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FDI年次世界歯科大会報告
歯科医の時間 ラジオ NIKKEI 2007 年 12 月 11 日午後 9 時 15 分~午後 9 時 30 分放送 日本歯科医師会企画 キャドバリー・ジャパン株式会社提供 FDI年次世界歯科大会報告 日本歯科医師会理事 佐貫 直通 ●はじめに● 日本歯科医師会理事の佐貫直通です。本日は、去る10月21日から26日までの6日間にわ たり、アラブ首長国連邦のドバイにおいて開催された第95回FDI世界歯科連盟年次世界歯科 大会についてご報告いたします。 大会は10月24日の開会式をはさみ、前半が事務会議、後半が学術プログラムと商工展と いう日程で実施されました。日本歯科医師会からは近藤副会長を団長とする代表団が、総 会、事務会議その他、FDI執行部、アメリカ・ドイツ歯科医師会、フランス歯科医師会およ び韓国・オーストラリア・ニュージーランド歯科医師会等、各国との会談に精力的に出席 し、FDIの運営や活動に対する意見交換を行いました。 ●総会・オープンフォーラム● 各国代表団が出席した事務会議についてご報告いたします。総会は10月22日と26日の2 回、総会に先立つオープンフォーラムは10月21日、23日、24日の3回にわたって開催され ました。総会で討議、決定された事項をご紹介いたします。 ①新規加盟 正会員歯科医師会としてギニアビサウ歯科医師会、東チモール歯科医師会、コスタリカ 歯科医師会、ホンジュラス歯科医師会、ニカラグア歯科医師会が承認されました。また、 協力会員が1件、支持会員が3件承認されました。 ②FDI会費と算定方式 FDI会費についてご報告いたします。FDIの会費算定方式により、日本の昨年の会費は 148,753ユーロ(約2,392万円)、今年は126,108ユーロ(約2,088万円)となりました。昨年よ り22,645ユーロ(約300万円)安い会費となっております。現行の会費算定方式の是正と公 平な会費になること等を求め、日・米・独で要望書をFDIに提出したところ、FDI執行部は 20日、3カ国代表者を集め意見を聴取しました。3カ国とも現在の会費算定方式に用いら れているGNIの矛盾点について強く指摘、改善を要請しました。その結果、10月23日のオー プンフォーラムⅡにおいて「財務に関するタスクチーム」を設置。日本からは江里口常務 理事が選出され、その結果は10月26日に開催された総会Bに勧告として提出されました。 勧告の概要は、 ・大会について5カ年計画を立て、総合的に収益の得られる開催地を決定する。 ・会費の不公平感がないよう、現在の会費算定方式を見直す。 等であります。 ③FDI政策声明 FDI政策声明についてご報告いたします。全文についてはFDIホームページをご覧くださ い。一部修正のうえ採択された新規声明は、「アマルガム修復治療の局所的な悪影響」「歯 科用アマルガムの安全性」など、五つの新規声明が採択されました。 次に既存のFDI政策声明が一部修正のうえ採択されました。 「歯科出版物倫理規定指針(印 刷物と電子データを含む)」「歯周病管理における抗生物質の局所的および全身的使用」な ど四つです。 なお、「ヒト免疫不全ウイルス感染などの血液媒介感染症」は学術委員会へ差し戻しとな りました。 ④FDIにおける言語方針 FDIにおける言語方針についてご報告いたします。FDI執行部は、コミュニケーション・ 会員支援委員会に対し、FDI言語方針を再検討し、FDIの発展そして加盟国にとって有意義 なものとするように要請いたしました。その結果、FDI使用言語方針が総会Bで議決され、 英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語に日本語が追加されることになりました。 ⑤移転問題 FDI本部の移転問題についてご報告いたします。FDI移転タスクチームは、本部事務所を WHOや他の世界的な政府機関などの近くに置くことで得られるメリットを検討し、ビジネ ス環境が現在より好ましいジュネーブなどに限定すべきであるというバーナード専務理事 の勧告に同意し報告書を取りまとめました。この報告書には主文の他、(1)法人としての問 題、(2)雇用問題、(3)費用等、様々な検討結果が列挙されています。総会では、移転の必要 性について、移転に伴うメリット・デメリットを問う意見が出ましたが、結論としては組 織体制タスクチームの報告書に沿い移転計画を実行に移す、具体策については、理事会に 一任することを決定いたしました。 ⑥選挙 10月26日、総会Bでの選挙結果をご報告いたします。次期FDI会長にはブラジルのDr. Roberto Vianna氏、財務責任者には香港のDr. T C Wong氏、理事にはフランスのDr. Patrick Hescot氏、パキスタンのDr. Arif Alvi氏、チェコ共和国のDr. Jiri Pakarek氏、マレーシアの Datuku Dr.N Lakshmanan氏が選出されました。また歯科開業委員会にはドイツのDr. Ralf Wagner氏、教育委員会には日本の井上孝教授、トルコのProf. Nermin Yamalik氏が選出されま した。なお、井上教授は9名の候補者中、トップ当選を果たされました。学術委員会には 香港のProf. Lijian Jin氏、世界歯科発展・保健推進委員会にはモロッコのProf. Souad Msefer 氏が選出されました。 ●FDI 担当役員会● FDI担当役員会は10月24日に開催され、私、佐貫が出席いたしました。内容は昨年に引き 続き各国の会員向け研修材料の共有でありました。 ●会議・会談● 各種打合せ会についてご報告いたします。FDI執行部と日・米・独歯科医師会との会談は、 10月20日に開催され、FDI会費および会費算定方式について意見交換が行われました。3カ 国とも現在のFDI会費算定方式の矛盾点、特にGNI(gross national income:国民総所得)と 実際の歯科医の収入は比例してないこと、この算定方式による会費には強い不公平がある こと、毎年会費を引き上げることが前提の方針には問題があること、会費分担率の上限を 設定することなど、極めて強い姿勢での要請を行いました。この結果「財務に関するタス クチーム」が設置され勧告が出されました。 ①四カ国歯科医師会会議 日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドの四カ国歯科医師会会議についてご報 告いたします。 会議は10月23日に行われ 議題は、本年7月14・15日 ニュージーランドで開催された四 カ国歯科医師会会議の際に申し合わせた事項の、FDIに提出する共同文書について意見交換 などを行い、決定をいたしました。今後とも四カ国が協調路線を堅持することを確認いた しました。 ②FDI執行部と4カ国歯科医師会との会談 FDI執行部と4カ国歯科医師会との会談についてご報告します。会談は、10月24日に行わ れ、Arden会長とConrod次期会長が出席し、Arden会長からは、FDIとしての確認事項は2点 ありました。①地域の半数以上が加盟国となっていること、②FDIの選任した理事がAPDF 担当役員として位置付けられていることであり、APRO/APDFの定款にはこの2点に関する 要件が整えられていました。その他、細部に至るものまでは、関与するわけにはいかない との回答でした。 また、Arden会長からは、現在のAPDFの実態は承知している。そのうえで、この4カ国 はAPDFに復帰しないで、4カ国が中心となり新たな出発をし、徐々にアジア・太平洋地域 を統括するFDIの地域機構に発展することを提案する、との見解が述べられました。しかし 江里口常務理事より、意向は理解しないでもないが日本はアジアの中心である。その日本 自らがアジアの歯科界を分断する行動を起こすことはできないとの意見が述べられました。 4カ国歯科医師会はアジア・太平洋地域の真の歯科保健向上のために、今後とも引き続 き連携体制を維持し、FDIの継続的な支援と理解を要請して、会談を終了しました。 ③各国候補者との会談について 今大会の財務責任者に立候補している、香港のDr. T C Wong氏や、FDI理事に立候補して いるフランスのDr. Patrick Hescot氏らからの選挙に対する支援要請があり、日本代表団が対 応しました。もちろん、日歯代表団からは教育委員会候補者・井上孝教授に対する全面的 な協力依頼も行ったところであります。 ●ジャパンナイト● 恒例のジャパンナイトは10月23日に開催し、各国が開催したレセプション中、最高とな る約600名の参加者があり、近藤副会長・Arden会長の挨拶に続き、終始和やかな雰囲気の なか、ジャパンナイト開催に対し世界中の友人達より称賛と感謝の意が表されました。ま た、在ドバイ総領事館・小林弘裕総領事が会場に駆けつけられ、ドバイ訪問に対する歓迎 の辞を述べられたことをご報告いたします。そして来年、スウエーデンのストックホルム での再会を誓い合い、約2時間のレセプションを終了いたしました。 ●おわりに● 以上が、第95回FDIドバイ大会の報告です。会費算定方式の見直し、教育委員会選挙にお いて井上候補がトップ当選をしたこと、FDIの公用言語に日本語が加えられたこと等、実り ある大会であったと考えております。これまで、FDI大会において比較的発言の少ないと言 われていた日本代表団ですが、ここ数回の大会で、これまでの日本のイメージが変わった と感じている国々も多いのではないでしょうか。今後とも会員の先生方のご理解を得なが ら、日本として主張すべきは主張し、FDIと世界の歯科界の発展に協力していきたいと考え ています。 来年は、9月下旬にスゥェーデンのストックホルムにおいて第96回大会が開催されます。 日本の歯科事情と世界の歯科事情の違いを自らが体験するなかで、日本の歯科界を取り巻 く諸問題を感じてみてはいかがでしょうか。多くの先生方のご参加をお待ちしております。