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高齢世代は自世代向けの政策予算にエゴイスティックに固執
高齢世代は自世代向けの政策予算に エゴイスティックに固執しているのか ―政策予算の配分に対する態度に見られる 世代間対立をめぐって― 小 田 利 勝 第8回日本応用老年学会大会 2013年11月9日(土) 札幌医科大学 世代間公平性・世代間格差・世代間対立の議論 先進産業国における高齢化の進展に伴って生じた共通の課題として80 年代からしきりに議論されてきた。 Eric R. Kingson(1988).Generational Equity: An Unexpected Opportunity to Broaden the Politics of Aging, The Gerontologist, 28(6), 765-772. Laurie A. Rhodebeck(1993). The Politics of Greed? Political Preferences among the Elderly, The Journal of Politics, 55(2), 342-3. John B. Wikkiamson, Tay K.McNamara, Stephanie A. Howking(2003). Generational Equity, Generational Interdependence, and the Framing of the Debate Over Social Security Reform, Journal of Sociology and Social Welfare, 30(3), 3-14. Stefan Svallfors(2008).The generational Contract in Sweden: Age-specific Attitudes to Age-related Policies, Policy & Politics, 36(3), 381–96 Marius R. Busemeyer, Achim Goerres and Simon Weschle(2009). Attitudes towards Redistributive Spending in an Era of Demographic Ageing: the Rival Pressures from Age and Income in 14 OECD Countries, Journal of European Social Policy, 19, 195-212. John B. Williamson and Diane M.Watts-Roy.(2009). Aging Boomers, Generational Equity, and Framing the Debate over Social Security, in Robert B. Hudson ed.,Boomer Bust?: Economic and Political Issues of the Graying Society, Praeger Publishers, 153-172. Steven K. Wisensale(2013). Austerity vs. Solidarity: Intergenerational Conflict in the European Union, International Journal of Humanities and Social Science, 3(1), 22-30. 日本における世代間公平性・世代間格差・世代間対立の議論 2005(平成17)年の年次経済財政報告(内閣府)から抜粋 ●老人医療費の拡大は将来の負担を増加 我が国の公的医療制度は世代間の相互扶助に基づくものであること から、医療費の増加が経済成長率を上回るペースで続いていくよう な場合には、今後負担を増大させる原因となる。生まれ年別に分け た各世代の生涯にわたる社会保障給付や行政サービス等の政府部門 からの受益総額と税・社会保障負担等の政府部門に対する負担総額 の関係をみる世代会計の手法を用いて、仮に現行の制度が維持され ると仮定した上で、医療費が経済成長率と同程度で増加する場合に ついてみると、例えば2003年度時点で60歳以上の世代は生涯でみて 約4,900万円の受益超となるのに対し、同時点で20歳代の世代は 約1,700万円の負担超となるものと試算される。 内閣府 平成17年度年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)-改革なくして成長なし- 日本における世代間公平性・世代間格差・世代間対立の議論 「社会保障・税一体改革大綱について」(平成24年2月17日閣議決定) から抜粋 給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心という現在の社会保障制度を見直 し、給付・負担両面で、人口構成の変化に対応した世代間・世代内の公平が 確保された制度へと改革していくことが必要である。 世代間の公平の見地から、社会保障制度を「全世代対応型」へと転換するこ とにより、就学前、学齢期、若年層から高齢期までを通じて、一貫した支援 の実現を目指す。 70歳以上75歳未満の方の患者負担について、世代間の公平を図る観点か ら、見直しを検討する。 世代間公平の確保及び年金財政の安定化の観点から、デフレ経済下における マクロ経済スライドの在り方について見直しを検討する。 年金受給者は給与所得者に比べて、課税最低限が高いなど税制上優遇されて いる状況であり、世代間の公平性の確保も必要である。 日本における世代間公平性・世代間格差・世代間対立の議論 第12回社会保障審議会年金部会「社会保障の正確な理解について の1つのケーススタディ~社会保障制度の“世代間格差”に関する 論点~」(平成24年4月24日) 一橋大学経済研究所・日本総研共催 記者勉強会 (2013年2月19日) 「社会保障における世代間問題を考える」 「広がる世代間格差」読売新聞(2012年9月25日) 社会学者の古市憲寿(27)と評論家の樋口恵子(80)の対談 (1)若者・高齢者話そう (3)成長前提の制度 転換を (5)若者世代の言い分 (2)幸運だった人はお返しを (4)世代内も格差 (6)高齢世代の言い分 日本における世代間公平性・世代間格差・世代間対立の議論 老人民主主義にNO!「年齢別選挙区」「平均余命制度」提唱 NEWS ポストセブン 2011年6月23日(木)7時5分配信 http://www.news-postseven.com/ archives/ 20110623_23732.html (2011/8/7参照) 社会保障や65歳定年制をめぐって若者と高齢者の対立が顕 在化しているが、世代間格差が広がるばかりの状況に対して、 若者からはついに「老人民主主義」にNOを突きつける声が飛び 出した。 若者たちからは「もはや選挙制度自体を変えるしかない」とい う意見も出ている。世代間格差の問題を取り上げた『「若者奴 隷」時代』著者の山野車輪氏はこう嘆く。 「現在の人口構成では、高齢者の票を獲得しようと、高齢者を優 遇する政策を提案する人が国会議員になる。若者の投票率が低い のは事実ですが、もし若者全員が投票に行っても圧倒的な数を誇 る上の世代には勝てないと、政治を諦めている。もっと若者の意 見が国政に反映されるように選挙制度を変える必要があります」 問題の設定と方法 世代間公平性や世代間格差をめぐる議論では、高齢 者は謂れのない非難や攻撃を受けているように見える。 分が悪いというか、かつての「老人イメージ論」とは 別次元のエゴイスティックなイメージを付与されかね ない風潮ができつつあるようにも見える。 そこで、巷間言われるほどに/そう見做されるほど に高齢者は自世代向け優先で他世代のことを考慮して いないのかを確かめることにした。 では、どのようにして確かめることができるか。 先にあげた Stefan Svallfors(2008).The generational Contract in Sweden: Age-specific Attitudes to Age-related Policies や Marius R. Busemeyer, Achim Goerres and Simon Weschle(2009). Attitudes towards Redistributive Spending in an Era of Demographic Ageing: the Rival Pressures from Age and Income in 14 OECD Countries)では、予算配分に対す る態度から世代間公平性の問題を検証しており参考にな るが、具体的な数字を提示することなく予算項目だけを 提示して質問しているので、個々の回答者が持っている 情報量の違いが回答に影響するのではないかと考え、後 に示すように予算額を提示して回答を求めることにした。 予算項目の世代的分類として参考になるモデル Marius R. Busemeyer, Achim Goerres and Simon Weschle(2009), Attitudes towards redistributive spending in an era of demographic ageing: the rival pressures from age and income in 14 OECD countries, Journal of European Social Policy, 19(3), 195-212 下の図は、平成23年度の国家予算(一般会計)のうちのごく一部の項目を示したものです。これ らは税金でまかなわれるものです。あなたは、それらの予算を、今後、増額すべきだと思います か、それとも減額すべきだと思いますか、あるいは、いまくらいでよいと思いますか。 2 1 0 -1 -2 大 幅 に 増 額 す べ く あ る 程 度 増 額 す べ き い ま く ら い で よ い あ る 程 度 減 額 す べ き 大 幅 に 減 額 す べ き 標本抽出の方法 神戸市: 全市9区364の選挙区(投票所)の有権者総数1,261,918人を 母集団とし、確率比例抽出法により100選挙区から3,000人を 抽出した。 篠山市: 56の選挙区(投票所)の有権者総数36,548人を母集団とし、確率 比例抽出法により20選挙区から1,000人を抽出した。 調査の方法 調査期間:2012年9月17日~11月30日 配布方法:郵送法。途中一回督促状送付 母集団・抽出集団・標本集団(有効回答票)における年齢と性の分布 神戸市 母集団 抽出集団 篠山市 標本集団 母集団 抽出集団 標本集団 20代 13.6 14.8 7.6 12.7 13.6 4.2 30代 17.2 17.3 11.5 13.5 13.0 8.0 40代 16.2 17.4 14.4 13.9 14.0 12.2 50代 15.2 13.4 15.1 17.1 16.6 16.5 60代 18.0 17.0 25.2 16.9 18.8 26.8 70代 12.6 12.2 16.6 14.4 13.8 19.5 7.3 8.1 9.7 11.5 10.2 12.7 男性 46.4 45.8 44.5 46.9 48.0 47.7 女性 53.6 54.2 55.5 53.1 52.0 52.3 2,000 3,000 1,043 36,548 1,000 80代以上 総数(人) 1,261,918 431 抽出集団は母集団を代表していると言えるが、標本集団(有効回答票)では、 母集団に比べて、20~30代が少なく、60代以上が多くなっている。性別 分布は概ね母集団と一致している。 25.0 大幅に増額すべき 25.0 ある程度増額すべき 大幅に減額すべき 25.0 ある程度減額すべき 25.0 いまくらいでよい N 年金関係 (1,410) 8.2 防衛関係費 (1,377) 8.0 介護・高齢者医療 (1,395) 7.8 34.0 エネルギー対策費 (1,363) 7.1 34.6 保育サービス・幼稚園関係 (1,374) 6.7 仕事と家庭の両立の支援関係 (1,369) 6.3 医療保険関係 (1,396) 6.2 奨学金事業 (1,384) 5.9 失業給付・就職支援 (1,380) 5.8 公立高校授業料無償化等 (1,382) 4.8 子供手当て (1,378) 4.7 24.9 食料安定供給関係費 (1,365) 4.3 25.9 義務教育費 (1,379) 3.8 国立大学運営・私学助成 (1,378) 2.8 公共事業関係費 (1,378) 2.0 40.5 23.6 19.7 36.8 18.0 51.4 25.2 4.1 9.0 57.9 10.0 1.8 60.3 8.0 2.5 22.2 41.7 7.0 32.1 45.8 9.4 31.5 40% 3.0 11.2 18.1 51.3 30% 4.2 2.7 21.1 43.3 14.8 2.6 9.5 47.8 16.6 8.3 9.3 49.9 15.1 2.1 17.9 53.7 30.7 9.5 10.4 43.1 28.2 20% 3.4 43.1 30.1 50% 1.9 9.2 46.7 27.8 10% 9.1 39.5 39.3 海外経済協力費 (1,370) 0.7 6.9 0% 40.3 60% 70% 15.1 80% 90% 100% χ2=74.4, df=8, p=.000 χ2=14.4, df=8, p=.075 介護高齢者医療 年金関係予算 46.3% 60歳以上(735) 39.0% 5.4% .… 9.0% 32.4% 36.7% 20.6% 7.2% 35.9% 40-59歳(415) 41.0% 11.3% 2.9% 8.9% 3.1% 40-59歳 (414) 37.0% 33.3% 15.9% 9.7% 30.8% 20-39歳(240) 42.5% 16.7% 5.4% 4.6% 4.1% 20-39歳 (242) 34.3% 42.1% 14.5% 5.8% 0% 50% 大幅に増額すべき ある程度減額すべき 100% ある程度増額すべき 大幅に減額すべき χ2=23.3, df=8, p=.003 52.2% 4.0% 30.4% 50.4% 5.4% 8.5% 9.7% 4.1% 11.2% 29.8% 0% 50% 100% χ2=63.7, df=8, p=.000 子供手当 3.5% 40-59歳(411) 3.3% いまくらいでよい 失業給付・就職支援 31.8% 60歳以上(707) 20-39歳(242) 60歳以上 (719) 42.6% 11.2% 27.5% 60歳以上(708) 48.0% 3.2% 16.2% 4.9% 19.9% 40-59歳(409) 41.7% 21.8% 12.0% 4.7% 20-39歳(242) 9.5% 25.2% 32.6% 17.4% 15.3% 5.4% 0% 50% 100% 0% 50% 100% 回転後の因子行列 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 共通性 予算13 公立高校授業料無償化等 .731 .025 -.124 .073 .510 予算6 子供手当て .725 .057 -.226 -.055 .367 予算8 義務教育費 .614 -.012 .279 -.179 .512 予算7 国立大学運営・私学助成 .549 .006 .061 .003 .349 予算12 変換保育サービス・幼稚園関係 .502 -.008 .168 .064 .429 予算2 医療保険関係 .019 .896 .034 -.031 .813 -.003 .787 .074 .011 .651 .042 .586 -.096 .075 .359 予算9 食料安定供給関係費 -.039 .011 .772 .012 .573 α=.684 予算10 エネルギー対策費 -.089 .005 .715 .024 .458 向若 け年 2層 α=.738 予算15 失業給付・就職支援 -.105 .074 -.022 .919 .757 予算16 奨学金事業 .284 -.098 .104 .419 .457 予算14 仕事と家庭の両立の支援関係 .322 -.025 .063 .392 .448 回転後の分散の% 27.7 17.3 21.0 20.8 向若 け年 1層 α=.768 向高 け齢 層 α=.800 予算3 介護・高齢者医療 予算1 年金関係 標本数:1,283 因子抽出法:主因子法 回転法:プロマックス回転 因子相関行列 標本妥当性の検定 Kaiser-Meyer-Olkin の測度 Bartlett の球面性検定 因子 0.833 近似カイ2乗 自由度 有意確率 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ 1.000 0.239 0.594 0.583 5391.9 Ⅱ 0.239 1.000 0.200 0.208 78 Ⅲ 0.594 0.200 1.000 0.472 0.000 Ⅳ 0.583 0.208 0.472 1.000 若年層向け予算1 高年層向け予算 食料・エネルギー予算 若者向け予算2 分散分析(高齢者向け予算) 度数 標準 偏差 平均値 標準 誤差 平均値の95% 信頼区間 20-39歳 40-59歳 60歳以上 240 413 708 0.58 0.92 0.93 2.29 2.52 2.12 0.15 0.12 0.08 下限 0.28 0.68 0.77 合計 1361 0.87 2.28 0.06 0.74 グループ間 グループ内 合計 自由度 平均平方 24.60 7061.79 7086.39 2 1358 1360 12.30 5.20 F値 2.365 -6 -6 -6 6 6 6 0.99 -6 6 有意 確率 .094 多重比較 Dunnett C (I) 年齢3区分 20-39歳 40-59歳 60歳以上 (J) 年齢3 区分 40-59歳 60歳以上 20-39歳 60歳以上 20-39歳 40-59歳 平均値 の差 (I-J) -0.35 -0.35 0.35 0.00 0.35 0.00 標準 誤差 0.19 0.17 0.19 0.15 0.17 0.15 最 大 値 上限 0.87 1.17 1.09 分散分析表 平方和 最 小 値 95% 信頼区間 下限 上限 -0.80 -0.75 -0.10 -0.35 -0.04 -0.34 0.10 0.04 0.80 0.34 0.75 0.35 分散分析(若年層向け予算1) 度数 20-39歳 40-59歳 60歳以上 合計 平均値 239 407 680 1326 0.41 0.11 0.23 0.22 標準 偏差 3.28 3.26 3.07 3.17 標準 誤差 0.21 0.16 0.12 0.09 平均値の 95% 信頼区間 下限 上限 最 小 値 0.00 -0.21 0.00 0.05 0.83 0.42 0.46 0.39 -10 -10 -10 -10 最 大 値 10 10 10 10 分散分析表 平方和 グループ間 グループ内 合計 自由度 平均平方 14.35 13271.57 13285.92 2 1323 1325 7.18 10.03 F値 .715 有意 確率 Tukey HSD .489 年 齢 3区分 多重比較(Tukey HSD) (I) 年齢 3区分 20-39歳 40-59歳 60歳以上 (J) 年齢 3区分 40-59歳 60歳以上 20-39歳 60歳以上 20-39歳 40-59歳 平均値 の差 (I-J) 0.31 0.19 -0.31 -0.12 -0.19 0.12 標準 誤差 0.26 0.24 0.26 0.20 0.24 0.20 有意 確率 .456 .710 .456 .815 .710 .815 95% 信頼区間 下限 上限 -0.30 -0.37 -0.91 -0.59 -0.75 -0.34 0.91 0.75 0.30 0.34 0.37 0.59 40-59歳 60歳以上 20-39歳 有意確率 α=0.05の 度 サブグループ 数 1 407 .1057 680 .2265 239 .4142 .382 分散分析(若年層向け予算2) 度数 20-39歳 40-59歳 60歳以上 合計 平均値 240 406 697 1343 0.90 0.78 0.60 0.70 標準 偏差 標準 誤差 2.27 2.03 1.96 2.04 0.15 0.10 0.07 0.06 平均値の 95% 信頼区間 下限 0.61 0.58 0.45 0.60 上限 1.18 0.98 0.74 0.81 最 小 値 -6 -6 -6 -6 分散分析表 平方和 グループ間 グループ内 合計 2 1340 1342 9.65 4.16 F 値 2.316 有意 確率 .099 年齢 3区分 多重比較 Tukey HSD (I) 年齢 3区分 20-39歳 40-59歳 60歳以上 (J) 年齢 3区分 40-59歳 60歳以上 20-39歳 60歳以上 20-39歳 40-59歳 平均値 の差 (I-J) .12 .30 -.12 .18 -.30 -.18 6 6 6 6 Tukey HSD 自由度 平均平方 19.29 5580.35 5599.64 最 大 値 標準 誤差 有意 確率 .17 .15 .17 .13 .15 .13 .759 .121 .759 .323 .121 .323 95% 信頼区間 下限 上限 -.27 -.06 -.51 -.12 -.66 -.48 .51 .66 .27 .48 .06 .12 60歳以上 40-59歳 20-39歳 有意確率 度 数 697 406 240 α=0.05の サブグループ 1 .5954 .7783 .8958 .111 年間所得額の対数変換 重回帰分析(1) 若年層向け予算1 標準化 偏回帰 係 数 有意 確率 年齢 -.024 所得(対数) -.030 高齢者向け予算 VIF 標準化 偏回帰 係 数 有意 確率 .405 1.047 .026 .294 1.047 -.053 若者向け予算2 VIF 標準化 偏回帰 係 数 有意 確率 VIF .354 1.047 -.038 .180 1.050 .061 1.047 -.010 .723 1.050 R2 .001 .004 .001 N 1,299 1,333 1,316 重回帰分析(2) 若年層向き予算1 標準化 偏回帰 係 数 有意 確率 年齢 -.013 所得対数 高齢者向き予算 VIF 標準化 偏回帰 係 数 有意 確率 .644 1.077 .048 -.008 .777 1.157 十分ゆとり -.040 .169 少しゆとり .019 少し苦しい とても苦しい 若者向き予算2 VIF 標準化 偏回帰 係 数 有意 確率 VIF .092 1.079 -.032 .269 1.081 -.010 .735 1.153 .002 .947 1.161 1.119 -.063 .029 1.118 -.028 .332 1.120 .555 1.328 -.059 .061 1.329 .037 .247 1.327 .019 .549 1.348 .053 .094 1.353 .015 .639 1.348 .079 .010 1.238 .082 .007 1.235 .064 .038 1.237 R2 .009 .022 .007 N 1,298 1,332 1,315 年齢 -.009 .754 1.133 .033 .250 1.132 -.030 .309 1.135 所得対数 -.015 .623 1.161 -.019 .525 1.155 -.002 .958 1.165 十分ゆとり -.039 .186 1.122 -.060 .038 1.120 -.027 .361 1.123 少しゆとり .021 .516 1.326 -.062 .047 1.325 .041 .202 1.325 少し苦しい .022 .499 1.357 .047 .142 1.361 .018 .585 1.357 とても苦しい .073 .020 1.249 .070 .021 1.245 .060 .051 1.250 病気不安 .009 .741 .008 1.067 .071 .012 .007 1.063 .004 .891 .006 1.065 R2 N 1,289 1,315 1,305 平均値 標準 偏差 N 寝たきりになる不安が 2.71 .753 1435 認知症になる不安が 2.73 .769 1435 病気になる不安が 2.99 .687 1435 1 全然ない 2 あまりない 3 少しはある 4 とてもある α =0.865 結 び クロス表による分析からは、高年齢層向けとみなされる「年金関係」予算や若年層向け とみなされる「失業給付・就業支援」や「子供手当」の予算に対する態度には有意な世代 差が見られたが、「介護高齢者医療」に関しては有意差が見られなかった。有意差が見 られた予算項目においても、その差は大きいものではない。 因子分析によって、13の予算項目から4つの因子が抽出された。そのうちの1つ高年 層向けの予算、2つは若年層向けの予算と見做すことができた。それらの3つに関する 分散分析では、いずれにおいても世代差は認められなかった。 年齢と年間所得、経済的ゆとり感、病気不安を従属変数とする重回帰分析を試みた結 果、若年層向け予算においては、経済的に「とても苦しい」ことだけが有意な関連を示し たが、年齢も所得も有意な関連が認められなかった。高年層向け予算では、経済的ゆと り感が高いことが負(減額)の関連を示し、経済的に「とても苦しい」ことと病気になること への不安が高いことが正(増額)の関連を示した。 予算配分に対する態度からは、世代間公平性の論議で言われるような筋合いはないと 言えそうである。そして、若年層といえども高齢者向けの予算の増額を求めていることは 親世代のことと自世代の将来のことを考えてのことと推察されるが、高年層が若年層向 けの予算の増額を求めていることにも注目しておきたい。 予算配分への態度の分析結果は、世代間公平性の議論に付け加えるべきは、階層間 格差-世代内階層間格差であることを示唆していると考える。 説明変数をあらためて考慮し、分析を深めたいと考えている。 ご静聴ありがとうございます