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知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

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知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会
い~な
診療所
あまみ
中
中 央
事務局
研究所
しらさぎ
つなぐの
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 2242 号 2014.12.6 発行
==============================================================================
大阪初の「ららぽーと」
施設の隅々までママ目線
日本経済新聞
2014 年 12 月 6 日
「四季の泉」をデザインコンセプトに、数多くの植栽が四
季折々の色を織り成す外観
2014 年 10 月 30 日、大阪府和泉市に三井不動産
が手がける大型ショッピングモール「ららぽーと
和泉」がオープンした。ららぽーととしては 2009
年に開業した「ららぽーと新三郷」以来の 12 店舗
目。関西では今年 10 年目を迎えた「ららぽーと甲
子園」に次ぐ2店舗目で、大阪府下初出店となる。
阪和自動車道・岸和田和泉 IC から約2分、南海
電鉄和泉中央駅からバスで約 10 分の郊外立地。地
上5階建ての2~4階が店舗フロアで面積は約5万 6500 平方メートル。ファッションから
雑貨、食品、飲食、アミューズメント、サービスまでバラエティー豊かな 218 店舗が出店
した。そのうち新業態を含む大阪府初登場は 20 店舗。初年度売り上げ目標は 280 億円を計
画している。
大阪南部に位置する和泉市は平成に入って以降、大規模なニュータウン開発によって人
口が急増している。2014 年9月時点で 18 万 7426
人となり、ここ 10 年間で約4%増えた。行政の
子育て支援策もあり、とりわけ 30~40 代のファ
ミリー世代の流入が目立つ。今回の出店は、成長
著しい新興住宅地のニーズを先取りしたものだ。
「エリア内に大型商業施設が少なく、ワンストッ
プショッピングの需要が高いと見込んだ」と三井
不動産関西支社事業二部の中山康部長は話す。
高さ 15 メートルの大きなひさしを備えたメインエントラ
ンス
阪和自動車道・岸和田和泉
IC から約 2 分。駐車場は
約 3400 台
施設中央部のセンターコ
ート。休憩場所として利用
でき、イベントステージで
はさまざまな催事が行わ
れる
商圏は和泉市、岸和
田 市 を 中 心 に 堺 市か
ら泉佐野市までの約 15 キロ圏内。クルマで約 30 分のエリアに
住む約 123 万人を想定している。
「2014 年6月、隣接地に開業
したコストコには和歌山や奈良からも来店している。新三郷のケースと同様、ついで買い
や比較購買につながるのでは。足元商圏のみならず、広域からの集客も狙う」(中山部長)
という。
施設コンセプトは「エリアオアシス」。子育てファミリーに軸足を置き、ママと子供に優
しく、ワンストップショッピングを楽しめるショッピングモールを目指した。
一番の特徴は、乳幼児連れの母親が喜びそうな設備とサービスが充実していることだ。
近年は子育てファミリーを狙った大型商業施設が増えているが、
同社では現役ママ社員からなるプロジェクトチームを立ち上げ、
「ママ ウィズ ららぽーと」をキーワードに、ママの意見を施
設づくりに反映。子育てママに照準を合わせたという取り組み
と見どころを紹介する。
3 層の店舗フロアは、両サイドに大型店を配したサーキットモール型
■親も子供も退屈しな
い、充実した設備とサ
ービス
ママ ウィズ ららぽーとの
コンセプトを具現化し、多
彩な機能を集積した「ママ
ウィズ パーク」
まず「ママと子供に優しい商業施設」という理念
を分かりやすく具現化したのが、4階の「ママ ウ
ィズ パーク」だ。子供の遊び場とカフェのほか、
イベントスペース、アメニティーゾーン、配送サー
ビス拠点で構成。子育てファミリーが館内で1日過
ごすために、ママ目線の空間と機能を集積した。
例えば、年齢に合わせた場所で遊べる大型立体遊具を備えた有料スペース「ズー アドベ
ンチャー」と無料のプレイハウスは、
「子供を安全な場所で遊ばせたい」という声に応えた
もの。
「育児中でもリフレッシュしたい」というママやパパの休憩スペースとして、遊び場
にはカフェを併設。
「赤ちゃんを寝かせて一緒にくつろぎたい」というニーズに応え、靴を
脱いで座れる「ごろんごろんファミリーリビング」
も設けた。
さらに、子育て情報を得られる企業セミナーや親
子向けワークショップを開催するほか、ママ友との
集まりや子供の誕生会などに利用できる予約制の
イベントスペースも確保。奥のアメニティーゾーン
では、ベビーカーのまま入れる広いトイレブース
(館内に 50 室)や個室授乳室(同 11 室)、6台の
おむつ替えスペース(同 62 カ所)など、ママの声
を生かした便利な設備が充実している。
遊具で遊ぶ子供たちをカフェでママたちが見守れる
靴を脱いで座れる、親子の憩いのスペース「ごろんごろん
ファミリーリビング」
ママ ウィズ パークを利用していた和泉市内在
住のママ友3人は「男性用トイレも子供連れに対応
しているので、イクメンのパパにも任せられる」
「子
供が遊んでいる間にイベントに参加できるのがい
い」など満足そう。また、
「親も子供も退屈しない
し、子供服の店舗も多数そろっている。こんな便利
で楽しめるショッピングセンターは初めて」「ここ
までやってくれるとは驚き」など、予想以上の施設内容にすっかり魅了された様子だ。住
まいからクルマで約 10 分と近く、
「コストコとココには毎日来るかも」と、にこやかに話
す。
ママ友におすすめのもうひとつの注目スペースが、3階「フードコート」内で眺望抜群
の一角に設置したキッズエリア。
「もっと子供と一緒に食事を楽しみたい」という声を反映
したものだ。乳幼児を連れた家族向けに便利な座敷タイプの小上がり席 16 席のほか、子供
の年齢に合わせて高さが選べるベンチとイスを約 40 席用意。キッズプレイスペースもあり、
子供を見守りながら安心して食事を楽しめる。さらに、専任スタッフによる配膳といった、
かゆいところに手が届くサービスも実施。「荷物が多くて運べない」「子供から目が離せな
い」という声に応えた。
座敷席の乳幼児連れママ2人は、
「外出するときは子供をずっと抱いていないといけない
ので、なかなか外食できなかった。子供に食べさせるのも大変だった」と、ママ共通の悩
みを話す。
「ココならゆっくり食事できる」「赤ちゃんを寝かせられるので畳席があるのは
助かる」とリラックスした様子。
授乳室とおむつ替え台、親子トイレなどを設けたアメニテ
ィーゾーン
同施設では、テナントとの協業によりオリジナル
のキッズメニューも開発。フードコートに出店した
「どうとんぼり神座」は、通常白菜だけのラーメン
に人参、たまねぎ、キャベツなど野菜の種類を増や
し、栄養バランスにも配慮したお子様セットを提供
している。野菜の大きさも年齢に合わせてカット。
「麺の量と長さも半分にし、より食べやすくした。
麺切りはさみは不要。野菜をたくさん使っている
ので薄味であっさりしている」と、理想実業・店
舗運営本部スーパーバイザー代理の萩原圭介氏は
自慢のラーメンをアピールする。
おむつ替えもできる個室授乳室は清潔感のある明るい雰
囲気
2階レストラン街の「とんかつ かつ喜」では、
乳幼児でも野菜を豊富に摂取できるミンチカツと
野菜スティックなどが入ったキッズセットを提供。
「細かく刻んでいるので野菜嫌いの子供にも食べ
やすく工夫されている」(和泉市在住のママ)。
座敷タイプの小上がり席は赤ちゃんにも優しい。キッズエ
リアではサービススタッフが配膳も行う
このほか、ベビーカーを出し入れしやすいワイ
ドな駐車スペースや、購入した商品をママ ウィズ
パーク内で受け取れる「一時預かりサービス」
、駐
車場フロア
まで荷物を
運ぶポータ
ーサービス、
店舗まで引
き取りにいく集荷サービス(有料)
、館内各所で無料
貸し出しするコイン式ベビーカーなど、ハード、ソ
フト面ともに充実した内容となっている。
野菜をふんだんに使ったミンチカツと野菜スティックなど
が入った「とんかつ かつ喜」のお子様メニュー。おもちゃ
付き 880 円(税抜き)
■現役ママ社員の提案から始まった新プロジェクト
ママ ウィズ ららぽーとプロジェクトは、チームリーダーである荒井みゆき氏の提案が
きっかけで生まれた。2歳の長男を育児中の荒井氏は、三井不動産商業施設本部でテナン
ト誘致業務を担う営業部に所属。「ららぽーとはファミリーに強い施設だと思っていたが、
母親として仕事に復帰したときに、もっと快適性を上げる余地がある」と実感した。そし
て1年半前に和泉店の担当となり、本格的に動き始めた。
チームは0歳から 10 歳の子供を持つ現役ママ7人で構成。自分たちの経験はもちろん、
子育てママを対象としたアンケート調査結果に基づき、「必ず遊び場を作る」「フードコー
トに配膳係がほしい」
「トイレブースにもオムツ替え台を」など 100 項目のメニューをリス
トアップした。
例えばトイレにオムツ替え台はよくあるが、個室にあるところは少ない。しかし「ママ
のアクションを減らして快適性を上げるなら、トイレブースにも必要。当たり前だと思っ
ていたハード面から見直した」と荒井氏。また、個室授乳室にオムツ替え台を取り付ける
と回転効率が悪くなるというデメリットも、台数を増やして待ち時間を短縮することで解
決した。
アンケート結果からは、ママ客の潜在ニーズも
見えてきた。ショッピングモールへの来店目的の
8割が「買い物」だが、4 割は「リフレッシュと
子供のため」。そのため、今回は遊び場を設け、
買い物以外の来店動機を作ったという。
マタニティ、ベビー、キッズ用品を豊富にそろえる大型店
「アカチャンホンポ」
。育児雑貨や新生児肌着、マタニテ
ィ用品な
どオリジ
ナル商品
も充実
「ユニクロ」
もキッズア
イテムを強
化している
2 階北側の
キッズ関連
ゾーンには
「トーマス
ステーション」など子供が遊べるアミューズメント施設も
配置
カラフルな
食器類がそ
ろう「ル・クルーゼ」では、店内の常設キッチンで料理教
室を開催。離乳食レシピの教室も予定している
ママ ウィズ ららぽーとの取り組みはテナント
独自に行っているものも多い。マタニティ、ベビー、
キッズ用品専門店「アカチャンホンポ」はマタニテ
ィスクールやプレパパナイトツアー、栄養相談会な
どのイベントを開催。「コンビミニ」はコンシェル
ジュによるプレママスクール、最新ベビーカーの無
料レンタルなどを実施する。さらに、食器専門店「ル・クルーゼ」では店内の常設キッチ
ンで料理教室を開催。鋳物ホーロー鍋で作ると甘みが増す離乳食のおかゆなど、料理を楽
しみながら鍋の使い方も学べる。
また、館内には遊び場などキッズスペースのある店舗が 17 店、子供向けメニューを取り
扱う店舗も 17 店。H&M など従来から子供服を扱っているファッション物販も含めると、
子供を意識したテナントの割合は他の商業施設よりもかなり高い。
「プロジェクトでリストアップした 100 項目のうち、ほぼ全メニューを実現できた」と
荒井氏。中山部長も「ママ目線で不足していた点や不満を解決するテナントを誘致し、運
営する仕組みを確立できた」いう。今後はさらにブラッシュアップし、標準仕様を決めた
うえでほかの施設にも展開していく考えだ。
■海外ファストファッションと国内アパレルの新業態も集結
同施設は両サイドに集客力の高い大型店を配したサーキットモール型。中央に開放感の
ある吹き抜け空間を設け、南北両サイドに大型店を配置して回遊性を高めている。
グランドフロアとなる2階は北側にキッズ関連ゾーン、東側にレストラン街、南側のコ
ストコ方面に食品スーパー「全農ファーマーズ」を配置し、メリハリのあるテナントミッ
クスに。また「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」「ベルシュカ」「フライングタイ
ガーコペンハーゲン」
「オールドネイビー」「ストラディバリウス」「ザラホーム」などが出
店し、都心型ショッピングモール並みに海外ブランドが勢ぞろいした。3階にも「H&M」
「ザラ」
「 ギャップ」
「ユニクロ」といったグローバル SPA ブランドが並ぶ。子育てママ客
も「これまではファッションは大阪ミナミで買っていたが、好きなブランドが集結してい
るので楽しい」と顔をほころばす。
さらに「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル
リラクシング」
「アーバンリサーチドアーズ」など国
内の人気セレクトショップや「ロフト」「無印良品」
「エディオン」
「ダイソー」など生活雑貨から家電ま
であらゆるジャンルの商品がそろい、ワンストップ
ショッピングが可能なのも魅力だ。
ザラの妹ブランド「ストラディバリウス」
。2014 年 11 月 9
日には大阪・心斎橋に日本旗艦店がオープンした
大阪府下では
1 号店のアメ
リカ村店、くずはモール店に次ぐ 3 店舗目の「フライング
タイガーコ
ペンハーゲ
ン」
人気セレク
トショップ、
アーバンリ
サーチのラ
イフスタイ
ル提案型業
態「アーバンリサーチドアーズ」は大型ショッピングモール
に欠かせない
存在に
「リラックス
&ハッピー」をコンセプトに、女性のデイリーウエアからル
ームウエア、生活雑貨、子供服までそろえるライフスタイル
型ショップ「セシルデイズ」
。大阪初登場
■スーパーは売り場の3分の1が農産物直売所
新たな取り組みとしては、食品スーパーに「JA 全
農ファーマーズ」を誘致している点も見逃せない。
郊外型の大型ショッピングモールの場合、大手量販
店を導入するケースが多いが、和泉中央駅前にはイ
ズミヤ、同施設に隣接して「コストコホールセール」などが出店していることもあり、JA
グループが経営する食品スーパー「A コープ」を導入。運営するエーコープ近畿初の農産物
直売所一体型店舗を開業した。大型商業施設の核テナントとしては全国 1 号店となる。
店舗面積は 1980 平方メートルで、近畿圏内最大規模。そのうち農産物直売所は3分の1
を占める。地元 JA いずみの組合員のうち、約 200 軒の農家が生産した新鮮な農産物を中心
に、大阪や全国の産地直送品を販売。精肉売り場では神戸ビーフ、但馬牛、北海道十勝産
鹿追牛など国産の銘柄肉をそろえているのも特徴だ。さらに、国産原料を優先使用する全
農ブランド、純国産ワインなどグループの調達力を生かし、地域一番の品ぞろえを目指し
ているという。
エーコープ近畿初の農産物直売所一体型店舗「全農ファ
ーマーズ」。大型商業施設の核テナントとしては全国初。
売り場の 3 分の 1 が農産物直売所
「小さな子供のいる家庭は食の安全性に対する
意識が高い。当店では国産の農畜産物をメーンに
品ぞろえし、安心、安全、新鮮を売っていく」と、
同店ストアマネージャーの塩河克舎氏は意気込
む。直売所の農産物は農家が価格を決めるため、
時期やものによってはかなりお得な価格で買え
そう。新鮮な生鮮品がそろい、一人向け総菜や食
材も多いので、サイズや量が大型のコストコとは
すみ分けが可能だろう。
ママ目線に徹した設備とサービスの提供、産直農産物を提供する食品スーパーの展開―
―。関西では後発のららぽーとだが、このユニークな取り組みで大阪南部の市場開拓を狙
う。
(ライター 橋長初代)
縦割りなくし、子供を守る ジャーナリスト・細川珠生
産経新聞 2014 年 12 月 6 日
連日のように報道される児童虐待のニュースに接するたびに、
「なぜ、どうして、わが子
を?」と思わずにいられない。虐待による子供の死は、心中も含め、年間約100人。そ
のうち0歳児が4割を占める。児童相談所(児相)への相談(通報)は、平成25年度で
7万3765件であり、統計を取り始めた2年度の67倍にもなっている。市町村の窓口
への相談も含めると総数は10万件にも上り、児童虐待が深刻さを増していることは明ら
かである。
増加の背景には、核家族化、地域社会の崩壊、シングルマザーやひとり親の増加、結婚
や妊娠に関わる意識の多様化などさまざまな要因がある。中でも多い虐待のケースはシン
グルマザーや離婚後の母子家庭の精神的不安定からくる母親による虐待、同居や交際中の
相手による虐待、望まない妊娠による出産直後の虐待などがある。
これらの例を挙げるだけでも胸がつまる思いになるが、年間約100人という虐待死も、
取るべき対応が取れていれば、救えた命もあったということに、無念さが募るのである。
現在、虐待が疑われる家庭を訪問し、子供を強制的に保護できるのは児童相談所だけで
ある。警察にも相談(通報)は来るが、それを児相に伝え、児相が対応を取ることになる。
その後も児相まかせで警察が家庭訪問などをすることはほとんどない。児相への相談は障
害や非行に関するものなどもあり年間で38万件超にも及ぶ。しかし児相は全国に207
カ所しかなく、職員数もわずか1万103人(25年4月現在)
。到底、全虐待に対応する
には及ばない。
報道では「一度だけ家庭訪問しただけ」などとその対応の不十分さに批判が出る。もち
ろん過度の個人主義社会によって、なかなか個々の家庭を訪問するのも難しいという実情
もあるが、人手不足は否めないのが現実である。また児相、警察、市町村、保健所とで構
成される「要保護児童対策地域連絡協議会」で情報共有をし、連携を取ることになってい
るものの、有効に機能していない。
安倍晋三政権でも官邸に、
「児童虐待防止対策に関する副大臣等会議」を設置し、対策が
検討されている。まずその一歩となるのが、「児相、警察、市町村による連携を強化するた
めの法整備」であると、シンクキッズ(子ども虐待・性犯罪をなくす会)代表理事の後藤
啓二氏は言う。現在、法改正を求める署名活動も行っているが、縦割りの行政では、法律
によって組織と役割(権限)を明確化しなければ、いくら連携、連携といっても、動かな
い(動けない)現場の実情に即した早急な対応策が必要であるということだ。
一方、育児による精神的負担は、どの母親にも程度の差こそあれ、あるのが普通である。
しかし家族や周囲との温かいかかわりの中で、バランスを取りながら、最も大変な乳幼児
期の育児を乗り切っていく。若年期や、望まない妊娠は、そのような環境がない場合が多
く、実際、虐待はそのようなケースが約7割を占める。
結婚観や異性との交際でも、親や家庭より個人の自由が尊重され過ぎていることも、虐
待につながる社会環境を作っているともいえるのではないか。その意味からも「他人事(ひ
とごと)
」ではなく、多くの人が児童虐待を防止するためにできることを考えなくてはなら
ない。
【プロフィル】細川珠生 ほそかわ・たまお 元東京都品川区教育委員。ラジオや雑誌な
どで活躍。父親は政治評論家の故細川隆一郎氏。
親と一緒に暮らせない
社会的養護の子どもたち 当事者の声知って
西日本新聞 2014 年 12 月 06 日
フォーラムで訴え
フォーラムで体験を語るIFCAフォスターユースの若者たち
●「生きづらいことばかり」 自立後も相談できる場
を 実親の情報、どう提供
「子どもの権利条約」を日本が批准して20周年を迎
えるのを記念したフォーラム「フォスターケア(社会的
養護)と子どもの権利」が11月22日、東京都内で開
かれた。NPO法人「SOS子どもの村JAPAN」
(本
部・福岡市)が主催。児童養護施設や里親家庭で暮らした経験のある若者たちが、当事者
の立場からケアや制度の改善を訴えた。
「生きづらいことばかりだった」
。星子良枝さん(21)は、生後すぐに乳児院に預けら
れ、児童養護施設や里親家庭で育った。施設の職員や里親と信頼関係を築けず、友人にも
自分の抱える背景や悩みを話せなくて、ずっと孤独だった。
親の病気や貧困、虐待などで親と暮らせない子どもは全国で約4万6千人。この日は、
日米共同で児童福祉の向上を目指すNPO法人「International Fost
er Care Alliance」
(IFCA、本部・米シアトル)の「フォスターユー
ス(社会的養護の当事者)
」というプロジェクトで活動する若者3人が、体験を語った。当
事者が声を上げることで、よりよい支援制度に変えていこうと約1年前から活動している。
佐藤智洋さん(20)の夢は外交官。希望する大学へ通うため、高1からアルバイトを
して、返済不要の奨学金制度を必死で探した。今春、無事に希望の大学へ進学できたが、
周囲には経済的な理由で進学をあきらめる人や、学費が払えず退学してしまう人もいた。
滝沢政美さん(27)も「手っ取り早くお金になるからと水商売をしたり、悪事に手を
染めたりする例もたくさん見てきた」と語る。社会的養護は通常18歳で解除されるが、
20歳までは未成年のため、賃貸契約や携帯電話、クレジットカード契約などさまざまな
場面で保証人が必要になる。佐藤さんは「そのたびに親類を頼るなど苦労し、時間がかか
った。制度を変えてほしい」
。滝沢さんは、悩みを抱えて孤立している人が多いことに触れ
「自立後も相談できる場所が必要。ユースが支える仕組みをつくりたい」と力を込めた。
実親に関する情報提供のあり方についても、意見が交わされた。滝沢さんは、17歳の
ときに児童相談所へ問い合わせたが、知りたい情報は全く得られなかった。「自分自身を知
りたいという根源的な欲求。もう少しアクセスできるようにしてほしい」
。一方、星子さん
は高校生になったある日、突然親ときょうだいの名前と住所を書いた紙を渡されて戸惑っ
た。
「私の人生はこの1枚の紙切れかと思うと悲しかった。大人になって知りたいと思った
ときに、きちんと教えてほしかった」と振り返った。
フォーラムではSOS子どもの村JAPAN理事で、九州大大学院教授の松崎佳子さん
が、開村5年目を迎えた「子どもの村福岡」の現状などを説明。東日本大震災をきっかけ
に東北への支援がスタートし、12月19日に「子どもの村東北」が開村することも報告
し、支援を求めた。
松崎さんは「市民一人一人が社会的養護を地域の課題として取り組んでいけるように情
報発信し、子どもと家庭を支えるいろんなネットワークもつくっていきたい」と話した。
ゴルゴ松本さん:「諦めちゃいけない」…少年院で講話続け
毎日新聞 2014 年 12 月 06 日
漢字を使い少年院の子どもたちに語りかけるゴルゴ松本
さん=東京都狛江市で2014年12月1日、梅村直承
撮影
◇3年前から手弁当、東京矯正管区が近く表彰
へ
「命」や「炎」などの漢字を体で表現する「人
文字ギャグ」でブレークしたお笑いコンビ「TI
M」のゴルゴ松本さん(47)が、約3年前から
各地の少年院で講話を続けている。仕事の合間を
縫ってマイカーで駆け付けるボランティア。きっかけは知人の誘いで、
「子供たちに諦めち
ゃいけないんだって伝え続けたい」という。関東地方やその近郊の少年院を所管する法務
省東京矯正管区は近く、ゴルゴさんを表彰する。【和田武士】
今月1日午後、東京都狛江市の女子少年院「愛光女子学園」。ブレザー姿の17人の少女
たちを前に、ゴルゴさんは自身の苦労話も披露しながら、「夢は叶(かな)う。だけど、す
ぐの人もいれば時間がかかる人もいる」と語りかけた。講話が始まって約1時間半が過ぎ
ていたが、少女たちはゴルゴさんの軽妙な話に、すっかり引き込まれている様子だ。
ゴルゴさんが続ける。「夢が叶わないと人は弱音を吐く。『吐』という字は口にプラスマ
イナス。何かを成し遂げる人は『俺は、私はこうなる』と目標を口にする。そうするとマ
イナスが無くなって、
『叶』っちゃうんだ」。ホワイトボードに手書きした「吐」から、下
の横棒を一つ消すと「叶」になった。少女たちからは「おーっ」と驚きの声が上がった。
そして最後は「命」の文字。
「『人を一叩(たた)き』と書くけど、殴ることじゃない。
命は一叩き一叩きの鼓動の連続なんだ」と説き、「みんなはお母さんが命がけで産んでくれ
た。その命を未来につないでいってください。今、ここでその準備をしています。外に出
てはばたいてください」と締めくくった。
少女たちは、2時間近いゴルゴさんの講話のお礼に、歌手アンジェラ・アキさんの「手
紙〜拝啓 十五の君へ〜」を女性法務教官のピアノ伴奏に合わせて合唱した。歌いながら
涙を拭う少女もいる。ゴルゴさんも感極まった様子で「いっぱい泣いて強
くなってください」と語りかけ、一人一人と握手を交わした。
傍聴していた横井幸四郎園長は「評判は聞いていたが、素晴らしい内容
だった。子どもたちの良い笑顔を見ることができた」と感謝していた。ゴ
ルゴさんは取材に「少年院に入ると『自分はだめな人間だ』と思うかもし
れない。でもチャンスや運はいくらでも転がっているし、人生を切り開く
のは自分。そのことを伝えていきたい」と熱く語った。
月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行
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