739
22,633
1,951
588
19,411
434
45,019
479
1,107
523
8,558
0
1,053
11,720
42
テレビ
7,235
3,369
188
483
55,075
5,756
72,110
6,257
2,714
155
242
45,153
4,291
58,814
978
655
33
241
9,922
1,465
13,296
冷蔵庫
65,832
998
404
18,880
洗濯機
30,992
476
142
8,703
4,890
91,006
58,423
406
117
15,500
2,652
42,967
23,242
352
105
6,253
1,909
76,359
7,409
592
287
3,380
0
2,981
14,647
828
30,783
7,750
124
37
2,450
0
1,824
12,184
合計
127,171
7,901
1,845
56,035
55,075
14,785
262,822
110,555
5,423
965
41,406
45,153
7,462
210,975
16,616
2,478
880
14,629
9,922
7,323
51,847
図表2-11
冷媒として使用されていたものを回収した総重量(kg)
年度
2002 年度
2001 年度
増減
③
エアコン
806,580
467,316
339,264
冷蔵庫
233,946
135,779
98,167
計
1,040,526
603,095
437,431
不法投棄について(参考)
廃家電の不法投棄の統計は環境省が発表している限られた自治体の数値しかない。この
数値を引取量と比較するために人口 10 万人当たりに換算すると、2002 年度(平成 14 年度)
の家電4品目の不法廃棄量は、人口 10 万人当たり 133 台となり、対前年度 22 台の増加と
なった。
しかし、指定引取場所での引取量も増加しており、不法投棄台数の引取台数に対する割
合は2年間 1.7%と低位で安定して推移している。
図表2-12
不法投棄台数の変化(人口 10 万人当たり)
エアコン
引取量
(台)
不法投棄量
2002年 度
(台)
不法投棄率
(%)
引取量
(台)
不法投棄量
2001年 度
(台)
不法投棄率
(%)
引取量
(台)
不法投棄量
増減
(台)
不法投棄率
(%)
(参 考 )2000 不 法 投 棄 量
年
(台)
出所:環境省
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
合計
1,285
2,765
2,015
1,906
7,971
15
67
28
23
133
1.14%
2.43%
1.40%
1.22%
1.67%
1,053
2,434
1,730
1,524
6,740
15
55
23
19
111
1.39%
2.27%
1.32%
1.23%
1.65%
232
331
285
382
1,231
0
12
5
5
22
-0.25%
0.16%
0.08%
-0.01%
0.02%
15
43
21
16
95
2001・2002 年は 2,743 自治体、平成 2000 年は 276 自治体
また、不法投棄された家電4品目の各市町村の処理方法は下表のとおりであるが、家電
リサイクル法の指定引取場所へ持ちこんだ比率が 56%にとどまっており、36%はその他の
処理施設で処理されている。
図表2-13
不法投棄された家電4品目の処理方法
処理方法
主に市町村、組合等の自前の処理施設で処理した
主に委託業者、許可業者等の廃棄物処理業者の処理施設で処理した
主に家電リサイクル法の指定引取場所へ持ちこみ処理した
現在処理方法を検討中である
出所:環境省資料
43
比率
18%
18%
56%
8%
また、不法投棄されて市町村等によって処理された台数と指定引取場所で引取られた台
数との合計が使用済家電の総台数と考えるのであれば、予想されていた排出台数との差が
大きく、排出される家電の約3割程度が海外輸出を含めリユースされていると考えても、
不明部分がある。
この不明部分は、排出予想台数が経済状況によって変動していること、耐用年数の延び
等による実際の排出台数の減少、海外への中古品輸出及び国内での中古品として販売され
る比率の上昇などがその原因と考えられる。
④
実績評価のまとめ
上述のように、指定引取場所での引取台数は増加し、再商品化率、排出予想台数に対す
る引取率も大幅に向上している。一方で引取量に対する不法投棄の発生率は低位で安定し
ている。
したがって、家電リサイクル法はこれまでのところ順調に実施されているとみることが
できよう。
(2)家電 4 品目における鉄使用量およびスクラップ発生量推移
1)品目別使用素材構成推移
家電4品目に使用されている素材構成は、総じて、鉄が減少してプラスチックが増加す
る傾向となっている。
図表2-14-1
図表2-14-2
ブラウン管テレビ 使用素材構成推移
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
その他
プラスチック
アルミニウム
銅
鉄
1983
1990
2003
構成比(%)
構成比(%)
エアコン 使用素材構成推移
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
その他
木
ガラス
プラスチック
アルミニウム
銅
鉄
1983
製造年
1993
製造年
44
図表2-14-3
構成比(%)
冷蔵庫 使用素材構成推移
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
その他
プラスチック
アルミニウム
銅
鉄
1983
1993
2003
製造年
図表2-14-4
図表2-14-5
全自動洗濯機 使用素材構成推移
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
その他
プラスチック
アルミニウム
銅
鉄
1983
構成比(%)
構成比(%)
二槽式洗濯機 使用素材構成推移
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1993
その他
塩水
プラスチック
アルミニウム
銅
鉄
1993
製造年
図表2-15
品目
エアコ
ン
テレビ
冷蔵庫
二槽式
洗濯機
全自動
洗濯機
2003
製造年
品種別使用素材構成
製造
年
計
鉄
銅
1983 100.0% 53.0% 19.0%
1990 100.0% 49.0% 18.0%
2003
1983
1993
1983
1993
2003
1983
1993
1993
2003
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
プラ
アル スチ
ック
ミ
9.0% 14.0%
8.0% 14.0%
ガラ
ス
木
46.0% 18.0% 10.0% 16.0%
9.0% 2.0% 1.0% 10.0% 46.0% 23.0%
12.0% 3.0% 1.0% 26.0% 53.0%
59.0% 2.0% 4.0% 30.0%
49.0% 4.0% 1.0% 43.0%
51.0% 2.0% 1.0% 41.0%
52.0% 3.0% 2.0% 37.0%
60.0% 3.0% 2.0% 31.0%
52.0% 2.0% 4.0% 33.0%
45.0% 2.0% 2.0% 37.0%
1983 年、1993 年は新エネルギー・産業技術総合開発機構
1990 年は日本冷凍空調工業会調査
2003 年は日本電機工業会
製品データベースより推定
45
塩水
その
他
4.0%
11.0%
10.0%
10.0%
5.0%
4.0%
3.0%
5.0%
6.0%
4.0%
6.0% 3.0%
14.0%
図表2-16
品目
指定引取場所再商品化品目別素材別構成比(対再商品化等処理重量)
回収年
合計
2001
2002
2001
2002
2001
2002
2001
2002
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
エアコン
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
再商品化
計
78.1%
78.8%
73.5%
75.8%
59.8%
61.2%
57.0%
60.5%
鉄
39.3%
32.1%
7.8%
7.6%
45.8%
44.3%
43.0%
43.6%
銅
3.4%
4.2%
3.4%
3.5%
0.3%
0.7%
0.7%
0.7%
アルミ
1.0%
1.5%
0.2%
0.2%
0.1%
0.3%
0.2%
0.2%
鉄・非鉄
その他有 非再商品
ガラス
等混合物
価物
化物
33.7%
0.8%
21.9%
38.8%
2.1%
21.2%
0.3% 56.5%
5.4%
26.5%
0.5% 57.9%
6.1%
24.2%
12.1%
1.5%
40.2%
12.7%
3.3%
38.8%
11.6%
1.5%
43.0%
12.2%
3.7%
39.5%
また、製造業者及び指定法人が再商品化を実施した処理重量に対する素材別構成比を見
ると、金属類の再商品化率が低く、鉄・非鉄等混合物(シュレッダーダストと思われる)
の中に含まれているものと見られる。
鉄に限ってみると、エアコン・洗濯機で 10%強、テレビ・冷蔵庫で5%程度が鉄・非鉄
等混合物および非再商品化物として処理されていると考えられる。
以上のことから、2002 年の家電4品目の鉄スクラップの再商品化重量を推定すると、16
万3千トン程度が回収されている。
なお、推定の方法は、鉄・非鉄等混合物として処理されている鉄の重量を「品種別使用
素材構成」(図表2-15)の鉄の構成比と「指定引取場所再商品化品目別素材別構成比」(図
表2-16)の鉄の構成比との差(エアコンについては再商品化等処理重量の 20%、冷蔵庫・
洗濯機については 10%とした)を補正値として算定し、家電4品目から回収された鉄のス
クラップ量を推定した。
※テレビについては、約5%の補正値が適当だが、鉄・非鉄等混合物の構成が低いこと
から算定には含んでいない。
図表2-17
家電からの回収鉄スクラップ量推定
品目
エアコン
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
合計
再商品化等
処理重量
(トン)
(a)
72,009
95,134
148,662
71,053
386,858
鉄2002年
再商品化
重量(トン)
(b)
23,112
7,235
65,832
30,922
127,171
46
補正
(%)
(c)
20%
0%
10%
10%
補正重量
(トン)
(d)=(a)x(c)
14,402
0
14,866
7,105
36,373
鉄スクラップ
発生推定量
(トン)
(b)+(d)
37,514
7,235
80,698
38,027
163,474
2)鋼材別使用量推移と回収スクラップ量予測の課題
家電4品目の普通鋼鋼材消費は、1991 年度の 375 千トンをピークとし、一時的に 1995
年前後にエアコンの影響により増加するものの、その後減少し続けている。
この要因は、1台に使用する鋼材の原単位は製品の大型化により増加しているものの、
生産設備の海外移転に伴う国内生産台数の減少が大きく、鋼材消費が減少しているものと
考えられる。
したがって、今後の家電4品目からの発生鉄スクラップを予測する場合には、国内生産
で消費された鋼材の量に輸入された製品の鋼材を合わせて考慮する必要がある。
図表2-18
家電4品の輸入状況
製品名
エアコン
ブラウン管テレビ
冷蔵庫
洗濯機
国内販売量
(千台)
8,316
10,181
5,227
4,739
輸入量
(千台)
1,114
9,782
1,659
956
輸入シェア
(%)
13.39%
96.08%
31.73%
20.16%
出所:平成 13 年度産業構造審議会資料
図表2-19
年度
1983
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
家電4品目の普通鋼鋼材消費量と鋼材原単位推移
洗濯機
活動水準 鋼材原単位
(
千台) (
kg/台)
5,093
7.800
5,285
7.800
5,011
7.800
4,672
7.705
4,857
7.705
5,055
7.705
5,341
8.734
5,583
8.882
5,590
8.882
5,096
11.052
5,202
11.052
5,056
11.052
4,805
12.094
5,143
12.094
4,570
12.094
4,560
12.094
4,256
12.094
4,315
12.572
3,686
12.572
千T
40
41
39
36
37
39
47
50
50
56
58
56
58
62
56
55
51
54
46
冷蔵庫
セパレート型エアコン
カラーテレビ
活動水準 鋼材原単位
活動水準 鋼材原単位
活動水準 鋼材原単位
(
千台) (
kg/台) 千T (
千台) (
kg/台) 千T (
千台) (
kg/台)
4,538
30.200 137
2,136
14.900 32
13,137
1.500
5,062
30.200 153
3,178
14.900 47
15,819
1.500
5,227
30.200 158
4,053
14.900 60
17,018
1.500
4,527
30.250 137
4,090
14.900 61
14,551
1.533
5,078
30.361 154
4,706
14.900 70
13,655
1.639
5,106
31.295 160
6,016
14.900 90
13,184
1.873
4,994
31.858 159
6,107
14.900 91
12,317
1.959
5,125
31.858 164
7,274
14.900 108
13,529
1.959
5,090
31.625 161
9,349
14.900 139
13,368
1.903
4,353
26.045 113
7,087
15.306 109
11,565
0.160
4,371
26.045 114
5,770
15.306 88
10,449
0.160
5,078
26.045 132
8,372
15.306 128
9,249
0.159
5,040
28.229 142
9,237
15.265 141
7,218
0.139
5,333
28.229 151
9,395
15.265 143
6,550
0.139
5,030
28.229 142
7,066
15.265 108
6,552
0.139
4,949
28.229 140
7,104
15.265 108
5,050
0.139
4,410
28.229 124
7,005
15.265 107
3,213
0.139
4,266
29.525 126
7,023
15.265 107
2,133
0.139
3,545
29.525 105
6,704
15.265 102
1,628
0.139
千T
20
24
26
22
22
25
24
27
25
2
2
1
1
1
1
1
0
0
0
4品目合計
鋼材計
千T
229
265
283
256
283
314
321
349
375
280
262
317
342
357
307
304
282
287
253
出所:業界資料より作成
普通鋼以外にもステンレスが使用されているが、数量は別途下記のとおり推定した。た
だし、この数字は家電全体を推定したものであり、家電4品目に限ったものではない。
47
図表2-20
家電におけるステンレス使用量推移
年度 電気機械用 家電比率 家電使用量 3年平均値
千トン
%
千トン
千トン
1985
74.1
49.8%
36.9
1986
69.7
52.0%
36.3
40.6
1987
88.6
54.9%
48.6
45.6
1988
88.4
58.7%
51.9
49.9
1989
92.0
53.5%
49.2
52.1
1990
92.5
59.7%
55.2
53.5
1991
95.1
58.9%
56.0
54.6
1992
83.2
63.2%
52.6
54.6
1993
85.1
64.8%
55.1
58.3
1994
102.3
65.7%
67.2
64.1
1995
109.5
64.0%
70.1
69.3
1996
113.4
62.3%
70.6
69.8
1997
121.1
56.7%
68.6
65.9
1998
94.1
62.2%
58.5
60.9
1999
100.2
55.4%
55.5
63.3
2000
127.9
59.2%
75.7
68.4
2001
113.6
65.2%
74.0
80.1
2002
136.2
66.5%
90.5
出所:日本鉄鋼連盟「特殊鋼用途別受注統計」
電気機械用 …特殊鋼最終使途推計
家電比率 …用途別受注統計 家電/電気機械
3)家電4品目からの鉄スクラップ発生量の推定
家電4品の廃棄台数は図表2-6の排出予想台数から、中古品として国内販売及び輸出さ
れている台数比率(推定)を差し引いて、残りが廃棄されるものとした。
廃棄される比率はエアコンが 65%、テレビ 57.5%、冷蔵庫 86.2%、洗濯機 87.3%とした。
家電4品目の耐用年数は図表2-8より、エアコンを 12 年、テレビを 10 年、冷蔵庫 12
年、洗濯機9年とした。
また、鋼材の原単位は耐用年数を遡った年次の前後3年の鋼材使用原単位の平均値を使
用した。
以上の前提に基づいて、鉄スクラップの発生量を推定した。
もし、この試算が正しいとすれば、年間約 25 万トン強の鉄スクラップが発生したものと
推定される。一方、家電リサイクル法施行後の 2001 年、2002 年の鉄スクラップ回収量実
績は 16 万トン強となる。
この発生量の差は予想廃棄台数の変動、各品目内での機種構成、サイズ構成の変化(軽
量化)等によるものと考えられる。
48
図表2-21
鉄スクラップ発生量の推定
年
廃棄台数
洗濯機 鋼材原単位
重量
廃棄台数
冷蔵庫 鋼材原単位
重量
廃棄台数
エアコン 鋼材原単位
重量
廃棄台数
カラーTV 鋼材原単位
重量
計
普通鋼
ステンレス
合計
1999
(千台)
3,749
(kg/台)
8.833
(千トン)
33.1
(千台)
3,396
(kg/台) 30.635
(千トン) 104.0
(千台)
1,803
(kg/台) 14.900
(千トン)
26.9
(千台)
4,995
(kg/台)
1.930
(千トン)
9.6
(千トン) 173.7
(千トン)
52.1
(千トン) 225.8
2000
3,955
9.605
38.0
3,509
31.171
109.4
1,965
14.900
29.3
5,193
1.940
10.1
186.7
53.5
240.2
2001
4,120
10.329
42.6
3,629
31.670
114.9
2,196
14.900
32.7
5,276
1.341
7.1
197.3
54.6
251.9
2002
4,205
11.052
46.5
3,733
31.780
118.6
2,462
14.900
36.7
5,234
0.741
3.9
205.7
54.6
260.3
4)鋼材品種別使用量推移
家電4品目に使用されている鋼材は、冷蔵庫用の一部の熱延鋼板及び冷延鋼板を除き、
亜鉛メッキ鋼板に切り替わっている。
図表2-22-1
図表2-22-2
冷蔵庫使用鋼材原単位推移
14
35
12
30
10
8
亜鉛メッキ鋼板
冷延鋼板
6
4
原単位(
kg/台)
原単位(
kg/台)
洗濯機使用鋼材原単位推移
25
亜鉛メッキ鋼板
冷延鋼板
熱延鋼板
20
15
10
2
5
0
0
1985
1990
1995
2000
1985
1990
年度
1995
2000
年度
図表2-22-3
図表2-22-4
セパレート型エアコン使用鋼材原単位推移
カラーテレビ使用鋼材原単位推移
3
18
14
原単位(
kg/台)
原単位(
kg/台)
16
12
10
亜鉛メッキ鋼板
冷延鋼板
8
6
2
亜鉛メッキ鋼板
冷延鋼板
1
4
2
0
0
1985
1990
1995
1985
2000
1990
1995
年度
年度
49
2000
図表2-23
家電4品目使用鋼材原単位推移
洗濯機
年度
活動水準
(千台)
冷延鋼板
冷蔵庫
亜鉛メッキ鋼
板計
薄板計
活動水準
(千台)
鋼材計
熱延鋼板
冷延鋼板
亜鉛メッキ鋼
板計
薄板計
鋼材計
1983
5,093
1.600
原単位
原単位
原単位
(kg/ 千T
千T
千T
(kg/台)
(kg/台)
台)
8 1.600
8
6.200 32
7.800 40
4,538
2.200
10
16.800
76
19.000
86
11.200
51
30.200
137
1984
5,285
1.600
8
1.600
8
6.200
33
7.800
41
5,062
2.200
11
16.800
85
19.000
96
11.200
57
30.200
153
1985
5,011
1.600
8
1.600
8
6.200
31
7.800
39
5,227
2.200
11
16.800
88
19.000
99
11.200
59
30.200
158
1986
4,672
1.070
5
1.070
5
6.635
31
7.705
36
4,527
2.200
10
15.680
71
17.880
81
12.370
56
30.250
137
1987
4,857
1.070
5
1.070
5
6.635
32
7.705
37
5,078
2.200
11
14.179
72
16.379
83
13.982
71
30.361
154
1988
5,055
1.070
5
1.070
5
6.635
34
7.705
39
5,106
2.271
12
11.610
59
13.881
71
17.414
89
31.295
160
1989
5,341
1.900
10
1.900
10
6.834
37
8.734
47
4,994
2.312
12
11.819
59
14.131
71
17.727
88
31.858
159
1990
5,583
1.900
11
1.900
11
6.982
39
8.882
50
5,125
2.312
12
11.819
61
14.131
73
17.727
91
31.858
164
1991
5,590
1.900
11
1.900
11
6.982
39
8.882
50
5,090
2.295
12
11.733
59
14.028
71
17.597
90
31.625
161
1992
5,096
11.052
56
11.052
56
4,353
1.889
8
9.656
42
11.545
50
14.500
63
26.045
113
1993
5,202
11.052
58
11.052
58
4,371
1.889
8
9.656
42
11.545
50
14.500
64
26.045
114
1994
5,056
11.052
56
11.052
56
5,078
1.889
10
9.656
49
11.545
59
14.500
73
26.045
132
1995
4,805
12.094
58
12.094
58
5,040
2.047
10
10.466
53
12.513
63
15.716
79
28.229
142
1996
5,143
12.094
62
12.094
62
5,333
2.047
11
10.466
56
12.513
67
15.716
84
28.229
151
1997
4,570
12.094
56
12.094
56
5,030
2.047
10
10.466
53
12.513
63
15.716
79
28.229
142
1998
4,560
12.094
55
12.094
55
4,949
2.047
10
10.466
52
12.513
62
15.716
78
28.229
140
1999
4,256
12.094
51
12.094
51
4,410
2.047
9
10.466
46
12.513
55
15.716
69
28.229
124
2000
4,315
12.572
54
12.572
54
4,266
2.141
9
10.946
47
13.087
56
16.438
70
29.525
126
2001
3,686
12.572
46
12.572
46
3,545
2.141
8
10.946
39
13.087
47
16.438
58
29.525
105
原単位
(千台)
千T
(kg/台)
原単位
原単位
原単位
原単位
原単位
(千台)
千T
千T
千T
千T
千T
(kg/台)
(kg/台)
(kg/台)
(kg/台)
(kg/台)
セパレート型エアコン
年度
活動水準
(千台)
冷延鋼板
(千台)
原単位
千T
(kg/台)
カラーテレビ
亜鉛メッキ鋼
板計
薄板計
活動水準
(千台)
鋼材計
1983
2,136
0.900
原単位
原単位
原単位
(kg/ 千T
千T
千T
(kg/台)
(kg/台)
台)
2 0.900
2 14.000 30 14.900 32
1984
3,178
0.900
3
0.900
3
14.000
44
14.900
1985
4,053
0.900
3
0.900
3
14.000
57
14.900
1986
4,090
0.900
4
0.900
4
14.000
57
14.900
1987
4,706
0.900
4
0.900
4
14.000
66
1988
6,016
0.900
6
0.900
6
14.000
1989
6,107
0.900
5
0.900
5
14.000
1990
7,274
0.900
6
0.900
6
1991
9,349
0.900
8
0.900
8
1992
7,087
1993
(千台)
冷延鋼板
亜鉛系表面処 亜鉛メッキ鋼
理鋼板
板計
薄板計
鋼材計
熱延鋼板
原単位
原単位
原単位
原単位
原単位
千T
千T
千T
千T
千T
(kg/台)
(kg/台)
(kg/台)
(kg/台)
(kg/台)
千T
4品目合計
亜鉛メッ
冷延鋼 薄板
鋼材
キ鋼板
板
計
計
計
千T
千T
千T
千T
13,137
1.130
15
1.130
15
0.370
5
0.370
5
1.500
20
10
101 111
118 229
47
15,819
1.130
18
1.130
18
0.370
6
0.370
6
1.500
24
11
114 125
140 265
60
17,018
1.130
19
1.130
19
0.370
7
0.370
7
1.500
26
11
118 129
154 283
61
14,551
1.022
15
1.022
15
0.511
7
0.511
7
1.533
22
10
95 105
151 256
14.900
70
13,655
1.093
15
1.093
15
0.546
7
0.546
7
1.639
22
11
96 107
176 283
84
14.900
90
13,184
0.375
5
0.375
5
1.498
20
1.498
20
1.873
25
12
75
87
227 314
86
14.900
91
12,317
0.000
0
1.959
24
1.959
24
1.959
24
12
74
86
235 321
14.000 102
14.900 108
13,529
0.000
0
1.959
27
1.959
27
1.959
27
12
78
90
14.000 131
14.900 139
13,368
0.000
0
1.903
25
1.903
25
1.903
25
12
78
90
285 375
15.306 109
15.306 109
11,565
0.160
2
0.160
2
0.160
2
8
42
50
230 280
5,770
15.306
15.306
88
10,449
0.160
2
0.160
2
0.160
2
8
42
50
212 262
1994
8,372
15.306 128
15.306 128
9,249
0.159
1
0.159
1
0.159
1
10
49
59
258 317
1995
9,237
15.265 141
15.265 141
7,218
0.139
1
0.139
1
0.139
1
10
53
63
279 342
1996
9,395
15.265 143
15.265 143
6,550
0.139
1
0.139
1
0.139
1
11
56
67
290 357
1997
7,066
15.265 108
15.265 108
6,552
0.139
1
0.139
1
0.139
1
10
53
63
244 307
1998
7,104
15.265 108
15.265 108
5,050
0.139
1
0.139
1
0.139
1
10
52
62
242 304
1999
7,005
15.265 107
15.265 107
3,213
0.139
0
0.139
0
0.139
0
9
46
55
227 282
2000
7,023
15.265 107
15.265 107
2,133
0.139
0
0.139
0
0.139
0
9
47
56
231 287
2001
6,704
15.265 102
15.265 102
1,628
0.139
0
0.139
0
0.139
0
8
39
47
206 253
88
259 349
また、前にも触れたようにステンレスの使用量も増加傾向にある。(図表2-20)
(3)家電からの発生鉄スクラップ量の推計に関する提案
上記で繰り返し述べてきたように、排出された家電4品目の国内での処理台数は、輸出
向け中古品の増加等により、過去の生産台数と耐用年数による廃棄台数の推定量とは合わ
なくなっている可能性が高い。
また、今後の家電4品目からのスクラップの発生量は、国内メーカーの海外生産分の輸
入製品が国内販売のかなりのシェアを占めるようになっており、各家電の国内生産台数で
ある国内活動水準と鋼材原単位とで推計された鋼材消費量に輸入製品の鋼材を加味するこ
とが必要となってくる。
発生スクラップの推定量の精度を向上させるために、新しい推定システムの構築が必要
である。
50
(3)パソコンのリサイクルについて
1)パソコンリサイクルの推移
パソコンのリサイクルについては2段階に分けてその回収・再資源化の法整備を行い実
施に移されてきた。
まず、企業、官公庁などの事業系ユーザから排出される使用済パソコンの回収・再資源
化については 2001 年4月に施行された「資源の有効な利用の促進に関する法律(改正リサ
イクル法)」の「指定再資源化製品」として指定され、同年3月 28 日に公布された「パー
ソナルコンピュータの製造等の事業を行う者の使用済パーソナルコンピュータの自主回収
及び再資源化に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」にしたがって開始された。
事業系パソコンのリサイクルについては、2001 年4月に同時に施行された家電リサイク
ル法に基づく家電4品目についての回収・再商品化とは下記の点で異なっていた。
1. 2001 年4月1日にメーカに実施が義務付けられるのは、事業系使用済パソコンの回
収・再資源化であること(家庭系パソコンは含まれない)
2. 事業系使用済パソコンは、産業廃棄物として取り扱われ、パソコンメーカーが回収・
再資源化を実施するには、廃棄物処理法の業許可が必要となること
3. 家庭からの使用済パソコン製品は、従来通り、各地方自治体によって回収されるこ
と
なお、事業系使用済パソコンの回収・再資源化は、パソコンメーカー各社が廃棄物処理
法上の必要な手続きを終えた後、順次開始された。
また、事業系パソコンの回収・再資源化費用については、排出するユーザーが排出時に
負担することとなっている。
ついで、2003 年4月7日資源有効利用促進法に基づくパソコンの自主回収及び再資源化
に関する判断基準を定める省令を改正する省令が公布され、2003 年 10 月1日から家庭系
についてもパソコンメーカーによる回収・再資源化を開始されることになった。
家庭系パソコンについては、資源有効利用促進法では、メーカーは自社で設置した「指
定回収場所」に持込まれた自社のパソコンを引き取り、再資源化することと定められてい
る。また、家庭系パソコンは購入者の持ち帰りが中心で、排出時点も新製品購入時とは異
なる場合が多いこと等から、販売店が新製品配達時に使用済み製品を回収することを基本
とする家電リサイクル法及び事業系パソコンとは異なる回収の仕組みを設定した。すなわ
ち、全国各地の郵便局を共通の指定回収場所とし、全ての参加メーカーが共通して郵便局
を利用することによって、どのメーカーの製品であっても回収することが可能となる仕組
みを採用した。
家庭系のパソコンの回収及び再資源化の費用は 2003 年 10 月1日以降販売されたパソコ
ンについては製品の販売時に併せて徴収され、それ以前に販売されたものについてはユー
ザーが排出時に負担するものとされている。
51
2)パソコンの再資源化目標
2003 年4月7日付けで改正された「パーソナルコンピュータの製造等の事業を行う者の
使用済みパーソナルコンピュータの自主回収及び再資源化に関する判断基準となるべき事
項を定める省令」でのパソコンの再資源化の 2003 年度(平成 15 年度)までに事業者が達
成する目標は
パソコン(表示装置及びノートブック型を除く)
・・・50%
パソコン(ノートブック型に限る)
・・・20%
パソコンの表示装置(ブラウン管式に限る)
・・・55%
パソコンの表示装置(液晶式に限る)
・・・55%
を下回らない範囲内において定めることと規定されている。
この場合の再資源化の目標とは、
1.再生部品として利用することができる状態にすること
2.再生資源として利用することができる状態にすること(化学的変化を生ぜしめる方法
によるものを除く)
の総重量を当該使用済みパソコンの総重量に対する割合である。
ちなみに、2005 年度のパソコン(パソコン本体、キーボード、CRT ディスプレイから構
成されるパソコン)の資源再利用率の業界目標は 60%となっている。
(参考)
業界目標値は、メーカー各社の自主的な取組に基づき業界全体でその実現を目指すもの
で、家電リサイクル法の再商品化基準とは異なり各社が達成すべき基準ではない。
3)家庭系パソコン回収実績
資源有効利用促進法に基づいて実施された家庭系使用済みパソコンの回収・再資源化実
績台数は、2003 年 10 月から 12 月の3ヶ月間の合計で 31,500 台となった。電子情報技術
産業協会の推定によると 2003 度に排出されるとみられる使用済みパソコンは 36 万台、四
半期では9万台となっている。多くの自治体がパソコンのごみ収集を継続している現状で、
新たなリサイクルルートであるパソコンメーカーの回収によって、家庭から排出されたパ
ソコンの約 35%が回収されたことになる。
家庭系パソコンのリサイクルはまだ始まったばかりであり、その評価は時期尚早ではあ
るが3ヶ月間の実績を見る限りは、その効果は上がっているとみるべきであろう。
52
(4)EUの家電リサイクルについて
1)概要
欧州連合(EU)においての家電リサイクル関連の法制としては、廃電気・電子機器に関す
る指令(Directive on Waste Electric and Electronic Equipment:WEEE Directive)と特定
有害物質除去に関する指令
(The Restriction of Hazardous Substances Directive:
RoHS Directive)が 2003 年1月 27 日に制定され、2月 13 日に Official Journal of the
European Union(官報)で公布され発効した。
この2つの指令のうち日本の家電リサイクル法に対応するものが WEEE 指令であり、
本報告書では WEEE 指令を中心に報告する。
WEEE 指令によるリサイクルの義務は 2005 年8月 13 日以降発生することになってい
る。
また、WEEE 指令の目的は、廃家電・廃電子機器を分別収集し、埋立処分量の削減や自
治体のごみ焼却負荷の低下を図ることであり、消費者が地域の回収場所に廃棄した廃製品
を製造メーカーが回収・リサイクルする責任を負うことになっている。EU 各国の WEEE
指令の法制化は、指令発効の 18 ヵ月後となる 2004 年8月 13 日までに実施することが求
められている。
次いで、2005 年8月 13 日にはメーカーが廃品を無料で引き取る制度を確立し、すべて
の廃棄物の収集、処理、再生、廃棄のコストをメーカーが負担することになる。2005 年8
月 13 日以降販売される製品については各社が自社製品に対してコストを負担し、それ以
前に販売された製品のリサイクルコストについてはメーカーが共同で負担することとなる。
また、同指令の中では、加盟国は 2006 年 12 月 31 日までに、国民1人あたりの年間平
均で最低4kg の廃棄物を回収しなくてはならないという回収量のノルマも決定されてい
る。同時に、製造メーカーは、廃棄物の再利用とリサイクルに関して達成すべき目標を与
えられている。(一部加盟国では例外が認められている)
2)WEEE 指令の内容
WEEE 指令は、急速に増加している廃棄物対策として、WEEE の収集を生産者に義務
付け再使用とリサイクルを促進することを目的として制定された。その主な項目は以下の
通りである。
・システム制定にあたり、収集制度とリサイクル制度を別々に設けること
・「生産者責任」の原則を定めること(生産者が、家庭からの WEEE の収集、処理、回収
及び廃棄のコスト負担をしなければならないこと)
・消費者から、WEEE の無料引き取りを保証すること
・家庭からの WEEE 集収目標として、一人あたり年間4kg を達成すること
・WEEE の種類別に回収/リサイクルの目標を達成すること
53
3)WEEE の対象製品 (カテゴリー別)
WEEE の対象商品は以下の 10 カテゴリーに分かれている。
①大型家庭電化製品(冷蔵庫、洗濯機、食器洗浄乾燥機、電子レンジなど)
②小型家庭電化製品(電気掃除機、トースター、ヘアドライヤー、時計など)
③IT および通信機器(コンピューター、プリンター、電話など)
④娯楽電化製品(テレビ、ラジオ、ステレオ、ビデオなど)
⑤照明器具(蛍光管、省エネ電球、ナトリウム灯など)
⑥電気・電子工具(ドリル、ミシンなど)
⑦おもちゃ(電動式電車、ビデオゲームなど)
⑧医療器具(透析装置など)
⑨監視およびコントロール機器(煙警報機、サーモスタットなど)
⑩自動販売機(飲料水自動販売機など)
4)再生(Recovery)率目標
WEEE 指令では、2006 年 12 月 31 日までに各カテゴリー毎に定められた再生
(Recovery)率等を達成することが求められている。
カテゴリー①⑩:再生(Recovery)率、各製品の平均重量の最低 80%。
うち最低 75%が再利用(Re-Use)あるいはリサイクリング(Recycling)。
カテゴリー③④:再生(Recovery)率、各製品の平均重量の最低 75%。
うち最低 65%が再利用(Re-Use)あるいはリサイクリング(Recycling)。
カテゴリー②⑤⑥⑦⑨:再生(Recovery)率、各製品の平均重量の最低 70%。
うち最低 50%が再利用(Re-Use)あるいはリサイクリング(Recycling)。
カテゴリー⑧の目標値は、2008 年 12 月 31 日までに欧州委員会が提案する。
(参考)
再利用(Re-Use)・・・当初と同じ目的で回収品を再度使用すること
リサイクリング(Recycling)・・・当初又は他の目的で回収品を生産工程で再加工すること
再生(Recovery)・・・上記再利用とリサイクリングとエネルギー回収(熱の再生を伴う
直接的焼却によるエネルギー回収)を含んだもの。
5)WEEE 指令の位置づけ
EU の指令(Directive)は加盟各国がその指令に対応した新国内法の制定、現行の国内
法の改正または廃止の手続きを行った後にその効力を発揮する。加盟国はその目標値等を
厳守する義務があるがそれは自国の国内法によって達成することとなる。
また、EU の指令にはその指令がどの EC 条約によって制定されたかによって制定後の
54
拘束力が異なる。
1つ目は条約第 95 条によるものである。この場合加盟各国は指令より厳しい国内法は
制定できない。 RoHS 指令はこの第 95 条による指令である。
2つ目は条約 175 条によるものである。この場合は EU の指令より厳しい国内法が制定
できる。 WEEE 指令は条約第 175 条が選択されている。
したがって、WEEE 指令を受けた各国の国内法の内容は国毎に異なる可能性があり、実
際の運用内容については 2004 年8月 13 日までに法整備が成される各国の国内法の内容を
確認する必要があろう。
6)EU の WEEE 指令と我が国家電リサイクル法との比較
以上、EU の廃家電のリサイクルについて簡単に述べてきたが、これまで明らかになっ
ている内容から我が国の家電リサイクル法との比較を行うと下記のようになる。
① 対象品目が EU の方が多い。
② 回収・リサイクルのコスト負担者は EU は製造メーカーであり、日本は排出者(消費
者)である。
③
EU は回収量のノルマが定められている。
EU の廃家電リサイクルについては、日本に比較して製造者責任が大幅に拡大されている
が、まだ実行されておらず今後の動向を見守る必要がある。
55
洗濯機
冷蔵庫
セパレート
型エアコン
(
参考資料)
家電リサイクル対象4品目鋼
鋼材使用量推移
1983
1984
年度
5,093
5,285
活動水準(
千台)
(
千台)
1.600
冷延鋼板
原単位(
kg/台) 1.600
8
8
千T
1.600
薄板計
原単位(
kg/台) 1.600
8
8
千T
6.200
亜鉛系表面処理鋼板 原単位(
kg/台) 6.200
32
33
千T
6.200
亜鉛メッキ鋼板計
原単位(
kg/台) 6.200
32
33
千T
7.800
鋼材計
原単位(
kg/台) 7.800
40
41
千T
4,538
5,062
活動水準(
千台)
(
千台)
2.200
熱延鋼板
原単位(
kg/台) 2.200
10
11
千T
冷延鋼板
原単位(
kg/台) 16.800 16.800
76
85
千T
薄板計
原単位(
kg/台) 19.000 19.000
86
96
千T
亜鉛系表面処理鋼板 原単位(
kg/台) 11.200 11.200
51
57
千T
亜鉛メッキ鋼板計
原単位(
kg/台) 11.200 11.200
51
57
千T
鋼材計
原単位(
kg/台) 30.200 30.200
137
153
千T
活動水準(
千台)
冷延鋼板
(
千台)
原単位(
kg/台)
千T
薄板計
原単位(
kg/台)
千T
亜鉛系表面処理鋼板 原単位(
kg/台)
千T
亜鉛メッキ鋼板計
原単位(
kg/台)
千T
鋼材計
原単位(
kg/台)
千T
カラーテレビ 活動水準(
千台)
(
千台)
冷延鋼板
原単位(
kg/台)
千T
薄板計
原単位(
kg/台)
千T
亜鉛系表面処理鋼板 原単位(
kg/台)
千T
亜鉛メッキ鋼板計
原単位(
kg/台)
千T
鋼材計
原単位(
kg/台)
千T
4品目合計 熱延鋼板
千T
冷延鋼板
千T
薄板計
千T
亜鉛系表面処理鋼板 千T
亜鉛メッキ鋼板計
千T
鋼材計
千T
2,136
0.900
2
0.900
2
14.000
30
14.000
30
14.900
32
13,137
1.130
15
1.130
15
0.370
5
0.370
5
1.500
20
10
101
111
118
118
229
3,178
0.900
3
0.900
3
14.000
44
14.000
44
14.900
47
15,819
1.130
18
1.130
18
0.370
6
0.370
6
1.500
24
11
114
125
140
140
265
1985
5,011
1.600
8
1.600
8
6.200
31
6.200
31
7.800
39
5,227
2.200
11
16.800
88
19.000
99
11.200
59
11.200
59
30.200
158
1986
4,672
1.070
5
1.070
5
6.635
31
6.635
31
7.705
36
4,527
2.200
10
15.680
71
17.880
81
12.370
56
12.370
56
30.250
137
1987
4,857
1.070
5
1.070
5
6.635
32
6.635
32
7.705
37
5,078
2.200
11
14.179
72
16.379
83
13.982
71
13.982
71
30.361
154
1988
5,055
1.070
5
1.070
5
6.635
34
6.635
34
7.705
39
5,106
2.271
12
11.610
59
13.881
71
17.414
89
17.414
89
31.295
160
1989
5,341
1.900
10
1.900
10
6.834
37
6.834
37
8.734
47
4,994
2.312
12
11.819
59
14.131
71
17.727
88
17.727
88
31.858
159
1990
5,583
1.900
11
1.900
11
6.982
39
6.982
39
8.882
50
5,125
2.312
12
11.819
61
14.131
73
17.727
91
17.727
91
31.858
164
1991
5,590
1.900
11
1.900
11
6.982
39
6.982
39
8.882
50
5,090
2.295
12
11.733
59
14.028
71
17.597
90
17.597
90
31.625
161
4,053
0.900
3
0.900
3
14.000
57
14.000
57
14.900
60
17,018
1.130
19
1.130
19
0.370
7
0.370
7
1.500
26
11
118
129
154
154
283
4,090
0.900
4
0.900
4
14.000
57
14.000
57
14.900
61
14,551
1.022
15
1.022
15
0.511
7
0.511
7
1.533
22
10
95
105
151
151
256
4,706
0.900
4
0.900
4
14.000
66
14.000
66
14.900
70
13,655
1.093
15
1.093
15
0.546
7
0.546
7
1.639
22
11
96
107
176
176
283
6,016
0.900
6
0.900
6
14.000
84
14.000
84
14.900
90
13,184
0.375
5
0.375
5
1.498
20
1.498
20
1.873
25
12
75
87
227
227
314
6,107
0.900
5
0.900
5
14.000
86
14.000
86
14.900
91
12,317
7,274
0.900
6
0.900
6
14.000
102
14.000
102
14.900
108
13,529
9,349
0.900
8
0.900
8
14.000
131
14.000
131
14.900
139
13,368
0.000
0
1.959
24
1.959
24
1.959
24
12
74
86
235
235
321
0.000
0
1.959
27
1.959
27
1.959
27
12
78
90
259
259
349
0.000
0
1.903
25
1.903
25
1.903
25
12
78
90
285
285
375
56
1992
5,096
1993
5,202
1994
5,056
1995
4,805
1996
5,143
1997
4,570
1998
4,560
1999
4,256
2000
4,315
2001
3,686
11.052
56
11.052
56
11.052
56
4,353
1.889
8
9.656
42
11.545
50
14.500
63
14.500
63
26.045
113
11.052
58
11.052
58
11.052
58
4,371
1.889
8
9.656
42
11.545
50
14.500
64
14.500
64
26.045
114
11.052
56
11.052
56
11.052
56
5,078
1.889
10
9.656
49
11.545
59
14.500
73
14.500
73
26.045
132
12.094
58
12.094
58
12.094
58
5,040
2.047
10
10.466
53
12.513
63
15.716
79
15.716
79
28.229
142
12.094
62
12.094
62
12.094
62
5,333
2.047
11
10.466
56
12.513
67
15.716
84
15.716
84
28.229
151
12.094
56
12.094
56
12.094
56
5,030
2.047
10
10.466
53
12.513
63
15.716
79
15.716
79
28.229
142
12.094
55
12.094
55
12.094
55
4,949
2.047
10
10.466
52
12.513
62
15.716
78
15.716
78
28.229
140
12.094
51
12.094
51
12.094
51
4,410
2.047
9
10.466
46
12.513
55
15.716
69
15.716
69
28.229
124
12.572
54
12.572
54
12.572
54
4,266
2.141
9
10.946
47
13.087
56
16.438
70
16.438
70
29.525
126
12.572
46
12.572
46
12.572
46
3,545
2.141
8
10.946
39
13.087
47
16.438
58
16.438
58
29.525
105
7,087
5,770
8,372
9,237
9,395
7,066
7,104
7,005
7,023
6,704
15.306
109
15.306
109
15.306
109
11,565
15.306
88
15.306
88
15.306
88
10,449
15.306
128
15.306
128
15.306
128
9,249
15.265
141
15.265
141
15.265
141
7,218
15.265
143
15.265
143
15.265
143
6,550
15.265
108
15.265
108
15.265
108
6,552
15.265
108
15.265
108
15.265
108
5,050
15.265
107
15.265
107
15.265
107
3,213
15.265
107
15.265
107
15.265
107
2,133
15.265
102
15.265
102
15.265
102
1,628
0.160
2
0.160
2
0.160
2
8
42
50
230
230
280
0.160
2
0.160
2
0.160
2
8
42
50
212
212
262
0.159
1
0.159
1
0.159
1
10
49
59
258
258
317
0.139
1
0.139
1
0.139
1
10
53
63
279
279
342
0.139
1
0.139
1
0.139
1
11
56
67
290
290
357
0.139
1
0.139
1
0.139
1
10
53
63
244
244
307
0.139
1
0.139
1
0.139
1
10
52
62
242
242
304
0.139
0
0.139
0
0.139
0
9
46
55
227
227
282
0.139
0
0.139
0
0.139
0
9
47
56
231
231
287
0.139
0
0.139
0
0.139
0
8
39
47
206
206
253
57
2.自動車リサイクル
(1)使用済自動車処理の現状とASR
(自動車由来のシュレッダーダスト:Automobile Shredder Residue)
1)使用済自動車処理の経緯と問題点
わが国における使用済自動車台数は、1970 年代初の年間 200 万台から、90 年には 500
万台に乗り、以降 500 万台のペースで発生している。当初、手ばらしやギロチンシャー
によって行われていた使用済自動車処理は、増大する使用済自動車量と不法投棄対策と
して 1970 年代初めにシュレッダー機が導入されたのを期に、使用済自動車処理の主要
設備として定着した。かつその選別機能面から購入側である電炉メーカーの製鋼原料と
しての信頼を得、基数を増加させた。80 年代後半から 90 年代にかけたバブル期では、
能力の増大をめざす大型化も進んだのは第1章2項に示す実態調査結果の通りである。
千台
図表2−25 使用済み自動車台数の推移
千台
80,000
自リ法制定
新車登録
保有台数
使用済自動車
70,000
60,000
6,000
5,000
4,000
50,000
管理型移行
40,000
3,000
豊島事件
30,000
2,000
20,000
1,000
10,000
0
2
98
20
96
94
92
90
86
88
82
84
80
78
74
76
70
72
0
出所;自動車工業会
一方、シュレッダー機の増加や大型化に比例して、ダストの発生量も増大する。その
処分を瀬戸内海の豊島に不法投棄した「豊島事件」は、社会の中で廃棄物処理に責任を
持つということの教訓でもある。含まれる重金属の対処もあり、処分形態は 1996 年4
月に安定型から管理型へ移行した。その対応は正しいであろう。しかし国土が狭く管理
型処分場が限られることから、新規参入品目であるシュレッダーダストの受け入れ先は
公共はおろか民間でも限られた箇所しかなかった。そして処分費は受け入れ側で決まる
状況となり高騰を続ける。安定型処分費 6,000 円/tは管理型に移行したことにより平
均 15,000 円/tとなり、スタート段階で倍以上のコスト負担を強いられる。処分費はそ
の後、契約更新のたびに増額を強いられ、2003 年夏の関東地区では 35,000 円/tにま
で上昇している。この間、経営の確保からやむなく先方に処分費の対価を求める「逆有
償」なる現象が出現した。もはや日本の使用済自動車リサイクルは危機的状況とも言え
る時、2002 年7月「自動車リサイクル法」の成立をやっと見るのである。
57
(社)日本鉄リサイクル工業会の調査によると、平均的なシュレッダーコストはメイン
モーター1500HP、プレシュレッダー300HP、月間 3,750t処理の場合、人件費を含む加
工費は 11,240 円/t、流通口銭 1,000 円/t、ASR 処理費 7,200 円/t(30,000 円/t×
発生率 24%として)
19,440 円/tとなるが、
スクラップ価格は 2003 年6月時点は 13,500
円/tであり、5,940 円/tの不足となっている。かって価格が 1 万円であった当時は、
約 9,000 円のコストギャップがあった訳であり、2003 年末になり 20,000 円/t台に達
して逆有償の必要がやっとなくなったが、あまりにも採算割れの期間が永すぎた。
図表2−26 シュレッダー価格(
2003年6月)
19,440円/t
逆有償
▲5,940円/t
ASR
処理費
7,200円/t
(30000円×0.24)
加工
コスト
13,500円/t
(
13000+500)
11,240円/t
+
口銭
1,000円
シュレッダー
経費
シュレッダー
ス クラップ価格
出所;
日本鉄リサイクル工業会
2)ダスト処分軽減努力
発生するシュレッダーダスト軽減技術や処理技術は自動車研究所の乾留化処置を始
めさまざまな対策や研究が行われてきた。しかしいずれも経済性を確保出来ない、ある
いは試験段階のまま推移している。
破砕業としても手をこまねいて経費高騰に耐え続けた訳では無い。その代表的な対応
が減容・減量・固化設備の導入である。(社)日本鉄リサイクル工業会が 2002 年と 2003
年に行った調査によると、1996 年設置を頭に現在 24 事業所で設置されており、その処
理能力計は 27 万t、2001 年の実際処理量は 11.6 万tとなっている。さらに7基が計
画中であり、トータルの処理能力は約 29 万tとなると見込まれる。現状のASR発生
量を 50 万tとすると、約 60%が減容、固化されることになる。この設備は、ダストを
棒状に固化して燃料代替とすることを目的として始まったが、多くは販売ルートが確立
されていない。現状では処分先の要請により、埋め立て効率の確保や風による飛散防止
のためにソフト固化を実施し、あるいは響き灘や大阪湾などの海面埋め立て条件に対応
58
して実施している。シュレッダーダストを固形化することにより、嵩比重は 0.3∼0.4
が 1.0 になり、減容は 50%以下が確保される。また含水量の調整も可能である。燃料
としての使用のほか輸送効率にも貢献する設備であり、活用は自動車リサイクル全体に
も寄与しよう。これらの発生抑制を実施している事業所に対し、なんらかのインセンテ
ィブ付与を考慮すべきであるとして、日本鉄リサイクル工業会は自動車工業会に申し入
れを行った。その結果、今回の自動車リサイクル法では、提案に応じて自動車メーカー
等が有意と判断した場合、委託契約を締結しASR減量・減容費用を支払うこととなっ
た。
図表2−27 減容・
減量・
固化設備
70
基数
処理能力
60
50
40
30
20
10
九州
国
中四
関西
中部
関東
東北
0
北海
北海道
0
東北
3
関東
4
中部
6
関西
4
中四国
3
九州
4
全国計
24
注;能力は申告ベース
千T
処理能力
0.0
50.5
62.0
56.1
35.0
23.0
44.0
270.6
道
基数
出所;日本鉄リサイクル工業会
①減量委託の場合
自動車メーカー等が引き取るASR実重量が減少し、かつ再資源化率向上に貢献して
いる場合(固形燃料化、素材として再資源化する作業など)。
②減容(性状改善)委託の場合
ASR指定引取り場所(ASR 再資源化施設、埋め立て処分場)の受け入れ条件により、
ASRの性状改善が必要な場合(海面埋め立てのためのASR固化、比重アップの作業
など)。
③委託の条件
以下の基準6項目すべてに適合することが条件となっている。
・ASRの実重量がASR基準重量よりも明らかに低減するものであること(減容固化
を除く)。
・原則として減量・減容のための装置が付帯されていること
・上記工程で減量・減容の重量データとその活用先、活用量のデータが明確となってい
ること。
・ASR再資源化・処理費用の単価が、原則として後工程のASR再資源化・処理費用
の単価に比べ安価であること。
・ASR減量・減容作業後の ASR が指定引取り場所の定める引取り基準に適合すること
59
・ASR減量・減容の対象は、解体ガラを破砕し、金属類を回収した後のASRに限る
(高度な金属分離回収は対象外)。
なお、破砕工程以前の行為は、減量・減容の取り組みに該当しないとしておりまた、
高度な分別により、鉄、アルミ、その他金属を回収してASR重量を減量する場合も対
象外となっている(金属類の回収はシュレッダー業者の再資源化の範囲内とみなされて
いるため)。
3)業態別使用済自動車処理量
自動車リサイクルの全体的な流れを関係する業態別に 2002 年のデータを基に見てみ
たい。年間 521 万台発生した使用済自動車はディラーなどに引き取られ、その後解体業
者に渡されるが、この間に輸出されるもの(丸車の輸出)がある。2002 年は年間 75 万
台はあったと算定される(財務省・通関統計―自工会新車輸出台数により算出)。しか
し、北海道、東北、北陸などの日本海側からウラジオストックへの輸出が定常化してい
る情報があり、不明分を加えると実際には 100 万台はあるとの見方もある。75 万台と
した時、
解体業に渡った使用済自動車台数は 521 万台−75 万台により 446 万台となる。
解体業ではエンジン、バッテリ、タイヤを除き、流通可能な中古部品摘出のあと輸送効
率を上げるためソフトプレス(=解体ガラ)状態にしてシュレッダー事業所に出荷する。
この場合、ソフトプレスはソフトプレスのみを行う事業所が行い、またシュレッダー事
業者が移動式プレス機を解体業に持ち込んで自らが行う場合とがある。2002 年7月に
制定された自動車リサイクル法第 31 条により「全部再資源化認定」が認められた。こ
れは、精緻な解体を行うことを条件に解体後圧縮あるいは切断して製鋼原料として投入
することを認めた処理方法であり、圧縮材は一般にAプレス材と呼ばれている。この結
果、解体業がプレス機を導入し、製鋼原料として直接販売するいわばスクラップ事業へ
の進出が展開されつつある(後述)
。2002 年ではAプレスとして韓国を中心に輸出され
たもの 34 万t(データなく、単価の安いその他屑を抽出した)、電炉メーカーに出荷さ
れたもの 20 万t、計 54 万t、台数換算では 108 万台分がAプレスとなったと推定され
る。従ってシュレッダー事業所引渡し分はAプレス対象分を除いた残り 446 万台−108
万台=358 万台となり、エンジン、タイヤ、バッテリを除く重量換算値は 251 万tとな
る。これをシュレッダーにかけて採取されるシュレッダースクラップは、自動車研究所
調査の平均回収率 73%を採用すると 183 万tとなる。この量は、日本鉄源協会の流通
量調査による 2002 年の AB クラスのシュレッダースクラップ流通量 176 万tと比較して
7万tの誤差であり、従って以上述べた全体推計はほぼバランスすると言える。
また、同調査による製鋼原料回収率 73%とダスト発生率 24%を加えた残り3%は非
鉄回収分であり、全部再資源化認定による場合はこの分は回収されずに鋼に溶け込むこ
とになる。
以上の推計による国外処理台数は、丸車の輸出 75 万台+Aプレス輸出 68 万台計 143
60
万台となり、同様にして計算した 2001 年と比較し 10 万台増加した。
2003 年は別な機関の調査によると電炉投入分は 36 万tに増加し、Aプレス輸出も 40
万t近くになったと見られる。
図表2−28 自動車リサイクルの現状(数値は2001年/2002年)
ユーザー
515万台/521万台
ディラー
丸車の輸出 *73万台/75万台
*国外処理
73+58=131万台(
2001年)
ELV解体 442万台/446万台
中古部品の販売
エンジン・
ハ ゙ッテリ、タイヤ 除く
358万台*0.7=251万t
75+68=143万台(
2002年)
98万台/108万台
処 理
*Aプレス輸出29万t(
58万台)
/
34万台(
68万台)
要シュレッダー 251万t
シュレッダー処理
ギロチン・
プレス処理
2003年30万t
ダスト(
ASR)
251*0.24=60万t
減容固化
251*0.73=183万t
Aプレス投入20万t(
40万台)
/20万t(
40万台)
(
流通調査H13・
10-12
キ ゙ロチン材として投入量?
441*4=177万t)
スクラップ
(
流通調査H14.176万t)
埋め立て
溶 解
焼 却
61
4)現状のシュレッダー稼働率(試算)
日刊市況通信社が行った 2003 年4月1日時点の設備調査により、シュレッダーの年
間能力を算出し、かつ日本鉄源協会による流通量調査によるシュレッダースクラップ流
通量を分子にして 2003 年1∼6月期の平均稼動率を試算した。
年間処理能力の算定は、鉄リサイクル工業会設定による以下の算定式である。
年間処理能力=シュレッダー馬力数×20kg/hr×6h×21 日×12 ヵ月
全国 187 基を対象にした総年間能力は 544 万 t となった。これには休止中8基を含ん
でいる。さらに、判明している新断のみ 12 基、アルミ、木材3基、OA機器、廃家電
など4基、その他 300 馬力以下の小型シュレッダー36 基計 55 基(=年間能力 80.5 万
t)を除く自動車破砕を行い得る基数 132 基の年間処理能力は 463.8 万tとなる。仮に
使用済自動車 500 万台が全て国内に残留し、かつ解体されてシュレッダー事業所に引き
渡されたとしても全てが処理可能なだけの設備能力が存在している。図表2−29 にそ
の地域別分布を現す。また、図表2−30 は基数及び能力の県別詳細である。
算定した年間処理能力 464 万 t を地域別にみると、最大は関東 44 基 159 万 t であり
全体の 34.3%を占める。これに対して鉄源協会調査の 2003 年1−6月のシュレッダー
スクラップ出荷量は 27.5 万 t なので、稼働率は約 35%と推計される。次いで中部 24
基 88.6 万 t(同 19.1%)
、稼働率は 56%、関西 17 基 55.5 万 t(12%)
、稼働率 57%等
であり、2003 年1-6月の流通量 102.5 万tをベースにした全国平均稼働率は 44%とな
った。他の地域では中四国の稼動率が全国で最高の 69%であり、東北が 25%となり最
低水準を表した。稼働率 55%以上は北海道、中部、関西、中四国の4地域となってい
る。
図表2−29 シュレッダー処理能力と稼働率(
H15.1-6)
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
全国
単位;千t
、%
2003/1ー6 計算
総基数
新断・ア ル ミ
廃車対応可能能力
年間能力構成比 流通量 稼動率
基数 年間能力 300以下他 年間能力 基数
11
271
3
24
8
247
5.3
69
55.9
20
559
7
57
13
502
10.8
62
24.7
59
1811
15
221
44
1,590
34.3
275
34.6
42
1,237
18
352
24
886
19.1
247
55.8
22
600
5
45
17
555
12.0
159
57.3
11
281
4
61
7
220
4.7
76
69.1
22
682
3
44
19
638
13.8
137
42.9
187
5,443
55
805
132
4,639 100.0
1,025
44.2
備考;シュレッダー基数及び馬力数は日刊市況通信社・H15.4.1時点
H15.1-6流通量は日本鉄源協会「流通調査」のうちシュレッダースクラップ
同様にして推計した 2001 年1-12 月は 35.7%、2002 年 1-6月は 40.2%、9-12 月は
44.1%となり、回復に向かっていることが分かった。価格の好転や需要増加が後押しし
62
ていると想定されるが、採算ベースには遠く、各事業者は一般粗大ゴミや建築廃材など
を扱って息をつないでいるのが現状である。ちなみに 1998 年当時のシュレッダースク
ラップ流通量 306 万tの場合、平均稼働率は 66%であり、この4年間で 20 ポイント以
上低下したことになる。
単位トン・H15年4月1日時点
新断・ア ル ミ・300馬力以下
ASR対象
基数
馬力数 年間能力
基数
年間能力
3
800
24,192
8
246,758
0
3
113,400
0
2
45,360
1
300
9,072
3
136,080
1
300
9,072
1
37,800
2
600
18,144
0
0
3
700
21,168
4
169,344
7
1,900
57,456
13
501,984
1
1,000
30,240
5
169,949
0
8
290,909
1
250
7,560
6
201,096
5
2,200
66,528
6
264,600
2
1,160
35,078
5
158,760
2
500
15,120
3
98,280
4
2,200
66,528
5
247,968
0
6
158,760
0
0
15
7,310
221,054
44 1,590,322
1
750
22,680
4
113,400
0
0
0
0
1
30,240
2
480
14,515
3
98,280
0
3
98,280
3
900
27,216
6
152,712
12
9,500
287,280
7
393,120
0
0
0
18
11,630
351,691
24
886,032
1
200
6,048
4
143,035
1
300
9,072
4
120,960
2
700
21,168
2
68,040
0
3
132,149
1
300
9,072
2
45,360
0
2
45,360
5
1,500
45,360
17
554,904
0
0
0
0
0
0
0
3
91,627
4
2,020
61,085
1
37,800
0
0
0
0
1
15,120
0
1
60,480
0
1
15,120
0
0
0
4
2,020
61,085
7
220,147
0
0
0
6
208,656
0
2
68,040
0
1
37,800
3
1,450
43,848
2
108,864
0
0
0
3
65,016
0
1
22,680
0
2
61,992
0
2
65,318
3
1,450
43,848
19
638,366
55
26,610
804,686
132 4,638,514
図表2−30 シュレッダー機県別詳細
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
北海道
青森
岩手
宮城
秋田
山形
福島
東北計
茨城
栃木
群馬
埼玉
千葉
東京
神奈川
新潟
山梨
関東計
富山
石川
福井
長野
岐阜
静岡
愛知
三重
中部計
滋賀
京都
大阪
兵庫
奈良
和歌山
関西計
鳥取
島根
岡山
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
中四国計
福岡
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
沖縄
九州計
全国計
総基数 総馬力数 総年間能力
11
8,960
270,950
3
3,750
113,400
2
1,500
45,360
4
4,800
145,152
2
1,550
46,872
2
600
18,144
7
6,300
190,512
20
18,500
559,440
6
6,620
200,189
8
9,620
290,909
7
6,900
208,656
11
10,950
331,128
7
6,410
193,838
5
3,750
113,400
9
10,400
314,496
6
5,250
158,760
0
0
0
59
59,900
1,811,376
5
4,500
136,080
0
0
1
1,000
30,240
5
3,730
112,795
3
3,250
98,280
9
5,950
179,928
19
22,500
680,400
0
0
0
42
40,930
1,237,723
5
4,930
149,083
5
4,300
130,032
4
2,950
89,208
3
4,370
132,149
3
1,800
54,432
2
1,500
45,360
22
19,850
600,264
0
0
0
0
0
0
3
3,030
91,627
5
3,270
98,885
0
0
0
1
500
15,120
1
2,000
60,480
1
500
15,120
0
0
0
11
9,300
281,232
6
6,900
208,656
2
2,250
68,040
1
1,250
37,800
5
5,050
152,712
3
2,150
65,016
1
750
22,680
2
2,050
61,992
2
2,160
65,318
22
22,560
682,214
187
180,000
5,443,200
63
5)推定シュレッダー稼働率でみたASR発生量の現状
ASRはシュレッダーを稼動させることによって発生する自動車由来のダストであ
る。そこで前項で推定したASR対象稼動率を使用することにより、地域別ASR発生
量を推計し、2002 年6月に日本鉄リサイクル工業会が推計した 2001 年発生量と比較し
た。この場合の地域別年間シュレッダー処理能力 b は、図表2−30 県別処理能力に基
づく。また地域別稼動率cは図表2−29 の計算稼働率である。ASR発生量 a は、2002
年推計と同様に次の算式により求めた。
ASR 発生量 a=((ASR 対象シュレッダー能力b×ASR 対応稼動率c)÷73.5%)×24.1%
備考;73.5%は自動車研究所調査の平均製鋼原料回収率、24.1%は同調査による ASR 発生率。
推計結果、2003 年間の ASR 発生量は、2003 年1−6月の流通調査による稼動率全国
44.2%(地域別は図表2−29)のまま7−12 月も推移するとすれば 67 万tと推定され
る。なお 2002 年6月に調査した 2001 年は稼動率 35.7%、ASR 発生量 51 万t(備考;
各地区ヒアリング結果により 55 万tに修正)と比較すると、稼動率が 8.5 ポイント改
善したことが寄与して 12 万t増加する。地域別では関東 18 万t、中部 16 万t、関西
10 万t、九州9万t、中四国5万t、北海道 4.5 万t、東北4万tである。
2005 年1月以降、自動車リサイクル法施行後、ASR 処理費負担がなくなることにより、
シュレッダーの稼動率が仮に 50%に回復した場合、同様の計算式によれば ASR 想定発
生量は 76 万tとなると予想される。ちなみに稼動率 10 ポイント増(44.1%→54.1%)
は ASR 発生量を 15 万t増加させる。今後のシュレッダー稼動動向は、使用済自動車後
の輸出量(丸車の輸出)や後で述べる全部利用(A プレス)との対応の中で左右され予
断を許さないが、発生量 80 万t前後は充分有り得るものとして対策をたてる必要があ
る。
図表2−31 ASR発生量推定(H15年1−12)
単位1000t
、%
ASR対象
解体ガラ
ASR
全国
年間能力 基数
稼動率 製鋼原料 発生率 発生量 発生率 発生量
H13年
4,246
150
35.7
1,514
73.5
2,060
24.1
5 09
H15年
4,639
132
44.2
2,050
73.5
2,789
24.1
6 72
50.0
2,320
73.5
3,156
24.1
7 60
H17・
想定
4,639
132
H15年地域別ASR発生推計
北海道
東北
関東
中部
関西
中四国
九州
246
502
1590
886
555
220
638
8
13
44
24
17
7
19
55.9
24.7
34.6
55.8
57.3
69.5
42.9
137.9
124
550.3
494.4
318
153
273.9
64
73.5
73.5
73.5
73.5
73.5
73.5
73.5
187.7
168.7
748.6
672.7
432.6
208.2
372.6
単位1000t
、%
24.1
4 5.2
4 0.7
24.1
24.1 1 80.4
24.1 1 62.1
24.1 1 04.3
24.1
5 0.2
8 9.8
24.1
図表2−32 県別ASR発生量の推定(H15年1−12月)
単位1000t
ASR対象・
トン
H15.1-6 回収
解体ガラ
ASR
基数 年間能力t 稼動率 製鋼原料 換算係数 投入量 発生率 発生量
45.2
1 北海道
8
246,758
55.9
137.9
73.5
187.7
24.1
9.2
2 青森
3
113,400
24.7
28.0
73.5
38.1
24.1
3.7
3 岩手
2
45,360
24.7
11.2
73.5
15.2
24.1
11.0
4 宮城
3
136,080
24.7
33.6
73.5
45.7
24.1
3.1
5 秋田
1
37,800
24.7
9.3
73.5
12.7
24.1
0.0
6 山形
0
0
0.0
73.5
0.0
24.1
13.7
7 福島
4
169,344
24.7
41.8
73.5
56.9
24.1
40.7
東北計
13
501,984
24.7
124.0
73.5
168.7
24.1
19.3
8 茨城
5
169,949
34.6
58.8
73.5
80.0
24.1
33.0
9 栃木
8
290,909
34.6
100.7
73.5
136.9
24.1
22.8
10 群馬
6
201,096
34.6
69.6
73.5
94.7
24.1
30.0
11 埼玉
6
264,600
34.6
91.6
73.5
124.6
24.1
18.0
12 千葉
5
158,760
34.6
54.9
73.5
74.7
24.1
11.1
13 東京
3
98,280
34.6
34.0
73.5
46.3
24.1
28.1
14 神奈川
5
247,968
34.6
85.8
73.5
116.7
24.1
18.0
15 新潟
6
158,760
34.6
54.9
73.5
74.7
24.1
0.0
16 山梨
0
0
0.0
73.5
0.0
24.1
関東計
44 1,590,322
34.6
550.3
73.5
748.6
24.1 180.4
20.7
17 富山
4
113,400
55.8
63.3
73.5
86.1
24.1
0.0
18 石川
0
0
55.8
0.0
73.5
0.0
24.1
5.5
19 福井
1
30,240
55.8
16.9
73.5
23.0
24.1
18.0
20 長野
3
98,280
55.8
54.8
73.5
74.6
24.1
18.0
21 岐阜
3
98,280
55.8
54.8
73.5
74.6
24.1
27.9
22 静岡
6
152,712
55.8
85.2
73.5
115.9
24.1
71.9
23 愛知
7
393,120
55.8
219.4
73.5
298.5
24.1
0.0
24 三重
0
0
0.0
73.5
0.0
24.1
中部計
24
886,032
55.8
494.4
73.5
672.7
24.1 162.1
26.9
25 滋賀
4
143,035
57.3
82.0
73.5
111.5
24.1
22.7
26 京都
4
120,960
57.3
69.3
73.5
94.3
24.1
12.8
27 大阪
2
68,040
57.3
39.0
73.5
53.0
24.1
24.8
28 兵庫
3
132,149
57.3
75.7
73.5
103.0
24.1
8.5
29 奈良
2
45,360
57.3
26.0
73.5
35.4
24.1
8.5
30 和歌山
2
45,360
57.3
26.0
73.5
35.4
24.1
関西計
17
554,904
57.3
318.0
73.5
432.6
24.1 104.3
0.0
31 鳥取
0
0
0.0
73.5
0.0
24.1
0.0
32 島根
0
0
0.0
73.5
0.0
24.1
20.9
33 岡山
3
91,627
69.5
63.7
73.5
86.6
24.1
8.6
34 広島
1
37,800
69.5
26.3
73.5
35.7
24.1
0.0
35 山口
0
0
0.0
73.5
0.0
24.1
3.4
36 徳島
1
15,120
69.5
10.5
73.5
14.3
24.1
13.8
37 香川
1
60,480
69.5
42.0
73.5
57.2
24.1
3.4
38 愛媛
1
15,120
69.5
10.5
73.5
14.3
24.1
0.0
39 高知
0
0
0.0
73.5
0.0
24.1
50.2
中四国計
7
220,147
69.5
153.0
73.5
208.2
24.1
29.4
40 福岡
6
208,656
42.9
89.5
73.5
121.8
24.1
9.6
41 佐賀
2
68,040
42.9
29.2
73.5
39.7
24.1
5.3
42 長崎
1
37,800
42.9
16.2
73.5
22.1
24.1
15.3
43 熊本
2
108,864
42.9
46.7
73.5
63.5
24.1
9.1
44 大分
3
65,016
42.9
27.9
73.5
37.9
24.1
3.2
45 宮崎
1
22,680
42.9
9.7
73.5
13.2
24.1
8.7
46 鹿児島
2
61,992
42.9
26.6
73.5
36.2
24.1
9.2
47 沖縄
2
65,318
42.9
28.0
73.5
38.1
24.1
89.8
九州計
19
638,366
42.9
273.9
73.5
372.6
24.1
全国計
132 4,638,514
44.2
2050.2
73.5 2789.4
24.1 672.2
65
6)自動車リサイクル法における ASR 処分
後述するように、2005 年1月より施行される自動車リサイクル法ではASR処分問
題の解決を基点とし、有害なフロン類と処理危険物であるエアバックを加えた3品に主
眼を置いたしくみとなっている。1997 年に制定された「使用済み自動車リサイクル・
イニシアティブ」では、2002 年以降の使用済み自動車リサイクル率を 85%以上、2015
年以降は 95%以上とする。また埋め立て処分容量は 2002 年以降、1996 年の5分の3以
下、2015 年では同5分の1以下とする数値目標が掲げられている。ASRの発生低減
は目標達成の第一要件ともいえる。このため発生量を事前に少なくする技術開発や、発
生後のサーマル利用などの有効化が検討されている(ガス化溶融については後述)。
図表2−33
使用済み自動車リサイクルイニシアティブが掲げる数値目標
新型車
使用済み自動車
埋立処分容量
2002 年以降
リサイクル可能率 90%以上
リサイクル率 85%以上
1996 年の5分の3以下
2015 年以降
リサイクル率 95%以上
1996 年の5分の1以下
では、地理的、気象的に見ただけでも、さまざまに性状の異なるASRの処分につい
て、今回実施される自動車リサイクル法では、具体的にどのように制定され、どのよう
な対処が考慮されているのであろうか。
① ASR引取り基準
法第 22 条に基づき、ASRのみを引き取り対象としている。シュレッダーには自動
販売機、鋼製家具、自転車などさまざまな鉄鋼製品が投入されているが、これらはSR
(Shredder
Residue)であり、ASR(Automobile
Shredder
Residue)とは区別
し、自らが管理型処分を実施しなければならない。
ASRとは解体業者・破砕業者の再資源化基準に従って「事前選別処理品目」の回収
等が行われたあと発生する自動車由来のシュレッダーダストをいい、「事前選別処理品
目」とは以下が指定されているので留意が必要である。
・ 法第 16 条、規則9条に定められた再資源化基準に従い、解体業者の義務として適正
に回収されるべきもの(エアバック類、タイヤ(スペアも含む)
、バッテリー、燃料、
オイルなどの液類、大型バス等の蛍光管)
・ 室内、トランク内のゴミ
・ 足回り等の著しい土砂
② ASR引取り重量
自動車メーカー等があらかじめ各車 1 台ごとに設定したASR基準重量に基づく。
基準重量は、電子マニフェスト(後述)における紐付時に基礎となる値であり、指定引
取り場所において実際に引き取る重量の上限となる。引渡し報告は、電子マニフェスト
の引渡し報告画面を開いたあと、該当チームを特定し、トラック実重量が、基準重量を
66
超えない範囲で割り当てる。紐付したASR基準重量の総和がトラックに積載したAS
R実重量を超えるようにすることが必要である。
③運搬
引渡報告完了後、飛散防止・雨水防止カバーの固定を確認後、チームごとの指定引取り
場所に搬出する。この場合のトラックはシュレッダー業者が、指定引取り場所と打ち合
わせて手配する。
図表2−34
項 目
性状
ASRの引き取り基準
検査項目
異物
基
水分・土砂含有率
引取りの方法
荷
姿
引取場所
引取りタイミング
移動報告
荷積み形態
運搬単位
異常な水もれ
準
異物(非自動車、事前選別品目)の混入がな
いこと
降雪寒冷地においてのみ、個別事業者ごとに
設定した値以下であること
各チームの定める指定引取り場所
事前の取決めに従う
要件を満たした電子マニフェスト上の引渡し
報告が行われていること
ASR の飛散や雨水が浸入しない運搬形態であ
ること
電子マニフェスト上で登録済みのトラック単
位での運搬であること(原則 10t以上)
少ない場合、特例あり。
荷室内より水もれのないこと
④指定項目
各チームとシュレッダー事業者は、事前に打ち合わせを行い、指定項目の確認を行う。
このうち、遠距離運搬、除雪寒冷地、発生量小規模の3つは任意の指定項目である。
・ASR指定引取り場所の指定(必須);
自動車メーカー等がASRを引き取るために、予め指定する場所であり、各チームが
シュレッダー業者ごとにASR再資源化施設や埋立て処分場等を指定場所として指定
する。この場合、チ−ムごとに違う指定場所が指定される場合と、共通の場合とがある。
共通の場合も両チームのASRを別々に運搬することになっている。
・遠距離運搬業者の指定(任意);
ASR指定引取り場所までの運搬距離が片道で 125km を超えるシュレッダー業者は、
「遠距離運搬業者」の指定が受けられる。この場合のASR指定引取り場所までの運搬
は、トラックの手配を含めシュレッダー業が主体となる。
すなわち、125km以内に存在する指定引取り場所までの運搬費は、原則としてシュ
レッダー業の負担であり、125km 以遠の場合は往路の運搬費を自動車メーカー等が負担
する。
・降雪寒冷地業者の指定(任意);
降雪寒冷地のシュレッダー業者については、個別の申請により期間を限定し、ASR
67
水分含有率の上乗せをすることが出来る。この場合、シュレッダー業者の事業所所在地
が、別途定める気象条件(平均気温・積雪量など)にあてはまること。ASRに雪、氷
の混入を防止するような配慮がなされていることが条件となっている。
・ASR発生量の少ないシュレッダー業者の特例適応(任意);
ASRの運搬形態は原則として 10 トントラック以上としているが、ASR発生量が
一定以下の事業者については特例の適用を受けることが出来る。この場合の引渡し荷姿
は4t以上のトラックによる運搬を可とする。また、その定義はASR発生量が1日6
t以下または、解体自動車破砕台数月間 900 台以下となっており、対象となるシュレッ
ダー業者は過去 1 年間のASR発生量、または解体自動車破砕台数の実績を添付して各
チームに申請する。各チームは申請内容を確認してチ−ムごとに判断し、指定する。
⑤ASR再資源化の基準
使用済み自動車全体のリサイクル率は既にマテリアルリサイクルで 80%近くに達し
ている模様だが、埋め立て処分場の極少化からさらなるリサイクル率向上が必要として
いる。その水準は、
「使用済み自動車リサイクル・イニシアティブ(1997 年策定)
」における「2015
年度以降使用済み自動車全体のリサイクル率 95%」の目標を十分に満たすものとなる
よう以下の通り設定している。
2005 年度以降
2010 年度以降
2015 年度以降
ASR リサイクル率
30%以上
50%以上
70%以上
ASRリサイクル率の計算は、各施設における物質・エネルギーの投入と回収の比率
である「ASR 投入施設活用率」の考え方に基づく。前提として一定レベル(0.40)以上
のものをASRリサイクル率を計算するにあたって組み入れ可能な施設とする。
ASR投入施設活用率=
(回収エネルギーの ASR 換算重量合計+回収マテリアル重量合計)/
(投入可燃分等の ASR 換算重量合計+投入灰分の重量合計)
≧0.40
その上で以下の算式で、自動車製造業者等は毎年度ASRリサイクル率を計算する
ASRリサイクル率=
(ASR 投入施設活用率を満たす施設への投入 ASR 重量―当該施設から排出される残渣重量+31
条認定を前提に電炉等投入した廃車ガラ中の ASR 相当重量―電炉等から排出される残渣重量)/
(自動車製造業者等が引取った重量+31 条認定を前提に電炉等投入した廃車ガラ中の ASR 相当
重量)
注;「残渣」とは、リサイクル施設または電炉等から排出された後、埋立や単純焼却により処理
されたもの。31 条全部再資源化認定のケースについても ASR リサイクル率の算定にあたって位置付け
ている。
68
最近のシュレッダー事業所に関する調査
調査名
1.平成12年度会員実態調査
2.廃自動車の適正処理・リサイクルに
3.高度技術集約型産業等研究開発調査
4.高度技術集約型産業等研究開発調査
関する調査
調査の主体
社・日本鉄リサイクル工業会
環境省・
リサ イクル 推進室
財・日本自動車研究所
財・日本自動車研究所
報告年月
平成13年9月
同左報告書内
平成12年度
平成13年度
調査年月
平成13年1月
H13年5月29日∼6月5日
2000年1月∼12月
2001年1月∼12月
調査対象
日本鉄リサイクル工業会会員
同左シュレッダー事業所
同左シュレッダー事業所
同左シュレッダー事業所
配布数
795事業所
107事業所
109事業所
鉄リ会員113事業所、非会員47事業所、計160事業所
回収数
409事業所
71事業所
ダスト対象59事業所
会員91、非会員40 計131
回収率
調査項目
51.4%
1.
事業所業務形態 2.
ダスト処理量(H12.1∼12)
処理費と変動、
3.廃棄物処理業許可取得状況
4.許可取得の難易度
5.使用ずみ自動車管理票調査
66%
1.
廃車ガラは購入か逆有償か
2.
その価格
3.
ダスト処分先と費用
58.
4%
1.
1年間のダスト発生量
2.
うち自動車由来分
3.
ダストの処理方法
4.
加工処理した製鋼原料量
5.
うち自動車分
6.
減溶固化設備の有無と処理量
会員94.5
%、非会員30.0
% 計74.8
%
1.
1年間のダスト発生量
2.
うち自動車由来分
3.
ダストの処理方法別処分量と運搬距離
4.
加工処理した製鋼原料量
5.
うち自動車分
6.
減溶固化設備の有無と処理量
・
回答67事業所全数が逆有償
・
逆有償額は地域により差異有り
全国平均は7,500円/t
・シュレッダーダスト発生推計
・ASR
地域別発生量(データは県別)
2001年全国計53万t・SR
の58.5
%
150
注;回収率で全国を推定、ASRの調査は無し
5.0
安定型
6200
万t
66.0
20
40
60
21.3
0
10
報告書にて会員に配布
20
4.0
0
20
64.5
60
80
同左及び第4回自動車リサイクル専門委員会
に提出
20
40
60
未処 理
0 .7 %
サーマル
2 1 .7 %
マ テ リア ル
1 .8 %
ケ ミカ ル
0 .1 %
埋立て
6 3 .3 %
69
千t
200
150
80
100
報告書
100
・ASR
リサイクルの内訳
・減溶固化設備
保有(含む計画中)=回答57社中10社・17%
減溶固化率 7.7
%(約8.3
万t
うちASR5.1
万t
)
78.0
40
50
焼却
1 2 .4 %
16
26
30.8
・ASR
発生率24.1
%、自動車製鋼発生率73.5
%
18
処分先
民間
30
148.2
49.2
0
1.7
0
費用
9
91.3
東北
埋め立て
6.0
公社
19.7
管理型
9.0
88.4
中部
関東
12.3
再利用
23
関西
北海道
サ ー マ ル リサ イクル
自治体
燃焼
150
・処理方法(%)
・ダスト処分先(%)と費用(
円/t
)
三セク
10.8
100
注;回収率により全国を推定
80
・
ダスト処分費用(全国平均円/t
)
安定型
50
焼却
管理型
0
108
0
26.4
中四国
65.2
SR
29.0
燃焼
調査結果
ASR
5300
北海道
・
ダストの処理先(%)
7500
九州
万t
100
96.9
九州
7600
7000
全国
50
7000
関西
0
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
中四国
101
SR
シュレッダー ダス ト推定発生量(2000年間)
円/t 8400 8400
関東
74
中部
ダスト発生推定(2000年間)
シュレッダー 分
東北
調査内容(ASR
関連) ・
ダスト発生量
同左
調査名
5.ASR県別発生量及び減溶・
6.ASRの搬送に関するアンケート
7.解体自動車破砕施設に係る
減量設備調査
8.自動車リサイクル法実施関連事項の
廃棄物処理法の中間処理許可
アンケート
社・
日本鉄リサイクル工業会
調査の主体
社・日本鉄リサ イクル 工業会・
日鉄技術
社・日本鉄リサイクル工業会
社・日本鉄リサイクル工業会
報告年月
平成14年6月
平成14年11月28日
平成15年2月5日
平成15年3月5日
調査年月
平成13年間
平成14年11月
平成15年2月
平成15年3月
調査対象
同左シュレッダー事業所
同左シュレッダー事業所
同左シュレッダー事業所
同左シュレッダー事業所
配布数
ヒア リン グ43社・106事業所アンケート
119 事業所
110事業所
91事業所
114事業所
107事業所
84事業所
95.8%
1.
ダスト保管場所の広さ
2.SR
とASR
の分別可否
3.ASR
発生量/日
4.
保管期間
5.
搬送量/回
6.
搬送方法
97.30%
破砕施設について
基数、馬力、中間処理許可有無、
施設許可有無
92%
1.ASR
の区分可否確認
2.ASR
リサイクルインセンティブのための変動
3.
廃車ガラ保管場所
4.
移動式プレスカー
5.ASR
の計量について
・中間処理業の許可
回答98件のうち96件有り、無し2
・ASR
区分可否
回答84事業所のうち可63、条件付き11、不可7
500
600
700
中四国
16
9
関西
中部
76
関東
州
国
九
西
四
部
関
東
東北
北海道
0
5
10
4
5
15
20
25
・減溶処理能力(
含む計画)
28.8
万t
ASR
発生55万tのうち52%が対処出来る
5
九州
35
30
25
20
15
10
5
0
29 28
16
10 11 10
基数
許可有り
16 14
14
9
中四国
関西
0
環境省へ回答
70
不所持
7
10
5
東北
九
州
中四
国
関西
中部
関東
東
北
・
保管期間の平均=4.3
日
・処分場までの搬送=
自ら搬送39%、業者に委託61%
保有
7
2
関東
76
8
7
1
中部
0
11
4
3
北海道
北海
道
州
国
中
4
九
止
休
5
中四
所
い
な
し
有
部
り
有
画
5
2
西
1
0
12
不可
7
・移動式プレスカー
回答76事業所のうち保有26、なし50事業所
・施設の許可(第15条)
98件のうち有り91件、無し7件
可
東
19
10
自工会へ提出
400
14
中
26
16
14
12
10
8
6
4
2
0
北
53
40
調査結果
300
・
SR
とASR
分別保管可否
全国83事業所中、可能49、不可34
関
200
道
150
東
100
北海
50
計
200
16
11
10
可能
条件付
不可
10
1
2
6
1
1
7
8
1
3
14
9
9
九州
基数
許可有り
千/t
50
る
す
有
100
29 28
中
0
60
所
176
北海道
41
622
m2
東北
59.2
20
249
35
30
25
20
15
10
5
0
中
151.6
・減溶・減量設備(事業所数)
30
506
関東
関東
0
486
中部
89
中部
北海道
575
関西
69
関西
東北
412
九州
中四国
22.4
北
118
九州
中四国
関
382
全国
道
・保管場所の広さ(
事業所平均m )
東
2
調査内容(ASR
関連) ・ASR
地域別発生量(推計は県別)
2001年全国計55万t
海
85%
1.ASR
県別発生推定
2.ASR
減溶・減量設備調査
ア ン ケ ー トにより有無、能力、実績及び
計画などを調査し、主要企業を現地
調査した。
関
回収率
調査項目
北
回収数
6
5
10
15
20
25
・移動プレス保有者の生活環境保全措置・実施46%
・解体ガラ入手先;解体業者83%、中古部品業13%、
新中古販売業22%、整備業19%、個人・企業19%
・ASR
の計量単位;トン90%、立方メー トル 1、両9%
・ASR
の計量先;排出側34%、受取側44%、両21%
(2)自動車リサイクル法
1)法律の趣旨
「豊島事件」を発端に、ASR処理が安定型処分から管理型処分に移行したが、その処分
場能力に限界あり、価格も高騰するに及んで市場原理のみでは自動車リサイクルシステム
が機能しなくなっていた。自動車リサイクル法導入の大きな理由は、発生するASR問題
にいかに対応するかにあった。これに有害、危険物である「フロン類」と「エアバック」
の処理問題が加わる。
自動車はさまざまな部品から成り立つ組立製品であり、その他にもバッテリーや廃液な
ど解決しなければならない課題が多い。まず「ASR」の対策であり、有害で危険な「フ
ロン類」と「エアバック」の解決をめざすことで法が制定された。自動車製造業者を中心
とした関係者に適切な役割分担を義務付けることにより、この3品の適切な処理を図る新
たなリサイクル制度である。その基本的な考えかたは以下の4点である。
①静脈産業を担ってきた既存の関係事業者の役割分担を前提とし、市場原理が働いた持続的な
仕組みとする。
②使用済み自動車から生じる最終埋め立て処分量の極小化を図る。
法制定検討時、2001 年4月1日時点の産業廃棄物・最終処分場残余年数は全国平均 3.9
年(首都圏 1.2 年)であった。自動車製造業者に対してシュレッダーダスト等のリサイク
ル義務を決め、2015 年のリサイクル率を 95%とする。
③不法投棄の防止に資する仕組みとする。
法検討時(2001 年8月)の状況は、保管基準違反(野積み)等の台数 92,118 台(うち離
島分 23,340 台)、不法投棄等の台数 33,958 台(同 12,192 台)、計 126,076 台(同 35,532
台)であった。今回の法律では不法投棄防止のために、廃車処理を行う関係事業者は全て、
都道府県知事または保険所設置市長の登録・許可制とする。関連事業者に、使用済自動車
等の引取り・引渡し義務が課され、原則として電子マニフェスト制度により報告する。リ
サイクル料金の前払い制度が導入され、新車の場合は登録、それ以外の場合は車検時に国
土交通大臣が確認する。最終所有者に対する自動車重量税の還付制度が導入される。
な
どが制定された。
④関係する既存制度との円滑な接合を図る。
廃棄物処理法やフロン回収破壊法との関係である。フロンについては、2002 年 10 月より
先行して実施されている。
以上4点の基本的な考え方に従い、日本型の使用済み自動車の処理・リサイクルに関す
る「拡大生産者責任」制度・ジャパンモデルを構築しようとするものである。
71
2)自動車リサイクル法の概要
「拡大生産者責任」の考え方に基づき、自動車製造業者及び輸入業者は自らが製造・輸
入した自動車が使用済みとなった場合に、ASR、エアバック類、フロン類を引き取って
リサイクル(フロン類については破壊)を行う義務を負う。また、これまで静脈産業とし
て事業を営んできた関連事業者は全て都道府県知事等の登録・許可制となり、役割分担の
もとに、使用済み自動車等の引取り・引渡し義務や一定の行為義務を負う。
以下の特徴がある。
①ASR、エアバック類、フロン類に主眼を置いた仕組みである。
対策を打たねばならない最大の課題であるASRと、有害、危険物であるエアバック類、
フロン類の3品目に主点を置いている。
②自動車メーカー・輸入業者による3品目引取り体制の整備
3品を引き取ってリサイクル(フロンは破壊)する義務を負う。このため自動車メーカ
ー・輸入業者は、関連事業者から引き取ってリサイクル・破壊するための全国的な体制を
整備し、フロン類回収業者、解体業者に対して、それぞれの回収料金が確実に支払われる
仕組みを構築する。
③関係者の役割を明確化
これまで行ってきた関連事業者が最大限機能する仕組みとすることを前提としている。
ここでいう関連事業者と自動車リサイクル法における役割分担をまとめた。
関連事業者
自動車所有者
役 割 分 担
引取り業者に使用済み自動車を引き渡す。
3品目のリサイクル等に必要なリサイクル料金を負担する。
引取り業者
自動車の最終所有者から使用済み自動車を引き取り、フロン類回収業
(登録制)
者または解体業者に引き渡す。
フロン類回収業 フロン類を回収基準に従って適正に回収し、自動車メーカー・輸入業
者(登録制)
者に引き渡す(フロン類回収料金を請求できる)。
解体業者
使用済み自動車の解体を再資源化基準に従って適正に行い、エアバッ
(許可制)
ク類を回収し、自動車メーカー・輸入業者へ引き渡す(エアバック類
回収料金を請求できる)。
破砕業者
解体自動車の破砕(プレス、シュレッダー処理等)を再資源化基準等
(許可制)
に従って適正に行い、ASRを自動車メーカ等へ引き渡す。
自 動 車 メ ー カ 「拡大生産者責任」の考え方に基づき、自らが製造あるいは輸入した
ー・輸入業者
自動車が使用済みとなった時、その自動車から発生する ASR、エアバ
ック類、フロン類を引取り、リサイクル等を行う。自動車の設計、部
品または原材料の種類の工夫を通じた自動車の長期使用促進と容易
なリサイクルに留意し、リサイクルに要する費用の低減を図る。関連
事業者に対し、情報の適切な提供などリサイクルの実施に協力する。
④リサイクル料金は前払い方式である。
不法投棄された場合のコストなどを考慮し前払い方式が採用された。但し、施行時に使
用していて、継続使用を行う場合は車検時に、また継続使用を行わない場合は引取り業者
に支払う。料金は自動車メーカー・輸入業者の倒産・解散による滅失などを防ぐため、資
金管理法人((財)自動車リサイクル促進センター)を設置して管理する。
72
⑤電子マニフェスト制度の導入
各関連事業者が使用済み自動車等の引取り、引渡しを行った際に、3日以内にその旨を
情報管理センターである(財)自動車リサイクル促進センターへ、原則としてパソコン等
からインターネット経由で報告する。既存の紙ベースのマニフェストやフロン類管理書は
不要となる。
⑥指定法人の指定
2003 年6月(財)自動車リサイクル促進センターが指定され、制度の根幹となる業務を
行う。主な業務に、資金管理業務(リサイクル料金の収受とその管理、運用をおこない、
自動車メーカー等に払い渡す)、再資源化等業務(リサイクルを果たすべき自動車メーカー
や輸入業者が存在しない自動車や離島対策、不法投棄対策への対応)
、情報管理業務(イン
ターネット経由で報告を受ける電子マニフェスト情報の一元管理)がある。
3)既存制度との関係
①廃棄物処理法との関係
使用済み自動車等は、金銭的価値の有無に関わらず、全て廃棄物処理法上の廃棄物扱い
となる。自動車リサイクル法に登録・許可業者については、使用済み自動車等の運搬・処
理にあたって廃棄物処理法の業の許可は不要となる。
②フロン回収破壊法との関係
フロン回収破壊法の登録第2種特定製品引取業者、登録第2種フロン類回収業者は、そ
れぞれ自動車リサイクル法の引取り業者及びフロン類回収業者の地位(標識を掲示する必
要あり)に自動的に引き継がれる。また、現行のフロン券やフロン類管理書は、自動車リ
サイクル法の電子マニフェスト制度に一本化される。
4)対象車両
自動車リサイクル法の対象となる車両は、乗用車のほか、トラック、バスなどの大型車、
8ナンバー特殊車、ナンバープレートのない構内車も含まれる。なお破砕業で処理される
ことが少なく、載せ替えなど再利用される架装物は対象外となっている。
対象外;被牽引車、二輪車(原動機付き自転車、側車付き含む)
大型特殊自動車、小型特殊自動車、その他(農業機械、林業機械、スノーモビル、
レース自動車、自衛隊装甲車、公道を走らない試験、研究用途車、
ホィール式高所作業車、無人搬送車
73
74
対象外となる架装物
対象外の架装物;保冷貨物自動車の冷蔵用装置その他のバン型の積載装置
コンクリートミキサーその他のタンク型の積載装置
土砂等の運搬用自動車の荷台その他の囲いを有する積載装置
トラッククレーンその他の特殊の用途にのみ用いられる自動車に装備される特別
な装置
5)
施行までのスケジュール
①都道府県知事への登録・許可申請
・ フロン回収破壊法の登録第2種特定製品引取業者、第2種フロン類回収業者は、それぞ
れ自動車リサイクル法の引取業者、フロン類回収業者の地位に自動的に移行する。但し、
標識を掲示する必要がある。
・ 解体業、破砕業;2004 年7月1日の許可制度開始時点で、解体業、破砕業を行っており、
かつ廃棄物処理法の業の許可(解体業の場合は原則として産業廃棄物の積替保管付きの
収集運搬業または処分業の許可、破砕業の場合は産業廃棄物の処分業の許可)を受けて
いる事業所は、許可制度開始から3ヵ月以内(9月末日まで)に届け出を行うことによ
り、解体業、破砕業の許可に移行できる。
②自動車リサイクルシステムへの事業者登録の申請
関連事業者において、電子マニフェストによる移動報告、リサイクル料金等の収受実務
(資金管理法人より委託)を実施する時は、事前に「自動車リサイクルシステム」への事
業者登録の申し込みが必要となる。関連事業者とは、引取り業者(新車・中古車販売事業
者、整備業者、直接引き取りを行う解体業者等)、フロン類回収業者、解体業者、破砕業者
などが該当する。従って解体業及び破砕業者は都道府県知事の許可を受けたあと、さらに
事業者登録手続きが必要となるが、許可申請を行ったあと許可証を受け取る前に「仮登録」
処置を行うことも可能である。登録は各事業所単位であり、申し込みは事業者情報登録セ
ンターで受けつける。
6)3品目の取引窓口
エアバック・フロン類は、2004 年1月1日設立の中間法人「自動車再資源化協力機構」(自
再協)が行う。この中間法人は、自動車メーカー12 社及び日本自動車輸入組合が基金 3,250
万円で東京都港区芝大門に新設した。各メーカーから委託を受け、自動車フロン回収・破
壊を行った事業者や、エアバックの取り外しを行った業者への料金支払いの窓口となる。
また、フロンやエアバックの物流も管理する。物流・情報システム面でのスケールメリッ
トの確保とリサイクル料金の低減、処理業者との一元的な窓口機能構築による実務の円滑
化をめざす。
ASRは、二つのグループに分かれて行う。トヨタ、ホンダ、ダイハツ、日野自動車4社
は、実務を豊田通商の子会社「豊通リサイクル」に委託する。豊通リサイクルは 2004 年1
75
月1日に「ASR再資源化事業部」を発足させた。自動車メーカーからの出向者を中心に
スタッフ 15∼20 人程度であり、全国ASR引取り態勢を構築するとともに、ASRリサイ
クル技術の一層の高度化をめざし、より確実で低コストとなる仕組みづくりに取り組む。
これには、アウディジャパン、BMW、プジョー・ジャパン、フォルクスワーゲングルー
プジャパンの4社も加わる。
一方、日産、いすゞ、スズキ、日産ディーゼル、富士重工、マツダ、三菱自動車、三菱
ふそうトラック・バスの8社グループは、ASRリサイクル促進チーム「ART」を結成
する。チームリーダーは日産。8社の培ってきたリサイクルの知恵を結集し、各社のAS
Rをまとめることで、スケールメリットを引き出す。この8社の合議機関として運営委員
会を設置し、リサイクルノウハウを有する複数の商社と連携し、ASR引取り基準の設定、
指定引取り場所の検討、リサイクル方法の検討などを行う。
また、物流管理、再資源化
業者、最終処分業者の管理、再資源化・処理料金の支払いなどの実務業務は商社などに委
託することが決った。
引取り窓口
エアバック・
フロン類
中間法人「自動車再資源化協力機構」
(
自動車メーカー12社、輸入組合で設立)
ASR
トヨタ、ホンダ、ダイハツ、日野自動車・
4社
豊田通商
アウディ、BMW
、プジョー、Fワーゲン・
4社
豊通リサイクル
日産、いすゞ、スズキ、日産ディー セ ゙ル 、
自動車破砕残さリサイクル促進チーム
富士重工、マツダ、三菱、三菱ふそう・
8社
ART
8社の合議機関
運営委員会
76
7)破砕業およびプレス・せん断処理業の役割
①基本的役割
シュレッダー業者およびプレス・せん断処理業者は、解体自動車(廃車ガラ)の再資源化
を適正に行う観点から、以下の役割を担う。
・ 引取義務;解体自動車の引き取りを求められた時は、正当な理由がある場合を除き、解
体自動車を引き取る義務がある。
・ 引取報告;解体自動車を引取ったときは、電子マニフェスト制度により3日以内に情報
管理センターに報告する。
・ 基準に従った破砕・破砕前処理の実施;引取った解体自動車の破砕を行う時は、再資源
化基準・規則第 16 条に従う。(備考:規則第 16 条 法第 18 条第5項の主務省令で定め
る基準は次のとおりとする。
技術的かつ経済的に可能な範囲で、鉄、アルミニウムその他の金属を分別して回収する
こと。自動車破砕残さに異物が混入しないように、解体自動車の破砕を行うこと。
破砕前処理(プレス・せん断)を行うときは、破砕前処理基準(規則第 14 条)に従
う。
・ 引渡し義務;解体自動車の破砕を行った時は、自動車メーカー等にASRを引き渡す。
破砕前処理のみを行う事業者は、破砕前処理を行った解体自動車を他のシュレッダー業
者または解体自動車全部利用者へ引き渡す。
・ 引渡し報告;ASRの引渡しまたは解体自動車の引渡しから原則としてただちに、電子
マニフェスト制度により情報管理センターに報告する。
・
②許可基準
解体自動車の破砕処理(シュレッディング)または破砕前処理(プレス・せん断)を行
う事業者は、破砕業者として、都道府県知事または保健所設置市長の許可を受ける必要が
ある。
法第 69 条の「その事業の用に供する施設および破砕業許可申請者の能力が、その事業を
的確にかつ、継続して行うに足りるものとして主務省令で定める基準に適合するものであ
ること。破砕業許可申請者が第 62 条第1項第2号イからヌ(破産者、禁固刑以上の刑をう
け5年を経過していない者など)までいずれにも該当しないこと」との前提条件を踏まえ、
・施設に係わる基準(規則第 62 条1号)として次の4項目が規定されている;
イ.解体自動車を破砕前処理または破砕するまでの間保管するための施設
ロ.解体自動車を破砕または破砕前処理するための施設
ハ.自動車破砕残さの保管施設(屋根、覆い、床、排水施設などに規定あり)
ニ.圧縮またはせん断した後の解体自動車を保管するための施設
いずれも重要な内容なので詳細は経済産業省、環境省「自動車リサイクル法の本格施行
に向けて」43∼46 ページを参照。
77
・破砕業許可申請者の能力に係わる基準(規則第 62 条第2号)
;9項目を網羅した標準作業
書を常備し、従事者に周知していること、事業計画書または収支見積もり書から判断して、
破砕業を継続できないことが明らかでないことが条件となっている。
8)破砕業「標準作業書」モデル(各個表は巻末参照)
今回の標準作業書作成に資する観点から、当委員会でモデルを作成し破砕業の参考に供
することとした。作成にあたって以下の点に留意した。
1.規則第 62 条第2号条文の各項目を網羅すると共に労働災害対策を織り込んだ。
各項目の内訳は以下である。
(1) 解体自動車の保管方法
(2) 解体自動車の破砕前処理を行う場合にあたっては、解体自動車の破砕前処理
の方法
(3) 解体自動車の破砕を行う場合にあっては、解体自動車の破砕の方法
(4) 排水処理施設の管理の方法(排水処理施設を設置する場合に限る)。
(5) 解体自動車の破砕を行う場合にあっては、自動車破砕残さの保管の方法
(6) 解体自動車の運搬の方法
(7) 解体自動車の破砕を行う場合にあっては、自動車破砕残さの運搬の方法
(8) 破砕業の用に供する施設の保守点検の方法
(9) 火災予防上の措置
(10)労働災害対策
2.標準作業書の構成
事業所レイアウト、破砕作業の全体フロー、個別内容、保守などの順となっている。
項目内は、作業手順、留意点などを記入する。作業の内容は写真でもかまわない。
例示では、破砕機のみの場合のフロー図と減容・固化処理設備を保有している場合
のフロー図の2タイプを示した。事業所により選択して参考にされたい。
3.各項目の留意点
Ⅰ.標準作業書作成責任者・改定履歴
標準作業書は、許可を申請する事業所単位に必要であり、事業所責任者が管理する。
記載内容に改定が行われた場合は、その年月日と変更理由を明記する。
Ⅱ.事業所の敷地及び設備
敷地面積や処理能力などは他の許可(産廃処分業、中間処理業許可、処理施設許可
等)に申請した内容に合わせる。シュレッダー設備など複数ある場合、個別に記入
する。また重機は、事業所内全数と、破砕業関係とを区別する。
78
Ⅲ.敷地レイアウト
事業所の敷地全体のレイアウト。パンフレットなどのコピーでも可。建物構造物の
配置を明記(例を参照)。
Ⅳ.破砕施設レイアウト
破砕関連施設のレイアウト(例を参照)。
Ⅴ.破砕業許可申請者の能力に係わる基準
(1)解体自動車の保管方法
写真で示しても良い。
(2)解体自動車の破砕前処理を行う場合、解体自動車の破砕前処理方法
シュレッダーにかける前にギロチンシャーなどで切断したり、足回りを取り外すよ
うな作業がある場合に記入。ない場合は「なし」と記入。
(3)解体自動車の破砕を行う場合、解体自動車の破砕方法
1)全体フロー
例のように作業順に図示する。
記号;作業は四角、有価回収は丸。自動運転は網がけで表しています。また番号は
詳細作業と同じ番号です。
2)詳細手順
全体フロー図で明記した作業項目(四角で囲んだもの)ごとに作成。
破砕作業は中央制御・自動運転か、手作業かを区別。
火災など緊急時の対処も記入。写真での明示も可。
(4)排水処理施設の管理方法
破砕残さの保管方法として、雨水等による汚水の事業所外流出を防止するた
め、屋根、覆いその他ASRに雨水等がかからないようにするための設備が必
要だが、公共の水域及び地下水の汚染を防止するために、十分な処理能力を有
する排水施設を設けた場合、またはその措置が講じられる場合はこの限りでな
いとされている。そこで、中間処理許可取得の条件となっている油水分離施設
を既に保有している場合はその設備と、清掃管理方法を記入する。清掃にはバ
キューム、自前清掃、油吸着マット、オイルスキマーの使用などがあるが、そ
の作業内容と作業時期(3ヵ月に1回など)
、交換時期などを明記する。他に排
水処理施設を所有している場合、その設備及び点検表、行政への届け入れ項目
など記載する。なお、本件は環境省所管である環境保全上重要なポイントとな
79
ることから、標準書は各事業所において管理方法など具体的に検討し、取り決
めた内容を表現する必要がある。また、最近では、バイオによる排水浄化シス
テムを導入している事業所があるので、事務局に問い合わせされたい。
(5)解体自動車の破砕を行う場合、自動車破砕残さの保管の方法
SRとASRを区分、囲いがあり範囲が明確な保管場所に保管、特に、ASR保管
施設は汚水の外部への流出防止のため、コンクリート床面、排水処理施設、屋根等
の設置を原則とする規則 62 条第 1 項を満足する保管施設に保管。
(6 解体自動車の運搬の方法
自社で行う場合と、他社が行う場合を区別する。
(7)解体自動車の破砕を行う場合、自動車破砕残さの運搬方法
自社で行う場合と他社の場合を区別
(8)破砕業の用に供する施設の保守点検の方法
事業所で規定している保守点検内容を記述。例のように表を添付してもよい。
(9)予防上の措置
消火器、消火栓の配置図と点検のサイクル、喫煙コーナーの設置
防火訓練などを記述。初期消火体制も含める。
(10)労働災害対策
Ⅵ.標準作業書・教育履歴
標準作業書内容を誰が何時、誰に教育(周知)したかの履歴を明記する。
備考;巻末に実際の標準作業書例を各項目別に添付したので参照されたい。
80
9)排水処理の問題(鉄リサイクル業界における排水浄化と環境対応)
鉄リサイクル業界各社は ISO14001 に対応した環境マネージメントシステムを導入
し、 環境および廃棄物処理に関連する法規制を遵守し、行政機関との合意事項に基づいて、
環境負荷を軽減し、絶えず環境汚染予防に努めている。排水浄化処理方式を採用している
会社は数社あるのみで、ほとんど排水浄化処理を行っていないのが現状である。しかし、
使用済自動車の再資源化等に関する法律(「自動車リサイクル法」と略す)が来年度から施
行されるのに伴い、排水処理などついて法律および各地方自冶体の排水基準に準じた対応
を問われている。
①鉄リサイクル工場の油分処理と排水処理の現状
リサイクル工場に搬入される対象物は自動車、各家電製品、缶類等、建設廃材などであ
り、これに包含・付着している廃油や廃液は、この解体作業工程で床面に漏れ一部は雨水
などによって洗い流され、排水溝を経て油水分離装置に貯留される。この油分などの除去
ついては、各社は①自前清掃、②油水分離装置への油吸着剤の投入、③バキュームによる
定期的清掃、④油水分離装置へのオイルスキマーの設置等が行われているが、それぞれの
方法を組み合わせて対策を取っているところが多い。
排水処理については、従来から環境負荷の軽減化を念頭に入れた操業を行ってきたが、
2005 年1月から施行される自動車リサイクル法に対応して、最低限度の環境経営対策なら
びに工場外に流出する汚染物質の処理対策は社会的責任の立場から、更にその要請が高ま
ってくるものと考えられる。
①−1.水質汚濁防止法への関連性
鉄リサイクル業界としては、目下のところ、水質汚濁防止法の規制を受けることはない
が、排水基準の一つの指標として水質汚濁防止法を認識しておく必要があると思われる。
この目的の1つには、①工場・事業所から公共用水域(河川・湖沼・港湾・沿岸海域その他
公共の用に供される水域及びこれに接続する公共溝渠、灌漑用水路など)への排出及び工
場・事業所から地下への浸透水を規制し、②生活排水による汚染対策の実施を推進するこ
とにより、公共用水域と地下水の水質汚濁を防止することにより、国民の健康の保護と生
活環境の保全を図ることにある。
水質汚濁防止法の規制対象は、「特定施設を設置する工場・事業場から公共用水域に排出
すされる汚水等及び特定地下浸透水」であり、法に挙げられている各種有害物質の中から、
当面、水質汚濁の種類と排水基準の目標として、
「生活環境項目」17 種類にはpH、BOD、
COD、SS、n−ヘキサン抽出物質(鉱物油)などがあり、当面、最低限度配慮しなくては
いけない「生活環境項目」の中から、pH、BOD、COD、SS、ヘキサン抽出物質の基
準値指標を下記に挙げる。
81
汚濁の種類
有機物質
濁り
油分
酸・アルカリ
水質指標
BOD1)、COD2)
SS(浮遊物質)3)
n-ヘキサン抽出物質4)
pH5)
汚濁物質
石油、油脂、たんぱく質等
有機性SS、有機性SS
鉱物性油分
硫酸、塩酸、石灰、カ性ソー
ダ
基準値指標
160(120)㎎/L
200(150)㎎/L
5 ㎎/L
5.8∼8.6
BOD は生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand の略称)で、溶存酸素(DO)
1)
が十分ある中で、水中の有機物が好気性微生物により分解されるときに消費される酸素の
量のことをいい、普通 20℃で、5日間暗所で培養したときの消費量を指す。河川にのみ適
用される。
COD は化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand の略称)で、水中の有機物など
2)
を酸化剤で酸化するときに消費される酸化剤の量を酸素の量に換算したもの。湖沼・海域
に適用される。わが国では硫酸酸性で過マンガン酸カリウムにより沸騰水浴中(100℃)で
30 分間反応させたときの消費量を測定する方法が用いる。
SS は浮遊物質量(Suspended Solids の略称)で、水中に浮遊又は懸濁している直径 2mm
3)
以下の粒子状物質のことで、粘土鉱物による微粒子、動植物プランクトンやその死骸、下
水、工場排水などに由来する有機物や金属の沈殿物が含まれる。浮遊物質が多いと透明度
などの外観が悪くなるほか、魚類のえらがつまって死んだり、光の透過が妨げられて水中
の植物の光合成に影響することがある。
4)
n−ヘキサン抽出物質は、n−ヘキサンにより抽出される不揮発性物質の総称で、水中の
油分を表すものとして用いられるが、ヘキサンにより抽出されるものは、油分以外に農薬、
染料、フェノールなどがある。油分は直接及び間接に魚介類の死を引き起こすとともに、
魚介類に着臭し、その商品価値を失わせる。n−ヘキサン抽出物質は河川には環境基準値が
なく、海域に定められている。
pH は、水の酸性、アルカリ性の度合いを表す指標で、水素イオン濃度の逆数の常用対数
5)
で、pH が 7 の時中性でそれより大きいときはアルカリ性、小さいとき酸性になる。
*基準値指標は都道府県により異なるので、業界各社の属する都道府県の基準値を調べて
おく必要がある。なお、数値は最大値で、(
)内の数値は日間平均値を示す。
*その他、上乗せ排水基準は環境省令で定められているが、都道府県は条例によってさら
に別途基準を設定されていて、違反すると改善命令、一時停止命令、直罰規定が盛込まれ
ている。
さらにまた、違反事例が出てくると今後は監視機関である都道府県から規制が設けられ
る可能性がある。水質汚濁防止法では都道府県の担当者に工場立入り検査の権限が与えら
れているので、監視レベルの温度差は都道府県により異なるとはいえ、最低限度の対策を
講じておく必要があると思われる。
82
①−2 自動車リサイクル法への対応
2005 年1月1日より施行される「自動車リサイクル法」により、事業を行うための許認
可条件に、①作業場の屋根囲い、②敷地へのコンクリート敷設、③産業廃棄物中間処理施
設やシュレッダー装置を保有する場合の油水分離装置の設置義務などが挙げられている。
併せて敷地内・工場内の油分除去及び油分混入の排水処理対策も行う必要が明記されてい
る。
また、破砕業の許可基準について、施行規則 62 条に、解体自動車の破砕施設は廃棄物
処理法第 15 条の規定による許可を受けている施設であることが明記されている。
解体作業所(規則第 57 条)
破砕作業所(規則第 62 条)
項 目
燃料抜取場
解体作
部品保
前処理
破砕残さ
破砕施設
所(*)
業場所
管場所
施設
保管施設
鉄筋コンクリ
(不浸透
○
○
○
○
ート床面
性材料)
屋根、覆い
○
○
○
○
○
水質汚濁 十 分 な 排
排水溝
○
○
○
防止法
水処理施
ためます等
○
設等
油水分離装置
△
○
○
貯油タンク
○
○ :該当するもの
△:代用できるもの
*:解体作業所以外の場所で燃料の抜取りを行う場合
「廃油、廃液」と定義され、エンジンオイル、トランスミッションオイル、ブレーキオイル、
トルクコンバーターオイル等の各種廃油、冷却液等の廃液が揚げられる。
②鉄リサイクル工場の排水処理
②−1 鉄リサイクル工場の排水の特性
鉄リサイクル業界各社の排水特性は次の各項にまとめられる。
○混入物;鉄リサイクル工場で解体される廃棄物は冷蔵庫・パソコンなど家電製品・自動
車・工場発生スクラップのほか、建築廃材であり、これらに付着または包含されている鉱
物系油分および廃液からの少量の有機物である。
○汚泥分;排水中に混入される汚泥分は解体工程において発生するシュレッダーダスト屑
(鉱物繊維、金属プラスチック、ゴムの微紛末)の外、解体物、搬入車両のタイヤなどに
付着している土砂類であって、油分と合体して黒色粘調物である。
○排水量と性状;構内排水は工場敷地内の降水量によって決まり、場内に飛散した油分な
どは排水溝を経て油水分離装置に流下する。流入時は黒灰色乃至暗緑色であり、場合によ
りドブ川のような腐敗臭がある。スラッジとしては場内の持ちこまれた泥状物と思われる。
○計量値;鉄リサイクル工場の排水の計量値は、pHは環境基準内におさまっているが、
BOD、COD、SS、n−ヘキサン抽出物質はいずれも各地域の排水基準値を大きく超過
しているのが現状である。
83
②−2 排水設備の現状
鉄リサイクル工場の敷地面積は 5,000∼20,000 ㎡の規模にあり、3∼10m3 の大きさの
油水分離装置が1つ以上据付けられている。通常は5m3前後の大きさであり、3∼4槽に
区切られ、最初の槽には油除去装置としてオイルスキマーが取り付けられているが、オイ
ルスキマーの設置している工場は業界で 30%程度である。排水は油水分離装置を通過する
過程で、最初にオイルスキマーで浮遊している油分が吸取られ、その油分はオイルタンク
に貯留される。最初の槽(原水槽)において、よく管理・運転されているオイルスキマー
は浮遊している油分の付着・除去に対して相当に有効である。しかし、オイルスキマーで
は浮遊・分離している油分を除去しても、排水中にはなどが相当量残存して、水質基準値
を大幅に上回っている。排水は油水分離装置を通過する過程で、沈降性の物質は汚泥分と
して各槽の底部に沈殿する。その汚泥分は数ヶ月毎にバキュームなどにより定期清掃で除
去される。
③鉄リサイクル工場の排水浄化に対する提案
③−1 バイオ・レメディエーションの応用
一般にバイオ・レメディエーション技術とは、複数の配合された微生物製剤により多数
の有機物(炭化水素化合物)効果的に分解し、無害な物質 CO2、H2O、N2などに変化でき
ることである。鉄リサイクル工場の排水は、前述したように BOD または COD で表示され
るように成分が明確でなく、量的に少ない(ほとんど1%以下)が、多種類の有機物が混
入されている排水で、通常の化学的や物理的処理で浄化するには、複雑な工程や厳しい条
件を必要とし、設備投資も高くなる。これに対して、バイオ・レメディエーション技術を
応用することにより、微生物の代謝作用により、多種類の有機物を同時に分解できる。微
生物の生育の環境条件さえ整えれば、単純な工程で緩和な条件で微生物分解を行ない、浄
化の目的を果たすことができる。ただし、難分解性の有機物や多種類の有機物が存在する
84
場合には1種類の微生物では分解は不可能であり、複数の微生物の分担で代謝(共代謝)
が行われ完全に分解が行われることが多い。そこで、バイオ・レメディエーション技術に
よって生み出され、有効な微生物複数を配合・調整された微生物製剤は、複数の代謝機能
を有しているので、多種類の有機物を含んでいる鉄リサイクル工場の排水中に極めて有効
で、微生物分解により n-ヘキサン抽出物質、BOD または COD など計量値を低減でき、経
済性のある浄化システムである。
以下に、標準型(Ⅰ型)と高濃度汚水型(Ⅱ型)の2つの浄化システムについて紹介す
る。
③−2 標準型バイオ排水浄化システム
(Ⅰ型:既存油水分離装置による微生物分解浄化システム)
鉄リサイクル工場の油水分離装置は、前述したように通常、コンクリート製で3∼10m3
の容量を有して3∼4の槽に区切られている。多くは鋼製の蓋が付設されている。この油
水分離装置は微生物分解を行うバイオ・リアクター(微生物分解反応器)として好適な反
応器と言える。すなわち、各槽において段階的分解・浄化が行え、分解度を上昇できるか
らである。これにバイオ製剤を投入し、散気管を通して空気を分散すれば処理水中に酸素
が溶解し、好気的な微生物分解が行える。
a.バイオ製剤の安全性
使用するバイオ製剤は、米国の菌株保存機関ATCCにおいて1級レベルに属する安全
菌のみで配合されたもので、わが国の国立感染症研究所のバイオセーフティーレベル1(人
に疾病を起こし、獣医学的に重要な疾病を起こす可能性のないもの)に属している。
b.運転条件
・ 温度;15∼37℃(好ましくは 20∼30℃)
PH
冬期を中心として加熱して適温に維持する。
85
6.0∼8.5 地域により異なるが、
・ バイオ製剤および分解助剤;バイオ製剤は液剤と固形剤があり、石油分解系およびそ
の他の有機物分解系の微生物から成る製剤を使用する。液剤は希釈しては自動注入
ポンプで間歇的に槽中に滴下する。また、固形剤はロープなどで固定し、槽中に吊
下げ数ヶ月毎に交換する。排水中に混入してくる油分を分散し微生物との接触を盛
んにするために、界面活性剤を主体する分散剤を用いる。同時に微生物の活動を活
発かするために、微生物の増殖に不可欠な少量の N,P を含む栄養剤を用いる。
・ 滞留時間;好ましくは6∼8時間がよいが、作業場が屋外の場合が多く、滞留時間は
その時点の降水量(排水速度)で決まる。各地域の降水量は気象庁ホームページを
参照して推定できる。URL:http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jma/index.html
・ 設備費;主要設備は自動注入ポンプ、微細気泡散気装置、ブロア、温度管理システ
ムなどであり比較的簡易な装置ないし部品で組立てられ安価な設備費である。
ただし、浮遊油分が多い場合はオイルスキマーなど油除去装置を使用する。
c.設置例;
A 社シュレッダー工場
システム全体
主要装置類
加熱システム
同上工場に各槽における浄化状況
第2槽
原水槽
第4槽
第3槽
86
第4槽
d.計量値;
A社シュレッダー工場における計量値(2003/9/5採水)
項
単
位
㎎/L
㎎/L
㎎/L
目
n−ヘキサン抽出物質
SS
BOD
各項目の計量値はJIS
0102
試
原水槽
58
110
210
料
名
第2槽
第3槽
第4槽
25
18
9
110
67
51
110
180
160
定量下限値
1
1
0.5
による
e.イニシャル・コスト;
算出ベース
油水分離装置
①排水浄化システム
内
容
③
容
総
1式
容量4∼6m3
1,300千円
自動注入装置
3台
ブロア(100L/分)
3台
微細気泡散氣装置
6∼9台
設置工事
1式
②温度管理システム
内
3∼4槽
1式
1,150千円
加熱用タンク
1基
チタンヒーター
数台
サーモコントローラ
1基
操作盤
1式
装置工事費
1式
計
2,450千円
(上記の金額の中にはオイルスキマーなどの油除去装置は含まれていない。)
なお、月間のメンテナン費用は 130 千円程度となる。
f.標準型バイオ排水浄化システムのメリット;
○ 排水中の各計量値を効果的に低減できる。
○ 既存の油水分離装置を活用できる。
○ 運転操作が簡単。運転に人手が掛らない
○ 攪拌電力が少なく、維持管理費が少ない。
○ 付帯設備もシンプルで設置スペースをとらない。
○ 発生する汚泥が少なく、汚泥処理費が発生しない。
○ 悪臭も併せて除去できる。
87
③−3 高濃度汚水型バイオ浄化システム
(Ⅱ型:高速分解バイオ・リアクターによる微生物分解浄化システム)
前節で説明したような油水分離装置を活用して浄化処理を行うシステムは経済的である
が、既存の油水分離装置の大きさ・形式が排水の種類・組成・量に対して全てケースに適
合すると言えない。このように能力
的に適合しない場合に、以下に説明
する高濃度汚水型バイオ浄化システ
ムを活用するのが好適である。この
システムは、高速分解バイオ・リア
クターを用いるもので、処理すべき
排水中の溶存酸素濃度の飽和に近い
状態で、高い気液接触と攪拌混合に
より高速の微生物分解を実現できる
浄化システムである。
このシステムの主要部分を構成
する高速バイオ・リアクターは、図に示しように、2つに区切られたかつ連絡している
横型円筒形から成り、それぞれ円筒壁面に設置されている散気管が付設されている。処
理すべき排水は流入口より流入し、バイオ製剤(液剤・固形)と接触して、散気管から
吹込まれる空気により、循環攪拌される。この際、十分な飽和に近い酸素の供給により
活発化した微生物により、排水に含まれる有機物は効果的に分解して処理される。
高速分解バイオ・リアクターの特性
1)高流動、高接触により高い溶存酸素を維持できる。
2)返送システムの導入により浄化度が上昇される。
3)連続槽・段階方式の採用により浄化度のアップができる。
4)バイオ製剤の潜在力を発揮できる。
鉄リサイクル工場の排水に含ま
れるエンジンオイルなどの油分分
を石油分解系の微生物を用い、高速
分解バイオ・リアクターにおける分
解実験では、排水中に含まれるエン
ジンオイルを石油分解系の微生物
を用い、好気的条件で分解した場合
に左図に示したように、4∼5時間
で約 80%以上、20 時間で約 90%
88
以上を分解できる。さらに、排水中に含まれる浮遊性、沈降性の懸濁物に付着または含
侵されている有機物も並行して分解されることはこのリアクターの特長といえる。
図示したように、高濃度汚水バイオ排水浄化システム(Ⅱ型)では高速分解バイオ・リ
アクターを油水分離装置と並行して連結して組合わせて使用するのが効果的である。特に
鉄リサイクル工場では屋外
作業場からの雨水の流入が
あっても、この方式を採用
することにより、大きな分
解時間がとれ、高い分解度
がえられる。また、バイオ
製剤の供給法、空気の吹込
み法、温度管理の方法など
前節に述べた油水分離装置
に設置したシステムとほぼ
同様であり、比較的単純な
システムと言える。
○設置例
B 社リサイクル工場設置例(ステンレス製)
B 社リサイクル工場設置例(塩ビ製)
④ まとめ
・鉄リサイクル業界各社では ISO14001 に準拠した環境マネージメントシステムに対応
できるのと「自動車リサイクル法」が来年度から施行されるのに伴い、排水処理などつ
いて法律および各地方自冶体の排水基準に準じた対応が求められる。
89
・バイオ・レメディエーションによる排水浄化しシステムは、化学的・物理的処理よりに
単純な工程で緩和な条件で微生物分解を行わせ、経済的な浄化システムといえよう。
・このシステムには標準型バイオ排水浄化システム(Ⅰ型)と高濃度汚水型バイオ排水浄
化システム(Ⅱ型)の2つがあり、その選択の要因は既存の油水分離装置の大きさ・形式
や排水の種類・組成・量である。
(3)自動車リサイクルを巡るさまざまな動き
自動車リサイクル法は、新車購入時にリサイクル費用を支払う前払い方式であり、年間新
車登録台数平均 600 万台分と、継続使用の場合は車検時に支払う対象となる保有台数 7,000
万台分から保有期間に合わせた入金がある。これに対して毎年発生する使用済自動車台数
500 万台に付帯する3品のリサイクル費用が支出の対象となり、多額なリサイクル費用を扱
う資金管理法人が設置される。これらを踏まえ今まで見えにくかったリサイクルが、経済
活動に組み込まれ表面に出ることになる。そしてこれを新規ビジネスのチャンスととらえ
る動きが活発化してきている。シュレッダーダストを出さずに電炉等への直接投入を認め
た「全部利用」の新しい概念の採用も新ビジネス発生に拍車をかけている。
1)中古車部品流通業の発達
循環型経済社会形成では3R(リユース、リデュース、リサイクル)が基本となる。ど
れも必要な項目だが、中古部品の再利用はリユースを促進することに繋がる。
米国での補修部品市場は年間 10 兆円で、うち中古部品が 15%の1兆 5000 億円を占める。
しかしながら日本は3兆円の市場で、中古部品は 3.3%の 1,000 億円程度であり 1/15 の規
模にすぎない。自動車リサイクル法施行を契機に、流通業者だけでなく自動車メーカー自
身も発達する市場として取り組みを強めている。主要メーカーの事例を見ると、1999 年か
ら本格展開を始めた日産は、解体業者から集めた中古部品をデータベースに登録し、全国
の販売店や修理工場を通じて顧客に販売できるシステムを構築している。2002 年度は事業
を大幅に拡大し、中古部品事業の売上は 2001 年度比約2倍の 10 億円に達した。
トヨタは 2001 年に中古部品事業を全国で開始し、トヨタグループの他、中古部品大手の
ビッグウエーブ(愛知県七宝町)やNGPグループ(東京都)などの中古部品の流通業者
と手を組んで、150 万点の在庫から部品を供給できる仕組みを整えた。個人客は販売店や修
理工場経由で部品を取寄せることができる。2002 年の中古部品の売上は約2億 9000 万円
で、2010 年に中古部品の販売点数を 2002 年比 10 倍に増やす目標(売上高 30 億円)を掲
げている。更に中古部品流通業者に働きかけ、部品ごとの検査項目や保証期間などの品質
基準統一に向けた議論を進め、基準を統一した中古部品の販売を近く開始する方針と言う。
ホンダは、2001 年7月に関東地区で、廃車から集めた中古部品と新車販売時の取外し部
品の販売を開始し、2002 年1月に対象地域を全国に拡大した。
中古部品はドアなど高級部品ほど人気が高く、顧客の需要に応えるには、即座に中古部
90
品を供給できるシステムの構築が不可欠となっている。
また、豊田通商では、部品リサイクルの前線基地は、2001 年4月に設立した子会社、エコ
ライン(名古屋市)で部品を管理し、売買・決算までこなす「エコラインパーツシステム
(EPS)」を開発した。全国の 100 ヵ所以上の拠点があるビッグウエーブとシステムを
共通化しており、67 万点の中古部品を登録している。5年後には年間 50 億円の売上を目
標にしている。
一方、解体業や流通では、K 社が現在、月間 7,000 台を処理しているが、中古品は 30%
が利用されている。海外は機能性部品を中心に販売、国内は外装部品が多い。ルネサンス
では今秋をめどに翼システム(東京都)が進めるネット上の部品販売に BS サービスネッ
トワーク(会員 410 社)を経由し接続して、国内最大の 220 万点を超えるネットワークに
参加し、全国的な販売網の拡大を図る。阪神オートリサイクル(尼崎市)は、回収したリ
サイクル部品をウェブ上のリサイクル部品共有在庫ネットワーク「パーツステーションN
ET」を通じて販売していく。
中古部品のストック事例(K 社ホームページ)
リサイクル部品流通グループのSPN(滋賀県長浜市)は、2003 年4月、リサイクル部
品大手 20 社の共同出資により発足したが、中古・再生部品の在庫検索や受発注に関する新
しいシステム「スーパーライン・プロフェッショナルシステム」を年内にも稼動させる。
同システムを活用する事業所は 102 社に達しており、このシステム稼動により国内だけで
なく海外販売にも対応できる。トヨタグープの損害保険会社、あいおい損害保険は、車両
保険加入者が修理などの際に指定整備工場に持ち込み中古部品を使用する契約を結んでお
くと、保険料を5%割引く商品を 2000 年に投入した。1年間に 7000 件以上の契約を獲得
した。他の保健会社もリサイクルを後押しするため、同様の商品を検討し実施が増えてい
る。
部品取りは自動車解体業で行われており、しかも主な収益源となっている。解体ガラが
逆有償で破砕業に手渡されていた時期も業態を維持出来たのは、部品収益によると見られ
る。部品交換は新品でなければならないとする日本的風土は、バブル崩壊後の減速経済下
で少しずつ変化し始め、加えて保険制度の改正が追い風となった。また所得が増加して行
かない消費者側の事情も背景にある。品質にもよるが新品部品の1/3程度の金額で入手可
91
能であれば、中古部品を採用する傾向も増加しよう。しかし、中古部品業者は部品メーカ
ーでないところに悩みがあり、迅速に対応するための対策としてお互いの在庫を公開し融
通しあうネットワークシステムが必要とされ、流通の中心となっている。コンピューター
上でリサイクル部品を流通させるネットワークは現在 12 グループあるとみられるが、この
うちNGPグループが売上規模で 50%弱のシェアーをもつ(矢野経済研究所調査 2002 年版)。
なお、このたび発表された 2004 年版による 2002 年度の中古部品市場は 9200 億円と推定
されているが、このうち流通ネットワーク関連は 78%(720 億円)を占めたと推計されて
いる。また部材別ではバンバーやドアなどの外装部品が 50%を占めている。需要は新車で
あり、供給する中古部品は概ね 10 年前の年式車となる需給ミスマッチが存在する事情があ
るが、今後拡大していくビジネスとして注目される。
流通ネットワーク別中古部品販売額(2001年)
万点
億円
在庫点数 推定シェア ー 取扱金額 推定シェア ー
NGP
グループ
ビッグウエーブ
シス テム オ ー トー ハ ゚ー ツ
部友会
SSG
シー ライオ ンス ゙クラブ
シンドバット
その他
計
90
65
28
25
30
18
3
51
310
29.0
21.0
9.0
8.1
9.7
5.8
1.0
16.5
100.0
260
140
55
23
16
15
10
31
550
47.3
25.5
10
4.2
2.9
2.7
1.8
5.6
100.0
2002年度の推定市場規模
単位百万円
市場規模 構成比%
外装部品
機能部品
電装部品
その他
計
45,080
34,960
8,740
3,220
92,000
49.0
38.0
9.5
3.5
100.0
出所;同左・2004年版
出所;矢野経済研究所「自動車リサ イクル 部品流通総覧」2002年版
2) 新概念「全部利用」の出現(解体業のスクラップ業化)
従来の自動車解体業では部品を採取後、解体ガラをシュレッダー業に出荷していた。シ
ュレッダー業の上工程(原料供給側)に位置し、解体と破砕の棲み分けが存続していた。
それが変化しだしたのが、2002 年7月に制定された自動車リサイクル法第 31 条「全部再資
源化認定」である。シュレッダーを行わずに「精緻な解体による全部利用」(以降「全部利
用」という)を新らしい自動車リサイクルの方法として認めた。そこで解体業がこれを新
規事業ととらえ、ニブラやプレス機を導入して、自らが解体ガラをプレスし、海外や鉄鋼
メーカーに販売するいわば業容拡大が起きつつある。破砕業においてもシュレッダー処理
のみならず、プレスも行う形態が起きつつある。また、大手製鉄業や機械機器メーカーの
新規参入も浮き出てきた。カーメーカーの認定下、精緻な解体を行うことが条件となって
いるが、これを新しいビジネスチャンスとして捉える動きが全国で展開しつつある。
「全部利用」に取り組む形態はおよそ2つに分けられよう。一つは西日本オートリサイ
クルに代表される解体プロセスをオンライン化した「設備新設型」であり、もう一つは既
存の解体業者がニブラやプレス機を導入して行う「従来に新規事業型」である。前者はス
ケールメリットをねらい、リサイクル団地内に設置されている場合が多い。現状ではこの
92
両方とも増加の傾向にあり、解体業では部品取りを主に行う「従来型」と全部利用を行う
「従来に新規事業型」の2極分化が進もう。
次図に「設備新設型」である西日本オートリサイクルの作業工程を例示した。リユース
可能な部品を回収したあとの車を、全長 60mのラインで流れ作業的に搭載された部品・部
材を4つの工程で分解(解体)する。その後、第5工程に設置した三軸圧縮成形機により
サイコロプレスに成形する。公表されている全体の処理スピードは平均 8.5 分/台。除去さ
れるハーネス類により、サイクルプレス内に残留する Cu 濃度の平均は 0.3%。現状リサイ
クル率は 90%となっている。
変化の起動力
①自動車リサイクル法施行をビジネスチャンス
②第31条「全部廃車利用者」の認定
廃車リサイクルの変化
今まで
今後
解体・
部品どり
解体業のスク
ラップ業化
Aプレス
新規
参入
¬
シュレッダー業の
解体業化・プレス
所持
移動
ソフト
ソフト
プレス
Aプレ
ス
シュレッ
ダー
解体ガラ
Aプレ輸出
¬
電炉・高炉メーカー
電炉メーカー
93
それでは、自動車リサイクル法では「全部利用」について、どのような制定がされてい
るのであろうか。
①全部再資源化認定制度
自動車メーカー等が、解体業者やプレス・せん断処理業者に精緻な解体等の実施を委託
し、国内の電炉・転炉等に解体自動車を鉄鋼の原料として直接投入することを想定し、法
第 31 条に次のような制度が制定されている。
「自動車メーカー等が解体業者やプレス・せん断処理業者に委託してASRを生じさせな
い方法で解体自動車(廃車ガラ)を国内において再資源化処理する場合、自動車メーカー
等は経済産業大臣・環境大臣の認定を受けることができ、これによりASR分のリサイク
ル料金の払い渡しを受けることができる」。
この制度は国内使用したものについて払い渡しが出来るものであり、仮にAプレスを輸
出した場合はリサイクル費用は貰えない。
②全部再資源化認定までの流れ
・ コンソーシアムの形成;解体業者、プレス・せん断処理業者、電炉・転炉業者の関係者
でコンソーシアムを形成する。
・ 精緻な解体、プレス・せん断、運搬、全部利用者(国内の電炉、転炉等)の一連の工程
を見て、その工程の実効性や確実性をもって判断される。コンソーシアムの代表者を決
め、全部再資源化の方法、設備、工程、全体のコンソーシアム図や責任関係などを整理
して、自動車メーカー等(チーム)に提案する。
・ 提案を受けた自動車メーカー等(チーム)は「ASR再資源化にかかるコストがどれだ
け低減可能か」、「再資源化率向上のための手段として適切なものかどうか」、「スキー
ム全体が適切かつ確実なものかどうか」といった面を中心に判断する。
・ 判断後、自動車メーカー等(チーム)はコンソーシアムの中で、全部再資源化を行う事
業者である解体業またはプレス・せん断処理業者と契約を結ぶ。
③提案の条件
・ 提案者;提案者は自動車リサイクル法第 31 条第 1 項に定められる全部再資源化を行う
解体業者またはプレス・せん断処理業者から、解体自動車全部利用者(国内電炉、転炉
業等)までの全ての関連業者から構成されるコンソーシアムをまとめる代表であること
が必要とされている(但し、解体自動車(廃車ガラ)を運搬する業者はコンソーシアム
には含まない)。
・ コンソーシアム関連事業者の関係;提案にかかわる関連事業者は、全部再資源化から全
部利用にいたるまでの技術的、商業的、他の諸条件について合意しまたは契約関係にあ
ることが必要である。提案時には、これを証明する契約書(写し)等の文書を添付する。
94
・ コンソーシアム内の作業管理体制;関連事業者の行う全部再資源化から全部利用までの
諸工程において、標準作業書や基準書を定めるなど、安定して実効性のある作業および
管理体制が必要である。
・ コンソーシアム内の物流管理体制;全部再資源化を行う解体業者またはプレス・せん断
処理業者から全部利用者間の物流において、解体自動車に固有記号をマーキングするな
ど、解体自動車の確実な引渡しが追跡可能な物流体制が必要とされる。提案時にはその
方法と内容の説明が必要。
・ 自動車リサイクル法で求められる報告等の体制;自動車リサイクル法に基づき、全部再
資源化を行う解体業者またはプレス・せん断処理業者には、報告の義務が課せられる。
(ア) 解体自動車の引渡し報告:引渡し先全部利用者名、車体番号等を(イ)の指定
伝票が全部利用者から回付されたことをもって引渡しごとに報告(実際の引渡
し日から3日以内)。
(イ) 解体自動車が全部利用者に確実に引き渡されたことを証する書面の保存:自動
車メーカー等(チーム)の指定する検収伝票に記載。保存5年間。
・ 自動車メーカー等(チーム)への報告の体制;自動車メーカー等(チーム)は、再資源
化の実績把握や適正処理の確認が必要であるため、コンソーシアムを構成する解体業者
またはプレス・せん断処理業者および全部利用者は以下の報告が最低限必要であり、提
案時にはその実施体制の説明が必要である。
(ア) 全部再資源化を行う解体業者またはプレス・せん断処理業者からの報告事項
・解体自動車が全部利用者に確実に引き渡されたことを証する書面の写し
・全部再資源化工程において自動車メーカー等(チーム)が委託した精緻な解体等で
取り外した部材の再資源化・処理の実績報告
・ 全部利用者からの報告事項
(ア) 解体自動車由来のスラグ・飛灰等についての再資源化・処理の実績報告
・報告方法:電子メール(引渡先事業者の受領伝票の写し、産廃マニフェストの写
し等のエビデンスが別途必要)。
・報告時期:自動車メーカー等(チーム)ごとに定める期日
(イ)最終処分した残渣の実績報告
・報告方法:電子メール(別途、産廃マニフェストの写し等のエビデンスが必要)。
・報告時期:自動車メーカー等(チーム)ごとに定める期日
・ コンソーシアムにおいて遵守すべき環境関連法令
関連事業者が行う全部再資源化から全部利用にいたるまでの方法、設備、工程が、
各関連法令の条項、政省令および告示等の定めに対して不適合がないものとし、提案
時に工程図や手順書に電炉等の施設における規則・基準適合状況を証明する書類を添
付する。
95
以上のように、行政や自動車メーカーがリードするのでなく、関係者が青写真をしっかり
画いて提案するスタイルとなっている。また、「ASR分のリサイクル料金の払い渡しを受
けることができる」システムとなっているが、コンソーシアムに支払われる費用はASR
処分費よりも安価で実施できることが求められている。
しかし、コンソーシアムが機能して「全部利用」が限りなく拡大し、結果としてシュレ
ッダー処理材が激減する可能性は少ないと見られる。まず①プレスしにくい車種があるこ
とである。バンタイプや大型車がこれに該当する。②使用側の電炉メーカーに限度がある。
ダイオキシン対策、集塵機の更新、アーク炉の損傷、電力原単位の増加など操業上の問題
が、トランプエレメントが解決されても残る。大型炉であることも条件のひとつだ。最近
行われた調査では、Cu 成分がH2並みに調整されたとしても、現在使用量 36 万tが倍増の
66 万t(台数ベースで約 130 万台)になる程度と報告されている。
いずれにしてもシュレッダー業においては、Aプレス輸出、Aプレス電炉投入など「全
部利用」との競争関係におかれる。ゴミ(ASR)処理代が自動車メーカー負担となり、
シュレッダー業にとってコスト負担は軽くなるが、次は「全部利用」と競争することにな
る訳で楽観は許されない。
しかし、破砕選別により、よりよい製鋼原料を産出しかつ非鉄を選別し得る装置として、
その役割は大きいはずである。過去 30 年間培ってきた英知と技術力を持って選別能力を生
かし、よりよい製鋼原料として付加価値をつけていくことが、とるべき方向ではないだろ
うか。
3)ASR処理の高度化
①処理取組み動向
ASR 処理の現況は、下図に示すような内容で整理できる。ASR(現行処理ラインで排出
される状態)は選別や破砕、加工などを経て可能な作業レベルで利用見込みのある含有物
を回収し、再資源化やエネルギー利用の活動が行われている。
サイズ
ASR
小
大
廃材
手作業回
収材
再資源
RDF
・ダス ト
ガス 化炉
焼却炉
非鉄業者
ルートB
資源化
(Cu、Al
材)
銅精錬
ルートA
資源化
(熱回収)
電炉
ル ー トA’
資源化
(熱回収)
ルートB’ ルートC ルートD,E
資源化
熱回収
埋め立て
これまで、ルート D 及び E として ASR は管理型最終処分場や海浜埋め立てで多くが処
96
理されてきた。その前段でルート A、A’、B、B’のような主としてメタルなどの回収が行わ
れている。最近の循環型社会基本法や諸リサイクル法の整備と共に社会システムとして
ASR など中間残渣物は順次処理・処分から処理・回収&再利用・その後処分の方法に転換
が図られているのは衆知の通りである。他方、最終埋立て処分場が枯渇して、この先の埋
立て処分は行詰りが起き、それが、自動車リサイクル法制定のきっかけともなった。これ
らの問題解決に向けた技術開発のうち、ルート C にある ASR 処理でガス化溶融炉(通常の
焼却炉を含む)と言われる新しいタイプの ASR の熱処理による技術が注目を集め、自動車
リサイクル法における ASR 処理の要となっている。
まとめると、含まれる有価物の回収を徹底するマテリアルリサイクルに視点をおいた動
きと、熱分解ガス化溶融を行うサーマルリサイクルに視点をおいた動きがあると言える。
②マテリアルリサイクルを目指す動き
ASRから徹底した分別を行うことにより、回収品のリサイクルを行いASR発生量を
抑制してきた先進的な事例を2つ示す。
T社の事例;T社は 1993 年からシュレッダーダストの活用化技術をトヨタと共同で開発
し、1998 年から量産化している。ASRの徹底した分別により、RSPP(防音材)の原
料や銅、ガラスを回収して再資源化するとともに、分別回収した樹脂、ゴム類の一部を灯
油の代替燃料として活用している。防音材はシュレッダーダスト中最大容積を占める発泡
ウレタンや繊維類を再生素材として分別し、適度な空気層をもつ防音材の原料として再利
用につなげている。従来品に比べ防音性と遮音性のバランスが良い特典がある。ワイヤー
ハーネスは、独自に開発した高精度分別機で分別し、被覆樹脂やコネクターを除去して、
高純度の銅資源に再生している。分別した銅は、鋳造工場でアルミ鋳物強化材等に利用さ
れる。またガラスは分別回収後、タイルや景観舗装に再使用されているなど 2015 年のリサ
イクル実効率 95%目標の早期達成をめざしている。
T社の設備フロー(出所;同社ホームページ)
97
N社は、使用済み自動車受入後、事前選別→解体→ソフトプレス→シュレッダー→非鉄
選別→ダスト処理までの流れを一貫しておこなっている事業所である。解体前工程ではバ
ッテリー、タイヤ、エアバック、発煙筒などを取り外し、フロン類や液類を除く。解体で
は反転機で車体を回転させ、エンジン、バンパー、ドアなど再利用できる品質の部品を取
り外す。その後容積を減らすためソフトプレスし、シュレッダーにかけ、製鋼原料および
非鉄を選別する。ソフトプレス時には、シートを剥ぎ取ってシュレッダーダストを出さな
いようにしている(剥ぎ取ったシートは電炉メーカーへ燃料/原料として供給している)。こ
のように事前選別を徹底させることにより、破砕時の有害物混入を低減しているが、残っ
たダストについても、風力により低比重ダストと高比重ダストを分別し、低比重ダストは
セメント原料に高比重ダストはプラスチックを取り出す研究を開発中であり、将来的には
ダスト0を目指していた。これらの対策は高騰する ASR 処分費を削減するための処分量の
減量をめざしてきた行為であった。しかし 2004 年2月に行ったヒアリングの結果、自動車
リサイクル法施行後は、これらの削減行為を中止するとの見解だった。
今回の自動車リサイクル法においては、「破砕業における減量・減容の取り組みについて
は、提案に応じて自動車メーカー等で判断する」との余地を残しているものの、高度な金
属分離回収は対象外としているためである。金属類の回収はシュレッダー業者の再資源化
基準の範囲とし、インセンティブが働かないのである。このような決定は、せっかくAS
R発生量を抑える技術開発や設備投資を行い、ASR 発生削減に貢献してきた事業所の努力
を無にすることになる。
③サーマルリサイクルの動き
ASR処理の基盤に、熱分解ガス化溶融処理と非鉄金属精錬が中心となりつつある。
熱分解ガス化溶融処理は、ごみの熱分解ガス化とその副生成ガスやチャーによる高温溶融
処理を組合わせたシステムとして登場してきた。最近、実用化のための技術基盤が確立さ
れ、実績をつくりながら、今後の見通しを得てゆくという段階である。特に、技術開発が
急速に進み期待される点は、これまで処理(焼却など)が困難であったごみ質に対して(例
えば、ASR に対して)適用拡大が図られている。多種の方式があり、その概要と特色を以下
に示す。
a ガス化溶融炉
(ガス化炉)
(溶融炉)
bガス化改質炉
(ガス化炉)
シャフト式
シャフト炉
流動床式
流動床炉
旋回溶融炉
シャフト式
シャフト炉
キルン式
キルン炉
旋回溶融炉
流動床式
流動床炉
ストーカ式
ストーカ炉
表面溶融炉
キルン式
キルン炉
98
各処理方式の特徴
ガス化(シャフト式)
ガス化(キルン式)
プロセス
の概念
従来の高炉技術を応用してガス化炉と
溶融炉を一体化したもので、その分プロセ
スとしては単純化されている。補助燃料相
当としてコークスと、高温溶融のための酸
素製造電力が必要とされるが、高温溶融に
より生成スラグの品質安定化に寄与する。
ごみ処理
原理
ごみと同時にコークスと石灰石を炉内
に投入し、酸素富化雰囲気で時間をかけ
て直接溶融する(外部熱溶融)。ごみ及び
石灰石の流れと燃焼ガスの流れは対向流
であるから、投入されたごみは乾燥、予
熱、ガス化(低温ガスによる揮発のため熱
分解度は低い)燃焼を経て順次下降し、炉
底近くで酸素富化空気(酸素製造装置が
必要)によって高温を呈し溶融に至る。
コークスは熱源に寄与すると同時にごみ
及びスラグの固着(所謂棚吊り)を防止
し、また炉内を還元雰囲気に保持するの
で重金属類がスラグに移行し難く、スラ
グの品質を向上させる。石灰石は燃焼に
伴う有害ガスの中和に寄与する。
従来のキルン炉をガス化炉に応用、溶
融には旋回燃焼式または表面溶融式
を使用する。チャーは排出固形物から
選別して熱分解ガスとは別ルートで
溶融炉へ供給する。ガス化のための加
熱源として、生成熱分解ガスの燃焼熱
によるもの、溶融炉排ガスによる加熱
空気によるものがある。
ドラム内部はシール機構で外気と
遮断されているため、ごみを無酸素状
態に近い還元雰囲気で、外部から間接
加熱して熱分解する。
熱分解後の飛灰灰分とキルン排出残
渣中の不燃物を破砕したものを熱分
解ガスと未然炭素で溶融(自己熱溶
融)する。
ごみのガス化に先立ち、水分の蒸発
が行なわれるから、ガス化炉内の前半
は乾燥装置を呈する。
従って水分の多いごみを処理する場
合は前処理装置として乾燥機を設け
ることもある。
乾燥機を前置する場合は、生成熱分解
ガスの発熱量を高く出来るので、
自己熱溶融限界を低く出来、経済性が
高められる反面、乾燥排ガスの無臭化
等も含め設備の複雑化は不可避であ
る。
ガス化(流動床式)
ガス化改質炉
プロセス
の概念
従来の流動床式焼却炉をガス化炉に応
用、溶融には旋回式溶融炉を使用してい
る。還元雰囲気で生成したチャーは基本
的に燃焼残渣側に落とさず、熱分解ガス
に同伴させる。燃焼残渣は破砕の上別途
コンベヤで溶融炉へ送られる。
ガス化部、溶融部、高温反応部(ガ
ス化改質部)が一体に組合わされた炉
から出るガスを精製して、高純度のガ
スを回収することが特徴である。
精製ガスの用途は自由に設定できる、
上記フローは発電に使用したケース
を示す。
ごみ処理
原理
ごみを、通常空気比 0.3 前後の低空気比
で部分燃焼し、ガス化に最適な高温状態
に制御された流動砂により熱分解を促進
する。高温の流動状態下で投入されたご
みは急速に乾燥、着火、燃焼し熱分解ガ
ス化が行われる(自己熱溶融を指向)。そ
の結果、ごみの供給状態(量、質、形状
等)の影響が鋭敏に生成ガス組成に反映
されるから前処理としての破砕機が必要
とされ、またごみの混合による均質化が
格段に重要である。このことから、ごみ
質(発熱量すなわち水分)の変動が予測
される場合は、特に補助燃料又は酸素富
化による操業安定化の支援を考慮してお
くことが望ましい。
ごみを圧縮して嵩比重の小さいご
みの熱伝達率を高め、約 600℃での間
接加熱により揮発分を放出させ、空塔
内で燃焼させる。
固形物は溶融炉底に投入され、溶融炉
で純酸素燃焼(酸素製造設備が必要)
によりスラグ、メタルと熱分解ガスに
分離される。熱分解ガスは約 1,200℃
の高温改質され合成ガスとして炉外
に導かれ、冷却水による直接急冷後、
酸・アルカリ・グリセリン・脱硫洗浄
の上、精製ガスとして回収される。炉
底の溶融スラグは酸素ランスを設け
た水平の均質化炉でスラグ品質安定
化の上排出される。
ガス精製装置等を背負っているため
炉内圧が高く、炉内への空気漏入はな
い代わりにガスシールが重要である。
99
方式別概念図
④ガス化溶融炉と課題
廃棄物(≒ASR の場合)の熱分解とは酸素のない状態、あるいは少ない状態で有機物を
加熱して炭水水素や一酸化炭素などからなる可燃性ガスとタール分及びカーボン(チャー)
などに分解するプロセスをいう。
熱分解溶融のメリットは残渣物(≒灰)を自己熱で溶融するため、熱ロスを少なく出来る。
溶融炉においては低空気比高温燃焼を行い、発生排ガス量を 30%ほど削減できる。
また、この高温燃焼によりダイオキシン類の生成を低くすることができる。排ガス量の減
少により熱ロスが減り、ボイラ熱回収率が高まり、発電効率が上がる。ここで得られるス
ラグの有効利用を図ることにより ASR 減容化率が格段に高くなる。飛灰などを溶融炉に再
投入することでスラグ化が向上し、最終処分量が大幅に減じることになる。
課題も多い。処理コストの削減が必要である。IT 技術活用による総合的な最適合理的運
転システムの構築による維持管理費の削減、信頼性向上、耐用部品の開発による長寿命化、
系内付着物防止やクリーニング技術、各種発電設備との対応力などを克服しなければなら
ない。生産されるスラグについても有用資材として幅広く使用するために品質基準の確立
100
のための対応を急ぐ必要がある。最終的に金属類が濃縮した飛灰やスラッジ類が捕集され
るが、有害物類を多種類含有するのでトレーシング(Tracing)手法により、発生側から受
け皿に至るまで、透明性を確保し、よりしっかりした管理体制が必要である。この点につ
いても早期に経済性のよい利用技術が実用化されなければならない。
現状を整理すると次のようになる。
まず、ASR 処理には ASR の次のような特性が内在していることに留意することが必要で
ある。末尾に ASR 成分の比較表事例(データ)を示す(※1)。
・ 選別の方法や減容の方法次第で性状にバラツキが大きい。
・ 都市ごみと比較して発熱量が3∼4倍、灰分および塩類が5~10 倍ある。
・ 燃焼時に低融点物質を生成する金属成分(Na、K、Zn、Al、Cu、Fe など)を都市ごみ
の約 10∼100 倍も含有している。
熱分解ガス化炉は急速に普及しており、その実績を見るとほぼ計画上の性能を発揮して
いる。要約して
a. ASR(ごみ)のカロリー低下や年間を通じたごみ質の変動に対して、安定運転するための
前処理や燃焼管理などの制約因子を明確にし、ごみ質の変動に対し常に追従できる技
術を構築する必要がある。
b. 溶融温度が従来型の燃焼温度より高く、耐火物や消耗品が従来型より早期に劣化する
ことが懸念されるため、耐用性の優れた材質の採用や耐火材の使用面積を減少できる
システムの構築により、耐火物の長寿命化、定期補修の簡単化や耐用度の延伸化を図
る必要がある。
c. 処理対象物やシステムによりイニシャルコスト、ランニングコストや補修費は異なる
が、ユーティリティー、売電量、環境負荷などの総合的な観点から、従来型よりコス
トを低減できるシステムの構築を図る必要がある。
⑤非鉄金属精錬での ASR
非鉄金属精錬では、既存技術を活用することでASRから銅を主体とした希少金属を回
収し、かつ高熱源の特性を生かしてエネルギー源として利用することが実施されている。
特に、リサイクル法施行前の現在、関東地区ASR処分先の 60%以上が福島・小名浜精錬
であることからも、2005 年1月法施行後も大きな役割を担うと見られる。小名浜精錬は、
国内で唯一稼動を続ける反射炉の燃料代替として、93 年ごろよりASRを利用し始め、処
理能力は当初 3000t/月から、現在は 12,000t/月に拡大している。平均して4%の銅成分
が抽出できる上に、石炭代替燃料として活用でき、安定操業に入っていると思われる。ま
た同和鉱業から 1990 年に分社した小坂製錬も、銅や鉛に関するノウハウをベースにASR
処理分野に現在、4,000t/月処理している。これらは既存の産業インフラの集積が活用され
る典型的な事例として注目される。
101
⑥ASR 処理・再利用施設(主としてガス化溶融炉・溶融炉)の現状
現状の稼動状況を調査した。
自動車リサイクル法は 2005 年1月1日施行の予定である。ガス化溶融炉は既存の非鉄金
属製錬工程で確立されている ASR 処理(熱分解ガス化)と共に中心的な処理方法となって
いくであろう。しかしながら、実施 10 ヶ月後をきっている時、稼動状況は非鉄精錬関係を
除くと甚だ心もとないと言わざるをえない。法の目的に合致した ASR 処理は緊急課題であ
り、早急な対応が求められる。(下表 A∼S は事例)。
稼動状況
会社名
地域
処理能力
稼動時期
5.5 万トン/年
日立金属
北海道
日立製作所
(エコバレ
ー歌志内)
3 万トン/年
カネムラ
九州
エ コ ワ ー ク (熊本県)
ス
青森 RER
16 万トン/年
東北
(青森県)
ヤマナカ
関東
(神奈川
県)
カンガイ
1.6 万トン/年
中国
(岡山県)
2 万トン/年
102
概要
(対計画)
02 年 10 月
シャフト式(一体型)。
( 本 格 稼 動 熱分解、溶融処理。BTG
ではない)
発電。
98 年 4 月
稼動
キルン式熱分解、旋回溶
融炉(分割型)BTG 発電。
02 年 12 月
稼動
流動床式熱分解、旋回溶
融炉(分割型)BTG 発電。
01 年 10 月
稼動
キルン式熱分解、副生ガ
ス回収・ガスエンジン発
電。
00 年 7 月
稼動
焼却、減容・灰処理。
(回転炉式)
豊田メタル
0.36 万トン/年
東海
(愛知県)
03 年 4 月
(実証
テスト)
シャフト式(一体型)
熱分解、溶融処理。
シモダ産業
3.3 万トン/年
北陸
(新潟県)
03 年 12 月
シャフト式(一体型)
焼却、溶融処理(スラグ)
東金属
1.8 万トン/年
関東
(群馬県)
(未完成)
焼却、減容・灰処理。
(回転炉式)
東北東京
鐵鋼
3.4 万トン/年
東北
(青森県)
(未完成)
キルン式熱分解。
共英製鋼
3.7 万トン/年
中国
(山口県)
(未完成)
シャフト式(一体型)
熱分解、溶融処理。
住友金属
工業
6 万トン/年
関東
(茨城県)
(未完成)
シャフト式(一体型)
熱分解、溶融処理。
7.3 万トン/年
新日本製鐵
九州
( 九 州 エ コ (福岡県)
エナジー)
(未完成)
シャフト式(一体型)
熱分解、溶融処理
3.6 万トン/年
東海
(愛知県)
(未完成)
シャフト式(一体型)
熱分解、溶融処理。
新日本製鐵
(名古屋)
103
会社名
地域
処理能力
稼動時期
小名浜製錬
15 万トン/年
東北
(福島県)
03 年 12 月
銅製錬工場(反射炉)を
現在:フル能力 使用して ASR 処理。
稼動中
銅など回収し、熱利用。
小坂製錬
5.3 万トン/年
東北
(秋田県)
02 年 11 月
(本格稼動)
日鉱三日市
リサイクル
0.84 万トン/年
北陸
(富山県)
(稼動中)
三菱マテリ
アル・直島
6 万トン/年
四国
(香川県)
04 年 4 月稼動 (キルン式炉)焼却、
予定
減容・灰&飛灰を製錬
(試運転中)
炉で処理し、銅ほか金
属回収。熱利用。
会社名
地域
稼動時期
概要(対計画)
豊田メタル
4 万トン/年
東海
(愛知県) (20 万台分)
98 年 8 月
ASR の精密分別によ
り、金属類や高分子材
料を回収。自動車部材
用の原料に利用。
(ASR 処理:○)
JFE 京浜
関東
(神奈川
県)
処理能力
0.12 万トン/年
104
概要(対計画)
既存の製錬設備を活用
し、ASR 処理。金属な
ど回収し、熱利用。
(回転炉)焼却、減容・
灰&飛灰を焼結機で固
めて、コークスで還元
し亜鉛ほか金属回収。
熱媒浴(サーモバス)
(実証テスト) を使って、金属とプラ
スチックと比重分離。
(ASR 処理:−)
105
4)RDF
の現状と展望
①RDF とは
通常、RDF の特徴を次の様に整理することが出来る。
1.一定の品位で一定量の原料が継続的に得られにくい。
2.RDF の品質にはバラツキが出る。
3.臭いが出易い。
4.着火しやすい。
上記のような基本的概念を基点として現況と今後の留意点を述べることとする。
RDF は家庭などから排出される、燃えるゴミを原料にしてつくった燃料(代替物)である。
RDF は Refuse(ゴミ)、Derived(由来する)、Fuel(燃料)の略称であり Refuse を ASR(ゴ
ミ)とおくと表題の概念は共通して包含される。家庭ごみと ASR は同じ「ゴミ」でも全く
異質であり、同列で議論する領域のものではないが、RDF に関する全般的な概念を理解す
るには役立つ。それを基本として、ASR 系の RDF を個別のテーマで検討することにする。
基本的に RDF が燃料(代替物)とするならば製品として RDF には一定の仕様なり、特
性、物性などを考慮して RDF を製造し、物流して、活用するルールを決める方法が必要で
ある。わが国では RDF について暫定規格は設定されており、現在 TR※3(標準情報)とし
て提示されている。しかし、RDF は技術全般が未成熟で体系として整理がつかない時期に、
国内では RDF の製造活動が拡大されている状態で、その物流フローは大規模になっている。
②RDF
に関する事故(調査報告書・三重県資料より)
三重県多度町で 2003 年8月に RDF 発電施設・貯蔵サイロの爆発事故が発生した。三重
県は当該事故に関して事故調査専門委員会を設置して事故原因の究明に努めており、この
報告書をまとめた。この中で、多くの知見を記述し、事故内容を説明しているが、事故原
因の究明が完結したわけではない。今後、更に新しい検討内容など追加される状況と考え
る。RDF は今後、継続して生産、利用などの一連の現場活動をしながら、改めて技術確立
が実践されていくと言える。
以下、事故調査の報告書から内容を引用して、現状を把握することにする。
<ごみ固形燃料適正管理のための検討>
1)ごみ固形燃料の利用に関する基本的な考え方
ゴミ固形燃料化は、ごみを直接焼却して熱回収することが困難な小規模な事業者にあっ
ては、ごみ処理システムの選択肢の一つである。ただし、ごみ処理システムの一部である
ことを踏まえ、保管期間があまりにも長期に及ぶことのないようにし、速やかに焼却処理
することを基本とすべきである。
2)ごみ固形燃料の性状管理
①ごみ固形燃料の性状管理
・水分;トラブルを防止する観点から、製造時、輸送時、保管時を通して、ごみ固形燃料
105
の水分を 10%以下に管理する
・温度;十分冷却されず、熱を有した状態で保管設備に搬入された場合、蓄熱による発火
のおそれがあるため、外気温度程度に冷却する
・粉化度;性状変化の促進を防止する観点から、各ごみ固形燃料化施設の特性を踏まえた
指標値(例えば1∼2%以下)を設定し、適切に管理する
②ごみ固形燃料化施設における対策
・受入工程;危険物や不燃物の分別徹底を図る。ごみをよく撹拌し、できる限り均一な性
状にする。万一の出火に備えて、散水装置消火栓等を適切に配置しておく
・破砕・選別工程;破砕機入口付近の状況を常時監視する。高速回転式破砕機の場合は、
蒸気噴霧等による発火防止対策を講じる。室内に熱感知等を備えるとともに、消火設備
を設置しておく。
・乾燥工程;乾燥機出口温度及び乾燥ごみ水分量指標を連続的且つ確実に監視する。乾燥
炉内に滞留したごみが稼動時に発火しないよう対策を講じる。定期的に排気ダクト内を
清掃する。室内に熱感知器等を備える。
・薬剤添加工程;ごみと添加剤が十分混合できるよう適切に設計し、制御する。
・成型工程;成型機の温度や一酸化炭素濃度を連続測定する。立ち上げ時には予め塵の除
去を行うとともに、ごみの供給量に注意する。室内に熱感知器等を備える。適度な硬さ
を持つよう成型する。
・冷却工程;固形燃料内部まで十分に冷却することに留意し、外気温度程度まで冷却する。
冷却機の空気温度等を連続測定し、管理する。稼動停止時に残留したごみ固形燃料が発
火しないよう対策を講じる。室内に熱感知器等を備える。
・保管搬出工程(少量保管時の対策);雨水等による風雨の進入を防止する。槽内や室内の
温度が偏らないよう換気する。閉鎖型の設備で保管する場合には、一酸化炭素や温度を
連続測定するとともに、ごみ固形燃料が迅速に取り出せる構造等とする。保管期間は一
週間以内とし、長期に及ぶ場合は蓄熱防止対策を講じる。外気温度と同程度に冷却した
後、搬送する。
・搬出時の性状管理;管理指標値を定め、水分、温度等については、毎日、測定、監視す
る。指標値を満足しなかったごみ固形燃料については、製造工程に戻す等の対応を徹底
する。
③ごみ固形燃料利用施設の対策
・受入・保管時の性状管理;受入基準値を定め、搬入時の測定、監視を行うとともに保管
中の性状変化についても管理する。基準値を満たさないごみ固形燃料については、貯蔵
せず焼却炉に直接投入する。または、ごみ固形燃料化施設に返品する等の措置をとる。
・受入工程;雨水等による湿潤を防止できる構造とする。
・保管設備;搬入量及び搬出量を記録し、保管量及び保管期間を把握する。
「望ましい保管方法であるピット方式」においては、以下の事項に留意して管理する。
106
・ 容量
適切な規模の複数のピットを設けることが望ましい。
放熱を保つため撹拌する。概ね 3 ヶ月に一回底部を清掃する。
・ 保管期間・清掃
・ 換気装置
滞留ガスを常時交換する。
・ 計測装置
赤外線温度検知器等を設置する。
・ 消火設備
大量散水が可能な設備を設置する。
「サイロ方式等の閉鎖型の保管設備」において、長期、大量に保管する場合は、以下の事
項に留意して管理する。
・ 容量等
複数の設備を設け、1設備当たりの容量を小さくすることが望ましい。
・ 保管期間・清掃
最低貯留期間を設定して管理する。定期的に内部のごみ固形燃料を搬
出し、清掃する。先入れ先出しが確実に行われるような構造とする。保管期間が長期に
及んだ場合には入替え等により放熱するとともに速やかに利用する。
・ 湿潤防止対策
壁面を二重構造にする等の対策を講じる。
・ 酸化・蓄熱防止対策
常時、窒素等の不活性ガスを充填し、希薄酸素環境を維持する等
により、発熱及び蓄熱防止対策を講じる。
・ 計測装置
温度、湿度、一酸化炭素、二酸化炭素、全炭化水素等の連続監視を行う。こ
の場合、遠隔自動監視が可能なものとし、保管設備内の全体的な状況が適切に監視でき
るように配置する。
・ 消火設備 異常発熱時に、不活性ガスを注入し、保管設備内を不活性雰囲気にすること
が出来る注入設備を設ける。
3)RDF(ごみ固形燃料化)施設における事故防止対策及び RDF 利用施設における事故防
止対策のイメージ
これまで述べた内容を踏まえ、整理して次図のようにしてまとめることが出来る。発
生した事故を調査、検討、評価、推察して RDF の製造と製造施設、RDF の搬送、貯留、
保管とその全般に亘り考察している。
ここでは、RDF の原料となる Refuse(ごみ)の適否について、全ての種類について言及
されていない。今回は家庭ごみ RDF に関連した施設における RDF の発火、火災、爆発
事故の原因追跡にあり、それは事故報告書の目的、内容を現実的に絞ればこの調査で取
扱う範囲の限界でもあろう。
※3
(参考)廃棄物固形化燃料
TR
品質項目
Z0011:2002
品質(表示)規格
発熱量
12,500KJ/kg(3,000kcal/kg)以上
水分
10%以下
灰分
20%以下
金属含有量・全塩素分・
金属含有量、全塩素分、硫黄分、窒素分、嵩密度
硫黄分・窒素分・
及び粉化度の規定値は定めないが試験した値を報告
嵩密度・粉化度
する
107
108
③ASR
を使用した RDF
RDF の品質は、原料となるごみ質や性状、組成等に支配されることは容易に推定できる
が、この観点からの研究については、これまで適切な報告が少ないと思われる。ごみの組
成や組成比率が、RDF 製造の基本ファクターになる。RDF の用途を想定すれば、成分値や
発熱量は一定の基準が必要と考える。Refuse(ごみ)を調査、試験などして、目的に合う
かどうか適否が判断される。その一つに ASR を対象物に取上げる。
ASR を使用して製造される RDF は特別に「ASR 系の RDF」と呼ぶことがよい。これを
容易に燃料(代替物)利用している実施事例は数少ないし、現段階で汎用的にどこにでも
利用が可能とは言い難い。
拓南商事㈱(沖縄県)の場合が先行事例として報告されている。この場合、RDF 製造場
所に隣接して電炉工場(拓南製鉄)があり、ここで定常的にこの RDF を使用している。
他に全国各所の電炉工場では、自社で発生する ASR を使用し、テストプラントを設置し
て、各種の RDF 製造を独自に製造検討している情報がある。電炉使用に適する RDF を研
究すると共に電炉使用時の評価を試みている。研究内容は報告書などにより、まだ公表さ
れていないようである。
現状では、RDF を埋立て処分することは、一般的である。ASR はハンドリングする場合
も嵩張り、飛散して管理が徹底しない。RDF は ASR を 1/3∼1/5 程度に減容化(嵩密度は
0.6 以上、要求条件によっては 1.2 レベルなど)して、輸送は容易に且つ効率化が図られる。
RDF は埋立て処分場使用の容積効率が有利になり、取扱う時の発塵が抑制される利点が
ある。現状、RDF の品質などは排出者と利用者・処分者間で協議して、マニフェスト伝票
を使用しながら管理し、確認されるが厳密にその内容が基準化されたものではない。
ASR を RDF(燃料―代替物用)の活用のために研究と技術的な改善活動が続けられ、実
用化が進められている事例を報告書から引用して記述する。
Case
1.その 1.拓南製鐵株式会社 新中城工場(平成 14 年度シュレッダーダスト等廃棄物
の処理技術等に関する調査研究報告書より)
ア.電炉操業内容
・ 原料:7割が県内で発生するスクラップであり使用済み自動車が主体、3割は輸入であ
る。沖縄県内には金属産業が少ない為にスクラップの大半は老廃屑である。また、自動
車主体の原料の為に他の製鋼メーカーよりも製品の Cu 値が高いと考えている。製品の
Cu 値は平均で 0.4%。
・ 操業等:操業は金曜日夜∼月曜日朝が主体で、1日に 27ch を処理。
公称電炉能力 40t(実際 80t)、装入回数 2 回、装入量 83t、電力原単位 300kwh/t 以下、
酸素原単位 35m3N/t、鋳片サイズ゙ 135mm、ホット比率 60%。
イ.RDF の使用状況
・ 2001 年 9 月よりテスト開始。2002 年 2 月より 1t 強の使用を始めた。
109
・ 現在の使用量は 1.7t/ch。スクラップ初装時に 1.0t、追装時に 0.7t。いずれもスクラッ
プでサンドイッチにする形にバケット中央部に投入し、スクラップごと電炉へ装入する。
バケットの下部に投入する方式も試験したが、電炉へ投入した際の火炎が大きく危険な
為に現在の方法とした。
ウ.メリット、デメリット
・ RDF の使用により、先入れコークス量を半減出来た。今のところ、電力原単位低減効
果は明確なほどには得られていない。排ガス組成・温度の変化、集塵ダクトの損傷等の
悪影響も確認されていない。(期間が短く不明である。)
エ.所見
拓南製鐵の先入れコークス量を 10kg/溶鋼 t、ASR 中の炭素分を 45%と仮定すれば、
ASR 中炭素分の約 5 割が先入れコークスの代替として寄与している。加炭剤や助燃剤
として活用率を向上するには、RDF の形状・投入時期・電炉の操業条件がポイントと
思われる。
その2.拓南商事株式会社
ア.特徴
ASR の分別及び ASR 中のプラスチック類の RDF(固形燃料)化システムを沖縄県工業
技術センターと共同開発し、2001 年 3 月に立ち上げた。使用済み自動車のリサイクル
率は、これまでの 70%から 90%以上に引き上げられ処分場の負荷軽減に繋がっている。
イ.沖縄での使用済み自動車の発生量と拓南商事の処理内容
沖縄は中古車比率が高い為に使用済自動車の発生率も比較的高く、約 7,000 台/月の
使用済自動車が発生する。沖縄の自動車保有台数 83 万台(新車 30%、中古車 70%)、
使用済自動車発生率は 10%
である(全国平均は8%)。
拓南商事の使用済み自動車処理量は 3,500 台/月であり、拓南商事で行っているシュ
レッダー処理の 90%を占める。残りの 10%は家電(約 3,000 台/月)等。沖縄では解
体
業者が部品取りのみを行い、その後シュレッダー業者にまわって来る。エンジンは取
り外さずにシュレッダーし、シェレッダー後に分別している。エンジンを取り外して
アルミを回収する処理は、排ガス処理が難しいために行っていない。鉄スクラップ価
格の下落に伴い、シュレッダー後の非鉄分の分離・回収に重点を置き、活用に努めてい
る。
ウ.ASR の粉砕・選別設備
シュレッダー処理後の ASR の中には 15∼20%の金属(鉄・非鉄半々)が含まれており、
これらを回収する為に選別装置を設置した。粉砕・風力選別・磁気選別により、ASR
を鉄・銅・ダスト・塩ビ等に分別する。ポイントは 12mm 以下まで粉砕する事。粉砕
によりハーネスの被覆(塩ビ)も剥がれる。選別後の ASR 中の Cu 含有量は 1.5∼2.0%
110
である。
エ.ASR 減容固化装置
選別後の ASR は減容固化装置で RDF に加工する。減容率は 1/3 であり、装置の運
転スタート時に 30 分間は ASR を加熱、その後は摩擦熱のみで成型する。処理能力
は 3t/hr(現状は 2∼2.5t/hr で運転)。RDF は約 5,800kcal/kg の発熱量があり、
半分は拓南製鐵の電炉で使用し、半分は埋立て処分している。
オ.ASR のリサイクル率
約 1,000t/月発生している ASR を以下の如く処理している。
1,000t―選別設備―150t
ガラス等―埋立て
―200t
金属―鉄・非鉄金属メーカーでリサイクル
―650t
RDF 化―電炉で使用 350t、埋立て 300t
使用済み自動車から発生する ASR は自動車全体の 30%、ASR 選別後の RDF を全
て電炉で利用するとすれば、リサイクル率は 95.5%になり、本システムは使用済み
自動車のリサイクル率向上に大きく貢献している。
70%(ASR 以外)+30%×850/1,000(ASR 中のリサイクル分)=95.5%
今後の課題はシュレッダーの事前選別の強化である。
①シュレッダーした際の ASR 発生量を減らすためのガラス、バンパー等の除去。
②ASR 中の Cu 含有量を減らすためのハーネス類の除去。
カ.所見
ASR を電炉で再利用することを目的として、ASR 中の Cu 分の選別除去や RDF 化
するシステムを開発したのは、全国初の試みである。ASR 中の Cu 含有分 1.5∼2.0%
は、一般的な ASR と比較して低いレベルと考えられる。隣に拓南製鐵(電炉メーカー)
があり、立地条件にも恵まれている。
Case
2.その1.㈱ ヂーマグ「剥離法による ASR 燃料化システム」(資料)
(1) 燃料化に伴う問題点
燃料化に際しては、それぞれの用途先の受入れ基準を満足する性状を確保することが
必須条件となる。もちろん用途先により要求される性状が異なることは言うまでもない。
熱源としての使用が予測されるところは多方面にわたっており、代表的な分野としては、
①高炉業界、②電炉業界、③セメント業界、④製紙業界等がある。これら分野はそれぞ
れ使用目的が違うため、燃料としての要求性状は分野別に異なるが、各分野共通してい
ることは、銅と塩ビを外すことと、水分含有量を極力(1%以下)低くすることが必要
という点である。中でも高炉、電炉業界では、とりわけ銅の含有率を 0.5%以下にするこ
とが要求されており、従来から各方面でこの課題に取り組んできたが、処理が最も困難
と言われる ASR 処理の分野においては、クリアーされていないのが現状である。
塩ビについては、ASR 中における存在形態が明らかにされておらず、現時点では効率的
111
対策が見つかっていない。したがって塩ビについては後処理での対策が避けられない。
(2) 従来の取組み
前項の課題を解決するための試みとしては、①徹底した破砕を行い、比重分別技術を
使って、銅、非鉄を分別する破砕法、②人力による徹底した手選別を破砕前に行い分別
する手選別法、などが行われていた。
前者は見掛け比重が軽く、目的とする破砕が行われ難いこと、処理量が小さいことな
どがあげられるが、中でも銅は除去率が 80%(残存銅の割合1%)が限界であるといわ
れている。これは ASR 中の銅は主として、ハーネス(塩ビ被覆付銅線)として存在する
が、破砕を繰り返しても銅と塩ビ被覆を完全に分離することができず、したがって、ダ
スト中に被覆付銅線が残存してしまうのである。また一方後者は、選別が人手に頼るた
め大量処理に不向きなこと、手の入らない狭い部分のハーネスは取り除くことができな
いことから、銅の除去率も前者と同程度が限界であるとの報告もある。
こうしたことからいずれの方法も燃料化の受入れ基準をクリヤーできていない。
(3) 剥離法
ASR の燃料化に際し問題となるのは銅(銅線)の混入である。銅(塩ビ付銅線)は、
芯線および被覆材がそれぞれ単体で存在することは少なく、ほとんどがビニール被覆を
伴った形で存在する。銅および塩ビを選別する場合は、これらを事前に単体分離するこ
とが必須条件となる。従来は前項で述べたとおり粉砕処理でビニール被覆を剥がす試み
が行われていたが、ASR を大量に粉砕することは大変に困難でかつ、分離効率が十分で
ないことから実用化できなかった。ただ有価物(非鉄金属など)回収には、それなりの
効果はあったといえる。
今回述べる剥離法は、ASR を加圧・押し出し処理することにより、ASR 自身を自然発
熱させ、被覆ビニール材を軟化し、ASR 同士の擦りあい現象により、ビニール被覆の剥
がれを促進するものである。自然発熱のため別途加熱する必要はない。その後、後段の
選別機の特性に合わせた破砕粒度に破砕し、選別を行うものである。
(4)処理方法別 ASR 中の銅および銅線の割合
従来法と剥離法における、被覆銅線の銅(芯線)と被覆の分離率の違いを次頁に示す。
粉砕法は、ASR をⅠ軸高速破砕機によって2段破砕したものである。破砕機下の目開き
は1段目 20mm、2段目 8mm である。一方剥離法は、ASR を剥離機にかけφ100mm の
サイズに処理し、十分固化した後1軸破砕機にて粉砕したものである。破砕機下の目開
きは粉砕法と同じである。なお、表中の分析値は目視により行ったが、ASR 中の銅分を
先ず化学分析により行ない(5%)、それぞれの処理法によるサンプル 500g 中の銅線(%)
を目視分析し、銅%は ASR 中の銅分(%)より差し引いて求めた。この結果より、剥離
法の分離効率が高いことがわかる。
(5)ASR 組成分析結果
112
ASR の代表的組成を次頁に示したが、この値は ASR となる過程(前処理方法)により変
ることは言うまでもない。しかしながら現在、先進的処理法を採用している業者間にお
いては、上表中の数値が大幅に変ることはないことも判明している。
(6)燃料化処理フロー
本選別システムの特徴は、フロー中の剥離処理工程と精密銅線別処理工程である。剥
離処理工程において銅および塩ビ被覆を限りなく分離させた後、銅選別処理を行うこと
が特徴で、その効果は前述の通りである。また本システムは、採用している処理工程に
すでに確立された処理技術を採用しているため、処理における不確定要素(不安要素)
がきわめて少ないことも特長である。
(7)結果および実施例
本システムによる最終工程後で ASR 中の銅混入率は、0.3∼0.5%が得られることがわ
かった。この値は高炉および電炉業界の ASR 受入れ基準を満たしており、ASR 適正処理
の有効な手段と考えられる。実施例を以下に示す。
「電炉の場合」
① 製品中の銅の含有率はほとんど変化しない。
② 燃焼効率が良くなり、排ガス温度は上昇する(10∼25%)。
③ CO は減少する。
④ 煤塵はほとんど変化なし。
⑤ 塩素濃度は全体として変化なし。
⑥ ダイオキシン類は多少増加の傾向にあるが、基準値以内である。
⑦ 固形燃料1kg アタリ 2.5kWh のエネルギー効果が見られた。今回は 1,000kg の固形燃料
113
を投入したため、1チャージあたり 2,500kWh であり、鉄屑1t あたり 26kWh のエ
ネルギー効果となる。固形燃料使用量を増やせば効果はさらに増加する。
以上のことにより、固形燃料を熱利用した場合の煤塵およびダイオキシン類の値は排
出基準を満たしており環境への問題はないと思われる。またエネルギー節約効果により、
コークスなどの使用量を減らすことが可能である。今後、塩ビ分離を効率よく行う技術
を検討し、ASR の完全燃料化を図ってゆく。
Case
3.(財団法人)金属系材料研究開発センター「電炉技術を用いた鉄及びプラスチックの
複合リサイクル技術開発」の研究(資料)
(1) 研究開発計画の概要:平成 14 年度から 3 年計画で実施
本計画は「Ⅰ.シュレッダーダスト等の減容固化技術とその電炉利用技術開発」
「Ⅱ.電
炉ダストの適正処理と副生物のリサイクル技術開発」「Ⅲ.ハロゲン処理技術開発」の 3
つの技術から構成される。このうち、Ⅰ.について報告する。シュレッダーダスト等の
減容固化技術とその電炉利用技術開発は、シュレッダーダスト等と廃棄鉄粉等を電炉で
同時処理し、有機物は鉄スクラップの燃料や還元剤として、廃棄鉄粉は鉄源としてリサ
イクルする技術を行うものである。
(2) 研究開発テーマの概要
①小型固化物ラボテスト:
着熱効率向上のポイントである固形化物の燃焼挙動に及ぼすサイズ、組成等の影響を
豊橋技術科学大学と共同研究を行い、その結果を電炉溶解操業条件に反映する。
②シュレッダーダスト等の減容固化物製造技術:
有機系廃棄物と廃棄鉄粉をロータリーキルンにて同時加熱し、有機物と鉄粉が混合し
た溶融物をつくり、プレス成型して固形化物を製造する。シュレッダーダストのような
有機物や金属が混合した廃棄物に対しては、キルン溶融物の中心にアンコ状に封入する
ことにより、多様な性状の廃棄物に対応する固形化処理が可能と考えられる。
③減容固化物の電炉へのハンドリング・装入技術:
電炉で一般的に用いられているリフティングマグネットで減容固化物の搬送を行うた
めに、固形化物に廃棄鉄粉等強磁性体を混装、固形化する。固形化物の着磁性について
鉄粉類の材質、混装率等の解析を行い、リフティングマグネットでの搬送を可能にする
技術を開発する。
④炉内燃焼制御技術:
電炉内における燃焼の安定、着熱効率の向上、鉄スクラップの酸化抑制/酸化鉄の還
元促進のため、電炉操業条件と燃焼の関係を解析し、固形化物の炉内燃焼制御技術を開
発する。
<ASR 燃料化処理フローの検討例>(資料)
114
(参考資料)「ASR、A プレス※1使用時の操業諸元アンケート例」(JRCM 資料)
(参考資料)
「電気炉排ガス中の有害大気汚染物質(ダイオキシン類)に関する自主管理
計画」(普通鋼電炉工業会、日本鉄鋼連盟資料。2000 年3月)
5)自動車メーカーの取り組み
自動車メーカーが軽量化やハイブリッドなどによる低燃費化を競う時代は、20 世紀に終
わった。循環型経済社会に移行した 21 世紀は、いよいよ自動車リサイクル法が 2005 年1
月より施行される時を迎え、より解体しやすい設計や、リサイクル性の向上に向けた素材
の採用などの実施の時期と考える。
すなわち、排ガスと騒音が中心だった各社の環境対策は、
「川下」に軸足が移行し、当面、
自動車リサイクル法で指定する3品について、
「フロンを使わないエアコン、処理しやすい
エアバック、ASR の発生量を少なくする設計」が課題となると見られる。リサイクルしや
すさは、処理コスト低減につながるからである。そこで 2003 年世界第 2 位の販売台数を記
録したトヨタの取り組み事例をあげた。
トヨタは使用済み自動車リサイクルの取り組みを一層強化するため、2015 年リサイクル率
95%を目標にした「トヨタリサイクルビジョン」を 2003 年春に策定した。
リサイクルビジョンの内容
区
分
日欧リサイクル実効率の着実
な向上
再生可能資源・リサイク
ル材の活用
中古部品の利用拡大
環境負荷物質の削減
目
標
日本;目標の早期達成*1
欧州;目標の着実な達成*2
2015 年樹脂部品の 20%使用
技術確立
2010 年販売点数 10 倍(2002
年比)
2003 年トヨタグローバル基
準の制定
2006 年より4物質(鉛、水
銀、カドニウム、六価クロム)使用
禁止。但し、鉛は 1/10 以下。
日本の現状
リサイクル実効率
81∼83%
2003 年5月新型「ラウム」
より採用
2002 年実績 2.3 万点/年
グローバル対応の基本方針
策定
2002 年新型車平均使用量を
1996 年比 1/6 以下に削減
注;*1=ASR リサイクル率 2005 年度 30%(リサイクル実効率 88%相当)、2010 年度 50%(同
92%相当)、2015 年度 70%(同 95%相当)の予定
*2=リサイクル実効率 2006 年 85%、2015 年 95%
2003 年5月発売の新型「ラウム」はまさにその実施の第一歩を自らが製造する車に現し
たものである。新型「ラウム」は業界ではじめて「リサイクル設計」を売りにし、解体し
やすい車種として、ハーネスなど電気配線網はベルトを巻いて引っ張れば取れる(引き離
し工法)しくみとなっており、解体時間が旧型より3割短縮される特徴がある。新型「ラ
ウム」から取り組みを開始した環境保全の具体的テーマは①解体性向上の配慮
115
②リサイ
クルに配慮した材料の使用
っ張ると接合部が離れる構造
③部品の一体化
③環境負荷物質の低減にある。解体性向上では①強い力で引
②ビスやネジによる締付けを減らし、クリップ付け化
④複合素材は避ける
をポイントとしており、かつ解体作業を容易にす
るため、「解体性向上マーク」をつけた。このマークは大型樹脂部品の分離させやすい位置、
液抜きのために穴を開ける位置など解体作業のきっかけとなるポイントを示す。新型「ラ
ウム」では 21 ヶ所に設定されている。ワイヤーハーネスの取外しについては、全 10 ヶ所
にあるロープを引っ張ると芋づる式に抜き取れる。また、リサイクルに適した素材として
独自に開発した「トヨタエコプラスチック」が採用されている。さとうきび、とうもろこ
しなど CO2 を吸収して育った植物を原料としており、環境への負荷が少ない。二酸化炭素
を使って光合成する植物が原料なので、燃やしても全体でみれば二酸化炭素の排出量を削
減できるし、埋め立てても微生物が分解して有害物質を出さない。「ラウム」ではスペアホ
イルカバーとフロアマットに採用されている。スペアホイルマットを従来どおりのポリプ
ロピレンで造った場合に比べ、トータルライフで CO2 発生量を約半分に削減でき、将来的
には製造工程での植物残さの利用などにより、CO2 発生量をポリプロピレンの 20 分の1程
度まで低減させる考えをもっている。具体的な改善点を以下にまとめた。
新型「ラウム」の特徴
個所
フロントバンパー
採用した点
右記3点を一体化
クレーンでの引き剥がし可能とし、
コスト 1/10、作業時間 45%短縮。
インストルメントパネル クレーンでの引き剥がしを
可能とした。
天井
マップランプ、バイザーホルダー、アシス
トグリップなど全ての取付け部
品をビスなしで取付け、解体
性を向上。
遮音フェルトをトリム裏面か
ドアトリム
らドア側のサービスホールカバーに移
し、取外し後のフェルト分離作業を
不要とした。
裏面の遮音フェルトを全面接
デッキサイドトリム
着から点付け溶着に変更。
ダッシュサイレンサー、フ 豊田メタル・ASR プラントの
よる再資源化防音材を使用
ロアサイレンサー
スペアホイルカバー、フロ 独自に開発した植物素材「トヨタ
エコプラスチック」を採用
アマット
116
旧型の場合
上下分割+ラジエターグリルの 3 点
専用装置で引き剥がし
ビスで取付け
全面接着
ワイヤーハーネス
1 部のワイヤーハーネス被覆やダッシュサイ
レンサーなどで塩化ビニールの使用を
中止。車両全体のの塩ビ使用量
を旧型の 1/4 に。
引剥がしに、解体用ベルトを付
与、引張ると取れるしくみに。
出所;環境社会報告書 2003
117
(4)自動二輪車のリサイクル
自動車リサイクル法では対象外となっており、自主取り組みとなっている自動二輪車リ
サイクルについて、主要4社(ホンダ、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業)はリサイク
ルシステムを確立し、2004 年秋より自動車リサイクル法施行に先駆けてリサイクルシステ
ムネットワークを稼動する。
1) 自動二輪車の市場
2003 年の生産台数は 183 万台であった。生産のうち 128 万台が輸出であり、輸出比率は
70%と高い。世界シェアーも高く、競争力ある製品と言える。生産台数を排気量別にみる
と、183 万台のうち 50cc 以下が 46 万台(25.0%)
、51∼125cc 38 万台(20.6%)、126∼
250cc(12.9%)、251cc 以上 76 万台(41.5%)となり、125cc 以下が 45%を占める。
しかしこの 10 年間の推移をみると、120 万台近く減少した。低下の原因は、125cc 以下
の生産台数の激減によるものであり、126cc 以上ではむしろ増加している。また、国内販売、
輸出別にみると、国内 54 万台減に対し、輸出 44 万台減(注;国内出荷データは輸入や在
庫販売を含むため生産の内訳とならない)であり、国内の減少が大きい。国内を用途面か
ら考察すると、125cc 以下は経済性(維持費、燃費)がよいため、「生活の足」としての性
格が強いが、年間 24 万台を超える盗難や駐輪所不足が減少の背景にあるとみられている。
一方、126cc 以上では大型になるほど「趣味・遊び」の要素が強くなるが、スポーツやレ
ジャーとしての嗜好が堅調に下支えている。輸出はアジア向けが現地生産や自給力の向上
で激減し全体に影響した。一方、北米向けは逆に 10 年間で倍増している。
台数
自動二輪車国内販売台数(排気量別)
1,400,000
小型二輪車(251cc
∼)
1,200,000
軽二輪(126∼250cc)
原付第二種(51∼125cc)
1,000,000
原付第一種(∼50cc)
計
800,000
600,000
400,000
200,000
出所;
日本自動車工業会
118
2003
年
2002
年
2001
年
2000
年
1999
年
1998
年
1997
年
1996
年
1995
年
1994
年
1993
年
0
2) 自動二輪車使用済自動車台数の現状
2000 年時点の国内保有台数は推定 1,400 万台とされ、新車販売台数年間 78 万台(2003
年は 71 万台)、輸入4万台から計算される使用済み二輪車は年間約 120 万台と推定される。
このうち海外へ 70 万台、国内残留は 50 万台であり、海外へ使用済自動車が輸出されるも
のが全体の 60%近い。日本の二輪車は世界で知名度が高く、世界のさまざまな国で使用さ
れており、部品に対する海外でのニーズが高いためと見られる。
国内処理台数 50 万台は、30 万台が中古部品業者を経由する。精密な部品が部品流通を支
えている。パーツを取り出した廃車ガラ(備考;自動車と異なり、解体は少ない)と残り
20 万台は、シュレッダー業者に引取られ、シュレッダー処理されている。シュレッダー処
理でのおおまかなリサイクル率は 75%といわれており、残り 25%がダストとなる。年間の
ダスト発生量は 0.84 万 t であり、ASRの1%以下の規模である。
3) 自動二輪車の材料構成
250cc 以上と、49cc 以下(原付)に分けると以下のような特徴がある。
①250cc 以上(ホンダ・ST1100)
総重量 286.5kg 中、鉄 55.4%(157.6kg)、アルミ 23.8%(68.2kg)、樹脂 10.9%(68.2kg)、
ゴム 5.9%(16.9kg)、鉛 1.2%(3.4kg)、銅 0.8%(2.3kg)、亜鉛 0.6%(1.7kg)、その他
1.4%(4kg)である。鉄は熱のかかる処や足回りに使用されている。樹脂は 31kg あるが、
大半は熱可塑性樹脂であり、エポキシなどの熱硬化性樹脂は電装部品程度である。アルミ
はエンジンに使われている。
②50cc 以下(ホンダ・DIO)
総重量 64.2kg 中、鉄 59.7%(38.3kg)、樹脂 16.0%(10.3kg)、アルミ 12.0%(7.7kg)、
ゴム 7.2%(4.6kg)、亜鉛 1.7%(1.1kg)、鉛 1.7%(1.1kg)、銅 0.3(0.2kg)、その他 1.4%
(0.9kg)である。樹脂 10.3kg のうちリサイクル可能な熱可塑性樹脂は 90%以上を占める。
250cc と比べると樹脂の重量は約 1/3 である。
ST1100
亜鉛
鉛
ゴム 1.2% 銅 0.6%
0.8%
5.9%
鉛
1.7%
その他
1.4%
ゴム
7.2%
樹脂
10.9%
銅 亜鉛
0.3% 1.7%
DIO
その他
1.4%
樹脂
16.0%
鉄
55.4%
鉄
59.7%
アルミ
23.8%
アルミ
12.0%
119
4) 自動二輪車のリサイクルシステム
4社で構築した自主的なリサイクルシステムでは、①引取り場所や処理・再資源化施設
も設置
②新規販売車両についてリサイクルマークをつける
た車は費用の徴収をしない
引き取る
③リサイクルマークがつい
④リサイクルマークのない車は稼動後7年をめどに逆有償で
⑤輸入業者が参入しやすい体制作りをあげている。
回収・処理については、(社)全国軽自動車協会連合会が中心に進める。全軽自協は使用
済み車両のマニフェストを発行・管理し、全国にある登録販売店が回収を行う。登録販売
店は、指定引取り場所に搬送し、処理・再資源化施設で処理される。指定引取り場所はス
トックヤードを持つ業者などを中心に全国 190 ヶ所を見込んでいる。また処理・再資源化
施設は全国 15 ヶ所が予定されている。
リサイクル費用は、ユーザー負担であり、販売価格に上乗せする前払い方式である。徴
収済み車両にはリサイクルマークが貼付される。新車以外の車は、稼動後7年(自動二輪
車の平均耐用年数を7年と定義)間までは廃棄する際に処理料を徴収する。この場合の処
理料の徴収は、直接行わず、郵便振り込みにより行う。また、ネットワークに参加しない
他のメーカーや輸入事業者の車は、処理料金を負担すれば処理できる。処理料金は 2004 年
4月以降に公表の予定となっている。処理料金のユーザー負担は、路上放置車増加が懸念
されるが、社会全体として取り組む姿勢こそが重要であろう。
今回の自主取り組みの中で、もう一つの大きな柱と言えるのが、環境負荷物質の削減で
ある。自動二輪車の場合、自動車よりも排出ガスは少なく、環境負荷は小さいと言えるが、
ホィールバランサーや燃料タンク、ベアリングなどに微量の化学物質が含まれる。シュレ
ッダー処理のためダストにこれら物質が含まれてしまうので、メーカー4社は削減目標を
設けた。具体的には鉛、水銀、6価クロム、カドニウムの4物質対策である。鉛は 06 年に
60g以下とし、他の3物質は将来使用禁止をめざす。現在の進捗をみると、鉛は当初目標
80gを4社が達成している。また、ホンダの1モデルがすでに 60g 以下を達成しており、
2006 年よりも早い時期に4社とも達成できる見通しとなっている。他の3物質では、カド
ニウムが銅線の接続部品で化合剤として使用、また6価クロムは、燃料タンクやベアリン
グの表面処理に使用されているが、いずれも代替を研究開発中である。
ヤマハの事例;ヤマハは二輪車のアルミ使用量を、現行よりも中・小型クラスで 15%、
スクーターで 30%増加させ、大型車並の 40%を目指す。アルミを増加させることで環境、
軽量化にプラスとなるとしている。また、リサイクル性の高い素材の技術開発に取り組み
02 年度は再生ポリプロピレン材を 11 車種に採用した。製品全体のリサイクル率を 04 年度
までに 95%を目指し、最終的には 2010 年に全車種 100%リサイクル可能製品とする。
120
3.鉄スクラップ多消費化の課題
(1)機械分野から発生する鉄スクラップの位置
自動車及び機械分野(産業機械、電気機械、家庭用事務用機械の計)から発生する加工
スクラップ(製品製造段階で発生する切り板、切り粉などのスクラップ)は、2001 年時点
495 万 t と推計され、加工スクラップの 77%を占める。また、老朽化して発生する老廃ス
クラップは、1,310 万 t(老廃屑の 50%・100%発生した場合の推計)と想定される。加工
スクラップについては、主体を成す分野であり、老廃スクラップでは建設部門と並ぶ大き
なウエイトを持っている。このうちリサイクル法との関係で、今回調査した電気機械(家
電含む)と自動車は、加工スクラップで 370 万t、老廃スクラップでは 730 万 t(うち家電
分 25 万 t)を占めると推定される。
加工スクラップ(2001年)
千t
2
次製品
建築
土木
容器
家事機
電気機械
産業機械
自動車
2
2001年)
老廃スクラップ(
造船
千t
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
次製品
建築
土木
容器
家事機
電気機械
産業機械
自動車
造船
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
-
出所;日本鉄源協会
(2)循環性不純元素(トランプエレメント)の問題
特に加工スクラップの 60%を占める新断スクラップは、主に自動車及び家電製造時を発
生源としている。高炉メーカーが新しい鉄源によって製造した鋼板の切り板、打ちぬき屑
であり、トランプエレメント面では懸念点は少ない。むしろ薄め材に使われている場合も
あるなど品質面では上級屑に類する。
一方、老廃スクラップでは、この2分野から発生した場合、素材は高炉メーカー製であ
っても、製品は民生向けを主体としていることから多種多様であり、構造的にはモーター
や付属品、複合材などの多い製品である特徴がある。従ってリサイクルの場合は素材単位
に溯った適正な再生品の選別が必要となる。特に自動車は今まで述べてきたように、ゴミ
こみでプレスする「全部利用」の新処置が実施されており、一度鋼に混入すると次の世代
に持ち越して循環するトランプエレメントの問題が懸念される。
1)鉄スクラップのトランプエレメント
鉄鋼製品を製造する段階で、製品の用途によりさまざまな元素が必要となるが、その中
で逆に悪影響をおよぼす元素も数種ある。特に現状の技術水準では精錬しても除去出来な
い元素でしかも鉄スクラップ中に含まれているものに Cu と Sn がある。この元素は、Cu 単
121
身でもわざわいするが、Sn が含まれるとさらに助長される。熱間加工性を劣化させる(曲
げ加工時に亀裂がはいる)など製造後の鋼材品質に影響するだけでなく、鉄鋼メーカー内
での製造、加工工程でも有害であり、製品の表面品質にも悪影響を及ぼす。Cu、Sn 以外で
は、Pb(鉛)
、Bi(ビスマス)は熱間加工性、深絞り性では Cu、Sn、Ni、Cr、As(ヒ素)が、
Sn、As は冷間加工に、Sn、As、Sb は切欠靭性を悪くする。概ね硬度を上昇させるため一定
値以下に抑えることが鉄鋼生産の現場で行われている。
そこで、JIS規格に指定されていない品種もあるが、各鉄鋼生産工場では管理目標を
もって成分の許容限界をコントロールし、管理している。その例を下表に示す。うち電炉
メーカーの主力製品である形鋼と棒鋼は Cu 成分についてJISに規定がないが、形鋼は
0.3%以下、棒鋼は 0.4%以下で自主管理されている。
122
2)鉄スクラップに含まれる不純成分の現状と課題
市中で流通している鉄スクラップの成分分析に関し、定期的な調査は行われておらず、過
去における資料も少ない。近年では東京大学工学部が 1996 年に調査した記録が新しい。サ
ンプル数 50 件のうち棒鋼屑 Cu は 0.2∼0.46 の間にばらつき、形鋼屑の場合は 0.1∼0.4 で
あり、平均値は Cu0.297 となっている。㈱日鉄技術情報センターが外部の委託を受けてH
15 年9∼10 月に3地区主要業者に調査した結果では、ヘビー屑H2 クラスの形鋼屑 Cu 値は
関東 0.31∼0.32%、中部 0.19∼0.34%、関西 0.24∼0.39%であり、棒鋼屑の場合、関東
0.15∼0.37%、中部 0.29∼0.34%、関西 0.28%であった。これらの調査結果からみて、形
鋼屑は低いものから高いものへばらつきが大きいが、棒鋼屑は 0.4 付近に多く、低い値が
形鋼よりも高い。また過去7年間あまり変わっていないなどが指摘される。
特に形鋼を製造する場合の管理目標は前表のように Cu0.3%以下であることから、棒鋼屑
のみを使用する場合はバージンスクラップによる薄め作業(希釈)を必要とする(棒鋼屑
では形鋼はできない)事態であると言える。
鉄スクラップ中に占めるCu濃度(%)
形鋼屑
棒鋼屑
平均
1996.9
2003.9 JATIS
東京大学
関東
中部
関西
0.1∼0.4 0.31∼0.32 0.19∼0.34 0.13∼0.39
0.2∼0.46 0.15∼0.37 0.29∼0.34
0.28
0.297
0.287
0.29
0.27
近年ではこのように回収される鉄スクラップ本体の Cu 濃度が、形鋼の生産さえ希釈を必
要とする段階にあるが、事前選別を怠るとこれにさらに Cu 濃度の高い鋼による棒鋼が出来
ることになる。これを循環濃化と指摘し長期的にみると不純成分の高い鉄スクラップが多
くなると懸念されている。形鋼は Cu0.3%に希釈配合によってコントロールされても、棒鋼
は 0.4%以下なのでコントロールされずに生産されがちであり、従って将来発生する棒鋼屑
は限りなく 0.4%に近づくか超えるものも現れることになる。これを食い止めるには、少な
くとも新たに加わる原因を無くすことである。シュレッダーでは選別機能を再認識し、全
部廃車利用ではハーネスの除去基準を設けるなど、よりよい製鋼原料を提供する意識の確
保とその円滑な運行が鉄スクラップリサイクル関係者に求められる。
鉄スクラップ中
分類
付着不純物
表層不純物
合金系不純物
不純物の存在形態
不純物の存在形態
ある程度の質量をもつ非鉄金属
の単体が鉄と共存するもの
鉄の表面に薄い非鉄金属層とし
て共存するもの
鉄鋼製品の性能を上げるために
合金成分として意図的に鉄鋼中
に添加された元素に基づくもの
123
具体例(主な金属)
モータ類(鉄と銅)
自動車エンジン・ブロック(鉄、アルミ)
亜鉛めっき鋼板(鉄と亜鉛)
錫メッキ鋼板(鉄と錫)
耐候性鋼板(鉄と銅)
ステンレス(鉄と Ni、Cr、モリブ
デン)
第3章 鉄スクラップ輸出の現状と課題
1.積み出し港の現状と課題
1)全国に展開する積み出し港と問題点
鉄スクラップ輸出の積み出し港は、日本が鉄スクラップ輸出に転じる 1994 年度(平
成6年)当時、関東が主体であった。その後、国際商品としての評価が定着し、一方で
国内需要の低迷を背景に販路を海外に求める動きが加速する。今や、積み出し港は全国
展開となっている。2003 年2∼3月に国内3地区炉前価格は国際相場に牽引されて
17,000 円/t台に上昇するが、輸出積み出し地域を 2003 年4−6月の日本鉄源協会流
通調査でみると、関東 59 万 t(全体の 45.7%)、東海 18 万t(13.8%)
、近畿 15 万 t
(11.2%)
、東北 10 万t(7.7%)
、九州8万t(6.5%)
、北陸7万 t(5.9%)、中四国
7万t(5.6%)、北海道5万t(3.7%)となっている。
税関地域別鉄スクラップ輸出
北海道
1994
36.8
4.8
2002
344.9
6.1
2003.1-3
63.6
5.8
2003.4-6
48
3.7
出所;日本鉄源協会
東北
43.8
5.7
380.4
6.7
86.7
8.0
99.6
7.7
北陸
35.3
4.6
289.8
5.1
44.8
4.1
76.5
5.9
東海
66.3
8.6
874.9
15.5
179.2
16.5
179
13.8
近畿
59.2
7.7
532.6
9.4
97.6
9.0
145.5
11.2
中四国
21.9
2.9
445.7
7.9
60.1
5.5
73
5.6
単位1000t
、%
九州
48
6.3
425.9
7.5
73.6
6.8
84.2
6.5
計
768
100.0
5645.7
100.0
1087.9
100.0
1300.5
100.0
2003.4-6月・積み出し地域別輸出量
595
179
100
77
146
73
84
九州
中四国
近畿
東海
北陸
関東
東北
北海道
千t
700
600
500
400
300
200
48
100
0
関東
456.7
59.5
2351.4
41.6
482.7
44.4
594.6
45.7
しかし、このような全国展開にも係わらず、最大積み出し港の東京港を始め、ほとん
どの港が専用岸壁を確保できていない。
専用岸壁がないため、後背地(ストックヤード)を持てず、従って積み込みはトラッ
ク to 船であり、車に積んだまま数珠繋ぎになって埠頭で待機することになる。最大積
載地、東京港・13 号地は 10,000tクラスが可能だが、後背地の確保が出来ないため、
5.000tクラスに留まり、この配船規模が国内最大となっている。小型船では、物理的
124
にアジア近隣国に限られてしまう。かつ相手国側にとって複数回輸送となってしまうた
めコスト高となる。
2)東京湾と東京港の果たす位置
2002 年時点の関東地区輸出量 235 万 t のうち 225 万t(96%)が東京湾から積み出
された。東京湾は全国の 40%前後を占めており位置は大きい。さらに、中四国、近畿、
九州地区への西送り量も 80∼90 万 t あるので、東京湾を使用した海上輸送量は、2002
年間に外国向け 225 万 t、国内向け 80∼90 万t、計 305∼315 万 t となる。このうち
港別は、東京港 87 万 t、川崎 55 万 t、千葉 50 万 t、横浜 21 万 t、木更津 18 万 t であ
り、東京港が一番多い。そこで東京港の輸出量推移をみると 95 年の3万 t から 2002
年の 87 万 t へ、この7年間で飛躍的に増大している。しかし、日本全体の鉄スクラッ
プ輸出の動きと対比させると、東京港が全体の動きの基となっていることが分かる。
東京港における鉄スクラップ輸出積み出し量
1,200,000
輸出
輸入
800,000
600,000
400,000
200,000
0
1990
1995
2000
Year
千t
鉄スクラップ輸出入推移(日本全体)
8,000
7,000
6,000
輸入
輸出
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
出所;日本鉄源協会
125
2001
2002
99
2000
97
98
95
96
93
94
91
92
90
88
89
87
85
86
鉄スクラップ量, m/1000t
1,000,000
東京港における鉄スクラップ輸出入量推移
unit: t
輸入
輸出
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
10,227
35,825
355,006
113,584
29,627
33,731
146,357
241,600
451,849
506,305
333,430
982,532
873,940
4,413
5,169
7,480
12,926
13,256
15,949
12,057
15,858
8,590
6,625
8,530
6,761
13,446
出所;
税関地別通関統計
3)東京都の需給展望
それでは東京湾からの海上輸送はいつまで、どの程度続くのだろうか。この設問の前
提には、搬送すべき海外や国内需要(西送り量)が何時まで、どの程度あるかに係わる
が、現在の需給を前提とした時に 2010 年でどれほど需給ギャップとなるかという視点
で試算した。
① 東京都における鉄スクラップ需給の現状
供給量を加工スクラップと老廃スクラップに分けて推計した。加工スクラップは日本
鉄源協会・流通調査による関東地区・加工スクラップ流通量(2002 年の場合、184 万 t)
をベースとし、工業統計における東京都の関東地区における製造品出荷額シェアー(東
京都製造品出荷額/関東地区製造品出荷額)により算出した。2002 年では関東地区加
工スクラップ流通量 184 万 t のうち東京都は 34 万 t(18.6%)である。また、老廃ス
クラップは、地域別鉄鋼蓄積量を推計するにあたって使用した県民所得統計のうち、東
京都のGDP需要項目別シェアーにより、関東地区蓄積量を按分して東京都の鉄鋼蓄積
量を推計。老廃スクラップ回収量は全国の鉄鋼蓄積量に対する平均回収率を使用した。
2002 年末の累計蓄積量は全国 12 億 5,000 万tに対し、東京都は 1 億 7,000 万t、老廃
スクラップ回収量は 398 万tである。この他に輸入が 1.3 万tあり、加工スクラップを
加えた供給計は 434 万 t となる。その時系列推移を次表に示す。加工スクラップは日産・
村山工場閉鎖に代表されるように、製造業の移転などから減少傾向であり、1990 年比
では約半減している。一方、老廃スクラップは緩やかな増加方向にあり、90 年に比べ
2002 年は 46 万 t 増となっている。
これに対して域内需要は、電炉メーカー2社(大三製鋼、千代田鋼鉄)で 40 万t程
度であり輸出 87 万t(前出)を加えた総需要は 127 万tであるため、総供給量 434 万
tとのギャップ(434−127)は 307 万tとなる。すなわち年間 300 万t以上が東京都
126
から輸出以外に搬出されていることになる。1990 年からの変動を考察すると、供給で
は加工屑減少分を老廃屑が補いトータルで 20 万 t 増加したが、域内需要は逆に 10 万 t
減少。国内移送も 55 万 t 減少し、その分輸出が増加した形となっている。域内需要の
減少は、電炉生産規模の低下によるものである。また、国内移送の減少も西送り対象地
域における電炉メーカーの生産量の変化に対応したものと想定される。
関東地区と東京都の市中スクラップ回収量(
推計)
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
単位1000t
関東
東京
加工スクラップ老廃スクラップ関東合計 加工スクラップ老廃スクラップ東京合計
2,939
8,487
11,426
613
3,516
4,130
2,553
7,956
10,509
521
3,291
3,812
2,550
7,841
10,391
517
3,236
3,753
1,908
7,685
9,594
380
3,164
3,544
2,001
8,062
10,063
397
3,310
3,707
1,940
8,143
10,083
382
3,334
3,717
1,936
8,717
10,652
375
3,561
3,937
2,136
9,189
11,324
409
3,750
4,160
1,775
8,709
10,484
350
3,552
3,902
1,887
8,966
10,853
368
3,654
4,022
2,171
9,094
11,265
412
3,760
4,171
1,670
9,223
10,894
311
3,868
4,178
1,840
9,355
11,195
342
3,979
4,321
出所;関東=日本鉄源協会流通調査・出荷量、東京=日本鉄リサイクル工業会推計
東京都・
鉄スクラップ需給(
推計)
1000t
供給 (a)
需要 (b)
加工スクラップ 老廃スクラップ
輸入
計
消費
国内移送 (a)-(b)
輸出
計
1990
613
3,516
4
4,134
513
10
524
3,610
1991
521
3,291
5
3,818
479
36
515
3,302
1992
517
3,236
7
3,761
392
355
747
3,014
1993
380
3,164
13
3,557
349
114
463
3,094
1994
397
3,310
13
3,720
384
30
413
3,307
1995
382
3,334
16
3,733
385
34
419
3,314
1996
375
3,561
12
3,949
383
146
529
3,420
1997
409
3,750
16
4,176
376
242
618
3,558
1998
350
3,552
9
3,911
356
452
808
3,103
1999
368
3,654
7
4,029
355
506
861
3,167
2000
412
3,760
9
4,180
370
333
703
3,477
2001
311
3,868
7
4,185
379
983
1,362
2,824
342
3,979
13
出所;日本鉄リサイクル工業会・推計
4,335
398
874
1,272
3,063
2002
127
②供給の展望
老廃スクラップ回収量の展望を、東京都の鉄鋼蓄積量動向から推計した。2002 年時
点で1億 7,300 万 t の鉄鋼蓄積量が東京都に存在すると見られるが、仮に直近3年の平
均増加量年間 450 万 t で 2010 年まで推移するとすれば、2010 年の推定鉄鋼蓄積量は
2億 900 万 t(2002 年比 3,600 万 t 増)となる。この時の老廃スクラップ回収率を現
行の 2.3%とみると、2010 年の老廃スクラップ回収量は 481 万 t となり、2002 年比 83
万 t 増加が見込まれる。なお、この推計の前提は東京都の経済活動が今後も過去3年と
同様に展開すると見ている。
東京都・
蓄積量による老廃屑回収量の見通し
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
累計蓄積量老廃屑
128,047
3,516
133,496
3,291
137,447
3,236
140,796
3,164
144,399
3,310
148,211
3,334
152,039
3,561
155,501
3,750
157,097
3,552
159,226
3,654
163,480
3,760
168,170
3,868
173,000
3,979
単位1000t
、%
増分
老廃屑
蓄積量
回収率
2.75
5,448
2.47
3,951
2.35
3,349
2.25
3,603
2.29
3,812
2.25
3,828
2.34
3,462
2.41
1,596
2.26
2,129
2.30
4,254
2.30
4,690
2.30
4,830
2.30
+4,500
2010
増加量
209,000
36,000
4,810
831
2.3
出所;日本鉄リサイクル工業会・推計
一方、加工スクラップは、都内に存在する製造業の動静にかかわるが、増加トレンド
は考えにくく、ここではバブル崩壊後 93 年∼2000 年間 40 万 t 内外で推移してきたあ
と 2001 年 31 万 t、2002 年 34 万 t に減少してきている動きの延長に 2010 年があると
いうシナリオを描いた。すなわち今後 2010 年に至る間、もう一段の減少局面があると
の見方である。2001 年の不況時 31 万 t を基準にみると、2002 年 34 万 t との平均 33
万 t から5万 t 程度の減少はありそうであり、2010 年の加工スクラップ回収量を 28 万
t と見た。
以上から 2010 年は老廃スクラップ 481 万 t と加工スクラップ 28 万 t、計 509 万 t
となり 2002 年比 77 万 t 増加と見込まれる。現行の国内需要がそのままで推移すると
仮定すれば、約 80 万 t が供給余りとなると仮定される。
128
4)東京都港湾局港湾整備部への申請事項と進捗状況
①申請内容
以上の問題意識を踏まえ日本鉄リサイクル工業会は東京都専用埠頭検討委員会を設
置して、東京都の港湾管理者である港湾局港湾整備部計画課に申請書を提出し、現在も
定期的な協議を続けている。現時点で申請している内容は以下の通りである。
69,600 ㎡
・総面積
12m
・水深
110,000 トン MAX
・在庫数量
・クレーン能力
①クレーン A
28,000mm
最大作業半径
55.0×9.0txm
最大吊上げ能力
28m
ブーム長さ
30∼75 度
ブーム起伏角度
バケット作業時ブーム長さ 28m
作業速度
1 時間当たりの作業量
630 トン
1 日当たりの作業量 5,000 トン
②クレーン B
最大つかみ質量 2,400kg
19,000mm
最大作業高さ
20,000mm
最大作業半径
キャブ床面高さ 6,270mm
4,740mm
後端半径
48 ㎡
・事務所
24 ㎡
・秤量所
・最
最大受入れ船型
27,860.00MTS
DWT ON 9.415M
G/B 38,239.00 CBM/37,313.00CBM
5/5 HO/HA
4×30.0 MTS CRANES
LOA/BEAM 176.62/26.00 M
GT/NT 17,075/9,896
129
提出している後背地のレイアウト。4つの大きな円はスクラップ置場を表す。
鉄スクラップ輸出専用埠頭(単位:m)
1m=0.075cm
平成 14 年 12 月 26 日
176.62
水深 12
クレーン A
20
28
20
10,000 トン
20
クレーン B
10
10
10
10
52
25,000 トン
25,000 トン
10
290
クレーン B
25,000 トン
25,000 トン
20
240
秤量所
130
事務所
5)リサイクルポートの推進
循環型社会に向けてさまざまな取り組みがなされている中、国土交通省港湾局では、港湾
を「静脈物流システム」の構築のため、大量輸送に適した海上輸送を扱う地点ととらえ、
2003 年4月までに全国 18 港を指定してその推進を図ることを示した。港湾はリサイクル施
設の立地に必要な用地確保が比較的容易であること、ヤード、岸壁等の物流基盤がストッ
クされていること、製鉄、セメント製造業等のリサイクル産業として期待される産業が立
地していることなどが企画の背景にある。これらの特性を最大限に活用し、港湾での静脈
物流拠点の形成を進めるとともに、拠点間を海上輸送により結ぶ広域的なネットワークの
形成を図っている。
18 港指定の要件は、
① 地理的・経済的に地域ブロックにおけるリサイクル拠点としてのポテンシャルがあるこ
と
② 静脈物流に係わる港湾取扱い貨物量が一定程度見込まれること
③ リサイクル処理施設が既に立地している、または立地が確実に見込まれること
④ 港湾管理上、港湾における廃棄物の取り扱いが円滑に行えること
⑤ 地域との調整が整っていること
としている。18 指定港と主な循環資源を下図に示す。鉄くずは、18 港のうち表上では4港
(石狩湾新、酒田、東京、中城湾)で散見されるが、他では扱わないということではない。
指定リサイクルポートにおいて現在進められている取り組みは、
① 循環資源の取り扱いに関するガイドラインの作成;循環資源取扱い手続きの効率化
② 官民連携の推進;リサイクルポートに指定されている港湾管理者や地方自治体及び鉄鋼、
セメント、物流、リサイクル企業など 185 団体・企業が参加する「リサイクルポート推
進協議会」が 2003 年4月設立された。セミナーの企画・運営、広報活動、部会活動に
分かれ総合的な取り組みを推進する。
③
静脈物流施設の整備;既存施設の有効活用を図りつつ、機能を強化する。
④
技術開発の推進;静脈物流システムの事業化にあたって、障害となっている技術的
な課題の解決に向けた取り組みを行う。
循環資源は、鉄スクラップに代表されるようにグローバル化の方向にあり、日本はアジ
ア抜きでは成り立たない状況が展開されつつある。しかしながら、積み出し港の分散(鉄
くず輸出港 77 港、古紙 42 港、プラスチック 52 港など)、比較的小型な船舶による小口輸
送(例えばアメリカの場合3万トンが配船)、ヤードや保管施設、荷役機械の不足などによ
り国際競争力低下が予想されている。リサイクルポート構想は、このような懸案点を打開
するものであり、また、産業立地の観点からも海上輸送を活用することにより、臨海部に
おける産業の再生や活性化が図れる点にも繋がろう。
131
リサイクルポート 18 指定港
出所;日本港湾協会「港湾」2003 年 11 月
鉄スクラップの世界流通図
出所;日本鉄源協会「鉄源年報」
132
6)リサイクルポート推進協議会・「中国・九州ブロック交流会」
国土交通省港湾局と民間事業者によって進められているリサイクルポート推進協議会で
は地域ごとの個別的な検討を助長する意味から「ブロック交流会」を企画、第 1 回交流会
が北九州市開催され、港湾・物流関係者・リサイクル事業者など約 80 名が参加した。当日
はリサイクルポートとして指定されている4港(北九州港、三池港、徳山下松港、宇部港)
の概要と取り組み状況が紹介されたので、事例としてまとめた。また、翌日は北九州エコ
タウンの現地視察があった(日時:2004 年 2 月 9 日(月) 場所:リーガロイヤルホテル小倉)。
①九州港
北九州エコタウンから見る環境ビジネス;北九州市環境局環境産業政策室室長 垣迫裕俊
環境ビジネスとは「環境に与える影響を計測し、予防し、削減し、最小化し、改善する
製品とサービスを提供する」活動である。具体的には大気汚染防止・水質汚濁防止・土壌
汚染浄化などの「公害防止」、リサイクル、リユース・リビルト、焼却炉、有害廃棄物処理
などの「廃棄物処理・再資源化」、生分解性プラスチック、鉛の無いハンダなどの「エコマ
テリアル」、省エネ、屋上緑化、シックハウス対策などの「環境調和型施設」、太陽光発電
などの「新エネルギー・省エネルギー」、「自然環境の保全」が挙げられる。ソフト系では
コンサルティングや情報提供、エコツアーなどがある。総じて環境ビジネスとは再生可能
なエネルギーを用いたり、環境負荷が低いものを原料に使ったり、使用後の後始末が簡単
なものを使う、簡単な設計をすることと言える。
ものづくりの動脈産業は材料の選択が可能であり、何を製品化すべきか決定できる反面、
廃棄物の静脈産業では材料を選べない。社会のシステムに一度、組み込まれれば途中で止
めることができない特性がある。最近は動脈と静脈の双方が繋がっているケースもある。
例えばコークス炉に原料として廃プラを入れ、コークス、ガス、油などの製品を生成すれ
ば、入口は静脈でも出口は動脈になる。いわば「静脈と動脈の融合」であり、この傾向は
今後増えていくと思われる。
北九州市では資源循環型経済社会を創るため 1997 年に若松区、響灘地区で「北九州エコ
タウン事業」を展開した。エコタウンは生ごみ、焼却灰、汚染土壌などのリサイクルを研
究する「実証研究エリア」とペットボトル、自動車、OA、家電、蛍光管などリサイクル事
業を行なう「総合環境コンビナート」から成る。現在、研究施設数 16、事業化施設数 21
ある。北九州エコタウンの海上輸送は輸送量全体の 1 割以下しかない。その要因は取扱量
がまだ少量であること、コスト面で厳しいこと、港湾施設が未整備なことが挙げられる。
北九州からの海外輸出品としては「プラスチックくず」、「古紙」の中国への輸出が急激
に伸びている。エコタウン内の古紙リサイクル工場もほとんど動いていない状況である。
<質問>
・海上輸送が輸送量全体の 1 割以下であるのになぜ、リサイクルポート構想に着手してい
るのか
133
・リサイクルポート指定港となった場合、民間事業者にとってどのようなメリットがある
のか
・県外からの廃棄物を受け入れないと環境産業化は難しいと思うが、大都市圏からの静脈
物流に対しての制限はあるのか。
<回答>
・リサイクルポートが必要となる循環資源は「建設廃材」である。かさばるし、広域移動
もあるのでトラック輸送は無理。また九州は離島が多いので港に横付けしてリサイクル工
場へ運搬した方が良い。他にはマスが大きく、バラものは港のほうが良いと考える。
現在は 1 割以下であっても、北九州リサイクルポートが整備されれば循環資源取扱量は
増えると思う。
・リサイクルポートにおける積替保管施設など拠点施設整備には財政投融資制度を 16 年度
より実行。
・エコタウン 21 事業所のうち、ほとんどが民間事業である。当然スケールメリットがいる
し、量が集まらなければならない。ある事業を成り立たせるために、これくらいの量が必
要というのであれば県外から集めても構わない。ただし環境対策上の検査、許可、指導は
きちんと行なう。
北九州港のリサイクルポートへの取り組み;北九州市港湾局企画部計画課課長
吉永髙敏
<北九州港>;
北九州港は 1,000 ㎞圏内の上海、東京の中心にあり、日本海側にも太平洋側
にも出やすい地の利をもっている。門司港、小倉港、胴海港が 1964 年に合併してできた港
である。公共岸壁 166 バース、専用岸壁 102 バースある。貨物取扱量は年平均 9000 万ト
ンで推移し、コンテナ貨物は増加傾向、コンテナ航路数は中国、韓国中心に過去最高の月
間 206 便(2004 年 1 月)出ている。
<ひびきコンテナターミナル>;ひびきコンテナターミナルは整備・運営に初めて PFI を導入、
公共側は岸壁整備、民間側はガントリークレーンなど港湾施設を整備した。世界 10 カ国 15
港でターミナルを運営しているシンガポールの PSA 社も協力。2004 年度内に供用開始予定。
<北九州市国際物流特区>;
国の第 1 号指定を受け、国による規制緩和と市独自の制度をつ
くり「港湾の国際競争力の強化」、「産業空洞化の防止」を図る。規制緩和項目の一つに通
関、検疫 24 時間化がある。時間外の通関でも 2 分の 1 の手数料で済むというものだが、2004
年度から全体が 2 分の 1 になることから特区によれば 4 分の 1 の手数料で済むことになる。
<日韓高速旅客船ドルフィン号>;2003 年 4 月より北九州∼釜山間を 3 時間半で結ぶ高速旅
客船が就航。定員 420 人、540 トン船。
<新北九州空港>;
現在の北九州空港は滑走路 2,000m弱と短い。新門司沖、苅田沖に滑走
路 2,500m、面積 373ha の新北九州空港を整備。2005 年 10 月 1 日開港予定。
<響灘地区発電事業>;
響灘地区に 10 基の風車を設置。総発電量約 3,500 万kW、10,000
世帯分に相当。既に 2003 年 3 月から運転。
134
<新門司地区 動物検疫所>;博多にあった検疫所が新門司へ移転。オーストラリアから生
後 2∼3 ヶ月の子牛を輸入、検疫し日本各地へ輸送する。2004 年度末供用開始。
<新門司地区 トヨタ輸送物流センター>;博多港で扱っていたトヨタ自動車九州の完成車、部
品、ダイハツ大分工場の完成車を扱う。輸出用自動車は愛知県へ送る。2004 年度末供用開
始予定。50 万台/年。
<リサイクルポート>;北九州港は 2002 年 5 月にリサイクルポートに一次指定され、翌年に
場所を響灘地区のエコタウン内に位置づけた。水深 5.5m、延長 100m、前面に 15m の桟橋
を建設、1,500∼2,000 トン船による輸送、2006 年供用開始予定。背後にエコタウン内リサ
イクル施設が立地していることから低コストによる循環資源の海上輸送が可能となる。
2003 年 8 月、官民共同のリサイクルポート研究会を発足、北九州港における課題などに取
り組む。同年 11 月 30 日、12 月 24 日には建設混合廃棄物の海上輸送実証実験を行なった。
千葉県内の岸壁から 1,500 トン/回を輸送した。課題は船倉からダンプへの直積みの際、
廃棄物のこぼれ落ちや飛散である。実験ではこぼれ防止マットや飛散防止ネット、散水車
や収拾作業員を配置した。飛散・こぼれ防止対策、積替保管機能、雨天時の浸出水対策の
検討が必要。実験結果はリサイクルポート専用岸壁(桟橋)の構造に反映。「北九州リサイ
クルポート取扱基準」も策定。2004 年度内に廃プラを用いて船積みから荷揚げ地の積み込
みまでの実証実験を行なう。
②三池港;福岡県土木部港湾課港湾係長 溜池博文
三池港は 1908 年に三井鉱山の専用バースとして開港、三池炭鉱の石炭積出し港として栄
えた。1951 年に重要港湾に指定された。1997 年 3 月の閉山を機に公共バースによる一般
貨物荷役が主流になった。公共バースの水深 10.7m。2002 年の取扱実績は約 244 万トン、
品目別取扱貨物量は石炭 35%、石油製品 22%、化学薬品 16%である。取扱いリサイクル
資源は鋼材、鉄スクラップ、製鋼煙灰、スラッジ、フライアッシュなど。量が少ないこと
から品目を混在して取扱っているが、将来は専用バース化したい。
三池港は内港北・内港南・船渠・四山地区に分けられる。船渠地区には、干満差が激し
いことから明治時代にドッグを設置、水位に関わらずに荷下ろしが可能。課題は四山地区
の狭い航路とその水深である。広い航路と水深 10m を確保したい。内港地区では臨港道路、
沿岸道路を現在、整備中である。近隣には RDF 発電所、実証プラント、環境リサイクル産
業団地を備えた「大牟田エコタウン」がある。リサイクルポート三池港の果たす役割は益々、
期待される。
③徳山下松港・宇部港;山口県土木建築部港湾課課長 武内謙治
<徳山下松港>;
背後に臨海工業地帯があり、工業港として 1965 年に特定重要港湾の指定
を受けた。取扱貨物量は 56,475 千トン(2001 年)で山口県内ではトップである。徳山地区に
はリサイクル施設として焼却灰のセメント原料化施設、ペットボトル再生化施設や、全国
135
初となる廃プラのセメント燃料化施設を有す。コンテナターミナルにはガントリークレー
ン 2 基設置し化学工業品、化学薬品を扱っている。新南陽地区には汚泥、廃タイヤ、石炭
灰のセメント原燃料化施設や一廃 RDF 化施設がある。
<宇部港>;
石炭積出し港として栄え、1951 年に重要港湾の指定を受けた。その後、産出さ
れる石灰石によるセメント製造業を中心となり、石油化学、化学工業などの臨海型企業が
進出し工業港として発展した。取扱貨物量は 30,565 千トン(2001 年)で山口県内で第 2 位の
量である。リサイクル施設としては廃プラのガス化施設、鉄くずの製品化施設、セメント
原燃料化施設、ABS リサイクル施設がある。
東見初埠頭には 2008 年の供用開始を目指し、
一廃・産廃の埋立処分場整備を進めている。
他に外貿中心の芝中地区、バルク貨物中心の沖の山地区がある。隣接する小野田港には石
炭灰から人工砂を製造する施設があり、また廃自動車リサイクル施設(処理能力:月間
13,000 台)も新設中である。
山口県では「山口県広域静脈物流システム構築」に向け、調査・検討を行なう産・学・
公 34 名による委員会を発足させた。県内外の発生・排出の実態把握、県内リサイクル関連
施設のニーズを把握し、循環資源重点品目の絞込みを行なっている。
<山口県の港湾について>;山口県の貨物輸送機関分担率では 45%を海運に依存している。
特定重要港湾が下関、徳山下松の 2 港、重要港湾が小野田港、宇部港、三田尻中関、岩国
の 4 港、地方港湾 23 港ある。海外との貿易も盛んで 2001 年度は約 4000 万トンの貿易貨
物があった。アジア 32%、中近東 28%、オセアニア 20%、北アメリカが 8%である。
④リサイクルポート施策について;国土交通省港湾局環境整備計画室専門官 三島 理
国土交通省ではリサイクルポートとして 18 港を指定した。この 18 港が今後、プロジェ
クトを推進していくためにはどのような施策が必要か国交省とリサイクルポート推進協議
会で検討していきたい。
<港湾利用円滑化のためのルールの明確化>;各港湾ごとの港湾管理条例などの取り決めが
異なっている、出す側と受け入れ側で異なっていて取扱いが困難になっている現状から、
各リサイクルポートにおける運用規範となる「ガイドライン」を策定したい。
環境省所管の廃棄物処理法の解釈が各県や市によって異なっている。規制が「厳しい」
という声を聞くが具体的内容については理解していない。事例があれば連絡いただき、意
見として協議会にて提出していきたい。
<リサイクル施設の立地の促進>;各リサイクルポートの特徴、施設などの情報が会員へ届
いていない現状がある。ブロック交流会を通じての公開や、「リサイクルポート要覧」を作
成してホームページなどを通じて配布したい。
<静脈物流施設の整備の推進>;
リサイクル専用岸壁、背後ヤード、臨港道路、積替・保管
施設における排水溝や防護柵などについて整備を推進する。
積替・保管施設等のリサイクルポートにおける拠点施設整備については財政投融資(融資
136
比率 40%、政策金利Ⅱ)を 2004 年度より実施する。
<産業副産物・建設副産物の利用の推進>;公共工事で活用が期待される循環資源(残土、
浚渫土、土壌など)に関し、どの場所で入手できるかといった発生者と需要者を結ぶ情報
をホームページなど通じて提供したい。
<静脈物流円滑化のための技術開発の促進>;コスト問題への対応として輸送効率向上に資
する技術開発を促進したい。電子タグなどの輸送技術、輸送容器などの梱包技術、前面海
域への荷こぼれ防止などの荷役技術
<官民パートナーシップ>;リサイクルポート推進のためには国土交通省、港湾管理者、市町
村、リサイクル事業者など様々な方々との連携が必須である。今後も協力をお願いしたい
との要請があった。
7)三河港自動車港湾シンポジウム
開催日;2004 年 3 月 2 日
ホテルアソシア豊橋
講演「循環型社会に向けてーリサイクルポートの形成ー」
国土交通省港湾局環境整備計画室長
牛嶋龍一郎
「自動車リサイクル法制定の影響と港湾に求められる役割」
「神戸港の紹介」
日産自動車リサイクル推進室
東畑
透
新産業創造研究機構
水上祐之
パネルディスカッシヨン「三河港リサイクルポートの展望」
コーディネーター
飯尾
歩
トピー工業豊橋製造所
中村
毅
愛知県三河港務所
野澤重明
上記 3 名に加え
パネリスト
参加者
紅久商店
中日新聞論説委員
三浦社長、専務取締役
日本鉄リサイクル工業会
本部・土井
鼎
港湾の展望
1.輸出自動車金額 5 年連続日本 1、輸入自動車金額・台数とも 10 年連続日本 1 の実績を
誇る。
2.現状に不満があるとは思わないが、中部地区での万博開催、中部空港開港を控えリサイ
クルまでを含む自動車港湾機能を全国的に PR することに重点があるように思う。
3.
今回のシンポジウムも国際自動車コンプレックス推進協議会(会長豊橋市長)主催であ
り、コンプレックス計画の一環としての自動車リサイクルセンターを提案。
4.したがって、自動車リサイクル法とリサイクルポートの組み合わせに興味あり、神戸港
を理想のモデルとしている。
137
助言
①
自動車リサイクル法とリサイクルポートを無理に結びつける必要はない。結びつける
となると自動車解体となるが、豊橋には鉄スクラップの需要家としてのトピー工業、系列
のシュレッダー業者明海リサイクルがあり、解体自動車は上記のいずれかに納入されれば
リサイクルは終結して海上輸送は全く必要ない。なぜ貴重な臨海地域を自動車解体ヤード
に使用するのか。
②
下記のトピー工業の発言からすれば、神戸港式のシュレッダーレス工程はトピー工業
には向かない。シュレッダー材としての廃自動車を海上輸送によって全国から集荷するこ
とを考えるべき。揚げ荷役、解体処理はシュレッダー工場への至近距離とすべき。ただし、
明海リサイクルの合意があってのこと
③
トピー工業では、A プレスのトランプエレメント、銅(Cu)含有量を 0.5%と想定して、
160 ㌧の電気炉操業で A プレス使用量は 1-2 ㌧にしかならない。原料としてはシュレッダ
ー・スクラップに依存する。トピー工業の役割は、高熱利用によって自動車リサイクル法
28 条に適合した ASR の再資源化の実現にありと発言した。
④
日産自動車東畑氏の発言にもあったとうり、全国的に見て中部地区は ASR 処理設備が
最も少ない。NSC 名古屋が ASR 処理施設を計画中と聞くが、過剰設備とならない範囲での
実効性は高いとみる。他社、他地域の ASR を海送品として荷受けできるならば効果的であ
ろう。
提言
(1)
経済発展の著しい大名古屋圏に位置する重要港として、将来必ずオーバー・フローす
るであろう市中老廃スクラップの輸出積み出し港を目指すべき。ただし地元需要家である
トピー工業との相互理解が必要となる。市中老廃スクラップのうち廃自動車の占める重量
割合は 10%以下、廃家電は 1%以下であるから、その他の 90%を含めて考えないと鉄スク
ラップのリサイクルは成り立たない。
(2)
現在、日本からの鉄スクラップ輸出は最大船型 5,000 ㌧でおこなっている。一方、米
国西海岸のシッパーは 30,000-40,000 ㌧級船を用船する。運賃比較すれば、韓国でトントン、
中国、台湾でやや日本不利となっている。韓国、台湾は経済成長が著しく 2010 年以降は、
鉄スクラップの自給体制ができると見られる。それ以降は中国、ASEAN,インドにマーケ
ットを求めるとなると、最低 10,000 ㌧級でないと勝負にならない。
(3)
東京港 13 号地で実行している 3-5,000 ㌧級船(水深 7.5m)をこなして、徐々に 10,000
㌧級船(水深 10m)の受け入れ態勢を準備する。10,000 ㌧級以上ともなればトラックから
の積み込みではなく、鉄スクラップ専用埠頭でバックヤードから直接本船に積み込むこと
が必要となる。積み込みスピードも 1 船 3 日程度を限度とする。
(4)
鉄スクラップは製品として出荷される限り有価物であり、反対に堆積させてしまうと
ゴミの山となってしまう。アジアからの右上がりの需要が期待できることは、適正な対策
138
さえあれば、鉄スクラップを廃棄物とせずに循環させることになる。リサイクルポート三
河港としては、上記の船済み条件を備えた公共埠頭の計画が望ましい。
8)石狩湾新港説明会
開催日;2004 年 2 月 26 日
18:00
ホテルオークラ
主催:石狩湾新港管理組合・石狩湾新港ポートセールス会・
石狩湾新港外貿貨物利用促進協議会
出席:マテックプラザ
鈴木商会
取締支店長
大阪
猛
メタル営業部課長
小川
雅裕(メタルワン出向中)
日本鉄リサイクル工業会
本部・土井
鼎
港湾の特色:
①
1982 年(57 年)東埠頭木材岸壁供用開始
若い港:
1988 年(63 年)花畔埠頭供用開始
1991 年(03 年)樽川埠頭供用開始
2005 年(17 年)西埠頭供用予定
②
札幌港としての役割:
札幌市中心部 15km
自動車 30 分。ただし小樽港との役割分担は不明
③
日本海立地:
釜山ほか中国・東南アジア港と定期コンテナ航路あり
④
リサイクルポート 2 次指定
⑤
構造改革特区:
地域内の指定道路に限り総重量規制緩和。前後軸各 2 軸車両
⑥
鉄スクラップ輸出:
現行 27 ㌧→特区 49 ㌧
内容的には日本で一番進んでいる。リサイクル材の輸出額は道
内 1 位。自動車リサイクル拠点を目指す。
港湾明細:
東埠頭:リサイクルポートの中核。鉄スクラップ、建設用骨材。
水深 10mx1 バース
延長 185m、水深 7.5mx2 バース
延長 260m。
荷捌き地と直結した全面舗装野積場を備える。
石狩湾新港
平成 15 年取り扱い量
内東埠頭取り扱い
合計 3,362,103 ㌧
金属類 138,574 ㌧
樽川埠頭:水産物、合板、
砂利・砂・石材 788,738 ㌧。
石膏、石炭等。札幌圏への産業・生活物資供給基地。
水深 10mx2 バース
延長 370m、水深 7.5mx3 バース
延長 390m
花畔埠頭:国際コンテナ基地。セメントも扱う。
水深 10mx2 バース
延長 370m、7.5mx3 バース
中央埠頭:石油、LPG 等エネルギー供給の中継ポイント
139
延長 390m
水深 7.5mx6 バース
延長 865m
水深 14m
延長 280m
西埠頭:
建設中
5 万トン級船受け入れ
鉄スクラップの将来性:
下記の関係者に北海道の鉄スクラップの将来に関する希望条件を伝えた
石狩湾新港管理組合
専任副管理者
安藤康宏
港務部
参事
槌屋信之
会長
鈴木繁男(フタバ倉庫社長)
石狩湾新港新港会
外貨貨物利用促進協議会
①
幹事長
高谷義一(石狩湾新港サービス専務)
北海道も全国の例に漏れず、鉄スクラップの供給過剰地となりつつある。
② 現在の日本からの輸出は北海道も含め、韓国、中国、台湾の近隣国に限られているので、
3,000-5,000 ㌧船型で間に合っている。
③
韓国の鉄スクラップは 5-6 年内にほぼ自給体制ができるだろう。となれば輸送距離の長
い北海道は不利となり、より遠距離の東南アジアにマーケットを求めることになる。
④
東南アジアマーケットでは、とくに米国西岸シッパーが強力で 3-5 万㌧船と競合する。
輸送距離の優位性を見ても、最低2万㌧級の船をこなさなければならい。
⑤
2万㌧船をこなすためには、水深 12m 延長 240m の埠頭、これに隣接する4万㌧収
容可能な仮置き場、1 日 5 千㌧の積み込み設備が必要となる。
140
9)石狩湾新港現地調査
調査日;石狩湾新港
3 月 8 日(月)
石狩湾新港管理組合
専任副管理者
安藤康宏
港務部
参事
槌屋信之
マテック石狩支店
支店長
田辺真介
東埠頭事務所
所長
加藤三博
事務局長
服部隆志
工業会北海道支部
本部・土井
鼎
港湾管理者とも東京で面談済み。港湾事情も 3 月 1 日付け報告書の通りだが、現地調査結
果を補足する。
①
鉄スクラップ積み出し埠頭
東 1 号荷捌き地
旧木材岸壁
東 1 号野積み場
22,765 ㎡
鈴木商会使用
東 2 号野積み場
28,331 ㎡
マテック使用
当日在庫約 10,000 ㌧
水深 10m
ピーク 40,000 ㌧
水際線 185m
事務所、秤量所も備える。
年間輸出量
50,000 ㌧程度か(2002 年度通関統
計 120,051 ㌧)
荷捌き地まで 100m 程度の横持ち必要
ただし構造改革特区指定によって地域内の重量規
制は緩和。3 軸車による大量輸送が可能。鋼鉄製大型オープン・コンテナー使用による荷捌
き地での集積を行う
東 3 号野積み場
②
10,830 ㎡
マテック一部使用
非鉄・雑品在庫
SAPPORT
港湾管理組合のあるサポートセンターに‘SAPPOT’の表示がある。明らかに SUPPORT
に SAPPORO
PORT をかけたもの。小樽港との住み分けを聞いた。管理者はあまり意識
している様子もなく、小樽は観光指向でフェリーボートの受け入れに重点を置いていると
のこと。
10)室蘭港
調査日;3 月 9 日(火)
室蘭市港湾部総務課
カナスチール
課長
木村
等
主管
松原昭夫
主査
塩越順一
社長
金本三郎
日本鉄リサイクル工業会北海道支部事務局長
同本部・土井
鼎
141
服部隆志
①
鉄スクラップ積み出し埠頭
西 2 号埠頭
水深 10mx水際線 185m
野積み場
33,280 ㎡
及び 9mx165m
カナスチール使用
輸出実績
年間 20,000 ㌧
(2002 年度通関
統計 97,870 ㌧)
荷捌き場と隣接しており、広さも充分にあり理想的な立地。ただし年間輸出量が少ない
②
SOLAS 条約(海上人命安全条約)
TITANIC 号遭難後に締結。ただし各国とも条約を批准せずに死文化していた。9/11 の
テロ勃発後、新規の安全条約を結ぶには時間がかかりすぎるとのアメリカの主張で復活。
日本でも閣議決定をして国会審議の予定にある。主旨は輸出貨物の安全確認にあり、輸出
国での安全検査を行っていない貨物は揚げ地で引取り拒否し得るとするもの。コンテナー
の X 線検査は試行中と聞いたことはあるが、室蘭市港湾部では、バラ荷にも適用されると
了解している。具体的には 500 ㌧以上の船舶が年間 12 回以上出航する貿易埠頭を対象とす
る。荷捌き所及び野積み場の周囲を高さ 2m のフェンスで囲い、出入り口には監視カメラを
設置するというもの。設備費用は公共設備では国と地方自治体負担。民間設備では自己負
担。今年 7 月実施予定。国交省に問い合わせ中であるが詳細不明。野積み場のない積み出
し港、たとえば東京港船積み地周辺の陸上交通の混雑の大幅増、民間での負担増等からし
て、鉄スクラップ業界にとっては好ましくない規制といえる
③
最適船型
近隣、とくに韓国が自給体制とったあとには、北海道は船型を大型化して中国以遠の新興
需要国への供給体制をとるべきとの意見をのべてきた。今回の北海道出張で、この意見に
いささか疑問が出てきた。室蘭、石狩の両港では、すでに最適ともいうべき港湾条件を備
えており、これの充分な利用を最優先とすべきである。くわえて、配慮すべきは積み出し
可能数量である。室蘭のカナスチールの船積みが年間 20,000 ㌧とすれば 3,000 ㌧船で年 7
杯。02 年度通関統計 97,870 ㌧の 50%でも 5,000 ㌧船で年 10 杯となる。最適な数量バラン
スである。10,000‐20,000 ㌧の船で年数回の船積みをすることのほうが不経済となる。
将来、道内での需給バランスが大きく変化しない限り現状維持が最も好ましい。石狩での
マテック・鈴木商会にも同じことがいえる。小型船で大型船にどう対抗するか。品質保証、
長期契約などを通して近距離の顧客を捉えることに加えて、輸出鉄スクラップのカサ比重
を引き上げることが重要課題となるだろう。H2 の現状 0.6−0.7 をシュレッダー・スクラッ
プも加えて、限りなく平均 1 に近づけたい。
142
䋲䋮ਥⷐャ಴䊙䊷䉬䉾䊃䈱ዷᦸ
㩷 㩷 日本の輸出マーケットは中国、韓国、台湾の3カ国で 90%以上を占める。2003 年 1−
12 の輸出量は、中国 254 万 (
t 全体の 44.5%)、韓国 191 万 t(33.4%)、台湾 87 万 (
t 15.2%)
であった。このうち中心をなす中国と韓国について、鉄スクラップ需給の現状を分析し予
測を行って、日本からの輸出を展望する手立てとする。
䋨䋱䋩㖧࿖
䋱䋩㋕㍑↢↥䈱⃻⁁
㩷 2003 年の韓国経済は、輸出が米国の堅調に支えられて好調だったが、内需は民間消費や設
備投資の萎縮により低迷し、年初の経済見通し+6.0%を半減する+3.0%程度の経済成長率
となりそうである。輸出が経済を下支えている状況だが、ドル安、イラク中近東情勢など
不安要素もある。2004 年はITに支えられて経済は回復に向かう見方があるが、労使関係
不安もあり、4.0%強の成長率に留まりそうである。
こうした中、2003 年の粗鋼生産は 4,631 万t(速報)となり、前年比2%程度の増加だ
った(備考;日本は 2.6%増)。2004 年は内需回復により 4,700 万t(前年比 2.8%増)と
なると期待されているが、遅々とした増加であり韓国が 5,000 万tレベルに達するにはま
だ時間がかかりそうである。
2003 年の粗鋼生産を製鋼法別にみる(1−11 累計)と転炉 55.5%、電炉 44.7%となって
おり、電炉比率は日本の 27%と比べると高く、むしろ米国に近いという特徴がある。転炉
は POSCO が増産している。電炉は韓国鉄鋼・馬山工場の閉鎖、建設需要低迷に伴う条鋼類
の不調で、転炉ほど伸びなかった。今までの動きをみると。1970 年代当時の 40%台は 80
年初 24%に減少し、80 年代央に 30%台を回復、10 年以上の間 30%台が続いたあと 97 年に
40%を超えるなど変遷しているが、近年は堅調に推移している。
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2002 年の粗鋼生産 4,539 万 t に要した鉄スクラップ量は 2,383 万 t だった。リサイクル
鉄の使用比率(鉄屑消費/粗鋼生産)は 52.5%であり、電炉生産シェアーの違いから日本の
35%より高い。うち、電炉 2,094 万 t、転炉 289 万 t だった。2003 年の見込みは、2002 年
原単位により試算したが、トータルで 2,430 万 t の鉄スクラップ消費となったと見られる。
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2002 年の 2,380 万 t の内訳は、輸入 722 万 t、リターン屑約 400 万 t、国内市中屑 1,260
万 t だった。供給ソースに占める輸入シェアーは 30.4%であり、3割以上を外国に依存し
ている。リターン屑 400 万 t の発生率(自家発生屑/粗鋼生産)は 8.7%であり、日本の
9.8%(2001 年度)に比べると1ポイント低い。発生率は連鋳比率と生産品目構成が主な要
件だが、韓国の連鋳比率は 98.6%(2002 年)に対し日本 97.8%であり、継目無し鋼管など
の品種構成の違いもあると見られる。
国内市中屑は順調な製造業の生産活動や、鉄鋼蓄積量の増加により、過去5年間で 260
万 t 増加してきている。この内訳である加工スクラップを推計した。日本の平均発生率
「10%」を適用し国内鉄鋼消費量×加工屑発生率により求めると、2002 年は 437 万 t と想
定される。これを是として国内購入量 1,258 万 t より加工屑 437 万 t を除くと、残りは老
廃スクラップとみなすことが出来、2002 年の場合 821 万 t となる。一方、韓国鉄鋼協会が
発表している 2001 年 12 月末の累計鉄鋼蓄積量は3億 3,220 万 t となっており、老廃スク
ラップ回収率(老廃屑購入量/累計蓄積量)は 2.42%となった。日本の場合、輸出分の老廃
スクラップをどうみるかによるが、2.5∼2.6%程度と見られるので、この計算結果は概ね
現実を現していると判断される。
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出所:韓国鉄鋼協会「鐵鋼統計年報」
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鉄スクラップ輸入量は過去5年間 650∼700 万 t で推移している。2003 年は 1-11 月 607
万 t となっており、1-12 月を 663 万 t と推定した。従って 2002 年の 722 万 t と比べると約
60 万 t 減少する。この他にDRI(還元鉄)輸入量が 37 万tある。2002 年の供給ソース
は、アメリカ 239 万t(全体の 33.3%)、日本 192 万t(26.8%)、旧ソ連 168 万t(23.5%)
が3大ソースであり 84%を占める。他はEU(フィンランド、イギリス、ベレックス)82
万t、オーストラリア 5.5 万tなどである。2001 年は日本が最大供給ソースだったが、2002
年は3位に後退した。この3カ国の三つ巴戦が近年の特徴である。
INI スチール、東国製鋼など大手電炉メーカーの米国 NO1ヘビー輸入価格(C&F)は、
2003 年2月トン 170 ドル前後だったが、2004 年初 245 ドルとなり、1月末では 290 ドルに上
昇、2月に入り 300 ドル台も出始めている。高騰する原料価格に対し、製品価格へのスライ
ドをめざす動きが相次いでいる。これに対し韓国政府は、鋼材供給の円滑化や価格急騰の
鎮静化に乗り出す方針を発表した。このような韓国内の動きは鉄スクラップの国際市況を
冷ます方向に働くとみられ、日本にとっても注目点である。
一方、2002 年に輸出 12 万tがある。鉄スクラップ輸出は 90 年代1∼4万tで推移して
いたが、2001 年7万t、2002 年 12 万tと量は少ないが増加してきている。主な向け先を
みると日本 5.6 万t、香港を含む中国 4.0 万tであった。価格上昇期でもあり 2003 年は中
国向けがさらに増加したと予想される。
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700 万 t 前後の鉄スクラップ輸入量は、いつごろ不要の時期が訪れるのだろうか。自給化
とは需要に見合う供給量が達成される時であり、需要および供給双方の変動を予測する必
要があるが、ここでは 2010 年時点で国内の老廃スクラップがどれほどの規模になるかを鉄
鋼蓄積量との関係で推計した。
2001 年の鉄鋼蓄積量3億 3,220 万 t に対する老廃スクラップ回収量は 804 万 t であり、
回収率は 2.42%であった。そこで、2010 年までの間、鉄鋼蓄積が近年の年平均 2,000 万 t
増で続くと仮定すると、2010 年の累計鉄鋼蓄積量は5億 1,220 万 t と推定される。この時
点の老廃スクラップ回収率を現行の 2.4%とした場合、老廃スクラップ回収量は 1,230 万 t
となり、2001 年に比べ 430 万 t 増加となる。もし 95∼98 年間の 2.8%であれば 1,430 万 t
となり、2001 年比 630 万 t 増加となる。すなわち回収率の見方によるが、430∼630 万 t の
増加は期待される。従って需要の動向によるが、現行並みに推移すれば、600∼700 万 t の
輸入は 2010 年前後に必要なくなると予測される。
日本としては、年間 200 万 t のマーケットを失うことになるわけであり、代替市場の開
発を今から進めていく必要がある。
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SARSの影響で一時は失速が懸念されたが、2003 年の経済成長率は8%台の高い伸び
で終結しそうである。さらに 2004 年も 8.5%をキープする見方が多い。旺盛な個人消費、
積極財政出動を背景とする投資拡大、輸出の増大、外資の堅調な対中投資などを背景に自
動車、住宅、非住宅建設、機械製造、ITなどの成長拡大産業に加え、インフラ建設など
がさらに鋼材需要を牽引している。鉄鋼内需(鋼材見掛消費)は 2002 年2億 1,120 万tか
ら 2003 年は2億 6,500 万tに増大した模様であり、2004 年もこの延長にあって2億 9,500
万tと3億tにせまる勢いとなっている。このような鉄鋼需要増加は、2003 年の自動車販
売台数が 430 万台に達し、前年を 30%も上回ったことで象徴的に表されよう。2004 年は自
動車産業保護政策の最終年でもあり、年間販売台数は 38%増の 570 万台となると予想され
ている。なお、570 万台は 2002 年の日本の国内販売台数 580 万台に並ぶ。また、造船では、
2002 年時点で 30 万 DWTVLCC を建造できる造船所8箇所を、2004 年末までに 12 箇所に増加
し、その結果、世界の造船建造シェアーは8%から 2005 年には 16%に倍増すると予想され
る。さらに 2015 年には世界第一の造船国となるとの見方もある。このように鉄鋼需要の飛
躍的な増加は、自動車、造船、機械、住宅建築、非住宅建築など個別の活動水準を検証し
ていくと、まぎれもなく事実であることが分かる。
需要増大を背景に鉄鋼生産も順調に拡大している。2003 年の粗鋼生産は2億 2,000 万 t
となり、1 国で初めて2億トンを超える世界最大国となった。2004 年も増加基調かわらず
2億 5,000 万 t となると予測されている。
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このような高度成長の影にさまざまな問題があることも見過ごしてはならない。一つは
都市部と農村部の格差拡大である。2003 年の都市部平均収入は前年比 9.3%増の 8,500 元
だったが、農村部では 4.3%増の 2,622 元だった。農村の収入には農業生産の費用に回る分
も含まれるため実質的な格差は5倍程度はあると見られる。次が、投資の中味である。各
地方の中小規模の企業が設備増強に走り、結果的に過剰投資が生じつつある。2005 年段階
で鉄鋼の生産能力が 6,700 万 t 過剰となるという推計は、まさに地方中小企業の棒、線材
等条鋼類生産設備の過剰を意味しており、このままではいずれ淘汰が進み、なおかつ稼動
率確保のため東南アジア市場へ安値で輸出ドライブがかかることも懸念される。過剰投資
を規制するため、政府の国家発展改革委員会は 2003 年末、産業構造調整に関する暫定規定
案をつくり、2004 年半ばに実施すると発表した。小規模な製鉄設備や化学プラントは新設
させない方針を打ち出している。三つは、原料や電力、水、輸送などの確保である。特に
鉄鋼生産の場合、鉄鉱石、石炭、鉄スクラップ等の原料確保が課題であり、生産制約要因
となる可能性も高い。鉄鉱石は 2003 年に1億 4,800 万 t の輸入量となり、日本を抜いて世
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界最大の輸入国となった。この結果、中国が原料市場に参入し大きな影響力をもつに及ん
で、日本の高炉メーカーが苦境に立っている。2003 年 12 月に妥結した 2004 年度の原料炭
価格は前年比 25%増の高い増加率となった。鉄鉱石も大幅値上げが免れない。このための
コスト増加は、NSCで 410 億円、JFEも 260 億円となると見込まれている。
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2003 年の粗鋼生産2億 2,000 万t(速報)を製鋼法別にみると、1億 7,400 万t(79.1%)
が転炉、4,500 万t(20.5%)が電炉だった。2001 年まで平炉があったが、政府の効率化
方針により 2002 年に廃止された(備考;IISI には 2003 年 110 万 t の生産がある)。一方、
電炉比率は 93 年の 23.2%をピークに低下傾向にあり 98 年以降 15%台で推移していたが、
2003 年は 20%台に復活した。中国鉄鋼鋼鉄工業協会が昨年9月に発表した 2010 年の予測
では、高炉増強を主体とするため、電炉シェアーは 9.4%に低下する(後述)としており、
2003 年の 20%台は一過性と判断されるが注目点ではある。
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148
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㩷 中国の鉄スクラップ消費量は、発表されている炉別消費原単位により把握することが出来
る。2002 年時点では、粗鋼生産トンあたり電炉 760.2kg、転炉 108.6 kg、平均 217.7 kg だ
った。この原単位による 2003 年鉄スクラップ消費量は電炉 3,420 万 t、転炉 1,900 万 t、
計 5,320 万 t となる。すなわち粗鋼生産2億 2,000 万 t に対するリサイクル鉄使用比率は
24.2%であり、世界の中でも低い部類に入る。特に電炉の消費原単位が韓国の約 1,000kg/t
と比較して 240kg 以上小さいが、国内発生が少ない上に、安価な国内銑鉄が入手できるこ
とが背景にあるとみられる。例えば上海・南通は鉄筋を製造する普通鋼電炉メーカーだが、
銑鉄配合は 30%とのことだった。さらに、国内銑鉄の購入分を自社調達すべくミニ高炉を
建設する動きが南通を始め数カ所に出現中である。
原単位の過去 10 年間の推移をみると、電炉が 1994 年の 944 kg/t をピークに下方傾向に
あるが、これは高騰する鉄スクラップ価格に対する自衛手段とも見てとれる。㩷
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2003 年の鉄スクラップ消費量 5,320 万 t は前年の 3,970 万 t と比べ 1,350 万 t 増加した。
炉別にみると、電炉 1,100 万 t、転炉 250 万 t 増であり、電炉でのスクラップ消費増が目立
つ。同様にしてみた 2002 年の前年比はスクラップ全体で 670 万 t の増加だったので、2003
149
年の 1,350 万 t 増は倍増したことになる。このうち輸入は 930 万 t(2003 年 1-11/11×12
より推定)と見込まれるので 5,320 万 t から輸入 930 万 t を引いた残りの 4,390 万 t が国内
調達となる。輸入依存率は 17.5%であり、韓国の 30%と比べると低い。2002 年の輸入依
存率は 19.9%だったので、約 2.5 ポイント下げた。価格高騰により輸入を抑制したと見ら
れる。
国内は日本と同様に考えると3形態の発生源があり得るが、まずリターン屑の把握を試
み、残りを市中屑とした。リターン屑発生は連鋳比率と大きく関係することが分かってお
おり、他に製造する鋼材品種の違いが要件に加わる。そこで中国の連鋳比率をみると 2002
年に 90%台にのり 92.4%となった。政府は効率化の一環として連鋳化を促進しており、過
去3年で9ポイント上昇している。日本の現状の連鋳比率 98%でリターン屑発生率 9.7%
から考察し、中国の発生率を 11%と仮定した。その結果、2002 年のリターン屑は約 2,000
万 t、2003 年は 2,420 万 t と推定される。従って残りの市中屑は 2002 年 1,180 万t、2003
年 1,970 万 t となり、2003 年は前年比約 800 万 t 増加していることになる。価格が高騰し
て市中の回収に活気が出たと考察されるが、中国の関係団体などと意見交換を行って検証
する必要がある。
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近年の鉄スクラップ輸入は 1,000 万 t を出ない範囲で推移している。2003 年 11 月に(社)
日本鉄リサイクル工業会・国際ネットワーク委員会が、輸入の国内総元締めである中国鋼
鉄炉料総公司訪問の際に得た情報では、11 月 17 日広東で全国会議があり、需要増による鉄
スクラップ価格高騰の認識(昨年比倍増)及び効率よいスクラップ輸入について協議され
た。2003 年のスクラップ輸入量は 800 万 t の見込み(備考;1―11 月ですでに 930 万 t あ
る)であり、還元鉄 160 万 t と合わせると約 1000 万 t となるとのことだった。2004 年も
ニーズ強く、1000 万 t は超えるとみている。輸入ソースのうち近隣国日本の期待は大きい。
2002 年の場合、アメリカ 231 万 t(シェアー23.5%)、日本 190 万 t(同 19.4%
注;香港
経由分を加えると 250 万 t)、カザフスタン 129 万t(13.1%)、オーストラリア 109 万 t
(11.1%)等であり上位4ヶ国で 67%を占める。日本は第 2 位(香港を加えると第 1 位)
だが、前年より 30 万 t(年度ベースでは約 100 万 t)減少した。2003 年の日本の中国向け
は 254 万 t となり日本の輸出マーケットとしては最大だが、前年比では3万 t 程度の増加に
150
留まる。2001 年時点の 290 万 t を回復しきれない大きな理由に、廃棄物混入問題による中
国側の輸入規制継続がある。鉄スクラップのニーズは強いが、国家環境保護局では、廃棄
物混入の認識が払拭し切れていない。全面輸入規制中のAプレスに関し 2003 年 11 月訪問
時、「廃液、フロン、エンジン、タイヤ、シートが除去され、ダスト8%以下」が可能かと
いう持ちかけがあった。これに対し日本側から、自動車リサイクル法の趣旨、同法におけ
るシートに関する対応、価格の展望などについて説明した。特に A プレスはH2よりも 1/3
近い価格で購入できるため、魅力をもっているように感じた。しかし法施工後のAプレス
価格は 1/3 は保証されないであろう。また、含まれるダスト平均は 25%であり、8%以下
の注文は対応しきれない。
もはや鉄スクラップは国際商品であり、自国の都合のみで輸出は出来ない。その意味で
は A プレス規制はやむを得まい。特に相手国の環境汚染につながる廃棄物の輸出は、バー
ゼル条約によって規制されていることを改めて留意したい。
また、中国国家品質検査検疫総局では、中国に廃棄物原料の輸出を手がける外国企業な
どを対象とした登録制を導入することを 2003 年夏に決定し、2004 年7月1日までに同局
に登録しなかったシッパーは中国に輸出できなくなる制度を決めた。本年 1 月 1 日よりす
でに臨時登録の申請受け付けを開始している。対象には鉄、非鉄、紙、廃プラなど全ての
スクラップが入り、品質管理を改善、強化することを目的としている。ここまで中国を追
いこんだ日本の責任は重いが、これまでの経緯からみて少なからぬ登録料を徴収されるこ
とは明らかであり、自由貿易に逆流する身勝手な政策ともとれる。
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中国は共産党第 16 回全国人民代表大会で、2010 年までに国内総生産を 2000 年の2倍に
し、2020 年には4倍にする目標を掲げた。中国鋼鉄工業協会理事会議はこれを受けて、3
つのシンクタンクに、2010 年に2倍にするには、どれほどの鋼材がどの部門にどれだけ必
要かを調査研究させ、実行するための必要な要件を提案させた。
151
その結果、2003 年9月に同機関が発表した鋼材需要予測値は、2005 年で2億 4,000 万t
∼2億 5,000 万t、2010 年では2億 8,000 万t∼3億 4,000 万tに拡大するとしている。
一方、2003 年9月 IISI 経済委員会に提出された 2007 年の中国鋼材需要は、2003 年の2
億 4,300 万tに対し、LOW ケースで3億t、MID ケース3億 2,000 万t、HIGH ケース
3億 4,000 万 t に増加するとしており、中国シンクタンク予測は固めであることが分かる。
以下に昨年9月、中国鋼鉄工業協会第 2 回会員総会で報告された「中国の鋼材市場・需
給予測と鉄鋼業発展戦略に関する若干の提案」を分析した。今後の日本の方向を展望する
手立てとしたい。
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この報告では、2010 年までの需要増加に対して自給化を促進することが前提となってい
る。内容は製鉄及び製鋼、圧延全般に及び特に鋼板類に厚い。
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高炉は 2003 年の 487 基から 2005 年には 599 基に 112 基増加し、銑鉄生産能力は約 9,500
万t増加する。また 2010 年では 652 基となり 165 基増加し、同1億 7,300 万t増加の3
億 9,100 万tとなる。
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備考;協会とは、中国鋼鉄工業協会をさす。
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転炉と電炉をあわせた製鋼設備は 2003 年の 519 基2億 4,700 万tから、2005 年には 653
基3億 6,600 万tに、さらに 2010 年には 703 基4億 4,500 万 t に増加する。注目すべきは、
このうち転炉の増強を主体としている点である。2003∼2005 年の増強の 95%、2010 年で
は 96%を転炉増強が占め、電炉はわずかしか計画されていない。この結果、電炉生産能力
シェアーは 2002 年 16.7%、2003 年 14.2%から、2005 年には 10.9%、2010 年には 10%
を切って 9.4%に低下することとなる。世界の鉄鋼生産が CO2 削減を課題に、転炉法から
電炉法へ移行しつつある時流において、これはどのようなビヘイビアなのであろうか。
備考;同協会による 2003 年の電炉製鋼能力は 3,500 万tとしているが、最近入手した中
国鋼鉄統計では 4,035 万tとなっており、後述するスクラップ展望では 4,035 万tとした。
152
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2003 年 11 月に、中国鋼鉄炉料総公司訪問時ヒアリングで得た根拠は次のとおりである。
① スクラップの国内発生が少なく当面輸入に頼らざるをえない。
② ダム開発が遅れ、電力が不足している。
③ 以上のようなことから転炉とのコスト差が 200 元ある。
④ 自給不足は鋼板類を主としている。
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製鋼能力増強を転炉法に偏重する理由は電炉で行う場合の前述の問題点に加え、2つを
考察した。一つは、家電、自動車に使われる鋼板類の自給率を上げるには、トランプエレ
メントの面から転炉法によらなければならない点である。2002 年度の鋼板生産量は 6,500
万tで全生産量の 34%を占めるが、鋼板消費量は 8,400 万tと全体の 42%を占めている。
つまりこのギャップ 1,900 万 t を輸入に頼っているのが現状である。このうちステンレス薄
板の自給率は 24%にすぎない。鋼板類の輸入が鉄鋼輸入の約 86%を占めており、この自給
化の解決が課題となっている。二つは依然としてはびこる重厚長大型のイメージであろう。
特に地方都市で鉄鋼は高炉―転炉法で造ることが、一種のステータスとなっている。
もともと中国における鉄鋼政策は、転炉が鋼材品種を問わず大量生産を行い、付加価値
材を電炉が受け持つ棲み分けがあった。都市部の建築ラッシュに対応して普通鋼電炉が台
頭してきたのは最近のことである。国内の事情からみれば、転炉偏重もやむをえない判断
かも知れない。需要増加に対応する製鋼設備は電炉でなく、転炉となっていることを認識
する必要がある。
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転炉法増強により、鉄鉱石の供給、原料炭の国内輸送、工業用水の確保などで問題が起
きる。
・転炉法では、原料として鉄鉱石が必要となるが、国産では足らず輸入鉱の依存度が高ま
る。中国の鉄鉱石埋蔵量は現時点で 458.9 億トンあり、生産量 2.6 億トン∼3億トンで推移
するとすれば、40∼80 年分が保証される。しかしながら採掘権のある鉱山 5,712 社のうち
大勢を占める中小の生産能力は長期にわたる採掘を経て徐々に衰えつつあり、早急な技術
153
改善が求められている。中国3シンクタンク需要予測に対する鉄鉱石の 2005 年及び 2010
年時点の可能供給量と、要輸入量のバランスをみると、2010 年における国内産の鉄鉱石生
産量は3億 3,000 万t、銑鉄生産量に換算して1億 540 万t程度に過ぎず、不足分2億 2,000
万tを輸入せざるを得ない。現在世界の鉄鉱石生産量 10 億tのうち貿易量は5億t程度だ
が、その 44%を中国が占めることになる。EU15、日本とどのような競争が起きるのか、
さまざまな問題が発生することが予想される。また、港湾荷役面でも対策が必要となる。
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・中国の原料炭は山西省に全国の 54%が偏在しているが、鉄鋼産業は沿岸地域に集中して
おり輸送力問題が起きる。鉄道、道路とも整備が必要となろう。また国内産は品位面で課
題あり、すでに 2003 年より輸入が始まった。
・水資源が著しく不足しており地域間格差があるため、その拡大が予想される。2010 年時
点の全国総供給量は 6,200 億∼6,500 億m3 に対し需要量は 7,300 億m3 と予想され 1,000
m3 の不足となる。しかも地域別にみると長江以北に 63.5%かたよっているため、地域バ
ランスはかなり不均衡となる。
鉄鉱石の確保、原料炭の輸送、水資源の問題などは、2010 年をめざした拡大鉄鋼生産を
行う上で、重要な要素であり不備の場合は実現し得ない深刻な課題である。昨秋、韓国鉄
鋼協会「鉄鋼報」に掲載された論調は、この点について「鉄鋼メーカーがこのような問題
の深刻性をなかなか認識できず、長期的な鉄鋼産業発展と利益増大のためには、中国政府
からの正確な政策樹立が必要不可欠である」と戒めている。
さまざまな事情を乗り越え、今こそ中国政府の計画的な指導を発揮する時がきている。
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㩷 電炉シェアーは 16%から 2010 年に9%に低下するが、中国における鉄スクラップ需要は
減少しない。前出の中国鋼鉄工業協会による 2010 年見通しを使って 2010 年の鉄スクラッ
プ需要量を試算した。この場合、鉄屑消費原単位は 2002 年のままで計算した。また、想定
製鋼能力に対する稼動率を、転炉 80%、電炉 90%とした。この結果、2010 年の粗鋼生産量
は3億 6,000 万tとなり、鉄スクラップ使用量は 2003 年の 5,320 万tに対し、6,370 万t
に 1,050 万 t 拡大する。うち転炉での消費増加量は 1,600 万 t、電炉は 550 万 t 減となり、
転炉でのスクラップ消費増が主体となる。
1,000 万tの需要増加に対して供給は、まず生産量が増加した分リターン屑の発生も増加
154
する。国内市中屑も発生は緩やかでも増加するであろう。従って輸入が現在の倍(1000 万
t が 2000 万 t)になる必要性はなさそうである(1000∼1500 万tの範囲か?)。
留意しなければならない点は、鉄スクラップの品位の問題である。転炉での使用は鋼板
を主体としている。品位に関する注文は今以上に厳しくなるとみるべきであろう。特に日
本は近隣であることから、短期的な鉄源需給アンバランスの対応ニーズが頻繁に起き、下
級屑よりも上級屑のニーズが多くなるであろう。
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中国廃鋼鉄応用協会と有色金属工業会再生金属分会の組織および活動内容を紹介し、中
国国内で今どのようなことが起きつつあるかを考察する手立てとしたい。
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1994 年7月設立。中国鋼鉄工貿集団公司・中国鋼鉄炉料総公司の下部組織として存在し、
主に鉄スクラップに関し、行政と企業の中間にたって、双方の円滑な運営を支援する掛け
橋的な役割を持つ。中国政府直下の社団法人である。鉄スクラップユーザー(鉄鋼メーカ
ー)主体だったが、その後、鉄スクラップ業者が加わり現在では設備会社や輸入貿易会社
も入っている。現在 135 企業が参加し、このたび鞍山鋼鉄の総経理が協会の理事長に就任
した。国はマクロ的な管理、運営を行い、協会は市場や企業に役立つ情報収集、技術開発、
研究を行っている。
2003 年 11 月、日本鉄リサイクル工業会・国際ネットワーク委員会が中国鋼鉄炉料総公司
を訪問した際、当協会の秘書長が同席し、意見交換を行うことができた。日本で言えば組
織としては日本鉄源協会に近いが、業務内容は日本鉄リサイクル工業会に近い印象をもっ
た。データ整備など課題多いが意欲的であり、鉄スクラップ需給に関して具体的に意見交
換が出来る中国側の窓口といえよう。下図にその組織を示す。
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中国廃鋼鉄応用協会が鉄スクラップに関する業界団体であるならば、中国有色金属工業
会は再生非鉄金属全般をカバーする業界団体とみなされる。もともとは冶金工業部内に組
織化されていたが、1981 年に分離し変遷を経たあと 2001 年国家有色金属工業協会として発
156
足した。有色金属工業協会は全国の鉱山・精錬加工研究開発を行っているが、再生金属分
会は、政府と企業の政策や認可業務の仲立ちを行い、業界の育成・指導を目的とする。本
来、「中国再生資源利用協会」(全国リサイクル協会)として設立を申請したが、新規認定
が中止されているため、既存協会の「分会」として申請し発足した。近い将来「全国リサ
イクル協会として独立する予定となっている。2002 年3月設立、会員数 154 社。国家環境
保護総局や税関品質監督検疫局とつながりがある。会員機構の中で、共通性のある問題を
政府に積極的に反映し、有色金属リサイクル業界での税金、廃スクラップの輸入管理、指
定企業の確定、リサイクル団地管理などの意見と提案を政府に行う非営利団体である。2003
年 12 月、同分会常務理事が来日し、日本鉄リサイクル工業会にて懇談を行った際、4地区
のリサイクル団地構想を聞いたので、図を添付した。現在日本の廃車ハーネス処理、AS
Rに含まれる非鉄金属の選別をはじめ、数々の非鉄金属の分別に中国抜きでは考えられな
い状況にあるが、その拠点として4ヶ所の団地を政府が企画し実施されようとしている。
今後の情報に留意していきたい点である。
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江蘇省太倉港再生資源加工区
プラスチック置き場
プラスチック分別作業
プラスチックペレット化ライン
雑品
ケーブル分別作業(1)
ケーブル分別作業(2)
160
浙江省台州市
破砕後プラスチック置き場
プラスチック付着物除去作業
ケーブル分別作業(路橋区峰江工業区)
台州港
天津市静海県
ケーブル置き場
ケーブル分別作業
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㩷
161
巻
末
資
料
1.破砕業・標準作業書(モデル)
34 頁
当委員会作成
2.廃棄物処理法の現状と展望
佐藤
泉
氏
講演記録
3.放射性物質混入対策の現状
監修
杉浦
16 頁
紳之氏
53頁
制定日
平成
標準作業書
(モデル)
㈱鉄リサイクル工業
東京事業所
年
月
日
目
次
「標準作業書」作成にあたって
ⅰ∼ⅲ
Ⅰ.標準作業書作成責任者・改定履歴
1
Ⅱ.事業所の敷地及び設備
2
Ⅲ.敷地内レイアウト
3
Ⅳ.破砕施設レイアウト
4
Ⅴ.破砕業許可申請者の能力に係る基準
(1)解体自動車の保管方法
5
(2)解体自動車の破砕前処理を行う場合、
解体自動車の破砕前処理方法
(3)解体自動車の破砕を行なう場合、解体自動車の破砕方法
1)全体フロー図(破砕施設のみの場合)
全体フロー図(減容設備ある場合)
2)詳細手順
①計量手順書
②放射能検知器手順書
③荷下ろし・検品・保管作業手順書
④破砕作業
(4)排水処理施設の管理方法
6
7
8
10
11
12
13
19
(5)解体自動車の破砕を行う場合、自動車破砕残さの保管方法
21
(6)解体自動車の運搬方法
22
(7)解体自動車の破砕を行う場合、自動車破砕残さの運搬方法
23
(8)破砕業の用に供する施設の保守点検の方法
24
(9)火災予防上の措置
25
(10)労働災害対策
Ⅵ.標準作業書・教育履歴
26
27
「標準作業書」作成にあたって
2003 年3月1日
(社)鉄リサイクル工業会
環境対策委員会
本標準作業書は、破砕業許可申請者の能力に係わる基準「規則第 62 条2号」に指定
された「標準作業書」の例です。破砕業の許可を申請する場合必要とされますので、参
考にして下さい。作成にあたって留意点は以下の通りです。
1.構成にあたっては、同条文の9項目を網羅すると共に労働災害対策を織り込んだ。
10 項目の内訳は以下である。
(1) 解体自動車の保管方法
(2) 解体自動車の破砕前処理を行う場合にあたっては、解体自動車の破砕前処理
の方法
(3) 解体自動車の破砕を行う場合にあっては、解体自動車の破砕の方法
(4) 排水処理施設の管理の方法(排水処理施設を設置する場合に限る)。
(5) 解体自動車の破砕を行う場合にあっては、自動車破砕残さの保管の方法
(6) 解体自動車の運搬の方法
(7) 解体自動車の破砕を行う場合にあっては、自動車破砕残さの運搬の方法
(8) 破砕業の用に供する施設の保守点検の方法
(9) 火災予防上の措置
(10)労働災害対策
2.標準作業書の構成
事業所レイアウト、破砕作業の全体フロー、個別内容、保守などの順となっている。
項目内は、作業手順、留意点などを記入する。
作業の内容は写真でもかまわない。
例示では、破砕機のみの場合のフロー図と減容・固化処理設備を保有している場合
のフロー図の2タイプを示した。事業所により選択して参考にされたい。
3.各項目の留意点
Ⅰ.標準作業書作成責任者・改定履歴
標準作業書は、許可を申請する事業所単位に必要であり、事業所責任者が管理する。
記載内容に改定が行われた場合は、その年月日と変更理由を明記する。
i
Ⅱ.事業所の敷地及び設備
敷地面積や処理能力などは他の許可(産廃処分業、中間処理業許可、処理施設許可
等)に申請した内容に合わせる。
シュレッダー設備など複数ある場合、個別に記入する。
また重機は、事業所内全数と、破砕業関係とを区別する。
Ⅲ.敷地レイアウト
事業所の敷地全体のレイアウト。パンフレットなどのコピーでも可。建物構造物の
配置を明記(例を参照)。
Ⅳ.破砕施設レイアウト
破砕関連施設のレイアウト(例を参照)。
Ⅴ.破砕業許可申請者の能力に係わる基準
(1) 解体自動車の保管方法
写真で示しても良い。
(2) 解体自動車の破砕前処理を行う場合、解体自動車の破砕前処理方法
シュレッダーにかける前にギロチンシャーなどで切断したり、足回りを取り外すよ
うな作業がある場合に記入。ない場合は「なし」と記入。
(3) 解体自動車の破砕を行う場合、解体自動車の破砕方法
1)全体フロー
例のように作業順に図示する。
記号;作業は四角、有価回収は丸。自動運転は網がけで表しています。また番号は
詳細作業と同じ番号です。
2)詳細手順
全体フロー図で明記した作業項目(四角で囲んだもの)ごとに作成。
破砕作業は中央制御・自動運転か、手作業かを区別。
火災など緊急時の対処も記入。写真での明示も可。
(4) 排水処理施設の管理方法
破砕残さの保管方法として、雨水等による汚水の事業所外流出を防止するた
めに、屋根、覆い及び、その他ASRに雨水等がかからないようにするための
設備が必要だが、公共の水域及び地下水の汚染を防止するために、十分な処理
能力を有する排水施設を設けた場合、またはその措置が講じられる場合はこの
限りでないとされている。そこで、中間処理許可取得の条件となっている油水
分離施設を既に保有している場合はその設備と、清掃管理方法を記入する。清
掃にはバキューム、自前清掃、油吸着マット、オイルスキマーの使用などがあ
ii
るが、その作業内容と作業時期(3ヵ月に1回など)
、交換時期などを明記する。
他に排水処理施設を所有している場合、その設備及び点検表、行政への届け入
れ項目など記載する。なお、本件は環境省所管である環境保全上重要なポイン
トとなることから、標準書は各事業所において管理方法など具体的に検討し、
取り決めた内容を表現する必要がある。また、最近では、バイオによる排水浄
化システムを導入している事業所があるので、事務局に問い合わせされたい。
(5) 解体自動車の破砕を行う場合、自動車破砕残さの保管の方法
SRとASRを区分、囲いがあり範囲が明確な保管場所に保管、特に、ASR保管
施設は汚水の外部への流出防止のため、コンクリート床面、排水処理施設、屋根等
の設置を原則とする規則 62 条第 1 項を満足する保管施設に保管。
(6) 解体自動車の運搬の方法
自社で行う場合と、他社が行う場合を区別する。
(7) 解体自動車の破砕を行う場合、自動車破砕残さの運搬方法
自社で行う場合と他社の場合を区別
(8) 破砕業の用に供する施設の保守点検の方法
事業所で規定している保守点検内容を記述。例のように表を添付してもよい。
(9) 予防上の措置
消火器、消火栓の配置図と点検のサイクル、喫煙コーナーの設置
防火訓練などを記述。初期消火体制も含める。
(10)労働災害対策
Ⅵ.標準作業書・教育履歴
標準作業書内容を誰が何時、誰に教育(周知)したかの履歴を明記する。
以
iii
上
Ⅰ. 標準作業書作成責任者・改定履歴
社名
代表者
事業所名
事業所
責任者
事業所
所在地
電話番号
FAX
作業書
作成者
作成
年月日
改定履歴
年月日
変更理由
1
Ⅱ.
事業所の敷地及び設備
敷地面積
内事務所面積
一廃あるいは
産廃処理施設
設置許可番号
産廃処分業許
可番号
自動車リサイクル法
許可番号
許可処理能力
シュレッダー
注;破砕業分
基数
基
t、圧縮
HP
馬力数
メーカー名
基数
シャー
基数
馬力数
プレス
基数
馬力数
基数
天井クレーン
t
設置年月
プレシュレッダー
重機
t、せん断
HP
馬力数
(例)天井クレーン、固定クレーン、移動式クレーン、タイヤホルダ
ー、フォークリフト等
基
2
Ⅲ. 敷地内レイアウト
3
Ⅳ. 破砕施設レイアウト
サイクロン
Ⅱ
サイクロン
Ⅲ
分級風力選
別機Ⅱ
分級風力選
別機Ⅰ
サイクロン
Ⅰ
4
Ⅴ.破砕業許可申請者の能力に係る基準
(
1)
解体自動車の保管方法
作業名
制定日:
改定日:
解体自動車の保管
機械・
材料 タワーローダー
道工具
免許・
資格
保護具
作業範囲
NO
注意事項
作業手順
1
囲いがあり、範囲が明確な保管場所に法に従い保管する
2
廃棄物処理法保管基準に係る保管高さ、数量に関する規定もしく
は自治体
産業廃棄物保管基準(
規則8条)
取決めを遵守
(
例:
圧縮していない解体自動車の保管の上限:
囲いから3m以内の範囲内
は3mを超えない高さ。囲いから3m以上内側にあっては4.5mを超えない高
さ)
5
(
2)
解体自動車の破砕前処理を行う場合、解体自動車の
破砕前処理方法
作業名
制定日:
改定日:
破砕前処理を行う場合の作業(
行なうかどうか○印;
行う 行なわない )
機械・
材料
道工具
免許・
資格
保護具
作業範囲 行う場合について作業を以下に明記
NO
注意事項
作業手順
許可内容の遵守
6
(3)解体自動車の破砕を行う場合、解体自動車の破砕方法
1)全体フロー図(破砕施設のみ)
制定日:
改定日:
使用済み自動車
<凡例>
①計量・マニフェスト照合
作業
②放射能検知機
機械
回収有価物
③荷下ろし、検品検収
ダスト
保管
∼④破砕作業開始∼
2.プレシュレッダー
3.シュレッダー
4.風力選別機
5.磁力選別機
製鋼原料
6.トロンメル
150mm以上
7.非鉄選別機
微細ミックスメ
タル(10mm以
下)
手選別
ミックス
メタル
銅
アルミ
真鍮
ダスト
(注)網かけ部分は自動運転作業
7
(3)解体自動車の破砕を行う場合、解体自動車の破砕方法
1)全体フロー図(減容設備ある場合)
制定日:
改定日:
使用済み自動車
<凡例>
①計量・マニフェスト照合
作業
機械
②放射能検知機
回収有価物
③荷下ろし、検品検収
ダスト
保管
∼④破砕作業開始∼
2.プレシュレッダー
3.シュレッダー
4.風力選別機
5.磁力選別機
8.サイクロンⅠ
製鋼原料
吊り下げ磁選別機
6.トロンメル
150mm以上
製鋼原料
トロンメル
150mm以上
150mm以下
7.非鉄選別機
微細ミックスメタル
(
10mm以下)
ミックス
メタル
銅
次ページ※印へ
手選別
アルミ
真鍮
(注)網かけ部分は自動運転作業
ダスト
8
(3)解体自動車の破砕を行う場合、解体自動車の破砕方法
1)全体フロー図(減容設備ある場合)
制定日:
改定日:
※前ページより
9.分級風力選別機Ⅰ
45mm以下
軽いもの
10.分級風力選別機Ⅱ
軽いもの
重いもの
11.サイクロンⅡ
12.サイクロンⅢ
大ダスト
中ダスト
小ダスト
ダスト
13.減容機
ふるい
固形ダスト
フレーク状ダスト
<凡例>
作業
機械
回収有価物
(注)網かけ部分は
自動運転作業
ダスト
9
2)詳細手順 ①計量手順書
作業名
制定日:
改定日:
計量
機械・
材料 台貫
なし
免許・
資格
道工具
なし
保護具
なし
作業範囲 使用済自動車の計量
NO
作業手順
注意事項
1
使用済自動車を積載した車両を台貫に乗せる
2
運転手がマニフェストを事務所に提出
3
マニフェストと照合する
4
計量する
10
制定日:
②放射能検知手順書
作業名
改定日:
放射能検知
機械・
材料 門型放射能検知器
道工具
なし
免許・
資格 なし
保護具
なし
作業範囲 放射性物質を検知する
NO
作業手順
注意事項
1
使用済自動車を積載した車両を門型放射能検知器にかける
2
放射性物質を検知しなかった場合は次段階の荷下ろし場へ進む
3
放射性物質を検知した場合は連絡及び処置(
※)
を行なう
4
(
※)
連絡及び処置
アイソトープ協会、又は放射線専門会社に連絡し指示に従う
アイソトープ協会:
03(
5395)
8031
千代田テクノル:
03(
3816)
2531
ポニー工業:
06(
6262)
2451
アトックス:
03(
5540)
7990
11
③荷下ろし・
検品・
保管作業手順書
作業名
制定日:
改定日:
荷下ろし・
検品・
保管
機械・
材料
道工具
なし
免許・
資格
保護具
なし
作業範囲 使用済み自動車を下ろし、危険物や事前解体物品が除かれているか確認する
NO
1
作業手順
使用済み自動車を車両の荷台から下ろし、危険物がないか、また事前解体
物品(
※)
を確認する
2
適正な解体が行なわれていれば、保管ヤードへ降ろす
3
解体が不適正であれば返品する
(
※)
確認すべき事前解体物品
・
フロンが回収済みかどうか
・
エアバック類の取り外し有無を確認する
・
エアバック類を取り外していない場合、作動済みかどうか
・
事前処理必須品目;
廃油、廃液、タイヤ(
スペア含む)
、バッテリー
バスについては室内用蛍光灯が除去されているかどうか
12
注意事項
制定日:
④破砕作業
改定日:
シュレッダー・
磁力選別・
製鋼原料・
非鉄回収・
ダスト回収までの一連作業
作業名 プレシュレッダー・
機械・
材料 以下に工程別に記載
道工具
免許・
資格
保護具
NO2∼NO13まで)
作業範囲 オペレーターにより中央制御(
NO
作業手順
注意事項
1
本日の生産計画確認(
オペレーター、クレーンマン)
2
プレシュレッダー(
一次破砕)
廃車と廃車以外を区別
保管ヤードの使用済自動車をタワーローダーによってプレシュレッダー機へ 廃車以外を投入しない
投入し一次破砕する
3
シュレッダー(
本破砕)
中央制御室にて全体モニターを監視し供給コントロールを行う
火災発生の場合、散水処置をとる。
ASRとSRが混同しないよう運転に留意
13
NO
4
作業手順
注意事項
風力選別機
風力を使って軽量物と重量物を分別する
(
軽量はサイクロンⅠへ、重量は磁気選別へコンベア上を流動)
5
磁気選別機
磁力により、鉄(製鋼原料)と非鉄に分別する
14
NO
6
作業手順
注意事項
トロンメル(回転式分別機・渦電流を使用)
非鉄を大中小に分別。大=3の保管場へ搬送し再破砕
中=次工程の非鉄選別機へ、小=ミックスメタルで売却
15
NO
7
作業手順
注意事項
非鉄選別機(
非鉄とプラスチックを分別)
コンベア上の非鉄を手選別により採取(銅・
アルミ・真鍮・
)
残りはミックスメタルとしてプールし売却。プラスチックはダスト処理。
8
サイクロンⅠ
本破砕のうち軽量物を集塵。ASR搬送コンベア上からマグネット
により一部製鋼原料回収。
16
NO
作業手順
注意事項
9
分級風力選別機Ⅰ(破砕施設レイアウト4ページ参照)
10
分級風力選別機Ⅱ(破砕施設レイアウト4ページ参照)
11
サイクロンⅡ(破砕施設レイアウト4ページ参照)
12
サイクロンⅢ(破砕施設レイアウト4ページ参照)
17
NO
13
作業手順
注意事項
減容機
焼却か埋め立ての受入基準に応じてフレーク化か固形化を行う
14
ダスト保管・処理
1次ダスト堆積場が満杯になったら、ショベルローダーで保管
場所へ移す。
18
飛散に注意
(
4)
排水処理施設の管理方法
作業名
制定日:
改定日:
油水分離。排水処理施設ある場合は次ページ。
機械・
材料 なし
道工具
なし
免許・
資格 なし
保護具
なし
作業範囲 油水分離。
NO
作業手順
注意事項
油水分離槽
油水分離設備の清掃管理方法
管理内容、管理時期、
例)バキューム
交換時期を記入する
自前清掃
油吸着マット
オイルスキマー
19
(
4)
排水処理施設の管理方法
作業名
制定日:
改定日:
排水処理。
機械・
材料 なし
道工具
なし
免許・
資格 なし
保護具
なし
作業範囲 排水処理。
NO
作業手順
注意事項
・
排水処理装置
定期管理表によって管理する
・
県条例により、放射水の分析計量証明書を作成し、提出する
20
(
5)
解体自動車の破砕を行う場合、自動車破 制定日:
改定日:
砕残さの保管方法
作業名
自動車破砕残さの保管方法
機械・
材料 ショベルローダー
道工具
なし
免許・
資格
保護具
なし
作業範囲 自動車破砕残さ保管場所
NO
作業手順
注意事項
1
囲いがあり範囲が明確な保管場所に法に従い保管する
2
自動車リサイクル法規則62条第1項(
汚水の外部への流出防止のため、コ
ンクリート床面、排水処理施設、屋根等の設置を原則とする施設)
で保管す
る。
21
ASRとSRを分ける
(
6)
解体自動車の運搬方法
作業名
制定日:
改定日:
解体自動車の運搬
機械・
材料 車両
道工具
なし
免許・
資格
保護具
なし
作業範囲
NO
1
作業手順
注意事項
収集運搬許可車両により行う
委託する場合には廃棄物収集運搬業の許可を有する者へ委託する
22
委託先業者名
(
7)
解体自動車の破砕を行う場合、自動 制定日:
改定日:
車破砕残さの運搬方法
作業名
自動車破砕残さの運搬方法
機械・
材料 車両
道工具
なし
免許・
資格
保護具
なし
作業範囲
NO
作業手順
注意事項
1
収集運搬許可車両により実施する
2
充分なシートを用いて水分等、飛散防止に留意する
法の遵守
委託する場合には廃棄物収集運搬業の許可を有する者へ委託する
23
委託先業者名
(
8)
破砕業の用に供する施設の保守点
検の方法
作業名
制定日:
改定日:
破砕業の用に供する保守点検方法
機械・
材料 なし
道工具
なし
免許・
資格 なし
保護具
なし
作業範囲 破砕関連作業場
NO
1
作業手順
注意事項
始業にあたり、別途作成の稼動点検表に基づき点検を行う。
*点検表は別紙
24
制定日:
(
9)
火災予防上の措置
作業名
改定日:
火災予防
機械・
材料 消火器、消火栓、
道工具
なし
免許・
資格
保護具
なし
作業範囲 事業所全体
NO
作業手順
注意事項
1
消火器の設置と配置図の作成及び確認周知
2
決められた場所以外で火気を使用する場合は防火責任者の許可を得る
3
消火器、表示盤、看板の点検実施(
3カ月に1回・
防火責任者)
4
喫煙場所以外で喫煙しない
ルールの遵守
25
制定日:
(
10)
労働災害対策
作業名
改定日:
労働災害対策
機械・
材料
道工具
あり
免許・
資格
保護具
あり
作業範囲 事業所全体
NO
作業手順
1
朝礼の実施
2
始業点検の実施
3
作業手順に応じた作業の励行
4
整理・整頓・
清掃・
清潔・
しつけ
注意事項
26
Ⅵ.
標準作業書・教育履歴
職員への周知・教育・訓練
①危険物の取扱、高圧ガス取扱等について事業所職員全員が理解、実践できるよう年 回、
周知・教育を実施する。また必要に応じ、緊急時における措置について訓練を行う
②周知・教育項目
○消火器等消火設備の取扱方法、緊急時(火災時)の対応方法
年月日
講師
受講者
27
修了印
廃棄物処理法の現状と展望
弁護士
佐
藤
泉
氏
きょうはお招きいただきましてありがとうございました。
私は日本鉄リサイクル工業会の理事をさせていただいております。何年か、廃棄物処理
法および環境法の企業法務を仕事としておりますなかでのご縁であります。
環境法というのは非常に多岐にわたっておりますが、そのなかでも廃棄物処理法という
のは非常に変わった法律というか、非常に難しい法律です。おそらく、鉄リサイクルの業
務のなかでも、廃棄物になったり、有価物になったりするわけで、廃棄物になった場合に
は廃棄物処理法が非常に重要な法律になってきますし、有価物の場合であっても、それを
どういうふうに安全に売るかという問題が出てきます。そういう意味で、皆さんにも非常
に関連の深い法律だと思います。
では、この法律を読んだことがあるかとか、条文を読んでわかるかというと、非常に読
みにくい。その読みにくい理由の1つは、ものすごく改正が多いのです。改正、改正、改
正となっているので、条文が続いておりません。何条の2とか、何条の3というふうにな
っています。どうして何条の2とか何条の3があるかというのは、全部、改正であとから
入っているのです。最初は1条から何条までしかなかったのが、どんどん新しい条文が入
ってくるので、条文が連番で続かない。しかも、改正のために政・省令が全部改正になる
ので、ちょっと前の法律を読んでいると政・省令が違うとか、改正の部分が間違っている
とか、そういうことがある。厚生省で出した『廃棄物処理法の解説』という厚めの本が定
番なのですけれど、あれもものすごく古くて、環境省の方に、いつ改正を出すのかと聞き
ましたら、もう出さなければいけないのですが、改正が多くてというお話をしていました。
そのぐらい解説の本もない状況で、非常にわかりにくいのです。そういうなかで、皆さん
は日々仕事をされていると思います。
一番の問題は、対象物を見た時に、それが有価物なのか、それとも廃棄物なのか、また、
間にあってよくわからない逆有償なのかというのがあります。逆有償はどちらかというと
廃棄物の中に入る感じがします。
有価物の場合は、普通は売り買いですから売買契約があります。売買契約では、買主は
モノの品質を信頼して買い、売主はモノの品質を保証して売っているわけですから、当然、
品質の確保という問題が出てきます。本来の品質を備えているかということです。売買契
約というのは、したがって、品質の保証が非常に大事になってきます。保証が違えば、当
然、損害賠償になってきますし、瑕疵担保の問題にもなってきます。つまり、売買契約の
本質は品質の保証で、品質の保証については売主に責任があります。
一方、廃棄物のほうになると、品質は保証されていません。では、何でもいいかという
とそうではなくて、排出者が、そのモノについてこういう性状であるという、性状につい
ての説明義務があります。腐敗しますよとか、中にこういう成分が入っていますよという、
1
性状を説明する義務があるのです。
所有権はどうなっているかというと、売買の場合は、売主から買主へ所有権が移転しま
す。廃棄物の場合は、排出者から処理業者に引き渡した時点で、誰のものかというのは廃
棄物処理法にはどこにも書いておりません。排出者が所有権を放棄しているのです。では、
処理業者が所有権を譲渡されているかというと、処理業者は処理を委託されているのです。
べつに、所有権を持つためにもらっているわけではなくて、処理を委託されているだけな
のです。そうすると、では、これの所有者は誰かというのは、廃棄物処理法では全く想定
していないのです。
ですから、ここで不法投棄になった時にどうなるかというと、被害者は、処理業者に請
求するし、排出者にも請求するわけです。基本的には、適正に委託しなかったとか、委託
料金が安いとか、あるいは、ちょっとこの業者は危ない、もうオーバーフロー寸前である
とヤードを見れば危険だと予測できるようなところに委託したということで、不法投棄の
場所から請求を受ける。委託はサービス業であり、売買は所有権の移転を目的としている
のです。
そういうふうに、売買と委託をある意味でごっちゃに引き受けているというのが、廃棄
物業者の非常に難しいところです。委託をされているから自分のものではないのだけれど
も、リサイクルしたり、分別したりすれば、これは平気で売れるのです。どうして売れる
のかというと、排出者は所有権を放棄しているからです。もう私は要りませんといわれて
いるので、所有権はある意味で宙に浮いている。処理業者が処理したうえで所有権を引き
受けて商品として売買する。でも、処理業者が売買する時には有価物ですから、品質の保
証をしなければいけない。つまり、処理を委託する時には性状の説明しか受けていず、品
質の保証は受けていない。でも、売る時には品質を保証して売っているのです。廃棄物処
理業者というのはそれだけの法的責任のある作業をしている。したがって、ここから先で
消費者に何かトラブルがあったら、基本的には売主の責任です。売主というのは完成品の
売主ではなくて、素材でも、部品でも、材料でも、提供した人はみんな、PL責任の対象
になります。
最終的に廃棄物は安定して処理されて、最終処分場という人工の地層をつくっているわ
けです。人工の地層の中で眠りにつくまでは、どこで責任が問われるかわからない。そう
いう意味では、最終処分で人工地層として馴染む、つまり、最終処分場が閉鎖されるまで
は処理業者は非常に長いサイクルの責任を持っている。
そういうなかで、コントロールできない部分がたくさんあります。コントロールできな
い部分をどういうふうに配慮して法的にリスクを回避していくかというのが、今日これか
らお話ししようとすることであります。
法律のリスクは漠然としていますが、現実には相手がいるわけです。つまり、訴えてく
る人がいて、はじめて、大変だということになるのです。
1番目は、行政が訴えてくるものです。こんなことしただろう、あんなことしただろう、
という。あるいは、見回りにきて、施設が悪いとか、許可条件に合っていないとか、そう
いう意味で行政が業者に対して一定のクレームを出してくる。それにどう対応するか。対
2
応のやり方を間違えれば許認可に影響してくる。そして、行政処分を受けたり、行政指導
で終わったり、いろいろなことがあります。まず、廃棄物処理法の中で一番気をつけなけ
ればいけないのは行政との対応です。ある意味でそれはビジネスの根幹になっております。
行政の対応というのは、法的リスクの中でも一番重要項目であります。
2番目は、民事の対応です。行政ではなくて、取り引き先、住民、従業員がいろいろな
クレームを出してくることがあります。それに対しても、たいしたことはないと思ってい
ると、それがいろいろなところに飛び火して、結果的に大きなトラブルに巻き込まれるこ
とがあります。取り引き先とのトラブルでは、売ったものが、その先でトラブルを起こす
とか、逆に、一生懸命に処理したのに、排出元が倒産してしまってお金が取れないとか、
そういった金銭回収の問題もあります。
住民とのトラブルは、おそらく経験したことのない人はいないと思うのですが、絶えず
クレームがあります。激化しております。たとえば、先日、大阪で、焼却炉をやっている
産業廃棄物の業者が警察に捕まったのですが、どうして捕まったかというと、小学生が夏
休みの学校の宿題で、毎日、その会社の工場の煙突の観察日記を書いたのです。それが証
拠で捕まったのです。昔では信じられない話ですが、とにかく住民は見ているのです。昔
では考えられないものが証拠になるのです。いまは、携帯電話のカメラとか、デジカメと
か、昔では考えられないほど、監視の目が厳しくなってきて、しかも、それが証拠として
能力が高いのです。そういう意味で、みんなが見ている。特に廃棄物業者の場合はみんな
が見ていて、何かあったらいってやろうという感じがあるのです。それはどこの産業もそ
うですが、特に廃棄物業者は、普段、トラックが出入りするとか、騒音があるとか、震動
があります。昔はこの辺は家なんかなかったのにと皆さんおっしゃるのですが、そういっ
ていられないのです。近所に家を1軒も建てるなというふうに看板を出すわけにいかない
のです。だんだん家が建ってきて、しかも、非常に細切れになって、そんなに建付けがよ
くない家が時々建ったりすると、震動ですごく揺れるわけです。それはうちのせいではな
いだろうといっても、やはり、近隣問題は大事にしないと、それがトラブルになって行政
に常に見張られるというのは大変な話ですから、やはり、住民とのトラブルというのは非
常に大事にしなければいけない。いつも見られている、いつも証拠をとられている、とい
うふうに思わないと対処できないのです。
そういうことで、逆に、住民とのトラブルを避けるためには、こちらで先に証拠をとっ
ておく。つまり、騒音のレベル、震動のレベル、倉庫の開け方、営業時間、会社のマニュ
アルなど、きちんと取っておいて、何かがあったら、うちはこういうマニュアルでこうい
う管理をしていて、チェックをしています、ですから、この程度ではこういう音は出ない
はずですからよそが原因じゃないですか、というふうにいえるように証拠を持っていない
と大きなトラブルに発展することがあると思います。
従業員とのトラブルというのも、かなりあります。従業員は身内ですから、一度喧嘩を
すると、社内の、外に出されては困るような営業秘密とか、顧客名簿、価格体系といった
ものも全部出てしまう可能性があります。従業員というのは、信頼して教育することが第
一なのですが、同時に、トラブルがあった時には一番イヤな敵になる。そういう関係があ
3
るので、やはり、従業員は絶えずきちんと教育をし、フェアな対応をしなければいけませ
ん。
内部通報者制度というのをお聞きになったことがあると思います。これは、内部通報者
制度を合法化しようということで、いま法制度になりつつあります。たとえば、従業員が
会社の違法行為をマスコミに漏らした時、それを処罰してはいけないという、そういう内
容です。会社のトラブルだったらマスコミに伝える前に上司に言うのが当然だろう、とい
うふうに常識的には思います。しかし、最近は食肉業界とか、いろいろな業界で偽装の問
題が出ております。この間などは卵の日付を半年も偽装したという報道もありました。そ
れでたいした行政処分は受けていないのです。廃棄物処理業者が見たら、あんなことをや
って、食中毒でおなかをこわしている人がいるのに、あの程度の行政処分かと思います。
それはともかくとしても、こうした問題は内部通報でないとなかなか出てこないのです。
そういう意味で、国としては、税金をかけて公務員があちらこちらへ探しにいくよりも、
内部通報者が教えてくれたほうが安いわけです。国としては、税金も少なくなってきてい
るし、社会の関心を強めるためにも、違法摘発については民間の活力を利用しようという
気持があるのです。そこで、内部通報者は大いに歓迎だというふうになってきているので
す。
内部通報にも種類がありますし、会社としては、一定のルールで、会社の中の自助努力
で解決したいのですが、一概に禁止することもできないわけです。そういう意味で、従業
員教育をきちんとするだけでなく、常日頃から従業員に目を配り、社内の風通しをよくし
ておくということを、会社としていつも考えていないと、あとで大きなトラブルになって
くるということがいえると思います。
行政があって、民事があって、次に出てくるのは刑事です。警察というのは、普通の生
活をしているとあまりご厄介にならないはずなのですが、なぜか、最近は非常に厳しくな
ってきております。昔だったら取り扱わないような部分まで圧力がかかって、警察がかな
り積極的に動いてきます。たとえば、騒音問題等、地域住民が昔は役所に相談していたも
のも最近は警察にいくとか、そういうことがあります。廃棄物処理法の法律の中でも刑事
罰が非常に厳しくなってきておりますので、警察のほうが先に動く。不法投棄があると警
察のほうが先に動いて、行政は後追いになることも最近は非常に増えてきております。そ
ういう意味で、警察が動いた時にどういうふうに対応するかという、対応マニュアルはも
のすごく大切です。
これは、特に初動が大切なのです。従業員が警察に取り調べを受けたりすると、慣れて
いませんし、隔離されていろいろ質問されて錯覚に陥ってしまい、いつもと違うことを話
したりするのです。どういう質問を受けたのか、なんでこういう質問を受けるのか、理由
もわからなかったりして非常に混乱することがよくあります。したがって、警察から何か
の事情聴取を受けた場合には、いったいどの法律のどの部分に関連して警察が聞いている
のかに注意する必要があります。この部分だったらこのくらいのリスクで、この部分だっ
たらこのくらいのリスク、こういう部分だったら相手に誤りにいって取り下げてもらえば
終わるとか、判断することが大切です。そんなのうちは関係ないよとか、誰でもやってい
4
るよというふうに放置すると、思わぬところまで広がってしまうことがあります。
どの産業もそうですが、意外に、内輪モメとか、価格競争に関連した同業者間のトラブ
ルとか、取引先との問題とか、いろんな要素があるのです。政治絡みだったり、選挙に絡
んで疑われたり、それから、皆さんのお仕事の中では交通事故があったり、人身事故があ
ったり、いろいろなトラブルがあった時には、警察が必ず来ます。その時に、どういう範
囲のことで聞かれているのか、どうやれば問題が大きくならないか、ということをよくよ
く考えないと、全く間違った方向にいってしまうことがあるので、ぜひ気をつけていただ
きたいと思います。
マスコミにも、いろんな出方をしますが、マスコミが質問をした時に答えていいことと、
答えてはいけないことがあります。有名な雪印事件では、あの社長の会見が絶対に間違い
であったという。“自分も寝てないんだ”といったあの一言のために、徹底的にマスコミ
に叩かれてつぶされたという感じがします。やはり、マスコミというのは、こういう言葉
に敏感に反応する傾向がありますので、トラブルがあった時に、適切に対応し、必要最低
限かつ疑問を抱かれない回答のしかたをしないと、あとでどんどん、どんどん話が大きく
なる。マスコミというのは、基本的には事件性に焦点を当てて取り上げたいという気持が
あります。その取り上げたいという絡みにはまってしまうと、次から次へネタを探して、
次から次へ掘り起こしてくる。これはいいやというふうにマスコミが同情的になると離し
てくれて、ほかのネタへいってくれるとか、そういうことがありますので、何か起きた時
は、まずマスコミがきた時にどういうふうに答えるかということを決めておく、行政がき
た時に、こういう範囲でこういうふうに説明する、証拠はこれとこれだということで、社
内で漏れなく把握して、最初の説明と違う証拠が次から次へボロボロ出てくるということ
がないように気をつける必要があると思います。これが一般的な、廃棄物処理法に限らず、
法律のリスクです。
その他に、ある程度の規模の会社で非常に大きいのは、相続のトラブルです。株を身内
で持っていますので、それがいろいろなところで、たとえば先代の相続の時の人が残って
いるとか、自分の相続の時の問題があるとかする。廃棄物処理法の場合には、5%ルール
というのでしょうか、株をある程度持っている人はみんな審査の対象になりますから、素
行に問題のある人間がいたりすると、それで業の許可が揺らいでしまうことがあり、相続
の話がつかないことがあるのです。したがって、後継者の確保と株の管理というのはもの
すごく重要な要素です。よく聞くのは、お嫁さんに持たせておいたら離婚しちゃったとか
いう話です。あまり集中させると、それもあとでトラブルになるし、あまり分散すると、
あとで取り返しがつかない。儲かっていて利益配当している時に株を動かすと、株の評価
も高くなりお金がかかるのです。株主も、いままではつぶれるかと思ったのに急に景気が
よくなると欲が出てきて、自分の株を買い取ってくれとか、あっちに売りたい、こっちに
売りたいといった話がいろいろと出てくるのです。そういう意味で株の管理というのは非
常に重要な資本政策で、長い目で政策を決めないで場当たり的にやっていると、あとで非
常に大きなトラブルに巻き込まれることがあります。
次は廃棄物処理法の説明に入ります。
5
廃棄物処理法というのは、排出者があり、処理業者がある。処理の中には運搬、中間、
最終処分があります。この中で一部は売却、リサイクルというのが出てきます。こういう
ルートをとっているのです。
廃棄物処理法ができたのは昭和45年です。昭和45年というのは、戦後の公害国会といわ
れる年です。4大公害というのがありました。水俣病、イタイイタイ病、四日市といった、
非常に大きな4大公害が一番激しい時でした。日本は高度成長で公害を引き起こしたわけ
です。どうして、戦後こんなに公害が進んだか。工業化が進んだからということですが、
その前に、大量の原料の輸入をし、商品をつくり、大量の商品の輸出をするという産業構
造の中で、当然のごとく公害が出てきたわけです。つまり、マテリアル・フローとして、
こんな小さい国に山のように持ってきて、山のように輸出して、ここを中間点として工業
活動をすれば、大気にも、水にも、産業廃棄物も、莫大なアウトプットがあるわけです。
これはマテリアル・フローとして当然な話です。
よく、江戸時代の日本は循環型であったという。だから、ああいうのをモデルにすれば
いいという人がいます。しかし、江戸時代はどういう時代であったかというと、輸入と輸
出がほとんどゼロという鎖国だったのです。当時の産業構造では公害は起きません。現在
の日本が鎖国できるかといったら、食糧自給率がこんなに下がっておりますし、輸出しな
いと国民の生活は維持できませんので、江戸時代には絶対に戻れないわけです。マテリア
ル・バランスとして、物質の流れからいって、江戸時代のような鎖国の世界には戻れない。
また、江戸時代は、鎖国をしているということ以上に、職業選択の自由がなかったのです。
それから、住居の選択、つまり住民票を明日北海道から沖縄に移すとか、そういうことが
許されていない。職業選択の自由がなく、住居の選択の自由がなく、輸出・輸入がなく、
基本的には非常に権利が限られている、こういうなかで江戸時代というのは、低資源で、
箱庭的な循環型社会をやっていたわけです。そのため飢饉が起こると地方ではたくさんの
餓死者が出る。そういう産業構造だったのです。
そのあと、明治維新で近代化を進め、その時に物質が足りないから、戦争をし、領土を
広げようと思ったわけです。だけどそれはみごとに失敗し、領土は広がらなかったのです。
戦後は、領土は広がらない、だけど産業化はしなければいけないということで、では、モ
ノだけ持ってきて、モノだけ出そうというふうになったのが、輸入と輸出の工業化です。
この結果、戦後、昭和45年までの間に莫大な汚染物質を日本国中に出したわけです。それ
で昭和45年の公害国会までいったのです。
公害国会で何をやったかというと、汚染を止めるためには、大企業の出口(煙突、排水
口)を止めようということで、大気汚染防止法、水質汚濁防止法で、出口規制をしました。
入口(輸入)は絶対に止められないので、輸入を継続したなかで、アウトプットの出口だ
けを少しすぼめる。しかし、廃棄物も同じように出口規制をやったら、経済活動が継続で
きないわけです。そこで、廃棄物処理法は出口規制をしなかったのです。それが、廃棄物
処理法とほかの法律の大きな違いです。廃棄物処理法は出口規制をしたら、輸出と輸入を
前提とした経済がもたない。ではどうしようか。ルートに乗せよう、となったのです。
廃棄物は、昭和45年までは産業廃棄物という言葉がなかったのです。ということは、み
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んな、自分の庭に埋めていればオーケーだったのです。最終処分場もありませんでした。
昭和45年では、廃棄物が出ること自体をやめるわけにいかないから、ルートに乗せて、処
理業者に集中させればいい。そうすれば、輸入と輸出を継続しながら、とりあえず廃棄物
による環境汚染を防げるだろうということで、ほかの大気汚染とか水質汚濁とは違ってル
ート規制をやったのです。逆にいうと、ルートにさえ乗せていれば廃棄物はいくら出して
もいいよというのが、昭和45年につくった産業廃棄物の前身だったのです。もともと、清
掃法をもとにはしておりますが、事実上、昭和45年に整備された法律です。
ルート規制をやると、処理業者が受け皿として重要な、ある意味で利権を持つようにな
った。つまり、排出者は無責任。処理業者が受け皿で全部責任を取ってくれる。排出者は
処理業者に任せさえすれば、あとは関係ないということで、処理業者がある意味で全責任
の受け皿になったと同時に、処理業者を行政が監督するという構造になったのです。それ
でずーっと法律はきたのですが、そうすると、排出者は大企業ですが、処理業者はどちら
かというと中小企業で処理業を賄っている。行政としては、大企業のために、なかなか皆
がやってくれないものをお願いしているのだからということで、ここの体質の改善とか、
強化とか規制が進まないという状態が続いてきました。
何が原因で、こんな山のような改正がはじまったかというと、発端は住民との対立です。
昔は、全然環境に配慮しない業者もたくさんいたのです。垂れ流しで、水はどんどん濁る
し、魚は浮いてくるし、最終処分場といっても、ただ素掘りの穴に埋めて、鉛だろうと、
水銀だろうと入っているというような、そういうところがかなりあって、住民、特に、水
源地などもありましたから、住民との熾烈な闘いが起きてきたわけです。
住民との闘いというのは、なかなか難しい問題があります。行政・住民・処理業者の三
者が対立し、住民は行政に許可を与えるな、あるいは、許可を取り消せというふうに訴訟
を起こします。同時に、処理業者に対して施設建設や営業を止めろという差し止め訴訟を
起こしてくるのです。行政が煮え切らない態度をとっていると、処分業者は行政に対して
許可を出せという訴訟を起こすのです。こういう訴訟が日本で頻発し、行政は両方から訴
えられて、両すくみ。住民は、なかなか両方の訴訟に法律上勝てなくて非常に苦戦する。
その結果何ができてくるかというと、住民同意という制度です。行政は困り果てて、法
律に従って許可を出さなくなりました。廃棄物処理法上は住民同意というのは認められて
いないのです。住民同意というのは、住民に同意権がありませんから、義務のないところ
にものを求めているわけで、もともと法律上に合致しないわけです。行政自身、法律違反
になるのは知っています、という。だけど、選挙で勝てないのですとか、住民に訴えられ
るのです、私は住民に嫌われたくありませんから、というような話で、法律ではないとこ
ろで、この住民同意みたいなものがどんどん動いてきたわけです。そうすると、処理業者
としてはどうしていいかわからない。本当に必要なのは優良業者なのです。ところが、優
良業者を育てるしくみがないのが廃棄物処理法の中での非常に困った問題です。
日本全国、産廃列島といわれるぐらい、訴訟があまりに起きたので、ようやく廃棄物処
理法の改正がどんどんはじまったというのが平成9年以降なのです。平成9年以降、廃棄
物処理法の改正はピッチが速く、しかも大きな改正が進んでいます。
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平成9年の改正というのは、委託基準の強化です。これは、いままでは運搬処理業者に
お金を払っていて、運搬業者が、私は処分場を知っていますよとか、あそこは入りますよ
とか、ここはまだ満杯じゃないですよとかいって、運搬業者が、きょう持っていくところ
を私に任せて下さいといって預かる。そうすると、運搬業者は、それをあっちへ持ってい
ったり、こっちへ持っていったり、あるいは、不法投棄したり、自分のヤードに少し積ん
でおいたり、そういうことが頻繁にあったのです。排出事業者は、運搬業者にお金を全額
払ってしまうから、運搬業者としては、高いところに持っていくと自分の利益が減るので、
どうしても安いところに持っていく。そういうトラブルがあったので、平成9年に、排出
事業者は、運搬業者とそのあとの処理業者に別々に料金設定をして契約し、できれば別々
に払って下さいということになりました。支払いのほうは、ある意味で事務委託もできる
ようにはなっていますが、法律のコンセプトとしては別々に料金設定をする。きちんとこ
のものはここへ処理するのだということで、別々に料金設定をして、別々に契約をしなさ
いという、契約の基準が強化されたのです。
それから、いままでは廃棄物がどこに何がいっているか、排出事業者としては確認でき
なかったので、特管だけだったマニフェストを処理業者から排出事業者へとちゃんと返し
てもらう。そういうことで、排出事業者が、現実に廃棄物の動いたルートをあとで確認義
務があるというマニフェストを産業廃棄物全体に拡大しました。これが平成9年です。6
年前です。
そういうことで、一気にマニフェストという制度ができたわけです。世界でマニフェス
ト制度などというものをやっている国はほとんどありません。アメリカでは、州内ではや
っているところがあるが、州を越えてはなかなかできないということで、世界の中ではき
わめて異例な制度です。そのぐらい日本では廃棄物の流れが確認しにくいということなの
です。常識的に考えれば、廃棄物1つ1つにマニフェストなんてできっこないのです。あ
る程度まとめるにしても、積み替え保管をしたりすると、マニフェストというのはなかな
か難しい。それを思い切ってやることにしたわけです。その意味では管理の手間がかかり、
廃棄物処理のコストもかなり上がったと思いますが、そういうことによって排出事業者の
責任が拡大する、ということをやったのが平成9年の改正です。
平成12年の改正では、都道府県の処理計画を導入しました。都道府県の処理計画の導入
は処理業者には関係ない、と思うかもしれませんが、実は、次の改正の布石が打ってある
のです。地方分権に移行するなかでの重要なポイントなのです。つまり、産業廃棄物とい
うのは広域処理で、国としての計画がある。都道府県は、広域処理だからそれを止められ
ないというのが以前の感覚だったのです。国レベルの産業廃棄物の計画と県レベルの計画
をつくるのでは、計画のつくり方が全然違います。全国レベルで産業廃棄物の適正処理を
考えるのであれば、おそらく、適正配置とか、首都圏のごみを近郊で無理のないところで
やるということになるのですが、県ごとにやるといったら、隣の県からは持ってくるなと
いう話になります。そのへんの動きが、平成12年の国の法律の中で、都道府県の処理計画
で、うちの県は処分場がいくつ必要だとか、うちはいらないとか、うちは余っているとか、
だからほかの県の廃棄物は持ってくるなとか、そういうような県ごとの処理計画が相当入
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ってきております。その処理計画に基づいて今後の予算の取り方とか計画が出てくるので、
その意味では、初めて、平成12年に、産業廃棄物の計画というのは国じゃなくて都道府県
なのだということの布石がここで出てきているのです。
そして、平成12年はマニフェストを最終処分まで拡大しました。一次マニフェスト、二
次マニフェストを導入するというのが平成12年の改正でした。これも、つくっている時は
みんな猛反対でした。焼却炉に入ったものを二次マニフェストでつなぐといっても物理的
に見分けがつかないものです。しかし、ある意味で強行して入ったわけです。
二次マニフェストが入ったお陰で、この間の青森、岩手の事件では、かなりの排出事業
者まで追求されました。この事件は、二次マニフェスト導入の前と後にまたがって発生し
ています。ですから、二次マニフェストが適用前の廃棄物がかなり多いようですが、一部
入っているという状況です。排出事業者が最終処分まで気にするようになってきたのは平
成12年の改正からです。
それから、野焼き禁止と排出事業者に対する措置命令(原状回復)の義務が非常に拡大
されました。このへんから、排出事業者が処理業者のところまで見にくるようになったの
です。いままでは、他が取り引きしているところより安いところを選んでいたけれども、
平成12年からは、排出事業者が処理状況を見に来てチェックするように変わってきており
ます。これは平成12年の改正があったからです。
そして平成15年改正で、不法投棄防止の強化が進みました。平成15年の改正の目的は、
当初は、規制の強化と規制緩和の両方でした。規制の強化は、不法投棄対策です。規制の
緩和は、いわゆる事業系一般廃棄物と産業廃棄物の垣根を緩和するとか、有価物と無価物
の間にあるようなものをリサイクルしやすく、もう少し動かしやすくするとかです。規制
の強化と規制の緩和を両方やるという話が最初の話だったのです。ところが、規制緩和の
ほうは、大反対に遭いました。市民グループのほうは、こんなことをやったら不法投棄が
増えるじゃないかという話があり、また、業界団体のほうは、自分たちの利権がなくなる
という非常に強い反対があり、規制緩和は全然できなかった。代わりに規制強化だけがさ
れたというのが平成15年の改正です。
産廃の施設について一廃施設の届出で足りるという話が一応は出たのですが、ほとんど
機能しないような改正で、施設の許可は届出で足りるが業の許可は出ないとか、収集運搬
はどうかという話があり、規制の緩和としてはあまり意味がない改正になりました。
平成16年、今年も改正するといっているのです。今年の改正は何をするかというと、主
に硫酸ピッチを中心とした規制を強化するという話を聞いています。
そういうわけで、去年規制の緩和ができなかったということは、なかなか、廃棄物処理
法の規制緩和が難しいだろう、と。ある意味で、現在の既得権を持っている業者にとって
はその状況が続くことになります。
規制緩和の中で1つのポイントであったのは、全国の収集運搬の許可を取るには政令指
定都市も入れると 100ぐらいの許可が必要だという問題です。行政は、もっと実質的に本
当の不法投棄を捕まえる仕事をして、書類を重複してチェックするのはやめたほうがいい。
1つのところで許可を取ったら、ほかでは審査を簡素化できないかということをずっとい
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われていました。改正されるのではないかと思っていましたが結局できませんでした。
一般貨物は全国許可が取れるわけですから、廃棄物についても、もっと広い許可ができ
ないのでしょうか。しかし、県にとって許可権は、広域処理よりも県内処理を優先する。
つまり、県外廃棄物をできるだけ入れないようにするという1つの重要な役割を持ってい
るのです。従って、運搬の許可の広域化はたぶん難しいだろうと思います。そういう意味
で、新規参入が全然進まない状況がずっと進んでいます。また、最近廃棄物業者に対する
行政指導と行政処分が強化されています。こういう動きを見るには、都道府県のホームペ
ージを見るのが一番いいと思い、ホームページの写しを資料として持ってきました。
宮城県の県のホームページです。全国の都道府県がこういうホームページを持っており、
なかでも廃棄物のことについては非常に詳しく公開されています。
宮城県の廃棄物の現状、行政処分された業者名も公表されています。法律の問い合わせ
も、不法投棄を見つけたらどうしたらいいかということも、全部、ホームページで公開さ
れています。委託契約書式も、マニフェストのことも、許可申請の手続きも、許可業者の
名簿も、全部インターネットで公開されています。
このように、非常にこまかい内容の情報公開が行われていて、ここで1つ1つ項目をク
リックすれば、さらに奥にいけるようになっています。たとえば、行政処分の公表をクリ
ックすれば、その中で何月何日にどの業者がどういう理由で行政処分された、営業停止は
10日だとか、20日だとか、そういうことが全部ホームページで公開されています。情報公
開をしながら行政指導をやっているのが最近の都道府県の特徴であります。
一昨年、環境省が産廃税について検討会を行いました。実は、私はこの検討会の委員
だったのですが。、産廃税については反対でした。産廃税は目的が不明確だからです。そ
れから、税の基本は公平性、透明性です。皆が見て不公平な税金というのはよくない。そ
れから、税金の取り方と使い道に公平性、透明性がないといけない。そうすると、産廃税
というのは、排出事業者から取るのか、産廃業者から取るのか、それが弱いものいじめみ
たいにならないか、あるいは、不法投棄を却って助長しないか、を検討する必要がありま
す。廃棄物の処理価格は当然高くなるわけです。そうすると、不法投棄を助長しないか。
あるいは、集めた税金を、いったい何に使うのか。民間の業者からお金を取り上げて公共
で処分場をつくるというのは、それが公平な税の使い方なのかとか、あるいは、不法投棄
を防止するというのも、きちんとした業者からお金を取り上げて、不法投棄が増えて、そ
の尻拭いをその税金でするというのもヘンな話だろう。そういうことで、税金の公平性、
透明性からきて、産廃税というのはいかがなものか。全国一律にやるならばともかく、地
方自治体で、バラバラなやり方で、税率もバラバラで、産業廃棄物の適切な処理が進むの
かというのが、私には疑問だったのです。いろいろな激論があって、現在、各地で条例化
が進んでいます。東北は、東北3県(青森、岩手、秋田)ブロック制で、協調してやると
いう方向を打ち出しておりますが、それができるかどうかまだ問題もあります。そういう
意味では、地方自治体の地方分権という名前のもとに、ただでさえわからない法律が、余
計わかりにくくなるという現状があります。
それから、産廃税を認めるかわりに、住民同意はやめられないのかが問われます。住民
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同意というものが、いったい何を根拠に、誰が同意するのか、何キロまで同意させるのか。
水域の下流のどこまで要求するのかが全然わからない。恣意的にやろうと思えば、どこま
でも関係住民になってくるわけで、基本的には悪用しようと思えば1つもつくらせないと
いうことができるのです。民間にやらせておきながら住民同意を取るというのは、これは
却って歪なお金の流れを生むことになります。しかし、産廃税をやっているところが住民
同意をやめるかといったら、そんなことはできないわけで、住民同意は絶対やらないと選
挙に影響するという地方自治体の気持があるわけです。だから、自治体としては、産廃税
をやるし、住民同意もやるという流れがあります。
私は個人的には住民同意は絶対にやめたほうがいいと思います。住民同意に代わる、住
民協定とか、契約書のかたちにして、1回限りのお金で買うような同意書で、しかも後で
引っ越してしまうような人に同意書をもらっても意味がありません。永続的に処理をきち
んとして、それに住民が協力して監視し、育てていくというような協定書をつくるべきだ
と思うのです。
不法投棄の場合、豊島の時には排出事業者は一部和解金で払っています。しかし、青
森・岩手の時には1万何千社に行政が報告を求めるというようなものがきたのです。大企
業が多く含まれていました。措置命令が出された何社かは一時期は株価がすごく下がった
ということもあり、大企業としては非常にショックでした。それで、優良廃棄物業者の選
定基準を作るようになっています。
優良業者を選定する方法としては、マニュアルをつくって、近所の評判を聞くとか、挨
拶がきちんとできているかとか、ストックヤードがきれいに整頓されているかとか、他の
大手と取り引きしているか、経済状態の貸借対照表を見せてもらって経営が安定している
かどうか、といったことをだいたい見ているわけです。そういうなかで、相当、淘汰が進
んできています。
それから、最終処分場は、全然新しいところができないという状態が続いております。
最終処分場が不足していても、反対のため作れない。公共が作ろうと思っても、反対があ
ります。日本では、最終処分場の問題は、いよいよ出口が狭まってきていますので、今後
大変な問題になると思います。その意味ではリサイクルを拡大しなければいけないのです
が、リサイクル業の新しい施設をつくるのにも住民同意が必要で、なかなか、中間処理の
施設ができないという問題があります。
廃棄物業者の方は、本当に世代交代の時代を迎えてきております。やはり、戦後の日本
を担って、一代目がそろそろ後継者に譲ろうかという時代を迎えております。そうすると
二代目がどの程度育っているか。新しい時代で、いろいろと学問も身につけて、ほかでも
経験を身につけているけれども、非常に経営の難しい業界であるので、そういう波をどう
いうふうに越えていくかということは大変な課題になってきています。世代交代で失敗し
て淘汰の波に巻き込まれていくところもかなりあるように思います。
あとは、刑事処分で、役員が酔って喧嘩したというような話でも許可取り消しになる時
代です。そんな産業はほかにないのですが、この業界の刑事処分の連座制というのでしょ
うか、1人が悪いと全員資格取り消しとか、承継を認めないとか、きわめて厳しい制度に
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なっています。
こういう現状ですので、将来的にどういうことが必要になってくるか、ということを常
に考えなければいけない。いまの法律を知っているということは当たり前のことで、将来
法律がどうなるかということを考えて、あるいは、将来社会がどうなるかということを考
えないと、経営というのは投資ができないわけです。そういう意味では、将来、廃棄物処
理法がどうなるかということが重大な関心事です。
簡単にいって、規制緩和があるかということですが、家電リサイクル法ができ、自動車
リサイクル法ができました。しかし、これは規制緩和とはちょっといえないでしょう。今
後は、ああいうリサイクルの個別法をつくらないで、もう少し製造業に責任を強くする方
向がおそらくあるのだと思います。
最近、規制緩和で注目を浴びているのは特区です。つまり、全国レベルで規制緩和をし
ようとすると、みんなが反対するのです。自由化というのは、消費者団体も、住民も、産
業界も、みんなそれぞれに反対する声のほうが大きいのです。だから、特区で、この地域
だけで限定的に緩和するとか、そういうかたちで地方分権を逆に進めたかたちでいく。い
ままでは地方分権を押さえて、国レベルで廃棄物を考えようとしていたのが、徐々に、地
方分権を認めざるを得ない。地方分権を前提にして、特区で今度は廃棄物のリサイクルを
進めようというような動きがあります。
今後規制強化はあるか。環境省としては、相変わらず、悪質業者を淘汰したいという気
持は非常に強いので、悪質業者淘汰の方向で廃棄物法を改正していくでしょう。しかし、
廃棄物業者と呼ばれるなかで、兼業は多く、いわゆる廃棄物処理業だけをやっているとい
うのはすごく少ないのです。鉄リサイクル業者などもそうだと思いますが、自分の産業に
廃棄物がはいっている、又は、一般貨物の運搬をやりながら廃棄物もやっているとか、あ
るいは、建設業の下請けなのだけれども、廃棄物の許可も念のため持っているとか、そう
いうふうに兼業の方が非常に多いのです。それから、中間処理と最終処分と運搬を1つの
法律でくくっているという、この難しさがある。もともと、全然、業態が違います。運搬
業は思い切って廃棄物処理法から分けて運送法のほうに統一してもいいのではないかと思
うのですが、なかなかそれもできない。そういう意味では、将来的展望としては、規制強
化はあっても規制緩和は限定的にしかできないだろうというふうに思います。
廃棄物処理業の基本は、製造業ではなくて、どちらかというとサービス業なのです。そ
うすると、値段の勝負も大事ですが、サービス業としてどういう事業を提案していくかが
重要です。これからの提案型のビジネスしかあり得ないのではないか。市場規模が非常に
大きい。悪質業者の排除の動きも非常に大きい。こういうなかで、どうやってサービス業
としての提案型になっていくか、情報公開を進めていくか、ということを考えなければな
らないと思います。
私は、環境省でやっている『環境報告書』のガイドライン改定の検討委員、それから
「環境レポート大賞」といって、環境報告書の審査の委員もやっているのですが、廃棄物
業界からの『環境報告書』の応募はとても少ないのです。2、3社しかありません。やは
り、これからは、『会社案内』をつくる時に、その中に環境配慮をどうやっているか、順
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番としては、ISO14001を取って、自分の環境負荷を定量的に把握したあと、それ
をどうやって情報公開していくかというふうな流れになるのだと思いますが、そういう意
味では、自分たちの事業の環境負荷を定量的に把握して、それを情報公開していくことが
今後は非常に重要な問題である。それから、大企業は揃ってゼロエミッションということ
を標題に掲げておりますから、排出元に対しては、どういうふうにゼロエミッションに貢
献できるかという具体像を提案していく必要があります。価格だけでは永続的な取り引き
のパートナーとして認められることにはならないのです。
最近は逆に、系列化が進んでいるように思います。食品流通でも話題になっていますが、
いま、トレーサビリティというのが合い言葉になっています。これは、追いかけることが
できるという意味です。つまり、自分が売っている商品について、この部品はあそこでつ
くったこういう原料で、こういう添加物が入っていますというふうに、上流まで追いかけ
ることができる。逆に、自分が売った商品については、あの業者を通じてここに売ってい
るのだなと追いかけることができる。昔ならば独禁法に違反するような気がしますが、最
近はそれが追えることが非常に大事なことなのです。スーパーマーケットでは、生産地表
示が義務づけられています。
同じように、これからは、モノを売る時には、これは何でできて、どこからきたものか、
トラブルがあったらどこまで特定して回収できるか、ということが非常に重要になってき
ています。その意味では、廃棄物業者もどこから入れたものがどこへいっているかという
ことを、自分の事業として把握できるシステムにしないと、トラブルがあった時に対応で
きません。たとえば牛肉でもそうですが、どこから仕入れたものかわからなかったら、ト
ラブルの際に全部を捨てなければいけない。でも、あの日にここから仕入れた商品だとい
ったら、そのラインだけを止めれば、あとの商品は売れるわけです。同じように、これか
らは取り引きをする時に、何か異常なものが入ってくる、何か異常なものを出してしまっ
た、そういう時に、どこの部分が悪いのかを的確に把握して、そこだけを止めればあとは
大丈夫ですというふうに保証ができる。あるいは、問い合わせがあった時に答えられる。
そういうトレーサビリティを要求されるようになってくると思います。
そうすると、廃棄物業者は、自分の排出元にトレーサビリティを要求されているわけで
す。排出物に何かあったら、どこにいったかいつでも答えなければならないよ、というふ
うになっているわけです。最近、宅急便なども、インターネットで調べれば、あの倉庫に
入っているというのがわかるそうですが、そのぐらい、モノの物流が透明化されてきてい
る。ですから、いつでも、自分のかかわった商品はどこにいったかということがトレース
できるということが非常に重要になってきている。そういう従業員教育、管理能力が大事
であると思います。
最後に格付けについてちょっと話します。
岩手県は産廃業者の格付けをするという条例をつくり、すでにやっております。私は、
青森県での産廃業者の格付けシステムの検討委員会をやっているのですが、まだ結論は出
ていません。いずれにしろ、行政が産廃業者を格付けする能力があるのか、何を根拠にで
きるのかというのは非常に難しい話で、岩手県では県の廃棄物業者の団体に委託するかた
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ちで格付けするということですが、なかなか、業界団体としては難しいと思います。いず
れにしろ、そういう意味では淘汰の目が光っている、ということが重要なことであると思
います。
「宮城県のホームページ」
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