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第4章 金属産業における排出 4.4 アルミニウム生産からの

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第4章 金属産業における排出 4.4 アルミニウム生産からの
第4章
4.4
金属産業における排出
アルミニウム生産からの CO2 と PFC の排出
<関係分のみ記載>
4.4.1 概
要
この章はアルミニウム地金生産工程からの排出量を網羅する2。世界的にアルミニウム地金の
製造は Hall-Heroult 電解還元法で作られる。このプロセスでは、電解還元セルが炭素電極とア
ルミナ供給方法の形態と配置により異なりそれにより 4 種類に分類される;
Centre-Worked Prebake(CWPB) 3 、Side-worked Prebake(SWPB),Horizomtal Stud
Soderberg(HSS)と Vertical Stud Soderberg(VSS)。
プロセスから排出する最も多い物としては;
(a)アルミニウム酸化物から地金に化学変化する際の炭素消費からの CO2
(b)アノード(陽極)効果による CF4 と C2F6 の二種類の PFCs
プロセスから少量排出される物として、CO、SO2、NMVOCs がある。SF6 は電解プロセスでは
排出されず、マグネシウムとの合金の時に還流が有ると極めて少量排出される場合がある4。
アルミニウム製造における温室効果ガスインベントリでの方法論選択のための指針は図 4.11
と 4.12 のデシジョンツリーに示されている。アルミニウム生産国の全てのインベントリ編集者は、
最低レベルとしてのティア1方法を実行し、きちんと報告すべきである。この章では CO2 と PFC
排出量の両方のデフォルト排出係数を提示しているが、排出率が大きく変化し、ティア1の係数
を使用すると潜在的に不確実性が非常に高くなることから、国はより高いレベルのティアを使用
する努力をすべきである。アルミニウム精錬業者はティア 2 排出係数の計算に必要な工程データ
を定期的に収集している。
4.4.2 方法論の問題
4.4.2.1 アルミニウム地金生産からの CO2 排出量の方法の選択
(省略)
4.4.2.2 アルミニウム地金生産からの CO2 排出量の排出係数の選択
4.4.2.3
(省略)
PFC の方法論の選択
電気分解中に、アルミナ(Al2O3)は約 80%のクリオライト(Na3AlF6)を含む溶融したフッ化物に
溶かされる。PFC(主として CF4 と C2F6)がアノード効果として知られる条件に到達した時に、溶
融したクリオライトと陽極からの炭素が反応することから生じる。アノード効果はアルミナ濃度
が極めて低くなり、電気分解の基準以下に落ちたときに起こる。
アルミニウム地金製造、ボーキサイト採掘、ボーキサイト鉱石精錬、第 2 巻のエネルギーで含まれるリサイク
ルされた資源からのアルミニウムの製造に関連した化石燃料の燃焼からの排出
2
3
Point Feed Prebake と Bar Broken Prebake を含む
4
2004 年 IAI 調査ではアルミニウム地金製造施設から放出される SF6 の証拠は見つからなかった。
126
図 4.12
アルミニウム地金製造からの PFC 排出量推計のデシジョンツリー
開
ティア 2 またはティア3
法を用いて PFC 排出量
を計算
始
YES
プロセス・デー
タは利用できる
か?(セル・日当
たりの AE 時間、
AE 過電圧)
YES
Box 4: ティア 3 ま
たはティア2
ティア 2 の PFC:
計算がトン Al 当
たりの CF4 排出
量を示すか
NO
NO
グッドプラクテ
ィスに対応する
施設固有の PFC
係数が利用でき
るか
NO
NO
YES
YES
これは主要な
カテゴリーか?
ティア3又はティア2法のデー
タを集める
ティア3法を用いて
PFC 排出量を計算
BOX2:ティア 3
NO
ティア 2 法を使用して
PFC 排出量を計算
生産データは
技術的に利用
できるか?
技術的に年間生
産量を推定
BOX2:ティア 2
NO
ティア1法を使用して
PFC 排出量を計算
YES
Box 1:ティア 1
127
NO
Box4.1
アノード効果の説明
アノード効果は電解槽に融けているアルミナの量が不十分で急激な
電圧上昇が起こり、その結果として PFC を含むガスを排出する。
PFC でのティア2と3の両方が、規則的に収集されるアノード効果の時のプラントからの工程デ
ータを基にしている。PFC の方法論の選択において、高度のティアでの不確実性がティア1の不
確実性よりも極めて低いことに注目すべきであり、そのため、アルミニウムの生産が主要な範疇
にあるのならば、ティア2と3が強く推し進められる。PFC の方法論の不確実性は、生産技術の
種類に依存するため、ティア1の数百%からティア3の 20%以下の範囲まで変化する。PFC イン
ベントリでのティア3は、良好な測定慣行(USEPA、国際アルミニウム協会、2003)を使用して得られ
た測定データから計算されるスロープ係数あるいは過電圧係数を利用すべきである。アルミニウ
ム地金生産者との情報交換が排出量の計算に使用される工程データの利用度を決める。工場は毎
日のアノード効果の持続時間あるいは過電圧を定期的に測定することで把握している。PFC の排
出量はスロープまたは過電圧係数としてアノード効果の頻度と直接関係してくる。
図 4.12 に示したデシジョンツリーは、国の状況に応じた PFC インベントリ方法論の適切な選
択方法のグッドプラクティスを記載している。極少量の PFC を放出する優良施設では、ティア
28よりティア3を使用したとしても施設全体の GHG インベントリを大幅に改善することは期
待できない。結果として方法を選択する前にこれらの施設を認識することがグットプラクティス
である。優良施設として認識するための条件は、施設毎に集められる工程データのタイプ次第で
ある。優良施設とは、アノード効果として測定される時間がセル・日当たり 2 分以下で操業する
施設である。過電圧が記録されるところでは、優良施設は 1.4mV 以下の過電圧で運転する。さら
にこれらの優良施設において、ティア 3 の PFC 係数を正確に測定することはアノード効果の頻
度が非常に少なく、しっかりとした統計的な結果を得るのには長時間に渡る時間を要することか
ら難しい。優良施設としての施設状況は、休止期間後の生産ラインの再スタートの様な経済的要
因、または運転期間の様な工程要因が、アノード効果頻度の一時的な増加を引き起こすので、毎
年評価すべきである。付け加えるに、当初優良施設の基準に合致しない施設でも、新技術または
改良努力を行うことにより、優良施設になることができる。全ての場合において、異なる年毎に
異なるティアを適用することは、時系列の一貫性を確保するためにも注意深い実行が必要とされ
る。
8
PFC を排出する優良施設を定義する工程因子の基準は、ティア 2 係数の大きさそして不確実性の合わせた結果
となる。基準は、これらの施設でティア 3 係数になりそうな範囲で代替としてティア 2 係数を±95%の信頼限界
を使うことで計算される。潜在的な違いは、PFC と CO2 両方の排出量が考えられる生産施設からの温室効果ガ
ス全体の排出量を評価されることである。アノード効果工程因子基準か又はそれ以下で操業する施設が優良施設
として認めた時、PFC のためのティア 2 法からティア 3 法へ移行する影響度は、GWP 換算の GHG 排出量で 5%
以上の違いにもならない。優良施設からの PFC 排出は IAI2004 年アノード効果調査報告書では、世界の PFC 排
出量の 3%以下であると説明している。
128
そのほかの全ての施設では、プラント固有の係数を基にすれば推計はより正確になるのでティア
3による方法が好ましい。
プラント固有の係数を決めるための PFC 測定がなされていなければ、
測定が行われてティア 3 係数が決まるまで、ティア 2 が使用できる。各国は個々の施設からの利
用できるデータの種類に基づきティア2とティア3の組み合わせが使用できる。
ティア 1 法:技術を基準にしたデフォルト排出係数の使用
ティア 1 法では4つの主要な生産技術方式の技術(CWPB,SWPB,VSS と HSS)を基準としたデ
フォルト排出係数を基にしている。PFC 排出量は式 4.25 に従って計算できる。ティア 1 法での
不確実性のレベルは、施設でのアノード効果の頻度が説明されていない時には、これがアノード
効果とそれから生じる PFC 排出量を決める重要なものであることから、大きい。特に地金アル
ミニウム生産が国の主要排出源の範疇になくて、工程データが操業施設から得られない時のみに
ティア 1 法を使うことがグットプラクティスとなる。
式 4.25
PFC 排出量(ティア 1 法)
kgCF4/年 =Σ(EFCF4 × MP)
kgC2F6/年 =Σ(EFC2F6 × MP)
ここで、
EFCF4 = CF4 のセル技術タイプのデフォルト排出係数 (kgCF4/t Al)
EFC2F6 = C2F6 のセル技術タイプのデフォルト排出係数 (kgC2F6/t Al)
MP = セル技術による金属生産量 (トン Al /年)
ティア2と3法:アノード効果の頻度を基に
アノード効果と頻度との関係を基に、個々のプラントでの CF4 排出量を推計する二つの異なっ
た式がある。これらはスロープ係数と過電圧係数の式である。二つのタイプの係数とも PFC を
直接測定することを基にしている。ティア2は多くの施設での測定からの平均の係数を使用し、
一方ティア 3 は個々の施設での測定を基にしている。PFC 排出を生じさせる工程上の機構が CF4
と C2F6 で類似しているので、PFC 排出量を推定する時には、この二つのガスを一緒にして考え
ることができる。C2F6 排出量は CF4 排出量の一部として、ここで記載されている全ての方法に
より計算される。
アノード効果の工程データと PFC 排出量との間には確立した関係があるので、継続して収集さ
れた工程データは、PFC を直接測定する代わりに PFC 排出量を計算するのに使用することがで
きる。二つの推定式間での選択は、使用するプロセス制御技術に依存する。式 4.26 はアノード効
果が記録された時に使用され、式 4.27 は過電圧データが記録された時に使用される。
129
スロープ係数:
スロープ係数はアルミニウム生産量当たりの CF4 排出量を 1 セル・日9当たりのアノード時間
で割ったものである。PFC 排出量が生産されるアルミニウムのトン当たりで測定されるので、ポ
ット室でのアルミニウム量を決定する二つの因子であるポットアンペアと電流効率の効果を含ん
でいる。式 4.26 は CF4 と C2F6 両方のスロープ法を示す。
式 4.26
スロープ法による PFC 排出量(ティア2とティア3法)
kgCF4/年 = SCF4 × AME × MP
と
kg C2F6/年 =
kgCF4 × FC2F6/CF4
ここで、 SCF4 = CF4 のスロープ係数
AEM = セル・日当たりのアノード効果時間(分)
MP = 金属生産量、トン Al
FC2F6/CF4 =
C2F6/CF4 の重量比
過電圧係数:
いくつかのプロセス制御システムは Anode Effect Overvoltage10 (AEO)を統計的に計算するこ
とによりアノード効果を特徴付けている。AEO は操業時での基準電圧以上の過剰のセル電圧とし
て定義され、この因子は工程管理システムにより記録された時に、PFC 排出量の良好な予測者と
なることを示している。AEO 工程管理技術は多くの近代的な精錬所で使用されている。AEO は
基準の操業電圧の時間と電圧を合計し、それを集められたデータの時間で割って計算される。
式 4.27
過電圧法による PFC 排出量(ティア2とティア3法)
KgCF4= OVC × AEO/CE × MP
と
kg C2F6 =
kgCF4 × FC2F6/CF4
ここで、 OVC = 過電圧係数
AEO = アノード効果過電圧(mV)
9
「セル・日」の用語は「稼働中のセル数に稼働日数を乗じたもの」である。
10
コンピューター制御技術は使用するバージョンにより”positive”又は”algebraic”と印字する。
“過電圧”の表
示の使用は電気化学反応が起こるに必要とされる過剰電圧を通常は意味するので、典型的な電気化学術語と混同
すべきではない。
130
CE = アルミニウム生産プロセス電流効率(%) (例えば 95%)
MP = 金属生産量、トン Al
FC2F6/CF4 = C2F6/CF4 の重量比
4.4.2.4
PFC の排出係数の選択
ティア1法:デフォルト排出係数を基にした技術
ティア1法のデフォルト排出係数は表 4.15 に示した。
表 4.15
セル技術タイプによるアルミニウム生産からの PFC 排出量計算のための
デフォルト排出係数と不確実性範囲(ティア 1 法)
CF4
C2F6
技術
EFC2F6
EFCF4
不確実性範囲
不確実性範囲
kg/t Ala
kg/t Alc
(%)b
(%)d
CWPB
0.4
0.04
−99/+380
−99/+380
SWPB
1.6
0.4
−40/+150
−40/+150
VSS
0.8
0.04
−70/+260
−70/+260
HSS
0.4
0.03
−80/+180
−80/+180
a
CF4 デフォルト値は 1990 年 IAI 調査データからの平均アノード効果頻度から計算した。
不確実性範囲は 1990 年 IAI アノード効果調査データから技術毎の計算された CF4 固有の排出量の範囲
を基にしている。
C C2F6 デフォルト値は 1990 年 IAI 調査データからの平均アノード効果頻度に世界平均の C2F6:CF4 の比
を掛けることにより計算される。
b
d
不確実性の範囲は 1990 年 IAI 調査データから CF4 排出量の最大と最小を掛けた技術毎の世
界平均 C2F6:CF4 比率を基にしている。
注:これらのデフォルト排出係数はティア 2 とティア 3 データが無い場合のみ使用される。
ティア 2 法:アノード効果頻度と PFC 排出量との間の技術固有な関係を基準とした PFC
排出係数
ティア 2 法は表 4.16 に示した適用可能な還元セルとプロセス制御技術用に使用する技術固有の
スロープあるいは過電圧係数を基準にしている 11。
ティア 3 法:アノード効果頻度と PFC 排出量との間の施設固有の関係を基準とした PFC
排出係数
ティア 3 法は施設固有のスロープあるいはアノード効果過電圧 PFC 係数をもとにしている。
この係数は施設のアノード効果頻度と確立された測定の慣例(USEPA/IAI、2003)と国際アルミニウ
ム協会の GHG プロトコール(IAI、2005)と一致する定期的あるいは連続した測定からの PFC 排出
11
これらのスロープ係数は PFC の測定から得られ、100 カ所以上のアルミ溶融炉でのセル・日当たりのアノー
ド効果時間(分)に対する測定された PFC 排出量を関連させて証明している。
131
量との間の関係を特徴付けている。
表 4.16
アルミニウム製造からの PFC 排出量計算の技術固有のスロープと過電圧
係数 (ティア 2 法)
技術 a
スロープ係数 b,c
kgPFC/tAl/(AE-Mins/cell-day)
CF4
不確実
過電圧係数 b,c,d
(kgCF4/tAl)/(mV)
CF4
不確実
(+/−%)
C2F6/CF4 比率
C2F6/CF4
(+/−%)
不確実
(+/−%)
CWPB
0.143
6
1.16
24
0.121
11
SWPB
0.272
15
3.65
43
0.252
23
VSS
0.092
17
NR
NR
0.053
15
HSS
0.099
44
NR
NR
0.085
48
aCWPB:Centre
Worked Prebaked
SWPB:Side Worked Prebaked
VSS:Vertical Stud Søderberg
HSS:Horizontal Stud Søderberg
b 出典:IAI、USEPA フィールド測定、各社測定データ
c 各スロープ係数内の排出量回収効率推定値は次のとおり。CWPB95%、SWPB90%
VSS85%、HSS90%。これらの回収効率は測定された PFC 回収率、測定されたフッ素化合物回収効率、専門
家の意見を基に推定されている。
d 過電圧係数は VSS と HSS 技術方式には関係ない(NR)。
4.4.2.5 活動量データの選択
CO2 と PFC の両方の排出量に対するティア1法についての活動量データとしては、各施設レ
ベルで各社から得られる生産統計を利用できる。多くの国ではアルミニウム生産量の不確実性は
小さい様だ。生産データはどこでも利用できると考えられるため、生産能力のデータは生産統計
のチェックだけに使用される。
PFC のためのグッドプラクティス法は全てのセル種でのセル・日当たりの正確なアノード効果
データ又は正確な過電圧(AEO)データを必要とする。年間統計は月間のアノード効果データの加
重平均を基準にする。ティア 2 とティア 3 の両方とも施設固有のアノード効果頻度、セル・日当
たりのアノード効果の持続時間あるいは過電圧及びアルミニウム生産データを使用する。ティア
3は施設固有のアノード効果頻度あるいは構成データを使用する。個々の企業あるいは企業グル
ープ、国の企業団体あるいは国際アルミニウム地金協会は、データが利用し易い形式で得られる
ように指導すべきだ。
4.4.2.6 完全性 (省略)
4.4.2.7
4.4.3
整合性のある時系列の作成 (省略)
不確実性評価
4.4.3.1 排出係数の不確実性
4.4.4
品質保証/品質管理(QA/QC), 報告と証拠書類 (省略)
132
4.5 マグネシウム生産
4.5.1 方法論の問題
4.5.1.1 概要
マグネシウム産業には、潜在的な GHG 排出源とガスが多くある。マグネシウム産業から排出
される量と種類は、最初のマグネシウム金属を生産するのに使用される原材料と、成型やリサイ
クルの段階で溶融マグネシウムの酸化を防ぐために使用されるカバーガスの種類により影響する。
出来ればこの産業の全てのサブ部門を、可能な限り部門別に検討することがグッドプラクティス
である一次と二次の金属マグネシウムの製造と成型作業に関連して排出される GHG のリストを
表 4.18 に示した。
一次マグネシウムとは鉱物から取り出された金属マグネシウムを示す。一次マグネシウムは電
解あるいは熱還元プロセスで生産することができる。一次マグネシウムに使用される原料はドロ
マイト、マグネサイト、カーナライト、塩水あるいは海水である。炭酸塩の原料(マグネサイトと
ドロマイト)の処理では製造中に CO2 を排出する。CO2 は炭酸塩ベースの鉱石(マグネサイトとド
ロマイト)の焼成中----メインである電解/熱還元工程の前処理段階に放出される。この工程は金属
産業での CO2 発生に類似している(第 2 章参照)。
二次マグネシウム生産には、各種のマグネシウムを含んだスクラップ材料、例えば使用後の商品
部品、切削材、成型スクラップ、炉残留物などから金属マグネシウムを回収・リサイクルするこ
とを含んでいる。マグネシウム成型工程は、一次製品と二次マグネシウム製品の両方からの金属
を含む。マグネシウム成型工程には溶融したマグネシウムと(又は)溶融したマグネシウム含有量
の高い合金の作業が含まれる。溶融したマグネシウム(マグネシウム含有量の高い合金を意味する
こともまた理解した)は、gravity casting, sand casting,ダイカスト他など各種方法により成型さ
れる。
全ての溶融した金属マグネシウムは大気中の酸素の存在下で瞬間的に燃焼する。全ての金属マグ
ネシウムの生産と成型には燃焼を防ぐための保護システムを必要とする。各種保護システムの間
で共通に使用されているのは、SF6 のように GWP の大きいガス状の成分で、これらは大気中に
放出される。金属マグネシウムは様々な工程により成型され、全ての各種成型工程には保護する
方法が必要で、それ故同様に GHG 排出の可能性を持っている。
二次のマグネシウム製造(リサイクル作業)、処理作業、成型作業において、最近まで溶融金属は
カバーガス(キャリアガス<通常は空気と/又は CO2>と SF6 や SO212)を使用することや、ある場
合には融剤を使用することで酸化を防いでいた。マグネシウム含量の高い合金もまた、SF6 を含
むカバーガスを用いることで通常保護されている。最近の技術開発により SF6 代替カバーガスへ
転換する動きがマグネシウム業界に起こってきた。次の 10 年には SF6 や SO2 に代わって最も代
12
1 巻で概説しているこれらの指針の範囲と一致して、この章では SO2 排出量の推計方法は提示していない。
133
表 的 な 二 つ 代 替 品 と し て HFC-134a と 商 標 NovecTM61213 と し て の フ ッ 化 ケ ト ン
FK5-1-12(C3F7C(O)C2F5)が考えられる。そしてそれぞれのマグネシウム製造と成型でのカバー
ガスの選択は国や地域の環境により大きく影響される。(Tranell rt al.,2004)
表 4.18
マグネシウムの生産と成型に関連した潜在 GHG の排出
SF6
HFCs
CO2
その他*
一次製造用原料
ドルマイト/マグネサイトベース
―
―
X
―
他の原材料
―
―
―
―
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
成型(一次と二次)
インゴット成型
ダイカスト成型
引抜き成型
他の成型法
二次 Mg 成型**
X
X
X
X
X
*その他にはフッ化ケトンと各種フッ素系分解物、例えば PFC
**マグネシウムの再生/回収を含有する工程を含む
一次製造からの CO2 の排出
表 4.18 に示したように、マグネシウムを含んだ鉱石、ドロマイト(Mg,Ca(CO3)2)とマグネサイ
ト(MgCO3) 、が焼成中に CO2 を排出する。理論的に生産されるマグネシウムの kg 当たり
3.62kg14 (ドロマイト)、あるいは 1.81kg(マグネサイト)の CO2 が焼成中に排出される。生産され
るマグネシウムの kg 当たりの CO2 排出量は、幾つかの工程が続くことによるマグネシウム損失
のため、理論上の排出量よりも高くなる。
成型工程(一次と二次)
成型工程では、GHG 排出量の大きさと種類が、液状のマグネシウムを保護するのに使用され
るカバーガスシステムの選択に関係する。カバーガスとしては、活性な保護物質(SF6,HFC-134a
または FK5-1-12)-----各種フッ素系分解生成物(例えば PFC)の排出がある---と従来のキャリアガ
ス(空気または、CO2, N2 からの選択に依存)の両方が排出量全体に寄与する。
SF6
マグネシウムカバーガスとしての SF6 は不活性であり、そのためマグネシウム産業で使用され
る SF6 の全てが排出される。しかしながら、SF6 は活性ではないが、通常のマグネシウムの保存
や成型する温度で液状/ガス状のマグネシウムと接触してある程度の分解を起こすことが異なっ
13
商標 NovecTM612 の FK5-1-12(C3F7C(O)C2F5)は 3M によって製造されるフッ化ケトンである)
14
これは鉱石が化学量論的な Mg/Ca 比が 1 であるケースである。
134
た研究で示されている(Bartos et al.,2003 と Tranell et al.,2004)。炉で破壊される SF6 の割合は、マグ
ネシウムと反応して発生する二次のガス生成物の種類と量に関して同様、注入するカバーガス中
の SF6 濃度、カバーガスの総流量、反応するマグネシウム表面積の大きさ、使用するキャリアガ
スの種類などの条件に依存する。
HFC-134a、FK5-1-12 と分解生成物 (例えば PFC)
HFC-134a と FK5-1-12 は両方共に SF6 より熱力学的には安定性が低く(そのためかなり GWP
が低い)。そのためこれらのガスが液状あるいはガス状のマグネシウムと接触すると分解したり、
反応したりし、各種のフッ素系ガス(例えば PFC)が発生する。Tranell らの 2004 の研究では、
SF6 が HFC-134a で置き換わるとして、与えられたマグネシウムの表面積を保護するのに必要な
有効成分のおおよそ半分以下であるとしている。SF6 が FK5-1-12 で置き換わったならば有効成
分の 1/4 で良いとしている。しかしながら、炉の中で分解されるカバーガスの有効成分量は SF6
のように、注入するカバーガス中の SF6 濃度、カバーガスの総流量、反応するマグネシウム表面
積の大きさ、使用するキャリアガスの種類などの条件に依存する。分解生成物としての PFC の
排出は GWP をもつことから、FK5-1-12 よりもかなり重要である 15。
キャリアガス
多くのカバーガスシステムにおいて、CO2 がキャリアガスとして、あるいは活性なフッ素系化
合物を希釈するため又は炉での酸素分圧を削減するために乾燥空気と一緒に使用される。カバー
ガスとして使用される全ての CO2 は、CO2 として排出されるとして量的に考えて良い。
4.5.2 方法論の問題
4.5.2.1
方法論の選択
一次製造からの CO2 の排出
一次マグネシウム製造分野からの排出のためのグッドプラクティス法の選択は各国の状況によ
る。デシジョンツリー(図 4.13「一次マグネシウム製造からの CO2 排出量推定のデシジョンツ
リー」
;省略)は、国の状況に方法を適応することのグッドプラクティスを描いている。
ティア1
ティア 1 法は、利用できる国の一次生産データや、国で利用できる(使用している)原料の知識を
基本にしている。国の生産量データは、マグネシウム生産国が限られていたり、数少ない企業(し
ばしば国で 1 社)からなので、国の生産量データを透明性良く作ることが難しく、公共の情報には
ならない。国の一次のマグネシウム生産統計データが無い場合には、国際マグネシウム協会
15 FK5-1-12 の GWP 値は IPCC 第 3 次報告書(IPCC,2001)には記載されていない。しかしこのガスのメーカーに
よると CO2 の GWP と同様であると推定されている。
135
(http://www.intlmag.org/)のような産業界団体が、地域の統計データの相談にのってくれる。最
後の手段としては、国の年間のマグネシウム金属販売量データから一次のマグネシウム製造での
排出量を推定することである。しかしこの方法は製造時のマグネシウムを計算に入れていないの
で、不確実性が増す。CO2 排出量は式 4.28 を使用して計算される。<式省略>
ティア2
一次のマグネシウムからの CO2 排出量を決定するためのティア2法は、企業/プラント固有の
経験的な排出係数を集めることの他に、国固有の生産データも含む。企業固有の排出係数は、工
程が扱う原料に依存するデフォルト排出係数とは本質的に異なる。この生産データの収集は重要
な排出源であれば行われるべきである。
CO2 排出量は式 4.29 を使用して計算される。<式省略>
ティア3
実際に測定した CO2 データが個々の一次のマグネシウム製造施設から利用できるのであれば、
これらのデータをまとめ国の排出量の計算に直接使用される。
マグネシウム成型工程<一次と二次>
SF6
マグネシウム成型工程分野からの SF6 排出量のインベントリ準備のためのグッドプラクティス
な方法の選択は、国の状況に依る。デシジョンツリー(図 4.14「マグネシウム製造からの SF6
排出量推計のためのデシジョンツリー」参照)はこれらの国別状況に適合させるためのグッドプ
ラクティスを示す。
ティア1―デフォルト排出係数
ティア1法は国における(式 4.30)マグネシウム成型または取扱い作業の全量を基礎としている。
ティア1方式のための基本の仮定は、マグネシウム産業部門での全ての SF 6 消費量が SF 6
として排出されることにある。4.5.1 項で記載したように、この仮定は、GHG 排出量を本質的に
過剰に見積もる。しかし、過剰の見積りは、4.5.3 項で与えられる全ての不確実性の範囲以内にあ
る。基本的なティア1法は、SF6 が酸化防止のために使用された時に、SF6 消費量が異なる成型
作業や作業者間でかなり変化する(時々桁違いに)にもかかわらず、デフォルト排出量計算のため
の基礎として単一値を使用する。ティア1法は、インベントリ編集者がマグネシウム取扱い作業
あるいは成型工程(リサイクル、棒状成型、ダイカストなど)の種類の知識を持たない時にのみ使
用すべきである。
式 4.30
マグネシウム成型からの SF6 排出量(ティア1)
ESF6 = MGC×EFSF6×103
136
ここで、
ESF6 = マグネシウム成型からの SF6 排出量(トン)
MGC = 国でのマグネシウム成型又は取扱い作業時のトータル量(トン)
EFSF6 = マグネシウム成型からの SF6 排出量のためのデフォルト排出係数、
成型する Mg トン当たりの SF6kg
ティア2―企業固有の消費量
ティア1法に関連して、ティア2法の根底となる原則は全ての SF6 消費量は SF6 として排出す
ることにある。しかしながら、ティア2法では、マグネシウム産業での SF6 の国(あるいは国に準
ずる)の消費量が産業界あるいは国の統計のように他の利用できる情報源により報告されるもの
と想定される。(式 4.31)
最も精度の高い方法として、マグネシウム産業におけるガスの個別利用者の全てから SF6消費量
についてのデータを直接集めることが必要である。利用できる直接のデータがない場合には、こ
れに代わる方法としては(精度は低いが)
、国内での SF6年間消費量のうちマグネシウム産業が
占める割合を推定することである。これには国内の SF6の年間販売量データを集めることが必要
であり、また、マグネシウム産業で販売された全 SF6ガスが当該年中に排出されると仮定しての
ことである。
式 4.31
マグネシウム成型からの SF6 排出量(ティア2)
ESF6 = CSF6
ここで、
ESF6 =
マグネシウム成型からの SF6 排出量(トン)
CSF6 =
マグネシウム精錬所または鋳物工場での SF6 消費量(トン)
ティア3―直接測定法
個々のマグネシウム成型施設から直接測定される排出量が利用できるのなら、これらのデータ
を集め、国の排出量計算に直接使用できる。このような報告には、SF6 の破壊と二次ガス製品の
生成を含めることがグッドプラクティスである。
HFC-134a、FK5-1-12 と分解生成物 (例えば PFC)
4.5.1 項で記載したように、マグネシウムの酸化防止のために SF6 以外のフッ素系化合物を産
業界で使用することが、2003 年及び 2004 年に開始されている。この場合、マグネシウム保護の
目的でこれらの化合物を使用することの産業界での経験は、
まだ非常に限られており、
それ故個々
137
のプラントの時系列的なデータに乏しく、有ったとしても作業からの実際の排出量に関するもの
である。従って、これらの化合物の使用に関係する排出量を報告するためのティア化した方法は
ほとんど価値がない。
しかしながら、マグネシウムカバーガスの使用からの GHG 排出量が国の主要分野であれば、イ
ンベントリ準備の目的で、カバーガスとして HFC-134a や FK5-1-12 を使用しているマグネシウ
ム鋳造工場において、GHG 排出量(分解生成物としての PFC 排出と同様に HFC-134a や FK5-1-12 の漏洩排出量)を直接測定して報告することがグッドプラクティスである。これはティア3
法を想定している。
キャリアガス
カバーガスシステムで使用される CO2 キャリアガス量の温暖化への影響度は非常に小さい。
一般的には無視して良い。
4.5.2.2
排出係数の選択
一次製造からの CO2 の排出
ティア1―デフォルト排出係数
ティア 1 法は、国の一次のマグネシウム製造全てに適用されるデフォルト排出係数から排出量
を計算する。デフォルト排出係数(表 4.19)は、使用される原料種と一般的な工程損失のための経
験データにより調整された化学量論的な比率を考慮している。生産されるマグネシウムトン当た
りの結果として生じる CO2 排出量は、4.5.1 項で記載した理論量よりもかなり高くなっている。
表 4.19 マグネシウム金属生産のための鉱石固有の排出係数
原料
生産される金属 Mg トン当たりの CO2 排出量
ドロマイト
5.13
マグネサイト
2.83
トン
ティア2―国/企業固有の排出係数
一次のマグネシウムからの CO2 排出量を決定するためのティア2法は、企業/プラント固有の
経験的な排出係数を集めることの他に、国固有の生産データも含む。企業固有の排出係数は、工
程が扱う原料に依存するデフォルト排出係数とは本質的に異なる。この生産データの収集は重要
な排出源であれば行われるべきである。
ティア3―直接測定法
個々のマグネシウム加工施設からの実際の排出量測定データが利用できるのなら、これらのデ
ータを合計し、国の排出量を計算するのに直接使用できる。
138
マグネシウム成型工程<一次と二次>
SF6
ティア1―デフォルト排出係数
ティア1方法のための根底となる仮定は、この産業分野での全ての SF6 消費量が SF6 として排
出することにある。
4.5.1 項で記載したように、この仮定は GHG 排出量を潜在的に過剰推計する。
しかしながら、製造者が SF6 消費量を最小となるような特別な運転を行うために工程を最適化す
る他は、GHG の過剰推計は 4.5.3 項で与えられた全体の不確実性の範囲内に収まる。このティア
1法は扱っているマグネシウムの種類の知識が無いとか、成型加工(リサイクル、押出し加工、ダ
イカストその他)を想定している。ダイカストでの推奨された条件では、消費率は製造され溶融さ
れたマグネシウムトン当たり約 1kg の SF6 である(Gjestland、Magers,1996)。SF6 の消費量は異な
った成型条件や作業者(ときには大人数)との間で大きく変わるけれども、SF6 が酸化防止のため
に使用されている時には、デフォルト排出量の計算の基礎として、基本的なティア1法ではこの
値を使用する。国のマグネシウム製造工程での文書化が良くなされていれば、各種製造工程に関
連するデータや排出係数を使用することで、ティア1法の適用がより正確になる。これらの排出
係数は、SF6 排出量を、利用できる活動量データ(例えば国、国に準ずる)に細分化された段階に
おいて、マグネシウム生産量に関係付けるべきである。プラントの測定を基本とする国の排出係
数は、国固有の条件を反映することから、国際的なデフォルト係数より好ましい。このような情
報は産業界団体、調査、研究を通して入手できる。
表 4.20
マグネシウム成型プロセスにおける SF6 排出係数
成型システム
Mg 成型トン当たりの SF6kg
1.0
全ての成型工程
ティア2―企業固有の SF6 消費量
ティア1法に関連して、ティア2法の根底となる原則は全ての SF6 消費量は SF6 として排出す
ることにある。しかしながら、ティア2法では、マグネシウム産業での SF6 の国(あるいは国に準
ずる)の消費量が産業界あるいは国の統計のように他の利用できる情報源により報告されるもの
と想定される。最も精度の高い方法として、マグネシウム産業におけるガスの個別利用者の全て
から SF6消費量についてのデータを直接集めることが必要である。利用できる直接のデータがな
い場合には、これに代わる方法としては(精度は低いが)、国内での SF6 年間消費量のうちマグ
ネシウム産業が占める割合を推定することである。これには国内の SF6 の年間販売量データを集
めることが必要であり、また、マグネシウム産業で販売された全 SF6 ガスが当該年中に排出され
ると仮定してのことである。
139
図 4.14 マグネシウム製造からの SF6排出量推計のためのデシジョンツリー
開始
マグネシウム産業のサブ部
門を明確にすること
各サブ部門で SF6 が
カバーガスとして使われ
ているか
NO
次のサブ部門へ
移る
YES
各サブ部門からの SF6 の
使用に関する公表データ
があるか
BOX 4:ティア 3
直接報告する方法を用
いて排出量を推定する
YES
NO
BOX 3:ティア 2
サブ部門での SF6 使用量
と等しいとして排出量を
報告する
YES
一部のサブ部門からでも
SF6 の使用に関する公
表データはあるか
NO
YES
マグネシウム
は主要排出源か
各社からプラントの
データを集めること
BOX 2:ティア 1
活動レベルと利用でき
る又はデフォルト排出係
数を基に排出量を推計す
る
NO
活動レベル及び
排出係数のデータは
あるか
YES
BOX 1:ティア 1
国の統計値とデフォルト
排出係数を使用して排出
量を推定する
NO
140
ティア3―直接測定法
個々のマグネシウム加工施設からの実際の排出量測定データが利用できるのなら、これらのデ
ータを合計し、国の排出量を計算するのに直接使用できる。
4.5.2.3 活動量データの選択
一次製造からの CO2 排出 <省略>
マグネシウム成型工程<一次と二次>
SF6
ティア1法では、生産量データをマグネシウム産業内の SF6 を使用する各部門(例えば二次製
造、押出し加工、ダイカスト、引抜き加工など)にできるだけ細かく分割することがグッドプラ
クティスである。分割されたデータが得られない場合、推定をするために、幾つかの異なったプ
ロセスからの情報を組み合わせて合計した生産データを使用することができる。SF6 の消費量デ
ータあるいはマグネシウムの生産データがない場合、代わりの方法としてはマグネシウム産業へ
の
SF6 の国レベルの年間販売量データを集めることである。このデータは SF6 の生産者あるい
は全国統計から直接入手できる。マグネシウム産業での SF6 の消費比率を推定する場合、他の産
業(例えば電力機器等)での SF6 消費量データを考慮することがグッドプラクティスである。
ティア3と2法では、各プラントからの SF6(と副生ガス)の排出量あるいは SF6 全消費量が報
告される。
ティア1法では、国あるいは個々のプラントのマグネシウム生産データが必要となる。
SF6 の使用量について何らかの直接の報告がある場合、SF6 のデータを直接報告しているプラン
トの当該サブ部門の全マグネシウム生産量に対する比率を推定することがグッドプラクティスで
ある。他のプラントについては、生産量に基づいた排出量の推定値を使用することがグッドプラ
クティスである。
HFC-134a と FK5-1-12 と分解生成物 (例えば PFC)
ティア3 法では、活動量データが直接測定され、報告される。ティア3とティア2法は指針が
与えられていない。そのためこれらの方法のための活動量データは適用されない。
キャリアガス
キャリアガス用の選択された活動量データは、使用される活性な化合物の活動量と類似してい
ることをインベントリで報告することがグッドプラクティスである。例えば、CO2 が SF6 用キャ
リアガスとして使用されるのなら、
CO2 の活動量データは SF6 の活動量に反映させるべきである。
CO2 が HFC-134a または FK5-1-12 のキャリアガスとして使用される時には、CO2 活動量データ
は HFC-134a あるいは FK5-1-12 の活動量データに反映すべきである。
4.5.2.4
完全性
141
不完全な直接報告あるいは活動量データが地金生産にとっての大きな問題になることはない。
マグネシウム地金生産者の数は少なく、一般的によく知られていて記録も整備している。一般に、
工場が広く分散し、規模や使用技術が様々な鋳造部門で完全性の問題が生じる。一部のプラント
から、国レベルのデータでは把握されていない特殊用途市場に供給されている可能性がある。イ
ンベントリ担当機関は、これらの小規模な産業部門については排出がないと仮定してしまうので
はなく、推定値として欠けていることを確認すべきである。マグネシウム産業についても定期的
な調査を行い、推定値の完全性をチェックするために、地方の業界団体と密接な関係を築くこと
もグッドプラクティスである。
代替(非 SF6)のカバーガスシステムでは各種フッ素系副生成物に分解するので、記載されてい
ない GWP の未知なものがいくつかある。これらは材料的には重要とは思われていない。
途上国での少量生産の単位が多いマグネシウム加工分野と同様、世界中の一次製造分も増加す
ると思われるので、完全性が重要な問題になることが予想される。
4.5.2.5 整合性のある時系列の作成
全体のマグネシウム生産統計に関してのデータはプラントの履歴から使用できる。しかしなが
ら、いくつかのケースで過去の生産データが、初期時点の記録がないとか対象期間中に産業界の
構造が変化したなどにより、使用できないこともある。この場合には国際的なデータを使用して
も良い。
これらの排出量は 2006 年以前(1996 年 IPCC ガイドラインではデータ報告の指針が存在して
いない)には報告されていないことから、一次のマグネシウム製造からの排出量の整合性のある時
系列を作成するには問題がある。しかしながら、多くの一次のマグネシウム製造施設では、トン
当たりのマグネシウム生産基準での時系列の CO2 排出レベルは比較的一定であると想定される。
SF6 排出量に関しては、整合性のある時系列を作成するために、現在用途での国やそれに準ず
るところのデフォルト排出係数に時系列の活動量データを掛けるティア1法がグッドプラクティ
スである。プラント固有の排出係数は環境の認識、経済要因、技術革新、慣行により時系列的に
減少していくことに注目すべきである。
カバーガスとしての HFC-134a と FK5-1-12 は、2003 年以前には各国で十分に広がっていな
かったので、今年以前の報告がない。従ってこれらのガスの使用に関連する排出量を報告するこ
との完全性のレベルでは、整合性のある時系列の作成はインベントリ編集者にとっては挑戦的な
ものになる。
1巻第5章の指針に従って時系列の排出係数を適切に評価することがグッドプラクティスである。
年ごとの一貫性を守るために、排出量の傾向値が真値であり推定方法の変更によって影響されな
いように、以前用いられた方法と新しい方法を用いて、排出量推定値を再計算することがグッド
プラクティスである。すべてのケースにおける仮定を証拠書類で裏付けし、インベントリ編集者
でそれらを管理することがグッドプラクティスである。
142
4.5.3
不確実性の評価
一次製造からの CO2 排出
プラントレベルで製造されるマグネシウムのトン数と同様に原料種、分析結果、使用量を通常
に文書化する。全ての考えられる排出物に対応して、ティア2と3法の両方ともに直接報告され
る活動量を基にしているので、5%以下の不確実性の推計はこのタイプのデータには一般的に適切
である。国のインベントリの段階で、マグネシウム生産の活動量データの精度は、他国の生産統
計の正確度と同程度である(例えば±5%)。直接報告してこない生産量の比率を推計することによ
り、付随的な不確実性が生じる。
マグネシウム成型工程<一次と二次>
SF6
ティア1方法では、様々なサブ部門の生産を統合し、デフォルト排出係数を用いることで不確
実性が生ずる。例えば、成型作業からの国レベルのデータは、SF6 の排出率が潜在的に異なって
いるにもかかわらず、ダイカスト部門と引抜き加工部門とは分離できないだろう。そのためデフ
ォルトによるこの方法では現実の排出量が非常に大まかな概算となる。
ティア 2 法では、プラントレベルでの SF6 の使用量が購入データから容易にかつ正確に測定さ
れるので、プラントでの SF6 使用量のデータの不確実性は非常に小さい。
(直接報告されたデー
タでは不確実性の推定値が5%以下というのが通常である。
)
個々のプラントレベルで測定排出量を報告するティア3法では、不確実性は監視機器の調整や
精度から主に生じる。FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)のような典型的なガス分析法は、一般
的に±10%の精度で測定される。FTIR とそれと類似の分析技術に加えて、代表的なサンプリン
グとか FTIR の全体の不確実性が±20%まで生じる検量のやり方の問題によりさらに不確実性が
生じる。
異なった作業や成型作業ではカバーガスとしての SF6 濃度が違うことから±100%を超える。
ティア 1 と2法では、使用される SF6 の 100%が排出されると仮定する事から不確実性のレベル
が存在する。典型的な成型作業では、この仮定での不確実性は 30%以内とすべきである(Bartos et
al.2003)。
HFC-134a、FK5-1-12 と分解生成物 (例えば PFC)
カバーガスとしての HFC-134a あるいは FK5-1-12 の使用に関し、ティア3法のみの手引きが
示されている。SF6 のティア 3 に関連して、カバーガスとして HFC-134a と FK5-1-12 を使用す
る工程での監視機器の調整と精度に関するものが主な不確実性である。不確実性はおおよそ±
10%である。
キャリアガス
143
最も大きな不確実性はカバーガスからの CO2 排出量を無視して良いとするティア1法に関連
したものである。これは施設で非常に CO2 濃度の高い混合物キャリアガスを使用した場合に特に
本質的なものとなる。他のティアでは SF6 に関連したと同じ様な不確実性となる。
4.5.4 品質保証/品質管理(QA/QC), 報告と証拠書類
4.5.4.1 品質保証/品質管理
1巻第6章で概説されている品質管理(QC)のチェックをし、排出量推定値についての専門家
レビューを行うことがグッドプラクティスである。特にこの部門からの排出量を決定するために
精度の高いティア法を使用する場合、1巻第6章で記載されている追加品質管理チェック及び品
質保証(QA)手順も利用できるだろう。インベントリ担当機関は、1巻第4章で示されている主
要排出源についてはより精度の高いティアの QA/QC を使用することが奨励される。
マグネシウム生産固有の追加的手順を以下に示す。
様々な方式を用いた排出量推定値の比較
個別プラントからのデータを用いて排出量を算出した場合、インベントリ担当機関は、この推
定値をマグネシウムの国内生産データあるいは SF6国内消費量を用いて算出される排出量と比
較すべきである。この比較の結果を記録し、相違があればそれを調査すること。
プラントレベルデータの審査
第三者審査を容易にするために以下のプラント別情報を管理すること。
・ マグネシウム製造量とプロセスの種類
・ GWP を持つカバーガス(SF6,HFC134a, FK5-1-12、CO2 他)の消費量
・ プラントレベルの QA/QC 結果(プラントレベルデータのサンプリング、測定方法及び測定
結果の証拠書類の整備を含む)
・ 統合機関(例えば業界団体)が行った QA/QC の結果
・ 計算及び推定方法
・ 可能な場合、国内の SF6,HFC134a, FK5-1-12 の国内割当量あるいは他のカバーガスまたは
プラントレベルでの生産量または生産量の仮定のリスト
インベントリ編集者は、プラント別のカバーガスの消費量あるいはマグネシウム生産量データに
国内あるいは温暖化ガス(SF6,HFC-134a,FK5-1-12 その他)の国際的な測定基準が使われている
かどうかを判断すること。標準的な方法及び QA/QC が使われていない場合には、これらの活動
量データの使用を再検討すること。
国別活動量データの審査
マグネシウムの生産データに関連するQA/QC活動を評価し、参考文献として添付すること。
144
インベントリ編集者は、国内の生産データを取りまとめた業界団体が、十分な QA/QC 手順を用
いたかどうかを検査すること。QA/QC 手順が十分であると見なされた場合、インベントリ編集
者は QA/QC の証拠書類の一部として QC 活動を引用すること。
排出係数の評価
企業や国別の係数が用いられている場合、インベントリ編集者は基礎となるデータの QC レベ
ルを審査すること。インベントリ編集者がプラントレベルの係数と国レベルのデフォルト係数と
をクロスチェックし、それぞれの妥当性を判断することがグッドプラクティスである。
ピアレビュー
インベントリ編集者は、潜在的な機密性の問題を考慮し、インベントリ推定の詳細審査にマグ
ネシウム業界の専門家を参加させること。過去の生産データは現在のデータより機密性が少ない
かも知れず、プラントレベルの排出量の外部ピアレビュー用に利用することが可能であろう。
SF6排出量データの検証
インベントリ編集者は、産業部門別(例えばマグネシウム、電力機器など)の SF6消費量を合
計し、この値を輸出入及び生産データから得られる国内の SF6の総使用量と比較すること。これ
は潜在排出量の上限を示している。
4.5.4.2
報告及び証拠書類
1巻 6.11 項で述べているように国別排出量インベントリを推定するために必要なすべての情
報を証拠書類で裏付け、保管することがグッドプラクティスである。国別インベントリ報告にす
べての証拠書類を含めることは現実的ではない。しかし、
報告されている排出量推定値が透明で、
計算の各段階が再チェックできるように、インベントリには用いた方法の概要とデータの出典を
含めること。
透明性を向上させるために、この排出源からの排出量推定値を産業部門別に報告することがグ
ッドプラクティスである。
以下の追加情報によって報告にかなりの透明性を与えることができる。
直接報告法
・ 報告しているプラントの数
・ 使用されるプロセスや工場の種類
・ マグネシウム及びマグネシウム製品の生産量
・ SF6 排出量
・ GWP のある他のカバーガスの使用
・ 排出係数データ(及び出典)
国内のカバーガス販売量に基づく潜在排出量の推定
145
・ 国内の SF6 消費量(及び出典)
・ マグネシウム分野に割当てられた HFC134a の国内使用量
・ FK5-1-12 の国内使用量
・ マグネウム分野で使用された SF6,HFC134a, FK5-1-12 の消費量
・ マグネシウム分野で使用された国内 SF6,HFC134a, FK5-1-12 量の国の比率(%)推定
・ その他の仮定
多くの国ではマグネシウム産業のプラント数は少ない。この産業では、活動量レベルデータと
カバーガス排出量(活動量レベルに直接関係する)は企業機密情報と考えられ、公表に当たって
は機密性が問題となる可能性がある。
146
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