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経営に貢献するIT部門への変革 ̶イノベーションを実現する CIOの

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経営に貢献するIT部門への変革 ̶イノベーションを実現する CIOの
IBM Global Technology Services
経営に貢献するIT部門への変革
̶イノベーションを実現するCIOの活動指針̶
経営に貢献するIT部門への変革
–イノベーションを実現するCIOの活動指針–
Page 2
目 次
2
はじめに
3
変化するCIOの役割
4
過去のレガシー環境への対応
7
ITインフラストラクチャーと
サービス・デリバリーの将来像
10 新たなビジネス実現のための
自己再投資モデルの作成
11 ITのビジネス・モデル:ソーシング
およびデリバリーに関する意思決定の
はじめに
経営効率向上の推進、事業の成長拡大、
そして株主価値の向上を求め
るプレッシャーが絶えず高まる中で、今日のエグゼクティブたちは従来の
戦略の見直しを進めています。情報技術(IT)
は、各種のビジネス分野の
中でも特に困難な課題を抱えている分野の 1つです。その一方で、最高
情報責任者(CIO)の役割も大きな変化を遂げようとしています。成功を
収めているCIOは、ITがすでに効率向上やコスト削減の手段をはるかに
超えた存在になっていることを認識しています。むしろ、
そのようなCIOは
ITをビジネス・イノベーションの最も重要な促進要因や成功要因として受
け止めており、
自分自身を、
ビジネス戦略とIT戦略を結びつけて実現する
主要なコラボレーター(共同作業者)として位置付けています。
新たなアプローチ
14 オンデマンド・インフラストラクチャーの
ロードマップ:戦略の調整
15 経営に貢献するIT部門へ
また、従来のIT戦略が実際にはイノベーションや生産性に制約を与える
かもしれないという認識を抱き始めているCIOも増えつつあります。従来
の戦略はITインフラストラクチャーを変革し、
ビジネスの移り変わる要件を
満たす上で不可欠であるとはいえ、
その一方で、短期的な修正や日常業
務の要求が優先され、戦略、
プランニング、
および能力開発の取り組みが
往々にして犠牲にされています。IT予算の伸びが実質的に横ばいの状
態にあり、運用や保守のコストが増大する中、CIOが支出構成を改善す
ることで、現状ビジネスを維持するレベルのITインフラストラクチャーを提
供しながら未来志向の戦略的イノベーションをより効果的に実現するに
は、
どのような方法が考えられるのでしょうか。
ITインフラストラクチャーのソーシングおよびデリバリー戦略において、
コ
ストを削減し、その削減したコストを新たなビジネス支援機能を高めるた
めに再配分する上で有効となる戦略をCIOが模索するという傾向がます
ます強まっています。それと同時にCIOは、持続的な競争優位性、十分な
利益幅、
および株主価値の向上の実現を目的とする企業の方針や活動
計画と、
それらのIT戦略を連携させようとしています。
経営に貢献するIT部門への変革
–イノベーションを実現するCIOの活動指針–
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成長の担い手としてのCIO
最高情報責任者(CIO)の役割を見
直すべき時期に来ています。CIOは、
リーダーシップを形成する三角形の
第3の頂点として位置づけられる必
要があります。第1の頂点に相当する
最高経営責任者(CEO)
は、
トップレベ
ルの成長を実現するとともに、市場へ
オンデマンドに対応するため、組織が
一層即応性を発揮できるようにしま
す。第2の頂点に相当する最高財務
責任者(CFO)は、外部の規制による
圧力に対峙するとともに常にコストを
厳しく管理します。そして、それらの
活動指針の成否はいずれも第3の頂
点、つまりCIO にかかっています。そ
れは、CIOの役割には、柔軟性、即応
性、
および回復力のあるITインフラスト
ラクチャーを確立すること、ITのソー
シングやデリバリーについて的確な意
思決定を下すこと、
ビジネスを支える
システムやアプリケーションの機能を
強化することによって成長を実現する
という可能性が内在しているためで
す。
これは、最も進化した経営を実現
する三角形です。
変化するCIOの役割
従来、景気に対する警戒感から多くのCIOは、移り変わるビジネスの要求に
対応すると同時に、
コスト削減、
ビジネス継続性の確保、
データの完全性とセ
キュリティーの維持などの観点から、実行すべき課題の優先順位を決めてき
ました。
これは、受け身の活動指針であったと言えます。
市場をリードしている企業では、ITが(成長や即応性に対してだけでなく、
プ
ロセスや費用効果に対しても)極めて大きな影響を与える可能性があること
を認識しています。そうした企業では、支援機能やコスト削減の推進要因と
いう従来のITの役割にとどまらず、それ以外の役割にも目を向けています。
そうした組織では、ITが、
イノベーションにつながるビジネス上の成功要因や
ドライバーとなっています。
これらの組織では、情報技術はビジネスに活力を
もたらす可能性があり、
トップレベルの成長を推進する要因の1つであると認
識しています。そして、CIOにはそのような成長を後押しする能力が期待され
ます。
これらの組織では、
ビジネス全体にわたって効率を高めるため、新たな
要件をより迅速にビジネスに取り込み生かすべくテクノロジーを利用していま
す。
また、新たな流通チャネルを確立し、市場をセグメント化するさまざまな方
法を把握し、新規顧客のカスタマー・インサイト
(顧客理解)
を深めるためにテク
ノロジーを利用しています。
これらの先進的な考え方を持つ組織でCIOは重要な役割を果たし、将来の
可能性を視野に入れて既存の問題を解決します。CIOは、既存のIT資産基
盤の継続的な改善を確実に実施しながら、現行システムの効率と管理容易
性を高めなければなりません。ただし、
このCIOの役割は現在、技術者とし
ての役割をはるかに超えて拡大しています。先進的なCIOは、ITとビジネス・
ニーズを整合させ、
ビジネスとITへの投資からより大きな価値を引き出す方
法に目を向け、組織の戦略的方向性についての提言を行っています。
経営に貢献するIT部門への変革
–イノベーションを実現するCIOの活動指針–
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ハイライト
そのようなCIOは、
自社にとってコアとなるビジネス・プロセスの価値を高める
可能性を持つ新たなテクノロジーを用いて、差別化による競争優位をもたら
します。
また、成長のための活動指針においては、現状のITとビジネスとの
ギャップを洗い出し、
それらのギャップを調整し解消する新たなアプローチを
活用するとともに、ITによって将来のビジネス価値を創出できる領域の明確
化を行っています。
今日のCIOは、
リソースに制約がある中で、新たなビジネス要件の充足と、
ます
ますコストがかさむレガシー環境の管理という相反する2つの要求の間に身
を置きながら、
その双方の要求に取り組んでいます。
過去のレガシー
環境の管理
ITとビジネス
要件の整合
制約のある
リソース
CIO
今日のCIOは、
リソースに制約がある中で、新たなビジネス要件の充足と、
ますますコストがかさむレガシー環
境の管理という相反する2つの要求の間に身を置きながら、
その双方の要求に取り組んでいます。
過去のレガシー環境への対応
自社のITインフラストラクチャー全体を完
全に把握している企業はほとんど存在しま
せん。
そのため、
ビジネス・ニーズに合わせて
ITを活用することが困難になっています。
ITの開発は、
これまで個別に進められたり、独自仕様に従って進められてき
た経緯があります。企業内のITインフラストラクチャーは個別の環境に分割
され、その所有権が組織全体に細かく分散している場合が多いため、企業
が自社のITインフラストラクチャー全体を完全に把握できるというケースは
めったにありません。
その結果、ITによる対応を調整したり、
ビジネスを真の意
味でサポートしたりすることが困難になっています。
さらに、企業のIT環境は、
多くの場合、縦割り型のアプリケーションやデータ・センターに象徴されるよう
に非効率な特性があります。
この問題に加えて、多くの企業では、部分最適
化されている複雑なレガシー環境やリソースの制約を相変わらず抱えていま
す。
これは、迅速に新たな施策に取り組む能力を妨げることになります。
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ハイライト
コスト削減の施策には、サーバーの統合
やデータ・センター全体の統合によって規
模の経済を実現する方法など、
さまざまな
ものがあります。
自社内での共用サービス戦略では、
コスト
削減を達成するための十分なIT規模を実
現できないため、期待したコスト削減を実
現するのは困難です。
IBMは世界最大のITサービス企業とし
て、一般企業が独力で実現可能な水準を
はるかに上回るコスト削減を実現すること
ができます。
CIOは、
コスト削減を求めるプレッシャーの中で、
これまでITインフラストラク
チャー、組織、
およびITサービスのプロビジョニングのリストラクチャリングを進
めてきました。
これらの改革は、
まず個々のデータ・センター内のリソースの最
適化(サーバーの統合など)から着手し、最適化された社内の共用サービス
組織にITサービス・デリバリー・センターを統合するという方法で、過去数年
の間に段階的に実施されてきました。
これは、規模、標準化、
そして業務の合
理化によってコスト削減が達成されるという考え方でした。
しかし、多くの組織において、社内共用サービス・アプローチによって達成さ
れた実際のコスト削減効果は期待を裏切るものであり、
むしろ、最大手の企
業でさえ、十分なITの規模と能力を実現し、期待された効果を達成するの
は、不可能ではないにせよ困難であるという認識に達しています。共用サー
ビスには、本質的に均一な水準のITサービスを企業全体に提供するという
特徴もありますが、実際に組織が必要とするのは、
それよりもはるかにきめ細
かい個人に合わせた水準のサービス・デリバリーです。例えば、新興市場や
新たに創設された事業部には、
おそらく既成の事業部が必要とする水準の
サービスは必要ないし、
その余裕もないでしょう。
結果的に、統合と継続的改善についてはすでに収益逓減のポイントに達し
ている企業では、ITインフラストラクチャーのコスト削減をさらに進めるため
に、本当に大規模な ITサービス企業を活用する必要が生じています。例え
ば、IBMでは、年間400億米ドルを超えるIT支出をお客様に代わって管理し
ています。
これは、世界上位13社の金融機関のIT支出総額を上回るととも
に、消費財業界の上位50社のIT支出総額を上回る金額です。IBMでは、
こ
のような水準の投資額によって、個別の企業が独力では実現できないような
規模の経済を実現することが可能です。
経営に貢献するIT部門への変革
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ハイライト
クライアント/サーバー・プラットフォーム上
のコア・アプリケーションにおける耐用期
間の問題が徐々に浮上しつつあります。
資金や重要なスキルの不足により、企業
の新たなアプリケーション・プラットフォー
ムへの投資能力が阻害されるおそれがあ
ります。
新たなビジネス支援機能の開発のために
確保したリソースが、重要なレガシー・アプ
リケーションの稼働状態を維持するため
に充てられる可能性があります。
アプリケーション層では、
クライアント/サーバー・アーキテクチャーで稼働して
いるエンタープライズ・リソース・プランニング
(ERP)ベースのシステムに対す
る投資に関して、多くのCIOが間もなく耐用期間の問題に直面することにな
ります。ERPソフトウェアのベンダーは、
自社の顧客に新たな機能、
アプリケー
ション統合機能、および機能モジュールを提供するために(また、
ライセンス
収入の低迷に対処する手段として)、新たなテクノロジーやソフトウェア・プラッ
トフォーム、機能アプリケーションを市場に投入しつつあります。
さらに、
アプリ
ケーションをオンデマンド方式で提供する新たなモデルによって、
アプリケー
ションの提供と保守に伴う経済的負担が軽減され、変革が進められていま
す。現行のプラットフォームは、それらに比較すると、柔軟性が大幅に劣るこ
と、陳腐化していること、保守に要するコストが大きいことから置き換えられる
可能性があります。CIOは今後、環境を刷新し、新たにリリースされたプラット
フォームによって現行プラットフォームを置き換えなければならないという、
さら
なるプレッシャーを実感することになるでしょう。
確かに、新しいプラットフォームには、保守コストの低下、Webベースのデリバ
リー、
レガシー統合の促進、新たな機能やビジネス・プロセスの利用といった
利点があります。
しかし、
そのようなプラットフォームを導入するには、CIOが独
創的な発想によって新たな資金源を見つけ出す必要があります。
それを怠る
ことは、競争から取り残され、競争優位を失うリスクを冒すことを意味します。
リソースの能力も、非常に大きな役割を果たすことになります。CIOは、組織
の全体的なスキル・セットを評価する際に、拡張された企業全体にわたって新
たなテクノロジーをグローバルな規模で適用し、管理するための十分なトレー
ニングを現行のスタッフが受けているかどうかを見極めなければなりません。
最終的な結論として、現在のCIOは、
より少ないコストや労力でより大きな成
果を上げる、つまり、
日常業務が円滑に実行され続けるようにすると同時に、
変化するビジネス・ニーズを満たすために必要となる重要なインフラストラク
チャーの改善を行う革新的な方法を見つけ出さなければならないという課題
を抱えています。非常に頻繁に起きるのは、CEOが要望した新しい画期的な
機能やビジネス支援機能の開発(ビジネス全体に増幅的な効果をもたらす
可能性のある開発)のために確保した予算や人員が、重要なレガシー・シス
テムの保守に吸い上げられてしまうといったケースです。IT予算の伸びが実
質的に横ばいの状態にあり、保守や運用に関する「固定」費が増大し続け
る中で、CIOがそれらのレガシー・システムを運用し管理すると同時に、世界
に通用するようなITインフラストラクチャーの戦略的開発を推進するには、
ど
のような方法が考えられるのでしょうか。
経営に貢献するIT部門への変革
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ハイライト
市 場 投 入までの 時 間 や 投 資 収 益 率
(ROI)の達成という面に目を向けると、
現在のITモデルは十分であるとはいえま
せん。
ITインフラストラクチャーとサービス・デリバリーの将来像
CIOは、
自らが実施したあらゆるIT投資について短期間で投資効果を示すと
いうプレッシャーが高まる中で、財務的負担の軽減と価値を生み出すまでの
時間の短縮につながる代替策を模索する方向へ動きつつあります。
どんなに綿密に計画されたITプロジェクトでも、当初の予定を上回る時間や
リソースが必要になり、
プロジェクトの実行が困難になる場合があります。
こ
のようなプロジェクトは、特定のビジネス上の課題の解決を目的としていると考
えられますが、
テクノロジーの急速な変化やテクノロジーに関する社内スキ
ルの不足によって目的を達成できない可能性があります。
ビジネスの成長や柔軟性の妨げとなる既存のITに対処するためには、新
たなITモデルが必要です。つまり、
ハードウェアやソフトウェアの総所有コスト
(TCO)
を軽減し、ITの運用コストを削減するとともに、先進的な技術(ワイヤ
レス通信、Voice over IP(VoIP)、無線ICタグ
(RFID)、音声認識、
サービス指
向アーキテクチャー
(SOA)、Webサービス、
オートノミック・コンピューティング、
グ
リッド・テクノロジーなど)
を活用できる組織の体制を整えるモデルが必要にな
ります。業務の効率性や柔軟なインフラストラクチャーは、
この新しいモデル
の基本的な要素となります。そのためには、
あらゆる構成要素が流動的であ
り、
ビジネスの状況が変化したときに変更が可能なオープンなオペレーティン
グ環境への転換が必要です。
また、部門内はもとより、部門をまたがっても、
リ
アルタイムのトランザクション処理、
データ・マイニング、意思決定支援を実行で
きるように、
サプライ・チェーンのあらゆる部分で統合されているプロセスや情
報が必要になります。
このような方法で−オンデマンド・ビジネスとして−機能で
きる組織は、新たなテクノロジーの進化を有効に活用することが可能です。
そのような組織では、
ビジネス戦略と整合性のあるテクノロジーを導入するこ
とが可能であり、
イノベーションと成長のために利用可能なリソースを確保で
きます。
経営に貢献するIT部門への変革
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ハイライト
CIOは、サービス・デリバリーに関するさま
ざまな選択肢の利点と欠点を比較検討し
ています。
現在CIOは、
オンデマンド・ビジネスに向けて大きく前進しようとしています。
ま
た、仮想化やその他のオンデマンド技術を活用して、
インフラストラクチャーの
コストや人件費の削減を進めています。そして、
日常作業の自動化や、サー
バー管理の質およびスピードの面で改善を進めています。
さらに、
ビジネス・
ユニット全体にわたってサーバーやその他のITリソースのプールを用意して、
リソースを最適化しています。
リソースの使用率を上げ、IT管理を単純化する
ことによって、追加の設備投資の必要性を軽減し、ITのコストを削減します。
CIOは、ITサービス・デリバリーの各種オプションも入念に検討しています。IT
のアウトソーシングが自社にとって実行可能なオプションかどうか、
あるいは
少数の主要ベンダーによるマネージド・サービスを活用するのが適切かどうか
を検討しています。
また、社内の要員を率直に評価し、彼らが新たなテクノロ
ジーに対処するために必要なスキルを備えているかどうかを判断しています。
自社運用 /
社内での統合
一部業務を外部委託 /
マネージド・サービス
包括的
(フル・スコープ)
アウトソーシング
実際には、
ほとんどの企業でこれらのデリバリー・モデルの組み合わせを選択しています。
企業が、
より柔軟性の高い新たなITモデルへ移行する際には、
このような
ソーシングに関する問題を検討しなければなりません。
この決定プロセスは
CIOごとに異なり、
ベンダーは、
さまざまな管理上の優先事項や予算のニーズ
に対応したソーシングの選択肢を提案しなければならないことを認識してい
ます。
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ハイライト
実際に、多くの企業では、
自社のビジネス・ニーズに合わせたIT戦略遂行に
おいてアウトソーシングを何らかの形で組み合わせて活用することで恩恵を
得ていきます。
自社運用、マネージド・サービス、およびア
ウトソーシングの各デリバリー・モデルを組
み合わせると、CIOがITとビジネス要件を
より良く整合させる上で効果を発揮するこ
とができます。
特定のITインフラストラクチャーに関する
コストを固定費から変動費に変えると、大
幅な(最大で25%以上の)
コスト削減が
実現される可能性があります。
さらに、
その
コスト削減分をビジネスの成長を推進する
ために再投資することもできます。
ITのコストが業績に結び付いている場
合、CIOはCEOやCFOに対して魅力的な
提案をすることが可能です。
• 自社運用/社内での統合−その企業自身が統合能力を備えており、ベ
ンダー提供のコンポーネントと社内リソースを利用したインフラストラク
チャーの変革を選択する場合。
• 一部業務を外部に委託/マネージド・サービス−ITインフラストラクチャー
の特定の要素の開発や管理について支援を得るために、IBMのような
パートナーの協力を求めている企業の場合。
• 包括的(フル・スコープ)
アウトソーシング−自社のITインフラストラクチャー
およびアプリケーション管理を広範囲にわたってアウトソーシングすること
を求めている企業の場合。
より柔軟なデリバリー・モデルに加えて、CIOはIT サービスに関するベンダー
の価格設定についても、
より高い柔軟性を期待しています。
これは、変化する
ビジネス・ニーズに合わせて価格を調整する機能がなく、毎月決められた料
金を支払うといった固定的な価格構造を避けようとするためです。多くの場
合は、固定料金から変動的な形式の価格設定への移行が行われており、収
益達成のために利用されるITキャパシティーのあらゆる要素に基づいて料
金が変動する方式が採用されています。ユーザー数、終了したコース数、達
成された収益などのビジネスに関連する指標に基づいた価格設定は、経営
レベルの意思決定者から高い支持を得ています。
このような料金設定では、
IT支出とビジネス上の成果が直接結び付けられるので、CIOがビジネスとIT
の整合を進める上で有効です。CIOが新たなIT施策をCEOやCFOに提案す
る際にも有利になります。
ビジネスを測定基準するベースの価格設定は、組
織のITコストをインフラストラクチャーのパフォーマンスやその他のIT関連の
指標ではなく、特定のビジネス成果と結び付けることによって、企業の経営者
層がITへの投資効果を把握することを容易にします。
また、将来のIT支出に
関する意思決定を単純化して迅速化する上でも有効です。
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ハイライト
新たなビジネス実現のための自己再投資モデルの作成
デリバリーや価格設定に関する代替モデルは、
まったく新しいものではないと
はいえ、
これらのモデルがもたらす柔軟性には注目すべき点があります。
デリ
バリー・モデルや価格設定モデルを企業のビジネスやIT組織の要件に適合
させることで、以下を実現することが可能になります
• より迅速な展開を可能にすることで、価値を生み出すまでの時間を短縮
する効果がある。
• 組織がITの総所有コストを軽減すること、つまり、資産を固定費から変
動費に
(資本から経費に)転換することに重点的に取り組む上で有効で
ある。
• IBMの経験では、15%∼25%あるいはそれ以上に及ぶ2桁のコスト削減
を実現できる可能性がある。
削減されたコストを活用して、新たなビジネ
ス実現のための自己再投資モデルを確立
することが可能です。
削減されたコストを活用して、新たな機能への投資資金を自己融資するモデ
ルを確立できるという点には説得力があります。
このモデルでは、ITによるビ
ジネス支援、
イノベーション、そして最終的にはトップレベルの成長を推進す
る上でインフラストラクチャーが手法全体の重要な要素となります。CIOは、
イ
ンフラストラクチャー部分(例えば、
アプリケーション保守やコアとなるインフラ
ストラクチャーの運用など)のコストを削減し、その余剰資金を新たなアプリ
ケーション開発に再投資することによって、
ビジネス支援とビジネス・コスト抑
制の両面を推進できます。
インフラストラクチャーの生産性
節減されたコストの再投資
高い生産性
節減されたコストの再投資
新規開発
節減したITコストを新規開発に向けて再投資することによって、新たなビジネス実現のための自己再投資モ
デルを確立することが可能です。
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ハイライト
IBMは、CIOがIT組織を1つのビジネスと
して運営し、他のビジネス部門のエグゼク
ティブが使用しているものと同じ種類の分
析ツールや管理ツールを利用することを提
案しています。
ITのビジネス・モデル:ソーシングおよびデリバリーに関する意思決定の新たな
アプローチ
これらの新しいデリバリー・モデルや価格設定モデルを効果的に展開する鍵
は、ITの中で成長の達成手段になる領域と、重要でありながら差別化にはつ
ながらない領域を把握することにあります。CIOは、IT組織をある1つの機能
を果たす人材、
プロセス、
インフラストラクチャーごとのビルディング・ブロックに
分解することで、最大の収益を迅速にもたらす可能性がある投資領域と、
よ
り低コストで効率の高いパートナーに委託できる投資領域を絞り込むことが
可能です。
これは、CIOにとっては、ITを1つのビジネスとして運営し、他のビジネス部門
の同じ立場にあるエグゼクティブが使用しているものと同じ種類の分析ツー
ルや管理ツールを使用するという考え方を意味します。例えば、IBMでは、全
体としてビジネスの差別化につながるプロセスやアクティビティーを判別する
ためのComponent Business Model™ アプローチの実施を多くの企業で支援
しています。
これは、企業を互いに関連するコンポーネントあるいは中核的な
ビルディング・ブロックの集合体とみなし、それぞれのコンポーネントが価値を
生み出す必須のビジネス機能を表しているという考え方に従って進められて
います。
組織を構成要素に分解し差別化につな
がるアクティビティーを判別すると、CIOと
各経営幹部が同じように十分な情報に基
づいてソーシングに関するより的確な意思
決定を下せるという効果があります。
最新の調査では、あるアクティビティーがビジネスの差別化につながらない
場合や継続的な競争優位性を促進しない場合、
あるいは外部のパートナー
の方がアクティビティーをより効率的な方法で、
より低いコストで実施できる場
合、
そのアクティビティーをサード・パーティーにソーシングする候補とすること
が示されています。実際に、IBM独自の調査によると、標準的な企業では、
コ
ア機能に相当し差別化と成長をもたらすものは全体の13%∼28%であるこ
とが示されています。一方、重要でありながらコア機能ではない32%∼47%
を含めて、差別化につながらない機能は全体の55%∼74%を占めています。
人事、調達、
ロジスティクス、財務会計に関するビジネス・プロセスのアウトソー
シングの台頭は、
このような傾向の必然的結果です。企業は重要でありなが
らコアではない機能をアウトソーシングすることによりコストを削減し、
ビジネス
に差別化を可能にする価値をもたらす機能に集中しているといえます。
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ハイライト
CIOは、CBM-BoITを利用することでリ
ソースの利用状況を把握し、ITとビジネス
の整合におけるギャップを把握することが
できます。
この画期的なアプローチを適用すること
により、最もコストがかかるITアクティビ
ティーや、最も効率的に実施されているIT
アクティビティー、
ビジネスに戦略的な価
値をもたらすITアクティビティーを明らかに
することが可能です。
IBMでは、
ビジネスを対象としたコンポーネント・ベースのモデリングをIT組織
の分析に応用しています。Component Business Model for the Business of IT
(CBM- BoIT)
によりCIOは、
リソースがどこで利用されているか、IT とビジネ
スの方向性との整合性が取れているかどうかを把握することが可能です。
CBM-BoITは、IBM IT Process Model(ITPM)、ITIL、IT Services Process
Modelなどの実証されたフレームワークと、IBMおよび学会の先進的な研究
成果の統合の組み合わせによって生まれたものです。
ITコンポーネントの主な目的は、
テクノロジー対応のビジネス・サービスを提供
することです。
これらのテクノロジー対応サービスは、社内のビジネス・アクティ
ビティーを支援するほか、Web サイトのように消費者とじかに接するアクティ
ビティーを支援するために外部化することもできます。CBM-BoITのマップ自
体はテクノロジーに依存しません。つまり、特定の種類のハードウェアやソフト
ウェアを前提としたものではありません。むしろ、IT機能は企業の他のあらゆ
るコンポーネントと同様な方法で定義可能であり、同じビジネス手法を使用し
て管理すべきであるという考え方に基づいています。
コンポーネント・ベースの管理方式は、現在のIT組織を評価し、IT機能とビジ
ネス戦略とのギャップを識別し、
ビジネスまたはITのいずれかの視点から将
来の望ましい状況へのロードマップを構築する共同作業環境をもたらしま
す。CIOは、IT組織およびインフラストラクチャーを分析するツールとしてコン
ポーネント・マップを利用し、
どのアクティビティーが差別化につながり、
どのア
クティビティーが差別化につながらないか、
どのアクティビティーのコストが最
も高く、
どのアクティビティーのコストが最も低いか、
それぞれのITコンポーネン
トに含まれるアクティビティーを組織がどの程度効率的に実行しているかを
確認することができるようになります。その結果、IT投資がITやビジネス戦略
の優先順位とどの程度強く整合しているかの把握につながります。
このアプ
ローチは、ITポートフォリオの最適化、新規ソーシング戦略の策定、投資の優
先順位付け、組織の設計、
ビジネスにとって価値のあるイノベーションの実現
に関する意思決定に大きく役立ちます。
経営に貢献するIT部門への変革
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CBM-BoITによるIT組織成熟度診断
必要となる能力レベルの設定
M
IT戦略
H
M
H
L
能力向上が必要な領域の特定
ギャップ
現状成熟度の診断
L
L
M
M
H
M
・資源(人・モノ・カネ)のシフト
・インソース/アウトソースの区分け
・組織構造の変更
経営に貢献するIT部門への変革
–イノベーションを実現するCIOの活動指針–
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ハイライト
IT組織のコンポーネント・ベースの分析
は、CIOが新たなソーシング戦略、投資の
優先順位付け、
ビジネス・インテグレーショ
ンの推進によってIT環境を最適化するた
めのロードマップを作成する際に効果的
です。
CIOの最終目標は、オープンで柔軟性の
高いアーキテクチャーに基づいて作成され
たITコンポーネントを、回復力と充実した
セキュリティー機能を備えたインフラストラ
クチャーによって効果的に利用し、かつ再
オンデマンド・インフラストラクチャーのロードマップ:戦略の調整
目的は、
それぞれのITコンポーネントを効果的に使用し、かつ再利用するとと
もに、
オープンで柔軟性の高いアーキテクチャーによってサポートされるオン
デマンド・インフラストラクチャーを構築することにあります。企業は、
ロードマッ
プのどの位置にいるかを表す以下のような指標を利用します。
• 変化するビジネス・ニーズを満たすために、組織のあらゆる場所にリソー
スを迅速に展開できる。
• IT環境がビジネスの回復力に貢献しており、IT環境自体の回復力も高い
(セキュリティー機能が充実しており、24時間体制で稼働している)。
• サーバーやストレージのキャパシティー利用率がほぼ100%に達してお
り、使用量の変化に合わせて容易に増減できる。
• エンド・ユーザーは、実際に使用したITキャパシティーに応じた料金のみ
を支払っている。
また、そのキャパシティーは需要のピークと谷に合わせ
て動的に変更可能である。
• IT支出の75%が変動費であり、25%が固定費である。
• 包括的(フル・スコープ)
アウトソーシング−自社のITインフラストラクチャー
およびアプリケーション管理を広範囲にわたってアウトソーシングすること
を求めている企業の場合。
• ITリソースに関する制約が問題点にならなくなっている。
• インフラストラクチャーの柔軟性と実装の速さが、競争優位性をもたらす
主な要因となっている。
ITをビジネスと同様に運用するために、CIOがITを変革する計画に着手す
る際には、現在の出発点やIT管理に適用するアプローチに応じて異なる方
針をとる必要があります。
このプランニングプロセスによりCIOは、最高のパ
フォーマンスと柔軟性を実現し、
さらに固定費の削減と収益の向上を可能に
する上で新しいIT機能や経済性をどのように利用できるかを見極めることが
できるため極めて重要な意味を持ちます。
利用することにあります。
現代の企業経営幹部やCIOには、ITをビジネスの成功要因として利用する
必要性に疑問を持つ人はほとんど存在しないと言ってもよいでしょう。多くの
人々は、綿密に考え抜かれた投資によって、
ビジネス・プロセスの効率を高め
て業務コストを削減するとともに、
トップレベルの成長によって競争優位を確
立することが可能であることを確信しています。
経営に貢献するIT部門への変革
–イノベーションを実現するCIOの活動指針–
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ハイライト
IBMでは、本ホワイト・ペーパーで述べた
課題に関するご相談を受けつけておりま
す。新たなビジネス実現のための自己再
投資モデルをお客様の組織にどのように
適用できるかご提案させていただきます。
CIOの方々は実際に以下のような疑問を抱くかもしれません。
「現在のIT組
織には、
自社にとってイノベーションや成長の成功要因として機能する手段
やリソースが存在するのだろうか」。
「費用対効果の高いソーシング・モデルを
構築し、最新のテクノロジーの発展を十分に活用するにはどうすればよいの
だろうか」。
「どこから手をつければよいのか、
どのように優先順位を設定す
るのか、
そのような目標の達成を可能にするロードマップはどのように作成す
ればよいのだろうか」。
IBMの戦略およびITコンサルタントは、そのような課題を理解しています。
IBMでは、
それぞれの業界に的を絞った幅広い調査や、
お客様とコンサルタ
ント双方とのコラボレーションに基づいてCIOが直面する課題を検討する仕
組みを整備しています。
この対話を通じて、
ビジネスを支援する新たなITの
投資資金を自己融資するモデルがお客様の組織に適用可能であることを実
証することもできます。
また、
お客様に最適なITサービス・デリバリー・モデルの
組み合わせを見つけるお手伝いをすることができます。
さらに、短期間の実
践的なワークショップを通じて、Component Business Model for the Business
of ITをお客様の組織に適用して、
オンデマンド・ビジネスに向けた成長のロー
ドマップを作成する作業を支援することも可能です。
経営に貢献するIT部門へ
ビジネスを支えるITのためのコンポーネント・ビジネス・モデル(CBM - BoIT:
CBM for Business of IT)の詳細を知り、
あなたの企業の経営イノベーション
に貢献するIT組織を作り上げるためにIBMがお手伝いいたします。
詳しくは弊社営業担当員または[email protected]までお問合せください。
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たはその他の国、あるいはその両方における
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他の会社名、製品名およびサービス名等はそ
れぞれ各社の商標です。
本書で「ユーティリティー」
という語を使用して
いる場合、業界における用語を反映したもので
あり、何らかのオンデマンド・サービスが政府規
制を目的とする公益事業サービスに類似して
いることを示唆することを意図したものではあ
りません。
本書に記載の製品、
プログラム、
またはサービ
スが日本においては提供されていない場合が
あります。日本で利用可能な製品、
プログラム、
またはサービスについては、日本アイ・ビー・エ
ムの営業担当員にお尋ねください。
IBMは、本書で提供している情報の正確性に関
して一切の責任を負いません。これらの情報は
お客様の責任でご利用ください。本書の情報
は予告なく変更または更新される場合があり
ます。IBMは、本書で述べている製品やプログ
ラムに任意の時点で予告なく改善や変更を加
える場合があります。
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