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資 料

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資 料
第3號
縫
針
の
衝
資
繋
試驗(輯
録)
203
料
縫 針 の 衝 撃 試驗(輯
録)
窪 田 格 太 郎
した 工 場 は その製 造 を 中止 した もの さへ あ る.
摘
要
近 頃 この對 策 とし て廣 島 に ミシ ン針 の 製 造 が 開始 され,
本邦 に於 け る針 製造 工業 の 近 況 に つ い て概 要 を記 し,
今 や 試驗 時 代 を脱 せ む と しつゝ あ るの は注 目に 値 す る.
各種針 の靜 荷 重 屈曲 試驗 法,衝 撃 屈 曲試驗 法,繰 返 屈曲 試
その他 洋服 の裁 縫 用 の所 謂 メ リケ ン針 及 び蓄音器 針等 の
驗法 を述べ て,内 地 及 び 外 國 の製 品 の 試驗 成 績 を記載 し
新 しい製 造 が生 れ つゝ あつ て,メリ ケ ン針 の如 きは英 國
た.針 の強度 試驗 の 目的 で新 に考 案 した 縫 針 衝 撃 試驗 機
製 品 に 比 して 品質 に於 て遙 に 優 つ て居 るの は吾 人 の意 を
の作用 原理,構 造,衝 撃 の 仕 事 の 測 定 法 を紹 介 した.
強 くす る所 で あ る.メ
1.緒
A.針
製造 工業 の近 況
リケ ン針 に關 して は最 近保 護關 税
設 定 に よ り發達 を促 進 さす こ とに なつ た.從 來 の縫 針 の
言
原 料 鋼 について も種 々試 み られ,高 炭 素 鋼 も用 ひ られ た
廣島 に於 て 製 造 せ ら る ゝ和 服
が,絲 を通 す 孔 を壓 穿 す る こ とが困 難 で あ るた め,低炭 素
圓 で,
鋼 を加 工 して 木炭 に炭 酸 ソー ダ を加へ た滲 炭劑 で 滲 炭 す
相當重要 な工 業 とな つ て居 る.價 格 は好 況 時 代 に1萬 本
るの が 普 通 で あ る.こ れ を油燒 入 して後 熱 した鐵 板上 で
18圓 位 で あつた が,近 頃3圓
位 に なつ て居 り,價格 の 點
燒 戻 して研 磨 仕 上 し て居 る.加 工 機 械 は鐵 線 切斷 機,各
から品質 の 向上 を計 る こ とは 至難 と され て居 る.製 品 は
種研磨機及 び各 種壓 搾 機 で あ る.そ の 他 近 頃 自働 包 装 機
内地及 び 中 華 民 國 に供 給 され る もの が 多 く,昭 和7年 に
を用 ひ て製 産 費 を下 げ る こ とが 試 み られ 始 めた,又 米 國
は青 島の み に輸 出 され た もの年 額30萬
等 に輸 出 す る 目的 で 針 を金 鍍 金 す る こ とが 始 め られ た.
裁縫用 の縫 針 は 一年 の産 額40億
本,價 格 約100萬
頃青 島に支 那 人經營の 資 本金15萬
さ れ,製 産 能 力1箇
圓 位 で あ つ だ.近
圓 の翼 魯針 洋行 設 立
月500∼600箱
とすれ ば1億5千
萬 本 ∼1億2千5百
在(昭和11年)實
際 の 製 産 量 は1箇
又 輸 出 向 と して長 短 組 合 の包 装 が 始 め られ た.
本入
メ リケ ン針 の 品質 は 英 國 品 に優 る もの製 造 され つ ゝあ
萬 本で あつ て,現
るが,工 場 設 備未 だ小さ い.こ れ は低 炭 素 鋼 を滲 炭 して
で,1箱25萬
で
製 して居 り,燒入及 び燒 戻 に 注 意 が拂 はれた 結 果 好 成 績
ある.濟 南 に設 立 され た支 那 人經營 の 製 針 工 場 の製 産 能
を擧 げ,研 磨 も非 常 に 良好 で あ る.價 格 は普 通 の 縫 針 よ
力は冀魯 針洋 行 の1-3である.こ の2工 場 が 主 要 な もの で,
り高價 で あ る か ら製 造 法 を吟 味 す る こと も行 ひ易 い.
月200∼250箱
原料の 鐵 線 は 日本 よ り包 装 紙 は獨 逸 よ り輸 入 しつ ゝあ る.
勞銀 は平均 日給50錢
で 熟練 工 の 日給 約80錢
で あ る.現
ミシ ン針 は價 格1本10錢位
で あ るか ら原 料 鋼 及 び 製
造 法 を吟 味 す る こ とが 實 行 し易 い.原 料鋼 は特 殊 鋼 を 用
在相當 良 品 を製造 し て居 り,支那 政 府 は保 護 政 策 を と り,
ひて 居 るが,強 度 大 で 使 用 中の 摩 擦 熱 に耐 え針 先 の摩 滅
昭和8年 より輪 入 税 を引き 上 げ て現 准 針1,000本
に付23
に耐 え る こ とも要 求 され るか ら,高 級 の製造 技 術 が 必要
錢の輸 入税 を課 して 居 り,且つ運 賃 割 引及 び 補助 金 交付
とな つ て來 る.原 料 鋼 は何 が 最適 す る か 試驗 時 代 で あ る
をな して居 る.現 在 青 島 に は獨 逸 製 針 の 輸 入殆 どな く,
が,米 國の シ ン ガ ー會社 の針 の 分 析 は炭 素1.15%,タ
日本製品 り 青 島 に 昭和10年
ス テ ン1.5∼1.6%,バ
に輸 入 され た もの5萬
圓で,
これ は漸 次 減 少 す る一 方 で,廣 島で は支 那 輸 出 を 目的 と
ナ ヂ ウ ム0.6%のも
ング
もを用ひ て あ
る.期 る タン グ ステ ン鋼 を 用 ひ た意 味 は高 温 度 で 強 度 大
204
資
料
第1卷
且 つ 燒 戻 り難 く,耐摩 耗 性,強 靱 性 大 な る爲 で あ ら う.又
の 機 械 的 性 質 は 第2表
獨 逸 羊 印 ミシ ン針 の分 析 は炭 素0.9%,ニ
し た發 條 鋼 の 熱處 理 温 度 は 約 第3表
ク ロー ム0.1%の
もの を用 ひて あ る.然
ツケル0.2%,
し實 際 の製 品 の
強 度 は シ ン ガ ーの もの衝 繋値1.77kgcmで,獨
0.77kgcmで
逸羊 印で
あ る か ら特 に この 材 料 が 良 い と云 ふ 様 に
は考 へ られ な い.材 料 の特 殊 鋼 は舶 來 品で1貫
に付7∼
J,H.Andrew及
- Mn鋼
に 示 した 如 くで あ る.第1表
びG.T.Richardson兩
及びCr-V鋼
に示
に 示 し た 如 くで あ る.
氏 は 炭 素 鋼,Si
に 就 て 熱處 理 及 び 表 面脱炭
の比 較 試
驗 を 行 つ た 結 果 次 の 結 論 を な し て 居 る(2).
第2表
熱處理 した發條鋼 の機械的性質
16圓 の もの が 用 ひ られ て居 る.材 料 の選擇 と同 時 に熱 處
理 及 び熱處 理 に影 響 を持 つ機 械 加工 に 大 な る注意 が拂 は
れ る こ とが 必 要 で あ る.ミ シン針 の 形状 は複雜 で あ るか
ら縫 針 とは製造 工程 が變 つ て居 る.鋼 線 を打 撃 に よつ て
細 く絞 る ス ク メ機 に よつ て大體 の 形 を附 の て か ら,こ れ
に ミ リン グ カ ツ タ ーで溝 を削 り出 し,壓 穿 しそ孔 を明 け,
研 磨 で先 を鋭 くす るが,先 の 角度 は餘 り小 さ くせ ず30度
位 に 仕上 げ る
第3表發條
酸化膜は燒 入硬
油燒 入 して か ら油 煮 して燒 戻 す る方法 を
化に影響がある
取 つ て居 る工 場 もあ る.
B.原 料鋼
. b)Si-Mn鋼
鋼 は彈 力 大 で 耐 熱 性も あ ると云 ふ ことか
の 添 加 され た もの が よ いの で は な か ら うか.Si-Cr鋼
は
鋼 及 びCr-V鋼
耐 酸 化性 が大 で あ り,Ni-Cr鋼
鋼 は高温 度 に 於け る抗 張
より劣 る.i)酸
力大 で,そ の點 はV及
含 む だW鋼
炭 素 鋼 よ り脱 炭 し 易い.ii)質
びNiを
は
次の理由で 炭素
ら ミシ ン針 の材 料 と して は發 條 鋼 の 中でNi.Cr.V.W等
よ り優 つ て
居 る(1).發 條 鋼 に は 次 の種 類 が用 ひ られ て居 る.
a級
a)鋼 の表 面 の
鋼 の熱處理温度
炭 素 鋼,Mn鋼
c)Cr-V鋼
化 膜 脆弱 で 保 護 作用 少 く,Cr-V鋼及
び
量 の影 響 を受 け易い.
の優 秀 な る點i)同
一 條件 で脱 炭 及 び 表面
酸 化 膜 少 く,酸 化 膜 強 固で 酸 化 に對 して 保 護 作用 あ り.
ii)結 晶 粒 界 に沿 ふ て酸 化 の 進 行 な し.iii)質 量 の影 響 な
b級Si-Mn鋼,Si-Mn-Cr鋼
c級Cr-V鋼
し.iv)燒
第1表發
入温度 に よつ て組 織 の變 化 な く均 一組 織 が得
られ る.v)燒
條 鋼 の分 析
Si-Mn鋼
入 組 織 は 炭素 鋼 及 び
の如 く粗 くな る こ とな し.
vi)燒 入 温 度950° 以 上 で は 油 燒 入
した 時に 表 面 と心 部 と硬 度均 等 とな
る.
d)熱處
理後 の 内 外組 織 最均 等 な
るはCr-V鋼
でSi-Mn鋼
これ に 次
ぎ,炭 素 鋼 は最 不均 等であ る.
又H.Abram氏
この中でa級
は大 な る荷 重 に耐 えない か ら高 級發 條 に
は適 せ な い.b級
は價稍 高い が 高級發 條 に適 す る.c級
鋼 及 びNi-Cr-Mo鋼
は炭 素 鋼Ni-Cr
にバナ ヂ ウ ム を 添加 す る又
時 に燒 戻
硬 化 を生 ず るた め燒戻温 度 を500∼625° に高 めて 行 くに
は 性質 優 秀 で あ るが 高價 で ある.發 條 鋼 の分 析 は 第1表1
隨 つ て生 ず る軟 化 を打 消 し,こ れ に伴 ふ 衝 繋 値 の 減 少 は
に 示 した如 くで あ る.第1表
バナ ヂ ウ ムの 量 が0.15∼0.25%の
に示 した發條 鋼 の熱處 理 後
(1) R. Paterson, "Valve Steel for High-Speed Oil Eng
ines," Mechanical World, 93 (1933), 478.
範圍 な らばNi-Cr鋼
(2) J. H. Andrew, G.T. Richardson, "An Investigation of
Spring Steels," Engineering, 139 (1935), 530.
第3號
縫
及 びNi-Cr-Mo鋼
針
の時で は 少 い と述 べて 居 る.而
の 衝
して
撃
試
驗(輯録)
205
圖Cは 針 孔 が 水 平 線 よ り下 方に下 つ た距 離 を測 定 した も
バ ナ ヂ ウムの 燒 戻 硬 化 作 用 は α鐵 中に 急 冷 に よ り固溶 し
の で,最 大19.lmm,最
た炭 化 バ ナ ヂ ヴ ムが 燒 戻 に よつ て 沈澱 を起 す に よ る と云
この 中試 片番 號4は 曲 つた 丈 で 切斷 せ ず熱 處 理 が 不 完 全
つ て居 る(3).
で あつた もの で 圖 に は省 いて あ る.圖 に於 て 屈 曲切斷 荷
均13.2mmで
あ る.
重 が 大 な る もの程 全撓 み も大で あ る.切斷 に至 る途 中の
2.靜 荷重屈曲試驗
A.試 驗 法
小8.5mm,平
311gの
荷 重 に 相 當 した燒 み線 圖Bは
この試 驗 法 は廣 島で ミシ ン針 及 び メ リケ
小4.5mm,平
ン針 を製 造 し始 めない 前に 縫 針 の強 度 を測 定 す る た め に
して 居 る.
行 つて見 た 方 法 で あ る.從 來廣 島 の工 場 で は手 先 で 針 を
均7.4mmで
3.衝
最 大10.5mm,最
全撓 み と同 じ傾 向の變 化 を示
撃 屈 曲試 驗
折 つて見 て強 弱 を判 定 して居 つ た の で あ るが,簡單 な 方
法 で數 字 的 に 測 定 値 を得 る様 にす れ ば一層 明確 な 智 識 が
A.試 驗 機 の 考 案
試 驗 機 は 最近 完成 した もの で,縫 針
得 られ る だ ら うと思つ て試 みた の で あ る.試 驗 法 は強 度
メ リケ ン針,及び ミシ ン針の 強度 の試 驗 に適 し,現在 工 場
を試驗 す べ き針 を針 先 の側 で 水平 に 支へ て針 孔 に細 い金
で使 用 され て 居 る.機 械 の 原理 は大 型 の ア イゾ ツ ト衝 撃
屬線
を通 して之 に 水 の 容 器 を吊 して 水 を 注入 しつ ゝ荷 重
試 驗 機 に 似て 居 り,針 の如 き細 小 な もの に用 ふ るに 便 な
一
る如 く構 造 を簡單 にす る と共 に試 驗 す る針 の取 着 を簡 單
定 にす る.荷 重 を增 す と共 に針 は次 第 に 曲 が り遂に切 斷
に 行 ひ得 る如 く し,移動 す る に便 な る如 く水 準 器 と調 整
す るか ら,そ の 時 の荷 重 を測 定 す る.又 燒 入が 不 完 全で
捻 子 とに よつ て正 確 な据付 を行 ひ得 る如 く して あ る.又
を加へ るので,支 點 と針 孔 との 距離 は便 宜 上20mmに
殆 ど燒 鈍 の状 態の もの で は曲 る丈 で切斷 せ ぬ.
B.試 驗 成績
㎜
低 炭 素鋼 を滲 炭,燒 入,燒戻 した 直徑0
7
の縫 針 を多 くの 試 料 中 よ り任 意 に20本 選 出 して靜
荷 重屈曲試 驗 した 成 績 は第1圖
試片
に示 した 如 くで あ る.圖
番 號
縫 針衝 撃 試 驗 機
縫針 の靜荷重屈 曲試驗成績
(試料は低炭素鋼 を滲炭,燒 入,燒戻 した もの)
衝 撃 の 仕事 を加 減 し得 るた め振 子杆 の揺 動 角 を調 整 し得
第1圖
に於 て 屈 曲 切斷 荷 重 線 圖Aは
平 均566gで
第2圖
最 大1,062g,最
小399g,
か な り變動が あ る.又 切斷 時 の 全 燒 み線
る如 くして あ る.第2圖
の寫 眞 圖 に 示 した もの は機 械 を
正面 よ り見 た 形状 で あ る.
構 造の 大 要 を説 明 す る と器臺 に起 立 した堅 柱 に球 軸 受
(3) H. Abram," The Influence of Vanadium on Ni-Cr and
Ni-Cr-Mo Steels, "Engineering, 141 (1937), 53.
で振 子杆 を 支 へ て あ り,これ を堅 柱 に 取 着け た弧 形 導 板
206
資
料
第1卷
上 の 鈎 止 片で 任 意 の傾 斜 位 置 で 支へ て揺 動 角 を變 へ て衝
實 際 に機 械 を使 用 す る場 合 に は前 述 の 摩 擦 を補 償 す るた
撃 の 仕 事 を加 減 す る如 くして あ る.振 子杆 に 取着 け た2
めに振 子杆 を鈎 止片 で 支 へ る際 垂 直 線 とな す傾 斜 角 を θ
箇 の 重 り板 は取 外 し自在 で あ る か ら必 要 に應 じて取 換 へ
よ りも少 し く大き く して指 示針 の 示 す 方 の 角度 が θとな
て もよ い.振 子杆 の下 端 に は縫 針咬 持 器 を取 着 け て あ り,
る如く 調 整 す る.
縫 針,ミ シ ン針 及 び メ リケ ン針 の いづれ で も取 着 け得 る.
次 に試 驗 片 に衝 撃 を與 へ て これ を切斷 した 場 合に は そ
器臺 に は衝 撃 片 を嵌 め込 む で 取着 け て あ る.衝 撃 の 仕 事
れ 丈 仕事 が消 費 され るか ら指 示 針 の示 す 角 度 は 圖 に 示 し
の 指 示 方 法 は 出 來 る丈 簡 單 な構 造 と して,振 子杆 を支 へ
た 如 く θより も θ′
だけ 小 さ くなつ て 示 され る.故 に衝 撃
る軸杆 の端 に指 示 針 を嵌 挿 して發 條 で適 當 な壓 力 を加 へ
に消 費 され て尚 ほ殘 つ て居 る 仕事 の 量Erは
て指 示 針 が慣 性 で運 動 す る の を防 い で あ る.目 盛 は白 色
され る.
セルロ イ ド板 に 黒 色 で 施 し て あ り,仕事 の 目盛 にせ ず 角
度 の 目盛 に し あ り,角度 を を讀 む で實 際 の 衝 撃 仕 事 を計
算 か ら作つた 線 圖で 求 める.本 機 で は試 片 に縫 針 その も
Er=W{h-hcos(θ-θ′)}kgcm…(2)
從 つ て衝 撃 に消 費 され た 仕 事Eiは
第3圖
=W(h-hcosθ)-W{(h-hcos(θ-θ')}
は 第2圖 に 示 した試
驗 機 の作 用原
∴Ei=Wh{cos(θ-θ′)-cosθ}kgcm...(3)
(3)式
に於 て こ の機 械 に特 有 な定數 を求 め るに は次 の
理 の説 明 圖で
如 くす る.振 子杆 全體 の重 量 は振 子杆 を取 外 して 測 定 し
あ る.圖 に於
て次 の値 を得 た.
て振 子杆 の重
心 點 と回轉 軸
W=1.64kg
この 中重り 板 の1箇の
離 をhcmで 振
る.振 子杆 を機 械 に取 着 けた ま ゝ水平 位 置 に廻 し て,重 り
子杆 の全 重量
板 の 中心 で 下 方 に働 く重 量Rを
表す
垂直線 と角 θ
の傾 斜 をな す
位 置 か ら揺 動
振 子杆 の 回轉 軸 中心 と重 り板 の 中 心 との 距離Lは
L=30cm
∴R.L-W.h=O…(4)
h=RL〓
W
=1.157x30
〓1.64
點 の落 下 距離
くxcmと
な
る.故 に振 子杆 が垂 直 位 置 に 達 した時 に な し得 る全 仕 事
次 の如 くで あ る.
Et=W.x
kg cm
=W(h-hcosθ)kgcm…(1)
設計
で定 め次 の如 くで あ る.
振 子杆 の 重 心
は圖 に示 す如
測 定 して 次 の値 を得 た.
R=1.157kg
した 場合 に は
量E1は
あ る.次 に振
子杆 の 重 心點 と回轉 軸 中 心 との 距 離 は 次 の如 くして定 め
と,振 子杆 が
第3圖
重 量 は0.302kgで
の中 心 との距
をWで
縫針衝撃試驗機 の作用原理
次 式 で表 は され る.
Ei=Et-Er
の を 用 ひ これ を振 子杆 下 端 に取 着 け る様 に して あ る.
B.衝 撃 の仕 事 の 計 算 法
次 式 で表 は
=21.14cm
故 にこ の機 械 に特 有 な 定數 は次 の如 くで あ る.
W.h=1.64×21.14
=34.7kgcm
この 定數 を(3)式 に代 入すれ ば
Ei=34.7{cos(θ-θ′)-cosθ}kgcm...(5)
若 し振 子杆 の 軸 受 及 び 指 示針 の摩 擦 等 が 無 けれ ば,衝
(5)式 を用 ひて θの値 が10°,20°,30°,40°,50°,60°
の場
撃 を與 へ な い場 合 に は振 子杆 は垂 直線 を通 過 して左 方 に
合 に對 し て θ′
に0°∼60°の 値 を入れ て計 算 し た 結 果 を
垂 直 線 と角 θ丈 の 傾 斜 をな す 位 置 まで 動 くこ とに な る.
線 圖 に示 す と第4圖
の如 くに な る.圖 に 於 て 曲線 の 直線
第3號
縫
針
の
衝
撃
試
驗(輯
録)
207
θ′
に約 比 例 す る.θ を大
て 外 國製 及 び内 地 製 の各 種 針 を試 驗
き くす る時 は 衝 撃 の 仕 事 が 目盛 の 上 に小 さ く現 はれ ると
した 結 果 は第4表 に 示 した如 くで あ
共に 試 片 の切 斷 した もの が 勢 よ く飛散 す る か ら測 定 に 不
る.第5圖
便 で あ る.縫 針 の 場 合 で は θを30度
ミシン 針 の形 状 を示 した も の で,ミ
に近 い部 分 を利 用 すればEiは
位 に した 時 に都 合
側 に あ る もの は 内地 製
シ ン機 械 に取 着 け る部 分 は半 圓形 に
が よい.
して あり,兩 側 に 溝 が削 り出 し てあ
る.右側 に示 した もの は内 地 製 の 洋
服 用 針 の 形 状 を示 した もので 針 孔 及
び 表 面 の 仕 上 は顯 微 鏡 で 見 る と英 國
製 品 と同 様 に立 派 な 研磨 仕 上 に な つ
て 居 る.針 先 の 角度 は32° に して あ
内 地 製 の ミシ ン
針 及 び メ リケ ン
針の形状
第5圖
るが 英國 製 の もの で は35° に し て あ
る.
D.内 地 製 及 び英 國製 の 洋 服 針 の 比 較
針 の形 状 は第
5圖 の右 側 に 示 した もので,内 地 製 の もの は 山本 工 場 の
製品 で 双 鳳 印 の 商標 を附 した もの で あ る.英 國製 の もの
は ロン ドン市 の キル ビー,バ ー ドの 販賣 品 で あ る.試 驗
の 結果 は針 番 號,針 直徑 に對 す る衝撃 値 を第6圖,第7圖
第8圖 に 示 して あ る.
針 の 直徑 と番 號 とは 第5表
に示 した如 くであ る.圖 に
働撃 に要す る仕事 と振子杆 の揺動 角の減 少量 との關係
第4圖
C.各 種針 の衝撃値
第4表
前述の縫針衝撃試驗機 を使用 し
各種針 の衝撃値
No.1双 鳳 印 縫 針(T.E.C.Co.Tokyo)
No.2英 国 製 縫 針(Kirby
Beard Co London)
内地製 及び英國製の洋服針の比較
第6圖
No.1双鳳 印 縫 針(T.E.C.Co.Tokyo)
No.2英 国 製縫 針(Kirby Beard Co
備考
括弧 内數 字 は 針 直徑 を1mmに
換 算 した値
で あ る.ミ シン 針 で は溝 の方 向 よ り衝 撃 を
加 へ た 時 の 値 で あ る.衝 撃値 を 角 度 θ′
で示
した もの は θが30° の 場 合 の値 で あ る .
内他 製及び英 國製の洋服針の比較
第7圖
London)
208
資
料
第1卷
で 球軸 受 で支 へ た 回轉 軸 を廻 し て その 一端 に針 を取 着 け
て荷 重 に よつ て繰 返 屈曲 をな し,針 の切 斷 と共 に電 動 機
及 び電 氣 時 計 の 回路 を遮 斷 す る こ とに よつ て回轉數を 測
定 す る如 く した もの
あ る.
5.總
括
(A)廣 島 に 於 け る針 工業 は現 在轉 換 期 に あつ て 高級 品
No.1双 鳳 印 縫針(T.E.C.Co.Tokyo)No.2.
英 国 製縫 針(Kirby Beard Co. London)
の製 造 設 備 を充 實 しつゝ あ る.
(B)靜 荷 重 屈 曲試驗 の 結 果 は 第1圖 に 示 す如 く品 質 に
内地 製及び英國製 の洋服針の比較
第8圖
第5表
メリ ケン針 の番 號 と直
徑
相 當 不 同が ある が,こ れ は針 の 如 き細 小 な もの は燒 入の
加 熱 及 び 急 冷 に 敏感 で あ る た め に起 る の で あ る.製 品 の
品質 が不 均 等 な程 度 は英 國,佛 國 及 び獨 國 の製 品 で 部同
じ様 で あ る.
(C)衝 撃 屈 曲 試 驗 の結 果 は第4表,第6圖,第7圖,第
8圖 に 示 す如 く内 地 製 品 の或 ものは 品質 に於 て外 國製 品
於て働撃値 は 内地 製 の 方が いづ れ も大 で あ る.英國 製 品
の 原 料 は 不 明 で あ るが,内 地 製 の もの は滲 炭 した炭 素 鋼
を熱 處 理 した もの で ある.
4.繰
返 屈 曲試 驗
各 種針 を試 驗 す る 目 的 で製 作 し た もの で,小 型 電 動 機
に優 る もの さへ あり,少 くと も同程 度 で ある.
(D)現 在 廣 島 に於 て 高 級 品 の製 造 に對 し て最 も研究 を
必 要 とす る問 題 は 原 料 鋼 及 び その熱 處理 で あつ て,そ の
他 製産費 を低 下 す るた めに製産 能率 の 高 い製 造 機械 の案
出 に 各 工 場共 に熱 心 な研 究 を續 け て居 る.
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