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「グローバル化時代における紛争解決手段の再考」のフィードバック
多賀ゼミナール 2012/10/31 発表者:飯島、板橋、中本 「グローバル化時代における紛争解決手段の再考」のフィードバック Q. PKO 派 遣 時 に 欧 米 文 化 と 地 元 民 と の 間 で 文 化 摩 擦 が 起 こ る こ と は あ る か ? A. 文化摩擦が起こることはある。 ○カンボジアの上座部仏教と欧米文化の対立 ・もともと仏領インドシナに含まれていたカンボジアは、欧米文化に対し良い印象を持た ず。 ・カンボジアでは上座部仏教が国教。 →欧米人にとって、 人権=普遍的概念。 カンボジア人にとって 人権=欧米文化 ⇒PKO の活動中に文化摩擦が起こる。 ex.1 秩序や年長者を重んじる文化の下、自分の許可がなければ建物は建ててはいけないと 主張する地元の知事と、結社の自由、移動の自由を主張する PKO 職員が対立。 ex.2 女性委員会において、妊娠してしまった娘と結婚しようとしない男を結婚させるよう に訴える母親。人々は、中絶は仏教では許されないのだと主張。 両者の溝を埋めるために…現地の人権 NGO が活動。 国連や外国の NGO に支援された現地の人権 NGO が人権を理解してもらう教育を行う。 寺院を利用し、仏教の教えに人権概念を重ねた教材を使用。 PKO の活動が植民地化に重ねられることもある。 欧米文化で考えられている「人権」や「民主化」が 100%平和をもたらすのだろうか。 「人権」や「民主化」の定義を現地の人々の目線で考えなければ、人道支援はただの欧米 文化の布教へとなってしまう。 Q.「 オ ー ナ ー シ ッ プ 」 と は 何 か 。 A.国連で用いられる「オーナーシップ」とは、「主体性」のこと。 オーナーシップとは、一般的には「所有者であること、所有権」などを指しているが、国 際保健の分野では、「援助機関が考えて途上国の人々に何かをさせる(donor-driven assistance)」という考え方に対して、 「 途 上 国 の 人 々 が 自 分 で 考 え て 、自 分 で 実 施 し て い く 」 という考え方を指す。(国際保健用語集 http://wiki.livedoor.jp/jaih/d/FrontPage 1 多賀ゼミナール 2012/10/31 発表者:飯島、板橋、中本 より) 国連事務局の平和維持活動局(DPKO)とフィールド支援局(DFS)は、2008 年に出し た“Policy Directives on Civil Affairs”という文章において、伝統的な 3 原則の他に、も う 3 つの条件を提案している。それが、credibility(信用性), legitimacy(正当性), そし て local ownership(ローカルオーナーシップ)である。 ローカルオーナーシップのメリットとして、持続可能性・文化的背景への適応性・現地 の潜在的能力の発達・依存体制の最小化・ミッションの移行、撤退の円滑性・住民と国の 平和への努力のつながりの促進が挙げられている。 また、「ローカルオーナーシップ」は抽象的な概念ではない。「何における」「誰による」 オーナーシップなのか、を考えることが重要だと述べられている。 Q.内 政 不 干 渉 と 人 道 的 介 入 の メ リ ッ ト 、 デ メ リ ッ ト は ? A.「内政不干渉の原則」は、国連憲章第2条7項に規定されている。「この憲章のいかなる 規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与え るものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求す るものでもない。但し、この原則は、第 7 章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。」 とある。基本的に国連が介入するものは、国と国との対立であり、国内の問題に介入する ことは望ましくないとしている。この「内政不干渉の原則」の成立したのは、国外が、そ の国の紛争などの問題に対して、歴史的背景や原因を把握するのが困難であるためだ。一 方、冷戦後、非人道的な国内紛争も多くみられ、 「保護する責任」も生まれてきた。なので、 必ずしも内政不干渉が絶対的なものではなく、崩壊国家などの内政がままならない国家に は人道的介入は必要といえよう。しかしソマリアやルアンダのようにうまくいかない例は ある。 Q. PKO の 資 金 の 出 資 割 合 は ど う や っ て 決 め ら れ て い る の か ? A. 加盟国全体で協議し、各国の支払能力、国民所得および人口に基づいて決められます。 ○国連予算には、ニューヨークの事務局と世界各地の現地事務所の活動などを賄う通常予 算と、世界中の紛争地域で展開する平和維持活動の予算の 2 つがあります。これら予算へ の加盟国の分担金拠出は加盟国の義務です。各国は、加盟国全体で合意された分担割合に したがって、拠出を行います。この分担割合は、各国の支払能力、国民所得および人口に 基づいて決められます。 PKO 予算は、毎年 7 月 1 日から 1 年間を単位とし、総会が承認する。通常予算よりも安 保理常任理事国の分担率が高く設定されている。* 2 多賀ゼミナール 2012/10/31 発表者:飯島、板橋、中本 ・日本の現状 2009年の分担率交渉の結果、日本の2010-12年の国連通常予算分担率は12. 53%となった(加 盟 国 中 第 2 位 (第1位は米国の22%) 2012年に割り当てられた日本の通常予算分担金額は約2.96億ドル n近年は3年毎に、国連総会の場で、国連分担率の算定方式等が審議・決定。 n現行の国連分担率(2010-12年) 12.530%は、2009年12月24日に 国連総会で決定。 n次回分担率(2013-15年)については、今年に決定する予定。 *国 連 P K O 分 担 率 は、国連分担率を基礎に、途上国に対して一人あたりGNI(国民総所 得)に応じて割引調整が行われ、その分が安保理常任理事国(P5)に割り増しされる。我 が国を含む先進国(P5を除く)は、通常の国連分担率が適用。 Q. PKO と NGO 組 織 の 連 携 の 事 例 は あ る の か 、あ れ ば 、ど の 紛 争 で ど ん な 活 動 を し て、どんな結果をもたらしたのか? A. NGO と PKO の連携の事例は各地域で様々なものがあり、特にアフガニスタン紛争にお いて NGO 組織と PKO の連携が多く見られた。各 NGO が多種多様な活動をしており、成 果も様々である。 ○アフガニスタンの例 アフガニスタンでは、世界各国から様々な NGO が派遣され、現地の PKO と協力して、 様々な活動を行っている。 ・JVC(日 本 国 際 ボ ラ ン テ ィ ア セ ン タ ー ) 活動地: ナンガルハル県シェワ郡ゴレーク地域 人口 約 2 万1千人 活動内容: 診療所の運営 PKO である UNAMA と連携した地域保健員(CHW) の育成 村の女性を対象とした健康・保健教室 学校での健康教育 活動目標:JVC の活動により、普及しはじめた知識をベースに、住民自身が問題意識をも って生活の改善につなげ、JVC の去った後でも取り組みが持続し、母子保健の 向上につながることをめざしています。 成果: 現在、2 つの診療所でファミリー・ヘルスブック(家族単位のカルテ)に基づき患 者の総合的なケアにつなげる努力を継続していますが、診療の際に、医師が個々に健康教 育を行ったところ、持病が治ったという声も聞かれました。また保健委員会、地域保健員、 3 多賀ゼミナール 2012/10/31 発表者:飯島、板橋、中本 伝統産婆、診療所との連携により、村で初期・応急処置を実施できるようになりました。 Q. 多 様 な ア ク タ ー が 参 加 す る こ と の 問 題 点 A.各アクターの関わり方が非常に複雑で、それぞれの活動における責任主体があいまいに なり活動に遅れが出たり、活動内容が重複してしまう、という点 ○実際に国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)においても、多数の外部アクターが 関わったため、数多くの問題が発生した。 解決策 各アクターをまとめるコーディネーターの設置が重要になる。この機関には現地の情報 及び各アクターの活動に関する情報を一箇所に集中させ、支援状況の分析を行い指示を出 すことで、国連機関、現地政府、地域機構、NGO の支援をスムーズに進める役割を果たす。 今まで問題であった活動の重複、活動の遅れを防ぎ、各アクターの連携を促すための秩序 を外部アクター内に作るという考え方だ。そして、このコーディネーターには大きな管理 能力が必要となるため、最も組織力があると思われる国連が担うべきだと考える。 参考文献 ・日本国際研究所 http://jica-ri.jica.go.jp/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jica/kenkyu/ 95_22/07_05.html(2012/10/28) ・UN supported by DPKO&DFS, “Policy Directives on Civil Affairs” http://www.un.org/en/peacekeeping/documents/civilhandbook/Civil_Affairs_Handbook.p df (2012/10/29) ・JVC 日本国際ボランティアセンター http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/afghanistan/community-health.html(2012.10.27) ・外務省 日本と国連 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/pdfs/j_un.pdf(2012.10.29) ・上杉雄司、2006 年、『変わりゆく国連 PKO と紛争解決 平和創造と平和構築をつなぐ』 明石書店 4