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地域情報通信基盤整備推進交付金(ICT交付金)
1/2 総 事案名 所管 括 調査対象 予 算 額 (6)地域情報通信基盤整備推進交付金(ICT交付金) 総務省 組織 調 総務本省 会計 査 票 平成 22 年度:- 平成 21 年度:54,193 百万円(当初 7,870 百万円、補正追加 46,323 百万円) 平成 20 年度:16,724 百万円(当初 6,200 百万円、補正追加 10,524 百万円) 平成 19 年度: 5,700 百万円(当初のみ) 平成 18 年度: 9,375 百万円(当初 5,257 百万円、補正追加 4,118 百万円) 調査区分 財務局調査 一般会計 取りまとめ財務局 北海道財務局 ①調査事案の概要 (事案の概要) 地域の特性に応じた情報通信基盤(FTTH、ケーブルテレビ、ADSL、広域無線LAN等)の整備を支援する地方公共団体向け交付金。地域間の情報格差 (デジタルディバイド)を是正するとともに、地域住民の生活の向上及び地域経済の活性化を図るもの。 18 年度の創設以降、ブロードバンドのサービスエリアは拡大し、21 年度予算をもってブロードバンド・ゼロ地域は解消される見込み。本交付金により整備され た情報通信基盤が有効に活用されているか検証する。 (交付対象主体及び交付率) 条件不利地域に該当する市町村:1/3(第三セクター法人:1/4) (注) 条件不利地域とは、過疎、辺地、離島(奄美及び小笠原を含む。)、半島、山村、豪雪及び沖縄県のこれらに類する地域をいう。 (交付対象経費) ① 対象施設:アンテナ施設、ヘッドエンド、鉄塔、光電変換装置、無線アクセス装置 等 ② 附帯装置:センター施設、受電設備、電源設備、伝送施設、監視装置、構内伝送路、送受信装置 (ICT交付金の事業スキーム) 利用料金 地方公共団体 国 情報通信 基盤整備 費の1/3を 補助 契約により 回線を貸出 利用料金 電気通信 事業者等 インターネット サービスの提供 情報通信基盤 (ADSL、FTTH、広 域無線LAN,ケーブ ルテレビ等)を整備 し保有 利用者 (地域住 民) 利用料金 インターネットサービスの提供 (出典:デジタルディバイド解消戦略(20 年 6 月総務省)概要) 2/2 総 事案名 【調査対象】 18 年度∼20 年度 予算で整備が行 われた市町村等 251 団体 【調査の視点】 本交付金により 整備された情報 通信基盤が有効 に活用されてい るか。 具体的には、以 下を調査。 (1)利用率 (注)利用率=加入 契約数÷整備地 域の世帯数 (2)1世帯あたり の整備コスト 【調査方法】 財務局等による 書面調査及び実 地調査 22 年 3 月までに サービスを開始 した 212 団体の うち回答を得ら れたのは 210 団 体 (実地調査先: 25 団体) 調 査 票 (6)地域情報通信基盤整備推進交付金(ICT 交付金) ②調査の視点 【調査時期】 22 年 4 月∼5 月 (22 年 3 月時点 の利用状況) 括 ③調査結果及びその分析 (1)ブロードバンドの利用率 ●本交付金によるブロードバンドサービスの平均利用率は 19.8%(注 1)にと どまり、全国の平均的な利用率である約 6 割(注 2)を大きく下回る。 【表 1 上段】 ●このうち、既に ADSL が整備されていた地域を光ファイバ化(FTTH やケーブルテレ ビ)し、より高速化を図った団体については、光ファイバ平均利用率は 20.2% (注 3)。【表 1 下段】 (注 1)ケーブルテレビによるテレビ放送利用を含めると 50.2% (注 2)21 年 12 月末時点での全国のブロードバンドサービスの利用率は約 6 割(グ ローバル時代における ICT 政策に関するタスクフォース 「過去の競争政策 のレビュー部会」平成 22 年 3 月 29 日会合資料(総務省)より) (注 3)ケーブルテレビによるテレビ放送利用を含めると 50.8% ●以下のように著しく利用率が低い事例もあった。 ・ 利用率 0.3%(301 世帯中、1 世帯):地域の高齢化が進んでいる。 ・ 利用率 1.1%[テレビ利用含め 2.1%](1,102 世帯中、12 世帯[テレビ利用含 め 23 世帯]) :経済状況の悪化に加え、事業開始後、民間事業者によるサー ビスが開始されたことも要因。 【表1】ICT交付金で整備されたブロードバンドの利用状況(18~20年度予算分) 整備 箇所 数 合計 210 (テレビ放送利用含む) ブロードバンド・ゼロ地域の解消 (テレビ放送利用含む) なし→ケーブルテレビ (テレビ放送利用含む) なし→FTTH なし→FWA、ADSL等 通信の高速化(光ファイバ化) (テレビ放送利用含む) ADSLなど→ケーブルテレビ (テレビ放送利用含む) ADSLなど→FTTH 131 92 18 21 79 70 9 国費実績 (百万円) A 17,673 (22,328) 10,172 (13,307) 7,949 (11,084) 1,791 431 7,501 (9,022) 6,771 (8,292) 730 整備地域の世 実績利用世帯 利用率(%) 帯数(万世帯) 数(万世帯) C/B B C 108 (108) 58 (58) 52 (52) 4 2 50 (50) 48 (48) 2 21 (54) 11 (29) 9 (27) 2 0.3 10 (25) 9 (25) 1 1 9 .8 % (5 0 .2 % ) 19.5% (49.6%) 18.2% (52.0%) 37.2% 15.2% 2 0 .2 % (5 0 .8 % ) 19.5% (51.4%) 36.4% 1世帯当り 国費(万円) A/B 1 .6 (2 .1 ) 1.8 (2.3) 1.5 (2.1) 4.3 2.2 1.5 (1.8) 1.4 (1.7) 3.5 実際の利用者 (整備前の想定) 1世帯当り 利用者1世帯当り 国費(万円) 国費(万円) A/C 8 .3 (4 .1 ) 9.0 (4.6) 8.4 (4.1) 11.6 14.3 7.4 (3.6) 7.2 (3.4) 9.5 8 .7 (3 .9 ) 10.9 (4.4) 11.1 (4.0) 11.3 7.9 6.9 (3.4) 6.6 (3.2) 10.6 (注)実績利用世帯数は、1契約を1世帯としてカウント。 【図1】利用率の分布 50%以上 【表2】利用料金 4.8% 30~50% 未満 19.0% 20~30% 10%未満 30.0% 計(加重平均) 1世帯あたりの利用料金(月額) 4,290円 ケーブルテレビ 3,497円 その他 5,508円 (注)回答を得られた71団体のみを集計 (参考)NTT東日本のFTTH月額利用料の例(戸建て向け)は5,460円(プロバイダ料金を含めた 料金例は約6,200円) 10~20% ●利用率が伸びない要因としては以下のような理由が挙げられた。 未満 未満 21.0% ①整備地域の高齢化が進んでいる。(21 団体) 25.2% ②既存の ADSL 等のサービスに不便を感じない。 (15 団体) ④今後の改善点・検討の方向性 ③利用料金が割高である。(6 団体) (注)平均は月額 4,290 円だが、プロバイダ料金、光 今回の調査によって、以下の実態が判明したところであり、今後、情報通信基盤施策を立案する際には、この事業から得ら れた教訓を十分踏まえたものとする必要がある。 電話料金を含めると月額 8 千円を超えるケースも (1)利用状況 ある。【表2】 ④本交付金による整備後、民間事業者が自主整備に ① 本交付金等によってブロードバンド・ゼロ地域は解消。一方、利用実態は以下のとおり。 ・ 本交付金で整備された地域の利用率は約2割であり、民間がニーズを踏まえて整備した地域の約6割と比較して低い水 よりブロードバンドサービスを開始した。(7 団体) 準にとどまっており、著しく利用率が低い例もある ・ 通信の超高速化(光ファイバ化)を図った地域でも利用率は同様に低い ・ 整備後に民間事業者が自主整備をしたために加入率が低迷している例もある (2)1 世帯あたりの整備コスト 1 世帯あたりの整備コストは 1.6 万円(国費ベース。実際 ② こうした利用実態に照らすと、本事業は、甘い需要予測やニーズの見通しに基くインフラ整備となっていた可能性があ り、その結果、市町村に維持費負担が生じている例もある。 に利用している世帯のみで割ると 8.3 万円。テレビ放送 (2)整備コスト 利用を含めると 4.1 万円であり、整備前に想定した整備 ① 1 世帯あたり整備コストは 1.6 万円(国費ベース。事業費ベースでは 5 万円)であった。 コストとほぼ同額)【表 1】 ② 仮に今後、超高速ブロードバンドを全世帯に整備する場合、総事業費は 1 兆円を大きく上回るとされている(総務省『「光 の道」構想実現に向けて』)。その場合、1 世帯あたり整備コストは 20 万円を超える。さらに、今回の調査結果と同様に利用 率が 2 割にとどまった場合、1 世帯あたり整備コストは 100 万円を超える。 (参考) 維持運営費(回答を得られた 77 団体の集計) (3)インフラ整備については、適切な需要予測、ニーズの見通しの下に行われなければ無駄を生むということは、情報通信基 各市町村が負担する維持運営費は平均 1,948 万円 盤でも例外ではない。また、民間事業者が商業ベースで行っている事業に税金を投入することの適否については、商業ベ (年額)。市町村が受取る利用料金収入は 1,309 万円。 ースでは整備がなされないのかどうか、ニーズが存在するのかどうか、全国一律のサービスが必要なのかどうか等の観点 から、総合的に検討される必要がある。ニーズの見通しが不十分であったり、甘い需要予測を前提に整備を行えば、他の 差額の 639 万円を市町村が負担。 インフラ整備と同様、限られた財政資金の浪費につながることに留意する必要がある。