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消費税再増税先送り安倍政権決断できるか禁複写

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消費税再増税先送り安倍政権決断できるか禁複写
消費税再増税先送り安倍政権決断できるか禁複写
金 利 ・ 為 替 ・ 株 価 特 報 ( 2014 年 11 月 11 日 号 ) 2 1 6
スリーネーションズリサーチ
代
表
植 草 一 秀
<目次>
1 .【 概 観 】 日 銀 追 加 金 融 緩 和 の 賞 味 期 限
2 .【 政 策 】 迷 う 安 倍 晋 三 氏 の 最 終 判 断
3 .【 米 国 】 イ ン フ レ な き 成 長 持 続 の 米 国 経 済
4 .【 株 価 】 2 0 0 7 年 水 準 株 価 の 命 運
5 .【 為 替 】 ド ル 高 で な い 円 安 の 発 生 と 今 後 の ゆ く え
6 .【 金 利 】 米 国 金 利 は い つ 上 昇 す る の か
7 .【 中 国 】 人 民 元 高 下 の 中 国 株 価 堅 調 の 背 景
8 .【 金 ・ 原 油 】 金 と 原 油 の 底 値 模 索
9 .【 投 資 戦 略 】 消 費 税 再 増 税 判 断 が カ ギ を 握 る
年 内 の レ ポ ー ト 発 行 予 定 日 は 、1 1 月 2 5 日 、1 2 月 9 日 、1 2 月 2 2 日 に
なります。2015年の発行予定日は1月13日、1月26日、2月16日、
3月2日、3月16日、3月30日、4月13日、4月27日になります。
今 号 の 1 1 月 1 1 日 号 な ら び に 1 2 月 9 日 号 に つ き ま し て は 、雇 用 統 計 発 表
の関係で発行日が火曜日になりますので予めご了承ください。
発 行 予 定 日 は レ ポ ー ト お 届 け 最 速 日 の 目 安 で 、運 送 会 社 の 状 況 等 に よ り 配 送
が1~3日遅れる場合がありますのであらかじめご了承ください。
第 1 0 回 T R I 政 経 塾 を 1 1 月 1 7 日 ( 月 )、 1 8 日 ( 火 ) に 開 催 し ま す 。
会場は新宿野村ビル48階「野村コンファレンスプラザ」ボードルーム、
開 催 時 間 は 午 後 5 時 ~ 午 後 8 時 ( 午 後 5 時 開 場 、 午 後 5 時 半 よ り 講 義 )、
参加費は1万5000円(お食事代・資料代含む)になります。
参 加 ご 希 望 の 方 は メ ー ル : [email protected]、 ま た は F A X : 0 2 0
- 4 6 2 3 - 8 8 9 7 ま で お 申 し 込 み 下 さ い 。1 1 月 1 8 日 (火 )の み 、キ ャ ン
セルにより3名様の空席が生じましたので、先着順にて受付いたします。
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本 レ ポ ー ト の ご 購 読 代 金 未 納 分 が ご ざ い ま し た ら 、巻 末 記 載 の 弊 社 口 座 へ の
ご入金をお願い申し上げます。レポート送付封筒に、ご購読開始年月および、
ご 購 読 料 ご 入 金 済 の 年 度 数 を 記 載 し て お り ま す 。ご 入 金 が お 済 み で な い 年 度 分
の ご 購 読 料 ご 入 金 を お 願 い 申 し 上 げ ま す 。な お 、2 0 1 1 年 4 月 以 前 に ご 購 読
を 開 始 さ れ ま し た 方 の ご 購 読 開 始 月 は 、原 則 と し て 、2 0 1 1 年 以 降 の 年 月 に
差 し 替 え さ せ て い た だ い て お り ま す 。記 載 に 誤 り が あ り ま し た 節 は 深 く お 詫 び
申 し 上 げ ま す と 共 に 、お 手 数 な が ら ご 一 報 を 賜 り ま す よ う お 願 い 申 し 上 げ ま す 。
【新刊著書上梓のお知らせ】
ビジネス社より、11月1日に、
『 日 本 の 奈 落 』を 上 梓 い た し ま し た 。
‐年率マイナス17%GDP成長率
衝撃の真実‐
のサブタイトルを
付しております。
12月12日付日本経済新聞に、
広告が掲載される予定です。恒例の
新年経済金融展望を開示するもので、
本誌の年次版としてご活用ください。
2013年版タイトルは、
『金利・
為 替 ・ 株 価 大 躍 動 』、 2 0 1 4 年 版
タイトルは『日本経済撃墜-恐怖の
政策逆噴射-』でした。
2 0 1 3 年 版 で は 、円 安 ・日 本 株 高
を予測し日経平均株価16000円
水準までの上昇見通しを示しました。
2 0 1 4 年 版 で は 、安 倍 政 権 が 実 施 す る 消 費 税 大 増 税 が 日 本 経 済 が 撃 墜 し て
しまうことに警鐘を鳴らし、日経平均株価反転下落を予測しました。
2015年版タイトルは『日本の奈落』で、さらに強い警戒感を示します。
日 本 経 済 が「 奈 落 」に 堕 ち て し ま う の か 、そ れ を 回 避 で き る の か 。カ ギ を 握 る
の は 安 倍 政 権 の 経 済 政 策 で す 。1 2 月 初 旬 ま で に 決 定 さ れ る 消 費 税 再 増 税 問 題
が 最 重 要 の ポ イ ン ト に な り ま す 。ま た 、米 国 金 融 政 策 、中 国 経 済 情 勢 、地 政 学
2
リ ス ク 、欧 州 経 済 政 策 、新 興 国 経 済 に も 目 を 配 る 必 要 が あ り ま す 。2 0 1 5 年
内 外 経 済 、内 外 金 融 市 場 を 展 望 し 、的 確 な 投 資 戦 略 を 構 築 す る た め に 、本 書 を
本レポートの副読本としてご活用下さいますようご案内申し上げます。
第7章【最強・常勝5ヵ条の極意】は必読です。熟読をお勧めいたします。
1 .【 概 観 】 日 銀 追 加 金 融 緩 和 の 賞 味 期 限
9 月 末 か ら 1 0 月 中 旬 に か け て の 内 外 株 式 市 場 で の 株 価 調 整 の の ち に 、相 場
は 急 反 転 し た 。N Y ダ ウ は 史 上 最 高 値 を 更 新 し 、日 経 平 均 株 価 は 2 0 0 7 年 来
の 高 値 を 記 録 し た 。本 レ ポ ー ト で は 、日 本 株 価 見 通 し を 、5 月 1 2 日 号 以 来 の
「 上 昇 」 か ら 、1 0 月 1 4 日 号 で 「 中 立 」 に 転 換 し た が 、 株 価 は 9 月 2 5 日 の
高値を更新した。しかし、現時点では「中立」見通しを維持する。
「中立」ののちの展開は、安倍政権の消費税再増税問題の判断に依存する。
消 費 税 増 税 を 先 送 り す る 場 合 に は 、 株 価 見 通 し を 再 度 、「 上 昇 」 に 転 換 す る 。
消費税再増税実施を決定する場合には、株価見通しを「下落」に転換する。
米 国 株 式 市 場 の 中 規 模 調 整 の 可 能 性 を 想 定 し た が 、株 価 は「 行 っ て 来 い 」の
展開を示し、早期に全値を回復し、史上最高値を更新した。
米 国 金 融 政 策 の 引 締 め 転 換 が 警 戒 さ れ て い る が 、各 種 経 済 統 計 は 早 期 引 締 め
実 施 を 後 押 し す る も の に な っ て い な い 。1 0 月 2 8 ‐ 2 9 日 F O M C で 、量 的
金 融 緩 和 政 策 は 終 了 し た が 、利 上 げ 実 施 ま で の 期 間 に つ い て 、相 当 な 期 間( for
日 経 平 均 株 価 の 推 移 (2 0 1 3 年 1 1 月 ~ 2 0 1 4 年 1 1 月 )
3
a considerable time) の 表 現 が 維 持 さ れ た 。 つ ま り 、 金 利 引 上 げ 早 期 実 施 の
観測は強まらなかったのである。このことが米国株価反発の主因になった。
最 大 の サ プ ラ イ ズ に な っ た の は 、1 0 月 3 1 日 の 日 本 銀 行 金 融 政 策 決 定 会 合
で 量 的 金 融 緩 和 措 置 拡 大 が 決 定 さ れ た こ と で あ る 。事 前 予 想 が 存 在 し な か っ た
た め に 、大 き な 驚 き が 生 じ 、為 替 市 場 と 株 式 市 場 に 激 し い 反 応 が 生 み 出 さ れ た 。
ド ル 円 相 場 は 1 ド ル = 1 1 5 円 を つ け 、日 経 平 均 株 価 は 一 時 1 7 0 0 0 円 台
を回復し、2007年来の高値を記録した。
1 1 月 7 日 発 表 の 1 0 月 米 国 雇 用 統 計 で は 、非 農 業 部 門 労 働 者 数 が 2 1 .4
万 人 増 加 、失 業 率 が 5 .9 % か ら 5 .8 % へ と 低 下 し た 。雇 用 者 増 加 数 が 市 場
予想を下回り、時間当たり賃金上昇率が前月比0.1%増にとどまったため、
金融引締め観測は後退し、ドルは小反落、株価は小動きを示している。
第 2 節 に 示 す よ う に 日 本 株 価 変 動 は 引 き 続 き ド ル 円 相 場 連 動 で あ る 。1 0 月
3 1 日 の 大 相 場 は 、円 安 ・ ド ル 高 に 支 え ら れ た も の だ が 、円 安 ・ ド ル 高 が 持 続
し な け れ ば 日 本 株 価 上 昇 持 続 は 難 し い 。日 本 株 価 は 当 面 、高 値 ボ ッ ク ス 圏 内 の
推移を続ける可能性が高い。
米 国 経 済 が 強 く 、米 国 で イ ン フ レ 懸 念 が 強 ま る 場 合 に は 、金 融 引 締 め 観 測 が
強まり、ドルが上昇しやすくなる。しかし、現状はその逆に近い情勢にある。
直 近 生 じ た 円 安 ・ ド ル 高 の 変 化 は 、米 国 金 利 変 動 に よ る も の で は な く 、日 銀
が 動 い た こ と に よ っ て も た ら さ れ た も の で あ る 。し か し 、こ の 変 化 を 、日 銀 が
さ ら に 拡 張 す る こ と は 困 難 に な っ て く る と 予 想 さ れ る 。1 0 月 8 日 公 表 の 9 月
16-17日FOMC議事録では、FRBがドル高進行のリスクに言及した。
日銀による円安誘導政策が今後も許容され続けるとは考えにくい。
米国は日本が消費税再増税に踏み切ることを警戒し始めてもいる。日本が、
消 費 税 を 再 増 税 し 、他 方 で 追 加 金 融 緩 和 に よ る 円 安 誘 導 姿 勢 を 取 る こ と を 警 戒
し始めることになると思われる。米国は、日本が消費税再増税を先送りして、
金融政策が円安誘導を強めないことを求めるのではないか。
黒 田 東 彦 総 裁 は 、消 費 税 再 増 税 決 定 を 側 面 支 援 す る た め に 追 加 金 融 緩 和 政 策
に踏み切ったとも考えられる。これを米国政府が歓迎しない可能性がある。
日 銀 が 円 安 誘 導 政 策 を 強 化 し な い 場 合 に は 円 安・ド ル 高 は 進 行 し に く い 状 況
がある。この点は第5節で論じる。
1 1 月 1 7 日 に は 7 - 9 月 期 G D P 統 計 が 発 表 さ れ る 。消 費 税 再 増 税 問 題 が
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ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ る こ と に な る 。消 費 税 再 増 税 先 送 り を 決 定 す れ ば 、経 済 の
先 行 き 見 通 し は 改 善 す る だ ろ う 。こ れ と 金 融 緩 和 政 策 強 化 の 組 み 合 わ せ は 米 国
が 許 容 す る 可 能 性 が あ る 。こ の 場 合 に は 、円 安 傾 向 下 で の 株 価 上 昇 持 続 が 期 待
さ れ る こ と に な る 。消 費 税 再 増 税 が 決 定 さ れ る 場 合 に は 経 済 見 通 し が 悪 化 し て
株 価 は 反 落 す る こ と に な る だ ろ う 。こ の 問 題 が い ず れ に せ よ 最 大 の 焦 点 に な る 。
2 .【 政 策 】 迷 う 安 倍 晋 三 氏 の 最 終 判 断
下 記 チ ャ ー ト に 示 さ れ て い る 通 り 、日 本 株 価 変 動 は 完 全 に ド ル 円 相 場 連 動 の
状 況 に あ る 。1 0 月 中 旬 に か け て 日 本 株 価 が 急 落 し た 。世 界 経 済 の 悪 化 観 測 と
ドル円相場の推移(2011年11月~2014年11月)
日 経 平 均 株 価 の 推 移 (2 0 1 1 年 1 1 月 ~ 2 0 1 4 年 1 1 月 )
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FRBのドル高警戒感が広がり、米国株価下落=ドル下落=日本株価下落が
観測されたのである。この変化が強まれば先行き不安心理が拡大しただろう。
ま た 、9 月 3 日 に 発 足 し た 第 二 次 安 倍 改 造 内 閣 は 女 性 活 躍 を 旗 印 に 掲 げ た が 、
看 板 の 女 性 2 閣 僚 が 辞 任 に 追 い 込 ま れ た 。後 任 の 宮 澤 洋 一 経 産 相 に も 不 祥 事 が
続出して政権は野党の追及に追い込まれる状況に陥った。
この窮地を救ったのが10月31日の日銀による金融緩和政策決定だった。
急 激 な 円 安 と 急 激 な 株 価 上 昇 が 生 じ 、安 倍 政 権 は 大 き く 一 息 つ く こ と が で き た 。
相 場 に は 一 定 の リ ズ ム が あ る た め 、当 面 は 、こ の 変 化 の 余 韻 が 残 存 す る か も
知 れ な い が 、金 融 市 場 へ の 影 響 は ワ ン シ ョ ッ ト 、一 回 限 り の も の に な る 可 能 性
が高い。この変化を維持するための、二の矢、三の矢の対応が必要になる。
その核心に該当するのが消費税再増税問題である。日本経済は2014年、
消費税増税で破壊された。財務省が主導する世論操作活動の一環と見られる、
日 本 経 済 新 聞 の「 消 費 税 増 税 の 影 響 軽 微 」大 キ ャ ン ペ ー ン が 展 開 さ れ た 。だ が 、
現実には「消費税増税の影響激烈」であった。日本経済は景気後退に陥った。
安 倍 晋 三 氏 が 長 期 政 権 を 狙 う な ら 、消 費 税 再 増 税 は 先 送 り す る と 考 え ら れ る 。
そのうえで、早期の解散・総選挙に踏み切る可能性がある。
消 費 税 再 増 税 を 2 0 1 5 年 1 0 月 に 実 施 す る 場 合 、2 0 1 6 年 の 総 選 挙 実 施
は 極 め て 難 し い 。そ う な る と 、2 0 1 5 年 1 0 月 以 前 の 総 選 挙 を 選 択 せ ざ る を
得 な く な る が 、2 0 1 5 年 半 ば は 集 団 的 自 衛 権 行 使 容 認 関 連 の 安 保 法 制 整 備 後
のタイミングになるだけに総選挙には好適でない。
こ の 状 況 を 踏 ま え る と 、安 倍 首 相 は 消 費 税 再 増 税 の 先 送 り を 決 定 す る 可 能 性
が高いのではないか。財務省は2015年増税実施を目論んでいると思われ、
これから12月にかけて、安倍政権と財務省の確執が激化する見通しである。
筆者は6分4分で消費税増税先送り決定の可能性が高いと判断する。
日経平均株価には大幅な価格上昇の余地がある。現在の企業利益の水準と、
長期金利から算出される日経平均株価適正値は24500円程度と考えられ、
消費税再増税先送りが決定される場合には株価急騰の可能性が生じるだろう。
この場合には、安倍政権が長期政権を実現する可能性が浮上する。
他 方 、麻 生 太 郎 財 務 相 、谷 垣 禎 一 自 民 党 幹 事 長 ら は 消 費 税 再 増 税 実 施 を 主 張
す る と 考 え ら れ る 。安 倍 政 権 に 増 税 を 実 行 さ せ 、安 倍 政 権 が 退 陣 に 追 い 込 ま れ
れ ば 、麻 生 政 権 、谷 垣 政 権 が 誕 生 す る 可 能 性 が 生 ま れ る か ら だ 。安 倍 晋 三 政 権
6
のリーダーシップが問われる局面である。
3 .【 米 国 】 イ ン フ レ な き 成 長 持 続 の 米 国 経 済
米国では昨年5月にバーナンキFRB議長が量的金融緩和政策縮小の方針
を 示 唆 し て か ら 、1 年 半 の 時 間 が 経 過 す る 。本 年 2 月 に イ エ レ ン 女 史 が F R B
議長に就任し、本年前半にも利上げが実施されるとの見方も存在した。
と こ ろ が 、F R B は 金 利 引 上 げ 政 策 に 極 め て 慎 重 な 姿 勢 を 維 持 し 、1 0 月 末
F O M C で も 利 上 げ 実 施 ま で の 時 間 に つ い て 、相 当 な 期 間( for a considerable
NYダウの推移(2004年11月~2014年11月)
日 経 平 均 株 価 の 推 移 (2 0 0 4 年 1 1 月 ~ 2 0 1 4 年 1 1 月 )
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time) の 表 現 が 維 持 さ れ た 。
第 5 節 、第 6 節 で 説 明 す る よ う に 米 国 長 期 金 利 は 本 年 入 り 後 、一 貫 し て 低 下
傾 向 を 示 し て き て お り 、金 融 緩 和 環 境 維 持 が 米 国 株 価 上 昇 を 持 続 さ せ る 原 動 力
と な っ て き た 。こ の 金 融 環 境 を 醸 成 し た 最 大 の 功 労 者 が イ エ レ ン F R B 議 長 で
あ る 。こ の 点 に つ い て は 、前 掲 書『 日 本 の 奈 落 』に 詳 し い の で ご 参 照 賜 り た い 。
NYダウは2009年3月に6500ドル割れの水準にまで暴落したのち、
そ の 後 の 5 年 半 で 2 .7 倍 の 水 準 に 暴 騰 し た 。こ の 株 価 が 暴 落 す る と の 警 告 が
示されるが、筆者は、そのリスクは必ずしも大きくはないと指摘してきた。
そ の 最 大 の 根 拠 は 、N Y ダ ウ の P E R 水 準 が 1 5 倍 程 度 で あ り 理 論 的 に 割 高
で あ る と 判 定 で き な い こ と で あ る 。潜 在 的 な リ ス ク は 存 在 す る が 、マ ク ロ 経 済
が順調に運営されている限りにおいては、株価暴落のリスクは大きくない。
た だ し 、株 価 変 動 の リ ズ ム を 鑑 み る と 中 規 模 調 整 は い つ 発 生 し て も お か し く
な い と 判 断 で き る 。そ の 契 機 に な る と 考 え ら れ る の が 、金 利 引 上 げ 観 測 の 拡 大
であるが、11月雇用統計は、この変化をもたらすものにはなっていない。
他 方 、日 本 の 株 価 変 動 で は 、2 0 0 7 年 以 来 の 株 価 水 準 と の 指 摘 が 見 ら れ て
い る 。こ の 点 に つ い て は 次 節 で 詳 述 す る が 、2 0 0 5 ~ 2 0 0 7 年 の 株 価 変 動
と2012~2014年の株価変動が酷似している点に留意が求められる。
2 0 0 7 年 は サ ブ プ ラ イ ム 金 融 危 機 が 始 動 し た 年 で 、景 気 拡 大 = 株 価 上 昇 が
景 気 後 退 = 株 価 暴 落 に 転 じ る 端 緒 に な っ た 年 だ 。2 0 1 4 年 末 に 消 費 税 再 増 税
を決定すれば、類似した軌跡を描くことも考えられる。
第5節に記述するように、2007年は為替変動の転換点にもなっている。
2014年末を転換点に「暗転」の可能性があることを軽視できない。
4 .【 株 価 】 2 0 0 7 年 水 準 株 価 の 命 運
日 経 平 均 株 価 は 2 0 0 7 年 以 来 の 株 価 水 準 を 実 現 し た 。市 場 に サ プ ラ イ ズ を
与 え た 日 銀 の 追 加 金 融 緩 和 政 策 実 施 で 、ド ル・円 相 場 は 1 ド ル = 1 1 5 円 台 に
突入し、日経平均株価は一時17000円台を記録した。
し か し 、週 明 け の 1 1 月 4 日 以 降 は 株 価 上 値 が 抑 え ら れ る 状 況 に な っ て い る 。
次 ペ ー ジ の 二 つ の チ ャ ー ト を 見 比 べ て い た だ き た い 。2 0 0 5 ~ 2 0 0 7 年 の
日経平均株価と直近3年間の日経平均株価とを比較したものである。
両 者 の 株 価 推 移 は 驚 く ほ ど 酷 似 し て い る 。日 経 平 均 株 価 は 2 0 0 7 年 7 月 に
8
日 経 平 均 株 価 の 推 移 (2 0 0 5 年 1 月 ~ 2 0 0 7 年 1 2 月 )
日 経 平 均 株 価 の 推 移 (2 0 1 1 年 1 1 月 ~ 2 0 1 4 年 1 1 月 )
高 値 を 記 録 し た の ち に 反 落 し た 。2 0 0 9 年 3 月 に は 、7 0 0 0 円 水 準 に ま で
暴 落 し た の で あ る 。実 は 酷 似 し て い る の は 株 価 変 動 だ け で は な い 。ド ル 円 相 場
の 変 動 も 酷 似 し て い る の だ 。ド ル 円 相 場 は 2 0 0 7 年 6 月 に 1 ド ル = 1 2 4 円
の 水 準 に ま で ド ル 高・円 安 が 進 行 し た 。と こ ろ が ド ル が 高 値 を 付 け て 反 落 す る
のと連動して、日経平均株価の下落も始動したのである。
日 銀 の 意 表 を 突 く 追 加 金 融 緩 和 措 置 決 定 で 、ド ル 円 相 場 が 1 ド ル = 1 1 5 円
を 記 録 し た が 、ド ル 高 の 天 井 感 が 強 ま る と 株 価 上 昇 力 が 鈍 る こ と が 警 戒 さ れ る 。
日 本 株 価 の 上 昇 を 持 続 さ せ る た め に は 、追 加 の 材 料 が 必 要 で あ る 。そ の 最 大 の
9
候 補 に な る の が 消 費 税 増 税 の 先 送 り 決 定 で あ る 。こ れ と 金 融 緩 和 政 策 の 追 加 が
組み合わされるなら株価上昇が維持される可能性が生まれるだろう。
5 .【 為 替 】 ド ル 高 で な い 円 安 の 発 生 と 今 後 の ゆ く え
米国長期金利の推移(2004年11月~2014年11月)
ドル円相場の推移(2004年11月~2014年11月)
ユーロ円相場の推移(2013年11月~2014年11月)
10
直 近 1 0 年 間 の 米 国 長 期 金 利 と ド ル 円 相 場 の 推 移 を 比 較 す る と 、ド ル 円 相 場
が 米 国 長 期 金 利 変 動 に 連 動 し て き た こ と が 分 か る 。そ し て 、2 0 1 4 年 の 米 国
長 期 金 利 の 推 移 は ド ル 高 で は な く ド ル 安 を 示 唆 し て い る 。と こ ろ が 現 実 の 変 動
は ド ル 高 で あ る 。こ の ド ル 高 を も た ら し た の は 米 金 利 で は な く 日 銀 の 政 策 発 動
な の だ 。マ イ ナ ス 金 利 の 実 現 、意 表 を 突 く 追 加 緩 和 策 決 定 が 円 安 を も た ら し た 。
しかし、この材料が出尽くして、米国の金利上昇が早期に見込めなければ、
ド ル が 反 落 す る こ と が 考 え ら れ る 。む し ろ ド ル 反 落 に 警 戒 が 必 要 に な っ て い る 。
1 0 月 末 以 降 、円 は ユ ー ロ に 対 し て も 下 落 し た 。つ ま り ド ル 高 で は な く 円 安
であったことが明白であり、今後はこの円安を見込みにくくなるわけだ。
6 .【 金 利 】 米 国 金 利 は い つ 上 昇 す る の か
米国長期金利の推移(2011年11月~2014年11月)
日本長期金利の推移(2011年11月~2014年11月)
11
ユーロドル相場の推移(2011年11月~2014年11月)
米 国 長 期 金 利 は 2 0 1 4 年 に 入 っ て 低 下 傾 向 を 示 し て い る 。金 利 引 上 げ 観 測
は 存 続 し て い る が 、長 期 金 利 は 低 下 傾 向 を た ど っ て い る 。イ エ レ ン F R B 議 長
は 、米 国 労 働 市 場 の「 緩 み 」を 強 調 し て お り 、 イ ン フ レ 圧 力 は 抑 制 さ れ 、金 利
急 騰 の 見 通 し が 広 が ら ぬ 状 況 が 維 持 さ れ て い る 。こ の 環 境 が 維 持 さ れ て い る 間 、
米国長期金利の急騰は生じにくいと考えておくべきだろう。
対 日 本 円 で の 上 昇 力 を 鈍 ら せ る 可 能 性 の あ る 米 ド ル だ が 、対 ユ ー ロ で は 上 昇
が 鮮 明 で あ る 。E C B が 量 的 金 融 緩 和 に 踏 み 切 る と の 見 方 が 広 が り 、ユ ー ロ が
対 米 ド ル で 大 幅 下 落 し た 。今 後 は 対 日 本 円 で も ユ ー ロ が 反 落 す る 可 能 性 が 高 い 。
7 .【 中 国 】 人 民 元 高 下 の 中 国 株 価 堅 調 の 背 景
中国人民元が対円で大幅上昇しているが、中国株価が堅調を維持している。
過 去 は 人 民 元 上 昇 が 株 価 反 落・景 気 暗 転 を も た ら し た が 、状 況 が 変 化 し て い る 。
人民元・円相場の推移(2009年11月~2014年11月)
12
HSBC中国製造業PMIの推移(2009年11月~2014年10月)
上 海 総 合 指 数 の 推 移 (2 0 0 9 年 1 1 月 ~ 2 0 1 4 年 1 1 月 )
日中関係改善の可能性が中国株価を支え始めている可能性に注目すべきだ。
8 .【 金 ・ 原 油 】 金 と 原 油 の 底 値 模 索
WTI原油価格の推移(2004年11月~2014年11月)
13
米国長期金利の推移(2009年11月~2014年11月)
ド ル 建 て 金 価 格 の 推 移 (2 0 0 9 年 1 1 月 ~ 2 0 1 4 年 1 1 月 )
原 油 価 格 の 下 落 が 続 い て い る 。原 油 価 格 チ ャ ー ト は 三 角 保 合 い を 下 放 れ し た 。
「 相 場 は 相 場 に 聞 く 」の が 適 正 で あ り 、原 油 市 況 は 、こ れ か ら 底 値 を 模 索 す る
過 程 に 移 行 す る 。原 油 価 格 変 動 に 連 動 す る 傾 向 の 強 い 株 式 が 存 在 す る か ら 原 油
価格の底値見極めの価値は大きい。慎重に下値を見極めるべきである。
金 価 格 は 長 期 金 利 と 逆 相 関 の 変 動 を 示 す 。金 融 引 締 め 実 施 観 測 が 、金 価 格 を
押 し 下 げ る 要 因 に な る 。米 国 長 期 金 利 が 低 下 し て い る の に 金 価 格 が 下 落 傾 向 を
示 し て い る の は 利 上 げ 観 測 が く す ぶ っ て い る か ら と 考 え ら れ る 。本 格 利 上 げ が
遠 の け ば 、金 価 格 は 底 入 れ す る だ ろ う 。じ っ く り と 底 値 を 見 極 め る べ き 局 面 だ 。
9 .【 投 資 戦 略 】 消 費 税 再 増 税 判 断 が カ ギ を 握 る
内 外 株 式 市 場 が 高 値 波 乱 局 面 を 迎 え て い る 。世 界 景 気 減 速 、米 国 金 融 引 締 め 、
日 本 消 費 税 増 税 が キ ー ワ ー ド 。当 面 、ボ ッ ク ス 圏 内 で の 乱 高 下 を 前 提 に 、機 敏
14
な対応を取るべきと考える。逆張り銘柄は底値の慎重な見極めが肝要。
参考銘柄
①1928
投資判断は厳格な自己責任に基づかれますようお願いいたします。
積水ハウス
11月7日終値
1 ,4 3 1 .0 円
消費税増税の影響で株価低迷が持続してきたが駆け込み需要で最高益確保。
消費税増税先送りが決定されれば大幅反発の可能性。政策を見極めて対処。
②5411
JFE
11月7日終値
2 ,2 8 7 .5 円
世 界 経 済 の 持 ち 直 し が あ れ ば 浮 上 。海 外 比 率 高 く 、日 中 経 済 関 係 の 好 転 は 重 要
な影響をもたらす。消費税再増税問題を見極めて、押し目を狙って対応。
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③6301
コマツ
11月7日終値
2 ,7 5 7 .5 円
資 源 国 向 け の 鉱 山 機 械 は 低 調 だ が 日 中 経 済 関 係 の 改 善 の 効 果 は 大 き い 。1 0 月
中 旬 以 降 の 急 反 発 局 面 で 高 値 追 い に な る 点 に 留 意 。日 中 首 脳 会 談 に 機 敏 に 対 応 。
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『金利・為替・株価特報』2014年11月11日号=216号
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