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ネット時代における中国の消費拡大の可能性について

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ネット時代における中国の消費拡大の可能性について
ISSN 1346-9029
研究レポート
No.432 July 2016
ネット時代における中国の消費拡大の可能性について
主席研究員
金
堅敏
ネット時代における中国の消費拡大の可能性について
主席研究員 金 堅敏
[email protected]
【要
旨】
○成長率のスローダウンや株式市場暴落、資金流出、過剰投資などで中国経済の弱さが露
呈され、経済成長の鈍化が鮮明になってきている。中国人観光客による「爆買い」など
で潤った日本をはじめ、世界各国は中国経済の成長持続性に関心を寄せている。中国自
身も、投資から消費へと政策を大転換して経済成長の安定性を図っている。データ検証
では、確かに経済成長への消費の寄与率は高まってきている。
○その消費構造を検証すると、衣・食から居住・移動へ、モノからサービスへの変化がよ
り鮮明になってきている。また、格差是正のための農村住民に対する所得向上対策、物
流インフラや情報インフラの整備などで農村市場の潜在性が顕在化され、これまで都市
部と 10 年の差があるとされる消費の遅れがなくなりつつ、都市住民の消費構造に近づい
てきている。さらに、これまで消費を牽引してきた不動産/自動車とともに新規消費領域
として情報消費が台頭してきている。スマホ、スマート家電・デバイス、デジタルコン
テンツ、IT(情報技術)を基盤とした情報関連消費が次世代消費の牽引役として台頭し
てきている。
○情報関連消費でもっとも注目されているのが中国のネットショッピング(消費者 EC)であ
る。EC の成長率も小売り総額に占めるシェアも世界平均の 2 倍以上で、明らかに特殊な
存在になっている。その背景には、情報インフラ、取引のセキュリティや信用体制、オ
ンライン決済システム、EC 物流等のインフラが急速に整備されてきている。EC の取引内
容では、
「軽いモノ」から「重いモノ」へ、「定型のモノ」から「非定型のモノ」、「保存
系」から「加工品」そして「生鮮食品」へ、
「モノ」から「サービス」へと広がりを見せ
ている。また、前述した農村消費市場の顕在化も EC の役割が大きいと言える。さらに、
ネット技術のさらなる普及により「微電商」(Social Commerce)もはやり始め、企業マー
ケティングのチャネルとして欠かせなくなっている。
○日系企業は、中国経済鈍化の原因や消費拡大の形成要因などを正しく把握し、中国の消
費拡大の可能性に過剰な期待をせず、無用な悲観を避け、適切な対策を練っていくこと
を期待したい。
キーワード:消費構造 社会保障 二元論 情報関連消費 微電商
目
次
はじめに---------------------------------------------------------------------------------------------------------- 1
1. 安定する消費動向とその背景--------------------------------------------------------------------------- 2
1.1 中国経済の現状確認と消費動向------------------------------------------------------------------ 2
1.2 消費安定の背景:所得や雇用の安定、社会保障制度の整備------------------------------ 4
2. 高度化と広がりを見せた消費の構造変化------------------------------------------------------------ 7
2.1 消費の高度化:衣食から居住・移動、モノからサービスへ------------------------------- 7
2.2
消費の広がり:農村消費市場の顕在化と高度化------------------------------------------ 8
3.新規消費分野として注目される「情報関連費」--------------------------------------------------11
3.1
不動産/自動車級の消費分野に育成-----------------------------------------------------11
3.2
多様なネット消費市場:オンライン教育の例-----------------------------------------13
4.内需拡大の牽引役に期待されるネットショッピング--------------------------------------------14
4.1 世界で突出する中国のネットショッピング市場--------------------------------------------15
4.2 ネットショッピングが隆盛する背景------------------------------------------------------------16
4.3 ネットショッピングの新しい動き---------------------------------------------------------------20
おわりに----------------------------------------------------------------------------------------------------------23
主な参考文献----------------------------------------------------------------------------------------------------24
ネット時代における中国の消費拡大の可能性について
はじめに
日本では、世界第 2 位の経済規模を有する中国が成長率の低下や株価暴落、企業債務の
高まりと収益の悪化、資金流出等に直面し、経済的な文脈での「チャイナリスク」が議論
されている。実際、中国経済に関する悲観論は世界中で蔓延している。確かに、中国の経
済成長率は、2007 年の 14.2%から 2015 年の 6.9%まで 8 年間で半分以下になった。世界金
融危機の震源地であった米国経済が回復しているにもかかわらず、中国経済の力強さは見
えなくなった。また、株式市場は、昨年央の高値から約 45%近く急落し、世界中の資本市
場に大きなインパクトを与え、世界中の投資家に一喜一憂をもたらしている。さらに、為
替制度の市場化に向けた改革のためか不振な輸出振興のためかは論争があろうが、2015 年
8 月に三日間で約 5%近く切り下がったことを契機に中国元の継続的な切下げが進むのでは
ないかと連想させ、資本逃避が生じている。
もっとも、中国経済では、市場動揺に隠れた構造問題、例えば地方政府や企業の債務過
剰、生産設備能力の過剰、深刻な環境問題、生産労働人口の減少などがあり、その構造問
題を解決するため中国当局は、景気対策を控え、いわゆる潜在成長率に見合った経済運営
が営まれる「新常態」(ニューノーマル)に入るとアピールし、経済発展の原動力を投資、
輸出から、消費主導に重みを置き、
「第 13 次 5 ヵ年計画」(2016~2020)の経済運営を始め
ている。
他方、近年になり世界各地で中国人観光客が押し寄せ、高級品から生活用品まで買いま
くる「爆買い」が続いており、日本の小売業やサービス業が潤い、中国の消費パワーへの
期待を膨らませている。また、海外における中国の個人投資家による不動産買いあさりが
生じており、香港、台湾、シドニーなどでは現地の不動産価格が押し上げられ、現地住民
が中国資本を非難する社会問題さえ生じている。日本の不動産市場でも中国個人投資家資
本が入りつつあり、中国人バイヤーへの期待と不安は近年大きく高まってきている。また、
中国国内の消費市場はかつてのような力強さはないものの、経済成長率の鈍化や資本市場
の動揺にも振れることなく、安定した成長を続けている。特に、若者の消費態度は依然明
るさが見られ、中国版「サイバーマンデー」である「独身の日」では加熱した買い物の動
きを見せている。
このように、海外・中国国内を問わず、経済成長への悲観論の蔓延の一方で、中国消費
者における海外での「爆買い」や国内での不動産購入急増など、一見矛盾したような現象
が生じている。最近、筆者のところには、中国人観光客による「爆買い」の持続性に戸惑
いや懸念を持ち始めた日本のビジネス界やメディアからの問い合わせ、中国の消費力を理
解するための質問、ポスト「爆買い」の対応についての問題提起等が後を絶たない。確か
に、中国の経済成長率鈍化と消費の安定さや「爆買い」との矛盾を理解するには、中国経
済鈍化の原因や消費能力の形成要因などを正しく把握する必要があり、中国の消費パワー
1
に過剰な期待をせず、無用な悲観を避けるためには、中国の消費者の態度や消費構造の変
化を検証する作業が必要である。特に、ネットの普及で企業の経営環境や消費環境も大き
く変わってきており、対中消費者ビジネス戦略も練り直すことが重要である。
1.安定する消費動向とその背景
中国経済成長への悲観論と中国消費成長への期待が錯綜している背景には、資本市場の
過度な変動が中国の実体経済の判断を難しくしていることがあるように思われる。まず、
中国経済成長の持続性を正しく認識しておく必要があろう。実体経済の発展段階から見れ
ば、中国はまだ日本の 1950 年代後半から 1970 年代初期までの高度成長から安定成長に転
換する時期に相当すると考えられる。
1.1 中国経済の現状確認と消費動向
日本では、1974 年にマイナス成長(その時、日本社会はもう経済は駄目かと懸念したと
いわれている)を経験した後、それまでの年平均 9%台の高度成長から 4%あまりの安定成
長の軌道に乗った。その後、日本は、環境汚染、省エネルギー、地域格差、企業のイノベ
ーション能力などの課題を解決して高所得国へとまい進した経緯があった。世界銀行のデ
ータで検証すると、
2014 年の中国の一人当たり GDP(実質、
2005 年米ドル価格、constant 2005
US$)は、3,863 ドルで日本の 2014 年の 3 万 7,595 ドルの一割しかない。仮に購買力平価で
計っても中国の一人当たり GDP(実質、2011 年国際ドル、PPP (constant 2011 international
$))も 1 万 2,599 国際ドルで日本の 3 万 5,635 国際ドルの約 35%である。IMF の名目一人当
たり GDP データで見ると、
1970 年日本は 1,976 米ドルで 2006 年の中国の 2,077 ドルに近い。
9 年後の日本の一人当たり GDP(1979 年)は 8,727 ドルになり、同期間を経て中国では約
8,300 ドル(2015 年)になった。そして、日本では 1985 年に 11,120 ドルに達し、先進国と
しての高所得国に仲間入りを果たした。中国では 4 年後の 2020 年には 12,117 ドル(IMF の
最新予測)という高所得国になるだろうと推定されている。中国当局も、中所得国のレベル
で停滞し、先進国(高所得国)入りがなかなかできない状況、つまり「中所得国のワナ」
を克服して「小康社会」を実現しようとしている。
このような転換期(中国では安定成長の「新常態」への転換という)に当たって、2015 年
の固定資本形成(投資)の伸び率が 2010 年と比べ、約 1/3まで低下し、GDP 成長への寄与
度も 2010 年の 5.5%から 2015 年の 2.5%まで半減した。だが、最終消費の GDP への寄与度
は、2010 年の 4.5%から 2015 年の 4.6%へと逆に若干増えている。因みに、純輸出の GDP
寄与度は、2010 年の+0.4%から 2015 年の-0.2%までに悪化した。海外では、GDP に占め
る中国の家計最終消費の比率が 1980 年代の 50%前後から最近の 35%前後まで低下し、消
費の弱さが強調される向きがあろうが、データで検証すれば分かるように近年は消費が成
長の主力になりつつある。
図表1は GDP 成長率と家計消費(一人当たり平均)の増加率を示している。2008 年まで
2
は消費成長は GDP 成長率を下回ったが、その後はほとんどの年で GDP 成長率を上回ってお
り、経済成長における消費の役割が重要になってきていることが確認できる。図表 2 が示
すように、消費成長と連動しているのが卸/小売業であり、その付加価値は他産業と比べ安
定に成長していることも確認できる。データベースで 2015 年の家計最終消費の伸び率はま
だ確認できていないが、小売業の伸び率から GDP 成長を上回る成長になっていると推測さ
れよう。
図表1 GDP成長率と家計消費指数の推移
115.0
(前年=100)
家計消費
113.0
GDP
111.0
109.0
107.0
105.0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
図表2 各産業の付加価値生産増加指数(実質)の推移
(前年=100)
120.000
金融業
115.000
卸・小売業
110.000
工業
105.000
不動産業
100.000
2013/06
2013/09
2013/12
2014/03
2014/06
2014/09
2014/12
2015/03
2015/06
2015/09
2015/12
出所:CEICにより筆者作成
金融危機後の 4 兆元投資対策の効果の終了に伴い、経済成長における消費牽引の役割が
顕在化し、図表 3 が示すように 2015 年に GDP 成長に対する消費の寄与率は 66.4%に達し、
フローベースで消費主導の需要構造が形成されつつあると言えよう。2016 年第一四半期に
は、投資の寄与率がさらに低下し 35.8%になったが、逆に最終消費は 84.7%まで大きく拡
大することで、外需の不振をある程度カバーして GDP 成長の安定維持に貢献した。
消費の伸びが拡大しているわけではなく、投資需要と外需が縮小している分、消費の寄
与率が相対的に大きくなった側面もあろう。しかし、GDP 成長が大きく鈍化し、株価の急落
に伴う逆資産効果も加われば消費は鈍化するはずだと一般的に想像されるが、実際には小
売りが伸び、消費の成長が安定している背景には何があったのかを検証する必要がある。
3
図表3 需要別のGDP成長への寄与率
%
35.8
87.6
46.9
52.9
48.8
54.4
50.4
36.1
48.5
投資
84.7
44.1
49.8
9.0
43.1
55.5
4.0
-4.3
51.8
-2.2
50.0
51.2
-4.4
0.3
66.4
消費
純輸出
-2.5
-20.5
-37.4
2008年
09年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
2016Q1
2
出所:中国統計局
1.2 消費安定の背景:所得や雇用の安定、社会保障制度の整備
消費者動向調査の世界大手 Nielsen の調査によると、2015 年第 4 四半期の全世界平均の
消費者信頼感指数(CCI)は 97 で第 3 四半期より 2 ポイント上がったが、中国の消費者信頼
感指数も 107 で第 3 四半期から 1 ポイント上昇した1。主要経済の中で中国消費者の信頼感
指数の水準は、英国(101)、米国(100)、ドイツ(98)、日本(79)より高くなっている。因み
に、これら主要国の 2015 年第 4 四半期の CCI は軒並低下した。
中国消費者の就業や個人所得に対する信頼感は若干低下して安定の方向に向かうことに
対して、消費支出意欲は継続的に高まっている。地域別、男女別でみると、高所得者や若
者の集まる北京・上海・広州・深せんなどの大都市と農村地域は消費者信頼感指数が高く、
特に若い女性消費者の信頼感指数が特に高いという。また、消費者の関心事項は、収入、
健康、医療保健が上位にランクインしている。
このように、消費者の関心事がもっとも高いのは収入である。中国の消費成長を維持さ
せてきているのは、これまで財政や企業に偏った所得配分を住民(労働者)に向かわせ、
投資主導から消費主導の経済成長モデルへ転換する中国当局の政策が影響していると考え
られる。2011 年~2015 年の「第 12 次 5 ヵ年計画」において年平均成長率目標は 7.0%であ
1
Nielsen “Q4 2015 Consumer Confidence Report” 。CCI は、就業見通し、個人所得状況と直接支出意欲
の三つの指標についてアンケート調査を行って計算される。指数は 100 を超えると、消費への積極的意
向を、100 を下回ると消極的な意向をそれぞれ意味する
4
ったが、住民の可処分所得は 7.0%以上と設定された。これまで GDP 成長率を大きく超えた
財政収入や企業利益の伸び率は低下し、2015 年にはついに GDP 成長率を下回ったが、2009
年ごろから住民の可処分所得の伸びは GDP 成長率を上回って安定した伸びを見せている。
中国当局は、最低賃金の持続した引上げなどによる住民の所得向上とともに社会保障シス
テムの整備を併せて消費力を引き出そうとしている。
他方、中国の家計貯蓄率は、1990 年代初期の 15%前後から近年の 30%前後に高まってき
ている。これは、1 桁代の他のアジア新興国と比べ消費力に非常に高い潜在性があるとも考
えることもできる。
図表4 中国の求人倍率、都市部新規雇用計画と実施の推移
労働市場の求人倍率の推移
倍率
1.20
1.10
1.07
1.00
0.90
0.80
0.70
01Q1
01Q2
01Q3
01Q4
02Q1
02Q2
02Q3
02Q4
03Q1
03Q2
03Q3
03Q4
04Q1
04Q2
04Q3
04Q4
05Q1
05Q2
05Q3
05Q4
06Q1
06Q2
06Q3
06Q4
07Q1
07Q2
07Q3
07Q4
08Q1
08Q2
08Q3
08Q4
09Q1
09Q2
09Q3
09Q4
10Q1
10Q2
10Q3
10Q4
11Q1
11Q2
11Q3
11Q4
12Q1
12Q2
12Q3
12Q4
13Q1
13Q2
13Q3
13Q4
14Q1
14Q2
14Q3
14Q4
15Q1
15Q2
15Q3
16Q4
16Q1
0.60
都市部新規雇用者の計画と実績の推移
万人
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
計画
実績
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
3
出所:中国人力資源部
消費の拡大には雇用の安定を維持しなければならない。中国では、GDP 成長率は低下して
いるが、産業構造の変化などにより、雇用の成長弾力性(新規雇用人数/成長率)が大きく高
まってきている。例えば、2015 年の第三次産業は GDP の 50.5%を占め、2014 年より 2.3%
ポイント高まった。中国の国家統計局によると、第三次産業では 1%ポイント増加で約 100
万人の新規雇用を創出できるが、
第二次産業(工業)では約 50 万人しか創出できないという。
2010 年の雇用の成長弾力性は 1%成長率で約 112 万人の新規効用を生み出したが、2015 年
では単純平均で約 190 万人まで高まってきている。実際、中国労働市場における求人倍率
は、1.1 前後で推移しており、2008 年の金融危機の時のような雇用不安は生じていない。
5
雇用の安定は、消費の安定成長に大いに寄与していると言える。
中国の消費を支えるもう一つの要素は、整備されつつある社会保障制度とも関係してい
る。これまで中国の貯蓄率が高いのは、社会保障制度の未整備で老後や病気などに備えて
いるのではないかと一般的に解釈されている。確かに、改革開放政策の下で社会主義体制
下の旧来の社会保障体制は崩壊した後、社会保障制度は空白時期が続いた。しかし、1990
年代以降には市場経済の枠組みのなかでの社会保険制度の整備が徐々に行われた。図表 5
が示すように、社会保障の二大分野である養老保険(年金)と医療保険の加入者数は拡大し
続けており、国民の大半はカバーされている。
図表5 全国年金加入者数と都市部医療保険加入者数の推移
億人
9
全国年金加入者数
8
都市部医療保険加入者数
7
6
5
4
3
2
1
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
出所:CEIC
例えば、医療保険制度では、まず会社の従業員に対して 1998 年に「職工医療保険」制度
が整備された。2002 年に農村住民(農村戸籍を有する住民)を対象とする「新型農村合作医
療保険」制度が開始され、続いて 2007 年に非雇用都市住民(都市戸籍を有する住民)を対象
とする「都市住民医療保険」制度が開始された。制度開始当初は、保険料や支払いの度合
いも低かったが、徐々に保険適用対象や金額も引き上げられた。2015 年末現在、
「職工医療
保険」
、
「都市住民医療保険」の加入者数はそれぞれ、2 億 8,894 万人と 3 億 7,675 万人 、
2014 年の「新型農村合作医療保険」加入者数は 7 億 3,600 万人で 、合計約 13 億人以上が
6
医療保険に加入している。2015 年には「新型農村合作医療保険」制度と「都市住民医療保
険」制度の統合が決定され、日本の国民皆保険に近い医療保険制度が目指されている。ま
た、世界銀行の統計によると、衛生に関する社会総支出における個人負担比重は、2001 年
の約 60%から次第に低下し、2014 年には 32%まで低下してきている2。
他方、医療制度と同じように、中国の年金制度もいくつかタイプがあった。まず、1997
年に企業従業員を対象とする「職工基本養老保険」制度が開始された。次に、2009 年に農
村住民(満 16 歳)を対象とする「新型農村社会養老保険」制度が整備され、続いて 2011 年
には都市住民(満 16 歳、都市戸籍)を対象とする「城鎮住民社会養老保険」制度も開始され
た。2014 年に「新型農村社会養老保険」制度と「城鎮住民社会養老保険」制度の統合が決
定され、日本に類似した年金制度が目指されている。2015 年末現在、
「職工基本養老保険」
加入者は 3 億 5,361 万人で、農村都市「住民社会養老保険」加入者は 5 億 472 万人に達し
ており、同じく国民皆保険に近いシステムができつつある。
このように、所得や雇用が安定しているとともに、医療保険や年金制度が整備されたこ
とは、消費成長の制度的基盤を提供していると言えよう。
もちろん、中国の消費者の消費意欲が比較的に高いのは、別の要因も存在しているので
はないかと考える。自動車や不動産とともに IT の急速な普及に伴う情報消費などの消費ホ
ットスポットが生じたのも消費力を支える背景にあるのではないかとも考えられる。実際、
調査会社エーシーニールセンも、中国の消費が安定しているのは、今後の就業期待や所得
期待が安定していることに、大都市部若者と農村消費者の意欲向上を引き出したネットシ
ョッピングの隆盛が大きな役割を果たしていると解説している。
2.高度化と広がりを見せた消費の構造変化
以上で見てきた消費規模の拡大とともに、近年、中国の消費構造の変化や高度化が加速
してきた。元来の基本需要としての衣食から住居、移動、教育、観光などの発展性や生活
享受タイプの消費へ変化してきている。さらに、近年では、追随的な消費段階から個性化、
多様化の消費段階に突入しつつある。
2.1 消費の高度化:衣食から居住・移動、モノからサービスへ
中国都市住民の消費分野支出金額の大きさでは、食品、居住、交通、アパレル、教育、
通信、文化娯楽、耐久消費財の順(2014 年)になるが、図表 6 が示すように住民の消費は
いくつかグループを形成している。食品、アパレル、耐久消費財のベースグループは、成
熟した分野で大きな伸びは見られない。特に耐久消費財は、普及が進み飽和状態になった
と言える。交通と居住消費というグループは、大きく伸びており、政府の狙うとおりに住
民消費のメインプイレヤーになっている。今後も都市化が進むので、ある程度の期間内で
は市場のさらなる拡大が見込まれる。次のグループは、モノからサービスへのシフトの代
2
http://data.worldbank.org/country/china
7
表例として医療保健サービス、文化娯楽サービス、通信サービスなどが大きく伸びており、
今後も期待される市場として大いに注目される。
ただ、2013 年ごろからの通信の伸びが今一つ見られないのは、ネットの普及で通信より
もコンテンツ消費として文化娯楽サービスにカウントされている可能性がある。最後に新
たなサービス分野として期待されている教育サービスと家事サービスも予想とは裏腹にあ
まり伸びていない。教育については、義務教育の充実等で産業化が難しい側面もあろうが、
技能教育や生涯教育市場が未発達である側面がある。また、家庭サービスが増えないのは、
中国では家族で年配者のケアをするなどの習慣があり、市場の拡大が今一つ見られないか
らであろう。しかし、高齢化が急速に進んでいる中国において労働力不足も生じており、
今後は、家事サービスの社会化が進むと考えられる。
図表6 都市部住民の分野別消費支出の変化
(1995年=100、名目)
交通
2000.0
居住
文化娯楽
1600.0
医療保険
通信
1200.0
教育
アパレル
800.0
食品
家庭サービス
400.0
耐久消費財
0.0
出所:CEICにより筆者作成
2.2 消費の広がり:農村消費市場の顕在化と高度化
中国の消費市場でもうひとつ目を放せないのが農村市場の顕在化である。市場経済が発
達している成熟した先進国市場では、一国市場を都市部市場と農村部市場にわける必要は
ないが、中国では「戸籍」制度によって都市住民と農村住民(いわゆる二元構造)に分け
られ、統計上も別々となっている。これまでは消費意識や消費行動も大きく異なっていた。
農村地域の消費流行は都市部より 10 年遅れると言われてきた。したがって、農村市場の開
8
拓は、中国にとって大きな政策課題にもなっている。
中国国家統計局によると、中国の農村部の居住人口は、2005 年の 74,544 万人(全人口の
57.0%)から 2015 年には 60,346 万人(同 43.9%)に減り、10 年で約 1 億4千万人も都市部
に移住したが、なお 6 億人を超えている。消費主導による経済成長戦略を実現するには農
村地域の政策対応が急がれる。農村住民一人当たりの消費支出金額では大きく伸びてきて
いるが、図表 7 が示すように都市住民一人当たりの消費支出金額に対する農村住民の割合
は、平均で 35%前後にとどまっている。特に、90 年代後半から沿岸都市部の輸出主導経済
が点火し、農村市場対策を怠ったことで、農村住民の支出には伸び悩みが見られた。2007
年のサブプライム危機を契機に内需主導の戦略転換が余儀なくされ、農村の消費市場育成
政策(「人民日報」2009 年 6 月 1 日)が打ち出されるようになった。
額(元)
10000
図表7 農村住民の一人当たり消費支出額と都市住民に対する
農村住民の割合の推移
割合(%)
45
消費支出金額(左軸)
8000
農村住民の比率(右軸)
40
6000
35
4000
30
2000
25
0
20
出所:CEICにより筆者作成
その対策には、1)農村住民の所得向上(農業税の免除、教育費用の補助、農村生産基盤の
強化など)、2)農村地域の消費需要を引き起こすための物流、電力、情報インフラの整備な
どの整備加速、3)農村住民にかかわる社会保障制度の整備などが含まれる。これらの対策
によって農村住民の所得伸び率(図表 8)は GDP 成長率と都市部住民の可処分所得伸び率よ
りも高くなり、農村住民の消費支出ペース(図表 9)は明らかに都市住民よりも速くなって
9
いる。因みに、可処分所得の絶対額では、2013 年から 2015 年まで農村部住民はそれぞれ都
市部住民の 35.6%、36.4%、36.6%しかないが、同時期に一人当たり消費支出額の都市部
住民に対する割合では 40.5%、42.0%、43.1%となり、都市住民より高い消費性向が見ら
れる。
また、前述したように、過去の研究成果では中国の農村住民と都市住民の消費顕在化は
10 年の差があるといわれている。つまり、都市部でのヒット商品や普及品は、10 年後に農
村部でもヒットになり普及されるようになっていた。かつての耐久消費財や二輪車などは
このような時間差で市場が拡大してきた。しかし、出稼ぎ労働者の拡大や都市化の加速、
流通インフラ・情報インフラの整備により都市と農村の融合が進んでおり、その差はだん
だん縮小している。農村部住民の分野別消費支出の変化を検証すると、2010 年ごろまでは
どの分野も伸び率は緩やかであったが、その後、交通、通信、医療保健、そして 2013 年ご
ろからこの 3 分野とともに居住関連と教育娯楽関連が急速に拡大してきた。つまり、食品
や衣服といったベーシックニーズは飽和状況になり、他の分野は、都市部と同じような拡
大傾向が見られた。このような現象は、中国の農村市場について分析の枠組みとしての「二
元論」が使用しえなくなることを意味し、企業の市場戦略に大きなインパクトを与えると
考えられる。
図表8 GDP成長と住民可処分所得伸び率(実質)の推移
成長率(%)
15
GDP成長
14
13
都市部可処分所得
12
農村住民純収入
11
10
9
8
7
6
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
図表9 住民消費支出(実質)の推移
114
前年=100
農村住民
112
都市住民
110
108
106
104
2005
2006
2007
2008
2009
2010
出所:CEICにより筆者作成
10
2011
2012
2013
2014
2015
3.新規消費分野として注目される「情報関連消費」
1990 年代半ば以降、特に 1997~98 年に起きたアジア通貨危機を契機に、中国では経済成
長を牽引できる消費セクターを検討してきた。一つの分野は、第十次五ヵ年(2001-2005 年)
で提起された自動車消費政策(自動車の個人消費促進)である。小型自動車消費の奨励策は、
2008 年の金融危機対策や 2015 年の景気対策としても取られた。自動車普及率が千人当たり
106 台(2015 年)しかない状況を考えると、今後も消費のエンジンとして期待されるが、年
間販売が 2,460 万台と高まった自動車市場は、都市交通問題やエネルギー安全保障問題、
環境問題などで高成長はもはや期待できなくなっている。いま一つの分野は、1998 年の住
宅制度改革(住宅の配給制度から市場取引制度への変更)を契機に成長してきた不動産市場
である。しかし、不動産市場も過熱、引締め、再加熱、最引き締めの繰り返しで 10 数年間
の高度成長でバブルが生じた。中国の都市化率(2015 年末の居住地ベースでは約 56%、戸
籍ベースでは約 40%3)がなお低く、市場の成長はなお可能であろうが、自動車と同様にか
つてのような高成長は期待できなくなった。つまり、二つの重量級消費分野がいずれ期待
できなくなり、その次に期待されたのが情報関連消費である4。
3.1 不動産/自動車級の消費分野に育成
情報関連消費を促進する政策提起の背景は、IT やインターネットの普及により情報分野
の新製品、新サービス、新業態の出現により新たな消費形態が形成され、消費のホットス
ポットになっているからである。中国メディアでは、移動端末による通信、閲覧、検索、
音楽、ゲーム、小説閲覧、メールという 7 つの古いニーズに加えて、移動端末による証券
売買、オンライン支払、オンライン観光予約、オンラインショッピング、ネットバンキン
グ、グループショッピング(中国の特有性あり)、オンライン視聴という新たな 7 つの需要
がブームになっていることを報道している5。
2013 年に中国は、情報関連消費を促進する産業/消費政策(「情報消費促進と内需拡大に
関する国務院の若干意見」)を制定した。当該情報関連消費奨励政策では、情報製品(ハー
ド)、情報サービス・コンテンツ、インターネットによる消費促進を三本柱としているが、
特に移動ネット、IoT、SNS、ビッグデータ、クラウドコンピューティングを基盤とする情
報関連消費分野の拡大に期待している。具体的な政策手段としては、
「ブロードバンドチャ
3
4
5
「中華人民共和国国民経済和社会発展第十三個五年規画綱要」を参照
情報関連消費とは、住民と政府部門による情報関連製品と情報関連サービスの最終使用を指し、基本的
には 6 種類の情報関連製品(機能携帯、スマートフォン、液晶 PC、マイクロコンピューター、スマー
ト TV、IPTV 端末などのネットワーク化端末)と、4 種類情報関連サービス(音声サービス、インター
ネット接続サービス、情報コンテンツサービス、ソフトアプリケーションサービス)
(所謂「6+4」体
系)を含む。ただし、技術進展やビジネスモデルの革新により新たな情報関連製品やサービス(将来的
には「N+N」体系になる)も考慮に入れる。
http://www.miit.gov.cn/n1146312/n1146909/n1146991/n1648534/c3489348/content.html
「7 つの応用で国内の移動インターネットの発展を牽引」
http://www.cnii.com.cn/mobileinternet/2016-03/11/content_1703958.htm
11
イナ」プロジェクトの推進、個人情報保護制度の強化とネット契約の標準化などのネット
ビジネスに関わるソフト環境の整備、ネットビジネスの革新奨励などが盛り込まれた。
また、中国の情報関連消費の年平均成長率は 20%と見込まれ、市場規模は 2012 年の 1.72
兆元から 2015 年の 3.2 兆元(約 55 兆円)に拡大し、うち同時期のネット関連消費市場(ハー
ド機器を含む)は、1.03 兆元から 2.4 兆元(約 41兆円)までに年平均で 30%増が見込まれて
いる6。また、IT やインターネットはあらゆる経済社会分野での変化を引き起こせる性質を
有しており、情報関連消費から牽引される産業の高度化、経済社会の効率化にも繋がる期
待を膨らませている。
図表 10 が示すように、これまでの情報化推進により中国はすでに移動通信大国とインタ
ーネット大国になっており、中国政府の統計によると、ユーザー数はそれぞれ 13 億 600 万
人と 6 億 8,800 万人になっている。近年では、携帯電話のスマホ化が進み、中国インター
ネット協会によると、携帯経由のネット・ユーザー数は、2015 年 11 月末時点で約 9 億 1,000
万人に達した7。特に、情報関連消費を促進する意味合いも込めて、2013 年 12 月には 4G 免
許が交付され、2 年で 4G のユーザーも 3 億 8,600 万人に達した。
図表10 中国における通信ネットワーク利用者数の推移
1000
900
800
加
入
者
数
(
百
万
人
)
700
600
500
400
300
200
100
0
11年
12年
13年
14年
15年
スマホユーザー
200
360
580
780
950
インターネットユーザー
513
564
618
649
688
97.3
386.2
4Gユーザー
出所:中国情報産業省、中国インターネット情報センター(CNNIC)、iResearchなど
6
7
「情報消費促進と内需拡大に関する国務院の若干意見」(2013)」を参照
中国インターネット協会(2016)『2015 中国インターネット産業総述与 2016 発趨勢』
12
レベルの高いネットインフラの整備に伴い、情報関連消費の市場規模は急速に拡大して
おり、図表 11 が示すように、2013 年に設定された 2015 年の市場規模目標 3.2 兆元を超え
る勢いとなっている。2014 年に経済成長率(7.4%)への寄与度は約 0.8%となり、重要な消
費ファクターとして登場してきている。
図表 11 情報消費の市場規模の推移
2010 年
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
2015 年
(目標)
消費市場規模(億元)
10,142
伸び率(%)
対 GDP 比(%)
2.5
13,235
17,130
22,012
約 28,000
約 32,000
30.5
29.4
28.5
18.0
15.0
2.7
3.2
3.7
4.4
4.7
出所:楊春立(2015)、工業情報化部(2015)などにより筆者作成
具体的に情報関連消費のホットスポットになっているのは、1)スマートフォン、スマー
ト家電およびその他のスマートデバイスなどのハード関連情報製品の消費と、2)スマホゲ
ーム、スマホ用のデジタル書籍閲覧などのコンテンツ消費の二つである。例えば、2015 年
に全社会消費財小売総額の伸び率(名目)は、10.7%であったが、通信機器の伸び率は 29.3%
と高い。スマホゲームでは、2012 年ごろから流行しはじめ、2015 年末にスマホゲームのユ
ーザー数は 2.8 億人に達し、年間市場規模は約 50%増の 450 億元と見込まれる8。
3.2 多様なネット消費市場:オンライン教育の例
そのほかにも、IT インフラの整備やネットの普及に伴い、新規消費分野が生まれている。
例えば、2015 年に 1.1 億ユーザーがネットを経由してオンライン教育を受けていた。前述
したように、中国の住民消費における教育サービスの伸びは必ずしも高くないが、ネット
を媒介した教育分野では高い伸びを見せている。図表 12 が示すように、調査会社 iiMedia
Research の調査によると、中国のオンライン教育サービス市場は 2012~2015 年の平均で約
30%前後に伸びており、スマホでの移動オンライン教育では 50%以上の伸びとなっている。
4G 通信ネットワークへのさらなるシフトや 5G 技術の導入でオンライン教育市場は大きな可
能性を秘めている。
8
iiMedia Research(2015)“2015Q3 中国スマホゲーム四半期観測報告”による推計
13
図表12 オンライン教育市場規模の推移
市場規模
(億元)
3000
オンライン教育市場規模
市場規模
(億元)
35
伸び率
(%)
45
40
移動オンライン教育市場規模
伸び率
(%)
80
70
30
2500
35
60
25
30
2000
市場規模
伸び率
50
市場規模
20
25
伸び率
40
1500
20
15
30
15
1000
10
20
10
500
5
5
0
0
10
0
0
2012 2013 2014 2015 2016e 2017e
2012
2013
2014
2015 2016e 2017e
9
出所:iiMedia Research
さらに、中国では、2015 年には 1.52 億ユーザーがオンライン医療を、2015 年上期に 9,664
万人がスマホ配車サービスをそれぞれ利用していた 。このように IT あるいはネット技術
の普及による新たな消費形態が生まれ、消費実体も広がりを持つようになってきている。
しかし、近年、情報消費との関連で、中国の消費市場にもっともインパクトを与えている
のは、後段で述べるネットショッピング分野と言えよう。中国の政策当局が大いに注目し
ているが、内外企業も中国の活発なネットショッピング市場に積極的に参入しようとして、
目を離せなくなっている。
4. 内需拡大の牽引役に期待されるネットショッピング
前述したように、消費主導の経済成長を目指している中国でもっとも注目されているの
は、ネットショッピングである。中国国家統計局によると、2015 年のネットショッピング
総額は、38,773 億元(約 70 兆円)で伸び率は 33.3%にも達した。この成長率は、2015 年の
小売市場全体の伸び率 10.7%の三倍以上となっており、中国国家統計局によると、小売総
額に占めるネットショッピング(デジタル製品を除く)の割合は約 10.8% になった。中国
のネットショッピングで世界的な注目を引き付けたのは、電子商取引の最大手となったア
リババが提唱した「独身の日」(毎年 11 月 11 日)のネットバーゲンイベントのインパクトで
あろう。2015 年の「独身の日」の一日での売上高はアリババだけで 912 億元(約 1.6 兆円)
14
に達した。
「独身の日」が始まった 2009 年では取引額は 0.5 億元しかなかったが、3 年後の
2012 年は 191 億元、2013 年は 350.2 億元、2014 年は 571 億元とウナギ登りに拡大してき
た。そのインパクトの大きさで世界中の消費財メーカーや小売業から注目されるようにな
った。
4.1 世界で突出する中国のネットショッピング市場
中国のネットショッピング(B2C/C2C を含む小売 EC)は、ネットインフラ、決済、物流の
進んだ先進国を追って成長してきたが、図表 13 がしめすように 2013 年に中国の小売 EC
額は、ネットショッピングの本家である米国を超えて急成長を続けている。
EC額(億ドル)
図表13 世界小売EC取引額と中国の額と割合
35000
60
世界
中国
米国
日本
中国の割合
30000
25000
50
40
20000
30
15000
20
10000
10
5000
0
0
2013
2014
2015
2016
2017
2018
出所:eMarketer
世界各国も EC 市場は高い成長を遂げているが、中国の成長率 49%(2014 年)は、同時期
の世界平均 22.2%の倍以上もあった。調査会社 eMarket によると、2013 年に中国の小売
EC 額は世界の約 30%弱になったが、5 年後の 2018 には 50%を超えるだろうと推定されて
いる。また、図表 14 が示すように、小売総額に占める小売 EC のシェアは、世界平均は約
6%前後で緩やかな伸びを見せているが、日本の 5%弱、米国の 7%前後、そして比較的に
EC が発達している英国の 14%余りであり、
中国はそれらを超えて 15%前後になっている9。
9
http://www.emarketer.com/Articles/Print.aspx?R=1013352。中国政府統計との差は、デジタル製品やサ
ービスの消費が含まれるかどうかなどの要素が考えられる。
15
eMarket の推計は中国国内の統計データより高く、統計上の差はあるが、傾向として世界
で中国のネットショッピング市場は異常なほど突出していると言える。同じ新興大国で、IT
先進国と言われるインドの小売額に占める EC シェアは 2%前後であることと比べれば、中
国の「特異性」は尚更である。
EC/小売り総額(%)
図表14 世界関係国のEC/小売り総額の推移
30
28
世界
中国
英国
米国
日本
インド
26
24
22
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
2013
2014
2015
2016
2017
2018
出所:eMarketer
4.2 ネットシッピングが隆盛する背景
中国のネットショッピングが急速に伸びてきた背景には、情報通信インフラの整備、取
引安全性(セキュリティ)
・信用体制の確立、支払システムの構築、物流状況の改善という
四大コア要素プラス EC 企業の努力、政策の推進があると考えられる。伝統的な流通システ
ムの未発達は、逆にECの発展をもたらす側面もあろう。以下、四大コア要素と政策の推
進を見てみよう。
1)情報通信インフラの整備
上述したように(図表 10 を参照)、固定や携帯電話(特にスマホ)やインターネットの普及率
から見て中国はすでにネット大国になっていると言える。特に、近年では通信速度の速い
固定ブロードバンドや 4G 移動通信ネットの整備は、ネットショッピングを通信インフラの
側面から支えている。中国の工業情報化省の統計によると、2015 年末現在、ブロードバン
ドユーザー数は 2.13 億人で光ファイバー接続ユーザーは 1.2 億人に達した。ブロードバン
ドユーザーの内、接続速度8M 以上のユーザーが約 70%を占めている。
16
しかし、中国全体のインターネット接続速度は遅く、特に農村地域でのブロードバンド
普及は大分遅れている。世界主要国のネット接続速度を調査する調査会社 Akamai が四半
期ベースに発行している“State of the Internet' report″(2015 年 Q3)によると、中国のイ
ンターネット平均接続速度は 3.7Mbps で調査対象国平均の 5.1Mbps を下回っており、韓国
の 20.5Mbps は言うまでもなくタイの 8.2Mbps にも及ばない。このような現状を鑑み、
2015
年 5 月 20 日に中国政府は、今後 3 年間で 1.13 兆元(約 20 兆円)を投じてインターネット接
続のスピードアップを図っていく計画を打ち出している10。この意味で、消費促進政策は投
資誘発の効果をもたらす可能性がある。
2)取引安全性・信用体制の確立
ネットショッピングの安全性(セキュリティ)確保は、a)取引データの安全性、b)取引信
用の安全性、c)迅速な紛争処理などにかかわると考えられる。取引データの安全性について
はネットワークの安定性・安全性確保とともに、中国では「電子署名法」、「電子認証サー
ビス管理弁法に基づき、約 36 社の電子認証サービスが展開されている。
取引信用については、制度的な側面では中央銀行である人民銀行、各商業銀行、工商行
政管理機関、通信会社、税関等で整備されているが、EC 企業自身の信用確保システムや制
度が大きな威力を発揮している。例えば、アリババの決済ツールであるアリペイは売買双
方の取引信用を担保するオンラインのエスクロー機能を提供しており、ネットショッピン
グでの安心・安全を確保している。また、ビッグデータ技術を活かした売買双方の信用評
価システムも構築した。現在、中国の EC 分野で代金回収などの取引信用問題は聞こえなく
なっている。
上述した取引データの安全性や決済信用問題は技術や制度整備によって相当解決された
が、製品の品質や偽物問題が EC 取引の課題として浮上してきている。中国インターネット
情報センター(CNNIC)によると、
「ネットショッピングで遭遇した問題」についてのアンケ
ート調査で 2010 年では「配送時間が長い」と「商品とネット宣伝の不一致」がそれぞれ 1
位(61.6%)、2 位(59.0%)となっていたが、2012 年の調査では順位は変わらないが、回答比
率は 49.2%と 49.0%に減少した11。最近では、
「商品とネット宣伝の不一致」や「偽物か不
良品」などが問題の上位に並び、配送問題は後退した。実際、近年中国消費者が越境 EC(海
外から購入)に注目したのも、
「商品の品質保証」や「偽物が国内より少ない」といった理由
が上位にくる12。したがって、商品の品質や偽物の問題が解決されない限り、中国のネット
ショッピング市場の高付加価値化は難しいと言えよう。
ただし、中国では、中国独特な制度としては、商品の品質問題や偽物などの問題を含む
ネットショッピング売買行為に適用するオンライン簡易裁判制度も考案されている。証拠
10
『高速ブロードバンドネットワーク建設とネットワークのスピードアップと価格低下の促進に関する国
務院の指導意見』(2015)
11 http://cnnic.cn/hlwfzyj/hlwxzbg/dzswbg/201304/P020130417543965742695.pdf
12 CNNIC(2015)
「2014 年中国網絡購物市場研究報告」
17
提出、法廷弁論などすべての裁判手続きは行われており、アリババのサーバーに保存され
ているネット取引データも裁判所とオンラインでつながっており、紛争解決の迅速化が図
られている13。
3)発達したオンライン決済システム
中国の金融システムは非効率で保守的であるというイメージがあろう。しかし、非主流
のネット企業によるイノベーションでいわゆる Fintech14が発達し、EC の分野ではいまや
クレジットカードや銀行カードよりも、アリババのオンライン決済ツールであるアリペイ
による決済が優位になっている。最近では、Tencent の「WeChat 財布」による決済も増え
てきており、銀行以外の決済ツールは大きな役割を果たしている。
図表15 関連ネットアプリケーションユーザーの推移
億人
7.00
6.20
携帯ネットユーザー
6.00
ネットショッピングユーザー
5.57
ネット決済ユーザー
5.00
5.00
4.16
4.13
4.20
4.00
3.61
3.56
3.00
3.03
3.02
2.42
2.21
2.00
1.61
1.37
3.04
2.60
1.94
1.67
1.00
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
出所:CNNIC
図表 15 が示すように、オンライン決済ユーザー数はネットショッピングユーザー数と比
例して拡大してきた。2015 年ではオンライン決済ユーザー数はネットショッピングユーザ
ー数を超え、新たなネットアプリケーション(例えば、伝統的な「紅包」
(lucky money。お
年玉、お祝議、お奨励など)のデジタル化での決済にも使われるようになり、オンライン
決済市場における中国特有な現象が生じている 。
13
14
http://b2b.toocle.com/detail--6254855.html;「都市快報」2015 年 10 月 31 日
FinTech(フィンテック)とは金融(Finance)と技術(Technology)を組合せた造語で、IT を活用し
て金融、決済、財務サービスなどの世界にもたらされるイノベーションのことをいう
18
4)構築された全国速達配送ネットワーク
中国では、情報やオンライン決済などと比べ、物流がネットショッピングの大きな障害
になっていた。前述したように、近年ではネットショッピングの物流に対する消費者の苦
情はかなり低下してきた。これは、EC ベンダーや EC 物流ベンダーがかなり大きな投資や
先進的な技術導入を行って物流というボトルネックが相当解決されたからだと言えよう。
図表17 「独身の日」の取り扱う
小包数(オーダー数)の推移
図表16 全国速達量の推移
億件
250
速達小包
数(万個)
67800
200
150
100
18000
50
0
1000
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2010
2011
2012
2013
2014
2015
出所:中国国家郵政局、報道資料
13
図表 16 が示すように近年中国の速達量は急速に拡大しており、2015 年には 200 億個を
超え、世界一の速達大国になった。国家郵政局によると、中国のネットショッピング配送
は、70%以上が速達(宅配便)によるものであり、物流インフラから小売 EC の発展を支
えている15。図表 17 は、
「独身の日」の速達量を示したものである。逆説的ではあるが、大
きなトラブルなく配送活動が終わったことは、中国の物流・配送システムが相当整備され
ていると評価されよう。2015 年の速達システムの業務量は、5,600 万個/日に相当するが、
中国当局は、
「向西、向下、向外」(内陸部へ、農村へ、世界へ)プロジェクトを実施し、2020
年ごろには年間 500 億個に達すると見込んで物流インフラの整備を進めている。
他方、速達市場の急拡大は物流業の成長をもたらし、在来の小口物流配送御三家である
「中鉄快運」(鉄道系)、「EMS」(郵便系)、「航空快逓」(航空系)に加え、新しいプレイヤー
となる、いわゆる「順風+3通1達」(順風、円通、中通、申通、運達)の民間大手が台頭し
てきている。
15
http://www.scio.gov.cn/32344/32345/32347/33617/tw33619/Document/1451960/1451960.htm
19
4.3
ネットショッピングの新しい動き
ネットショッピングの主要商品はずっとアパレル・靴類・帽子等の生活必要品であった。
前述したように衣服類の消費は絶対量としてはあまり伸びが期待できないが、流行の速い
こと、選択幅の多いこと、EC ベンダーとして利益率が高いことなどからネットでの取引は
なお高いシェアを維持している。図表 18 が示すように、家電製品、食品/健康品、チケット
オンライン予約、映画などのオンライン消費などのシェアが増えてきている。自動車のオ
ンライン販売、内装家具や農機具も増えていることも併せて考えると、中国のネットショ
ッピングは「軽いモノ」から「重いモノ」へ、「定型のモノ」から「非定型のモノ」、
「保存
系」から「加工品」から「生鮮食品」へ、「モノ」から「サービス」へと広がりを見せてい
る。
例えば、食品の安全性や新鮮さへのこだわりが高まり、また冷凍配送技術の向上により
中国の EC 市場で生鮮食品のネットショッピング市場が急速に動き出している。調査会社
iiMedia Research の調査によると、2013 年の生鮮食品の EC 市場規模は 120 億元(生鮮食
品小売市場の約 1%弱)しかないが、2015 年は 412 億元で、そして 2018 年は 1,320 億元ま
でに拡大すると見込まれる16。
図表1 8 ネットショッピング上位商品類
75.3
アパレル・帽子・靴類
37.5
デジタル製品
34.4
日用雑貨
33.1
チャージカード
家電類
26.6
化粧品・美容製品
25.9
食品・健康品
25.4
書籍・音楽製品
24.1
かばん・ケース等
24.1
16.8
チケット
14.5
文化用品
12.7
母幼児製品
装飾品
複数回答
15.3
飲食サービス
7.3
14
出所:CNNIC(2015)
16
2014
2011
iiMedia(2015)「2015 中国生鮮電商行業熱点」
20
前述したように、近年中国の農村地域の消費は都市部よりも活発になっている。可処分
所得の伸びが都市部より高いのも背景の一つであるが、ネットショッピングの環境が整い
つつあることも大きな要因である。Nielsen の調査(2015 年 Q2)によると、農村地域のショ
ッピング誘因として資金余裕は首位から転落し、買物の利便性が首位になってきている。
特に 83%の回答はネットショッピングの利便性を挙げており、70%は現地では買えないも
のがネットを通じて買物できることを挙げているという。実際、2015 年の農村地域のネッ
トユーザーは 1.95 億人で、都市部の 4.93 億人の半部以下であるが、伸び率は 9.5%で都市
部の 4.8%の 2 倍近くある。
このような農村 EC が動き出したのは、政府の政策的支援(農村地域における物流網の構
築、情報インフラとしてのブロードバンドの整備など)とともに、農村ショッピング市場の
潜在性に気付いた電子商取引ベンダーの取り組みがあってのことである。例えば、2014 年
9 月に米株式市場に上場したアリババ集団は、翌 10 月に 3 年~5 年にかけて 100 億元(約
2000 億円)を投じて全国の 1,000 の県に EC サービスセンターと 10 万村に EC サービスス
テーションを整備する「千県万村」戦略を打ち出した。農村地域の EC インフラである取引
プラットフォーム、物流、決済、クラウドサービス、データ技術を整備するとともに EC 人
材を教育・育成して農村地域の EC 市場を開拓しようとしている。アリババでは、このよう
な戦略は、都市部 EC モデルの農村版である「農村 Taobao」という。逆に一部の若い出稼
ぎ労働者も地元に戻って、アリババ等の EC ベンダーのインフラを活かして EC ショップの
開設やネットショッピングを業として創業する者が急増している。アリババによると、農
村地域から出店する EC の店は 20 万店を超えており、EC 取引の集積地域として認定され
る「Taobao 村」(認定条件:①取引場所が農村地域、②年間取引額が 1 千万元以上、③ネッ
トショップ開設の世帯が全世帯の 10%以上)は 780 ヵ所、伸び率 268%にも達している17。
これらの取り組みは好循環を生み、工業製品は農村へ、農産物・特産品は投資へ、モノか
らサービスへというビジネスが拡大している。
さらに、近年では海外旅行ブームに伴い、越境 EC の取引額(大部分は中国の消費者が海
外から購入)が大きく膨らんでいる。Nielsen の「中国電子商務業種発展白書」(2015)による
と、2014 年の越境取引額は 718 億ドル(約 8.2 兆円)に達し、44%も伸びた。他方、日本経
済産業省の推計によると、2013 年に中国消費者の越境 EC 額は、日本からは 3,902 億円、
米国からは 4,171 億円であった。中国の越境 EC 取引額データの正確性に問題は感じるが、
海外での「爆買い」現象を合わせて考えると、今後も引き続き大きく伸びていくのは間違
いないと言えよう。
そのほかにスマホの普及や 4G の普及に伴い、ネットショッピング取引は固定より無線経
由が主流になってきた。CNNIC によると、2015 年のネットショッピングユーザーは 14.3%
伸びたが、携帯ショッピングユーザーは 43.9%も伸びたので、データで固定から移動への
シフトが確認できた。調査会社 eMarketer によると、中国のスマホによる EC の割合は、
17
AliResearch (2016) “中国淘宝村研究報告(2015)
21
2014 年の 38.1%から 2019 年には 71.5%に拡大していくと推定されている18。一方、アリ
ババの発表によると、2015 年の「独身の日」の EC におけるモバイル機器のシェアは 68%
に達したことを考えると、emarketer 社の推定は保守的であると思われる。
モバイル機器の EC においてもう一つの動きは「微電商」(Social Commerce)の登場であ
る。中国では、SNS アプリである「QQ」や「微信 WeChat」が大ブームになるにつれて、
これらのソーシャルメディアとリンケージしたネットショッピングが行われるようになっ
ている。このような傾向が表れたのは、消費の個性化、グループ化によりオープンサイト
で大量取引を行うよりも SNS でのグループ販売がより効率的であると考えられる。実際、
図表 19 が示すように、無線ネット経営のマーケティングにおいて「WeChat」によるもの
がトップになっている。ただし、SNS と EC を両立させるためには高度なテクニックが必
要となり、ネットショッピングのメインチャネルになるかどうかは要観察である。
図表1 9 企業による移動ネッ ト経由マーケテ ィング
チャンネルの使用シ ェア
75.3%
We Ch at マ ー ケテ ィン グ
52.7%
企業移動オフ ィシ ャ ルWEB
46.2%
移動捜索エ ン ジ ン
41.4%
移動ソ ー シ ャ ルメ デ ィア
31.0%
企業オフ ィシ ャ ルAP P
27.1%
移動ECWEB
移動広告連盟
その他
複数回答
14.9%
29.0%
15
出所:CNNIC(2015)
18
eMarketer(2015)“Ecommerce Drives Retail Sales Growth in China”
http://www.emarketer.com/Article/Ecommerce-Drives-Retail-Sales-Growth-China/1013028
22
おわりに
以上で分析してきたように、中国経済成長の鈍化は主に設備過剰や不動産バブルによる
不動産の在庫過剰などに伴う投資ブームの終結に起因しており、住民消費は比較的安定し
ている。労働者への所得配分の傾斜政策、社会保障システムの整備、高い貯蓄率、農村地
域市場の未開発などから考えると、安定成長を支える消費力の潜在性は存在する。ただ、
これまで消費の原動力となっていた自動車消費と不動産消費は高成長のピークを過ぎてお
り、新たな消費のエンジンが求められる。観光・余暇消費、ヘルスケア消費、教育文化ス
ポーツ消費、グリーン(省エネ商品とサービス)消費、情報関連消費などが次世代消費力とし
て消費政策促進として取り上げられているが、その中でも IT・ネット技術を介した情報関
連消費が自動車、不動産に次ぐ消費の原動力として台頭しつつある。
情報関連消費には、スマホなどのスマートハード製品が増加しているが、ネット大国に
なっている中国ではむしろ情報技術を介した関連消費が大きな可能性を秘めている。近年
来のネットショッピングブームはその可能性を実証している。ネットショッピングの取引
活動は、モノやサービスの消費を伴い、オンライン決済ビジネスや EC 物流など、新たな消
費分野も生まれる。また、広大な農村地域や人口を有する中国にとって、ネット消費は農
村地域の消費力を引き出すことが可能になる。
日本企業は、その潜在性や新しい動向を見極めて適切な対策を取っていけば、中国の消
費力を活用する道を広げていくことができる。そう期待したいのである。
23
主要参考資料
1. AliResearch (2016) “中国淘宝村研究報告(2015)
2. 阿里研究院(2015)“互聯網+:縦 IT 到 DT”機械工業出版社
3. Akamai(2015) “State of the Internet’Report”(2015Q3)
4. CNNIC(2016) “中国互聯網絡発展状況統計報告”(2016 年 1 月)
5. CNNIC(2015)“2014 年中国農村互聯網発展状況報告″
6. CNNIC(2015)
「2014 年中国網絡購物市場研究報告」
7. 中国国家郵政局(2015)“2014 年郵政行業発展統計公報”
8. 中国杭州“都市快報″2015 年 10 月 31 日
9. 「中華人民共和国国民経済和社会発展第十三個五年規画綱要」
10. 中国インターネット協会(2016)『2015 中国インターネット産業総述与 2016 発趨勢』
11. eMarketer(2014)“Retail Sale Worldwide Will Top $22 Trillion This year”
12. eMarketer(2015) “Ecommerce Drives Retail Sales Growth in China”
13. iResearch(2015) “中国移動互聯網未来発展趨勢解析 2015”
14. iiMedia Research(2015)“2015Q3 中国スマホゲーム四半期観測報告”
15. iiMedia Research(2015)“2015 中国生鮮電商行業熱点”
16. iiMedia Research(2015)“2015-2016 中国移動教育市場研究報告”
17. 経済産業省(2015)「平成 26 年我が国経済社会の情報化・サービス化に関わる基盤整備
(電子商取引に関する市場調査)」
18. Mary Meeker (2015) “INTERNET TRENDS 2015 –CODE CONFERENCE”
kpcb.com/InternetTrends
19. Nielsen (2015a)“Q4 2015 Consumer Confidence Report”
20. Nielsen (2015b) “nielsen 中国電子商務行業発展″杭州指数″白書“
20.騰泰翼運営ビッグデータセンター(2015)“2015 年中国跨境電商研究報告″
21.楊春立(2015)“加強信息消費対経済増長促進作用的対策研究”経済縦横 2015 年第 2 期
24
研究レポート一覧
No.432 ネット時代における中国の消費拡大の可能性について
金
堅敏 (2016年7月)
No.431 包括的富指標の日本国内での応用(一)
楊
珏 (2016年6月)
No.430
人的資本の計測とその示唆
ユーザー・市民参加型共創活動としてのLiving Labの現
状と課題
No.429 限界マンション問題とマンション供給の新たな道
No.428
No.427
No.426
No.425
No.424
立法過程のオープン化に関する研究
-Open Legislationの提案-
ソーシャル・イノベーションの仕組みづくりと企業の
役割への模索-先行文献・資料のレビューを中心に-
製造業の将来
-何が語られているのか?-
ハードウエアとソフトウエアが融合する世界の展望
-新たな産業革命に関する考察-
これからのシニア女性の社会的つながり
-地域との関わり方に関する一考察-
No.423 Debt and Growth Crises in Ageing Societies: Japan and Italy
No.422
グローバル市場開拓におけるインクルーシブビジネスの活用
-ICT企業のインクルーシブビジネスモデルの構築-
大都市における空き家問題
-木密、賃貸住宅、分譲マンションを中心として-
No.420 中国のネットビジネス革新と課題
立法爆発とオープンガバメントに関する研究
No.419
-法令文書における「オープンコーディング」の提案-
No.421
西尾
好司 (2016年5月)
米山
秀隆 (2016年4月)
榎並
利博 (2016年2月)
趙
李
瑋琳
(2016年1月)
妍焱
西尾
好司 (2015年6月)
湯川
抗 (2015年5月)
倉重佳代子 (2015年3月)
Martin Schulz (2015年4月)
生田 孝史
大屋 智浩 (2015年4月)
加藤
望
米山
秀隆 (2015年4月)
金
堅敏 (2015年3月)
榎並
利博 (2015年3月)
No.418
太平洋クロマグロ漁獲制限と漁業の持続可能性
-壱岐市のケース-
濱崎
加藤
生田
博
望 (2014年11月)
孝史
No.417
アジア地域経済統合における2つの潮流と台湾参加の可
能性
金
堅敏 (2014年6月)
米山
秀隆 (2014年5月)
趙
瑋琳 (2014年5月)
No.414 創造性モデルに関する研究試論
榎並
利博 (2014年4月)
No.413 地域エネルギー事業としてのバイオガス利用に向けて
加藤
望 (2014年2月)
No.412 中国のアジア経済統合戦略:FTA、RCEP、TPP
金
堅敏(2013年11月)
湯川
木村
抗
(2013年11月)
直人
趙
瑋琳(2013年10月)
梶山
恵司(2013年10月)
高橋
洋 (2013年7月)
No.416 空き家対策の最新事例と残された課題
No.415
No.411
中国の大気汚染に関する考察
-これまでの取り組みを中心に-
我が国におけるベンチャー企業のM&A増加に向けた提
言-のれん代非償却化の重大なインパクト-
No.410 中国における産業クラスターの発展に関する考察
木質バイオマスエネルギー利用の現状と課題
-FITを中心とした日独比較分析-
3.11後のデマンド・レスポンスの研究
No.408
~日本は電力の需給ひっ迫をいかにして克服したか?~
No.409
http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/report/research/
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URL http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/
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